(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/49 20240101AFI20241018BHJP
B64G 1/24 20060101ALI20241018BHJP
B64G 1/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G05D1/49
B64G1/24 545
B64G1/10 300
(21)【出願番号】P 2022025413
(22)【出願日】2022-02-22
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】浅野 雄太
(72)【発明者】
【氏名】西山 岳宏
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-513714(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108334099(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
B64G 1/24
B64G 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象を観測する観測センサを備える観測器を制御する制御装置であって、
前記観測器が指向する目標点の位置、速度及び加速度と、前記観測器の位置及び速度と、前記観測対象の速度と、に基づいて、前記観測器の姿勢指令値及び角速度指令値を算出する姿勢・角速度指令値演算部と、
前記観測器の姿勢と前記姿勢・角速度指令値演算部が算出した前記姿勢指令値との差、及び前記観測器の姿勢角速度と前記姿勢・角速度指令値演算部が算出した前記角速度指令値との差をそれぞれ小さくする前記観測器に発生させるトルクを示すトルク指令値を算出する姿勢制御演算部と、を備
え、
前記観測センサは1次元のラインセンサを含み、
前記姿勢・角速度指令値演算部は、前記ラインセンサが前記目標点を指向し、前記ラインセンサのクロストラック方向が前記目標点と前記観測対象との相対速度の向きと前記ラインセンサが指向する向きとに垂直となる向きに一致する姿勢及び角速度とを、前記姿勢指令値及び前記角速度指令値としてそれぞれ算出する、
制御装置。
【請求項2】
目標点が時間とともにどのように動くかを示す目標点運動を生成する目標点運動生成部を備える、
請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記目標点運動生成部は、前記観測対象が前記観測センサの走査する領域で包含されるよう前記目標点運動を生成する、
請求項
2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記目標点運動生成部は、前記観測対象の速度の方向と平行である前記目標点運動を生成する、
請求項
2又は
3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記目標点運動生成部は、前記観測対象の速度の方向と平行であり、前記ラインセンサのアロングトラック方向の画質劣化を防ぐ前記目標点運動を生成する、
請求項
2から
4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記観測対象の位置及び速度を取得し、取得した前記観測対象の位置及び速度に基づいて、前記観測対象の位置及び速度を取得した時刻より後の前記観測対象の位置及び速度を予測する観測対象運動予測部を備える、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記観測器の位置及び速度を取得し、取得した前記観測器の位置及び速度に基づいて、前記観測器の位置及び速度を取得した時刻より後の前記観測器の位置及び速度を予測する観測器運動予測部を備える、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
観測対象を観測する観測センサを備える観測器を制御する制御方法であって、
前記観測器が指向する目標点の位置、速度及び加速度と、前記観測器の位置及び速度と、前記観測対象の速度と、に基づいて、前記観測器の姿勢指令値及び角速度指令値を算出し、
前記観測器の姿勢と算出した前記姿勢指令値との差、及び前記観測器の角速度と算出した前記角速度指令値との差をそれぞれ小さくする前記観測器に発生させるトルクを示すトルク指令値を算出
し、
前記観測センサは1次元のラインセンサを含み、
