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特許7573515メルトブローン不織布の製造方法、及びメルトブローン不織布
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】メルトブローン不織布の製造方法、及びメルトブローン不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/033 20120101AFI20241018BHJP
   D01D 5/08 20060101ALI20241018BHJP
   D04H 3/005 20120101ALI20241018BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
D04H3/033
D01D5/08 C
D04H3/005
D04H3/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021512092
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014392
(87)【国際公開番号】W WO2020203932
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019068822
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】永峰 和也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 武和
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-260153(JP,A)
【文献】特開2000-238156(JP,A)
【文献】特開2015-092038(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110057(WO,A1)
【文献】特開2016-098458(JP,A)
【文献】特開2009-074193(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031286(WO,A1)
【文献】特開平08-144166(JP,A)
【文献】特開2001-248057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
D01D1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面それぞれの超音波の反射強度の値が、互いに相違し、
大きい方の前記反射強度の値が、小さい方の前記反射強度の値の1.2倍以上3.0倍以下であり、
前記反射強度が、下記測定条件:
超音波送受信機と不織布表面との距離:155mm
周波数:360kHz
測定温度:22℃
印加電圧:500V
波数:5(バースト波)
シャープ比:100%
測定点数:25mm×40mmの範囲内で100点以上
に従って測定される、100点以上の測定値の平均値であり、
厚さが0.1mm以上0.4mm以下であり、
見かけ密度が50kg/m以上350kg/m以下であり、
パームポロメーターにより測定される平均孔径が2.5μm以上5.0μm以下であり、
電子顕微鏡画像から求められた100本以上の繊維の繊維径の平均値である平均繊維径が0.5μm以上3.0μm以下であり、
ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、又はポリカーボネート系樹脂からなる、メルトブローン不織布。
【請求項2】
メルトブローン不織布に対して前記メルトブローン不織布の厚さ方向にスキャンを行い、前記メルトブローン不織布中の厚さ方向に対して垂直な面における繊維分布のデータを取得するX線CT解析の結果から求められた、一方の面の表面から15%の領域の平均繊維占有率FO1と、他方の面の表面から15%の領域の平均繊維占有率FO2と、メルトブローン不織布の繊維の平均占有率AFOとから、下記式:
占有率変化率(%)=(│FO1-FO2│)/AFO×100
に基づいて算出された占有率変化率が10%以上であり、
厚さが0.1mm以上0.4mm以下であり、
見かけ密度が50kg/m以上350kg/m以下であり、
パームポロメーターにより測定される平均孔径が2.5μm以上5.0μm以下であり、
電子顕微鏡画像から求められた100本以上の繊維の繊維径の平均値である平均繊維径が0.5μm以上3.0μm以下であり、
ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、又はポリカーボネート系樹脂からなる、メルトブローン不織布。
【請求項3】
前記メルトブローン不織布に対して前記メルトブローン不織布の厚さ方向にスキャンを行い、前記メルトブローン不織布中の厚さ方向に対して垂直な面における繊維分布のデータを取得するX線CT解析の結果から求められた、一方の面の表面から15%の領域の平均繊維占有率FO1と、他方の面の表面から15%の領域の平均繊維占有率FO2と、メルトブローン不織布の繊維の平均占有率AFOとから、下記式:
占有率変化率(%)=(│FO1-FO2│)/AFO×100
