(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】排水システム
(51)【国際特許分類】
E03F 5/02 20060101AFI20241018BHJP
E03F 5/10 20060101ALI20241018BHJP
E03F 7/04 20060101ALI20241018BHJP
E02D 29/12 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E03F5/02
E03F5/10 A
E03F7/04
E02D29/12 E
E02D29/12 Z
(21)【出願番号】P 2021111956
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204197(JP,A)
【文献】特開2020-176507(JP,A)
【文献】特開2001-056063(JP,A)
【文献】実開平06-035786(JP,U)
【文献】特開2005-155021(JP,A)
【文献】特開平04-001338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0096131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
E02D 29/00
29/045-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールや排水ますの流入口に取り付けられる取付ベースと、前記取付ベースに着脱自在に装着される排水装置とを備えた排水システムにおいて、
前記取付ベースは、入口と、前記入口よりも縮径した直径を有する出口と、前記入口と前記出口とを連結する環状部と、前記入口の外周に設けられたフランジ部とを備えており、
前記排水装置は、前記取付ベースの前記出口に接続される装着口と、前記装着口と連通した流下口とを備えており、そして
前記取付ベースの前記出口の環軸は、前記入口の環軸に対して下方に偏心して配置され
、且つ
前記取付ベースの前記出口の底部と前記入口の底部は同レベルであるか、または前記出口の底部が前記入口の底部よりも低いレベルに配置されている排水システム。
【請求項2】
前記取付ベースの前記出口の環軸は、前記入口の環軸に対して平行且つ下方に偏心して配置されているか、または前記入口の環軸に対して下流側へ向けて1~10°下方へ傾くように偏心して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の排水システム。
【請求項3】
前記排水装置は、前記装着口と前記流下口とを連結する直管状、曲管状または直管部分と曲管部分とを備えた複合管状からなる胴部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水システム。
【請求項4】
前記排水装置は、前記流下口の端面が上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜しており、前記流下口の上部には揺動自在に軸支された弁体を備えていることを特徴とする請求項3に記載の排水システム。
【請求項5】
前記弁体は、水の比重よりも小さな浮力発生部を有している請求項4に記載の排水システム。
【請求項6】
前記排水装置を前記取付ベースへ装着時、前記排水装置の前記装着口の管軸は前記取付ベースの前記出口の環軸に対して一致して配置される請求項1から5のいずれか1項に記載の排水システム。
【請求項7】
前記取付ベースの前記入口に嵌挿接続することにより、前記入口の口径を縮径する口径変換アダプターをさらに備えている請求項1から6のいずれか1項に記載の排水システム。
【請求項8】
前記口径変換アダプターの下部端面には、傾斜面が設けられている請求項7に記載の排水システム。
【請求項9】
前記フランジ部の表面には、前記取付ベースの前記入口の環軸を案内する標線が表示されている請求項1から8のいずれか1項に記載の排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールや公共ます、排水ますの流入口に取り付けられる排水システムに関し、特にマンホール等の流入口や該流入口に接続される排水管の口径に拠らず広範囲の口径に対応することができ、そして接続される排水管との間で液溜まり等の発生が防止された排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に住宅などにおけるトイレ等の排水設備から排出される排水は、宅地側の排水管を下水道本管へ接続することにより排出されるが、排水管のゴミや異物の除去、点検等の目的で、または急激な排水量の変化を緩和する目的で、通常、建物側の排水管を下水道本管へ接続する前にマンホールや公共ます、排水ますが設置される。
【0003】
