(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ベンゾトリアゾール環構造を有する化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
C07D 249/20 20060101AFI20241018BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241018BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241018BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20241018BHJP
【FI】
C07D249/20 501
C07D249/20 CSP
C09K11/06 690
H05B33/14 B
H05B33/22 B
(21)【出願番号】P 2021524865
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021845
(87)【国際公開番号】W WO2020246484
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2019106028
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】林 栽建
(72)【発明者】
【氏名】金 志泳
(72)【発明者】
【氏名】平山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】駿河 和行
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01403564(GB,A)
【文献】国際公開第2013/054764(WO,A1)
【文献】特表2007-518705(JP,A)
【文献】特表2018-532688(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0051598(KR,A)
【文献】米国特許第02972611(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 249/00
C07D 401/00
C09K 11/00
H10K 50/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a-
3)で表される、ベンゾトリアゾール環構造を有する化合物。
【化1】
(式中、Rは、各々同一でも異なっていてもよく、下記構造式(b-1)で表される基、水素原子、重水素原子
、無置換の芳香族炭化水素基、
または無置換の縮合多環芳香族
基を表す。ただし、少なくとも1つ以上のRは、下記構造式(b-1)で表される基である。)
【化2】
(式中、破線部は結合部位を表し、L
1は、単結合
、無置換の芳香族炭化水素基、また
は無置換の縮合多環芳香族基を表し、L
2は
、無置換の芳香族炭化水素基
、また
は無置換の縮合多環芳香族基を表す。nは、整数1または2である。ただし、nが整数2であるとき、L
2は3価基である。)
【請求項2】
前記構造式(b-1)におけるnが、整数1である、請求項
1に記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物。
【請求項3】
前記構造式(b-1)におけるL
2が
、無置換の芳香族炭化水素基である、請求項1
または2に記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物。
【請求項4】
一対の電極と、その間に挟まれた少なくとも一層の有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、少なくとも一層の有機層が、請求項1~
3のいずれか一項に記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物を含む有機層である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記ベンゾトリアゾール環構造を有する化合物を含む有機層が、電子輸送層である、請求項
4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記ベンゾトリアゾール環構造を有する化合物を含む有機層が、正孔阻止層である、請求項
4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記ベンゾトリアゾール環構造を有する化合物を含む有機層が、発光層である、請求項
4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記ベンゾトリアゾール環構造を有する化合物を含む有機層が、電子注入層である、請求項
4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)に適した化合物と素子に関するものであり、詳しくはベンゾトリアゾール環構造を有する化合物と、該化合物を用いた有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自発光性素子であるため、液晶素子に比べて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であることから、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは、各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより、有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは、電子を輸送することのできる蛍光体と、正孔を輸送することのできる有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m2以上の高輝度を得ている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機EL素子の実用化のために多くの改良がなされており、積層構造における各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を設けた電界発光素子とすることによって、高効率と耐久性が達成されるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、発光効率の更なる向上を目的として三重項励起子の利用が試みられており、燐光発光性化合物の利用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
そして、熱活性化遅延蛍光(TADF)による発光を利用する素子も開発されており、2011年に九州大学の安達らは、熱活性化遅延蛍光材料を用いた素子によって5.3%の外部量子効率を実現させた。(例えば、非特許文献3参照)
【0006】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光性化合物や燐光発光性化合物または遅延蛍光を放射する材料をドープして作製することもできる。前記非特許文献に記載されているように、有機EL素子における有機材料の選択は、その素子の効率や耐久性など諸特性に大きな影響を与える。(例えば、非特許文献2参照)
【0007】
有機EL素子においては、両電極から注入された電荷が発光層で再結合して発光が得られるが、正孔、電子の両電荷を如何に効率良く発光層に受け渡すかが重要である。その為には、電子注入性を高め、その移動度を大きくすることで、正孔と電子が発光層内で再結合する確率を向上させることが必要であり、更には、陽極側から輸送された正孔を発光層に閉じ込めること、電子輸送層の劣化を防ぐこと、また、発光層内で生成した励起子を閉じ込めることによって、より再結合する環境を作り上げることが必要である。そのような環境を作り上げることで、高効率発光を得ることができる。故に、電子輸送材料の果たす役割は重要であり、電子注入性が高く、電子移動度が大きく、正孔阻止性が高く、更には正孔に対する耐久性が高い電子輸送材料が求められている。
【0008】
また、素子の寿命に関しては、材料の耐熱性やアモルファス性も重要である。耐熱性が低い材料では、素子駆動時に生じる熱により低い温度でも熱分解が起こり、材料が劣化する。アモルファス性が低い材料では、短い時間でも薄膜の結晶化が起こり、素子が劣化してしまう。そのため使用する材料には、耐熱性が高くアモルファス性が良好な性質が求められる。
【0009】
代表的な発光材料であるトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(以後、Alq3と略称する)は、電子輸送材料としても一般的に用いられるが、電子移動が遅く、また仕事関数が5.6eVなので正孔阻止性能が十分とはいえない。
【0010】
電子注入性や移動度などの特性を改良した化合物として、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物が提案されているが(例えば、特許文献3)、これらの化合物を電子輸送層に用いた素子では、発光効率などの改良はされているものの、未だ十分とはいえず、さらなる低駆動電圧化や、さらなる高発光効率化が求められている。
【0011】
また、正孔阻止性に優れた電子輸送材料として、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(以後、TAZと略称する)が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0012】
TAZは仕事関数が6.6eVと大きく正孔阻止能力が高いために、真空蒸着や塗布などによって作製される蛍光発光層や燐光発光層の、陰極側に積層する電子輸送性の正孔阻止層として使用され、有機EL素子の高効率化に寄与している(例えば、非特許文献4参照)。
【0013】
しかし、電子輸送性が低いことがTAZにおける大きな課題であり、より電子輸送性の高い電子輸送材料と組み合わせて、有機EL素子を作製することが必要であった(例えば、非特許文献5参照)。
【0014】
