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特許7573598接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化方法および装置
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  • 特許-接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/12 20060101AFI20241018BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20241018BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20241018BHJP
   B01J 29/78 20060101ALI20241018BHJP
   B01J 29/80 20060101ALI20241018BHJP
   B01J 23/888 20060101ALI20241018BHJP
   B01J 27/051 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C10G65/12
C10G45/02
C10G47/00
B01J29/78 M
B01J29/80 M
B01J23/888 M
B01J27/051 M
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022507440
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2020106710
(87)【国際公開番号】W WO2021023172
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】201910715616.X
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鄭均林
(72)【発明者】
【氏名】姜向東
(72)【発明者】
【氏名】宋奇
(72)【発明者】
【氏名】孔徳金
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500859(JP,A)
【文献】特開2012-241174(JP,A)
【文献】米国特許第07271303(US,B1)
【文献】特表2010-532753(JP,A)
【文献】特開平07-062355(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109777514(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105085135(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
C07C 5/367、5/373、15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための方法であって、
接触ディーゼルを第一の反応ゾーンに供給し、水素化精製を行い、第一の流れを得る工程1)、
前記第一の流れを第二の反応ゾーンに供給し、水素化分解を含む選択的転化を行い、第二の流れを得て、任意に、前記第一の流れを、第二の反応ゾーンに供給する前に、第二の分離ゾーンでの不純物の分離に供する工程2)、
前記第二の流れを第一の分離ゾーンに供給し、第一の分離を行い、該第一の分離ゾーンの底部で、炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素を含む第三の流れを得る工程3)、
前記第三の流れを後飽和選択的反応ゾーンに供給し、水素化飽和を行い、低温低圧条件下で、高選択性水素化飽和を行い、1つの芳香族環が留保された産物を得て、第四の流れを得る工程4)であって、
前記後飽和選択的反応ゾーンのための反応条件は、水素対油の体積比は200~3000Nm/mであり、および
前記後飽和選択的反応ゾーンの反応器入口温度は100~280℃であり、および
水素分圧は1.0~4.0MPaであり、および
空間速度は0.1~5.0時間-1である、前記工程4)、および、
前記第四の流れを前記第二の反応ゾーンへ再循環する工程5)を含む、方法。
【請求項2】
前記第三の流れに加え、前記工程3)では、ベンゼン、トルエン、キシレンの少なくとも1つを含むC~Cの芳香族炭化水素流れと、Cの芳香族炭化水素およびC10の芳香族炭化水素を含む流れとを含む留分をさらに得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程2)では、前記第一の流れに対して、気液分離および硫化水素ストリッピングを含む前記不純物の分離を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程3)では、前記第二の流れの第一の分離は、気液分離および精留を含み、
前記精留は、脱ペンタン、脱ヘプタン、脱キシレン、脱重質芳香族炭化水素を含み、
脱ヘプタンで得られた、ベンゼン-トルエン留分をリッチに含む流れに対して抽出分離を行うことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の反応ゾーンの反応条件は、
水素対油の体積比は500~3000Nm/mであり、および/または、
前記第一の反応ゾーンの反応器入口温度は280~420℃であり、および/または、
水素分圧は5~10MPaであり、および/または、
空間速度は0.5~2.0時間-1であることを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程2)では、前記選択的転化は選択的転化触媒の存在下で行われ、前記選択的転化触媒は重量部で、
a2)5~80部の固体酸ゼオライト、
b2)0.05~8部のVIII族金属、
c2)3~25部のVIB族金属酸化物、
d2)0.1~2部のVIB族金属硫化物、および
e2)20~95部の第一のバインダーを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記固体酸ゼオライトは、モルデナイト、β‐ゼオライト、ZSMゼオライト、EU-1ゼオライト、SAPOゼオライトおよびYゼオライトのうちの少なくとも一つであり、
前記VIII族金属は、白金、パラジウム、コバルト、ニッケルおよびイリジウムのうちの少なくとも一つであり、
前記VIB族金属酸化物は、酸化モリブデンおよび酸化タングステンのうちの少なくとも一つであり、
前記VIB族金属硫化物は、硫化モリブデンおよび硫化タングステンのうちの少なくとも一つであり、
前記第一のバインダーは、アルミナ、シリカ-アルミナ複合体、酸化チタン-アルミナ複合体および酸化マグネシウム-アルミナ複合体のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の反応ゾーンの反応条件は、
水素対油の体積比は800~5000Nm/mであり、および/または、
前記第二の反応ゾーンの反応器入口温度は280~450℃であり、および/または、
水素分圧は5~10MPaであり、および/または、
空間速度は0.5~2.0時間-1であることを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程4)では、前記水素化飽和は後飽和選択触媒の存在下で行われ、前記後飽和選択触媒は重量部で、
a3)10~90部の、シリカ含有量が3~20wt%である無定形のシリカ・アルミナ、
b3)0.1~5.0部のVIII族金属、および、
c3)5~80部の第二のバインダーを含み、
前記VIII族金属は、白金、パラジウム、コバルト、ニッケルおよびイリジウムのうちの少なくとも一つであり、
前記第二のバインダーはアルミナから選ばれることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記後飽和選択的反応ゾーンの反応条件は、
水素対油の体積比は300~1500Nm/mであり、および/または、
前記後飽和選択的反応ゾーンの反応器入口温度は120~280℃であり、および/または、
水素分圧は1.2~3.0MPaであり、および/または、