前記ラインセンサが前記目標点を指向し、前記ラインセンサのクロストラック方向が前記目標点と前記観測対象との相対速度の向きと前記ラインセンサが指向する向きとに垂直となる向きに一致する姿勢及び角速度とを、前記姿勢指令値及び前記角速度指令値としてそれぞれ算出する、
制御方法。
【請求項9】
観測対象を観測する観測センサを備える観測器を制御するプログラムであって、
コンピュータを、
前記観測器が指向する目標点の位置、速度及び加速度と、前記観測器の位置及び速度と、前記観測対象の速度と、に基づいて、前記観測器の姿勢指令値及び角速度指令値を算出する姿勢・角速度指令値演算手段、
前記観測器の姿勢と前記姿勢・角速度指令値演算手段が算出した前記姿勢指令値との差、及び前記観測器の角速度と前記姿勢・角速度指令値演算手段が算出した前記角速度指令値との差をそれぞれ小さくする前記観測器に発生させるトルクを示すトルク指令値を算出する姿勢制御演算手段と、して機能さ
せ、
前記観測センサは1次元のラインセンサを含み、
前記姿勢・角速度指令値演算手段は、前記ラインセンサが前記目標点を指向し、前記ラインセンサのクロストラック方向が前記目標点と前記観測対象との相対速度の向きと前記ラインセンサが指向する向きとに垂直となる向きに一致する姿勢及び角速度とを、前記姿勢指令値及び前記角速度指令値としてそれぞれ算出させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、航空機などの移動体に搭載されて、移動体からの地表面や水面などの撮影対象の撮影に用いられる移動体搭載用撮影装置において、撮影対象からの光を導光するレンズなどの導光光学系の焦点面に、撮影対象の撮影を行うリニアセンサとともに、撮影状況を確認するための2次元画像データを取得可能なビデオ撮像センサを設置し、これにより、ビデオ撮像センサによって取得される2次元画像データを用いて、リニアセンサによる各時点での撮影状況を容易かつ効率的に確認することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の移動体に搭載されて撮影を行う装置は、移動しない地表面または水面を撮影することを前提としており、地表面上を移動する観測対象及び地表面から離れた領域を移動する観測対象を観測する場合に、観測画像の画質が劣化する可能性があるという課題があった。
【0005】
本開示はかかる課題に鑑みてなされたものであって、目標点の位置及び運動に基づいて観測器の姿勢及び角速度を決定することで、観測画像の画質が劣化することを防ぐ制御装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る制御装置は、観測対象を観測する観測センサを備える観測器を制御する制御装置であって、姿勢・角速度指令値演算部と、姿勢制御演算部と、を備える。姿勢・角速度指令値演算部は、観測器が指向する目標点の位置、速度及び加速度と、観測器の位置及び速度と、観測対象の速度と、に基づいて、観測器の姿勢指令値及び角速度指令値を算出する。姿勢制御演算部は、観測器の姿勢と姿勢・角速度指令値演算部が算出した姿勢指令値との差、及び観測器の姿勢角速度と姿勢・角速度指令値演算部が算出した角速度指令値との差をそれぞれ小さくする観測器に発生させるトルクを示すトルク指令値を算出する。観測センサは1次元のラインセンサを含む。姿勢・角速度指令値演算部は、ラインセンサが目標点を指向し、ラインセンサのクロストラック方向が目標点と観測対象との相対速度の向きとラインセンサが指向する向きとに垂直となる向きに一致する姿勢及び角速度とを、姿勢指令値及び角速度指令値としてそれぞれ算出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、目標点の位置及び運動に基づいて観測器の姿勢及び角速度を決定することで、観測画像の画質が劣化することを防ぐ制御装置、制御方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施の形態1に係る観測器の構成を示すブロック図
【
図3】実施の形態1の制御装置の構成を示すブロック図
【
図4】実施の形態1の制御装置が実行する姿勢制御処理を示すフローチャート
【
図5】実施の形態2の制御装置の構成を示すブロック図
【
図6】実施の形態2の制御装置が実行する姿勢制御処理を示すフローチャート
【
図7】実施の形態3の制御装置の構成を示すブロック図
【
図8】変形例の(A)関心領域と観測領域とを示す図及び(B)関心領域の長手方向に目標点の運動方向を設定した場合における関心領域と観測領域とを示す図
【
