(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電気化学的触媒の原子層堆積
(51)【国際特許分類】
C23C 16/02 20060101AFI20241018BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20241018BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20241018BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20241018BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20241018BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20241018BHJP
H01M 4/88 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C23C16/02
C23C16/455
B01J37/02 301P
H01M4/86 M
H01M8/10 101
H01M4/92
H01M4/88 K
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021202557
(22)【出願日】2021-12-14
(62)【分割の表示】P 2019513055の分割
【原出願日】2017-09-07
【審査請求日】2022-01-12
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ ビー. プリンツ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フランシスコ ジャラミロ
(72)【発明者】
【氏名】ターニャ グラフ
(72)【発明者】
【氏名】トマス シュラド
(72)【発明者】
【氏名】ゲロルド ヒューブナー
(72)【発明者】
【氏名】シチェン シュー
(72)【発明者】
【氏名】ヨンミン キム
(72)【発明者】
【氏名】マハ ユースフ
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー クリストファー ヒギンス
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127799(JP,A)
【文献】特表2005-530307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0180043(US,A1)
【文献】特開2013-046883(JP,A)
【文献】特表2015-512782(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0100301(US,A1)
【文献】Journal of Vacuum Science & Technology A,Vol.33,No.1,p. 01A130-1 - 01A130-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/02
C23C 16/455
B01J 37/02
H01M 4/86
H01M 8/10
H01M 4/92
H01M 4/88
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒担体
、
前記触媒担体を被覆する触媒の薄膜
、および
前記薄膜と前記触媒担体との間に配置された結合層であって、ここで、前記結合層が、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、または半金属炭化物のうちの少なくとも1つを含む、結合層
を含む担持触媒であって、
ここで、前記触媒担体が炭素質触媒担体であり、
ここで、前記触媒が白金族金属からなり、
ここで、前記薄膜による前記触媒担体の表面被覆率は、少なくとも80%であり、そして前記薄膜は、原子層1層から原子層5層の範囲の平均厚さを有し、そして
以下:
A1-a) 前記触媒担体を収容する堆積チャンバに前駆体を導入して、前記触媒の材料を前記触媒担体上に堆積させること、および
前記堆積チャンバに不動態化ガスを導入して、前記材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと、または
A1-b) 前記触媒担体を収容する堆積チャンバに第1の前駆体を導入して、前記第1の前駆体が前記触媒担体上に吸着されるようにすること、および
前記堆積チャンバに第2の不動態化前駆体を導入して、前記触媒担体上に吸着された前記第1の前駆体と反応させて、前記触媒担体上に堆積された前記触媒の材料を得、かつ前記材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと、ならびに
A2) A1-a)またはA1-b)を複数回繰り返して、前記触媒の前記薄膜を形成すること
を含む方法により、前記触媒の前記薄膜が、前記触媒担体上に堆積される、
担持触媒。
【請求項2】
前記薄膜の前記平均厚さが、原子層1層から原子層3層の範囲である、請求項1に記載の担持触媒。
【請求項3】
カソード電気触媒層、
アノード電気触媒層、および
前記カソード電気触媒層と前記アノード電気触媒層との間に配置されたポリマー性イオン伝導膜
を含む燃料電池であって、前記カソード電気触媒層または前記アノード電気触媒層のうちの少なくとも1つが、請求項1
または2に記載の担持触媒を含む、燃料電池。
【請求項4】
第1のガス拡散層、
第2のガス拡散層、および
前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層との間に配置されたポリマー性イオン伝導膜
を含む燃料電池であって、前記第1のガス拡散層または前記第2のガス拡散層のうちの少なくとも1つが、請求項1
または2に記載の担持触媒を含む、燃料電池。
【請求項5】
多孔質伝導性材料、および
前記多孔質伝導性材料を被覆する触媒の薄膜
を含む、ガス拡散層であって、
ここで、前記多孔質伝導性材料が炭素質材料であり、
ここで、前記触媒が白金族金属からなり、
ここで、以下:
A1-a) 前記多孔質伝導性材料を収容する堆積チャンバに前駆体を導入して、前記触媒の材料を前記多孔質伝導性材料上に堆積させること、および
前記堆積チャンバに不動態化ガスを導入して、前記触媒の前記材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと、または
A1-b) 前記多孔質伝導性材料を収容する堆積チャンバに第1の前駆体を導入して、前記第1の前駆体が前記触媒担体上に吸着されるようにすること、および
前記堆積チャンバに第2の不動態化前駆体を導入して、前記多孔質伝導性材料上に吸着された前記第1の前駆体と反応させて、前記多孔質伝導性材料上に堆積された前記触媒の材料を得、かつ前記触媒の前記材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと、ならびに
