(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】粒状酸化マグネシウム
(51)【国際特許分類】
C01F 5/02 20060101AFI20241018BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20241018BHJP
A01N 59/06 20060101ALI20241018BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C01F5/02
A01K63/04 F
A01N59/06 Z
A01P3/00
(21)【出願番号】P 2022125257
(22)【出願日】2022-08-05
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 国男
(72)【発明者】
【氏名】西田 直人
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-502340(JP,A)
【文献】特開2019-055914(JP,A)
【文献】特開2007-070219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00-61/95;63/04
A01N 59/06
A01P 3/00
A23K 50/00-50/90
C01F 5/02- 5/12
C02F 1/00- 1/78
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理として
イオン交換水中での超音波分散処理を行わないでレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(A)が100~700μmであり、
前処理として
イオン交換水中での出力40Wで3分間の分散処理を行った後にレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(B)が0.1~10μmであって、
BET比表面積が70m
2/g以上であることを特徴とする粒状酸化マグネシウム。
【請求項2】
目開き0.15mmの篩下質量の割合が60%以下である請求項1記載の粒状酸化マグネシウム。
【請求項3】
酸化マグネシウムの含有量が70質量%以上である請求項1又は2に記載の粒状酸化マグネシウム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状酸化マグネシウムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤潮がより多くの漁業被害を伴うようになり、大きな社会問題となっている。これまで、一般的な赤潮対策としては、物理的手法(養殖用の筏を海底へ移動させる、海面の赤潮を回収する、海水を撹拌循環させ赤潮の濃度を下げるなど)や化学的手法(活性白土やモンモリロナイトなどの粘土及び粘土機能賦活剤、アクリノール、水酸化マグネシウムの投入など)や生物的手法(海洋において互いに影響を及ぼしあっている微細藻と従属栄養細菌の関係を応用した殺藻細菌や殺藻ウイルスなど)が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、即効性を有し、赤潮の駆除効率を大幅に向上させた赤潮駆除剤として、酸化マグネシウムを含有するものが開示されている。また、特許文献2には、苦土系粉粒体からなる底質改善剤が開示されている。
【0004】
酸化マグネシウムとしては、粗粒または顆粒のものが提案されている(例えば、特許文献3,4参考)。これらにおいては、BET比表面積は最大でも60m2/gである。また、所定の粒子形態とすることで、樹脂やゴムに配合した際に材料物性の低下をきたさない高活性の酸化マグネシウム粒子が提案されている(例えば、特許文献5,6参照)。これらに記載されている酸化マグネシウム粒子は、平均粒子径が10μm以下の粉末状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-55914号公報
【文献】特開平8-19774号公報
【文献】特表平6-500305号公報
【文献】国際公開第2018/030225号
【文献】特開2016-106160号公報
【文献】特開2016-003174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化マグネシウムは、底質の改善や赤潮駆除などを目的として海洋、湖沼、河川などに散布されるが、水生生物に悪影響を及ぼさないこと、特に毒性抵抗の低い稚魚や稚貝の斃死を引き起こさないことが求められる。
【0007】