空間速度は0.5~4.0時間-1であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実施するための、接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための装置であって、
前記接触ディーゼルを受け入れ、第一の流れを排出する、水素化精製のための第一の反応ゾーン、
前記第一の流れを受け入れ、第二の流れを排出する、選択的転化のための第二の反応ゾーン、
前記第二の流れを受け入れ、底部で前記第三の流れを排出する第一の分離ゾーン、
前記第三の流れを受け入れ、第四の流れを排出する、水素化飽和のための後飽和選択的反応ゾーン、および、
前記第四の流れを前記第二の反応ゾーンへ再循環させる第一の管路を含む、装置。
【請求項12】
前記第一の反応ゾーンの反応器は固定床反応系であり、および/または、
前記第二の反応ゾーンの反応器は固定床反応系であり、および/または、
前記後飽和選択的反応ゾーンの反応器は固定床反応系であることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第一の反応ゾーンの固定床反応系は水素循環系が設けられ、および/または、
前記第二の反応ゾーンの固定床反応系は水素循環系が設けられ、および/または、
前記後飽和選択的反応ゾーンの固定床反応系は、水素循環系が設けられていない液相水素化反応系であることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第一の分離ゾーンは、
ベンゼン-トルエン流れ、キシレン流れ、C芳香族炭化水素およびC10芳香族炭化水素を含む流れならびに前記炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素を含む第三の流れを含む留分を順次分離するための、任意に順次連結された気液分離器および精留塔を含み、
前記精留塔は、任意に順次連結された脱ペンタン塔、脱ヘプタン塔、キシレン塔および重質芳香族炭化水素塔を含むことを特徴とする、請求項11~13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記第一の分離ゾーンは、
脱ヘプタン塔を含み、且つ
その下流でベンゼン-トルエン留分抽出装置を含み、脱ヘプタン塔で分離された、ベンゼン-トルエン留分をリッチに含む流れに対して分離を行うことを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第一の反応ゾーンと前記第二の反応ゾーンとの間に、硫化水素およびアンモニアを含む、前記第一の流れにおける不純物を分離するための第二の分離ゾーンが設けられ、
前記第二の分離ゾーンは、前記第一の流れを受け入れ、気相、硫化水素とアンモニアの流れ、および、不純物が分離された第一の流れを排出することを特徴とする、請求項11~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記第二の分離ゾーンは気液分離器およびストリッピング装置を含むことを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、石油の接触分解の分野における軽質芳香族炭化水素の調製に関し、特に、接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための方法および装置に関する。
【0002】
〔背景技術〕
ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の軽質芳香族炭化水素は、基礎有機化学の重要な原料であり、合成材料等の分野で広く使用されており、経済発展および国民の日常生活に密接に関連している。現在、芳香族炭化水素は主に2つのプロセスから得られ、1つは、ナフサに対して接触改質を行い、芳香族炭化水素を抽出し、芳香族炭化水素原料を得るプロセスであり、もう1つは、エチレン工程の副産物である分解(pyrolysis)ガソリンに対して水素化および抽出を行い、芳香族炭化水素原料を得るプロセスである。
【0003】
接触ディーゼル(light cycle oil;LCO)は、主な成分がC11 +アルキルベンゼンおよび縮合環芳香族炭化水素である。縮合環芳香族炭化水素を大量に含むという理由で、接触ディーゼルによって加工されたディーゼルは経済性が悪く、一部の企業では燃料油としてしか使われない。ディーゼルへの需要増加が緩やかになるなか、水素化分解反応により接触ディーゼルを軽質芳香族炭化水素に転化し、精製および転化により、芳香族炭化水素産業のコスト削減および利益向上を実現する効率的な転化技術の開発が緊急を要する。
【0004】
現在、一般に使用されている接触ディーゼルの改質手段は、水素化精製、水素化改質および軽質油の水素化分解を含む。接触ディーゼルの水素化精製は、中圧、低圧の条件下で、オレフィンの水素化飽和、脱硫、脱窒および芳香族炭化水素の部分的な飽和を行うことを含み、色および安定性を改善できる。しかし、低品質な原料を加工する触媒装置から得られた接触ディーゼルは、水素化精製を経ても、製品のセタン値が要求を満たすことができない。UOP社のユニクラッキング法(米国特許第5026472号)等の水素化改質法は、標的産物が高セタン値のディーゼルである。該方法は、芳香族炭化水素の水素化飽和性能および開環選択性が良好であり、芳香族炭化水素の転化レベルが高く、セタン値の向上幅およびディーゼル収率が高い。軽質油の水素化分解は、軽質ディーゼル成分に対して精製を行った後、激しい飽和水素化を行い、改質されたナフサ留分またはガソリン留分を得るが、この方法は、原料を芳香族炭化水素に転化する場合の収率が低いという問題が存在する。ナフサ留分を芳香族炭化水素原料の改質に用いる場合、過飽和後に生成されたシクロアルカンおよびパラフィンを、改質装置中で芳香族炭化水素に転化する必要があるため、経済的な方法ではない。例えば、CN101684415に記載の軽質油の水素化分解の方法は、直接に芳香族炭化水素を生成しないため、重質ナフサにおける芳香族の最大可能含有量は57%に過ぎない。
【0005】
文献CN1955262Aに開示された二段階水素化分解法では、水素化分解触媒は、Ptおよび/Pdを含む貴金属、非貴金属、Yゼオライト、および、アルミナを含み、原料は接触ディーゼルである。しかし、該方法では、ナフサ産物の芳香族の最大可能含有量は76.8%にすぎず、芳香族炭化水素の純度が低いため、芳香族炭化水素統合装置の要求を満たすことができない。文献CN103897731Aには、接触分解ディーゼルとC10以上の留分油とを混合して軽質芳香族炭化水素を調製するための方法が開示されている。水素化精製および水素化分解により、産物を区分し、195℃よりも高い留分をクリーンなディーゼルの配合成分として使用し、195℃よりも低い留分を芳香族炭化水素装置に供給し、軽質芳香族炭化水素とクリーンなガソリンの配合成分とを生成するが、芳香族炭化水素産物の収率が比較的に低い。
【0006】
従来の接触ディーゼルの転化技術では、重質テールオイルは、ディーゼル成分として外部へ排出され、または、部分的に水素化精製反応器へ再循環されるが、軽質芳香族炭化水素を増産させるためにその全量を有効に利用することができない。
【0007】
さらに、金属硫化物タイプの水素化精製触媒に基づいた水素化精製反応は、高温高圧の厳格な操作条件下で行う必要があり、熱力学的バランスにより反応が制限され、縮合環芳香族炭化水素の部分的な飽和反応の選択性が悪いため、LCOに対して水素化精製を行った後、芳香族炭化水素の留保率が90%未満である。接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を生産する場合、重質テールオイルにおける多環芳香族炭化水素含有量が90%を超え、硫黄および窒素の含有量が少なく、水素化精製反応器に再循環して処理を行う場合、過飽和および芳香族炭化水素の損失という問題が起こり得る。
【0008】
〔発明の概要〕
従来の技術課題について、本発明者らは、一連の研究を行い、接触ディーゼル流れに対して、水素化精製および不純物の分離を行うことができ、その後、水素化分解を含む選択的転化反応を行うことができ、得られた混合芳香族炭化水素を、ベンゼン-トルエン、キシレン、C芳香族炭化水素およびC10芳香族炭化水素を含む流れ、および、炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素をリッチに含む塔底重質テールオイルに順次分離することができ、塔底重質テールオイルを後飽和選択的反応器に供し、低温低圧の条件下で高選択性水素化飽和を行い、1つのベンゼン環を有する産物を得た後、選択的転化反応に供することにより、接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を生産するための全留分転化を実現でき、軽質芳香族炭化水素の良好な収率が得られることを発見した。