また、バソクプロイン(以後、BCPと略称する)は仕事関数が6.7eVと大きく正孔阻止能力が高いものの、ガラス転移点(Tg)が83℃と低いことから、薄膜の安定性に乏しく、正孔阻止層として十分に機能しているとは言えない。
【0015】
いずれの材料も膜安定性が不足しており、もしくは正孔を阻止する機能が不十分である。有機EL素子の素子特性を改善させるために、電子の注入・輸送性能と正孔阻止能力に優れ、薄膜状態での安定性が高い有機化合物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】US5792557
【文献】US5639914
【文献】US9123897
【文献】US5869199
【文献】US20080027226
【文献】EP2684932
【文献】US9199966
【文献】US6878469
【非特許文献】
【0017】
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集55~61ページ(2001)
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集23~31ページ(2001)
【文献】Appl.Phys.Lett.,98,083302(2011)
【文献】第50回応用物理学関係連合講演会28p-A-6講演予稿集1413ページ(2003)
【文献】応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会会誌11巻1号13~19ページ(2000)
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、高効率、高耐久性の有機EL素子用材料として、電子注入・輸送性能に優れ、正孔阻止能力を有し、薄膜状態での安定性が高い優れた特性を有する有機化合物を提供し、更にこの化合物を用いて、高効率、高耐久性の有機EL素子を提供することにある。
【0019】
本発明が提供しようとする有機化合物が具備すべき物理的な特性としては、(1)電子の注入特性が良いこと、(2)電子の移動度が大きいこと、(3)正孔阻止能力に優れること、(4)薄膜状態が安定であること、(5)耐熱性に優れていること、をあげることができる。また、本発明が提供しようとする有機EL素子が具備すべき物理的な特性としては、(1)発光効率および電力効率が高いこと、(2)発光開始電圧が低いこと、(3)実用駆動電圧が低いこと、(4)長寿命であること、をあげることができる。
【0020】
そこで本発明者らは上記の目的を達成するために、電子親和性であるベンゾトリアゾール環構造の、窒素原子が金属に配位する能力を有していることと、耐熱性に優れているということに着目して、ベンゾトリアゾール環構造を有する化合物を設計して化学合成し、該化合物を用いて種々の有機EL素子を試作し、素子の特性評価を鋭意行った結果、本発明を完成するに至った。
【0021】
1)すなわち本発明は、下記一般式(a-1)で表される、ベンゾトリアゾール環構造を有する化合物である。
【0022】
【化1】
(式中、Rは、各々同一でも異なっていてもよく、下記構造式(b-1)で表される基、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルホスフィニル基、ジフェニルホスフィンオキサイド基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を表す。ただし、少なくとも1つ以上のRは、下記構造式(b-1)で表される基である。)
【0023】
【化2】
(式中、破線部は結合部位を表し、L
1は、単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、L
2は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。nは、整数1または2である。ただし、nが整数2であるとき、L
2は3価基である。)
【0024】
2)また本発明は、下記一般式(a-2)で表される、上記1)記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物である。
【0025】
【化3】
(式中、Rは、前記一般式(a-1)と同様の意味である。)
【0026】
3)また本発明は、下記一般式(a-3)で表される、上記2)記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物である。
【0027】
【化4】
(式中、Rは、前記一般式(a-1)と同様の意味である。)
【0028】
4)また本発明は、下記一般式(a-4)で表される、上記2)記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物である。
【0029】
【化5】
(式中、Rは前記一般式(a-1)と同様の意味である。)
【0030】
5)また本発明は、下記一般式(a-5)で表される、上記2)記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物である。
【0031】
【化6】
(式中、Rは、前記一般式(a-1)と同様の意味である。)
【0032】
6)また本発明は、下記一般式(a-6)で表される、上記5)記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物である。
【0033】
【化7】
(式中、Rは、前記一般式(a-1)と同様の意味である。)
【0034】
7)また本発明は、下記一般式(a-7)で表される、上記5)記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物である。
【0035】
【化8】
(式中、Rは、前記一般式(a-1)と同様の意味である。)
【0036】
8)また本発明は、前記構造式(b-1)におけるnが、整数1である、上記1)~7)記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物である。
【0037】
9)また本発明は、前記構造式(b-1)におけるL2が、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基である、上記1)~7)記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物。
【0038】
10)また本発明は、一対の電極と、その間に挟まれた少なくとも一層の有機層とを有する有機EL素子において、少なくとも一層の有機層が、上記1)~9)のいずれかに記載のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物を含む有機層である有機EL素子である。
【0039】
11)また、本発明は、前記ベンゾトリアゾール環構造を含む有機層が、電子輸送層である、上記10)記載の有機EL素子である。
【0040】
12)また、本発明は、前記ベンゾトリアゾール環構造を含む有機層が、正孔阻止層である、上記10)記載の有機EL素子である。
【0041】
13)また、本発明は、前記ベンゾトリアゾール環構造を含む有機層が、発光層である、上記10)記載の有機EL素子である。
【0042】
14)また、本発明は、前記ベンゾトリアゾール環構造を含む有機層が、電子注入層である、上記10)記載の有機EL素子である。
【0043】
一般式(a-1)中のRで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、アザフルオレニル基、ジアザフルオレニル基、アザスピロビフルオレニル基、ジアザスピロビフルオレニル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などをあげることができ、炭素数6~30からなるアリール基、または炭素数2~20からなるヘテロアリール基から選択することもできる。
【0044】
一般式(a-1)中のRで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル基;メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基のような基をあげることができ、これらの置換基は、さらに前記例示した置換基が置換していてもよい。また、これらの置換基と置換したベンゼン環とが、または同一のベンゼン環に複数置換された置換基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0045】
一般式(a-1)中のRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5~10のシクロアルキル基」、または「炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、および2-ブテニル基などをあげることができ、これらの置換基と置換したベンゼン環とが、または同一のベンゼン環に複数置換された置換基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0046】
一般式(a-1)中のRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、一般式(a-1)中のRで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0047】
一般式(a-1)中のRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」、または「炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基などをあげることができ、これらの置換基と置換したベンゼン環とが、または同一のベンゼン環に複数置換された置換基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0048】
一般式(a-1)中のRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、一般式(a-1)中のRで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0049】
