(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】アークトーチ、プラズマトーチまたはプラズマ切断トーチ用の消耗部材、ならびに該消耗部材を備えたアークトーチ、プラズマトーチおよびプラズマ切断トーチ、およびプラズマ切断する方法、ならびにアークトーチ、プラズマトーチまたはプラズマ切断トーチ用の電極を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 10/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B23K10/00 504
(21)【出願番号】P 2022515032
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 DE2020100301
(87)【国際公開番号】W WO2021047708
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】102019124521.4
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515314937
【氏名又は名称】シェルベリ-シュティフトゥング
【氏名又は名称原語表記】Kjellberg-Stiftung
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】クリンク,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ラウリッシュ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ラインケ,ラルフ-ペーター
(72)【発明者】
【氏名】イェナート,カトリン
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-039173(JP,A)
【文献】特開2003-138329(JP,A)
【文献】特開平09-001379(JP,A)
【文献】特開昭63-154273(JP,A)
【文献】特開2001-287039(JP,A)
【文献】特開2002-192347(JP,A)
【文献】特表2004-527878(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102026467(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アークトーチ(1)、プラズマトーチまたはプラズマ切断トーチ用の消耗部材(4,7,9)において、
前記消耗部材または前記消耗部材の少なくとも1つの部分または領域は、銀とジルコニウムとの合金、銀とハフニウムとの合金または銀とジルコニウムとハフニウムとの合金から成
り、
前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の、残りの100%の少なくとも60%は、銅から形成されることを特徴とする、消耗部材(4,7,9)。
【請求項2】
前記銀の割合は、前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の少なくとも60
%である、請求項1記載の消耗部材(4,7,9)。
【請求項3】
前記銀の割合は、前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の少なくとも92%である、請求項1記載の消耗部材(4,7,9)。
【請求項4】
前記ジルコニウムおよび/または前記ハフニウムの割合は、前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の最低0.05
%である、請求項1
から3いずれか1項記載の消耗部材(4,7,9)。
【請求項5】
前記ジルコニウムおよび/または前記ハフニウムの割合は、前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の最低1%である、請求項1から3いずれか1項記載の消耗部材(4,7,9)。
【請求項6】
前記ジルコニウムおよび/または前記ハフニウムの割合は、前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の最高5
%である、請求項1から
5までのいずれか1項記載の消耗部材(4,7,9)。
【請求項7】
