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特許7573531アテローム性動脈硬化症および関連疾患を予防および処置するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】アテローム性動脈硬化症および関連疾患を予防および処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20241018BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20241018BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241018BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20241018BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241018BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/79 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/866 20060101ALI20241018BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K38/16 ZNA
A61K45/00
A61K31/711
A61K35/761
A61K35/763
A61K35/76
A61K35/545
A61K35/12
A61P9/00
A61P25/28
A61P13/12
A61P43/00 121
A61K48/00
A61P9/10 101
C12N15/12
C12N15/85 Z
C12N15/861 Z
C12N15/79 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/866 Z
C12Q1/68
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021537462
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2019105220
(87)【国際公開番号】W WO2020052570
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】201811052915.1
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521100117
【氏名又は名称】上▲海▼清流生物医▲藥▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI CLEAR FLUID BIOMEDICAL SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 420, Building 26, Lane 3399, Kangxin Road, Pudong New Area Shanghai 201321 China
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼英豪
(72)【発明者】
【氏名】▲閻▼桂蕊
(72)【発明者】
【氏名】王耀
(72)【発明者】
【氏名】付晶▲鵬▼
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/006750(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 31/00-31/80
A61K 35/00-35/768
A61K 45/00-45/08
A61K 48/00
A61P 1/00-43/00
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要な対象におけるマクロファージ内への脂質蓄積を低減させる方法において使用するための、分泌型欠損スプリットハンド/スプリットフット1(sDSS1)タンパク質またはそのバリアントを含む組成物、前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸を含む組成物、または前記核酸を含有するベクターを含む組成物であって、前記方法が、
前記対象における前記マクロファージ内への前記脂質蓄積を低減させるために、前記組成物を前記対象に投与するステップを含み、前記核酸または前記ベクターが、前記対象において前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントを発現し、
前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントが、配列番号1に示される配列と比較して5アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を有するアミノ酸配列を含む、組成物。
【請求項2】
前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントが、配列番号1~18のいずれか1つであるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
必要な対象の血管におけるプラーク形成を低減させる方法において使用するための、分泌型欠損スプリットハンド/スプリットフット1(sDSS1)タンパク質またはそのバリアントを含む組成物、前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸を含む組成物、または前記核酸を含有するベクターを含む組成物であって、前記方法が、
酸化低密度リポタンパク質を含む前記対象の血管における酸化低密度リポタンパク質の活性を低減させ、それによって前記対象の前記血管におけるプラーク形成を低減させるために、前記組成物を前記対象に投与するステップを含み、前記核酸または前記ベクターが、前記対象において前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントを発現し、
前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントが、配列番号1に示される配列と比較して5アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を有するアミノ酸配列を含む、組成物。
【請求項4】
前記投与するステップが、複合体を形成していない遊離酸化低密度リポタンパク質の活性、または全ての前記酸化低密度リポタンパク質の活性を低減させる、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記血管が、動脈または大動脈である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントが、配列番号1~18のいずれか1つであるアミノ酸配列を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
必要な対象におけるアテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患を予防または処置する方法において使用するための、分泌型欠損スプリットハンド/スプリットフット1(sDSS1)タンパク質またはそのバリアントを含む組成物、前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸を含む組成物、または前記核酸を含有するベクターを含む組成物であって、前記方法が、
前記対象におけるアテローム性動脈硬化症または前記アテローム性動脈硬化症関連疾患を予防または処置するために、前記組成物を前記対象に投与するステップを含み、前記核酸または前記ベクターが、前記対象において前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントを発現し、
前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントが、配列番号1に示される配列と比較して5アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を有するアミノ酸配列を含む、組成物。
【請求項8】
前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントが、配列番号1~18のいずれか1つであるアミノ酸配列を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記投与するステップが、前記対象における血管内皮細胞による脂質吸収を低減させる、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記sDSS1タンパク質またはそのバリアントが、前記酸化低密度リポタンパク質に結合する、請求項1、3または7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明の内容は、バイオ医薬品の分野に属し、アテローム性動脈硬化症および関連疾患を予防および処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
アテローム性動脈硬化症は、脂質線条またはアテローム動脈硬化性プラークを形成することになる動脈血管壁内への脂質蓄積に起因する動脈血管の機能不全を指す。そしてまたプラーク形成に起因する、動脈血管運動機能低下、内腔狭窄およびさらには血栓が、動脈により供給される組織および臓器への血液供給に影響を与え、その結果、組織および臓器の局所的または全体的虚血が生じることになる。
【0003】
長きにわたり、アテローム性動脈硬化症およびアテローム性動脈硬化症関連疾患をより有効に予防および/または処置することができる薬物および/または処置方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
したがって、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患の新規処置方法が必要とされている。本発明は、そのような要求を満たし、関連する利点も提供する。本発明の方法、組成物および/または利用は、疾患モデル動物において酸化低密度リポタンパク質のレベルを有意に低下させることができ、アテローム動脈硬化性プラーク形成を低減させることができ、アテローム性動脈硬化症の進行を阻害することができる。
【0005】
一態様では、必要な個体におけるアテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患を予防または処置する方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量、sDSS1タンパク質をまたはその断片もしくはバリアントをコードする核酸の治療有効量、または核酸を含有するベクターの治療有効量を投与するステップ、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントを発現する細胞を移植するか、またはsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する組織または臓器を移植するステップ、および/または個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する血清または間質液を注入するステップを含む方法が、本明細書で提供される。
【0006】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、非天然アミノ酸を含む。一部の特定の実施形態では、非天然アミノ酸は、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む。
【0007】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および膜貫通輸送機能の遂行に寄与する断片を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、1~20アミノ酸に対する化学的修飾を含む。一部の特定の実施形態では、化学的修飾は、アミノもしくはグリコシル化修飾、脂肪酸修飾、アシル化修飾、Fc断片融合、アルブミン融合、PEG化修飾、デキストラン修飾、ヘパリン修飾、ポリビニルピロリドン修飾、ポリアミノ酸修飾、ポリシアル酸修飾、キトサンおよびその誘導体修飾、レクチン修飾、アルギン酸ナトリウム修飾、カルボマー修飾、ポリビニルピロリドン修飾、ヒドロキシプロピルメチルセルロース修飾、ヒドロキシプロピルセルロース修飾、アセチル化修飾、ホルミル化修飾、リン酸化修飾、メチル化修飾ならびに/またはスルホン化修飾を含む。一部の特定の実施形態では、ベクターは、真核生物発現プラスミドベクター、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、または仮性狂犬病ウイルスを含む。一部の特定の実施形態では、細胞は、ヒトの幹細胞、前駆細胞または成熟細胞のうちのいずれか1つである。一部の特定の実施形態では、幹細胞は、人工多能性幹細胞、分化転換により得られた細胞、または初代培養に由来する幹細胞、親細胞から分化した多能性または単能性幹細胞である。一部の特定の実施形態では、組織は、脳、肝臓、腎臓、脾臓もしくは膵島の全臓器もしくは部分的組織塊、または血液、脂肪、筋肉、骨髄もしくは皮膚である。一部の特定の実施形態では、方法は、脂質低下薬を個体に投与するステップをさらに含む。一部の特定の実施形態では、方法は、抗高血圧薬を個体に投与するステップをさらに含む。一部の特定の実施形態では、方法は、抗凝固薬を個体に投与するステップをさらに含む。一部の特定の実施形態では、個体は、経皮冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス術、または頸動脈内膜剥離術からなる群から選択される外科手術を受ける。一部の特定の実施形態では、方法は、動脈血管壁内への脂質蓄積を低減させる。一部の特定の実施形態では、脂質は、血液中のコレステロール、コレステロールエステル、トリグリセリド、カイロミクロン(CM)、低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、リポタンパク質(a)(Lp(a))、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)およびこれらのそれぞれの代謝中間体のうちの1つまたは複数を含む。一部の特定の実施形態では、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患は、血管内径狭窄、血管外径拡大、血管収縮および血管拡張能の低下、血管弾性の低下、血管脆弱性の増加、血管結石変性または石灰沈着、または血管の血液供給能の血栓により誘発される低下を含む。一部の特定の実施形態では、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患は、高血圧、狭心症、心筋梗塞、心筋血液供給不全、不整脈、脳血液供給不全、虚血性脳卒中、脳萎縮、腎不全、腎動脈狭窄、麻痺性イレウス、または肢端虚血性壊死を含む。
【0008】
別の態様では、必要な個体における血管内皮による脂質吸収を低減させる方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書で提供される。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、非天然アミノ酸を含む。一部の特定の実施形態では、非天然アミノ酸は、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む。
【0009】
別の態様では、必要な個体におけるマクロファージ内への脂質蓄積を低減させる方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書で提供される。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、非天然アミノ酸を含む。一部の特定の実施形態では、非天然アミノ酸は、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む。
【0010】
別の態様では、必要な個体における肝臓細胞内への脂質蓄積を増加させる方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書で提供される。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、非天然アミノ酸を含む。一部の特定の実施形態では、非天然アミノ酸は、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む。
【0011】
別の態様では、個体の血管内の循環酸化LDLの量を低減させる方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの有効量を投与するステップを含み、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、遊離酸化LDLと複合体を形成することができる、方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、方法は、複合体を形成していない遊離酸化LDLの量、および全酸化LDLの量を低減させる。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、非天然アミノ酸を含む。一部の特定の実施形態では、非天然アミノ酸は、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む。
【0012】
別の態様では、個体の血管内でのプラーク形成を低減させる方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの有効量を投与するステップを含み、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、遊離酸化LDLと複合体を形成することができる、方法が、本明細書で提供される。一部の特定の実施形態では、血管は、動脈である。一部の特定の実施形態では、血管は、大動脈である。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、非天然アミノ酸を含む。一部の特定の実施形態では、非天然アミノ酸は、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む。
【0013】
別の態様では、循環遊離酸化LDLを血管内にタンパク質-脂質複合体の形態で隔離する方法であって、酸化LDLを血管内でタンパク質に曝露してタンパク質-脂質複合体を形成するステップを含み、タンパク質が、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントである、方法が、本明細書で提供される。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、非天然アミノ酸を含む。一部の特定の実施形態では、非天然アミノ酸は、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびその誘導体を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む。
【0014】
別の態様では、sDSS1またはその断片もしくはバリアントと脂質との複合体が、本明細書で提供される。
【0015】
別の態様では、必要な個体におけるアテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患の処置のための治療剤をスクリーニングする方法であって、治療剤を、sDSS1タンパク質、sDSS1タンパク質の遺伝子、sDSS1遺伝子の調節エレメントおよびsDSS1遺伝子の転写産物と接触させるステップ、およびsDSS1タンパク質の発現に対する治療剤の効果を評価するステップを含む方法が、本明細書で提供される。
【0016】
例えば、以下の技術的解決法が、本明細書で提供される:
アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連心血管および脳血管疾患ならびに末梢血管疾患の予防および処置用の薬物の調製におけるタンパク質の利用であって、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連心血管および脳血管疾患ならびに末梢血管疾患の予防および処置用の薬物の調製のためにsDSS1タンパク質を使用することであることを特徴とする、利用。
【0017】