構造式(b-1)中のL1およびL2で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」、または「縮合多環芳香族基」としては、一般式(a-1)中のRで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0050】
構造式(b-1)中のL1およびL2で表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、一般式(a-1)中のRで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0051】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(a-1)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、有機EL素子の電子注入層、電子輸送層または正孔阻止層の構成材料として使用することができる。前記一般式(a-1)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、電子の移動度が高く、電子注入層または電子輸送層の材料として好ましい化合物である。
【0052】
電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れた有機EL素子用の材料を使用することで、従来の有機EL素子に比べて、電子輸送層から発光層への電子輸送効率が向上して発光効率が向上すると共に、駆動電圧が低下して耐久性を向上させることができ、高効率、低駆動電圧、長寿命の有機EL素子を実現することが可能となる。
【0053】
本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、(1)電子の注入特性が良い、(2)電子の移動度が速い、(3)正孔阻止能力に優れている、(4)薄膜状態で安定に存在する、(5)耐熱性に優れている、などの特性があり、本発明の有機EL素子は、(6)発光効率が高い、(7)発光開始電圧が低い、(8)実用駆動電圧が低い、(9)長寿命、などの特性を有している。
【0054】
本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、電子の注入・移動度が速い。そのため、同化合物を電子注入材料および/または電子輸送材料として用いて作製された電子注入層および/または電子輸送層を有する有機EL素子は、発光層への電子輸送効率が向上して発光効率が向上すると共に、駆動電圧が低下することで耐久性が向上する。
【0055】
本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、正孔阻止能力と電子輸送性に優れ、かつ薄膜状態においても安定であり、発光層内で生成した励起子を閉じ込める特徴がある。そのため、同化合物を正孔阻止材料として用いて作製された正孔阻止層を有する有機EL素子は、正孔と電子が再結合する確率が向上して熱失活が抑制され、高い発光効率を有するものとなり、駆動電圧が低下し、電流耐性が改善されることで最大発光輝度が向上している。
【0056】
本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、電子輸送性に優れ、かつバンドギャップが広いことで、同化合物をホスト材料として用いて作製された発光層を有する有機EL素子は、ドーパントと呼ばれる蛍光発光体や燐光発光体、遅延蛍光発光体を担持させて発光層を形成することで駆動電圧が低下し、発光効率が改善される。
【0057】
よって、本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、有機EL素子の電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層または発光層の材料として有用であり、従来の有機EL素子の発光効率および駆動電圧、そして耐久性を改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物1~18の構造を示す図である。
【
図2】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物19~33の構造を示す図である。
【
図3】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物34~54の構造を示す図である。
【
図4】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物55~68の構造を示す図である。
【
図5】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物69~82の構造を示す図である。
【
図6】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物83~97の構造を示す図である。
【
図7】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物98~114の構造を示す図である。
【
図8】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物115~130の構造を示す図である。
【
図9】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物131~146の構造を示す図である。
【
図10】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物147~162の構造を示す図である。
【
図11】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物163~179の構造を示す図である。
【
図12】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物180~193の構造を示す図である。
【
図13】一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の具体例として、化合物194~207の構造を示す図である。
【
図14】実施例16~28、比較例1、2の有機EL素子構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、前記一般式(a-1)~(a-7)で表される化合物であるが、電子の注入・輸送性能の観点から、前記一般式(a-3)で表される化合物であることがより好ましく、特に下記一般式(a-3a)又は下記一般式(a-3b)で表される化合物であることが好ましい。
【0060】
【化9】
(式中、Rは、各々同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、ただし、2つのRがいずれも水素原子であることはない。
L
1は、単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、L
2は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。)
【0061】
【化10】
(式中、Rは、各々同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、ただし、2つのRがいずれも水素原子であることはない。
L
1は、単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、L
2は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。)
【0062】
前記一般式(a-3a)及び(a-3b)中のL1が単結合または1,4-ナフチレン基であり、L2が1,4-フェニレン基または4,4’-ビフェニリレン基であることが、電子の注入・輸送性能の観点から好ましい。
【0063】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の中で、好ましい化合物の具体例を
図1~13に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0064】
本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は新規な化合物である。これら化合物は、例えば以下のように、それ自体公知の方法に準じて合成することができる(例えば、特許文献3および特許文献5参照)。
【0065】
【0066】
一般式(a-1)~(a-7)で表されるベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の精製は、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法、昇華精製法などによって行うことができる。化合物の同定は、NMR分析によって行うことができる。物性値として、融点、ガラス転移点(Tg)及び仕事関数の測定を行うことが好ましい。融点は蒸着性の指標となるものであり、ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となり、仕事関数は正孔輸送性や正孔阻止性の指標となるものである。
【0067】
融点とガラス転移点(Tg)は、例えば、粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって測定することができる。
【0068】
仕事関数は、例えば、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって求めることができる。
【0069】
本発明の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び陰極からなるもの、また、正孔輸送層と発光層の間に電子阻止層を有するもの、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を有するものがあげられる。これらの多層構造においては、1つの有機層を何層かの役割を兼ねることが可能であり、例えば1つの有機層が正孔注入層と正孔輸送層を兼ねた構成とすること、電子注入層と電子輸送層を兼ねた構成とすること、などもできる。また、同一の機能を有する有機層を2層以上積層した構成とすることが可能であり、正孔輸送層を2層積層した構成、発光層を2層積層した構成、電子輸送層を2層積層した構成、などもできる。
