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特許7573588ビームフォーミングされたデータを処理するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ビームフォーミングされたデータを処理するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196389
(22)【出願日】2022-12-08
(65)【公開番号】P2023086703
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】21315271
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508291928
【氏名又は名称】スーパー ソニック イマジン
【氏名又は名称原語表記】SUPER SONIC IMAGINE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100227927
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 拓
(72)【発明者】
【氏名】フラスキーニ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ランベール,ウィリアム
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-187631(JP,A)
【文献】特表2020-531074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0173312(US,A1)
【文献】特開2011-104354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0118606(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0175652(US,A1)
【文献】特開2005-189171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体のビームフォーミングされたデータを処理するための方法であって、
前記ビームフォーミングされたデータは、前記媒体の第1の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第1のセットと、前記第1の空間領域とは異なる第2の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第2のセットとを含み、
前記方法は、
前記第1のセットにおいて前記第2の空間領域によって引き起こされるクラッタを推定するステップ(f)、
を含み、
前記第1のセットにおいて前記クラッタを推定するステップ(f)は、前記第1及び/又は第2の空間領域の位置に基づいて、及び/又は、前記第2のセット及び/又は前記第2のセットの振幅に基づいて、前記第2のセットにそれぞれ関連付けられる複数のクラッタ寄与度を推定するステップ(f)を含み、前記第1のセットにおける前記クラッタが前記複数のクラッタ寄与度の関数である、
方法。
【請求項2】
前記第1のセットを選択するステップ(d)、及び前記第1及び第2の空間領域の位置に基づいて、前記関連付けられた第2の空間領域の位置の関数として前記第2のセットを決定するステップ(e)であって、前記第1のセットが前記第2の空間領域で生成されるクラッタの影響を受け易いように前記第2の空間領域が位置する、ステップ、及び/又は、
前記第2のセットを選択するステップ(d’)、及び前記第1及び第2の空間領域の位置に基づいて、前記関連付けられた第1の空間領域の位置の関数として前記第1のセットを決定するステップ(e’)であって、前記第1のセットが前記第2の空間領域で生成されるクラッタの影響を受け易いように前記第1の空間領域が位置する、ステップ、及び/又は、
前記第1のセットにおいて前記推定されたクラッタを補償するステップ(g)、及び/又は、
前記第1のセットにおいて前記クラッタを除去するステップ(g’)、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クラッタは、前記第1の空間領域の位置及び/又は前記第2の空間領域の位置の関数として推定され、及び/又は、
前記クラッタは、前記第2のセット及び/又は前記第2のセットの振幅の関数として推定され、及び/又は、
前記第2のセットは、前記第2のセットの振幅が所定の閾値を超える場合に、前記クラッタを前記第2のセット及び/又は前記第2のセットの振幅の関数として推定するために考慮される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ビームフォーミングされたデータの前記第2のセットは、前記第1のセットと関連付けられる前記媒体から受信される信号データに対して等時的である前記媒体から受信される信号データに関連付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ビームフォーミングされたデータの前記第2のセットを決定するステップ(e)は、
前記第1のセットが前記第2の空間領域で生成されるクラッタの影響を受け易いように位置する複数の第2の空間領域とそれぞれ関連付けられるビームフォーミングされたデータの複数の第2のセットを決定するステップ(e)、
を含み、
前記第1のセットにおいて前記クラッタを推定するステップ(f)は、前記第2のセットにそれぞれ関連付けられる複数のクラッタ寄与度を推定するステップ(f)を含み、前記第1のセットにおける前記クラッタが前記複数のクラッタ寄与度の関数である、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の空間領域における前記クラッタは、前記第1の空間領域における前記複数のクラッタ寄与度の線形結合によって推定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のセット及び/又は前記第2のセットを選択するステップ(d,d’)の前に、
前記ビームフォーミングされたデータを取得するために前記媒体の超音波信号データを処理するステップ(c)、
を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
超音波信号データを処理する前記ステップ(c)又はビームフォーミングされたデータを選択する前記ステップ(d)の前に、
超音波(We)の放出シーケンス(ES)を前記媒体(11)に送信するステップ(a)と、
前記媒体から超音波(Wr)の応答シーケンス(RS)を受信するステップ(b)であって、前記超音波信号データが超音波(Wr)の前記応答シーケンス(RS)に基づく、ステップと、
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び/又は第2のセットが更に決定され及び/又は前記クラッタ(f)は、
前記ビームフォーミングされたデータが基づく媒体のデータを取得するために使用されるトランスデューサデバイスの幾何学的形状、
トランスデューサデバイスの単一のトランスデューサ素子の配置及び/又はサイズ、
トランスデューサデバイスの放出及び/又は受信開口、
放出持続時間、
前記ビームフォーミングされたデータが基づく放出パルスの波長及び/又はタイプ、
放出された波面の幾何学的形状、及び
前記媒体の音響モデルの所定の速度、
のうちの少なくとも1つの関数として更に推定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ビームフォーミングされたデータの各セットは、少なくとも1つのピクセル又はボクセルと関連付けられ、及び/又は、
前記ビームフォーミングされたデータが同相及び直交位相IQデータ及び/又は無線周波数RFデータである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び/又は第2のセット及び/又は前記第1及び/又は第2の空間領域が予め決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記媒体の複数の第1の空間領域に関して並列及び/又は直列に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、複数回の反復で前記第1の空間領域に関して実行され、各反復において、修正されたビームフォーミングされたデータが、前記推定されたクラッタを補償することによって取得され、第1の反復で取得された前記修正されたビームフォーミングされたデータが後続の第2の反復で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の推定されたクラッタに基づいて人工知能AIベースモデルを訓練する方法。
【請求項15】
媒体のビームフォーミングされたデータを処理するための方法であって、クラッタ量を推定し及び/又は推定されたクラッタを補償するために請求項14に記載のAIベースモデルを使用するステップを含む、方法。
【請求項16】
データ処理システムによって実行されるときに前記データ処理システムに請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項17】
媒体のビームフォーミングされたデータを処理するためのシステムであって、
前記ビームフォーミングされたデータは、前記媒体の第1の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第1のセットと、前記第1の空間領域とは異なる第2の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第2のセットとを含み、
前記システムは、
前記第1のセットにおいて前記第2の空間領域によって引き起こされるクラッタを推定する(f)、ように構成される処理ユニットを備え、
前記第1のセットにおいて前記クラッタを推定すること(f)は、前記第1及び/又は第2の空間領域の位置に基づいて、及び/又は、前記第2のセット及び/又は前記第2のセットの振幅に基づいて、前記第2のセットにそれぞれ関連付けられる複数のクラッタ寄与度を推定すること(f)を含み、前記第1のセットにおける前記クラッタが前記複数のクラッタ寄与度の関数である、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に医療撮像のためにビームフォーミングされたデータを処理するための方法及びシステムに関する。特に、本方法は、トランスデューサデバイスによって走査される媒体の画像データを提供するのに適している。例えば、本方法は、例えば超音波システムなどのデバイスで使用することができる。
【背景技術】
【0002】
例えば医用画像処理、レーダ、ソナー、地震探査、無線通信、電波天文学、音響学及び生物医学の分野において、通信、画像処理又は走査を行う目的で複数のトランスデューサ要素又はトランシーバ(例えばアレイとして配置される)を使用することが知られている。一例として、超音波画像処理が挙げられる。
【0003】
超音波撮像の目的は、中程度の反射率を推定することである。従来の超音波画像処理方法では、超音波トランスデューサ素子のセットを有する超音波トランスデューサデバイス(超音波プローブとも呼ばれる)を使用することができる。この方法では、送信ステップに対応して、1つ以上のトランスデューサを使用して、1つ又は連続して幾つかの超音波ビームを媒体に送信する。次に、受信ステップにおいて、後方散乱エコー信号のセットが、トランスデューサ素子のセットによって媒体から受信される。具体的には、トランスデューサ素子の各々は、受信したエコー信号を例えば電気信号に変換する。信号は、超音波システムによって更に処理されてもよい。例えば、それらの信号は、増幅され、フィルタリングされ、デジタル化されてもよく、及び/又は信号調整ステップが実行されてもよい。トランスデューサ素子は、トランスデューサアレイとして配置されてもよい。
