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7573516水溶性アジュバントおよびそれを含有する組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】水溶性アジュバントおよびそれを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 473/18 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241018BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241018BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241018BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20241018BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C07D473/18 CSP
A61K31/522
A61K9/107
A61K47/14
A61K47/44
A61K47/10
A61K47/02
A61K39/00 H
A61K38/08
A61K38/10
A61P35/00
A61K39/39
A61P37/04
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C07K14/47 ZNA
C07K7/08
C07K7/06
C07K19/00
C12N15/12
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2021512328
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2020015364
(87)【国際公開番号】W WO2020204173
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2019072911
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】坂 仁志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】今▲崎▼ 雄介
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/063903(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/157692(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/157704(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/078059(WO,A1)
【文献】特表2021-525724(JP,A)
【文献】特表2012-517428(JP,A)
【文献】国際公開第2018/204528(WO,A1)
【文献】特表2018-529717(JP,A)
【文献】CHAN, M. et al.,Synthesis and Characterization of PEGylated Toll Like Receptor 7 Ligands,Bioconjugate Chemistry,2011年,22(3),pp. 445-454,DOI 10.1021/bc1004813
【文献】STEINHAGEN, F. et al.,TLR-based immune adjuvants,Vaccine,2011年,29(17),pp. 3341-3355,doi: org/10.1016/j.vaccine.2010.08.002
【文献】CHAN, M. et al.,Synthesis and Immunological Characterization of Toll-Like Receptor 7 Agonistic Conjugates,Bioconjugate Chemistry,2009年,20(6),pp. 1194-1200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
C07K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、Xは、単結合または酸素原子を表し、
は、C1-6アルキル(該アルキルは、1個の1-6アルコキシで置換されていてもよい)を表し、
は、水素原子またはハロゲンを表し、
mは、を表し、
Aは、ベンゼン環またはピリジン環を表し、
Lは、-C(O)NR -または-CH NR -(ここで、R は、水素原子、C 1-6 アルキルまたはY (Y は、-(CH CH O) -R (R は水素原子を表し、pは、3~20の整数を表す)を表す)を表す)を表し、
は、-(CHCHO)-R(Rは水素原子を表し、nは3~20の整数を表す)を表す]で示される化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項2】
が酸素原子である、請求項1に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項3】
が単合である、請求項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項4】
がC1-6アルキルある、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項5】
が、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコシキで置換されてい)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項6】
が水素原子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項7】
がハロゲンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項8】
がベンゼン環である、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項9】
がピリジン環である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項10】
Lが、-CH NR (ここで、R は、水素原子、C1-6アルキルまたはY(Yは、-(CHCHO)-R(R は水素原子を表し、pは320の整数を表す)を表す)を表す)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項11】
pが4を表す、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項12】
Lが、-CHNR-(ここで、Rは、水素原子または1-6アルキルを表す)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項13】
が、-(CHCHO)-R(nは、4~10の整数を表す)であり、R が水素原子である、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項14】
式(2):
【化3】
または
式(3):
【化4】
[式中、Rは、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい)であり、
Lは、-CHNR-(ここで、Rは、水素原子またはC1-6アルキルを表す)であり、
は、-(CHCHO)-R(Rは水素原子を表し、
nは4~10の整数を表す)を表す]で表される、請求項1に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【請求項15】
以下の化合物群から選択される、請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[5-(16-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-2-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[4-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)フェニル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン、
6-アミノ-9-{[4-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)フェニル]メチル}-2-(2-メトキシエトキシ)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-({6-[13-ヒドロキシ-2-(2-{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)-5,8,11-トリオキサ-2-アザトリデカン-1-イル]ピリジン-3-イル}メチル)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン、および
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(31-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14,17,20,23,26,29-ノナオキサ-2-アザヘントリアコンタン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~15のいずれかに記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有するワクチンアジュバント。
【請求項18】
エマルション製剤である請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
エマルション製剤が、油中水型エマルションである請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
エマルション製剤が、(1)オレイン酸エチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、グリセリン、及びリン酸二水素ナトリウム、又は(2)Montanide ISA 51 VGを含有する請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
脂質製剤である請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項22】
脂質製剤が、リン脂質を含むリポソーム製剤である請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
脂質製剤が、ステロール類を含むリポソーム製剤である請求項21または22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ステロール類が、コレステロールである請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
リポソーム製剤が、無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩、糖類、緩衝剤、酸化防止剤、及びポリマー類からなる群から選択される1以上の添加物を含むリポソーム製剤である請求項2224のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項26】
更に、腫瘍抗原を含む、請求項16、1825のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
腫瘍抗原が、腫瘍抗原ペプチドである、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
腫瘍抗原ペプチドが、式(4):
【化5】
[式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。]
のアミノ酸配列で表されるペプチドまたはその製薬学的に許容される塩、および
配列番号3:WAPVLDFAPPGASAYGSL
のアミノ酸配列で表されるペプチドまたはその製薬学的に許容される塩の組み合わせである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
式(1):
【化6】
[式中、Xは、単結合または酸素原子を表し、
は、C1-6アルキル(該アルキルは、1個の1-6アルコキシで置換されていてもよい)を表し、
は、水素原子またはハロゲンを表し、
mは、を表し、
Aは、ベンゼン環またはピリジン環を表し、
Lは、-C(O)NR -または-CH NR -(ここで、R は、水素原子、C 1-6 アルキルまたはY (Y は、-(CH CH O) -R (R は水素原子を表し、pは、3~20の整数を表す)を表す)を表す)を表し、
は、-(CHCHO)-R(Rは水素原子を表し、nは3~20の整数を表す)を表す。]で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩を含む、癌ワクチンのワクチンアジュバント。
【請求項30】
a)請求項1に記載の化合物又はその薬学上許容し得る塩、もしくは請求項1に記載の化合物又はその薬学上許容し得る塩を含有する医薬組成物;および
b)抗原または抗原を含有する医薬組成物
を含有するキット。
【請求項31】
a)請求項1の式(1)で示される化合物又はその薬学上許容し得る塩、もしくは請求項1の式(1)で示される化合物又はその薬学上許容し得る塩を含有する医薬組成物;および
b)腫瘍抗原または腫瘍抗原を含有する医薬組成物
を含有するキット。
【請求項32】
a)請求項1に記載の化合物又はその薬学上許容し得る塩、もしくは請求項1に記載の化合物又はその薬学上許容し得る塩を含有する医薬組成物;および
b)病原体由来抗原または病原体由来抗原を含有する医薬組成物
を含有するキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチン(癌ワクチンまたは感染症ワクチン)のワクチンアジュバントとして有用な化合物、その製造方法、当該化合物を含む医薬組成物、および当該化合物のワクチン(癌ワクチンまたは感染症ワクチン)用のワクチンアジュバントとしての使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌ワクチン療法は、一般的に腫瘍抗原由来のタンパクやペプチドを用いて、腫瘍に特異的な免疫細胞を活性化することで、癌の治療を狙うものである。中でも、抗原として腫瘍抗原ペプチドを用いる療法を、癌ペプチドワクチン療法と呼ぶ。一般的に腫瘍抗原ペプチドのみでは免疫原性が低いため、抗腫瘍免疫に重要な細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導することを目的として、ワクチンアジュバントが併用される。例えば、W/Oエマルションは水相が内相であり、抗原となるペプチドを内相に保持しやすいため、ワクチンアジュバントとしてW/Oエマルションを用いることで、効率的なCTLの誘導を示すことが報告されている(特許文献1)。
【0003】
腫瘍抗原ペプチドのワクチンアジュバントとして用いられているW/Oエマルションとしては、希釈用乳化組成物(特許文献1)の他、Incomplete Freund's Adjuvant(IFA)やMontanide(登録商標)が挙げられる(非特許文献1、2)。更に、W/Oエマルションに不活化したMycobacterium Tuberculosisを加えたComplete Freund's Adjuvant(CFA)が知られている。しかしながら、CFAはその毒性の強さからヒトへの投与が認められていない(非特許文献2)。
【0004】
従来は、CFAのように、不活化した菌体そのものをアジュバントに加えることで活性の向上を狙っていたが、近年は、作用メカニズムが明らかな化合物を加えたワクチンアジュバントの開発が行われている。中でも、Toll like receptor 7(TLR7)はTh1細胞を活性化し、抗腫瘍作用に必要な細胞性免疫を増強することが報告されている(非特許文献3)。TLR7のアゴニストとしては、種々の低分子化合物が報告されている(非特許文献4、5)。
【0005】
これらの低分子TLR7アゴニストを化学的に修飾することで、化合物の物性を調整できることが知られている。例えば、水溶性の向上を狙ったTLR7アゴニストとポリエチレングリコール(PEG)の複合体の報告がある(非特許文献6、7)。しかしながら、PEGと複合化したTLR7アゴニストはアジュバント活性を示さず、その活性を取り戻すためには、PEGに対して更に脂質を複合化する必要があった(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開WO2006/078059
【文献】国際公開WO2010/093436
【非特許文献】
【0007】
【文献】J Immunother Cancer. 2016 Sep 20;4:56
【文献】Semin Immunol. 2010 Jun;22(3):155-61.
【文献】Vaccine. 2011 Apr 12;29(17):3341-55.
【文献】Expert Opin Ther Pat. 2011 Jun;21(6):927-44
【文献】Expert Opin Ther Pat. 2014 Apr;24(4):453-70
【文献】Bioconjug Chem. 2009 Jun;20(6):1194-200
【文献】Bioconjug Chem. 2011 Mar 16;22(3):445-54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、アジュバント活性を高める複合化TLR7アゴニストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは鋭意検討を行い、アジュバント活性を高めるTLR7アゴニストの探索を行った。その結果、アデニン骨格を有するTLR7アゴニストとポリエチレングリコール(PEG)を複合化し、水溶性を付与したTLR7アゴニストが優れたアジュバント活性を有することを見出し、本発明の完成に至った。本発明によれば、下記式(1)で表されるアデニン誘導体(以下、「本発明の化合物」と称することもある。)が提供される。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0011】
[項1]
式(1):
【化1】
[式中、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、SO、SO、またはNR(Rは水素原子またはC1-6アルキルを表す)を表し、
は、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、およびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
は、水素原子、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシまたはシアノを表し、
mは、1~5の整数を表し、
Aは、5~8員の単環性芳香族炭素環または4~7員の単環性芳香族複素環を表し、
Lは、リンカーを表し、
は、-(CHCHO)-R(Rは水素原子またはC1-6アルキルを表し、nは3~100の整数を表す)を表す。]で示される化合物またはその製薬学的に許容される塩、
ただし、以下の構造を有する化合物は除く。
【化2】
【0012】
[項2]
Xが、単結合、酸素原子、またはNR(Rは水素原子またはC1-6アルキルを表す)である、項1に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0013】
[項3]
Xが、単結合または酸素原子である、項2に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0014】
[項4]
がC1-6アルキル(該アルキルは、同一または異なる1~3個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい)である、項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0015】
[項5]
が、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコシキで置換されていてもよい)である、項4に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0016】
[項6]
が、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシである、項1~5のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0017】
[項7]
が、水素原子、またはハロゲンである、項6に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0018】
[項8]
mが、1である、項1~7のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0019】
[項9]
Aが、ベンゼン環、またはピリジン環である、項1~8のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0020】
[項10]
Aが、ピリジン環である、項9に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0021】
[項11]
Lが、-O-、-NR-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)NR-、-NRC(O)-、-CHNR-、-CHO-、-OC(O)O-、-NRC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)NR-、-OC(S)NR-、または-NRC(S)NR-(ここで、Rは、水素原子またはC1-6のアルキルを表し、Rは、水素原子、C1-6アルキルまたはY(Yは、-(CHCHO)-R(Rは、水素原子またはC1-6アルキルを表し、pは、3~100の整数を表す)を表す)を表す)である、項1~10のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0022】
[項12]
Lが、-CHNR-である、項11に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0023】
[項13]
Lが、-CHNR-(ここで、Rは、水素原子、C1-6アルキルまたはY(Yは、-(CHCHO)-R(Rは、水素原子またはC1-6アルキルを表し、pは、3~100の整数を表す)を表す)を表す))である、項12に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0024】
[項14]
Lが、-CHNR-(ここで、Rは、水素原子、C1-6アルキルを表す)である、項12に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0025】
[項15]
が、-(CHCHO)-R(mは、3~40の整数を表す)であり、Rが、水素原子またはC1-6アルキルである、項1~14のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0026】
[項16]
が、-(CHCHO)-R(mは、3~20の整数を表す)であり、Rが、水素原子またはC1-6アルキルである、項1~14のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0027】
[項17]
式(2):
【化3】
または
式(3):
【化4】
[式中、Rは、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい)であり、
Lは、-CHNR-(ここで、Rは、水素原子、C1-6アルキルまたはY(Yは、-(CHCHO)-R(Rは、水素原子またはC1-6アルキルを表し、pは、3~40の整数を表す)を表す)を表す))であり、
は、-(CHCHO)-R(Rは水素原子またはC1-6アルキルを表し、
nは3~40の整数を表す)を表す。]で表される、項1に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0028】
[項18]
式(2):
【化5】
または
式(3):
【化6】
[式中、Rは、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい)であり、
Lは、-CHNR-(ここで、Rは、水素原子、C1-6アルキルを表す)であり、
は、-(CHCHO)-R(Rは水素原子またはC1-6アルキルを表し、nは3~20の整数を表す)を表す。]で表される、項1に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0029】
[項19]
以下の化合物群から選択される、項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[5-(16-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-2-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例1)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例2)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[4-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)フェニル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例3)、
6-アミノ-9-{[4-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)フェニル]メチル}-2-(2-メトキシエトキシ)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例4)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-({6-[13-ヒドロキシ-2-(2-{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)-5,8,11-トリオキサ-2-アザトリデカン-1-イル]ピリジン-3-イル}メチル)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例6)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(31-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14,17,20,23,26,29-ノナオキサ-2-アザヘントリアコンタン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例7)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(73-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41,44,47,50,53,56,59,62,65,68,71-トリコサオキサ-2-アザトリヘプタコンタン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例8)、および
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(109-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41,44,47,50,53,56,59,62,65,68,71,74,77,80,83,86,89,92,95,98,101,104,107-ペンタトリアコンタオキサ-2-アザノナヘクタン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例9)。
【0030】
[項20]
以下の化合物群から選択される、項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[5-(16-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-2-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例1)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例2)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[4-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)フェニル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例3)、
6-アミノ-9-{[4-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)フェニル]メチル}-2-(2-メトキシエトキシ)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例4)、
4-[(6-アミノ-2-ブトキシ-8-オキソ-7,8-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル)メチル]-N-(14-ヒドロキシ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン-1-イル)-N-メチルベンズアミド(実施例5)。
【0031】
[項21]
項1~20のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【0032】
[項22]
エマルション製剤、油性懸濁剤、ハイドロゲル製剤、又は脂質製剤である項21に記載の医薬組成物。
【0033】
[項23]
エマルション製剤である項21に記載の医薬組成物。
【0034】
[項24]
エマルション製剤が、油中水型エマルションである項23に記載の医薬組成物。
【0035】
[項25]
エマルション製剤が、(1)オレイン酸エチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、グリセリン、及びリン酸二水素ナトリウム、又は(2)Montanide ISA 51 VGを含有する項24に記載の医薬組成物。
【0036】
[項26]
脂質製剤である項21に記載の医薬組成物。
【0037】
[項27]
脂質製剤が、リン脂質を含むリポソーム製剤である項26に記載の医薬組成物。
【0038】
[項28]
脂質製剤が、ステロール類を含むリポソーム製剤である項26または項27に記載の医薬組成物。
【0039】
[項29]
ステロール類が、コレステロールである項28に記載の医薬組成物。
【0040】
[項30]
リポソーム製剤が、無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩、糖類、緩衝剤、酸化防止剤、及びポリマー類からなる群から選択される1以上の添加物を含むリポソーム製剤である項27~29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0041】
[項31]
更に、抗原を含む、項21~30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0042】
[項32]
抗原が、病原体由来抗原又は腫瘍抗原である、項31に記載の医薬組成物。
【0043】
[項33]
抗原が、腫瘍抗原である、項31に記載の医薬組成物。
【0044】
[項34]
腫瘍抗原が、腫瘍抗原ペプチドである、項33に記載の医薬組成物。
【0045】
[項35]
腫瘍抗原ペプチドが、
RMFPNAPYL(配列番号:1)、
ALLPAVPSL(配列番号:9)、
SLGEQQYSV(配列番号:10)、
RVPGVAPTL(配列番号:11)、
VLDFAPPGA(配列番号:5)、
CMTWNQMNL(配列番号:12)、
CYTWNQMNL(配列番号:2)、
TYAGCLSQIF(配列番号:15)、
式(4):
【化7】
[式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。]、および
式(5)
【化8】
[式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。]
からなる群から選択されるアミノ酸配列で表される一つ以上のペプチドまたはその製薬学的に許容される塩、並びに、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号:3)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号:13)、
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号:14)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号:15)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号:16)、
CNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号:17)、および
KRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号:4)
からなる群から選択されるアミノ酸配列で表される一つ以上のペプチドまたはその製薬学的に許容される塩を含む、項34に記載の医薬組成物。
【0046】
[項36]
腫瘍抗原ペプチドが、
RMFPNAPYL(配列番号:1)、
ALLPAVPSL(配列番号:9)、
SLGEQQYSV(配列番号:10)、
RVPGVAPTL(配列番号:11)、
VLDFAPPGA(配列番号:5)、
CMTWNQMNL(配列番号:12)、
CYTWNQMNL(配列番号:2)、および
式(4):
【化9】
[式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。]
からなる群から選択されるアミノ酸配列で表される一つ以上のペプチドまたはその製薬学的に許容される塩、並びに、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号:3)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号:13)、
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号:14)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号:15)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号:16)、
CNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号:17)、および
KRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号:4)
からなる群から選択されるアミノ酸配列で表される一つ以上のペプチドまたはその製薬学的に許容される塩を含む、項34に記載の医薬組成物。
【0047】
[項37]
腫瘍抗原ペプチドが、式(4):
【化10】
[式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。]
のアミノ酸配列で表されるペプチドまたはその製薬学的に許容される塩、および
配列番号3:WAPVLDFAPPGASAYGSL
のアミノ酸配列で表されるペプチドまたはその製薬学的に許容される塩の組み合わせである、項34に記載の医薬組成物。
【0048】
[項38]
式(1):
【化11】
[式中、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、SO、SO、またはNR(Rは水素原子またはC1-6アルキルを表す)を表し、
は、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、およびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
は、水素原子、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシまたはシアノを表し、
mは、1~5の整数を表し、
Aは、5~8員の単環性芳香族炭素環または4~7員の単環性芳香族複素環を表し、
Lは、リンカーを表し、
は、-(CHCHO)-R(Rは水素原子またはC1-6アルキルを表し、nは3~100の整数を表す)を表す。]で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩を含む、ワクチンアジュバント。
【0049】
[項39]
癌ワクチンのワクチンアジュバントである、項38に記載のワクチンアジュバント。
【0050】
[項40]
Xが、単結合、酸素原子、またはNR(Rは水素原子またはC1-6アルキルを表す)である、項38または39に記載のワクチンアジュバント。
【0051】
[項41]
Xが、単結合または酸素原子である、項40に記載のワクチンアジュバント。
【0052】
[項42]
がC1-6アルキル(該アルキルは、同一または異なる1~3個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい)である、項38~41のいずれかに記載のワクチンアジュバント。
【0053】
[項43]
が、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコシキで置換されていてもよい)である、項42に記載のワクチンアジュバント。
【0054】
[項44]
が、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシである、項38~43に記載のワクチンアジュバント。
【0055】
[項45]
が、水素原子、またはハロゲンである、項44に記載のワクチンアジュバント。
【0056】
[項46]
mが、1である、項38~45に記載のワクチンアジュバント。
【0057】
[項47]
Aが、ベンゼン環、またはピリジン環である、項38~46に記載のワクチンアジュバント。
【0058】
[項48]
Aが、ピリジン環である、項47に記載のワクチンアジュバント。
【0059】
[項49]
Lが、-O-、-NR-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)NR-、-NRC(O)-、-CHNR-、-CHO-、-OC(O)O-、-NRC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)NR-、-OC(S)NR-、または-NRC(S)NR-(ここで、Rは、水素原子またはC1-6のアルキルを表し、Rは、水素原子、C1-6アルキルまたはY(Yは、-(CHCHO)-R(Rは、水素原子またはC1-6アルキルを表し、pは、3~100の整数を表す)を表す)を表す)である、項38~48に記載のワクチンアジュバント。
【0060】
[項50]
Lが、-CHNR-である、項49に記載のワクチンアジュバント。
【0061】
[項51]
Lが、-CHNR-(ここで、Rは、水素原子、C1-6アルキルまたはY(Yは、-(CHCHO)-R(Rは、水素原子またはC1-6アルキルを表し、pは、3~100の整数を表す)を表す)を表す))である、項50に記載のワクチンアジュバント。
【0062】
[項52]
Lが、-CHNR-(ここで、Rは、水素原子、またはC1-6アルキルを表す)である、項50に記載のワクチンアジュバント。
【0063】
[項53]
が、-(CHCHO)-R(nは、3~40の整数を表す)であり、Rが、水素原子またはC1-6アルキルである、項38~52に記載のワクチンアジュバント。
【0064】
[項54]
が、-(CHCHO)-R(nは、3~20の整数を表す)であり、Rが、水素原子またはC1-6アルキルである、項38~52に記載のワクチンアジュバント。
【0065】
[項55]
式(2):
【化12】
または
式(3):
【化13】
[式中、Rは、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい)であり、
Lは、-CHNR-(ここで、Rは、水素原子、C1-6アルキルまたはY(Yは、-(CHCHO)-R(Rは、水素原子またはC1-6アルキルを表し、pは、3~100の整数を表す)を表す)を表す))であり、
は、-(CHCHO)-R(Rは水素原子またはC1-6アルキルを表し、nは3~40の整数を表す)を表す。]で表される、項38または項39に記載のワクチンアジュバント。
【0066】
[項56]
式(2):
【化14】
または
式(3):
【化15】
[式中、Rは、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい)であり、
Lは、-CHNR-(ここで、Rは、水素原子、またはC1-6アルキルを表す)であり、
は、-(CHCHO)-R(Rは水素原子またはC1-6アルキルを表し、nは3~20の整数を表す)を表す。]で表される、項55に記載のワクチンアジュバント。
【0067】
[項57]
以下の化合物群:
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[5-(16-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-2-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例1)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例2)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[4-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)フェニル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例3)、
6-アミノ-9-{[4-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)フェニル]メチル}-2-(2-メトキシエトキシ)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例4)、
4-[(6-アミノ-2-ブトキシ-8-オキソ-7,8-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル)メチル]-N-(14-ヒドロキシ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン-1-イル)-N-メチルベンズアミド(実施例5)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-({6-[13-ヒドロキシ-2-(2-{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)-5,8,11-トリオキサ-2-アザトリデカン-1-イル]ピリジン-3-イル}メチル)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例6)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(31-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14,17,20,23,26,29-ノナオキサ-2-アザヘントリアコンタン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例7)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(73-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41,44,47,50,53,56,59,62,65,68,71-トリコサオキサ-2-アザトリヘプタコンタン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例8)、および
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(109-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41,44,47,50,53,56,59,62,65,68,71,74,77,80,83,86,89,92,95,98,101,104,107-ペンタトリアコンタオキサ-2-アザノナヘクタン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例9)
から選択される化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、項38または項39に記載のワクチンアジュバント。
【0068】
[項58]
以下の化合物群:
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[5-(16-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-2-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例1)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例2)、
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[4-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)フェニル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例3)、
6-アミノ-9-{[4-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)フェニル]メチル}-2-(2-メトキシエトキシ)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(実施例4)、および
4-[(6-アミノ-2-ブトキシ-8-オキソ-7,8-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル)メチル]-N-(14-ヒドロキシ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン-1-イル)-N-メチルベンズアミド(実施例5)
から選択される化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、項38または項39に記載のワクチンアジュバント。
【0069】
[項59]
ワクチンアジュバントとして用いられる、項1~20のいずれか一項、または項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0070】
[項60]
癌ワクチンのワクチンアジュバントとして用いられる、項1~20のいずれか一項、または項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0071】
[項61]
項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩を含むCTL誘導剤。
【0072】
[項62]
項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩を含む免疫賦活剤。
【0073】
[項63]
項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学上許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるCTLを誘導する方法。
【0074】
[項64]
項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学上許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるCTL誘導を増強する方法。
【0075】
[項65]
項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学上許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における抗原に対する特異的免疫応答を増強する方法。
【0076】
[項66]
項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容される塩の、ワクチンアジュバントを製造するための使用。
【0077】
[項67]
項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容される塩の、癌ワクチンのワクチンアジュバントを製造するための使用。
【0078】
[項68]
a)項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学上許容し得る塩、もしくは項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学上許容し得る塩を含有する医薬組成物;および
b)抗原または抗原を含有する医薬組成物
を含有するキット。
【0079】
[項69]
a)項38~58のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学上許容し得る塩、もしくは項38~58のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学上許容し得る塩を含有する医薬組成物;および
b)腫瘍抗原または腫瘍抗原を含有する医薬組成物
を含有するキット。
【0080】
[項70]
a)項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学上許容し得る塩、もしくは項項38、40~58のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学上許容し得る塩を含有する医薬組成物;および
b)病原体由来抗原または病原体由来抗原を含有する医薬組成物
を含有するキット。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1-A】図1-Aは試験例3において、実施例2及び実施例3で合成された化合物による、ヒト末梢血単核球からのIFNα2の産生を試験した結果を示す図である。
図1-B】図1-Bは試験例3において、実施例2及び実施例3で合成された化合物による、ヒト末梢血単核球からのGM-CSFの産生を試験した結果を示す図である。
図1-C】図1-Cは試験例3において、実施例2及び実施例3で合成された化合物による、ヒト末梢血単核球からのIFNγの産生を試験した結果を示す図である。
図1-D】図1-Dは試験例3において、実施例2及び実施例3で合成された化合物による、ヒト末梢血単核球からのIL-12p40の産生を試験した結果を示す図である。
図1-E】図1-Eは試験例3において、実施例2及び実施例3で合成された化合物による、ヒト末梢血単核球からのIL-1βの産生を試験した結果を示す図である。
図1-F】図1-Fは試験例3において、実施例2及び実施例3で合成された化合物による、ヒト末梢血単核球からのIL-6の産生を試験した結果を示す図である。
図1-G】図1-Gは試験例3において、実施例2及び実施例3で合成された化合物による、ヒト末梢血単核球からのIP-10の産生を試験した結果を示す図である。
図1-H】図1-Hは試験例3において、実施例2及び実施例3で合成された化合物による、ヒト末梢血単核球からのTNFαの産生を試験した結果を示す図である。
図2-A】図2-Aは試験例4において、実施例3で合成された化合物による、マウス骨髄由来樹状細胞からのIP-10の産生を試験した結果を示す図である。
図2-B】図2-Bは試験例4において、実施例3で合成された化合物による、マウス骨髄由来樹状細胞からのIL-12p70の産生を試験した結果を示す図である。
図2-C】図2-Cは試験例4において、実施例3で合成された化合物による、マウス骨髄由来樹状細胞からのIL-12p40の産生を試験した結果を示す図である。
図2-D】図2-Dは試験例4において、実施例3で合成された化合物による、マウス骨髄由来樹状細胞からのIL-6の産生を試験した結果を示す図である。
図2-E】図2-Eは試験例4において、実施例3で合成された化合物による、マウス骨髄由来樹状細胞からのIL-1βの産生を試験した結果を示す図である。
図2-F】図2-Fは試験例4において、実施例3で合成された化合物による、マウス骨髄由来樹状細胞からのMIP-1αの産生を試験した結果を示す図である。
図2-G】図2-Gは試験例4において、実施例3で合成された化合物による、マウス骨髄由来樹状細胞からのMIP-1βの産生を試験した結果を示す図である。
図2-H】図2-Hは試験例4において、実施例3で合成された化合物による、マウス骨髄由来樹状細胞からのRantesの産生を試験した結果を示す図である。
図2-I】図2-Iは試験例4において、実施例3で合成された化合物による、マウス骨髄由来樹状細胞からのTNFαの産生を試験した結果を示す図である。
図3-A】図3-Aは試験例5において、実施例3で合成された化合物による、マウス脾臓細胞からのGM-CSFの産生を試験した結果を示す図である。
図3-B】図3-Bは試験例5において、実施例3で合成された化合物による、マウス脾臓細胞からのIFNγの産生を試験した結果を示す図である。
図3-C】図3-Cは試験例5において、実施例3で合成された化合物による、マウス脾臓細胞からのIL-6の産生を試験した結果を示す図である。
図3-D】図3-Dは試験例5において、実施例3で合成された化合物による、マウス脾臓細胞からのIP-10の産生を試験した結果を示す図である。
図3-E】図3-Eは試験例5において、実施例3で合成された化合物による、マウス脾臓細胞からのMCP-1の産生を試験した結果を示す図である。
図3-F】図3-Fは試験例5において、実施例3で合成された化合物による、マウス脾臓細胞からのMIP-1αの産生を試験した結果を示す図である。
図3-G】図3-Gは試験例5において、実施例3で合成された化合物による、マウス脾臓細胞からのMIP-1βの産生を試験した結果を示す図である。
図3-H】図3-Hは試験例5において、実施例3で合成された化合物による、マウス脾臓細胞からのRantesの産生を試験した結果を示す図である。
図3-I】図3-Iは試験例5において、実施例3で合成された化合物による、マウス脾臓細胞からのTNFαの産生を試験した結果を示す図である。
図4図4は試験例6において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドと予備乳化組成物を混合したカクテルワクチンに実施例3または参考例14で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号1に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFN-γ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図5図5は試験例6において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドと予備乳化組成物を混合したカクテルワクチンに実施例3または参考例14で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号5に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFN-γ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図6図6は試験例7において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドと予備乳化組成物を混合したカクテルワクチンに実施例2または参考例12で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号5に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFN-γ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図7図7は試験例8において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに実施例3で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号1に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFN-γ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図8図8は試験例8において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに実施例3で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号5に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFN-γ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図9図9は試験例8において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに実施例2で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号1に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFN-γ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図10図10は試験例8において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに実施例2で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号5に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFN-γ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図11図11は試験例9において、配列番号1で表されるペプチドと予備乳化組成物を混合したワクチンに実施例3で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号1に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFN-γ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図12図12は試験例10において、配列番号1及び4で表されるペプチドと予備乳化組成物を混合したカクテルワクチンに実施例3で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号4に対するヘルパーT細胞誘導能を、HLA-A02:01/HLA-DRB101:01遺伝子導入マウスを用いたIFN-γ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図13-A】図13-Aは試験例11において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドと予備乳化組成物を混合したカクテルワクチンに実施例3で合成された化合物を添加したワクチンを投与したHLA-A02:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞について、配列番号1で表されるペプチドおよび腫瘍細胞の存在下で3日間培養した前後の配列番号1で表されるペプチドに特異的なCTLの割合をフローサイトメトリーによって解析した結果を示す図である。
図13-B】図13-Bは試験例11において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドと予備乳化組成物を混合したカクテルワクチンに実施例3で合成された化合物を添加したワクチンを投与したHLA-A02:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞について、配列番号1で表されるペプチドおよび腫瘍細胞の存在下で3日間培養した場合のIFN-γ産生量を示す図である。
図14-A】図14-Aは試験例12において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに、実施例2で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号1に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFN-γ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図14-B】図14-Bは試験例12において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに、実施例2で合成された化合物を添加したワクチンを投与したHLA-A02:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞について、配列番号1で表されるペプチドおよび腫瘍細胞の存在下で3日間培養した場合のIFN-γ産生量を示した図である。
図15図15は試験例13において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに、実施例2で合成された化合物を添加したワクチンを投与したHLA-A02:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞について、配列番号1で表されるペプチドおよび腫瘍細胞の存在下、アイソタイプコントロール抗体あるいは抗PD-1抗体を添加して3日間培養した場合のIFN-γ産生量を示した図である。
図16-A】図16-Aは試験例14において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドと予備乳化組成物を混合したカクテルワクチンに、実施例3で合成された化合物を添加したワクチンを投与したHLA-A02:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞について、配列番号1で表されるペプチドに特異的なエフェクターメモリーCTLの頻度をフローサイトメトリーによって解析した結果を示す図である。
図16-B】図16-Bは試験例14において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに、実施例3で合成された化合物を添加したワクチンを投与したHLA-A02:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞について、配列番号1で表されるペプチドに特異的なエフェクターメモリーCTLの頻度をフローサイトメトリーによって解析した結果を示す図である。
図16-C】図16-Cは試験例14において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに、実施例2で合成された化合物を添加したワクチンを投与したHLA-A02:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞について、配列番号1で表されるペプチドに特異的なエフェクターメモリーCTLの頻度をフローサイトメトリーによって解析した結果を示す図である。
図17図17は試験例15において、HLA-A24:02遺伝子導入マウスへのMCA-A24/Kb-WT1腫瘍細胞移植の7日前および7日後に、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに、実施例2で合成された化合物を添加したワクチンを投与し、移植27日後における腫瘍体積を測定した結果を示す図である。
図18図18は試験例16において、配列番号18で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したワクチンに実施例2で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号18に対するCTL誘導能を、HLA-A24:02遺伝子導入マウスを用いたIFNγ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図19図19は試験例17において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに実施例7、8、あるいは9で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号5に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFNγ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図20図20は試験例18において、式番号4で表される化合物及び配列番号3で表されるペプチドとMontanide ISA 51 VGを混合したカクテルワクチンに実施例6で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号5に対するCTL誘導能を、HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFNγ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
図21図21は試験例19において、式番号5で表される化合物と予備乳化組成物を混合したワクチンに実施例2で合成された化合物を添加したワクチンについて、in vivoでの配列番号2に対するCTL誘導能を、HLA-A24:02遺伝子導入マウスを用いたIFNγ ELISPOT assayによって試験した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本明細書における用語について以下に説明する。
【0083】
本明細書において、「置換されてもよい」もしくは「置換されている」で定義される基における置換基の数は、置換可能であれば特に制限はない。また、特に指示した場合を除き、各々の基の説明はその基が他の基の一部分又は置換基である場合にも該当する。
【0084】
本明細書において、「ハロゲン」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられる。好ましくはフッ素、又は塩素である。さらに好ましくは、フッ素である。
【0085】
「C1-6アルキル」とは、炭素原子数が1~6の直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味する。好ましくは「C1-4アルキル」が挙げられ、更に好ましくは「C1-3アルキル」が挙げられる。「C1-6アルキル」の具体例として、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、2-メチルプロピル、1-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、3-メチルブチル、2-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ヘキシル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチルが挙げられ、「C1-4アルキル」の具体例としては、「C1-6アルキル」の具体例における炭素原子数が1~4の例示が挙げられる。「C1-3アルキル」の具体例としては、「C1-6アルキル」の具体例における炭素原子数が1~3の例示が挙げられる。
【0086】
「C1-6アルコキシ」とは「C1-6アルキルオキシ」を意味し、「C1-6アルキル」部分は、前記「C1-6アルキル」と同義である。「C1-6アルコキシ」としては、好ましくは、「C1-4アルコキシ」が挙げられ、更に好ましくは、「C1-3アルコキシ」が挙げられる。「C1-6アルコキシ」の具体例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、2-メチルプロポキシ、1-メチルプロポキシ、1,1-ジメチルエトキシ、ペンチロキシ、3-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、ヘキシロキシ、4-メチルペンチロキシ、3-メチルペンチロキシ、2-メチルペンチロキシ、1-メチルペンチロキシ、3,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、1,1-ジメチルブトキシ又は1,2-ジメチルブトキシ等が挙げられ、「C1-4アルコキシ」の具体例としては、「C1-6アルコキシ」の具体例における炭素原子数が1~4の例示が挙げられる。「C1-3アルコキシ」の具体例としては、「C1-6アルコキシ」の具体例における炭素原子数が1~3の例示が挙げられる。
【0087】
「リンカー」とは、官能基内に二本の結合手を有する二価基を意味する。二価基としては、例えば、C1-6アルキレン、C2-7アルケニレン、C2-7アルキニレン、C3-10シクロアルキレン、C6-10アリーレン、C5-10ヘテロアリーレン、エーテル、アミン、カルボニル、エステル、アミド、カーボネート、カーバメート、チオカーバメート、またはチオウレアなどが挙げられる。また、これらの例示の中から、適宜組合せて、二価基として用いることもできる。リンカーとして好ましくは、-O-、-NR-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)NR-、-NRC(O)-、-CHNR-、-CHO-、-OC(O)O-、-NRC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)NR-、-OC(S)NR-、または-NRC(S)NR-(式中、R、Rは項11に定義する通り)が挙げられ、更に好ましくは-CHNR-が挙げられる。ここで具体例として示されるリンカーの二本の結合手のうち、左の結合手は式(1)の化合物における環Aと結合し、右の結合手は式(1)の化合物におけるYと結合する。すなわち、リンカーLが「-CHNR-」であれば、式(1)の化合物は下記の構造を有することとなる。
