(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】光学機械的変形による時計学オシレータの振動数設定
(51)【国際特許分類】
G04D 7/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G04D7/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199243
(22)【出願日】2022-12-14
【審査請求日】2022-12-14
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・パラット
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドロス・ムスケフタラス
(72)【発明者】
【氏名】アフマド・オデー
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-26607(JP,A)
【文献】特表2013-542402(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0034057(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 7/00 - 7/12
G04B 17/00 - 18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(D)を中心として振動し、弾性リターン手段により静止位置に戻されるように配置構成された、
少なくとも1つの慣性マス(1)を有する機械式時計学オシレータ(100)のレートを微調整するための方法であって、第1のステップ(801)で、前記オシレータ(100)は、レーザー発射の影響下で不可逆的に局所的に拡大するのに適する材料であるアクチュエータ(35)を有する少なくとも1つの慣性マス(1)を装備し、前記アクチュエータ(35)は、前記アクチュエータ(35)に含まれるライティング・ゾーン(39;391;392)が適切なレーザー発射を受けるときに、慣性ブロック(3)に対して、直接にまたは少なくとも1つの移動量増幅装置(36)により、前記回転軸(D)を基準とした径方向の線形移動量を与えるように配置構成され、第2のステップ(802)で、前記オシレータ(100)の初期レートの第1の概略的な設定が第1のレート範囲内で実施され、前記レートが測定され、第3のステップ(803)で、前記オシレータ(100)を所定の秒レート範囲にするために前記オシレータ(100)に与えられるべきレート偏差の方向および値が計算され、前記オシレータ(100)に含まれる各前記慣性ブロック(3)に与えられるべき移動量の方向および値が計算され、第4のステップ(804)で、少なくとも1つの前記ライティング・ゾーン(39;391;392)は、前記回転軸(D)を基準として前記アクチュエータ(35)を径方向に変形させるために、前記材料の局所的な分子の拡散による少なくとも1つの拡大ライン(390)を作り出すために、フェムト秒レーザー発射を受け、第5のステップ(805)で、前記オシレータ(100)の前記レートが測定され、必要である場合、前記オシレータ(100)の前記レートが前記秒レート範囲に入るまで前記第3のステップ(803)および前記第4のステップ(804)が繰り返される、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記アクチュエータ(35)を各々が有する少なくとも2つの前記慣性マス(1)を備える前記オシレータ(100)に適用される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第4のステップ(804)中、横断移動装置(710)を備えるかまたは径方向に移動するテーブル上に設置されたフェムト秒レーザー源(700)が使用され、それにより、前記回転軸(D)を基準とした多様なビームの多様な一連の発射を並列させて、互いに近傍にある一連の前記拡大ライン(390)を作り出す、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第4のステップ(804)中、フェムト秒レーザー源(700)が、前記慣性マス(1)の回転の各々の方向でレーザー発射を実施するのに使用される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第4のステップ(804)中、制御手段(790)が、検出レーザー(750)および収集手段(760)または光電検出器の組み合わせによって提供される材料の有無に関する情報に従って、
フェムト秒レーザー源(700)の前記
フェムト秒レーザー発射を制御するのに使用される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のステップ(801)中、径方向の線形方向(L)に沿う、第1のアーム(33)上にある第1のライティング・ゾーン(391)、および前記第1のアーム(33)に平行であり共通のセグメント(334)のところで前記第1のアーム(33)に接合される第2のアーム(34)上にある第2のライティング・ゾーン(392)を有する、前記アクチュエータ(35)が選択され、したがって、前記アクチュエータ(35)は、一方側にある、前記慣性マス(1)上に設置された支持体(2)に固定されるかまたは前記慣性マス(1)に直接に固定される固定ゾーン(30)と、他方側にある、前記移動量増幅装置(36)との連結のための出口ポイントまたは連結ネック部分(32)との間で、「S形」に設置され、前記アクチュエータ(35)は前記線形方向(L)に沿う両方向で機能するように配置構成され、それにより、前記第4のステップ(804)中、前記レートの利得設定のための、前記第1のアーム(33)上の前記第1のライティング・ゾーン(391)内でのフェムト秒レーザー発射ライティングが行われるか、または、前記レートの損失設定のための、前記第2のアーム(34)上の前記第2のライティング・ゾーン(392)内でのフェムト秒レーザー発射ライティングが行われる、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のステップ(801)中、前記慣性ブロック(3)に対して増幅した移動量を与えるために前記アクチュエータ(35)の出口移動量を増幅するように配置構成された前記移動量増幅装置(36)との連結ための出口ポイントまたは連結ネック部分(32)を備える前記アクチュエータ(35)が選択される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記移動量増幅装置(36)は平行四辺形タイプであり、径方向の線形方向(L)に沿う線形ガイドを形成する、可撓性ネック部分(31)の間に配置構成された接続棒(310)を備える接続棒システムを有する、ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のステップ(801)中、前記慣性マス(1)上に設置された支持体(2)に堅固に接続された固定ゾーン(30)を有する前記アクチュエータ(35)が選択され、前記支持体(2)は、前記アクチュエータ(35)、ならびに、互いに直列に設置される前記移動量増幅装置(36)および前記慣性ブロック(3)と共に、可撓性のマイクロ機構を形成する単一部片の組立体を形成する、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のステップ(801)中、前記慣性マス(1)上に設置された支持体(2)に固定されるかまたは前記支持体(2)に堅固に接続された固定ゾーン(30)を有する前記アクチュエータ(35)が選択され、前記アクチュエータ(35)および/または前記支持体(2)はガラスで作られる、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のステップ(801)中、前記回転軸(D)を基準として径方向反対側にある少なくとも一対の等しい前記慣性ブロック(3)を有するテンプ輪の形態である前記慣性マス(1)が選択される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のステップ(801)中、前記オシレータ(100)は腕時計(1000)の腕時計ヘッド(500)に組み込まれ、前記腕時計ヘッド(500)は少なくとも1つの透過性透明要素(600)を有し、前記透過性透明要素(600)は前記腕時計(1000)の外部および内部を分離し、前記腕時計の前記オシレータ(100)の少なくとも前記慣性マス(1)に対しての少なくとも1つのレーザーの光学的アクセスを可能にする、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のステップ(801)中、前記オシレータ(100)は、前記慣性マス(1)に支承するように配置構成された停止手段または秒停止手段を装備し、前記第4のステップ(804)が前記慣性マス(1)のロック位置で実施される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第4のステップ(804)中、前記フェムト秒レーザー発射は前記慣性マス(1)の振動中に実施され、角度位置および前記発射が同期される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第4のステップ(804)中、前記発射はフェムト秒レーザーを用いて実施される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第4のステップ(804)中、前記発射がフェムト秒レーザーを用いて実施され、前記レーザーは、900nmから1100nmの間の波長であり、200fsから350fsの間のパルス時間であり、概して200nJから300nJの間のパルス・エネルギーであり、700kHzから900kHzの間の繰り返し振動数である、ことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
