(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】架橋性及び発泡性組成物、それによって得られる発泡体、発泡のための組成物並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241018BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20241018BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEQ
C08L53/02
C08L23/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022086354
(22)【出願日】2022-05-26
【審査請求日】2022-05-26
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515119088
【氏名又は名称】李長榮化學工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LCY CHEMICAL CORP.
【住所又は居所原語表記】No.3, Zhonglin Rd., Xiaogang Dist., Kaohsiung City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】チュー, リチャード・トイェンフーアー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユー・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フワング,ウェー・チン
(72)【発明者】
【氏名】ワング,ユー・ミ-ン
(72)【発明者】
【氏名】シーエ,カイ・ジー
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-317067(JP,A)
【文献】特開2006-117818(JP,A)
【文献】特開2001-347617(JP,A)
【文献】国際公開第2012/081561(WO,A1)
【文献】特開2013-173851(JP,A)
【文献】特開2005-187750(JP,A)
【文献】特開2004-107519(JP,A)
【文献】国際公開第2021/010487(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/074574(WO,A1)
【文献】特開2018-119033(JP,A)
【文献】特開2018-028108(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152222(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/132439(WO,A1)
【文献】特開2011-006689(JP,A)
【文献】国際公開第2007/094216(WO,A1)
【文献】特開平09-157446(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073695(WO,A1)
【文献】特開昭63-225638(JP,A)
【文献】特開2001-026663(JP,A)
【文献】特開2009-161774(JP,A)
【文献】特開2003-238722(JP,A)
【文献】国際公開第2003/035705(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0375931(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105419069(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1982364(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化スチレン系ジブロック共重合体と、フリーラジカル開始剤と、発泡剤と、を含む架橋性及び発泡性組成物であって、前記水素化スチレン系ジブロック共重合体が、
イソプレン単位を含む第1のブロックと、
スチレン単位を含む第2のブロックと、
を備え、
前記第1のブロックはイソプレン単位からなり、任意付加的にブタジエン単位を含んでもよく、前記ブタジエン単位を含む場合、前記ブタジエン単位の含有量は前記第1のブロックの総重量を基準として15重量%以下であり、
前記水素化スチレン系ジブロック共重合体が10~50重量%の前記スチレン単位を含み、50モル%以上の前記イソプレン単位
および任意付加的に含まれる前記ブタジエン単位が水素化され、前記水素化スチレン系ジブロック共重合体が30000~200000の重量平均分子量を有する、架橋性及び発泡性組成物。
【請求項2】
前記第1のブロックはイソプレン単位の重合体ブロックであり、前記第2のブロックはスチレン単位の重合体ブロックである、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項3】
前記第1のブロックは前記イソプレン単位及びブタジエン単位の重合体ブロックであり、前記ブタジエン単位の含有量は前記第1のブロックの総重量を基準として15重量%以下であり、前記第2のブロックは前記スチレン単位の重合体ブロックである、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項4】
前記第1のブロックは前記イソプレン単位の重合体ブロックであり、前記第2のブロックは前記スチレン単位及び共役ジエン単量体単位の重合体ブロックであり、前記共役ジエン単量体単位はブタジエン単位、イソプレン単位又はそれらの混合物であり、前記共役ジエン単量体単位の含有量は前記第2のブロックの総重量を基準として15重量%以下である、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項5】
前記第1のブロックは前記イソプレン単位及びブタジエン単位の重合体ブロックであり、前記ブタジエン単位の含有量は前記第1のブロックの総重量を基準として15重量%以下であり、前記第2のブロックは前記スチレン単位及び共役ジエン単量体単位の重合体ブロックであり、前記共役ジエン単量体単位はブタジエン単位、イソプレン単位又はそれらの混合物であり、前記共役ジエン単量体単位の含有量は前記第2のブロックの総重量を基準として15重量%以下である、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項6】
前記イソプレン単位における3,4-ビニル結合の含有量が、水素化前に5~40モル%の範囲にある、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項7】
60~100モル%の前記イソプレン単位が、水素化後に水素添加される、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項8】
前記フリーラジカル開始剤が有機過酸化物であり、該有機過酸化物がジクミルペルオキシド、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)-ベンゼン及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項9】
前記発泡剤が化学発泡剤であり、該化学発泡剤がアゾジカルボンアミドである、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項10】
架橋助剤をさらに含む請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項11】
前記水素化スチレン系ジブロック共重合体が15~50重量%の前記スチレン単位を含み、70~100モル%の前記イソプレン単位が水素化され、前記水素化スチレン系ジブロック共重合体が70000~190000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項12】
前記水素化スチレン系ジブロック共重合体が20~45重量%の前記スチレン単位を含み、70~100モル%の前記イソプレン単位が水素化され、前記水素化スチレン系ジブロック共重合体が70000~150000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項13】
エチレン共重合体をさらに含み、該エチレン共重合体対前記水素化スチレン系ジブロック共重合体の重量比が50/50~95/5である、請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項14】
前記エチレン共重合体がエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体又はそれらの組合せを含む、請求項13に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項15】
前記エチレン共重合体がエチレン-酢酸ビニル共重合体であり、酢酸ビニルの含有量が前記エチレン共重合体の総重量を基準として15~40重量%の範囲である、請求項13に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項16】
架橋助剤をさらに含む請求項13に記載の架橋性及び発泡性組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の架橋性及び発泡性組成物を架橋及び発泡させることによって得られる発泡体。
【請求項18】
0.1~0.5g/cm
3の比重、0.6~1.8の範囲の乾燥静摩擦係数、0.5~1.5の範囲の湿潤静摩擦係数、及び30~80の範囲の硬度を有し、