一部の特定の実施形態では、アテローム性動脈硬化症は、動脈血管壁内への脂質の蓄積により引き起こされ、動脈血管の機能不全に至る、脂質線条またはアテローム動脈硬化性プラークの出現を指す。
【0018】
一部の特定の実施形態では、脂質は、血液中のコレステロール、コレステロールエステル、トリグリセリド、カイロミクロン(CM)、低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、リポタンパク質(a)(Lp(a))、高密度リポタンパク質(HDL)、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)およびこれらのそれぞれの代謝中間体のうちの1つまたは複数を指す。
【0019】
一部の特定の実施形態では、動脈血管の機能不全は、血管内径狭窄、血管外径拡大、血管収縮および血管拡張能の低下、血管弾性の低下、血管脆弱性の増加、血管結石変性または石灰沈着、および血管の血液供給能の血栓により誘発される低下を指す。
【0020】
一部の特定の実施形態では、アテローム性動脈硬化症関連心血管疾患は、高血圧、狭心症、心筋梗塞、心筋血液供給不全、不整脈、および突然死を指す。
【0021】
一部の特定の実施形態では、アテローム性動脈硬化症関連脳血管疾患は、脳血液供給不全、虚血性脳卒中、および脳萎縮を指す。
【0022】
一部の特定の実施形態では、アテローム性動脈硬化症関連末梢毛管疾患は、腎不全、腎動脈狭窄、麻痺性イレウス、または肢端虚血性壊死を指す。
【0023】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、Homo sapiens、Pan troglodytes、Pan paniscus、Gorilla、Orangutan、Nomascus leucogenys、Rhinopithecus roxellana、Macaca mulatta、Rhinopithecus bieti、Papio anubis、Colobus angolensis、Cercocebus atys、Mandrillus leucophaeus、およびMacaca leoninaのいずれか1つについてのsDSS1タンパク質配列により形成される塩基性タンパク質であって、Homo sapiens sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号1に示され、Pan troglodytes sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号2に示され、Pan paniscus sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号3に示され、Gorilla sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号4に示され、Orangutan sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号5に示され、Nomascus leucogenys sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号6に示され、Rhinopithecus roxellana sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号7に示され、Macaca mulatta sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号8に示され、Rhinopithecus bieti sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号9に示され、Papio anubis sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号10に示され、Colobus angolensis sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号11に示され、Cercocebus atys sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号12に示され、Mandrillus leucophaeus sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号13に示され、およびMacaca leonina sDSS1のアミノ酸配列が、配列番号14に示される、塩基性タンパク質を含む。
【0024】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、上述の実施形態に記載のsDSS1タンパク質と70%より高い類似性を有する任意の第1のタンパク質である。
【0025】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、N末端またはC末端が他のポリペプチド断片に融合している、上述の実施形態に記載のsDSS1タンパク質のN末端の58アミノ酸に基づく任意の第2のタンパク質であって、融合に使用されるポリペプチド断片の構造的特徴またはアミノ酸配列特徴が、上述の実施形態に記載のsDSS1タンパク質のC末端の31アミノ酸と同じまたは同様である、任意の第2のタンパク質である。
【0026】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、N末端またはC末端が他のアミノ酸断片に融合している、上述の実施形態に記載のsDSS1タンパク質のN末端の58アミノ酸に基づく任意の第3のタンパク質であって、タンパク質と融合させることにより膜貫通輸送機能が可能になる、任意の第3のタンパク質である。
【0027】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、塩基性タンパク質への、第1のタンパク質、第2のタンパク質もしくは第3のタンパク質のタンパク質自体への、担体タンパク質への、抗体への、または任意の長さの他のアミノ酸断片への、ライゲーションにより形成される融合タンパク質である。
【0028】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、塩基性タンパク質、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第3のタンパク質または融合タンパク質に基づく修飾により生成される、ポリペプチド/タンパク質修飾因子である。
【0029】
一部の特定の実施形態では、ポリペプチド/タンパク質修飾因子は、1~20部位において、アミノ酸側鎖上のアミノ基、アミノ酸側鎖上のカルボニル基、窒素末端アミノ基、炭素末端カルボニル基、システイン、チロシン、セリンおよびトリプトファンについて、特異的にまたは非特異的に、化学的に修飾される。
【0030】
一部の特定の実施形態では、ポリペプチド/タンパク質修飾因子の修飾方法は、グリコシル化修飾、脂肪酸修飾、アシル化修飾、Fc断片融合、アルブミン融合、PEG化修飾、デキストラン修飾、ヘパリン修飾、ポリビニルピロリドン修飾、ポリアミノ酸修飾、ポリシアル酸修飾、キトサンおよびその誘導体修飾、レクチン修飾、アルギン酸ナトリウム修飾、カルボマー修飾、ポリビニルピロリドン修飾、ヒドロキシプロピルメチルセルロース修飾、ヒドロキシプロピルセルロース修飾、アセチル化修飾、ホルミル化修飾、リン酸化修飾、メチル化修飾、スルホン化修飾、および他の薬学的に利用可能なポリペプチド/タンパク質修飾修飾法のうちの1つまたは1つより多くを含む。
【0031】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、塩基性タンパク質、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第3のタンパク質または融合タンパク質のアミノ酸配列に基づく20の塩基性アミノ酸以外のアミノ酸を使用して1~31の任意のアミノ酸部位で置換が行われた、非天然アミノ酸置換タンパク質である。
【0032】
一部の特定の実施形態では、非天然アミノ酸置換タンパク質のアミノ酸置換は、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む。
【0033】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、塩基性タンパク質、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第3のタンパク質、融合タンパク質、ポリペプチド/タンパク質修飾因子または非天然アミノ酸代替物と薬学的に利用可能な薬物担体とによって形成される、部分複合体または完全複合体である。
【0034】
一部の特異的実施形態では、複合体の薬物担体は、腸溶性コーティング製剤、カプセル、マイクロスフェア/マイクロカプセル、リポソーム、マイクロエマルジョン、複合エマルジョン、ナノ粒子、磁性粒子、ゼラチンおよびゲルのうちの1つまたは1つより多くを含む。
【0035】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、個体自体のsDSS1タンパク質を標的とし、個体自体のsDSS1タンパク質のレベルは、外因性薬物による影響を受ける。
【0036】
一部の特定の実施形態では、薬物は、sDSS1タンパク質、sDSS1タンパク質の遺伝子、sDSS1遺伝子の調節エレメント、およびsDSS1遺伝子の転写産物を、薬物の標的として使用する。
【0037】
一部の特定の実施形態では、薬物は、血液、脳脊髄液またはリンパ液におけるプロテアーゼ/ペプチダーゼ活性に影響を与えることにより、血液、脳脊髄液またはリンパ液中のsDSS1タンパク質の量を調節する。
【0038】
一部の特定の実施形態では、薬物は、小分子化学薬品、抗体、ポリペプチド/タンパク質薬、核酸薬、またはナノドラッグにより形成される、第1の薬物である。
【0039】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、塩基性タンパク質、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第3のタンパク質、融合タンパク質、ポリペプチド/タンパク質修飾因子、複合体、および第1の薬物のうちのいずれか1つについての2つまたはそれより多くの成分の組合せにより形成される、第2の薬物である。
【0040】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、塩基性タンパク質、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第3のタンパク質、融合タンパク質、ポリペプチド/タンパク質修飾因子、複合体、および第1の薬物のうちのいずれか1つについての1つ、2つまたはそれより多くの成分と薬学的に利用可能な賦形剤とによって形成される、第3の薬物である。
【0041】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、塩基性タンパク質、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第3のタンパク質または融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、in vivoで導入することおよび発現系によって発現させることにより得られる、第4の薬物である。
【0042】
一部の特定の実施形態では、発現系は、真核生物発現プラスミドベクター、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ZFN遺伝子編集技術、TALEN Gene編集技術、CRISPR/Cas遺伝子編集技術および他の医学的に利用可能な遺伝子編集技術またはウイルスベクターである。
【0043】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、個体の体内に細胞を移植することにより得られる塩基性タンパク質、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第3のタンパク質または融合タンパク質によって形成される、第5のタンパク質である。
【0044】
一部の特定の実施形態では、細胞は、ヒトの幹細胞、前駆細胞または成熟細胞のうちのいずれか1つである。
【0045】
一部の特定の実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、分化転換により得られた細胞、または初代培養に由来する幹細胞、親細胞から分化した多能性または単能性幹細胞である。
【0046】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、血清、脳脊髄液、リンパ液または間質液の注入により個体に導入される、第6のタンパク質である。
【0047】
一部の特定の実施形態では、sDSS1タンパク質は、個体の体内に組織または臓器を移植することにより得られる塩基性タンパク質、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第3のタンパク質または融合タンパク質によって形成される、第7のタンパク質である。
【0048】
一部の特定の実施形態では、組織は、脳、肝臓、腎臓、脾臓もしくは膵島の全臓器もしくは部分的組織塊、または血液、脂肪、筋肉、骨髄もしくは皮膚である。
【0049】
一部の特定の実施形態では、予防薬は、塩基性タンパク質、第1~第7のタンパク質のいずれか1つ、融合タンパク質、ポリペプチド/タンパク質修飾因子、非天然アミノ酸置換タンパク質、複合体、複合薬、発現系、細胞、組織、臓器、体液または間質液を含む、タンパク質薬、ポリペプチド薬、核酸薬、小分子化学薬品、細胞産物、市販の移植組織、注射剤、凍結乾燥粉末、ヘルスケア製品および食品添加物のうちの1つまたは複数である。
【0050】
一部の特定の実施形態では、治療薬は、塩基性タンパク質、第1~第7のタンパク質のいずれか1つ、融合タンパク質、ポリペプチド/タンパク質修飾因子、非天然アミノ酸置換タンパク質、複合体、第1の薬物、第2の薬物、第3の薬物、発現系、細胞、組織、臓器、体液または間質液を含む、タンパク質薬、ポリペプチド薬、核酸薬、小分子化学薬品、細胞産物、市販の移植組織、注射剤、凍結乾燥粉末、ヘルスケア製品および食品添加物のうちの1つまたは複数である。
【0051】
本発明の特徴および/または有益な効果は、以下のことを含む:
1.本発明により提供されるsDSS1タンパク質は、in vitroでoxLDLおよびLDLに結合する能力を有する;
2.本発明により提供されるsDSS1タンパク質は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)によるoxLDLの取込みを阻害することができる;
3.本発明により提供されるsDSS1タンパク質は、単球THP-1から分化したマクロファージによるoxLDLの貪食を阻害することができる;
4.本発明により提供されるsDSS1タンパク質は、肝細胞HepG2によるoxLDLの取込みを増加させることができる;
5.本発明により提供されるsDSS1タンパク質は、モデル動物においてoxLDL/LDL比のレベルを低下させることができる;
6.本発明により提供されるsDSS1タンパク質は、モデル動物においてアテローム動脈硬化性プラークの面積を低減させることができ、アテローム性動脈硬化症の進行を阻害することができる;
7.本発明により提供されるsDSS1タンパク質は、ヒトおよび他の霊長類によりプロセシングされるタンパク質であり、比較的小さい分子量、低い免疫原性、およびin vivoでの天然タンパク質分解機構を有する。したがって、その臨床応用は、明らかな免疫応答も他の副作用も引き起こすことにならず、安全であり、信頼性がある。
【0052】
要するに、本発明は、アテローム性動脈硬化症およびアテローム性動脈硬化症関連心血管および脳血管疾患ならびに末梢血管疾患の予防および処置のためのsDSS1タンパク質薬を提供する。分子、細胞および動物レベルでの実験による検証によれば、SDSS1タンパク質は、LDLまたはoxLDLタンパク質に結合して複合体を形成することができ、培養培地へのsDSS1タンパク質の添加は、血管内皮細胞および単核マクロファージによるoxLDLの取込みを低減させ、肝細胞によるoxLDLの取込みを増加させる。動物実験では、sDSS1タンパク質は、アテローム性動脈硬化症モデルマウスにおいて酸化低密度リポタンパク質のレベルを有効に低下させることができ、アテローム動脈硬化性プラークの面積を低減させることができ、アテローム性動脈硬化症の進行を阻害することができる。sDSS1タンパク質は、より低いタンパク質免疫原性および有意な薬学的効果を有し、アテローム性動脈硬化症およびアテローム性動脈硬化症関連心血管および脳血管疾患ならびに末梢血管疾患の予防および処置において臨床使用できる可能性がある。
【0053】
添付の図面を参照して本発明を以下により詳細にさらに説明するが、これらの図面は、本発明を明らかにすることおよび完全にすることを意図したものであり、本発明の保護範囲を限定することを意図したものではない。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
必要な個体におけるアテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患を予防または処置する方法であって、前記個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量、前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントをコードする核酸の治療有効量、または前記核酸を含有するベクターの治療有効量を投与するステップ、前記個体に前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントを発現する細胞を移植するか、または前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは前記核酸を含有する組織または臓器を移植するステップ、および/または前記個体に前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは前記核酸を含有する血清または間質液を注入するステップを含む方法。
(項目2)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、非天然アミノ酸を含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記非天然アミノ酸が、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および膜貫通輸送機能の遂行に寄与する断片を含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、1~20アミノ酸に対する化学的修飾を含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記化学的修飾が、アミノもしくはグリコシル化修飾、脂肪酸修飾、アシル化修飾、Fc断片融合、アルブミン融合、PEG化修飾、デキストラン修飾、ヘパリン修飾、ポリビニルピロリドン修飾、ポリアミノ酸修飾、ポリシアル酸修飾、キトサンおよびその誘導体修飾、レクチン修飾、アルギン酸ナトリウム修飾、カルボマー修飾、ポリビニルピロリドン修飾、ヒドロキシプロピルメチルセルロース修飾、ヒドロキシプロピルセルロース修飾、アセチル化修飾、ホルミル化修飾、リン酸化修飾、メチル化修飾ならびに/またはスルホン化修飾を含む、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記ベクターが、真核生物発現プラスミドベクター、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、または仮性狂犬病ウイルスを含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記細胞が、ヒトの幹細胞、前駆細胞または成熟細胞のうちのいずれか1つである、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記幹細胞が、人工多能性幹細胞、分化転換により得られた細胞、または初代培養に由来する幹細胞、親細胞から分化した多能性または単能性幹細胞である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記組織が、脳、肝臓、腎臓、脾臓もしくは膵島の全臓器もしくは部分的組織塊、または血液、脂肪、筋肉、骨髄もしくは皮膚である、項目1に記載の方法。
(項目15)
脂質低下薬を前記個体に投与するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