図9】変形例の(A)関心領域と観測領域とを示す図及び(B)関心領域の全体を観測できる目標点の運動を設定した場合における関心領域と観測領域とを示す図
【
図10】変形例の観測対象が通過する軌道と観測領域とを示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1に係る観測器1について、
図1-
図4を参照して説明する。図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0010】
図1は、実施の形態1に係る観測器1を示す模式図である。
図1に示すように、観測器1は、地表面G上、又は上空を含む地表面Gから離れた領域を移動する観測対象Tを観測する。観測器1は人工衛星又は航空機を含み得るが、これに限られるものではない。
【0011】
図2は、実施の形態1に係る観測器1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、観測器1は、地上又は他の衛星から信号を受信する受信機10と、観測対象Tを観測する観測センサ20と、観測器1の姿勢及び角速度を測定する姿勢センサ30と、観測器1の姿勢を変更する姿勢制御装置40と、観測器1の全体を制御する制御装置100と、を備える。
【0012】
受信機10は、人工衛星又は地上局を含む他の装置から信号を受信する。受信機10はアンテナを含み得るが、これに限られるものではない。受信機10は、他の装置に信号を送信する送信機であってもよい。
【0013】
観測センサ20は、目標点に指向して観測対象Tを観測するセンサである。観測センサ20はTDI(Time Delay and Integration)型CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサを含む1次元のラインセンサを備え得るが、これに限られるものではない。観測センサ20は、観測器1の並進運動に伴って検出を行うことで、観測センサ20の幅、観測器1の速度及び観測時間によって定められる領域の2次元的な観測を行う。
【0014】
姿勢センサ30は、観測器1の姿勢及び角速度を測定するセンサである。姿勢センサ30は星を観測して姿勢を特定するスターセンサ、角速度を測定するジャイロセンサ、位置を測定するGPS(Global Positioning System)センサを含み得るが、これに限られるものではない。
【0015】
姿勢制御装置40は、駆動することでトルクを発生させ、観測器1の姿勢を変更する。姿勢制御装置40は、後述する姿勢制御演算部102から入力されたトルク指令値が示すトルクを発生させる。姿勢制御装置40はRW(Reaction Wheel:リアクションホイール)又はCMG(Control Moment Gyroscopes:コントロールモーメントジャイロ)を含むアクチュエータを備えうるが、これに限られるものではない。
【0016】
図3は、実施の形態1の制御装置100の構成を示すブロック図である。制御装置100は、観測器1の取るべき姿勢及び角速度を示す値を算出する姿勢・角速度指令値演算部101と、観測器1の取るべき姿勢を実現するためのトルクを示す値を算出する姿勢制御演算部102と、を備える。制御装置100は、プロセッサとメモリとを備え、メモリに格納された制御プログラムを読みだしてプロセッサで実行することで観測器1を制御する。
【0017】
姿勢・角速度指令値演算部101は、目標点、観測対象T、及び観測器1の位置及び運動を表すパラメータを取得する。姿勢・角速度指令値演算部101はパラメータを受信機10を介して観測器1の外部から取得してもよいし、姿勢センサ30から取得してもよい。パラメータは、目標点の位置pg、目標点の速度vg、目標点の 加速度ag、観測対象Tの速度vt、観測器1の位置ps、観測器1の速度vsを含み得るが、これに限られるものではない。
【0018】
姿勢・角速度指令値演算部101は、観測器1の取るべき姿勢及び角速度を示す値である姿勢指令値及び角速度指令値を、取得したパラメータに基づいて算出する。姿勢指令値及び角速度指令値の詳細については後述する。
【0019】
姿勢制御演算部102は、姿勢・角速度指令値演算部101が算出した姿勢指令値及び角速度指令値と、姿勢センサ30が計測した観測器1の姿勢及び角速度と、を取得する。姿勢制御演算部102は、観測器1の姿勢及び角速度は負帰還として取得する。言い換えれば、姿勢制御演算部102は姿勢指令値と姿勢との差及び角速度指令値と角速度との差を取得する。
【0020】
