(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】センサ素子及びガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20241018BHJP
G01N 27/409 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01N27/416 331
G01N27/409 100
(21)【出願番号】P 2022125362
(22)【出願日】2022-08-05
【審査請求日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2021137151
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 哲
(72)【発明者】
【氏名】惣川 真吾
(72)【発明者】
【氏名】山村 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】氏原 浩佑
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-041431(JP,A)
【文献】特表2009-531681(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0308748(US,A1)
【文献】特開2012-211863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/409
G01N 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性の固体電解質層を含み、被測定ガスを導入して流通させる被測定ガス流通部が内部に設けられ、長手方向と短手方向と該長手方向及び該短手方向に垂直な厚さ方向とを有する板状の素子本体と、
前記被測定ガス流通部のうちの主ポンプ室の酸素濃度を調整する主ポンプセルと、
前記被測定ガス流通部のうちの前記主ポンプ室よりも下流側に設けられた補助ポンプ室の酸素濃度を調整する補助ポンプセルと、
前記被測定ガス流通部のうちの前記補助ポンプ室よりも下流側に設けられた測定室の酸素濃度を調整する測定用ポンプセルと、
前記素子本体を加熱する発熱体と、
を備え、
前記発熱体は、
前記短手方向に沿って並んでおり長さ方向が前記長手方向に沿っている第1外側直線部及び第2外側直線部と、
前記短手方向で前記第1外側直線部と前記第2外側直線部との間に配置され長さ方向が前記長手方向に沿っている第1内側直線部及び第2内側直線部と、
前記第1外側直線部と前記第1内側直線部とを前記長手方向の一端側で接続する第1屈曲部と、
前記第1内側直線部と前記第2内側直線部とを前記長手方向の他端側で接続する第2屈曲部と、
前記第2内側直線部と前記第2外側直線部とを前記長手方向の一端側で接続する第3屈曲部と、
を有し、
前記第1内側直線部及び前記第2内側直線部は、それぞれ、前記主ポンプ室を前記発熱体に向けて前記厚さ方向に投影した領域である主ポンプ室投影領域と少なくとも一部が重複しており、
前記第1内側直線部及び前記第2内側直線部は、それぞれ、前記補助ポンプ室を前記発熱体に向けて前記厚さ方向に投影した領域である補助ポンプ室投影領域と少なくとも一部が重複しており、
前記第1内側直線部及び前記第2内側直線部は、前記主ポンプ室投影領域と重複する部分における互いの前記短手方向の距離X1が、前記主ポンプ室投影領域の前記短手方向の幅Wpの1/3以上であり、
前記第1内側直線部及び前記第2内側直線部は、前記補助ポンプ室投影領域と重複する部分における互いの前記短手方向の距離X2が、前記幅Wpの0.4倍以上である、
センサ素子。
【請求項2】
前記距離X1が、前記幅Wpの0.4倍より大きい、
請求項1に記載のセンサ素子。
【請求項3】
前記発熱体のうち前記主ポンプ室及び補助ポンプ室を前記発熱体に向けて前記厚さ方向に投影した領域であるポンプ室投影領域と重複する部分であるポンプ室重複部分の単位長さあたりの抵抗値を単位抵抗値R1[μΩ/mm]とし、
前記発熱体のうち前記測定室を前記発熱体に向けて厚さ方向に投影した領域である測定室投影領域と重複する部分である測定室重複部分の単位長さあたりの抵抗値を単位抵抗値R3[μΩ/mm]としたときに、
700℃以上900℃以下の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R3/R1が値1未満である、
請求項1又は2に記載のセンサ素子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のセンサ素子を備えたガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子及びガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気ガスなどの被測定ガスにおけるNOxなどの特定ガス濃度を検出するガスセンサに用いられるセンサ素子が知られている。例えば、特許文献1には、複数の酸素イオン伝導性の固体電解質層の積層体と、積層体の内部に設けられた内部空所と、内部空所の酸素の汲み入れ及び汲み出しを行うポンプセルと、積層体の内部に配設された測定電極と、を備えたセンサ素子が記載されている。このセンサ素子でNOxの濃度を検出する場合、まず、内部空所における被測定ガスの酸素濃度を調整する。次に、酸素濃度が調整された後の被測定ガス中のNOxが測定電極の周囲で還元される。そして、測定電極の周囲の酸素を汲み出したときに流れるポンプ電流に基づいて、被測定ガス中のNOxの濃度が検出される。また、特許文献1のセンサ素子は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子を加熱して保温する温度調整の役割を担う発熱体を備えている。この発熱体は、直線部と屈曲部とを有している。そして、屈曲部は、700℃以上900℃以下の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位長さあたりの抵抗値が直線部と比べて低くなっている。これにより、直線部と比べて劣化しやすい屈曲部の温度を上昇しにくくして、屈曲部の劣化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発熱体がセンサ素子を加熱することで、センサ素子の内部空所の周辺に応力が生じる場合があった。この応力によりセンサ素子にクラックが生じる場合があるため、応力を低減することが望まれていた。特許文献1では、内部空所の周辺に生じる応力については考慮されていなかった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、発熱体の発熱時にセンサ素子の内部空所の周辺に生じる応力を低減することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
[1]本発明のセンサ素子は、
酸素イオン伝導性の固体電解質層を含み、被測定ガスを導入して流通させる被測定ガス流通部が内部に設けられ、長手方向と短手方向と該長手方向及び該短手方向に垂直な厚さ方向とを有する板状の素子本体と、
前記被測定ガス流通部のうちの主ポンプ室の酸素濃度を調整する主ポンプセルと、
前記被測定ガス流通部のうちの前記主ポンプ室よりも下流側に設けられた補助ポンプ室の酸素濃度を調整する補助ポンプセルと、
前記被測定ガス流通部のうちの前記補助ポンプ室よりも下流側に設けられた測定室の酸素濃度を調整する測定用ポンプセルと、
前記素子本体を加熱する発熱体と、
を備え、
前記発熱体は、
前記短手方向に沿って並んでおり長さ方向が前記長手方向に沿っている第1外側直線部及び第2外側直線部と、
前記短手方向で前記第1外側直線部と前記第2外側直線部との間に配置され長さ方向が前記長手方向に沿っている第1内側直線部及び第2内側直線部と、
前記第1外側直線部と前記第1内側直線部とを前記長手方向の一端側で接続する第1屈曲部と、
前記第1内側直線部と前記第2内側直線部とを前記長手方向の他端側で接続する第2屈曲部と、
前記第2内側直線部と前記第2外側直線部とを前記長手方向の一端側で接続する第3屈曲部と、
を有し、
前記第1内側直線部及び前記第2内側直線部は、それぞれ、前記主ポンプ室を前記発熱体に向けて前記厚さ方向に投影した領域である主ポンプ室投影領域と少なくとも一部が重複しており、
前記第1内側直線部及び前記第2内側直線部は、それぞれ、前記補助ポンプ室を前記発熱体に向けて前記厚さ方向に投影した領域である補助ポンプ室投影領域と少なくとも一部が重複しており、
前記第1内側直線部及び前記第2内側直線部は、前記主ポンプ室投影領域と重複する部分における互いの前記短手方向の距離X1が、前記主ポンプ室投影領域の前記短手方向の幅Wpの1/3以上であり、
前記第1内側直線部及び前記第2内側直線部は、前記補助ポンプ室投影領域と重複する部分における互いの前記短手方向の距離X2が、前記幅Wpの0.4倍以上である、