【0009】
本発明に係る軽質芳香族炭化水素は、炭素数10以下の芳香族炭化水素であり、例えば、ベンゼン等のC6芳香族炭化水素、トルエン等のC7芳香族炭化水素、エチルベンゼン、キシレン等のC8芳香族炭化水素、メチルエチルベンゼン、プロピルベンゼン、トリメチルベンゼン等のC9芳香族炭化水素、テトラメチルベンゼン、ジメチルエチルベンゼン、ジエチルベンゼン等のC10芳香族炭化水素等を含む。一方、本発明の前記炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素は、炭素数が10を超える芳香族炭化水素である。
【0010】
本発明の一つの目的は、接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化方法を提供することである。
【0011】
本発明の前記接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化方法は、
接触ディーゼルを第一の反応ゾーンに供給し、水素化精製を行い、第一の流れを得る工程1)、
前記第一の流れを第二の反応ゾーンに供給し、選択的転化を行い、第二の流れを得て、任意に、前記第一の流れを第二の反応ゾーンに供給する前に、第二の分離ゾーンで、前記第一の流れの不純物の分離を行う工程2)、
前記第二の流れを、第一の分離ゾーンにおいて第一の分離に供し、該第一の分離ゾーンの底部で炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素を含む第三の流れを得る工程3)、
前記第三の流れを後飽和選択的反応ゾーンに供給し、水素化飽和を行い、第四の流れを得る工程4)、および、
前記第四の流れを前記第二の反応ゾーンへ再循環する工程5)を含む。
【0012】
例示的な一実施形態では、本発明は、
接触ディーゼルを、水素化精製反応を行うための第一の反応ゾーンに供給し、水素の存在下で、水素化精製触媒と接触させ、第一の流れを得る工程1)、
前記第一の流れに対して、不純物の除去を行った後、第二の反応ゾーンに供給し、水素の存在下で、水素化分解反応を含む選択的転化の触媒と接触させ、第二の流れを得る工程2)、
前記第二の流れに対して分離を行った後、C~C芳香族炭化水素流れと、C芳香族炭化水素およびC10芳香族炭化水素を含む流れと、炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素を含む第三の流れとを得る工程3)、
前記第三の流れを、水素化飽和反応により行われる後飽和選択の反応ゾーンに供給し、水素の存在下で、後飽和選択触媒と接触させ、第四の流れを得る工程4)、
前記第四の流れを前記第二の反応ゾーンへ再循環する工程5)を含む、接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化方法を提供する。
【0013】
本発明の一態様によれば、本発明の前記方法の工程1)では、原料油である前記接触ディーゼルに対して、水素の存在下で、第一の反応ゾーンで水素化精製を行い、接触ディーゼル流れおよび水素を、水素化精製触媒と接触させ、脱硫および脱窒を行い、1つの芳香族環が留保された多環芳香族炭化水素の選択的飽和反応を行う。前記水素化精製は、本分野で公知の任意の形態および方法で行われることができ、特に限定されず、前記接触ディーゼル燃料の脱硫および脱窒を実現し、多環芳香族炭化水素の水素化飽和を行い、1つの芳香族環が留保されればよい。接触ディーゼルの水素化精製後に得られた第一の流れは、大部分の硫黄および窒素等の不純物が除去された精製接触ディーゼルと、硫化水素およびアンモニアを含む気相とを主に含む。
【0014】
本発明の前記方法の工程1)では、原料油である接触ディーゼルおよび水素を、第一の反応ゾーンで水素化精製触媒と接触させ、水素化精製反応を行う。
【0015】
前記水素化精製反応は、本分野で周知の接触ディーゼル水素化精製技術である。水素化精製反応条件は本分野で知られている接触ディーゼル水素化精製の反応条件を用いることができ、前記水素化精製触媒は、本分野で公知の任意の種類の水素化精製触媒を用いることができ、工程1)の接触ディーゼルの水素化精製の目的を達成できればよい。
【0016】
本発明の前記方法の工程1)では、第一の反応ゾーンの水素化精製の反応条件は、好ましくは、水素対油の体積比が500~3000Nm/mであり、好ましくは800~2000Nm/mであり、より好ましくは1000~1500Nm/mであり、
反応器入口温度は280~420℃であり、好ましくは300~410℃であり、より好ましくは310~390℃であり、
水素分圧は5~10MPaであり、好ましくは5~8MPaであり、より好ましくは6~7MPaであり、および/または、
空間速度は0.5~2.0時間-1であり、好ましくは0.6~1.5時間-1であり、より好ましくは0.8~1.2時間-1であることを含む。
【0017】
本発明の方法では、工程1)の水素化精製触媒は、好ましくは、重量部で、前記担体と前記水素化金属酸化物との合計重量部に基づいて、a1)60~99.9部、好ましくは65~99.9部、好ましくは70~99.9部、より好ましくは75~99.9部の担体、および、b1)0.1~40部、好ましくは0.1~35部、好ましくは0.1~30部、より好ましくは0.1~25部の水素化金属酸化物を含む。
【0018】
例示的な一実施形態では、重量部で、前記アルミナと前記シリカとの合計重量部に基づいて、前記担体は、60~100部のアルミナ、0~40部のシリカを含む。
【0019】
例示的な一実施形態では、前記水素化金属は、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステンおよび鉄からなる群より選ばれる少なくとも1つである。前記水素化金属は担持された後に硫化される。
【0020】
本発明の前記水素化精製触媒は、本分野で知られている任意の方法で調製でき、例えば、担体は、本分野で公知の押出、ローリングまたはオイルカラム成形等の方法で調製できる。一実施形態では、触媒は、担体を成形させた後、金属に浸漬させる方法で調製できる。
【0021】
好ましくは、工程1)の前記水素化精製で得られた第一の流れに対して、不純物の分離を行い、第一の流れに含まれた硫化水素およびアンモニア等の不純物を分離した後、不純物の分離された第一の流れを第二の反応ゾーンに供給する。前記不純物の分離は、好ましくは、気液分離および硫化水素ストリッピングを含むことにより、硫化水素およびアンモニア等の不純物の液相が分離された、前記不純物の分離された第一の流れを得られる。より具体的には、例えば、アンモニアを洗い流すために気相に水を注入して気液分離を行う方法、液相ストリッピングにより硫化水素を除去する方法等の本分野の通常の分離技術を用いることができる。
【0022】
本発明の一態様によれば、本発明の前記方法の工程2)では、不純物の分離された第一の流れに対して、水素の存在下で、第二の反応ゾーンで、水素化分解を含む反応により、選択的転化を行う。例えば、前記選択的転化は、水素化分解反応を含み、水素化精製で得られた第一の流れに対して選択的転化を行い、第二の流れを得る。工程2)で得られた第二の流れは、乾燥ガス(メタンおよびエタンを含む)、C~C軽質炭化水素、ベンゼン-トルエン留分、キシレン留分、C~C10留分および重質テールオイルを主に含む。工程2)中の選択的転化の一つの目的は、第一の流れにおける重質芳香族炭化水素中の多環芳香族炭化水素の1つの芳香族環を留保することを前提として、水素化分解を行い、飽和度および開環位置を効率的に制御し、同時に、第一の流れ中の高分子非芳香族炭化水素を異性化させ、接触分解させ、経済的な水素消費で、軽質芳香族炭化水素を最大限に生産することである。本工程の選択的転化反応は、水素化反応の本分野で公知の任意の方法によって行うことができ、前記第一の流れに対して、選択的転化を行い、前記第二の流れを得られればよい。
【0023】
本発明の方法では、前記工程2)の第二の反応ゾーンの反応条件は、本分野の通常の水素化分解反応の反応条件を用いることができる。
【0024】
本発明では、前記第二の反応ゾーンの反応条件は、好ましくは、水素対油の体積比が800~5000Nm/mであり、好ましくは1000~4000Nm/mであり、より好ましくは1500~3000Nm/mであり、