前記乾燥静摩擦係数および前記湿潤静摩擦係数は、ASTM D1894に従って決定したものであり、
前記硬度は、ASTM D2240に基づいて測定したものである請求項17に記載の発泡体。
【請求項19】
履物の構成要素である請求項17に記載の発泡体。
【請求項20】
前記履物のアウトソールである請求項19に記載の発泡体。
【請求項21】
請求項13に記載の架橋性及び発泡性組成物を架橋及び発泡させることによって得られる発泡体。
【請求項22】
0.1~0.5g/cm
3の発泡体密度、0.5~1.5の範囲の乾燥静摩擦係数、0.5~1.2の範囲の湿潤静摩擦係数、及び30~80の範囲の硬度を有し、
前記乾燥静摩擦係数および前記湿潤静摩擦係数は、ASTM D1894に従って決定したものであり、
前記硬度は、ASTM D2240に基づいて測定したものである請求項21に記載の発泡体。
【請求項23】
履物の構成要素である請求項21に記載の発泡体。
【請求項24】
前記履物のアウトソールである請求項23に記載の発泡体。
【請求項25】
水素化スチレン系ジブロック共重合体を含む発泡
体を作成するための組成物であって、前記水素化スチレン系ジブロック共重合体が、
イソプレン単位を含む第1のブロックと、
スチレン単位を含む第2のブロックと、
を備え、
前記第1のブロックはイソプレン単位からなり、任意付加的にブタジエン単位を含んでもよく、前記ブタジエン単位を含む場合、前記ブタジエン単位の含有量は前記第1のブロックの総重量を基準として15重量%以下であり、
前記水素化スチレン系ジブロック共重合体が10~50重量%の前記スチレン単位を含み、50モル%以上の前記イソプレン単位
および任意付加的に含まれる前記ブタジエン単位が水素化され、前記水素化スチレン系ジブロック共重合体が30000~200000の重量平均分子量を有する、組成物。
【請求項26】
エチレン共重合体をさらに含む請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
発泡体を調製するための請求項25に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、米国特許法第119条(e)(1)の下に2021年6月7日に出願された米国仮特許出願第63/197,548号の出願日の利益を主張する。
【0002】
本開示は、架橋性及び発泡性組成物並びに上記架橋性及び発泡性組成物を架橋及び発泡させることによって得られる発泡体に関する。
【背景技術】
【0003】
種々の材料が靴底を作製するのに使用されており、最も普及しているのはゴムである。ゴム底の履物は、湿った歩道又は着雪した道路を歩く際など、全シーズンにおいて、比類のない摩耗耐性及び大幅に向上した収縮性を有する。熱可塑性材料も、履物のアウトソールに使用されている。例えば、PVCからなるアウトソールは、柔軟性がありかつ安価であるが、滑りやすい。熱可塑性エラストマー(TPE)組成物は、室温では硬化ゴムのように挙動するが高温では溶融処理可能な材料に基づく。靴底の生産に最も多く使用されるTPE材料は、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)トリブロック共重合体などのスチレン系ブロック共重合体(SBC)及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。
【0004】
軽量性を達成するために、エチレン酢酸ビニル(EVA)に基づく発泡体などの発泡体も、履物のアウトソールとして使用されている。EVAは、履物用途におけるミッドソール部として主に使用される発泡体生成物を製造するのに広く使用されている。しかし、アウトソールの使用については、低い滑り耐性など、EVA発泡体にはいくつかの欠点があり、これはEVA発泡体が履物のアウトソールとしての広範な利用性を獲得することを妨げている。多様な材料のブレンドが、滑り防止特性が向上した発泡体を調製するのに使用されることが多い。例えば、中国特許第104693564号は、高い制動性及び滑り防止性能の靴底のための発泡体を作製するためにブロモブチル(BIIR)、EVA及び低密度ポリエチレン(LDPE)を含む伸長可能な組成物を開示する。
【0005】
TPE材料の中で、SBS及びSEBS(水素化SBS)などのSBCは、まず過酸化物開始剤及び化学発泡剤を約120℃以下の温度で組み込んだ後に、発泡組成物を架橋するために型において成形してから約140℃~190℃の温度で発泡させることを伴う従来の履物用発泡体処理において、軽量の発泡体に製造され得る唯一のカテゴリーのものである。SBC材料は全体的に良好な耐摩耗性及び耐滑り性も有するので、SBCを主に含む発泡体は、靴底のための発泡体に展開されている。例えば、中国特許第106349633号は、良好な乾燥及び湿潤滑り止め特性の発泡体を作製するために、主にSEBSを含み、少量のLDPE、オレフィンブロック共重合体(OBC)及びスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含む伸長可能な組成物を開示する。また、例えば、中国特許第102888067号は、主にSEBSを含み、PP(ポリプロピレン)、EVA、無機充填剤及び少量の充填油を含む、良好な弾性及び滑り防止特性の弾性発泡材料を開示する。
【0006】
接地アウトソールとして軽量な発泡体を用いる傾向を考慮すると、強化された耐滑り性能及び履物のアウトソール部として使用されるのに適した全体的にバランスのとれた力学的特性を有する発泡体を生成するための新規な発泡樹脂を開発することの継続的なニーズがある。また、履物用途に対するEVA発泡体の普及した地位の観点から、耐滑り性能を強化するためにEVA発泡体を改質することの継続的なニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
本開示の課題は2つある。第1の課題は、それに基づく発泡体がバランスのとれた力学的特性、最も具体的には履物のアウトソールに重要な優れた滑り防止特性を有するスチレン系ブロック共重合体樹脂を開発することである。発泡体は、フリーラジカル開始剤及び発泡剤を架橋性及び発泡性組成物に約120℃以下の温度で組み込むステップと、その後に約150℃~200℃の温度において過酸化物架橋及び発泡剤の分解のために射出成形型において架橋性及び発泡性組成物を射出成形するステップとを伴って生成される。
【0008】
第2の課題は、EVAなどのエチレン系共重合体にブレンドされて発泡体に作製され得るスチレンブロック共重合体樹脂を開発することであり、その発泡体は両材料の利点を示す発泡体特性を達成するものであり、とりわけ、履物のアウトソール用途に重要な優れた滑り防止特性を示す。
【0009】
本開示は、理論に拘束されることなく、水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体は上述の本開示の課題を達成するのに最適であるという発見に基づく。水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体を含む発泡体は、靴アウトソールとして使用されるのに適した望ましい滑り防止特性を達成する。
【0010】
またさらに、本開示は、水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体の重合体構造体は過酸化物開始剤及び発泡剤を約120℃以下の温度で組み込んでから約150℃~200℃の温度で型において化合物の過酸化物架橋を行う発泡体配合及び射出処理に最適であるという発見に基づく。
【0011】
以下は、更なる詳細を示すものである。
【0012】
一般の慣行では、SBCは、1個のハードスチレンブロック及びブタジエン又はイソプレンブロックなどの1個のソフトブロックのジブロック共重合体をまず調製し、そしてカップリング又は連続重合を介して直鎖状のA-B-A型又は星状のマルチブロック型のブロック共重合体を形成する、アニオン重合によって生成される。SEBSなどの水素化SBCは、力学的特性及び耐候性をさらに増強する。TPEのカテゴリーのものとしてのSBCブロック共重合体は、履物の発泡体を含む多くの用途に広く使用される。水素化SEBSなどの水素化SBCは、履物の発泡体の用途に好ましい。ソフトブロック内の残留不飽和が過酸化物架橋を促進するので、部分水素化SEBSは履物の発泡体の用途に最も好適である。
【0013】
A-B型スチレン系ジブロック共重合体では、ハードスチレンブロックは、マルチブロック共重合体のような物理的架橋を形成するようには結合されていない。それは、弾性などの熱可塑性エラストマーの特徴を有さない。要するに、スチレン系ジブロック共重合体は熱可塑性エラストマーとはみなされず、商業的利用は限られている。例えば、スチレン系ジブロック共重合体の市販製品は、グローバルなSBC生産者から入手できるものはほとんどない。スチレン系ジブロック共重合体は、接着剤、コーティング又は改質剤に最も使用され、力学的強度及び弾性は最重要のものではない。予想外なことに、かつ驚くべきことに、A-B型水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体は良好に配合されるとともに優れた滑り防止性能の発泡体となるように発泡可能であることが見出された。
【0014】
発泡のための溶融強度を高めるための鍵となる処理である過酸化物硬化に対する、トリブロック共重合体とジブロック共重合体の間の構造的相違の影響をさらに指摘することが有益である。トリブロックSEBSについて、過酸化物架橋による化学架橋は、SEBSの既存の物理的架橋に溶融段階で導入される。一方、スチレン系ジブロック共重合体には、既存の物理的架橋ネットワークはない。過酸化物架橋では、過酸化物架橋による新たに形成される架橋が形成され、全ての遊離したスチレンブロックは架橋に緊結される。要するに、スチレン系ジブロック共重合体の過酸化物架橋は、過酸化物架橋を介した化学架橋を与えるだけでなく、架橋の結果として物理的架橋ネットワークを形成するように作用する。過酸化物架橋がスチレン-イソプレンジブロック共重合体を、優れた耐滑り特性を達成するための適切な発泡樹脂に変換することも予想外の驚きである。