に基づいて算出された占有率変化率が10%以上である、請求項に記載のメルトブローン不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルトブローン不織布の製造方法、及びメルトブローン不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の孔を有するノズルを設置したスピニングダイヘッドから溶融した樹脂を吐出する、樹脂吐出工程と、
ノズル孔からスピニングダイヘッドに対向して設けられたコンベアに向かって流れる熱風を、ノズル孔に向けて吹きつけ、吐出された溶融状態の樹脂を線維化させて繊維を形成する、繊維形成工程と、
熱風の気流により、コンベア上に前記繊維を堆積させてメルトブローン不織布を形成する、不織布形成工程と、を含む所謂メルトブローン法により、メルトブローン不織布が製造されている。
【0003】
このような方法によれば、極細繊維からなり、比表面積の大きな不織布を安価且つ容易に製造することができる。かかる方法で製造されるメルトブローン不織布について、コンベア上に堆積したままの状態では繊維同士の接着が弱く、強度の点で問題がある。このため、メルトブローン不織布は、所謂カレンダー加工と呼ばれる、カレンダーロールによる熱圧縮加工により強度を高められた状態で使用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平06-136656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カレンダー加工を施されたメルトブローン不織布は、強度こそ高いものの、その表面が押しつぶされることにより通気性が低下してしまう。通気性は、メルトブローン不織布をフィルター用途等に用いる場合に重要な性能である。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、カレンダー加工が施されなくても、良好な強度を有するメルトブローン不織布を製造できるメルトブローン不織布の製造方法と、当該製造方法により製造され得るメルトブローン不織布とを提供することとを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(1)~(8)を提供する。
(1)複数の孔を有するノズルを設置したスピニングダイヘッドから溶融した樹脂を吐出する、樹脂吐出工程と、
ノズル孔からスピニングダイヘッドに対向して設けられたコンベアに向かって流れる熱風を、ノズル孔に向けて吹きつけ、吐出された溶融状態の樹脂を線維化させて繊維を形成する、繊維形成工程と、
熱風の気流により、コンベア上に繊維を堆積させてメルトブローン不織布を形成する、不織布形成工程と、を含み、
不織布形成工程後に、カレンダー加工が行われず、
熱風の温度が、樹脂の融点以上、(融点+100℃)以下であり、
熱風の風量が、1000NL/分/m以上7000NL/分/m以下であり、
ノズル孔1つ当たりの樹脂の吐出量が、0.006cm/分以上0.3cm/分以下であり、
ノズル孔における樹脂の温度が、樹脂の融点以上、(融点+100℃)以下であり、
ノズル孔と、コンベアとの間の最短距離が、10mm以上75mm以下であり、
ノズル孔と、コンベアとの間の雰囲気の温度が、110℃以上160℃以下である、メルトブローン不織布の製造方法。
(2)樹脂が、ポリエステル系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂である、(1)に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
(3)メルトブローン不織布の両面それぞれの超音波の反射強度の値が、互いに相違し、
大きい方の反射強度の値が、小さい方の反射強度の値の1.2倍以上3.0倍以下であり、
反射強度が、下記測定条件:
超音波送受信機と不織布表面との距離:155mm
周波数:360kHz
測定温度:22℃
印加電圧:500V
波数:5(バースト波)
シャープ比:100%
測定点数:25mm×40mmの範囲内で100点以上
に従って測定される、100点以上の測定値の平均値である、(1)又は(2)に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
(4)両面それぞれの超音波の反射強度の値が、互いに相違し、
大きい方の反射強度の値が、小さい方の反射強度の値の1.2倍以上3.0倍以下であり、
反射強度が、下記測定条件:
超音波送受信機と不織布表面との距離:155mm
周波数:360kHz
測定温度:22℃
印加電圧:500V
波数:5(バースト波)
シャープ比:100%
測定点数:25mm×40mmの範囲内で100点以上
に従って測定される、100点以上の測定値の平均値である、メルトブローン不織布。
(5)厚さが0.1mm以上0.4mm以下である、(4)に記載のメルトブローン不織布。
(6)見かけ密度が50kg/m以上350kg/m以下である、(4)又は(5)に記載のメルトブローン不織布。
(7)パームポロメーターにより測定される平均孔径が2.5μm以上5.0μm以下である、(4)~(6)のいずれか1つに記載のメルトブローン不織布。
(8)電子顕微鏡画像から求められた100本以上の繊維の繊維径の平均値である平均繊維径が0.5μm以上3.0μm以下である、(4)~(7)のいずれか1つに記載のメルトブローン不織布。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カレンダー加工が施されなくても、良好な強度を有するメルトブローン不織布を製造できるメルトブローン不織布の製造方法と、当該製造方法により製造され得るメルトブローン不織布とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】メルトブローン不織布の製造装置の構成の概略を示す図である。