ものである。
【0008】
このセンサ素子では、発熱体とセンサ素子の内部空所(主ポンプ室,補助ポンプ室,及び測定室)との位置関係が、距離X1が幅Wpの1/3以上であり、且つ距離X2が幅Wpの0.4倍以上であるという条件を満たしている。距離X1は、発熱体の第1内側直線部及び第2内側直線部のうち主ポンプ室を発熱体に向けて厚さ方向に投影した領域である主ポンプ室投影領域と重複する部分における互いの短手方向の距離である。距離X2は、発熱体の第1内側直線部及び第2内側直線部のうち補助ポンプ室を発熱体に向けて厚さ方向に投影した領域である補助ポンプ室投影領域と重複する部分における互いの短手方向の距離である。幅Wpは、主ポンプ室投影領域の短手方向の長さである。上記の条件を満たすことで、発熱体の発熱時に内部空所(主ポンプ室,補助ポンプ室,及び測定室)の周辺に生じる応力を低減できる。
【0009】
[2]上述したセンサ素子(前記[1]に記載のセンサ素子)において、前記距離X1が、前記幅Wpの0.4倍より大きくてもよい。こうすれば、上述した応力を低減する効果が高まる。
【0010】
[3]上述したセンサ素子(前記[1]又は[2]に記載のセンサ素子)において、前記発熱体のうち前記主ポンプ室及び補助ポンプ室を前記発熱体に向けて前記厚さ方向に投影した領域であるポンプ室投影領域と重複する部分であるポンプ室重複部分の単位長さあたりの抵抗値を単位抵抗値R1[μΩ/mm]とし、前記発熱体のうち前記測定室を前記発熱体に向けて厚さ方向に投影した領域である測定室投影領域と重複する部分である測定室重複部分の単位長さあたりの抵抗値を単位抵抗値R3[μΩ/mm]としたときに、700℃以上900℃以下の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R3/R1が値1未満であってもよい。ここで、単位抵抗値R3が大きすぎると主ポンプ室及び補助ポンプ室の周辺の温度と測定室の周辺の温度との差が小さくなりすぎて、特定ガス濃度の検出精度が低下する場合がある。単位抵抗値比R3/R1が値1未満であることで、そのような検出精度の低下を抑制できる。
【0011】
この場合において、前記測定室重複部分は、前記第2屈曲部の少なくとも一部であってもよい。言い換えると、前記発熱体は、前記第2屈曲部が測定室投影領域と重複していてもよい。
【0012】
[4]本発明のガスセンサは、前記[1]~[3]のいずれかのセンサ素子を備えたものである。そのため、このガスセンサは、上述した本発明のセンサ素子と同様の効果、例えば発熱体の発熱時にセンサ素子の内部空所の周辺に生じる応力を低減できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ガスセンサ100の構成の一例を概略的に示した断面模式図。
【
図5】実験例1~9の距離X1,X2,及び内部空所の応力評価の結果をプロットしたグラフ。
【
図6】実験例1~9の距離X1,X2,及び外周部の応力評価の結果をプロットしたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるガスセンサ100の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。なお、ガスセンサ100は、例えば自動車の排気ガスなどの被測定ガスにおけるNOxなどの特定ガスの濃度を、センサ素子101により検出するものである。また、センサ素子101は長尺な直方体形状をしており、このセンサ素子101の長手方向(
図1の左右方向)を前後方向とし、センサ素子101の厚さ方向(
図1の上下方向)を上下方向とする。また、センサ素子101の幅方向(前後方向及び上下方向に垂直な方向)を左右方向とする。
【0015】
センサ素子101は、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された積層体を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
【0016】
センサ素子101の前端部側(
図1の左端部側)であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40と、第4拡散律速部60と、第3内部空所61とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
【0017】
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40と、第3内部空所61とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間である。
【0018】
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。また、第4拡散律速部60は、第2固体電解質層6の下面との隙間として形成された1本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第3内部空所61に至る部位を被測定ガス流通部とも称する。
【0019】
また、被測定ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
【0020】
大気導入層48は、多孔質セラミックスからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
【0021】
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内,第2内部空所40内,及び第3内部空所61内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。基準電極42は、多孔質サーメット電極(例えば、PtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。
【0022】
被測定ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの圧力変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所20へ導入される被測定ガスの圧力変動はほとんど無視できる程度のものとなる。第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
【0023】
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
【0024】
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
【0025】
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0026】
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
【0027】
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
【0028】
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力(電圧V0)を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、電圧V0が目標値となるように可変電源24の電圧Vp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所20内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
【0029】
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
【0030】
第2内部空所40は、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整を行うための空間として設けられている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
【0031】
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101の外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
【0032】
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0033】
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
【0034】
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
【0035】