【0015】
さらに、スチレン-イソプレンジブロック共重合体は、EVAなどの他のエチレン共重合体との良好な相溶性を有するものであり、これは非類似の重合体からなる発泡体を生成する際に重要なものであることが見いだされた。A-B型ジブロック共重合体は、A-B型の2ブロックの共重合体の間の熱力学的非相溶性に起因した、より良好な自己組織化能力を有することが知られている。そして、これが、A-Bジブロック共重合体が2個の異種重合体の相溶化物質としてよく使用される理由である。
【0016】
本開示の課題によると、本開示は、以下に記載するように、架橋性及び発泡性組成物、それを架橋及び発泡させることによって得られる発泡体並びにその調製を提供する。
【0017】
本開示は、水素化スチレン系ジブロック共重合体と、フリーラジカル開始剤と、発泡剤と、を含む架橋性及び発泡性組成物を提供する。水素化スチレン系ジブロック共重合体は、イソプレン単位を含む第1のブロックと、スチレン単位を含む第2のブロックと、を備える。ここで、水素化スチレン系ジブロック共重合体は10~60重量%のスチレン単位を含み、50モル%以上のイソプレン単位が水素化され、水素化スチレン系ジブロック共重合体は30000~200000の重量平均分子量を有する。本開示は、上述の架橋性及び発泡性組成物を架橋及び発泡させることによって得られる発泡体又は履物の構成要素も提供する。したがって、得られた発泡体又は得られた履物の構成要素は、水素化スチレン系ジブロック共重合体を含み、かつ上述の水素化スチレン系ジブロック共重合体の特徴を有する。
【0018】
本開示は、水素化スチレン系ジブロック共重合体と、エチレン共重合体と、フリーラジカル開始剤と、発泡剤と、を含む他の架橋性及び発泡性組成物も提供する。水素化スチレン系ジブロック共重合体の特徴は上述した通りであり、再度説明しない。さらに、エチレン共重合体対水素化スチレン系ジブロック共重合体の重量比は、50/50~95/5である。本開示は、上述の架橋性及び発泡性組成物を架橋及び発泡させることによって得られる発泡体及び履物の構成要素も提供する。したがって、得られた発泡体及び得られた履物の構成要素は、水素化スチレン系ジブロック共重合体及びエチレン共重合体を含み、かつ上述の水素化スチレン系ジブロック共重合体の特徴及びエチレン共重合体対水素化スチレン系ジブロック共重合体の重量比を有する。
【0019】
本開示は、水素化スチレン系ジブロック共重合体を含む、発泡のための組成物をさらに提供する。水素化スチレン系ジブロック共重合体の特徴は上述した通りであり、再度説明しない。さらに、本開示は、発泡体を調製するための上述の組成物の使用も提供する。
【0020】
本開示の1以上の実施形態の詳細を以下の記載において説明する。本開示の他の特徴、課題及び有利な効果は、説明及び特許請求の範囲により明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の様々な実施形態が、以下の記載に提供される。これらの実施形態は本開示の技術的内容を説明することを意味し、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。ある実施形態に記載される構成は、適宜の変更、置換、合成又は分離によって他の実施形態に適用され得る。
【0022】
なお、本明細書では、構成要素/成分がある要素を有すると記載される場合、特に断りがない限り、構成要素/成分はその要素の1以上を有し得ることを意味し、構成要素/成分がその要素の1つのみを有することを意味するものではない。
【0023】
本明細書において、特に断りがない限り、構成A「又は」又は「及び/又は」構成Bとは、構成Aの存在、構成Bの存在、又は構成A及びBの両方の存在を意味する。構成A「及び」構成Bとは、構成A及びBの両方の存在を意味する。文言「備える/からなる/含む(comprise(s))」、「備えている/からなる/含んでいる(comprising)」、「含む(include(s))」、「含んでいる(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」及び「有している(having)」は、「備える/からなる/含む(comprise(s))/備えている/からなる/含んでいる(comprising)がそれに限定されない」を意味する。
【0024】
本開示では、特に断りがない限り、文言「ほぼ」、「約」及び「概ね/おおよそ」は、通常、当業者によって決定される指定値における許容可能な誤差を意味し、誤差はその値がどのように測定又は決定されるかに依存する。いくつかの実施形態では、文言「ほぼ」、「約」及び「概ね/おおよそ」は、1、2、3又は4標準偏差内を意味する。いくつかの実施形態では、文言「ほぼ」、「約」及び「概ね/おおよそ」は、所与の値又は範囲の±20%以内、±15%以内、±10%以内、±9%以内、±8%以内、±7%以内、±6%以内、±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.05%以内又はそれ未満を意味する。ここに与えられる数量は概算数量であり、すなわち、「ほぼ」、「約」及び「概ね/おおよそ」を明記せずとも、「ほぼ」、「約」及び「概ね/おおよそ」を示唆し得る。さらに、文言「第1の値から第2の値の範囲内/第1の値~第2の値の範囲内」、「第1の値から第2の値/第1の値~第2の値」などは、当該範囲が第1の値、第2の値、及び第1の値と第2の値の間の他の値を含むことを意味する。
【0025】
さらに、本開示の異なる実施形態における構成が混合されて他の実施形態を形成することもある。
【0026】
いくつかの実施形態では、架橋性及び発泡性組成物は、水素化スチレン系ジブロック共重合体、フリーラジカル開始剤及び発泡剤を含み得る。水素化スチレン系ジブロック共重合体は、イソプレン単位を含む第1のブロック及びスチレン単位を含む第2のブロックを備え得る。ここで、水素化スチレン系ジブロック共重合体は10~60重量%のスチレン単位を含み、50モル%以上のイソプレン単位が水素化され、水素化スチレン系ジブロック共重合体は30000~200000の重量平均分子量を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、架橋性及び発泡性組成物は、水素化スチレン系ジブロック共重合体、エチレン共重合体、フリーラジカル開始剤及び発泡剤を含み得る。水素化スチレン系ジブロック共重合体の構成は上述した通りであり、再度説明しない。さらに、エチレン共重合体対水素化スチレン系ジブロック共重合体の重量比は、50/50~95/5であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、上記架橋性及び発泡性組成物のいずれかを架橋及び発泡させることによって得られる発泡体が提供される。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記架橋性及び発泡性組成物のいずれかを架橋及び発泡させることによって得られる履物の構成要素が提供される。
【0030】
いくつかの実施形態では、発泡ための組成物は、水素化スチレン系ジブロック共重合体を含み得る。水素化スチレン系ジブロック共重合体の構成は、上述した通りであり、再度説明しない。
【0031】
いくつかの実施形態では、発泡のための上記組成物の使用は、発泡体を調製するために適用される。
【0032】
以下、上記架橋性及び発泡性組成物の成分、上記架橋性及び発泡性組成物のいずれかを架橋及び発泡させることによって得られる発泡体又は履物の構成要素、並びにその調製を詳細に説明する。さらに、発泡のための上記組成物の成分も詳細に説明する。
【0033】
水素化スチレン系イソプレンジブロック共重合体
本開示の水素化スチレン系ジブロック共重合体は、イソプレン単位を含む第1のブロック及びスチレン単位を含む第2のブロックを備えるジブロック共重合体である。
【0034】
いくつかの実施形態では、水素化スチレン系ジブロック共重合体は、水素化スチレン系ジブロック共重合体の総重量を基準として約10~60重量%のスチレン単位を含み得る。架橋発泡体が10重量%未満のスチレン単位の含有量の架橋性及び発泡性組成物によって調製される場合、架橋発泡体の力学的特性(例えば、引裂性)が劣る。60重量%超のスチレン単位の含有量を有する架橋性及び発泡性組成物によって架橋発泡体が調製される場合、架橋発泡体の反発弾性又は圧縮永久歪みが劣る。
【0035】
いくつかの実施形態では、バランスのとれた力学的特性を有する架橋発泡体を作製する目的のために、水素化スチレン系ジブロック共重合体が水素化スチレン系ジブロック共重合体の総重量を基準として約10~50重量%のスチレン単位を含んでいてもよく、水素化スチレン系ジブロック共重合体の残分が共役ジエン単量体単位となる。この範囲内では、架橋発泡体は、バランスのとれた力学的特性及び優れた滑り防止特性を有することが期待できる。いくつかの実施形態では、水素化スチレン系ジブロック共重合体は、例えば、約15~50重量%、20~50重量%、20~45重量%、20~40重量%又は22~40重量%のスチレン単位を含んでいてもよく、水素化スチレン系ジブロック共重合体の残余は共役ジエン単量体単位である。
【0036】
いくつかの実施形態では、スチレン系ジブロック共重合体の約50モル%以上のイソプレン単位が、水素化後に水素添加される。いくつかの実施形態では、約50~100モル%のイソプレン単位が、水素化後に水素添加される。いくつかの実施形態では、例えば、約55~100モル%、60~100モル%、65~100モル%、70~100モル%、75~100モル%又は、75~99モル%のイソプレン単位が、水素化後に水素添加される。水素化度が50モル%未満であると、金属表面に対して粘性が高くなりすぎることに起因して製造が難しくなる。
【0037】