A2) A1-a)またはA1-b)を複数回繰り返して、前記触媒の前記薄膜を形成すること
を含む方法により、前記触媒の前記薄膜が、前記多孔質伝導性材料に堆積され、そして
ここで、前記薄膜による前記多孔質伝導性材料の表面被覆率は、少なくとも80%であり、そして前記薄膜は、原子層1層から原子層5層の範囲の平均厚さを有する。
ガス拡散層。
【請求項6】
前記多孔質伝導性材料が、カーボンクロスまたはカーボンペーパーを含む、請求項
5に記載のガス拡散層。
【請求項7】
前記薄膜と前記多孔質伝導性材料との間に配置された結合層をさらに含む、請求項
5に記載のガス拡散層。
【請求項8】
前記結合層が、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、または半金属炭化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項
7に記載のガス拡散層。
【請求項9】
請求項
5から
8のいずれか一項に記載のガス拡散層を含む、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、米国仮出願第62/385,135号(2016年9月8日出願)の利益を主張する。この米国仮出願の内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
ポリマー電解質膜(PEM)燃料電池は、ゼロエミッション車両などの用途の電源として大きな可能性がある。しかし、最新式のPEM燃料電池には、いくつかの難点がある。最も厄介な難点の1つは、ナノサイズの粒子(すなわちナノ粒子)の形態である、高価な白金族金属(PGM)の量であり、これは燃料電池の膜電極アセンブリ(MEA)における電気化学的触媒としての役割を果たしている。PGM触媒の量は、典型的には、燃料電池スタックにおける単電池ごとの電力仕様により決定される。しかしながら、いくつかの分解プロセスを考慮し、かつ燃料電池の寿命にわたって確実に動作できるようにするため、典型的にはかなりの追加量のPGM触媒が含まれる。典型的な分解プロセスは、PGM材料の損失または触媒活性表面積の損失に関連し、PGM粒子の溶解および腐食、オストワルド熟成によるPGM粒子成長、PGM粒子凝集、炭素質担体からのPGM粒子脱離、および炭素質担体の腐食を含む。
【0003】
小さいPGMナノ粒子は、燃料電池条件下で不安定なことが多く、表面対体積比が高いので溶解する傾向を有することがある。したがって、小さいPGMナノ粒子(例えば、約2~3nm未満)は、避けられることが多い。しかし、より大きい粒子を利用すると、PGMの量はより多くなり、それによってコストは上昇する。PGMの量を減少させるための提案された解決案は、PGMと非貴金属の合金化、PGMシェルにより被覆した非貴金属製コア材料のコアシェル構造、または、ナノ構造薄膜(NSTF)の形成を含む。合金化触媒は、最初は触媒活性の増強を示すが、非貴金属成分の溶解によって、合金化触媒は深刻な分解をきたすことがある。さらに、PGMおよびPGM合金触媒の最新式の合成技術は、典型的には湿式化学タイプバッチ合成に依存しているが、これは規模変更性に乏しく、典型的には、形状およびサイズの制御が複雑であり、かつ腐食、溶解および他の分解プロセスに対して脆弱であるナノ粒子が成長することになる。提案されたコアシェル構造は、厳しいPEM燃料電池条件下で、非貴金属製コア材料がシェルの表面に拡散し、溶解する傾向がある場合があるので、PGM合金触媒と同様の分解プロセスが問題となる。NSTFは、少ないPGM添加量で高い活性および高い安定性を提供し得るが、NSTFの形成は、特殊構造の担体も伴う。NSTFの場合では、PGMは、典型的には、非コンフォーマルコーティング技術である物理蒸着(PVD)により適用されるので、担体構造は独特な「ジグザグ」構成に限られる。さらに、NSTFは、ウィスカー状構造であるため深刻な水管理の問題があり、それにより、低温PEM燃料電池を動作させるのは実現困難になる。
【0004】
こうした背景の下で、本開示の実施形態を開発する必要性が生じた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
一部の実施形態では、方法は、(1)基材を官能化して、官能化基材を得るステップ;および(2)原子層堆積により触媒を官能化基材上に堆積させて、官能化基材を被覆する触媒の薄膜を形成するステップを含む。
【0006】
本方法の一部の実施形態では、基材は触媒担体である。
【0007】
本方法の一部の実施形態では、基材は多孔質伝導性材料である。
【0008】
本方法の一部の実施形態では、基材を官能化するステップは、プラズマ処理、オゾン処理、酸処理、または過酸化物処理を基材に適用することを含む。
【0009】
本方法の一部の実施形態では、プラズマ処理を適用することは、水素プラズマ、酸素プラズマ、または窒素プラズマを適用することを含む。
【0010】
本方法の一部の実施形態では、触媒を堆積させるステップは、
a)官能化基材を収容する堆積チャンバに前駆体を導入して、触媒の材料を官能化基材上に堆積させること;および
不動態化ガスを堆積チャンバに導入して、材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと;ならびに
b)a)を複数回繰り返して、触媒の薄膜を形成することを含む。
【0011】
本方法の一部の実施形態では、触媒を堆積させるステップは、
a)官能化基材を収容する堆積チャンバに第1の前駆体を導入して、第1の前駆体が官能化基材上に吸着されるようにすること;および
堆積チャンバに第2の不動態化前駆体を導入して、官能化基材上に吸着された第1の前駆体と反応させて、官能化基材上に堆積された触媒の材料を得、かつ材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと;ならびに
b)a)を複数回繰り返して、触媒の薄膜を形成することを含む。
【0012】
さらなる実施形態では、方法は、(1)基材上に結合層を堆積させて、結合層コート基材を得るステップ;および(2)原子層堆積により触媒を結合層コート基材上に堆積させて、結合層コート基材を被覆する触媒の薄膜を形成するステップを含む。
【0013】
本方法の一部の実施形態では、基材は触媒担体である。
【0014】
本方法の一部の実施形態では、基材は多孔質伝導性材料である。
【0015】
本方法の一部の実施形態では、結合層を堆積させるステップは、原子層堆積により行われる。
【0016】
本方法の一部の実施形態では、結合層は、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、または半金属炭化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
本方法の一部の実施形態では、触媒を堆積させるステップは、
a)結合層コート基材を収容する堆積チャンバに前駆体を導入して、触媒の材料を結合層コート基材上に堆積させること;および
堆積チャンバに不動態化ガスを導入して、材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと;ならびに
