(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】燃料電池駆動式高圧ポンプ、および作業車
(51)【国際特許分類】
F04B 37/12 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F04B37/12
(21)【出願番号】P 2022023959
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】中川 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】石倉 新
(72)【発明者】
【氏名】三辺 征夫
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0027253(US,A1)
【文献】特開2020-043662(JP,A)
【文献】特開2020-087673(JP,A)
【文献】特開平07-264715(JP,A)
【文献】特開平08-130805(JP,A)
【文献】特表2008-501523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/12
B08B 3/02
B08B 5/02
H01M 8/04
H01M 8/0656
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素によって直流電流を生成する燃料電池と、
前記燃料電池によって駆動し、高圧水を生成する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプに接続され、高圧水を噴射するノズルと、
前記高圧ポンプと排水路を介して接続される発電機であって、前記高圧ポンプによって生成される高圧水を用いて電力を生成する発電機と、
を有する、燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項2】
前記高圧ポンプと排水路を介して接続される水素生成装置であって、前記高圧ポンプによって生成される高圧水を用いて水素を生成する水素生成装置を更に有する、
請求項1に記載の燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項3】
水素によって直流電流を生成する燃料電池と、
前記燃料電池によって駆動し、高圧水を生成する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプに接続され、高圧水を噴射するノズルと、
前記高圧ポンプと排水路を介して接続される水素生成装置であって、前記高圧ポンプによって生成される高圧水を用いて水素を生成する水素生成装置と、
を有する、燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項4】
前記燃料電池の電流供給時間に対して、前記燃料電池の電流供給時間終了前または電流非供給時間に、補充直流電流を供給する蓄電池を更に有する、
請求項1
~3のいずれかに記載の燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項5】
前記燃料電池に接続される直流用配線と、
前記蓄電池に接続される補充直流電流用配線と、
前記直流用配線と前記補充直流電流用配線の接続と非接続を切り換える開閉器と、
を更に有する、請求項
4に記載の燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項6】
前記燃料電池は、第1の燃料電池と、第2の燃料電池を有する、
請求項1
~3のいずれかに記載の燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項7】
前記第1の燃料電池に接続される直流用配線と、
前記第2の燃料電池と前記直流用配線とを接続する交互電流用配線と、
を更に有する、請求項
6に記載の燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項8】
前記燃料電池によって生成された直流電流を交流電流に変換するコンバータを更に有する、
請求項1~
7のいずれかに記載の燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項9】
前記コンバータと接続され、前記交流電流を周波数信号に変換するインバータを更に有する、
請求項