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力(電圧V1)に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
【0036】
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その電圧V0の上述した目標値が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
【0037】
第4拡散律速部60は、第2内部空所40で補助ポンプセル50の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所61に導く部位である。第4拡散律速部60は、第3内部空所61に流入するNOxの量を制限する役割を担う。
【0038】
第3内部空所61は、あらかじめ第2内部空所40において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第4拡散律速部60を通じて導入された被測定ガスに対して、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、第3内部空所61において、測定用ポンプセル41の動作により行われる。
【0039】
測定用ポンプセル41は、第3内部空所61内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、第3内部空所61に面する第1固体電解質層4の上面に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
【0040】
測定電極44は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を、内側ポンプ電極22よりも高めた材料にて構成された多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第3内部空所61内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。
【0041】
測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
【0042】
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力(電圧V2)に基づいて可変電源46が制御される。
【0043】
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部60を通じて第3内部空所61内の測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された電圧V2が一定(目標値)となるように可変電源46の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
【0044】
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42とを組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
【0045】
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力(電圧Vref)によりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
【0046】
このような構成を有するガスセンサ100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。したがって、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
【0047】
さらに、センサ素子101は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータコネクタ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74と、圧力放散孔75とを備えている。また、ヒータ部70は、セラミックスからなる第1基板層1,第2基板層2,及び第3基板層3を備えている。ヒータ部70は、ヒータ72と、ヒータ72を囲む第2基板層2及び第3基板層3を備えたセラミックスヒータとして構成されている。ヒータ72は、
図2に示すように、発熱部76とリード部85とを備えている。
【0048】
ヒータコネクタ電極71は、第1基板層1の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータコネクタ電極71を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
【0049】
ヒータ72の発熱部76は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ72のリード部85は、スルーホール73を介してヒータコネクタ電極71と接続されており、該ヒータコネクタ電極71を通して外部より給電されることにより発熱部76が発熱し、センサ素子101を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
【0050】
また、ヒータ72の発熱部76は、第1内部空所20から第3内部空所61までに渡って埋設されており、センサ素子101全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
【0051】
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3基板層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
【0052】
圧力放散孔75は、第3基板層3及び大気導入層48を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
【0053】
ヒータ72の発熱部76及びリード部85について詳細に説明する。発熱部76は、抵抗発熱体であり、
図2に示すように、両端がリード部85に接続された帯状の一筆書き形状をしている。発熱部76は、屈曲部77と、直線部78とを有している。屈曲部77は、第1屈曲部77a,第2屈曲部77b,及び第3屈曲部77cを有している。直線部78は、第1外側直線部78a,第2外側直線部78b,第1内側直線部79a,及び第2内側直線部79bを有している。複数の屈曲部77及び複数の直線部78は、電気的に直列に接続されている。具体的には、第1リード85aから順に、第1外側直線部78a,第1屈曲部77a,第1内側直線部79a,第2屈曲部77b,第2内側直線部79b,第3屈曲部77c,及び第2外側直線部78bの順に互いに直列に接続されており、第2外側直線部78bが第2リード85bに接続されている。発熱部76は、左右対称の形状をしている。
【0054】
複数の直線部78は、センサ素子101の短手方向(左右方向)に沿って並んでいる。具体的には、センサ素子101の左から右に向かって、第1外側直線部78a,第1内側直線部79a,第2内側直線部79b,及び第2外側直線部78bがこの順で配置されている。そのため、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bは、左右方向で第1外側直線部78aと第2外側直線部78bとの間に配置されている。第1外側直線部78a,第2外側直線部78b,第1内側直線部79a,及び第2内側直線部79bは、いずれも長さ方向が長手方向に沿うように配置されている。第1外側直線部78aは後端が第1リード85aに接続され、第2外側直線部78bは後端が第2リード85bに接続されている。また、第1内側直線部79aは、前側部分79a1と、前側部分79a1の後方に配置された後側部分79a3と、前側部分79a1及び後側部分79a3を接続する接続部79a2と、を有している。第2内側直線部79bは、前側部分79b1と、前側部分79b1の後方に配置された後側部分79b3と、前側部分79b1及び後側部分79b3を接続する接続部79b2と、を有している。
【0055】
直線部78に関して、「長さ方向が長手方向に沿うように配置されている」とは、長さ方向がセンサ素子101の長手方向(前後方向)と平行な場合と、長さ方向がセンサ素子101の長手方向(前後方向)から傾斜している場合とを含む。例えば、本実施形態では、第1外側直線部78a,第2外側直線部78b,前側部分79a1,後側部分79a3,前側部分79b1,及び後側部分79b3は、長さ方向がセンサ素子101の長手方向と平行である。接続部79a2及び接続部79b2は、長さ方向がセンサ素子101の長手方向から傾斜している。
【0056】