そこで本発明は、稚魚に対する安全性を備えた粒状酸化マグネシウムを提供することを目的とする。本発明の粒状酸化マグネシウムは、特に赤潮駆除剤として好適に用いることが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る粒状酸化マグネシウムは、前処理として分散処理を行わないでレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(A)が100~700μmであり、前処理として分散処理を行った後にレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(B)が0.1~10μmであって、BET比表面積が70m2/g以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、稚魚に対する安全性を備えた粒状酸化マグネシウムを提供することができる。本発明の粒状酸化マグネシウムは、特に赤潮駆除剤として好適に用いることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、高活性かつ前処理として分散処理を行わないで測定した平均粒子径の大きい粒状酸化マグネシウムが、赤潮に対する駆除効果と稚魚に対する安全性を兼ね備えた赤潮駆除剤として好適に用い得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
本発明の粒状酸化マグネシウムは造粒物であり、前処理として分散処理を行わないで測定した、レーザー回折散乱法による平均粒子径(A)が、100~700μmの範囲内である。
【0012】
本明細書における分散処理とは、液中での超音波分散処理をさす。通常、レーザー回折散乱法により粒度分布を測定する際には、前処理として超音波分散装置にて分散処理を行う。超音波分散装置は粒度分布測定装置に内蔵されているものを使っても良いし、別の超音波分散装置を使うこともできる。レーザー回折散乱法による粒度分布の測定においては、特筆しない限り、分散処理を行った後に粒度分布を測定したものである。
【0013】
本発明における平均粒子径(A)は、前処理として通常行われる分散処理を行わないでレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径であり、造粒物の平均粒子径(造粒径)ということができる。造粒物は、海域に投入された際にある程度の造粒径を保持し、その後、海中で徐々に崩壊する。
【0014】
平均粒子径(A)が100μm未満の場合には、赤潮プランクトンの細胞に作用して殺滅効果は期待できるが、他の生物への刺激による斃死を引き起こすおそれがある。海洋生物の中でも脆弱な稚魚などは、わずかな刺激により斃死する可能性が高い。一方、700μmより大きい場合には、海中での沈降速度が速すぎて赤潮内の滞留時間が短くなり、赤潮駆除効果が小さくなる。平均粒子径(A)は、150~500μmの範囲内であることが好ましい。
【0015】
本発明の粒状酸化マグネシウムは、前処理として分散処理を行った後にレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(B)が、0.1~10μmの範囲内である。平均粒子径(B)は、レーザー回折散乱法による粒度分布測定装置を用いて測定することができる。平均粒子径(B)が大きすぎる場合には、海中で粒状物が徐々に拡散した後の粒子の存在密度が小さくなることから赤潮防除効果が低下する。一方、小さすぎると粒子が嵩高くなり粒状物の製造効率が悪くなる。平均粒子径(B)は、0.5~6.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0016】
粒状酸化マグネシウムの平均粒子径(B)は、原料として用いる水酸化マグネシウムの平均粒子径に起因する。一方、粒状酸化マグネシウムの平均粒子径(A)は、焼成前の水酸化マグネシウムなどの造粒条件を調整することによって所望の範囲に制御することができる。粒状酸化マグネシウムの平均粒子径の制御法については、追って詳細に説明する。
【0017】
本発明の粒状酸化マグネシウムは、BET比表面積が70m2/g以上に規定されるので高活性である。BET比表面積が70m2/g未満の場合には、赤潮防除効果が低下する。粒状酸化マグネシウムのBET比表面積は、好ましくは80m2/g以上であり、より好ましくは120m2/g以上である。なお、酸化マグネシウムの生産効率を考慮すると、BET比表面積の上限は、300m2/g程度である
【0018】
粒状酸化マグネシウムのBET比表面積は、原料となる水酸化マグネシウムの焼成温度によって所望の範囲に制御することができる。焼成温度が低いほどBET比表面積は増大する傾向にある。