回転軸(D)を中心として振動し、弾性リターン手段により静止位置に戻されるように配置構成された少なくとも1つの慣性マス(1)を有する機械式時計学オシレータ(100)であって、少なくとも1つの前記慣性マス(1)は、レーザー発射の作用下で不可逆的に局所的に拡大するのに適する材料のアクチュエータ(35)を有し、前記アクチュエータ(35)は、前記アクチュエータ(35)に含まれるライティング・ゾーン(39;391;392)が適切なレーザー発射を受けるときに、慣性ブロック(3)に対して、直接にまたは少なくとも1つの移動量増幅装置(36)により、前記回転軸(D)を基準とした径方向の線形移動量を与えるように配置構成される、ことを特徴とする、機械式時計学オシレータ(100)であって、
前記アクチュエータ(35)は、径方向の線形方向(L)に沿う、第1のアーム(33)上にある第1のライティング・ゾーン(391)、および前記第1のアーム(33)に平行であり共通のセグメント(334)のところで前記第1のアーム(33)に接合される第2のアーム(34)上にある第2のライティング・ゾーン(392)を有し、したがって、前記アクチュエータ(35)は、一方側にある、前記慣性マス(1)上に設置された支持体(2)に固定されるかまたは前記慣性マス(1)に直接に固定される固定ゾーン(30)と、他方側にある、前記移動量増幅装置(36)との連結のための出口ポイントまたは連結ネック部分(32)との間で、「S形」に設置され、前記アクチュエータ(35)は前記線形方向(L)に沿う両方向で機能するように配置構成され、それにより、前記機械式時計学オシレータ(100)のレートの利得設定のための、前記第1のアーム(33)上の前記第1のライティング・ゾーン(391)内にフェムト秒レーザー発射が適用されるか、または、前記レートの損失設定のための、前記第2のアーム(34)上の前記第2のライティング・ゾーン(392)内に前記フェムト秒レーザー発射が適用される、ことを特徴とする、
機械式
時計学オシレータ(100)。
【請求項18】
回転軸(D)を中心として振動し、弾性リターン手段により静止位置に戻されるように配置構成された少なくとも1つの慣性マス(1)を有する機械式時計学オシレータ(100)であって、少なくとも1つの前記慣性マス(1)は、レーザー発射の作用下で不可逆的に局所的に拡大するのに適する材料のアクチュエータ(35)を有し、前記アクチュエータ(35)は、前記アクチュエータ(35)に含まれるライティング・ゾーン(39;391;392)が適切なレーザー発射を受けるときに、慣性ブロック(3)に対して、直接にまたは少なくとも1つの移動量増幅装置(36)により、前記回転軸(D)を基準とした径方向の線形移動量を与えるように配置構成される、ことを特徴とする、機械式時計学オシレータ(100)であって、
前記アクチュエータ(35)は、前記慣性ブロック(3)に対して増幅した移動量を与えるために前記アクチュエータ(35)の移動量を増幅するように配置構成された前記移動量増幅装置(36)との連結のための出口ポイントまたは連結ネック部分(32)を有し、前記移動量増幅装置(36)は平行四辺形タイプであり、径方向の線形方向(L)に沿う線形ガイドを形成する、可撓性ネック部分(31)の間に配置構成された接続棒(310)を備える接続棒システムを有する、ことを特徴とする、
機械式
時計学オシレータ(100)。
【請求項19】
回転軸(D)を中心として振動し、弾性リターン手段により静止位置に戻されるように配置構成された少なくとも1つの慣性マス(1)を有する機械式時計学オシレータ(100)であって、少なくとも1つの前記慣性マス(1)は、レーザー発射の作用下で不可逆的に局所的に拡大するのに適する材料のアクチュエータ(35)を有し、前記アクチュエータ(35)は、前記アクチュエータ(35)に含まれるライティング・ゾーン(39;391;392)が適切なレーザー発射を受けるときに、慣性ブロック(3)に対して、直接にまたは少なくとも1つの移動量増幅装置(36)により、前記回転軸(D)を基準とした径方向の線形移動量を与えるように配置構成される、ことを特徴とする、機械式時計学オシレータ(100)であって、
前記アクチュエータ(35)は、前記慣性マス(1)上に設置された支持体(2)に堅固に接続された固定ゾーン(30)を有し、前記支持体(2)は、前記アクチュエータ(35)、ならびに、互いに直列に設置される前記移動量増幅装置(36)および前記慣性ブロック(3)と共に、可撓性のマイクロ機構を形成する単一部片の組立体を形成する、ことを特徴とする、
機械式
時計学オシレータ(100)。
【請求項20】
回転軸(D)を中心として振動し、弾性リターン手段により静止位置に戻されるように配置構成された少なくとも1つの慣性マス(1)を有する機械式時計学オシレータ(100)であって、少なくとも1つの前記慣性マス(1)は、レーザー発射の作用下で不可逆的に局所的に拡大するのに適する材料のアクチュエータ(35)を有し、前記アクチュエータ(35)は、前記アクチュエータ(35)に含まれるライティング・ゾーン(39;391;392)が適切なレーザー発射を受けるときに、慣性ブロック(3)に対して、直接にまたは少なくとも1つの移動量増幅装置(36)により、前記回転軸(D)を基準とした径方向の線形移動量を与えるように配置構成される、ことを特徴とする、機械式時計学オシレータ(100)であって、
前記アクチュエータ(35)は、前記慣性マス(1)上に設置された支持体(2)に固定されるかまたは前記支持体(2)に堅固に接続された固定ゾーン(30)を有し、前記アクチェエータ(35)および/または前記支持体(2)はガラスで作られる、ことを特徴とする、
機械式
時計学オシレータ(100)。
【請求項21】
前記慣性マス(1)は、前記回転軸(D)を基準として径方向反対側にある少なくとも一対の等しい前記慣性ブロック(3)を有するテンプ輪である、ことを特徴とする、請求項17
-20のいずれか一項に記載の機械式
時計学オシレータ(100)。
【請求項22】
腕時計(1000)は、前記腕時計(1000)の外部および内部を分離し、前記腕時計のオシレータ(100)の少なくとも前記慣性マス(1)に対しての少なくとも1つのレーザーの光学的アクセスを可能にする、少なくとも1つの透過性透明要素(600)を有する腕時計ヘッド(500)を有する、ことを特徴とする、請求項17
-20のいずれか一項に記載の少なくとも1つの機械式
時計学オシレータ(100)を有する腕時計(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸を中心として振動し、弾性リターン手段により静止位置に戻されるように配置構成された少なくとも1つの慣性マスを有する機械式時計学オシレータのレート(rate)の微調整のための方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、この方法を実施するのに適する機械式時計学オシレータに関する。
【0003】
本発明は、さらに、このような機械式時計学オシレータを有する、時計、特には腕時計、に関する。
【0004】
本発明は、機械式時計学オシレータの、特には腕時計ヘッドの中に既に嵌め込まれたオシレータの、レート設定の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
機械式オシレータの振動数を修正することには、ほぼ常に、特にはばねである、弾性部品の剛性の変化、または、その慣性/質量の変化が伴われる。例えば、機械式腕時計のばね式テンプ輪(sprung balance)では、可動ピンによるその有効長の変化などとしての、ひげぜんまいのスティフネスを調整するためのデバイスが頻繁に見られる。頻繁に使用される別の方法は、テンプ輪の外側または内側に向かってねじなどの小さいマスを移動させることによる、または慣性ブロックをオフセット回転させることよる、テンプ輪の慣性修正である。
