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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】医療用ポンプ及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20241018BHJP
   A61M 60/00 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
A61M5/142
A61M60/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021527515
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020021010
(87)【国際公開番号】W WO2020255658
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2019112309
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】小河原 惇
(72)【発明者】
【氏名】大橋 広孝
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0283196(US,A1)
【文献】特開2017-073091(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129286(WO,A1)
【文献】特開2005-304681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 60/00
G06F 3/0484
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示可能であるとともに、操作者による入力操作を検出可能なタッチスクリーンと、
前記操作者による入力操作に対する受付状態を制御するとともに、前記操作者による入力操作に基づいて、設定及び動作に係る設定動作処理を実行可能な、制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記受付状態について、前記入力操作に基づく前記設定動作処理を実行しないロック状態と、前記入力操作に基づく前記設定動作処理を実行する非ロック状態と、前記ロック状態から前記非ロック状態への移行段階である仮ロック状態との間で、受付状態の移行処理を実行し、
前記ロック状態において、前記タッチスクリーンに対する第1の入力操作を検出すると、前記仮ロック状態に移行する処理を実行し、
前記仮ロック状態において、第2の入力操作として、前記タッチスクリーンに表示された入力ボタンに対する入力操作を検出すると、前記非ロック状態に移行する処理を実行するとともに、前記入力ボタンへの入力操作に応じた設定動作処理を実行する、
医療用ポンプ。
【請求項2】
前記設定動作処理は、送液に関する送液処理を含む、請求項1に記載の医療用ポンプ。
【請求項3】
前記第1の入力操作は、前記タッチスクリーンに対するタップ操作である、請求項1又は2に記載の医療用ポンプ。
【請求項4】
前記制御部は、前記仮ロック状態において、前記第2の入力操作でない入力操作を検出すると、前記ロック状態に移行する処理を実行する、請求項1からのいずれか一項に記載の医療用ポンプ。
【請求項5】
前記制御部は、前記仮ロック状態又は前記非ロック状態において、前記タッチスクリーンに対する入力操作を所定時間検出していないと判定した場合、前記ロック状態に移行する処理を実行する、請求項1からのいずれか一項に記載の医療用ポンプ。
【請求項6】
前記医療用ポンプは、シリンジポンプ、輸液ポンプ、栄養ポンプ、インスリンポンプ又は血液ポンプである、請求項1からのいずれか一項に記載の医療用ポンプ。
【請求項7】
情報を表示可能であるとともに、操作者による入力操作を検出可能なタッチスクリーンを備え、前記操作者による入力操作に対する受付状態を制御するとともに、前記操作者による入力操作に基づいて、設定及び動作に係る設定動作処理を実行可能な医療用ポンプにより実行される情報処理方法であって、
前記受付状態について、前記入力操作に基づく前記設定動作処理を実行しないロック状態と、前記入力操作に基づく前記設定動作処理を実行する非ロック状態と、前記ロック状態から前記非ロック状態への移行段階である仮ロック状態との間で、受付状態の移行処理を実行するステップ
を含み、
前記ロック状態において、前記タッチスクリーンに対する第1の入力操作を検出すると、前記仮ロック状態に移行する処理を実行し、
前記仮ロック状態において、前記タッチスクリーンに表示された入力ボタンに対する第2の入力操作を検出すると、前記非ロック状態に移行する処理を実行するとともに、前記入力ボタンへの入力操作に応じた設定動作処理を実行する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用ポンプ及び情報処理方法に関し、特に操作者による入力操作を受け付ける医療用ポンプ及びその情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