ところが、近年の異常気象などにより下水道本管に流入する排水量が増大し、特に台風などで大量の雨水が短時間の間に下水道本管内に流入すると、下水道本管の排水能力を超えて溢れ出た排水がマンホール等を通って逆流し、排水管に接続された屋内の排水設備から逆流した排水が噴き出るという問題がある。
【0004】
このため、下水道本管から逆流した排水がマンホール等を通って屋内の排水設備から噴き出すことを防止するために、例えば実用新案登録第3136061号公報(特許文献1)、特開平11-241394号公報(特許文献2)、特開2006-283547号公報(特許文献3)に記載されているように、マンホールや公共ます、排水ますの流入口へ逆流防止装置を取り付ける技術が知られている。
【0005】
また、マンホールや公共ます、排水ますの流入口へ接続される他の排水装置としては、例えば特開2001-182146号公報(特許文献4)に記載されているように、マンホール等の中へ流入した排水の流れを制御するため、マンホール等の流入口に固定された排水管と接続するための流入口と該流入口と連結した流下口とを有する直管、曲管または直管部分と曲管部分とを備えた複合管等の管部材を取り付ける技術が知られている。
【0006】
しかし、特許文献1,2,3に記載の逆流防止装置や特許文献4に記載の排水の流れ制御用の管部材は、基本的にマンホール等の流入口へ接続される排水管の口径に合わせて1対1対応で接続されるものであるため、排水管の口径が逆流防止装置や管部材の接続口の口径と異なる場合、排水管の口径に合わせて新たに逆流防止装置や管部材を準備するか、或いは排水管の口径を異径管接続継手を用いて逆流防止装置や管部材の接続口の口径に合わせる等しなければならず、コスト高で煩雑になるという問題があった。
【0007】
また、排水管の口径と異なる接続口の逆流防止装置や管部材を接続する場合であって、特に逆流防止装置や管部材の接続口よりも排水管の口径が大径である場合、逆流防止装置、管部材と排水管との間に昇り勾配や逆段差等が形成されて排水詰まりの原因となる液溜まりを生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実用新案登録第3136061号公報
【文献】特開平11-241394号公報
【文献】特開2006-283547号公報
【文献】特開2001-182146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、特にマンホールや公共ます、排水ますの流入口や該流入口に接続される排水管の口径に拠らず広範囲の口径に対応して取り付けることができ、そして接続される排水管との間で逆段差等による液溜まり等の発生が防止された排水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、マンホールや排水ます等の流入口または該流入口へ接続される排水管の接続態様や、マンホールや排水ます等の流入口または排水管へ取り付けられる逆流防止装置や管部材等の取付態様、構造等について鋭意検討を重ねた結果、マンホールや排水ます等の流入口に取り付けるための専用の取付ベースを設け、該取付ベースを介して外部排水管と逆流防止装置、管部材等とを接続するようにすれば上記の課題を最も効果的に解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、マンホールや排水ますの流入口に取り付けられる取付ベースと、取付ベースに着脱自在に装着される排水装置とを備えた排水システムにおいて、取付ベースは、入口と、入口よりも縮径した直径を有する出口と、入口と出口とを連結する環状部と、入口の外周に設けられたフランジ部とを備えており、排水装置は取付ベースの出口に接続される装着口と、装着口と連通した流下口とを備えており、そして取付ベースの出口の環軸は、入口の環軸に対して下方に偏心して配置されている排水システムが提供される。
【0012】
なお、本発明の排水システムにおいて、取付ベースの出口の環軸の配置を、入口の環軸に対して下方に偏心して配置する態様とは、入口の環軸に対して平行且つ下方に偏心して配置するか、または入口の環軸に対して下流側へ向けて1~10°下方へ傾くように偏心して配置する態様を含んでいる。
【0013】
また、本発明の排水システムにおいて、排水装置は、例えば装着口と流下口とを連結する直管状、曲管状または直管部分と曲管部分とを備えた複合管状からなる胴部を有する管部材であってもよい。さらに排水装置は、上述した胴部を備えた管部材の流下口の端面を上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜させ、流下口の上部には揺動自在に軸支された弁体を設けることにより逆流防止装置を構成してもよい。また、排水装置が逆流防止装置を構成している場合、逆流発生時、逆流防止装置をより確実に作動させるために、弁体へ水の比重よりも小さな浮力発生部を設けてもよい。
【0014】