前記ジルコニウムおよび/または前記ハフニウムの割合は、前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の最高2%である、請求項1から5までのいずれか1項記載の消耗部材(4,7,9)。
【請求項8】
前記消耗部材は、アークトーチ(1)用の電極(7)である、請求項1から
7までのいずれか1項記載の消耗部材。
【請求項9】
前記電極(7)は、前端部(7.1.8)と後端部(7.1.9)とを有しており、長手方向軸線Mに沿って延在しており、前記前端部(7.1.8)に設けられた少なくとも1つの放出インサート(7.3)と、電極ホルダ(7.1)
とを有している、請求項
8記載の消耗部材。
【請求項10】
前記電極(7)は、前端部(7.1.8)と後端部(7.1.9)とを有しており、長手方向軸線Mに沿って延在しており、前記前端部(7.1.8)に設けられた少なくとも1つの放出インサート(7.3)と、電極ホルダ(7.1)と、前記放出インサート(7.3)用の保持部材(7.2)とを有している、請求項8記載の消耗部材。
【請求項11】
前記放出インサート(7.3)に接触することで触接している前記電極ホルダ(7.1)の内面(7.1.3)または前記保持部材(7.2)の内面(7.2.3)の少なくとも1つの部分区分は、前記合金から成る、請求項
10記載の消耗部材。
【請求項12】
前記合金は、少なくとも前記電極ホルダ(7.1)の前記内面(7.1.3)または前記保持部材(7.2)の前記内面(7.2.3)の前記部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも0.5m
m延在している、請求項
11記載の消耗部材。
【請求項13】
前記合金は、少なくとも前記電極ホルダ(7.1)の前記内面(7.1.3)または前記保持部材(7.2)の前記内面(7.2.3)の前記部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも1mm延在している、請求項11記載の消耗部材。
【請求項14】
前記放出インサート(7.3)の前面(7.3.1)のすぐ隣に続く前面(7.1.1)の少なくとも1つの部分区分は、前記合金を含んでいる、請求項
9から
13までのいずれか1項記載の消耗部材。
【請求項15】
前記前面(7.1.1)の前記部分区分は、半径方向外側に向かって少なくとも0.5m
m延在している、請求項
14記載の消耗部材。
【請求項16】
前記前面(7.1.1)の前記部分区分は、半径方向外側に向かって少なくとも1mm延在している、請求項14記載の消耗部材。
【請求項17】
前記放出インサート(7.3)の体積または質量の少なくと
も90%は、ハフニウムまたはジルコニウムまたはタングステンから成る、請求項
10から
16までのいずれか1項記載の消耗部材。
【請求項18】
前記消耗部材は、少なくとも1つのノズル開口(4.1)を備えたノズル(4)である、請求項1から
7までのいずれか1項記載の消耗部材。
【請求項19】
前記ノズル開口(4.1)の内面(4.2)の少なくとも1つの部分区分は、前記合金を含んでいる、請求項
18記載の消耗部材。
【請求項20】
前記合金は、少なくとも前記ノズル開口(4.1)の前記内面(4.2)の前記部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも0.5m
m延在している、請求項
19記載の消耗部材。
【請求項21】
前記合金は、少なくとも前記ノズル開口(4.1)の前記内面(4.2)の前記部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも1mm延在している、請求項19記載の消耗部材。
【請求項22】
前記消耗部材は、少なくとも1つのノズル保護キャップ開口(9.1)を備えたノズル保護キャップ(9)である、請求項1から
7までのいずれか1項記載の消耗部材。
【請求項23】
前記ノズル保護キャップ開口(9.1)の内面(9.2)の少なくとも1つの部分区分は、前記合金を含んでいる、請求項
22記載の消耗部材。
【請求項24】
前記合金は、少なくとも前記ノズル保護キャップ開口(9.1)の前記内面(9.2)の前記部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも0.5mm延在している、請求項
23記載の消耗部材。
【請求項25】