姿勢制御演算部102は、姿勢・角速度指令値演算部101から取得した入力された姿勢指令値及び角速度指令値と、姿勢センサ30から取得した観測器1の姿勢及び角速度と、を用いて観測器1の姿勢の誤差と角速度の誤差とを小さくするトルクを示すトルク指令値を算出し、観測器1の姿勢制御装置40へ出力する。誤差を小さくするトルクは、PD制御(Proportional Differential)を含む姿勢制御アルゴリズムを用いて計算できるが、これに限られるものではない。
【0021】
姿勢制御装置40は、姿勢制御演算部102から入力されたトルク指令値が示すトルクを、アクチュエータを駆動して生成する。生成されたトルクによって観測器1の姿勢及び角速度が変更され、姿勢及び角速度の姿勢指令値及び角速度指令値との差が小さくなる。
【0022】
姿勢・角速度指令値演算部101が姿勢指令値及び角速度指令値を算出する演算について、具体的に説明する。観測器1の指向方向単位ベクトルをzc、観測センサ20のAT(Along Track:アロングトラック)方向単位ベクトルをxc、観測センサ20のCT(Cross Track:クロストラック)方向単位ベクトルをycと定義する。姿勢・角速度指令値演算部101は、姿勢指令値として、観測器1の指向方向単位ベクトルzc、AT方向単位ベクトルxc、CT方向単位ベクトルycをそれぞれ式(1)から(3)の通り設定する。
【0023】
【0024】
ここで、×は外積を表し、||・||はベクトルのL2ノルムを表す。式(1)は、観測器1即ち観測センサ20の指向方向が観測器から目標点を見た向きに一致することを示す。式(2)は、観測センサ20のCT方向が、目標点と観測対象Tとの相対速度の向きと観測器1の指向方向とに垂直な向きであることを示す。式(3)は、観測センサ20のAT方向が、観測センサ20のCT方向と観測器1の指向方向とに垂直な向きであることを示す。
【0025】
角速度指令値は、式(1)から(3)を微分することで得られる。得られた姿勢指令値及び角速度指令値と観測器1の姿勢及び角速度とのそれぞれの差を、姿勢・角速度指令値演算部101は姿勢制御演算部102に出力する。
【0026】
図4は、観測器1の制御装置100が実行する姿勢制御処理を示すフローチャートである。観測器1の制御装置100が実行する姿勢制御処理について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
姿勢制御処理が開始されると、制御装置100の姿勢・角速度指令値演算部101が、目標点、観測対象T、及び観測器1の位置及び運動を表すパラメータを取得する(ステップS101)。
【0028】
パラメータを取得すると、姿勢・角速度指令値演算部101が、観測器1の取るべき姿勢及び角速度を示す値である姿勢指令値及び角速度指令値を、取得したパラメータに基づいて算出する(ステップS102)。
【0029】
姿勢・角速度指令値演算部101が姿勢指令値及び角速度指令値を算出すると、姿勢制御演算部102が、姿勢・角速度指令値演算部101が算出した姿勢指令値及び角速度指令値と、センサが計測した観測器1の姿勢及び角速度と、を取得する(ステップS103)。
【0030】
姿勢指令値、角速度指令値、姿勢及び角速度を取得すると、姿勢制御演算部102が、姿勢・角速度指令値演算部101から取得した姿勢指令値及び角速度指令値及びセンサから取得した観測器1の姿勢及び角速度を用いて、観測器1の姿勢の誤差及び角速度の誤差を小さくするトルクを示すトルク指令値を算出する(ステップS104)。
【0031】
トルク指令値を算出すると、姿勢制御演算部102が、算出したトルク指令値を観測器1の姿勢制御装置40に出力し(ステップS105)、姿勢制御処理を終了する。
【0032】
姿勢制御装置40は、姿勢制御演算部102から入力されたトルク指令値が示すトルクをアクチュエータを駆動して生成し、観測器1の角速度及び姿勢を変更する。
【0033】
以上の構成を備え、姿勢制御処理を実行することによって、実施の形態1に係る観測器1は、目標点の位置及び運動に基づいて観測器の姿勢及び角速度を決定することで、観測画像の画質が劣化することを防ぐことができる。
【0034】
実施の形態1に係る観測器1が観測センサ20のCT方向の画質劣化を抑制することについて説明する。目標点方向単位ベクトルutを式(4)の通り定義する。
【0035】
【0036】
ここで、ptは目標点の位置ベクトルである。このとき、観測センサ20のCT方向における観測条件、即ちCT方向の画質劣化を抑制するための条件は式(5)の通りである。
【0037】
【0038】