操作者による入力操作を受け付ける入力デバイスを備え、受け付けた入力操作に基づいて設定値の設定を行い、設定された設定値に基づいて動作する医療用ポンプが知られている。このような医療用ポンプとして、例えば、薬液等の液体が収容されたシリンジが載置され、載置されたシリンジの押子を押し出す速度を、操作者により設定された設定値に従って制御することで、流量を制御しながら患者等の生体内に液体を送液するシリンジポンプが挙げられる。シリンジポンプ等の医療用ポンプは、例えば投与速度等の所定の設定値の設定に用いられる、タッチパネル等の入力デバイスを有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-213057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたシリンジポンプは、タッチ操作を受け付けるタッチパネルを有し、ユーザによるタッチパネルへのタッチ操作を受け付けることができる。このタッチパネルは、操作者によるタッチ操作の場合だけでなく、例えば、液体がタッチパネルに付着した場合や、タッチパネルの清掃のために表面を拭ったりした場合にも、反応することがある。しかしながら、このような液体の付着や清掃に基づく反応は、操作者が意図して操作したものではないため、液体の付着や清掃に基づく反応により動作が実行された場合、誤動作となる。しかも、医療現場では、輸液バッグを取り扱う等、液体を使用する機会が多く、このように液体を取り扱う際にタッチパネルに液体が付着したり、付着した液体を除去するために清掃を行ったりする機会が多い。また、医療用ポンプの用途の性質上、誤動作が発生すると、例えば薬液を投与される患者に、生命の危機の影響が及ぶ可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、安全性を向上できる医療用ポンプ及び情報処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての医療用ポンプは、情報を表示可能であるとともに、操作者による入力操作を検出可能なタッチスクリーンと、前記操作者による入力操作に対する受付状態を制御するとともに、前記操作者による入力操作に基づいて、設定及び動作に係る設定動作処理を実行可能な、制御部と、を備え、前記制御部は、前記受付状態について、前記入力操作に基づく前記設定動作処理を実行しないロック状態と、前記入力操作に基づく前記設定動作処理を実行する非ロック状態と、前記ロック状態から前記非ロック状態への移行段階である仮ロック状態との間で、受付状態の移行処理を実行する。
【0007】
本発明の一実施形態としての医療用ポンプにおいて、前記設定動作処理は、送液に関する送液処理を含む。
【0008】
本発明の一実施形態としての医療用ポンプにおいて、前記制御部は、前記ロック状態において、前記タッチスクリーンに対する第1の入力操作を検出すると、前記仮ロック状態に移行する処理を実行する。
【0009】
本発明の一実施形態としての医療用ポンプにおいて、前記第1の入力操作は、前記タッチスクリーンに対するタップ操作である。
【0010】
本発明の一実施形態としての医療用ポンプにおいて、前記制御部は、前記仮ロック状態において、前記タッチスクリーンに対する第2の入力操作を検出すると、前記非ロック状態に移行する処理を実行する。
【0011】
本発明の一実施形態としての医療用ポンプにおいて、前記第2の入力操作は、前記タッチスクリーンに表示された入力ボタンに対する入力操作である。
【0012】
本発明の一実施形態としての医療用ポンプにおいて、前記制御部は、前記第2の入力操作として前記入力ボタンに対する入力操作を検出すると、前記入力ボタンへの入力操作に応じた設定動作処理を実行する。
【0013】
本発明の一実施形態としての医療用ポンプにおいて、前記制御部は、前記仮ロック状態において、前記第2の入力操作でない入力操作を検出すると、前記ロック状態に移行する処理を実行する。
【0014】
本発明の一実施形態としての医療用ポンプにおいて、前記制御部は、前記仮ロック状態又は前記非ロック状態において、前記タッチスクリーンに対する入力操作を所定時間検出していないと判定した場合、前記ロック状態に移行する処理を実行する。
【0015】
本発明の一実施形態としての医療用ポンプにおいて、前記医療用ポンプは、シリンジポンプ、輸液ポンプ、栄養ポンプ、インスリンポンプ又は血液ポンプである。
【0016】
本発明の第2の態様としての情報処理方法は、情報を表示可能であるとともに、操作者による入力操作を検出可能なタッチスクリーンを備え、前記操作者による入力操作に対する受付状態を制御するとともに、前記操作者による入力操作に基づいて、設定及び動作に係る設定動作処理を実行可能な医療用ポンプにより実行される情報処理方法であって、前記受付状態について、前記入力操作に基づく前記設定動作処理を実行しないロック状態と、前記入力操作に基づく前記設定動作処理を実行する非ロック状態と、前記ロック状態から前記非ロック状態への移行段階である仮ロック状態との間で、受付状態の移行処理を実行するステップを含む。
【発明の効果】
【0017】
本開示の医療用ポンプ及び情報処理方法によると、安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の医療用ポンプとしてのシリンジポンプの概略図である。
図2図1に示すシリンジポンプの概略構成を示す機能ブロック図である。
図3図1に示すシリンジポンプにおける受付状態の移行の態様を示す概略図である。
図4】ロック状態における表示の一例を示す図である。
図5図2の制御部が実行する移行処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通の構成部には、同一の符号を付している。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態の医療用ポンプとしてのシリンジポンプ1の概略図である。図1は、シリンジ50を装着した状態のシリンジポンプ1を示す。図1に示すように、シリンジポンプ1は、シリンジ50の中空部52に収容された液体を送液するポンプとして構成されている。