前記合金は、少なくとも前記ノズル保護キャップ開口(9.1)の前記内面(9.2)の前記部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも1mm延在している、請求項23記載の消耗部材。
【請求項26】
請求項
8から
17までのいずれか1項記載の電極、請求項
18から
21までのいずれか1項記載のノズルおよび請求項
22から
25までのいずれか1項記載のノズル保護キャップのうちの少なくとも1つを備えたアークトーチ。
【請求項27】
請求項
8から
17までのいずれか1項記載の電極、請求項
18から
21までのいずれか1項記載のノズルおよび請求項
22から
25までのいずれか1項記載のノズル保護キャップのうちの少なくとも1つを備えたプラズマトーチまたはプラズマ切断トーチ。
【請求項28】
請求項
27記載のプラズマ切断トーチを用いてプラズマ切断する方法であって、プラズマガスとして、酸素を含むガスまたはガス混合物を用いてプラズマ切断トーチを作動させる、方法。
【請求項29】
電極(7)および/またはノズル(4)および/またはノズル保護キャップ(9)を液状媒体により冷却する、請求項
28記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アークトーチ、プラズマトーチまたはプラズマ切断トーチ用の消耗部材、ならびに該消耗部材を備えたアークトーチ、プラズマトーチおよびプラズマ切断トーチ、およびプラズマ切断する方法、ならびにアークトーチ、プラズマトーチまたはプラズマ切断トーチ用の電極を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アークトーチおよびプラズマトーチは、一般に金属材料および非金属材料のような様々な種類の材料の熱加工、例えば切断、溶接、彫刻または加熱全般に使用される。
【0003】
例えば、TIGトーチはアークトーチであってよい。ただしアークトーチは、プラズマトーチのようなノズルを有してはいない。それにもかかわらず、アークトーチの電極とプラズマトーチの電極とは同一に形成されていてよい。
【0004】
プラズマトーチは一般に、主としてトーチ本体と、電極と、ノズルと、ノズル用ホルダとから成る。最新のプラズマトーチは追加的に、ノズルに被せて取り付けられるノズル保護キャップを有している。ノズルは、ノズルキャップにより固定されることが多い。
【0005】
プラズマトーチが作動することでアークにより惹起される高い熱負荷に基づき消耗する構成部材は、プラズマトーチの形式に応じて、特に電極、ノズル、ノズルキャップ、ノズル保護キャップ、ノズル保護キャップホルダおよびプラズマガス・二次ガス案内部材である。これらの構成部材は、オペレータにより容易に交換され得るため、消耗部材と呼んでよい。
【0006】
プラズマトーチは導線を介して、プラズマトーチに供給する電源とガス供給部とに接続されている。さらに、プラズマトーチは、例えば冷却液等の冷却媒体用の冷却装置に接続されていてよい。
【0007】
特にプラズマ切断トーチの場合には、高い熱負荷が生じる。その原因は、ノズル孔によるプラズマジェットの大幅な絞りにある。この場合、ノズル孔内の50~150A/mm2の高い電流密度と、約2×106W/cm2の高いエネルギ密度と、最高30000Kの高い温度とが生じるようにするために、小さな孔が用いられる。さらに、プラズマ切断トーチでは、通常最高12bar(1.2MPa)の比較的高いガス圧が用いられる。ノズル孔を通流するプラズマガスの高い温度と大きな運動エネルギとの組合せが、工作物の溶融と、溶融物の押退けとをもたらす。切断溝が生じ、工作物は切断される。プラズマ切断では、非合金鋼または低合金鋼を切断するためには酸化性ガスが使用されることが多く、高合金鋼または非鉄金属を切断するためには非酸化性ガスが使用される。
【0008】
電極とノズルとの間には、プラズマガスが流れる。プラズマガスは、ガス案内部材(プラズマガス案内部材)を通って案内される。これにより、プラズマガスを的確に方向付けることができる。多くの場合、プラズマガスは、プラズマガス案内部材の開口の半径方向および/または軸線方向におけるずれに基づき、電極の周りを回転させられる。プラズマガス案内部材は、電気的に絶縁性の材料から成っている。それというのも、電極とノズルとが互いに電気的に絶縁されていなければならないからである。このことは、電極とノズルとが、プラズマ切断トーチの作動中に異なる電位を有しているため、必要である。プラズマ切断トーチを作動させるためには、電極とノズルおよび/または工作物との間にアークが形成され、このアークがプラズマガスをイオン化する。アークを発生させるためには、電極とノズルとの間の経路のプレイオン化ひいてはアークの形成をもたらす高電圧が、電極とノズルとの間に印加されてよい。電極とノズルとの間で燃焼するアークは、パイロットアークとも呼ばれる。