図2】メルトブローン不織布の製造装置が備えるスピニングダイヘッドの概略を示す斜視図である。
図3】X線CTにより分析された、実施例2及び実施例4のメルトブローン不織布の厚さ方向の位置と、繊維の占有率との関係を示すグラフである。
図4】X線CTにより分析された、比較例6及び比較例7のメルトブローン不織布の厚さ方向の位置と、繊維の占有率との関係を示すグラフである。
図5】X線CT分析により取得された、実施例2のメルトブローン不織布の厚さ方向中央部におけるグレースケール画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪メルトブローン不織布の製造方法≫
以下、メルトブローン不織布の製造方法について、必要に応じて図面を参照しつつ説明する。図1に、メルトブローン不織布の製造装置についての概略を示す。図2に、メルトブローン不織布の製造装置が備えるスピニングダイヘッドの概略を、斜視図として示す。
【0012】
メルトブローン不織布の製造方法は、
複数のノズル孔11を有するスピニングダイヘッド10から溶融した樹脂を吐出する、樹脂吐出工程と、
ノズル孔11からスピニングダイヘッド10に対向して設けられたコンベア12に向かって流れる熱風を、ノズル孔11に向けて吹きつけ、吐出された溶融状態の樹脂を線維化させて繊維を形成する、繊維形成工程と、
熱風の気流により、コンベア上に繊維を堆積させてメルトブローン不織布を形成する、不織布形成工程と、を含む方法である。
また、不織布形成工程後に、カレンダー加工が行われない。
【0013】
<樹脂吐出工程>
樹脂吐出工程では、複数のノズル孔11を有するスピニングダイヘッド10から溶融した樹脂を吐出する。
【0014】
スピニングダイヘッド10に溶融した樹脂を供給する方法は特に限定されない。典型的な方法としては、ホッパー100から供給される樹脂を、押出機101を通過させることにより溶融させ、溶融した樹脂を混練機104を通じて、スピニングダイヘッド10に供給する方法が挙げられる。
【0015】
押出機101の種類は、樹脂を溶融させることが可能である限り特に限定されない。押出機101の種類として、例えば単軸押出機、同方向噛合型2軸押出機、同方向非噛合型2軸押出機、異方向非噛合型2軸押出機、多軸押出機等の各種押出機を用いることができる。その中でも、単軸押出機が押出機内における樹脂滞留部が少ないため押出中における樹脂の熱劣化を防ぐことが可能になること、また設備費が安価になることから好ましい。また、残存揮発物が発生する樹脂を使用する場合は押出機101がベント構造を有してもよい。
【0016】
押出機101に投入される樹脂の原料の形態としては、固体状態の樹脂が好ましい。より好ましくはペレット形状の樹脂が使用される。ペレット形状の樹脂は、一般に押出機101の原料供給口に取り付けられたホッパー100を介して押出機101内に供給される。
【0017】
押出機101に供給される樹脂は、樹脂の加水分解や酸化劣化を生じさせないために事前に加熱乾燥されるのが好ましい。樹脂中の水分量としては200質量ppm以下が好ましい。乾燥条件としては、樹脂にもよるが100℃で3時間以上が好ましい。
【0018】
乾燥の際には乾燥される雰囲気中の酸素を取り除いたり、樹脂中の酸素を除去したりすることが好ましい。乾燥時の雰囲気は、窒素等の不活性ガス雰囲気であるのが好ましい。
乾燥は必要乾燥時間、樹脂消費時間を鑑みて、押出機101にペレットを供給するホッパー100に乾燥機構を設けるホッパー型乾燥機を用いる方法や、ホッパー100に樹脂を供給する前に乾燥機を用いて乾燥し、吸湿しないようホッパー100に樹脂を供給する方法や、又はその両方を用いる方法等を好適に使用することができる。
【0019】
これらの方法のうち、ホッパー型乾燥機を用いる方法が押出機101に樹脂が供給される直前まで、樹脂の乾燥状態を保つことができるため好ましい。
ホッパー100前にも乾燥機を用いることでホッパー100前の乾燥機で高温で迅速に乾燥し、ホッパー型乾燥機において水分が入らない様に除湿雰囲気とすることが、低温でも水分が混入しないためさらに好ましい。
なお、ホッパー100において過度に高温とするとブロッキングの問題等が生じるおそれがある。このため、具体的には、ホッパー100前の乾燥機で120℃で3時間以上樹脂を乾燥させた後、ホッパー型乾燥機内の温度を40~100℃とすることで、樹脂の水分量を抑制と押出安定性とを両立しやすい。
【0020】
押出機101について、例えば、単軸押出機等で使用するスクリュ(不図示)としては、ベント無し又は有りの押出機用の圧縮比2~3程度の一般的なフルフライト構成のスクリュを用いることができる。なお、未溶融物が存在しないようにバリアフライト等の特殊な混練機構を採用することもできる。
【0021】
樹脂吐出工程では、スピニングダイヘッド10が備えるそれぞれのノズル孔11から、樹脂の吐出量が0.006cm/分以上0.3cm/分以下であるように、溶融した樹脂が吐出される。上記の吐出量は、1つのノズル孔11からの吐出量である。
1つのノズル孔11からの樹脂の吐出量は、樹脂の安定的な押し出しが容易である点と、良好に結晶化した強度に優れる繊維を形成しやすい点とから、0.01cm/分以上0.2cm/分以下が好ましく、0.02cm/分以上0.1cm/分以下がより好ましい。
【0022】
また、樹脂吐出工程では、ノズル孔11における樹脂の温度が、樹脂の融点以上、(融点+100℃)以下であるように、溶融した樹脂が吐出される。