【0021】
図1に示すように、シリンジポンプ1は、載置部11と、スライダ12と、クランプ14と、シリンダフランジ押さえ15と、入力ボタン群31と、第1表示部32と、第2表示部33と、ハウジング46と、を備える。
【0022】
本明細書において、以下、シリンジポンプ1の、第1表示部32が配置されている側を、正面側という。従って、図1は、シリンジポンプ1の正面側の概略図である。図1に示すように、シリンジポンプ1は、操作者が把持することが可能な把持部47を備える。より具体的には、本実施形態のシリンジポンプ1のハウジング46は、図1における左側の端部から突設されている把持部47としての取っ手を備える。操作者は、例えば、把持部47を把持して、シリンジポンプ1を持ち運ぶことができる。
【0023】
図1に示すように、シリンジポンプ1には、シリンジ50を装着可能である。載置部11に載置されるシリンジ50は、内部に中空部52を区画する円筒状のシリンダ51と、シリンダ51の基端側から中空部52内に挿入され、シリンダ51の内周面の周方向に隙間なく密着しながらシリンダ51の延在方向Aに沿って中空部52を移動可能な押子55と、を有する。シリンダ51は、基端部にシリンダフランジ53を有し、先端部に中空部52と外部とを連通する出口孔54を区画している。シリンダ51の先端部には、可撓性を有するチューブが接続可能である。シリンダ51の先端部にチューブが接続されると、出口孔54がチューブにより区画された流路と連通する。シリンジ50の中空部52には、薬液等の液体が収容される。
【0024】
図1に示すように、載置部11は、シリンジ50のシリンダ51を載置可能である。また、図1に示すように、シリンダフランジ押さえ15は、載置部11にシリンジ50のシリンダ51が載置されると、シリンダフランジ53の一部を収納する。これにより、シリンダ51のシリンジポンプ1に対する位置が、固定される。
【0025】
図1に示すように、スライダ12は、押子固定部13を有する。スライダ12は、載置部11に載置されるシリンジ50の押子55と係合するように移動可能である。具体的には、スライダ12は、載置部11に載置されるシリンジ50の押子55よりも延在方向Aの基端側の位置で、延在方向Aに沿って移動可能である。スライダ12は、押子固定部13により、載置部11に載置されたシリンジ50の押子55を固定する。押子55は、押子固定部13によりスライダ12に固定された状態では、スライダ12の延在方向Aに沿う移動に伴ってスライダ12と一体的に移動する。このとき、載置部11に載置されたシリンダ51は、シリンダフランジ押さえ15によって、シリンジポンプ1に対して延在方向Aにおいて固定されている。従って、スライダ12がシリンジ50の先端側に移動すると、押子55がシリンダ51に対して先端側に移動し、中空部52に収容された液体が出口孔54から排出される。このようにして、中空部52に収容された液体を、シリンダ51の先端部に接続可能なチューブにより区画された流路を通じて生体内に向かって送液することができる。
【0026】
クランプ14は、図1に示す正面視において、奥行き方向に沿って移動可能であり、載置されたシリンジ50のシリンダ51を載置部11との間で挟み込むようにして固定することが可能である。クランプ14でシリンダ51を固定することで、シリンダフランジ53の一部がシリンダフランジ押さえ15から外れにくくなるため、シリンダ51はシリンジポンプ1に対して強固に固定される。
【0027】
図1に示すように、入力ボタン群31は、ハウジング46の表面に配置され、操作者による入力操作を受け付け可能な各種の操作ボタンで構成される。入力ボタン群31は、例えば、シリンジポンプ1の動作電源のオンオフを切り替えるための電源ボタン、送液を開始するための開始ボタン、送液を停止するための停止ボタンを含む。入力ボタン群31は、入力された情報を、シリンジポンプ1の各種制御を実行する制御部に出力する。
【0028】
第1表示部32及び第2表示部33は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示デバイスを含む。第1表示部32及び第2表示部33は、上記制御部からの信号に基づいて、各種情報を表示する。
【0029】
本実施形態において、第1表示部32は、情報を表示可能であるとともに、操作者の指による入力操作を検出可能なタッチスクリーンにより構成されている。第1表示部32を構成するタッチスクリーンは、タッチスクリーンに対する接触を検出し、接触した位置を特定する。例えば、タッチスクリーンが、指等がタッチスクリーンに触れた際の静電容量の変化を測定する、いわゆる静電容量方式である場合、静電容量の大きさ又はその変化量等に基づいて、接触した位置を特定する。例えば、タッチスクリーンが、指等がタッチスクリーンを押圧することで電極膜が接触して電気が流れ、その電圧の変動を検出する、いわゆる抵抗膜方式である場合、電圧の変動の大きさに基づいて、接触した位置を特定する。タッチスクリーンは、その他の公知の方式により構成されていてよい。タッチスクリーンは、例えば、指等による接触位置を超音波表面弾性波の減衰によって検出する、超音波表面弾性波方式や、光源から射出される光が指等により遮光された位置を検出する、光学方式等の方式により構成されていてよい。タッチスクリーンにおける位置の検出の分解能は、適宜定められてよい。第1表示部32は、タッチスクリーンにより検出した、指等が接触している位置の情報を、シリンジポンプ1の各種制御を実行する制御部に出力する。
【0030】