【0004】
従来、前記信号は、その後、画像処理システムに送信される。受信信号は、例えばビームフォーミング方法を使用して、走査された媒体の画像データを生成するために処理されてもよい。一般に、ビームフォーミングは、指向性信号の送信又は受信のためにセンサアレイで従来使用されている信号処理技術として理解することができる。このプロセスは、ビームフォーミングされたデータを生成するために使用される。
【0005】
ヒト軟組織などの複雑な媒体は、数えきれない散乱体から形成される。入射ビームの空間的な広がりに起因して、様々な散乱体によって生成されたエコーは、超音波デバイスによって同時に測定され得る。それは、超音波が超音波デバイスから前後の散乱体に移動するのに必要な往復伝搬時間が同じであることを意味する。次いで、測定された信号は、様々な後方散乱エコーの重畳によってもたらされ得る。結果として、媒体の空間領域に対応するビームフォーミングされた画像の所与の領域は、媒体の異なる領域によって生成されたエコーによって劣化する場合がある。「クラッタ」と呼ばれるこの現象は、ビームフォーミングされたデータの品質を著しく損なう場合があり、表示された画像に影響を与える可能性があり、ひいてはより悪い医療診断をもたらし得る。
【0006】
Holm、Synnevag、及びAustengは、2009年のIEEE第13回デジタル信号処理ワークショップ及び第5回IEEE信号処理教育ワークショップにおける論文「Capon Beamforming For Active Ultrasound Imaging Systems」において医療用超音波撮像に適合したカポンビームフォーミングについて記載している。カポンビームフォーミングは、従来のビームフォーマと比較して改善された分解能、すなわち、互いに近接する2つの標的を空間的に分離する能力を有する。カポンビームフォーミングは、ビームフォーマの空間分解能に影響を与え、その結果、スペックル統計及び画像の大域的態様を劇的に変化させる。
【0007】
Viola、Ellis、及びWalkerは、IEEE Transactions on Medical Imaging 2008における彼らの論文「Time-Domain Optimized Near-Field Estimator for Ultrasound Imaging: Initial Developments and Results」において、軸外標的衝撃を低減することを目的とする適応ビームフォーマを提案した。このビームフォーマは、その計算の複雑性に見舞われ、スペックル統計にも劇的な影響を与える。
【0008】
Feder及びWeinsteinは、IEEE Transactions On Acoustics,Speech,And Signal Processing 1988における論文「Parameter Estimation of Superimposed Signals Using the EM Algorithm」において、推定最大化(EM)アルゴリズムに基づく重畳信号のパラメータ推定のための計算効率の高いアルゴリズムについて記載している。アルゴリズムは、観測されたデータをそれらの信号成分に分解し、次いで各信号成分のパラメータを別々に推定する。アルゴリズムは、現在のパラメータ推定値を使用して前後に反復して、観測されたデータをより良好に分解し、したがって次のパラメータ推定値の尤度を高める。マルチパス時間遅延及びマルチソース位置推定問題へのアルゴリズムの適用が考慮される。
【0009】
Feder及びWeinsteinによって提案されたアルゴリズムにおいて、遅延和DASビームフォーマは、ビームフォーミング画像のピクセルに対応する位置で後方散乱された信号の最尤推定器として提示される。DASビームフォーミングは、単一の散乱体にのみ適用可能である。その文脈における後方散乱信号の最尤推定のための直接的な手法は、数値的に扱いにくい。この問題に対処するために、FederはE-Mアルゴリズムを使用することを提案した。この方式は、十分な収束性を有することが知られており、そのような問題解決における効率を実証している。
【0010】
Feder及びWeinsteinのアルゴリズムは、例えばSONARなどの受動撮像方法との関連で記載される。
【発明の概要】
【0011】
現在、前述の問題を克服すること、特に、とりわけビームフォーミングされたデータの(第1の)選択されたセットにおいてクラッタを推定及び/又は補償するために、媒体のビームフォーミングされたデータを処理するための方法及びシステムを提供することが依然として望ましい。したがって、例えば、画像解析を容易にし、診断を設定するのを助け、診断をより信頼性の高いものにし、及び/又は医療診断を改善するために、計算効率的な態様でビームフォーミングされたデータの品質を改善できる方法及びシステムを提供することが望ましい。
【0012】
したがって、本開示は、媒体のビームフォーミングされたデータを処理するための方法に関する。ビームフォーミングされたデータは、第1の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第1のセットと、第2の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第2のセットとを含む。本方法は、
第1のセットにおいて前記第2の空間領域によって引き起こされるクラッタを推定するステップ(f)を含む。
【0013】
一例では、トランスデューサデバイスを使用して媒体の信号データを取得することができ、媒体の信号データに基づいてビームフォーミングされたデータを取得することができる。
【0014】
そのような方法を提供することにより、ビームフォーミングされたデータのその関連するセットによって表わされる第1のセットにおける第2の空間領域により引き起こされるクラッタを推定することが可能になる。本方法は、好適には、特に、より信頼性が高く、計算上複雑でない推定技術をもたらすことができる。
【0015】
これに関連して、異なるビームフォーミング技術、例えばDAS(Delay and Sum)ビームフォーミングがクラッタに影響され易いことに留意されたい。提案された方法は、リアルタイム撮像又はデータ処理と適合する処理時間を維持しながらクラッタを低減することを目的とする。
【0016】
更に、本方法は、スペックル統計を保存することができる。
【0017】
更に、本方法は、ビームフォーミングされたデータと(例えば、トランスデューサデバイスによって取得された)信号データとの間で前後に反復する必要がない。それどころか、本方法はビームフォーミングされたデータを処理できるにすぎない。したがって、本方法は、ビームフォーミングされたデータを信号データに逆投影すること、すなわち、ビームフォーミングプロセスを逆にした後に信号データを再びビームフォーミングすることを必要としないため、計算上あまり複雑でない。本方法が複数の反復で実行される場合、これらの計算工程を回避することは、計算上更に有利である。したがって、クラッタを例えばリアルタイム又は準リアルタイムで推定することができる。更に、本方法は計算的に安価であり得るので、本方法は、必要な処理能力及び/又はエネルギー及び/又は計算時間もより少なくて済む。
【0018】
本方法は、IQ又はRFビームフォーミングされたデータ(すなわち、同相及び直交位相IQ及び/又は無線周波数RFビームフォーミングデータ)に作用し得る。更なる結果として、本方法は、好適には、ビームフォーミングされたデータを取得するために使用されるビームフォーマ(例えば、DASビームフォーマ)のいかなる修正も必要としない。
【0019】
クラッタは、受信波の振幅又はエネルギーなどの測定可能な量を指すことができる。例えば、クラッタは、1つ又は幾つかの実数値、又は(例えば、方法がビームフォーミングIQデータを処理した場合)1つ又は幾つかの複素数値であってもよい。
【0020】
クラッタは、例えば寄生浮遊信号を示し得る。一般に、クラッタは、電子システム、特にトランスデューサデバイスにおける望ましくないエコーを指すことができる。
【0021】
本方法は、第1のセットを選択するステップ(d)と、関連する第2の空間領域の位置の関数として第2のセットを決定するステップ(e)とを更に含むことができる。一例において、第2の空間領域は、第1のセットが第2の空間領域で生成されるクラッタの影響を受け易いように位置してもよい。
【0022】
これに加えて又は代えて、本方法は、第2のセットを選択するステップ(d’)と、関連付けられた第1の空間領域の位置の関数として第1のセットを決定するステップ(e’)とを更に含むことができる。例えば、第1の空間領域は、第1のセットが第2の空間領域で生成されるクラッタの影響を受け易いように位置してもよい。
【0023】
言い換えれば、選択された第1のセットに基づいて1つ以上の第2のセットを決定することができる、及び/又は、選択された第2のセットに基づいて1つ以上の第1のセットを決定することができる。したがって、第1のセット及び第2のセットの両方を、第1のセット及び第2のセットの他方を決定するための開始点とすることができる。方法は、工程(d)及び(e)、又は工程(d’)及び(e’)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。後者の場合、例えば、幾つかの第1のセット(例えば、画像ピクセル)におけるクラッタ推定は、工程(d)及び(e)を使用して処理され、他の第1のセット(例えば、同じ又は他の画像の画像ピクセル)については、工程(d’)及び(e’)を使用して処理される。
【0024】
工程(d)及び(e)(及び/又はそれぞれ(d’)及び(e’))は、事前に、すなわち特定の媒体のビームフォーミングされたデータを処理する前に予め決定されてもよい。例えば、工程(d)及び(e)(及び/又はそれぞれ(d’)及び(e’))は、トランスデューサデバイスの特性及び/又は入射ビームの形状の関数として予め決定されてもよい。それぞれ決定された計算は、(例えば、以下で説明するように、ルックアップテーブル又は他のタイプのマッピング関数の状態で)記憶されてもよい。言い換えれば、工程(d)及び(e)(及び/又はそれぞれ(d’)及び(e’))は、使用されるトランスデューサデバイスの所定の特性にのみ依存することができ、特定の媒体には依存しない。単に工程(f)は媒体に依存し得る。
【0025】
結果として、本方法は、工程(d)及び(e)(及び/又はそれぞれ(d’)及び(e’))の計算をデータストレージから読み出すことができるため、従来技術と比較してより高速に実行され得る。したがって、クラッタを例えばリアルタイム又は準リアルタイムで推定することができる。更に、本方法は、計算上安価となることができ、したがって、必要とされる処理電力及び/又はエネルギー及び/又は計算時間がより少なくなり得る。
【0026】
一般に、本方法で処理されるべきビームフォーミングされたデータは、第1のセット及び第2のセットを含むことができる。言い換えれば、ビームフォーミングされたデータは、ビームフォーミングされたデータの複数のセットを含むことができ、各セットはそれぞれの空間領域と関連付けられる。
【0027】