【0006】
しかし、これらのオペレーションは、1日当たり0秒から+2秒で設定されるのを必要とするムーブメントにとって問題であるような1日当たり最大10秒のドリフトで、ケースを再び閉じるときの結果を歪める傾向のある腕時計の開封およびムーブメントの取り外しを必要とする。さらに、これらの精巧な機構は、一般に、設定ツール(設定のために使用される力)を取り外した後での、ドリフトの原因となる機械的遊びの一因となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Y.Bellouardによる、「Non-contact sub-nanometer optical repositioning using femtosecond lasers」、Optics Express、2015年11月2日、volume23、No.22
【文献】Y.Bellouardらによる、「Fabrication of high-aspect ratio, micro-fluidic channels and tunnels using femtosecond laser pulses and chemical etching」、Optics Express、2004年、12、2120~2129頁
【文献】https://www.femtoprint.ch/devices-photosのページ上の、ウェブサイト、FEMTOprint SA、6933、Muzzano(CH)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、例えば腕時計のばね式テンプ輪などの、腕時計を、またはより一般的にはこのオシレータを担持する時計を、分解するのを必要とすることなく、機械式時計学オシレータの振動数を正確に調整することを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明は、請求項1による、機械式時計学オシレータのレートの微調整のための方法に関する。
【0010】
本発明は、さらに、この方法を実施するのに適する機械式時計学オシレータに関する。
【0011】
本発明は、さらに、このような機械式時計学オシレータを有する、時計、特には腕時計、に関する。
【0012】
添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより、本発明の狙い、利点、および特徴がより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】腕時計の外部および腕時計の内部を分離する透過性透明要素を有する腕時計ヘッドを備える腕時計を示す概略平面図である。ここではバックの形態で示されるこの透過性透明要素が、そのテンプ輪のみが示されているここではばね式テンプ輪である腕時計オシレータの全体または一部分に対しての使用者および光源の光学的アクセスを可能にする。図の過度な記載を行わないようにひげぜんまいは示されない。
図1は、このテンプ輪に当たる入射レーザー・ビームを点線で示す。
【
図2】本発明によるテンプ輪を
図1と同様に概略平面図で示す詳細図である。このテンプ輪が、そのフェローから透過性透明要素まで、テンプ輪の回転軸を基準とした対称の対で配設された複数の支持体を有する。これらの支持体の各々が、透過性透明要素側で、テンプ輪の回転軸に対して径方向に可動である少なくとも1つの慣性ブロックを支持する。この図は、各々の支持体において、このような慣性ブロックの3つの異なる位置を示しており、点線を付された2つの端部位置の間に、斜線を付された中間のミドル位置が存在する。
【
図3】図の頂部の一方側で、少なくとも1つのレーザー源が位置決めされているところである外部環境と、図の底部の他方側で、テンプ輪を収容する腕時計ケースの内部と、を分離する透過性透明要素に対して垂直に、
図2のテンプ輪を示す断面図である。この図は、透過性透明要素側で、レーザー源によって放射されるビームの影響下で、テンプ輪の回転軸に対して径方向に可動であるこのような慣性ブロックを支持する支持体を支承するフェローを示す。この図は斜線で示される慣性ブロックを中心とし、点線で示されるこの慣性ブロックの別の径方向位置も示している
【
図4】y軸において1日当たりのレート偏差を秒で示し、x軸において2つの慣性ブロックの対称の径方向のムーブメントの値をマイクロメートルで示し、1.20mgから2.40mgである4つの慣性ブロックの質量値において得られた結果を重ね合わせている、グラフである。
【
図5】慣性ブロックを移動させるための光学機械アクチュエータの実装形態の原理を示す概略平面図である。支持体が固定具を支承し、固定具のうちの1つの固定具が光学機械アクチュエータ自体を支承し、光学機械アクチュエータが、共通のセグメントにより端部のところで接続されていることによりU形を形成する2つの平行なアームを有し、第1のアームが、支持体に対しての固定具と共通のセグメントとの間を延在し、第2のアームが共通のセグメントと出口ポイントとの間を延在し、出口ポイントがここでは、慣性ブロックの十分な移動量を実現するために光学機械アクチュエータの出口移動量を増幅することを意図される増幅機構のネック部分によって形成される。
【
図6】
図5の光学機械アクチュエータの別の代替的実施形態を示す概略平面図である。光学機械アクチュエータの線形方向の出口移動量が、ここでは4つのネック部分を備える平行四辺形タイプの機構である機械式増幅装置によって増幅され、それにより、第2のアームの出口ポイントのところで測定可能である全体の伸長または全体の後退を、オシレータのレートに著しく影響を与えるのに十分である慣性ブロックの移動量へと変換するのを可能にする。
【
図7】事例を示す概略図である。ここでは、図の頂部でパルスが第2のアームのライティング(writing)・ゾーンをエッチングしており、慣性ブロックの推進ムーブメント中の、出口ポイントの全体のムーブメントが図の左側に向かっている。
【
図8】
図7の事例の反対側の事例を示す概略図である。ここでは、図の底部でパルスが第1のアームのライティング・ゾーンをエッチングしており、慣性ブロックの後退ムーブメント中の、出口ポイントの全体のムーブメントが図の右側に向かっている。
【
図9】代替的実施形態を示す、
図5から8と同様の図である。ここでは、慣性ブロックおよび対応する支持体が、単一のレベルにおいてチップによって形成された単一部片の組立体を形成し、支持体が、テンプ輪上の固定具のための固定ゾーンのみに限定される。したがって、この代替的実施形態は、支持体および慣性ブロックを組み込む2×2mmのチップを支承する10.6mmの直径のテンプ輪の具体的な事例に対して本発明を適用するのに特に適する。
【
図10】
図9による2つのチップを装備するテンプ輪を示す、
図3と同様の、平面図である。
【
図11】支持体を支承している、このテンプ輪のフェローと、ライティング・ゾーンに対してライティングを行うための放射ライティング・レーザー源(emitting writing laser source)と、さらには、図の左側部分に斜めに設置された検出レーザーと、を示しており、慣性ブロックを示していない、テンプ輪の回転軸を通る概略断面図である。テンプ輪によって反射されたビームおよびそこに含まれる成分が、光電検出器などの収集手段によって図の右側部分で収集される。
【
図12】テンプ輪が振動する事例の、および、レーザー発射がテンプ輪の角度位置に同期された事例の、レーザー・ライティング源(laser writing source)およびレーザー検出源(laser detection source)を備える
図11による配置構成を概略的に示す平面詳細図である。この図は、
図9によるチップを支承するテンプ輪のフェローの一部分を示しており、円弧がレーザー・ライティング源の瞬間的な位置に一致する点線を用いて示され、レーザー・ライティング源が図の平面に対して垂直な方向に発射を行い、したがって、この例では、このライティング・ゾーン内で小さい矢印によって記号化される分子レベルの拡大を作り出すために、第1の下側アームのライティング・ゾーン内でライティングを行うことができ、隣り合う小さい矢印が、テンプ輪の回転軸を基準として多様なビームに対応するライティング源のxに沿う多様な位置決めを用いて同じゾーンでやはり実行されるライティングに一致する。図の底部では、左側から右側まで、レーザー検出源、集光レンズ、テンプ輪に対しての入射ビーム、テンプ輪上のまたはそれにより支承されるオルガン(organ)上の反射ポイント、反射ビーム、集光レンズ、および光電検出器が見られ得る。
【