ここで、Tは転置を表し、・は時間微分を表す。観測器1が式(1)から(3)の姿勢指令値で示される姿勢であれば、観測器1が目標点を指向する瞬間、即ちzc=utとなる瞬間に、CT方向の観測条件である式(5)が満たされる。
【0039】
以上に示すように、実施の形態1に係る観測器1は観測センサ20のCT方向の画質劣化を抑制することができる。
【0040】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る観測器1について、
図5,
図6を参照して説明する。実施の形態1に係る観測器1は目標点の位置、速度及び加速度を受信機10を介して観測器1の外部から取得していたが、実施の形態2に係る観測器1は目標点の位置、速度及び加速度を制御装置100によって生成する。
【0041】
図5は、実施の形態2の制御装置100の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、実施の形態2の制御装置100は、実施の形態1の制御装置100が備える構成に加え、目標点が時間と共にどのように動くかを示す目標点の運動を生成する目標点運動生成部103を備える。
【0042】
目標点運動生成部103は、観測対象T及び観測器1の位置及び運動を表すパラメータを取得する。目標点運動生成部103はパラメータを受信機10を介して観測器1の外部から取得してもよいし、姿勢センサ30から取得してもよい。パラメータは、観測対象Tの速度vt、観測器1の位置ps、観測器1の速度vsを含み得るが、これに限られるものではない。
【0043】
目標点運動生成部103は、観測センサ20の観測条件を満足する目標点の位置、速度及び加速度を、取得したパラメータに基づいて算出する。
【0044】
目標点運動生成部103が目標点の位置、速度及び加速度を算出する演算について、具体的に説明する。目標点運動生成部103は、観測センサ20のAT方向における観測条件を、以下の式(6)の通り設定する。
【0045】
【0046】
ここで、εは観測センサ20の瞬時視野角、τsは観測センサ20の撮像周期である。式(6)の右辺と左辺との差が小さいほど、観測センサ20が撮影する観測画像の画質劣化を抑制することができる。目標点運動生成部103は式(6)を満たす目標点の位置、速度及び加速度、即ちpg、vg及びagを算出する。
【0047】
目標点運動生成部103が目標点の位置、速度及び加速度を算出する方法として、目標点の位置pgを時刻に関する多項式として表現し、式(6)の両辺の差が最小になる係数をニュートン法を含む最適化アルゴリズムにより求める方法があるが、これに限られるものではない
【0048】
目標点運動生成部103は、算出した目標点の位置、速度及び加速度を、姿勢・角速度指令値演算部101に出力する。
【0049】
姿勢・角速度指令値演算部101は、受信機10又は姿勢センサ30から取得した観測対象T及び観測器1の位置及び運動を表すパラメータと、目標点運動生成部103から取得した目標点の位置及び運動を示すパラメータと、に基づいて、観測器1の取るべき姿勢及び角速度を示す値である姿勢指令値及び角速度指令値を算出する。
【0050】
図6は、観測器1の制御装置100が実行する姿勢制御処理を示すフローチャートである。観測器1の制御装置100が実行する姿勢制御処理について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
姿勢制御処理が開始されると、制御装置100の目標点運動生成部103が、観測対象T、及び観測器1の位置及び運動を表すパラメータを取得する(ステップS201)。
【0052】
パラメータを取得すると、目標点運動生成部103が、観測センサ20のAT方向における観測条件を満たす目標点の位置、速度及び加速度を算出する(ステップS202)。
【0053】
目標点運動生成部103が目標点の位置、速度及び加速度を算出すると、制御装置100の姿勢・角速度指令値演算部101が、目標点、観測対象T、及び観測器1の位置及び運動を表すパラメータを取得する(ステップS203)。
【0054】
パラメータを取得すると、姿勢・角速度指令値演算部101が、観測器1の取るべき姿勢及び角速度を示す値である姿勢指令値及び角速度指令値を、取得したパラメータに基づいて算出する(ステップS204)。
【0055】
姿勢・角速度指令値演算部101が姿勢指令値及び角速度指令値を算出すると、姿勢制御演算部102が、姿勢・角速度指令値演算部101が算出した姿勢指令値及び角速度指令値と、センサが計測した観測器1の姿勢及び角速度と、を取得する(ステップS205)。
【0056】