ビームフォーミングされたデータのセット(例えば、第1のセット、第2のセットなど)は、ビームフォーミングされたデータ内の1つ以上のピクセル及び/又はボクセルを指す又は構成することができる。ピクセル及び/又はボクセルは、2D画像データ若しくは高次元画像データ、又は画像データの2D若しくは高次元時間シーケンス、すなわち任意の次元のビデオデータによって表すことができる。また、ビームフォーミングされたデータのセットは、ピクセル又はボクセルのグループ又はクラスタを指す又は構成することができる。
【0028】
ビームフォーミングされたデータのセットの番号付け「第1」、「第2」などは、本開示の方法におけるそれらの機能を区別するために使用されているにすぎないことに留意されたい。本方法の1つの実施形態又は反復における第1のセットの役割を有する所与のセットは、本方法の他の実施形態又は反復における第2のセットの役割を有することができる。例えば、セットが画像のピクセルを構成すると仮定すると、各ピクセルでクラッタを推定することが望ましい場合がある。しかしながら、所与のピクセルにおけるクラッタは、同じ画像の他のピクセルの関数として推定される。したがって、同じピクセルは、本方法の一実施形態又は反復では「第1のセット」であってもよいが、本方法の他の実施形態又は反復では「第2のセット」であってもよい。したがって、「第1のセット」及び「第2のセット」という用語は、本開示において置き換えることもできる。
【0029】
第1及び/又は第2の空間領域は、媒体の領域であってもよく、又は媒体の領域と関連付けられてもよい。しかしながら、第1及び/又は第2の空間領域を使用されるトランスデューサデバイスの関数として規定することもできる。後者の場合、領域は、特定の媒体から独立して規定されてもよいが、トランスデューサデバイスの幾何学的形状、特にそのトランスデューサアレイの関数としてのみ規定されてもよい。
【0030】
言い換えれば、空間領域は、媒体内の散乱体(複数可)又はリフレクタ(複数可)の物理的領域に対応することができ、一方、ビームフォーミングされたデータのセットは、画像データ内の位置に対応することができる。
【0031】
本開示は、単一の第2の領域に位置する散乱体が第1のセットでクラッタを直接引き起こすシナリオをカバーすることができる。この現象は、第1及び第2の空間領域が同じ往復伝搬時間によって特徴付けられる場合に生じ得る。この時間は、送信された伝搬時間の合計、すなわち、所与の入射ビームが超音波デバイスから対象の空間領域に移動するのに必要な遅延として規定され、また、受信された伝搬時間、すなわち、この対象の空間領域で生成されたエコーが超音波デバイスの所与のトランスデューサ素子に戻るのに必要な遅延として規定される。
【0032】
しかしながら、複数の散乱シナリオも本開示によってカバーされ得る。そのようなシナリオにおいて、複数の第2の空間領域に位置する複数の散乱体は、複数回散乱されたエコーを生成することができ、第1のセットでクラッタを引き起こし得る。言い換えれば、これらのエコーは、第1の空間領域と関連付けられたエコーと同じ伝搬時間を有する複数の散乱経路をたどる。
【0033】
典型的な媒体は、不活性材料だけでなく、ヒト又は動物の肝臓、乳房、筋肉(筋線維)などの身体部分も含む。特に、媒体界面(例えば器官の壁)などの強力なリフレクタは、反射率の増大を意味することができ、その見返りとして、他の領域でクラッタをもたらし得る。
【0034】
本方法は、任意の形状の放出波に適用可能であり得る。特に、本方法は、集束波、発散波又は平面波に適用することができる。なお、平面波と発散波によって生成されるクラッタは、通常、より顕著である。
【0035】
ビームフォーミングは、トランスデューサデバイスの信号データを処理するために使用される信号処理技術と呼ばれる場合がある。ビームフォーミングは、特に、トランスデューサデバイスのRF信号データを処理して、例えば、媒体、例えばヒト組織の画像データを取得するために媒体の空間モデルを作成するべく使用され得る。
【0036】
したがって、ビームフォーミングされたデータは、媒体を表すために、空間領域、特に2次元又は3次元(2D/3D)空間領域におけるデータであってもよい。トランスデューサデバイスによって取得される信号データは、時間領域及び/又は空間-時間領域にあってもよい。例えば、信号データを2つの次元に従って説明することができ、この場合、一方の次元が取得時間を反映し、他方の次元が信号を取得した超音波デバイスのトランスデューサ素子の空間位置を反映する。
【0037】
本方法は、以下のステップ、すなわち、
第1のセットにおいて推定されたクラッタを補償するステップ(g)、及び/又は、
第1のセットにおいてクラッタを除去するステップ(g’)、
を更に含むことができる。
【0038】
上記の方法工程(g)及び/又は(g’)を含むことにより、第1のセットで推定されたクラッタを補償すること、及び/又は第1のセットでクラッタを除去することが可能になる。これにより、クラッタの影響を除去することによってビームフォーミングされたデータの品質を向上させることができる。これは、例えば、診断を容易にし、診断をより信頼性の高いものにし、及び/又は医療診断を改善することができる。
【0039】
クラッタは、第1の空間領域の位置及び/又は第2の空間領域の位置の関数として推定され得る。例えば、第1及び第2の空間領域の両方の位置が考慮される場合、これらの領域間の相対距離も決定され得る。
【0040】
一例において、第1及び/又は第2の空間領域の位置は、使用されるトランスデューサデバイスの位置に関連して規定されてもよい。
【0041】
クラッタは、第2のセット及び/又は第2のセットの振幅の関数として推定され得る。例えば、振幅の増大(すなわち、強度又はエネルギーレベルの増大)は、クラッタの増大の推定につながり得る。
【0042】
一般に、第2の空間領域は、第2のセットと関連付けられ得る。したがって、第2の空間領域は、第2のセットによって表わされ得る。したがって、第1のセットにおけるクラッタは、第2のセットの関数として決定され得る。
【0043】
特に、第2のセットは、第2のセットの振幅が所定の閾値を超える場合に(望ましくはその場合にのみ)クラッタを推定するために考慮されてもよい。したがって、工程(e)は、振幅が増大した第2のセットの事前選択及び/又はフィルタリングを含むことができる。これは、所定の閾値を超える反射率を有する第2の領域(例えば、後述するように)のみが第1の領域を表すビームフォーミングされたデータにおけるクラッタに大きく寄与することができるため、方法を単純化し、同様の又は僅かに悪い結果で計算コストを低減することができる。他の領域は、推定工程(f)において無視されてもよい。更に、閾値を超える第1の(及び/又は優先順位付けするために)第2のセットを考慮することが可能である。任意選択的に、他の第2のセットは、例えば推定されたクラッタをより正確にするために、後に(及び/又はより低い優先度で)考慮されてもよい。
【0044】
ビームフォーミングされたデータの第2のセットは、第1のセットと関連付けられる媒体から受信される信号データに対して等時的である媒体から受信される信号データと関連付けられてもよい。信号データは時間領域内であってもよい。したがって、信号データはRF信号データであってもよい。
【0045】
言い換えれば、ビームフォーミングされたデータの第2のセットは、第1のセットと関連付けられる媒体から受信される信号データと特定の時間的関係を共有する、例えば等時的である、媒体から受信された信号データに関連付けられ得る。
【0046】
したがって、等時的という用語は、第1の空間領域に関して、第2のセットからの信号が、等時的となることができ、したがって同じ伝搬時間を共有し得ることを記述し得る。すなわち、前記伝搬時間は、トランスデューサデバイスが信号を送信してから応答信号を受信するまでの時間であってもよい。特に、前記伝搬時間は、1つ以上のトランスデューサ素子によるパルス放出と、トランスデューサ素子による媒体内の散乱体からのエコー信号の受信との間の期間を指すことができる。例えば、各受信トランスデューサ素子が個別に考慮されてもよい。第1のセット及び第2のセットに関連する信号は、受信トランスデューサ素子において同じ伝搬時間を有することができ、すなわち等時的である。したがって、第2のセットに関連する信号は、第1のセットでクラッタを引き起こす可能性があり、言い換えれば、第1のセットは、第2の領域で発生されるクラッタの影響を受け易い場合がある。
【0047】
超音波測定を実行することは、超音波の放出シーケンスESを媒体に送信することと、媒体から超音波の応答シーケンスRSを受信することとを含むことができ、超音波信号データは、超音波の応答シーケンスRCに基づくことができる。
【0048】
ビームフォーミングされたデータの第2のセットが、第1のセットと関連付けられた媒体から受信される信号データと等時的である媒体から受信される信号データと関連付けられ得る場合、これにより、超音波の放出シーケンスに関連するクラッタを推定することができる。
【0049】
ビームフォーミングされたデータの第2のセットを決定するステップ(e)は、
第1のセットが第2の空間領域で生成されたクラッタの影響を受け易いように位置する複数の第2の空間領域とそれぞれ関連付けられるビームフォーミングされたデータの複数の第2のセットを決定するステップ(e)を含むことができる。
例えば、選択された第1のセット(例えば、画像ピクセル)に基づいて、複数の第2のセット(例えば、更なる隣接ピクセル)を決定することができる。
【0050】
第1のセットにおけるクラッタを推定するステップ(f)は、第2のセットとそれぞれ関連付けられる複数のクラッタ寄与度を推定するステップ(f)を含むことができ、第1のセットにおけるクラッタは複数のクラッタ寄与度の関数である。
【0051】
特に、複数の第2の空間領域は、互いに異なっていてもよく、すなわち媒体の異なる位置にあってもよい。したがって、媒体の異なる(第2の)領域によって引き起こされるクラッタ寄与度を考慮して、総計のクラッタ又は合計のクラッタを推定することができる。
【0052】
更に、これにより、複数の第2の空間領域、例えば第2の空間領域が第1のセットでクラッタを引き起こすことができるように位置する、ある割合の又は全ての第2の空間領域のクラッタ寄与度を含むクラッタ推定が可能になる。
【0053】
第1のセットにおける(総計の又は合計の)クラッタは、複数のクラッタ寄与度の線形結合によって推定され得る。例えば、第1の領域からより遠い第2の空間領域からのクラッタ寄与度は、第1の領域からより近い第2の空間領域からのクラッタ寄与度よりも小さく重み付けされ得る。すなわち、より近い第2の領域はより強い影響を有し得る。したがって、結果として得られる総計のクラッタの推定は、より正確になり得る。
【0054】
例えば、線形結合は、以下の式(1)で表すことができる。
【数1】
ここで、iは、選択された第2の空間領域を指し、a(i)は、空間領域iに関連付けられた計算されたクラッタ寄与度を示し、b(i)は、それぞれの重み付き係数を示す。
【0055】
更なる例によれば、重み付き係数は、トランスデューサデバイス及び/又は媒体及び/又は放出信号及び/又は受信信号に関連する態様などの、データ取得の態様を記述する関連する物理法則及び/又はパラメータに基づいてもよい数学的モデルに基づいて決定されてもよい。
【0056】
対応する態様で、特に工程(d’)及び(e’)に関連して、ビームフォーミングされたデータの第1のセットを決定するステップ(e’)は、各第1のセットが第2の空間領域で生成されるクラッタ寄与度の影響を受け易いように位置する複数の第1の空間領域とそれぞれ関連付けられるビームフォーミングされたデータの複数の第1のセットを決定するステップ(e)を含むことができる。
【0057】