【0019】
本発明の粒状酸化マグネシウムは、目開き0.15mmの篩下質量の割合が60%以下であることが好ましい。目開き0.15mmの篩下質量の割合が60%以下であることは、粉状物が少ないことを意味し、これによって稚魚の捕食による鰓への詰りに対する安全性がよりいっそう高められる。目開き0.15mmの篩下質量の割合は、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明の粒状酸化マグネシウムは、例えば、粒状の水酸化マグネシウムを焼成して製造することができる。粒状の水酸化マグネシウムは、篩別粒度が、5.0~0.5mm、好ましくは2.0~0.5mmの範囲内に調製したものが好ましい。水酸化マグネシウムとしては、海水中のマグネシウム塩と水酸化カルシウムとを反応させた、所謂海水法による水酸化マグネシウムなどを使用することができる。
【0021】
なお、篩別粒度が5.0~0.5mmの粒状の水酸化マグネシウムは、例えば、レーザー回折散乱法による平均粒子径が0.1~10μmの水酸化マグネシウム粒子を造粒して製造することができる。造粒物の平均粒子径は、造粒条件を調整して制御することができる。
【0022】
水酸化マグネシウムの焼成温度は、450~800℃の範囲が好ましい。焼成温度が450℃未満の場合には、焼成が不十分となり未分解の水酸化マグネシウムが増加する。一方、焼成温度が800℃を超えると、BET比表面積が小さくなる。例えば、箱型焼成炉やロータリー式の焼成炉等を用いて、60~180分程度、水酸化マグネシウムを焼成することにより、所望の粒状酸化マグネシウムを製造することができる。得られた粒状酸化マグネシウムは、必要に応じて分級を行って所定の粒度に調整してもよい。
【0023】
本発明の粒状酸化マグネシウムは、水酸化マグネシウム以外の原料を用いて製造することもできる。例えば、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムなどのマグネシウム塩を焼成して熱分解する方法などが挙げられる。炭酸マグネシウムとしては、マグネサイト鉱石などを使用することができる。
【0024】
本発明の粒状酸化マグネシウムは、以下の条件を満たしているので、稚魚に対する安全性を備えた赤潮駆除剤として用いることができる。
・前処理として分散処理を行わないでレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(A)が100~700μm
・分散処理を行った後にレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(B)が0.1~10μm
・BET比表面積が70m2/g以上
【0025】
駆除対象となる赤潮は特に制限されないが、一般に赤潮の原因となるプランクトンとして知られているシャトラネ・マリナ、ヘテロシグマ・アカシオ、カレニア・ミキモトイなどの種々の植物性プランクトンに特に効果を奏する。
【0026】
本発明の粒状酸化マグネシウムは、原料に由来して含まれる不純物や原料の一部が残留していてもよい。酸化マグネシウムの含有量としては、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。
【0027】
粒状酸化マグネシウムは、必要に応じて界面活性剤、固着剤、分散剤及び/又は安定剤などを添加してもよい。
【0028】
本発明の粒状酸化マグネシウムを赤潮駆除剤として用いる場合は、任意の方法により赤潮を駆除することができる。例えば、赤潮が発生している海域若しくは発生傾向のある海域(赤潮発生海域)に、赤潮駆除剤をそのまま散布することができる。赤潮駆除剤は、水又は海水へ分散させたスラリーとして用いてもよい。分散性と作業性の観点からは、赤潮駆除剤スラリーが好ましく、スラリー中のMgO濃度は、0.1~20%程度であることがより好ましい。散布方法としては、ひしゃく、散布機などによる散布、移動しながらの船上や動力式散水機を使用した散水、ドローンやヘリコプターなどによる空中散布などが挙げられる。
【0029】
粒状酸化マグネシウムの海への散布量は、海域における赤潮の発生の状況や目的(予防又は発生制御)などによっても異なるが、通常、海域の単位面積に対して粒状酸化マグネシウムが50~200g/m2程度となるような割合で、1~3日に1回程度供することができる。
【0030】
本発明の粒状酸化マグネシウムは、赤潮を構成するプランクトンに付着してプランクトンを沈降させるとともに、プランクトンの細胞を損傷する効果を有している。このため、通常赤潮が発生している海域の単位面積あたりの散布量として施工される。なお、赤潮が発生している場合や発生傾向がある場合は、毎日使用することが好ましい。
【0031】