姿勢指令値、角速度指令値、姿勢及び角速度を取得すると、姿勢制御演算部102が、姿勢・角速度指令値演算部101から取得した姿勢指令値及び角速度指令値及びセンサから取得した観測器1の姿勢及び角速度を用いて、観測器1の姿勢の誤差及び角速度の誤差を小さくするトルクを示すトルク指令値を算出する(ステップS206)。
【0057】
トルク指令値を算出すると、姿勢制御演算部102が、算出したトルク指令値を観測器1の姿勢制御装置40に出力し(ステップS207)、姿勢制御処理を終了する。
【0058】
姿勢制御装置40は、姿勢制御演算部102から入力されたトルク指令値が示すトルクをアクチュエータを駆動して生成し、観測器1の角速度及び姿勢を変更する。
【0059】
以上の構成を備え、姿勢制御処理を実行することによって、実施の形態2に係る観測器1は、実施の形態1に係る観測器1と同様の効果を奏する。
【0060】
実施の形態2に係る観測器1は、観測センサ20のAT方向における観測条件を満たす目標点の位置を算出することで、観測センサ20のAT方向の画質劣化を抑制することができる。
【0061】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る観測器1について、
図7を参照して説明する。実施の形態3に係る観測器1は、観測器1及び観測対象Tの位置、速度及び加速度を制御装置100によって予測する。
【0062】
図7は、実施の形態3の制御装置100の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、実施の形態3の制御装置100は、実施の形態2の制御装置100が備える構成に加え、観測対象Tの運動を予測する観測対象運動予測部104と、観測器1の運動を予測する観測器運動予測部105と、を備える。
【0063】
観測対象運動予測部104は、観測対象Tの位置及び運動を表すパラメータを取得する。観測対象運動予測部104はパラメータを受信機10を介して観測器1の外部から取得してもよいし、姿勢センサ30から取得してもよい。パラメータは、観測対象Tの位置pt及び観測対象Tの速度vtを含み得るが、これに限られるものではない。
【0064】
観測対象運動予測部104は 観測対象Tの予測位置及び予測速度を、取得したパラメータに基づいて算出する。観測対象運動予測部104は、算出した観測対象Tの予測位置及び予測速度を、姿勢・角速度指令値演算部101及び目標点運動生成部103に出力する。
【0065】
観測器運動予測部105は、観測器1の位置及び運動を表すパラメータを取得する。観測器運動予測部105はパラメータを受信機10を介して観測器1の外部から取得してもよいし、姿勢センサ30から取得してもよい。パラメータは、観測器1の位置ps及び観測器1の速度vsを含み得るが、これに限られるものではない。
【0066】
観測器運動予測部105は 観測器1の予測位置及び予測速度を、取得したパラメータに基づいて算出する。観測器運動予測部105は、算出した観測器1の予測位置及び予測速度を、姿勢・角速度指令値演算部101及び目標点運動生成部103に出力する。
【0067】
観測対象運動予測部104及び観測器運動予測部105は、運動を予測する対象の状態を示すパラメータが既知である場合は、運動方程式を数値積分することで、観測時刻における位置、速度を予測する。
【0068】
観測対象運動予測部104及び観測器運動予測部105は、運動を予測する対象の状態を示すパラメータが既知でない場合は、カルマンフィルタ又はオブザーバを含む推定方法でパラメータを推定し、推定したパラメータを用いて運動方程式を数値積分することで、観測時刻における位置、速度を予測する。カルマンフィルタ又はオブザーバを含む推定方法で用いる観測値として、レーダー又は望遠鏡を含む観測装置による観測値が含まれ得るが、これに限られるものではない。
【0069】
以上の構成を備えることで、実施の形態3に係る観測器1は、実施の形態1に係る観測器1と同様の効果を奏する。
【0070】
実施の形態3に係る観測器1は、観測器1及び観測対象Tの運動を予測することで、観測器1及び観測対象Tの運動が未知であっても姿勢及び角速度を制御することができる。また、観測器1及び観測対象Tの運動が既知である時点から将来の観測器1及び観測対象Tの運動を予測することで、姿勢及び角速度を制御することができる。
【0071】
本開示の実施の形態は上述のものに限られるものではなく、変形が可能である。例えば、観測センサ20は1次元のラインセンサを備えるとしたが、これに限られるものではない。観測センサ20は2次元に配置されたセンサを備えてもよい。観測センサ20は2次元に配置されたセンサを備える場合、観測器1の指向方向単位ベクトルzcは式(7)の通り設定される。