【0070】
本発明の有機EL素子の陽極として、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。本発明の有機EL素子の正孔注入層の材料として、銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物のほか、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、分子中にトリフェニルアミン構造またはカルバゾリル構造を2個以上有し、それぞれが単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物、および塗布型の高分子材料などを用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0071】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層の材料として、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)-ベンジジン(以後、TPDと略称する)やN,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)-ベンジジン(以後、NPDと略称する)、N,N,N’,N’-テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(以後、TAPCと略称する)、および分子中にトリフェニルアミン構造またはカルバゾリル構造を2個以上有し、それぞれが単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物などを用いることができる。
これらの材料は、単独で成膜してもよいが、他の材料と混合して成膜することもでき、いずれも単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士の積層構造、複数の材料を混合して成膜した層同士の積層構造、またはこれらの材料を単独で成膜した層と複数の材料を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。
また、正孔の注入・輸送層として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(以後、PEDOTと略称する)/ポリ(スチレンスルフォネート)(以後、PSSと略称する)などの塗布型の高分子材料を用いることができる。
これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0072】
また、正孔注入層および正孔輸送層には、これらの層に通常使用される材料に対してトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、ラジアレン誘導体(例えば、特許文献6参照)をPドーピングしたものや、TPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0073】
本発明の有機EL素子の電子阻止層の材料として、4,4’,4’’-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(以後、TCTAと略称する)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(以後、mCPと略称する)、2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イルフェニル)アダマンタン(以後、Ad-Czと略称する)などのカルバゾール誘導体、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。
これらの材料は、単独で成膜してもよいが、他の材料と混合して成膜することもでき、いずれも単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士の積層構造、複数の材料を混合して成膜した層同士の積層構造、またはこれらの材料を単独で成膜した層と複数の材料を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0074】
本発明の有機EL素子の発光層の材料として、本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物のほか、Alq3をはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成してもよく、ホスト材料として、アントラセン誘導体が好ましく用いられるが、そのほか、本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物を初めとする前記発光材料に加え、インドール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。またドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレンおよびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。
これらの材料は、単独で成膜してもよいが、他の材料と混合して成膜することもでき、いずれも単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士の積層構造、複数の材料を混合して成膜した層同士の積層構造、またはこれらの材料を単独で成膜した層と複数の材料を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。
【0075】
また、発光材料として燐光発光体を使用することも可能である。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。Ir(ppy)3などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、Btp2Ir(acac)などの赤色の燐光発光体などがあげられる。このときのホスト材料としては、正孔注入・輸送性のホスト材料として4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(以後、CBPと略称する)やTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などに加え、本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物を用いることができ、電子輸送性のホスト材料としてp-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(以後、UGH2と略称する)や2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(以後、TPBIと略称する)などを用いることができる。
【0076】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは、濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によって行うことが好ましい。
【0077】
また、発光材料としてPIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、および4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である(例えば、非特許文献3参照)。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0078】
本発明の有機EL素子の正孔阻止層の材料として、本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物のほか、BCPなどのフェナントロリン誘導体や、BAlqなどのキノリノール誘導体の金属錯体、各種の希土類錯体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。
これらの材料は、単独で成膜してもよいが、他の材料と混合して成膜することもでき、いずれも単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士の積層構造、複数の材料を混合して成膜した層同士の積層構造、またはこれらの材料を単独で成膜した層と複数の材料を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0079】
本発明の有機EL素子の電子輸送層の材料として、本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物のほか、Alq3、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、ピリドインドール誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。
これらの材料は、単独で成膜してもよいが、他の材料と混合して成膜することもでき、いずれも単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士も積層構造、複数の材料を混合して成膜した層同士の積層構造、またはこれらの材料を単独で成膜した層と複数の材料を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0080】
本発明の有機EL素子の電子注入層の材料として、本発明のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物のほか、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、リチウムキノリノールなどのキノリノール誘導体の金属錯体、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、あるいはイッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)などの金属などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択により、これを省略することができる。
