(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】移床の状態監視
(51)【国際特許分類】
F27B 21/14 20060101AFI20241018BHJP
C22B 1/16 20060101ALI20241018BHJP
C22B 1/20 20060101ALI20241018BHJP
F27B 21/08 20060101ALI20241018BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F27B21/14 B
C22B1/16 K
C22B1/20 T
F27B21/08 A
F27B21/08 B
F27B21/08 C
F27D21/00 A
(21)【出願番号】P 2022505635
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2020070729
(87)【国際公開番号】W WO2021018703
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-06-21
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】500173376
【氏名又は名称】ポール ヴルス エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100099472
【氏名又は名称】杉山 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】ストリューバー、ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ナヴァス、デイヴィット
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ドルプ、ピエール
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/108532(WO,A1)
【文献】特開2014-009853(JP,A)
【文献】特開2000-154972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 21/14
F27B 21/08
F27D 21/00
C22B 1/16
C22B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪付き車体、側壁及び複数のグレートバーを備えた格子床を含む複数のパレット車を含む移床機、特に造粒又は焼結機の状態を監視するシステムであって、
各パレット車を一義的に同定するための同定手段;
複数の状態表示パラメータを収集するセンサ手段であって、
パレット車の車輪の状態を表すパラメータを収集するためのセンサ手段;
パレット車のグレートバーの状態を表すパラメータを収集するためのセンサ手段;
パレット車の車体及び/又は側壁の状態を表すパラメータを収集するためのセンサ手段;を含む上記センサ手段;
収集された状態表示パラメータを個々のパレット車に帰属させるプロセッサ手段;
パレット車毎に収集された状態表示パラメータをデータベースに記憶するための記憶手段;
移床機の状態を評価するための評価手段であって、
各パレット車の異なるセンサによって収集された異なる状態表示パラメータと、基準パラメータ及び/又は同一のパレット車の事前に収集された状態表示パラメータを比較し;この比較に基づき各パレット車における障害を同定し;
同定された異なる障害の酷さに基づくメンテナンスの必要性に応じて各パレット車を分類し;かつこの分類に基づきメンテナンスが最も必要なパレット車を判定する、上記評価手段;
を含む上記システム。
【請求項2】
センサ手段が非接触センサを含む、請求項1に記載されたシステム。
【請求項3】
センサ手段は、パレット車の一部の画像を取り込むように構成され、かつ記憶手段は、取込んだ画像を記憶するように構成され、かつ、評価手段は、取込んだ画像を基準画像及び/又は事前に記憶された画像と比較するように構成されている、請求項1に記載されたシステム。
【請求項4】
システムはパレット車の車輪の存在及び/又は回転を監視するように構成されている、請求項1から3のいずれかに記載されたシステム。
【請求項5】
システムは、隣接するグレートバー間の間隙の存在及び/又は間隙のサイズを監視するように構成されている、請求項1から4のいずれかに記載されたシステム。
【請求項6】
システムはパレット車のグレートバーの形状及び/又はサイズ及び/又は向きを監視するように構成されている、請求項1から5のいずれかに記載されたシステム。
【請求項7】
システムは、パレット車の車体及び/又は側壁の亀裂の存在を監視するように構成されている、請求項1から6のいずれかに記載されたシステム。
【請求項8】