本発明において、取付ベースは、例えばマンホールや公共ます、排水ますの内部の流入口に取り付けられ、取付ベースの入口には外部排水管が接続される。このため、本発明の排水システムは、取付ベースを取り付ける場所がマンホールや排水ますの流入口である場合、取付ベースのフランジ部をマンホールや排水ますの内壁の形状に合わせて湾曲させてもよい。また、円滑な排水の流れを実現するために、取付ベースの出口の環軸を入口の環軸に対して平行且つ下方に偏心させて配置等した場合、取付ベースの出口の底部も入口の底部よりも低くなるように形成させることが好ましい。
【0015】
本発明の排水システムでは、管部材や逆流防止装置等の排水装置を取付ベースの出口へ装着した時、排水装置の装着口の管軸は取付ベースの出口の環軸に対して一致するように配置される。すなわち、取付ベースの出口の環軸が入口の環軸に対して平行且つ下方に偏心して配置される場合、取付ベースの出口へ装着された排水装置の装着口の管軸も取付ベースの入口の環軸に対して平行且つ下方に偏心するように配置される。
【0016】
また、本発明の排水システムでは、取付ベースの入口へ口径を縮径するための環状の口径変換アダプターを嵌挿接続することにより、入口の口径を任意に調整することができる。また、口径変換アダプターの下部端面には、円滑な排水の流れを促進するために傾斜面を設けることが好ましい。
【0017】
このように、本発明の排水システムでは、外部排水管と、管部材や逆流防止装置等の排水装置は、入口よりも縮径された出口を備えており且つマンホールや排水ますの流入口に取り付けられる取付ベースを介して接続されるので、マンホールや排水ますに接続される排水管の口径に拠らず広範囲の口径に対応して取り付けることができる。また、本発明の排水システムでは、取付ベースの入口と出口の中心軸(環軸)が互いにズレて配置されるので、管部材や逆流防止装置等の排水装置と排水管との間で逆段差等による液溜まり等の発生が防止され、円滑な排水の流れが保証される。
【0018】
また、本発明の排水システムでは、マンホールや排水ますの流入口や外部排水管との芯出し、取り付けの容易化を図るために、取付ベースのフランジ部の表面に取付ベースの入口の環軸を案内する標線を表示してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、マンホールや排水ますの流入口に取り付けるため、入口よりも縮径された出口を備えており且つ入口と出口の中心軸(環軸)が互いにズレている取付ベースと、該取付ベースの出口に着脱自在に装着される装着口と該装着口と連通した流下口とを備えている管部材や逆流防止装置等の排水装置とを具備してなる排水システムが提供される。
【0020】
このため、本発明の排水システムによれば、特にマンホールや排水ます等の流入口や該流入口に接続される排水管の口径に拠らず広範囲の口径に対応して取り付けることができ、そして接続される排水管との間で逆段差等による液溜まり等の発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排水システムを公共ますへ取り付けた態様を示す該ますの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る排水システムの全体を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示される排水システム中の取付ベースを示す斜視図である。
【
図4】
図2に示される排水システム中の逆流防止装置を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示される逆流防止装置をその入口側から示した斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る排水システムを口径変換アダプターを用いて排水管へ接続した態様を示す該システムの断面図である。
【
図7】
図6に示される排水システムを弁体側から示した正面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る排水システムを排水管へ直接接続した態様を示す該システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る排水システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0023】
図1には、本発明の一実施形態に係る排水システム1を公共ます7へ取り付けた態様を表した該公共ます7の断面図が示されている。
【0024】
本実施形態の排水システム1は、例えば
図1に示されているように公共ます7の流入口700や排水ますの流入口等に取り付けることができ、ます本体はコンクリート製、プラスチック製又はそれらを組み合わせたものであってもよい。ただし、本実施形態の排水システム1は、その取付場所が公共ます7の流入口700等に限られるものではなく、後述する取付ベース2を介して壁面等に支持させることができ、そして該取付ベース2を介して外部排水管5と逆流防止装置4や、直管、曲管または直管部分と曲管部分とを備えた複合管等の管部材(図示せず)とを接続することができるものであれば、例えばマンホールや排水ます、河川等に臨む排水管の開口端などに直接取り付けることもできる。