b)a)を複数回繰り返して、触媒の薄膜を形成することを含む。
【0018】
本方法の一部の実施形態では、触媒を堆積させるステップは、
a)結合層コート基材を収容する堆積チャンバに第1の前駆体を導入して、第1の前駆体
が結合層コート基材上に吸着されるようにすること;および
堆積チャンバに第2の不動態化前駆体を導入して、結合層コート基材上に吸着された第1の前駆体と反応させて、結合層コート基材上に堆積させた触媒の材料を得、かつ材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと;ならびに
b)a)を複数回繰り返して、触媒の薄膜を形成することを含む。
【0019】
追加の実施形態は、先述の実施形態のいずれかの方法により得られる構造体を対象とする。
【0020】
一部の実施形態では、担持触媒は、(1)触媒担体;および(2)触媒担体を被覆する触媒の薄膜を含み、薄膜による触媒担体の表面被覆率は、少なくとも80%であり、薄膜は、原子層1層から原子層5層の範囲の平均厚さを有する。
【0021】
担持触媒の一部の実施形態では、薄膜の平均厚さは、原子層1層から原子層3層の範囲である。
【0022】
担持触媒の一部の実施形態では、触媒担体は炭素質担体である。
【0023】
一部の実施形態では、担持触媒は、薄膜と触媒担体との間に配置された結合層をさらに含む。
【0024】
担持触媒の一部の実施形態では、結合層は、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、または半金属炭化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
担持触媒の一部の実施形態では、触媒は白金族金属を含む。
【0026】
さらなる実施形態では、燃料電池は、(a)カソード電気触媒層;(b)アノード電気触媒層;および(c)カソード電気触媒層とアノード電気触媒層との間に配置されたポリマー性イオン伝導膜を含み、カソード電気触媒層またはアノード電気触媒層のうちの少なくとも1つは、先述の実施形態のいずれかの担持触媒を含む。
【0027】
さらなる実施形態では、燃料電池は、(a)第1のガス拡散層;(b)第2のガス拡散層;および(c)第1のガス拡散層と第2のガス拡散層との間に配置されたポリマー性イオン伝導膜を含み、第1のガス拡散層または第2のガス拡散層のうちの少なくとも1つは、先述の実施形態のいずれかの担持触媒を含む。
【0028】
さらなる実施形態では、ガス拡散層は、(1)多孔質伝導性材料;および(2)多孔質伝導性材料を被覆する触媒の薄膜を含む。
【0029】
ガス拡散層の一部の実施形態では、多孔質伝導性材料は、カーボンクロスまたはカーボンペーパーを含む。
【0030】
一部の実施形態では、ガス拡散層は、薄膜と多孔質伝導性材料との間に配置された結合層をさらに含む。
【0031】
ガス拡散層の一部の実施形態では、結合層は、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、または半金属炭化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0032】
ガス拡散層の一部の実施形態では、触媒は白金族金属を含む。
【0033】
さらなる実施形態は、先述の実施形態のいずれかのガス拡散層を含む燃料電池を対象とする。
【0034】
本開示の他の態様および実施形態も想定される。先述の要旨および以下の詳細な説明は、本開示をいずれの具体的な実施形態にも制約することを意図しておらず、本開示の一部の実施形態を説明することを意図しているにすぎない。
【0035】
本開示の一部の実施形態の性質および目的をよりよく理解するために、以下の詳細な説明を添付の図面と合わせて参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1。左パネルでは触媒を堆積する前に基材を官能化し、右パネルでは触媒を堆積する前に基材上に結合層を堆積した、基材上に触媒の薄膜を形成する概略プロセスフロー。
【0037】
【
図2】
図2。左パネルでは不動態化処理をしていない原子層堆積、中央パネルでは不動態化前駆体の使用を組み込んだ原子層堆積、および右パネルでは不動態化プロセスガスの使用を組み込んだ原子層堆積の概略プロセスフロー。
【0038】
【
図3】
図3。左パネルでは不動態化処理をしていない原子層堆積、中央パネルでは不動態化前駆体の使用を組み込んだ原子層堆積、および右パネルでは不動態化プロセスガスの使用を組み込んだ原子層堆積の概略プロセスフロー。
【0039】
【
図4】
図4。左パネルでは触媒の薄膜が官能化触媒担体を被覆する、右パネルでは触媒の薄膜が結合層コート触媒担体を被覆する、担持触媒の構造の概略図。
【0040】
【
図5】
図5。ガス拡散層として使用できる多孔質伝導性材料を被覆する触媒の薄膜の構造の概略図。
【0041】
【
図6】
図6。担持触媒を含む、ガス拡散層の構造の概略図。
【0042】
【
図7】
図7。本明細書で開示されている担持触媒を組み込むPEM燃料電池の概略図。
【0043】
【
図8】
図8は、本明細書で開示されている触媒の構造体を組み込むPEM燃料電池の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
説明
本開示の実施形態は、PEM燃料電池を含めた燃料電池用の高度に安定かつ添加量がきわめて少ない触媒のための、実質的に連続したPGM(またはPGMを含む合金もしくは他の多元素材料)の薄膜を形成する改善されたプロセス、ならびに得られる、基材を被覆する薄膜の構造体を対象とする。実質的に連続した触媒の薄膜の形成によって、ナノ粒子形態の触媒と比較して高い安定性がもたらされるが、これは、非常に分解および腐食しやすい目立った表面欠陥、例えばコーナーおよびエッジが実質的に存在しないこと、ならびに薄膜が、ナノ粒子に影響を及ぼす分解プロセス、例えばオストワルド熟成および粒子凝集を実質的に免れていることの結果である。原子層堆積の使用により、触媒の薄膜は、厚さを減少させて、非常にコンフォーマルに堆積できる。薄膜の厚さが減少すると、少ない添加量で触媒を効率的に使用でき、さらに、薄膜における触媒の表面原子の曝露が増加し
て、質量活性が高くなる。さらに、原子層堆積は、高い表面積、または高いアスペクト比の基材でさえも、湿式化学タイプバッチ合成と比較して、より高い規模変更性をもたらし、コンフォーマルなコーティングが得られる。さらに、触媒の堆積前の基材の官能化、および基材上における結合層の堆積のいずれか、またはその両方により、触媒の薄膜は、特殊構造の担体を必要とせずに、様々な基材上に形成できる。一部の実施形態では、触媒の薄膜は、炭素質担体または他の触媒担体上に形成することができ、他の実施形態では、触媒の薄膜は、追加の触媒担体を必要とせずに、ガス拡散層上に直接形成できる。
【0045】