図13】x軸において異なる時間スケールでプロットされているが、特定の時間および起きている事象を示すために互いに関連付けられて構成されている、3つの時間グラフを並置する図である。上のグラフが、テンプ輪の角速度オメガOMEをy軸に示し、真ん中のグラフが光電検出器の信号VPDの値をy軸に示し、下のグラフがレーザー・ライティング源によって放射される光強度IIEをy軸に示す。
【
図14】制御手段と、ライティング・レーザーを取り扱うための横断移動装置を備えるテーブルと、ライティング・レーザーと、検出レーザーと、反射ビームを収集するための手段と、オシレータを始動させるためのおよび止めるための手段と、の間の連結を示すブロック図である。
【
図15】本発明によるレート調整方法の5つの主要なステップを含むブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ガラス(溶融シリカ)または同様の支持体内で機械加工された可撓性のマイクロ機構内での、特にはフェムト秒レーザー励起により、永久的な機械的張力およびひいては体積拡大を誘発することを提案する。
【0015】
支持体が、機械式腕時計の特にはテンプ輪であるオシレータの慣性マス上に埋設される。この機構の一部分のムーブメントによりこの慣性マスの慣性を修正することになり、それにより、特にはばね式テンプ輪であるオシレータの振動数を修正することになる。特には、文献、Y.Bellouardによる、「Non-contact sub-nanometre optical repositioning using femtosecond lasers」、Optics Express、2015年11月2日、volume23、No.22で見られるように、平行な内部張力・拡大ライン(internal tension expansion line)をライティングすることによりこのようなガラスのマイクロ構造内で数マイクロメートルのオーダーのムーブメントが達成され得る。
【0016】
上に記載される文献で見られるように、または、文献、Y.Bellouardらによる、「Fabrication of high-aspect ratio, micro-fluidic channels and tunnels using femtosecond laser pulses and chemical etching」、Optics Express、2004年、12、2120~2129頁に見られるように、あるいは、https://www.femtoprint.ch/devices-photosのページ上の、ウェブサイト、FEMTOprint SA、6933、Muzzano(CH)で見られるように、化学エッチング後に、+/-1マイクロメートルの精度のブランキング方法により、同じ種類のレーザーを使用して、マイクロ構造自体が具現化される。
【0017】
枢動軸または任意の他の摩擦発生箇所(frictional guidance)が存在しないことにより、高い位置決め精度およびゼロヒステリシスが保証される。光励起が、ガラス蓋、または、レーザー波長のための任意の非吸収性のケーシング分離箇所を直接に通るか、あるいは、通過ポイントにおいて焦点をずらされる。
【0018】
本発明は、限定しないが、オシレータが腕時計オシレータであり、ばね式テンプ輪である、事例において、より具体的に示される。
【0019】
本発明は、回転軸Dを中心として振動するように配置構成されたおよび弾性リターン手段により静止位置に戻された少なくとも1つの慣性マス1を有する機械式時計学オシレータ100のレートを微調整するための方法に関する。
【0020】
本発明によると、
図15に見られるように、第1のステップ801で、オシレータ100が、レーザー発射の影響下で不可逆的に局所的に微小に拡大するのに適する材料であるアクチュエータ35を有する少なくとも1つの慣性マス1を装備する。このアクチュエータ35が、アクチュエータ35に含まれるライティング・ゾーン39あるいはより具体的には第1のアーム33上の第1のライティング・ゾーン391または第2のアーム34上の第2のライティング・ゾーン392が適切なレーザー発射を受けるときに、慣性ブロック3に対して、直接にまたは少なくとも1つの移動量増幅装置36により、回転軸Dを基準とした径方向の線形移動量を与えるように配置構成される。本明細書において以下では、各ライティング・ゾーン39、391、392が、レーザー・ライティングにより拡大ライン390を受け取ることができることが分かるであろう。
【0021】
「ライティング・ゾーン39」という表記は一般的な事例に関連し、「第1のライティング・ゾーン391」および「第2のライティング・ゾーン392」という用語は、限定しないが、慣性ブロック3のそれぞれ第1のアーム33および第2のアーム34での好適な適用に関する。
【0022】
より具体的には、慣性マス1が回転ムーブメントを受けて回転軸Dのいずれかの側に延伸する場合、この慣性マス1が、レーザー発射の作用下で不可逆的に局所的に微小に拡大するのに適する材料である少なくとも一対の径方向反対側のアクチュエータ35を装備する。これは特には、慣性マス1がばね式テンプ輪タイプのオシレータのテンプ輪である場合の事例である。
【0023】
より具体的には、慣性マス1が回転軸Dを基準として張り出している場合、回転軸Dを通過する平面を基準として対称である可撓性ストリップによって垂設される慣性マスと同様に、この慣性マス1が、この対称面を基準として対称である少なくとも一対のアクチュエータ35を装備する。
【0024】
より具体的には、この方法が、このようなアクチュエータ35を各々が有する少なくとも2つの慣性マス1を備えるオシレータ100に適用される。
【0025】
第2のステップ802で、オシレータ100の初期レートの特には概略的である第1の設定が第1のレート範囲内で実施され、レートが測定される。
【0026】
第3のステップ803で、オシレータ100を所定の秒レート範囲にするためにオシレータ100に与えられるべきレート偏差の方向および値が計算され、オシレータ100に含まれる各慣性ブロック3に適用されるべき移動量の方向および値が計算される。
【0027】
第4のステップ804で、少なくとも1つのライティング・ゾーン39、391、392が、回転軸Dを基準としてアクチュエータ35を径方向に変形させるために、材料の局所的な分子レベルの拡大(molecular expansion)による少なくとも1つの拡大ライン390を作り出すために、フェムト秒レーザー発射を受ける。
【0028】
第5のステップ805で、オシレータ100のレートが測定され、必要である場合、オシレータ100のレートが所定の秒レート範囲に入るまで第3のステップ803および第4のステップ804が繰り返される。
【0029】
より具体的には、第4のステップ804中、横断移動装置710を備えるかまたは径方向に移動するテーブル上に設置されたフェムト秒レーザー源700が使用され、それにより、回転軸Dを基準とした多様なビームの多様な一連の発射を増強し、互いに近傍にある一連の拡大ライン390を作り出す。
【0030】
より具体的には、第4のステップ804中、フェムト秒レーザー源700が、慣性マス1の回転の各々の方向で発射を実施するのに使用される。
【0031】
より具体的には、第4のステップ804中、制御手段790が、検出レーザー750および収集手段760または光電検出器の組み合わせによって提供される材料の有無に関する情報に従って、フェムト秒レーザー源700の発射を制御するのに使用される。
【0032】
より具体的には、第2のステップ801中、径方向の線形方向Lに沿う、第1のアーム33上にある第1のライティング・ゾーン391、および第1のアーム33に平行であり共通のセグメント334のところで第1のアーム33に接合される第2のアーム34上にある第2のライティング・ゾーン392を有する、アクチュエータ35が選択される。したがって、アクチュエータ35が、一方側にある、慣性マス1上に設置された支持体2に固定されるかまたは慣性マス1に直接に固定される固定ゾーン30と、他方側にある、増幅機構36との連結のための出口ポイントまたは連結ネック部分32との間で、「S形」に設置される。アクチュエータ35が線形方向Lに沿う両方向で機能するように配置構成され、それにより、第4のステップ804中、利得設定のための、第1のアーム33上の第1のライティング・ゾーン391内でのレーザー発射ライティングが行われるか、または、損失設定のための、第2のアーム34上の第2のライティング・ゾーン392内でのレーザー発射ライティングが行われる。
【0033】
より具体的には、第1のステップ801中、慣性ブロック3に対して増幅した移動量を与えるためにアクチュエータ35の出口移動量を増幅するように配置構成された増幅機構36との連結ための出口ポイントまたは連結ネック部分32を備えるアクチュエータ35が選択される。
【0034】