8に記載の燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項10】
前記インバータで変換される周波数信号を回転数に変換するモータであって、モータ用回転軸を有するモータと、
前記高圧ポンプに固定される高圧ポンプ用回転軸と、
前記モータ用回転軸と前記高圧ポンプ用回転軸とを連結するベルトと、
を更に有する、請求項
9に記載の燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項11】
前記燃料電池によって生成された直流電流の通過と非通過を切り換える遮断器を更に有する、
請求項1~
10のいずれかに記載の燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項12】
前記燃料電池のON/OFF
を切り替える操作部を更に有する、
請求項1~
11のいずれかに記載の燃料電池駆動式高圧ポンプ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の燃料電池駆動式高圧ポンプを有する、作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を駆動源とする高圧ポンプ、および作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンクの底面や溶接線部、高速道路・棟梁等の構造部、道路の白線、ビルや住宅に対して、100~245MPaに加圧した高圧水を利用し、洗浄、塗装剥離、はつり等を行っている。このような屋外での作業を行う際、高圧ポンプの動力源として、エンジンが用いることが一般的である。
【0003】
例えば、特許第4515779号公報に開示される高圧ポンプのエンジンは、Vベルト、タイミングベルト、ギア、カップリング等の伝達機構を介して高圧プランジャポンプを駆動する。そして、エンジンは、エンジン制御部の制御に基づいて、回転速度を増減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエンジン駆動式の高圧ポンプは、騒音や油等の廃棄物等の環境負荷が大きい。
【0005】
本発明は、騒音や油等の廃棄物の環境負荷を削減できる高圧ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点は、
水素によって直流電流を生成する燃料電池と、
前記燃料電池によって駆動し、高圧水を生成する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプに接続され、高圧水を噴射するノズルと、
を有する、燃料電池駆動式高圧ポンプである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の燃料電池駆動式高圧ポンプ、および作業車によれば、騒音や油等の廃棄物の環境負荷を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1の燃料電池駆動式高圧ポンプの構成図
【
図2】実施形態1の燃料電池駆動式高圧ポンプの出力波形を示す波形図
【
図3】実施形態2の燃料電池駆動式高圧ポンプの構成図
【
図4】燃料電池駆動式高圧ポンプを有する作業車の構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態1>
実施形態1の燃料電池駆動式高圧ポンプについて、適宜図面を参照しながら説明する。
本実施形態の燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、タンクの底面や溶接線部、高速道路・棟梁等の構造部、道路の白線、ビルや住宅に対して、100~245MPaに加圧した高圧水を利用し、洗浄、塗装剥離、はつり等を行う。
図1に示すように、燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、燃料電池2と、高圧ポンプ3と、蓄電池4と、コンバータ5と、インバータ6と、モータMと、を有する。
燃料電池2、蓄電池4、コンバータ5、インバータ6、モータMは、各種配線や供給路W1~7で接続され、順に配置される。
【0010】
水素ボンベHは、水素供給路W1に水素を供給する。燃料電池2は、水素供給路W1から供給される水素を取込む。燃料電池2は、正極と負極を有する。水素は、負極で水素イオンと電子に分離される。水素イオンが電解質を通過して正極に移動するとともに、電子が回路を通過して正極に移動する。これにより、電流が発生する。