各第1のセットにおけるクラッタ寄与度を推定するステップ(f’)は、第1のセットとそれぞれ関連付けられる複数のクラッタ寄与度を推定するステップ(f’)を含むことができる。したがって、選択された第2のセットに基づいて、前記第2のセットと関連する第2の空間領域によって引き起こされるクラッタ寄与度は、関連する第1のセットで決定され得る。その後、第1のセットのいずれか1つにおける総クラッタは、異なる第2の空間領域によって引き起こされるクラッタ寄与度を合計することによって計算することができる。
【0058】
本方法は、第1のセット及び/又は第2のセットを選択するステップ(d、d’)の前に、ビームフォーミングされたデータを取得するために媒体の超音波信号データを処理するステップ(c)を更に含むことができる。超音波信号データの代わりに、トランスデューサデバイスから発生する任意の他のタイプの信号データも使用することができる。
【0059】
本方法は、超音波信号データを処理するステップ(c)又はビームフォーミングされたデータを選択するステップ(d)の前に、超音波(We)の放出シーケンス(ES)を媒体(11)に送信するステップ(a)と、超音波(Wr)の応答シーケンス(RS)を媒体から受信するステップ(b)とを更に含むことができる。超音波信号データは、超音波(Wr)の応答シーケンス(RS)に基づくことができる。
【0060】
第1及び/又は第2のセットを決定するステップ(e)及び/又はクラッタを推定するステップ(f)は、
ビームフォーミングされたデータが基づく媒体のデータを取得するために使用されるトランスデューサデバイス(特にそのトランスデューサアレイ)の幾何学的形状と、
トランスデューサデバイスの単一のトランスデューサ素子の配置及び/又はサイズ(例えば、幅)と、
トランスデューサ素子の任意の更なる所定の特性、例えば、トランスデューサ素子のそれぞれの圧電素子の所定の特性と、
トランスデューサデバイスの放出及び/又は受信開口と、
放出持続時間と、
ビームフォーミングされたデータが基づく放出パルス(又はそれぞれの放出波又はそれぞれの音響ビーム)の波長及び/又はタイプと、
放出波面の所定の特性(例えば、幾何学的形状)(例えば、放出トランスデューサデバイスに対する放出平面波の角度)と、
ビームフォーミングプロセスのために使用された媒体の音響モデルの所定の速度と、
のうちの少なくとも1つに更に基づくことができる。
【0061】
前述の特性は、取得シーケンスの所定のパラメータとも呼ばれ得る。これにより、クラッタのより精密な及び/又はより正確な推定を得ることができる。特に、取得シーケンスのこれらの所定のパラメータのうちの少なくとも1つを考慮に入れることによって、任意の選択された第1のセットに関して、全ての第2のセットを(事前に)決定し、例えばルックアップテーブルなどに記憶することができる。
【0062】
ビームフォーミングされたデータの各セットは、少なくとも1つのピクセル又はボクセルと関連付けられ得る。
【0063】
ビームフォーミングされたデータは、ビームフォーミングされたIQデータ(すなわち、同相及び直交位相IQデータ)及び/又はビームフォーミングされたRFデータ(すなわち、無線周波数RFデータ)であってもよい。
【0064】
したがって、ビームフォーミングされたデータのセットは、例えば、同相位相値及び直交位相値の少なくとも1つのセットを含む又はそれから成り得る。
【0065】
ビームフォーミングされたデータが2次元又は3次元マトリックスの形態で配置される場合、各ピクセル(2次元)又は各ボクセル(それぞれ3次元)は、ビームフォーミングされたデータのそれぞれのセットを含む又はそれによって規定され得る。
【0066】
第1及び/又は第2のセット及び/又は第1及び/又は第2の空間領域が予め決定されてもよい。例えば、第1及び/又は第2の空間領域は、取得シーケンスの前述のパラメータ(例えば、その幾何学的形状)のいずれかの関数として予め決定されてもよい。
【0067】
第1の空間領域と第2の空間領域との間の関係(すなわち、選択された第1の空間領域に対する第2の空間領域の位置)は、それぞれのマッピング関数、例えばルックアップテーブルに記憶され得る。言い換えれば、工程(d)及び(e)(及び/又はそれぞれ工程(d’)及び(e’))は、媒体の特定のビームフォーミングされたデータとは無関係に、例えばルックアップテーブル/マッピング関数に予め決定/事前計算されて記憶されてもよい。本方法が特定の媒体に適用される場合、所与の第1のセットに関する第2の空間領域の選択及び/又は所与の第2のセットに関する第1の空間領域の選択は、前記マッピング関数を使用することによって決定され得る。
【0068】
本方法は、複数の第1のセットに関して、並列に及び/又は直列に実行され得る。
【0069】
これにより、例えばビームフォーミングされたデータの一部又は全体に関して、複数の第1のセットにおけるクラッタを推定することができる。一部は、例えば、ビームフォーミングされたデータ内の関心領域であってもよい。推定後、クラッタは、第1のセットにおいて補償され得る。次いで、これらの改善されたビームフォーミングされたデータは、グラフで表わされ及び/又は更に処理されてもよい。
【0070】
本方法は、第1の空間領域(又は上記のように複数の第1のセット)に関して複数回の反復で実行することができる。各反復において、修正されたビームフォーミングされたデータは、特に複数の第1のセットにおいて、推定されたクラッタを補償することによって取得され得る。第1の反復で取得される修正されたビームフォーミングされたデータは、後続の第2の反復で使用される。第1のデフォルトの例では、本方法が1回又は複数回の反復を含むことができる。更なる例では、本方法が2~7つの範囲の複数の反復を含むことができる。2回の反復では、推定が既に増強されている可能性があり、7回を超える反復は、追加の計算コストを考慮して必ずしも有意な改善をもたらさない。より具体的な例において、本方法は、クラッタ推定の最適化と必要な計算コストの制限との間の有利なトレードオフと思われる3回の反復を含むことができる。
【0071】
したがって、各反復で、クラッタが益々補償され得る。
【0072】
適用される反復回数は固定されてもよく、及び/又は任意の所定の収束規則及び/又は閾値を使用して反復回数を決定する又は停止基準を規定することができる。
【0073】
AI(人工知能)ベースモデル、例えばニューラルネットワークのような機械学習モデルが、推定されたクラッタに基づいて訓練され得る。機械学習モデルは、例えば、第1及び/又は第2の空間領域の位置、第2の空間領域の反射率、ビームフォーミングされたデータが基づく媒体のデータを取得するために使用されるトランスデューサデバイスの幾何学的形状、トランスデューサデバイスの信号トランスデューサ素子の配置、トランスデューサデバイスの放出及び/又は受信開口、ビームフォーミングされたデータが基づく放出パルスの波長及び/又はタイプ、放出波面の幾何学的形状、クラッタが生成される領域を記憶するルックアップテーブルなどのような前述した方法の任意の本質的及び/又は任意選択的な特徴に基づいて更に訓練されてもよい。
【0074】
AIベースモデルは、クラッタを推定し及び/又は推定されたクラッタを補償及び/又は除去するために使用することができる。
【0075】
クラッタを推定し、及び/又は推定されたクラッタを補償及び/又は除去するためにAIベースモデルを使用すると、計算コストを低減して同様の品質の結果を提供することができる。
【0076】
訓練されたAIベースモデルは、入力データとして媒体を走査するための平面波と関連付けられるビームフォーミングされたデータを使用することによって、及びAIモデルの出力データと出力データと同じ媒体を走査するための集束波と関連付けられるビームフォーミングされたデータとを比較することによって評価することができる。集束波に関連するビームフォーミングされたデータはクラッタの影響を受け難いため、AIベースモデルの出力データの良好な基準を提供することができる。
【0077】
一般に、2つのタイプのビームフォーミングされたデータ、すなわち、(1.)平面波を使用する取得、及び(2.)同じ媒体の集束波を使用する取得と関連するビームフォーミングされたデータをそれぞれ取得するために、媒体の2つのタイプの取得を使用することができる。
【0078】
一例によれば、本開示の方法は、(1.)及び(2.)の両方のビームフォーミングされたデータに適用することができる。次いで、例えば方法の効率を評価するために、推定されたクラッタの結果、特にクラッタの補償の結果を比較することができる。この場合、クラッタの補償は、(1.)においてはるかに重要であるべきであり、(2.)のビームフォーミングされたデータに向かって収束するべきである。
【0079】
また、同じ媒体の(1.)の複数回ビームフォーミングされたデータと(2.)の1回ビームフォーミングされたデータとを得ることも可能である。(2.)のビームフォーミングされたデータは、(1)の幾つかのビームフォーミングされたデータを補償する補償方法を較正及び/又は検証するために使用され得る。
【0080】
本開示は、データ処理システムによって実行されるときにデータ処理システムに使用され得る方法を実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムに更に関連する。
【0081】
本開示は、媒体のビームフォーミングされたデータを処理するためのシステムに更に関連する。ビームフォーミングされたデータは、第1の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第1のセットと、第2の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第2のセットとを含む。本システムは、第1のセットにおいて第2の空間領域によって引き起こされるクラッタを推定する(f)、ように構成される処理ユニットを備える。
【0082】
本システムはトランスデューサ素子を備えてもよい。システムは、特に、トランスデューサデバイスを備えることができるプローブ(例えば、超音波プローブ)を備えることができる。
【0083】
本システムは超音波システムであってもよい。
【0084】
システムは、更なる機能特性を備えてもよく、及び/又は前述の方法工程に対応して構成されてもよい。
【0085】
本開示及びその実施形態は、ヒト、植物、又は動物専用の医療システムの文脈で使用されてもよいが、考慮されるべき任意の(非生物)軟質材料の文脈でも使用されてもよい。
【0086】
他の点で矛盾しない限り、上述の要素と本明細書内の要素との組み合わせを行ってもよいことが意図される。
【0087】
前述の発明の概要及び以下の詳細な説明は、双方とも例示的且つ説明的なものにすぎず、例示を目的として提供されており、また、特許請求されるような本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【0088】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、例示を目的として提供されており、また本開示の実施形態を説明と共に示し、その原理を支持し、かつ例示する役割を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】本開示の実施形態に係る方法の典型的な実施形態を示す。
図2】本開示の典型的な実施形態に係る方法を実行するシステムを示す。
図3】3つのリフレクタを伴う媒体のRF信号データの一例を示す。
図4図3のRF信号データのビームフォーミングされたデータを示す。
図5】クラッタを補償するための方法の第1の例の原理を示す。
図6】本開示に係るクラッタを補償するための方法の第2の改良された典型的な実施形態の原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