いくつかの実施形態では、水素化スチレン系ジブロック共重合体は、約30000~200000の重量平均分子量を有し得る。水素化スチレン系ジブロック共重合体の重量平均分子量が30000未満の場合、水素化スチレン系ジブロック共重合体は、結果として得られる発泡体の劣った力学的特性を与える。水素化スチレン系ジブロック共重合体の重量平均分子量が200000超の場合、水素化スチレン系ジブロック共重合体は処理困難となる。
【0038】
いくつかの実施形態では、水素化スチレン系ジブロック共重合体は、例えば、約40000~200000、50000~200000、60000~200000、70000~200000、70000~190000、70000~180000、70000~170000、70000~160000、70000~150000、70000~140000、80000~140000、80000~130000、90000~130000又は100000~130000の重量平均分子量を有し得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1のブロックは、イソプレン単位の重合体ブロックであり得る。いくつかの実施形態では、第1のブロックは、イソプレン単位及びブタジエン単位の重合体ブロックであってもよく、ブタジエン単位の含有量は第1のブロックの総重量を基準として15重量%以下である。
【0040】
いくつかの実施形態では、第2のブロックは、スチレン単位の重合体ブロックであり得る。いくつかの実施形態では、第2のブロックはスチレン単位の重合体ブロック及び共役ジエン単量体単位であってもよく、共役ジエン単量体単位の含有量は第2のブロックの総重量を基準として15重量%以下であり得る。いくつかの実施形態では、共役ジエン単量体単位の含有量は、第2のブロックの総重量を基準として約0.5~15重量%、0.5~14重量%、0.5~13重量%、0.5~12重量%、0.5~11重量%又は0.5~10重量%の範囲内にあり得る。ここで、共役ジエン単量体単位は、ブタジエン単位、イソプレン単位又はそれらの混合物であり得る。いくつかの実施形態では、第2のブロックはスチレン単位及びブタジエン単位の重合体ブロックであってもよく、ブタジエン単位の含有量は第2のブロックの総重量を基準として10重量%以下であり得る。第2のブロックが、少量(15重量%以下)の共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックである場合、水素化スチレン系ジブロック共重合体の流動性が向上し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1のブロックはイソプレン単位の重合体ブロックであり、第2のブロックはスチレン単位の重合体ブロックであり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1のブロックはイソプレン単位及びブタジエン単位の重合体ブロックであってもよく、ブタジエンの含有量は第1のブロックの総重量を基準として15重量%以下であり、第2のブロックはスチレン単位の重合体ブロックであり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1のブロックはイソプレン単位の重合体ブロックであり、第2のブロックはスチレン単位及び共役ジエン単量体単位の重合体ブロックであってもよく、共役ジエン単量体単位はブタジエン単位、イソプレン単位又はその混合物であってもよく、共役ジエン単量体単位の含有量は第2のブロックの総重量を基準として15重量%以下であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、第1のブロックはイソプレン単位及びブタジエン単位の重合体ブロックであってもよく、ブタジエン単位の含有量は第1のブロックの総重量を基準として15重量%以下であり得る。第2のブロックはスチレン単位及び共役ジエン単量体単位の重合体ブロックであってもよく、共役ジエン単量体単位はブタジエン単位、イソプレン単位又はそれらの混合物であればよく、共役ジエン単量体単位の含有量は第2のブロックの総重量を基準として15重量%以下であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、例えば、第1のブロック及び/又は第2のブロックはイソプレン単位を含む場合、イソプレン単位における3,4-ビニル結合含有量は水素化前に約5~40モル%の範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、イソプレン単位における3,4-ビニル結合含有量は、水素化前に、例えば、約5~35モル%、5~30モル%、5~25モル%、5~20モル%又は5~15モル%の範囲にあり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、例えば、第1のブロック及び/又は第2のブロックはブタジエン単位を含む場合、共役ジエン単量体単位(すなわち、ブタジエン)における1,2-ビニル結合含有量は水素化前に約5~40モル%の範囲にあり得る。
【0047】
ここで、用語「ビニル結合」は、1,3-ブタジエンが1,2-付加メカニズムを介して重合されてイソプレンが3,4-付加メカニズムを介して重合される場合に作製される重合体生成物を記載するのに用いられる。結果は、重合体骨格にペンダントする一置換オレフィン基のビニル基である。イソプレンのアニオン重合の場合、3,4-付加メカニズムを介したイソプレンの挿入は、重合体骨格にペンダントするgem-ジアルキルC=C部分を与える。ブロック共重合体の最終特性に対するイソプレンの3,4-付加重合の効果は、ブタジエンの1,2-付加から得られるものと同様となる。
【0048】
本開示の水素化前のスチレン系ジブロック共重合体を製造する方法は特に限定されず、任意の周知の方法が使用され得る。重合法のうち、リビングアニオン重合が使用され、炭化水素溶媒中で行われ、有機アルカリ金属化合物によって開始され得る。例えば、上記の重合体の合成ステップは、米国特許第7332542号に明確に記載されている。炭化水素溶媒は特に限定されず、任意の周知の溶媒が使用され得る。例えば、炭化水素溶媒は、n-ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、キシレンなどの芳香族炭化水素を含み得る。上記の炭化水素溶媒は、単独又は2つ以上の組合せで使用され得る。
【0049】
開始剤は特に限定されず、スチレンなどのビニル芳香族単量体及びイソプレンなどの共役ジエン単量体とのアニオン重合活性を有することが知られている、脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物及び有機アミノアルカリ金属化合物などの開始剤が適用可能である。開始剤として使用されるアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム及びカリウムを含み得る。いくつかの実施形態では、開始剤は、n-ブチルリチウムなどの脂肪族炭化水素アルカリ金属であり得る。
【0050】
スチレン系ジブロック共重合体を調製する重合処理は、アニオン重合に対して使用されるものと同様に実行され得る。重合は、約0℃~約180℃、より好ましくは約30℃~約150℃、最も好ましくは約30℃~約90℃の温度で実行され得る。それは、不活性雰囲気、好ましくは窒素において実行され、約0.5~約10バールの範囲内の圧力下で完了されてもよい。重合処理は、一般に、温度、単量体成分の濃度、重合体の分子量などに応じて、12時間未満を必要とする。
【0051】
スチレン系ジブロック共重合体の水素化は、周知の水素化処理において実行され得る。例えば、そのような水素化は、米国特許第3595942号及び第3700633号において報告されたような方法を使用して完了されている。これらの水素化の方法は、適切な触媒を採用する。この言及された触媒は、アルキルアルミニウム又は元素周期表の第I-A族、第II-A族及び第III-B族から選択される金属、特にリチウム、マグネシウム若しくはアルミニウムの水素化物などの適切な還元剤と結合されるニッケル又はコバルトなどの第VIII族の金属を含み得る。
【0052】
水素化処理は特に限定されないが、水素化は通常、0℃~180℃、より好ましくは30℃~150℃の温度で実行される。この処理で使用される水素圧力は特に限定されないが、通常は0.1~20MPa、0.2~15MPa又は0.3~5MPaである。反応時間は、通常は1分~10時間又は10分~5時間である。
【0053】
水素化処理はバッチ処理、連続処理又はそれらの組合せによって行われ得る。必要であれば、触媒残渣は除去され得る。水素化重合体は撹拌しつつ熱水に注ぐことによって単離されてもよく、有機溶媒はスチームストリッピングによって除去されてもよい。
【0054】
水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体を調製する通常の合成方法をここに簡単に説明する。第1に、シクロヘキサン(溶媒として)及びn-ブチルリチウム(開始剤として)をヒーター及び撹拌機が装備された反応器に充填する。第2に、イソプレンを溶媒に添加してアニオン重合を行う。第3に、スチレンを反応器に添加し、反応混合物をさらに重合してスチレン-イソプレンジブロック共重合体構造体を形成する。そして、このブロック共重合体を、2-エチルヘキサン酸ニッケル/TEAL触媒及び水素ガスを用いて圧力容器内で水素化する。約50モル%以上のイソプレン単位を水素化した後に、水素化反応を終了させる。得られたスチレン-イソプレンジブロック共重合体を高温酸性水で洗浄して残留触媒を除去する。
【0055】