反応器入口温度は280~450℃であり、好ましくは300~430℃であり、より好ましくは310~400℃であり、
水素分圧は5~10MPaであり、好ましくは5~9MPaであり、より好ましくは6~8MPaであり、および/または、
空間速度は0.5~2.0時間-1であり、好ましくは0.6~1.5時間-1であり、より好ましくは0.8~1.2時間-1であることを含む。
【0025】
前記工程2)中の選択的転化触媒は、本分野で知られている任意の種類の水素化分解触媒を用いることができ、前記工程2)の目的を達成できればよい。
【0026】
本発明の前記第一の流れから第二の流れへの転化を効率的に達成するために、本発明の前記選択的転化触媒は、好ましくは、中国特許出願ZL201810153543.5に記載された触媒である。中国特許出願ZL201810153543.5の全文は参照として本明細書で援用される。
【0027】
具体的には、好適な選択的転化触媒は、重量部で、触媒の合計重量部に基づいて、a2)5~80部の固体酸ゼオライト、b2)0.05~8部のVIII族金属、c2)3~25部のVIB族金属酸化物、d2)0.1~2部のVIB族金属硫化物、および、e2)20~95部の第一のバインダーを含む。本発明の前記選択的転化触媒は、前記主成分の他に、珪素土、活性白土等の、本分野の触媒で一般的に使用される他の助剤を通常の使用量で含んでもよい。
【0028】
好ましくは、前記固体酸ゼオライトは、モルデナイト、β‐ゼオライト、ZSMゼオライト、EU-1ゼオライト、SAPOゼオライトおよびYゼオライトのうちの少なくとも1つである。
【0029】
好ましくは、前記固体酸ゼオライトの結晶子直径は500nm未満であり、好ましくは400nm未満であり、より好ましくは300nm未満であり、より好ましくは200nm未満である。
【0030】
好ましくは、前記固体酸ゼオライトのシリコン-アルミニウムモル比は10~500であり、好ましくは10~200であり、より好ましくは11~80であり、より好ましくは20~60である。
【0031】
好ましくは、前記VIII族金属は、白金、パラジウム、コバルト、ニッケルおよびイリジウムのうちの少なくとも1つである。
【0032】
好ましくは、前記VIB族金属の酸化物は、酸化モリブデンおよび酸化タングステンのうちの少なくとも1つである。
【0033】
好ましくは、前記VIB族金属の硫化物は、硫化モリブデンおよび硫化タングステンのうちの少なくとも1つである。
【0034】
好ましくは、前記第一のバインダーは、アルミナ、シリカ-アルミナ複合体、酸化チタン-アルミナ複合体、および、酸化マグネシウム-アルミナ複合体のうちの少なくとも1つである。
【0035】
本発明の前記選択的転化触媒は、本分野で知られている任意の方法で調製でき、例えば、担体は、本分野で公知の押出、ローリングまたはオイルカラム成形等の方法で調製できる。一実施形態では、触媒は、担体を成形した後、金属に浸漬させる方法で調製できる。一実施形態では、前記選択的転化触媒は、固体酸ゼオライトと第一の接着剤とを混合し、その後、混練し、押出し、60~150℃でベーキングし、500~600℃の空気雰囲気中で3~6時間焙焼し、所期の触媒担体を得る工程、VIII族金属化合物とVIB族金属化合物とで複合金属水溶液を調製し、等体積浸漬法により、前記溶液によって触媒担体を浸漬させ、60~150℃でベーキングし、その後、450~520℃の空気雰囲気中で1~4時間焙焼し、触媒前駆体を得る工程、および、触媒前駆体を、水素の存在下で、400~500℃に還元し、温度を2~24時間維持し(予備還元)、その後、300~380℃に冷却し、加硫剤を注入し、4~24時間加硫し、所期の水素化分解触媒を得る工程を含む方法で調製できる。
【0036】
本発明の一態様によれば、本発明の方法の工程3)では、前記第二の流れに対して、第一の分離ゾーン中で第一の分離を行い、少なくともベンゼン、トルエン、キシレン等の留分を含む、前記C~C芳香族炭化水素の流れを得る。
【0037】
本発明の方法は、前記工程3)では、第二の流れの第一の分離は、好ましくは、第二の流れに対して、気液分離および精留を行うことを含み、さらに、好ましくは、精留で得られたベンゼン-トルエン留分に対して、抽出分離を行う。
【0038】
具体的には、前記第二の流れは、気液分離を経て、乾燥ガスおよび液相が分離され、乾燥ガスを排出し、脱ペンタンを行うために、液相を脱ペンタン塔へ供する。脱ペンタンにより、外へ排出されるC3~C5の軽質炭化水素留分および脱ペンタン塔の塔底流れが分離される。該脱ペンタン塔の塔底流れを脱ヘプタン塔に供し、脱ヘプタン塔により、ベンゼン-トルエン留分をリッチに含む流れおよび脱ヘプタン塔の塔底流れが分離される。該脱ヘプタン塔の塔底流れをキシレン塔に供し、キシレン塔により、混合キシレン産物と、キシレンが除去された底部の流れとが分離される。該キシレンが除去された底部の流れに対して脱重質芳香族炭化水素を行い、脱重質芳香族炭化水素により、外へ排出されるC9~C10および底部から分離された第三の流れが分離される。前記第三の流れは、炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素を含む重質テールオイルである。該重質テールオイルを後飽和選択的反応器に供する。以上の脱ヘプタン塔により、ベンゼン-トルエン留分をリッチに含む流れが分離され、好ましくは、該流れに対して、抽出を行い、純粋なベンゼン-トルエン混合芳香族炭化水素を得て、抽出分離された非芳香族炭化水素を排出する。以上の気液分離および精留は、本分野で通常使用される抽出および精留方法により行われる。前記選択的転化で得られた第二の流れに対して分離を行い、得られた第三の流れ中の芳香族炭化水素の含有量は、好ましくは、非芳香族炭化水素の含有量よりも高い。本発明の第三の流れは、さらに好ましくは、その芳香族炭化水素の含有量が80wt%以上であり、最も好ましくは90wt%以上である。
【0039】
本発明の一態様によれば、本発明の方法の前記工程4)では、工程3)で得られた炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素を含む第三の流れに対して、後飽和選択的反応ゾーンで、水素の存在下で、低温低圧の条件下で高選択性水素化飽和反応を行い、1つのベンゼン環を有する産物を得て、該産物を含む第四の流れ、つまり、留点が210℃を超える留分を得る。前記水素化飽和は本分野で知られている通常の任意の方法で行われることができ、前記後飽和選択的反応の効果を達成できればよい。
【0040】
本発明の方法の前記工程4)の後飽和選択的反応ゾーンの水素化飽和は、好ましくは、液体水素化反応であることにより、工程が簡略化され、設備が削減され、エネルギー消費量が節減される。反応条件は、本分野の通常の水素化飽和反応の反応条件とすることができ、好ましくは、水素対油の体積比は200~3000Nm/mであり、好ましくは300~1500Nm/mであり、より好ましくは300~1000Nm/mであり、反応器入口温度は100~300℃であり、好ましくは120~280℃であり、より好ましくは150~250℃であり、水素分圧は1.0~4.0MPaであり、好ましくは1.2~3.0MPaであり、および/または、空間速度は0.1~5.0時間-1であり、好ましくは0.5~4.0時間-1であり、より好ましくは0.6~2.0時間-1であることを含む。
【0041】
前記工程4)では、後飽和選択的反応ゾーンで、第三の流れを後飽和選択触媒と接触させ、水素化飽和反応を行い、前記後飽和選択触媒は、例えば、中国特許CN103041832Aに開示された芳香族炭化水素の水素化飽和触媒等、本分野で公知の水素化飽和触媒を用いることができ、前記工程4)の水素化飽和の目的を達成できればよい。
【0042】
本発明の前記工程4)の後飽和選択触媒は、重量部で、無定形のシリカ・アルミナ、VIII族金属および第二のバインダーの合計重量に基づいて、a3)10~90部の、シリカの含有量が3~20wt%である無定形のシリカ・アルミナ、b3)0.1~5.0部のVIII族金属、c3)5~80部の第二のバインダーを含み得る。
【0043】
一実施形態では、前記VIII族金属は、白金、パラジウム、コバルト、ニッケルおよびイリジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0044】
一実施形態では、前記第二のバインダーはアルミナから選ばれる。