システムは、グレートバーホルダ及び/又はボルト及び/又は上部シール及び/又は下部シールの状態を表すパラメータを収集するためのセンサ手段を含む、請求項1から7のいずれかに記載されたシステム。
【請求項9】
車輪付き車体、側壁及び複数のグレートバーを備えた格子床を含む複数のパレット車を含む移床機、特に造粒又は焼結機の状態を監視する方法であって、
各パレット車を一義的に同定すること;
複数の状態表示パラメータ収集することであって、収集される表示パラメータが、パレット車の車輪の状態;パレット車の格子床の状態;パレット車の車体及び/又は側壁の状態である、上記複数の状態表示パラメータ収集すること;
収集した状態表示パラメータを個々のパレット車に帰属させること;
パレット車毎に収集された状態表示パラメータをデータベースに記憶すること;
移床機の状態を評価することであって、各パレット車の異なる状態表示パラメータと、基準パラメータ及び/又は同一パレット車の事前に収集された状態表示パラメータとを比較すること;この比較に基づいて、各パレット車の障害を同定すること;同定された異なる障害の酷さに基づくメンテナンスの必要性に応じて各パレット車を分類すること;及びこの分類に基づきメンテナンスが最も必要なパレット車を判定することを含む、上記移床機の状態を評価すること;
を含む上記方法。
【請求項10】
パレット車の画像を取り込み;
取込んだ画像にパレット車符号を割り当て;
取込んだ画像をデータベースに記憶し;かつ
取込んだ画像と基準画像又は事前に記憶された画像を比較する、
各工程を含む請求項9に記載された方法。
【請求項11】
グレートバーホルダ、ボルト、上部シール、下部シールの状態を表すパラメータを収集することを含む、請求項9又は10に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、移床(travelling grate)、特に造粒又は焼結機の移床の状態(condition)を監視するシステムおよび方法に関する。このシステムと方法は、メンテナンス予測機能(predictive maintenance operations)が特に重要である。
【背景技術】
【0002】
移床機(travelling grate machines)は、バルク材料が熱処理される、焼結又は造粒プラントで一般によく知られている。移床機は供給手段からバルク材料を受け入れる複数のパレット車を含む。パレット車は、水平に伸びる上部ストランド(strand;ワイヤー)により少なくとも1つの処理ステーションを通って走行し、そこでは、プロセスガス、例えば空気がパレット車を通して、またバルク材料を通して垂直に供給される。熱処理されたバルク材料は、上部ストランドの端部でパレット車から重力で落下し、その後、逆さまになって移床機の前端に戻る。このような移床機の一例は、米国特許6,523,673に見ることができる。
【0003】
パレット車は、処理ステーションのタイプに応じて、プロセスガスが上向き又は下向きに通過できるようにするため、互いに離間した個々のグレートバー(grate bars;格子棒)でできた格子床(perforate floor)を有する。プロセスガスは、格子床を通過しかつバルク材料を通過する。パレット車は、グレートバーが取り付けられている車体でできている。バルク材料がパレット車の側面から外部に零れるのを防ぐため、側壁がパレット車の横方向に間隙を空けた各側部に設置されている。さらに、各パレット車は移床機に沿ったガイドレールに載った車輪を有し、個々のパレット車は、バルク材料のための連続した移動格子床を形成するために当接した位置関係になっている。
【0004】
移床機の環境が厳しいため、パレット車には定期的なメンテナンスが必要である。グレートバーは特に多大な損傷を受け、そのため、バルク材料を熱処理するプロセスに悪影響を及ぼさないために交換が必要である。
【0005】
パレット車の格子床の状態を監視するための解決手段が開発されている。当技術分野で知られている解決手段の中で、特開2000-154972号は、グレートバーが欠損したパレット車を同定し、又は壊れたグレートバーを提示するための装置を開示している。
【0006】
別の解決策は、EP 2231885 A1に開示されている。この文献は、パレット車のクロスビーム(crossbeams;横梁)の変形、特にたわみ(deflection)を監視するシステムと方法を提示している。メンテナンスが必要なパレット車は、クロスビームの変形に基づいて同定され、おそらくクロスビームの破損が発生する前に同定することができるように、同定した損傷パレット車を次のメンテナンス作業時に修理または交換することができる。
【0007】
しかしながら、パレット車の格子床は、損傷する可能性がありかつ移床機の動作中にメンテナンスや交換が必要となり得る唯一の部分ではない。損傷は、実際に側壁やパレット車の車体にも発生し得る。パレット車の車輪も損傷する恐れがある。
【0008】
発明の目的