いくつかの実施形態では、水素化前のビニル結合含有量及びスチレン含有量などの水素化スチレン系ジブロック共重合体のイソプレンセグメントのミクロ構造並びに水素化後の水素化度は、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)法を使用して測定され得る。さらに、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定され得る。
【0056】
さらに、発泡体特性を調整する目的のために、本開示の水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体は、20重量%までの同様の組成の、SEPSトリブロックなどの水素化スチレン系マルチブロック共重合体を含有してもよい。スチレン-イソプレンマルチブロック共重合体は、10~40重量%のスチレン含有量、約30000~80000の重量平均分子量、水素化前のイソプレン単位の10~30モル%の3,4-ビニル結合含有量、及びイソプレン単位の60~95モル%の水素化度を有し得る。水素化スチレン系ジブロック共重合体に対する水素化スチレン系マルチブロック共重合体の正確な重量比は、発泡体処理及び最終用途に必要な発泡体特性に応じる。
【0057】
エチレン共重合体
本開示のいくつかの実施形態では、架橋性及び発泡性組成物は、上記水素化スチレン系ジブロック共重合体及びエチレン共重合体を含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、エチレン共重合体対水素化スチレン系ジブロック共重合体の重量比は、50/50~95/5となり得る。いくつかの実施形態では、エチレン共重合体対水素化スチレン系ジブロック共重合体の重量比は、例えば、50/50~90/10、60/40~90/10、65/35~90/10又は70/30~90/10となり得る。
【0059】
本開示では、エチレン共重合体は特に限定されず、周知のエチレン共重合体が使用され得る。例えば、適切なエチレン共重合体は、ポリエチレン(PE)、エチレン及び酢酸ビニルの共重合によって得られるエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン及びC3-10α-オレフィンのランダム若しくはブロック共重合によって取得可能なエチレン-α-オレフィン系の共重合体又はそれらの組合せを含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、エチレン共重合体は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又はそれらの組合せであり得るポリエチレンであってもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、エチレン共重合体はエチレン-酢酸ビニル共重合体であってもよく、酢酸ビニルの含有量はエチレン共重合体の総重量を基準として約15~40重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、酢酸ビニルの含有量は、エチレン共重合体の総重量を基準として約15~35重量%、15~30重量%、18~30重量%又は20~30重量%の範囲であり得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、エチレン共重合体はエチレン-α-オレフィン系の共重合体であってもよく、α-オレフィンは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなど又はそれらの組合せを含み得る。
【0063】
フリーラジカル開始剤
本開示のいくつかの実施形態では、架橋性及び発泡性組成物は、フリーラジカル開始剤をさらに含み得る。ここで、架橋性及び発泡性組成物を架橋するのに使用されるフリーラジカル開始剤は特に限定されず、任意の周知のフリーラジカル開始剤が使用され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、フリーラジカル開始剤は、有機過酸化物であり得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、有機過酸化物は、ジクミルペルオキシド(dicumyl peroxide)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(2,5-dimethyl-2,5-di-(t-butyl peroxy)hexane)、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)-ベンゼン(bis(1-(tert-butylperoxy)-1- methylethyl)-benzene)及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態において、有機過酸化物は、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)-ベンゼンであり得る。ただし、本開示はそれに限定されない。
【0066】
フリーラジカル開始剤の使用量は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、フリーラジカル開始剤の使用量は、架橋性及び発泡性組成物の総重量を基準として、約0.01~10重量%、0.01~9重量%、0.01~8重量%、0.01~7重量%、0.01~6重量%、0.01~5重量%、0.01~4重量%、0.05~4重量%、0.05~3重量%、0.1~3重量%、0.1~2.5重量%、0.1~2重量%、0.1~1.5重量%又は0.1~1重量%であり得る。
【0067】
発泡剤
本開示のいくつかの実施形態では、架橋性及び発泡性組成物は、発泡剤をさらに含み得る。ここで、発泡剤は特に限定されず、任意の周知の発泡剤が使用され得る。例えば、発泡剤は、化学発泡剤、物理発泡剤又はそれらの組合せであり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、化学発泡剤である。
【0069】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、アゾジカルボンアミド(azodicarbonamide, ADCA)、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)-ベンゼン(bis(1-(tert-butylperoxy)-1-methylethyl)-benzene)、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(4,4’-oxybis(benzenesulfonylhydrazide))、p-トルエンスルホニルセミカルバジド(p-toluenesulfonyl semicarbazide)、N、N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(N, N’-dinitrosopentamethylene tetramine)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド(diphenylsulfone-3,3’-disulfonyl hydrazide, DPSDSH)、トリヒドラジノトリアジン(trihydraznotriazine)若しくはそれらの組合せなどの有機発泡剤、又は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム若しくはそれらの組合せなどの無機系の熱分解性発泡剤を含み得る。ここで、有機発泡剤及び無機系の熱分解性発泡剤は、単独又は共に使用され得る。いくつかの実施形態では、発泡剤は、アゾジカルボンアミドであり得る。ただし、本開示は、それに限定されない。
【0070】
発泡剤の使用量は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、発泡剤の使用量は、架橋性及び発泡性組成物の総重量を基準として、約0.5~10重量%、0.5~9重量%、0.5~8重量%、0.5~7重量%、0.5~6重量%、0.5~5重量%又は1~5重量%であり得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、窒素、二酸化炭素、アルカン、シクロアルカン、ジアルキルエーテル、シクロアルキレンエーテル、フルオロアルカン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン又はそれらの組合せなどの物理発泡剤であり得る。
【0072】
他の添加物質
本開示のいくつかの実施形態では、必要であれば、上記の成分に加えて、架橋性及び発泡性組成物は、他の添加物質、例えば、架橋助剤、有機金属化合物、充填剤、熱安定化剤、耐候性安定化剤、顔料などを選択的にさらに含み得る。ただし、本開示は、それに限定されない。
【0073】
本開示のいくつかの実施形態では、架橋反応の速度を加速する目的のために、架橋性及び発泡性組成物は、架橋助剤をさらに含み得る。例えば、架橋助剤は、これに限定されないが、イソシアヌル酸トリアリル(triallyl isocyanurate)、シアヌル酸トリアリル(triallyl cyanurate)、ジメタクリル酸エチレングリコール(ethylene glycol dimethacrylate)、ブチル酸ビニル(vinyl butyrate)などを含み得る。
【0074】
本開示のいくつかの実施形態では、架橋発泡体孔をより細かく又はより均一にする目的のために、架橋性及び発泡性組成物は、有機金属化合物をさらに含み得る。例えば、有機金属化合物は、これに限定されないが、架橋助剤としても作用し得るジアクリル酸亜鉛(zinc diacrylate)又はジメタクリル酸亜鉛(zinc dimethacrylate)を含み得る。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態では、経費削減、硬度若しくは弾性率の調整又は核生成の目的のために、架橋性及び発泡性組成物は、充填剤をさらに含み得る。例えば、充填剤は、これに限定されないが、粘土、二酸化ケイ素、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウムなどを含み得る。