このため、押出機101の、シリンダー温度、樹脂滞留時間、押出量等の押出条件は、吐出量、及び吐出される樹脂の温度についての上記条件が満たされるように調整される。
続く、繊維形成工程において、吐出された樹脂を良好に繊維化しやすいことから、ノズル孔11における樹脂の温度は、樹脂の融点以上、(融点+70℃)以下が好ましい。
【0023】
押出機101等の溶融手段により得られた溶融樹脂は、好ましくは、ギアポンプ102を用いてスピニングダイヘッドに供給される。ギアポンプ102を用いることで押出機101における吐出量変動を吸収し、供給定量性が著しく向上し、スピニングダイヘッド10が備えるノズル孔11からの樹脂の吐出も安定する。
ギアポンプ102により定量的に供給される溶融樹脂、又は押出機101から直接供給される溶融樹脂は、例えば管状の流路を通りスピニングダイヘッド10に供給され、スピニングダイヘッド10が備える複数のノズル孔11から吐出される。
【0024】
ギアポンプ102からダイまでの樹脂流路中、又はギアポンプ102等を介さない場合は押出機101等の溶融手段からスピニングダイヘッド10までの樹脂流路中に、フィルター103のような異物除去装置を設けることが好ましい。
これにより、原料樹脂中に含まれていた異物や押出機やギアポンプ102で発生した異物をトラップし、不織布中への異物の混入を低減することが可能となる。
【0025】
異物除去装置としてのフィルター103としては、スクリーンメッシュ、プリーツ型フィルター、リーフディスク型フィルター等を用いることができる。これらの中では、リーフディスク型フィルターが濾過精度、濾過面積、耐圧性能、異物によるフィルター目詰まりまでの時間の点等から好ましい。フィルター103の濾材としては、例えば、金属繊維の焼結不織布を用いることができる。
【0026】
ギアポンプ102から吐出される溶融樹脂は、フィルター103を介するか又は介さず、スピニングダイヘッド10へ供給される。ギアポンプ102から、又はフィルター103からの溶融樹脂のスピニングダイヘッド10への供給は、例えば、混練機104を通じて行われる。
【0027】
上記のような方法でスピニングダイヘッド10へ供給された溶融樹脂は、図2に示されるようにスピニングダイヘッド10が備える複数のノズル孔11から吐出される。
複数のノズル孔11の、スピニングダイヘッド10における配置は、所望する特性のメルトブローン不織布2を製造できる限り特に限定されない。典型的には、複数のノズル孔11は、後述するコンベア12上に形成されるメルトブローン不織布2の幅方向と同一の方向に、適切な間隔をあけて列を形成性するように配置される。ノズル孔11間の間隔は、例えば、0.10mm以上1.0mm以下が好ましく、0.25mm以上0.75mm以下がより好ましい。ノズル孔11間の間隔は、均等であってもよく、均等でなくてもよいが、均質な不織布を製造しやすい点で均等であるのが好ましい。
【0028】
各ノズル孔11の開口の形状は特に限定されないが、通常は円形、略円形、楕円形、略楕円形等である。各ノズル孔11の開口径は、特に限定されず、不織布を構成する繊維の繊維径に応じて適宜選択される。
【0029】
樹脂吐出工程で用いられる、メルトブローン不織布2の原料である樹脂は、従来よりメルトブローン不織布の原料として使用されている樹脂であれば特に限定されない。
樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ1-ブテン、及びポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類から選択される1種以上の(メタ)アクリレートモノマーの重合体が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリメチル(メタ)アクリレートが好ましい。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PNE)、及びポリ乳酸(PLA)等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、ナイロン6,12、及びMXDナイロン等が挙げられる。
【0031】
これらの樹脂の中では、メルトブローン不織布を製造する際の加工性が良好である点でポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましく、より好ましくはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0032】
<繊維形成工程>
繊維形成工程では、ノズル孔11からスピニングダイヘッド10に対向して設けられたコンベア12に向かって流れる熱風を、ノズル孔11に向けて吹きつけ、吐出された溶融状態の樹脂を線維化させて繊維を形成する。
【0033】
ノズル孔11付近に熱風が吹きつけられることによって、ノズル孔11から吐出された溶融状態の樹脂が熱風により延伸され繊維化される。
また、熱風は、ノズル孔11付近から、スピニングダイヘッド10に対向して設けられたコンベア12に向かって流れる。このため、熱風によって延伸された繊維は、続く不織布形成工程において、熱風の気流にのってコンベア12上に堆積してメルトブローン不織布2を形成する。
【0034】
熱風を吹きつける方法は特に限定されない。典型的には、コンプレッサー(不図示)により加圧された空気や窒素等の不活性気体を、ヒーター(不図示)により加熱することにより熱風を発生させることができる。