第1表示部32は、例えば、情報を表示可能な表示画面の一部に、操作者の指による入力操作を受け付ける入力ボタン36を表示可能に構成されている。また、第1表示部32は、シリンジポンプ1が備える制御部による制御に基づき、例えば、表示画面の一部に、シリンジポンプ1による送液制御のために設定される情報(以下「送液設定情報」という)35を表示可能に構成されている。送液設定情報35は、例えば、シリンジポンプ1において現在設定されている情報、例えばパラメータ等の情報を含んでよい。第1表示部32のタッチスクリーンが接触の位置を検出し、当該接触の位置が、例えば入力ボタン36が表示された位置である場合、シリンジポンプ1は、入力ボタン36に対して入力操作が行われたことを検出することができる。
【0031】
なお、第1表示部32は、上述した情報以外の情報を表示してよい。例えば、第1表示部32は、各種の警報情報等を表示してもよい。
【0032】
第2表示部33は、シリンジポンプ1による実際の送液量の情報を表示してよい。実際の送液量は、シリンジポンプ1が送液している液体の流量の実測値又は送液されている液体の投与量の実測値等を含んでよい。
【0033】
なお、本実施形態では、シリンジポンプ1が第1表示部32と第2表示部33との2つの表示部を備えるとして説明したが、シリンジポンプ1が備える表示部の数量は、2つでなくてもよい。例えば、シリンジポンプ1は、表示部を1つのみ備え、上述した第1表示部32及び第2表示部33により表示される全ての情報を、当該1つの表示部に表示してもよい。また、シリンジポンプ1は、3つ以上の表示部を備え、上述した第1表示部32及び第2表示部33により表示される情報を、3つ以上の表示部に分散して表示させてもよい。
【0034】
図2は、図1に示すシリンジポンプ1の概略構成を示す機能ブロック図である。図2では、シリンジポンプ1により実行される処理に関連する機能部のみを図示しており、例えば、ハウジング46等の処理に関連しない構成については、図示していない。図2に示されているように、シリンジポンプ1は、機能部として、通信部21と、記憶部23と、制御部24と、入力ボタン群31と、第1表示部32と、第2表示部33と、スライダ駆動部37と、スライダ12と、押子固定部13とを備える。入力ボタン群31、第1表示部32、第2表示部33、スライダ12、及び押子固定部13の機能については、上述したため、ここでは説明を省略する。
【0035】
通信部21は、無線通信又は有線通信により、外部のコンピュータ等の情報処理装置との間で情報の送受信を行うインターフェースを含む。
【0036】
記憶部23は、例えば記憶装置を含んで構成され、種々の情報及びプログラムを記憶する。具体的には、記憶部23は、制御部24が実行する各種処理、各種の入力支援処理等を実行するためのプログラムを記憶する。また、記憶部23は、シリンジポンプ1により送液される液体の流量及び投与量等の所定の設定値の情報、及び所定の設定値に基づいてスライダ駆動部37を駆動させて送液するための制御プログラム等を記憶する。
【0037】
制御部24は、例えば記憶部23に記憶された種々の情報及びプログラムのうち、所定の情報及びプログラムを読み込むことにより所定の機能を実現するプロセッサを含み、シリンジポンプ1全体の動作を制御する。本実施形態において、制御部24は、記憶部23に記憶された所定の情報及びプログラムを読み込み、入力操作に対する受付状態を移行させる処理(以下、単に「受付処理」という)と、入力操作に基づいて、設定及び動作に係る処理を実行する処理(以下、単に「設定動作処理」という)とを実行可能である。なお、ここでいう設定及び動作に係る処理には、上記受付処理は含まれない。制御部24により実行される受付処理及び設定動作処理の詳細については、後述する。
【0038】
制御部24は、通信部21を介して、外部の情報処理装置との間で情報の送受信を行う。制御部24は、入力ボタン群31及びタッチスクリーンにより構成される第1表示部32から入力された情報に基づいて各種の処理を実行し、各種の処理の実行に伴う情報を第1表示部32及び第2表示部33から出力する。
【0039】
スライダ駆動部37は、例えばモータを含み、制御部24からの信号に基づいて、スライダ12を延在方向A(図1参照)に沿って移動させる。
【0040】
次に、本実施形態における制御部24が実行する処理の詳細について説明する。制御部24は、操作者からの入力操作に対する受付状態を制御するとともに、操作者からの入力操作に基づいて、設定動作処理を実行可能である。具体的には、制御部24は、操作者からのタッチスクリーンに対する入力操作に対する受付状態を制御するとともに、操作者からのタッチスクリーンに対する入力操作に基づいて、設定動作処理を実行可能である。制御部24は、受付状態に応じて、入力操作に基づく設定動作処理を実行可能に構成されている。
【0041】
設定動作処理は、上述のように設定及び動作に係る処理を言う。設定動作処理は、具体的な一例として、送液に関する送液処理を含む。送液処理は、シリンジポンプ1に装着されたシリンジ50の中空部52に収容された液体の送液に関する処理である。送液処理は、例えば、送液のために要求される設定項目におけるパラメータの設定を含む。送液のために要求される設定項目は、例えば、「体重」、「薬剤量」及び「溶液量」を含むが、これらに限られるものではない。設定項目は、例えば送液設定情報35に表示されてよい。制御部24は、例えば、入力ボタン36に対する入力操作を検出すると、送液処理として、入力操作に応じて設定項目のパラメータの設定を実行する。送液処理は、例えば、送液の開始及び停止を含んでよい。送液処理は、その他の送液に関する処理の全体を含んでよい。
【0042】
設定動作処理は、送液処理に限られない。設定動作処理は、設定及び動作に係る処理全般を含む。設定動作処理は、設定に係る処理として、例えば、タッチスクリーンそのものに関する、表示方式や輝度の設定等の処理を含む。