複数の屈曲部77は、各々が、左右方向に隣り合う直線部78同士を接続している。具体的には、第1屈曲部77aが第1外側直線部78aと第1内側直線部79aとを長手方向の一端側(ここでは前側)で接続している。第2屈曲部77bが第1内側直線部79aと第2内側直線部79bとを長手方向の他端側(ここでは後側)で接続している。第3屈曲部77cが第2内側直線部79bと第2外側直線部78bとを長手方向の一端側(ここでは前側)で接続している。第1~第3屈曲部77a~77cは、いずれも曲線状に屈曲しており半円の円弧状をしている。なお、第1~第3屈曲部77a~77cは、折れ線状に屈曲した形状であってもよい。
【0057】
発熱部76は、被測定ガス流通部の内部空所(ここでは第1内部空所20,第2内部空所40,及び第3内部空所61)との位置関係が調整されている。これについて説明する。なお、第1内部空所20は主ポンプ室の一例であり、第2内部空所40は補助ポンプ室の一例であり、第3内部空所61は測定室の一例である。
図2では、第1内部空所20を発熱部76に向けて厚さ方向(ここでは下方向)に投影した領域である主ポンプ室投影領域Apを一点鎖線枠で示している。同様に、第2内部空所40及び第3内部空所61をそれぞれ発熱部76に投影した補助ポンプ室投影領域Aq,測定室投影領域Amも一点鎖線枠で
図2に示している。
図2に示すように、本実施形態では、主ポンプ室投影領域Ap,補助ポンプ室投影領域Aq,及び測定室投影領域Amはそれぞれ矩形の領域とした。すなわち、本実施形態では、第1内部空所20,第2内部空所40及び第3内部空所61はそれぞれ上面視での形状が矩形とした。
【0058】
発熱部76の第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bは、それぞれ、主ポンプ室投影領域Apと少なくとも一部が重複している。具体的には、第1内側直線部79aのうち前側部分79a1と、第2内側直線部79bのうち前側部分79b1とが、それぞれ、主ポンプ室投影領域Apと少なくとも一部が重複している。言い換えると、第1内部空所20の直下に第1内側直線部79a及び第2内側直線部79b(特に前側部分79a1及び前側部分79b1)が存在している。また、発熱部76の第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bは、それぞれ、補助ポンプ室投影領域Aqと少なくとも一部が重複している。具体的には、第1内側直線部79aのうち後側部分79a3と、第2内側直線部79bのうち後側部分79b3とが、それぞれ、補助ポンプ室投影領域Aqと少なくとも一部が重複している。言い換えると、第2内部空所40の直下に第1内側直線部79a及び第2内側直線部79b(特に後側部分79a3及び後側部分79b3)が存在している。なお、本実施形態では、第2屈曲部77bの一部、具体的には第2屈曲部77bのうち後側部分79a3及び後側部分79b3と接続される部分も、補助ポンプ室投影領域Aqと重複している。また、発熱部76は、測定室投影領域Amと少なくとも一部が重複している。具体的には、発熱部76のうち第2屈曲部77bが、測定室投影領域Amと少なくとも一部が重複している。なお、本実施形態では、接続部79a2及び接続部79b2は、前後方向で主ポンプ室投影領域Apと補助ポンプ室投影領域Aqとの間に配置されており、主ポンプ室投影領域Ap及び補助ポンプ室投影領域Aqとは重複していない。また、第1屈曲部77a,第3屈曲部77c,第1外側直線部78a,及び第2外側直線部78bは、それぞれ、主ポンプ室投影領域Ap,補助ポンプ室投影領域Aq,及び測定室投影領域Amのいずれとも重複していない。本実施形態では、発熱部76は左右対称であり、且つ発熱部76の左右の中心軸と、主ポンプ室投影領域Apの左右の中心軸と、補助ポンプ室投影領域Aqの左右の中心軸と、測定室投影領域Amの左右の中心軸と、がいずれも一致している。
【0059】
発熱部76の第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bは、主ポンプ室投影領域Apと重複する部分における互いの短手方向(左右方向)の距離X1が、主ポンプ室投影領域Apの短手方向の幅Wpの1/3以上である。すなわち、X1≧1/3×Wpを満たす。本実施形態では、発熱部76のうち主ポンプ室投影領域Apと重複しているのは前側部分79a1及び前側部分79b1であるため、前側部分79a1と前側部分79b1との左右方向の距離が、距離X1となる。なお、本実施形態では前側部分79a1と前側部分79b1とは長さ方向が互いに平行であるため前側部分79a1と前側部分79b1との左右方向の距離は一定値(=距離X1)である。前側部分79a1と前側部分79b1とが互いに平行でない場合など、互いの左右方向の距離が一定でない場合は、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bのうち主ポンプ室投影領域Apと重複する部分における互いの短手方向(左右方向)の距離の平均値を距離X1とする。
【0060】
発熱部76の第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bは、補助ポンプ室投影領域Aqと重複する部分における互いの短手方向(左右方向)の距離X2が、主ポンプ室投影領域Apの短手方向の幅Wpの0.4倍以上である。すなわち、X2≧0.4Wpを満たす。本実施形態では、発熱部76のうち補助ポンプ室投影領域Aqと重複しているのは後側部分79a3及び後側部分79b3であるため、後側部分79a3及び後側部分79b3との左右方向の距離が、距離X2となる。なお、本実施形態では後側部分79a3と後側部分79b3とは長さ方向が互いに平行であるため後側部分79a3及び後側部分79b3との左右方向の距離は一定値(=距離X2)である。後側部分79a3と後側部分79b3とが互いに平行でない場合など、互いの左右方向の距離が一定でない場合は、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bのうち補助ポンプ室投影領域Aqと重複する部分における互いの短手方向(左右方向)の距離の平均値を距離X2とする。
【0061】
上記の条件すなわち「X1≧1/3×Wp」且つ「X2≧0.4Wp」を満たすことで、発熱部76の発熱時にセンサ素子101の内部空所(第1内部空所20,第2内部空所40,及び第3内部空所61)の周辺に生じる応力を低減できる。また、距離X1は幅Wpの0.4倍以上が好ましく、0.4倍より大きいことがより好ましい。距離X1は幅Wpの2/3倍以上としてもよい。距離X1は幅Wp以下であることが好ましく、幅Wp未満であってもよい。距離X2は幅Wpの2/3倍以上としてもよい。また、補助ポンプ室投影領域Aqの左右方向の幅を幅Wqとしたときに、距離X2は幅Wq以下であることが好ましく、幅Wq未満であってもよい。なお、本実施形態では、
図2に示すように、距離X1よりも距離X2の方が大きい。
【0062】
なお、本実施形態では、発熱部76は左右対称であり、且つ発熱部76の左右の中心軸と主ポンプ室投影領域Apの左右の中心軸とが一致している。そのため、主ポンプ室投影領域Apのうち左右の中央に位置し且つ幅が距離X1と同じ値である領域には、発熱部76が存在しないことになる。例えば、上述したX1>1/3×Wpを満たす場合には、主ポンプ室投影領域Apのうち左右の中央に位置し且つ幅が1/3×Wpである領域(すなわち、主ポンプ室投影領域Apを左右に3等分したうちの中央の領域)には、発熱部76が存在しないことになる。言い換えると、主ポンプ室(第1内部空所20)のうち左右の中央且つ幅が1/3×Wpの領域の直下には、発熱部76が存在しないことになる。同様に、X1>0.4Wpを満たす場合には、主ポンプ室投影領域Apのうち左右の中央に位置し且つ幅が0.4Wpである領域には、発熱部76が存在しないことになる。
【0063】
また、発熱部76は左右対称であり、且つ発熱部76の左右の中心軸と主ポンプ室投影領域Apの左右の中心軸とが一致しているため、距離X1が幅Wp以下であれば、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79b(ここでは特に前側部分79a1及び前側部分79b1)が、それぞれ、少なくとも一部が主ポンプ室投影領域Apと重複することになる。
【0064】
本実施形態では、発熱部76は左右対称であり、且つ発熱部76の左右の中心軸と補助ポンプ室投影領域Aqの左右の中心軸とが一致している。そのため、補助ポンプ室投影領域Aqのうち左右の中央に位置し且つ幅が距離X2と同じ値である領域には、発熱部76が存在しないことになる。言い換えると、補助ポンプ室(第2内部空所40)のうち左右の中央且つ幅がX2の領域の直下には、発熱部76が存在しないことになる。
【0065】
また、発熱部76は左右対称であり、且つ発熱部76の左右の中心軸と補助ポンプ室投影領域Aqの左右の中心軸とが一致しているため、距離X2が幅Wq以下であれば、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79b(ここでは特に後側部分79a3及び後側部分79b3)が、それぞれ、少なくとも一部が補助ポンプ室投影領域Aqと重複していることになる。