また、コンベア12の進行方向側と、コンベア12の進行方向逆側の熱風を、ノズル孔11付近で衝突させることにより、ノズル孔11付近に向かう熱風の気流の方向を、ノズル孔11からコンベア12に向かう方向に変えることができる。
【0035】
熱風の温度は、樹脂の融点以上、(融点+100℃)以下であり、(融点+30℃)以上、(融点+90℃)以下が好ましく、(融点+40℃)以上、(融点+80℃)以下がより好ましい。
熱風の温度が上記の範囲内であると、ノズル孔11から吐出される樹脂の延伸を良好に行いやすく、続く不織布形成工程において、コンベア12上で繊維同士を良好に熱融着させやすい。
【0036】
熱風の風量は、1000NL/分/m以上7000NL/分/m以下であり、2000NL/分/m以上6800NL/分/m以下が好ましく、3000NL/分/m以上6500NL/分/m以下がより好ましい。
熱風の風量が上記の範囲内であると、ノズル孔11から吐出される樹脂の延伸を良好に行いやすく、続く不織布形成工程において、コンベア12上で繊維同士を良好に熱融着させやすい。
【0037】
<不織布形成工程>
不織布形成工程では、繊維形成工程で生じさせた熱風の気流により、コンベア12上に繊維を堆積させてメルトブローン不織布2を形成する。
【0038】
不織布形成工程において、ノズル孔11とコンベア12との間の最短距離は、10mm以上75mm以下であるように設定される。
また、ノズル孔11とコンベア12との間の雰囲気の温度が、110℃以上160℃以下であるように、不織布形成工程が実施される。
ノズル孔11とコンベア12との間の最短距離を上記の範囲内とすることと、ノズル孔11とコンベア12との間の雰囲気の温度を上記の範囲内とすることとにより、コンベア12表面付近での、樹脂の繊維の熱融着性を、機械的性質が良好なメルトブローン不織布を形成可能である良好な範囲内とすることができる。
その結果、カレンダー加工が施されなくても、良好な強度を有するメルトブローン不織布2を製造できる。また、カレンダー加工が施されない場合、メルトブローン不織布の通気性が良好である。
【0039】
ノズル孔11とコンベア12との間の雰囲気の温度を上記の範囲内の温度とする方法は特に限定されない。例えば、ノズル孔11とコンベア12との間の空間を、温度の低下を防ぐ目的で壁により囲ってもよい。かかる壁としては、ノズル孔11とコンベア12との間の空間への外気の流入を防ぐことができればよい。かかる壁の材質としては、ガラスウール、ロックウール、多孔質セラミック等の耐熱性の断熱材であってもよい。また、ノズル孔11とコンベア12との間の空間を加熱するようにヒーターを設けてもよい。熱風温度と、樹脂温度との関係で、ノズル孔11とコンベア12との間の空間の温度が高くなりすぎる場合、ノズル孔11とコンベア12との間の空間を冷却するようにクーラーを設けてもよい。
【0040】
ノズル孔11とコンベア12との間の最短距離は、メルトブローン不織布の厚さや強度を勘案して、10mm以上75mm以下の範囲内で適宜設定される。ノズル孔11とコンベア12との間の最短距離が長いほど、得られるメルトブローン不織布2について、厚さが増し、見かけ密度と引張強度とが低下する傾向がある。
ノズル孔11とコンベア12との間の最短距離が75mmを超えると、得られるメルトブローン不織布の見かけ密度が著しく小さくなり、カレンダー加工を行わなければ、メルトブローン不織布についての所望する強度を保てない。
【0041】
ノズル孔11とコンベア12との間の雰囲気の温度は、上記の通り110℃以上160℃以下であり、115℃以上155℃以下が好ましく、125℃以上150℃以下がより好ましい。
ノズル孔11とコンベア12との間の雰囲気の温度は、例えば、以下の方法に従って測定することができる。具体的には、スピニングダイヘッド10の正面(製造されるメルトブローン不織布2の幅方向に平行な面)から2m離れた位置から、サーモグラフィーにより、ノズル孔11とコンベア12との間の雰囲気の温度を計測する。より具体的には、ノズル孔11とコンベア12との間の雰囲気についての、スピニングダイヘッド10の幅方向中央位置から幅方向に±250mm離れた範囲内における、不織布直上付近の任意の位置において、サーモグラフィーにより、実寸で2.5mm角に相当するピクセル100点の温度データを計測する。得られた100点の温度データの平均値を、ノズル孔11とコンベア12との間の雰囲気の温度とする。
【0042】
コンベア12の材質は、メルトブローン不織布2の製造に関する温同条件に対する耐熱性を有し、メルトブローン不織布2と過度に融着せず、メルトブローン不織布2を剥離可能な材質であれば特に限定されない。
また、コンベア12は通気性を有する材料で構成され、サクション(不図示)によりコンベア12のメルトブローン不織布が形成される面から、裏面に向けて、熱風の気流が吸引されるのが好ましい。そうすることで、コンベア12上での、樹脂からなる繊維の跳ね返りを防止しやすく、繊維同士が良好に融着したメルトブローン不織布2を形成しやすい。
【0043】
コンベア12は、ローラー13によって駆動され、コンベア12上に形成されたメルトブローン不織布2を巻取装置14へと搬送する。コンベア12の移動速度は、樹脂の吐出量を勘案したうえで、得られるメルトブローン不織布2の見かけ密度を考慮して適宜決定される。典型的には、コンベアの移動速度は、1.5m/分以上6.0m/分以下の範囲内である。巻取装置14により、不織布形成工程で形成されたメルトブローン不織布2はロール状に巻き取られる。