図1は、左パネルでは触媒を堆積する前に基材を官能化し、右パネルでは触媒を堆積する前に基材上に結合層を堆積した、基材上に触媒の薄膜を形成する概略プロセスフローである。一部の実施形態では、基材は、触媒担体、例えば炭素含有担体もしくは炭素質担体、例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、カーボンナノリボン、グラファイト、グラフェンシート、カーボンブラック、伝導性カーボンブラック、黒鉛化カーボン、活性炭など、または他の炭素質ナノ粒子、あるいは例えば別の非炭素系担体、例えば金属酸化物担体、金属窒化物担体、金属炭化物担体、または他のセラミック担体である。他の実施形態では、基材は、ガス拡散層として使用できる多孔質伝導性材料、例えばカーボンクロス、カーボンペーパー、または他の炭素質もしくは非炭素系の繊維性材料である。他のタイプの基材が、結合層の適切な選択または官能化により使用できる。
【0046】
図1の左パネルを参照すると、プロセスフローは、基材を官能化して、官能化基材を得るステップ、続いて触媒を官能化基材上に堆積させるステップを含む。基材の官能化を行って、固着基または官能基を基材の表面に導入して、基材上に堆積される触媒の前駆体との化学結合を増強または促進する。一部の実施形態では、基材は、官能化の前に、固着基を実質的に欠き、触媒の堆積に対して実質的に不活性なことがある。例えば、純粋なグラフェンシートの基底面は、PGM、例えば白金(Pt)の原子層堆積に対して実質的に不活性なことがあり、純粋なグラフェンシート上にPtの原子層堆積を行うことにより、シートの縁上にPtナノ粒子が形成され得る。グラフェンシートの官能化は、例えば、触媒の前駆体との化学結合を促進するsp
3-混成炭素(純粋なグラフェンシートにおけるsp
2-混成炭素の代わり)の形成で表されるように、基底面上に欠陥サイトの導入を伴うことがある。他の実施形態では、基材は、官能化の前にいくらかの固着基を含み、基材の官能化は、追加の固着基を導入して、基材の表面全体にわたって固着基の密度をより高くし、均一性をより高くして、実質的に連続した触媒の薄膜の、後続の形成を促進する。基材の官能化は、プラズマ処理、例えば水素プラズマ、酸素プラズマ、または窒素プラズマを適用することにより行ってもよく、例えば、水素含有固着基(例えば、水素化して-C-H基を導入する)、酸素含有固着基(例えば、-C-O-部分もしくはカルボニル部分を含有する基)、窒素含有固着基、またはそのような基の組合せの形成をもたらし得る。プラズマ処理の代わりに、またはそれと組み合わせて、基材の官能化は、オゾン処理、例えば酸(例えば、硝酸煮沸を使用した酸化性の酸処理)、塩基を使用した湿式化学処理、過酸化物処理、もしくは他の反応性化合物での処理により、または熱処理により行ってもよい。
【0047】
図1の左パネルをさらに参照すると、触媒を官能化基材上に堆積させるステップは、化学蒸着、特に原子層堆積により行われる。触媒の原子層堆積は、一部の実施形態では不動態化処理なしで、また、他の実施形態では不動態化処理ありで行ってよい。
【0048】
図2は、左パネルでは不動態化処理をしていない原子層堆積を用い、中央パネルでは不動態化前駆体を使用し、右パネルでは不動態化ガスを使用する、触媒の原子層堆積の概略プロセスフローである。
図2は、単一元素材料、例えば、単一のPGMとしての触媒の堆積を例証するが、二元元素材料、三元元素材料、または他の多元元素材料の堆積も本開示
に包含され、以下でさらに説明される。原子層堆積のプロセスフローは、第1の原子層堆積サイクルを行って、材料を、堆積チャンバ内で保持した基材上に堆積させ、続いて、第2の原子層堆積サイクルを行って、材料を基材上に堆積させ、続いて、第3の原子層堆積サイクルを行って、材料を基材上に堆積させることなどを含み、必要量の材料が堆積するまで続ける。
【0049】
図2の左パネルにおけるプロセスフローを参照すると、各原子層堆積サイクルを行うステップは、基材、または基材の一部を、堆積される材料を含有する第1の前駆体を含む堆積ガス、および第2の酸化前駆体を含む堆積ガスへ、連続的に曝露することを含む。単一元素材料の場合では、例えば、第1の前駆体は、PGMを含有する前駆体、例えばPGMが有機リガンドと配位している有機金属化合物であってよく、第2の酸化前駆体は、酸素、オゾン、または酸素プラズマであってよい。例えば、Ptの具体的な場合では、第1の前駆体は、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金または別のPtを含有する有機金属化合物であってもよい。堆積は、Ptに加えて、他のPGM、例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、およびイリジウム(Ir)、ならびに他の貴金属、例えば銀(Ag)および金(Au)に関しても行ってよい。第1の原子層堆積サイクル中、第1の前駆体をチャンバに導入すると、第1の前駆体は、第1の前駆体の分子、第1の前駆体の分子の残基、またはその両方の組合せの形態で基材に吸着され、第2の酸化前駆体をチャンバに導入すると、吸着された第1の前駆体と第2の酸化前駆体との間の反応が生じて、吸着された第1の前駆体に含まれるリガンドが遊離し、それにより、基材上に堆積された材料が残る。基材上における固着基(官能化により導入される)は、より高い密度かつより均一な、第1の前駆体の基材への吸着を促進する。一部の実施形態では、基材上における固着基は、吸着された第1の前駆体と反応して、直接的に、または酸素もしくは窒素原子などの1個もしくは複数の介在原子を介して間接的に、基材の炭素原子と吸着された第1の前駆体に含まれる金属原子との間の結合または連結を形成してもよい。第2の還元前駆体、例えば水素または水素プラズマは、第2の酸化前駆体の代わりに、またはそれと組み合わせて使用してもよい。各前駆体の導入に続いて除去作業を行って、反応生成物およびあれば未反応の前駆体を、例えば排気または不活性担体ガスでのパージにより除去してよい。
【0050】
図2の右パネルにおいてプロセスフローを参照すると、第1の原子層堆積サイクルを含む各原子層堆積サイクルにおける前駆体の導入の後であって後続の原子層堆積サイクルにおいて前駆体を導入する前に、不動態化ガスをチャンバに導入する。不動態化ガスは、第1の前駆体と既に堆積させた材料との間の吸着エネルギーを調整または変化させて、この吸着エネルギーを有利ではなくし、その結果、後続の第1の前駆体の吸着が、既に堆積された材料ではなく基材の空き領域の被覆に対して優先的になるかまたは促進されるようにするように働く。このようにして、不動態化ガスを使用すると、基材に沿った第1の前駆体の分散が増強し、基材に沿って堆積させた材料の被覆が増強し、より均一になり、被覆に対する制御が可能になる。一部の実施形態では、不動態化ガスの基準は、以下の1つまたは複数を含む:1)堆積させた材料における吸着能力;2)基材と比較して、堆積させた材料に対してより高い吸着傾向を呈する、またはより強い吸着を示す;3)不動態化ガスが、堆積させた材料に吸着された後で、中間体化学種を形成する;および4)第1の前駆体の中間体化学種への吸着エネルギーは、約-10kJ/molを超える(例えば負が小さい、またはより正)(または約-0.104eVを超える)、例えば約-5kJ/molもしくはそれを超える(または約-0.052eVもしくはそれを超える)、約0kJ/molもしくはそれを超える(または約0eVもしくはそれを超える)、または約10kJ/molもしくはそれを超える(または約0.104eVもしくはそれを超える)、あるいは第1の前駆体の中間体化学種への吸着エネルギーは、第1の前駆体の基材への吸着エネルギーより大きい。例えば、Ptまたは別の単一元素材料の場合では、不動態化ガスは、一酸化炭素(CO)であってもよい。COに加えて、上記の基準を満たす他の不