より具体的には、この増幅装置36が平行四辺形タイプであり、径方向の線形方向Lに沿う線形ガイドを形成する、可撓性ネック部分31の間に配置構成された接続棒310を備える接続棒システムを有する。
【0035】
より具体的には、第1のステップ801中、慣性マス1上に設置された支持体2に堅固に接続された固定ゾーン30を有するアクチュエータ35が選択される。さらに、支持体2が、アクチュエータ35、ならびに、互いに直列に設置される増幅装置36および慣性ブロック3と共に、可撓性のマイクロ機構を形成する単一部片の組立体を形成する。
【0036】
より具体的には、第1のステップ801中、慣性マス1上に設置された支持体2に固定され、または支持体2に堅固に接続された固定ゾーン30を有するアクチュエータ35が選択され、アクチュエータ35および/または支持体2がガラスで作られる。
【0037】
より具体的には、第1のステップ801中、回転軸Dを基準として径方向反対側にある少なくとも一対の等しい慣性ブロック3を有するテンプ輪の形態である慣性マス1が選択される。
【0038】
より具体的には、第1のステップ801中、オシレータ100が腕時計1000の腕時計ヘッド500に組み込まれ、上記腕時計ヘッド500が少なくとも1つの透過性透明要素600を有し、透過性透明要素600が腕時計1000の外部および内部を分離し、腕時計のオシレータ100の少なくとも慣性マス1に対しての少なくとも1つのレーザーの光学的アクセスを可能にする。
【0039】
静的な代替的実施形態では、第1のステップ801中、オシレータ100が、慣性マス1支承するように配置構成された停止手段または秒停止手段(stop-second means)を装備し、第4のステップ804が慣性マス1のロック位置で実施される。
【0040】
動的な代替的実施形態では、第4のステップ804中、フェムト秒レーザー・ライティング発射が慣性マス1の振動中に実施され、角度位置および発射が同期される。
【0041】
より具体的には、第4のステップ804中、発射がフェムト秒レーザーを用いて実施され、これが、限定しないが例えば、900nmから1100nmの間の波長であり、200fsから350fsの間のパルス時間であり、概して200nJから300nJの間のパルス・エネルギーであり、700kHzから900kHzの間の繰り返し率である。本明細書において上で説明した材料を修正することが可能である場合、異なるフェムト秒レーザー(波長、パルス時間、およびエネルギー)が使用されてもよいことは明白である。
【0042】
本発明はさらに、回転軸Dを中心として振動し、弾性リターン手段により静止位置に戻されるように配置構成された少なくとも1つの慣性マス1を有する、本方法を実施するのに適する、機械式時計学オシレータ100に関する。本発明によると、少なくとも1つの慣性マス1が、レーザー発射の作用下で不可逆的に局所的に微小に拡大するのに適する材料で作られたアクチュエータ35を有する。アクチュエータ35が、アクチュエータ35に含まれるライティング・ゾーン39、391、392が適切なレーザー発射を受けるときに、慣性ブロック3に対して、直接にまたは少なくとも1つの移動量増幅装置36により、回転軸Dを基準とした径方向の線形移動量を与えるように配置構成される。
【0043】
より具体的には、アクチュエータ35が、径方向の線形方向Lに沿う、第1のアーム33上にある第1のライティング・ゾーン391、および第1のアーム33に平行であり共通のセグメント334のところで第1のアーム33に接合される第2のアーム34上にある第2のライティング・ゾーン392を有し、したがって、アクチュエータ35が、一方側にある、慣性マス1上に設置された支持体2に固定されるかまたは慣性マス1に直接に固定される固定具30と、他方側にある、増幅機構36との連結のための出口ポイントまたは連結ネック部分32との間で、「S形」に設置され、アクチュエータ35が線形方向Lに沿う両方向で機能するように配置構成され、それにより、利得設定のための、第1のアーム33上の第1のライティング・ゾーン391内にフェムト秒レーザー発射が適用されるか、または、損失設定のための、第2のアーム34上の第2のライティング・ゾーン392内にフェムト秒レーザー発射が適用される。
【0044】
より具体的には、アクチュエータ35が、慣性ブロック3に対して増幅した移動量を与えるために、アクチュエータ35の出口移動量を増幅するように配置構成された増幅機構36との連結のための出口ポイントまたは連結ネック部分32を有する。増幅装置36が平行四辺形タイプであり、径方向の線形方向Lに沿う線形ガイドを形成する、可撓性ネック部分31の間に配置構成された接続棒310を備える接続棒システムを有する。
【0045】
より具体的には、アクチュエータ35が、慣性マス1上に設置された支持体2に堅固に接続された固定ゾーン30を有し、支持体2が、アクチュエータ35、ならびに、互いに直列に設置される増幅装置36および慣性ブロック3と共に、可撓性のマイクロ機構を形成する単一部片の組立体を形成する。
【0046】
より具体的には、アクチュエータ35が、慣性マス1上に設置された支持体2に固定されるかまたは支持体2に堅固に接続された固定ゾーン30を有し、アクチェエータ35および/または支持体2がガラスで作られる。
【0047】
より具体的には、慣性マス1が、回転軸Dを基準として径方向反対側にある少なくとも一対の等しい慣性ブロック3を有するテンプ輪である。
【0048】
本発明はさらに、少なくとも1つのこのような機械式時計学オシレータ100を有する、特には腕時計1000である、時計に関する。本発明によると、腕時計1000が、腕時計1000の外部および内部を分離し、腕時計のオシレータ100の少なくとも慣性マス1に対しての少なくとも1つのレーザーの光学的アクセスを可能にする、少なくとも1つの透過性透明要素600を有する腕時計ヘッド500を有する。
【0049】
これらの図は、慣性マス1がテンプ輪である具体的な事例で、本発明の非限定の実施形態を示す。
【0050】
図1が、腕時計の外部および腕時計の内部を分離する、バックまたはガラス蓋などの透過性透明要素600を有する腕時計ヘッド500を備える、特には腕時計である、時計1000を示す。この透過性透明要素600が、この例では少なくともテンプ輪1である腕時計オシレータ100の全体または一部分に対しての使用者および光源の光学的アクセスを可能にする。図の過度な記載を行わないようにひげぜんまいは示されない。この
図1は、テンプ輪1に当たる入射レーザー・ビームRLを点線で示す。
【0051】
本発明は、この透過性透明要素600などの、少なくとも局所的に透明であるかまたは低光吸収性であるケーシングを通して、集束レーザー・ビームによりばね式テンプ輪の振動数を正確に調整することを提案する。オシレータ100が、例えば図示されないねじを使用することにより、または、具体的にはこの範囲内の適切なひげぜんまいと対にされることにより、1日当たり+/-15秒まで既に概略的に設定されている。レーザーのこの作用は、小さい慣性ブロックをテンプ輪1の外部または内部に向かって移動させてそれによりその慣性を修正してそれによりオシレータの振動数を修正してそれにより腕時計のレートを正確に調整するのを可能にすることにより、1日当たり約0~2秒まで微調整するのを可能にする。
【0052】
図2が、本発明によるテンプ輪1の詳細図を、
図1と同様の平面図で示す。テンプ輪1が、そのフェロー19から透過性透明要素600まで、テンプ輪の回転軸Dを基準とした対称の対で配設された複数の支持体2を有する。特にはチップである、これらの支持体2の各々が、透過性透明要素600側で、テンプ輪1の回転軸Dに対して径方向に可動である少なくとも1つの慣性ブロック3を支持する。
図2は、各々の支持体2において、このような慣性ブロック3の3つの異なる位置を示しており、中間位置から径方向距離Xにおける、点線を付された2つの端部位置の間に、その中間の斜線のミドル位置が存在する。慣性ブロック3の径方向位置のこの限定される数は、図を見易いようにするための、単に1つの具体的な事例である。
【0053】
これらの図は、実行するときの便宜のために各支持体2がテンプ輪1上に設置される具体的な代替的実施形態を示し、生産をより高コストにするが支持体2およびテンプ輪1が単一部片の組立体を形成する別の代替的実施形態も可能である。
【0054】
図3が、図の頂部の一方側で、少なくとも1つのレーザー源700が位置決めされているところである外部環境と、図の底部の他方側で、テンプ輪1を収容する腕時計ケースの内部と、を分離する透過性透明要素600に対して垂直である断面図である。このテンプ輪1が、そのフェロー19から透過性透明要素600まで、テンプ輪の回転軸Dを基準とした対称の対で配設された複数の支持体2を有する。これらの支持体2の各々が、レーザー源700によって放射されるビームの作用下で、透過性透明要素600側で、テンプ輪1の回転軸Dに対して径方向に可動である少なくとも1つの慣性ブロック3を支持する。