【0043】
受付状態は、操作者からの入力操作に対する処理の受付に関する状態である。受付状態は、特に、操作者からのタッチスクリーンへの入力操作に対する処理の受付に関する状態であってよい。受付状態は、制御部24が取る状態であり、制御部24は、受付状態に応じて、入力操作に対して、異なる送液処理を実行し得る。
【0044】
ここで、受付状態について、図3を参照しながら説明する。図3は、シリンジポンプ1における受付状態の移行の態様を示す概略図である。図3に示すように、本実施形態において、受付状態は、3つの状態を有する。具体的には、受付状態は、ロック状態と、仮ロック状態と、非ロック状態との、3つの状態を有する。制御部24は、受付状態としての3つの状態のいずれかを取る。制御部24は、現在の受付状態に応じて、タッチスクリーンへの入力操作に基づき、受付状態を移行させる。このように受付状態を移行させる処理が、受付処理である。
【0045】
ロック状態は、制御部24が、入力操作に基づく送液処理を実行しない状態である。ロック状態は、特に、制御部24が、タッチスクリーンへの入力操作に基づく送液処理を実行しない状態であってよい。すなわち、ロック状態である場合、操作者がタッチスクリーンに対して入力操作を実行した場合であっても、制御部24は、当該入力操作に基づいた送液処理を実行しない。
【0046】
ロック状態において、タッチスクリーンには、図1に示した入力操作を受け付ける入力ボタン36が表示されなくてよい。ロック状態において、タッチスクリーンには、送液設定情報35が表示されていてよい。本実施形態では、図4に一例として示されているように、ロック状態において、タッチスクリーンにより構成される第1表示部32には、入力ボタン36が表示されず、送液設定情報35のみが表示されてよい。このように、ロック状態において入力ボタン36を表示させないことにより、入力操作に基づく送液処理を実行しないロック状態である場合における、シリンジポンプ1のエネルギー消費を抑制できる。一方で、ロック状態であっても送液設定情報35を表示させることにより、例えば現在設定されているパラメータ等の情報を、操作者等に視認可能な状態とすることができる。また、ロック状態において入力ボタン36を表示させないことにより、操作者は、シリンジポンプ1がロック状態であり、入力ボタン36に対する入力操作による送液処理が実行されないことを認識することができる。
【0047】
仮ロック状態は、ロック状態から非ロック状態への移行段階の状態である。すなわち、仮ロック状態は、ロック状態から非ロック状態に移行する場合に、経由される受付状態である。制御部24は、ロック状態において、タッチスクリーンに対する第1の入力操作を検出すると、受付処理として、仮ロック状態に移行する処理を実行する(図3の(1)参照)。
【0048】
第1の入力操作は、例えば、タッチスクリーンに対するタップ操作である。第1の入力操作は、タッチスクリーンの任意の位置におけるタップ操作であってよい。タップ操作は、操作者が、タッチスクリーンに、指等を一度だけ短時間接触させることをいう。タップ操作は、操作者が指等を接触させてから離すまで、タッチスクリーンにおける接触位置の移動を伴わない操作をいう。制御部24は、入力操作が、タッチスクリーンにおける接触位置の移動を伴わない操作である場合に、タップ操作が検出されたと判定する。
【0049】
ここで、接触位置の移動を伴わないとは、タッチスクリーンに接触した指が、操作者の意図により移動したものと認められない範囲内であることをいう。すなわち、制御部24は、タッチスクリーンに接触した指が、操作者の意図により移動したものと認められない範囲内において、タッチスクリーンへの接触が検出される場合に、タップ操作が入力されたと判定する。操作者の意図により移動したものと認められない範囲は、タッチスクリーンの仕様等に応じて適宜定められてよい。
【0050】
例えば、タッチスクリーンにおいて、接触した指を検出した位置から、平均的な人の指の腹の大きさの範囲内で接触位置が変位したとする。この場合、制御部24は、当該範囲内での接触位置の変位を、接触位置の移動を伴わないものであると判定してよい。人がタッチスクリーンにタップ操作を入力しようとする場合、例えばタッチスクリーンに接触する指による押圧力の変化等により、タッチスクリーンで検出される接触位置が変位することがある。しかしながら、たとえタッチスクリーンで検出される接触位置が変位したとしても、操作者が、指をタッチスクリーンに接触させた状態で移動させようとしたものではなく、タップ操作を意図している場合、接触位置の変位は、指の腹の大きさの範囲内に収まると考えられる。そこで、制御部24は、当該範囲内での接触位置の変位を、接触位置の移動を伴わないものであると判定し、タップ操作が入力されたと判定する。これと同様の思想に基づき、操作者の意図により移動したものと認められない範囲は、タッチスクリーンにおいて接触した指を検出した位置から所定の距離(例えば数mmから数cm)の範囲内と定められてもよい。
【0051】
なお、制御部24は、タッチスクリーンに対するタップ操作の接触位置が、1点である場合のみを、接触位置の移動を伴わないと判定してもよい。つまり、この場合、タップ操作のためにタッチスクリーンに最初に接触が検出された後、接触が検出されなくなるまで、タッチスクリーンに最初に接触が検出された位置において接触が検出され続ける場合にのみ、タップ操作であると判定される。この場合、より厳密にタップ操作を判定することができる。
【0052】