なお、メルトブローン不織布2は、所定の長さに切断され、ロール状の形態ではなく、シート状の形態で製品として回収されてもよい。
【0044】
以上説明した方法によれば、カレンダー加工が施されなくても、良好な強度を有するメルトブローン不織布2を製造できる。
不織布形成工程の後には、従来より不織布に対して行われる種々の処理、加工をメルトブローン不織布2に施すことができる。しかし、不織布形成工程後に、メルトブローン不織布2に対してカレンダー加工が行われない。カレンダー加工が行われる場合、メルトブローン不織布2の通気性が低下するためである。
【0045】
前述のメルトブローン不織布の製造方法により製造されるメルトブローン不織布2では、コンベア12上に接する面と、コンベア12上に接する面とは反対の面とで表面状態が異なる。
不織布において、超音波の反射強度は、表面の弾性率及び密度で決定される。メルトブローン不織布では、製造直後の不織布原反において表と裏とに差があるのが普通である。カレンダー加工によって不織布における表と裏との差が小さくなることは、少なくとも片面の弾性率及び密度が変化していることを表す。これが、カレンダー加工により通気性能が低下する理由であると考えられる。
【0046】
その結果、メルトブローン不織布2の両面について超音波の反射強度を測定する場合に、両面それぞれの超音波の反射強度の値が、互いに相違する。
具体的には、大きい方の反射強度の値が、小さい方の反射強度の値の1.2倍以上3.0倍以下であるのが好ましく、より好ましくは1.2倍以上2.5倍以下である。両面での超音波の反射強度の倍率が上記の範囲内であるメルトブローン不織布は、強度に優れるとともに、通気性にも優れる傾向がある。
【0047】
上記の超音波の反射強度は、下記測定条件に従って測定される100点以上の測定値の平均値である。なお、反射波が微弱である場合、必要に応じて出力信号に利得を設定してもよい。
(反射強度測定条件)
超音波送受信機と不織布表面との距離:155mm
周波数:360kHz
測定温度:22℃
印加電圧:500V
波数:5(バースト波)
シャープ比:100%
測定点数:25mm×40mmの範囲内で100点以上
【0048】
上記の所定の反射率の比を満たすメルトブローン不織布の厚さは、0.1mm以上0.4mm以下が好ましく、0.1mm以上0.3mm以下がより好ましい。メルトブローン不織布の厚さが上記の範囲内であると、メルトブローン不織布の安定した製造が容易であり、製布後に均質な不織布を得やすい。
【0049】
上記の所定の反射率の比を満たすメルトブローン不織布の見かけ密度は、50kg/m以上350kg/m以下が好ましく、100kg/m以上350kg/m以下がより好ましい。メルトブローン不織布の見かけ密度が上記の範囲内であると、メルトブローン不織布において、良好な強度と、良好な通気性能とを両立しやすい。
【0050】
上記の所定の反射率の比を満たすメルトブローン不織布のパームポロメーターにより測定される平均孔径は、2.5μm以上5.0μm以下が好ましく、2.5μm以上4.6μm以下がより好ましい。メルトブローン不織布の平均孔径が上記の範囲内であると、メルトブローン不織布において、良好な通気性能と、良好な捕集性能とを両立しやすい。
【0051】
上記の所定の反射率の比を満たすメルトブローン不織布について、電子顕微鏡画像から求められた100本以上の繊維の繊維径の平均値である平均繊維径が0.5μm以上3.0μm以下であるのが好ましく、0.5μm以上2.5μm以下であるのがより好ましい。
【0052】
上記の所定の反射率の比を満たすメルトブローン不織布のMD方向の引張強度は、2.0N/m以上15.0N/m以下が好ましく、3.0N/m以上10.0N/m以下がより好ましい。MD方向の引張弾性率は、100MPa以上400MPa以下が好ましく、120MPa以上350MPa以下がより好ましい。TD方向の引張強度は、2.0N/m以上8.0N/m以下が好ましく、2.5N/m以上6.0N/m以下がより好ましい。TD方向の引張弾性率は、50MPa以上200MPa以下が好ましく、70MPa以上130MPa以下がより好ましい。
引張強度、及び引張弾性率は、後述する実施例における測定方法に従って測定される値である。
MD方向は、メルトブローン不織布を製造する際に、メルトブローン不織布が移動する方向に沿った方向である。TD方向は、MD方向に対して垂直な方向である。
【0053】
また、メルトブローン不織布について、実施例において後述する方法に従って、メルトブローン不織布に対してメルトブローン不織布の厚さ方向にスキャンを行い、メルトブローン不織布中の厚さ方向に対して垂直な面における繊維分布のデータを取得するX線CT解析を行うことにより、メルトブローン不織布の厚さ方向の各位置における繊維の占有率が分かる。
上記のX線CT解析によれば、メルトブローン不織布について、一方の面の表面から15%の領域の平均繊維占有率FO1と、他方の面の表面から15%の領域の平均繊維占有率FO2と、メルトブローン不織布の繊維の平均占有率AFOとを算出することができる。
メルトブローン不織布について、厚さ方向に対して垂直な面における繊維占有率に勾配をもつことで、強度に優れるとともに、通気性にも優れる傾向がある。具体的には、下記式で算出される占有率変化率が10%以上であるのが好ましく、12%以上30%以下であるのがより好ましく、13%以上25%以下であるのがさらに好ましい。占有率変化率が上記の範囲内であるメルトブローン不織布は、強度に優れるとともに、通気性にも優れる傾向がある。
占有率変化率(%)=(│FO1-FO2│)/AFO×100
【0054】