図3は斜線で示される慣性ブロック3を中心とし、点線で示されるこの慣性ブロック3の別の径方向位置も示している。したがって、慣性ブロック3は支持体2に堅固に接続されており、示されるようにテンプ輪1の外側に向かってフェロー19に固定されている。
【0055】
この移動増幅装置はいくつかのレーザー露光パラメータに依存している。この増幅は非常に正確に制御され得、慣性ブロック3が露光後に定位置に留まり、固定のサイクル数にわたって慣性ブロック3を両方向に移動させることが可能である。不均衡を妨害しないようにするために、支持体2を径方向反対側の対としてグループ化することが必要であり、支持体2を同時に等しい振幅に設定することが必要である。
図2および3は、一対の支持体2を備える最も単純な事例を示す。別の代替的実施形態が偶数個2Nの支持体2を配設することからなり、Nが1から通常は10までの範囲の整数であり、特には、テンプ輪1の直径と、これらの対の支持体2を幾何学的に嵌め込むことの実現性と、によって決定される。複数の支持体2を備えるこの構成では、振動数のみではなく不均衡も設定され得る。
【0056】
図によって示される、径方向反対側にある2つの支持体2のこの具体的な単純な事例では、1日当たりのオシレータ100の秒のレート偏差(理想振動数に対しての偏差)と、2つの慣性ブロック3のメートルの径方向のムーブメントXとの間の関係が、以下の方程式によって与えられる:
- レート偏差ΔM=86400*x*(2R+x)/(R2+lo/2m)
- ここでは、Rが慣性ブロック3のニュートラルの旋回半径のメートル値であり、loが慣性ブロックを有さないテンプ輪のkg*m2の基本慣性(basic inertia)であり、mが慣性ブロックのkgの質量である。
【0057】
図4が、以下の特性
- テンプ輪の外形=5.3mm
- Rの旋回=4mm
- 慣性ブロックを有さないテンプ輪の慣性:2
e-9kg・m
2
- 慣性ブロックの質量:1.2≦m≦2.4mg
- 目標範囲1日当たり+/-15秒
を有する従来の機械式腕時計テンプ輪に対しての上記の方程式の数値的応用を示す:
【0058】
図4のグラフは、y軸において1日当たりのレート偏差ΔMを秒で示し、x軸において2つの慣性ブロックの対称の径方向のムーブメントの値をマイクロメートルで示し、4つの慣性ブロックの質量値において得られた結果を重ね合わせている:
- 曲線C1がm=1.20mgであり、
- 曲線C2がm=1.60mgであり、
- 曲線C3がm=2.00mgであり、
- 曲線C4がm=2.40mgである。
【0059】
例えば、1.6mgの質量を有する慣性ブロック3に関連する曲線C2が、そのゼロ位置の両側において、0.30×1.33×1.70mm3の平行六面体のガラスの+/-10マイクロメートルのムーブメントに相当する。ここでは達成される振動数の調整が1日当たり+/-11秒である。慣性ブロックの質量を増大させることによりまたは移動量のピークピーク値を増大させることにより、この範囲は容易に拡大し得る。代替的実施形態が、特には、金属または任意の他の特別な材料で作られた追加のマスをこのガラス・プレート上に埋設することからなる。
【0060】
光学機械アクチュエータの選択は、再現可能であり正確な結果を得るのに非常に重要である。上で言及した刊行物、Y.Bellouardによる、「Non-contact sub-nanometer optical repositioning using femtosecond lasers」、Optics Express、2015年11月2日、volume23、No.22が、数ナノメートルの範囲内での位置決めを必要とする、光ファイバー軸を位置合わせするように機能することができる超高精度位置決めデバイスを説明している。この超高精度位置決めデバイスは、パッケージングおよびマイクロ流体工学の用途で日常的に使用される約500マイクロメートルの厚さのガラス・ウエハで作られたデモンストレータから構成される。
【0061】
図5が本原理を概略的に説明するものである:支持体2が固定具30を支承し、固定具30のうちの1つの固定具30が光学機械アクチュエータ35自体を支承し、光学機械アクチュエータ35が、共通のセグメント334により端部のところで接続されていることによりU形を形成する2つの平行なアーム33および34を有し、第1のアーム33が、固定具30と共通のセグメントとの間を延在し、第2のアーム34が共通のセグメント334と出口ポイントとの間を延在し、出口ポイントが、限定しないが、ここでは、増幅機構36を備える連結ネック部分32から構成される。他の固定具30が慣性ブロック3を支承し、慣性ブロック3がネック部分31によって接続され、ネック部分31が回転中心として機能する。
【0062】
図2、3、および5は具体的な代替的実施形態を示すものであり、ここでは、各慣性ブロック3が、実行するときの便宜のために、その固定具30のところで支持体2上に設置される。
【0063】
図6および9から12に見られる別の代替的実施形態では、慣性ブロック3および対応する支持体2が特にはチップである単一部片の組立体を形成し、それにより、同じレベルで慣性ブロック3および支持体2を具現化することが可能となり、支持体2が、テンプ輪1上の固定具のための固定ゾーン30のみに限定される。
【0064】
同様に、慣性ブロック3、支持体2、およびテンプ輪1が単一部片の組立体を形成することもさらに考えられ得るが、この代替的実施形態は生産をより高コストにする。
【0065】
本発明によると、この第1のアーム33およびこの第2のアーム34がレーザー・パルスを受け取ることを意図され、それぞれのライティング・ゾーン391、392を有し、これらのライティング・ゾーン391、392において、レーザー源700によって放射されるレーザー・パルスの非常に短いバーストが、分子レベルの拡大により、材料の厚さにおける、その構造の局所的な修正を作り出すことになり、この拡大が、パルスを停止することにより、迅速に停止され、したがって、変形が永久的な変形を維持する。これらのコアの変形は微小であり、したがって、本方法は、慣性ブロック3を線形方向Lに沿って十分に移動させるように十分な蓄積の拡大を達成するために、このようにして拡大する大量のゾーンを局所的に並置することからなる。有利には、例えば
図6に見られるように4つのネック部分を備える平行四辺形タイプの機構である、機械式増幅装置36が、第2のアーム34の出口ポイントのところで測定可能である全体の伸長または全体の後退を、オシレータ100のレートに著しく影響を与えるのに十分である慣性ブロック3の移動量へと変換するのを可能にする。
【0066】
このムーブメントが、レーザー・パルスが第1のアーム33または第2のアーム34のいずれをエッチングするかに応じて異なることを理解されたい。したがって、
図7が、パルスが第2のアーム34の第2のライティング・ゾーン392をエッチングする事例を示しており、慣性ブロック3の推進ムーブメント中の、出口ポイントの全体のムーブメントが矢印Bの方向にある。対して、
図8が、パルスが第1のアーム33の第1のライティング・ゾーン391をエッチングする事例を示しており、慣性ブロック3の後退ムーブメント中の、出口ポイントの全体のムーブメントが、矢印Bの方向の反対である矢印Aの方向にある。したがって、慣性ブロック3を一方向または別の方向に迅速に移動させることが可能である。
【0067】
レーザーの作用はブランキングを行わず、またはさらには表面エッチングも行わず、その狙いは、材料のコアにおけるその厚さの分子再構成である。拡大ラインをライティングする概念は、グリッドに従う一連のパルスの適用を説明するために分かり易い表現に変えることであり、ここでは、慣性ブロックの平面上での軌道投影が一連の非常に密集する平行な拡大ラインまたは非常に鋭利なジグザグ拡大ラインなどとして提示される。実際のその狙いは、コア材料を拡大すること、および、同じ線形方向Lに沿ってより密接な拡大を蓄積することである。
【0068】
特には第1のライティング・ゾーン391、第2のライティング・ゾーン392である、ライティング・ゾーン39で、材料のボリューム内に拡大ラインをライティングすることにより、圧縮応力を受けるこれらのゾーンの作用に従ってこの材料が拡大する。この状態により、非常に強いが材料を液化させないくらいに十分に短い隔離された加熱が行われる。体積が非常にわずかにのみ拡大し、材料が固体状態を維持する。この隔離された加熱がフェムト秒レーザーの非常に短いパルスのバーストを用いて実施され、これが例えば、限定しないが、上で言及した文献、Y.Bellouardによる、「Non-contact sub-nanometer optical repositioning using femtosecond lasers」、Optics Express、2015年11月2日、volume23、No.22(Amplitude systems SAからのYBファイバー増幅レーザー、波長=1030nm、パルス時間270fs、パルス・エネルギー約250nJ、繰り返し率)によって説明されている。ビームが、6mmのオーダーの作動距離で、数マイクロメートルのスポットのところでレンズを通して集束される。したがって、数マイクロメートルの範囲内の精度のこれらのパルスを用いる3次元スキャンにより、応力下で1つまたは複数のボリューム・ゾーンを画定することが可能となる。本明細書において上で説明した材料を修正することが可能である場合、異なるフェムト秒レーザー(波長、パルス時間、エネルギー、および繰り返し率)が使用されてもよいことは明白である。集束レンズの作動距離は、レーザー・ビーム成形および集束光学素子に従って変更され得る。