【0025】
図1に示される公共ます7は主としてコンクリートにて成形されており、上部開口と、流入口700と、流出口701と、該流入口700及び流出口701とを接続するインバート部702とを備えた第1の立上り管70を備えている。第1の立上り管70の上部には、上部開口の略同一の内径/外径を有する下部開口と、下部開口よりも縮径された点検口とを備えた第2の立上り管71が接続されている。さらに第2の立上り管71の上部には、2つの長さの異なる環状のスペーサー72,73を介して鋼鉄製の枠体74がボルト止めされている。枠体74の上端開口の内周部には環状の棚部740が形成されており、この棚部740の上には略円板状の蓋体75が開閉自在に支持されている。
【0026】
公共ます7の流入口700の内壁面には、排水システム1の取付ベース2がモルタル8及びボルト9を用いて固定されている。取付ベース2の略円形の入口20には、トイレ等の排水設備に連通した上流側の外部排水管5が環状の口径変換アダプター3を介して接続されており、取付ベース2の略円形の出口21には、逆流防止装置4の略円形の装着口400が着脱自在に接続されている。また、外部排水管5の周囲には流入口700との間に隙間が形成されており、その隙間にモルタル8を充填することで外部排水管5は流入口700にも液密に固定されている。
【0027】
公共ます7の流出口701には、外部排水管5の内径よりも大きな内径を有する下流側の外部排水管6が接続されている。公共ます7の流出口701の内径は外部排水管6の外径よりも大きいため、外部排水管6の周囲には流出口701との間に隙間が形成されており、外部排水管6は、その隙間にモルタル8を充填することにより流出口701に液密に固定されている。
【0028】
図2には、本発明の一実施形態に係る排水システム1の全体を表した斜視図が示されており、
図3には、
図2に示された排水システム1中の取付ベース2を表した斜視図が示されている。また
図4には、
図2に示された排水システム1中の逆流防止装置4を表した斜視図が示されており、
図5には、
図4に示された逆流防止装置4をその装着口400側から表した斜視図が示されている。
【0029】
図2に示されているように、本実施形態の排水システム1は、公共/排水ます等の流入口に取り付けられる取付ベース2と、該取付ベース2に着脱自在に装着される逆流防止装置4とから構成されている。なお、図示しないが、該取付ベース2に着脱自在に装着される排水装置は、取付ベース2の出口21に接続される装着口と、該装着口と連通した流下口とを有する直管、曲管または直管部分と曲管部分とを備えた複合管などであってもよい。
【0030】
図3によく示されているように、取付ベース2は、略円形の入口20と、入口20よりも縮径した直径を有する略円形の出口21と、該入口20と出口21とを連結するリング状の環状部22とを備えており、入口20の外周には湾曲した板状のフランジ部23が形成されている。
【0031】
環状部22は主として、入口20から外部排水管5の開口端と、出口21から逆流防止装置4の装着口400とを受け入れるために機能する。また、フランジ部23は、取付ベース2を公共/排水ます等の流入口周辺の内壁面に支持させるために機能するものであり、その固定方法は接着剤、モルタル、ボルト止め等を利用することができる。そのため、フランジ部23は、固着面積を確保するために取付ベース2の出口21の外形よりも外側へ向けて拡がっていることが好ましく、その平面形状は矩形でも多角形でも円形でもよい。また、公共/排水ます等の壁面形状に合致するように湾曲等していてもよい。
【0032】
図4,5によく示されているように逆流防止装置4は、弁管40と、弁管40の流下口401の上部に揺動自在に軸支された弁体41とから構成されている。弁管40は、取付ベース2の出口21に接続される略円形の装着口400と、端面が上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜している流下口401と、そして装着口400と流下口401とを連結する胴部402とを備えている。本実施形態では、胴部402は、平常時、排水が円滑に流れるように天井部分のみが下方へ向けて湾曲している。ただし、胴部402の形状はこれに限られるものではなく、例えば胴部402全体が下方へ向けて湾曲している曲管から構成されていても、或いは胴部402全体が水平方向へ向けて延びた直管から構成されていてもよい。
【0033】
弁体41は、公共/排水ます等を逆流する排水を受け止めるための下流側の表面部410と、弁管40の流下口401と当接することにより逆流する排水を止水するための上流側の裏面部411とからなり、そして表面部410と裏面部411との間には、水に対して浮力を発生させるための空洞部(浮力発生部)412が形成されている(