【0009】
パイロットアークは、ノズル孔を通って流出し、工作物に衝突しかつ工作物までの経路をイオン化する。これにより、電極と工作物との間にアークが形成されてよい。このアークは、メインアークとも呼ばれる。メインアークの間、パイロットアークは遮断されてよい。しかしまた、パイロットアークは引き続き作動させられてもよい。プラズマ切断の場合、ノズルをさらに追加的に負荷しないようにするために、パイロットアークは遮断されることが多い。
【0010】
特に電極とノズルとは、熱的に高負荷されるため、冷却されねばならない。同時に電極とノズルとは、アークの形成に必要とされる電流も案内しなければならない。したがって電極およびノズルには、良好に熱伝導しかつ良好に導電する材料、通常は金属、例えば銅、銀、アルミニウム、スズ、亜鉛、鉄またはこれらの金属の少なくとも1つが含まれた合金が用いられる。
【0011】
電極は、電極ホルダと放出インサートとから成る場合が多く、放出インサートは、高い溶融温度(>2000℃)と、電極ホルダよりも小さな電子仕事関数とを有する材料から製造されている。放出インサート用の材料としては、非酸化性プラズマガス、例えばアルゴン、水素、窒素、ヘリウムおよびこれらの混合物が使用される場合には、タングステンが使用され、酸化性ガス、例えば酸素、空気およびこれらの混合物、窒素-酸素混合物およびその他のガスとの混合物が使用される場合には、ハフニウムまたはジルコニウムが使用される。この高温材料は、良好に熱伝導しかつ良好に導電する材料から成る電極ホルダ内に嵌め込まれてよく、例えば形状結合および/または摩擦結合によりプレス嵌めされてよい。
【0012】
電極およびノズルの冷却は、ノズルの外面に沿って流れるガス、例えばプラズマガスまたは二次ガスにより行われてよい。ただし、液体、例えば水による冷却の方が、より効果的である。この場合、電極および/またはノズルは、液体により直接に冷却されることが多い。すなわち、液体は電極および/ノズルに直接に接触している。ノズルの周りに冷却液を案内するために、ノズルの周りにはノズルキャップが設けられており、ノズルキャップの内面はノズルの外面と共に、内部を冷却媒体が流れる冷却媒体空間を形成している。
【0013】
最新のプラズマ切断トーチの場合には、ノズルおよび/またはノズルキャップの外側に、追加的にノズル保護キャップが設けられている。ノズル保護キャップの内面と、ノズルまたはノズルキャップの外面とは、二次ガスまたは保護ガスが通流する空間を形成している。二次ガスまたは保護ガスは、ノズル保護キャップの孔から流出してプラズマジェットを包囲し、プラズマジェットの周りに所定の雰囲気をもたらす。追加的に、二次ガスはノズルとノズル保護キャップとを、ノズルおよびノズル保護キャップと工作物との間に形成され得るアークから保護する。これらのアークはダブルアークと呼ばれ、ノズルの損傷につながる恐れがある。特に工作物内への侵入に際して、ノズルおよびノズル保護キャップは、高温の材料の跳上げにより大幅に負荷される。侵入時にその体積流量が、切断時の数値に比べて増大されていてよい二次ガスは、ノズルおよびノズル保護キャップから跳ね上がる材料を遮断し、これにより損傷から保護する。
【0014】
ノズル保護キャップも同様に熱的に高負荷されるため、冷却されねばならない。したがって、このためには良好に熱伝導しかつ良好に導電する材料、通常は金属、例えば銅、銀、アルミニウム、スズ、亜鉛、鉄またはこれらの金属の少なくとも1つが含まれた合金が使用される。
【0015】
電極とノズルとは、間接的に冷却されてもよい。この場合、電極とノズルとは、良好に熱伝導しかつ良好に導電する材料、通常は金属、例えば銅、銀、アルミニウム、スズ、亜鉛、鉄またはこれらの金属の少なくとも1つが含まれた合金から成る構成部材に接触することで触接している。この構成部材もやはり直接に冷却される、すなわち、大抵は流動性の冷却媒体に直接に接触した状態にある。これらの構成部材は、同時に電極、ノズル、ノズルキャップまたはノズル保護キャップ用のホルダまたは支持部として用いられてよく、熱を導出しかつ電流を供給することができる。
【0016】
電極のみまたはノズルのみが、液体により冷却される可能性もある。
【0017】