【0081】
さらに、電子注入層および電子輸送層には、これらの層に通常使用される材料に対してセシウムなどの金属をNドーピングしたものを用いることができる。
【0082】
本発明の有機EL素子の陰極として、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
<2-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-5-(9,9’-スピロビ[9H]フルオレン-2-イル)-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-2)の合成>
反応容器に、2-(4-クロロ-フェニル)-5-(9,9’-スピロビ[9H]フルオレン-2-イル)-2H-ベンゾトリアゾール:9.0g、4-シアノ-フェニルボロン酸:2.9g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.5g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.2g、リン酸三カリウム:10.5gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内に酢酸エチル/H2Oを加えて抽出および分液操作にて取り出した有機層を濃縮した。得られた濃縮物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、2-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-5-(9,9’-スピロビ[9H]フルオレン-2-イル)-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-2)の黄色粉体8.1g(収率:80%)を得た。
【0085】
【0086】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の26個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.46(2H)、7.97(2H)、7.94(1H)、7.90(3H)、7.81-7.72(7H)、7.59(1H)、7.43(1H)、7.42(2H)、7.16(3H)、7.07(1H)、6.83(2H)、6.79(1H)
【0087】
[実施例2]
<2-(4-シアノ-[1,1’,4’,1”]ターフェニル-4”-イル)-5,6-ジフェニル-ベンゾトリアゾール(化合物-40)の合成>
反応容器に、2-(4-ブロモフェニル)-5,6-ジクロロ-ベンゾトリアゾール:20.0g、4’-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-4-カルボニトリル:18.7g、トルエン:210mL、エタノール:70mLを入れて、続いて、予め炭酸カリウム:9.7gをH2O:70mLに溶解した水溶液を加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:1.7gを加えて加熱還流下にて一晩還流撹拌した。撹拌後に放冷し、メタノール、H2Oを加えて分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をアセトン溶媒による分散洗浄を行うことで、2-(4-シアノ-[1,1’,4’,1”]ターフェニル-4”-イル)-5,6-ジクロロ-ベンゾトリアゾールの山吹色粉体21.8g(収率:85%)を得た。
【0088】
【0089】
得られた山吹色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の14個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.46(2H)、8.12(2H)、7.87(2H)、7.84-7.71(8H)
【0090】
続けて、2-(4-シアノ-[1,1’,4’,1”]ターフェニル-4”-イル)-5,6-ジクロロ-ベンゾトリアゾール:8.0g、フェニルボロン酸:6.6g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.8g、トリシクロヘキシルホスフィン:1.0g、リン酸三カリウム:23.1gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にH2Oを加え、分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をジクロロベンゼン溶媒による再結晶精製を行うことで、2-(4-シアノ-[1,1’,4’,1”]ターフェニル-4”-イル)-5,6-ジフェニル-ベンゾトリアゾール(化合物-40)の白色粉体8.3g(収率:87%)を得た。
【0091】
【0092】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の24個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.53(2H)、8.00(2H)、7.87(2H)、7.79(8H)、7.28-7.16(10H)
【0093】
[実施例3]
<2-(4-シアノ-[1,1’,4’,1”]ターフェニル-4”-イル)-5,6-ジ(ナフタレン-1-イル)-ベンゾトリアゾール(化合物-44)の合成>
反応容器に、2-(4-シアノ-[1,1’,4’,1”]ターフェニル-4”-イル)-5,6-ジクロロ-ベンゾトリアゾール:5.0g、1-ナフタレンボロン酸:6.2g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.5g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.6g、リン酸三カリウム:14.4gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にH2Oを加え、分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をジクロロベンゼン/アセトン混合溶媒による晶析精製を行うことで、2-(4-シアノ-[1,1’,4’,1”]ターフェニル-4”-イル)-5,6-ジ(ナフタレン-1-イル)-ベンゾトリアゾール(化合物-44)の白色粉体4.6g(収率:65%)を得た。
【0094】
【0095】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の28個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.58(2H)、8.14(2H)、7.94-7.73(13H)、7.60(3H)7.46(2H)、7.28(3H)、7.11(1H)、7.01(2H)
【0096】
[実施例4]
<2-(4”-シアノ-[1,1’;4’,1”]ターフェニル-4-イル)-5-(フェナンスレン-9-イル)-6-フェニル-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-48)の合成>
反応容器に、5-クロロ-2-(4”-シアノ-[1,1’;4’,1”]ターフェニル-4-イル)-6-フェニル-2H-ベンゾトリアゾール:13.1g、9-フェナンスレンボロン酸:12.6g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):1.5g、トリシクロヘキシルホスフィン:1.5g、リン酸三カリウム:23.0gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にメタノールを加え、分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をクロロベンゼン溶媒による再結晶精製を行うことで、2-(4”-シアノ-[1,1’;4’,1”]ターフェニル-4-イル)-5-(フェナンスレン-9-イル)-6-フェニル-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-48)の白色粉体6.6g(収率:39%)を得た。
【0097】
【0098】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の28個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.68(2H)、8.56(2H)、8.10(2H)、7.89(2H)、7.84(3H)、7.77(6H)、7.70(1H)、7.67(2H)、7.59(2H)、7.42(1H)、7.23(2H)、7.00(3H)
【0099】
[実施例5]
<2-[4-{4-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-ナフタレン-1-イル}-フェニル]-5-(フェナンスレン-9-イル)-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-78)の合成>
反応容器に、2-(4-クロロ-フェニル)-5-(フェナンスレン-9-イル)-2H-ベンゾトリアゾール:5.6g、4’-{4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ナフタレン-1-イル}-ビフェニル-4-カルボニトリル:6.2g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.4g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.4g、リン酸三カリウム:5.9gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にメタノールを加え、分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をクロロベンゼン/アセトン混合溶媒による晶析精製を行うことで、2-[4-{4-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-ナフタレン-1-イル}-フェニル]-5-(フェナンスレン-9-イル)-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-78)の淡黄色粉体3.3g(収率:35%)を得た。