図6,8参照)。ただし、弁体41には必ずしも空洞部(浮力発生部)412を設ける必要はないが、浮力を発生させる場合、弁体41に水より比重の軽い発泡樹脂等を取り付けることで代替してもよい。
【0034】
このように、弁体41に空洞部(浮力発生部)412を設けると、排水が公共ます7の中へ逆流した場合、弁体41には浮力により、弁管40の流下口401を閉じるように作動させる回転モーメントが働くようになるので、排水が公共ます7の流入口700からさらに下流へ逆流するのが確実に防止される。
【0035】
また、本実施形態の逆流防止装置4では、弁体41の下流側の表面部410は下流側から上流側へ向けて凹むように湾曲しており、上流側の裏面部411は下流側から上流側へ向けて膨らむように湾曲している。
【0036】
このように、少なくとも弁体41の下流側の表面部410を下流側から上流側へ向けて凹ませると、公共ます7の流入口700を逆流しようとする排水が弁体41に衝突して弁体41に大きな抵抗力を発生させるため、弁体41は誤作動をすることなく、公共ます7の流出口701からインバート部702へ逆流した排水に対して確実に弁管40の流下口401を閉じるように作動する。
【0037】
本実施形態では、逆流防止装置4は、バヨネット方式により取付ベース2の出口21へ着脱自在に取り付けられている。ここで「バヨネット方式」とは、逆流防止装置4側の弁管40の装着口400の外周部の12時、3時、6時、9時の位置に設けた4ヶ所のL字型のバヨネット溝42を、取付ベース2側の出口21の内周部の12時、3時、6時、9時の位置に設けた4ヶ所のバヨネット突起24へ嵌め込み、弁管40を周方向へ回転させることにより、逆流防止装置4を取付ベース2へ着脱自在に装着する機構である。このため、本実施形態では、弁管40の胴部402の外周に、使用者が逆流防止装置4を周方向へ回転させる際に掴むための2つの把手403が設けられている。
【0038】
なお、本実施形態におけるバヨネット方式は、バヨネット溝42を装着口400の内周部に設け、バヨネット突起24を出口21の内周部に設けてもよく、或いはバヨネット溝42を取付ベース2側の出口21に設け、バヨネット突起24を逆流防止装置4側の弁管40の装着口400に設けてもよい。このように、逆流防止装置4と取付ベース2の着脱機構にバヨネット方式を用いた場合、比較的小さな角度の回動で、簡単且つ確実に逆流防止装置4を取付ベース2へ取り付け、取り外すことができるようになり、小スペースでの着脱作業が容易になる。
【0039】
図6には、本発明の一実施形態に係る排水システム1を公共ます7の流入口700を介して、口径変換アダプター3を用いて上流側の外部排水管5へ接続した態様を表した該システム1の断面図が示されており、
図7には、
図6に示される排水システム1を弁体41側から表した正面図が示されている。なお、
図6,7では図面がより明確になるように、逆流防止装置4は取付ベース2から僅かに離間した未装着の状態で示されており、また
図7では、弁管40の外周に設けられた把手403が省略されている。
【0040】
図6を参照して理解されるように、本実施形態の排水システム1では、取付ベース2は、略円形の入口20と、入口20よりも縮径した直径を有する略円形の出口21と、該入口20と出口21とを連結するリング状の環状部22とを備えており、入口20の外周には湾曲した板状のフランジ部23が形成されている。また、取付ベース2の出口21の環軸Oは、入口20の環軸Pに対して下流側へ向けて1°下方へ傾いて入口20の環軸Pの下方に配置されている。なお、上記角度は入口20の環軸Pに対して下流側へ向けて1~10°であることが好ましく、また取付ベース2の出口21の環軸Oは、入口の環軸Pに対して平行且つ下方に偏心して配置してもよい。
【0041】
取付ベース2の入口20には、口径差を補正するための口径変換アダプター3を介して外部排水管5が、その管軸Qが取付ベース2の入口20の環軸Pと一致するように接続されており、取付ベース2の出口21には、逆流防止装置4が、装着口400の管軸Rが取付ベース2の出口21の環軸Oと一致するように接続されている。このため、逆流防止装置4の装着口400の管軸Rも、取付ベース2の入口の環軸Pおよび外部排水管5の管軸Qに対して下流側へ向けて1°下方へ傾いて環軸Pおよび管軸Qの下方に配置されている。なお、本実施形態において、外部排水管5,6はリブ付管であってもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、外部排水管5は、外部排水管5と取付ベース2の入口20へ嵌挿接続された口径変換アダプター3との隙間、および外部排水管5と公共ます7の流入口700との隙間にモルタル8を充填することにより流入口700内に直接的または間接的に固定されている。また、外部排水管5の接続および固定方法はこれに限られるものではなく、例えば外部排水管5を接着剤または溶接等により取付ベース2の入口20へ嵌挿接続された口径変換アダプター3に接続し、取付ベース2を、フランジ部23により公共ます7の流入口700周辺の内壁面にボルト9止め等して固定してもよい。