本発明の目的は、移床機、特にその個々のパレット車の状態についての改良した監視により、移床機の状態を監視するシステム及び方法を提供することである。
【0009】
この目的は、請求項1で請求するシステム及び請求項12で請求する方法によって達成される。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、移床機、特に造粒又は焼結機の状態を監視するシステムに関するものであって、移床機は、車輪付き車体、側壁及び複数のグレートバーを備えた格子床を含む、複数のパレット車を含む。
本発明によれば、そのシステムは、
各パレット車を一義的に同定するための同定手段;
複数の状態表示パラメータ(condition indicating parameters)を収集するセンサ手段;
収集された状態表示パラメータを個々のパレット車に帰属させるプロセッサ手段;
パレット車毎に収集された状態表示パラメータをデータベースに記憶するための記憶手段;及び
移床機の状態を評価するための評価手段を含む。
【0011】
センサ手段は、パレット車の車輪の状態を表すパラメータを収集するためのセンサ手段、パレット車のグレートバーの状態を表すパラメータを収集するためのセンサ手段、及びパレット車の車体及び/又は側壁の状態を表すパラメータを収集するためのセンサ手段を含む。
【0012】
評価手段は、各パレット車の異なるセンサによって収集された各パレット車の異なる状態表示パラメータと、基準パラメータ及び/又は同一のパレット車の事前に収集された状態表示パラメータとを比較し;この比較に基づき各パレット車の障害(faults)を同定し;同定した異なる障害の酷さ(severity)に基づき、そのメンテナンスの必要性に応じて各パレット車を分類し;及びこの分類に基づきメンテナンスが最も必要なパレット車を判定する。
【0013】
本システムは、したがって個々のパレット車の状態を連続的に監視し、かつそれによって検出された障害を記録する。検出された障害とその酷さに基づいて、システムはパレット車をメンテナンス要求順に分類する。早急に対処が必要な重要な障害が検出されたときは、本システムは必要な修理を行うことができるように、移床機の緊急停止を開始することができる。緊急性の低い障害に対しては、本システムは、メンテナンスを最も必要とするパレット車に対して、それを交換するか、或いは次の定期的なメンテナンス停止時にメンテナンスを行い得るように、メンテナンスが必要なパレット車を優先する。
【0014】
パレット車に対する障害は継続的に同定されかつ監視されるので、停止時におけるメンテナンスが必要なパレット車だけではなく、どのような修理が必要かも知ることができる。これにより、メンテナンス停止前であっても、必要な工具や交換部品を用意することができる。したがって、停止時間を短縮することができ、それによって移床機の効率を高めることができる。
【0015】
個々のパレット車の障害を継続的に監視することで、オペレータは、障害パレット車の更なる品質低下を低減するか又は回避するように、移床機の動作状態を適応させることもできる。これにより、少なくとも次の定期メンテナンスの停止まで、障害パレットの寿命を延ばすことができ、それにより、緊急停止を回避することができる。
【0016】
センサ手段は、好ましくは、光やレーザービームに基づく、例えばカメラシステムのような、非接触センサを含む。このような非接触センサにより、パレット車との実際の物理的接触無しに、それぞれの状態表示パラメータを収集することが可能となる。センサ手段は固定位置に位置していることが好ましいが、パレット車は概して移動しているため、このことは特に重要である。
【0017】
センサ手段により基準画像と比較可能な画像を取り込むことができる。取込んだ画像と基準画像間のいかなる不一致も、評価手段がパレット車の取込み部分の状態を評価するために使用できる。取込んだ画像は記憶手段に記憶される。これにより、新たな取込んだ画像を、特定のパレット車の同じ部分ついての事前の取込んだ画像と比較することができる。評価手段によるパレット車の同一部分の連続した画像の比較により、当該部分の劣化の評価が可能になる。このように劣化の程度を同定するために、劣化したと同定された部分をより厳重に監視することができる。これにより、その部分を交換する必要がある時期を予測することができる。
【0018】
好ましくは、パレット車の車輪の状態を表すパラメータにより、車輪の存在と車輪が回転しているか否かを判定することができる。評価手段がパレット車の車輪の欠落を同定したときは、パレット車は即時の対応が必要なものとして分類される。本システムは、欠落した車輪或いはパレット車全体であっても交換できるように緊急停止を開始する。評価手段がパレット車の車輪が回転していないか正しく回転していないことを同定したときは、車輪の完全な障害が生じる前に、次の定期メンテナンス停止時にパレット車にメンテナンスを実施できるように、本システムはこの障害を高い優先順位に分類する。評価手段がパレット車の車輪が劣化していることを同定したときは、本システムはこの障害を低い優先順位に分類し、劣化の進行を確認するためにより厳しい監視が必要なものとしてパレット車にフラグを立てる。