【化16】
【0088】
「C1-6アルキレン」とは、炭素原子数1~6個を有し、直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素を意味する。「C1-6アルキレン」の具体例として、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、1-メチルエチレン、ブチレン、2-メチルプロピレン、1-メチルプロピレン、1,1-ジメチルエチレン、ペンチレン、3-メチルブチレン、2-メチルブチレン、2,2-ジメチルプロピレン、1-エチルプロピレン、1,1-ジメチルプロピレン、ヘキシレン、4-メチルペンチレン、または3-メチルペンチレン等が挙げられ、好ましくはメチレンまたはエチレンが挙げられる。
【0089】
「C2-7アルケニレン」とは、炭素原子数2~7個を有し、1~3個の二重結合を含む直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素を意味する。「C2-7アルケニレン」の具体例として、例えば、ビニレン、プロペニレン、メチルプロペニレン、ブテニレン、メチルブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン、またはヘプテニレンなどが挙げられ、好ましくはビニレン、またはプロペニレンが挙げられる。
【0090】
「C2-7アルキニレン」とは、炭素原子数2~7個を有し、三重結合を1個含む直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素を意味する。「C2-7アルキニレン」の具体例としては、例えば、エチニレン、プロピニレン、メチルプロピニレン、ブチニレン、メチルブチニレン、ペンテレン、ヘキシニレン、またはヘプチニレンなどが挙げられ、好ましくはエチニレン、またはプロピニレンが挙げられる。
【0091】
「C3-10シクロアルキレン」とは、炭素原子数が3~10の環状アルキレンを意味し、一部架橋された構造のものも含まれる。「C3-10シクロアルキレン」の具体例としては。例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、またはアダマンチレンなどが挙げられ、好ましくはシクロプロピレン、またはシクロブチレンが挙げられる。
【0092】
「C6-10アリーレン」とは、炭素原子数が6~10の芳香族炭化水素を意味する。「C6-10アリーレン」の具体例としては、例えば、フェニレン、1-ナフチレン、または2-ナフチレンなどが挙げられ、好ましくはフェニレンが挙げられる。
【0093】
「C5-10ヘテロアリーレン」としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から独立して選ばれる1から4個の原子を含む、単環の5~7員環の芳香族複素環、または2環の8~10員の芳香族複素環を意味する。「C5-10ヘテロアリーレン」の具体例としては、例えば、ピリジレン、ピリダジニレン、イソチアゾリレン、ピロリレン、フリレン、チエニレン、チアゾリレン、イミダゾリレン、ピリミジニレン、チアジアゾリレン、ピラゾリレン、オキサゾリレン、イソオキサゾリレン、ピラジニレン、トリアジニレン、トリアゾリレン、イミダゾリジニレン、オキサジアゾリレン、トリアゾリレン、テトラゾリレン、インドリレン、インダゾリレン、キノリレン、イソキノリレン、ベンゾフラニレン、ベンゾチエニレン、ベンゾオキサゾリレン、ベンゾチアゾリレン、ベンズイソオキサゾリレン、ベンズイソチアゾリレン、ベンゾトリアゾリレン、ベンズイミダゾリレン、または6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピニレンなどが挙げられる。好ましくは、ピリジレン、ピリミジニレン、キノリレン、及びイソキノリレンであり、さらに好ましくは、ピリジレン、フリレンまたはチエニレンである。
【0094】
「5~8員の単環性芳香族炭素環」とは、炭素原子数が5~8の単環性の芳香族炭化水素を意味する。「5~8員の単環性芳香族炭素環」の具体例としては、例えば、フェニルが挙げられる。
【0095】
「4~7員の単環性芳香族複素環」とは、環を構成する原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から独立して選ばれる1から4個の原子を含む、単環の4~7員環の芳香族複素環基を意味する。「4~7員の単環性芳香族複素環」として好ましくは、環内に1つ以上の窒素原子を有する5~7員環の芳香族複素環基(「5~7員の単環性含窒素芳香族複素環」)が挙げられる。「4~7員の単環性芳香族複素環」の具体例としては、ピリジル、ピリダジニル、イソチアゾリル、ピロリル、フリル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、チアジアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル基、イミダゾリジニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、またはテトラゾリル等が挙げられる。好ましくは、ピリジルまたはピリミジニルであり、さらに好ましくは、ピリジルである。
【0096】
式(1)で表される本発明の化合物の中でも、X、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R、A、L、m、n及びpで、好ましいものは以下のとおりであるが、本発明の技術的範囲は下記に挙げる化合物の範囲に限定されるものではない。
【0097】
Xとして好ましくは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはC1-6アルキルを表す)が挙げられ、より好ましくは、単結合または酸素原子が挙げられ、更に好ましくは、酸素原子が挙げられる。
【0098】
としては、-(CHCHO)-Rが挙げられる。
【0099】
としては、-(CHCHO)-Rが挙げられる。
【0100】
として好ましくは、C1-6アルキル(該アルキルは、1~3個の同一または異なるC1-6アルコキシで置換されていてもよい。)が挙げられ、より好ましくは、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい。)が挙げられ、更に好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、または1-メトキシエチルが挙げられる。
【0101】
として好ましくは、
(1)水素原子
(2)ハロゲン
(3)C1-6アルキル
(4)C1-6アルコキシ
が挙げられる。
【0102】
としてより好ましくは、水素原子、ハロゲンが挙げられ、更に好ましくは、水素原子が挙げられる。
【0103】
またはRとして好ましくは、各々独立して、水素原子、またはC1-3アルキルが挙げられ、より好ましくは、各々独立して、水素原子、メチル、エチル、またはプロピルが挙げられ、更に好ましくは、水素原子が挙げられる。
【0104】
またはRとして好ましくは、各々独立して、水素原子、またはC1-3のアルキルが挙げられ、より好ましくは、各々独立して、水素原子、メチル、エチル、またはプロピルが挙げられる。
【0105】
Aとして好ましくは、
(1)5~6員の単環性芳香族炭素環、または
(2)5~6員の単環性芳香族複素環
が挙げられる。
【0106】
Aとしてより好ましくは、ベンゼン環、またはピリジン環が挙げられる。
【0107】
Aとして更に好ましくは、ピリジン環が挙げられる。
【0108】
として好ましくは、水素原子、C1-6のアルキルまたはYが挙げられ、より好ましくは、水素原子、メチル、エチル、プロピルまたは-(CHCHO)-Rが挙げられ、更に好ましくは、水素原子または-(CHCHO)-Rが挙げられる。Rの別の態様として、好ましくは水素原子、またはC1-6のアルキルが挙げられ、より好ましくは、水素原子、メチル、エチル、またはプロピルが挙げられる。
【0109】
Lとして好ましくは、
(1)-O-
(2)-NR
(3)-C(O)-
(4)-C(O)O-
(5)-OC(O)-
(6)-C(O)NR
(7)-NRC(O)-
(8)-CHNR
(9)-CHO-
(10)-OC(O)O-
(11)-NRC(O)O-
(12)-OC(O)NR
(13)-NRC(O)NR
(14)-OC(S)NR-、または
(15)-NRC(S)NR
が挙げられる
【0110】
Lとしてより好ましくは
(1)-O-
(2)-NR
(3)-C(O)-
(4)-C(O)O-
(5)-OC(O)-
(6)-C(O)NR
(7)-NRC(O)-
(8)-CHNR-、または
(9)-CHO-
が挙げられる。
【0111】
Lとして更に好ましくは-C(O)NR-、または-CHNR-が挙げられる。
【0112】
Lとして最も好ましくは-CHNR-が挙げられる。
【0113】
mとして好ましくは1~2の整数が挙げられ、より好ましくは1が挙げられる。
【0114】
nまたはpとして好ましくは、各々独立して、3~40の整数が挙げられ、より好ましくは4~40の整数が挙げられ、最も好ましくは4~36の整数が挙げられる。
【0115】
nまたはpの別の態様として、各々独立して、3~40の整数が挙げられ、好ましくは3~20の整数が挙げられ、より好ましくは5~20の整数が挙げられる。
【0116】
式(1)で表される化合物のうちで、好ましい態様としては、以下の(A)が挙げられる。
(A)
Xが、単結合、酸素原子、硫黄原子、SO、SO、またはNRであり;
が、-(CHCHO)-Rであり;
が、-(CHCHO)-Rであり;
が、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、およびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される1~5個の置換基で置換されていてもよい)であり;
が、
(1)水素原子
(2)ハロゲン
(3)ヒドロキシ
(4)C1-6アルキル
(5)C1-6アルコキシ、または
(6)シアノ
であり;
及びRが、各々独立して、
(1)水素原子、または
(2)C1-6アルキル
であり;
及びRが、各々独立して、
(1)水素原子、または
(2)C1-6アルキル、
であり;
Aが、
(1)5~8員の単環性芳香族炭素環、または
(2)4~7員の単環性芳香族複素環
であり;
が、
(1)水素原子
(2)C1-6アルキル、または
(3)Y
であり;
Lが
(1)-O-
(2)-NR
(3)-C(O)-
(4)-C(O)O-
(5)-OC(O)-
(6)-C(O)NR
(7)-NRC(O)-
(8)-CHNR
(9)-CHO-
(10)-OC(O)O-
(11)-NRC(O)O-
(12)-OC(O)NR
(13)-NRC(O)NR
(14)-OC(S)NR-、または
(15)-NRC(S)NR
であり;
mが、1~4の整数であり;
n及びpが、各々独立して、3~100の整数;
で表される化合物または製薬学的に許容される塩。
【0117】
式(1)で表される化合物のうちで、好ましい態様としては、以下の(B)が挙げられる。
(B)
Xが、単結合、酸素原子、またはNRであり;
が、-(CHCHO)-Rであり;
が、C1-6アルキル(該アルキル基は、1~3個の同一または異なるC1-6アルコキシで置換されていてもよい。)であり;
が、
(1)水素原子
(2)ハロゲン
(3)C1-6アルキル、または
(4)C1-6アルコキシ
であり;
及びRが、各々独立して、水素原子、またはC1-3アルキルであり;
が、水素原子、またはC1-3のアルキルであり;
Aが、
(1)5~6員の単環性芳香族炭素環、または
(2)5~6員の単環性芳香族複素環
であり;
が、水素原子、またはC1-6アルキル、またはYであり;
が、-(CHCHO)-Rであり;
Lが
(1)-O-
(2)-NR
(3)-C(O)-
(4)-C(O)O-
(5)-OC(O)-
(6)-C(O)NR
(7)-NRC(O)-
(8)-CHNR-、または
(9)-CHO-
であり;
mが、1~2の整数であり;
n及びpが、各々独立して、3~40の整数;
で表される化合物または製薬学的に許容される塩。
【0118】
式(1)で表される化合物のうちで、好ましい態様としては、以下の(C)が挙げられる。
(C)
Xが、単結合または酸素原子であり;
が、-(CHCHO)-Rであり;
が、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい。)であり;
が、水素原子、またはハロゲンであり;
及びRが、各々独立して、水素原子、メチル、エチル、またはプロピルであり;
Aが、フェニル、またはピリジルであり;
が、水素原子、メチル、エチル、プロピル、またはYであり;
が、-(CHCHO)-Rであり;
Lが-C(O)NR-、または-CHNR-であり;
mが、1であり;
n及びpが、各々独立して、3~40の整数;
で表される化合物または製薬学的に許容される塩。
【0119】
式(1)で表される化合物における別の態様としては、以下の(D)が挙げられる。
(D)
式(2)または(3)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩;
【化17】
[式中、Rは、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい)であり、
Lは、-CHNR-であり、
は、水素原子、メチル、エチル、プロピルまたはYであり、
は、-(CHCHO)-Rであり、
が、-(CHCHO)-Rであり;
及びRは、各々独立して、水素原子、メチル、エチルまたはプロピルであり、
n及びpは、各々独立して、3~40の整数である。]
【0120】
式(1)で表される化合物における別の態様としては、以下の(E)が挙げられる。
(E)
式(2)または(3)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩;
【化18】
[式中、Rは、C1-6アルキル(該アルキルは、1個のC1-6アルコキシで置換されていてもよい)であり、
Lは、-CHNR-であり、
は、水素原子、メチル、エチルまたはプロピルであり、
は、-(CHCHO)-Rであり、
は、水素原子、メチル、エチルまたはプロピルであり、
nは、3~40の整数である。]
【0121】
本発明の化合物の製造方法について以下に述べる。式(1)で表される本発明の化合物は、例えば下記の製造法により製造することができる。
製造法A-1
本発明の式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩のうち、-CRA1A2NR-、または-CRA1A2O-で表されるリンカーを有する化合物(a1-2)は、以下の方法により製造される。
【化19】
(式中、R、R、m、A、X、及びYは項1に定義される通りであり、RA1及びRA2は各々独立して、水素原子、C1-6アルキル基を表し、LGa1は脱離基を表し、Nua1は求核剤を表し、La1は本工程により生成するリンカーを表す)
【0122】
本工程は脱離基であるLGa1と求核剤であるNua1-Yとの置換反応である。適切な塩基の存在下または非存在下、適切な溶媒中、化合物(a1-1)とNua1-Yから、化合物(a1-2)を得る工程である。脱離基としては、特に限定はされないが、好ましくはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メタンスルホニル、エタンスルホニル、p-トルエンスルホニルなどが挙げられ、より好ましくは塩素、臭素、メタンスルホニルが挙げられる。求核剤としては、特に限定はされないが、好ましくはアミノ(該アミノは項11に定義されるRで置換されていてもよい)、アルコール、チオールなどが挙げられ、好ましくはアミノ(該アミノは項11に定義されるRで置換されていてもよい)、アルコールが挙げられる。本工程において、使用される塩基としては、後記に例示される塩基などから選択されるが、好ましくは水素化ナトリウムや水素化カリウムが挙げられる。本工程において使用される溶媒は、後記に例示される溶媒等から選択されるが、好ましくはDMFが挙げられる。反応時間は、通常、約5分~約48時間であり、好ましくは約10分~約24時間である。反応温度は、通常、約-78℃~約100℃、好ましくは、約0℃~約100℃である。
【0123】
製造法A-2
本発明の式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩のうち、-O-、-NR-、-C(O)O-、-CHNR-、または-CHO-で表されるリンカーを有する化合物(a2-2)は、以下の方法により製造される。
【化20】
(式中R、R、m、A、X、及びYは項1に定義される通りであり、LGa2は脱離基を表し、Nua2は求核剤を表し、La2は本工程により生成するリンカーを表す)
【0124】
本工程は脱離基であるLGa2と求核剤であるNua2との置換反応である。適切な塩基の存在下または非存在下、適切な溶媒中、化合物(a2-1)とLGa2-Yから、化合物(a2-2)を得る工程である。LGa2、及びNua2はそれぞれ製造法A-1に記載されている脱離基、求核剤と同一である。種々の反応条件については、製造法A-1の記載に準じた条件である。
【0125】
本発明の化合物の製造方法について以下に述べる。式(1)で表される本発明の化合物は、例えば下記の製造法により製造することができる。
製造法B-1
本発明の式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩のうち、-CHNR-で表されるリンカーを有する化合物(b1-2)は、以下の方法により製造される。
【化21】
(式中、R、R、m、A、X、Y、及びRは項1に定義される通りであり、Lb1は本工程により生成するリンカーを表す)
【0126】
本工程はアルデヒドとアミンとの還元的アミノ化反応である。適切な還元剤の存在下、適切な溶媒中、化合物(b1-1)とR-NH-Yから、化合物(b1-2)を得る工程である。本工程において、使用される還元剤としては、特に限定されないが、好ましくは水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシボロヒドリド、ピコリンボランが挙げられる。本工程において使用される溶媒は、後記に例示される溶媒等から選択されるが、好ましくはTHF、クロロホルム等が挙げられる。反応時間は、通常、約5分~約48時間であり、好ましくは約10分~約24時間である。反応温度は、通常、約-78℃~約100℃、好ましくは、約0℃~約100℃である。
【0127】
製造法B-2
本発明の式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩のうち、-NR-、または-CHNR-で表されるリンカーを有する化合物(b2-2)は、以下の方法により製造される。
【化22】
(式中、R、R、m、A、X、及びYは項1に定義される通りであり、Rは項11に定義される通りであり、Lb2は本工程により生成するリンカーを表す)
【0128】
本工程はアルデヒドとアミンとの還元的アミノ化反応である。適切な還元剤の存在下、適切な溶媒中、化合物(b2-1)とY-CHOから、化合物(b2-2)を得る工程である。種々の反応条件については、製造法B-1の記載の記載に準じた条件である。
【0129】
本発明の化合物の製造方法について以下に述べる。式(1)で表される本発明の化合物は、例えば下記の製造法により製造することができる。
製造法C-1
本発明の式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩のうち、-O-、-NR-、または-NRC(O)-で表されるリンカーを有する化合物(c1-2)は、以下の方法により製造される。
【化23】
(式中、R、R、m、A、X、及びYは項1に定義される通りであり、LGc1は脱離基を表し、Nuc1は求核剤を表し、Lc1は本工程により生成するリンカーを表す)
【0130】
本工程は脱離基であるLGc1と求核剤であるNuc1-Yとのカップリング反応である。適切な触媒の存在下、適切な塩基の存在下及び非存在下、適切な溶媒中、化合物(c1-1)と求核剤であるNuc1-Yから、化合物(c1-2)を得る工程である。本工程において、触媒としては、パラジウムなどの遷移金属やその塩、その錯体、ポリマーなどの担体に担持させたものを挙げることができる。本工程における脱離基としては、特に限定はされないが、好ましくはボロン酸、ボロン酸エステル、ハロゲン、トリフルオロメタンスルホニル基などが挙げられ、より好ましくは、ボロン酸、ボロン酸エステル、臭素、ヨウ素、トリフルオロメタンスルホニルが挙げられる。本工程における求核剤としては、特に限定されないが、アミン(該アミンはC1-6アルキルで置換されていてもよい)、アルコール、アルキルマグネシウム、アルキル亜鉛、アルキルリチウムなどが挙げられ、より好ましくはアミン(該アミンはC1-6アルキルで置換されていてもよい)及びアルコールが挙げられる。本工程において使用される溶媒は、後記に例示される溶媒等から選択されるが、好ましくはジオキサン-水混合溶媒等が挙げられる。反応時間は、通常、約5分~約48時間であり、好ましくは約10分~約24時間である。反応温度は、通常、約-78℃~約100℃、好ましくは、約0℃~約100℃である。
【0131】
本発明の化合物の製造方法について以下に述べる。式(1)で表される本発明の化合物は、例えば下記の製造法により製造することができる。
製造法D-1
本発明の式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩のうち、-C(O)O-、または-C(O)NR-リンカーを有する化合物(d1-2)は、以下の方法により製造される。
【化24】
(式中、R、R、m、A、X、及びYは項1に定義される通りであり、Nud1は求核剤を表し、Ld1は本工程により生成するリンカーを表す)
【0132】
本工程はカルボン酸を有する化合物(d1-1)とNud1-Yとの縮合反応である。適切な縮合剤の存在下、適切な塩基の存在下及び非存在下、適切な溶媒中、化合物(d1-1)と求核剤であるNud1-Yから、化合物(d1-2)を得る工程である。本工程において、求核剤としては、特に限定はされないが、好ましくはアミン(該アミンは1つのC1-6アルキルで置換されていてもよい)、アルコール、チオールなどが挙げられ、好ましくはアミン(該アミンは1つのC1-6アルキルで置換されていてもよい)、アルコールが挙げられる。本工程において、縮合剤としては、常法に用いられる縮合剤などから選択されるが、好ましくはHBTU、HATU、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(塩酸塩を含む)が挙げられる。本工程において、塩基としては、後記に例示される塩基などから選択されるが、好ましくは3級アルキルアミンが挙げられ、より好ましくはDIPEAやトリエチルアミンが挙げられる。本工程において使用される溶媒は、後記に例示される溶媒等から選択されるが、好ましくはDMF、ジクロロメタン、クロロホルム、THF等が挙げられる。反応時間は、通常、約5分~約48時間であり、好ましくは約10分~約24時間である。反応温度は、通常、約-78℃~約100℃、好ましくは、約0℃~約100℃である。
【0133】
本発明の化合物の製造方法について以下に述べる。式(1)で表される本発明の化合物は、例えば下記の製造法により製造することができる。
製造法D-2
本発明の式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩のうち、-OC(O)-、または-NRC(O)-リンカーを有する化合物(d2-2)は、以下の方法により製造される。
【化25】
(式中、R、R、m、A、X、及びYは項1に定義される通りであり、Nud2は求核剤を表し、Ld2は本工程により生成するリンカーを表す)
【0134】
本工程はNud2を有する化合物(d2-1)とY-COOHとの縮合反応である。適切な縮合剤の存在下、適切な塩基の存在下及び非存在下、適切な溶媒中、求核剤を含む化合物(d2-1)とカルボン酸であるY-COOHから、化合物(d2-2)を得る工程である。種々の反応条件については、工程D-1の記載に準じた条件である。
【0135】
製造法E
本発明の式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩は、例えば下記の製造法により製造される。
【化26】
(式中R、R、m、A、L、X、及びYは項1に定義される通りであり、LGa3は脱離基を表し、R3aはC1-6アルキルを表し、点線は二重結合または単結合を表す)
【0136】
本工程は脱離基であるLGa3と求核剤である化合物(e1-1)に含まれる窒素との置換反応とそれに続く脱保護である。適切な塩基の存在下または非存在下、適切な溶媒中、化合物(e1-1)と化合物(e1-3)から、化合物(e1-2)を得て、続いて適切な酸の存在下、適切な溶媒中、加水分解を行うことにより式(1)で表される化合物を得る工程である。LGa3は製造法A-1に記載されている脱離基と同一である。種々の反応条件については、製造法A-1の記載に準じた条件である。
また、適切な酸としては、有機酸でも無機酸でも良く、好ましくは塩酸が挙げられるが、これに限定されない。
【0137】
上記の各製造法の各工程において使用される塩基は、反応や原料化合物の種類等によって適宜選択されるべきであるが、例えば重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムのような重炭酸アルカリ類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのような炭酸アルカリ類、水素化ナトリウム、水素化カリウムのような金属水素化類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムt-ブトキシドのようなアルカリ金属アルコキシド類、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドのような有機金属塩基類、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)のような有機塩基類が挙げられる。
【0138】
上記の各製造法の各工程において使用される縮合剤は、実験化学講座(日本化学会編、丸善)22巻に記載されているもの等が挙げられる。例えば、シアノリン酸ジエチル、ジフェニルホスホリルアジド等のリン酸エステル類;1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(WSC・HCl)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等のカルボジイミド類;2,2’-ジピリジルジスルフィド等のジスルフィド類とトリフェニルホスフィンのようなホスフィン類の組み合わせ;N,N’-ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィニッククロリド(BOPCl)等のリンハライド類;アゾジカルボン酸ジエチル等のアゾジカルボン酸ジエステルとトリフェニルホスフィン等のホスフィンの組み合わせ;2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨーダイド等の2-ハロ-1-低級アルキルピリジニウムハライド類;1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI);ジフェニルホスホリルアジド(DPPA);ジエチルホスホリルシアニド(DEPC);2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリジニウム テトラフルオロボレート(CIB)等のテトラフルオロボレート類;2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PYBOP)、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HATU)等のホスフェート類等が挙げられる。
【0139】
上記の各製造法の各工程において使用される溶媒は、反応や原料化合物の種類等によって適宜選択されるべきであるが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルケトンのようなケトン類、塩化メチレン、クロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンのようなエーテル類、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸プロピルのようなエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドンのようなアミド類、ジメチルスルホキシド(DMSO)のようなスルホキシド類、アセトニトリルのようなニトリル類、水等が挙げられ、これらの溶媒は単独又は2種類以上混合して用いることができる。また反応の種類によっては、有機塩基類を溶媒として用いてもよい
【0140】
「製薬学的に許容される塩」としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。例えば、酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、又はクエン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、para-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基塩、又はトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチルアミン、の有機塩基塩等が挙げられ、さらにはアルギニン、リジン、オルニチン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸などの塩基性又は酸性アミノ酸といったアミノ酸塩が挙げられる。
出発化合物及び目的化合物の好適な塩及び医薬として許容しうる塩は、慣用の無毒性塩であり、それらとしては、有機酸塩(例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ギ酸塩又はpara-トルエンスルホン酸塩など)及び無機酸塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩又はリン酸塩など)のような酸付加塩、アミノ酸(例えばアルギニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸など)との塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩又はカリウム塩など)及びアルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩など)などの金属塩、アンモニウム塩、又は有機塩基塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩又はN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩など)などの他、当業者が適宜選択することができる。
【0141】
本発明化合物の塩を取得したいとき、本発明化合物が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解もしくは懸濁させ、酸又は塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
また、本発明化合物及びその製薬学的に許容される塩は、水あるいは各種溶媒との溶媒和物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明に包含される。
【0142】
また、式(1)で表される化合物のいずれか1つ又は2つ以上のHをH(D)に変換した重水素変換体も式(1)で表される化合物に包含される。
【0143】
また、本発明には、式(1)で表される化合物、又はその製薬学的に許容される塩が含まれる。また、これらの水和物又はエタノール溶媒和物等の溶媒和物も含まれる。さらに、本発明には、本発明化合物(1)のあらゆる互変異性体、存在するあらゆる立体異性体、及びあらゆる様態の結晶形のものも含まれる。
【0144】
また、式(1)で示されるアデニン化合物とその互変異性体は化学的に等価であり、本発明のアデニン化合物はその互変異性体も含む。該互変異性体は具体的には、式(1’):
【化27】
[式中、X、R、R、m、A、L、Yは前記と同義である。]
で表されるヒドロキシ体である。
【0145】
本発明化合物(1)の中には、光学活性中心に基づく光学異性体、分子内回転の束縛により生じた軸性又は面性キラリティーに基づくアトロプ異性体、その他の立体異性体、互変異性体、及び幾何異性体などが存在し得るものがあるが、これらを含め、全ての可能な異性体及びそれらの混合物は本発明の範囲に包含される。
【0146】
本発明化合物の光学異性体の混合物は通常の方法に従って製造することができる。製造方法としては例えば、不斉点を有する原料を用いる方法か、又は途中の段階で不斉を導入する方法が挙げられる。例えば、光学異性体の場合、光学活性な原料を用いるか、製造工程の適当な段階で光学分割などを行うことで、光学異性体を得ることができる。光学分割法としては例えば、式(1)で表される化合物又はその中間体が、塩基性官能基を有する場合には、不活性溶媒中(例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒、アセトニトリル等の非プロトン系溶媒、又は上記溶媒から選択される2種以上の混合溶媒)、光学活性な酸(例えば、マンデル酸、N-ベンジルオキシアラニン、乳酸等のモノカルボン酸、酒石酸、o-ジイソプロピリデン酒石酸、リンゴ酸等のジカルボン酸、カンファースルホン酸、ブロモカンファースルホン酸等のスルホン酸)を用いて塩を形成させるジアステレオマー法が挙げられる。式(1)で表される本発明化合物又はその中間体が、カルボキシル基などの酸性官能基を有する場合には、光学活性なアミン(例えば1-フェニルエチルアミン、キニン、キニジン、シンコニジン、シンコニン、ストリキニーネ等の有機アミン)を用いて、塩を形成させることにより、光学分割を行うこともできる。
【0147】
式(1)で表される本発明化合物又はその中間体は、当業者に公知の方法で分離、精製することができる。例えば、抽出、分配、再沈殿、カラムクロマトグラフィー(例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィーもしくは分取液体クロマトグラフィー)又は再結晶などが挙げられる。
再結晶溶媒としては例えば、メタノール、エタノールもしくは2-プロパノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ベンゼンもしくはトルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、ジクロロメタンもしくはクロロホルムなどのハロゲン系溶媒、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミドもしくはアセトニトリルなどの非プロトン系溶媒、水、又はこれらの混合溶媒などを用いることができる。その他の精製方法としては、実験化学講座(日本化学会編、丸善)1巻などに記載された方法などを用いることができる。また、本発明化合物の分子構造の決定は、それぞれの原料化合物に由来する構造を参照して、核磁気共鳴法、赤外吸収法、円二色性スペクトル分析法などの分光学的手法、及び質量分析法により容易に行える。