抗高血圧薬を前記個体に投与するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目17)
抗凝固薬を前記個体に投与するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記個体が、経皮冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス術、または頸動脈内膜剥離術からなる群から選択される外科手術を受ける、項目1に記載の方法。
(項目19)
動脈血管壁内への脂質蓄積を低減させる、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記脂質が、血液中のコレステロール、コレステロールエステル、トリグリセリド、カイロミクロン(CM)、低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、リポタンパク質(a)(Lp(a))、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)およびこれらのそれぞれの代謝中間体のうちの1つまたは複数を含む、項目10に記載の方法。
(項目21)
前記アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患が、血管内径狭窄、血管外径拡大、血管収縮および血管拡張能の低下、血管弾性の低下、血管脆弱性の増加、血管結石変性または石灰沈着、および血管の血液供給能の血栓により誘発される低下を含む、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患が、高血圧、狭心症、心筋梗塞、心筋血液供給不全、不整脈、脳血液供給不全、虚血性脳卒中、脳萎縮、腎不全、腎動脈狭窄、麻痺性イレウス、または肢端虚血性壊死を含む、項目1に記載の方法。
(項目23)
必要な個体における血管内皮による脂質吸収を低減させる方法であって、前記個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量を投与するステップを含む方法。
(項目24)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、非天然アミノ酸を含む、項目23に記載の方法。
(項目27)
前記非天然アミノ酸が、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む、項目23に記載の方法。
(項目29)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む、項目23に記載の方法。
(項目30)
必要な個体におけるマクロファージ内への脂質蓄積を低減させる方法であって、前記個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量を投与するステップを含む方法。
(項目31)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、非天然アミノ酸を含む、項目30に記載の方法。
(項目34)
前記非天然アミノ酸が、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む、項目30に記載の方法。
(項目36)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む、項目30に記載の方法。
(項目37)
必要な個体における肝臓細胞内への脂質蓄積を増加させる方法であって、前記個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量を投与するステップを含む方法。
(項目38)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、非天然アミノ酸を含む、項目37に記載の方法。
(項目41)
前記非天然アミノ酸が、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む、項目37に記載の方法。
(項目43)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む、項目37に記載の方法。
(項目44)
個体の血管内の循環酸化LDLの量を低減させる方法であって、前記個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの有効量を投与するステップを含み、前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、遊離酸化LDLと複合体を形成することができる、方法。
(項目45)
複合体を形成していない遊離酸化LDLの量、および全酸化LDLの量を低減させる、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する、項目44に記載の方法。
(項目47)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む、項目44に記載の方法。
(項目48)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、非天然アミノ酸を含む、項目44に記載の方法。
(項目49)
前記非天然アミノ酸が、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む、項目44に記載の方法。
(項目51)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む、項目44に記載の方法。
(項目52)
個体の血管内でのプラーク形成を低減させる方法であって、前記個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの有効量を投与するステップを含み、前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、遊離酸化LDLと複合体を形成することができる、方法。
(項目53)
前記血管が、動脈である、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記血管が、大動脈である、項目52に記載の方法。
(項目55)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する、項目52に記載の方法。
(項目56)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む、項目52に記載の方法。
(項目57)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、非天然アミノ酸を含む、項目52に記載の方法。
(項目58)
前記非天然アミノ酸が、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびそれらの誘導体を含む、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む、項目52に記載の方法。
(項目60)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む、項目52に記載の方法。
(項目61)
循環遊離酸化LDLを血管内にタンパク質-脂質複合体の形態で隔離する方法であって、前記酸化LDLを前記血管内で前記タンパク質に曝露して前記タンパク質-脂質複合体を形成するステップを含み、前記タンパク質が、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントである、方法。
(項目62)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む、項目61に記載の方法。
(項目64)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、非天然アミノ酸を含む、項目61に記載の方法。
(項目65)
前記非天然アミノ酸が、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸およびその誘導体を含む、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む、項目61に記載の方法。
(項目67)
前記sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む、項目61に記載の方法。
(項目68)
sDSS1またはその断片もしくはバリアントと脂質との複合体。
(項目69)
必要な個体におけるアテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患の処置のための治療剤をスクリーニングする方法であって、前記治療剤を、sDSS1タンパク質、前記sDSS1タンパク質の遺伝子、前記sDSS1遺伝子の調節エレメントおよび前記sDSS1遺伝子の転写産物と接触させるステップ、および前記sDSS1タンパク質の発現に対する前記治療剤の効果を評価するステップを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1-1】図1は、sDSS1タンパク質がoxLDLおよびLDLと相互作用することができることを示した分子実験を示す。 図1A.酢酸ナトリウム/酢酸緩衝剤(pH4.5)中で、oxLDLまたはLDLをsDSS1タンパク質とともに12時間インキュベートした。インキュベーション産物をSDS-PAGEにより分離し、クーマシーブリリアントブルーで染色した。結果は、単独でのLDLタンパク質(L1)、oxLDLタンパク質(L2)バンドの分子量が、約70KDであり、単独でのsDSS1バンド(L3、L6)の分子量が、約15KDであることを示す。LDLまたはoxLDLとsDSS1タンパク質の共インキュベーションは、相互作用をもたらした。(L4およびL7は、LDLおよびsDSS1タンパク質に対応し、L5およびL8は、oxLDLおよびsDSS1タンパク質に対応する)。 SDS-PAGEゲル上で、sDSS1タンパク質との反応後に反応系中のoxLDLタンパク質またはLDLタンパク質(分子量約70KD)バンドは、有意に、より薄くなり;反応系中のsDSS1タンパク質の濃度が増加するにつれて、より多くの複合体がLDLまたはoxLDLにより形成されたためバンドがより濃くなる。 図1B.リン酸緩衝剤(pH7.2)中で、oxLDLまたはLDLをsDSS1タンパク質とともに12時間インキュベートした。インキュベーション生成物をSDS-PAGEにより分離し、クーマシーブリリアントブルーで染色した。結果は、単独でのLDLタンパク質(L1)、oxLDLタンパク質(L2)バンドの分子量が、約70KDであり、単独でのsDSS1バンド(L3、L6)の分子量が、約15KDであることを示す。LDLまたはoxLDLとsDSS1タンパク質の共インキュベーションは、相互作用をもたらした。(L4およびL7は、LDLおよびsDSS1タンパク質に対応し、L5およびL8は、oxLDLおよびsDSS1タンパク質に対応する)。 SDS-PAGEゲル上で、sDSS1タンパク質との反応後に反応系中のoxLDLタンパク質またはLDLタンパク質(分子量約70KD)バンドは、有意に変化しなかった;反応系中のsDSS1タンパク質の濃度が増加するにつれて、より多くの複合体がLDLまたはoxLDLにより形成されたためバンドがより濃くなる。 図1C図1D.リン酸緩衝剤(pH7.2)中で、oxLDLをsDSS1-M1またはsDSS1-M2とともに、それぞれインキュベートした。生成物をSDS-PAGEにより分離し、クーマシーブリリアントブルーで染色した。結果は、oxLDLをsDSS1-M1とともにインキュベートしたとき、sDSS1-M1タンパク質がSDS-PAGEゲル上で反応系中のoxLDLタンパク質と相互作用したことによって高分子量領域(>75KD)および37KD~75KD領域に明らかな拡散バンド(L3、L5、L7)が形成される一方で、反応系中のsDSS1-M1タンパク質バンドが明らかに薄くなる(L2対L3、L4対L5、L6対L7)ことを示す(図1C)。oxLDLは、sDSS1-M2[このsDSS1-M2タンパク質は二量体のように見えた(L2、L4、L6)]とインキュベートされたとき、oxLDLタンパク質と相互作用し、それによって高分子量領域(>75KD)および37KD~75KD領域に明らかな拡散バンド(L3、L5、L7)が形成される。これら2つの反応系では、反応系中のsDSS1-M1またはsDSS1-M2タンパク質の濃度が増加するにつれて、より多くの複合体が反応系中で形成されたためバンドがより濃くなる。
図1-2】同上。
図2-1】図2は、sDSS1タンパク質が内皮細胞によるoxLDLの取込みを阻害することができることを示す。 図2A.10μg/mlのDil-oxLDLをヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の培養培地に添加したか、またはDil-oxLDLを2μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlの濃度のsDSS1タンパク質と一緒に添加した。5時間後、Dil-oxLDLは、HUVEC細胞により取り込まれた。細胞における赤色蛍光を示す様々な数の食胞を蛍光顕微鏡のもとで観察することができた。sDSS1タンパク質の添加後、HUVEC細胞における蛍光は弱まり、この効果は濃度依存性であった。 図2B.HUVEC細胞によるDil-oxLDLの取込み後、細胞における蛍光シグナルをフローサイトメトリーにより検出し、培養培地に添加するsDSS1タンパク質の量が増加するにつれて細胞の蛍光シグナルが徐々に弱まることが判明した。 図2C.フローサイトメトリー試験結果は、sDSS1タンパク質が、対照細胞(10μg/ml Dil-oxLDL)と比較してHUVEC細胞によるoxLDLの取込みを有意に阻害することができることを、統計的に明らかにした。培養培地への2μg/mlのsDSS1タンパク質の添加は、oxLDLの取込みを半減させることができ、この効果は、明らかに用量依存性であった。
図2-2】同上。
図3-1】図3は、sDSS1タンパク質がマクロファージによるoxLDLの貪食を阻害することができることを示す。 図3A.THP-1細胞を100nM PMAで4日間誘導した後、それらの細胞は、成熟マクロファージに分化する。10μg/mlのDil-oxLDLを培養培地に添加したか、またはDil-oxLDLを2μg/mlおよび10μg/mlの濃度のsDSS1タンパク質と一緒に添加した。5時間後、対照細胞群において、Dil-oxLDLがマクロファージにより貪食されることが観察され、明らかな赤色蛍光食胞を細胞内で観察することができた。sDSS1タンパク質の添加後、明らかな蛍光シグナルは、細胞内で基本的に観察されなかった。 図3B.マクロファージの蛍光シグナルをフローサイトメトリーにより検出した。結果は、蛍光シグナルを有する細胞を対照群(10μg/mlのDil-oxLDL)の細胞では検出することができるが、sDSS1タンパク質を添加した2つの実験群では蛍光シグナルが細胞に基本的に見られないことを示した。
図3-2】同上。
図4-1】図4は、sDSS1タンパク質がヒト肝細胞によるoxLDLタンパク質の取込み能力を増加させることができることを示す。 図4A.Hep G2細胞にDil-oxLDLを添加した9時間後に細胞の蛍光を蛍光顕微鏡により検出した。結果は、明らかな蛍光を対照群および実験群の細胞において観察することができたことを示す。蛍光は、様々な数の食胞に見られた。これは、Hep G2細胞がDil-oxLDLを取り込んだことを示す。 図4B.細胞蛍光値をフローサイトメトリーにより検出した。明らかなDil蛍光シグナルを対照群のHep G2細胞において検出することができたことが分かるだろう。培養培地への5μg/mlのsDSS1の添加は、細胞内蛍光レベルに有意な影響を与えなかったが、50μg/mlのsDSS1タンパク質は、細胞におけるDilシグナルの強度を有意に増加させることができた。 図4C.フローサイトメトリーによる統計的検出結果は、対照群と比較して、培養培地への50μg/mlのsDSS1タンパク質の添加後にHep G2細胞によるoxLDLの吸収能力が約27%増加し、対照群と比較して有意に改善された(**p<0.01)ことを示した。
図4-2】同上。
図5図5は、sDSS1タンパク質にはヒト肝細胞によるLDLタンパク質の取込み能力に対して有意な効果がないことを示す。 図5A.Hep G2細胞にDil-LDLを添加した10時間後に細胞の蛍光を蛍光顕微鏡により検出した。結果は、明らかな蛍光を対照群および実験群の細胞において観察することができることを示した。蛍光は、様々な数の食胞に見られた。これは、Hep G2細胞がDil-LDLを取り込んだことを示す。蛍光細胞の数を判定したが有意な差はなかった。 図5B.細胞蛍光値をフローサイトメトリーにより検出した。明らかなDil蛍光シグナルを対照群のHep G2細胞において検出することができたことが分かるだろう。培養培地への5μg/mlのsDSS1の添加も、50μg/mlのsDSS1タンパク質の添加も、細胞におけるDil蛍光シグナルの強度の有意な変化を生じさせることができなかった。
図6図6は、sDSS1タンパク質が、マウスにおいて血漿中oxLDLレベルおよび血漿中oxLDL/LDL比を低下させること、およびLDLレベルに有意な差がないことを示す。 ApoE-/-マウスを、対照群とsDSS1タンパク質投与群という2つの群に分けた。対照群には200μLの生理食塩水を1日1回、腹腔内注射により与え、投与群にはsDSS1タンパク質を1日1回、10mg/kg体重(10mpk)または30mg/kg体重(30mpk)にしたがって腹腔内注射により与え、陽性対照薬としてアトルバスタチン(ATV)を40mg/kg体重(40mpk)に従って腹腔内注射により連続7日間、毎日投与した。投与の終了時に、マウスにおけるoxLDLおよびLDLの血漿中レベルを検出した。 図6A.血漿中oxLDLレベルを検出し、sDSS1タンパク質の投与後にsDSS1タンパク質の低用量注射はマウスにおける血漿中oxLDLレベルに有意な影響を与えなかったが、高用量投与はマウスにおけるoxLDLレベルを有意に低下させ、40mpk ATVと同じ有効性を示すことが判明した。 図6B.血漿中LDLレベルを検出し、対照群のマウスと比較してsDSS1タンパク質の10mpkまたは30mpkでの注射はマウスにおける血漿中LDLレベルの有意な変化を生じさせないことが判明した。 図6C.血漿中oxLDL/LDL比を分析し、結果は、高用量sDSS1タンパク質群のマウスの血漿中oxLDL/LDL比は対照群のものより有意に低く、ATVと同様の有効性を示すことを示した。(p値<0.05)。
図7図7は、sDSS1タンパク質がApoE-/-マウスにおいてアテローム動脈硬化性プラークの形成を阻害することを示す。16週齢ApoE-/-マウスに、連続13週間、3mpkのsDSS1または40mpkのATVを継続的に注射した。注射の終了時に、大動脈をオイルレッドO染色のために切除し、プラークの面積を算出した。 図7A.ApoE-/-マウスの大動脈前面(en face)の染色は、アテローム動脈硬化性プラークを示した。アテローム動脈硬化性プラークは、オイルレッドOにより染色され、赤橙色に見え、プラークのないエリアは、着色されず、透明であった。結果は、陽性薬物群のマウスのアテローム動脈硬化性プラークの面積がモデル群と比較して有意に低減されたこと;sDSS1タンパク質群のマウスのアテローム動脈硬化性プラークの面積もモデル群と比較して有意に低減され、ある特定のエリアでの効果が陽性薬物のものよりさらに良好であったことを示す。 図7B.オイルレッドO染色面積および全大動脈面積を測定し、プラーク面積比を算出した。陽性薬物群およびsDSS1タンパク質群のプラーク面積比は、モデル群のものより有意に小さく(**p<0.01)、陽性薬物群とsDSS1タンパク質群の間にプラーク面積比の有意な差はなかった。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の詳細な説明
本発明の実施形態を説明する前に、これらの実施形態を単に例として提供すること、および本明細書に記載の本発明の実施形態の様々な代替形態を使用して本発明を実行することができることを理解されたい。本発明から逸脱しない非常に多くの変形形態、変更形態および置換形態が当業者の心に浮かぶことであろう。
【0056】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての専門および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験の際に使用することができるが、好適な方法および材料が下記で説明される。矛盾する場合、本発明の特許明細書(定義を含む)が優先するものとする。加えて、材料、方法および例は、説明に役立つものに過ぎず、限定することを意図したものではない。本発明から逸脱しない非常に多くの変形形態、変更形態および置換形態が当業者の心に浮かぶことであろう。