【0019】
好ましくは、パレット車のグレートバーの状態を表すパラメータにより、グレートバーの存在を判定することができる。グレートバーが欠落しているときは、本システムは、その欠落したグレートバーの数に応じて、この障害を高い優先順位に分類する。欠落したグレートバーは、移床機の効率に重大な影響を与え、したがって、至急の対応が必要である。欠落したグレートバーは、さらに近隣のグレートバーのより迅速な劣化を促すことになる。したがって、パレット車および移床機の効率がさらに悪化する前に、次の定期メンテナンス停止時にメンテナンスが実施できるように、欠落したグレートバーには高い優先度が割り当てられる。
【0020】
好ましくは、パレット車のグレートバーの状態を表すパラメータにより、さらに隣接するグレートバー間の間隙の大きさを判定することができる。間隙が大きい程、格子床を通してより多くの材料が落下し、かつ隣接するグレートバーにより大きな劣化が生じる。隣接するグレートバー間の間隙の局部的な拡大により、グレートバーの芯ずれ(misalignment)も出現する。本システムはパレット車のメンテナンスを行うために、1パレット車で検出される間隙の数とこれらの間隙の大きさに応じて、この障害をより高い優先順位に分類する。
【0021】
好ましくは、パレット車のグレートバーの状態を表すパラメータにより、さらにパレット車のグレートバーの形状、大きさまたは向きを判定することができる。歪んだ(misshaped)パレット車、縮んだ、また芯ずれしたグレートバーは、より重大な障害を想定すべきことを表しているかも知れない。本システムは、このような障害は優先順位が低い、すなわち早急な対処を必要としないものとして分類する。しかしながら、このような障害を持つパレット車はより厳重に監視される。より高いランクの優先順位を持つパレット車が同定されていないときは、パレット車のさらなる劣化を防ぐために、次の定期メンテナンス停止時のメンテナンスのために、これらのパレット車を選択することができる。
【0022】
好ましくは、パレット車の車体及び/又は側壁の状態を表すパラメータにより、車体または側壁のいずれかに亀裂があることを判定することができる。このような亀裂の数、大きさおよび位置に応じて、本システムは、そのような障害をより高い又はより低い優先順位を有する障害として分類することができる。パレット車が完全障害の危険があるときは、当該パレット車に高い優先順位が与えられ、パレット車に次の定期停止時のメンテナンスを割り当てる。損傷が非常に重大なときは、本システムはパレット車を交換するために緊急停止すら開始する可能性がある。他方、損傷が重大でないときは、本システムは、このような障害を低い優先度を有するものとして分類する。
【0023】
本システムは、また、側壁の緩みまたは過熱を判定するためのセンサ手段を含む。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、本システムは、グレートバーホルダ、ボルト、上部シール及び/又は下部シールの状態を表すパラメータを収集するためのセンサ手段をさらに備える。
【0025】
本発明はまた、移床機、特に造粒または焼結機の状態を監視する方法に関し、ここで、移床機は、車輪付き車体、側壁および複数のグレートバーを備えた格子床を含む複数のパレット車を含む。本発明によれば、
本方法は、各パレット車を一義的に同定すること;複数の状態表示パラメータを収集すること;収集された状態表示パラメータを、個々のパレット車に帰属させること;パレット車毎に収集された状態表示パラメータをデータベースに記憶すること;及び移床機の状態を評価することを含む。
【0026】
複数の状態表示パラメータの収集は、パレット車の車輪の状態を表すパラメータ、パレット車の格子床の状態を表すパラメータ、及び車体及び/又はパレット車の側壁の状態を表すパラメータを収集することを含む。
【0027】
好ましくは、パレット車の車輪の状態を表すパラメータは、車輪の存在と、車輪が回転しているか否かを判定することを可能にする。評価手段がパレット車の車輪が欠落していること、回転していないこと、又は劣化していることを同定したときは、パレット車は上述の通りメンテナンスの必要性に従って分類される。
【0028】
好ましくは、パレット車の格子床の状態を表すパラメータは、グレートバーの存在、その形状、サイズおよび向き、その状態および隣接するグレートバー間の間隙の大きさを判定することを可能にする。評価手段が、グレートバーが欠落しているか、損傷しているか、又は格子床が劣化していることを同定したときは、パレット車は、上述の通りメンテナンスの必要性に従って分類される。
【0029】