【0066】
発熱部76は、本実施形態では、貴金属とセラミックスとを含むサーメット(例えば、白金(Pt)とアルミナ(Al2O3)とのサーメット)とした。なお、発熱部76は、サーメットに限らず、例えば貴金属などの導電性物質を含むものであればよい。発熱部76に用いる貴金属としては、白金,ロジウム(Rh),金(Au),パラジウム(Pd)の少なくとも1以上の金属,又はその合金などが挙げられる。
【0067】
ここで、発熱部76のうち主ポンプ室投影領域Ap及び補助ポンプ室投影領域Aqと重複する部分であるポンプ室重複部分の単位長さあたりの抵抗値を単位抵抗値R1[μΩ/mm]とする。また、発熱部76のうち測定室投影領域Amと重複する部分である測定室重複部分の単位長さあたりの抵抗値を単位抵抗値R3[μΩ/mm]とする。このとき、発熱部76は、使用時に発熱部76が加熱される可能性のある温度範囲である700℃以上900℃以下の温度範囲の少なくともいずれかの温度において、単位抵抗値比R3/R1が値1未満である。言い換えると、700℃以上900℃以下の温度範囲の少なくともいずれかの温度において、単位抵抗値R3が単位抵抗値R1より低い。本実施形態では、ポンプ室重複部分は、前側部分79a1及び前側部分79b1のうち主ポンプ室投影領域Apと重複する部分と、後側部分79a3及び後側部分79b3のうち補助ポンプ室投影領域Aqと重複する部分と、第2屈曲部77bのうち補助ポンプ室投影領域Aqと重複する部分と、で構成されている。本実施形態では、測定室重複部分は、第2屈曲部77bのうち測定室投影領域Amと重複する部分である。なお、発熱部76の長さ方向は、発熱部76の軸方向,換言すると電流が流れる方向とする。また、単位抵抗値R1は、ポンプ室重複部分の単位長さあたりの抵抗値の平均値とする。同様に、単位抵抗値R3は、測定室重複部分の単位長さあたりの抵抗値の平均値とする。そのため、測定室重複部分の一部にポンプ室重複部分よりも単位長さあたりの抵抗値が高い部分がある場合でも、全体として測定室重複部分の方が単位長さあたりの抵抗値が低ければよい。ただし、測定室重複部分のいずれの位置においても単位長さあたりの抵抗値が単位抵抗値R1より低いことが好ましい。
【0068】
単位抵抗値R3が大きすぎると第1内部空所20及び第2内部空所40の周辺の温度と第3内部空所61の周辺の温度との差が小さくなりすぎて、NOx濃度の検出精度が低下する場合がある。単位抵抗値比R3/R1が値1未満であることで、そのような検出精度の低下を抑制できる。上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R3/R1が、値0.8以下であることが好ましく、値0.7以下であることがより好ましく、値0.65以下であることがさらに好ましい。上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R3/R1が値0.5以上であってもよい。
【0069】
本実施形態では、第1内側直線部79a,第2内側直線部79b及び第2屈曲部77bは同じ材質(上述した白金を含むサーメット)とし、発熱部76のうちポンプ室重複部分の長さ方向に垂直な断面積S1[mm2]が、測定室重複部分の長さ方向に垂直な断面積S3[mm2]よりも小さくなるようにしている。すなわち、発熱部76は、断面積比S1/S3が値1未満である。こうすることで、700℃以上900℃以下の温度範囲のいずれにおいても、単位抵抗値比R3/R1が値1未満となる。断面積比S1/S3は、値0.8以下が好ましく、値0.7以下がより好ましく、値0.65以下がさらに好ましい。断面積比S1/S3は、値0.5以上としてもよい。なお、断面積比S1/S3の調整は、例えば、ポンプ室重複部分の幅W1を測定室重複部分の幅W3より小さくするか、又はポンプ室重複部分の厚さD1を測定室重複部分の厚さD3より小さくするか、の少なくとも一方により行えばよい。なお、断面積S1,S3、幅W1,W3、及び厚さD1,D3のいずれの値も、単位抵抗値R1,R3と同様にポンプ室重複部分,測定室重複部分の各々の平均値とする。
【0070】
本実施形態では、第1内側直線部79a,第2内側直線部79b,及び第2屈曲部77bはどの部分でも同じ厚さとした。第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bはどの部分でも同じ幅とした。また、第2屈曲部77bは、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bとの接続部分では、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bから離れるほど幅が大きくなり、接続部分以外の部分(測定室投影領域Amと重複する部分も含む)では一定の幅とした。そのため、本実施形態の幅W1は、第2屈曲部77bの一部がポンプ室重複部分に含まれる分だけ、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bの幅よりわずかに大きい値となる。また、幅W3は、第2屈曲部77bのうち第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bとの接続部分以外の部分の幅と同じ値となる。そして、幅W1が幅W3より小さいことで、断面積比S1/S3が値1未満となっている。幅W1と幅W3との比W1/W3は、値0.8以下が好ましく、値0.7以下がより好ましく、値0.65以下がさらに好ましい。比W1/W3は、値0.5以上としてもよい。幅W1,W3は、0.05mm以上1.5mm以下としてもよい。厚さD1,D3は、0.003mm以上0.1mm以下としてもよい。幅W1は、0.3mm以上0.4mm以下としてもよい。幅W3は、0.5mm以上0.6mm以下としてもよい。
【0071】
距離X1は、0.67mm以上としてもよいし、0.8mm以上としてもよいし、0.86mm以上としてもよい。距離X1は、2mm以下としてもよいし、2mm未満としてもよいし、1.67mm以下としてもよいし、1.34mm以下としてもよい。距離X2は、0.8mm以上としてもよいし、0.86mm以上としてもよい。距離X2は、2mm以下としてもよいし、2mm未満としてもよいし、1.34mm以下としてもよい。主ポンプ室投影領域Apの幅Wp(=第1内部空所20の幅)は、例えば1.5mm以上3mm以下である。補助ポンプ室投影領域Aqの幅Wq(=第2内部空所40の幅)は、例えば1.2mm以上2.4mm以下である。測定室投影領域Amの幅Wm(=第3内部空所61の幅)は、例えば0.9mm以上1.8mm以下である。センサ素子101の前端から第3内部空所61の後端までの長さ、すなわち被測定ガス流通部の長さは、例えば7.5mm以上9mm以下である。また、本実施形態では、Wp>Wq>Wmが満たされている。
【0072】
リード部85は、発熱部76の左後方に配設された第1リード85aと、右後方に配設された第2リード85bとを有している。第1,第2リード85a,85bは発熱部76への通電用のリードであり、ヒータコネクタ電極71と接続されている。第1リード85aは正極リードであり、第2リード85bは負極リードである。この第1,第2リード85a,85b間に電圧が印加されることで発熱部76に電流が流れ、発熱部76が発熱する。リード部85は、導電体であり、発熱部76と比べて単位長さあたりの抵抗値が低くなっている。そのため、リード部85は発熱部76とは異なり通電時にはほとんど発熱しないようになっている。例えば、リード部85は、発熱部76と比べて体積抵抗率の低い材質であったり、断面積が大きかったりすることで、単位長さあたりの抵抗値が低くなっている。本実施形態では、リード部85は、発熱部76と比べて貴金属の割合が高いことで体積抵抗率が低くなっており、且つ、発熱部76と比べて幅が広いことで断面積が大きくなっている。
【0073】
こうして構成されたガスセンサ100の製造方法を以下に説明する。まず、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含む6枚の未焼成のセラミックスグリーンシートを用意する。このグリーンシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いるシート穴や必要なスルーホール等を予め複数形成しておく。また、スペーサ層5となるグリーンシートには被測定ガス流通部となる空間を予め打ち抜き処理などによって設けておく。そして、第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6のそれぞれに対応して、各セラミックスグリーンシートに種々のパターンを形成するパターン印刷処理・乾燥処理を行う。形成するパターンは、具体的には、例えば上述した各電極や各電極に接続されるリード線、大気導入層48,ヒータ72,などのパターンである。パターン印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してグリーンシート上に塗布することにより行う。ヒータ72となるパターン形成用のペーストは、上述したヒータ72の材質からなる原料(例えば貴金属とセラミック粒子)と、有機バインダー及び有機溶剤等を混合したものを用いる。