ここで、本開示の典型的な実施形態を参照し、その例を添付図面に示す。便宜上、同じ参照符号は、図面全体を通して同じ又は同様の部分を指すために使用される。さらに、特定の実施形態、例えば図1の実施形態との関連で説明される特徴は、異なって記載されない限り、適宜、他の実施形態のうちのいずれにも同様に当てはまる。
【0091】
図1は、開示の実施形態に係る方法の典型的な実施形態を示す。本方法は、システム1によって、より具体的には超音波プラットフォーム20によって実行されてもよい。超音波システムの一例を図2との関連で説明する。
【0092】
本方法は、超音波システムによって実行される超音波方法であってもよい。可能な超音波方法は、Bモード撮像、せん断波エラストグラフィ撮像(本出願人によって開発されたShearWave(登録商標)モードなど)、ドップラー撮像、Mモード撮像、CEUS画像、ultrafast(商標)ドップラー撮像、又はAngio P.L.U.S(商標)超音波撮像又は任意の他の超音波撮像モードで命名されたangioモードを含む。したがって、ビームフォーミングされたデータを決定することができる信号データを取得するために、異なる取得モードを使用することができる。方法は、前述の方法のいずれかの一部であってもよく、又はこれらの方法のいずれかと組み合わせてもよい。
【0093】
しかしながら、本開示による方法は、超音波検査以外の他の技術分野にも同様に適用されてもよい。具体的には、被検査媒体又は環境のデータ/信号を取得するために複数のトランスデューサ素子を使用する、及び/又は収集されたデータ/信号に基づいてビームフォーミング技術を任意選択的に使用することができる、任意の技術分野が考えられる。例は、レーダシステム、ソナーシステム、地震システム、無線通信システム、電波天文学システム、音響システム、非破壊試験(NDT)システム及び生物医学システム、又は能動撮像の分野における任意の他の技術を使用する方法を含む。能動的撮像の原理、すなわち、1つ以上の要素(ソース)を介して媒体にパルスを放出し、1つ以上の要素(レシーバ)を介して応答パルスを受信し、クラッタを推定及び/又は補償する原理は、超音波トランスデューサの機能と同様である。
【0094】
したがって、本開示に係る方法は、これらの場合のそれぞれにおいて、例えばビームフォーミングされたデータにおける望ましくないクラッタを補償するなど、前述したのと同じ肯定的な技術的効果を達成することができる。しかしながら、ここで本開示を単に例示することを目的として、以下では超音波方法の例に言及する。
【0095】
この方法は、例えば、媒体のビームフォーミングされたデータのクラッタを補償するための方法であってもよく、より一般的にはビームフォーミングされたデータを処理するための方法であってもよい。
【0096】
任意選択的な工程(a)では、少なくとも1つのパルスが媒体に送信される。例えば、送信ステップは、所与の点に収束する円筒波及び/又は異なる角度の合成平面波を、媒体に照射するステップを含んでもよい。より具体的には、送信ステップでは、複数の超音波を撮像領域内に送信することができる。
【0097】
一般に、本開示では、パルスは、トランスデューサ素子によって放出される音響信号又は電気信号に対応することができる。パルスは、例えば、パルス持続時間、結果として生じる波の周波数、所与の周波数におけるサイクル数、パルスの極性などのうちの少なくとも1つによって規定され得る。波は、1つ又は幾つかのトランスデューサ素子によって(すなわち、それぞれ放出されるパルスによって)生成された波面に対応することができる。波は、使用される異なるトランスデューサ素子間の放出遅延によって制御されてもよい。例は、平面波、集束波及び発散波を含む。ビームは、波によって超音波照射される物理的領域(例えば、媒体内)に対応することができる。したがって、ビームは、波に関連していてもよいが、時間的概念をほとんど又は全く有していなくてもよい。例えば、それは、集束ビームの被写界深度が関心のあるものである場合、ビームと呼ばれてもよい。
【0098】
任意選択的な工程(b)において、応答シーケンスが、トランスデューサ素子のセットによって媒体から受信される。応答シーケンスは、工程(a)の超音波照射処理の後方散乱エコーを含み得る。応答シーケンスは、信号データ、特に超音波信号データ及び/又はRF及び/又はIQ信号データとも呼ばれ得る。信号データは、例えば以下でより詳細に説明するように、時間領域、より具体的には時空間領域にあってもよい。一例では、応答シーケンスは、1つ又は幾つかの周波数範囲のみを保持するために、帯域通過フィルタリングによって処理されてもよい。
【0099】
任意選択的な工程(c)において、応答シーケンスは、ビームフォーミングされたデータを取得するために処理される。ビームフォーミングされたデータは、媒体の特性を表すために、空間領域、特に2次元又は3次元空間領域のデータであってもよい。例えば、Bモード撮像の場合、ビームフォーミングされたデータは、中程度の反射率の推定である。一例では、(上記で説明したように)複数の周波数範囲ごとに複数のビームフォーミングされたデータセットが取得される場合、ビームフォーミングされたデータは周波数の関数として規定され得る。
【0100】
工程(a)~(c)は、工程(d)~(f)に使用されるシステム以外の任意の他のシステムによって、又は別の時点で実行されてもよいため、任意選択であることに留意されたい。また、データは、シミュレーションデバイス、ファントムへの超音波照射などの他の機能によって与えられてもよい。ビームフォーミングされたデータが事前に記憶され、例えば、データストレージ、通信インターフェースなどによって与えられ/読み取られることも可能である。
【0101】
任意選択的な工程(d)において、媒体の第1の空間領域に関連するビームフォーミングされたデータの第1のセットが選択される。任意選択的な工程(d’)で媒体の第2の空間領域に関連付けられるビームフォーミングされたデータの第2のセットを選択することも可能である。前記選択は、例えば以下でより詳細に説明するように、所定の選択アルゴリズムによって制御されてもよい。
【0102】
任意選択的な工程(e)(特に、その後の工程(d))において、媒体の第2の空間領域に関連付けられるビームフォーミングされたデータの第2のセットが決定される。前記第2の領域は、第1のセットでクラッタを引き起こすことができるように、言い換えれば、第1のセットが第2の空間領域で生成されるクラッタの影響を受け易いように位置する。したがって、第1及び第2の空間領域の位置に基づいて、工程(e)において、(第2の)領域が一般に第1のセットにおいてクラッタを引き起こすことができるか否かを判定することができる。工程(d)が工程(d’)に置き換えられる場合、任意選択的な工程(e’)において、媒体の第1の空間領域に関連付けられるビームフォーミングされたデータの第1のセットを決定することが更に可能である。本方法の更なる特徴は、それぞれ適合させることができる。
【0103】
任意選択的に、工程(d)及び(e)又はそれらの両方は、事前に実行されてもよい。言い換えれば、これらの工程は、所与のトランスデューサデバイス、所与の取得シーケンス、及び所与のビームフォーミングプロセスに関して1回実行されてもよく、次いで任意の媒体に関して有効であってもよい。これは、これらの工程が特定の媒体の特性に依存しないため可能である。したがって、これらの工程の計算は、特定のトランスデューサデバイス、取得シーケンス、及びビームフォーミングプロセスについて記憶されてもよい。方法が特定の媒体に適用されると、これらの工程(d)及び(e)の計算は、データ記憶デバイスから読み取られ得る。異なる種類のトランスデューサデバイスのそれぞれの計算を記憶することも可能である。
【0104】
一例では、それぞれの第1の領域ごとに、それぞれ(事前に)決定された第2の領域が、ルックアップテーブル又は他の形式のマッピングに記憶されてもよい。ルックアップテーブルは、決定直後又は将来、ローカル又はリモートで使用可能であり得る。
【0105】
工程(f)において、第1のセットにおける第2の空間領域によって引き起こされるクラッタが推定される。したがって、この工程では、第2の空間領域が実際にクラッタを引き起こすか否か、及び任意選択的にどの程度(すなわち、クラッタの振幅又は/及び量)までクラッタを引き起こすかが推定される。
【0106】
前述したように、ビームフォーミングプロセスに使用される音響モデルの所与の第1の空間領域及び速度について、所与の放出及び所与の受信トランスデューサにおける第1のセットにおいてクラッタを引き起こし易い複数の第2の空間領域が存在し得る。幾つかのビームフォーミングプロセスでは、複数の放出波によって生成され、複数のトランスデューサによって測定された信号は、ビームフォーミングされたデータの第1のセットを生成するために使用される。この場合、複数の第2の空間領域から生じるクラッタ寄与度は、第1のセットをビームフォーミングするために使用される各放出波及び受信トランスデューサについて推定され得る。
【0107】
第1の選択肢によれば、工程(e)及び(f)は、所与の放出波及び受信されたトランスデューサについて空間的な第2の領域にわたってループL1を介して繰り返すことができ、したがって、幾つかの反復にわたって実行することができる。各反復において、異なる第2の空間領域が工程(e)において決定されてもよく、前記第2の領域のそれぞれのクラッタ寄与度が工程(f)において推定されてもよい。したがって、一例では、第1のセットにおける総計のクラッタ又は合計のクラッタは、複数のクラッタ寄与度の線形結合によって推定することができる。
【0108】
第2の選択肢によれば、工程(e)及び(f)は、受信トランスデューサ素子にわたって更なるループL2を介して繰り返すことができ、したがって、数回の反復にわたって実行することができる。各反復において、第2の空間領域のアンサンブルは、ビームフォーミングされたデータの第1のセットを決定するために使用されるトランスデューサデバイスの所与の(異なる、受信)トランスデューサ素子に関して決定され得る。工程(e)及び(f)において、それぞれのクラッタを前記トランスデューサ素子について推定することができる。すなわち、図2に示すように、方法は、単一のトランスデューサ素子に適用されてもよい。したがって、方法は、複数のトランスデューサ素子を考慮するために繰り返されてもよい。前記複数のトランスデューサ素子は、トランスデューサデバイスの全てのトランスデューサ素子を備えてもよく、信号データがビームフォーミングされたデータの第1のセットを決定するために使用されるトランスデューサ素子のみを備えてもよい。ループL2は、ループL1を含むことができる。言い換えれば、ループL2の各反復において、ループL1による反復が含まれてもよい。
【0109】
第3の選択肢によれば、工程(e)及び(f)は、放出された波にわたってループL3を介して繰り返すことができ、したがって、例えば合成ビームフォーミングの場合には、幾つかの反復にわたって実行することができる。各反復では、別の放出波が考慮され得る。したがって、工程(e)及び(f)は、第1のセットをビームフォーミングするために使用される送信波の数にわたって反復され得る。波は、1つ又は幾つかのトランスデューサ素子によって生成され得る。例えば、トランスデューサデバイスは、異なる所定の放出角度を有する平面放出波を生成することができる。ビームは、トランスデューサデバイスから放出された音響エネルギーが移動する領域とも呼ばれる。ループL3は、ループL1及びL2のうちの少なくとも1つ又は全てを含むことができる。言い換えれば、ループL3の各反復において、ループL1及びL2による反復が含まれてもよい。
【0110】
ループL1、L2、L3は、ループL1、L2、及びL3によって決定された第2の空間領域のそれぞれによって生成されたクラッタ寄与度の組み合わせから生じる第1のセットにおける全クラッタを推定するために、様々な順序で処理され、組み合わされてもよいことに留意されたい。