評価は、各パレット車の状態表示パラメータと、基準パラメータ及び/又は事前に収集された同一パレット車の状態表示パラメータとを比較すること;この比較に基づいて、各パレット車の障害を同定すること;同定された障害に基づきメンテナンスの必要性に応じて各パレット車を分類すること;及び、この分類に基づいて、最もメンテナンスを必要とするパレット車を判定する、ことを含む。
【0030】
この方法は、有利にも、特定のパレット車の一部分の画像を、好ましくはカメラシステムで取り込むこと;取込んだ画像をデータベースに記憶すること;取込んだ画像と基準画像又は事前に記憶された画像に基づいて、移床機の状態を評価すること、を含む。
【0031】
本発明によれば、この方法は、上記のように、パレット車の車体及び/又は側壁の状態を表すパラメータを収集することを含む。評価手段が車体及び/又は側壁が損傷していることを同定したときは、パレット車は上述のメンテナンスの必要性に従って分類される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、本方法は、グレートバーホルダ、ボルト、上部シール及び/又は下部シールの状態を表すパラメータを収集することをさらに含む。評価手段がこれらの要素が損傷していることを同定したときは、パレット車は上記のメンテナンスの必要性に従って分類される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここで、本発明の好ましい実施形態を例示により説明する。
【0034】
移床機は一般的によく知られている。それらはバルク材料を運ぶための複数の連続したパレット車を含む。各パレット車はガイドレール走行用車輪付の車体を含む。パレット車は、その上でバルク材を受け取るための格子床をさらに含む。側壁はバルク材料がパレット車から横に落下するのを防ぐために設けられる。各パレット車の前端および後端は別のパレット車に当接しており、それによって多数のパレット車に跨ったバルク材料の受け面が形成される。
【0035】
パレット車の格子床は、プロセスガスが通過できるよう空間を介在させた複数のグレートバーによって形成される。このようなプロセスガスは、例えば、空気又はバルク材料を加熱または冷却することができる他のガスである。グレートバーは、グレートバー間の間隙はプロセスガスが循環するには十分であるが、バルク材料は隙間を通り抜けて落下しないように位置決めされている。運転中、移床機が晒される過酷な状況により、格子床が損傷することがあり得る。実際に、個々のグレートバーは劣化し得る。摩耗により、グレートバーは、例えば、芯ずれが生じる;それらは狭くなったり、壊れたり、完全に無くなったりする。その結果、隣接するグレートバー間の間隙が変化する。グレートバー間の間隙がより大きいと、バルク材料はもはや格子床に保持されない。また、プロセスガスの優先流路も形成され、バルク材料の不均一な熱処理の原因になる。実際、それによってバルク材料とパレット車の特定の領域が、過度の熱に晒される。
【0036】
本発明は、パレット車の状態を継続的に監視し、最もメンテナンスを必要とするパレット車を同定するためのシステム及び方法に関する。
【0037】
好ましい実施形態によれば、多数のカメラを含むカメラシステムが、好ましくはパレット車にバルク材料が堆積される直前に設置される。これにより、カメラは、パレット車、特にその格子床をはっきり収めることができる。好ましくは、異なるカメラが、パレット車の特定の領域(areas)、例えば、車輪、グレートバー及びパレット車の側壁を監視するために提供される。特定のパレット車がカメラシステムを通過する際に、そのパレット車のアイデンティティ(又は同一物であること;identity)が最初に判定される。カメラはパレット車のさまざまな部分の様々な画像を取り込む。これらの取込んだ画像は、パレット車のアイデンティティに関連付けられて、続いてデータベースに記憶される。データベースは、各部分の基準画像及びこれらの部分の事前に取込んだ画像を含む。
【0038】
評価手段は、新たに取込んだ画像を基準画像及び/又は各部分の事前に取込んだ画像と比較して、当該部分の状態を判定するのに使用される。基準画像と比較することで、その部分が損傷しているか否かを判断できる;事前に取込んだ画像との比較により、劣化度合(rate of deterioration)を判定することができる。
【0039】
評価手段は、各パレット車がカメラシステムを通過する際にその状態を継続的に監視し、障害のある部分を同定する。しかしながら、評価はパレット車の障害を同定するだけではない;同定された障害をその重要性に応じて分類し、それによりパレット車毎にメンテナンスの緊急性を同定できるようにもする。このように、移床機のメンテナンスが準備され、準備されたスケジュールに従って遂行することができる。重大な障害が同定されたときは、さらなる損傷を防ぐため緊急停止を発動できる。重大な障害が同定されたときは、メンテナンスの予定を組んで損傷を修復するか、又は致命的な障害に発展する前にパレット車を交換するかすることができる。小さな障害に対しては、これらは記録され、同定された部分の劣化を監視することができ、障害が予定外の停止を必要とするより重要な障害に変わる前に、好ましくは定期的な停止時に行動を起こすことができる。