動態化ガス、例えばアンモニア(NH
3)、一酸化窒素(NO)、およびメタン(CH
4)を使用できる。プロセス温度は、不動態化ガスの脱着を抑制するように制御できる。例えば、CO、または別の不動態化ガスの場合では、基材の温度は、約50℃~約250℃、約80℃~約200℃、または約100℃~約150℃の範囲になるように制御できる。
【0051】
次に
図2の中央パネルにおけるプロセスフローを参照すると、各原子層堆積サイクルを行うステップは、基材、または基材の一部を、堆積させる材料を含有する第1の前駆体を含む堆積ガス、および第2の不動態化前駆体を含む堆積ガスへ、連続的に曝露することを含む。中央パネルにおけるプロセスフローのある特定の態様は、右パネルについて上で説明されたものと同様に行ってよく、そのような態様は繰り返さない。ここで、不動態化前駆体は、基材に吸着された第1の前駆体と反応して、吸着された第1の前駆体に含まれるリガンドを遊離させること、ならびに、第1の前駆体と既に堆積させた材料との間の吸着エネルギーを調整または変化させて、この吸着エネルギーを有利ではなくし、その結果、後続の第1の前駆体の吸着が、既に堆積された材料ではなく基材の空き領域の被覆に対して優先的になるかまたは促進されるようにすることの2つの機能を果たす。このようにして、不動態化前駆体を使用すると、基材に沿った第1の前駆体の分散が増強し、基材に沿って堆積させた材料の被覆が増強し、より均一になり、被覆に対する制御が可能になる。一部の実施形態では、不動態化前駆体の基準は、以下の1つまたは複数を含む:1)第1の前駆体と反応して中間体化学種を形成する能力;および2)第1の前駆体の中間体化学種への吸着エネルギーが、約-10kJ/mol超(例えば負が小さい、またはより正)(または約-0.104eVを超える)、例えば約-5kJ/molもしくはそれを超える(または約-0.052eVもしくはそれを超える)、約0kJ/molもしくはそれを超える(または約0eVもしくはそれを超える)、または約10kJ/molもしくはそれを超える(または約0.104eVもしくはそれを超える)、あるいは第1の前駆体の中間体化学種への吸着エネルギーは、第1の前駆体の基材への吸着エネルギーより大きい。一部の実施形態では、不動態化前駆体は、不動態化前駆体と第1の前駆体の反応後に第1の前駆体上に吸着されたままである不動態化リガンドまたは別の不動態化化学部分を含む。例えば、不動態化部分は、上で説明された不動態化ガスのものに相当する、またはそれと同様の化学構造を有し得る。
【0052】
上で説明された単一元素材料の堆積に加えて、原子層堆積は、多元元素材料の堆積にも適用してよい。
図3は、左パネルでは不動態化処理をしていない原子層堆積を用い、中央パネルでは不動態化前駆体を使用し、右パネルでは不動態化ガスを使用する、触媒の原子層堆積の概略プロセスフローである。
図3は、例として二元元素材料としての触媒の堆積を例証するが、三元元素材料または他の多元元素材料の堆積も本開示に包含される。原子層堆積のプロセスフローは、第1の原子層堆積サイクルを行って、材料を、堆積チャンバ内で保持した基材上に堆積させ、続いて、第2の原子層堆積サイクルを行って、材料を基材上に堆積させ、続いて、第3の原子層堆積サイクルを行って、材料を基材上に堆積させることなどを含み、必要量の材料が堆積するまで続ける。
図3におけるプロセスフローのある特定の態様は、
図2について上で説明されたものと同様に行ってよく、そのような態様は繰り返さない。
【0053】
図3の左パネルにおけるプロセスフローを参照すると、各原子層堆積サイクルを行うステップは、基材、または基材の一部を、堆積させる材料の第1の元素を含有する第1の前駆体を含む堆積ガス、堆積させる材料の第2の元素を含有する第2の前駆体を含む堆積ガス、および第3の酸化前駆体を含む堆積ガスへ、連続的に曝露することを含む。二元元素材料の場合では、例えば、第1の前駆体および第2の前駆体は、異なる金属を含有する前駆体、例えば、それぞれの金属が有機リガンドと配位している異なる有機金属化合物であってよい。第1の元素はPGMであってよく、第2の元素は異なるPGM、または他の貴
金属、または他の遷移金属、例えばスカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)もしくは亜鉛(Zn)であってよい。第1の原子層堆積サイクル中、第1の前駆体をチャンバに導入すると、第1の前駆体が基材に吸着され、第2の前駆体をチャンバに導入すると、第2の前駆体が基材に吸着され、第3の酸化前駆体をチャンバに導入すると、吸着された第1の前駆体と、吸着された第2の前駆体と第3の酸化前駆体との間の反応が生じて、吸着された第1の前駆体および吸着された第2の前駆体に含まれるリガンドが遊離し、それにより、基材に堆積された材料が残る。第3の還元前駆体、例えば水素または水素プラズマは、第3の酸化前駆体の代わりに、またはそれと組み合わせて使用できる。また、第2の前駆体は、第1の前駆体に対して酸化または還元作用を行うことができ、その結果、別々の酸化前駆体または還元前駆体を省略できる。各前駆体の導入に続いて除去作業を行って、反応生成物およびあれば未反応の前駆体を、例えば排気または不活性担体ガスでのパージにより除去してもよい。
【0054】
図3の右パネルにおけるプロセスフローを参照すると、各原子層堆積サイクルにおける前駆体の導入の後であって後続の原子層堆積サイクルにおいて前駆体を導入する前に、不動態化ガスをチャンバに導入する。不動態化ガスは、第1の前駆体と既に堆積させた材料との間、および第2の前駆体と既に堆積させた材料との間の吸着エネルギーを調整または変化させて、そのような吸着エネルギーを有利ではなくし、その結果、後続の第1の前駆体および第2の前駆体の吸着が、既に堆積された材料ではなく基材の空き領域の被覆に対して優先的になるかまたは促進されるようにするように働く。このようにして、不動態化ガスを使用すると、基材に沿った第1の前駆体および第2の前駆体の分散が増強し、基材に沿って堆積させた材料の被覆が増強し、より均一になり、被覆に対する制御が可能になる。2つまたはそれより多くの異なる不動態化ガス、例えば、堆積させた材料の第1の元素に優先的に吸着して、第1の元素に関する吸着エネルギーを調整または変化させる第1の不動態化ガス、および堆積させた材料の第2の元素に優先的に吸着して、第2の元素に関する吸着エネルギーを調整または変化させる第2の不動態化ガスを、使用できることも想定される。
【0055】
次に