【0043】
また、取付ベース2の出口21はいわゆる受口の構造を有しており、逆流防止装置4の装着口400を受け入れる時、装着口400の端部が出口21内部の段部に当接することにより、装着口400の内壁面と出口21の内壁面とが略面一となるように構成されている。
【0044】
このように、本実施形態の排水システム1は、逆流防止装置4の口径とその上流側に接続される外部排水管5の口径が異なっている場合でも、取付ベース2と取付ベース2の入口20へ嵌挿接続された口径変換アダプター3を介することで広範囲の口径を有する外部排水管5に適合し、接続することができる。
【0045】
また、本実施形態の排水システム1では、取付ベース2の入口20の口径と出口21の口径が異なっているにも関わらず、出口21の環軸Oが入口20の環軸Pよりも下方にズレているので、出口21の底部と入口20の底部が同レベルとなるか、または出口21の底部が入口20の底部よりも低いレベルとなり、円滑な排水の流れが保証される。特に外部排水管5の口径は取付ベース2の入口20の口径よりも小さくなるので、出口21の底部および出口21と同一軸上に接続される逆流防止装置4の装着口400の底部は、入口20と同一軸上に接続される外部排水管5の底部よりも低いレベルとなり、逆段差等による液溜まり等の発生がない円滑な排水の流れが生み出される。
【0046】
また、本実施形態では、取付ベース2の出口21の環軸Oは入口20の環軸Pに対して下流側へ向けて1°下方へ傾いているので、出口21と同一軸上に接続される逆流防止装置4の装着口400も、入口20と同一軸上に接続される外部排水管5よりも1°下方へ傾いて接続されることになり、より円滑な排水の流れが保証される。
【0047】
図7によく示されているように、本実施形態の排水システム1では、フランジ部23の表面に取付ベース2の入口20の環軸Pを案内するための標線230が、出口21周辺の12時、3時、6時、9時の位置に表示されている。すわなち、12時と6時との位置の標線230を結ぶ縦線(図示せず)と、3時と9時との位置の標線230を結ぶ横線(図示せず)とが交わる交点が取付ベース2の入口20の環軸Pの位置を指し示すことになる。このため、公共ます7の内壁面にも流入口700の中心を示す罫線(図示せず)を流入口700周辺の12時、3時、6時、9時の位置に罫書いておけば、各標線230を各位置の罫線に合わせることにより、取付ベース2を、取付ベース2の入口20の環軸Pが流入口700の中心と一致するように簡単に取り付けることができる。
【0048】
図6に示される排水システム1の場合、公共ます7の流入口700の口径および外部排水管5の口径は、排水システム1の取付ベース2の入口20の口径よりも大幅に小径となる。このため、取付ベース2の公共ます7の壁面への取り付けは、フランジ部23の全面を利用して比較的小径の流入口700周辺の内壁面と当接するように取り付け、モルタル8、ボルト9等を用いて公共ます7の内壁面に固定することができる。
【0049】
また、上流側の外部排水管5の口径も、取付ベース2の入口20の口径よりも小径であり且つ口径差が大きいので、外部排水管5は、取付ベース2の入口20と外部排水管5との間に入口20の口径を縮径するための口径変換アダプター3を嵌挿することにより、取付ベース2の入口20と接続することができる。
【0050】
口径変換アダプター3は環状のリング体であり、取付ベース2の入口20と外部排水管5との口径差を補正(解消)するために任意の厚みを有する口径変換アダプターを準備することができる。また、少なくとも口径変換アダプター3の下部端面には、急激な勾配を無くすることで円滑な排水の流れを保証する傾斜面30が設けられていることが好ましい。
【0051】
このように、本実施形態の排水システム1の場合、取付ベース2の入口20の口径とその上流側に接続される外部排水管5の口径が大幅に異なっている場合でも、口径差を補正する単純な構造の口径変換アダプター3を用いることで簡単に広範囲の口径差を有する外部排水管5に適合させることができるので、極めて経済的に実施することができる。
【0052】
本実施形態における逆流防止装置4は、主として弁管40と弁体41とから構成されている。弁管40の流下口401は、その端面が上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜しており、流下口401の上部には弁体41が揺動自在に軸支されているので、通常弁体41は、
図6に示されるように流下口401を開口した状態で懸架された位置が保たれることになる。このため、本実施形態では、平常時、弁管40の流下口401は開口しており、外部排水管5を介して公共ます7の流入口700から流入する順フローの排水の流れを許容するので、排水量が少ない時でも、異物などによる排水詰まりを生じることがない。