【0076】
本開示のいくつかの実施形態では、発泡体生成物の耐久性を増強する目的のために、架橋性及び発泡性組成物は、熱安定化剤、耐候性安定化剤又はそれらの組合せをさらに含み得る。例えば、熱安定化剤は、これに限定されないが、イルガホス(Irgafos)168などのリン系タイプの熱安定化剤を含み得る。例えば、耐候性安定化剤は、これに限定されないが、ペンタエリスリトールテトラキス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート](pentaerythritol tetrakis[3-[3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl]propionate])などのヒンダードフェノール系タイプの耐候性安定化剤を含み得る。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態では、架橋性及び発泡性組成物は、顔料をさらに含み得る。例えば、顔料は、これに限定されないが、アゾ系タイプの顔料、フタロシアニン系タイプの顔料、酸化物系タイプの顔料、クロム酸塩系タイプの顔料、モリブデン酸塩系タイプの顔料、無機顔料又はカーボンブラックを含み得る。
【0078】
架橋性及び発泡性組成物の調製
本開示の架橋性及び発泡性組成物は、水素化スチレンジブロック共重合体、エチレン共重合体又はそれらの組合せの上記成分をまず溶融してブレンドし、そしてフリーラジカル開始剤及び発泡剤、並びに充填剤が含まれるような他の添加物質を組み込む混練機を使用することによって生成され得る。フリーラジカル開始剤及び発泡剤の添加の前に、操作は、フリーラジカル開始剤及び発泡剤の早期分解を回避するように120℃未満で実行される。
【0079】
溶融混合及びブレンドの方法は特に限定されず、周知の方法が使用され得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、ヘンシェルミキサー(Henschel mixer)、バンバリーミキサー(Banbury mixer)、ロールミル及び混練などの押出機が、本開示に適用され得る。いくつかの実施形態では、溶融混合法は、ニーダーを使用することによって行われる。
【0080】
溶融混合処理の後の、本開示の架橋性及び発泡性組成物の形状は特に限定されない。例えば、それは、ペレット形状、フレーク形状、ストランド形状又はチップ形状などに形成され得る。例えば、それは、造粒機などによって成分を混合してペレットを形成することによるものであり得る。例えば、組成物の各成分を混練した後、ロールミルを使用してシートを形成する。それにより、架橋されておらず、かつ発泡されていない膨張性シートが調製され、膨張性シートは上記架橋性及び発泡性組成物のいずれか1つを含む。
【0081】
架橋発泡体の調製
本開示によって提供される架橋性及び発泡性組成物は、架橋及び発泡されて本開示の発泡体を得ることができる。
【0082】
架橋及び発泡の方法は特に限定されず、任意の周知の方法が使用され得る。これは、本開示の架橋性及び発泡性組成物を、架橋性及び発泡性組成物をシート状にすることによって得られるシート形態で発泡させる実施例である。架橋性及び発泡性シートを型の体積の1.0~1.2倍の範囲のサイズに切断し、それを型に挿入する。一般的な発泡成形操作では、型を約150~200℃、30~300kgf/cm2の型締め圧及び3~50分の保持時間に保つ。型において、架橋反応が実行され、同時に発泡剤が分解される。保持時間待機して型を開放した後、架橋性及び発泡性組成物は架橋発泡体になる。発泡体の工業生産では、架橋及び発泡性するための型に架橋性及び発泡性組成物を溶融射出する射出成形処理が使用され得る。
【0083】
架橋性及び発泡性組成物から得られる架橋発泡体は、約0.05~0.5g/cm3、例えば、0.1~0.5g/cm3、0.1~0.45g/cm3、0.1~0.4g/cm3、0.1~0.35g/cm3、0.1~0.3g/cm3又は0.1~0.25g/cm3の(密度とも呼ばれる)比重を有し得る。ただし、本開示はそれに限定されるものではなく、発泡体の比重は、架橋性及び発泡性組成物の成分を改質することによって調整され得る。
【0084】
架橋性及び発泡性組成物から得られる架橋発泡体は、約30~80の硬度(アスカーC)を有し得る。発泡体が水素化スチレン系ジブロック共重合体を含む架橋性及び発泡性組成物から得られるいくつかの実施形態では、発泡体は、例えば、約30~75、30~70、30~65、30~60、35~60、35~55又は40~55の硬度(アスカーC)を有し得る。発泡体が水素化スチレン系ジブロック共重合体及びエチレン共重合体を含む架橋性及び発泡性組成物から得られるいくつかの実施形態では、発泡体は、約30~75、30~70、30~65、30~60、35~60、35~55又は40~55の硬度(アスカーC)を有し得る。ただし、本開示はこれに限定されず、発泡体の硬度(アスカーC)は架橋性及び発泡性組成物の成分を改質することによって調整され得る。
【0085】
架橋性及び発泡性組成物から得られる架橋発泡体は、約0.5~1.8の範囲の乾燥静摩擦係数を有し得る。これは、ASTM D1894に従って決定可能である。水素化スチレン系ジブロック共重合体を含む架橋性及び発泡性組成物から発泡体が得られるいくつかの実施形態では、発泡体は、例えば、約0.6~1.8、0.6~1.7、0.6~1.6、0.6~1.5、0.6~1.4、0.7~1.4、0.7~1.3、0.8~1.3又は0.8~1.0の範囲の乾燥静摩擦係数を有し得る。水素化スチレン系ジブロック共重合体及びエチレン共重合体を含む架橋性及び発泡性組成物から発泡体が得られるいくつかの実施形態では、発泡体は、例えば、約0.5~1.5、0.5~1.4、0.5~1.3、0.5~1.2、0.5~1.1、0.5~1.0又は0.5~0.9の範囲の乾燥静摩擦係数を有し得る。ただし、本開示はこれに限定されず、発泡体の乾燥静摩擦係数は架橋性及び発泡性組成物の成分を改質することによって調整され得る。
【0086】
架橋性及び発泡性組成物から得られる架橋発泡体は、約0.5~1.5の範囲の湿潤静摩擦係数を有し得る。これは、ASTM D1894に従って決定可能である。水素化スチレン系ジブロック共重合体を含む架橋性及び発泡性組成物から発泡体が得られるいくつかの実施形態では、発泡体は、例えば、約0.5~1.4、0.5~1.3、0.5~1.2、0.6~1.2、0.6~1.1、0.7~1.1、0.7~1.0、0.8~1.0又は0.8~0.9の範囲の湿潤静摩擦係数を有し得る。水素化スチレン系ジブロック共重合体及びエチレン共重合体を含む架橋性及び発泡性組成物から発泡体が得られるいくつかの実施形態では、発泡体は、例えば、約0.5~1.4、0.5~1.3、0.5~1.2、0.5~1.1、0.5~1.0、0.5~0.9、0.5~0.8又は0.5~0.7の範囲の湿潤静摩擦係数を有し得る。ただし、本開示はこれに限定されず、発泡体の湿潤静摩擦係数は架橋性及び発泡性組成物の成分を改質することによって調整され得る。
【0087】
本開示の架橋性及び発泡性組成物によって得られる発泡体は、少なくとも反発弾性、軽量性、恒久的な圧縮永久歪み及び引裂性の観点では力学的特性の優れたバランスを示す。したがって、本開示の架橋性及び発泡性組成物によって得られる発泡体は、自動車、構造物、日用品及びスポーツ用品において、軽量及び柔軟な材料として広く使用され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示の架橋性及び発泡性組成物によって得られる発泡体は、履物の構成要素、例えば、履物のアウトソールとして使用され得る。
【0089】
特に、発泡の比重が低下する場合、力学的特性が低下する傾向があるが、本開示において、特に靴のアウトソール又はスポーツ発泡体パッドに適した、バランスのとれた力学的特性を有する軽量の架橋発泡体を作製することが期待され得る。
【0090】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の架橋性及び発泡性組成物を架橋及び発泡させることによって得られる発泡体は、靴のアウトソール又はスポーツ発泡体パッドなどの履物の構成要素として含まれ得るが、本開示はこれに限定されない。
【実施例】
【0091】
本実施形態を、実施例を参照して以下に詳細に説明する。それでもなお、本実施形態は、これらの実施例に限定されない。実施例及び比較例では、実施例及び比較例において使用される構成要素の調製及び同定並びに架橋発泡体の力学的特性評価を、以下に説明する方法によって実行した。
【0092】
水素化スチレン系ジブロック共重合体の重合体構造の同定は、以下のように決定される。
【0093】
分子量及び分子量分布
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を双方ともゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器によって試験及び決定した。クロマトグラムにおけるピークの分子量の値を、市販の標準ポリスチレンの検量線によって計算した。分子量分布(Mw/Mn)を、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)に基づいて決定した。試験ステップ及び機器情報についてのさらに詳細を以下のように説明する。装置は、Waters社が提供するPDI及び屈折率検出器を含む市販のGPCシステムである。一般に、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として選択する。測定温度を40℃に維持する。流速は1ml/minであり、注入量は100μlである。水素化ブロック共重合体/THFの割合は3mg/15ccである。