図3の中央パネルにおけるプロセスフローを参照すると、各原子層堆積サイクルを行うステップは、基材、または基材の一部を、堆積させる材料の第1の元素を含有する第1の前駆体を含む堆積ガス、堆積させる材料の第2の元素を含有する第2の前駆体を含む堆積ガス、および第3の不動態化前駆体を含む堆積ガスへ、連続的に曝露することを含む。ここで、不動態化前駆体は、基材に吸着された第1の前駆体および第2の前駆体と反応して、吸着された第1の前駆体、および吸着された第2の前駆体に含まれるリガンドを遊離することと、第1の前駆体と既に堆積させた材料との間、および第2の前駆体と既に堆積させた材料との間の吸着エネルギーを調整または変化させて、そのような吸着エネルギーを有利ではなくし、その結果、後続の第1の前駆体および第2の前駆体の吸着が、既に堆積された材料ではなく基材の空き領域の被覆に対して優先的になるかまたは促進されることの、2つの機能を果たす。このようにして、不動態化前駆体を使用すると、基材に沿った第1の前駆体および第2の前駆体の分散が増強し、基材に沿って堆積させた材料の被覆が増強し、より均一になり、被覆に対する制御が可能になる。2つまたはそれより多くの異なる不動態化前駆体、例えば、基材に吸着された第1の前駆体と優先的に反応して、第1の元素に対する吸着エネルギーを調整または変化させる第1の不動態化前駆体、および基材に吸着された第2の前駆体と優先的に反応して、第2の元素に対する吸着エネルギーを調整または変化させる第2の不動態化前駆体を、使用できることも想定される。
【0056】
図1、詳細には
図1の右パネルを再度参照すると、プロセスフローは、基材上に結合層を堆積させて、結合層コート基材を得るステップと、続いて触媒を結合層コート基材上に堆積させるステップを含む。結合層は、安定性を改善するために、基材および触媒の両方
に強く結合する材料を含む。一部の実施形態では、結合層は、結合層の表面上に固着基または官能基を含んで、基材上に堆積させる触媒の前駆体との化学結合を増強または促進させる。結合層によって、構造的効果(例えば格子ひずみ)および電子的効果(例えば、d-バンドセンターシフト)のため、さらなる利点、例えば触媒活性の増大がもたらされ得る。結合層の材料の例は、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、半金属炭化物、および他のセラミックを含む。結合層を堆積させるステップは、化学蒸着、特に原子層堆積により行われる。二元元素材料の場合では、例えば、各原子層堆積サイクルを行うステップは、基材、または基材の一部を、堆積させる材料の第1の元素を含有する第1の前駆体を含む堆積ガス、堆積させる材料の第2の元素を含有する第2の前駆体を含む堆積ガス、および第3の酸化前駆体を含む堆積ガスへ、連続的に曝露することを含む。例えば、第1の元素は、金属であっても半金属であってもよく、第2の元素は、酸素、窒素、または炭素であってよい。第3の還元前駆体は、第3の酸化前駆体の代わりに、またはそれと組み合わせて使用することができる。また、第2の前駆体は、第1の前駆体に対する酸化または還元作用を行ってよく、その結果、別々の酸化前駆体または還元前駆体を省略できる。結合層の原子層堆積のある特定の態様は、
図3について上で説明されたものと同様に行ってよく、そのような態様は繰り返さない。結合層の平均厚さは、約1nm~約100nmまたはそれを超える、例えば約1nm~約50nm、約1nm~約40nm、約1nm~約30nm、約1nm~約20nm、または約1nm~約10nmの範囲であってよい。
【0057】
結合層を堆積させるステップに続いて、触媒を結合層コート基材上に堆積させるステップは、化学蒸着、特に原子層堆積により行われる。触媒の原子層堆積は、一部の実施形態では不動態化処理なしで行ってよく、他の実施形態では不動態化処理ありで行ってよい。触媒の原子層堆積のある特定の態様は、
図2および3について上で説明されたものと同様に行ってよく、そのような態様は繰り返さない。
図1は、基材の官能化、および代替としての結合層の堆積を例証するが、他の実施形態では、いずれの処理も行ってよい。例えば、基材は、官能化して、官能化基材を得、続いて結合層を官能化基材上に堆積させ、続いて触媒を堆積させることができる。
【0058】
図1の左および右パネルの両方を参照すると、原子層堆積での触媒の堆積により、高度に安定かつ触媒添加量がきわめて少ない実質的に連続した触媒の薄膜が形成される。不動態化処理をしない原子層堆積と比較すると、不動態化を組み込んだ原子層堆積により、堆積をより大幅に制御して、堆積させた触媒の被覆の増強を達成し、単一の原子層または数層の原子層の厚さまで薄くすることができる。不動態化処理を組み込むことで、プロセスフローは、触媒の自己制限的な単原子層(またはほぼ単層の原子層)の堆積を示し、さもなければ基材の必須な被覆の最小厚さ(典型的には数層の原子層)を制約し得る核生成傾向を克服する。さらに、不動態化を組み込んだプロセスフローは、厚さをより大幅に制御するための自己飽和性、および高い表面積または高いアスペクト比の表面に材料をコンフォーマルに堆積させる能力を含む、原子層堆積の利点を依然として保つ。
【0059】
一部の実施形態では、生じた触媒の薄膜は、少なくとも約30%、例えば少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約98.5%、または少なくとも約99%、および約100%までの基材の表面被覆率を示し、平均厚さは、原子層約1層から原子層約5層、原子層約1層から原子層約4層、原子層約1層から原子層約3層、原子層約1層から原子層約2層、または原子層約1層から原子層約1.5層の範囲であり、表面粗さ(二乗平均平方根)は平均厚さの約80%以下であり、例えば約70%以下であり、約60%以下であり、約50%以下であり、約40%以下であり、約30%以下であり、約20%以下であり、約15%以下であり、または約10%以下である。薄膜の表面被覆率は、撮像技術を使用して、例えば透過電子顕微鏡(
TEM)もしくは走査電子顕微鏡(TEM)画像、後方散乱分光法、X線光電子分光(XPS)、または誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を使用して評価することができる。単一元素材料の場合では、原子層1層は、元素の原子の単一層の厚さに相当し得る。第1の元素がa%であり第2の元素がb%であるモル組成を有する二元元素材料の場合では、原子層1層は、(a/100)×(第1の元素の原子の大きさ)+(b/100)×(第2の元素の原子の大きさ)により得られる、有効な大きさを有する原子の単一層の厚さに相当し得る。三元元素材料または他の多元元素材料に関しては、モル組成に応じた同様の加重平均を使用して、原子層1層の厚さを特定できる。
【0060】
図4は、左パネルにおいて触媒400の薄膜が官能化触媒担体402を被覆し、右パネルにおいて触媒404の薄膜が結合層408でコートされた触媒担体406を被覆する、担持触媒の構造の概略図である。ここでは、触媒担体402または406は、約5nm~約500nmもしくはそれを超える、例えば約10nm~約400nm、約10nm~約300nm、約10nm~約200nm、約10nm~約150nm、または約10nm~約100nmの範囲の大きさを有し、約3もしくはそれ未満、または約2もしくはそれ未満のアスペクト比を有するナノ粒子、例えば炭素質ナノ粒子の形態である。他のタイプの触媒担体、例えばカーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、カーボンナノリボン、グラファイト、およびグラフェンシート、ならびに非炭素系担体を使用してよい。