【0057】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈による別段の明白な指示がない限り、複数の言及対象を含む。
【0058】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸ポリマーを指すために本明細書では同義的に使用される。ポリマーは、直鎖状であることまたは分岐していることがあり、修飾アミノ酸を含むこともあり、ポリマーに非アミノ酸が割り込んでいることもある。この用語は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作(例えば、標識成分とのカップリング)により修飾された、アミノ酸ポリマーも包含する。
【0059】
用語「アミノ酸」は、DまたはL光学異性体ならびにアミノ酸アナログおよびペプチド模倣物を含むがこれらに限定されない、天然および/または非天然または合成アミノ酸を指す。標準1文字または3文字コードが、アミノ酸を表記するために使用される。
【0060】
用語「天然アミノ酸」は、グリシン(G)、プロリン(P)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、システイン(C)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、リシン(K)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、セリン(S)、およびトレオニン(T)のL光学異性体形を意味する。用語「非天然アミノ酸」は、上述の天然アミノ酸でない任意のアミノ酸を含む。
【0061】
タンパク質に関して使用されるときの「断片」は、治療活性および/または生物活性の少なくとも一部分を保持することもあり、または保持しないこともある、天然生物活性タンパク質の切断形態である。タンパク質に関して使用されるときの「バリアント」は、生物活性タンパク質の治療活性および/または生物活性の少なくとも一部分を保持する、天然生物活性タンパク質に対する配列相同性を有するタンパク質である。例えば、バリアントタンパク質は、参照生物活性タンパク質と比較して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を共有し得る。本明細書で使用される場合、用語「生物活性タンパク質部分」は、例えば、部位特異的突然変異誘発、コード遺伝子の合成、挿入により意図的に修飾されているタンパク質、または突然変異により偶発的に修飾されたタンパク質を含む。
【0062】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、同義的に使用される。これらの用語は、任意の長さのヌクレオチドの重合形態、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのどちらか、またはそのアナログを指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、公知のまたは未知の任意の機能を果たすことができる。次のものは、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:連鎖解析により遺伝子座が決定された遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなどの、修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーを組み立てる前に付与されることもあり、または組み立てた後に付与されることもある。ヌクレオチドの配列に非ヌクレオチド成分が割り込んでいることもある。ポリヌクレオチドは、重合後に、例えば標識成分とのカップリングにより、さらに修飾されることもある。
【0063】
本明細書で決定されるポリペプチド配列に関して、「配列同一性のパーセンテージ(%)」は、配列のアラインメントを行い、必要に応じて、配列同一性の最大パーセンテージを達成するためにギャップを導入した後、クエリ配列内の第2の参照ポリペプチド配列のまたはその一部のアミノ酸残基と同一であるアミノ酸残基のパーセンテージであって、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と見なさないパーセンテージと定義する。アミノ酸配列同一性のパーセンテージを決定することを目的としたアラインメントは、当技術分野における技術の範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、NEEDLEまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較されることになる配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。同一性パーセンテージは、定義されたポリヌクレオチド配列全体の長さにわたって測定されることもあり、またはより短い長さ、例えば、より大きい定義されたポリヌクレオチド配列から取られた断片の長さにわたって測定されることもあり、断片は、例えば、連続する少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70または少なくとも150残基の断片である。これらの長さは、例示的なものに過ぎず、本明細書中の表、図面または配列表に示される配列により裏付けられるいずれの断片長も、同一性のパーセンテージを測定することができる長さを記述するために使用することができることを理解されたい。
【0064】
「ベクター」は、好適な宿主において自体が好ましく複製する核酸分子であり、挿入された核酸分子を宿主細胞に移入するおよび/または宿主細胞間で移送する。この用語は、細胞にDNAまたはRNAを挿入する役割を主として果たすベクター、DNAまたはRNA複製の役割を主として果たすベクター複製、ならびにDNAまたはRNA転写および/または翻訳の役割を果たす発現ベクターを含む。この用語は、上述の効果の1つより多くを提供するベクターも含む。「発現ベクター」は、好適な宿主細胞に導入されたときにポリペプチドに転写および翻訳され得るポリヌクレオチドである。「発現系」は、所望の発現産物を産生するために使用することができる発現ベクターを含有する好適な宿主細胞を一般に意味する。
【0065】
用語「有効量」または「治療有効量」は、下記で定義されるような所期の利用(疾患の処置を含むがこれに限定されない)を達成するのに十分な、本明細書に記載の化合物の量を指す。治療有効量は、所期の利用(in vitroもしくはin vivo)、または処置される対象、および病状、例えば、対象の体重および年齢、病状の重症度、投与経路などによって変わり得るが、当業者は治療有効量を容易に決定することができる。この用語は、標的細胞において特異的応答、例えば標的遺伝子誘導および/またはアポトーシス、を誘導することになる投薬量にも適用される。具体的な投薬量は、選択される特定の化合物、従うべき投与レジメン、他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、投与すべき組織、およびそれを担持する物理的送達系に依存して変わることになる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置すること」または「軽減すること」または「好転させること」は、本明細書では同義的で使用される。これらの用語は、治療利益および/または予防利益を含むがこれらに限定されない有益なまたは望ましい結果を得るために使用される方法を指す。いわゆる治療利益は、処置されることになる基礎疾患の根絶または好転を意味する。加えて、治療利益は、次のこととしても得られる:基礎疾患に関連する生理的症状の1つまたは複数が根絶または好転され、したがって、対象において好転が観察されるが、対象は基礎疾患をまだ患っている可能性がある。予防利益に関しては、組成物が、特定の疾患を発症するリスクのある対象に投与されることがあり、または疾患の生理的症状の1つもしくは複数を報告した対象に、たとえその疾患の診断が下されていなくても、投与されることがある。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「治療効果」は、上記の治療利益および/または予防利益を包含する。予防効果は、疾患もしくは状態の発生を遅らせるもしくは無くすこと、疾患もしくは状態の症状の開始を遅らせるもしくは無くすこと、疾患もしくは状態の進行を緩徐化、停止もしくは逆転させること、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0068】
「医薬」または「治療剤」は、生物学的な、薬学的な、または化学的な化合物または他の部分を指す。非限定的な例としては、単純もしくは複合有機もしくは無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体断片、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素、または化学療法用化合物が挙げられる。様々な化合物、例えば、小分子およびオリゴマー(例えば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)ならびに合成有機化合物を、様々なコア構造に基づいて合成することができる。加えて、植物または動物抽出物などのような様々な天然源が、スクリーニングのための化合物を提供することができる。
【0069】
用語「in vivo」は、対象体内で起こる事象を指す。
【0070】
用語「in vitro」は、対象体外で起こる事象を指す。例えば、in vitro試験は、対象試験に加えて実行される任意の試験を包含する。in vitro試験は、生または死細胞が使用される細胞ベースの試験を包含する。in vitro試験は、無傷細胞が使用されない無細胞試験も包含する。
【0071】
Shfm1(裂手/裂足奇形1型)遺伝子は、ヒトカニ爪症における重要な遺伝子の1つであり、進化において高度に保存される。この遺伝子によりコードされるDSS1タンパク質は、ゲノムの安定化、相同遺伝子組換え、DNA損傷の修復および細胞増殖などのプロセスに関与する[22~26]。本発明者の研究結果は、タグとしてDSS1タンパク質を酸化タンパク質にエネルギー消費性の酵素的反応によって付加させて、酸化タンパク質の細胞による除去を助けることができることを示す[27]。これらの結果は、生物活性におけるDSS1タンパク質の重要な役割を示す。
【0072】
ヒトsDSS1タンパク質の配列は、配列番号1に示される通りである。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1に示される配列と比較して10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の挿入、欠失または置換を含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸以下の置換を含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸の置換を含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸の置換を含み、この置換は、システインがフェニルアラニンで置換されることを意味する。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、非天然アミノ酸を含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の非天然アミノ酸は、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、セレノシステイン、D-アミノ酸、または合成非天然アミノ酸、およびそれらの誘導体を含む。
【0073】
一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0074】
一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片、および配列番号18に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%の配列同一性を有する断片を含む。
【0075】
一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアンと他の機能的ポリペプチドの融合ポリペプチドを含む。一部の特定の実施形態では、機能的ポリペプチドは、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの膜貫通輸送を助長することができる。一部の特定の実施形態では、機能的ポリペプチドは、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの安定性を助長することができる。一部の特定の実施形態では、機能的ポリペプチドは、複合体を形成するためのsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントと標的分子の化合を助長することができる。一部の特定の実施形態では、機能的ポリペプチドは、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントとoxLDLとの化合を助長することができる。一部の特定の実施形態では、機能的ポリペプチドは、血管内皮細胞またはマクロファージによるsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアント oxLDLの取込みを阻害することができる。一部の特定の実施形態では、機能的ポリペプチドは、肝臓組織または肝細胞によるsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアント oxLDLの取込みを助長することができる。
【0076】
一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、1~20アミノ酸に対する化学的修飾を含む。一部の特定の実施形態では、化学的修飾は、アミノもしくはグリコシル化修飾、脂肪酸修飾、アシル化修飾、Fc断片融合、アルブミン融合、ポリエチレングリコール(PEG)修飾、デキストラン修飾、ヘパリン修飾、ポリビニルピロリドン修飾、ポリアミノ酸修飾、ポリシアル酸修飾、キトサンおよびその誘導体修飾、レクチン修飾、アルギン酸ナトリウム修飾、カルボマー修飾、ポリビニルピロリドン修飾、ヒドロキシプロピルメチルセルロース修飾、ヒドロキシプロピルセルロース修飾、アセチル化修飾、ホルミル化修飾、リン酸化修飾、メチル化修飾ならびに/またはスルホン化修飾を含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、N末端にPEG修飾を含む。ポリエチレングリコールの例としては、モノメトキシPEGマレイミド、モノメトキシPEGヨードアセトアミド、またはモノメトキシPEGプロピオンアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、ポリエチレングリコールは、約1Kd~200Kd、約5Kd~200Kd、約5Kd~150Kd、約8Kd~150Kd、約8Kd~100Kd、約10Kd~100Kd、約10Kd~50Kd、約12Kd~50Kd、または約12Kd~40Kdの分子量を有し得る。
【0077】
一部の特定の実施形態では、修飾sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、未修飾sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントと比較して長い半減期を有する。一部の特定の実施形態では、修飾sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、未修飾sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントと比較して高い安定性を有する。一部の特定の実施形態では、修飾sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントは、未修飾sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントと比較して強い、本明細書に記載の生物活性を有する。
【0078】
本明細書で開示されるタンパク質またはポリペプチドを発現する宿主細胞も、本明細書で提供される。宿主細胞は、単個細胞、細胞培養物または細胞株を含む。宿主細胞は、単一宿主細胞の子孫を含む。宿主細胞に、本明細書に記載のベクターを含む異種配列をトランスフェクトすることができる。宿主細胞は、原核性または真核性、例えば、細菌細胞、真菌細胞、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などであり得る。細菌宿主細胞の例としては、Escherichia、Serratia、Bacillus、Brevibacterium、Corynebacterium、Microbacterium、Pseudomonasなどに属する微生物が挙げられる。例えば、細菌宿主細胞としては、Escherichiacoli XL1-Blue、XL2-Blue、DH1、MC1000、KY3276、W1485、JM109、HB101、No.49、i W3110、NY49、G1698、BL21またはTB1を挙げることができるが、これらに限定されない。他の細菌宿主細胞としては、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacterium ammoniagenes、Brevibacterium immariophilum ATCC 14068、Brevibacterium saccharolyticum)ATCC 14066、Brevibacterium flavum)ATCC 14067、Brevibacterium lactofermentum)ATCC 13869、Corynebacterium glutamicum)ATCC 13032、Corynebacterium glutamicum)ATCC 13869、Corynebacterium acetoacidophilum)ATCC 13870、Microbacterium ammoniaphilum)ATCC 15354;Pseudomonas putida、Pseudomonas sp.D-0110などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0079】
酵母宿主細胞としては、Kluyveromyces、Trichosporon、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Schwanniomyces、Pichia、Candidaなどに属する微生物、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Trichosporon pullulans、Schwanniomyces alluvius、Candida utilisなどの微生物を挙げることができる。
【0080】
真核細胞の例としては、哺乳動物細胞などの動物細胞が挙げられる。例えば、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはサル細胞、例えばCOS細胞、HepG2細胞、A549細胞、およびATCCまたは他のCollection Organizationから入手可能な任意の細胞を含むが、これらに限定されない。
【0081】
本開示の宿主細胞を培養で、および培養物を成長させるために使用することができる任意の装置(発酵槽を含む)で、成長させることができる。それらを単層として成長させることができ、または表面に接着させることができる。あるいは、宿主細胞は、浮遊状態で成長することができる。細胞を無血清培地で成長させることができる。培地は、市販の培地、例えば、これに限定されないが、8mM L-グルタミンなどのグルタミンが補充されたOpti-CHO(Invitrogen、カタログ番号12681)であり得る。
【0082】
本開示の宿主細胞は、本明細書に記載のポリペプチドまたはタンパク質の発現を達成するための異種配列を含有し得る。異種配列は、好ましく自己複製核酸分子であるベクターであって、挿入された核酸分子を宿主細胞に移入するおよび/または宿主細胞間で移送するベクターを含み得る。ベクターは、細胞にDNAまたはRNAを挿入する役割を主として果たすベクター、DNAまたはRNA複製の役割を主として果たすベクター複製、ならびにDNAまたはRNA転写および/または翻訳の役割を果たす発現ベクターを含み得る。ベクターは、上述の効果の1つより多くを提供するベクターも含む。発現ベクターは、好適な宿主細胞に導入されたときにポリペプチドに転写および翻訳され得るポリヌクレオチドである。
【0083】