【0111】
ループL1~L3のうちの少なくとも1つが、工程(e)から工程(f)へではなく、工程(e)から工程(g)(又は代替的に(g’))への反復を含むことも可能である。したがって、各反復において、推定されたクラッタは、工程(g)、(g’)において補償及び/又は除去され得る。
【0112】
任意選択的な工程(g)では、推定されたクラッタはビームフォーミングされたデータで補償される。特に、任意選択的な工程(g’)では、ビームフォーミングされたデータでクラッタが除去され得る。しかしながら、クラッタが部分的にのみ補償されることも可能である。
【0113】
第4の選択肢によれば、工程(d)~(g)(又は代替的に(g’))は、ループL4を介して繰り返されてもよく、したがって、複数回の反復にわたって実行されてもよい。各反復において、それぞれ異なる第1の空間領域に関連する異なる第1のセットが、工程(d)において選択され得る。決定された第2の空間領域によって引き起こされるそれぞれのクラッタは、工程(f)において推定され、工程(g)、(g’)において補償及び/又は除去され得る。例えば、所定の選択アルゴリズムは、ビームフォーミングされたデータの座標系上の異なる第1の領域を、例えば段階的に選択することができる。このようにして、クラッタは、ビームフォーミングされたデータ内の対象の空間領域にわたって、又はビームフォーミングされたデータの完全な空間拡張にわたって推定され得る。ループL4は、ループL1~L3の少なくとも1つ又は全部を含んでもよい。すなわち、ループL4の各繰り返しにおいて、ループL1~L3に応じた繰り返しが含まれていてもよい。
【0114】
ループL4が、工程(e)から工程(g)、(g’)へではなく、工程(e)から工程(f)への反復を含むことも可能である。したがって、ループL4の各反復において、推定されたクラッタは、工程(f)において推定されるだけでよい。クラッタが複数の第1のセット(例えば、ビームフォーミングされたデータ全体)について推定されると、クラッタは、工程(g)、(g’)において複数の第1のセットについてそれぞれ補償及び/又は除去され得る。
【0115】
更に、ループL1~L4のうちの少なくとも1つの反復が並列に処理されることが可能である。
【0116】
工程(d)及び(e)が工程(d’)及び(e’)に置き換えられる場合、ループL1~L4の反復は、第1のセットを第2のセットによって、及び第2のセットを第1のセットによってそれぞれ交換することによって適合され得る。
【0117】
任意選択的な工程(h)において、処理されたビームフォーミングされたデータを取得することができる。これは、ループL1~L4(のうちの少なくとも1つ又は全て)の反復が終了すると、特に当てはまり得る。これにより、ビームフォーミングされたデータの全体を処理することができる。例えば、処理されたビームフォーミングされたデータは、(例えば、図2との関連で説明したシステムのユーザに対して)表示されてもよく、及び/又は更に処理されてもよい。例えば、処理されたビームフォーミングされたデータは、別のシステム又はモジュール、例えばアルゴリズム又はAIベースのモデルに与えられてもよい。
【0118】
第5の選択肢によれば、工程(d)~(h)は、ループL5を介して繰り返すことができ、したがって、数回の反復にわたって実行することができる。工程(d)及び(h)によるビームフォーミングされたデータの各反復処理は、繰り返されてもよい。したがって、ループL5は、ループL1~L4の少なくとも1つ又は全てを含んでもよい。言い換えれば、ループL5の各反復において、ループL1~L4による反復が含まれてもよい。各反復において、修正されたビームフォーミングされたデータは、前の反復で取得されたビームフォーミングされたデータを処理することによって取得され得る。言い換えれば、第1の反復で取得された修正ビームフォーミングされたデータは、後続の第2の反復で使用され得る。したがって、反復ごとに、クラッタをより正確に推定し、補償することができる。
この方法は、ループL1~L5の任意の組み合わせを使用して実行することもできる。
【0119】
図2は、本開示の典型的な実施形態に係る方法を実行するシステムを示す。
【0120】
システム100は、例えば、媒体11のビームフォーミングされたデータを取得して処理するように構成されてもよく、又は例えば媒体11内の領域を撮像する目的で構成されてもよい。
【0121】
媒体11は、例えば、生体、特にヒト又は動物の体であるか、又は任意の他の生物学的又は物理化学的媒体(例えば生体外媒体)であり得る。媒体は、その物理的特性の変動を含み得る。例えば、媒体は、肝臓、乳房、筋肉(筋線維)、特に培地中の任意の界面(例えば器官の壁)を含み得る。このような界面は、すなわち、反射率が増大する可能性があり、その結果、他の領域でクラッタが発生する可能性がある。
【0122】
システム100は、少なくともトランスデューサデバイス、例えば超音波トランスデューサデバイスを備えるプローブ12を含むことができる。前記トランスデューサデバイスは、例えばx軸に沿って配置されたトランスデューサアレイの形態の、一又は複数のトランスデューサ素子20を備えてもよい。各トランスデューサ素子20は、信号を超音波に変換する(放出する)及び/又は超音波を信号に変換する(受信する)ようになっていてもよい。
【0123】
システム100は、電子処理ユニット13を更に含むことができる。前記ユニットは、同じプローブが放出/受信に使用される場合、任意のモード(受信及び/又は放出モード)でプローブ内のトランスデューサを任意選択的に制御することができる。放出/受信のために、又は走査された媒体への適切な適合のために、異なるプローブを使用することもできる。放出及び受信トランスデューサ素子は、単一のプローブ又は異なるプローブに配置された同じ又は異なるものであってもよい。
【0124】
更に、ユニット13は、超音波信号データを処理し、媒体の特性及び/又は前記特性の画像を決定することができる。
【0125】
プローブ12は、プローブの前方の所定の位置にz軸の方向に超音波集束を実行するように湾曲トランスデューサを備えることができる。また、プローブ12は、トランスデューサの線形アレイを備えてもよい。更に、プローブ12は、二次元(2D)平面への超音波集束を実行するように、x軸に沿って並置された数十個から数千個(例えば128,256、又は8~2064)までのトランスデューサ素子を備えることができる。プローブ12は、三次元(3D)ボリュームへの超音波集束を実行するように二次元アレイを備えることができる。更に、プローブは、幾つかのトランスデューサデバイス、例えば、放出用の少なくとも1つのトランスデューサデバイス及び受信用の少なくとも1つのトランスデューサデバイスを備えることもできる。別の例では、プローブ12は、単一のトランスデューサ素子を備えてもよい。別の例では、プローブ12は、マトリックス形態のトランスデューサデバイスを備える(この場合、例えば最大数千個のトランスデューサ素子を備える)ことができる。
【0126】
上記の処理ユニット13及びプローブ12は、例えば、単一のトランスデューサ素子20又はトランスデューサ素子20の所定のグループを使用して、超音波Weの放出シーケンスESを媒体11に送るように構成されてもよい。上記の処理ユニット13及びプローブ12は、例えば、1つのトランスデューサ素子20又はトランスデューサ素子20の所定のグループ(放出に使用されるものと同じ又は別のもの)を使用して、媒体から超音波(すなわち、超音波信号データ)の受信シーケンスRSを受信するように更に構成されてもよい。
【0127】
位置に向かう及び位置からの超音波We、Wrは、集束波(ビーム)又は非集束ビームであってもよい。これに関連して、所定のビームフォーミング方法を使用することができ、例えば、放出された超音波Weは、遅延されてトランスデューサアレイの各トランスデューサに送信される複数のトランスデューサ信号によって生成することができる。受信超音波Wrは、遅延及び加算によって結合されて受信シーケンスRSを生成する複数のトランスデューサ信号から構成されてもよい。
【0128】
図1の方法の想定し得る実施形態では、1つの特定のトランスデューサ素子20aを考慮することができる。第1の空間領域r1に関連するビームフォーミングされたデータの第1のセットにおける第2の空間領域r2によって引き起こされるクラッタを推定することができる。
【0129】
図2に示すように、所与の放出波(又はそれぞれの音響ビーム)に関して、両方の領域r1及びr2からのエコー信号は、受信されたトランスデューサ素子20aに関して同じ往復伝搬時間を有することができる。したがって、第1の領域r1から受信される信号データは、第2の領域r2から受信される信号データに対して等時的であり得る。したがって、それぞれの第1の及び第2のセットに関連する信号はトランスデューサ素子20aに関して同じ伝搬時間を有するので、第2のセットに関連する信号は第1のセットでクラッタを引き起こす可能性がある。簡単に言えば、領域r2は、所与のトランスデューサ素子及び所与の放出波に関し領域r1に対して等時的であると言える。
【0130】
この等時的特性により、第2の空間領域r2に関連するビームフォーミングされたデータの第2のセットは、第1のセットが第2の空間領域r2で生成されるクラッタの影響を受け易いように位置する。言い換えれば、第1のセットにおいてクラッタを生成することができる任意の第2の領域が位置する領域(又は位置)を決定することができる。一例では、前記領域は、放物線p1の形態を有してもよい(例えば、平面放出波の場合)。しかしながら、領域はまた、任意の他の形態、例えば楕円を有してもよい。一般に、領域は、選択された第1のセット、考慮されるトランスデューサ素子、トランスデューサデバイスの形状(又はより詳細にはそのトランスデューサアレイ)、放出波(又はそれぞれの音響ビーム)、及び媒体の所定の伝搬速度モデルのうちの少なくとも1つの関数として決定されてもよい。
【0131】
一例では、伝搬速度cは媒体内で一定であると仮定することができる。別の例では、伝搬速度cは伝搬速度モデルによって決定されてもよい。例えば、媒体が既知である場合、速度値は、媒体の異なる領域、例えば筋肉などに起因し得る。
【0132】
本開示では、トランスデューサ素子のサイズは、放出波の波長及び/又はそれらの空間パルス長と比較して比較的小さくてもよいと仮定することができる。放出波の空間パルス長は、前述の領域、すなわち第2の領域が位置する例示的な放物線p1の幅を決定することもできる。
【0133】
クラッタを推定するために(特に、r2によって引き起こされる実際のクラッタが存在するかどうかを評価するために)、r2に関連付けられたビームフォーミングされたデータの第2のセット、特に前記第2のセットの振幅(又はエネルギーレベル)を考慮に入れることができる。言い換えれば、クラッタは、第2のセット及び/又は第2のセットの振幅の関数として推定することができる。r1及びr2の位置を更に考慮に入れることが可能である。例えば、それらが互いに近い位置にあるほど、及び/又は第2の領域r2が(方向zにおいて)考慮されるトランスデューサ素子の直前の点に近いほど、前記第2の領域r2のクラッタ寄与度がより大きく重み付けされ得る。更に、第2のセットの振幅が所定の閾値を超えない場合、推定工程においてr2は完全に無視されてもよい。一般に、r1及びr2の特性(例えば、それらのそれぞれの振幅又は位置)は、関連するビームフォーミングされたデータ、すなわちビームフォーミングされたデータの第1及び第2のセットにおいて決定され得る。
【0134】