【0069】
その高い単純性によりここで示される
図5から8の非限定の機構は径方向の線形方向Lに沿って「S」形のアクチュエータ35を有し、アクチュエータ35がこの同じ方向に沿う両方向に機能するように配置構成され、それにより、第2のアーム34の頂部ゾーン(利得)または第1のアーム33の底部ゾーン(後退)においてライティングが行われる。増幅装置36が、線形方向Lに沿って線形ガイドを形成する可撓性ネック部分31の間にある接続棒310を備える接続棒システムを非限定的に有し、それにより、増幅計数Kmでアクチュエータを増幅するのを可能にし、その結果、埋設された正方形のテーブルすなわち慣性ブロック3が数マイクロメートルの振幅で移動する。
【0070】
上で言及した文献(Y.Bellouard、2015年)の発明によると、線形方向Lに沿って約1mmの全長のボリュームにおいてライティングを行われた200個の平行な平面のブロックにおいて、以下のことが達成される:上記のおよび図によるレーザー・パラメータを用いる場合、増幅係数Kmが6であり、1mmの長さにわたってライティングされた200個の拡大ラインにおける、慣性ブロック3の増幅された移動量が約5マイクロメートルであり、したがって、1つのライティングされたラインごとの、線形方向Lに沿う、アクチュエータ35のところの適切なムーブメントが、5/(200*6)=4.167nm/ライン(または、平面)に等しい。
【0071】
上に記載される文献によると、マイクロ構造自体をブランキングするために同じテクニックが使用され得る。第1のステップが、レーザーの作用下でコアを拡大する同じ方法によると、ガラス・プレート(溶融シリカ)から除去されるべきボリューム・ゾーンをライティングすることからなる。第2のステップで、プレートが化学エッチングを受け、化学エッチングが応力下で一部分を選択的に除去する。達成される機械加工もマイクロメートルの精度となり、それにより、ガラスのマイクロ構造を生産することが可能となる。
【0072】
図9および10が、10.6mmの直径(フェロー19の外径)を有するテンプ輪を用いる場合において、上述した具体的な数値例に対しての本発明の適用を示しており、ここでは8.0mmである直径190が、慣性ブロックの質量中心の旋回直径に一致する。アクチュエータ35および増幅装置36が、支持体2の平面寸法を、特には0.3mmの厚さのガラス・チップである、一辺2.0mmの正方形に限定するように適合され、このガラス・チップが、少なくとも1つの固定ゾーン30に限定される慣性ブロック3および支持体2を同じ単一のレベルで支承し、それにより、テンプ輪1を固定し、さらには、アクチュエータ35、増幅装置36、および慣性ブロック3を垂設する。
【0073】
したがって、
図5から8に概略的に示される機構は、コンパクトとなることにより、および、ばね式テンプ輪の一般的な寸法に合うように適合されることにより、修正され得る。より小さい断面のアクチュエータ・ビームに適用される、同じ応力シグマにより、フックの法則により(dl/l=E*sigma:ここでは、dl=長さの増分、l=ゾーンの長さ、E=材料のヤング係数である。)、4.167nm/ラインの等しい線形ムーブメントを引き起こす、という仮定が作られた。したがって、上記のアクチュエータと等しい振幅を得るためには、200個の拡大ラインのライティング長さが同一でなければならず、線形方向Lに沿って1mmに等しくなければならない。
【0074】
図9に示されるように、厚さ0.3mmのガラスの支持体2の場合、慣性ブロック3を形成する長方形のパレット・ストーンの質量が1.6mgに等しく、これが
図4のグラフのレート - ムーブメントの関係C2に一致する。
【0075】
接続棒310の境界を画定する2つのたわみネック部分31の中点の間の距離がこの実施例では1.40mmであり、下側のたわみネック部分31および連結ネック部分32の中点の間の距離が0.14mmである。これらのたわみネック部分31または連結ネック部分32がここでは20マイクロメートルの幅を有し、これは技術的観点から受け入れられるものである。レバーアーム比によるアクチュエータの移動量とマスの移動量との間の増幅係数Kmは等しく、Km=1.400mm/0.140mm=10である。
【0076】
本構造の最大線形振幅は等しく、+/-x=Km*200個の拡大ライン*4.167nm/ライン=2000*4.167nm=+/-8.33マイクロメートルであり、これが、グラフC2を介すると、概して+/-Δレート=1日当たり+/-9秒に一致する。
【0077】
したがって、1日当たり9秒の各々の2つの範囲における200個の拡大ラインを考察すると、ライティングされたラインごとの設定の分解能は、d_レート(1ライン)=9/200=0.045秒(1日当たりおよびライン当たり)に等しく、これは、1日当たり0秒から2秒の範囲内でレートを調整するのに十分である。
【0078】
線形方向Lに沿う1mmの長さの2つのゾーンは1日当たり+9秒の単一の利得補正および1日当たり-9秒の損失補正を可能にする、ことに留意されたい。複数のライティング・サイクルを有するために、支持体2の数を増大させるかまたは質量を増大させることが可能であり、これが、等しいムーブメントにおいてライティングする必要のある拡大ラインの数を少なくするという効果を有し、それにより、次のライティングのために、第1のアーム33上でのおよび第2のアーム34上での空間が節約される。
【0079】
レート調整の実施に関して、初期状態は、補正前において腕時計のレートが既知であり、ケースを閉じた状態で測定されることが想定される状態であるとみなされる。補正を実施するために、腕時計ヘッドを正確に位置決めするために特別な付属具が使用される。次いで、顕微鏡的対物レンズ(microscopic objective)および横断移動装置xyを備える位置決めステージが、特にはフェムト秒レーザーであるレーザー源700をテンプ輪1上で中央に配置するのを可能にする。
【0080】
この段階から、2つの選択肢が生じる:秒停止手段もしくは同様の手段などのロック・レバー/ブレーキ・レバーにより、あるいは、オシレータを停止して空間的に保持するための機構により、テンプ輪が停止され、固定化された標的物に対してレーザー発射が実施される。あるいは、テンプ輪1が継続して振動し、レーザー発射がテンプ輪1の角度位置に同期されなければならない。
【0081】
テンプ輪が停止され、固定化された標的物に対してレーザー発射が実施される事例は、限定しないが、例えば、テンプ輪の回転軸Dの中央に配置された画像認識ソフトウェアを備えるカメラを管理する制御手段を半自動で位置決めすることによって解決され得る。
【0082】
テンプ輪1が振動して、レーザー発射がテンプ輪1の角度位置に同期される事例では、本方法がより複雑になるが、より有利なものとなる。その理由は、テンプ輪を停止する必要がなく設定がオンザフライで実施されるからである。
図11および12に示されるように、検出レーザー・ビーム750を通るように支持体2を通過させるのを開始することにより、発射が開始され得る。
【0083】
図11が、支持体2を支承している、このテンプ輪のフェロー19と、ライティング・ゾーン39、391、392に対してライティングを行うための放射ライティング・レーザー源700と、さらには、図の左側部分に斜めに設置された検出レーザー750と、を示しており、慣性ブロック3を示していない、テンプ輪1の回転軸Dを通る概略断面図であり、ここでは、テンプ輪1によって反射されたビームおよびそこに含まれる成分が、光電検出器などの収集手段760によって図の右側部分で収集される。
【0084】
図12が、テンプ輪1が振動する事例の、および、レーザー発射がテンプ輪1の角度位置に同期された事例の、レーザー・ライティング源700およびレーザー検出源750を備える
図11による配置構成の詳細図を示しており、テンプ輪1のフェロー19が