【0045】
本発明の前記後飽和選択触媒は、本分野で知られている任意の方法で調製でき、例えば、担体は、本分野の押出、ローリングボールまたはオイルカラム成形等の方法で調製できる。一実施形態では、触媒は、担体を成形させた後、金属に浸漬させる方法で調製できる。
【0046】
前記接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化方法では、原料油である接触ディーゼルは、本分野の接触分解装置から得ることができ、初留点が160~210℃である。前記接触ディーゼルは、その組成が特に限定されず、産地の異なる原油に由来する接触ディーゼルであってもよく、同一の組成を有するとは限らない。一例として、前記接触ディーゼルは、パラフィン、シクロアルカン、オレフィン、硫黄含有炭化水素類、窒素含有炭化水素類、C11+アルキルベンゼンおよび多環芳香族炭化水素等の組成を主に含む。とりわけ、C11+アルキルベンゼンの含有量が10~40wt%であり、多環芳香族炭化水素の含有量が15~50wt%であり、硫黄の含有量が200~15000wtppmであり、窒素の含有量が100~1500wtppmであり、その他は高沸点アルカン、シクロアルカンおよびオレフィンである。
【0047】
本発明の他の目的は、前記接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化方法の装置を提供することである。
【0048】
本発明の前記接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための装置は、
前記接触ディーゼルを受け入れ、第一の流れを排出する、水素化精製のための第一の反応ゾーン、
前記第一の流れを受け入れ、第二の流れを排出する、選択的転化(水素化分解を含む)のための第二の反応ゾーン、
前記第二の流れを受け入れ、底部で前記第三の流れを排出する第一の分離ゾーン、
前記第三の流れを受け入れ、第四の流れを排出する、水素化飽和のための後飽和選択的反応ゾーン、および、
前記第四の流れを前記第二の反応ゾーンへ再循環させる第一の管路を含む。
【0049】
一実施形態では、前記接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための装置は、
前記接触ディーゼルを受け入れ、第一の流れを排出する第一の反応ゾーン、
前記第一の流れを受け入れ、第二の流れを排出する第二の反応ゾーン、
前記第二の流れを受け入れ、前記C~C芳香族炭化水素流れと、C芳香族炭化水素およびC10芳香族炭化水素を含む流れと、炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素を含む第三の流れとを排出する第一の分離ゾーン、
前記第三の流れを受け入れ、第四の流れを排出する後飽和選択的反応ゾーン、および、
前記第四の流れを前記第二の反応ゾーンへ再循環させる第一の管路を含む。
【0050】
具体的には、一実施形態では、本発明の装置の一実施形態では、第一の反応ゾーンには、水素化精製装置が設けられ、その水素化精製反応器は固定床反応系である。具体的には、本分野で知られている固定床反応系を用いることができ、水素再循環系が設けられた固定床反応系がより好ましい。前記水素化精製反応器の入口温度は250~450℃であってもよい。
【0051】
本発明の装置の一実施形態では、第二の反応ゾーンには、選択的転化のための水素化分解反応装置が設けられ、その水素化分解反応器は固定床反応系である。具体的には、本分野で知られている固定床反応系を用いることができ、水素再循環系が設けられた固定床反応系がより好ましい。前記選択的転化(水素化分解)反応器の入口温度は280~450℃であってもよい。
【0052】
本発明の装置の一実施形態では、後飽和選択的反応ゾーンには、水素化飽和装置が設けられ、その後飽和選択的反応器は固定床反応系であり、より好ましくは、水素再循環系が設けられていない液相水素化固定床反応系である。具体的には、本分野で知られている固定床反応系を用いることができる。後飽和(水素化飽和)反応器の入口温度は、100~300℃であり、水素分圧は1.0~4.0MPaである。
【0053】
本発明の装置の一実施形態では、第一の分離ゾーンは、任意に順次連結された気液分離器、精留を含み、前記精留塔は、好ましくは、任意に順次連結された脱ペンタン塔(第一の精留塔)、脱ヘプタン塔(第二の精留塔)、脱キシレン塔(第三の精留塔)および脱重質芳香族炭化水素塔(第四の精留塔)を含むことにより、ベンゼン-トルエン留分をリッチに含む流れ、キシレン流れ、前記C芳香族炭化水素およびC10芳香族炭化水素を含む流れ、並びに、前記炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素を含む第三の流れを含む留分を順次分離する。
【0054】
さらに、好ましくは、前記第二の流れは、気液分離器に供給されて、乾燥ガスおよび液相流れが分離され、前記液相流れは、脱ペンタン塔に供給されて、塔頂のC3~C5軽質炭化水素流れおよび脱ペンタン塔の塔底流れが分離され、該塔底流れを脱ヘプタン塔に供する。脱ヘプタン塔により、塔頂のベンゼン-トルエン留分をリッチに含む流れおよび脱ヘプタン塔の塔底流れが分離される。前記ベンゼン-トルエン留分をリッチに含む流れは、好ましくは、抽出装置に供給されて、純粋なベンゼン-トルエン混合芳香族炭化水素が分離され、抽出分離された非芳香族炭化水素は外部へ排出される。脱ヘプタン塔底流れをキシレン塔に供給し、混合キシレン産物およびキシレン塔の塔底の流れが直接的に分離される。該キシレン塔の塔底流れを重質芳香族炭化水素塔に供し、塔頂で外部へ排出されるC9~C10が分離され、塔底で第三の流れが分離される。前記第三の流れを後飽和選択的反応器に供する。前記抽出および精留は、いずれも本分野の通常の抽出および精留方法を用いることができる。前記気液分離器、精留塔および抽出装置も本分野の通常の設備を用いることができる。
【0055】
本発明の装置の一実施形態では、第一の反応ゾーンと第二の反応ゾーンとの間に設けられている第二の分離ゾーンは、前記第一の流れ中の硫化物および/または窒化物を含む不純物を分離するために使用される。前記第二の分離ゾーンは、前記第一の流れを受け入れ、且つ、気相、硫化水素とアンモニアとの流れ、および、不純物が分離された第一の流れを排出する。前記第二の分離ゾーンの分離装置は、例えば、気液分離器(気相に水を注入してアンモニアを洗い流す装置を含む)、ストリッピング装置(例えば、液相ストリッピング脱硫化水素装置等のストリッピング塔)等、本分野の通常の分離装置を用いることができる。
【0056】
本発明の方法では、接触分解装置の接触ディーゼル流れに対して、第一の反応ゾーンで水素化精製を行い、接触ディーゼル流れ中の硫黄および窒素等の不純物が除去され、縮合環芳香族炭化水素および多環芳香族炭化水素に対して、選択的水素化飽和反応を行い、テトラヒドロナフタレン、インデンおよびポリアルキルベンゼン等の、1つの芳香族環を有する産物のみが留保されるまで、水素化が行われる。その後、任意に、該流れの不純物が分離された後、該流れを第二の反応ゾーンに供し、選択的転化の水素化分解反応を行い、ベンゼン、トルエン、キシレン、C芳香族炭化水素、C10芳香族炭化水素等の軽質芳香族炭化水素をリッチに含む流れが生成される。その後、産物流れは、ベンゼンよりも軽質な成分が除去された後、ベンゼン-トルエン、キシレン、C芳香族炭化水素、C10芳香族炭化水素および塔底重質テールオイル(重質芳香族炭化水素を主に含む)が順次分離される。塔底重質テールオイルを後飽和選択的反応器に供し、低温低圧条件下で、高選択性水素化飽和を行い、1つの芳香族環が留保された産物を得る。当該産物を第二の反応ゾーンに供し、選択的転化の水素化分解反応を行い、接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化プロセスを実現する。本発明のプロセスによって、軽質芳香族炭化水素の収率が高められ、芳香族炭化水素の損失が低減され、水素消費量が低減される。これにより、従来技術の課題をうまく解決し、芳香族炭化水素産物の産出量を増加させ、良好な技術的効果を達成する。
【0057】
本発明の前記技術案では、第一の反応ゾーンの水素化精製により、接触ディーゼル流れ中の多環芳香族炭化水素の飽和率が50%を超え、硫黄含有量が低減して100ppm未満になり、窒素含有量が低減して15ppm未満になり、終留点が10℃以上低減した。接触ディーゼル流れは、第一の反応ゾーンの水素化精製装置および第二の反応ゾーンの選択的転化装置を順次経て、50%超の転化率で炭素数10以下の単環芳香族炭化水素に転化される。後飽和選択的反応器を経た後、流れの水素化飽和の選択性が高くなり、芳香族炭化水素の留保率は98%を超える。