本明細書に記載のタンパク質またはポリペプチドをコードする異種配列を単一または複数のベクターにより発現させることができる。核酸配列を、1つまたは複数のベクターの中に配置された単一のオペロン内にまたは別々のオペロン内に、任意の順序で配列することができる。各々が単一のオペロン内に作動可能に連結された1つまたは複数の異種配列を含有する、2つまたはそれより多くの発現ベクターを、必要に応じて利用することができる。連結されたとは、化学的カップリングまたは組換え手段をはじめとする任意の手段による2つまたはそれより多くの化学的エレメントまたは成分の結合を指す。作動可能に連結されたとは、そのように記載された成分が、それらの所期の様式でそれらが機能することを可能にする関係にある、並置を指す。例えば、プロモーター配列がコード配列の転写を促進する場合、プロモーター配列は、コード配列に連結または作動可能に連結されている。本明細書に記載のベクターは、エピソームとして複製可能であることもあり、宿主細胞ゲノムの一部として存在することもある。
【0084】
本開示の異種配列は、単一の調節エレメントの制御下にあることもある。一部の場合には、異種核酸配列は、単一のプロモーターにより調節される。他の場合には、異種核酸配列は、単一のオペロン内に配置される。さらに他の場合には、異種核酸配列は、単一のリーディングフレーム内に配置される。
【0085】
本明細書に記載の核酸の調製は、様々な従来の組換え技術および合成手順により行うことができる。標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当技術分野において周知であり、Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, (1989) (Maniatis) およびT. J. Silhavy, M. L. Bennan, and L. W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.(1984) およびAusubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience (1987)に記載されている。手短に言えば、本明細書に記載の核酸をゲノムDNA断片、cDNAおよびRNAとして調製することができ、これらの全てを、細胞から直接抽出することができ、またはPCRおよびrtPCRを含むがこれらに限定されない様々な増幅方法によって組換えにより産生することができる。
【0086】
核酸の直接化学合成は、成長ヌクレオチドポリマー鎖の末端5’ヒドロキシル基への3’ブロックおよび5’ブロックヌクレオチドモノマーの逐次的付加を通常は含み、この場合、各付加は、付加されるモノマーの3’位に対する成長鎖の末端5’ヒドロキシル基の求核攻撃によって達成され、付加されるモノマーは、通常は、リン酸トリエステル、ホスホロアミダイトなどのリン誘導体である。この方法は、当業者に公知であり、関連テキストおよび文献(例えば、Matteuci et al., Tet. Lett. 521:719 (1980);Caruthersらが取得した米国特許第4,500,707号;ならびにSouthernらが取得した米国特許第5,436,327号および同第5,700,637号)に記載されている。
【0087】
調節エレメントは、例えば、プロモーターおよびオペレーター遺伝子を含み、これらの遺伝子を、糖タンパク質をコードする1つまたは複数の異種配列の発現を増加させるように操作することもできる。プロモーターは、RNAポリメラーゼによる核酸配列の転写を開始および制御するヌクレオチド配列である。オペレーター遺伝子は、所望の核酸配列の転写を制御するように機能するプロモーターに隣接するヌクレオチド配列である。オペレーター遺伝子は、特異的リプレッサータンパク質を結合することができるタンパク質結合ドメインを含有する。好適なリプレッサータンパク質の非存在下では、転写はプロモーターにより開始される。好適なリプレッサータンパク質の存在下では、リプレッサータンパク質は、オペレーター遺伝子に結合し、それによってプロモーターからの転写を阻害する。
【0088】
本開示の一部の実施形態では、発現ベクターにおいて使用されるプロモーターは、誘導性である。一部の他の実施形態では、発現ベクターにおいて使用されるプロモーターは、構成的である。一部の実施形態では、1つまたは複数の核酸配列は、誘導性プロモーターに作動可能に連結されるが、1つまたは複数の他の核酸配列は、構成的プロモーターに作動可能に連結される。真核生物宿主細胞に好適なプロモーターの非限定的な例としては、CMV最初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期または後期SV40プロモーター、レトロウイルスからのLTR、およびマウスメタロチオネイン-Iプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
一般に、発現ベクター内の遺伝子は、コードされた任意のmRNA遺伝子産物の翻訳(すなわち、合成)を誘導するためのリボソーム結合部位もコードすることになる。発現ベクターにおいて使用することができる他の調節エレメントとしては、転写エンハンサーエレメントおよび転写ターミネーターが挙げられる。例えば、Bitter et al., Methods in Enzymology, 153:516-544 (1987)を参照されたい。
【0090】
発現ベクターは、特定のタイプの宿主細胞に適用可能あることがあるが、他の宿主細胞にはそうでないことがある。しかし、当業者は、特定の発現ベクターが所与の宿主細胞に適用可能であるかどうかを通例の実験によって容易に判定することができる。例えば、発現ベクターを宿主生物に導入することができ、次いでその生存およびベクターに含有されている任意の遺伝子の発現をモニターすることができる。
【0091】
発現ベクターは、発現ベクターを有する宿主細胞の選択にまたはそうでなければ同定に有用な1つまたは複数の表現型形質を付与するように発現される、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子も含むことができる。真核細胞に好適な選択可能なマーカーの非限定的な例としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼおよびネオマイシン耐性が挙げられる。
【0092】
本明細書に記載のベクターを様々な確立された技術によって宿主細胞に安定的にまたは一時的に導入することができる。例えば、方法のうちの1つは、発現ベクターがカルシウム沈殿により導入される、塩化カルシウム処理を含む。リン酸カルシウムなどの他の塩も同様の手順に従って使用することができる。加えて、電気穿孔(すなわち、核酸への細胞の透過性を増加させるための電流の印加)を使用することができる。他の形質転換法としては、マイクロインジェクション、DEAEデキストラン媒介形質転換、および酢酸リチウムの存在下での熱ショックが挙げられる。脂質複合体、リポソームおよびデンドリマーを使用して宿主細胞にトランスフェクトすることもできる。
【0093】
異種配列を宿主細胞に導入した後、様々な方法を実行して、本明細書に記載のベクターが導入された宿主細胞を同定することができる。例示的な選択方法は、単個細胞を継代培養して単一コロニーを形成するステップ、次いで、所望のタンパク質産物の発現を検出するステップを含む。異種配列を含有する宿主細胞の別の選択方法は、発現ベクターに含有されている選択可能なマーカー遺伝子の発現により付与される表現型形質に基づく。当業者は、当技術分野において利用可能なこれらのまたは他の方法を使用して、遺伝子改変された宿主細胞を同定することができる。
【0094】
例えば、宿主細胞への本開示の様々な異種配列の導入を、PCR、サザンブロット法またはノーザンブロット法などの方法により確認することができる。例えば、結果として得られた宿主細胞から核酸を調製することができ、目的の配列に特異的なプライマーを使用してPCRにより目的の特異的配列を増幅することができる。増幅産物は、アガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動され、その後、DNAを検出するために、臭化エチジウム、SYBR Green溶液などで染色されるかまたはUV検出される。あるいは、目的の配列に特異的な核酸プローブをハイブリダイゼーション反応において使用することができる。特異的遺伝子配列の発現は、逆転写連動PCRもしくはノーザンブロットハイブリダイゼーションによって対応するmRNAを検出することにより、またはコードされた遺伝子産物に対して反応性である抗体を使用するイムノアッセイにより、決定することができる。例示的なイムノアッセイとしては、ELISA、ラジオイムノアッセイ、およびサンドイッチイムノアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
加えて、宿主細胞への本開示の様々な異種配列の導入を、異種配列によりコードされた酵素の酵素活性により確認することができる。当技術分野において公知の様々な方法により酵素を判定することができる。一般には、研究している酵素反応の産物の形成、または基質の変換により、酵素活性を判定することができる。この反応は、in vitroで起こることもあり、またはin vivoで起こることもある。
【0096】
一態様では、アテローム性動脈硬化症および/またはアテローム性動脈硬化症関連疾患を処置する方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントをコードする核酸の治療有効量、または核酸を含有するベクターの治療有効量を投与するステップ、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントを発現する細胞を移植するか、またはsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する組織または臓器を移植するステップ、および/または個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する血清、脳脊髄液、リンパ液または間質液を注入するステップを含む方法が、本明細書で提供される。
【0097】
別の態様では、必要な個体における血管による脂質吸収を低減させる方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量、sDSS1タンパク質をまたはその断片もしくはバリアントをコードする核酸の治療有効量、または核酸を含有するベクターの治療有効量を投与するステップ、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントを発現する細胞を移植するか、またはsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する組織または臓器を移植するステップ、および/または個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する血清、脳脊髄液、リンパ液または間質液を注入するステップを含む方法が、本明細書で提供される。
【0098】
別の態様では、必要な個体におけるマクロファージ内への脂質蓄積を低減させる方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量、sDSS1タンパク質をまたはその断片もしくはバリアントをコードする核酸の治療有効量、または核酸を含有するベクターの治療有効量を投与するステップ、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントを発現する細胞を移植するか、またはsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する組織または臓器を移植するステップ、および/または個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する血清、脳脊髄液、リンパ液または間質液を注入するステップを含む方法が、本明細書で提供される。
【0099】
別の態様では、必要な個体における肝細胞内への脂質蓄積を増加させる方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントをコードする核酸の治療有効量、または核酸を含有するベクターの治療有効量を投与するステップ、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントを発現する細胞を移植するか、またはsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する組織または臓器を移植するステップ、および/または個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する血清、脳脊髄液、リンパ液または間質液を注入するステップを含む方法が、本明細書で提供される。
【0100】
別の態様では、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントと脂質との複合体が、本明細書で提供される。
【0101】
別の態様では、必要な個体におけるアテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患の処置のための治療剤をスクリーニングする方法であって、治療剤を、sDSS1タンパク質、sDSS1タンパク質遺伝子、sDSS1遺伝子の調節エレメントおよびsDSS1遺伝子の転写産物と接触させるステップ、およびsDSS1タンパク質の発現に対する治療剤の効果を評価するステップを含む方法が、本明細書で提供される。
【0102】
1955年以降の疫学的データ、前臨床研究および臨床試験データは、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-c)の上昇を特徴とする脂質異常症が、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の重要なリスク因子であること、およびそのような脂質異常症は、心血管疾患の罹患率および死亡率との正の関連性があることを示している。LDLおよび酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)は、ASCVDを有する患者では有意に増加され、心血管事象に関連付けられている[1]。LDLおよびoxLDLレベルを低下させることでASCVDの発生率および死亡リスクを有意に低下させることができる[2~7]。TGの増加または高密度リポタンパク質(HDL)の減少などの、他のタイプの脂質異常症も、ASCVDの発症リスク増加に関連付けられている[8、9]。
【0103】
LDLは、in vivoで活性酸素種(ROS)の作用下で動脈壁の内皮層においてoxLDLを形成する。oxLDLは、血管内皮細胞の異常な活性化、マクロファージの貪食および泡沫細胞の形成に関与することにより、アテローム性動脈硬化症の発生および発症を促進し得る[10~12]。血管内皮細胞が異常に活性化されると、血管内皮細胞の表面により発現されるインテグリンおよび接着分子、ならびに血管内皮細胞により分泌されるケモカインが、明らかに増加される。これらの機能変化によって、循環系における単球は、血管の内膜に接着および遊走するならびマクロファージにさらに分化する可能性がより高くなる。マクロファージは、それらの表面のスカベンジャー受容体によってoxLDLを取り込む。マクロファージ内への脂質蓄積に伴って、マクロファージは、徐々に泡沫細胞に変わり、アポトーシスまたは壊死を遂げる。マクロファージおよび泡沫細胞は、より多くのケモカインをさらに放出して、より多くの単核マクロファージおよび平滑筋細胞を内膜への遊走に動員し、最終的にはアテローム動脈硬化性プラークが形成される[13]。アテローム性動脈硬化症の進行は、細胞によるoxLDLの取込みを低減させ、血管内皮細胞の異常な活性化およびマクロファージによるoxLDLの取込みを阻害することにより、予防することができ、または遅らせることができる[14~16]。
【0104】
したがって、一態様では、本明細書に記載の組成物、方法および/またはポリペプチドは、必要な個体における血管内皮細胞またはマクロファージによる脂質吸収を低減させるために使用することができる。なおさらに、別の態様では、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドとの接触後に血中脂質またはコレステロールの吸収が低減された改変細胞が、本明細書で提供される。一部の特定の実施形態では、細胞は、血管内皮細胞である。一部の特定の実施形態では、細胞は、マクロファージである。一部の特定の実施形態では、改変細胞による血中脂質またはコレステロールの吸収は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドとの接触後に少なくとも5%低減される。一部の特定の実施形態では、改変細胞による血中脂質またはコレステロールの吸収は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドとの接触後に少なくとも10%低減される。一部の特定の実施形態では、改変細胞による血中脂質またはコレステロールの吸収は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドとの接触後に少なくとも20%低減される。一部の特定の実施形態では、改変細胞による血中脂質またはコレステロールの吸収は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドとの接触後に少なくとも30%低減される。一部の特定の実施形態では、改変細胞による血中脂質またはコレステロールの吸収は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドとの接触後に少なくとも40%低減される。一部の特定の実施形態では、改変細胞による血中脂質またはコレステロールの吸収は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドとの接触後に少なくとも50%低減される。一部の特定の実施形態では、改変細胞による血中脂質またはコレステロールの吸収は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドとの接触後に少なくとも100%低減される。
【0105】
oxLDLは、動脈血管壁内でのLDLの酸化修飾から生じ、その産生は、体内の酸化的圧力レベルと正に相関する。oxLDL/LDL比を、患者の脂質酸化レベルを示すための評価指数として使用することができる[17~19]。oxLDLおよびLDLは、それぞれ、スカベンジャー受容体クラスBタイプI(SR-BI)および低密度リポタンパク質受容体(LDLR)によって肝細胞に侵入することができ、そしてその後、代謝によりクリアランスされ得る[20、21]。したがって、体内の脂質酸化レベルを低下させることおよび肝臓細胞からのoxLDLクリアランスを増加させることを、高脂血症によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および処置する方法として使用することができる。本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドは、体内の脂質酸化レベルを低下させることができる。したがって、一態様では、体内の脂質酸化レベルを低下させる方法が、本明細書で提供される。別の態様では、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドは、個体におけるoxLDL/LDL比を低下させることができる。一部の特定の実施形態では、個体におけるoxLDL/LDL比は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドの投与後、処置前と比較して少なくとも10%低下される。一部の特定の実施形態では、個体におけるoxLDL/LDL比は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドの投与後、少なくとも20%低下される。一部の特定の実施形態では、個体におけるoxLDL/LDL比は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドの投与後、少なくとも30%低下される。一部の特定の実施形態では、個体におけるoxLDL/LDL比は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドの投与後、少なくとも40%低下される。一部の特定の実施形態では、個体におけるoxLDL/LDL比は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドの投与後、少なくとも50%低下される。一部の特定の実施形態では、個体におけるoxLDL/LDL比は、本明細書に記載の組成物および/またはポリペプチドの投与後、少なくとも100%低下される。
【0106】