【0148】
また、上記製造方法における中間体又は最終生成物は、その官能基を適宜変換すること、また特に、アミノ基、水酸基、カルボニル基、ハロゲン基などを足がかりに種々の側鎖を伸張すること、および、その際に必要に応じて上記の保護、脱保護を行うことによって、本発明に含まれる別の化合物へ導く事もできる。官能基の変換および側鎖の伸張は、通常行われる一般的方法(例えば、Comprehensive Organic Transformations, R. C. Larock, John Wiley & Sons Inc.(1999)等を参照)によって行うことができる。
【0149】
塩を形成させる温度としては、-50℃から溶媒の沸点までの範囲、好ましくは0℃から沸点までの範囲、より好ましくは室温から溶媒の沸点までの範囲から選択される。光学純度を向上させるためには、一旦、溶媒の沸点付近まで温度を上げることが望ましい。析出した塩を濾取する際、必要に応じて冷却し、収率を向上させることができる。光学活性な酸又はアミンの使用量は、基質に対し約0.5~約2.0当量の範囲、好ましくは1当量前後の範囲が適当である。必要に応じ結晶を不活性溶媒中(例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒、アセトニトリル等の非プロトン系溶媒、又は上記溶媒から選択される2種以上の混合溶媒)で再結晶し、高純度の光学活性な塩を得ることもできる。また、必要に応じて光学分割した塩を通常の方法で酸又は塩基で処理し、フリー体として得ることもできる。
【0150】
以上説明した各々の製造法における原料、中間体のうち、特にあらためてその製造法を記載しなかったものについては、市販化合物であるか、又は市販化合物から当業者に公知の方法、もしくはそれに準じた方法によって合成することができる。
【0151】
本発明は、ワクチンアジュバント、好ましくは癌ワクチンのワクチンアジュバントとして有用な、上に定義した式(1)で示される化合物又はその製薬学的に許容される塩を提供する。
【0152】
本発明はまた、製薬学的に許容し得る希釈剤又は担体を組み合わせて、上に定義した式(1)で示される化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物(以下、本発明の医薬組成物という)を提供する。
【0153】
本発明の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、免疫賦活活性を有する有効成分の免疫賦活活性を維持もしくは増強するためのアジュバントとして用いることができる。
すなわち、本発明の化合物又はその薬学上許容される塩は、抗原特異的抗体、詳しくは抗原特異的IgG、さらに詳しくはTh1型抗原特異的IgG(例えばIgG2c)を誘導又は亢進する活性を有する。
また、本発明の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、細胞傷害性T細胞(CTL)を増加させる活性を有する。または、本発明の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、哺乳動物におけるCTLを誘導する活性、もしくは哺乳動物におけるCTL誘導を増強する活性を有する。
また、本発明の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、CD4陽性(すなわち、MHC class II拘束性)及び/又はCD8陽性(すなわち、MHC Class I拘束性)T細胞を増加させる活性を有する。
また、本発明の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、抗原特異的なT細胞を増加させる活性を有する。
また、本発明の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、メモリーT細胞、詳しくはCD8陽性エフェクターメモリーT細胞を増加させる活性を有する。
また、本発明の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、哺乳動物に投与した場合、CTLを増加させる作用が、同モル数のPEG構造を含まない化合物を投与した場合よりも高いという特徴を有する。
また、本発明の化合物またはその製薬学的に許容される塩は、免疫担当細胞を活性化させる活性を有する。
本発明の医薬組成物は腫瘍抗原を含有し得る。当該腫瘍抗原としては、腫瘍抗原タンパク質、又は当該腫瘍抗原タンパク質由来の腫瘍抗原ペプチドを用いることができる。腫瘍抗原ペプチドとしては、好ましくは後記にある抗原ペプチドを用いることができるが、より好ましくはNY-ESO-1、MAGE-3、WT1、OR7C1またはHer2/neu由来の腫瘍抗原ペプチドが挙げられ、より好ましくはWT1由来の腫瘍抗原ペプチドが挙げられる。更には、腫瘍の遺伝子異常の結果、生成するネオアンチゲン由来のペプチドも本発明の化合物またはその製薬学的に許容される塩と共に用いることができる。
また、本発明の化合物又はその製薬学的に許容される塩と腫瘍抗原を含む医薬組成物は、当該抗原を発現する腫瘍の増殖を阻害する作用、または当該抗原を発現する腫瘍の発生を抑制する予防作用を有する。
従って、本発明の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、以下に示す腫瘍抗原と組合せた医薬組成物として用いることで、癌の治療又は予防のための薬剤として有用である。
【0154】
腫瘍抗原ペプチドとしては、特に限定はないが、国際公開WO2014/157692パンフレットまたは国際公開WO2014/157704A1パンフレットに記載のペプチド等が使用できる。
腫瘍抗原ペプチドの一つの態様として、例えば、以下のアミノ酸配列からなるペプチドまたはそれらの製薬学的に許容される塩である腫瘍抗原ペプチドが挙げられる:
RMFPNAPYL(配列番号:1)、
ALLPAVPSL(配列番号:9)、
SLGEQQYSV(配列番号:10)、
RVPGVAPTL(配列番号:11)、
VLDFAPPGA(配列番号:5)、
CMTWNQMNL(配列番号:12)、
CYTWNQMNL(配列番号:2)、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号:3)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号:13)、
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号:14)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号:15)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号:16)、
CNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号:17)、
KRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号:4)、または
TYAGCLSQIF(配列番号:18)
また、式(4):
【化28】
[式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。]
または
式(5)
【化29】
[式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。]
で表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその製薬学的に許容される塩も本発明における腫瘍抗原ペプチドとして用いることができる。
【0155】
腫瘍抗原ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該合成方法としては、文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis), Interscience,New York, 1966;ザ・プロテインズ(The Proteins), Vol. 2, Academic Press Inc., New York, 1976)などに記載されている方法が挙げられる。
【0156】
別の態様として、本発明の医薬組成物は抗原を含有し得る。当該抗原としては、病原体由来抗原、例えばウイルスもしくは細菌等の病原体由来のタンパク質又はその部分ペプチド等が挙げられ、さらにこれらの抗原と担体との複合体等も本明細書における抗原の範疇に含まれる。このような複合体としては、抗原(タンパク質、ペプチドが挙げられるがこれらに限定されない)が担体となるタンパク質と当業者に周知のリンカーを介して化学的に架橋されたもの、抗原がウイルス様粒子(Virus-like Particle;VLP)に含まれるもの等が挙げられる。従って、本発明の化合物又はその薬学上許容される塩は、前記抗原と組合せて用いることで、ウイルスまたは細菌等の感染症の治療又は予防のための薬剤として有用である。
【0157】
本発明の医薬組成物の投与経路としては、例えば非経口投与、具体的には、血管内(例えば静脈内)、皮下、皮内、筋肉内、腫瘍内、リンパ節、経皮投与が挙げられる。
【0158】
一態様において、本発明の医薬組成物は、式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩及び薬学上許容される希釈剤もしくは担体を含有し得る。
【0159】
本発明の医薬組成物の形態としては、液剤等が挙げられる。
【0160】
本発明の液剤としては、水性溶液製剤もしくは水性懸濁液剤、油性溶液製剤もしくは油性懸濁液剤、ハイドロゲル製剤、脂質製剤、又はエマルション製剤等が挙げられる。
水性溶液製剤もしくは水性懸濁液剤としては、例えば抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)、及び/又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を水に溶解又は分散させた製剤が挙げられる。
油性溶液製剤もしくは油性懸濁液剤としては、例えば抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)、及び/又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を油性成分に溶解又は分散させた製剤が挙げられる。
ハイドロゲル製剤としては、例えば抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)、及び/又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を水に溶解又は分散させ粘稠性を付与した製剤が挙げられる。
脂質製剤としては、例えば抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)、及び/又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有するリポソーム製剤が挙げられる。
エマルション製剤としては、例えば抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)、及び/又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する水性の溶液及び油状組成物を含む製剤が挙げられる。
本発明の液剤の別の態様としては、腫瘍抗原、及び/又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を水に溶解又は分散させた水性溶液製剤もしくは水性懸濁液剤;腫瘍抗原、及び/又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を油性成分に溶解又は分散させた油性溶液製剤もしくは油性懸濁液剤;水性の溶液及び油状組成物を含むエマルション製剤等が挙げられる。
本発明の水性溶液製剤もしくは水性懸濁液剤に使用される添加剤としては、例えば精製水、注射用水、緩衝剤、pH調節剤、安定化剤、等張化剤、可溶化剤又は溶解補助剤等が挙げられる。
本発明の油性溶液製剤もしくは油性懸濁液剤に使用される添加剤としては、例えば緩衝剤、pH調節剤、安定化剤、等張化剤、動植物性油脂、炭化水素類、脂肪酸、脂肪酸エステル類、可溶化剤又は溶解補助剤等が挙げられる。
本発明のハイドロゲル製剤に使用される添加剤としては、例えば精製水、注射用水、緩衝剤、pH調節剤、安定化剤、等張化剤、可溶化剤、溶解補助剤、又は粘稠剤等が挙げられる。
本発明のリポソーム製剤に使用される添加剤としては、例えば精製水、注射用水、緩衝剤、pH調節剤、安定化剤、等張化剤、可溶化剤、溶解補助剤、又は脂質類等が挙げられる。
【0161】
本発明のエマルション製剤としては、水中油型エマルション(O/Wエマルションとも記載する)、油中水型エマルション(W/Oエマルションとも記載する)、水中油中水型エマルション(W/O/Wエマルションとも記載する)又は油中水中油型エマルション(O/W/Oエマルションとも記載する)を用いることができる。本発明のエマルション製剤として好ましくは油中水型エマルション(W/Oエマルション)が挙げられる。本発明のエマルション製剤は、公知の方法により水相及び油相を乳化して製造することができる。抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)、及び/又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩は、エマルション中の油相及び水相のいずれか一方又はその両方に含有させることができる。
本発明のエマルション製剤に使用される添加剤としては、例えば、水、緩衝剤、pH調節剤、安定化剤、等張化剤、動植物性油脂、炭化水素類、脂肪酸、脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、親水性界面活性剤、及び親油性界面活性剤等が挙げられる。ここで水としては精製水、注射用水等が挙げられ、緩衝剤としてはリン酸塩、有機酸塩等が挙げられ、pH調節剤としては塩酸、水酸化ナトリウム等が挙げられ、安定化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、亜硫酸塩等が挙げられ、等張化剤としては食塩、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等が挙げられ、動植物性油脂としてはオリーブ油、大豆油、肝油等が挙げられ、炭化水素類としては流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等が挙げられ、脂肪酸としてはオレイン酸、ミリスチン酸等が挙げられ、脂肪酸エステル類としてはオレイン酸エチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられ、グリセリン脂肪酸エステル類としては中鎖脂肪酸トリグリセリド、中鎖脂肪酸ジグリセリド、中鎖脂肪酸モノグリセリド等が挙げられ、親水性界面活性剤としてはポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート類等が挙げられ、親油性界面活性剤としてはモノオレイン酸グリセリン、ジオレイン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン(Span 80(登録商標))、セスキオレイン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン(Span 85(登録商標))、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、植物由来界面活性剤(サポニン等)等が挙げられる。
本発明のエマルション製剤における添加剤の組成として具体的には、国際公開WO2006/078059に記載の希釈用乳化組成物、Montanide ISA 51 VG(Seppic社)、Montanide ISA 720 VG(Seppic社)、Incomplete Freund's Adjuvant(IFA)等を用いることができるが、これらに限定されない。
本発明のW/Oエマルション製剤としては、式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩、オレイン酸エチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、グリセリン、及びリン酸二水素ナトリウムを含有する製剤;又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩、及びMontanide ISA 51 VGを含有する製剤が挙げられる。
【0162】
本発明のリポソーム製剤において、リポソームとは、両親媒性脂質分子の二分子膜(脂質二重層)などの脂質多重層からなる内相を有する微小胞を意味する。ここで脂質多重層は好ましくは脂質二重層である。
【0163】
本発明のリポソーム製剤としては、両親媒性脂質分子を含む。両親媒性脂質分子としては、好ましくは少なくとも1種以上の「リン脂質」を含む。「リン脂質」としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリンなどが挙げられる。「リン脂質」として好ましくは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリンが挙げられる。「リン脂質」としてより好ましくは、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリンが挙げられる。
「リン脂質」における脂肪酸残基は特に限定されないが、例えば、炭素数14~18の飽和または不飽和の脂肪酸残基が挙げられ、具体的には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪酸由来のアシル基が挙げられる。また、卵黄レシチン、大豆レシチン等の天然物由来のリン脂質、およびその不飽和脂肪酸残基に水素添加した水素添加卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン(水素添加大豆リン脂質、または水素添加大豆ホスファチジルコリンともいう)等を用いることもできる。
リポソーム膜成分全体に対するリン脂質の配合量(モル分率)は特に限定されないが、好ましくは30~80%が挙げられ、より好ましくは40~70%が挙げられる。
【0164】
本発明の化合物を内封するリポソームは、ステロール類を含むことができる。
ステロール類としては、コレステロール、β-シトステロ-ル,スチグマステロ-ル,カンペステロ-ル,ブラシカステロ-ル、エルゴステロ-ル、及びフコステロ-ル等が挙げられる。ステロール類として好ましくは、コレステロールが挙げられる。リポソーム膜成分全体に対するステロール類の配合量(モル分率)は特に限定されないが、好ましくは0~60%が挙げられ、より好ましくは10~50%が挙げられ、さらに好ましくは30~50%が挙げられる。
【0165】
本発明の化合物を内封するリポソームは、ポリマー修飾脂質を含むことができる。ポリマー修飾脂質とは、ポリマーで修飾された脂質を意味する。ポリマー修飾脂質は、「「脂質」-「ポリマー」」で表される。ポリマー修飾脂質のポリマー部分としては、親水性ポリマーが好ましく、より好ましくは、脂質と結合していないポリマーの末端がアルコキシ化されている親水性ポリマーが好ましい。ポリマー修飾脂質のポリマー部分として更に好ましくは、脂質と結合していないポリマーの末端がメトキシ化、エトキシ化又はプロポキシ化されている親水性ポリマーが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分として最も好ましくは、脂質と結合していないポリマーの末端がメトキシ化されている親水性ポリマーが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリビニルアルコール、メトキシポリビニルピロリドン、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリビニルアルコール、エトキシポリビニルピロリドン、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリプロピレングリコール、プロポキシポリビニルアルコール、及びプロポキシポリビニルピロリドンが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分として、好ましくはポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、及びプロポキシポリプロピレングリコールが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分として、より好ましくはポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、及びプロポキシポリエチレングリコールが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分として、更により好ましくはポリエチレングリコール、及びメトキシポリエチレングリコールが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分として、最も好ましくはメトキシポリエチレングリコールが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分の分子量は特に限定されないが、例えば、100~10000ダルトンが挙げられ、好ましくは500~8000ダルトンが挙げられ、より好ましくは1000~7000ダルトンが挙げられ、さらに好ましくは1500~5000ダルトンが挙げられ、最も好ましくは1500~3000ダルトンが挙げられる。ポリマー修飾脂質の脂質部分としては、具体的には特に限定されないが、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、及びジアシルグリセロールが挙げられる。ポリマー修飾脂質の脂質部分として好ましくは、炭素数14~18の飽和または不飽和の脂肪酸残基を有するホスファチジルエタノールアミン、及び炭素数14~18の飽和または不飽和の脂肪酸残基を有するジアシルグリセロールが挙げられ、より好ましくは炭素数14~18の飽和脂肪酸残基を有するホスファチジルエタノールアミン、及び炭素数14~18の飽和脂肪酸残基を有するジアシルグリセロールが挙げられ、更に好ましくは、パルミトイル基またはステアロイル基を有するホスファチジルエタノールアミン、及びパルミトイル基またはステアロイル基を有するジアシルグリセロールが挙げられる。ポリマー修飾脂質の脂質部分として最も好ましくは、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。リポソーム膜成分全体に対するポリマー修飾脂質の配合量(モル分率)は特に限定されないが、好ましくは0~20%が挙げられ、より好ましくは1~10%が挙げられ、さらに好ましくは2~6%が挙げられる。
【0166】
本発明の化合物を内封するリポソームは、医薬的に許容される添加物を含むことができる。添加物として、例えば、無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩、糖類、緩衝剤、抗酸化剤、及びポリマー類が挙げられる。無機酸としては、例えば、リン酸、塩酸、及び硫酸が挙げられる。無機酸塩としては、例えば、リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、及び硫酸マグネシウムが挙げられる。有機酸としては、例えば、クエン酸、酢酸、コハク酸、及び酒石酸が挙げられる。有機酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、及び酒石酸ナトリウムが挙げられる。糖類としては、例えば、グルコース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、及びトレハロースが挙げられる。緩衝剤としては、例えば、L-アルギニン、L-ヒスチジン、トロメタモール(トリスヒドロキシメチルアミノメタン、Tris)及びそれらの塩が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、L-システイン、チオグリコール酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、及びトコフェロールが挙げられる。ポリマー類としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。
【0167】
本発明の油性懸濁製剤は、抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)、及び/又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を、油性成分に溶解及び分散のいずれか一方又はその両方の状態で含有させることができる。本発明の油性懸濁液剤に使用される添加剤としては、例えば緩衝剤、pH調節剤、安定化剤、等張化剤、動植物性油脂、炭化水素類、脂肪酸、脂肪酸エステル類、可溶化剤又は溶解補助剤等が挙げられる。ここで緩衝剤としてはリン酸塩、有機酸塩等が挙げられ、pH調節剤としては塩酸、水酸化ナトリウム等が挙げられ、安定化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、亜硫酸塩等が挙げられ、等張化剤としては食塩、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等が挙げられ、動植物性油脂としてはオリーブ油、大豆油、肝油等が挙げられ、炭化水素類としては流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等が挙げられ、脂肪酸としてはオレイン酸、ミリスチン酸等が挙げられ、脂肪酸エステル類としてはオレイン酸エチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられ、可溶化剤又は溶解補助剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール類、エタノール等が挙げられる。
【0168】
本発明のハイドロゲル製剤としては例えば抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)、及び/又は式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を水に溶解又は分散させ粘稠性を付与した製剤が挙げられる。本発明のハイドロゲル製剤に使用される添加剤としては、例えば精製水、注射用水、緩衝剤、pH調節剤、安定化剤、等張化剤、可溶化剤、溶解補助剤、又は粘稠剤等が挙げられる。ここで緩衝剤としてはリン酸塩、有機酸塩等が挙げられ、pH調節剤としては塩酸、水酸化ナトリウム等が挙げられ、安定化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、亜硫酸塩等が挙げられ、等張化剤としては食塩、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等が挙げられ、可溶化剤又は溶解補助剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール類、エタノール等が挙げられ、粘稠化剤としてはカルメロースナトリウム、ポロキサマー類、ポピドン等が挙げられる。
【0169】
本明細書に記載の式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩、もしくは本発明の医薬組成物は、上記の腫瘍抗原に加えてさらに他の薬物(本明細書中、併用薬物とも称する)と組み合わせて用いることができる。
【0170】
ある実施形態において、式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩、もしくは本発明の医薬組成物は、上記の腫瘍抗原に加えてさらに「免疫調節剤」と併用することができる。本明細書において「免疫調節剤」とは、抗原提示細胞によるT細胞活性化において抗原提示細胞上及び/またはT細胞上の補助刺激シグナルの伝達に関与する分子に相互作用することにより補助刺激シグナルの伝達を制御する、または、免疫機構において直接的または間接的に免疫寛容(免疫抑制)の成立に関与する分子の機能を制御するもの全てをいう。腫瘍抗原ペプチドは腫瘍内に腫瘍反応性のCTLを増加させる薬剤であるため、免疫調節剤との併用により、免疫調節剤の投与量を減弱し、有害事象を軽減できる可能性がある。すなわち、WT1抗原ペプチドと免疫調節剤との併用により、より高い効果とより高い安全を併せ持った治療法を患者に提供することができる。
【0171】
「免疫調節剤」は、抗体、核酸、タンパク質、ペプチドおよび低分子化合物から選択される薬剤であり得るが、これらに限定されない。「免疫調節剤」に関する記載において、「抗体」なる用語には抗体断片も含まれる。抗体断片としては、抗体の重鎖および軽鎖可変領域(VHおよびVL)、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、Fd、sdFv、scFVなどが例示される。「免疫調節剤」に関する記載において、タンパク質は抗体を除くあらゆるタンパク質を意味する。「免疫調節剤」には、例えば、免疫チェックポイント阻害剤、共刺激分子アゴニスト剤、免疫活性化剤、および低分子阻害剤が含まれる。
【0172】
「免疫チェックポイント阻害剤」は、癌細胞や抗原提示細胞による免疫抑制作用を阻害する。免疫チェックポイント阻害剤としては、特に限定されないが、以下からなる群から選択される分子に対する薬剤が挙げられる:(1)CTLA-4(イピリムマブ、トレメリムマブなど);(2)PD-1(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、AMP-224、AMP-514(MEDI0680)、ピディリズマブ(CT-011)など);(3)LAG-3(IMP-321、BMS-986016など);(4)BTLA;(5)KIR(IPH2101など);(6)TIM-3(LY3321367、CA-327など);(7)PD-L1(Durvalumab(MEDI4736)、MPDL3280A、BMS-936559、アベルマブ(MSB0010718C)、BMS-1001、BMS-1116,CA-170,CA-327など);(8)PD-L2;(9)B7-H3(MGA-271など);(10)B7-H4;(11)HVEM;(12)GAL9;(13)CD160;(14)VISTA(オンバチリマブ(JNJ―61610588)、HMBD-002、CA-170など);(15)BTNL2;(16)TIGIT;(17)PVR;(18)BTN1A1;(19)BTN2A2;(20)BTN3A2(Nat Rev Drug Discov. 2013; 12: 130-146;日経メディカル Cancer Review 2014; 9;Nat Rev Immunol. 2014; 14: 559-69);(21)CSF1-R;(22)VSIG-3;(23)CD112;(24)CD112Rおよび(25)CD96。
【0173】
「共刺激分子アゴニスト剤」は、T細胞上や抗原提示細胞上の共刺激分子を介した補助シグナルを伝達することにより、T細胞を活性化し、癌細胞や抗原提示細胞による免疫抑制作用を減弱させる。共刺激分子アゴニスト剤としては、特に限定されないが、以下の群から選択される分子に対する薬剤が挙げられる:(1)4-1BB(2)4-1BB-L;(3)OX40(4)OX40-L;(5)GITR;(6)CD28;(7)CD40;(8)CD40-L(9)ICOS;(10)ICOS-L;(11)LIGHT;(12)CD27;および(13)DNAM-1。
【0174】
「免疫活性化剤」は、T細胞や樹状細胞など免疫細胞を直接的あるいは間接的に活性化させることにより、リンパ節においてキラーT細胞を効率良く刺激する。免疫活性化剤としては、特に限定されないが、Toll様受容体(TLR)作動薬、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)作動薬、サイトカイン、またはヒートショックプロテイン(HSP)に対する薬剤が挙げられる。
【0175】
「Toll様受容体(TLR)作動薬」としては、特に限定されないが、例えば、TLR1/2作動薬、TLR2作動薬、TLR3作動薬(PolyI:Cなど)、TLR4作動薬(S型リポ多糖、パクリタキセル、リピドA、モノホスホリルリピドAなど)、TLR5作動薬(フランジェリンなど)、TLR6/2作動薬(MALP-2など)、TLR7作動薬、TLR7/8作動薬(ガーディキモド、イミキモド、ロキソリビン、レシキモド(R848)など)、TLR7/9作動薬(ヒドロキシクロロキン硫酸塩など)、TLR8作動薬(モトリモド(VTX-2337)など)、TLR9作動薬(CpG-ODNなど)、TLR11作動薬(プロフィリン)などが挙げられる。
【0176】
「サイトカイン」としては、特に限定されないが、例えば、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、インターフェロン(INF)-α、INF-β、INF-γ、SCF、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、エリスロポエチン、トロンポポエチン、MIP(macrophage inflammatory protein)およびMCP(monocyte chemoattractant protein)などが挙げられる。
【0177】
「ヒートショックプロテイン(HSP)」としては、特に限定されないが、HSP70、HSP90、HSP90α、HSP90β、HSP105、HSP72,HSP40などが挙げられる。HSPに対する薬剤には、HSP阻害剤が含まれる。例えば、HSP90阻害剤として、特に限定されないが、タネスピマイシン(17-AAG)、ルミネスピブ(AUY-922、NVP-AUY922)、アルベスピマイシン(17-DMAG)塩酸塩、ガネテスピブ(STA-9090)、BIIB021、オナレスピブ(AT13387)、ゲルダナマイシン、NVP-BEP800、SNX-2112(PF-04928473)、PF-4929113(SNX-5422)、KW-2478、XL888、VER155008、VER-50589、CH5138303、VER-49009、NMS-E973、PU-H71、HSP990(NVP-HSP990)またはKNK437などが挙げられる。
【0178】
「低分子阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、ヒストン脱アセチル化阻害剤、ヒストン脱メチル化阻害薬、ヒストンアセチル化酵素阻害剤、ヒストンメチル化酵素阻害剤、DNAメチル基転移酵素阻害剤、アントラサイクリン系抗生物質、白金製剤、MAPK阻害剤、β-カテニン阻害剤、STAT3阻害剤、NF-kB阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害剤、IDO阻害剤、COX-2阻害剤CXCR4阻害剤およびアルギナーゼ阻害剤などが挙げられる。
【0179】