いずれの方法で海域に散布した場合でも、本発明の粒状酸化マグネシウムを用いることによって、稚魚の斃死を顕著に抑制しつつ赤潮駆除という効果が得られる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではなく、また、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0033】
(酸化マグネシウムの製造)
まず、サンプルとなる酸化マグネシウム(MgO(A)、MgO(B)、MgO(C)を準備した。
粒状の水酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、UD65、篩別粒度2.0~0.5mm)を、電気加熱外熱式ロータリーキルンを用いて、電気炉温度715℃、滞留時間30分にて焼成した。こうして得られた高活性粒状酸化マグネシウムを、MgO(A)とした。
微粉状中活性酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、UC80、BET比表面積、26m2/g)を、MgO(B)とした。
微粉状高活性酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、UCM150、BET比表面積、174m2/g)を、MgO(C)とした。
【0034】
各酸化マグネシウムについて、篩による粒度、平均粒子径(A)、平均粒子径(B)、およびBET比表面積、酸化マグネシウム含有量を求めた。それぞれの測定方法は、以下のとおりである。
【0035】
<篩による粒度>
目開き0.5mm、0.3mm、0.15mmの円形標準篩を、上から目開きが大きい順に積み重ね、上からサンプルの酸化マグネシウム50gを投入した。積み重ねた円形標準篩を、電磁式振盪機(ANALYSETTE 3 SPARTAN FRITSH製)を用い、振幅2mmの条件にて5分間振盪して、サンプルの篩分けを行った。振盪後、+0.5mm、-0.5mm+0.3mm、-0.3mm+0.15mm、-0.15mmそれぞれの質量を測定し、全量に対する割合を求めて篩による粒度とした。
【0036】
<前処理として分散処理を行わないで測定した平均粒子径(A)>
レーザー回折式粒度分布測定装置(MICROTRAC MT3300EXII マイクロトラック・ベル(株)製)を使用した。イオン交換水50mLとサンプル0.5gをビーカーに収容し、手で軽くビーカーを振って混ぜ合わせた。その後、直ちに粒度分布測定装置に投入し体積基準の平均粒子径(A)を測定した。
【0037】
<前処理として分散処理を行った後に測定した平均粒子径(B)>
レーザー回折式粒度分布測定装置(MICROTRAC MT3300EXII マイクロトラック・ベル(株)製)を使用した。イオン交換水50mLとサンプル0.5gをビーカーに収容し、手で軽くビーカーを振って混ぜ合わせた。その後、粒度分布測定装置に投入したのち装置内蔵の超音波分散装置にて、出力40Wで3分間の超音波分散処理を施してから、体積基準の平均粒子径(B)を測定した。
【0038】
<BET比表面積の測定>
BET比表面積測定装置(MOUNTECH社製、Macsorb HM model-1210)にて、サンプルセルに、サンプルを約0.1g入れ、180℃で10分間の前処理により脱気後、BET1点法により測定した。
【0039】
<酸化マグネシウム含有量>
試料1.0gを量り取り、濃塩酸10mLと純水20mLを加えて加熱溶解した後、純水で250mLにメスアップした。5mLを分取し、さらに純水で150mLに希釈し、不純物金属イオンをマスクするため、50体積%トリエタノールアミン水溶液5mLを添加した。塩化アンモニウム・アンモニア緩衝液でpHを9.8~10.2に調整し、指示薬としてエリオクロムブラックT溶液を少量加え、0.05規定のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム水溶液で滴定し、以下の式からMgO含有量を求めた。
【0040】
【0041】
得られた結果を、下記表にまとめる。
【0042】
【0043】
<赤潮駆除剤の調製>
サンプルとしての酸化マグネシウムは、殺菌した濾過海水に添加して、所定のMgO濃度の赤潮駆除剤スラリーを調製する。MgO濃度は、100~1000ppmの範囲内で適宜選択することができる。
【0044】
<安全性評価方法>
所定濃度に希釈された赤潮駆除剤スラリーを収容した水槽に、平均尾叉長55.5mm、平均体重2.7gのブリの稚魚を5匹入れて、経過時間ごとの生残数を調査する。飼育開始から6時間経過後の斃死数がゼロであれば安全性は合格とする。6時間未満に斃死が確認された場合には、安全性は不十分であり、例えば3時間で斃死が確認された場合には、安全性を有していない。