燃料電池2は、例えば、市販の車載用や産業用の燃料電池である。
燃料電池2は、吸気口2aと排気口2bとを有する。燃料電池2は、吸気口2aから空気を吸気する。また、燃料電池2は、直流電流(DC電流)の発生によって出てくる水等を排気口2bから排気する。
【0011】
高圧ポンプ3には、給水タンク3aと、ノズル3bとが接続される。高圧ポンプ3は、給水タンク3aから供給される流体(例えば、純水、水)を100~245MPaに加圧する。加圧した高圧水Lは、ノズル3bから噴射される。高圧ポンプ3は、例えば、高圧プランジャポンプである。
【0012】
給水タンク3aには、外部の流体供給源(不図示)やタンク等から流体が供給される。給水タンク3aは、高圧ポンプ3と給水ホースや配管等で連結される。給水タンク3aは、吐出しなかった高圧水Lを回収して、再利用してもよい。
【0013】
ノズル3bは、高圧水Lを噴射する。洗浄、塗装剥離、はつり等の用途に応じて、ノズル口径、ノズル数、噴射距離等を調整できる。
高圧ポンプ3とノズル3bの間に流量計3cを配置してもよい。これにより、ノズル3bから噴射される高圧水Lの量を確認または調整できる。
【0014】
蓄電池4は、燃料電池2で発生する直流電流のうち、余剰分を許容容量値まで蓄電する。また、高圧ポンプ3を安定的に利用するためには、常時一定の電力を高圧ポンプ3に供給する必要がある。燃料電池2から電流が供給されない場合や燃料電池2から供給される電流が少ない場合に、蓄電池4は、補充電流を供給する。
蓄電池4は、例えば、市販の車載用や産業用のバッテリーである。長時間使用することを想定し、80%程度の放電と充電を繰り返すディープサイクルバッテリーを利用してもよい。これにより、瞬発性よりも安定性が得られる。
【0015】
蓄電池4は、開閉器4aの開閉によって、燃料電池2で発生する直流電流を通過させる回路への接続または非接続を切り換える。
燃料電池2のマイナス端子には、直流電流用マイナス配線W2が接続される。燃料電池2のプラス端子には、直流電流用プラス配線W3が接続される。蓄電池4のマイナス端子には、補充直流電流用マイナス配線W4が接続される。蓄電池4のプラス端子には、補充直流電流用プラス配線W5が接続される。
【0016】
開閉器4aは、直流電流用マイナス配線W2と補充直流電流用マイナス配線W4との接続または非接続を切り替える。また、開閉器4aは、直流電流用プラス配線W3と補充直流電流用プラス配線W5との接続または非接続を切り替える。
また、直流電流用マイナス配線W2、直流電流用プラス配線W3、補充直流電流用マイナス配線W4、補充直流電流用プラス配線W5の少なくとも1か所に電流計10が配置される。これによって、適正な電流が供給されているか確認できる。
【0017】
コンバータ5は、燃料電池2や蓄電池4から供給される直流電流を、交流電流(AC電流)に変換する。高圧ポンプ3を駆動するモータMは、周波数によって調整されている。そのため、コンバータ5によって交流電流に変換することによって、高圧ポンプ3を適正に稼動できる。
【0018】
インバータ6は、交流電流を周波数変換する。インバータ6によって変換された周波数を調整することによって、高圧ポンプ3における高圧水Lの吐出圧力や吐出量を調整できる。
インバータ6とコンバータ5は、交流電流用配線W6で接続される。モータMが三相交流式である場合、交流電流用配線W6は、三相用の配線(U相、V相、W相)を接続する。
【0019】
なお、燃料電池2によって大容量の直流電圧を供給できる場合には、コンバータ5は不要である。このとき、インバータ6によって、直流電流を周波数変換してもよい。
【0020】
モータMは、高圧ポンプ3を駆動する。インバータ6とモータMは、周波数信号用配線W7で接続される。モータMが三相交流式である場合は、周波数信号用配線W7は、三相用の配線(U相、V相、W相)を有する。
インバータ6とモータMの間に、電力計11が配置される。これによって、適正な電力が供給されているか確認できる。
【0021】
モータMには、モータ用回転軸S1が固定される。モータ用回転軸S1は、モータMの回転に伴い回転する。高圧ポンプ3には、高圧ポンプ用回転軸S2が固定される。高圧ポンプ用回転軸S2は、高圧ポンプ3のプランジャーを稼動させる。モータ用回転軸S1と高圧ポンプ用回転軸S2とは、ベルトBで連結される。高圧ポンプ3の回転数を調整することにより、高圧水Lの吐出圧力や吐出量を調整できる。
【0022】
燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、遮断器7を有してもよい。遮断器7は、燃料電池2で発生する直流電流のコンバータ5、インバータ6、モータM側への導通を遮断する。
遮断器7は、直流電流用マイナス配線W2および直流電流用プラス配線W3上に配置される。燃料電池2で発生する直流電流を通過させる場合、遮断器7は、両側の直流電流用マイナス配線W2および直流電流用プラス配線W3をそれぞれ接続する。直流電流を通過させない場合、遮断器7は、両側の直流電流用マイナス配線W2および直流電流用プラス配線W3をそれぞれ遮断する。
【0023】
燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、開閉バルブ8や圧力計9を有してもよい。開閉バルブ8や圧力計9は、燃料電池2へ供給する水素量を調整する。開閉バルブ8は、水素ボンベHから供給される水素の量を調整する。圧力計9は、水素ボンベHから供給される水素の圧力や残量を計測する。
【0024】
燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、操作部12を有してもよい。操作部12は、燃料電池駆動式高圧ポンプ1における各要素(燃料電池2、開閉器4a、遮断器7、インバータ6)のON/OFFを切り換える各電源を一括して操作する。
例えば、操作部12は、主電源12aと、燃料電池用電源12bと、開閉器切換部12cと、インバータ用電源12dとを有する。主電源12aは、燃料電池駆動式高圧ポンプ1全体を起動させる。燃料電池用電源12bは、燃料電池2のON/OFFを切り換える。開閉器切換部12cは、開閉器4aのON/OFFを切り換える。インバータ用電源12dは、インバータ6のON/OFFを切り換える。
【0025】
本実施形態の燃料電池駆動式高圧ポンプ1を用いて、検証作業を実施した。
産業用の燃料電池2は、定格出力10kw以下のものが主流である。以下の検証作業では、定格出力4kwの燃料電池2を利用した。
【0026】
まず、定格出力4kwの燃料電池2に、水素ボンベHから水素を供給した。そして、定格出力4kwの場合に発生させることのできる最大直流電圧48Vをコンバータ5に供給する設定とした。高圧ポンプ3は、三連プランジャポンプ(株式会社スギノマシン製)である。蓄電池4は、燃料電池2の定格出力に合わせて、蓄電できる。コンバータ5は、三相交流モータを前提として、三相の電圧を供給するために、同一のコンバータを3つ接続し、最大交流電圧200Vをインバータ6に供給できる。インバータ6は、最大60Hzの周波数を供給できる。モータMは、定格出力3.7kwの三相交流モータである。
【0027】
水素ボンベHから水素を燃料電池2に供給し、定格出力4kwをコンバータ5、インバータ6およびモータMを介して発生する回転力により高圧ポンプ3を稼動し、ノズル3bから高圧水Lを噴射した。
【0028】
燃料電池2、蓄電池4、コンバータ5、インバータ6、高圧ポンプ3それぞれに対して、電圧、電流、電力等を計測した。測定結果を検証1~6として、以下の表1、表2に示す。
【表1】
【表2】
【0029】
表1は、インバータ6の周波数を53Hzとして燃料電池2を駆動し、高圧ポンプ3を動作した場合の各要素の数値である。コンバータ5を通過する電力が、高圧ポンプ3で利用される際に、70%程度のトータル効率として動作した。この場合、高圧ポンプ3のノズル3bから噴射される高圧水Lの圧力は、5~10MPa程度であった。
【0030】
表2は、インバータ6の周波数を30Hzとして燃料電池2を駆動し、高圧ポンプ3を動作した場合の各要素の数値である。コンバータ5を通過する電力が、高圧ポンプ3で利用される際に、45~50%程度のトータル効率として動作した。この場合、高圧ポンプ3のノズル3bから噴射される高圧水Lの圧力は、1~5MPa程度であった。
【0031】
図2に示すように、燃料電池2による電流生成のプロセスには、一定のサイクルがある。燃料電池2が取り込んだ水素から直流電流を生成する際に、水素イオンが電解質を介して正極側に移動する。この際、電解質は、一定のサイクルで浄化動作を経る必要がある。そのため、常に直流電流を生成できるわけでなく、一定のサイクルが必要になるためである。
【0032】
本実施形態の燃料電池駆動式高圧ポンプ1では、燃料電池2による直流電流生成のサイクルに応じて、蓄電池4による補充直流電流を供給する。これによって、高圧ポンプ3の安定的な動作を実現できる。