以上説明したメルトブローン不織布は、前述の方法により容易に製造され得る。上記のメルトブローン不織布は、良好な強度と良好な通気性とを兼ね備えるため、フィルター用に好適に使用される。
より具体的には、上記のメルトブローン不織布は体外循環治療、抗体医薬品精製、遺伝子治療用のウイルス精製等に用いられるフィルターとして好ましく使用される。
【実施例
【0055】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
〔実施例1~4、及び比較例1~7〕
図1に示される構成のメルトブローン不織布の製造装置1を用いて、表1に記載の条件で幅600mmのメルトブローン不織布を製造した。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET、融点260℃)を用いた。使用した紡糸ノズルについて、ノズル孔径が0.25mmであり、孔間隔が0.25mmであり、孔数1200であった。コンベアの移動速度は、2.9m/分であった。
【0057】
実施例については、メルトブローン不織布の取得後にカレンダー加工を行わなかった。
比較例については、表1に記載のロール温度のカレンダーロールを用いて、ロール間クリアランス0.10~0.11mmの条件にて、メルトブローン不織布のカレンダー加工を行った。
【0058】
実施例1~4で得たメルトブローン不織布と、比較例1~7で得たカレンダー加工されたメルトブローン不織布とについて、厚さ、見かけ密度を測定した。また、以下の方法に従って、平均孔径、平均繊維径、変動係数、引張強度、引張弾性率、超音波反射強度、及び通気性の測定を行った。これらの測定結果を、表2~表4に記す。
【0059】
<平均孔径>
パームポロメーター(PMI社製)を用いて測定したミーン・フロー・ポアサイズを平均孔径として採用した。
【0060】
<平均繊維径、変動係数>
メルトブローン不織布の一部を試料として用い、走査電子顕微鏡観察を行った。得られた電子顕微鏡画像に基づき、無作為に選択した100本以上の繊維の直径を計測した。100以上の計測値の数平均値を平均繊維直径とした。繊維径の標準偏差を平均繊維径で除し、変動係数を求めた。
【0061】
<引張強度、引張弾性率>
メルトブローン不織布について、MD方向、TD方向のそれぞれについての、引張強度、及び引張弾性率を測定した。
MD方向は、メルトブローン不織布を製造する際に、メルトブローン不織布が移動する方向に沿った方向である。TD方向は、MD方向に対して垂直な方向である。
得られたメルトブローン不織布から、幅8mm、長さ40mmの試験片を切り出した。万能試験機(エー・アンド・デイ社製、RTG-1210)を用いて試験片の両端をチャックで固定し、チャックの間隔を20mm、引張速度を20mm/分として試験片を引張り、チャック間距離-荷重の関係をプロットし、以下の式に基づき、引張強度、及び引張弾性率をそれぞれ算出した。
引張強度(N/m)=(破断時の荷重)/試験片の断面積
引張弾性率(MPa)=(チャック間距離が試験開始前の0~2%伸びた状態の荷重変化/試験片の断面積)/(0~2%の伸び/試験片の初期長さ)
【0062】
<超音波反射強度>
メルトブローン不織布中の75mm×75mの領域において、下記測定条件に従って100点以上の超音波反射強度の測定値を取得した。100点以上の超音波反射強度の平均値を超音波反射強度とする。超音波反射強度の測定は、メルトブローン不織布の製造時にコンベア12に接触していた面と、ノズル孔11に対向していた面とについてそれぞれ行った。
【0063】
(反射強度測定条件)
超音波送受信機と不織布表面との距離:155mm
周波数:360kHz
測定温度:22℃
印加電圧:500V
波数:5(バースト波)
シャープ比:100%
測定点数:25mm×40mmの範囲内で100点以上
【0064】
具体的には、パルサレシーバー(ジャパンプローブ株式会社製、ULTRA SONIC RECEIVER JPR600C)に接続された超音波振動子(超音波送受信機)から超音波を送受信して、超音波反射強度の測定を行った。パルサレシーバーは、高速デジタライザー(ナショナルインスツルメンツ株式会社製、NI PIX-1033(シャーシ)、NI PIX-5114)に接続され、高速デジタライザーはデータ処理用のパーソナルコンピューターに接続された。
【0065】
<通気性>
実施例及び比較例で得られたメルトブローン不織布を、4枚又は8枚重ねて、面積642mmの通気面から空気300mLを567gの重量を加えて通過させて、300mLの空気全量の通過に要する時間(秒)を測定し、通気性の評価を行った。通気性の評価はガーレ式デンソメータ(TOYOSEIKI製)を用いた。
メルトブローン不織布について、メルトブローン不織布の製造時にコンベア12に接触していた面をA面とし、メルトブローン不織布のノズル孔11に対向していた面をB面とする場合に、A面同士、又はB面同士が接触しないように重ねられた。
また、空気はB面側から供給した。
実施例2、及び比較例1については、32枚重ねのメルトブローン不織布についても通気性の評価を行った。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
例えば、厚さと、見かけ密度と、平均孔径と、平均繊維径とが近い、実施例2のメルトブローン不織布と、比較例2、及び比較例3のメルトブローン不織布とを比較すると、実施例2のメルトブローン不織布の引張強度、及び引張弾性率が、カレンダー加工されていないにもかかわらず、比較例2、及び比較例3のメルトブローン不織布の引張強度、及び引張弾性率よりも同等か優れていることが分かる。