発明では、個体の血管内の循環酸化LDLの量を低減させる方法であって、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの有効量を投与するステップを含み、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントが、遊離酸化LDLと複合体を形成することができる、方法が、本明細書で提供される。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語「遊離(した)」は、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントにより形成される複合体に対してである。例えば、oxLDLを例として挙げると、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントと複合体を形成するように化合していないoxLDLは、本明細書では「遊離」oxLDLと呼ばれる。対照的に、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントと複合体を形成するように化合しているoxLDLは、非遊離、複合体化もしくは化合oxLDLと呼ばれるか、またはタンパク質-oxLDL複合体と呼ばれる。
【0108】
理論により制限されるものではないが、本明細書に記載のポリペプチドは、血液中の遊離脂質分子と複合体を形成することによって、血管組織内への脂質分子の蓄積を阻止することができ、したがって、血管内でのプラーク形成のリスクならびにアテローム性動脈硬化症および関連疾患を発症するリスクを低下させることができると考えられる。したがって、一態様では、循環遊離酸化LDLを血管内にタンパク質-脂質複合体の形態で隔離する方法であって、酸化LDLを血管内でタンパク質に曝露してタンパク質-脂質複合体を形成するステップを含み、タンパク質が、本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントである、方法が、本明細書で提供される。ある態様では、血液中のタンパク質および脂質により形成される複合体であって、タンパク質が本明細書に記載のsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントである、複合体も、本明細書で提供される。
【0109】
したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物、方法および/またはポリペプチドは、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症関連疾患を予防および/または処置するために使用することができる。
【0110】
一部の実施形態では、本明細書に記載のアテローム性動脈硬化症は、脂質ストライプまたはアテロームプラークを形成する動脈毛管壁内への脂質蓄積に起因する動脈血管機能不全である。一部の実施形態では、本明細書に記載のアテローム性動脈硬化症は、血管内でのプラーク形成に起因する、動脈血管運動機能の低下、内腔狭窄およびさらには血栓を含み、それによって、動脈により供給される組織および臓器への血液供給に影響を与え、その結果、組織および臓器の部分的または完全虚血が生じることになる。
【0111】
一部の実施形態では、本明細書に記載のアテローム性動脈硬化症関連疾患は、アテローム性動脈硬化症関連心血管疾患またはアテローム性動脈硬化症関連末梢血管疾患を含む。一部の実施形態では、アテローム性動脈硬化症関連疾患は、血管の内径の狭窄、血管の外径の拡大、血管収縮および拡張の低下、血管の弾性低下、血管の脆弱性増加、血管壁内の石灰化もしくは石灰沈着、血栓により引き起こされる血管の血液供給減少、高血圧、狭心症、心筋梗塞、心筋虚血、不整脈、脳虚血、虚血性脳卒中、脳萎縮、腎不全、腎動脈狭窄、麻痺性イレウスおよび/または肢虚血壊死を含むが、これらに限定されない。
【0112】
用語「脂質」または「コレステロール」は、血液または血管中の循環脂質またはコレステロール含有量に関しては同義的に使用される。コレステロールは、リポタンパク質粒子またはカイロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLDL)、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)などの、遊離またはエステル化コレステロールの1つまたは複数の形態で、血液中に存在する。したがって、本発明に関する限り、脂質またはコレステロールは、コレステロール、コレステロールエステル、トリグリセリド、カイロミクロン(CM)、低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、リポタンパク質(a)(Lp(a))および酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)ならびにこれらのそれぞれの代謝中間体のうちの1つまたは複数を含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の脂質またはコレステロールは、リポタンパク質を指す。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の脂質またはコレステロールは、低密度リポタンパク質(LDL)を指す。一部の特定の実施形態では、本明細書で使用される場合の脂質またはコレステロールは、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)を指す。
【0113】
血液中の総コレステロールの濃度は、消化管からのコレステロールの吸収、炭水化物、タンパク質、脂肪およびエタノールなどの食事成分からのコレステロールの合成、ならびに組織による血液からのコレステロールの、このコレステロールが胆汁酸、ステロイドホルモンおよび胆汁コレステロールに変換された後の除去による影響を受ける。肝臓は、血液からコレステロールを除去するための重要な臓器である。アテローム性動脈硬化症を予防および/または処置する方法は、血液中の循環コレステロールの量を低減させることを含む。肝細胞によるコレステロールのクリアランスは、血液中の循環コレステロール含有量を低減させることによってアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させることができる。したがって、アテローム性動脈硬化症を予防および/または処置するための有効な方法は、肝細胞による脂質の吸収またはクリアランスを改善することを含む。したがって、一態様では、本明細書に記載の組成物、方法および/またはポリペプチドは、必要な個体における肝細胞内への脂質蓄積を増加させる方法において使用することができる。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物、方法および/またはポリペプチドは、肝細胞による血中脂質の吸収を有効に改善することによって、血液中の循環脂質の量を低減させる。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物、方法および/またはポリペプチドは、肝細胞による血液中の循環oxLDLの吸収を有効に改善することによって、血液中の循環oxLDLの量を低減させる。
【0114】
血液中の循環コレステロールの濃度は、遺伝因子および環境因子による影響を受けることもある。遺伝因子としては、コレステロール生合成律速酵素の濃度、肝臓内の低密度リポタンパク質受容体の濃度、コレステロールを胆汁酸に変換するための律速酵素の濃度、リポタンパク質合成および分泌の速度、ならびにヒトの性別が挙げられる。ヒトの体内の血中コレステロール濃度の定常状態に影響を与える環境因子としては、食事の構成、喫煙頻度、身体運動、および様々な薬物の使用が挙げられる。食事変数としては、脂肪(飽和および多価不飽和脂肪酸を含む)の量およびタイプ、コレステロールの量、繊維、ビタミン、例えばビタミンCおよびD、の量およびタイプ、ならびにカルシウムなどの無機物の量が挙げられる。
【0115】
本明細書に記載の方法は、スタチン、フィブラート系薬剤、コレステロール吸収阻害剤、プロブコール、コール酸、キレート剤、ニコチン酸、およびプロタンパク質変換酵素スブチリシン9阻害剤などを含む、脂質低下薬を、個体に投与するステップも含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体に低コレステロール食を投与するステップをさらに含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体に高繊維食を投与するステップをさらに含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体の週間運動量を増加させるステップを含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体の週間運動量を少なくとも10%増加させるステップを含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体の週間運動量を少なくとも20%増加させるステップを含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体の週間運動量を少なくとも30%増加させるステップを含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体の週間運動量を少なくとも40%増加させるステップを含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体の週間運動量を少なくとも50%増加させるステップを含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体の週間運動量を少なくとも100%増加させるステップを含む。
【0116】
一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの治療有効量を投与するステップを含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントの有効量、または核酸を含有するベクターの有効量を投与するステップを含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントを発現する細胞を移植するか、またはsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する組織または臓器を移植するステップを含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体にsDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する血清、脳脊髄液、リンパ液または間質液を注入するステップを含む。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、上記の1つまたは複数を含む。
【0117】
一部の特定の実施形態では、個体は、哺乳動物である。一部の特定の実施形態では、個体は、ヒトである。一部の特定の実施形態では、個体は、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウサギ、ヒツジ、ウマ、雌ウシ、ヤギ、スナネズミ、ハムスター、モルモット、サルまたは任意の他の哺乳動物であり得る。
【0118】
一部の特定の実施形態では、個体は、手術を受ける。一部の特定の実施形態では、個体は、経皮冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス術および/または頸動脈内膜剥離術をはじめとする手術を受ける。
【0119】
本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の活性成分(sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアント;sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントをコードする核酸;核酸を含有するベクター;血清、脳脊髄液、リンパ液および/または間質液を含む、sDSS1タンパク質またはその断片もしくはバリアントまたは核酸を含有する、細胞、組織および/または臓器、などを含む)と、不活性固体希釈剤および充填剤、希釈剤、滅菌水溶液および様々な有機溶媒、浸透促進剤、可溶化剤ならびにアジュバントを含むがこれらに限定されない、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤および担体とを含む。以下は、非限定的な例示的医薬組成物およびその調製を説明するものである。
【0120】
本明細書に記載の組成物は、例えば、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、徐放製剤、溶液もしくは懸濁液のような経口投与に好適な形態、滅菌溶液、懸濁液もしくはエマルジョンのような非経口注射に好適な形態、軟膏もしくはクリームのような局所投与に好適な形態、または座薬のような直腸投与に好適な形態であり得る。医薬組成物は、正確な用量の単回投与に好適な単位剤形であることもある。
【0121】
例示的な非経口剤形としては、滅菌水溶液、例えばプロピレングリコール水溶液、またはデキストロース溶液中の、本明細書に記載の活性成分の溶液または懸濁液が挙げられる。必要に応じて、そのような剤形をヒスチジンおよび/またはリン酸塩などの塩で適切に緩衝することができる。
【0122】
一部の場合には、本明細書に記載の活性成分と注射に好適な医薬品賦形剤とを含有する、注射用の医薬組成物が、本明細書で提供される。組成物の成分および投薬量は、本明細書に記載の通りである。
【0123】
注射投与用の本発明の新規組成物に組み入れることができる剤形は、水性または油性懸濁液またはエマルジョンを含み、これらは、ゴマ油、トウモロコシ油、綿実油またはピーナッツ油、ならびにエリキシル剤、マンニトール、デキストロースまたは滅菌水溶液および同様の医薬担体を含む。
【0124】
食塩水中の水溶液も注射に日常的に使用される。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど(およびこれらの好適な混合物)、シクロデキストリン誘導体および植物油も使用することができる。適切な流動性は、次のように、例えば、分散液の場合は所望の粒径を維持するためにレシチンなどコーティング剤を使用することにより、および界面活性剤の使用により、維持することができる。ヒドロキシ安息香酸塩(phydroxybenzoate)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどのような、様々な抗菌および抗真菌剤を使用して、微生物の作用を防止することができる。
【0125】
無菌注射溶液は、所望の量の本発明の本明細書に記載の活性成分を、上に列挙した様々な他の成分を必要に応じて有する適切な溶媒に添合するステップ、次いで濾過するステップおよび滅菌するステップにより、調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒と上に列挙したものからの他の所望成分とを含有する滅菌担体に、様々な滅菌された活性成分を添合することによって調製される。無菌注射剤溶液の調製のための滅菌粉末の場合、望ましい調製方法の一部は、事前に滅菌濾過された溶液から任意の追加の所望成分を加えた活性成分の粉末を生成する、真空乾燥法および凍結乾燥法である。
【0126】
一部の場合には、本明細書に記載の活性成分と経口投与に好適な医薬品賦形剤とを含有する、経口投与用の医薬組成物が、本明細書で提供される。
【0127】
一部の場合には、(i)本明細書に記載の活性成分の有効量と、必要に応じて(ii)第2の薬剤の有効量と、(iii)経口投与に好適な医薬品賦形剤とを含む、経口投与用の固体医薬組成物が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、組成物は、(iv)第3の薬剤の有効量をさらに含む。
【0128】
一部の場合には、医薬組成物は、経口投与に好適な液体医薬組成物であり得る。経口投与に好適な本明細書に記載の組成物は、粉末もしくは顆粒、水性もしくは非水性液中の溶液もしくは懸濁液、水中油エマルジョンまたは油中水液体エマルジョンのような、活性成分の所定量を各々が含有する別個の剤形、例えば、カプセル、カシェーもしくは錠剤または液体もしくはエアロゾルスプレーで、提供することができる。そのような剤形を任意の製薬方法で調製することができるが、ただし、その方法が、1つまたは複数の必須成分を構成する担体と活性成分を併せるステップを含むことを条件とする。一般に、組成物は、活性成分を液体担体または微粉固体担体または両方と均一かつ緻密に混合するステップ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の提示形態に造形するステップにより調製される。
【0129】
水は一部のポリペプチドの分解を促進することがあるので、本発明は、活性成分を含有する無水医薬組成物および剤形をさらに含む。例えば、製薬分野では、水(例えば、5%)は、製剤の保存可能期間または経時的な安定性などの特性を判定するために長期保管を刺激する手段として添加されることがある。本発明の無水医薬組成物および剤形は、無水または低水分の成分および低水分または低湿度条件を使用することにより調製され得る。水および/または湿った空気との実質的接触が製造、包装および/または保管中に予想される場合、ラクトースを含有する本明細書に記載の組成物および剤形を無水にすることができる。無水医薬組成物を、その無水特性を維持することができるように調製および保管することができる。そのために、水への曝露を防止することが公知の材料を使用して無水組成物を包装することができ、その結果、これらの組成物を好適な処方キットに収容することができる。好適な包装の例としては、密封ホイル、プラスチックまたはこれらに類するもの、単位用量容器、ブリスター包装、およびストリップ包装が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
本明細書に記載の活性成分を従来の医薬配合技術に従って医薬担体と緻密に混合することができる。担体は、投与に望ましい製剤の形態に従って様々な形態をとることができる。経口剤形の組成物の調製では、経口液体製剤(例えば、懸濁液、溶液およびエリキシル)もしくはエアロゾルの場合は水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存薬、着色剤およびこれらに類するものなどの、通常の医薬媒体のいずれかを担体として使用することができ、または経口固体製剤の場合、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤などの担体を使用することができる。一部の実施態様では、ラクトースは、使用されない。例えば、固体経口製剤において、好適な担体は、粉末、カプセルおよび錠剤を含む。必要に応じて、錠剤を標準的な水性法または非水法によりコーティングすることができる。
【0131】
医薬組成物および剤形に好適な接着剤としては、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプンまたは他のデンプン、ゼラチン、天然および合成ゴム、例えばアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガカント末、グァーガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、ならびにこれらに混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0132】
本明細書で開示される医薬組成物および剤形における使用に好適な充填剤の例としては、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、グルコース結合剤、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファー化デンプンおよびこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0133】
水性環境に曝露されたときに崩壊する錠剤を提供するために、崩壊剤を本発明の組成物において使用することができる。過剰な崩壊剤は、瓶の中ですぐに崩壊する錠剤を生じさせることがある。少なすぎる崩壊剤は、崩壊が生じるのに十分でないことがあり、したがって、剤形からの活性成分の放出速度および放出度を変化させることがある。それ故、活性成分の放出を有害に変化させないために少なすぎも多すぎもしない十分な量の崩壊剤を使用して、本明細書で開示される化合物の剤形を形成することができる。使用される崩壊剤の量は、製剤のタイプおよび投与方法に依存して変わることがあるが、当業者はその量を容易に特定することができる。医薬組成物中、約0.5~約15重量%の崩壊剤または約1~約5重量%の崩壊剤を、使用することができる。本明細書に記載の組成物および剤形を形成するために使用することができる崩壊剤としては、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、馬鈴薯もしくはタピオカデンプン、他のデンプン、アルファー化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴム、またはこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0134】