具体的には、燃料電池2の電流供給時間T1に対して、燃料電池2の電流供給時間終了前または電流非供給時間に、蓄電池4による補充直流電流を供給する。これにより、直流電流を安定させる。例えば、電流供給時間T1が8分間で1サイクルの場合、電流供給時間T1終了時または終了時から2分間の間だけ、蓄電池4による補充直流電流を供給する。
【0033】
従来の駆動源であるエンジンの騒音値は、80~100dBである。一方、本実施形態の駆動源の燃料電池2の騒音値は、50dB以下であった。これより、本実施形態によれば、騒音値を低減できる。
【0034】
高圧ポンプ3から発生させる高圧水Lは、100~245MPaまで加圧して利用する。定格4kwの燃料電池2を用いた検証1~6において、インバータ6における周波数50Hzで利用した場合、高圧水Lを8~10MPaまで加圧できる。そのため、定格4kwの燃料電池2を10~25台同時に利用したり、定格4kwよりも大容量の燃料電池2を利用したりできる。
【0035】
燃料電池2は、水素によって駆動するため、水素の量も重要である。洗浄、塗装剥離、はつり等を行う際に必要な高圧水Lの圧力や流量に合わせて、水素ボンベHを用意することが好ましい。また、工場内で保有する水素を利用して、屋外作業を行ってもよい。
【0036】
<実施形態2>
図3を参照して、実施形態2の燃料電池駆動式高圧ポンプ1について説明する。
図3に示すように、本実施形態の燃料電池駆動式高圧ポンプ1では、複数(例えば、2台)の燃料電池2を利用する。これによって、供給される電力を安定させる。
前述した通り、燃料電池2による直流電流生成のプロセスには、一定のサイクルがある。実施形態1では、蓄電池4が不足分の補充直流電流を供給した。本実施形態では、蓄電池4の代わりに、2台の燃料電池2(燃料電池2A、2B)を並列で利用することによって、安定的な電力を得る。
【0037】
水素ボンベHから水素供給路W1を通過して、燃料電池2Aと燃料電池2Bに水素が供給されることで、電力が発生する。燃料電池2Aおよび燃料電池2Bから直流電流用マイナス配線W2および直流電流用プラス配線W3を通過して、コンバータ5および/またはインバータ6で交流電流や周波数に変換される。そして、モータMの駆動と連動して、高圧ポンプ3が稼動することによって、高圧水Lが噴射される。
【0038】
その際、燃料電池2の特性として、一定の電流供給時間T1がある。例えば、燃料電池2は、8分間に1回、浄化作業のために停止する。そのため、燃料電池2Aの電流供給開始タイミングT2と、燃料電池2Bの電流供給開始タイミングT3が一致しないように設定することで、安定して電力を供給できる。
【0039】
水素ボンベHから供給される水素は、水素供給路W1aを介して燃料電池2Aに供給される。また、水素ボンベHから供給される水素は、水素供給路W1aから分岐する分岐路W1bを介して燃料電池2Bに供給される。燃料電池2Aに水素が供給される水素供給開始タイミングHT1と、燃料電池2Bに水素が供給される水素供給開始タイミングHT2をずらす。
【0040】
水素供給路W1aと分岐路W1bの接続箇所には、分岐バルブ13が配置される。燃料電池2(2A、2B)の電流供給時間T1(例えば、8分サイクル)を考慮して、分岐バルブ13は、電流供給開始タイミングT2と電流供給開始タイミングT3を、燃料電池2(2A、2B)の電流供給時間T1未満(2分、4分、6分等の)でずらす。これにより、安定して電力を供給できる。
【0041】
燃料電池2Bで発生する直流電流は、交互電流用マイナス配線W8を介して、直流電流用マイナス配線W2に接続される。また、燃料電池2Bで発生する直流電流は、交互電流用プラス配線W9を介して、直流電流用プラス配線W3に接続される。
【0042】
図4に示すように、燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、作業車100の荷台103に設置した状態で利用できる。作業車100は、本体101の下部にタイヤ等の車輪102を有する一般的な走行車であり、例えば、トラックである。燃料電池駆動式高圧ポンプ1を積載する作業車100により、様々な場所で作業を行うことができる。
作業車100は、荷台103の下部に基台104を有する。基台104には、燃料電池駆動式高圧ポンプ1が配置される。燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、多くの電子機器を有する。そのため、基台104によって作業車100の走行時等に受ける振動等を緩和できる。基台104には、各種防振性部材や耐震性構造を採用できる。