【0094】
スチレン含有量及びビニル結合含有量
水素化前の水素化スチレン系ジブロック共重合体のスチレン含有量及びビニル結合含有量を、Agilent Technologies社によって提供されるVARIAN 400を採用して1H-NMRスペクトルによって測定する。一般に、重水素化クロロホルムが溶媒として選択される。
【0095】
水素化度
水素化度は1H-NMRスペクトルにおける不飽和結合シグナルの減少率から計算されてもよく、計算は次のように記述される。
水素化度(モル%)=B/(A+B)×100%
A:非水素化共役ジエン単量体単位のモル数
B:水素化共役ジエン単量体単位のモル数
【0096】
メルトフローインデックス
MFI(メルトフローインデックス)は、ASTM-D1238に従って測定される。
【0097】
スチレン系ジブロック共重合体の新規の態様を以下のように評価した。
【0098】
配合能力(Compounding capability)
Hung Ta Instrument社によって提供されるオープンローラーミキサー(HT-8807)を使用して、実施例及び比較例で使用したジブロックおよびトリブロックサンプルの配合能力を120℃を超えない温度で評価する。これは、フリーラジカル開始剤及び化学発泡剤の双方を組み込み、そして早期分解を引き起こさない温度での発泡のためのプレス型に化合物を注入するステップを伴う履物の配合処理をシミュレーションするものである。温度は、フリーラジカル開始剤及び発泡剤の分解を引き起こさないために100~120℃である。
【0099】
配合処理を開始する前に、ローラーを120℃まで加熱する。そして、サンプルをローラーミキサーの2つのローラーの間に配置する。材料は小さい断片に粉砕され、徐々に溶融されてバンドを形成する。材料が固体状態から溶融状態に変換された後、溶融した重合体は回転ローラーに付着した均質なバンドを形成する。その時に、配合困難のレベル及びバンドの品質の観察が確認及び決定され得る。サンプルがその温度条件で良好に溶融可能でない場合は、溶融した表面は不均一となる。同時に、小さく不規則なサイズの孔も観察され得る。一方で、サンプルがこの温度条件で良好に溶融可能であれば、溶融した表面は滑らかで均一となる。
【0100】
ローラー表面におけるバンド形成の評定は1~5で評価され、評定5は完全な溶融膜が形成されたことを示し、一方、評定1はバンド形成が不良であることを示す。
【0101】
架橋発泡体の力学的特性を以下のように評価した。
【0102】
比重
一度架橋された発泡体を、2.54cmの直径及び1cmの厚さを有する円形に打ち抜き、電子比重計(MS-204S、メトラー・トレド社製)によって測定した。
【0103】
硬度
ASTM D2240に基づいて、一度架橋された発泡体の硬度(アスカーC)を、アスカー硬度計C硬さ試験機(C型、ポリマー社製)を使用して測定し、値を1秒以内に読み取った。また、5点の平均値(算術平均)を硬度とした。
【0104】
引裂強度(split tear strength)
一度架橋された発泡体の引裂強度をASTM D3574Fに従って決定する。
【0105】
引張強度(Tensile strength)
一度架橋された発泡体の破断時の引張強度をASTM D412に従って決定する。
【0106】
伸長(Elongation)
一度架橋された発泡体の破断時の伸長をASTM D412に従って決定する。
【0107】
圧縮永久歪み(Compression set)
一度架橋された発泡体を2.54cmの直径を有する円形に打ち抜き、試験片として使用し、50%の厚さに圧縮した。50℃で6時間保持した後、圧力を解放し、1時間後の厚さを測定した。残留変形の大きさを評価した。
【0108】
反発弾性(Impact Resilience)
架橋発泡体の反発弾性を、ASTM-D2632に従って鉛直リバウンド装置において決定する。反発弾性を、発泡体標本上に落下可能とされた規定の質量及び形状の金属プランジャーの跳ね上り高さ対落下高さの割合として決定する。
【0109】
静摩擦係数(Static coefficient of friction)
一度架橋された発泡体の静摩擦係数は、ASTM D1894に従って決定される。
【0110】
実施例及び比較例の樹脂組成を以下に説明する。
【0111】
スチレン系ブロック共重合体
SEP-1:水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体
SEP-1である水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体を、以下に説明するように調製及び特徴付けした。第1に、4800gのシクロヘキサン、7.06ミリモルのn-ブチルリチウム及び2.66ミルモルのテトラヒドロフラン(THF)をヒーター及び撹拌機が装備された10リットルサイズの反応器に投入した。第2に、534gのイソプレンを反応器に添加して約45℃の温度でアニオン重合を開始させた。第3に、313gのスチレンを反応器に添加し、反応混合物をさらに重合してスチレン-イソプレンジブロック共重合体を調製した。イソプレンブロックにおける3,4-ビニル結合の含有量は、約9.1モル%であった。
【0112】
その後、上記ステップによって得られたスチレン-イソプレンジブロック共重合体を、ニッケル-2-エチルヘキサノエート/TEAL触媒及び水素ガスを用いて圧力容器内で水素化した。水素化処理のための温度を約40℃~100℃で制御した。約80モル%のイソプレンブロックを水素化した後、水素化反応を終了した。そして、得られたサンプルを熱酸性水で洗い流して残留触媒を除去した。最後に、ブロック共重合体を熱水内で凝固によって単離してから乾燥した。水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体の収率は、約80%であった。
【0113】
解析によると、37重量%のスチレン含有量、イソプレンブロックの80モル%の水素化度、約121000の重量平均分子量、1.03の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)及び230℃/5kgfで測定した4のMFIを有する。
【0114】
SEP-2:水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体
SEP-1を調製するのと同じ方法で以下に説明するように調製及び特徴付けしたSEP-2は、37重量%のスチレン含有量を有する完全に水素化されたスチレン-イソプレンジブロック共重合体であり、この共重合体において、イソプレンブロックにおける3,4-ビニル結合含有量は水素化前に約9モル%であり、イソプレンブロックにおける水素化度は99モル%であった。ジブロック共重合体は、約120000の重量平均分子量、1.03の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)及び230℃/5kgfで測定した1.5のMFIを有する。
【0115】
SEP-3:水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体
SEP-1を調製するのと同じ方法で以下に説明するように調製及び特徴付けしたSEP-3は、25重量%のスチレン含有量を有する水素化されたスチレン-イソプレンジブロック共重合体であり、この共重合体において、イソプレンブロックにおける3,4-ビニル結合含有量は水素化前に約9モル%であり、イソプレンブロックにおける水素化度は84モル%であった。ジブロック共重合体は、約118000の重量平均分子量、1.03の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)及び230℃/5kgfで測定した2.2のMFIを有する。
【0116】
SEP-4:水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体
SEP-1を調製するのと同じ方法で以下に説明するように調製及び特徴付けしたSEP-4は、25重量%のスチレン含有量を有する完全に水素化されたスチレン-イソプレンジブロック共重合体であり、この共重合体において、イソプレンブロックにおける3,4-ビニル結合含有量は水素化前に約9モル%であり、イソプレンブロックにおける水素化度は98モル%であった。ジブロック共重合体は、約119000の重量平均分子量、1.03の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)及び230℃/5kgfで測定した0.7のMFIを有する。
【0117】
SEPS-1:水素化スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体
SEPS-1は、水素化スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体であり、以下に説明するように調製された。
【0118】
第1に、4800gのシクロヘキサン、10.2ミリモルのn-ブチルリチウム及び2.66ミリモルのテトラヒドロフラン(THF)を、ヒーター及び撹拌機が装備された10リットルサイズの反応器に充填した。第2に、120gのスチレンを溶媒に添加して約45℃の温度でアニオン重合を進行させた。第3に、560gのイソプレンを、イソプレンの反応が完了するまで、反応器に添加した。第4に、120gのスチレンを反応器に添加し、スチレンの重合が完了した時に、重合を終了させてスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体構造体を形成するためにメタノールを添加した。スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体は、イソプレンブロックにおいて約10モル%の3,4-ビニル結合を有した。