zc=ut (7)
【0072】
式(7)はベクトル方程式であり、AT方向とCT方向との観測条件を含む。観測器1の指向方向単位ベクトルzc軸周りの回転角は任意となるが、観測対象Tを広い画素範囲で観測可能であり、かつ観測対象Tが指向軸周りに静止又は回転している場合は、画像の中心から離れた画素における画質が劣化する場合がある。この画質劣化を抑制するために、観測器1の指向方向単位ベクトルzc軸周りの回転角速度を、観測対象Tの指向軸周りの角速度と一致させることで、回転による観測画像の画質劣化を抑制することができる。
【0073】
実施の形態3において、制御装置100は観測対象Tの運動を予測する観測対象運動予測部104と、観測器1の運動を予測する観測器運動予測部105と、を備えるとしたが、これに限られるものではない。観測対象運動予測部104と観測器運動予測部105とのどちらか一方を備えてもよい。
【0074】
実施の形態3に係る観測器1は地表面上に敷設された線路を走行する車両を観測してもよい。制御装置100は、線路上のどの地点で観測するかを決定し、車両の運行計画から観測地点を車輌が通過する時刻を調べて観測予定時刻とする。どの地点を観測地点とするかは任意であり、観測器1と車両とが最接近する地点であってよい。
【0075】
観測対象運動予測部104は、観測予定時刻における車両の速度を予測する。観測器運動予測部105は、観測予定時刻における観測器1の位置及び速度を予測する。目標点運動生成部103は、観測予定時刻における車両の速度と観測器1の位置及び速度とを用いて、観測センサ20におけるAT方向の観測条件を満たす目標点運動を生成する。
【0076】
上記の構成を備えることで、観測器1は、地表面上の線路を走行する車両の観測において画質劣化を抑制した観測を行うことができる。
【0077】
実施の形態3に係る観測器1は空間上を移動する移動物体を観測してもよい。制御装置100は観測予定時刻を設定する。観測予定時刻は任意であり、観測器1と物体とが最接近する時刻であってよい。
【0078】
観測対象運動予測部104は、観測予定時刻における移動物体の速度を予測する。観測器運動予測部105は、観測予定時刻における観測器1の位置及び速度を予測する。目標点運動生成部103は、観測予定時刻における移動物体の速度と観測器1の位置及び速度とを用いて、観測センサ20におけるAT方向の観測条件を満たす目標点運動を生成する。
【0079】
上記の構成を備えることで、観測器1は、空間上を移動する移動物体の観測において画質劣化を抑制した観測を行うことができる。
【0080】
実施の形態3において、目標点運動生成部103は観測センサ20のAT方向における観測条件を満たす目標点の位置を算出するとしたが、これに限られるものではない。目標点運動生成部103は、観測を行いたい領域である関心領域201の形状に合わせて、目標点の運動を生成してもよい。
【0081】
観測対象Tの運動を予測したとき、観測対象Tが存在する位置が空間上に分布する場合があり、観測対象Tの存在確率の高い領域は有限の大きさの領域で近似できる。また、観測対象Tの大きさが観測画像の1画素より大きい場合は、広い領域を観測する必要がある。これらの場合、関心領域201の形状は楕円状又は矩形状となり得る。目標点運動生成部103が目標点の運動方向を関心領域201の長手方向に設定することで、走査数を減らすことができる。
【0082】
図8(A)は、関心領域201と観測領域202とを示す図であり、
図8(B)は、関心領域の長手方向に目標点の運動方向を設定した場合における関心領域201と観測領域202とを示す図である。図中の矢印は目標点の運動を示す。
図8(A)に示すように、関心領域が楕円状であり、1回の走査で観測できる観測領域202でカバーできない場合、
図8(B)に示すように、目標点運動生成部103が目標点の運動方向を関心領域201の長手方向に設定することで、1回の走査で観測領域202で関心領域201をカバーすることが可能になる。
【0083】
目標点運動生成部103は、関心領域201の全体を走査できる目標点の運動を生成してもよい。
図9(A)は、関心領域201と観測領域202とを示す図であり、
図9(B)は、関心領域201の全体を観測できる目標点の運動を設定した場合における関心領域201と観測領域202とを示す図である。図中の実線矢印は目標点の運動を示し、点線矢印は関心領域201の移動を示す。
図9(A)に示すように、どのような方向に走査しても1回の走査で関心領域201の全体を観測できない場合、