制御部24は、タッチスクリーンへの接触を検出してから接触を検出しなくなるまでの時間が所定時間内である場合に、タップ操作が検出されたと判定してもよい。タップ操作は、上述のように、指等を一度だけ短時間接触させることをいう。そのため、このようにタッチスクリーンへの接触を検出してから接触を検出しなくなるまでの時間が所定時間内であるという制限を設けることにより、すなわち時間に関する閾値を設けることにより、より正確にタップ操作を検出し得る。例えば、時間に関する閾値を設けることにより、接触位置の移動を伴わない操作であっても、長時間タッチスクリーンが検出した状態の操作を、タップ操作ではない操作と判定することができる。時間に関する閾値としての上記所定時間は、例えば1秒等、適宜の長さが設定されてよい。
【0053】
仮ロック状態において、タッチスクリーンには、例えば図1に示すように、入力ボタン36と送液設定情報35との双方が表示される。このように、ロック状態が解除されて仮ロック状態に移行した場合に、入力ボタン36が表示されることにより、操作者は、ロック状態が解除されたことを認識することができる。
【0054】
制御部24は、仮ロック状態である場合、操作者からの入力操作に応じて、非ロック状態又はロック状態のいずれかに移行する処理を実行する。具体的には、制御部24は、仮ロック状態において、タッチスクリーンに対する第2の入力操作を検出すると、受付処理として、非ロック状態に移行する処理を実行する(図3の(2)参照)。
【0055】
第2の入力操作は、例えば、タッチスクリーンに表示された入力ボタン36に対する入力操作である。この場合の入力操作は、入力ボタン36に対するタップ操作である。この場合、制御部24は、タッチスクリーンにおいて、入力ボタン36が表示された位置におけるタップ操作を検出した場合に、受付状態を仮ロック状態から非ロック状態に移行する処理を実行する。なお、入力ボタン36が、タップ操作以外の入力操作を受け付ける場合、例えば指をタッチスクリーンに接触させたまま移動させてから指を離すスライド操作等の操作を受け付ける場合、第2の入力操作は、タップ操作以外の操作を含んでよい。本実施形態では、第2の入力操作がタップ操作であるとして、以下説明する。
【0056】
制御部24は、第2の入力操作として、入力ボタン36に対する入力操作を検出すると、上述したように受付状態を仮ロック状態から非ロック状態に移行する処理を実行するとともに、入力ボタン36への入力操作に応じた設定動作処理を実行してよい。例えば、このように、第2の入力操作として、入力ボタン36に対する入力操作を検出したときに、受付状態を仮ロック状態から非ロック状態に移行する処理を実行するとともに、入力ボタン36への入力操作に応じた設定動作処理を実行することにより、操作者は、受付状態が仮ロック状態から非ロック状態に移行した後に、送液処理等の設定動作処理を実行させるために再度入力ボタン36に対する入力操作を行う必要がない。つまり、操作者に対して、入力操作に基づいて送液処理を実行させる場合、仮ロック状態と非ロック状態との区別を意識させることなく、受付状態を移行させることができる。
【0057】
制御部24は、仮ロック状態において、タッチスクリーンに対する、第2の入力操作でない入力操作を検出すると、受付処理として、ロック状態に移行する処理を実行する(図3の(3)参照)。第2の入力操作でない入力操作は、制御部24が検出できる入力操作のうち、第2の入力操作を除く全ての入力操作であってよい。例えば、第2の入力操作でない入力操作は、タッチスクリーンにおける入力ボタン36以外の位置へのタッチ操作を含む。また、例えば、第2の入力操作でない入力操作は、タッチスクリーンに対するタッチ操作以外の操作、例えばスライド操作等を含む。また、例えば、第2の入力操作でない入力操作は、タッチスクリーン上において、複数点に入力がされていると検出される入力操作を含む。例えば、2本の指がタッチスクリーンに接触している場合、複数点に入力がされていると検出される。また、例えば、第2の入力操作でない入力操作は、タッチスクリーン以外への入力操作であってよい。具体的には、例えば、入力ボタン群31のボタンへの入力操作等が、これに該当する。
【0058】
制御部24は、第2の入力操作として認識する入力ボタン36を、特定のボタンのみに限定してもよい。例えば、タッチスクリーンに表示されている複数の入力ボタン36のうち、特定された一部の入力ボタンへの入力操作を、第2の入力操作として認識し、特定された一部の入力ボタン以外の入力ボタンへの入力操作を、第2の入力操作でない入力操作として認識してもよい。
【0059】
なお、制御部24は、仮ロック状態に移行してから、入力操作を所定時間検出しない場合、ロック状態に移行する処理を実行してよい(図3の(3)参照)。所定時間は、予めシリンジポンプ1において設定されていてもよく、操作者によって、シリンジポンプ1の使用開始時に設定されてもよい。所定時間は、例えば、数秒から数分の範囲で設定されてよい。所定時間は、長過ぎる場合は意図しない入力に基づく誤操作を引き起こしやすく、短過ぎる場合は操作が煩雑となるため医療現場には適さない。従って、シリンジポンプ1のような医療用ポンプにおいて、所定時間は、5秒間から1分間の範囲で設定されることが好ましく、そのうち、10秒間から20秒間の範囲で設定されることがより好ましい。このような設定により、煩雑な操作を抑えつつ安全性を向上させることができる。
【0060】
非ロック状態は、制御部24が、入力操作に基づく送液処理を実行する状態である。すなわち、非ロック状態である場合、制御部24は、操作者がタッチスクリーンに対して行った入力操作に基づいて、送液処理を実行する。
【0061】
制御部24は、非ロック状態において、入力操作を所定時間検出しない場合、受付処理として、ロック状態に移行する処理を実行してよい(図3の(4)参照)。
【0062】