【0119】
SEP-1を調製するのと同じ方法で水素化物を調製した。解析によると、得られた水素化スチレン-イソプレン-スチレントリブロックは、78.8モル%の水素化度、28.8重量%のスチレン含有量、約95000の重量平均分子量、1.03の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)及び230℃/5kgfで測定した0.23のMFIを有する。
【0120】
SEPS-2:水素化スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体
SEPS-1を調製するのと同じ方法で以下に説明するように調製及び特徴付けしたSEPS-2は、28.4重量%のスチレン含有量を有する完全に水素化されたスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体であり、この共重合体において、イソプレンブロックにおける3,4-ビニル結合含有量は約10モル%であり、水素化度は98.2モル%であった。トリブロック共重合体は、約95000の重量平均分子量、1.03の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)及び230℃/5kgfで測定した0.04のMFIを有する。
【0121】
EEPS-1:水素化(ブタジエン/イソプレン)-スチレンジブロック共重合体
EEPS-1である水素化(ブタジエン/イソプレン)-スチレンジブロック共重合体を以下に説明するように調製及び特徴付けした。第1に、4800gのシクロヘキサン、7.89ミリモルのn-ブチルリチウム及び2.66ミリモルのテトラヒドロフラン(THF)を、ヒーター及び撹拌機が装備された10リットルサイズの反応器に充填した。第2に、295gのイソプレン及び197gのブタジエンを同時に反応器に添加して(I/Bモル比を1.25に制御する)、イソプレン及びブタジエンの反応が完了するまで、アニオン重合を約50℃の温度で開始した。第3に、289gのスチレンを反応器に添加し、スチレンの重合が完了した時に、重合を終了させて(イソプレン/ブタジエン)-スチレンジブロック共重合体を形成するためにメタノールを添加した。イソプレンブロックにおける3,4-ビニル結合含有量は約13モル%であり、ブタジエンブロックにおける1,2-ビニル結合含有量は約16モル%であった。
【0122】
そして、上記ステップによって得られた(ブタジエン/イソプレン)-スチレンジブロック共重合体を、2-エチルヘキサン酸ニッケル/TEAL触媒及び水素ガスを使用して圧力容器内で水素化した。水素化処理のための温度を約50℃~90℃に制御した。吸収された水素の累積量が目標の水素化度に対応する量に到達すると、水素化反応を終了させた。そして、得られたサンプルを高温酸性水で洗浄して残留触媒を除去した。最後に、ブロック共重合体を熱水中の凝固によって単離し、そして乾燥した。水素化スチレン系ジブロック共重合体は、78.1モル%の水素化度、37.1重量%のスチレン含有量、128000の重量平均分子量(Mw)、1.06の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)及び230℃/5kgfで測定された0.63のMFIを有する。
【0123】
EEPS-2:水素化(ブタジエン/イソプレン)-スチレンジブロック共重合体
EEPS-1を調製するのと同じ方法で以下に説明するように調製及び特徴付けしたEEPS-2は、37.1重量%のスチレン含有量、99.1モル%の水素化度、128000の重量平均分子量(Mw)、1.06の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)及び230℃/5kgfで測定した0.1未満のMFIを有する完全に水素化された(ブタジエン/イソプレン)-スチレンジブロック共重合体である。
【0124】
エチレン共重合体
EVA-1:エチレン-酢酸ビニル共重合体
EVA-1は、USI社によって商標名「UE659」で製造される、25重量%の酢酸ビニル含有量及び190℃/2.16kgfで測定された3g/10minのメルトフローインデックスのエチレン-酢酸ビニル共重合体である。
【0125】
有機過酸化物
ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)-ベンゼン(BIPB)(Arkema Group社製)を使用した。
【0126】
化学発泡剤
アゾジカルボンアミド(AC)(Kumyang社製)を使用した。
【0127】
他の添加物質
炭酸カルシウム(Yuncheng Chemical Industrial社製)、ZnO(酸化亜鉛、Diamonchem Ineternational社製)及びVulchem社製のステアリン酸を使用した。
【0128】
結果
表1に、ジブロックSEP-1、ジブロックEEPS-1及びトリブロックSEPS-1の重合体構造情報、メルトフローインデックス、上記章の配合能力の説明によって測定した配合能力の評定を列記する。
【表1】
【0129】
表1に示す結果によると、ジブロックサンプルSEP-1及びEEPS-1は、ロールミル配合評価において良好に配合されて回転ローラ上に滑らかでかつ透明なバンドを形成することが明らかである。これは、非常に予想外なことに、230℃/5kgにおいて測定されたMFI値によって示されるような高い分子量及び高い溶融粘度のSEP-1及びEEPS-1の双方が良好に配合可能であるということである。例えば、ジブロックSEP-1は、121000のMwを有する。比較として、95000の重量平均分子量のトリブロックSEPS-1は、ロールミルにおいて配合するのが非常に難しく、回転ローラ上に不透明のバンドを形成した。
【0130】
以下の実施例(Exと略記する)及び比較例(Comp Exと略記する)において、スチレン系ブロック共重合体を有機過酸化物及び発泡剤と混合して架橋発泡体を調製した。
【0131】
実施例1では、100重量部のSEP-1の発泡組成物、部分水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体、樹脂成分(ここではSEP-1)の総重量を基準として0.4重量部のビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)-ベンゼン(BIPB)、樹脂成分の総重量を基準として3.0重量部のアゾジカルボンアミド(AC)、樹脂成分の総重量を基準として1重量部の酸化亜鉛、樹脂成分の総重量を基準として1重量部のステアリン酸、及び樹脂成分の総重量を基準として10重量部の炭酸カルシウムを、120℃に設定されたロール表面温度を有するロールミルにおいて10分間にわたって混合及び混錬した。SEP-1が約121000の重量平均分子量を有するにもかかわらず、それは発泡調合物の他の内容物との混合において良好に配合された。
【0132】
そして、配合組成物をプレス型内で100kgf/cm2の圧力で175℃及び10分の条件下でその後に加圧及び加熱して架橋発泡体を得た。その後、発泡体特性を上記方法に従って決定した。その結果を以下の表2に示す。
【0133】
実施例2~実施例6を、様々な重合体成分及び種々の過酸化物含有量を表2に列記するように使用したことを除いて実施例1と同じ方法に従って調製及び試験した。実施例4~実施例6は、EVA及び様々なスチレン系-イソプレンジブロック共重合体樹脂の混合物に基づくものであった。
【0134】
比較例1では、EVA発泡体を実施例1と同じ方法に従って調製及び試験した。
【0135】
比較例2~比較例5を、様々な重合体成分及び種々の過酸化物含有量を以下の表3に列記するように使用したことを除いて実施例1と同じ方法に従って調製した。比較例2及び比較例3は、EVA-1と、それぞれ、部分的に水素化されたSEPS-1トリブロック及び完全に水素化されたSEPS-2トリブロックとの混合物に基づくものであった。比較例4及び比較例5は、EVA-1と、それぞれ、部分的に水素化されたEEPS-1ジブロック及び完全に水素化されたEEPS-2ジブロックの混合物に基づくものであった。
【0136】
実施例1~6及び比較例1の結果を表2に示し、比較例2~比較例5の結果を表3に示す。
【表2】
【表3】
【0137】
比較例1は、スチレン系-イソプレンジブロック共重合体を含む実施例1~6と滑り防止性能を比較するのに役立つ。表2に示すように、実施例1~6の全ての発泡体は、比較例1のEVA-1発泡体よりも優れた滑り防止特性を示す。さらに、比較例2~比較例5の発泡体の全ては、実施例3~実施例6の発泡体よりも低い滑り防止特性を示す。これらの結果は、スチレン系-イソプレンジブロック共重合体を含む組成によって調製された発泡体は向上した滑り防止特性を有することを示す。
【0138】
結論として、本開示は、本開示の水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体又は本開示の水素化スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びエチレン共重合体のブレンドを含む架橋性及び発泡性組成物によって得られた架橋発泡体を提供する。本開示の架橋発泡体は、少なくとも反発弾性、軽量性、恒久的な圧縮永久歪み及び引裂性の観点で、優れた滑り防止特性及び優れたバランスの力学的特性を示す。さらに、架橋発泡体は、靴のミッドソール及びアウトソール、自動車部品、土木工学及び建築用途、家電部品、スポーツ用品、その他広範な他の分野などの種々の成形品として適宜使用可能である。特に、架橋発泡体は、履物のアウトソール用途に対する重要な特徴である優れた滑り防止特性を達成する。
【0139】
本開示をその実施形態との関連で説明したが、以下に特許請求されるような本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく多数の他の可能な変形及び変更がなされ得ることが理解されるべきである。