【0100】
【0101】
得られた淡黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の30個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.86(1H)、8.80(1H)、8.60(2H)、8.18(1H)、8.10(2H)、8.08(1H)、8.00(1H)、7.97(1H)、7.88-7.65(15H)、7.61(3H)7.55(2H)
【0102】
[実施例6]
<2-(4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル)-5-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-ベンゾトリアゾール(化合物-104)の合成>
反応容器に、2-(4-ブロモフェニル)-5-クロロ-6-フェニル-ベンゾトリアゾール:26.0g、9-フェナンスレンボロン酸:15.8g、トルエン:180mL、エタノール:45mLを入れて、続いて、予め炭酸カリウム:11.2gをH2O:40mLに溶解した水溶液を加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:1.6gを加えて加熱還流下にて一晩還流撹拌した。撹拌後に放冷し、酢酸エチル、H2Oを加えて抽出および分液操作にて有機層を取り出し、減圧濃縮下にて粗生成物を得た。得られた粗生成物をアセトン/メタノール混合溶媒による晶析精製を行うことで、2-(4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル)-5-クロロ-6-フェニル-ベンゾトリアゾールの黄色粉体28.0g(収率:86%)を得た。
【0103】
【0104】
得られた黄色色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の20個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.84(1H)、8.78(1H)、8.54(2H)、8.15(1H)、7.97(3H)、7.84-7.45(12H)
【0105】
続けて、2-(4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル)-5-クロロ-6-フェニル-ベンゾトリアゾール:14.0g、4’-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-4-カルボニトリル:9.3g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.8g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.8g、リン酸三カリウム:12.3gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にメタノールを加え、析出した固体を濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をモノクロロベンゼン溶媒による再結晶精製を行うことで、2-(4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル)-5-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-ベンゾトリアゾール(化合物-104)の白色粉体11.8g(収率:65%)を得た。
【0106】
【0107】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の28個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.85(1H)、8.78(1H)、8.58(2H)、8.07(2H)、7.98(2H)、7.87-7.64(9H)、7.61(1H)、7.53(2H)、7.40-7.23(8H)
【0108】
[実施例7]
<2-(4”’-シアノ-[1,1’;4’,1”;4”,1”’]クォーターフェニル-4-イル)-5-(フェナンスレン-9-イル)-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-141)の合成>
反応容器に、2-(4-クロロ-フェニル)-5-(フェナンスレン-9-イル)-2H-ベンゾトリアゾール:10.0g、4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’;4’,1”]ターフェニル-4”-カルボニトリル:9.9g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.7g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.7g、リン酸三カリウム:10.5gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にメタノールを加え、分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物を1,2-ジクロロベンゼン溶媒による再結晶精製を行うことで、2-(4”’-シアノ-[1,1’;4’,1”;4”,1”’]クォーターフェニル-4-イル)-5-(フェナンスレン-9-イル)-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-141)の黄色粉体10.4g(収率:67%)を得た。
【0109】
【0110】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の30個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.82(1H)、8.77(1H)、8.53(2H)、8.13(1H)、8.07(1H)、7.95(2H)、7.88(2H)、7.81(7H)、7.77(5H)、7.75-7.60(7H)、7.57(1H)
【0111】
[実施例8]
<2-[4-{4-(4-シアノ-フェニル)-ナフタレン-1-イル}-フェニル]-5-(9,9’-スピロビ[9H]フルオレン-2-イル)-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-155)の合成>
反応容器に、2-(4-クロロ-フェニル)-5-(9,9’-スピロビ[9H]フルオレン-2-イル)-2H-ベンゾトリアゾール:9.0g、4-{4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ナフタレン-1-イル}-フェニル-カルボニトリル:6.5g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.3g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.2g、リン酸三カリウム:7.0gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内に酢酸エチル/H2Oを加えて抽出および分液操作にて取り出した有機層を濃縮した。得られた粗生成物をアセトン溶媒による再結晶精製を行うことで、2-[4-{4-(4-シアノ-フェニル)-ナフタレン-1-イル}-フェニル]-5-(9,9’-スピロビ[9H]フルオレン-2-イル)-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-155)の白色粉体7.6g(収率:62%)を得た。
【0112】
【0113】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の32個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.50(2H)、8.03(1H)、8.00(1H)、7.98(1H)、7.91(5H)、7.85(2H)、7.80-7.65(5H)、7.63-7.38(8H)7.17(3H)、7.09(1H)、6.84(2H)、6.80(1H)
【0114】
[実施例9]
<5,6-ジフェニル-2-[4-{4-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-ナフタレン-1-イル}-フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-164)の合成>
反応容器に、5,6-ジクロロ-2-[4-{4-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-ナフタレン-1-イル}-フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール:12.0g、フェニルボロン酸:7.7g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):1.0g、トリシクロヘキシルホスフィン:1.2g、リン酸三カリウム:26.9gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にH2Oを加え、分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をクロロベンゼン溶媒による再結晶精製を行うことで、5,6-ジフェニル-2-[4-{4-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-ナフタレン-1-イル}-フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-164)の白色粉体8.2g(収率:60%)を得た。