空間領域r1及びr3がトランスデューサ素子20bに関連する放物線p2上に位置することを考慮して、トランスデューサ素子20bについて対応する例示的なシナリオが示される。したがって、トランスデューサ素子20bに関して、第3の空間領域r3によって引き起こされるクラッタは、第1のセットで推定され得る。言い換えれば、第1のセットにおけるクラッタを推定するために、複数のトランスデューサ素子20a、20bが考慮されてもよい。前記複数のトランスデューサ素子は、トランスデューサデバイスの全てのトランスデューサ素子を備えてもよく、又は信号データがビームフォーミングされたデータの第1のセット(上記で説明したループL2上の反復も参照されたい)を決定するために使用されるトランスデューサ素子のみを備えてもよい。
【0135】
図3は、3つのリフレクタによって構成される媒体のRF信号データの一例を示す。RF信号は、この例では線形アレイによって測定されており、超音波アレイに関して0に等しい入射角の平面波によるこの媒体の超音波処理から生じる。この例では、RF信号データは2次元マトリックスの形態である。信号データは、時間領域、又はより具体的には空間-時間領域にあってもよい。したがって、信号データは2つの次元を有することができ、一方の次元(図3では、垂直軸)は取得時間を反映し、他方の次元(図3では、水平軸)は使用されるトランスデューサデバイスのトランスデューサアレイの空間軸(すなわち、図2では、X軸)を反映する。図3の前記信号データは、例えば図2に示すように、トランスデューサデバイスによって取得することができる。
【0136】
図3の例は、3つのアーチ型信号応答31a、31b、31cをもたらす3点リフレクタを有する媒体から受信された信号データを示す。
【0137】
図4は、図3のRF信号データのビームフォーミングされたデータを示す。前記ビームフォーミングされたデータは空間領域内にある。ビームフォーミングされたデータは、一方の次元(図4中、垂直軸)が媒体の深さ方向(すなわち、図2中、Z軸)を反映し、他方の次元(図4中、水平軸)が使用されるトランスデューサデバイスのトランスデューサアレイの軸(すなわち、図2中、X軸)に対応する2つの次元を有することができる。
【0138】
ビームフォーミングされたデータは、式(2)に示すように、遅延和(DAS)ビームフォーマによって取得することができる。
【数2】
ここで、τnは、入射波が点(x,z)まで進行し、トランスデューサ素子nに向かって逆伝搬する推定往復伝搬時間であり、αnは、(x、z)及びトランスデューサ素子nに関連付けられたアポダイゼーション係数である。
【0139】
ビームフォーミングされたデータの最適な結果の一例が図4に示されており、図4は、媒体内のリフレクタを表す3つのビームフォーミングされたピクセル40a、40b、40c(それぞれ円で強調表示されている)を示している。
【0140】
しかしながら、DASビームフォーマは、シングルポイントリフレクタのみの場合に最適である。したがって、図3の例では、複数(すなわち、図3では3つ)の点リフレクタは、画像を乱雑にし、コントラストを低下させる。これは、特に、アーチ信号31a、31b、31cの重複部分30に起因し得る。結果として、図4のビームフォーミングされたデータは実際にはクラッタによって劣化する。
【0141】
図5は、クラッタを補償するための方法の第1の例の原理を示す。特に、図5は、クラッタを補償するための典型的な期待値最大化(E-M)方法の4つの段階を示す。使用されるE-Mアルゴリズムは、尤度最大化の扱いにくい問題を並列の容易な尤度最大化に分離することを可能にし得る。
【0142】
段階S1には、望ましくないクラッタを含み得るビームフォーミングされたデータが示されている(例えば図1の方法の工程(c)で得られる)。
【0143】
段階S2において、ビームフォーミングされたデータは、元のRF信号データに変換され得る。したがって、ビームフォーミングされたデータ行列のピクセルは、RFデータ行列に逆投影されてもよく、すなわちビームフォーミングプロセスを逆にしてもよい。
【0144】
段階S3では、媒体の複数の異なる空間領域又は各空間領域に関して、他の(又は他の全ての)空間領域の寄与度を除去することによって修正されたRF信号データを構築することができる。前記工程は、E(推定)ステップと呼ばれてもよい。図5の例では、ピクセル40a、40c、すなわちアーチ31a、31cに関連するリフレクタの寄与度が「除去」されている。
【0145】
段階S4において、修正されたRF信号データがビームフォーミングされて、分離ピクセル40bのビームフォーミングデータが得られる。この目的のために、通常のDASビームフォーマを使用することができる。前記工程は、M(Mximisation)ステップとも呼ばれ得る。
【0146】
Eステップ及びMステップは、複数の反復で繰り返し実行されてもよい。最初の反復における開始点として、最初のEステップは従来のビームフォーミングされたデータを使用することができ(段階S1参照)、後続のEステップは、先行するMステップで取得されたビームフォーミングされたデータに基づくことができる(段階S4参照)。
本方法の反復ごとに、現在の画像推定値に基づいて、修正されたRFデータ行列を構築するステップ(段階S3参照)と、それに続く修正されたRFデータ行列に対して作用する通常のDASビームフォーミング(段階S4参照)とをもたらすことができる。
【0147】
図5の方法は、軸外信号を考慮しながら、画像ビームフォーミングの複雑なマルチパラメータ最適化問題をN個の別個の最尤最適化に分離することができ、Nは空間領域の総数である。しかしながら、図5の方法は、ビームフォーミングされたデータ(すなわち、パラメータ推定値)とRF信号データ(すなわち、観測データ)との間で前後に反復し、これは計算コストが高い。
【0148】
図6は、本開示によるクラッタを補償するための方法の第2の改良された典型的な実施形態の原理を示す。
【0149】
図6の実施形態では、方法は、ビームフォーミングされたデータ(すなわち、パラメータ推定値)とRF信号データ(すなわち、観測データ)との間で前後に反復する必要がなく、したがって、計算上安価であり得る(例えば、必要な時間、リソース、メモリ、電力などを考慮して)。特に、本方法は、単にビームフォーミングされたデータを処理することができ、すなわち単にビームフォーミングされたデータで動作することができる。
【0150】
ビームフォーミングは線形プロセスであるため、ビームフォーミングされたデータとRF信号データとの間の繰り返しを回避することができる。したがって、ビームフォーミングされたデータから信号の線形結合を除去することは、RFデータから特定の信号を除去することと等価である。更に、トランスデューサデバイスの所定の又は既知の特性(例えば、トランスデューサアレイの形状、波のタイプなど)に関して、どのリフレクタが特定のピクセルに衝突するか、又は一般的に言えば、どの第2の特別な領域が第1の領域に関連するビームフォーミングされたデータの第1のセットにクラッタを引き起こす可能性があるかを予測することが可能である。
【0151】
図6の実施形態の改善は、ビームフォーミングされたデータに対して図5のE-M方法を実施することにあり得る。Eステップは、第1の空間領域(例えば、関心ピクセル)上にクラッタを生成することができるように配置された第2の空間領域(例えばピクセル)の線形結合を除去することができる。したがって、ビームフォーミング及び逆ビームフォーミングの計算的に高価な前後の処理を回避できるように、MステップはEステップと組み合わされる。
【0152】
したがって、図6の実施形態は、ピクセルを画像からRFデータ行列に逆投影する必要がないこと、すなわちビームフォーミングプロセスを逆にする必要がないことを意味するので、かなりの量の計算動作を節約することができる。
【0153】
図6には、2つのトランスデューサ素子20c,20dと、それぞれのアイソクロナス受信領域(典型的な放物線60a、60bによって概略的に示される)を概略的に示している。更に示されるように、媒体内のそれぞれの領域に関連付けられたピクセル40aは、放物線60a上にあり、媒体内のそれぞれの領域に関連付けられたピクセル40cは、放物線60b上にあり、媒体内のそれぞれの領域に関連付けられたピクセル40bは、放物線60aと放物線60bとの重なり部分上にある。クラッタを推定する原理は、図2との関連で前述したものに対応し得る。しかしながら、図6との関連で、原理は、ビームフォーミングされたデータ、すなわち本開示に係る第1及び第2のビームフォーミングされたデータのセットに委ねられる。図6の例では、これらの第1のセット及び第2のセットは、それぞれピクセル40a、40bであってもよい。
【0154】
例えば、第1のピクセル40aに関連付けられた第1の領域から受信した信号データは、第2のピクセル40bに関連付けられた第2の領域から受信した信号データに対して等時的であってもよい。したがって、それぞれの第1の及び第2のビームフォーミングされたピクセルに関連する信号は、トランスデューサ素子20cで同じ伝搬時間を有し得るため、第2のピクセルに関連する信号は、第1のビームフォーミングされたピクセルでクラッタを引き起こし得る。
【0155】
より一般的には、放物線60a上に位置する任意のピクセルは、(選択された)第1のピクセル40aにおける等時性信号データを意味することができる。したがって、これらのピクセルは、それらが第1のピクセル40aにおいてクラッタを引き起こすことができるように位置する媒体の第2の空間領域に関連付けられていると決定されてもよい。
【0156】
これらのピクセルのそれぞれに関して、クラッタ寄与度は、放物線60a上の決定されたピクセルの振幅又は強度の関数として推定することができる。
【0157】
更なる選択肢では、計算電力を低減するために、その振幅が所定の閾値を超えるクラッタを推定するために、放物線60a上に位置するそのようなピクセルのみが考慮されてもよい。これは、方法を単純化し、計算コストを有利に削減することができる。
【0158】
更に、クラッタを更に低減するために、補償方法は複数回の反復で実行されてもよい。
【0159】
この方法では、単一のピクセルではなく、ピクセルのグループ又はクラスタもビームフォーミングされたデータのセットと考えることができる。
【0160】
トランスデューサ素子20dに関連する放物線60b上に位置するピクセル40a及び40cを考慮して、トランスデューサ素子20dについて対応する例示的なシナリオが示される。したがって、トランスデューサ素子20bの場合、ピクセル40cに関連する第3の領域によって引き起こされるクラッタは、ピクセル40aで推定され得る。言い換えれば、ピクセル40aのクラッタを推定するために、複数のトランスデューサ素子20c、20dが考慮されてもよい。前記複数のトランスデューサ素子は、トランスデューサデバイスの全てのトランスデューサ素子を備えてもよく、又は信号データがピクセル40aを決定するために使用されるトランスデューサ素子のみを備えてもよい(上記で説明したループL2上の反復も参照されたい)。
【0161】
図6の実施形態は、図1及び図2との関連で説明した方法に対応することができ、図1及び図2との関連で説明された特徴のいずれかを含むことができる。
【0162】
また、第2の空間領域は、以下の例に従って決定されてもよい。前記の例では、媒体は、変化する入射角を伴う連続する平面波を生成する線形アレイによって超音波照射される。更に、線形トランスデューサアレイによって受信された媒体の応答シーケンスは、2次元ビームフォーミングされたデータを取得するために処理される。言い換えれば、ビームフォーミングされたデータは、2次元マトリクスのピクセルの形態であってもよい。各ピクセルは、本開示に係るビームフォーミングされたデータのセット(例えば、同相及び直交位相IQ値)に対応することができる。
【0163】