【0074】
このとき、ヒータ72となるパターンは、単位抵抗値比R3/R1が値1未満となるように、例えば断面積比S1/S3が値1未満となるように形成する。例えば、幅W1<幅W3となるようにするには、そのようなパターンを形成できるような形状のマスクを用いる。また、厚さD1<厚さD3となるようにするには、例えばポンプ室重複部分となる部分(例えば第1内側直線部79a及び第2内側直線部79b)のパターンと比べて、測定室重複部分となる部分(例えば第2屈曲部77b)のパターンを形成するペーストの粘度を高くしたり、測定室重複部分となる部分のパターンを形成する際の印刷回数を増やしたりする。
【0075】
このように各種のパターンを形成したあと、グリーンシートを乾燥する。乾燥処理についても、公知の乾燥手段を用いて行う。パターン印刷・乾燥が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う。そして、接着用ペーストを形成したグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ所定の順序に積層して、所定の温度・圧力条件を加えることで圧着させ、一つの積層体とする圧着処理を行う。こうして得られた積層体は、複数個のセンサ素子101を包含したものである。その積層体を切断してセンサ素子101の大きさに切り分ける。そして、切り分けた積層体を所定の焼成温度で焼成し、センサ素子101を得る。
【0076】
このようにしてセンサ素子101を得ると、センサ素子101を組み込んだセンサ組立体を製造し、保護カバーなどを取り付けることで、ガスセンサ100が得られる。
【0077】
こうして構成されたガスセンサ100では、使用時に、ヒータ72がヒータコネクタ電極71を介して電源(例えば自動車のオルタネータ)に接続され、第1リード85a,第2リード85b間に直流電圧(例えば12~14V)が印加される。そして、印加された電圧により、発熱部76に電流が流れて発熱部76が発熱する。これにより、センサ素子101全体が上記固体電解質(各層1~6)が活性化する温度(例えば、700℃~900℃)に調整される。この状態で、被測定ガスがガス導入口10から被測定ガス流通部に導入されると、被測定ガスは、第1拡散律速部11,緩衝空間12及び第2拡散律速部13を通過し、第1内部空所20に到達する。次に、第1内部空所20及び第2内部空所40において被測定ガスの酸素濃度が主ポンプセル21及び補助ポンプセル50によって調整され、調整後の被測定ガスが第3内部空所61に到達する。そして、測定用ポンプセル41によって第3内部空所61の酸素を汲み出すときのポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度が検出される。
【0078】
このとき、発熱部76が高温になることで、センサ素子101の内部空所(第1内部空所20,第2内部空所40,及び第3内部空所61)の周辺に応力が生じる場合がある。これは、センサ素子101のうち内部空所の下側と内部空所の上側との温度差に起因すると考えられる。しかし、本実施形態のセンサ素子101では、上述した「X1≧1/3×Wp」且つ「X2≧0.4Wp」を満たすことで、発熱部76の発熱時にセンサ素子101の内部空所の周辺に生じる応力を低減できる。これは、距離X1,X2が上記の条件を満たすことで、内部空所の下側のうち左右の中央付近が過熱することを抑制でき、内部空所の下側と内部空所の上側との温度差を小さくできるためと考えられる。また、距離X1が幅Wpの0.4倍より大きければ、上記の応力を低減する効果が高まる。
【0079】
また、「X1≧1/3×Wp」且つ「X2≧0.4Wp」を満たすことで、センサ素子101の外周部(特に、センサ素子101のうちヒータ72に近い外周面である下面)に生じる応力も低減できる。これは、距離X1,X2が上記の条件を満たすことで、センサ素子101の下面のうち左右の中央付近が過熱することを抑制でき、下面のうち左右の中央とそれ以外との温度差を小さくできるためと考えられる。
【0080】
また、本実施形態では、距離X1が幅Wp以下であり、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79b(ここでは特に前側部分79a1及び前側部分79b1)が、それぞれ、少なくとも一部が主ポンプ室投影領域Apと重複している。そのため、発熱部76によって主ポンプ室(ここでは第1内部空所20)の周辺の固体電解質を十分加熱でき、主ポンプセル21を十分機能させることができる。同様に、距離X2が幅Wq以下であり、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79b(ここでは特に後側部分79a3及び後側部分79b3)が、それぞれ、少なくとも一部が補助ポンプ室投影領域Aqと重複している。そのため、発熱部76によって補助ポンプ室(ここでは第2内部空所40)の周辺の固体電解質を十分加熱でき、補助ポンプセル50を十分機能させることができる。主ポンプセル21及び補助ポンプセル50の機能が不十分な場合、被測定ガス中の酸素濃度の調整が十分に行われず、NOx濃度の検出精度が低下する場合があるが、本実施形態では距離X1が幅Wp以下且つ距離X2が幅Wq以下であることで、NOx濃度の検出精度の低下を抑制できる。
【0081】
また、本実施形態では、発熱部76(ここでは第2屈曲部77b)は測定室投影領域Amと少なくとも一部が重複しているため、測定室(ここでは第3内部空所61)の周辺の固体電解質を十分加熱でき、測定用ポンプセル41を十分機能させることができる。これによっても、NOx濃度の検出精度の低下を抑制できる。
【0082】
また、700℃以上900℃以下の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R3/R1が値1未満であることで、NOx濃度の検出精度の低下を抑制できる。これについて詳細に説明する。まず、第1内部空所20,第2内部空所40,及び第3内部空所61の周辺の温度をそれぞれ温度Tp,Tq,Tm[℃]とすると、発熱部76の発熱時に(温度Tp及び温度Tq)>温度Tmとなることが好ましく温度Tp>温度Tq>温度Tmとなることがより好ましい。これは以下の理由による。内側ポンプ電極22の周辺すなわち第1内部空所20は、主ポンプセル21による酸素濃度の調整前の被測定ガスがガス導入口10側から流入するため、測定電極44の周辺よりも酸素濃度が高い。また、補助ポンプ電極51の周辺すなわち第2内部空所40は、補助ポンプセル50による酸素濃度の調整前の被測定ガスが第1内部空所20側から流入するため、測定電極44の周辺よりも酸素濃度が高い。そのため、主ポンプセル21及び補助ポンプセル50が多量の酸素を汲み出せるように、第1内部空所20周辺の温度Tp及び第2内部空所40の周辺の温度Tqをそれぞれ温度Tmよりも高温にして、内側ポンプ電極22,補助ポンプ電極51及びその周辺の固体電解質層をより活性化させることが好ましい。一方、測定電極44の周辺すなわち第3内部空所61は、第1内部空所20及び第2内部空所40と比較すると酸素濃度が低い。そのため、例えば被測定ガス中の水や二酸化炭素の還元などにより水素や一酸化炭素が生じる場合があり、これらがNOx中の酸素と化学反応してしまい測定精度が低下する場合がある。そして、このような特定ガス(NOx)以外の成分の還元は、高温になるほど生じやすい。そのため、温度Tmは高すぎないことが好ましい。以上のことから、(温度Tp及び温度Tq)>温度Tmとなっていることが好ましい。また、第1内部空所20は第2内部空所40よりも被測定ガス流通部の上流側に位置しており第1内部空所20の酸素濃度は第2内部空所40よりも高いから、第1内部空所20周辺の温度Tpを第2内部空所40周辺の温度Tqよりも高温にして内側ポンプ電極22及びその周辺の固体電解質層をより活性化させることが好ましい。そのため、温度Tp>温度Tq>温度Tmとなることがより好ましい。そして、単位抵抗値R3が大きすぎると、温度Tmが高くなりすぎて(温度Tp及び温度Tq)>温度Tmの関係を満たさず、NOx濃度の測定精度が低下する場合がある。単位抵抗値比R3/R1が値1未満であることで、単位抵抗値R3が大きすぎないため、そのような検出精度の低下を抑制できる。また、温度Tmが高いと第3内部空所61に近い第2内部空所40の周辺の温度Tqも高くなりやすいため、これにより温度Tp<温度Tq>温度Tmとなって温度Tp>温度Tq>温度Tmの関係を満たさなくなり、主ポンプセル21のポンピング能力が不足する場合がある。これに対して単位抵抗値比R3/R1が値1未満であれば、主ポンプセル21のポンピング能力が十分高くなりやすい。