【0115】
【0116】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の30個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.55(2H)、8.04(2H)、8.00(2H)、7.80(4H)、7.77(4H)、7.69(2H)、7.57(2H)、7.52(2H)、7.29-7.16(10H)
【0117】
[実施例10]
<5-{4-(4-シアノ-フェニル)-ナフタレン-1-イル}-2-{4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル}-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-172)の合成>
反応容器に、5-クロロ-2-{4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル}-2H-ベンゾトリアゾール:11.0g、4-{4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ナフタレン-1-イル}-フェニル-カルボニトリル:10.1g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.7g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.8g、リン酸三カリウム:11.5gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にメタノールを加え、分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエン溶媒による再結晶精製を行うことで、5-{4-(4-シアノ-フェニル)-ナフタレン-1-イル}-2-{4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル}-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-172)の淡黄色粉体10.5g(収率:71%)を得た。
【0118】
【0119】
得られた淡黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の26個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.82(1H)、8.80(1H)、8.57(2H)、8.12(1H)、8.11(1H)、8.04(1H)、7.98(1H)、7.94(1H)、7.88(1H)、7.84(2H)、7.79(2H)、7.78(1H)、7.74-7.56(8H)、7.53(1H)、7.51(1H)、7.50(1H)
【0120】
[実施例11]
<5-{4-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-ナフタレン-1-イル}-2-{4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル}-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-184)の合成>
反応容器に、5-クロロ-2-{4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル}-2H-ベンゾトリアゾール:10.0g、4’-{4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ナフタレン-1-イル}-ビフェニル-4-カルボニトリル:11.2g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.7g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.7g、リン酸三カリウム:10.5gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にメタノールを加え、分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をクロロベンゼン溶媒による再結晶精製を行うことで、5-{4-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-ナフタレン-1-イル}-2-{4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル}-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-184)の淡黄色粉体4.1g(収率:25%)を得た。
【0121】
【0122】
得られた淡黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の30個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.82(1H)、8.76(1H)、8.57(2H)、8.13(1H)、8.10(1H)、8.05(2H)、7.98(1H)、7.94(1H)、7.84-7.75(9H)、7.74-7.54(9H)、7.51(2H)
【0123】
[実施例12]
<5-(4”-シアノ-[1,1’;4’,1”]ターフェニル-4-イル)-2-{4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル}-6-フェニル-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-189)の合成>
反応容器に、5-クロロ-2-{4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル}-6-フェニル-2H-ベンゾトリアゾール:13.0g、4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’;4’,1”]ターフェニル-4”-カルボニトリル:8.6g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.7g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.8g、リン酸三カリウム:11.5gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にメタノールを加え、分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をクロロベンゼン溶媒による再結晶精製を行うことで、5-(4”-シアノ-[1,1’;4’,1”]ターフェニル-4-イル)-2-{4-(フェナンスレン-9-イル)-フェニル}-6-フェニル-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-189)の白色粉体10.0g(収率:53%)を得た。
【0124】
【0125】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の32個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.85(1H)、8.78(1H)、8.58(2H)、8.07(2H)、7.99(2H)、7.85-7.61(14H)、7.58(2H)、7.32(8H)
【0126】
[実施例13]
<5-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-2-(4’-ピリジン-3-イル-ビフェニル-4-イル)-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-201)の合成>
反応容器に、5-クロロ-6-フェニル-2-(4’-ピリジン-3-イル-ビフェニル-4-イル)-2H-ベンゾトリアゾール:12.0g、4’-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-4-カルボニトリル:8.4g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.7g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.7g、リン酸三カリウム:11.1gを仕込み、1,4-ジオキサン、H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内にメタノールを加え、分散洗浄および濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をクロロベンゼン溶媒による再結晶精製を行うことで、5-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-2-(4’-ピリジン-3-イル-ビフェニル-4-イル)-2H-ベンゾトリアゾール(化合物-201)の白色粉体6.4g(収率:41%)を得た。
【0127】
【0128】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の27個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.46(1H)、8.66(1H)、8.53(2H)、8.04(2H)、7.98(1H)、7.89(2H)、7.84(2H)、7.75(6H)、7.52(2H)、7.44(1H)、7.37-7.22(7H)
【0129】
[実施例14]
実施例1~13で合成したベンゾトリアゾール環構造を有する化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって融点とガラス転移点を測定した。測定した結果を表1にまとめて示した。
【0130】
【0131】
実施例1~13で合成したベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、いずれも98℃以上のガラス転移点を有しており、このことは薄膜状態が安定であることを示すものである。