ノズル保護キャップは大抵、二次ガスによってのみ冷却される。二次ガスキャップが、冷却液により直接にまたは間接的に冷却されるユニットも周知である。
【0018】
プラズマトーチの場合、特にプラズマ切断トーチの場合には、高いエネルギ密度と高い温度とに基づき、消耗部材の高負荷が生じる。このことは特に、電極、ノズルおよびノズル保護キャップに当てはまる。
【0019】
高融点材料、例えばタングステン、ハフニウムから成る放出インサートを良好に熱伝導する材料、例えば銅または銀に挿入するという、電極の従来周知の構成は、多くの場合、不十分な結果に達する。特に例えば300Aよりも大きな大電流の場合にプラズマガスとして酸素を含むガスまたはガス混合物を使用すると、耐用年数が極端に短くなることが多い。さらに、多くの場合は耐用年数に大きな変動が生じる。放出インサートは作動中、つまりアークまたはプラズマジェットの燃焼中に摩耗する。放出インサートは徐々に燃え尽きていく。放出インサートが1mmを超えて燃え尽きると、電極ホルダ用の材料として銅を使用した場合には、電極全体が突然故障することが多い。この場合、アークまたはプラズマジェットが放出インサートからホルダに移り、ホルダを破壊する。同時にノズルの破壊も生じる。それどころか、トーチ全体が破壊される恐れがある。
【0020】
電極ホルダ用の材料として銀を使用することにより、電極は最大1.5mm燃え尽き、その後故障することが多い。
【0021】
この故障は突然発生することもあるため、説明したケースでは切断プロセスが突然終了することになる。この場合、切断しようとする材料は使用不能になることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、アークトーチ、プラズマトーチまたはプラズマ切断トーチ用の消耗部材、例えば電極、ノズルおよびノズル保護キャップの耐用年数を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、請求項1記載の消耗部材、請求項19記載のアークトーチ、請求項20記載のプラズマトーチまたはプラズマ切断トーチ、および請求項21記載のプラズマ切断する方法、請求項23記載のプラズマ切断する方法、ならびに請求項25記載の、アークトーチまたはプラズマトーチ用の電極を製造する方法を提供する。
【0024】
消耗部材の1つの特別な実施形態によれば、銀の割合は、消耗部材または消耗部材の部分または領域の体積または質量の少なくとも60%、有利には少なくとも80%、より良好には少なくとも92%、最も良好には97%である。
【0025】
1つの別の特別な実施形態によれば、ジルコニウムおよび/またはハフニウムの割合は、消耗部材または消耗部材の部分または領域の体積または質量の最低0.05%、より良好には最低0.5%、最も良好には最低1%である。
【0026】
1つの別の特別な実施形態によれば、ジルコニウムおよび/またはハフニウムの割合は、消耗部材または消耗部材の部分または領域の体積または質量の最高5%、より良好には最高2%である。
【0027】
有利には、消耗部材または消耗部材の部分または領域の体積または質量の、最高100%残されている割合のうち、少なくとも最高60%は銅から形成される。
【0028】
1つの特別な実施形態によれば、消耗部材は、アークトーチ用の電極である。
【0029】
特にこの場合、電極は、前端部と後端部とを有しており、長手方向軸線Mに沿って延在しており、前端部に設けられた少なくとも1つの放出インサートと、電極ホルダと、場合により放出インサート用の保持部材とを有している、ということが想定されていてよい。
【0030】
特にこの場合、放出インサートに接触することで触接している電極ホルダの内面または保持部材の内面の少なくとも1つの部分区分は、前記合金から成る、ということが想定されていてよい。
【0031】
さらにこの場合、放出インサートの前面のすぐ隣に続く前面の少なくとも1つの部分区分は、前記合金を含んでいる、ということが想定されていてよい。
【0032】
有利には、放出インサートの前面のすぐ隣に続く前面の少なくとも1つの部分区分は、前記合金を含んでいる。
【0033】
特にこの場合、前面の前記部分区分は、半径方向外側に向かって少なくとも0.5mm、より良好には少なくとも1mm延在している、ということが想定されていてよい。
【0034】
有利には、放出インサートの体積または質量の少なくとも最高90%は、ハフニウムまたはジルコニウムまたはタングステンから成る。
【0035】
さらに、消耗部材は、少なくとも1つのノズル開口を備えたノズルである、ということが想定されていてよい。