【0053】
また、取付ベース2へ装着された弁管40は、公共ます2の内壁面から内部側へ突出しており、そして弁管40の流下口401はインバート部702から離間した上方の位置で開口している。このため、公共ます7の流出口701からインバート部702へ逆流した逆フローの排水は、逆流により公共ます7内に溜まった液面が弁管40よりも下方にある時、該液面の上昇が弁管40に邪魔をされて弁体41の下流側の表面部410よりも先に上流側の裏面部411へ廻り込むことができなくなる。その結果、本実施形態における排水システム1では、逆フローの排水の流れに対して、弁体42が下流側の表面部410よりも先に上流側の裏面部411から排水の圧力を受けて、弁管40の流下口40を開口する方向へ誤作動することが防止されている。
【0054】
また、上述したように、本実施形態における逆流防止装置4では、弁体41には空洞部(浮力発生部)412が設けられると共に、下流側の表面部410が下流側から上流側へ向けて凹むように湾曲している。このため、排水が公共ます7の中へ逆流した場合、弁体41には浮力により、弁管40の流下口401を閉じるように作動させる回転モーメントが働くと共に、弁体41に衝突した逆フローの排水が弁体41に大きな抵抗力を発生させるので、弁体41は誤作動をすることなく、逆流した排水に対して確実に弁管40の流下口401を閉じるように作動する。
【0055】
図8には、本発明の一実施形態に係る排水システム1を、公共ます7aの流入口700aを介して、該流入口700aへ直接に上流側の外部排水管5aへ接続した態様を表した該システム1の断面図が示されている。なお、
図8では図面がより明確になるように、逆流防止装置4は取付ベース2から僅かに離間した未装着の状態で示されている。
【0056】
すなわち、
図8に示されている実施形態は、公共ます7aの流入口700aの口径および外部排水管5aの口径が
図6に示される公共ます7の流入口700の口径および外部排水管5の口径よりもそれぞれに大径であること以外、
図6に示されている実施形態と同じである。このため、
図8の実施形態では、大径であり、取付ベース2の入口20と略同じ大きさの外径の外部排水管5aを排水システム1へ接続するために、両者の口径差を補正するための口径変換アダプター3は用いられていないが、その他の構成および取付ベース2や逆流防止装置4のそれぞれの機能等は
図6の実施形態と同じであるので、ここでの詳細な説明は省略する。また、本実施形態において、外部排水管5a,5bがリブ付管であってもよいことも
図6の実施形態と同じである。
【0057】
図8に示される排水システム1の場合、取付ベース2の入口20の口径は、公共ます7aの流入口700aの口径および上流側の外部排水管5aの口径とそれほど差がない大きさとなっている。このため、取付ベース2は
図6の実施形態とは異なり、フランジ部23の全面を使用せず、フランジ部23の一部の面を利用して流入口700a周辺の内壁面と当接するように取り付け、モルタル8、ボルト9等を用いて公共ます7aの内壁面に固定すればよい。
【0058】
このように、本実施形態では、外部排水管5aは、外部排水管5aと取付ベース2の入口20との隙間および外部排水管5aと公共ます7aの流入口700aとの隙間にモルタル8を充填することにより流入口700a内に直接的または間接的に固定されている。また、外部排水管5aの接続および固定方法はこれに限られるものではなく、例えば外部排水管5aを接着剤または溶接等により取付ベース2の入口20へ接続し、取付ベース2を、フランジ部23により公共ます7aの流入口700a周辺の内壁面にボルト9止め等して固定してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・・・・排水システム
2・・・・・取付ベース
20・・・・入口
21・・・・出口
22・・・・環状部
23・・・・フランジ部
230・・・標線
24・・・・バヨネット突起
3・・・・・口径変換アダプター
30・・・・傾斜面
4・・・・・逆流防止装置
40・・・・弁管
400・・・装着口
401・・・流下口
402・・・胴部
403・・・把手
41・・・・弁体
410・・・表面部
411・・・裏面部
412・・・空洞部
42・・・・バヨネット溝
5,5a・・・(上流側)外部排水管
6・・・・・(下流側)外部排水管
7,7a・・・・・公共ます
70・・・・第1の立上り管
700,700a・・・流入口
701・・・流出口
702・・・インバート部
71・・・・第2の立上り管
72,73・・・スペーサ
74・・・・枠体
740・・・棚部
75・・・・蓋体
8・・・・・モルタル
9・・・・・ボルト
O・・・・・(取付ベース)出口の環軸
P・・・・・(取付ベース)入口の環軸
Q・・・・・(上流側)外部排水管の管軸
R・・・・・(逆流防止装置)装着口の管軸