【0083】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の各層1~6が本発明の素子本体に相当し、第1内部空所20が主ポンプ室に相当し、主ポンプセル21が主ポンプセルに相当し、第2内部空所40が補助ポンプ室に相当し、補助ポンプセル50が補助ポンプセルに相当し、第3内部空所61が測定室に相当し、測定用ポンプセル41が測定用ポンプセルに相当し、発熱部76が発熱体に相当し、第1外側直線部78aが第1外側直線部に相当し、第2外側直線部78bが第2外側直線部に相当し、第1内側直線部79aが第1内側直線部に相当し、第2内側直線部79bが第2内側直線部に相当し、第1~第3屈曲部77a~77cが第1~第3屈曲部に相当し、主ポンプ室投影領域Apが主ポンプ室投影領域に相当し、補助ポンプ室投影領域Aqが補助ポンプ室投影領域に相当する。
【0084】
以上詳述した本実施形態のガスセンサ100によれば、距離X1が幅Wpの1/3以上であり、且つ距離X2が幅Wpの0.4倍以上であることで、発熱体の発熱時に内部空所(主ポンプ室,補助ポンプ室,及び測定室)の周辺に生じる応力を低減できる。また、距離X1が、幅Wpの0.4倍より大きいことで、上述した応力を低減する効果が高まる。さらに、700℃以上900℃以下の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R3/R1が値1未満であることで、NOx濃度の検出精度の低下を抑制できる。
【0085】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0086】
例えば、上述した実施形態では、距離X1よりも距離X2の方が大きかったが、これに限られない。例えば、
図3に示すように距離X1と距離X2とが同じ大きさであってもよい。この場合も、「X1≧1/3×Wp」且つ「X2≧0.4Wp」を満たすことで、発熱部76の発熱時にセンサ素子101の内部空所の周辺に生じる応力を低減できる効果が得られる。なお、
図3の場合は、X1=X2であるため、「X1≧0.4Wp」も満たしている。また、
図3の例では、第1内側直線部79aの前側部分79a1,接続部79a2,及び後側部分79a3は一直線状に配置されているため、前側部分79a1,接続部79a2,及び後側部分79a3は互いに区別できない形状をしている。第2内側直線部79bの前側部分79b1,接続部79b2,及び後側部分79b3についても同様である。
【0087】
あるいは、
図4に示すように距離X1の方が距離X2よりも大きくてもよい。この場合も、「X1≧1/3×Wp」且つ「X2≧0.4Wp」を満たすことで、発熱部76の発熱時にセンサ素子101の内部空所の周辺に生じる応力を低減できる効果が得られる。なお、
図4の場合は、X1>X2であるため、「X1>0.4Wp」も満たしている。
【0088】
上述した実施形態では、断面積比S1/S3を値1未満とすることで、単位抵抗値比R3/R1を値1未満としたが、これに限られない。例えば、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度において、ポンプ室重複部分の体積抵抗率ρ1[μΩ・cm]と測定室重複部分の体積抵抗率ρ3[μΩ・cm]との比である体積抵抗率比ρ3/ρ1が値1未満であってもよい。こうしても、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R3/R1を値1未満とすることができ、NOx濃度の検出精度の低下を抑制できる。上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度において体積抵抗率比ρ3/ρ1は値0.8以下が好ましく、値0.7以下がより好ましく、値0.65以下がさらに好ましい。体積抵抗率比ρ3/ρ1は、値0.5以上としてもよい。例えば、発熱部76のうち測定室重複部分に含まれる貴金属(導体)の割合をポンプ室重複部分と比べて高くすることで、体積抵抗率ρ3を体積抵抗率ρ1より低くすることができる。なお、体積抵抗率ρ1,ρ3の値も、単位抵抗値R1,R3と同様にポンプ室重複部分,測定室重複部分の各々の平均値とする。
【0089】
上述した実施形態では、単位抵抗値R3/R1を値1未満としたが、これに限られない。例えば、
図2において第2屈曲部77bの幅を第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bの幅と同じにして、単位抵抗値R3/R1を値1としてもよい。この場合も、「X1≧1/3×Wp」且つ「X2≧0.4Wp」を満たしていれば、発熱部76の発熱時にセンサ素子101の内部空所の周辺に生じる応力を低減できる効果は得られる。
【0090】
上述した実施形態では、発熱部76は左右対称であり、且つ発熱部76の左右の中心軸と、主ポンプ室投影領域Apの左右の中心軸と、補助ポンプ室投影領域Aqの左右の中心軸と、測定室投影領域Amの左右の中心軸と、がいずれも一致していたが、特にこれに限られない。例えば発熱部76は左右非対称でもよいし、上記の中心軸のいずれかが他の中心軸とずれていてもよい。この場合も、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bの各々の少なくとも一部が主ポンプ室投影領域Apと重複し、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bの各々の少なくとも一部が補助ポンプ室投影領域Aqと重複し、「X1≧1/3×Wp」及び「X2≧0.4Wp」を満たしていればよい。
【0091】
上述した実施形態では、主ポンプ室投影領域Apの形状すなわち上面視での第1内部空所20の形状は矩形であり、
図2に示すように主ポンプ室投影領域Apの短手方向の幅は一定値(=幅Wp)としたが、これに限られない。例えば主ポンプ室投影領域Apの短手方向の幅が大きい部分と小さい部分とが存在するなど、主ポンプ室投影領域Apの短手方向の幅が一定でなくてもよい。このような場合、主ポンプ室投影領域Apの短手方向の幅の最大値を幅Wpとする。補助ポンプ室投影領域Aqの幅Wq,及び測定室投影領域Amの幅Wmについても同様である。
【実施例】
【0092】
以下には、センサ素子を具体的に作製した例を実施例として説明する。実験例3~6,8,9,10が本発明の実施例に相当し、実験例1,2,7,11が比較例に相当する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
[実験例1]
「X1≧1/3×Wp」を満たさない点以外は、
図1,2に示したセンサ素子101と同様のセンサ素子を実験例1とした。実験例1のセンサ素子の大きさは、前後方向の長さが67.5mm、左右方向の幅が4.25mm、上下方向の厚さが1.45mmとした。第1外側直線部78a及び第2外側直線部78bの幅は0.28mmとした。第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bの幅は0.33mmとした。第2屈曲部77bのうち第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bとの接続部分以外の部分の幅は0.53mmとした。主ポンプ室投影領域Apの幅Wpは2mmとした。補助ポンプ室投影領域Aqの幅Wqは1.6mmとした。測定室投影領域Amの幅Wmは1.2mmとした。被測定ガス流通部の長さは、8.3mmとした。距離X1は0.26mm(=0.13Wp)とし、距離X2は0.86mm(=0.43Wp)とした。そのため、実験例1は「X2≧0.4Wp」を満たすが、「X1≧1/3×Wp」は満たさない。
【0094】
[実験例2,3]
距離X1を0.46mm(=0.23Wp)とした点以外は、実験例1と同じセンサ素子を実験例2とした。距離X1を0.67mm(=1/3×Wp)とした点以外は、実験例1と同じセンサ素子を実験例3とした。
【0095】
[実験例4]
ヒータ72のパターンを
図3に示す形状としたセンサ素子を実験例4とした。実験例4では、距離X1及び距離X2をいずれも0.86mm(=0.43Wp)とした。それ以外の寸法は実験例1と同じとした。
【0096】
[実験例5,6]
ヒータ72のパターンを
図4に示す形状としたセンサ素子を実験例5,6とした。実験例5では、距離X1を1.34mm(=2/3×Wp)とし、距離X2を0.86mm(=0.43Wp)とした。実験例6では、距離X1を1.67mm(=0.84Wp)とし、距離X2を0.86mm(=0.43Wp)とした。実験例5,6のそれ以外の寸法は実験例1と同じとした。
【0097】
[実験例7~9]
ヒータ72のパターンを
図3に示す形状としたセンサ素子を実験例7~9とした。実験例7では、距離X1及び距離X2をいずれも0.67mm(=1/3×Wp)とした。実験例8では、距離X1及び距離X2をいずれも1.34mm(=2/3×Wp)とした。実験例9では、距離X1及び距離X2をいずれも0.8mm(=0.4Wp)とした。実験例7~9のそれ以外の寸法は実験例1と同じとした。