【0036】
特にこの場合、ノズル開口の内面の少なくとも1つの部分区分は、前記合金を含んでいる、ということが想定されていてよい。
【0037】
特にこの場合、合金は、少なくともノズル開口の内面の部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも0.5mm、より良好には少なくとも1mm延在している、ということが想定されていてよい。
【0038】
本発明の1つの別の特別な実施形態によれば、消耗部材は、少なくとも1つのノズル保護キャップ開口を備えたノズル保護キャップである、ということが想定されていてよい。
【0039】
特にこの場合、ノズル保護キャップ開口の内面の少なくとも1つの部分区分は、前記合金を含んでいる、ということが想定されていてよい。
【0040】
さらにこの場合、合金は、少なくともノズル保護キャップ開口の内面の部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも0.5mm、より良好には少なくとも1mm延在している、ということが想定されていてよい。
【0041】
請求項21記載のプラズマ切断する方法では、電極および/またはノズルおよび/またはノズル保護キャップを液状媒体により冷却する、ということが想定されていてよい。
【0042】
最後に、請求項23記載のプラズマ切断する方法では、燃尽き量の限界値は、少なくとも2.0mm、より良好には少なくとも2.3mmである、ということが想定されていてよい。本発明に基づき、消耗部材、特に電極の耐用年数が延長される。放出インサートは、さらに燃え尽きることができる。試験では、最大2.5mmに達した。さらに、この燃尽き深さからのパイロットアークの発生は最早不可能である場合が多く、これにより、切断中の陰極の破壊を阻止することができる、ということが確認された。
【0043】
特に、電極の耐用年数が、特に酸素を含むプラズマガスを使用した場合に延長される。
【0044】
本発明の別の特徴および利点は、添付の請求項、および図面に基づく特別な実施例の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の1つの特別な実施形態によるプラズマトーチを示す断面図である。
【
図2】
図1に示したプラズマトーチの電極を示す断面図である。
【
図2.1】
図2に示した電極を前から見た図である。
【
図2.2】
図1に示したプラズマトーチの電極ホルダを示す断面図である。
【
図2.3】
図1に示したプラズマトーチの電極を示す別の断面図である。
【
図2.4】
図2に示した電極の放出インサートを示す断面図である。
【
図3】本発明の1つの別の特別な実施形態による電極を示す断面図である。
【
図3.1】
図3に示した電極を前から見た図である。
【
図3.2】
図3に示した電極の電極ホルダを示す断面図である。
【
図3.3】
図3に示した電極の保持部材を前から見た図である。
【
図3.4】
図3.3に示した保持部材を示す側面図である。
【
図4】本発明の1つの別の特別な実施形態による電極を示す断面図である。
【
図4.1】
図4に示した電極を前から見た図である。
【
図4.2】
図4に示した電極の電極ホルダを示す断面図である。
【
図4.3】
図4に示した電極の保持部材を示す断面図である。
【
図5】本発明の1つの別の特別な実施形態による電極を示す断面図である。
【
図5.1】
図5に示した電極を前から見た図である。
【
図5.2】
図5に示した電極の電極ホルダを示す断面図である。
【
図5.3】
図5に示した電極の保持部材を示す断面図である。
【
図6】本発明の1つの特別な実施形態によるノズルを示す断面図である。
【
図6.1】
図6に示したノズルを示す別の断面図である。
【
図7】本発明の1つの特別な実施形態によるノズル保護キャップを示す断面図である。
【
図7.1】
図7に示したノズル保護キャップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1には、ノズルキャップ2と、プラズマガス案内部材3と、ノズル開口4.1を備えた本発明の1つの特別な実施形態によるノズル4と、ノズル支持部5と、電極支持部6と、本発明の1つの特別な実施形態による電極7とを備えた、本発明による1つの特別な実施形態によるプラズマ切断トーチ1(ただしこれはアークトーチまたはプラズマトーチであってもよい)の断面図が示されている。電極7は、電極ホルダ7.1と、例えば3mmの長さL1を備えた放出インサート7.3とを有している(