「ヒストン脱アセチル化阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、ボリノスタット(SAHA、MK0683)、エンチノスタット(MS-275)、パノビノスタット(LBH589)、トリコスタチンA(TSA)、モセチノスタット(MGCD0103)、BG45、BRD73954、ベリノスタット(PXD101)、ロミデプシン(FK228、デシペプチド)、4SC-202、HPOB、LMK-235、CAY10603、タスキニモド、TMP269、Nexturastat A、Rocilinostat(ACY-1215)、RGFP966、RG2833(RGFP109)、Scriptaid、ツバスタチンA、Pracinostat(SB939)、CUDC-101、M344、PCI-34051、ダシノスタット(LAQ824)、ツバスタチンA塩酸塩、アベキシノスタット(PCI-24781)、CUDC-907、AR-42、フェニル酪酸ナトリウム、レスミノスタット、ツバシン、キシノスタット(JNJ-26481585)二塩酸塩、MC1568、Givinostat(ITF2357)、Droxinostat、Chidamide(C S055、HBI-8000)、CHR-2485、CHR-3996、DAC-060、FRM-0334(EVP-0334)、MGCD-290、CXD-101(AZD-9468)、CG200745、アルギニン酪酸塩、スルフォラファン、SHP-141、CUDC-907、YM753(OBPー801)、バルプロ酸ナトリウム、アピシジンおよびCI994(Tacedinaline)などが挙げられる。
【0180】
「ヒストン脱メチル化阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、GSK J4 HCl、OG-L002、JIB-04、IOX1、SP2509、ORY-1001(RG-6016)、GSK J1、ML324、GSK-LSD1 2HClなどが挙げられる。
【0181】
「ヒストンアセチル化酵素阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、C646、MG149、Remodelin、およびAnacardic Acidなどが挙げられる。
【0182】
「ヒストンメチル化酵素阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、Pinometostat(EPZ5676)、EPZ005678、GSK343、BIX01294、Tazemetostat(EPZ6438)、3-deazaneplanocin A(DZNeP)HCl、UNC1999、MM-102、SGC0946、エンタカポン、EPZ015666、UNC0379、EI1、MI-2(Menin-MLL Inhibitor)、MI-3(Menin-MLL Inhibitor)、PFI-2、GSK126、EPZ04777、BRD4770、GSK-2816126およびUNC0631などが挙げられる。
【0183】
「DNAメチル基転移酵素阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、デシタビン、アザチジン、RG108、チオグアニン、ゼブラリン、SGI-110、CC-486、SGI-1027、ロメグアトリブおよびプロカイナミド塩酸塩などが挙げられる。
【0184】
「アントラサイクリン系抗生物質」は、DNA鎖間への挿入によって、DNAがほどかれることを阻害する。アントラサイクリン系抗生物質としては、特に限定されないが、例えば、ドキソルビシン、リポソーマルドキソルビシン、ダウノルビシン、ピラルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、アムルビシン、アロインまたはミトキサトロンなどが挙げられる。
【0185】
「白金製剤」としては、特に限定されないが、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、サトラプラチン(JM-126)、オキサリプラチン(ELOXATIN)、四硝酸トリプラチンまたはそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0186】
「MAPK阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、SB203580、ドラマピモド(BIRB796)、SB202190(FHPI)、LY2228820、VX-702、SB239063、Pexmetinib(ARRY-614)、PH-797804、VX-745またはTAK-715などが挙げられる。
【0187】
「β―カテニン阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、XAV-939、ICG-001、IWR-1-endo、Wnt-C59(C59)、LGK-974、KY02111、IWP-2、IWP-L6、WIKI4またはFH535などが挙げられる。
【0188】
「STAT3阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、S3I-201、Stattic、ニクロサミド、ニフロキサジド、ナパブカシン(BBI608)、クリプトタンシノン、HO-3867、WHI-P154、FLLL32、STA-21、WP1066またはSH-4-54などが挙げられる。
【0189】
「NF-kB阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、QNZ(EVP4593)、4-アミノサリチル酸ナトリウム、JSH-23、カフェイン酸フェネチル、サリチル酸ナトリウム、アンドログラホリドまたはSC75741などが挙げられる。
【0190】
「JAK阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、ルキソリチニブ(INCB018424)、トファシチニブ(CP-690550)クエン酸塩、AZD1480、フェドラチニブ(SAR302503、TG101348)、AT9283、チロホスチンB42(AG-490)、モメロチニブ(CYT387)、トファシチニブ(CP-690550、タソシチニブ)、WP1066、TG101209、ガンドチニブ(LY2784544)、NVP-BSK805 2HCl、バリシチニブ(LY3009104、INCB02850)、AZ960、CEP-33779、パクリチニブ(SB1518)、WHI-P154、XL019、S-ルクソリチニブ(INCB018424)、ZM39923 HCl、デセルノチニブ(VX-509)、Cerdulatinib(PRT062070、PRT2070)、フィルゴチニブ(GLPG0634)、FLLL32、ペフィシチニブ(ASP015K、JNJ-54781532)、GLPG0634 analogue、Go6976またはCurcumolなどが挙げられる。
【0191】
「mTOR阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、シロリムス(ラパマイシン)、デフォロリムス(AP23573、MK-8669)、エベロリムス(RAD-001)、テムシロリムス(CCI-779、NSC683864)、ゾタロリムス(ABT-578)、およびバイオリムスA9(ウミロリムス)、AZD8055、KU-0063794、Voxtalisib(XL765、SAR245409)、MHY1485、ダクトリシブ(BEZ235、NVP-BEZ235)またはPI-103、Torkinib(PP242)などが挙げられる。
【0192】
「IDO阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、NLG919、INCB024360アナログ、インドキシモド(NLG-8189)およびEpacadostat(INCB024360)などが挙げられる。
【0193】
「COX2阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、カルプロフェン、セレコキシブ、ルミラコキシブ、トルフェナム酸、ニメスリド、ニフルム酸、Asaraldehyde、ロルノキシカム、メクロフェナミン酸ナトリウム、アンフェナックナトリウム水和物、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラック、ナプロキセンナトリウム、インドメタシン、イブプロフェン、アスピリン、メフェナム酸、ブロムフェナクナトリウム、オキサプロジン、ザルトプロフェンおよびネパフェナックなどが挙げられる。
【0194】
「CXCR4阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、WZ811、Plerixafor(AMD3100)およびPlerixafor 8HCl(AMD3100 8HCl)などが挙げられる。
【0195】
本明細書に記載の式(1)で表される化合物、およびそれらの製薬学的に許容される塩、並びに組成物は、「ホルモン療法剤」、「免疫療法剤」、「生物学的製剤」、「細胞増殖因子」、「細胞増殖因子阻害剤」、「細胞増殖因子受容体阻害剤」、「放射線療法剤」、「補助剤」もしくは「化学療法剤」からなる群から選択される1又は複数の薬物と併用することができる。例えば、前記ペプチド、化合物、およびそれらの薬学上許容される塩、並びにこれらの組み合わせは、上記群から選択される1~5種類、1~3種類、または1種類の薬物と併用することができる。
【0196】
「ホルモン療法剤」としては、副腎皮質ホルモン系薬剤(例えば、ステロイド系抗炎症薬、エストロゲン製剤、プロゲステロン製剤、アンドロゲン製剤など)、抗エストロゲン剤、エストロゲン調整剤、エストロゲン合成阻害剤、抗アンドロゲン剤、アンドロゲン調整剤、アンドロゲン合成阻害剤、LH-RHアゴニスト製剤、LH-RHアンタゴニスト製剤、アロマターゼ阻害剤、ステロイドラクトナーゼ阻害剤、ピル製剤、またはレチノイド及びレチノイドの代謝を遅らせる薬剤などが挙げられる。
【0197】
「ホルモン療法剤」としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、フルオキシメステロール、クロロトリアニセン、メチルテストステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、アリルエストレノール、ゲストリノン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン、ヨードキシフェン、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン、ロイプロリド、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、エストラムスチン、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、テロラゾール、ケトコナゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン、エキセメスタン、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、エンザルタミド、ミフェプリストン、フィナステロド、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、アビラテロン、リアロゾール、ベキサロテンまたはDN101などが挙げられる。
【0198】
「免疫療法剤」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン(IL)-α、インターフェロン(IL)-β、インターフェロン(IL)-γ、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾール、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体またはTLR作動薬(例えば、TLR7作動薬、TLR8作動薬、TLR9作動薬)などが挙げられる。
【0199】
「生物学的製剤」としては、特に限定されないが、例えば、インターロイキン-2(Aldesleukin)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、エリスロポイエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(フィルグラスチン)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(サルグラモスチム)、IL13-PE38QQR、バチルスカルメット-ゲラン、レバミゾール、オクトレオチド、CPG7909、Provenge、GVAX、Myvax、Favld、レナリドマイド、トラスツズマブ、リツキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、アレムツズマブ、エンドスタチン、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ、セツキシマブ、ザノリムマブ、オファツムマブ、HGS-ETR1、ペルツズマブ、M200、SGN-30、マツズマブ、アデカツマブ、デノスマブ、ザルツムマブ、MDX-060、ニモツズマブ、MORAb-003、Vitaxin、MDX-101、MDX-010、DPC4抗体、NF-1抗体、NF-2抗体、Rb抗体、p53抗体、WT1抗体、BRCA1抗体、BRCA2抗体、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異抗原(PSA)、α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、黒色腫関連抗原(MART-1、gap100、MAGE1,3チロシン)、乳頭腫ウイルスE6およびE7断片、またはそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0200】
前記「細胞増殖因子」、「細胞増殖因子阻害剤」および「細胞増殖因子受容体阻害剤」における細胞増殖因子は、細胞増殖を促進する物質であれば、どのようなものでもよく、例えば、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用を発揮する因子があげられる。
【0201】
「細胞増殖因子」として、特に限定されないが、例えば、上皮成長因子(Epidermal Growth Factor:EGF)、インスリン様成長因子(Insulin-Like Growth Factor:IGF(例えば、インスリン、IGF-1、IGF-2など))、トランスフォーミング成長因子(Transforming Growth Factor:TGF(例えば、TGFーalpha、TGF-beta))、神経成長因子(Nerve Growth Factor:NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain-derived Neurotrophic Factor:BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(Vesicular Endothelial Growth Factor:VEGF)、コロニー刺激因子(Colony Stimulating Factor:CSF(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte-Colony Stimulating Factor:G-CSF))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte-Macrophage-Colony Stimulating Factor:GM-CSF))、血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor:PDGF)、エリスロポエチン(Erythropoietin:EPO)、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor:FGF、(例えば、酸性FGF、塩基性FGF、KGK(Keratinocyte Growth Factor)、FGF-10など))、肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor:HGF)へレグリン、またはアンジオポエチンなどが挙げられる。なお、細胞増殖因子は、成長因子と同義である。
【0202】
「細胞増殖因子阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、上皮成長因子阻害剤(EGF阻害剤)、インスリン様成長因子阻害剤(IGF阻害剤)、神経成長因子阻害剤(NGF阻害剤)、脳由来神経栄養因子阻害剤(NGF阻害剤)、血管内皮細胞増殖因子阻害剤(VEGF阻害剤)、コロニー刺激因子阻害剤(CSF阻害剤)、血小板由来成長因子阻害剤(PDGF阻害剤)、エリスロポエチン阻害剤(EPO阻害剤)、線維芽細胞増殖因子阻害剤(FGF阻害剤)、肝細胞増殖因子阻害剤(HGF阻害剤)、へレグリン阻害剤、またはアンジオポエチン阻害剤などが挙げられる。なお、細胞増殖因子阻害剤は、成長因子阻害剤と同義である。
【0203】
「細胞増殖因子受容体阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、上皮成長因子受容体阻害剤(EGFR阻害剤)、インスリン様成長因子受容体阻害剤(IGFR阻害剤)、神経成長因子受容体阻害剤(NGFR阻害剤)、脳由来神経栄養因子受容体阻害剤(NGFR阻害剤)、血管内皮細胞増殖因子阻害剤(VEGF阻害剤)、コロニー刺激因子阻害剤(CSF阻害剤)、血小板由来成長因子受容体阻害剤(PDGFR阻害剤)、エリスロポエチン受容体阻害剤(EPOR阻害剤)、線維芽細胞増殖因子受容体阻害剤(FGFR阻害剤)、肝細胞増殖因子受容体阻害剤(HGFR阻害剤)、へレグリン受容体阻害剤、またはアンジオポエチン受容体阻害剤などが挙げられる。なお、細胞増殖因子受容体阻害剤は、成長因子受容体阻害剤と同義である。
【0204】
「放射線療法剤」として、特に限定されないが、例えば、放射性物質及び放射性増感剤などが挙げられる。
【0205】
「補助剤」は、抗がん剤による副作用や嘔吐を抑制するために用いられ、特に限定されないが、例えば、アプレピタント、オンダンセトロン、ロラゼパム、デキサメタゾン、ジフェンヒドラミン、ラニチジン、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、シメチジン、プロクリット、エポエチンアルファ、フィルグラスチム、オプレルベキン、ロイコボリン及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などが挙げられる。
【0206】
「化学療法剤」としては、特に限定されないが、例えば、アルキル化剤、白金製剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレータ、抗有糸分裂剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤、エピゲノム薬、免疫調整薬、分子標的治療薬、新脈管形成阻害剤及びその他の化学療法剤などが用いられる。代表的な例を次に記載する。
【0207】
「アルキル化剤」としては、特に限定されないが、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード-N-オキシド、クロラムブシル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、プロカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾジン、ピポブロマン、エトグルシド、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、セムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシン、メクロエタミン、ウラシルマスタード、ストレプトゾシン、トラベクテジン、ベカテリン、クロルメチン、マンノスルファン、トリアジコン、プロカルバシン、カンホスファミド、ニトロソウレア及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0208】
「白金製剤」としては、特に限定されないが、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、サトラプラチン、オキサリプラチン、四硝酸トリプラチン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0209】
「代謝拮抗剤」としては、特に限定されないが、例えば、葉酸代謝拮抗薬、ピリミジン代謝阻害薬、プリン代謝阻害薬、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害薬、及びヌクレオチドアナログが挙げられる。
【0210】
「代謝拮抗剤」としては、特に限定されないが、例えば、メルカプトプリン、6-メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、エオシタビン、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5-FU系薬剤(例えば、フルオロウラシル、カルゾナール、ベンナン、ルコナール、ルナボン、テガフール、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール、カペシタビンなど)、アミノプテリン、ネララビン、ロイコポリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルパミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチン、ベンダムスチン、フロクスウリジン、ネララビン、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン、アスパラギナーゼ、ボルテゾミブ、ラルチトレキセド、クロファラビン、エノシタビン、サパシタビン、アザシチジン、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、Liproxstatin-1、D4476、Xanthohumol、Epacadostat(INCB024360)、Vidofludimus、P7C3、GMX1778(CHS828)、NCT-501、SW033291、Ro61-8048及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0211】
「トポイソメラーゼ阻害薬」としては、特に限定されないが、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アントラセンジオン、ミトキサントロン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシン、イリノテカン、カンプトテシン、ルビテカン、ベロテカン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、アムサクリン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0212】
「DNAインターカレータ」としては、特に限定されないが、例えば、プロフラビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、サリドマイド及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0213】
「抗有糸分裂剤」としては、特に限定されないが、例えば、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体(例えば、DHAパクリタキセル、ポリグルタメート化パクリタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセルミセル、7α‐グルコシルオキシアセチルパクリタキセル、BMS-275183など)、ドセタキセル、ビノルレビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、エトポシド、テニポシド、イクサベピロン、ラロタキセル、オルタタキセル、テセタキセル、イスピネシブ、コルヒチン、ビンフルニン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0214】
「抗癌性抗生物質」としては、特に限定されないが、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、ミトラマイシンA、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、塩酸アルムビシン、ネオカルチノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシン、リポソーマルドキソビルシン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0215】
「植物由来抗癌剤」としては、特に限定されないが、例えば、イリノテカン、ノギテカン、エトポシド、リン酸エトポシド、エリブリン、ソブゾキサン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、パクリタキセル注射剤、ドセタキセル、DJ-927、ビノレルビン、トポテカン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0216】
「エピゲノム薬」としては、特に限定されないが、例えば、DNAメチル化阻害薬、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、DNAメチル基転移酵素(DNMT)阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素活性化剤、ヒストン脱メチル化酵素阻害剤およびメチル化ヌクレオチドなどが挙げられる。
【0217】
「エピゲノム薬」としては、特に限定されないが、例えば、ボリノスタット、ベリノスタット、モセチノスタット(MGCD0103)、エンチノスタット(SNDX-275)、ロミデプシン、アザシチジン、デシタビン、GSK2879552 2Hl、SGC707、ORY-1001(RG-6016)、PFI-4、SirReal2、GSK2801、CPI-360、GSK503、AMI-1、CPI-169及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0218】
「免疫調整薬」としては、特に限定されないが、例えば、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0219】
「分子標的治療薬」は、低分子化合物であっても抗体であってもよい。「分子標的治療薬」としては、特に限定されないが、例えば、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、モノクローナル抗体、mTOR阻害剤、TNF阻害薬、及びT細胞阻害薬などが挙げられる。
【0220】
「キナーゼ阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤、CDK(サイクリン依存性キナーゼ)阻害剤、及びMEK(分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ)阻害剤などが挙げられる。
【0221】
具体的には、「キナーゼ阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、バンデタニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、レンバチニブ、ラパチニブ、ニンテダニブ、ニロチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ルキソリチニブ、トファシチニブ、イブルチニブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、パルボシクリブ、トラメチニブ、レゴラフェニブ、セジバニブ、レスタウルチニブ、バンデチニブ、バタラニブ、セリシクリブ、チバンチニブ、カネルチニブ、ペリチニブ、テセバチニブ、セジラニブ、モテサニブ、ミドスタウリン、フォレチニブ、カボザンテイニブ、セルメチニブ、ネラチニブ、ボラセルチブ、サラカチニブ、エンザスタウリン、タンデュチニブ、セマキサニブ、アルボシジブ、ICR-62、AEE788、PD0325901、PD153035、TK787、amcasertib(BBI503)、E6201、E7050及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0222】
「プロテアソーム阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0223】
「モノクローナル抗体」としては、特に限定されないが、例えば、抗CD22抗体、抗CD20抗体、抗CD25抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD5抗体、抗CD52抗体、抗上皮成長因子受容体抗体(EGFR抗体)、抗血管内皮細胞増殖因子抗体(VEGF抗体)、抗TNF-α抗体、抗IL-1レセプター抗体、抗IL-2レセプター抗体、抗IL-5レセプター抗体、抗IL-6レセプター抗体、抗HER2抗体、抗IgE抗体、抗IgG抗体、抗RSウイルス抗体、抗CCR4抗体、抗CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4、CD152)抗体、抗PD-1抗体、抗RANKL(receptor activator of nuclear factor κB ligand)抗体、抗c-Met抗体、抗CXCR4抗体などが挙げられる。
【0224】
具体的には、「モノクローナル抗体」としては、特に限定されないが、例えば、イブリツモマブ チウキセタン、リツキシマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、トシリズマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ、オマリズマブ、メポリズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、パリビズマブ、ラニビズマブ、セルトリズマブ、オクレリズマブ、モガムリズマブ、エクリズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、イノツズマブ、パニツムマブ、オファツムマブ、ゴリムマブ、アダリムマブ、ラムシルマブ、ニボルマブ、アナキンラ、デノスマブ、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、マツズマブ、ファルレツズマブ、MORAb-004、MORA-b009及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0225】
「mTOR阻害剤」として、特に限定されないが、例えば、エベロリムス(RAD001)、ラパマイシン(シロリムス)、AZD8055、テムシロリムス(CCI-779、NSC683864)KU-0063794、Voxtalisib(XL-765、SAR245409)、MHY1485、ダクトリシブ(BEZ235)、PI-103、Torkinib(PP242)リダフォロリムス(デフォロリムス、MK-8669)、INK-128(MLN0128)、Torin1、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、OSI-027、PF-04691502、アピトリシブ(GDC-0980、RG7422)、GSK1059615、ゲダトリシブ(PF-05212384、PKI-587)、WYE-132、PP121、WYE-354、AZD2014、Torin2、WYE-687、CH5132799、WAY-600、ETP-46464、GDC-0349、XL388、ゾタロリムス(ABT-578)、タクロリムス(FK506)BGT226(NVP-BGT226)、パロミド529(P529)、クリソファン酸及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0226】
「TNF阻害薬」として、特に限定されないが、例えば、エタネルセプト、レナリドミド(CC-5013)、ポマリドミド、サリドマイド、ネクロスタチン-1またはQNZ(EVP4593)などが挙げられる。
【0227】
「T細胞阻害薬」として、特に限定されないが、例えば、アバタセプトなどが挙げられる。
【0228】
「新脈管形成阻害剤」として、特に限定されないが、例えば、CM101、IFN-α、IL-12、血小板因子-4、スラミン、セマキサニブ、トロンボスポンジン、VEGFRアンタゴニスト、新脈管形成抑制ステロイドプラスヘパリン、軟骨由来新脈管形成阻止因子、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、バチマスタット、マリマスタット、アンギオスタチン、エンドスタチン、2-メトキシエストラジオール、テコガラン、トロンボスポンジン、αVβ3阻害剤、リノミド、ADH-1、E7820及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0229】
「その他の化学療法剤」としては、特に限定されないが、例えば、フィステナリド、ソブゾキサン、オバトクラックス、エファプロキシラール、チピファルニブ、ロナファルニブなどが挙げられる。
【0230】
本発明の医薬組成物は、他の添加剤を更に含んでいてもよく、当該添加剤としては、例えば、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤、無痛化剤等が挙げられる。
【0231】
式(1)の化合物又はその薬学上許容される塩は、抗原物質(免疫原)と同時又は時間差で投与することができ、その投与量は、温血動物に対し、通常5~5000mg/m2(体表面積)、即ち、約0.1ng/kg~100mg/kg、の範囲の単位用量であり、これは通常、ワクチンアジュバントとして有効な用量をもたらす。注射剤のような単位投与形態は、通常、例えば1ng~250mgの活性成分を含有する。好ましくは、1日あたり1ng~50mg/kgの範囲の投与量で用いられる。但し、この1日あたりの用量は、処置を受ける宿主、具体的な投与経路および処置される疾患の重症度によって変更する必要もある。したがって、至適用量は、個別の患者もしくは温血動物を処置する施術者が決定することもできる。
【0232】
本明細書において用いられる「治療」は、疾患の症状のいずれか、幾つか又はすべてを全体的に又は部分的に緩和すること、又は病態の進行を阻止もしくは遅延させることを含む意味で用いられる。
【0233】
本明細書において用いられる「予防」は、疾患の一次予防(疾患の発症を防ぐ)又は二次予防(疾患の発症後、症状が緩和された患者又は病気が治癒した患者に対して再発を防ぐ、再発防止)を含む意味で用いられる。
【0234】
本発明の化合物又はその薬学上許容される塩は、in vitroもしくはin vivoで免疫アジュバント活性を有するため、ワクチンアジュバントとして、抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)の免疫原性(immunogenicity)を維持もしくは増強させるために有用である。