図4の左パネルを参照すると、触媒担体402が官能化されて、官能化触媒担体402上に堆積させた触媒400との結合が促進される。
図4の右パネルを参照すると、結合層408は、触媒担体406を被覆し、触媒404の薄膜と触媒担体406との間に配置される。
【0061】
図5は、ガス拡散層として使用できる多孔質伝導性材料を被覆する触媒の薄膜の構造の概略図である。ここでは、多孔質伝導性材料は、炭素質繊維性材料、例えばカーボンクロスまたはカーボンペーパーの形態であるが、他の炭素質または非炭素系繊維性材料を使用してよい。
図5を参照すると、炭素質繊維性材料の個々の繊維500は、触媒502の薄膜によりコンフォーマルに被覆され、一部の実施形態では、繊維500は、官能化されて、触媒502との結合を促進でき、他の実施形態では、結合層が堆積されて、繊維500をコンフォーマルに被覆することができ、触媒502の薄膜と繊維500との間に配置できる。
【0062】
図6は、炭素質繊維性層600、例えばカーボンクロスまたはカーボンペーパーを含むが、他の炭素質または非炭素系繊維性材料を使用できるガス拡散層の構造の概略図である。ガス拡散層は、メソ多孔質層602も含む。炭素質繊維性層600は、メソ多孔質層602により被覆される。メソ多孔質層602は、ポリマー性結合剤およびフッ素化ポリマーと共に担持触媒604を含んで、水の輸送を制御する。担持触媒604は、
図4で関連して説明されているように実装され得る。
【0063】
燃料電池の様々な用途は、本明細書で開示されている触媒の構造から利点を得ることができる。例は、
【0064】
1)燃料電池車両、例えば自動車、バス、トラック、およびオートバイ;
【0065】
2)定置用燃料電池用途;および
【0066】
3)家電製品の燃料電池を含む。
【0067】
様々なタイプの燃料電池が、本明細書で開示されている触媒の構造から利点を得ることができる。例は、とりわけH2-PEM燃料電池、メタノール燃料、およびエタノール燃料電池を含む。
【0068】
図7は、本明細書で開示されている担持触媒を組み込むPEM燃料電池の概略図である。燃料電池は、カソード電気触媒層702とアノード電気触媒層704との間に配置されたポリマー性イオン伝導膜700を含み、これらは、燃料電池の膜電極アセンブリを共に構成する。燃料電池は、電導性フローフィールドプレート706および708も含み、これは、バイポーラプレートであっても、またはユニポーラプレートであってもよい。ガス拡散層710および712も、フローフィールドプレート706および708と電気触媒層702および704との間に入る。カソード電気触媒層702およびアノード電気触媒層704のいずれか、またはその両方は、本明細書で開示されている担持触媒を含み得る。例えば、担持触媒は、カソード電気触媒層702中に組み込むとカソード側で酸素還元反応を促進でき、アノード電気触媒層704中に組み込むとアノード側で水素酸化反応も促進できる。
【0069】
図8は、本明細書で開示されている触媒の構造を組み込む別のPEM燃料電池の概略図である。燃料電池は、ガス拡散層802と804との間に配置されたポリマー性イオン伝導膜800を含み、これを、続いて、バイポーラプレートであっても、またはユニポーラプレートであってもよい導電性フローフィールドプレート806と808との間に配置される。カソード側でのガス拡散層802およびアノード側でのガス拡散層804のいずれか、またはその両方は、多孔質伝導性材料を被覆する触媒、または担持触媒の薄膜を含み得る。例えば、触媒は、ガス拡散層802中に組み込むと、カソード側で酸素還元反応を促進でき、ガス拡散層804中に組み込むと、アノード側で水素酸化反応も促進することができる。ガス拡散層802または804中に触媒を直接形成することにより、または触媒を組み込むことにより、触媒担体を含む追加の層は省略することができる。
【0070】
本明細書で使用される場合、単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈からそうでないと明らかに指示されない限り複数の指示対象を含み得る。したがって、例えば、物体への言及は、文脈からそうでないと明らかに指示されない限り複数の物体を含み得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「実質的に」、「実質的な」および「約」という用語は、小さい差異について記載するため、および説明するために使用される。事象または状況と共に使用される場合、これらの用語は、事象または状況が正確に発生する事例、および事象または状況が近似して発生する事例を指し得る。例えば、数値と共に使用される場合、この用語は、その数値の±10%未満もしくはそれと同等、例えば±5%未満もしくはそれと同等、±4%未満もしくはそれと同等、±3%未満もしくはそれと同等、±2%未満もしくはそれと同等、±1%未満もしくはそれと同等、±0.5%未満もしくはそれと同等、±0.1%未満もしくはそれと同等、または±0.05%未満もしくはそれと同等の範囲の差異を包含し得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、「サイズ」という用語は、物体の特性寸法を指す。したがって、例えば、球形である物体のサイズは、物体の直径を指し得る。非球形である物体の場合では、物体のサイズは、対応する球形物体の直径を指すことができ、対応する球形物体は、非球形物体のものと実質的に同一である、特定の誘導可能な、または測定可能な一連の特性を呈するか、またはそれを有する。一連の物体が特定のサイズを有すると言及される場合、物体が、特定のサイズの付近のサイズ分布を有し得ることが想定される。したがって、本明細書で使用される場合、一連の物体のサイズは、サイズ分布の典型的なサイズ、例えば平均サイズ、中央値サイズ、またはピークサイズを指し得る。
【0073】
一部の実施形態の説明での、物体が別の物体「上に(おける)(on)」は、前者の物体が、直接、後者の物体上にある(例えば、物理的に接触する)場合、および1つまたは
複数の介在する物体が、前者の物体と後者の物体との間に位置する場合を包含し得る。
【0074】
さらに、量、比および他の数値は、本明細書において範囲形式で提示されることがある。このような範囲形式は、便利さと簡潔さのために使用されていることは、理解されるはずであり、範囲の限界として明示的に規定されている数値を含むが、その範囲内に包含される個々の数値または部分範囲のすべても、各数値および部分範囲が明示的に規定されているごとく含むことは柔軟に理解されるべきである。例えば、約1~約200の範囲は、明示的に記載されている約1および約200という限度を含み、例えば約2、約3、および約4などの個々の値、ならびに例えば約10~約50、約20~約100などの部分範囲も含むと理解されるべきである。
【0075】