【0132】
[実施例15]
実施例1~13で合成したベンゾトリアゾール環構造を有する化合物について、それぞれITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって仕事関数を測定した。測定した結果を表2にまとめて示した。
【0133】
【0134】
実施例1~13で合成したベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、NPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.5eVより大きい値を有しており、大きな正孔阻止能力を有していることが判る。
【0135】
[実施例16]
有機EL素子は、
図14に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、正孔阻止層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極(アルミニウム電極)9の順に蒸着して作製した。
【0136】
具体的には、透明陽極2として膜厚50nmのITOを成膜したガラス基板1をイソプロピルアルコール中にて超音波洗浄を20分間行った後、200℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥を行った。その後、UVオゾン処理を15分間行った後、このITO付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け、0.001Pa以下まで減圧した。続いて、透明陽極2を覆うように正孔注入層3として、下記構造式の電子アクセプター(Acceptor-1)と下記構造式の化合物(HTM-1)を、蒸着速度比がAcceptor-1:HTM-1=3:97となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚10nmとなるように形成した。
この正孔注入層3の上に、正孔輸送層4として下記構造式の化合物(HTM-1)を膜厚60nmとなるように形成した。
この正孔輸送層4の上に、発光層5として下記構造式の化合物(EMD-1)と下記構造式の化合物(EMH-1)を、蒸着速度比がEMD-1:EMH-1=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した。
この発光層5の上に、正孔阻止層兼電子輸送層6および7として実施例1の化合物(化合物-2)と下記構造式の化合物(ETM-1)を、蒸着速度比が化合物-2:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚30nmとなるように形成した。
この正孔阻止層兼電子輸送層6および7の上に、電子注入層8としてフッ化リチウムを膜厚1nmとなるように形成した。
最後に、電子注入層8の上に、アルミニウムを100nm蒸着して陰極9を形成した。
作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0137】
【0138】
【0139】
[実施例17]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例2の化合物(化合物-40)を用い、蒸着速度比が化合物-40:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0140】
[実施例18]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例3の化合物(化合物-44)を用い、蒸着速度比が化合物-44:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0141】
[実施例19]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例4の化合物(化合物-48)を用い、蒸着速度比が化合物-48:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0142】
[実施例20]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例5の化合物(化合物-78)を用い、蒸着速度比が化合物-78:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0143】
[実施例21]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例6の化合物(化合物-104)を用い、蒸着速度比が化合物-104:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0144】
[実施例22]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例7の化合物(化合物-141)を用い、蒸着速度比が化合物-141:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0145】
[実施例23]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例8の化合物(化合物-155)を用い、蒸着速度比が化合物-155:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0146】
[実施例24]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例9の化合物(化合物-164)を用い、蒸着速度比が化合物-164:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0147】
[実施例25]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例10の化合物(化合物-172)を用い、蒸着速度比が化合物-172:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0148】
[実施例26]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例11の化合物(化合物-184)を用い、蒸着速度比が化合物-184:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0149】
[実施例27]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例12の化合物(化合物-189)を用い、蒸着速度比が化合物-189:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0150】
[実施例28]
実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、実施例13の化合物(化合物-201)を用い、蒸着速度比が化合物-201:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0151】
[比較例1]
比較のために、実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、下記構造式の化合物(ETM-2)(例えば、特許文献7参照)を用い、蒸着速度比がETM-2:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0152】
【0153】
[比較例2]
比較のために、実施例16において、正孔阻止層兼電子輸送層6および7の材料として、実施例1の化合物(化合物-2)に代えて、下記構造式の化合物(ETM-3)(例えば、特許文献8参照)を用い、蒸着速度比がETM-3:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0154】
【0155】
実施例16から実施例28および比較例1、2で作製した有機EL素子を用いて、素子寿命を測定した結果を表3にまとめて示した。素子寿命は、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を2000cd/m2として定電流駆動を行い、発光輝度が1900cd/m2(初期輝度を100%とした時の95%に相当:95%減衰)に減衰するまでの時間として測定した。
【0156】
【0157】
表3に示す様に、電流密度10mA/cm2の電流を流したときの駆動電圧は、前記構造式の化合物ETM-2、3を用いた比較例1、2の有機EL素子の3.82~4.01Vに対し、実施例16から実施例28までの有機EL素子では3.43~3.71Vと低電圧化した。また、発光効率においては、比較例1、2の有機EL素子の6.59~8.05cd/Aに対し、実施例16から実施例28までの有機EL素子では8.34~9.10cd/Aと向上し、電力効率においても、比較例1、2の有機EL素子の5.16~6.62lm/Wに対し、実施例16から実施例28までの有機EL素子では7.39~8.08lm/Wと大きく向上した。特に、素子寿命(95%減衰)においては、比較例1、2の有機EL素子における165~203時間に対し、実施例16から実施例28までの有機EL素子では262~405時間と、大きく長寿命化している。
【0158】
このように本発明の有機EL素子は、前記構造式の化合物ETM-2、3を用いた素子と比較して、発光効率および電力効率に優れており、長寿命の有機EL素子を実現できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の、特定のベンゾトリアゾール環構造を有する化合物は、電子の注入特性が良く、正孔阻止能力に優れており、薄膜状態が安定であるため、有機EL素子用の化合物として優れている。該化合物を用いて有機EL素子を作製することにより、高い効率を得ることができると共に、駆動電圧を低下させることができ、耐久性を改善させることができる。例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。