【0058】
従来技術と比べ、本発明の技術案は、連続的な二段階で用いられる二つの触媒(水素化精製触媒および選択的転化触媒)を用いた水素化精製-選択的転化の2段階プロセスを用い、水素化精製、選択的転化および重質テールオイルの後飽和過程を含む。本発明によって、従来技術における、全留分接触ディーゼルを完全に転化できず、転化過程の軽質芳香族炭化水素収率が高くないという技術課題が解決される。接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製する過程で得られた重質テールオイルを後処理反応器中に供し、緩やかな圧力および温度の条件下で選択的飽和反応を行う。水素化飽和の選択性が98%以上となり大幅に改善され、過剰な水素化飽和の問題も解決される。さらに、過剰な水素化によって生成された非芳香族炭化水素が選択的転化反応器に入って、接触分解反応が行われるために消費される水素量を低減することができる。該方法によれば、接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するためのプロセス全体の技術的および経済的指標が改善され、接触ディーゼルの全留分転化が実現される。水素化精製-選択的転化の2段階プロセスで接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製する従来の技術プロセスと比較すると、本発明では、ベンゼン、トルエン、キシレン並びにCおよびC10等の単環軽質芳香族炭化水素の収率が少なくとも2%以上上昇させることができ、好ましくは5%以上上昇させることができる。
【0059】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明にかかる接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化方法のプロセスを例示的に示すフローチャートである。
【0060】
〔具体的な実施形態〕
以下、具体的な図面および実施例を参照して本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明をさらに説明するためのものであり、本発明の保護範囲を制限するためのものではない。当業者が本発明の内容に基づいて本発明に対して行われる本質でない改良および調整も本発明の保護範囲内にある。
【0061】
本明細書に記載のすべての出版物、特許出願、特許および他の引用文献はその全文が援用され、本明細書に組み込まれる。特に規定されない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を持つ。矛盾する場合、本明細書の定義に準ずる。
【0062】
本明細書では、「当業者に公知」、「従来技術」または類似した用語により、材料、物質、方法、工程、装置または部材等を導入する場合、該用語で導入された対象は、本発明出願時、当分野で通常使用されている内容を含む。しかし、現在一般的に使用されていない内容であっても、将来的に本分野では同様の目的に適用可能な内容は含まれる。
【0063】
本明細書中に開示されるいかなる範囲の端点および値も、当該範囲および数値の厳密な値に限定されず、当該範囲および値に近い値を含むと解釈されるべきである。また、開示される数値範囲については、当該範囲の端点値同士を、端点値と当該範囲内の特定数値とを、または、特定数値同士を任意に組合せることで、1つまたは複数の数値範囲を新たに得ることができる。当該新たな数値範囲も、本明細書に具体的に開示されているものと見做されるべきである。以下、それぞれの技術案を組合せて得られた新たな技術案も本明細書に具体的に開示されているものと見做されるべきである。
【0064】
以下、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は前記実施形態の具体的な詳細に限定されない。本発明の技術構想の範囲内で、本発明の技術案に対して様々な簡単な変形をすることができる。これらの変形はいずれも本発明の保護範囲内にある。
【0065】
なお、矛盾しない限り、以下の具体的な実施形態に記載されている様々な具体的な技術特徴を任意の適切な方法で組合せることができる。不必要な繰返しを回避するために、本発明は、種々の可能な組合せについての説明を省略する。
【0066】
また、本発明の発想に反しない限り、本発明の種々の異なる実施形態を任意に組合せることができる。このように得られた技術案は本明細書のオリジナルな開示内容の一部であり、かつ、本発明の保護範囲内にある。
【0067】
特に説明されない限り、本明細書に記載の圧力はゲージ圧である。
【0068】
特に説明されない限り、本明細書に記載の空間速度は液空間速度LHSVである。
【0069】
特に説明されない限り、重量に基づくことが当業者の通常の認識に背かなければ、本明細書に記載されているすべての百分率、重量部の数、比率等は、何れも重量に基づいている。
【0070】
図1は、本発明にかかる接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための方法の一実施形態のプロセスを例示的に示すフローチャートである。図1において、例えば、ポンプ、圧縮機、熱交換器、抽出装置、水素配管等の複数の通常装置が省略されているが、これらの装置は当業者に周知されている。以下、図1に示すように、本発明の方法の一実施形態の例示的なプロセスについて詳細に説明する。原料油である接触ディーゼル1を第一の反応ゾーン2の水素化精製装置に供給し、硫化水素およびアンモニアを含む水素化精製後の接触ディーゼル、つまり、第一の反応ゾーン出口流れ3(第一の流れ)を得る。第一の流れが第二の分離ゾーン20の気液分離器4および硫化水素ストリッピング塔7に供給され、水素化精製過程中の脱窒および脱硫で得られる硫化水素およびアンモニアを(硫化水素およびアンモニアを含む気相流れ5および硫化水素を含むストリッピング流れ8によって)分離した後、不純物が分離された第一の流れ9を得る。該第一の流れ9を第二の反応ゾーン10の選択的転化装置に供給する。ベンゼン、トルエン、およびキシレン等の軽質芳香族炭化水素、C9AおよびC10Aの留分、並びに重質テールオイルをリッチに含む第二の反応ゾーン出口流れ11(第二の流れ)を第一の分離ゾーン12に供給し、分離を行い、乾燥ガス・C3~C5軽質炭化水素の流れ13、ベンゼン-トルエンの流れ14、キシレンの流れ15、C芳香族炭化水素およびC10芳香族炭化水素を含む流れ16、並びに炭素数が10を超える重質芳香族炭化水素を含む重質テールオイルである第三の流れ17を得る。第三の流れ17を後飽和選択的反応ゾーンの後飽和選択的反応器18に供給し、後飽和選択的反応器出口流れ19(第四の流れ)は分離処理を経ずに、第二の反応ゾーン10の選択的転化装置へ再循環される。
【0071】
具体的には、第一の分離ゾーン12は、順次連結された気液分離器と、脱ペンタン塔と、脱ヘプタン塔と、キシレン塔と、重質芳香族炭化水素塔等の精留塔と、ベンゼン-トルエン留分抽出装置(未図示)とを含む。
【0072】
本発明にかかる触媒の組成は、本分野で知られている分析方法によって分析される。例えば、前記選択的転化触媒の場合、ICP(誘導結合プラズマ)およびXRF(X線蛍光)等の方法で触媒の組成を分析できる。XPS(X線光電子分光)法でVIB族金属酸化物および金属硫化物の組成比を特定できる。ICP測定はVarian 700-ESシリーズXPS装置で行われる。XRF測定はRigaku ZSX 100e型XRF装置で行われる。XPS測定条件は、Mg K励起光源、動作電圧l0kV、電流40mA、および真空度4.0×10-8Paを用いたPerkin Elmer PHI 5000C ESCA型X線光電子分光装置を含む。
【0073】
本発明では、米国LECO社の完全な二次元ガスクロマトグラフィー/高フラックス飛行時間型質量分析計(GC×GC-TOFMS)を用いて、接触ディーゼルおよび水素化精製接触ディーゼルの族組成、並びに、重質テールオイルおよび選択的飽和重質テールオイルの族組成を分析(多次元クロマトグラフィー分析)する。
【0074】