図9によるチップを支承しており、点線として示される円弧がレーザー・ライティング源700の瞬間的な位置に一致し、レーザー・ライティング源700が図の平面に対して垂直な方向に発射を行い、したがって、この例では、拡大ライン390を作り出すために、つまり、第1のライティング・ゾーン391内に小さい矢印によって記号化された分子レベルの拡大を作り出すために、第1の下側アーム33のライティング・ゾーン391内でライティングを行うことができ、隣り合う小さい矢印が他の拡大ライン390に一致し、つまり、テンプ輪1の回転軸Dを基準として多様なビームに対応するライティング源700のxに沿う多様な位置決めを用いて同じゾーンで既に実行されたライティングに一致する。図の底部では、左側から右側まで、レーザー検出源750、集光レンズ770、テンプ輪1に対しての入射光、テンプ輪1上のまたはそれにより支承されるオルガン上の反射ポイント、反射光、集光レンズ780、および光電検出器760が見られ得る。
【0085】
図12では、テンプ輪1のフェロー19の左側縁部がその円形軌道内の頂部から底部まで振動する。チップ2がその基部によりテンプ輪1に固定される。この光学素子は、テンプ輪1の平面に対して垂直である方向zに沿う光学軸のライティングを実施するためのレーザー・ライティング源700と、例えばテンプ輪の平面に対して45°の角度で傾斜する検出レーザー750と、から構成され、ここでは、傾斜軸および反射ビームが平面xz内にある。そのそれぞれのスポットがxに沿ってわずかにオフセットされ得るが、zに沿って同じ寸法を維持しなければならない。
【0086】
図13が、x軸において異なる時間スケールでプロットされているが、特定の時間および起きている事象を示すために互いに関連付けられて構成されている、3つのグラフを並置している。上のグラフが、テンプ輪1の角速度オメガOMEをy軸に示し、真ん中のグラフが光電検出器760の信号VPDの値をy軸に示し、下のグラフがレーザー・ライティング源700によって放射される光強度IIEをy軸に示す。
【0087】
テンプ輪1が振動するとき、その角速度OMEが、
図13の上のグラフでは時間t1とt4との間であるニュートラル・ポイントの近傍で最大となり。これが数Hzで振動するばね式テンプ輪に対応する。このゾーンは興味深いゾーンである。その理由は、速度が大幅には変化せず、したがって、準一定とみなされ得るからである。したがって、レーザー・ライティング源700からのライティング・パルスのバーストのオンおよびオフを切り替えるために検出レーザー750が使用される。
【0088】
検出レーザー750に関連付けられた光電検出器760の信号VPDが、そのスポットがチップ2の中実ゾーン上にあるときのつまり
図13の真ん中のグラフおよび
図12の両方で見られるように、連続する固定ゾーン30/第1の下側アーム33/第2の上側アーム34/慣性ブロック3の上にあるときの、値1を有し、信号VPDがスロット内では値0を有する。したがって、この信号は、時間t2とt3との間においてレーザー・ライティング源700によるバーストのライティングを、またより正確には、第1のアーム33での利得設定のための第1のライティング・ゾーン391内での、または第2のアーム34での損失設定のための第2のライティング・ゾーン392内での、ライティングを関与させるかまたは解除するのに使用され得る。
図12に示される実施例では、4つの拡大ライン390が第1のアーム33上の第1の利得ゾーン内でライティングされ、これがテンプ輪1の回転軸Dの方に慣性ブロック3を引くことになり、振動数を増大させることによりレートの利得を誘発させることになる。光強度IIEのバーストの開始が時間TONでの信号VPDの正側によってトリガーされ、その停止が時間TOFFでの信号VPDの負側によってトリガーされる。例えば、拡大ライン390をライティングするために交互のピリオドつまりハーフ・ピリオドを使用することも可能であり、拡大ライン390がレーザー・ライティング源700により増分xでオフセットされ、それにより、次の隣接する拡大ラインが次の交互の順番にライティングされるなどとなる。信号VPDを使用して回転方向の検出が実施され得、信号VPDのパターンが方向に応じて異なる。これにより、補正ゾーンにおいてレーザー・ライティング源700を常にオンに切り替えることが可能となる。
【0089】
長さLeのゾーンである、第1のアーム33上の第1の利得ゾーン内でのまたは第2のアーム34上の第2の損失ゾーンでの(通過)ライティング継続時間Teが以下によって与えられる:
- Te=Le/(R*A*2π*F)、ここでは、R=旋回半径、A=テンプ輪の角度振幅、およびF=オシレータの振動数。
【0090】
この実施例では、Le=190μm、R=4mm、A=270°、F=4Hz、したがって、Te=0.40msである。
【0091】
この実施例ではライティング・パルスの繰り返し振動数が800kHzであり、したがって、1回の通過ごとのパルス数が800*0.40=320に等しく、したがって最大(蓄積)利得誤差が等しい:1/320*(+/-9秒/日)=+/-0.03秒/日であり、これは本用途を完全に満たす。
【0092】
マイクロメートルの精度を有する3次元構造を生産するのを可能にする、フェムト秒レーザーおよび化学エッチングによるガラス加工テクニックは、十分に試行されたテクニックである。
【0093】
このテクニックは、ナノメートルの精度で、マイクロメートルの振幅にわたって移動させられ得る可撓性要素を備える2つのミリメートルのチップを生産するのを可能にする。アクチュエータ部分35のナノ精度の移動の作動は、レーザー内部応力ライティング(laser internal stress writing)によって実施される。可撓性のネック部分31および接続棒310のシステムにより、線形方向Lに沿う振幅を増大させることが可能となる。
【0094】
このようなチップ2の実施形態は、1日当たり0.03秒の精度で、および、通常は1日当たり+/-10秒の範囲内にある、1日当たり0.09秒の分解能で、ばね式テンプ輪のレートを正確に高い精度で設定するように適合される。明らかに、この範囲の振幅および分解能は、デザインを適合させることで、容易に変更され得る。
【0095】
本発明が、理論的に、渦巻きばねまたは可撓性ストリップなどオシレータの弾性リターン要素に対しての一連の発射を通してそのスティフネスを修正するのを可能にすることができる、微小の不可逆的な拡大を実施するのを可能にするが、これらの変形したゾーンが作り出されることにより構成要素の一様性が妨げられ、この弾性リターン要素の弾性特性が損なわれるリスクがある、ことに留意されたい。そのため、本発明は、ここでは、好適には、渦巻きばねまたは弾性ストリップによって垂設されているか否かに関わらず、慣性要素に対して作用するように提示される。
【0096】
本設定システムはコンパクトであり、2つ以上のガラス・チップ2をテンプ輪1上に設置する以外に、腕時計1000内の追加の複雑さを必要としない。
【0097】
腕時計ヘッド500が、オシレータに対しての光学アクセスにおけるライティング・レーザーに対して透過性または非吸収性である、バックまたはガラス蓋などの透過性透明要素600を有する場合、本設定は完成した腕時計1000に対して直接に実施され得る。当然、本発明は、このように装備する腕時計1000にも関する。
【0098】
図14が、制御手段790と、ライティング・レーザー700を取り扱うための横断移動装置710を備えるテーブルと、検出レーザー750と、反射光760を収集するための手段と、オシレータ100を始動させるためのおよび止めるための手段720と、である、周辺装置およびその連結を示す。
【0099】
設定の外部部品(付属具、顕微鏡、光学素子、およびレーザー)は、通常、生産のためのおよび顧客サービスの保管のための両方において、迅速かつユーザーフレンドリな設定を可能にするデスクの一定のボリュームを占有する。
【0100】
本発明の実装形態は、物理的は保護分離箇所(ケース、ケーシング)によって光の吸収が最適化される場合、および、レーザー・スポットを位置決めするための高い信頼性のシステムが具現化される場合、より優れたものとなる。当然、衝撃を受けるときの早期の破断を引き起し得るような、ライブ・ゾーンの脆性の増大を防止するために、実験によって決定された一定の寸法を超えるように適合された寸法をライブ・ゾーン(live zone)に対して採用しなければならない。
【符号の説明】
【0101】
1 慣性マス
2 支持体
3 慣性ブロック
30 固定ゾーン
32 連結ネック部分
33 第1のアーム
34 第2のアーム
35 アクチュエータ
36 移動量増幅装置
39 ライティング・ゾーン
100 機械式時計学オシレータ
310 接続棒
334 共通のセグメント
390 拡大ライン
391 ライティング・ゾーン
392 ライティング・ゾーン
600 透過性透明要素
700 レーザー源
710 横断移動装置
750 検出レーザー
760 収集手段
790 制御手段
801 第1のステップ
802 第2のステップ
803 第3のステップ
804 第4のステップ
805 第5のステップ
1000 腕時計
D 回転軸
L 線形方向