このようにして、制御部24は、ロック状態と、仮ロック状態と、非ロック状態との間で、受付状態の移行処理を実行する。
【0063】
なお、受付状態は、タッチスクリーンへの入力操作に対して、制御部24がどのような処理を実行するかを規定するものである。受付状態は、制御部24が入力操作に対して実行する処理を定めるモードであると言うことができる。従って、制御部24は、各受付状態において、それぞれ予め定められたアルゴリズムで、タッチスクリーンへの入力操作に応じた処理を実行する。
【0064】
図5は、図2の制御部24が実行する移行処理の一例を示すフローチャートである。図5のフローの開始時点において、受付状態はロック状態である。このとき、第1表示部32には、図4に一例として示すように、入力ボタン36が表示されず、送液設定情報35が表示されている。送液設定情報35には、例えば、現在設定されているパラメータが表示されている。
【0065】
制御部24は、タッチスクリーンに対する第1の入力操作を検出したか否かを判定する(ステップS11)。本実施形態では、具体的には、制御部24は、タッチスクリーンの任意の位置に対して、タップ操作がされたか否かを判定する。
【0066】
制御部24は、タッチスクリーンに対する第1の入力操作を検出していないと判定した場合(ステップS11のNo)、タッチスクリーンに対する第1の入力操作を検出したと判定するまで、ステップS11を繰り返す。この間、受付状態は、ロック状態のままである。
【0067】
制御部24は、タッチスクリーンに対する第1の入力操作を検出したと判定した場合(ステップS11のYes)、受付状態をロック状態から仮ロック状態に移行する処理を実行する(ステップS12)。このとき、制御部24は、図1に一例として示すように、第1表示部32に、入力ボタン36を表示させる。当該表示により、操作者は、ロック状態が解除されたことを認識できる。
【0068】
次に、仮ロック状態において、制御部24は、タッチスクリーンに対する第2の入力操作を検出したか否かを判定する(ステップS13)。本実施形態では、具体的には、制御部24は、タッチスクリーンに表示された入力ボタン36に対して、入力操作としてのタップ操作がされたか否かを判定する。
【0069】
制御部24は、タッチスクリーンに対する第2の入力操作を検出していないと判定した場合(ステップS13のNo)、タッチスクリーンに対する入力操作が検出されない状態で、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS14)。
【0070】
制御部24は、タッチスクリーンに対する入力操作が検出されない状態で、未だ所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS14のNo)、ステップS13に移行する。このようにして、仮ロック状態において、第2の入力操作が検出されていない限り、制御部24は、ステップS13とS14とを繰り返す。
【0071】
そして、制御部24は、ステップS14において、タッチスクリーンに対する入力操作が検出されない状態で、所定時間が経過したと判定した場合(ステップS14のYes)、受付状態をロック状態に移行する処理を実行する(ステップS17)。このとき、制御部24は、図4に一例として示すように、第1表示部32に表示されていた入力ボタン36の表示を消去する。つまり、制御部24は、入力ボタン36を表示させなくする。これにより、操作者は、ロック状態となったことを認識できる。なお、この場合、制御部24は、ステップS11に移行する。なお、このとき、入力ボタン36の表示を完全に消去せず、表示を暗くする等してもよい。
【0072】
制御部24は、仮ロック状態において、ステップS13で、タッチスクリーンに対する第2の入力操作を検出したと判定した場合(ステップS13のYes)、受付状態を非ロック状態に移行する処理を実行する(ステップS15)。本実施形態では、第2の入力操作は、上述のようにタッチスクリーンに表示された入力ボタン36に対する入力操作であり、制御部24は、タッチスクリーンに対する第2の入力操作を検出したと判定した場合(ステップS13のYes)、入力ボタン36への入力操作に応じた設定動作処理を実行する。
【0073】
制御部24は、ステップS15において受付状態を非ロック状態に移行させた後、操作者による入力操作に基づく送液処理等の設定動作処理を実行する。例えば、制御部24は、操作者による入力操作に基づき、設定項目におけるパラメータの値を設定(変更)する。
【0074】
制御部24は、非ロック状態において、タッチスクリーンに対する入力操作が検出されない状態で、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。
【0075】
制御部24は、タッチスクリーンに対する入力操作が検出されない状態で、未だ所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS16のNo)、非ロック状態での処理を継続する。制御部24は、タッチスクリーンに対する入力操作が検出されない状態で、所定時間が経過したと判定するまで、ステップS16を繰り返す。従って、タッチスクリーンに対する入力操作が検出されない状態で、所定時間が経過しない限り、つまり、操作者が、所定時間が経過する前にタッチスクリーンに対する入力操作をしている限り、非ロック状態が継続される。
【0076】
制御部24は、非ロック状態において、タッチスクリーンに対する入力操作が検出されない状態で、所定時間が経過したと判定した場合(ステップS16のYes)、受付状態をロック状態に移行する処理を実行する(ステップS17)。このとき、制御部24は、上述したように、第1表示部32に表示されていた入力ボタン36の表示を消去する。この場合、制御部24は、ステップS11に移行する。