【0045】
<生残細胞密度評価方法>
赤潮プランクトン(K.mikimotoi強毒株)を含む海水をろ過海水にて希釈して、約1,000cells/cm3~20,000cells/cm3に調整する。これを評価用の試料として用いる。
試料と赤潮駆除剤スラリー各1mLを、それぞれ別のマイクロプレートへ収容する。マイクロピペットを用いて双方のマイクロプレートから供試液計2mLを吸引し、マイクロプレートへの吐出とへの吸引を繰り返して混合する。その後、室温(22℃)で静置する。所定の経過時間後、顕微鏡にてマイクロプレート中の赤潮プランクトンを観察し、遊泳している、もしくは容器の底で活動している赤潮プランクトンの数を計測して、生残赤潮プランクトン数(A)とする。
ブランクとして、試料1mLを殺菌したろ過海水1mLにて希釈した後、赤潮プランクトンの数を計測して、初期赤潮プランクトン数(B)とし、下記により生残細胞密度を求める。
生残細胞密度(%)=((A)/(B))×100
120分経過後の生残細胞密度が50%以下であれば、所望の赤潮駆除効果を有する。
【0046】
(実施例1)
MgO(A)をろ過海水に添加して、MgO濃度1000ppm赤潮駆除剤スラリーを調製した。得られた潮駆除剤スラリーを海水で希釈して、MgO濃度が500ppmとなるように濃度を調整し、水槽に収容した。上記の方法により稚魚に対する安全性を調べたところ、飼育開始から6時間経過後も斃死はなく、安全性が確認された。
上述の赤潮駆除剤スラリーを用い、上記の方法によりMgO濃度500ppmにおける生残細胞密度を測定した。120分経過後の生残細胞密度は50%以下であり、所望の赤潮駆除効果を備えることが確認された。
【0047】
(実施例2)
MgO濃度を400ppmとした以外は実施例1と同様にして、赤潮駆除剤スラリーを調製した。得られた赤潮駆除剤スラリーを海水で希釈して、MgO濃度が200ppmとなるように濃度を調整し、水槽に収容した。上記の方法により稚魚に対する安全性を調べたところ、飼育開始から6時間経過後も斃死はなく、安全性が確認された。
上述の赤潮駆除剤スラリーを用い、上記の方法によりMgO濃度200ppmにおける生残細胞密度を測定した。120分経過後の生残細胞密度は50%以下であり、所望の赤潮駆除効果を備えることが確認された。
【0048】
(比較例1)
MgO(A)を同量のMgO(C)に変更した以外は実施例1と同様にして、赤潮駆除剤スラリーを調製した。得られた赤潮駆除剤スラリーを海水で希釈して、MgO濃度が500ppmとなるように濃度を調整し、水槽に収容した。上記の方法により稚魚に対する安全性を調べたところ、3時間までに5匹とも斃死した。
【0049】
(比較例2)
MgO濃度を200ppmに変更した以外は比較例1と同様にして、赤潮駆除剤スラリーを調製した。得られた赤潮駆除剤スラリーを海水で希釈して、MgO濃度が200ppmとなるように濃度を調整し、水槽に収容した。上記の方法により稚魚に対する安全性を調べたところ、3時間までに5匹とも斃死した。
【0050】
(比較例3)
MgO濃度を100ppmに変更した以外は比較例1と同様にして、赤潮駆除剤スラリーを調製した。得られた赤潮駆除剤スラリーを海水で希釈して、MgO濃度が100ppmとなるように濃度を調整し、水槽に収容した。上記の方法により稚魚に対する安全性を調べたところ、3時間までに5匹とも斃死した。
【0051】
(比較例4)
MgO(C)を同量のMgO(B)に変更した以外は比較例2と同様にして、赤潮駆除剤スラリーを調製した。得られた赤潮駆除剤スラリーを海水で希釈して、MgO濃度が200ppmとなるように濃度を調整し、水槽に収容した。上記の方法により稚魚に対する安全性を調べたところ、3時間までに5匹とも斃死した。
【0052】
比較例1~4の赤潮駆除剤スラリーを用い、上記の方法により生残細胞密度を測定した。120分経過後の生残細胞密度は50%以下であった。
【0053】
実施例の結果に示されるように、MgO(A)は、分散処理を行わないでレーザー回折散乱法により得られた平均粒子径が100~700μm、分散処理を行った後にレーザー回折散乱法により得られた平均粒子径が0.1~10μm、かつBET比表面積が70m2/g以上の粒状酸化マグネシウムであるので、稚魚に対する安全性を備えた赤潮駆除剤を得ることができる。
【0054】
これに対し、分散処理を行わないでレーザー回折散乱法により得られた平均粒子径が100~700μmという条件が欠ける場合には、分散処理を行った後にレーザー回折散乱法により得られた平均粒子径が0.1~10μm、BET比表面積が70m2/g以上であっても、稚魚に対する安全性を備えた赤潮駆除剤を得ることはできないことが、比較例の結果から明らかである。