本開示は、その特定の実施形態について記載されているが、添付の特許請求の範囲で規定されている本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてよく、均等物で置換されてもよいことが、当業者により理解されるべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、方法、操作(複数可)を本開示の目的、趣旨および範囲に適合させるように、多くの改変が行われてもよい。そのような改変はいずれも、本明細書に添付される特許請求の範囲内であると意図されている。とりわけ、ある特定の方法が、特定の順序で行われる特定の操作について記載されていることがあるが、これらの操作は、本開示の教示から逸脱することなく等価な方法を形成するために、組み合わせ、細分し、または順序を変更してもよいと理解される。したがって、本明細書で具体的に示されない限り、操作の順序およびグループ分けは本開示の限定ではない。
【0076】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
基材を官能化して、官能化基材を得るステップ、および
原子層堆積により触媒を前記官能化基材上に堆積させて、前記官能化基材を被覆する前記触媒の薄膜を形成するステップ
を含む、方法。
(項2)
前記基材が触媒担体である、上記項1に記載の方法。
(項3)
前記基材が多孔質伝導性材料である、上記項1に記載の方法。
(項4)
前記基材を官能化するステップが、プラズマ処理、オゾン処理、酸処理、または過酸化物処理を前記基材に適用することを含む、上記項1に記載の方法。
(項5)
前記プラズマ処理を適用することが、水素プラズマ、酸素プラズマ、または窒素プラズマを適用することを含む、上記項4に記載の方法。
(項6)
前記触媒を堆積させるステップが、
1)前記官能化基材を収容する堆積チャンバに前駆体を導入して、前記触媒の材料を前記官能化基材上に堆積させること、および
前記堆積チャンバに不動態化ガスを導入して、前記材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと、ならびに
2)1)を複数回繰り返して、前記触媒の前記薄膜を形成すること
を含む、上記項1に記載の方法。
(項7)
前記触媒を堆積させるステップが、
1)前記官能化基材を収容する堆積チャンバに第1の前駆体を導入して、前記第1の前駆体が前記官能化基材上に吸着されるようにすること、および
前記堆積チャンバに第2の不動態化前駆体を導入して、前記官能化基材上に吸着された前記第1の前駆体と反応させて、前記官能化基材上に堆積された前記触媒の材料を得、かつ前記材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと、ならびに
2)1)を複数回繰り返して、前記触媒の前記薄膜を形成すること
を含む、上記項1に記載の方法。
(項8)
基材上に結合層を堆積させて、結合層コート基材を得るステップ、および
原子層堆積により触媒を前記結合層コート基材上に堆積させて、前記結合層コート基材を被覆する前記触媒の薄膜を形成するステップ
を含む、方法。
(項9)
前記基材が触媒担体である、上記項8に記載の方法。
(項10)
前記基材が多孔質伝導性材料である、上記項8に記載の方法。
(項11)
前記結合層を堆積させるステップが、原子層堆積により行われる、上記項8に記載の方法。
(項12)
前記結合層が、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、または半金属炭化物のうちの少なくとも1つを含む、上記項8に記載の方法。
(項13)
前記触媒を堆積させるステップが、
1)前記結合層コート基材を収容する堆積チャンバに前駆体を導入して、前記触媒の材料を前記結合層コート基材上に堆積させること、および
不動態化ガスを前記堆積チャンバに導入して、前記材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと、ならびに
2)1)を複数回繰り返して、前記触媒の前記薄膜を形成すること
を含む、上記項8に記載の方法。
(項14)
前記触媒を堆積させるステップが、
1)前記結合層コート基材を収容する堆積チャンバに第1の前駆体を導入して、前記第1の前駆体が前記結合層コート基材上に吸着されるようにすること、および
前記堆積チャンバに第2の不動態化前駆体を導入して、前記結合層コート基材上に吸着された前記第1の前駆体と反応させて、前記結合層コート基材上に堆積された前記触媒の材料を得、かつ前記材料の表面を不動態化すること
を含む、原子層堆積サイクルを行うこと、ならびに
2)1)を複数回繰り返して、前記触媒の前記薄膜を形成すること
を含む、上記項8に記載の方法。
(項15)
上記項1から14のいずれか一項に記載の方法により得られる構造体。
(項16)
触媒担体、および
前記触媒担体を被覆する触媒の薄膜
を含む担持触媒であって、前記薄膜による前記触媒担体の表面被覆率は、少なくとも80%であり、前記薄膜は、原子層1層から原子層5層の範囲の平均厚さを有する、担持触媒。
(項17)
前記薄膜の前記平均厚さが、原子層1層から原子層3層の範囲である、上記項16に記載の担持触媒。
(項18)
前記触媒担体が炭素質担体である、上記項16に記載の担持触媒。
(項19)
前記薄膜と前記触媒担体との間に配置された結合層をさらに含む、上記項16に記載の担持触媒。
(項20)
前記結合層が、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、または半金属炭化物のうちの少なくとも1つを含む、上記項19に記載の担持触媒。
(項21)
前記触媒が白金族金属を含む、上記項16に記載の担持触媒。
(項22)
カソード電気触媒層、
アノード電気触媒層、および
前記カソード電気触媒層と前記アノード電気触媒層との間に配置されたポリマー性イオン伝導膜
を含む燃料電池であって、前記カソード電気触媒層または前記アノード電気触媒層のうちの少なくとも1つが、上記項16から21のいずれか一項に記載の担持触媒を含む、燃料電池。
(項23)
第1のガス拡散層、
第2のガス拡散層、および
前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層との間に配置されたポリマー性イオン伝導膜
を含む燃料電池であって、前記第1のガス拡散層または前記第2のガス拡散層のうちの少なくとも1つが、上記項16から21のいずれか一項に記載の担持触媒を含む、燃料電池。
(項24)
多孔質伝導性材料、および
前記多孔質伝導性材料を被覆する触媒の薄膜
を含む、ガス拡散層。
(項25)
前記多孔質伝導性材料が、カーボンクロスまたはカーボンペーパーを含む、上記項24に記載のガス拡散層。
(項26)
前記薄膜と前記多孔質伝導性材料との間に配置された結合層をさらに含む、上記項24に記載のガス拡散層。
(項27)
前記結合層が、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、または半金属炭化物のうちの少なくとも1つを含む、上記項26に記載のガス拡散層。
(項28)
前記触媒が白金族金属を含む、上記項24に記載のガス拡散層。
(項29)
上記項24から28のいずれか一項に記載のガス拡散層を含む、燃料電池。