【0235】
本発明の化合物又はその薬学上許容される塩は、in vitroもしくはin vivoで細胞性免疫のアジュバント活性を有するため、ワクチンアジュバントとして、腫瘍抗原の免疫原性(immunogenicity)を維持もしくは増強させるために有用である。
【0236】
本発明の化合物又はその薬学上許容される塩は、疾患の治療薬もしくは予防剤である免疫賦活物質(免疫刺激物質)、すなわち抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)特異的免疫反応を誘導する物質の作用を維持もしくは向上させるために用いることができる。
本発明の化合物もしくはその薬学上許容される塩、及び腫瘍抗原特異的免疫反応または病原体特異的免疫反応を増強させる物質(腫瘍抗原または病原体由来抗原ともいう)を含む医薬組成物も、本発明の一態様である。当該腫瘍抗原としては、特に限定はないが、抗原タンパク質又は該抗原タンパク質に由来する抗原ペプチド(部分ペプチド)、腫瘍抗原タンパク質又は該腫瘍抗原タンパク質に由来する腫瘍抗原ペプチド(部分ペプチド)、さらにこれらと担体との複合体が挙げられる。
【0237】
本発明の特定の実施形態では、本発明の化合物又はその薬学上許容される塩は、癌免疫療法のための腫瘍抗原タンパク質又は腫瘍抗原ペプチドと組合せて投与することにより、癌を治療もしくは予防することができる。癌としては、例えば、白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、胚細胞癌、肝癌、皮膚癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、脳腫瘍、骨癌、膵癌、頭頚部癌、皮膚または眼窩内悪性メラノーマ、直腸癌、肛門部癌、精巣癌、卵管のカルシノーマ、子宮内膜カルシノーマ、子宮頚部カルシノーマ、膣カルシノーマ、外陰部カルシノーマ、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、柔組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、小児固形癌、リンパ球性リンパ腫、腎臓または尿管の癌、腎盂カルシノーマ、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍新脈管形成、脊椎腫瘍、脳幹グリオーム、下垂体アデノーマ、カポシ肉腫、扁平上皮癌、扁平細胞癌、T細胞リンパ腫、多型性膠芽腫、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌およびアスベスト誘発癌等が挙げられる。ここで癌の治療もしくは予防には、転移性疾患および腫瘍再発防止、並びに腫瘍随伴症候群の予防および治療が含まれる。
【0238】
本発明の特定の実施形態では、本発明の化合物又はその薬学上許容される塩は、感染症予防ワクチンの有効成分と組合せて投与することにより、種々の感染症、例えば、生殖器疣、尋常性疣贅、足底疣贅、B型肝炎、C型肝炎、単純ヘルペスウイルス、伝染性軟属腫、天然痘、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、RSウイルス、ノロウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザ、パラインフルエンザなどのウイルス疾患;結核、マイコバクテリウムアビウム、ハンセン病などの細菌性疾患;真菌症、クラミジア、カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス髄膜炎、ニューモシスチス・カリニ、クリプトスポリジウム症、ヒストプラズマ症、トキソプラズマ症、マラリア、トリパノソーマ感染およびリーシュマニア症等の感染を予防することができる。感染症予防ワクチンの有効成分としては、特に限定はないが、感染症の原因となる細菌、真菌、原虫、ウイルス等の微生物・病原体由来の物質が挙げられ、例えば、抗原タンパク質、当該タンパク質由来の抗原ペプチド(部分ペプチド)、多糖、脂質、及びそれらの組合せ等、又は前記微生物・病原体由来の物質及び担体の組合せが挙げられる。
【0239】
ウイルス抗原に由来するウイルス抗原ペプチドとしては、特に限定はないが、例えば、インフルエンザマトリックスプロテインペプチド58-66(Jager E et al., Int. J. Cancer 67:54(1996))、HPV16 E7ペプチド86-93(van Driel WJ et al., Eur. J. Cancer 35:946(1999))、HPV E7ペプチド12-20(Scheibenbogen C et al., J. Immunother 23:275(2000))、HPV16 E7ペプチド11-20(Smith JWI et al., J. Clin. Oncol. 21:1562(2003))、HSV2 gD(Berman PW et al., Science 227:1490(1985))、CMV gB(Frey SE et al., Infect Dis. 180:1700(1999), Gonczol E. et al., Exp. Opin. Biol. Ther. 1:401(2001)),CMV pp65(Rosa CL et al., Blood 100:3681(2002), Gonczol E. et al., Exp. Opin. Biol. Ther. 1:401(2001))等が挙げられる。
【0240】
本発明において用いられる担体とは、抗原タンパク質もしくは抗原ペプチドを化学的及び/又は物理的に結合させる物質であり、タンパク質や脂質等が挙げられ、特に限定はないが、例えば、CRM197(Vaccine. 2013 Oct 1;31(42):4827-33)、KLH(Cancer Immunol Immunother. 2003 Oct;52(10):608-16)、ウイルス様粒子(PLoS ONE 5(3): e9809)やリポソーム(J Liposome Res. 2004;14(3-4):175-89)が挙げられる。
【0241】
抗原タンパク質は、Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratoy Press(1989)等の基本書に従って、抗原タンパク質をコードするcDNAをクローニングし宿主細胞で発現させることにより調製することができる。
【0242】
抗原ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該合成方法としては、文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis), Interscience,New York, 1966;ザ・プロテインズ(The Proteins), Vol. 2, Academic Press Inc., New York, 1976)などに記載されている方法が挙げられる。
【0243】
本発明の一態様として、以下を含有するキットを提供する:
a)式(1)で示される化合物、又はその薬学上許容し得る塩、もしくは式(1)で示される化合物又はその薬学上許容し得る塩を含有する医薬組成物;
b)抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)または抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)を含有する医薬組成物。
ここで、抗原としては、ワクチンの有効成分として用いられ得る抗原であれば特に限定はないが、上述の抗原タンパク質又は該抗原タンパク質に由来する抗原ペプチド(部分ペプチド)等、さらにこれらと担体との複合体等が挙げられる。
【0244】
本発明の一態様として、以下を含有するキットを提供する:
a)式(1)で示される化合物又はその薬学上許容し得る塩、もしくは式(1)で示される化合物又はその薬学上許容し得る塩を含有する医薬組成物;
b)腫瘍抗原または腫瘍抗原を含有する医薬組成物。
ここで、腫瘍抗原としては、癌ワクチンの有効成分として用いられ得る腫瘍抗原であれば特に限定はないが、上述の腫瘍抗原タンパク質又は該腫瘍抗原タンパク質に由来する腫瘍抗原ペプチド(部分ペプチド)等、さらにこれらと担体との複合体等が挙げられる。
【0245】
本発明の一態様として、以下を含有するキットを提供する:
a)式(1)で示される化合物又はその薬学上許容し得る塩、もしくは式(1)で示される化合物又はその薬学上許容し得る塩を含有する医薬組成物;
b)病原体由来抗原または病原体由来抗原を含有する医薬組成物。
ここで、病原体由来抗原としては、感染症ワクチンの有効成分として用いられ得る病原体由来抗原であれば特に限定はないが、上述の病原体由来抗原タンパク質又は該病原体由来抗原タンパク質に由来する病原体由来抗原ペプチド(部分ペプチド)等、さらにこれらと担体との複合体等が挙げられる。
【0246】
本発明の一態様として、ワクチンワクチンアジュバントの製造のための式(1)で示される化合物、又はその薬学上許容し得る塩の使用を提供する。
また、本発明の一態様として、癌または感染症の処置のためのワクチンの製造における、ワクチンアジュバントとしての、上で定義した式(I)で示される化合物、又はその薬学上許容し得る塩の使用を提供する。
【0247】
本発明の一態様として、癌ワクチンのワクチンアジュバントの製造のための式(1)で示される化合物、又はその薬学上許容し得る塩の使用を提供する。
また、本発明の一態様として、癌の処置のための癌ワクチンの製造における、ワクチンアジュバントとしての、上で定義した式(I)で示される化合物、又はその薬学上許容し得る塩の使用を提供する。
【0248】
本発明の一態様として、感染症ワクチンのワクチンアジュバントの製造のための式(1)で示される化合物、又はその薬学上許容し得る塩の使用を提供する。
また、本発明の一態様として、感染症の処置のための感染症ワクチンの製造における、ワクチンアジュバントとしての、上で定義した式(I)で示される化合物、又はその薬学上許容し得る塩の使用を提供する。
【0249】
さらに、本発明の一態様として、上で定義した式(I)で示される化合物、又はその薬学上許容し得る塩を、抗原(腫瘍抗原または病原体由来抗原)とともに患者に投与する工程を含む、癌または感染症の治療、進行防止又は予防方法を提供する。
【0250】
また、本発明の一態様として、上で定義した式(I)で示される化合物、又はその薬学上許容し得る塩を、腫瘍抗原とともに患者に投与する工程を含む、癌の治療、進行防止又は予防方法を提供する。
【0251】
また、本発明の一態様として、上で定義した式(I)で示される化合物、又はその薬学上許容し得る塩を、病原体由来抗原とともに患者に投与する工程を含む、感染症の治療、進行防止又は予防方法を提供する。
【0252】
本発明の医薬組成物は、式(1)で表される化合物に加えて、非特許文献6、及び非特許文献7に含まれる化合物を含んでいても良い。
【0253】
特許文献3、非特許文献6、及び非特許文献7に含まれる化合物またはそれらの製薬学的に許容される塩、もしくはそれらを含む医薬組成物もまた、腫瘍抗原のワクチンアジュバントとして用いることができる。
【実施例
【0254】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0255】
Fmoc:9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
Boc:tert-ブトキシカルボニル
Alko:p-アルコキシベンジルアルコール
PEG:ポリエチレングリコール
tBu:tert-ブチル
HBTU:O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
TFA:トリフルオロ酢酸
TIS:トリイソプロピルシラン
THF:テトラヒドロフラン
TBS:tert-ブチルジメチルシリル基
TBDPS:tert-ブチルジフェニルシリル基
TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオライド
【0256】
高速液体クロマト質量分析(LCMS)の測定条件は、以下の通りである。
【0257】
LCMS条件A
MS検出器:LCMS-IT-TOF
HPLC:Shimadzu Nexera X2 LC 30AD
カラム:Kinetex 1.7μ C18 100A New column 50×2.1mm
流速:1.2ml/min
測定波長:254/220nm
移動相:A液;0.1%ギ酸水溶液
B液;アセトニトリル
タイムプログラム:
ステップ 時間(分)
1 0.01-1.40 A液:B液=90:10~5:95
2 1.40-1.60 A液:B液=5:95
3 1.61-2.00 A液:B液=99:1
【0258】
LCMS条件B
MS検出器:ACQUITY(登録商標)SQdetecter (Waters社)
HPLC:ACQUITY(登録商標)system
カラム:Waters ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18(1.7μm,2.1mm×30mm)
流速:0.8ml/min
測定波長:254/220nm
移動相:A液:0.06%ギ酸/アセトニトリル、
B液:0.06%ギ酸水溶液
タイムプログラム:0.0-1.30 A液:B液=2:98~96:4
カラム温度:25℃
【0259】
参考例1
アミノ酸配列:RMFPNAPYL(Arg-Met-Phe-Pro-Asn-Ala-Pro-Tyr-Leu)(配列番号1)からなるペプチドの合成
(Fmoc-Lys(Boc)-Alko-PEG樹脂)1.00g(渡辺化学製;0.23mmol/g、0.23mmol)を出発原料とし、Fmoc/tBu法による固相合成によりペプチド鎖の組上げを行った。固相合成にはCS Bio社製CS336X型ペプチド合成機を用い、Fmoc基の脱保護は20%ピペリジンのDMF溶液で5分間及び20分間処理することにより行った。保護アミノ酸のカップリングは、1.05mmolの保護アミノ酸、1mmolのHBTU、2mmolのDIPEAのDMF溶液と1時間反応させることにより行った。得られた樹脂をDMF及びエーテル洗浄後減圧乾燥することにより、ペプチド樹脂得た。このペプチド樹脂にTFA/水/TIS(体積比:94/2.5/2.5)の混合液10mLを加え、室温にて2時間振とうした。樹脂を濾去後、反応液を減圧濃縮した。反応液を氷冷しジエチルエーテル(50mL)を加えた。生じた沈殿物を濾取し、エーテルで洗浄後減圧乾燥することにより粗ペプチドを得た。得られた粗ペプチドを20%酢酸水とアセトニトリルの混合液(体積比1/1)に溶解し、以下に示す条件で精製し、RMFPNAPYL(Arg-Met-Phe-Pro-Asn-Ala-Pro-Tyr-Leu)(配列番号1)のトリフルオロ酢酸塩をを0.16g得た。得られたトリフルオロ酢酸塩から、定法に従い酢酸塩を作成し、評価に用いた。
質量分析: m/z = 554.73 [M+2H]+2、保持時間: 0.82min (LCMS条件A)
精製条件
HPLCシステム:Gilson社製ハイスループットHPLC分取システム
カラム:YMC ODS-A 3cmφ×25cm、10μm
溶出液1:0.1%TFA水
溶出液2:0.035%TFAアセトニトリル
流速:20mL/min
グラジエントメソッド:
【0260】
参考例1記載の方法に従い、対応する原料を用いて表1に示すペプチドをトリフルオロ酢酸塩として得た。この化合物は本願発明化合物でないことから参考例とした。なお、参考例3については定法に従い酢酸塩へ置換し、以後の評価に用いた。
【表1】
【0261】
国際公開第2014/157692号記載の方法に従い、表2に示す化合物をトリフルオロ酢酸塩として得た(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す)。この化合物は本願発明化合物でないことから参考例とした。
【0262】
【表2】
【0263】
参考例10
N-2,2,3,3-ペンタメチル-4,7,10,13,16-ペンタオキサ-3-シラオクタデカン-18-アミンの合成
【化30】
【0264】
工程1
【化31】
公知化合物である14-アミノ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン-1-オール(1.60g)のTHF(25mL)溶液にトリエチルアミン(4.7mL)とエチルトリフルオロアセテート(2.4mL)を加え、室温にて2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相はクロロホルム/メタノール)にて精製し、2,2,2-トリフルオロ-N-(14-ヒドロキシ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン-1-イル)アセトアミド(1.00g)を得た。
m/z = 334 [M+H]+、Rt = 0.507 (LCMS条件B)
【0265】
工程2
【化32】
参考例10の工程1で得られた化合物(3.91g)のDMF(20mL)溶液にトリエチルアミン(4.90mL)とtert-ブチルジメチルクロロシラン(3.54g)を加え、室温にて2時間撹拌した。反応液を酢酸エチルにて希釈し、水及び飽和食塩水にて洗浄後、硫酸ナトリウムにて乾燥、ろ過後に減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相はヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、2,2,2-トリフルオロ-N-(2,2,3,3-テトラメチル-4,7,10,13,16-ペンタオキサ-3-シラオクタデカン-18-イル)アセトアミド(3.70g)を得た。
m/z = 448 [M+H]+、Rt = 1.153 (LCMS条件B)
【0266】
工程3
【化33】
参考例10の工程2で得られた化合物(4.44g)のDMF(20mL)溶液に炭酸セシウム(6.46g)、ヨードメタン(1.6g)を加え、室温にて2時間撹拌した。反応液を酢酸エチルにて希釈し、水及び飽和食塩水にて洗浄後、硫酸ナトリウムにて乾燥、ろ過後に減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相はヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、2,2,2-トリフルオロ-N-メチル-N-(2,2,3,3-テトラメチル-4,7,10,13,16-ペンタオキサ-3-シラオクタデカン-18-イル)アセトアミド(3.31g)を得た。
m/z = 463 [M+H]+、Rt = 1.210 (LCMS条件B)
【0267】
工程4
【化34】
参考例10の工程3で得られた化合物(117mg)のメタノール(5mL)溶液に炭酸カリウム(70mg)を加えて室温にて5時間撹拌した。反応液を濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相はクロロホルム/メタノール)にて精製し、N-2,2,3,3-ペンタメチル-4,7,10,13,16-ペンタオキサ-3-シラオクタデカン-18-アミン(67mg)を得た。
m/z = 366 [M+H+]、Rt = 0.718 (LCMS条件B)
【0268】
参考例11
N,2,2-トリメチル-3,3-ジフェニル-4,7,10,13,16-ペンタオキサ-3-シラオクタデカン-18-アミンの合成
【化35】
参考例10の方法に準じて、表題の化合物を得た。
m/z = 490 [M+H]+、Rt = 0.953 (LCMS条件B)
【0269】
実施例1
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[5-(16-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-2-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン・トリフルオロ酢酸塩の合成
【化36】
【0270】
工程1
【化37】
公知化合物である2-ブトキシ-8-メトキシ-9H-プリン-6-アミン・トリフルオロ酢酸塩(1.20g)のDMF(15mL)溶液に6-(クロロメチル)ピリジン-3-カルボン酸メチル(633mg)と炭酸カリウム(1.41g)を加え、室温にて撹拌した。反応液に水を加えた後、クロロホルムにて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過、減圧濃縮することで得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相はクロロホルム/メタノール)にて精製し、6-[(6-アミノ-2-ブトキシ-8-メトキシ-9H-プリン-9-イル)メチル]ピリジン-3-カルボン酸メチル(412mg)を得た。
m/z = 387 [M+H]+、Rt = 0.732 (LCMS条件B)
【0271】
工程2
【化38】
実施例1の工程1で得られた化合物(300mg)のTHF(30mL)の溶液に対し、リチウムアルミニウムヒドリド(32.4mg)を0℃で加え、撹拌した。反応液を水と2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で処理した後に、沈殿物をセライトにてろ過した。ろ液を濃縮した後にシリカゲルクロマトグラフィー(移動相はクロロホルム/メタノール)にて精製し、{6-[(6-アミノ-2-ブトキシ-8-メトキシ-9H-プリン-9-イル)メチル]ピリジン-3-イル}メタノール(200mg)を得た。
m/z = 359 [M+H]+、Rt = 0.611 (LCMS条件B)
【0272】
工程3
【化39】
実施例1の工程2で得られた化合物(100mg)のNMP(2mL)溶液にトリエチルアミン(0.35mL)メタンスルホニルクロリド(0.65mL)を0℃で加えた。3時間撹拌した後、メタンスルホニルクロリド(0.01mL)を加え30分撹拌した。反応液に氷水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、減圧濃縮し、メタンスルホン酸{6-[(6-アミノ-2-ブトキシ-8-メトキシ-9H-プリン-9-イル)メチル]ピリジン-3-イル}メチルの粗生成物のNMP溶液を得た。得られた目的物は精製せずにそのまま次の反応に用いた。
m/z = 437 [M+H]+、Rt = 0.715 (LCMS条件B)
【0273】
工程4
【化40】
実施例1の工程3で得られた化合物のNMP溶液に対し、参考例10の化合物(102mg)、炭酸カリウム(0.039g)、ヨウ化カリウム(0.046g)を加え室温にて4時間撹拌した。反応液をメタノール(3mL)で希釈した後に、4mol/L塩酸の酢酸エチル溶液(2mL)を加え、室温にて1時間撹拌した。反応液を濃縮後、逆相HPLCにて精製を行い、6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[5-(16-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-2-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン・トリフルオロ酢酸塩(0.09g)を得た。
m/z = 290 [M+2H]+2、Rt = 0.632 (LCMS条件B)
1H-NMR (DMSO-d6): δ 10.03 (s, 1H), 9.66 (s, 1H), 8.58 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.90 (dd, J = 8.0 Hz, 2.4 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.50 (s, 2H), 5.00 (s, 2H), 4.42 (d, J = 13.2 Hz, 1H), 4.28 (d = 13.2 Hz, 1H), 4.06 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 3.75 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 3.70-3.50 (m, 16H), 3.38 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.72 (d, J = 4.4 Hz, 3H), 1.60-1.52 (m, 2H), 1.37-1.27 (m, 2H), 0.86 (t, J = 7.6 Hz, 3H)
【0274】
実施例2
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン・トリフルオロ酢酸塩の合成
【化41】
【0275】
工程1
【化42】
公知化合物の[5-(クロロメチル)ピリジン-2-イル]メタノールを原料とし、参考例10の工程2と同様に反応・処理を行い、2-{[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]メチル}-5-(クロロメチル)ピリジンを得た。
m/z = 272 [M+2H]+2、Rt = 1.23 (LCMS条件B)
【0276】
工程2
【化43】
実施例1の工程1に準じた方法で、反応・処理を行い、2-ブトキシ-9-{[6-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)ピリジン-3-イル]メチル}-8-メトキシ-9H-プリン-6-アミンを得た。
m/z=237 [M+2H]+2、Rt = 1.33 (LCMS条件A)
【0277】
工程3
【化44】
実施例2の工程2で得られた化合物(994mg)のTHF(20mL)溶液に室温にて、TBAF(1M THF溶液、4mL)を加え、6時間撹拌した。反応液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相はクロロホルム/メタノール)で精製することで、{5-[(6-アミノ-2-ブトキシ-8-メトキシ-7,8-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル)メチル]ピリジン-2-イル}メタノール(710mg)を得た。
m/z = 359 [M+H]+、Rt = 0.571 (LCMS条件B)
【0278】
工程4
【化45】
実施例1の工程3に準じた方法で、実施例2の工程3で得られた化合物を原料化合物として用いて、メタンスルホン酸{5-[(6-アミノ-2-ブトキシ-8-メトキシ-9H-プリン-9-イル)メチル]ピリジン-2-イル}メチルを得た。得られた化合物は精製することなく、次の反応に用いた。
【0279】
工程5
【化46】
実施例1の工程4に準じた方法で、実施例2の工程4で得られた化合物を原料化合物として用いて、6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(16-ヒドロキシ-2-メチル‐5,8,11,14-テトラオキサ-2-アザヘキサデカン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン・トリフルオロ酢酸塩を得た。
m/z = 290 [M+H]+、Rt = 0.611 (LCMS条件B)
1H-NMR (CD3OD-d4): δ 8.75 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.93 (dd, J = 2.4, 7.9 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 5.07 (s, 2H), 4.54 (s, 2H), 4.29 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.85 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.66-3.56 (m, 14H), 3.52-3.47 (m, 2H), 3.45-3.40 (m, 2H), 2.96 (s, 3H), 1.73 (dt, J = 15.6, 5.9 Hz, 2H), 1.48 (dt, J = 14.9, 7.9 Hz, 2H), 0.98 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
【0280】
参考例12~14
対応する原料化合物から、実施例1の工程4に準じた方法で、反応・処理を行い、下記表3の化合物を得た
【0281】
【表3】
【0282】
実施例3~4
公知の化合物から、実施例1に準じた方法で、反応・処理を行い、下記表4の化合物を得た。
【表4】
【0283】
実施例5
Tetrahedron Letters Volume 56, Issue 2, 8 January 2015, Pages 458-460記載の方法に準じて反応・処理を行い、対応する原料から下記表5の化合物を得た
【0284】
【表5】
【0285】
参考例15
N,2,2,3,3-ペンタメチル-4,7,10,13,16,19,22,25,28,31-デカオキサ-3-シラトリトリアコンタン-33-アミン
【化47】
参考例10の方法に準じて、表題の化合物を得た。
m/z = 587 [M+H]+、Rt = 0.865 (LCMS条件B)
【0286】
参考例16
N,2,2,3,3-ペンタメチル-4,7,10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,46,49,52,55,58,61,64,67,70,73-テトラコサオキサ-3-シラペンタヘプタコンタン-75-アミン
【化48】
参考例10の方法に準じて、表題の化合物を得た。
m/z = 402 [M+3H]+3、Rt = 0.946 (LCMS条件B)
【0287】
参考例17
N,2,2,3,3-ペンタメチル-4,7,10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,46,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,103,106,109-ヘキサトリアコンタオキサ-3-シラヘンデカヘクタン-111-アミン
【化49】
参考例10の方法に準じて、表題の化合物を得た。
m/z = 866 [M+2H]+2、Rt = 0.948 (LCMS条件B)
【0288】
実施例6
6-アミノ-2-ブトキシ-9-({6-[13-ヒドロキシ-2-(2-{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)-5,8,11-トリオキサ-2-アザトリデカン-1-イル]ピリジン-3-イル}メチル)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン
【化50】
公知の化合物から、実施例2に準じた方法で、反応・処理を行い、表題の化合物を得た。m/z = 697 [M+H]+、Rt = 0.601 (LCMS条件B)
1H-NMR (DMSO-d6): δ10.45 (1H, s), 8.64 (1H, d, J = 2.3 Hz), 7.81 (1H, dd, J = 8.0, 2.1 Hz), 7.54 (1H, d, J = 8.2 Hz), 4.94 (2H, s), 4.57 (2H, s), 4.16 (2H, t, J = 6.6 Hz), 3.78 (4H, t, J = 4.8 Hz), 3.55-3.35 (32H, m), 1.66-1.59 (2H, m), 1.37 (2H, m), 0.94-0.88 (3H, t, J = 7.3 Hz).
【0289】
実施例7
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(31-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14,17,20,23,26,29-ノナオキサ-2-アザヘントリアコンタン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン
【化51】
参考例15から、実施例2に準じた方法で、反応・処理を行い、表題の化合物を得た。
m/z = 799 [M+H]+、Rt = 0.634 (LCMS条件B)
1H-NMR (CDCl3): δ 9.27 (1H, s), 8.66 (1H, s), 7.76 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.44 (1H, d, J = 8.2 Hz), 5.71 (2H, s), 4.97 (2H, s), 4.25 (2H, t, J = 6.6 Hz), 3.74-3.45 (40H, m), 2.58 (2H, t, J = 5.5 Hz), 2.32 (3H, s), 1.73 (3H, m), 1.46 (2H, m), 0.94 (3H, t, J = 7.3 Hz).
【0290】
実施例8
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(73-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41,44,47,50,53,56,59,62,65,68,71-トリコサオキサ-2-アザトリヘプタコンタン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン
【化52】
参考例16から、実施例2に準じた方法で、反応・処理を行い、表題の化合物を得た。
m/z = 708 [M+2H]+2、Rt = 0.701 (LCMS条件B)
1H-NMR (CDCl3): δ9.26 (1H, s), 8.64 (1H, s), 7.77 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.40 (1H, d, J = 7.9 Hz), 5.63 (2H, s), 4.98 (2H, s), 4.23 (2H, t, J = 6.7 Hz), 3.77-3.45 (97H, m), 2.67 (2H, s), 2.35 (3H, s), 1.73 (2H, m), 1.46 (2H, m), 0.94 (3H, t, J = 7.3 Hz).
【0291】
実施例9
6-アミノ-2-ブトキシ-9-{[6-(109-ヒドロキシ-2-メチル-5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41,44,47,50,53,56,59,62,65,68,71,74,77,80,83,86,89,92,95,98,101,104,107-ペンタトリアコンタオキサ-2-アザノナヘクタン-1-イル)ピリジン-3-イル]メチル}-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン
【化53】
参考例17から、実施例2に準じた方法で、反応・処理を行い、表題の化合物を得た。
m/z = 649 [M+3H]+3、Rt = 0.732 (LCMS条件B)
1H-NMR (CDCl3): δ 9.19 (1H, s), 8.65 (1H, d, J = 2.4 Hz), 7.76 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.41 (1H, d, J = 7.9 Hz), 5.57 (2H, s), 4.97 (2H, s), 4.23 (2H, t, J = 6.4 Hz), 3.79-3.46 (144H, m), 2.58 (2H, t, J = 5.5 Hz), 2.30 (3H, s), 1.76-1.69 (2H, m), 1.46 (2H, m), 0.94 (3H, t, J = 7.3 Hz).