図9(B)に示すように、目標点運動生成部103は、複数回の走査によって関心領域201の全体を観測できる目標点の運動を生成する。
【0084】
関心領域201の全体を観測できる目標点として、関心領域201の中心に1走査を行い、観測幅に対応する画角より小さい角度にAT方向軸まわりに姿勢を回転して関心領域長手方向に走査する、ことを繰り返す目標点があり得るが、これに限られるものではない。
【0085】
姿勢変更を行いながら複数の走査を行う場合、走査と走査の間で姿勢マヌーバが必要であり、姿勢マヌーバ中に関心領域201が移動してしまうため、目標点運動生成部103は、関心領域201が移動した分だけ移動する目標点の運動を生成してもよい。
【0086】
目標点運動生成部103は、観測対象Tとしての移動物体の観測を行う際に、移動物体が通過する軌道に沿って目標点の運動を生成してもよい。例えば、移動物体の速度の方向に平行となるよう目標点運動を生成してもよい。ここで、移動物体の速度方向と目標点運動は厳密に平行となる必要はなく、移動物体が通過する軌道に沿うよう目標点運動を生成すればよい。
図10は、観測対象Tが通過する軌道と観測領域202とを示す図である。図中の実線矢印は目標点の運動を示し、点線矢印は観測対象Tの位相ずれを示す。
図10に示すように、移動物体が通過する軌道に沿って目標点の運動を生成することで、移動物体の位相がずれても移動物体を観測することができ、位相ずれに対するロバスト性を確保することができる。
【0087】
目標点運動生成部103は、さらに、移動物体が通過する軌道に沿うとともに観測センサ20におけるAT方向の観測条件も満たす目標点の運動を生成してもよい。
【0088】
位相sにおける観測対象Tの位置をpt(s)、時刻tにおける目標点の位置をpg(t)とする。このとき、このとき、任意の時刻tの観測センサ20におけるCT方向の観測条件即ち式(5)と、任意の時刻tの観測センサ20におけるAT方向の観測条件即ち式(6)と、目標点が移動物体の通過する軌道に沿う条件である以下の式(8)とを連立することで、位相sが満たすべき微分方程式が得られる。
pg(t)=pt(s) (8)
【0089】
目標点運動生成部103は微分方程式を数値積分によって解くことで目標点の運動を生成する。即ち、観測対象Tの速度の方向と平行であり、AT方向の画質劣化を防ぐ目標点の運動を生成する。目標点の位相がどちらに進むかには任意性があるが、どちらを選択してもよい。以上のように目標点の運動を生成することで、移動物体の位相がずれても移動物体を観測することができ、位相ずれに対するロバスト性を確保することができるとともに、位相ずれによる画質劣化を抑制することができる。
【0090】
観測器1に搭載される制御装置100が姿勢・角速度指令値演算部101、姿勢制御演算部102、目標点運動生成部103、観測対象運動予測部104、観測器運動予測部105を備えるものとして説明したが、これに限られるものではない。これらの構成の一部または全部が、人工衛星または地上局を含む他の装置に搭載されていてもよい。これらの構成が観測器1に搭載される制御装置100に備えられ、観測器1上で処理が行われることをオンボード処理と呼び、他の装置から信号を受信して処理を行う場合に比べて遅延が少ないという利点がある。
【0091】
また、実施の形態1-3及び変形例の制御装置における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピュータのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えばフレキシブルディスク又はCD-ROMを含むコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネットを含むネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスクを含む記憶部に伝送されて記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、装置の一機能としてその装置のソフトウェアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…観測器、10…受信機、20…観測センサ、30…姿勢センサ、40…姿勢制御装置、100…制御装置、101…姿勢・角速度指令値演算部、102…姿勢制御演算部、103…目標点運動生成部、104…観測対象運動予測部、105…観測器運動予測部、201…関心領域、202…観測領域、G…地表面、T…観測対象。