【0040】
カメラシステムは、例えば、グレートバーの数、グレートバー間の間隙の数、各グレートバーの幅、各グレートバーの領域(area)、各グレートバーの角度方向、各グレートバーの間隙の幅、各間隙の全領域、バルク材料によってブロックされた間隙の全領域を監視するように構成される。更に、カメラシステムは、各車輪の領域、各圧力ローラーの領域、側壁上部の領域、側壁底部の領域、および各ヘッドプレート(head plate)の領域を監視するように構成される。
【0041】
格子床について、後者は、別々のセクション(区画)、例えば4つのセクションに分けられ、グレートバーおよび間隙の状態は、そのような各々のセクション毎に個別に取り込まれる。
【0042】
移床機で、摩耗によって損傷する恐れが最も高い部分は格子床である。したがって、メンテナンスを最も必要とする要素は、一般的にグレートバーである。芯ずれしたグレートバーと欠落したグレートバーにより、隣接するグレートバーの間に大きな間隙ができる。このような間隙により、バルク材料が格子床を通って落下し得ることになる。このことはバルク材料の損失の原因になるだけでなく、熱いプロセスガスのための優先流路の恐れ、パレット車と移床機の部分の過熱、バルク材料の熱処理の効率の損失の原因になる。
【0043】
バルク材料は、隣接するグレートバー間の間隙に詰まるようになり得る。一般的には、このような詰まった材料は、パレット車から材料が排出されたときに解放される。しかしながら、バルク材料が解放されない場合、詰まったバルク材料の蓄積が生じ、これは、格子床を通るプロセスガスの流れに悪影響を及ぼし、したがってバルク材料の熱処理の効率に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0044】
本システム及び方法は、例えば、グレートバーの数、間隙数、グレートバーの幅、グレートバーの領域(area)、グレートバーの方向の角度、グレートバー間の間隙の幅、各間隙の総領域(area)、バルク材料によってブロックされた間隙の総領域など、格子床の状態を連続的に監視する。これらのパラメータは、格子床の状態の評価を可能にする。
【0045】
本システムは、これらのパラメータに基づいて、さまざまな障害を同定できる。それは、その他では、欠落したグレートバーの数、グレートバーの平均幅、事前に定義された閾値を下回る幅を有するグレートバーの数、所定の幅を超える幅を持つ間隙の数、ブロックされた間隙の程度(degree)、劣化を伴うグレートバーの数を同定することができる。
【0046】
それらに基づいて、パレット車に対して障害の重要性が同定され、かつ保存される。このように、本システムは各パレット車の状態を継続的に更新し、メンテナンス要件の必要性の順序でパレット車を分類することができる。明らかに、いくつかの障害は他のものよりも重要であり、したがって意思決定における異なる重み付けを持つ。例えば、グレートバーが欠落することは、多数のグレートバーが芯ずれするよりも重要な障害である。
【0047】
ほとんどの障害はパレット車の格子床に関連しているが、パレット車の他の部分のメンテナンスが必要な場合がある。このために、カメラシステムは、車輪の領域;圧力ローラーの領域、側壁の上部と下部の部分及び/又はヘッドプレートの領域、を監視する。実際、これらの部分も損傷し、迅速なメンテナンスが必要になる可能性がある。これらのパラメータに基づいて、本システムは、欠落又は損傷した車輪、欠落又は損傷した圧力ローラー、欠落又は損傷した(上部及び/又は底部)側壁、欠落又は損傷したヘッドプレートなどの障害を同定することができる。側壁の欠落や車輪の欠落など、これらの障害の一部は特に重要であり、判定を行うに当たり、より高い重み付けが割り当てられる。このような障害は、このような障害が出現しているパレット車を修理または交換するために、次の定期メンテナンス停止の前であっても、設備の停止を必要とする。
【0048】
異なる障害の正確な重み付けは、本システムによって監視される特定の移床機に依存する可能性がある。したがって、それらはオペレータが設定できる変数である。
【0049】
なお、本システムは、早期に障害を同定し、パレット車がカメラシステムを通過するたびに取り込まれた過去の画像に基づいて、劣化度合(the rate of deterioration)を監視することを目的とするものである。劣化度合を監視することにより、障害が重大になる前に、損傷した部分を何時交換しなければならないか予測できる。それから、メンテナンス作業をそれに応じてスケジュールできる。定期メンテナンス停止時に修理が最も必要なパレット車のメンテナンス作業を行うことで、移床機の予定外の緊急停止の回数を減少することができる。