【0292】
試験例1
ヒトTLR7レポータージーンアッセイ
TLR7/NF-κB/SEAPorterTM HEK293細胞株(Imgenex Corporation社)は、NF-κB応答エレメントの転写制御下で全長ヒトTLR7と分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を発現する安定なコトランスフェクト細胞株である。この細胞株でのTLR7発現はフローサイトメトリーにより試験済みである。抗生物質ブラストサイジンおよびジェネティシンを使用して、安定に発現する形質転換体を選択した。TLRシグナル伝達はNF-κBの転位を導き、プロモーターの活性化はSEAP遺伝子の発現をもたらす。この細胞を0.1%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)存在下で37℃にて実施例及び参考例で合成された化合物と一晩インキュベーションした後、生成したSEAPのレベルを測定することにより、TLR7特異的な活性化を評価した。本発明化合物のヒトTLR7活性化の程度を、ヒトTLR7レポータージーンアッセイを用いて評価し、SEAPの最大レベルの半分をもたらす化合物の濃度(EC50)として表6及び表7に示した。
【表6】

【表7】
【0293】
試験例2
マウスTLR7レポータージーンアッセイ
HEK-BlueTM mTLR7細胞株(Invivogen社)は、NF-κB応答エレメントの転写制御下で全長マウスTLR7と分泌型SEAPレポーター遺伝子を発現する安定なコトランスフェクト細胞株である。この細胞株でのTLR7発現はRT-PCRにより試験済みである。抗生物質ブラストサイジンおよびゼオシンを使用して、安定に発現する形質転換体を選択した。TLRシグナル伝達はNF-κBの転位を導き、プロモーターの活性化はSEAP遺伝子の発現をもたらす。この細胞を0.1%(v/v)DMSO存在下で37℃にて実施例及び参考例で合成された化合物と一晩インキュベーションした後、生成したSEAPのレベルを測定することにより、TLR7特異的な活性化を評価した。本発明化合物のマウスTLR7活性化の程度を、マウスTLR7レポータージーンアッセイを用いて評価し、SEAPの最大レベルの半分をもたらす化合物の濃度(EC50)として表8及び表9に示した。
【表8】

【表9】
【0294】
試験例1及び2の結果から、本発明の実施例化合物及び参考例化合物共にヒト及びマウスのTLR7のアゴニストとして作用することが示唆された。
【0295】
試験例3
ヒト末梢血単核球を用いた免疫細胞活性化作用の評価
凍結保存された成人由来の末梢血単核球(PBMC)(C.T.L.社)を起眠し、AIM V培地(Life Technologies社)に、ヒト血清(biowest社)を10%およびMEM非必須アミノ酸溶液(100×)(Life Technologies社)を1%含有する培養液を懸濁し、U底の96ウェルプレートに4×10細胞/wellになるように播種した。0.1%(v/v)DMSO存在下で、最終濃度200nmol/Lの本発明化合物を添加して37℃、5% COの条件下で培養した。培養開始から1日後に培養上清を回収し、培養上清中に含まれるサイトカインやケモカイン(GM-CSF、IFNα2、IFNγ、IL-12p40、IL-1β、IL-6、IP-10およびTNFα)の濃度を、Milliplex Human Cytokine/Chemokine Magnetic Bead Panelキット(Millipore社)およびLuminexシステム(Luminex社)を使用して添付プロトコールに従い測定した。
【0296】
異なる2名のドナー由来のPBMCを用いた試験の結果を図1-A~図1-Hに示した。DMSOのみを添加して培養した3wellの培養上清中のサイトカインおよびケモカインの濃度の平均値を白棒で、本発明化合物を添加して培養した3wellの培養上清中のサイトカインおよびケモカインの濃度の平均値を黒棒で示す。実施例2及び実施例3で合成された化合物を添加した場合には、DMSOのみを添加した場合と比較して、サイトカインおよびケモカインの濃度が高かった。これらの結果より、本発明化合物はヒト免疫細胞の活性化作用を有することが示された。
【0297】
試験例4
マウス骨髄由来樹状細胞活性化作用の評価
HLA-A02:01遺伝子導入マウス(C57BL/6CrHLA-A2.1DR1)の大腿骨および脛骨から骨髄細胞を採取した後、ウシ胎児血清(FBS)を10%およびGM-CSFを10ng/mL含むRPMI1640培地に懸濁し、37℃、5%COの条件下で樹状細胞の分化誘導培養を行った。培養開始から7日後に細胞を回収し、フローサイトメトリーによって細胞表面のCD11cの発現を確認した後、凍結保存した。凍結保存したマウス骨髄由来樹状細胞を起眠し、10%FBSを含むRPMI1640培地に懸濁し、U底の96ウェルプレートに5×10細胞/wellになるように播種した。0.1%(v/v)DMSO存在下で、実施例3で合成された化合物を最終濃度200nmol/Lで添加して37℃、5% COの条件下で培養した。培養開始から1日後に培養上清を回収し、培養上清中に含まれるサイトカインやケモカイン(IL-1β、IL-6、IL-12p40、IL-12p70、IP-10、MIP-1α、MIP-1β、RantesおよびTNFα)の濃度を、Milliplex Mouse Cytokine/Chemokine Magnetic Bead Panelキット(Millipore社)およびLuminexシステムを使用して添付プロトコールに従い測定した。
【0298】
結果を図2-A~図2-Iに示した。DMSOのみを添加して培養した3wellの培養上清中のサイトカインおよびケモカインの濃度の平均値を白棒で、実施例3で合成された化合物を添加して培養した3wellの培養上清中のサイトカインおよびケモカインの濃度の平均値を黒棒で示す。実施例3で合成された化合物を添加した場合には、DMSOのみを添加した場合と比較して、サイトカインおよびケモカインの産生量が多かった。これらの結果より、本発明化合物は樹状細胞の活性化作用を有することが示された。
【0299】
試験例5
マウス脾臓細胞を用いた免疫活性化作用の評価
HLA-A02:01遺伝子導入マウスの脾臓から脾細胞を調製し、凍結保存した。凍結保存したマウス脾細胞を起眠し、10%FBSを含むRPMI1640培地に懸濁し、U底の96ウェルプレートに4×10細胞/wellになるように播種した。0.1%(v/v)DMSO存在下で、実施例3で合成された化合物を最終濃度200nmol/Lで添加して37℃、5% COの条件下で培養した。培養開始から1日後に培養上清を回収し、培養上清中に含まれるサイトカインやケモカイン(GM-CSF、IFNγ、IL-6、IP-10、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、RantesおよびTNFα)の濃度を、Milliplex Mouse Cytokine/Chemokine Magnetic Bead PanelキットおよびLuminexシステムを使用して添付プロトコールに従い測定した。
【0300】
結果を図3-A~図3-Iに示した。DMSOのみを添加して培養した3wellの培養上清中のサイトカインおよびケモカインの濃度の平均値を白棒で、実施例3で合成された化合物を添加して培養した3wellの培養上清中のサイトカインおよびケモカインの濃度の平均値を黒棒で示す。実施例3で合成された化合物を添加した場合には、DMSOのみを添加した場合と比較して、サイトカインおよびケモカインの産生量が多かった。これらの結果より、本発明化合物はマウス免疫細胞の活性化作用を有することが示された。
【0301】
試験例6
HLA-A 02:01遺伝子導入マウスを用いたin vivoアジュバント活性の評価
実施例3で合成された化合物および参考例14で合成された化合物のin vivoにおけるアジュバント活性に関しては、参考例9で合成された式番号4で表される化合物と参考例3で合成された配列番号3で表されるペプチドを予備乳化組成物と混合して調製したカクテルワクチン(以下、「ワクチンa」という)に、実施例3で合成された化合物を添加してワクチンを調製し、およびワクチンaに参考例14で合成された化合物を添加してワクチンを調製し、これらをHLA-A02:01遺伝子導入マウスに投与し、抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)誘導試験によってアジュバント活性を評価した。式番号4に含まれるRMFPNAPYL(配列番号1)および配列番号3で表されるペプチドに含まれるVLDFAPPGA(配列番号5)はHLA-A02:01拘束性WT1タンパク質由来抗原ペプチドである。
【0302】
HLA-A02:01遺伝子導入マウス(C57BL/6CrHLA-A2.1DR1)は、マウスMHCが欠損し、ヒトMHCであるHLA-A02:01とマウスMHCであるH-2DのキメラHLAおよびHLA-DRB101:01を発現するマウスである。本マウスを用いることで、HLA-A02:01陽性のヒトでCTLを誘導し得るペプチドを含む免疫療法剤の薬理活性評価が可能である(Eur J Immunol. 2004; 34: 3060-9)。更に、ヒトのHLA-DRB101:01に結合してヘルパーT細胞を誘導し得るヘルパーペプチドの誘導およびCTL誘導増強効果を評価することも可能である。
【0303】
ワクチンaの投与により、抗原ペプチド(配列番号1あるいは配列番号5)に対するCTLが誘導されるか否かは、上記マウス由来の脾細胞を目的のペプチドで再刺激を行った場合にIFNγを産生するか測定することで判断した。更に、実施例3で合成された化合物あるいは参考例14で合成された化合物がin vivoにおけるアジュバント活性を発揮するか否かは、ワクチンa投与により誘導されたCTLの数と、ワクチンaに実施例3で合成された化合物あるいは参考例14で合成された化合物を添加して調製したワクチンを投与することにより誘導されたCTLの数を比較し、増加するか否かで判断した。
【0304】
具体的には、以下のようにしてin vivoアジュバント活性を評価した。
リン酸二水素ナトリウム二水和物0.312gを注射用水80gに溶解した。オレイン酸エチル14.0g、ミリスチン酸オクチルドデシル14.0g、モノオレイン酸ソルビタン2.0g、モノオレイン酸グリセリン2.8g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油200.4g、グリセリン0.4gを混合した。このうち2.354mL(2.077g相当量)を試験管にとり、ミキサー(ウルトラタラックスT10、IKA社、またはタッチミキサーMT-51、ヤマト科学)で撹拌しながらリン酸二水素ナトリウム水溶液0.396mL(0.396g相当量)を徐々に加えて乳化し、予備乳化組成物とした。調製量は必要に応じて増減した。
式番号4で表される化合物および配列番号3で表されるペプチドをDMSOで溶解した後、希釈後の濃度が式番号4で表される化合物が3mg/mL、配列番号3で表されるペプチドが2.25mg/mLになるよう注射用水と混合した。このペプチド希釈液を等量の予備乳化組成物と混合してエマルション化させて調製したワクチンaを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンaを調製する際のペプチド希釈液中に実施例3で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、実施例3で合成された化合物が32.5ng/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンaを調製する際のペプチド希釈液中に参考例14で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、参考例14で合成された化合物が17.5ng/匹となるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。1週間後に、マウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。IFNγ産生の測定には、IFNγ ELISPOT assay kit(BD社)を用いた。脾細胞調製の前日に、ELISPOTプレートを抗マウスIFNγ抗体で処理し、当日に10%FBSを含むRPMI1640培地でブロッキングした。調製した脾細胞を1.25×10cells/wellで、ブロッキングしたELISPOTプレートに播種した。ペプチド(配列番号1あるいは配列番号5)を0.1%(v/v)DMSO存在下、最終濃度10μg/mLで脾細胞に添加した。ペプチドを添加した脾細胞を37℃、5% CO下で一晩培養することで、in vitroにおけるペプチド再刺激を加えた。培養後に上清を除き、ELISPOTプレートを、添付のプロトコールに従って発色させた。発色したスポット数は、ImmunoSpot Analyzer(C.T.L.社)によって測定した。
【0305】
HLA-A02:01遺伝子導入マウスを用いたIFNγ ELISPOT assayの結果を図4および図5に示した。図4および図5において、縦軸は各群3匹のマウス由来の播種細胞中の刺激に反応してIFNγを産生した細胞数の平均値を、横軸はマウスに投与したワクチンを示す。図4の黒棒および白棒はHLA-A02:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞を配列番号1で表されるペプチドの存在下および非存在下で培養した結果を示す。即ち、黒棒と白棒の値の差が、ワクチンの投与によってマウス生体内で誘導された配列番号1で表されるペプチドに特異的なIFNγ産生細胞、即ちCTLの数を示す。図4中において白棒の値はほとんど認められていない。このことは、目的のペプチド非存在下ではマウスの脾細胞はほとんど反応しなかったことを示している。本試験の結果、ワクチンaを投与したHLA-A02:01遺伝子導入マウスにおいて配列番号1で表されるペプチド反応性CTLの誘導が確認された。また、そのCTLの数は、実施例3で合成された化合物または参考例14で合成された化合物のワクチンaへの添加によって、より多く認められた。更に、CTLの数の増加は、参考例14で合成された化合物をカクテルワクチンbに添加した場合と比較して、実施例3で合成された化合物をカクテルワクチンbに添加した場合により多く認められた。
また、図5の黒棒および白棒はHLA-A02:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞を配列番号5で表されるペプチドの存在下および非存在下で培養した結果を示す。即ち、黒棒と白棒の値の差が、ワクチンの投与によってマウス生体内で誘導された配列番号5で表されるペプチドに特異的なIFNγ産生細胞、即ちCTLの数を示す。図5中において白棒の値はほとんど認められていない。このことは、目的のペプチド非存在下ではマウスの脾細胞はほとんど反応しなかったことを示している。本試験の結果、ワクチンaを投与したHLA-A02:01遺伝子導入マウスにおいて配列番号5で表されるペプチド反応性CTLの誘導が確認された。また、そのCTLの数は、実施例3で合成された化合物または参考例14で合成された化合物のワクチンaへの添加によって、より多く認められた。更に、CTLの数の増加は、参考例14で合成された化合物をカクテルワクチンbに添加した場合と比較して、実施例3で合成された化合物をカクテルワクチンbに添加した場合により多く認められた。
【0306】
これより、実施例3で合成された化合物をワクチンに加えることにより、誘導されるCTLの数が多くなることが判明し、実施例3で合成された化合物がin vivoにおいてアジュバント活性を有することが強く示唆された。更に、実施例3で合成された化合物によるCTLを増加させる作用は、参考例14で合成されたPEG構造を含まない化合物による作用と比較して高いことが示された。
【0307】
試験例7
HLA-A 02:01遺伝子導入マウスを用いたin vivoアジュバント活性の評価
【0308】
実施例2で合成された化合物および参考例12で合成された化合物のin vivoにおけるアジュバント活性に関しては、ワクチンaに実施例2で合成された化合物を添加したワクチンを調製し、およびワクチンaに参考例12で合成された化合物を添加してワクチンを調製し、これらをHLA-A02:01遺伝子導入マウスに投与し、抗原特異的CTL誘導試験によってアジュバント活性を評価した。
【0309】
具体的には、試験例6と同様に調製したワクチンaを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンaを調製する際のペプチド希釈液中に実施例2で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、実施例2で合成された化合物が325ng/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンaを調製する際のペプチド希釈液中に参考例12で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、参考例12で合成された化合物が225ng/匹となるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。投与は1週間間隔で2回実施した。最終投与の1週間後に、マウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。脾細胞調製の前日に、ELISPOTプレートを抗マウスIFNγ抗体で処理し、当日に10%FBSを含むRPMI1640培地でブロッキングした。調製した脾細胞を6.25×10cells/wellで、ブロッキングしたELISPOTプレートに播種した。ペプチド(配列番号5)を0.1%(v/v)DMSO存在下、最終濃度10μg/mLで脾細胞に添加した。ペプチドを添加した脾細胞を37℃、5% CO下で一晩培養することで、in vitroにおけるペプチド再刺激を加えた。培養後に上清を除き、添付のプロトコールに従って発色させたELISPOTプレートのスポット数を、ImmunoSpot Analyzerによって測定した。
【0310】
結果を図6に示した。図6において、縦軸は各群3匹のマウスの播種細胞中の刺激に反応してIFNγを産生した細胞数の平均値を、横軸はマウスに投与したワクチンを示す。図6の黒棒および白棒はマウスの脾細胞を配列番号5で表されるペプチドの存在下および非存在下で培養した結果を示す。本試験の結果、配列番号5で表されるペプチド反応性CTLの数は、実施例2で合成された化合物または参考例12で合成された化合物のワクチンaへの添加によって、化合物を添加しない場合と比較してより多く認められた。更に、CTLの数の増加は、参考例12で合成された化合物をカクテルワクチンbに添加した場合と比較して、実施例2で合成された化合物をカクテルワクチンbに添加した場合により多く認められた。
【0311】
これより、実施例2で合成された化合物をワクチンに加えることにより、誘導されるCTLの数が多くなることが判明し、実施例2で合成された化合物がin vivoにおいてアジュバント活性を有することが強く示唆された。更に、実施例2で合成された化合物によるCTLを増加させる作用は、参考例12で合成されたPEG構造を含まない化合物による作用と比較して高いことが示された。
【0312】
試験例8
HLA-A 02:01遺伝子導入マウスを用いたin vivoアジュバント活性の評価
実施例2及び3で合成された化合物のin vivoにおけるアジュバント活性に関し、参考例9で合成された式番号4で表される化合物と参考例3で合成された配列番号3で表されるペプチドをMontanide ISA 51 VGと混合したカクテルワクチン(以下、「ワクチンb」という)に、実施例2、及び3で合成された化合物を添加してワクチンを調製し、これをHLA-A02:01遺伝子導入マウスに投与し、抗原特異的CTL誘導試験によってアジュバント活性を評価した。
【0313】
具体的には、式番号4で表される化合物および配列番号3で表されるペプチドをDMSOで溶解した後、希釈後の濃度が式番号4で表される化合物が3mg/mL、配列番号3で表されるペプチドが2.25mg/mLになるよう注射用水と混合した。このペプチド希釈液を等量のMontanide ISA 51 VG(Seppic社)と混合してエマルション化させて調製したワクチンbを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンbを調製する際のペプチド希釈液中に実施例3で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、実施例3で合成された化合物が32.5ng/匹あるいは325ng/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンbを調製する際のペプチド希釈液中に実施例2で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、実施例2で合成された化合物が32.5ng/匹あるいは325ng/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に2箇所投与した。投与は1週間間隔で2回実施した。最終投与の1週間後にマウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。試験例6と同様にペプチド(配列番号1あるいは配列番号5)を添加した脾細胞をELISPOTプレートに播種して37℃、5% CO下で一晩培養することで、in vitroにおけるペプチド再刺激を加えた。培養後に上清を除き、発色させたELISPOTプレートのスポット数を測定した。
【0314】
結果を図7~10に示した。図7~10において、縦軸は各群3匹のマウスの播種細胞中の刺激に反応してIFNγを産生した細胞数の平均値を、横軸はマウスに投与したワクチンを示す。図7および図9の黒棒および白棒はマウス由来の脾細胞を配列番号1で表されるペプチドの存在下および非存在下で培養した結果を示す。図8および図10の黒棒および白棒はマウス由来の脾細胞を配列番号5で表されるペプチドの存在下および非存在下で培養した結果を示す。本試験の結果、配列番号1で表されるペプチド反応性CTLの数、および、配列番号5で表されるペプチド反応性CTLの数は、実施例2、及び3で合成された化合物のワクチンbへの添加によって、化合物を添加しなかったワクチンbと比較してより多く認められた。
【0315】
これより、実施例2、及び3で合成された化合物をワクチンに加えることにより、誘導されるCTLの数が多くなることが判明し、本発明化合物がin vivoにおいてアジュバント活性を有することが強く示唆された。
【0316】
試験例9
HLA-A 02:01遺伝子導入マウスを用いたin vivoアジュバント活性の評価
実施例3で合成された化合物のin vivoにおけるアジュバント活性に関しては、参考例1で合成された配列番号1で表されるペプチドを予備乳化組成物と混合して調製したワクチン(以下、「ワクチンc」という)に、実施例3で合成された化合物を添加してワクチンを調製し、これをHLA-A02:01遺伝子導入マウスに投与し、抗原特異的CTL誘導試験によってアジュバント活性を評価した。
【0317】
具体的には、配列番号1で表されるペプチドをDMSOで溶解した後、2mg/mLになるよう注射用水と混合した。この希釈液を等量の予備乳化組成物と混合してエマルション化させて調製したワクチンcを、配列番号1で表されるペプチドが200μg/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンcを調製する際のペプチド希釈液中に実施例3で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、配列番号1で表されるペプチドが200μg/匹、実施例3で合成された化合物が32.5ng/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。投与は1週間間隔で2回実施した。最終投与の1週間後にマウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。試験例6と同様にペプチド(配列番号1)を添加した脾細胞をELISPOTプレートに播種して37℃、5% CO下で一晩培養することで、in vitroにおけるペプチド再刺激を加えた。培養後に上清を除き、発色させたELISPOTプレートのスポット数を測定した。
【0318】
結果を図11に示した。図11において、縦軸は各群3匹のマウスの播種細胞中の刺激に反応してIFNγを産生した細胞数の平均値を、横軸はマウスに投与したワクチンを示す。黒棒および白棒はHLA-A02:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞を配列番号1で表されるペプチドの存在下および非存在下で培養した結果を示す。本試験の結果、配列番号1で表されるペプチド反応性CTLの数は、実施例3で合成された化合物のワクチンcへの添加によって、化合物を添加しなかった場合と比較してより多く認められた。
【0319】
これより、実施例3で合成された化合物をワクチンに加えることにより、誘導されるCTLの数が多くなることが判明し、本発明化合物がin vivoにおいてアジュバント活性を有することが強く示唆された。
【0320】
試験例10
HLA-A 02:01/HLA-DRB1 01:01遺伝子導入マウスを用いたin vivoアジュバント活性の評価
実施例3で合成された化合物のin vivoにおけるアジュバント活性に関しては、参考例1で合成された配列番号1で表される化合物と参考例4で合成された配列番号4で表されるペプチドを予備乳化組成物と混合して調製したカクテルワクチン(以下、「ワクチンd」という)に、実施例3で合成された化合物を添加してワクチンを調製し、これををHLA-A02:01/HLA-DRB101:01遺伝子導入マウス(C57BL/6CrHLA-A2.1DR1)に投与し、抗原特異的ヘルパーT細胞誘導試験によってアジュバント活性を評価した。配列番号4で表されるペプチドは、HLA-DRB101:01拘束性WT1タンパク質由来ヘルパーペプチドである。
【0321】
具体的には、配列番号1で表されるペプチドおよび配列番号4で表されるペプチドをDMSOで溶解した後、希釈後の濃度が配列番号1で表される化合物が0.9mg/mL、配列番号4で表されるペプチドが1.8mg/mLになるよう注射用水と混合した。このペプチド希釈液を等量の予備乳化組成物と混合してエマルション化させて調製したワクチンdを、配列番号1で表されるペプチドが180μg/匹、配列番号4で表されるペプチドが360μg/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンdを調製する際のペプチド希釈液中に実施例3で合成された化合物を添加したワクチンを、配列番号1で表されるペプチドが180μg/匹、配列番号4で表されるペプチドが360μg/匹、実施例3で合成された化合物が3.25ng/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。投与は1週間間隔で2回実施した。最終投与の1週間後にマウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。試験例6と同様に最終濃度10μg/mLのペプチド(配列番号4)を添加した脾細胞をELISPOTプレートに播種して37℃、5% CO下で一晩培養することで、in vitroにおけるペプチド再刺激を加えた。培養後に上清を除き、発色させたELISPOTプレートのスポット数を測定した。
【0322】
結果を図12に示した。図12において、縦軸は各群3匹のマウスの播種細胞中の刺激に反応してIFNγを産生した細胞数の平均値を、横軸はマウスに投与したワクチンを示す。図12の黒棒および白棒はHLA-A02:01/HLA-DRB101:01遺伝子導入マウス由来の脾細胞を配列番号4で表されるペプチドの存在下および非存在下で培養した結果を示す。本試験の結果、配列番号4で表されるペプチド反応性T細胞の数は、実施例3で合成された化合物のワクチンdへの添加によって、化合物を添加しなかった場合と比較してより多く認められた。
【0323】
これより、実施例3で合成された化合物をワクチンに加えることにより、誘導されるヘルパーT細胞の数が多くなることが判明し、本発明化合物がin vivoにおいてアジュバント活性を有することが強く示唆された。