【0077】
このように、本実施形態に係るシリンジポンプ1は、制御部24により、ロック状態と、非ロック状態と、ロック状態から非ロック状態への移行段階である仮ロック状態との間で、受付状態の移行処理を実行する。例えば、制御部24が、受付状態として仮ロック状態を有さず、ロック状態と非ロック状態との間でのみ受付状態を移行させる場合には、液体の付着や清掃等によってタッチスクリーンが接触を検出すると、操作者が意図していなくとも、入力操作に基づく送液処理を実行する非ロック状態に移行する可能性が高い。これに対し、本実施形態のように、ロック状態から非ロック状態への移行段階である仮ロック状態を設けることにより、ロック状態から非ロック状態へ移行するまでに、仮ロック状態という状態を経由するため、操作者が意図せず非ロック状態となる可能性が低くなる。そのため、シリンジポンプ1に対する意図しない入力操作が受け付けられる可能性が低くなり、その結果、安全性を向上できる。
【0078】
また、本実施形態に係るシリンジポンプ1において、制御部24は、タッチスクリーンに対する第1の入力操作を検出すると、仮ロック状態に移行する処理を実行する。第1の入力操作が、本実施形態のようにタップ操作である場合、タップ操作はタッチスクリーンに指等を一度だけ短時間接触させるという簡単な操作であるため、操作者は、簡便にロック状態を解除させることができる。つまり、操作者は、例えばシリンジポンプ1に対して送液処理を実行させるための入力操作をしたい場合に、簡便にロック状態を解除させることができる。そのため、操作者にとって、利便性が向上する。
【0079】
また、本実施形態に係るシリンジポンプ1において、制御部24は、仮ロック状態において、第2の入力操作を検出すると、非ロック状態に移行する処理を実行する。一方、制御部24は、仮ロック状態において、第2の入力操作でない入力操作を検出すると、ロック状態に移行する処理を実行する。そのため、例えば、操作者が意図せずロック状態から仮ロック状態に移行した場合であっても、第2の入力操作が検出されない限り、入力操作に基づく設定動作処理を実行する非ロック状態には移行しない。そのため、操作者が意図せず非ロック状態となる可能性がさらに低くなり、安全性がさらに向上する。
【0080】
また、本実施形態に係るシリンジポンプ1のように、第2の入力操作が入力ボタン36に対する入力操作である場合、操作者が設定動作処理を実行させるために自然な動作として行う、入力ボタン36への入力操作により、仮ロック状態から非ロック状態に移行する。そのため、操作者にとっては、意図した非ロック状態への移行を行う場合、自然な動作により、非ロック状態に移行させることができる。さらに、このとき、本実施形態に係るシリンジポンプ1のように、入力操作に応じた設定動作処理を実行することにより、操作者が意図した入力操作を行っている場合に、設定動作処理を実行させるために再度入力ボタン36に対する入力操作を操作者に実行させない。これにより、操作者が意図する入力操作においては、操作者の意図に従った設定動作処理を実行させることができるとともに、操作者に対して仮ロック状態と非ロック状態との区別を意識させることなく、受付状態を移行させることができる。
【0081】
また、本実施形態に係るシリンジポンプ1のように、制御部24が、仮ロック状態又は非ロック状態において、入力操作を所定時間検出していない場合に、ロック状態に移行する処理を実行することにより、操作者が入力操作を行おうとしていない場合にロック状態に移行することによって、意図しない入力に基づく誤動作を防止ししやすくなる。そのため、安全性がさらに向上する。
【0082】
上記実施形態において、第1入力部としての入力ボタン36は、第1表示部32に表示されると説明したが、入力ボタン36は、必ずしも第1表示部32に表示されなくてもよい。例えば、シリンジポンプ1は、第1表示部32から離間して設けられる入力部を別途備えていてよい。当該入力部は、入力ボタン36と同様の機能を有している。この場合、操作者は、当該入力部に対して、入力操作を行うことができる。
【0083】
また、例えば、上記実施形態では、仮ロック状態において、タッチスクリーンに対する第2の入力操作を検出すると、非ロック状態に移行すると説明した。しかしながら、例えば、仮ロック状態において、入力ボタン群31のいずれかのボタンに対して、入力操作を検出した場合に、非ロック状態に移行してもよい。
【0084】
本発明は、上述した各実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0085】
本実施形態では、医療用ポンプがシリンジポンプ1であるとして説明したが、医療用ポンプはこれに限定されない。他の医療用ポンプとしては、例えば輸液ポンプ、栄養ポンプインスリンポンプ及び血液ポンプ等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示は、医療用ポンプ及び情報処理方法に関し、特に操作者による入力操作を受け付ける医療用ポンプ及びその情報処理方法に関する。
【符号の説明】
【0087】
1:シリンジポンプ(医療用ポンプ)
11:載置部
12:スライダ
13:押子固定部
14:クランプ
15:シリンダフランジ押さえ
21:通信部
23:記憶部
24:制御部
31:入力ボタン群
32:第1表示部(タッチスクリーン)
33:第2表示部
35:送液設定情報
36:入力ボタン
37:スライダ駆動部
46:ハウジング
47:把持部
50:シリンジ
51:シリンダ
52:中空部
53:シリンダフランジ
54:出口孔
55:押子
図1
図2
図3
図4
図5