【0098】
[応力の評価]
実験例1~9のセンサ素子の各々について、発熱部76を800℃に発熱させたときの、センサ素子に生じる内部空所の応力及び外周部の応力を調べた。内部空所の応力は、センサ素子の第1内部空所20,第2内部空所40,及び第3内部空所61の周辺に生じる応力の最大値とし、この最大値の大小によって「優(A)」「良(B)」「可(C)」「不可(F)」の4段階の評価を行った。外周部の応力は、センサ素子の下面に生じる応力の最大値とし、この最大値の大小によって「優(A)」「良(B)」「可(C)」「不可(F)」の4段階の評価を行った。いずれの評価においても、「優(A)」が応力の最大値が最も小さく、「不可(F)」が応力の最大値が最も大きい。
【0099】
実験例1~9の各々における距離X1,X2,内部空所の応力評価の結果、及び外周部の応力評価の結果を表1及び
図5,6に示す。
図5は内部空所の応力評価の結果を示しており、
図6は外周部の応力評価の結果を示している。
図5,6における1~9の数字は各実験例の番号を表す。応力評価の結果は、「優(A)」を丸で示し、「良(B)」を白塗りの四角で示し、「可(C)」をハッチングの四角で示し、「不可(F)」を黒塗りの四角で示している。
【0100】
【0101】
表1及び
図5から分かるように、「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とのうち前者を満たさない実験例1,2、及び後者を満たさない実験例7は、いずれも内部空所の応力評価が「不可(F)」であった。これに対し、「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とを共に満たす実験例3~6,8,9は、いずれも内部空所の応力評価が「可(C)」以上であった。これらの結果から、「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とを共に満たすことで、内部空所の応力を低減できることが確認された。また、さらに「X1>0.4Wp」を満たしている実験例4~6、8は、いずれも内部空所の応力評価が「良(B)」以上であった。また、
図5からわかるように、距離X1,X2が大きくなるほど、すなわち
図5の右上にプロットされる実験例ほど、内部空所の応力評価が高くなる傾向が確認された。
【0102】
外周部の応力評価についても、内部空所の応力評価と同様の傾向が確認された。具体的には、表1及び
図6からわかるように、「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とのうち前者を満たさない実験例1,2、及び後者を満たさない実験例7は、いずれも外周部の応力評価が「不可(F)」であった。これに対し、「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とを共に満たす実験例3~6,8,9は、いずれも外周部の応力評価が「可(C)」以上であった。これらの結果から、「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とを共に満たすことで、外周部の応力を低減できることが確認された。また、
図6からわかるように、距離X1,X2が大きくなるほど、すなわち
図6の右上にプロットされる実験例ほど、外周部の応力評価が高くなる傾向が確認された。
【0103】
[実験例10]
ヒータ72のパターンを
図3に示す形状としたセンサ素子を実験例10とした。実験例10では、実験例4と同じく、距離X1及び距離X2をいずれも0.86mm(=0.43Wp)とした。それ以外の寸法は実験例1と同じとした。そのため、実験例10は「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とを共に満たしている。
【0104】
[実験例11]
ヒータ72のパターンを
図7に示す形状としたセンサ素子を実験例11とした。実験例11では、
図7に示すように、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bの幅が部分的に大きい形状をしており、補助ポンプ室投影領域Aqと重複する部分の幅が最も大きくなっている。第1内側直線部79aの前側部分79a1は長さ方向がセンサ素子の長手方向(前後方向)から傾斜している部分と長手方向(前後方向)に平行な部分とを有している。第2内側直線部79bの前側部分79b1も同様である。前側部分79a1のうち前後方向から傾斜している部分と前側部分79b1のうち前後方向から傾斜している部分とは、センサ素子の前端に近づくほど互いの左右方向の距離が大きくなるように配置されている。前側部分79a1と前側部分79b1との左右方向の距離は一定ではなく、前側部分79a1のうち前後方向に平行な部分と前側部分79b1のうち前後方向に平行な部分との左右方向の距離が、前側部分79a1と前側部分79b1との左右方向の最小距離X1minとなっている。最小距離X1minは0.47mmとした。距離X1は、第1内側直線部79a及び第2内側直線部79bのうち主ポンプ室投影領域Apと重複する部分における互いの短手方向(左右方向)の距離の平均値である。距離X1は最小距離X1minより大きい0.49mmであった。後側部分79a3と後側部分79b3との互いの左右方向の距離は一定であり、この距離は最小距離X1minと同じとした。したがって、距離X2は最小距離X1minと同じ0.47mmである。第2屈曲部77bの幅は0.33mmとした。それ以外の寸法は実験例1と同じであり、主ポンプ室投影領域Apの幅Wpは2mmである。そのため、実験例11では「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とのいずれも満たさない。
【0105】
[クラック発生率の評価]
実験例10,11のセンサ素子の各々について、発熱部76を昇温させたときのクラック発生率を測定した。具体的には、まず、実験例10,11のセンサ素子をそれぞれ10本ずつ用意した。次に、各々のセンサ素子についてヒータ72が目標温度(800℃)に到達するように、ヒータ72に一定の電圧を印加して発熱部76を昇温させた。その後、各々のセンサ素子についてクラックが発生しているか否かを確認した。なお、この昇温の条件は、通常のセンサ素子の使用時よりもヒータ72を短時間で目標温度まで昇温させる条件であり、これによりセンサ素子に一定程度のクラックが発生するようにした。実験例10では、10本のセンサ素子のうち4本にクラックが発生しており、クラック発生率は40%であった。実験例11では、10本のセンサ素子の全てにクラックが発生しており、クラック発生率は100%であった。これらの結果から、「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とを共に満たす実験例10は、「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とのいずれも満たさない実験例11よりもクラック発生率が低いことが確認された。実験例10は「X1≧1/3×Wp」と「X2≧0.4Wp」とを共に満たしていることで内部空所の応力が低減できていることから、クラック発生率が低いと考えられる。
【符号の説明】
【0106】
1 第1基板層、2 第2基板層、3 第3基板層、4 第1固体電解質層、5 スペーサ層、6 第2固体電解質層、10 ガス導入口、11 第1拡散律速部、12 緩衝空間、13 第2拡散律速部、20 第1内部空所、21 主ポンプセル、22 内側ポンプ電極、22a 天井電極部、22b 底部電極部、23 外側ポンプ電極、24 可変電源、30 第3拡散律速部、40 第2内部空所、41 測定用ポンプセル、42 基準電極、43 基準ガス導入空間、44 測定電極、46 可変電源、48 大気導入層、50 補助ポンプセル、51 補助ポンプ電極、51a 天井電極部、51b 底部電極部、52 可変電源、60 第4拡散律速部、61 第3内部空所、70 ヒータ部、71 ヒータコネクタ電極、72 ヒータ、73 スルーホール、74 ヒータ絶縁層、75 圧力放散孔、76 発熱部、77 屈曲部、77a~77c 第1~第3屈曲部、78 直線部、78a,78b 第1,第2外側直線部,79a,79b 第1,第2内側直線部、79a1,79b1 前側部分、79a2,79b2 接続部、79a3,79b3 後側部分、80 主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、81 補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、82 測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、83 センサセル、85 リード部、85a,85b 第1,第2リード、100 ガスセンサ、101 センサ素子、Am 測定室投影領域、Ap 主ポンプ室投影領域、Aq 補助ポンプ室投影領域。