本明細書に記載の組成物および剤形を形成するために使用することができる滑沢剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、またはこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。他の滑沢剤としては、例えば、syloidシリカゲル、合成シリカの凝固エアロゾル、またはこれらの混合物が挙げられる。滑沢剤は、医薬組成物の約1重量%未満の量で必要に応じて添加することができる。
【0135】
水性懸濁液および/またはエリキシルが経口投与に必要とされる場合、その中の活性成分を、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセロールおよびこれらの様々な組合せなどの希釈剤とともに、様々な甘味料または着香剤、発色剤または染料、ならびに(必要に応じて)乳化剤および/または懸濁化剤と併せることができる。
【0136】
錠剤は、コーティングされないこともあり、または胃腸管における崩壊および吸収を遅らせることによって長期間にわたる持続的作用を提供するために公知の技法でコーティングされることもある。例えば、モノステアリン酸グリセロールまたはジステアリン酸グリセロールなどの時間遅延材料を使用することができる。経口投与用の製剤を、活性成分が、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンなどの不活性固体希釈剤と混合されている、硬ゼラチンカプセルとして提供することもでき、または活性成分が、水または油媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油、と混合されている、軟ゼラチンカプセルとして提供することもできる。
【0137】
本明細書に記載の組成物および剤形を形成するために使用することができる界面活性剤としては、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、およびこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。すなわち、親水性界面活性剤の混合物、親油性界面活性剤の混合物、または少なくとも1つの親水性界面活性剤と少なくとも1つの親油性界面活性剤の混合物を使用することができる。
【0138】
低HLB値を有する界面活性剤は、より親油性または疎水性であり、油への高い溶解度を有し、高いHLB値を有する界面活性剤は、より親水性であり、水溶液へのより高い溶解度を有する。親水性界面活性剤は、約10より高いHLB値を有する化合物、およびHLB尺度が一般に適用できないアニオン性、カチオン性または双性イオン性化合物と通常は考えられる。同様に、親油性(すなわち、疎水性)界面活性剤は、約10であるかそれ未満であるHLB値を有する化合物である。しかし、界面活性剤のHLB値は、工業用、医薬品および化粧品エマルジョンの製剤化を補助するために通常は使用される、大まかなガイダンスに過ぎない。
【0139】
親水性界面活性剤は、イオン性であることもあり、または非イオン性であることもある。好適なイオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸、オリゴペプチドおよびポリペプチドの脂肪酸誘導体;アミノ酸、オリゴペプチドおよびポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチンおよび水添レシチン;溶血性レシチンおよび水添溶血性レシチン;リン脂質およびその誘導体;リゾホスファチドおよびその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ドクサートナトリウム;乳酸アシル;モノグリセリドおよびジグリセリドのモノアセチル化酒石酸エステルおよびジアセチル化酒石酸エステル;コハク酸モノグリセリドおよびジグリセリド;モノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル;ならびにこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0140】
上記の群に加えて、イオン性界面活性剤は、例えば、レシチン、リゾホスファチジルコリン、リン脂質、リゾホスファチドおよびこれらの誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ドクサートナトリウム;乳酸アシル;モノグリセリドおよびジグリセリドのモノアセチル化酒石酸エステルおよびジアセチル化酒石酸エステル;コハク酸モノグリセリドおよびジグリセリド;モノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル;ならびにこれらの混合物を含む。
【0141】
イオン性界面活性剤は、レシチン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG-ホスファチジルエタノールアミン、PVP-ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸のラクトイルエステル、ステアロイル-2-乳酸塩、ステアロイル乳酸塩、コハク酸モノグリセリド、モノ/ジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コレリサルコシン、ヘキサン酸塩、オクタン酸塩、デカン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、リシノール酸塩、リノール酸塩、リノレイン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリル硫酸塩、テルアセチル硫酸塩、ドクサート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、ならびにこれらの塩のイオン化形態およびこれらの混合物であり得る。
【0142】
親水性非イオン性界面活性剤としては、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルポリエチレングリコールグリセリド;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル;ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、例えば、ポリエチレングリコールアルキルフェノール;ポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルおよびポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル;ポリエチレングリコールグリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン無水ソルビトール脂肪酸エステル、例えば、ポリエチレングリコール無水ソルビトール脂肪酸エステル;ポリオールとグリセリド、植物油、硬化植物油、脂肪酸およびステロールからなる群の少なくとも1メンバーとの親水性エステル交換反応生成物;ポリオキシエチレンステロールならびにその誘導体および類似体;ポリオキシエチレンビタミンおよびその誘導体;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ならびにこれらの混合物;ポリエチレングリコール無水ソルビトール脂肪酸エステル、ならびにポリオールとトリグリセリド、植物油および硬化植物油からなる群の少なくとも1メンバーとの親水性エステル交換反応生成物を挙げることができるが、それらに限定されない。ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ペンタエリトリトールまたは糖類であり得る。
【0143】
他の親水性非イオン性界面活性剤としては、ラウリン酸PEG-10、ラウリン酸PEG-12、ラウリン酸PEG-20、ラウリン酸PEG-32、ジラウリン酸PEG-32、オレイン酸PEG-12、オレイン酸PEG-15、オレイン酸PEG-20、ジオレイン酸PEG-20、オレイン酸PEG-32、オレイン酸PEG-200、オレイン酸PEG-400、ステアリン酸PEG-15、ジステアリン酸PEG-32、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-100、ジラウリン酸PEG-20、トリオレイン酸PEG-25グリセリル、ジオレイン酸PEG-32、ラウリン酸PEG-20グリセリル、ラウリン酸PEG-30グリセリル、ステアリン酸PEG-20グリセリル、オレイン酸PEG-20グリセリル、オレイン酸PEG-30グリセリル、ラウリン酸PEG-30グリセリル、ラウリン酸PEG-40グリセリル、PEG-40パーム核油、PEG-50硬化ヒマシ油、PEG-40ヒマシ油、PEG-35ヒマシ油、PEG-60ヒマシ油、PEG-40硬化ヒマシ油、PEG-60硬化ヒマシ油、PEG-60トウモロコシ油、デカン酸/オクタン酸PEG-6グリセリル、デカン酸/オクタン酸PEG-8グリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル-10、PEG-30コレステロール、PEG-25フィトステロール、PEG-30ダイズステロール、トリオレイン酸PEG-20、オレイン酸PEG-40無水ソルビタン、ラウリン酸PEG-80無水ソルビタン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE-9ドデシルエーテル、POE-23ドデシルエーテル、POE-10オレイルエーテル、POE-20オレイルエーテル、POE-20ステアリルエーテル、コハク酸トコフェロールPEG-100、PEG-24コレステロール、オレイン酸ポリグリセリル-10、Tween 40、Tween 60、モノステアリン酸スクロース、モノラウリン酸スクロース、モノパルミチン酸スクロース、PEG10-100ノニルフェノール系、PEG15-100オクチルフェノール系およびポロキサマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
好適な親油性界面活性剤としては、例えば、脂肪アルコール;グリセリン脂肪酸エステル;アセチル化グリセリン脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ステロールおよびステロール誘導体;ポリオキシエチレン化ステロールおよびステロール誘導体;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;糖エステル;糖エーテル;モノグリセリドおよびジグリセリドの乳酸誘導体;ポリオールとグリセリド、植物油、硬化植物油、脂肪酸およびステロールからなる群の少なくとも1メンバーとの疎水性エステル交換反応生成物;油溶性ビタミン/ビタミン誘導体;ならびにこれらの混合物が挙げられる。この群の中で好ましい親油性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびその混合物、またはポリオールと植物油、硬化植物油およびトリグリセリドからなる群の少なくとも1メンバーとの疎水性エステル交換反応生成物が挙げられる。
【0145】
一実施形態では、組成物は、本開示の化合物の良好な溶解状態および/または溶解を確実にするために、ならびに本開示の化合物の沈殿を最小限に抑えるために、可溶化剤を含むことができる。これは、非経口組成物(例えば、注射用組成物)にとって特に重要であり得る。親水性薬物および/もしくは他の成分、例えば界面活性剤、の溶解度を増加させるために、または安定したもしくは均一な溶液もしくは分散液として存在するように組成物を維持するために、可溶化剤を添加することもできる。
【0146】
好適な可溶化剤の例としては、次の物質が挙げられるが、これらに限定されない:アルコールおよびポリオール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびその異性体、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体;約200~約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール)またはメトキシPEGエーテル;アミドおよび他の窒素含有化合物、例えば、2-ピロリジン、2-ピペリドン、ε-カプロラクタム、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、N-アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミドおよびポリビニルピロリドン;エステル、例えば、プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、オクタン酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、一酢酸プロピレングリコール、二酢酸プロピレングリコール、ε-カプロラクトンおよびその異性体、δ-バレロラクトンおよびその異性体、β-ブチロラクトンおよびその異性体;ならびに当技術分野において公知の他の可溶化剤、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビトール、N-メチルピロリドン、モノオクタノイン(monoocatanoin)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルならびに水。
【0147】
可溶化剤の混合物を使用することもできる。例としては、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、オクタン酸エチル、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200-100、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコールおよびジメチルイソソルビトールが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい可溶化剤としては、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エタノール、PEG-400、グリコフロールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0148】
含有され得る可溶化剤の量は、特に限定されない。可溶化剤の所与の量は、当業者が容易に決定することができる、生物学的に許容される量として限定されることもある。一部の場合には、生物学に許容される量をはるかに上回る可溶化剤の量を、例えば、薬物の濃度を最大にするために、含めることが有利である可能性があり、過剰な可溶化剤は、組成物を対象に提供する前に蒸留または蒸発などの従来の技法を使用して除去される。したがって、存在する場合、可溶化剤は、薬物と他の賦形剤を併せた重量に基づいて(重量で)10%、25%、50%、100%であり得るかまたは最大約200%であり得る。必要に応じて、非常に少量、例えば、5%、2%、1%またはさらに少量の可溶化剤が使用されることもある。一般に、可溶化剤は、約1%~約100%、より典型的には約5%~約25%(重量で)の量で存在し得る。
【0149】
組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤および賦形剤をさらに含むことができる。そのような添加剤および賦形剤としては、粘着防止剤、消泡剤、緩衝剤、ポリマー、抗酸化剤、保存薬、キレート剤、粘度調整剤、等張化剤、着香剤、着色剤、着香剤、日焼け防止剤、懸濁化剤、接着剤、充填剤、可塑剤、滑沢剤およびこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0150】
加えて、適便な処理および安定性の強化または他の理由のために、酸または塩基を組成物に混ぜ込むことができる。薬学的に許容される塩基の例としては、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト(hydrocalcite)、水酸化アルミニウムマグネシウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)およびこれらに類するものが挙げられる。酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノンスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、メルカプト酢酸、トルエンスルホン酸、尿酸などのような薬学的に許容される酸の塩も、好適である。リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムなどの、多塩基酸の塩も、使用することができる。塩基が塩である場合、カチオンは、任意の好適な薬学的に許容されるカチオン、例えば、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などであり得る。例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウムおよびアンモニウムを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0151】
好適な酸は、薬学的に許容される有機または無機酸である。好適な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸およびこれらに類するものが挙げられる。好適な有機酸の例としては、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノンスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、メルカプト酢酸、トルエンスルホン酸、尿酸およびこれらに類するものが挙げられる。
【0152】
一部の特定の実施形態では、本開示の組成物および/またはタンパク質を別の活性物質と組み合わせて投与することができる。用語「組み合わせて投与」は、投与されたプログラムの全てが、ある特定の時間間隔内に最小(許容限度)量で個体の体内または個体の身体の作用部位に存在するように、1または複数の時間間隔で1つまたは複数の投薬量を投与することを指す。例えば、時間間隔は、任意の好適な時間間隔、例えば、分、時間、日または週の適切な時間間隔であり得る。例えば、投与されるプログラムは、一緒に、例えば単一組成物の一部として投与することができ、または追加的に投与することができる。投与されるプログラムは、基本的に同時に投与することができ、例えば、互いの間の時間間隔は、約5分、約3分もしくは約1分であるかもしくはそれ未満であり、または互いの時間間隔の短い時間内であり、例えば、互いの時間間隔は、約1時間、30分もしくは10分であるかもしくはそれ未満であり、または約5分を超えて最大でも約1時間までである。このような投与されるプログラムは、基本的に同時に投与されると見なすことができる。当業者は、投与されたプログラムが最小レベルより高いレベルでおよび/または有効な濃度で個体の体内に存在するように投与されるプログラムを個体の体内に投与するために必要とされる好適な投薬量および時間間隔を、決定することができる。投与されるプログラムが個体の身体に同時に投与される場合、いずれのそのような投与されるプログラムも、単独で投与されるときにおそらく使用される有効量未満である有効量であり得る。本明細書中でさらに説明される用語「有効量」は、このより低い有効量および一般的な有効量を含み、実際は、特別な状態、効果および/または応答を生じさせることができる任意の有効量である。したがって、プログラムを同時に投与するためのいずれのそのような投薬量も、単独で投与されるときにおそらく使用される投薬量未満であり得る。そのような任意の投与されるプログラムの1つまたは複数の効果は、重複することもあり、または相乗的であることもある。そのような任意の投与されるプログラムを1回より多く投与することができる。
【0153】
一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物および/またはタンパク質は、別の活性物質と組み合わせて投与される。一部の特定の実施形態では、活性物質は、脂質低下薬である。一部の特定の実施形態では、活性物質は、降圧薬である。一部の特定の実施形態では、活性物質は、凝固剤である。