図2.4参照)。プラズマ切断トーチ1はさらに、ノズル保護キャップ支持部8を有しており、ノズル保護キャップ支持部8には、ノズル保護キャップ開口9.1を備えた本発明の1つの特別な実施形態によるノズル保護キャップ9が取り付けられている。プラズマ切断トーチ1には、二次ガス案内部材10も付属する。二次ガス案内部材10を介して、二次ガスSGが供給される。プラズマ切断トーチ1にはさらに、プラズマガスPG、冷却媒体戻り流WR1およびWR2ならびに冷却媒体供給流WV1およびWV2用の案内部が設けられている。アークまたはプラズマジェットは、作動中、切断時に電極7の放出インサート7.3との間に発生し、ノズル開口4.1とノズル保護キャップ開口9.1とを通流することで絞られてから、工作物(図示せず)に衝突する。ノズル開口4.1の内面は符号4.2で表されており、ノズル保護キャップ開口9.1の内面は符号9.2で表されている。
【0047】
図2および
図2.1には、
図1に示した電極7が示されており、この場合、
図2は電極7の断面図であり、
図2.1は電極7の前端部の方向Aに見た図である。電極7は、前端部7.1.8と後端部7.1.9とを有している。電極7は、
図2.2に示す電極ホルダ7.1と、放出インサート7.3とを有している。放出インサート7.3は、電極ホルダ7.1の例えば1.8mm(-0.05)の直径D1を有する孔7.1.5内にプレス嵌めされている。孔7.1.5は、放出インサート7.3の外周面7.3.2に接触することで触接している内面7.1.3を有している。
【0048】
電極ホルダ7.1は、例えば銀、銅およびジルコニウムの合金から成る。質量の割合は、例えば次のように、すなわち、銀97%、ジルコニウム2%、銅1%に配分されている。この場合、本明細書では例示的に電極ホルダ7.1全体に合金が用いられている。電極ホルダ7.1の一部または1つの領域にのみ合金が存在する可能性もある。この場合、このことは、好適には少なくとも、電極ホルダ7.1の内面7.1.3に当てはまる。この場合、この領域は、内面から半径方向外側に向かって好適には少なくとも0.5mm延在している。この領域が、半径方向外側に向かって少なくとも1mm延在していると、なお良い。このことは例えば、ジルコニウムの割合および/または銀の割合が半径方向外側に向かって減少しかつ銅の割合が増大することにより、実現され得る。
【0049】
電極7の断面を示す
図2.3には、燃尽き量L2も示されている。燃尽き量は、新品状態の放出インサート7.3の面7.3.1と、作動中に燃え尽きた面の最深点との間の差として規定されている。本例では、例えばL2=2mmである。
【0050】
放出インサート7.3の質量は、本例では好適には少なくとも97%がハフニウムから成る。
【0051】
図3には、本発明の1つの別の特別な実施形態による電極7が示されており、この場合、
図3は電極7の断面図であり、
図3.1は電極7の前端部7.1.8の方向Aに見た図である。電極7は、前端部7.1.8と後端部7.1.9とを有している。電極7は、
図3.1に示す電極ホルダ7.1と、
図3.3および
図3.4に示す保持部材7.2と、放出インサート7.3とを有している。放出インサート7.3は、保持部材7.2の直径D5を有する孔7.2.1内にプレス嵌めされている。孔7.2.1は、放出インサート7.3の外周面7.3.2に接触することで触接している内面7.2.3を有している。
【0052】
保持部材7.2は、電極ホルダ7.1の孔7.1.5内にプレス嵌めされている。この孔は、保持部材の外周面7.2.2に接触することで触接している内面7.1.3を有している。
【0053】
保持部材7.2は、本明細書では例示的に銀、銅およびジルコニウムの合金から成る。質量の割合は、例えば次のように、すなわち、銀97%、ジルコニウム2%、銅1%に配分されている。この場合、本明細書では例示的に保持部材7.2全体に合金が用いられている。
【0054】
保持部材7.2は、例えば4mmの直径D3を有しており、放出インサート7.3は、例えば1.8mmの直径D7(
図2.4参照)を有している。これにより、保持部材の1.1mmの壁厚さひいては半径方向外側に向かって1.1mm延在する前方円環面7.2.5が生じることになる。
【0055】