【0324】
試験例11
抗原特異的CTLのペプチドおよび腫瘍細胞に対する免疫応答性増強作用
本発明化合物を含むワクチンによって誘導されたCTLの腫瘍細胞存在下における免疫応答性に関しては、HLA-A02:01遺伝子導入マウスにワクチンを投与して得られた抗原ペプチド特異的CTLを含む脾細胞を、腫瘍細胞および抗原ペプチド存在下で培養することによって免疫応答性を評価した。
【0325】
具体的には、試験例6と同様に調製したワクチンaを、HLA-A02:01遺伝子導入マウスの尾根部皮内に投与した(式番号4で表される化合物を300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドを225μg/匹投与)。あるいは、ワクチンaを調製する際のペプチド希釈液中に実施例3で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、HLA-A02:01遺伝子導入マウスの尾根部皮内に投与した(式番号4で表される化合物を300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドを225μg/匹、実施例3で合成された化合物を32.5ng/匹投与)。投与は1週間間隔で2回実施した。最終投与の1週間後にマウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、Complete T-cell Medium(以下、CTM)を用いて脾細胞懸濁液を調製した。各群3匹のマウス由来の脾細胞を混合し、FITC標識抗CD8抗体(BD Pharmingen社)およびPE標識された配列番号1で表されるペプチドに対するHLAテトラマー試薬(MBL社)で、上記脾細胞の混合物を染色し、フローサイトメーターを用いてペプチド特異的CTLの解析を行った。
【0326】
また、脾細胞の一部にペプチド(配列番号1)溶液を添加し、最終濃度100μg/mLで約1時間、37℃、5%CO下に静置した。CTMで余分なペプチドを洗浄後、ペプチドパルスした脾細胞と非ペプチドパルス細胞を1:10の割合で混合して、その混合物をU底96穴プレートに3.85×10細胞/穴で播種した。腫瘍細胞として、マウスルイス肺がん由来細胞株LLCにHHD(ヒトのMHCであるHLA-A02:01とマウスMHCであるH-2DのキメラHLA)および抗原ペプチド(配列番号1)を安定発現させた細胞株(本明細書中、LLC-HHD-WT1腫瘍細胞とも記載する)にX線(50Gy)照射した後に、最終濃度100ng/mLのマウスリコンビナントIFN―γの存在下で上記LLC-HHD-WT1腫瘍細胞を約2日間培養し、CTMで洗浄した。このLLC-HHD-WT1腫瘍細胞を、脾細胞を播種したU底96穴プレートに3.5×10細胞/wellで播種して混合し、37℃、5%CO下で約3日間培養した。この培養上清中に含まれるマウスIFN-γの濃度をELISAキット(R&D Systems)で測定した。また、培養後の脾細胞を回収し、FITC標識抗CD8抗体およびPE標識された配列番号1で表されるペプチドに対するHLAテトラマー試薬で、上記回収した脾細胞を染色し、フローサイトメーターを用いてペプチド特異的CTLの解析を行った。
【0327】
フローサイトメトリー解析の結果、実施例3で合成された化合物を添加して調製したワクチンを投与したマウスの脾細胞は、化合物を添加しないワクチンaを投与したマウスの脾細胞と比べて、1.7倍のペプチド(配列番号1)特異的CTLを含んでいた(図13Aの白棒)。これらの脾細胞を腫瘍細胞と混合した上で、配列番号1ペプチド添加下で培養したところ、実施例3で合成された化合物を含むワクチンを投与したマウスの脾細胞に含まれるペプチド(配列番号1)特異的CTLは増加した一方で、化合物を含まないワクチンaを投与したマウスの脾細胞に含まれるCTLは減少し、その差は3.6倍となった(図13Aの黒棒)。更に、混合培養中にCTLから産生されたIFN-γの量は、実施例3で合成された化合物を含むワクチンを投与したマウスの脾細胞において、化合物を含まないワクチンaを投与したマウスの脾細胞と比べて4.9倍多かった(図13B、3wellの平均値で示した)。
【0328】
これらの結果より、実施例3で合成された化合物を添加したワクチンによって誘導されたCTLは、化合物を添加しないワクチンによって誘導されたCTLと比較して腫瘍細胞による抑制を受けにくく、本発明化合物は抗原ペプチド特異的CTLのペプチドおよび腫瘍細胞に対する反応性を増強することが示された。
【0329】
試験例12
抗原特異的CTLのペプチドおよび腫瘍細胞に対する免疫応答性増強作用
試験例8と同様に調製したワクチンbを、HLA-A02:01遺伝子導入マウスの尾根部皮内に投与した(式番号4で表される化合物を300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドを225μg/匹投与)。あるいは、ワクチンbを調製する際のペプチド溶液に実施例2で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、HLA-A02:01遺伝子導入マウスの尾根部皮内に投与した(式番号4で表される化合物を300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドを225μg/匹、実施例2で合成された化合物を325ng/匹投与)。1週間後にマウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、CTMを用いて脾細胞懸濁液を調製した。試験例6と同様にペプチド(配列番号1)を添加した脾細胞をELISPOTプレートに播種して37℃、5% CO下で一晩培養することで、in vitroにおけるペプチド再刺激を加えた。培養後に上清を除き、発色させたELISPOTプレートのスポット数を測定した。また、試験例11と同様に脾細胞の一部に配列番号1で表されるペプチドをパルスし、LLC-HHD-WT1腫瘍細胞と混合して37℃、5%CO2下で約3日間培養した。この培養上清中に含まれるマウスIFN-γの濃度をELISAキットで測定した。
【0330】
IFN-γ ELISPOT解析の結果、実施例2で合成された化合物を含むワクチンを投与したマウスの脾細胞は、化合物を含まないワクチンbを投与したマウスの脾細胞と比べて、1.8倍のペプチド(配列番号1)特異的CTLを含んでいた(図14Aの黒棒、3匹のマウスの平均値)。これらの脾細胞を腫瘍細胞と混合した上で、配列番号1ペプチド添加下で培養中にCTLから産生されたIFN-γの量をELISAで測定した結果、実施例2で合成された化合物を添加したワクチンを投与したマウスの脾細胞において、化合物を添加しないワクチンbを投与したマウスの脾細胞と比べて8.7倍多かった(図14B、3wellの平均値)。これらの結果より、実施例2で合成された化合物を添加したワクチンによって誘導されたCTLは、化合物を添加しないワクチンによって誘導されたCTLと比較して腫瘍細胞による抑制を受けにくく、本発明化合物は抗原ペプチド特異的CTLのペプチドおよび腫瘍細胞に対する反応性を増強することが示された。
【0331】
試験例13
抗原特異的CTLのペプチドおよび腫瘍細胞に対する免疫応答性における抗PD-1抗体の作用
試験例8と同様に調製したワクチンbを、HLA-A02:01遺伝子導入マウスの尾根部皮内に投与した(式番号4で表される化合物を300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドを225μg/匹投与)。あるいは、ワクチンbに実施例2で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、HLA-A02:01遺伝子導入マウスの尾根部皮内に投与した(式番号4で表される化合物を300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドを225μg/匹、実施例2で合成された化合物を325ng/匹投与)。投与は1週間間隔で2回実施した。最終投与の1週間後にマウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、CTMを用いて脾細胞懸濁液を調製した。試験例11と同様に脾細胞の一部に配列番号1で表されるペプチドをパルスし、LLC-HHD-WT1腫瘍細胞と混合して、アイソタイプコントロール抗体(Rat IgG2aκ、BD Pharmingen)あるいは抗PD-1抗体(クローン29F.1A12、Biolegend)を最終濃度37.5μg/mLで添加して37℃、5%CO下で約3日間培養した。この培養上清中に含まれるマウスIFN-γの濃度をELISAキットで測定した。
【0332】
3wellの平均値の結果を図15に示した。実施例2で合成された化合物を添加したワクチンを投与したマウス由来の脾細胞を配列番号1ペプチドおよび各抗体添加下、腫瘍細胞と混合培養中にCTLから産生されたIFN-γの量は、抗PD-1抗体を添加した脾細胞においてアイソタイプコントロール抗体を添加した脾細胞と比べて4倍多かった。これらの結果より、実施例2で合成された化合物を添加したワクチンによって誘導されたCTLのペプチドおよび腫瘍細胞に対する免疫応答性は、抗PD-1抗体の併用によって更に上昇し得ることが示された。
【0333】
試験例14
HLA-A 02:01遺伝子導入マウスを用いた抗原特異的エフェクターメモリーCTL誘導活性の評価
実施例2、及び3で合成された化合物を添加したワクチンによるエフェクターメモリーCTLの誘導活性を、フローサイトメトリーによるCTLの細胞表面抗原発現解析によって評価した。
【0334】
具体的には、試験例6と同様に調製したワクチンaを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹になるよう、HLA-A02:01遺伝子導入マウスの尾根部皮内に1週間間隔で2回投与した。または、ワクチンaに実施例3で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、実施例3で合成された化合物が32.5ng/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に1週間間隔で2回投与した。あるいは、試験例8と同様に調製したワクチンbを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンbに実施例3で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、実施例3で合成された化合物が325ng/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンbに実施例2で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、実施例2で合成された化合物が325ng/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に1週間間隔で2回投与した。最終投与の1週間後にマウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。各群3匹のマウスの脾細胞を混合し、FITC標識抗CD8抗体、PE標識された配列番号1で表されるペプチドに対するHLAテトラマー試薬、PE-Cy7標識抗CD127抗体およびPerCP-Cy5.5標識抗CD62L抗体で、上記脾細胞の混合物を染色し、フローサイトメーターを用いてペプチド特異的エフェクターメモリーCTLの解析を行った。リンパ球画分中における、CD8陽性テトラマー陽性CD127陽性CD62L陰性画分の比率を、ペプチド特異的エフェクターメモリーCTLの比率として算出した。
【0335】
実施例3で合成された化合物を添加したワクチンaによって、ワクチンaと比較してより高頻度のペプチド特異的エフェクターメモリーCTLが誘導された(図16A)。同様に、実施例3で合成された化合物をワクチンbに添加した場合(図16B)、および、実施例2で合成された化合物をワクチンbに添加した場合(図16C)のいずれにおいても、化合物を添加しないワクチンと比較してより高頻度の抗原ペプチド特異的エフェクターメモリーCTLが誘導された
【0336】
これらの結果より、実施例2あるいは実施例3で合成された化合物をワクチンに加えることにより、誘導される抗原特異的エフェクターメモリーCTLの数が増加することが示された。
【0337】
試験例15
ワクチンによるin vivo腫瘍増殖抑制効果に対する増強効果
本試験に使用したHLA-A24:02遺伝子導入マウス(C57BL/6CrHLA-A24/Kb)は、ヒトMHCであるHLA-A24:02とマウスMHCであるH-2KbとのキメラHLA(HLA-A2402/Kb)を発現するマウスである(Int.J.Cancer 2002;100:565-570)。本マウスを用いることで、ヒトのHLA-A24:02に結合し得るペプチドでCTLを誘導することが可能である。
【0338】
HLA-A24:02遺伝子導入マウスの腹側部皮内にコーン油に懸濁した3-methylcholanthreneを投与し、投与部位に発生した腫瘍からHLA-A2402/Kb発現腫瘍細胞を取得した。本細胞にWT1抗原ペプチド(配列番号2)を安定発現させて調製した細胞株(本明細書中、MCA-A24/Kb-WT1腫瘍細胞とも記載する)を、ハンクス平衡塩溶液中に浮遊させ、HLA-A24:02遺伝子導入マウスの腹側部皮内に移植した(マウス1匹につき、5×10個)。ビークルを投与する群(a群)、ワクチンを投与する群(b群)、実施例2で合成された化合物を添加したワクチンを投与する群(c群)を設定した。それぞれの群について6匹のマウスを使用した。腫瘍細胞を移植した7日前および7日後に、a群のマウスには、注射用水を含む組成物を等量のMontanide ISA 51 VGと混合しエマルション化させたのち、HLA-A24:02遺伝子導入マウスの尾根部皮内に投与した(1回あたり、0.1mL/匹を投与)。b群のマウスには、式番号4で示される化合物および配列番号3で示されるペプチドを含む組成物を等量のMontanide ISA 51 VGと混合しエマルション化させたのち、マウスの尾根皮内に投与した(1回あたり、式番号4で示される化合物を300μg/匹および配列番号3で示されるペプチドを225μg/匹投与)。c群のマウスには、式番号4で示される化合物と配列番号3で示されるペプチドおよび実施例2で合成された化合物を含む組成物を等量のMontanide ISA 51 VGと混合しエマルション化させたのち、マウスの尾根皮内に投与した(1回あたり、式番号4で示される化合物を300μg/匹、配列番号3で示されるペプチドを225μg/匹および実施例2で合成された化合物を100ng/匹投与)。腫瘍移植27日後に腫瘍径を測定し、腫瘍体積を算出した。
【0339】
各群のマウス6匹の腫瘍移植27日後における腫瘍容積の平均値を図17に示した。ワクチン(b群)は、腫瘍細胞の増殖をビークル(a群)に対して有意に抑制した(ノンパラメトリックDunnett型多重検定、*:p<0.05)。更に、ワクチンに実施例2で合成された化合物を添加することによって、腫瘍細胞の増殖はより顕著に抑制された(c群、**:p<0.01)。
【0340】
この結果より、ワクチンに本発明化合物を添加することによって、腫瘍に対する予防的な増殖抑制が増強されることが示された。
【0341】
参考例1記載の方法に従い、対応する原料を用いて表10に示すペプチドをトリフルオロ酢酸塩として得た。この化合物は本願発明化合物でないことから参考例とした。
【表10】
【0342】
国際公開第2007/063903記載の方法に従い、表11に示す化合物をトリフルオロ酢酸塩として得た(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す)。この化合物は本願発明化合物でないことから参考例とした。
【表11】
【0343】
試験例16
HLA-A 24:02遺伝子導入マウスを用いたin vivoアジュバント活性の評価
実施例2で合成された化合物のin vivoにおけるアジュバント活性に関しては、参考例18で合成された配列番号18で表されるペプチドをMontanide ISA 51 VGと混合して調製したワクチン(以下、「ワクチンe」という)に、実施例2で合成された化合物を添加してワクチンを調製し、これをHLA-A24:02遺伝子導入マウスに投与し、抗原特異的CTL誘導試験によってアジュバント活性を評価した。配列番号18で表されるペプチドTYAGCLSQIFはHLA-A24:02拘束性Or7c1タンパク質由来抗原ペプチドである。
【0344】
ワクチンeの投与により、抗原ペプチド(配列番号18)に対するCTLが誘導されるか否かは、上記マウス由来の脾細胞を目的のペプチドで再刺激を行った場合にIFNγを産生するか測定することで判断した。さらに、実施例2で合成された化合物がin vivoにおけるアジュバント活性を発揮するか否かは、ワクチンe投与により誘導されたCTLの数と、ワクチンeに実施例2で合成された化合物を添加して調製したワクチンを投与することにより誘導されたCTLの数を比較し、増加するか否かで判断した。
【0345】
具体的には、配列番号18で表されるペプチドをDMSOで溶解した後、希釈後の濃度が3mg/mLになるよう注射用水と混合した。このペプチド希釈液を等量のMontanide ISA 51 VGと混合してエマルション化させて調製したワクチンeを、配列番号18で表されるペプチドが300μg/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンeを調製する際のペプチド希釈液中に実施例2で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、配列番号18で表されるペプチドが300μg/匹、実施例2で合成された化合物が0.4nmol/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。投与は1週間間隔で2回行った。最終投与の1週間後に、マウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。試験例6と同様に最終濃度10μg/mLのペプチド(配列番号18)を添加した脾細胞をELISPOTプレートに播種して37℃、5% CO下で一晩培養することで、in vitroにおけるペプチド再刺激を加えた。培養後に上清を除き、発色させたELISPOTプレートのスポット数を測定した。
【0346】
結果を図18に示した。図18において、縦軸は各群3匹のマウスの播種細胞中の刺激に反応してIFNγを産生した細胞数の平均値を、横軸はマウスに投与したワクチンを示す。黒棒および白棒はHLA-A24:02遺伝子導入マウス由来の脾細胞を配列番号18で表されるペプチドの存在下および非存在下で培養した結果を示す。本試験の結果、配列番号18で表されるペプチド反応性CTLの数は、実施例2で合成された化合物のワクチンeへの添加によって、化合物を添加しなかった場合と比較してより多く認められた。
【0347】
これより、実施例2で合成された化合物をワクチンに加えることにより、誘導されるCTLの数が多くなることが判明し、実施例2で合成された化合物がin vivoにおいてアジュバント活性を有することが強く示唆された。
【0348】
試験例17
HLA-A 02:01遺伝子導入マウスを用いたin vivoアジュバント活性の評価
実施例7、8あるいは9で合成された化合物のin vivoにおけるアジュバント活性に関しては、参考例9で合成された式番号4で表される化合物と参考例3で合成された配列番号3で表されるペプチドをMontanide ISA51 VGと混合して調製したワクチンbに、実施例7、8、あるいは9で合成された化合物を添加してワクチンをを調製し、これをHLA-A02:01遺伝子導入マウスに投与し、抗原特異的CTL誘導試験によってアジュバント活性を評価した。
【0349】
具体的には、式番号4で表される化合物および配列番号3で表されるペプチドをDMSOで溶解した後、希釈後の濃度が式番号4で表される化合物が3mg/mL、配列番号3で表されるペプチドが2.25mg/mLになるよう注射用水と混合した。このペプチド希釈液を等量のMontanide ISA51 VGと混合してエマルション化させて調製したワクチンbを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンbを調製する際のペプチド希釈液中に実施例7、8、あるいは9で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、実施例7、8、あるいは9で合成された化合物が0.04nmol/匹あるいは0.4nmol/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。投与は1週間間隔で2回行った。最終投与の1週間後に、マウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。試験例6と同様に最終濃度10μg/mLのペプチド(配列番号5)を添加した脾細胞をELISPOTプレートに播種して37℃、5% CO下で一晩培養することで、in vitroにおけるペプチド再刺激を加えた。培養後に上清を除き、発色させたELISPOTプレートのスポット数を測定した。
【0350】
結果を図19に示した。本試験の結果、配列番号5で表されるペプチド反応性CTLの数は、実施例7、8、あるいは9で合成された化合物のワクチンbへの添加によって、化合物を添加しない場合と比較してより多く認められた。
【0351】
これより、実施例7、8、あるいは9合成された化合物をワクチンに加えることにより、誘導されるCTLの数が多くなることが判明し、実施例7、8、あるいは9で合成された化合物がin vivoにおいてアジュバント活性を有することが強く示唆された。
【0352】
試験例18
HLA-A 02:01遺伝子導入マウスを用いたin vivoアジュバント活性の評価
実施例6で合成された化合物のin vivoにおけるアジュバント活性に関しては、試験例17と同様のワクチンbに、実施例6で合成された化合物を添加してワクチンを調製し、これをHLA-A02:01遺伝子導入マウスに投与し、抗原特異的CTL誘導試験によってアジュバント活性を評価した。
【0353】
具体的には、式番号4で表される化合物および配列番号3で表されるペプチドをDMSOで溶解した後、希釈後の濃度が式番号4で表される化合物が3mg/mL、配列番号3で表されるペプチドが2.25mg/mLになるよう注射用水と混合した。このペプチド希釈液を等量のMontanide ISA51 VGと混合してエマルション化させて調製したワクチンbを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンbを調製する際のペプチド希釈液中に実施例6で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号4で表される化合物が300μg/匹、配列番号3で表されるペプチドが225μg/匹、実施例6で合成された化合物が0.04nmol/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。投与は1週間間隔で2回行った。最終投与の1週間後に、マウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。試験例6と同様に最終濃度10μg/mLのペプチド(配列番号5)を添加した脾細胞をELISPOTプレートに播種して37℃、5% CO下で一晩培養することで、in vitroにおけるペプチド再刺激を加えた。培養後に上清を除き、発色させたELISPOTプレートのスポット数を測定した。
【0354】
結果を図20に示した。本試験の結果、配列番号5で表されるペプチド反応性CTLの数は、実施例6で合成された化合物のワクチンbへの添加によって、化合物を添加しない場合と比較してより多く認められた。
【0355】
これより、実施例6で合成された化合物をワクチンに加えることにより、誘導されるCTLの数が多くなることが判明し、実施例6で合成された化合物がin vivoにおいてアジュバント活性を有することが強く示唆された。
【0356】
試験例19
HLA-A 24:02遺伝子導入マウスを用いたin vivoアジュバント活性の評価
実施例2で合成された化合物のin vivoにおけるアジュバント活性に関して、参考例19で合成された式番号5で表される化合物を予備乳化組成物と混合して調製したワクチン(以下、「ワクチンf」という)に、実施例2で合成された化合物を添加してワクチンを調製し、これをHLA-A24:02遺伝子導入マウスに投与し、抗原特異的CTL誘導試験によってアジュバント活性を評価した。式番号5で表される化合物に含まれるペプチドCYTWNQMNL(配列番号2)は、HLA-A24:02拘束性WT1タンパク質由来抗原ペプチドである。
【0357】
ワクチンfの投与により、抗原ペプチド(配列番号2)に対するCTLが誘導されるか否かは、上記マウス由来の脾細胞を目的のペプチドで再刺激を行った場合にIFNγを産生するか測定することで判断した。さらに、実施例2で合成された化合物がin vivoにおけるアジュバント活性を発揮するか否かは、ワクチンf投与により誘導されたCTLの数と、ワクチンfに実施例2で合成された化合物を添加して調製したワクチンを投与することにより誘導されたCTLの数を比較し、増加するか否かで判断した。
【0358】
具体的には、式番号5で表される化合物をDMSOで溶解した後、希釈後の濃度が3mg/mLになるよう注射用水と混合した。この化合物希釈液を等量の試験例6と同様に調製した予備乳化組成物と混合してエマルション化させて調製したワクチンfを、式番号5で表される化合物が300μg/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。または、ワクチンfを調製する際の化合物希釈液中に実施例2で合成された化合物を添加して調製したワクチンを、式番号5で表される化合物が300μg/匹、実施例2で合成された化合物が0.4nmol/匹になるよう、マウスの尾根部皮内に投与した。投与は1週間間隔で2回行った。最終投与の1週間後に、マウスをCOガスにより安楽死させたのち脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。試験例6と同様に最終濃度10μg/mLのペプチド(配列番号2)を添加した脾細胞をELISPOTプレートに播種して37℃、5% CO下で一晩培養することで、in vitroにおけるペプチド再刺激を加えた。培養後に上清を除き、発色させたELISPOTプレートのスポット数を測定した。
【0359】
結果を図21に示した。図21において、縦軸は各群3匹のマウスの播種細胞中の刺激に反応してIFNγを産生した細胞数の平均値を、横軸はマウスに投与したワクチンを示す。黒棒および白棒はHLA-A24:02遺伝子導入マウス由来の脾細胞を配列番号2で表されるペプチドの存在下および非存在下で培養した結果を示す。本試験の結果、配列番号2で表されるペプチド反応性CTLの数は、実施例2で合成された化合物のワクチンfへの添加によって、化合物を添加しなかった場合と比較してより多く認められた。
【0360】
これより、実施例2で合成された化合物をワクチンに加えることにより、誘導されるCTLの数が多くなることが判明し、実施例2で合成された化合物がin vivoにおいてアジュバント活性を有することが強く示唆された。
図1-A】
図1-B】
図1-C】
図1-D】
図1-E】
図1-F】
図1-G】
図1-H】
図2-A】
図2-B】
図2-C】
図2-D】
図2-E】
図2-F】
図2-G】
図2-H】
図2-I】
図3-A】
図3-B】
図3-C】
図3-D】
図3-E】
図3-F】
図3-G】
図3-H】
図3-I】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-A】
図13-B】
図14-A】
図14-B】
図15
図16-A】
図16-B】
図16-C】
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
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