【0154】
活性化剤についての用語「有効量」は、特別な生物学的状態、効果および/または応答を生じさせるのに十分な活性化剤の量である。例えば、特別な薬剤の有効絶対量は、このように、要求される生物学的エンドポイント、薬剤自体、対象または他の目標部分および/または同様の因子などの、様々な因子に依存して変わる。活性化剤の有効量を単一投薬量またはより多数の投薬量で投与することができる。活性化剤の有効量により生じる生物学的状態、効果および/または応答の例としては、例えば、アテローム性動脈硬化症およびその関連疾患のリスクおよび/または重症度の低下、肝臓組織または肝臓細胞によるリポタンパク質などの脂質の吸収の改善、血管内皮細胞またはマクロファージなどの血管によるリポタンパク質などの脂質の吸収の低減、循環遊離脂質の含有量の低減、oxLDLなどの循環遊離低密度リポタンパク質の比率の低下などが挙げられる。成分は、有効量を少なくとも有すると、または本明細書に記載の任意の目標もしくは目的などの、特別な目標もしくは目的に関連する有効量を少なくとも有すると、本明細書に記載されることがある。
【実施例
【0155】
以下の内容は、実施例と組み合わせて本開示の好ましい実施形態を例証および検証するものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。本開示の範囲の全ては、特許請求の範囲の定義に基づく。
【0156】
以下の実施例で使用する実験方法は、別段の特記がない限り、全て従来の実験方法である。
【0157】
以下の実施例で使用するsDSS1タンパク質を、当社自体が生成し、品質管理する。検出時に、タンパク質の純度は95%より高く、エンドトキシン(エンドトキシンの含有量は、3EU/mgタンパク質未満である)および他の不純残留物は、基準を満たす。sDSS1タンパク質は、明らかな動物の中毒反応を引き起こすことなく動物実験に使用することができる。
【0158】
sDSS1タンパク質を除いて、以下の実施例で使用する材料および試薬は、全て市販のものである。
【0159】
(実施例1)
sDSS1タンパク質とoxLDLまたはLDLの相互作用
1.1 実験材料および方法
実験材料:sDSS1タンパク質、sDSS1突然変異型タンパク質1(sDSS1-M1、配列番号15)、sDSS1突然変異型タンパク質2(sDSS1-M2、配列番号16)、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)(Solarbio、商品番号H7980);低密度リポタンパク質(LDL)(Solarbio、商品番号H7960)。
【0160】
実験方法:2μgのoxLDLまたはLDLを、1.5ml EP管内で、20mM酢酸ナトリウム/酢酸緩衝剤(pH4.5)または20mMリン酸緩衝剤(pH7.2)の存在下、6μgのsDSS1タンパク質または10μgのsDSS1タンパク質とそれぞれ混合し、37℃で12時間、インキュベートした。インキュベートした生成物に負荷緩衝剤を添加し、まんべんなく混合し、得られた混合物を100℃で10分間変性させて負荷試料を調製した。得られた試料をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による電気泳動分離に付した。分離後、SDS-PAGEゲルをクーマシーブリリアントブルーで染色してタンパク質のストリップを表示した。sDSS1-M1またはsDSS1-M2タンパク質をoxLDLとそれぞれ混合してインキュベートし、同じ方法で処理した。15μLの試料をSDS-PAGE電気泳動分離に使用した。
【0161】
1.2 実験結果
酢酸緩衝系(pH4.5)では、染色されたSDS-PAGEゲルから、LDLタンパク質およびoxLDLタンパク質が約70kDに位置し(L1、L2)、sDSS1タンパク質が約15kDに位置する(L3、L6)ことが判明した。LDLまたはoxLDLをsDSS1と混合してインキュベートした後、LDLまたはoxLDLは、sDSS1タンパク質と相互作用した(L4およびL7は、LDLとsDSS1タンパク質に対応し、L5およびL8は、oxLDLとsDSS1タンパク質に対応した)。SDS-PAGEゲル上で、反応系中のoxLDLタンパク質またはLDLタンパク質のストリップは、sDSS1タンパク質との反応後、より薄くなり;反応系中のsDSS1タンパク質の濃度の増加に伴って、LDLまたはoxLDLとsDSS1タンパク質によってより多くの複合体が形成され、分散ストリップがより濃くなった(L4対L7;L5対L8)(図1A)。
【0162】
リン酸緩衝系(pH7.2)では、染色されたSDS-PAGEゲルから、LDLタンパク質およびoxLDLタンパク質が約70kDに位置し(L1、L2)、sDSS1タンパク質が約15kDに位置する(L3、L6)ことが判明した。LDLまたはoxLDLをsDSS1と混合してインキュベートした後、LDLまたはoxLDLは、sDSS1タンパク質と相互作用した(L4およびL7は、LDLとsDSS1タンパク質に対応し、L5およびL8は、oxLDLとsDSS1タンパク質に対応した)。SDS-PAGEゲル上で、反応系中のoxLDLタンパク質またはLDLタンパク質のストリップは、sDSS1タンパク質との反応後、有意に、より薄くなり;反応系中のsDSS1タンパク質の濃度の増加に伴って、LDLまたはoxLDLとsDSS1タンパク質によってより多くの複合体が形成され、分散ストリップがより濃くなった(L4対L7;L5対L8)(図1B)。
【0163】
これらの結果は、sDSS1タンパク質がoxLDLまたはLDLと相互作用して、SDS-PAGEにより分離することができない複合体を形成することができることを示す。
【0164】
その一方で、sDSS1タンパク質の突然変異体、すなわち、sDSS1-M1タンパク質またはsDSS-M2タンパク質を、oxLDLとともにインキュベートしたとき、突然変異型タンパク質とoxLDLにより形成された複合体が高分子量エリアにおいて分散ストリップを示すこと、分散ストリップが、突然変異型タンパク質の含有量の増加に伴ってより濃くなること、および突然変異型タンパク質のストリップが有意に、より薄くなることも分かった(図1C図1D)。これらの結果は、sDSS1-M1およびsDSS1-M2タンパク質がoxLDLとも相互作用して、SDS-PAGEにより分離することができない複合体を形成することができることを示す。
【0165】
(実施例2)
sDSS1タンパク質は、血管内皮細胞によるoxLDLの取込みを低減させる。
2.1 実験材料および方法
実験材料:sDSS1タンパク質、DiL-oxLDL(Thermo Fisher technology、商品番号L34358)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(PromoCell、商品番号C-12200)。
【0166】
実験方法:HUVEC細胞を6ウェルプレートに1ウェル当たり300000細胞で接種した。24時間の接着後、1.5ml 10μg/ml DiL-oxLDLを添加したか、または1.5ml 10μg/ml DiL-oxLDLを2μg/ml、5μg/ml、10μg/mlもしくは20μg/mlのsDSS1タンパク質と一緒に添加した。インキュベーターでの5時間のインキュベーション後、細胞内の蛍光シグナルを蛍光顕微鏡により観察した。フローサイトメトリーによって蛍光強度を検出するために、細胞を単個細胞になるようにトリプシンで消化した。
【0167】
2.2 実験結果
DiL-oxLDLをHUVEC細胞培養溶液に添加して5時間インキュベートしたとき、蛍光顕微鏡下でHUVEC細胞内の明らかな蛍光が観察され、食胞が蛍光マトリックス中で発生した。さらに、sDSS1タンパク質を添加した後、細胞内の蛍光強度の低下、および細胞内の蛍光を有する食胞の数の減少が、観察された。この現象は、用量依存性である。高濃度群では、細胞内の蛍光は弱かった(図6A)。細胞の蛍光強度をフローサイトメトリーにより検出し、フローサイトメトリーは、2μg/mlまたは10μg/mlのsDSS1タンパク質を添加したときにHUVEC細胞内の蛍光が有意に弱められたことを示した(図6B)。統計結果も、sDSS1タンパク質が、HUVEC細胞内の蛍光値を有意に低下させたこと、およびこの効果が用量依存性であったことを示した。これは、sDSS1タンパク質が細胞内へのoxLDLの取込みを減少させることを示唆している。2μg/mlのsDSS1タンパク質を培養溶液に添加した後、細胞によるoxLDLの取込みは半減された。これらの結果は、sDSS1タンパク質がHUVEC細胞によるoxLDLタンパク質の取込みを低減させることができることを示す。
【0168】
(実施例3)
sDSS1タンパク質は、マクロファージによるoxLDLの貪食を阻害する。
3.1 実験材料および方法
実験材料:sDSS1タンパク質、DiL-oxLDL、ホルボールエステル(PMA、Sigma Aldrich、商品番号P1585)、ヒト単球THP-1(Cell Bank of Typical Culture Preservation Committee of Chinese Academy of Sciences、カタログ番号SCSP-567)。
【0169】
実験方法:THP-1細胞を6ウェルプレートに1ウェル当たり250000細胞で接種し、培養溶液は、100ng/mL PMAを含有した。PMAにより48時間活性化した後、細胞を新鮮培養培地で4日間培養して細胞接着を助長した。古い培養培地は廃棄した。1.5ml 10μg/ml DiL-oxLDLを添加したか、または1.5ml 10μg/ml DiL-oxLDLを2μg/ml、5μg/ml、10μg/mlもしくは20μg/mlのsDSS1タンパク質と一緒に添加した。インキュベーターでの5時間のインキュベーション後、細胞内の蛍光シグナルを蛍光顕微鏡により観察した。フローサイトメトリーによって蛍光強度を検出するために、細胞を単個細胞になるようにトリプシンにより消化した。
【0170】
3.2 実験結果
DiL-oxLDLをマクロファージに5時間にわたって添加した後、細胞内で蛍光が検出された。対照群における結果は、明らかな蛍光をマクロファージにおいて観察することができ、この蛍光が様々な食胞に見られることを示し、このことは、マクロファージによるoxLDLの取込みを示す。しかし、sDSS1タンパク質を培養溶液に添加した後、細胞内で蛍光は観察されなかったか、または蛍光が非常に弱かった(図3A)。細胞における蛍光値をフローサイトメトリーにより検出した。図に示すように、蛍光を有する細胞は、対照群では検出されたが、2μg/mlまたは10μg/mlのsDSS1タンパク質を添加した後、蛍光を有する細胞は検出されなかった(図3B)。これらの結果は、sDSS1タンパク質がマクロファージによるoxLDLタンパク質の取込みを阻害することができることを示唆している。
【0171】
(実施例4)
sDSS1タンパク質は、肝細胞によるoxLDLの貪食を促進するが、LDLの貪食に影響を与えない。
4.1 実験材料および方法
材料:sDSS1タンパク質、DiL-oxLDL、DiL-LDL(ThermoFisher、L3482)、ヒトヘパトーマ細胞Hep G2(Cell Bank of Typical Culture Preservation Committee of Chinese Academy of Sciences、カタログ番号SCSP-510)。
【0172】
実験方法:(1)Hep G2細胞によるoxLDLの貪食を検出する際、Hep G2細胞を6ウェルプレートに1ウェル当たり250000細胞で接種した。12時間後、全ての細胞が接着していた。古い培養培地を廃棄した。1.5ml 10μg/ml DiL-oxLDLを添加したか、または1.5ml 10μg/ml DiL-oxLDLを5μg/mlおよび50μg/mlのsDSS1タンパク質と一緒に添加した。インキュベーターでの9時間のインキュベーション後、細胞内の蛍光シグナルを蛍光顕微鏡により観察した。フローサイトメトリーによって蛍光強度を検出するために、細胞を単個細胞になるようにトリプシンにより消化した。(2)Hep G2細胞によるLDLの貪食を検出する際、Hep G2細胞を6ウェルプレートに1ウェル当たり250000細胞で接種した。12時間後、全ての細胞は接着していた。古い培養培地を廃棄した。1.5ml 10μg/ml DiL-LDLを添加したか、または1.5ml 10μg/ml DiL-LDLを5μg/mlおよび50μg/mlのsDSS1タンパク質と一緒に添加した。インキュベーターでの10時間のインキュベーション後、細胞内の蛍光シグナルを蛍光顕微鏡により観察した。フローサイトメトリーによって蛍光強度を検出するために、細胞を単個細胞になるようにトリプシンにより消化した。
【0173】
4.2 実験結果
DiL-oxLDLをHep G2細胞に9時間にわたって添加した後、蛍光顕微鏡により細胞内で蛍光が検出された。結果は、明らかな蛍光が、対照群と実験群の両方からの細胞において観察され、この蛍光が様々な食胞に見られることを示し、これは、Hep G2細胞によるoxLDLの取込みを示す(図4A)。細胞における蛍光値をフローサイトメトリーにより検出した。図に示すように、Dil蛍光シグナルを対照群からのHepG2細胞内で検出することができ、培養溶液への5μg/ml sDSS1の添加は、細胞内の蛍光レベルに有意な影響を与えないが、50μg/mlのsDSS1タンパク質は、細胞内のDiLシグナル強度を有意に増加させることができる(図4B)。フローサイトメトリーからの検出結果を要約すれば、50μg/ml sDSS1タンパク質を培養溶液に添加した後、oxLDLを吸収するHep G2細胞の能力は、対照群と比較して27%増加された(図4C)。これらの結果は、sDSS1タンパク質が、oxLDLタンパク質を吸収するヒト肝細胞の能力を強化することができることを示唆している。
【0174】
Dil-LDLをHepG2細胞培養物に10時間にわたって添加したとき、蛍光色素が細胞内に見られ、小胞内に分布していることが観察された。DiL-LDLを単独で添加した群と比較して、5μg/mlまたは50μg/ml sDSS1タンパク質を添加した後、Hep G2細胞がDiL-LDLを取り込む量は、有意に変更されなかった(図5A)。フローサイトメトリーによる細胞分析結果は、異なる濃度のsDSS1タンパク質を添加した後、細胞内の蛍光強度が基本的に一定していることを示し(図5B)、これは、sDSS1タンパク質にはヒト肝細胞によるLDLの取込みに対して有意な効果がないことを示唆している。
【0175】
これらの結果は、sDSS1タンパク質が、ヒト肝細胞によるoxLDLの取込みを増加させるが、肝細胞によるLDLの取込みに有意な影響を与えないことを示唆している。
【0176】
(実施例5)
sDSS1タンパク質の投与は、ApoE-/-マウスの血漿中のoxLDLレベルおよびoxLDL/LDL比を低下させる。
5.1 実験材料および方法
実験動物:ApoE-/-マウス、8~10週齢、オスを、Nanjing Biomedical Research Institute of Nanjing Universityから購入した。実験の前に1週間、動物を飼育室で飼育した。
【0177】
実験材料:sDSS1タンパク質、oxLDL ELISAキット(Wuhan Elabscience Biotechnology Co.,Ltd.、商品番号E-EL-M0066c)、LDL ELISAキット(Wuhan Elabscience Biotechnology Co.,Ltd.、商品番号E-EL-M1363c)
【0178】
実験方法:ApoE-/-マウスを、対照群とsDSS1タンパク質群という2群に無作為に分けた。7日間、200μLの生理食塩水を対照群に1日1回腹腔内注射し、10mg/kgのsDSS1タンパク質をsDSS1タンパク質群に1日1回腹腔内注射した。7日の投与後、マウスの血液を採取し、血漿を抗凝固薬としてのEDTA-Naで分離した。血漿中oxLDLレベルを、oxLDL ELISAキットを使用することにより測定し、血漿中LDLレベルをLDL ELISAキットにより測定した。
【0179】
100μLのoxLDL標準物質または試料を各ウェルに添加し、90分間、37℃でインキュベートし;ウェル内の液体を廃棄し、100μLのビオチン化oxLDL抗体作業液を添加し、37℃で60分間インキュベートし;3回洗浄し;100μLの酵素結合作業溶液を添加し、37℃で30分間インキュベートし;5回洗浄し;90μLの基質溶液を添加し、37℃で15分間インキュベートし;50μLの停止溶液を添加し、直ちに450nmの波長でOD値を測定し、標準品で標準曲線を確立し、各試料のoxLDLレベルを標準曲線に従って算出した。
【0180】
100μLのLDL標準物質または試料を各ウェルに添加し、90分間、37℃でインキュベートし;ウェル内の液体を廃棄し、100μLのビオチン化LDL抗体作業液を添加し、37℃で60分間インキュベートし;3回洗浄し;100μLの酵素結合作業液を添加し、37℃で30分間インキュベートし;5回洗浄し;90μLの基質溶液を添加し、37℃で15分間インキュベートし;50μLの停止溶液を添加し、直ちに450nmの波長でOD値を測定し、標準品を使用することにより標準曲線を確立し、各試料のLDLレベルを標準曲線に従って算出した。
oxLDL/LDL比=oxLDL濃度(ng/ml)÷LDL濃度(ng/ml)
【0181】
5.2 実験結果
ApoE-/-マウスに、7日間、sDSS1タンパク質を10mg/kgで腹腔内注射し、次いで血漿中LDLおよびoxLDLレベルをそれぞれ検出した。結果は、sDSS1タンパク質を投与したマウスの血漿中LDLレベルが正常レベルのままであり、対照マウスのものと有意な差がないことを示す(図6A)。しかし、sDSS1タンパク質の注射は、マウスにおける血漿中oxLDL含有量を有意に低減させることができ、阻害効果は、陽性対照であるATVのものと同様である(図6B)。さらなる分析から、sDSS1タンパク質を注射したマウスにおける血漿中oxLDL/LDL比もまた対照マウスのものより有意に低く、陽性対照であるATVの効果と基本的に一致する(図6C)。結論として、sDSS1タンパク質は、マウスの血漿中oxLDLレベルを低下させることができるが、血漿中LDLレベルには影響を与えず、最終的に、血漿中oxLDL/LDL比の低下をもたらす。
【0182】
(実施例6)
sDSS1タンパク質は、ApoE-/-マウスにおいてアテローム動脈硬化性プラークの形成を阻害する。
6.1 実験材料および方法
実験動物:ApoE-/-マウス、8週齢、オスを、Nanjing Biomedical Research Institute of Nanjing Universityから購入した。実験の前に1週間、実験動物を飼育室で飼育した。
【0183】
材料:sDSS1タンパク質、アトルバスタチン(ATV)。
【0184】
実験方法:ApoE-/-マウスに、9週齢から開始して、0.25%コレステロールを含有する高脂肪食を給餌した。高脂肪食給餌10週目から、マウスを総コレステロールレベルに従って3群に、群ごとにマウス10匹ずつで、ランダムに分けた。200μLの生理食塩水をモデル群に1日1回、腹腔内注射し、40mg/kgのATVを陽性薬物群に1日1回、経口投与し、3mg/kgのsDSS1タンパク質をsDSS1群に1日1回腹腔内注射した。高脂肪食給餌22週目、すなわち、投与13週目に、動物を屠殺し、切開し、全大動脈を分離した。分離した大動脈をen faceオイルレッドOで染色してアテローム動脈硬化性プラークの形成を評価した。
【0185】
6.2 実験結果:
en face染色の結果は、モデル群では、明らかなアテローム動脈硬化性プラークがマウスの全大動脈において発生し、これがオイルレッドОにより赤く染色され、その一方で、プラークの無い部分は染色されず、透明であったことを示す。陽性薬物群では、マウスにおけるアテローム動脈硬化性プラークの面積は、モデル群マウスのものと比較して有意に低減され、sDSS1タンパク質群のマウスにおけるアテローム動脈硬化性プラークの面積は、モデル群マウスにおけるものと比較して有意に低減される(図7A)。オイルレッドOで染色された面積および全大動脈面積を、Image Pro Plusを使用することにより測定し、比を算出した。ANOVA分析は、陽性薬物群およびsDSS1タンパク質群のプラーク面積比が、モデル群のものより有意に小さい(**P<0.01)が、陽性薬物群とsDSS1タンパク質群の間にプラーク面積比の有意な差が無いことを示す。これらの結果は、sDSS1タンパク質が、ApoE-/-マウスにおいてアテローム動脈硬化性プラークの形成を有意に阻害することができること、およびアテローム性動脈硬化症の進行を減速させることができること示唆している。
【0186】
参考文献:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0187】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
【配列表】
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