M(x,z)は、本開示に係る第1のビームフォーミングされたIQデータセットに関連する第1の空間領域であってもよい。このとき、M(x,z)は、この第1の空間領域に関連付けられたピクセルを指す。次に、第1の場所でクラッタを引き起こす可能性がある第2の空間領域の位置、N(x,z)は、そのような第2の空間領域を指す。構成により、N及びMは、所与の送信された傾斜平面波θin及び所与の受信トランスデューサ素子Pout(xout,zout=0)に関して同じ伝搬時間を共有する。以下では、媒体中の音速は一定であり、cに等しいと仮定する。以下の実証は、上記の条件を検証する点Nの座標(x,z)を計算することを目的とする。
【0164】
角度θinの平面波が点M(x,z)に到達するのに必要な送信伝搬時間tinは、例えば式(3)のように表すことができる。
【数3】
【0165】
点M(x,z)で生成されたエコーがトランスデューサP(uout, 0)に到達するのに必要な受信伝搬時間toutは、例えば式(4)ように表すことができる。
【数4】
【0166】
点M(x,z)で生成され、トランスデューサPout(xout,zout=0)によって測定されたエコーの往復飛行時間t0は、例えば式(5)のように表すことができる。
【数5】
【0167】
定義により、N(x,z)はピクセルM(x,z)においてクラッタを生成する。したがって、M及びNは等時的であり、これは、それらが所与の平面波θin及び受信されたトランスデューサPoutに関して同じ往復伝搬時間を共有することを意味する。その結果、座標(x,z)は次式(6)の解となる。
【数6】
【0168】
展開後、(式(6))は、例えば式(7)のように表すことができる。
【数7】

【0169】
この式は、2次曲線に相当する。ゼロである二次の行列の行列式
を計算することができる。式(8)を参照されたい。
【数8】
【0170】
この特性は、二次曲線が放物線であることを保証する。
【0171】
第1の典型的な事例では、平面波の角度θinが0である場合、(式(7))を簡略化することができ、以下の式(9)によって、第2の領域のz座標をx座標の関数として決定することができる。
【数9】
この式は、放物線に相当する。当該座標が上記の式(9)を検証する点N(x,z)のみが、空間領域M(x,z)に対応する第1のデータセットにおける潜在的なクラッタ源と見なされるべきである。
【0172】
第2の典型的なケースでは、一般的な問題が考慮され得る。最初に、座標の変更を実行することができる。座標系が角度θだけ回転されてもよく、また、例えば式(10)及び(11)によって表わされ得る新たな座標系(x',z')が得られてもよい。
【数10】
【数11】
これらの新たな座標を使用することにより、(式7)を簡略化し、z'をx'の関数として表すことができる。式(12)を参照されたい。
【数12】
【0173】
一旦x'及びz'が決定されると、必要に応じて、角度-θ回転させることによって元のx及びzに戻すことができる。
【0174】
特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、「~を含む(comprising a)」という用語が、特に明記しない限り「少なくとも1つを含む(comprising at least one)」と同義であると理解されるべきである。さらに、特許請求の範囲を含む本明細書に記載されたあらゆる範囲が、特に明記しない限り、その1つ又は複数の最終値を含むものと理解されるべきである。記載されている要素の特定の値が、当業者に知られている許容製造公差又は産業公差内にあると理解されるべきであり、また「実質的に(substantially)」並びに/又は「およそ(approximately)」及び/若しくは「ほぼ(generally)」という用語を使用することにより、そのような許容公差内にあることを意味していると理解されるべきである。
【0175】
本明細書における本開示が特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態が、本開示の原理及び用途を単に例示したものにすぎないことを理解されたい。
【0176】
本明細書及び実施例が例示的なものとしてのみ考慮され、本開示の真の範囲が、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0177】
先行技術として特定された特許文献又は他の任意の事項への本明細書における言及は、当該文献若しくは他の事項が公知であること、又はそれが含む情報が特許請求の範囲のいずれかの優先日における共通の一般知識の一部であったことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0178】
(本開示の態様)
(第1態様)
媒体のビームフォーミングされたデータを処理するための方法であって、
前記ビームフォーミングされたデータは、第1の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第1のセットと、第2の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第2のセットとを含み、
前記方法は、
前記第1のセットにおいて前記第2の空間領域によって引き起こされるクラッタを推定するステップ(f)、
を含む方法。
【0179】
(第2態様)
前記第1のセットを選択するステップ(d)、及び前記関連付けられた第2の空間領域の位置の関数として前記第2のセットを決定するステップ(e)であって、前記第1のセットが前記第2の空間領域で生成されるクラッタの影響を受け易いように前記第2の空間領域が位置する、ステップ、及び/又は、
前記第2のセットを選択するステップ(d’)、及び前記関連付けられた第1の空間領域の位置の関数として前記第1のセットを決定するステップ(e’)であって、前記第1のセットが前記第2の空間領域で生成されるクラッタの影響を受け易いように前記第1の空間領域が位置する、ステップ、及び/又は、
前記第1のセットにおいて前記推定されたクラッタを補償するステップ(g)、及び/又は、
前記第1のセットにおいて前記クラッタを除去するステップ(g’)、
を更に含む、第1態様に記載の方法。
【0180】
(第3態様)
前記クラッタは、前記第1の空間領域の位置及び/又は前記第2の空間領域の位置の関数として推定され、及び/又は、
前記クラッタは、前記第2のセット及び/又は前記第2のセットの振幅の関数として推定され、及び/又は、
前記第2のセットは、前記第2のセットの振幅が所定の閾値を超える場合に、前記クラッタを推定するために考慮される、
第1又は第2態様に記載の方法。
【0181】
(第4態様)
ビームフォーミングされたデータの前記第2のセットは、前記第1のセットと関連付けられる前記媒体から受信される信号データに対して等時的である前記媒体から受信される信号データに関連付けられる、第1から第3態様のいずれかに記載の方法。
【0182】
(第5態様)
ビームフォーミングされたデータの前記第2のセットを決定するステップ(e)は、
前記第1のセットが前記第2の空間領域で生成されるクラッタの影響を受け易いように位置する複数の第2の空間領域とそれぞれ関連付けられるビームフォーミングされたデータの複数の第2のセットを決定するステップ(e)、
を含み、
前記第1のセットにおいて前記クラッタを推定するステップ(f)は、前記第2のセットにそれぞれ関連付けられる複数のクラッタ寄与度を推定するステップ(f)を含み、前記第1のセットにおける前記クラッタが前記複数のクラッタ寄与度の関数である、
第2から第4態様のいずれか記載の方法。
【0183】
(第6態様)
前記第1の空間領域における前記クラッタは、前記第1の空間領域における前記複数のクラッタ寄与度の線形結合によって推定される、第5態様に記載の方法。
【0184】
(第7態様)
前記第1のセット及び/又は前記第2のセットを選択するステップ(d,d’)の前に、
前記ビームフォーミングされたデータを取得するために前記媒体の超音波信号データを処理するステップ(c)、
を更に含む、第2から第6態様のいずれかに記載の方法。
【0185】
(第8態様)
超音波信号データを処理する前記ステップ(c)又はビームフォーミングされたデータを選択する前記ステップ(d)の前に、
超音波(We)の放出シーケンス(ES)を前記媒体(11)に送信するステップ(a)と、
前記媒体から超音波(Wr)の応答シーケンス(RS)を受信するステップ(b)であって、前記超音波信号データが超音波(Wr)の前記応答シーケンス(RS)に基づく、ステップと、
を更に含む、第2から第7態様のいずれかに記載の方法。
【0186】
(第9態様)
前記第1及び/又は第2のセットが更に決定され及び/又は前記クラッタ(f)は、
前記ビームフォーミングされたデータが基づく媒体のデータを取得するために使用されるトランスデューサデバイスの幾何学的形状、
トランスデューサデバイスの単一のトランスデューサ素子の配置及び/又はサイズ、
トランスデューサデバイスの放出及び/又は受信開口、
放出持続時間、
前記ビームフォーミングされたデータが基づく放出パルスの波長及び/又はタイプ、
放出された波面の幾何学的形状、及び
前記媒体の音響モデルの所定の速度、
のうちの少なくとも1つの関数として更に推定される、
第1から第8態様のいずれかに記載の方法。
【0187】
(第10態様)
ビームフォーミングされたデータの各セットは、少なくとも1つのピクセル又はボクセルと関連付けられ、及び/又は、
前記ビームフォーミングされたデータが同相及び直交位相IQデータ及び/又は無線周波数RFデータである、第1から第9態様のいずれかに記載の方法。
【0188】
(第11態様)
前記第1及び/又は第2のセット及び/又は前記第1及び/又は第2の空間領域が予め決定される、第1から第10態様のいずれかに記載の方法。
【0189】
(第12態様)
前記方法は、前記媒体の複数の第1の空間領域に関して並列及び/又は直列に実行される、第1から第11態様のいずれかに記載の方法。
【0190】
(第13態様)
前記方法は、複数回の反復で前記第1の空間領域に関して実行され、各反復において、修正されたビームフォーミングされたデータが、前記推定されたクラッタを補償することによって取得され、第1の反復で取得された前記修正されたビームフォーミングされたデータが後続の第2の反復で使用される、第1から第12態様のいずれかに記載の方法。
【0191】
(第14態様)
第1から第13態様のいずれかに記載の推定されたクラッタに基づいて人工知能AIベースモデルを訓練する方法。
【0192】
(第15態様)
媒体のビームフォーミングされたデータを処理するための方法であって、クラッタ量を推定し及び/又は推定されたクラッタを補償するために第14態様に記載のAIベースモデルを使用するステップを含む、方法。
【0193】
(第16態様)
データ処理システムによって実行されるときに前記データ処理システムに第1から第15態様のいずれかにに記載の方法を実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム。
【0194】
(第17態様)
媒体のビームフォーミングされたデータを処理するためのシステムであって、
前記ビームフォーミングされたデータは、第1の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第1のセットと、第2の空間領域と関連付けられるビームフォーミングされたデータの第2のセットとを含み、
前記システムは、
前記第1のセットにおいて前記第2の空間領域によって引き起こされるクラッタを推定する(f)、ように構成される処理ユニットを備える、
システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6