また、実施例2のメルトブローン不織布と、比較例2のメルトブローン不織布との比較によれば、カレンダー加工されていない実施例2のメルトブローン不織布は、カレンダー加工されている比較例2のメルトブローン不織布よりも通気性に優れていることが分かる。
【0071】
表4から、実施例のメルトブローン不織布における両面の超音波の反射強度の比は、カレンダー加工されていないことによって、いずれも1.2以上3.0以下であることが分かる。
また、表1~3から、ノズル孔-コンベア間距離が75mmを超える比較例1では、得られるメルトブローン不織布の見かけ比重が低く、また、メルトブローン不織布の強度が劣ることが分かる。
【0072】
〔実施例5、実施例6、及び比較例8~10〕
図1に示される構成のメルトブローン不織布の製造装置1を用いて、表5に記載の条件でメルトブローン不織布の製造を行った。樹脂としては、ポリプロピレン(PP、融点160℃)を用いた。
実施例5、実施例6、及び比較例8~10で得たメルトブローン不織布について、実施例1と同様に、厚さ、見かけ密度、平均孔径、平均繊維径、及び変動係数の測定を行った。これらの測定結果を、表2~表6に記す。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
実施例5及び実施例6のメルトブローン不織布について、実施例1と同様に両面の超音波の反射強度の比を測定したが、いずれも1.2以上3.0以下であった。
また、比較例8~比較例10のメルトブローン不織布は、ノズル孔-コンベア間距離が75mmを超える条件で製造されたため、見かけ密度が顕著に低い。このため、比較例8~比較例10のメルトブローン不織布は、カレンダー加工されなければ、所望する強度を担保出来ない。
【0076】
また、実施例2、実施例4、比較例6、及び比較例7のメルトブローン不織布について、X線CTによる解析行った。この解析により、メルトブローン不織布の厚さ方向の各位置における繊維の占有率が分かる。この解析結果のグラフを、図3、及び図4に示す。
図3、及び図4のグラフにおいて、厚さ方向(μm)の軸に関して、プラス側がメルトブローン不織布の厚さ方向におけるコンベア側の面に向いた方向である。また、マイナス側が、メルトブローン不織布の厚さ方向におけるノズル側の面に向いた方向である。
【0077】
X線CTによる解析は、具体的には下記の方法により行った。
X線CT装置としては、Xradia社製マイクロX線CTスキャナー(MicroXCT-400)を用いた。同装置により、メルトブローン不織布を厚さ方向にスキャンし、メルトブローン不織布における繊維の分布データを取得した。スキャンデータから、厚さ0.05mm間隔で、繊維の分布に関する2次元データを得た。次いで、得られた、2次元データをグレースケール化した。グレースケール化された画像の一例として、実施例2のメルトブローン不織布の厚さ方向中央部のグレースケール画像を図4に示す。グレースケール化された画像のデータから画素値を生成させた。得られた画素値に基づき、グレースケール画像について所定の2値化処理を行った。2値化されたグレースケール画像について、画像の全面積に対する繊維部分の面積の合計が占める比率(繊維の占有率(%))を求めた。
【0078】
以下、2値化処理について説明する。2値化処理を行うに際して、まずグレースケール化された画像について、輝度(8bit画像における256段階の諧調(0~255))毎の画素の分布についてのヒストグラムを求めた。得られた、輝度を横軸とするヒストグラムでは、2つのピークが存在する。得られたヒストグラムから、輝度の最大値Imaxと、輝度の最小値Iminと、輝度の平均値μを求めた。ImaxとIminとの間で、任意の閾値Tを選択した。閾値Tを境にして、ヒストグラムを、クラス1とクラス2との2つのクラスに分けた。クラス1とクラス2とは、それぞれ1つのピークを含む。クラス1についての分散σ と、平均μと、頻度nとを求めた。クラス2についての分散σ と、平均μと、頻度nとを求めた。
【0079】
次いで、以下の式よりクラス内分散σ と、クラス間分散σ とを求めた。
【数1】
【0080】
得られたクラス内分散σ と、クラス間分散σ とから下式により、分離度Sを求めた。
【数2】
【0081】
最大値Imaxと、最小値Iminとの間の全ての閾値Tに関して、上記の方法に従い分離度Sを求めた。分離度Sが最大となるときの閾値Tを、2値化法における閾値として採用した。
【0082】
下記表7に、上記のX線CT解析結果から求められた、メルトブローン不織布の厚さ方向の各位置での繊維占有率(%)の平均値(AFO)と、ノズル孔側の表面から15%の範囲内の繊維占有率の平均値(FO1)と、コンベア側の面の表面から15%の範囲内の繊維占有率の平均値(FO2)と、両面(各面の表面から15%)の繊維占有率の平均値の差(│(FO1-FO2│)と、下記式で算出される占有率変化率(%)とを記す。
占有率変化率(%)=(│FO1-FO2│)/AFO×100
【表7】
【0083】
前述の通り、強度に優れるとともに、通気性にも優れる実施例2、及び実施例4のメルトブローン不織布は、10%以上の高い占有率変化率を示す。
【符号の説明】
【0084】
1:メルトブローン不織布の製造装置
2:メルトブローン不織布
10:スピニングダイヘッド
11:ノズル孔
12:コンベア
13:ローラー
14:巻取装置
100:ホッパー
101:押出機
102:ギアポンプ
103:フィルター
104:混練機
図1
図2
図3
図4
図5