本発明では、ガスクロマトグラフィーによって、反応流れ(例えば選択的転化産物等)の組成を決定する。クロマトグラフィーモデルはAgilent 7890Aであり、FID探知器が備えられ、FFAP毛管クロマトグラフィーカラムで分離を行う。クロマトグラフィーカラムは、プログラムに従って加熱を行い、初期温度が90℃であり、15分間維持し、その後、15℃/分間の速度で220℃まで昇温し、45分間維持する。
【0075】
本発明の方法では、水素化精製および選択的飽和(後飽和)における芳香族炭化水素の留保率は以下の式で算出される。
【0076】
【数1】

【0077】
ベンゼン-トルエン、キシレン、C9A芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素等の単環軽質芳香族炭化水素の収率は以下の式で算出される。
【0078】
【数2】

【0079】
本発明の実施例および比較例の触媒原料は、市販で入手可能である。
【0080】
比較例1
水素化精製-選択的転化の2段階法により、接触ディーゼルを加工する。つまり、原料油である接触ディーゼルに対して水素化精製を行い、不純物を分離した後、水素化分解を行い、その後、水素化分解産物が気液分離および精留を経て、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素、並びに重質テールオイル等の産物を分離によって得た。比較例1のプロセスは、後飽和選択的反応ゾーンにおいて>210℃で重質テールオイルの選択的水素化飽和処理を行う工程を含まない。
【0081】
接触ディーゼル原料および水素化精製産物の分析データを表1に示す。接触ディーゼルの芳香族炭化水素含有量が87.15wt%である。表2は、使用される水素化精製触媒、選択的転化(水素化分解)触媒および反応条件を示す。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
使用される水素化精製触媒A1の調製
100gの擬ベーマイトに、2gのセスバニア粉と、9mlの硝酸と、60mlの水とを添加し、混練して団子状にし、細長く押出し、室温で24時間維持し、100℃で12時間乾燥し、空気雰囲気中で、550℃で3時間焙焼し、水素化精製触媒担体を得た。7.90gの硝酸ニッケル六水和物と、8.71gのモリブデン酸アンモニウムと、9.18gのメタタングステン酸アンモニウムと、10mlのアンモニア水とを水中に溶解して、50mlの透明溶液を得た。前記水素化精製触媒担体50gを、前記50mlの溶液に添加し、等体積浸漬法で3時間浸漬し、110℃で12時間乾燥し、空気雰囲気中で、500℃で4時間焙焼し、水素化精製触媒A1を得た。該触媒A1の組成は、3.0wt%NiO-10.5wt%MoO-12.7wt%WO/73.8wt%Alであり、つまり、ニッケル、モリブデンおよびタングステンの3種類の金属を含む。
【0085】
水素化精製触媒A1を充填した固定床反応器に、0.5%の二硫化炭素を含有するシクロヘキサン溶液を注入し、10℃/hのプログラムに従って、室温から加硫の終点温度360℃まで昇温し、この温度を12h維持し、水素化精製触媒の予備加硫を完了させ、硫化水素化精製触媒A1’を得た。A1’の組成は、3.1wt%NiS-10.2wt%MoS-13.2wt%WS/73.5wt%Alであり、VIB族およびVIII族金属は硫化状態で存在する。
【0086】
接触ディーゼルと水素とを混合させた後、水素化精製反応器に供給し、硫黄および窒素の不純物の大部分を除去し、多環芳香族炭化水素を飽和させ、1つの芳香族環のみを含む炭化水素類に転化させる。表1には、水素化精製産物の硫黄および窒素含有量、密度、芳香族炭化水素類含有量、および留分分布も示される。
【0087】
接触ディーゼルの水素化精製後に得られた第一の流れに対して、気液分離と、窒素ガスを用いた常圧下で3時間のストリッピングとを行う工程を含む不純物の分離を行い、第一の流れに溶解した硫化水素を十分に除去した。水素化精製産物(不純物が分離された液相の第一の流れ)の硫黄含有量および窒素含有量はそれぞれ87ppm、8.6ppmであった。芳香族炭化水素の組成データから計算すると、水素化精製過程における多環芳香族炭化水素の留保率が89.04wt%であることがわかった。
【0088】
表2には、水素化分解のための選択的転化触媒B1の組成、および、使用される反応条件も示される。USYゼオライトとアルミナとを混練し、押出成形後に、選択的転化触媒担体を得た。次に、適量の塩化白金酸を透明溶液に調製し、担体を等体積浸漬法で浸漬後、乾燥し、500℃の空気中で2時間焙焼し、選択的転化触媒の前駆体を得た。水素条件下で該選択的転化触媒の前駆体を450℃まで還元し、所期の選択的転化触媒B1を得た。B1の組成は、0.1部のPt-60部のUSYゼオライト-39.9部のAlである。触媒床層を340℃に冷却し、ストリッピング後の水素化精製産物(不純物が分離された第一の流れ)と水素とを混合し、選択的転化反応器に供給し、反応産物を気液分離系および精留系に供した。
【0089】
気液分離および精留系を経た後、分離により、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素を得た。計算によると、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素等の単環軽質芳香族炭化水素の収率は21.48wt%であった。>210℃の重質テールオイルは、収率が38.27wt%であり、比重が0.935であり、硫黄および窒素の含有量がそれぞれ19.5ppm、1.5ppmであった。多次元クロマトグラフィー分析により、第三の流れの族組成では、非芳香族炭化水素が41.98wt%であり、単環芳香族炭化水素が26.38wt%であり、縮合環芳香族炭化水素が31.64wt%であることがわかった。
【0090】
実施例1
本実施例では、図1に示すフローチャートに従って、接触ディーゼルの全転化を行って軽質芳香族炭化水素を調製した。接触ディーゼルに対して、水素化精製および不純物の分離を行い、次に選択的転化(水素化分解)を行った後、>210℃の重質テールオイルを後飽和選択的反応ゾーンに供給し、選択的水素化飽和処理を行った。具体的には、原料、水素化精製触媒、および、水素化精製反応条件は比較例1と同じであるが、選択的転化触媒B2(水素化分解触媒)および選択的添加の反応条件は表3に示した。
【0091】
【表3】

【0092】
選択的転化触媒B2の組成および使用される反応条件を、表3に示した。
【0093】
前記選択的転化触媒B2は次のように調製される。70wt%のβ-ゼオライト(シリコン-アルミニウムモル比SAR=25)と30wt%のアルミナとを混練し、押出成形して、選択的転化触媒担体を得た。適量の硝酸ニッケルおよびタングステン酸アンモニウムを透明溶液に調製し、等体積浸漬法で前記担体を浸漬後、100℃で乾燥し、500℃の空気中で2時間焙焼し、選択的転化触媒の前駆体を得た。該選択的転化触媒の前駆体を水素の存在下で450℃に還元し、還元時間は4時間であり、330℃に冷却した後、ジメチルジスルフィドを4時間注入して加硫し、所期の選択的転化触媒B2を得た。触媒の総重量を100部とすると、触媒B2の組成は、3.5部のNi-5.0部のWO-0.27部のWS-50部のβゼオライト-41.23部のAlである。
【0094】
接触ディーゼルの水素化精製後に得られた第一の流れに対して、不純物の分離を行った。前記第一の流れを気液分離に供し、常圧下で、窒素ガスで第一の流れを3時間ストリッピングし、第一の流れに溶解した硫化水素を十分に除去した。ストリッピング後の水素化精製産物(不純物が分離された第一の流れ)と水素とを混合し、選択的転化反応器に供給し、反応産物を気液分離および精留系に供した。
【0095】
気液分離および精留系を経た後、分離により、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素を得た。計算によると、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素等の単環軽質芳香族炭化水素の収率は32.27wt%であった。>210℃の重質テールオイル(第三の流れ)は、収率が24.75wt%であり、比重が0.957であり、硫黄および窒素の含有量がそれぞれ25.4ppm、1.6ppmであった。多次元クロマトグラフィー分析により、第三の流れの族組成では、表4のように、非芳香族炭化水素が8.54wt%であり、単環芳香族炭化水素が37.56wt%であり、多環芳香族炭化水素が53.90wt%であることがわかった。
【0096】
【表4】

【0097】