【0043】
<実施形態3>
図5を参照して、実施形態3の燃料電池駆動式高圧ポンプ1について説明する。高圧ポンプ3は、モータMの駆動に伴い、ノズル3bから高圧水Lを噴射する。しかし、高圧水Lは、必ずしも常に噴射しているとは限らない。本実施形態の燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、高圧ポンプ3からノズル3bまでの供給路に接続される排水路14bを有する。高圧ポンプ3を稼動させたまま、排水路14bから高圧水Lを逃がす。これにより、高圧水Lの噴射を調整する。
本実施形態では、排水路14bから逃がした高圧水Lを再利用する。
【0044】
本実施形態の燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、発電機14を有する。発電機14は、排水路14bを介して、高圧ポンプ3と連結される。発電機14は、タービンなどの回転翼14aを有する。排水路14bから排水される高圧水Lで回転翼14aを回転させることで、発電機14は発電する。
発電機14は、発電電力供給路14cを介して蓄電池4と接続される。発電機14で発電した電力は、蓄電池4に蓄電される。これにより、排出エネルギーの一部を再利用し、電力コストを抑制できる。
【0045】
排水路14bから分岐される高圧水Lは、高い圧力を有する。そのため、高圧水Lで回転する回転翼14aの表面または材質は、高い硬度を有することが好ましい。これにより、回転翼14aの損傷を防ぐことができる。
また、排水路14bの先端に流路分岐部を配置してもよい。これにより、回転翼14aに噴射する主高圧水L1と、周方向に1または複数形成される分岐高圧水L2が排出される。そのため、圧力を調整して、発電できる。
【0046】
また、排出される高圧水Lを利用して、水素を生成してもよい。
例えば、本実施形態の燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、水素発生装置15を有する。水素発生装置15は、高圧ポンプ3または発電機14と連結される。水素発生装置15は、水素発生用正極15aと、水素発生用負極15bと、水素生成媒体15cとを有する。水素生成媒体15cは、水素発生用正極15aと水素発生用負極15bの間にある。
【0047】
水素発生用正極15aと水素発生用負極15bには、供給源Eから電流が供給される。この状態で、排水路14bから分岐される高圧水Lや発電機14で使いきれなかった高圧水Lを、水素発生装置15に取り込み、水素生成媒体15cに通過させる。そして、高圧水Lを電気分解することで、水素と酸素に分離させ、水素のみを取り出し、水素ボンベHへ供給する。
【0048】
分岐される高圧水Lをそのままの状態で利用するよりも、余分な量の高圧水Lを一時的に貯留して、圧力を一定にした状態で、水素発生装置15に通過させてもよい。
また、本実施形態の燃料電池駆動式高圧ポンプ1は、補助ボンベH2を有してもよい。このとき、水素発生装置15で生成した水素を直接水素ボンベHへ供給するのではなく、補助ボンベH2内に一時的に貯留する。これにより、水素の純度や量を高めた状態で、水素を水素ボンベHに供給できる。
【0049】
また、操作部12は、制御部としての機能を有してもよい。操作部12が各数値を記憶、演算、処理等することで、適正な稼動条件を制御する。
具体的には、操作部12は、水素ボンベHから供給される水素量、燃料電池2、コンバータ5およびインバータ6における電流量、モータMの回転数、高圧ポンプ3から噴射する高圧水Lの圧力や流量、発電機14による発電量、水素発生装置15による水素生成量等、を最適な組み合わせになるように処理する。これにより、遠隔による作業を実現できる。
【0050】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1 燃料電池駆動式高圧ポンプ
2 燃料電池
2a 吸気口
2b 排気口
3 高圧ポンプ
3a 給水タンク
3b ノズル
3c 流量計
4 蓄電池
4a 開閉器
5 コンバータ
6 インバータ
7 遮断器
8 開閉バルブ
9 圧力計
10 電流計
11 電力計
12 操作部
12a 主電源
12b 燃料電池用電源
12c 開閉器切換部
12d インバータ用電源
13 分岐バルブ
14 発電機
15 水素発生装置
100 作業車
101 本体
102 車輪
103 荷台
104 基台
H 水素ボンベ
M モータ
B ベルト
S1 モータ用回転軸
S2 高圧ポンプ用回転軸
W 配線(供給路)