>210℃の重質テールオイルを処理するための後飽和選択触媒C2の組成は、0.05wt%Pt-0.15wt%Pd-4.5wt%SiO-95.3wt%Alである。該後飽和選択触媒C2は次のように調製した。SiO含有量が20wt%である市販の無定形のシリカ・アルミナ材料と擬ベーマイトとを混合し、硝酸の素練り促進剤、セスバニア粉の押出助剤および適量の水を添加し、混練した後、押出成形し、100℃の空気中で24時間乾燥し、550℃の空気中で4時間焙焼し、触媒担体を得た。適量の塩化白金酸および塩化パラジウムを水に溶解し、金属浸漬液を得た。等体積浸漬法で、触媒担体を浸漬させ、80℃の空気中で48時間乾燥し、480℃の空気中で2時間焙焼し、後飽和選択触媒C2を得た。後飽和選択触媒C2を、水素の存在下で、還元の終点温度450℃で還元し、2時間維持した。
【0098】
水素混合器により、>210℃の重質テールオイルに過飽和量の水素を溶解させ、選択的飽和反応器に供した。反応条件は、水素対油の体積比が450Nm/mであり、反応器入口温度が180℃であり、水素分圧が1.5MPaであり、供給体積空間速度が1.0時間-1であった。全反応系が成立した後の、選択的飽和産物の分析結果は、表5のように、硫黄および窒素含有量がそれぞれ16.8ppm、1.2ppmであった。芳香族炭化水素の芳香族組成データから計算すると、選択的飽和過程における多環芳香族炭化水素の留保率は99.43wt%であった。
【0099】
【表5】

【0100】
選択的飽和後の>210℃の重質テールオイルを選択的転化反応器に戻し、安定した流れのバランスが成立した。気液分離および精留系を経た後、分離により、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素を得た。計算によると、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素等の単環軽質芳香族炭化水素の収率が46.35wt%であることが分かった。
【0101】
実施例2
本実施例では、図1に示すフローチャートに従って、接触ディーゼルの全転化を行って軽質芳香族炭化水素を調製するプロセスを行った。接触ディーゼルに対して、水素化精製および不純物の分離を行い、選択的転化(水素化分解)を行った後、>210℃の重質テールオイルを後飽和選択的反応ゾーンに供給し、選択的水素化飽和処理を行った。具体的には、原料、水素化精製触媒、および、水素化精製反応条件は比較例1と同じであるが、選択的転化触媒B3(水素化分解触媒)および選択的転化反応の条件は表6に示した。
【0102】
【表6】

【0103】
表6は、選択的転化触媒B3の組成および使用される反応条件を示す。
【0104】
前記選択的転化触媒B3は次のように調製した。水素タイプのモルデナイト(SAR=45)と、水素タイプのβ-ゼオライト(SAR=25)と、水素タイプのZSM-5(SAR=27)と、擬ベーマイトとを十分に混合した後、混練し、押出し、120℃で乾燥した後、550℃の空気雰囲気中で4時間焙焼し、所期の選択的転化触媒担体を得た。塩化パラジウム、硝酸ニッケルおよびモリブデン酸アンモニウムを用いて三金属溶液を調製し、等体積浸漬法で選択的転化触媒の担体を浸漬させ、120℃で乾燥した後、500℃の空気雰囲気中で2時間焙焼し、選択的転化触媒の前駆体を得た。該選択的転化触媒の前駆体を、水素の存在下で、450℃に還元し、8時間維持し、330℃に冷却した後、ジメチルジスルフィドを8時間注入して加硫し、所期の選択的転化触媒B3を得た。触媒の総重量を100重量部とすると、触媒B3の組成は、0.2部のPd-6.5部のNi-4.2部のMoO-7.9部のMoO-1.1部のMoS-35部のモルデナイト-10部のβ-ゼオライト-11部のZSM-5-24.1部のAlである。
【0105】
接触ディーゼルの水素化精製後に得られた第一の流れに対して、不純物の分離を行った。気液分離を経て、常圧下で、窒素ガスで第一の流れを3hストリッピングし、第一の流れに溶解した硫化水素を十分に除去した。ストリッピング後の水素化精製産物(不純物が分離された第一の流れ)と水素とを混合し、選択的転化反応器に供給し、反応産物を気液分離および精留系に供した。
【0106】
気液分離および精留系を経た後、分離により、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素を得た。計算によると、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素等の単環軽質芳香族炭化水素の収率は30.08wt%であった。>210℃重質テールオイル(第三の流れ)は、収率が33.15wt%であり、比重が0.961であり、硫黄および窒素の含有量がそれぞれ16.4ppm、0.8ppmであった。多次元クロマトグラフィー分析により、表7のように、第三の流れの族組成では、非芳香族炭化水素が7.58wt%であり、単環芳香族炭化水素が38.12wt%であり、多環芳香族炭化水素が54.30wt%であることがわかった。
【0107】
【表7】

【0108】
>210℃重質テールオイルを処理するための後飽和選択触媒C3の組成は、0.10wt%Pt-0.30%Pd-4.0wt%Ni-6.0wt%SiO-89.6wt%Alであった。該後飽和選択触媒C3は次のように調製された。SiO含有量が9%である市販の無定形のシリカ・アルミナ材料と擬ベーマイトとを混合し、硝酸の素練り促進剤、セスバニア粉の押出助剤および適量の水を添加し、混練した後、押出成形し、100℃の空気中で24時間乾燥し、550℃の空気中で4時間焙焼し、触媒担体を得た。適量の塩化白金酸、塩化パラジウムおよび酢酸ニッケルを水に溶解し、金属浸漬液を得た。等体積浸漬法で触媒担体を浸漬させ、100℃の空気中で18時間乾燥し、500℃の空気中で2時間焙焼し、後飽和選択触媒C3を得た。後飽和選択触媒C3を、水素の存在下で、還元の終点温度450℃で還元し、2時間維持した。
【0109】
水素混合器により、>210℃の重質テールオイルに過飽和量の水素を溶解し、選択的飽和反応器に供給した。反応条件は、水素対油の体積比が600Nm/mであり、反応器入口温度が150℃であり、水素分圧が2.0MPaであり、供給体積空間速度が1.5時間-1であった。全反応系が成立した後の、選択的飽和産物の分析結果は、表8のように、硫黄および窒素の含有量がそれぞれ11.3ppm、0.6ppmであった。芳香族炭化水素の組成データから計算すると、選択的飽和過程における多環芳香族炭化水素の留保率が99.63wt%であった。
【0110】
【表8】

【0111】
選択的飽和後の>210℃の重質テールオイルを選択的転化反応器に戻し、安定した流れのバランスが成立した。気液分離および精留系を経た後、分離により、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素を得た。計算によると、ベンゼン-トルエン、キシレン、CA芳香族炭化水素およびC10A芳香族炭化水素等の単環軽質芳香族炭化水素の収率が47.98wt%であることが分かった。
【0112】
〔符号の説明〕
1 原料油-接触ディーゼル
2 第一の反応ゾーン
3 第一の反応ゾーン出口流れ-第一の流れ
4 気液分離器
5 硫化水素およびアンモニアを含む気相流れ
6 気液分離後の液相流れ
7 硫化水素ストリッピング塔
8 硫化水素を含むストリッピング流れ
9 硫化水素除去後の水素化精製接触ディーゼル-不純物が分離された第一の流れ
10 選択的転化反応器
11 選択的転化反応産物-第二の流れ
12 例えば、気液分離器、脱ペンタン塔、脱ヘプタン塔、キシレン塔、および重質芳香族炭化水素塔等の精留塔と、ベンゼン-トルエン留分抽出装置とを含む、第一の分離ゾーン
13 第一の分離ゾーンで分離された乾燥ガスおよびC3~C5軽質炭化水素流れ
14 第一の分離ゾーンで分離されたベンゼン-トルエン流れ
15 第一の分離ゾーンで分離されたキシレン流れ
16 第一の分離ゾーンで分離された、C芳香族炭化水素およびC10芳香族炭化水素を含む流れ
17 第一の分離ゾーンで分離された重質テールオイル流れ-第三の流れ
18 後飽和選択的反応器
19 後飽和選択的反応器出口流れ-第四の流れ
20 第二の分離ゾーン(破線ボックス内)
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】本発明にかかる接触ディーゼルから軽質芳香族炭化水素を調製するための全転化方法のプロセスを例示的に示すフローチャートである。
図1