保持部材7.2の一部または1つの領域にのみ合金が存在する可能性もある。この場合、このことは、好適には少なくとも、保持部材7.2の内面7.2.3に当てはまる。この場合、この領域は、内面7.2.3から半径方向外側に向かって好適には少なくとも0.5mm延在している。この領域が、半径方向外側に向かって少なくとも1mm延在していると、なお良い。このことは例えば、ジルコニウムの割合および/または銀の割合が半径方向外側に向かって減少しかつ銅の割合が増大することにより、実現され得る。
【0056】
電極ホルダ7.1は、少なくとも導電性の良好な材料から成り、本例ではその質量の最大90%が銅から成る。
【0057】
放出インサートの質量は、本例では好適には少なくとも最大97%がハフニウムから成る。
【0058】
図4には、本発明の1つの別の特別な実施形態による電極7が示されており、この場合、
図4は電極7の断面図であり、
図4.1は電極7の前端部7.1.8の方向Aに見た図である。電極7は、前端部7.1.8と後端部7.1.9とを有している。電極7は、
図4.2に示す電極ホルダ7.1と、
図4.3に示す保持部材7.2と、放出インサート7.3とを有している。放出インサート7.3は、保持部材7.2の直径D5を有する孔7.2.1内に挿入されている。
【0059】
保持部材7.2の孔7.2.1は、放出インサート7.3の外周面7.3.2に接触することで触接している内面7.2.3を有している。
【0060】
保持部材7.2は、電極ホルダ7.1の孔7.1.5内にプレス嵌めされている。孔7.1.5は、保持部材7.2の外周面7.2.2に接触することで触接している内面7.1.3を有している。この場合、保持部材7.2は、例えば摩擦結合、形状結合により、しかしまたろう接、溶接、特にレーザろう接、レーザ溶接、アークろう接、アーク溶接、真空ろう接、真空レーザ溶接または電子ビーム溶接の熱的な接合法により、電極ホルダ7.1に結合されていてよい。特に有利なのは、溶接またはろう接が後端部7.1.9から行われ、シーム(溶接シーム、ろう接シーム)7.4が、後端部に向かって延びる中空室7.1.7内に位置する場合である。接合法として、拡散溶接も有利であり、この場合は圧力と熱とが用いられる。
【0061】
電極ホルダ7.1に対する保持部材7.2の熱的な接合、例えばろう接または溶接が、中空室7.1.7の方向から行われる場合、このことは前方からの熱的な接合に比べ、例えば
- シームが前方から全く見えなくなり、かつ
- 後加工が不要である、
という利点を有している。
【0062】
保持部材7.2は、本明細書では例示的に銀、銅およびジルコニウムの合金から成る。質量の割合は、例えば次のように、すなわち、銀97%、ジルコニウム2%、銅1%に配分されている。この場合、本明細書では例示的に保持部材7.2全体に合金が用いられている。
【0063】
保持部材7.2は、例えば6mmの直径D3を有しており、放出インサート7.3は、例えば1.8mmの直径D7を有している。これにより、保持部材7.2の2.1mmの壁厚さひいては半径方向外側に向かって2.1mm延在する前方円環面7.2.5が生じることになる。
【0064】
保持部材7.2の一部または1つの領域にのみ合金が存在する可能性もある。この場合、このことは、好適には少なくとも、保持部材7.2の内面7.2.3に当てはまる。この場合、この領域は、内面から半径方向外側に向かって好適には少なくとも0.5mm延在している。この領域が、半径方向外側に向かって少なくとも1mm延在していると、なお良い。このことは例えば、ジルコニウムの割合および/または銀の割合が半径方向外側に向かって減少しかつ銅の割合が増大することにより、実現され得る。
【0065】
電極ホルダ7.1は、少なくとも導電性の良好な材料から成り、本例ではその質量の最大90%が銅から成る。
【0066】
放出インサートの質量は、本例では好適には少なくとも最大97%がハフニウムから成る。
【0067】
図5には、1つの別の特別な実施形態による電極7が示されており、この場合、
図5は電極7の断面図であり、
図5.1は電極の前端部7.1.8の方向Aに見た図である。電極7は、前端部7.1.8と後端部7.1.9とを有している。電極7は、
図5.2に示す電極ホルダ7.1と、
図5.3に示す保持部材7.2と、放出インサート7.3とを有している。放出インサート7.3は、保持部材7.2の直径D5を有する孔7.2.1内に挿入されている。
【0068】
保持部材7.2の孔は、放出インサートの外周面7.3.2に接触することで触接している内面7.2.3を有している。
【0069】
保持部材7.2は円筒部分において、電極ホルダ7.1の外面7.1.1に取り付けられている。この場合、保持部材7.2は、例えば摩擦結合、形状結合により、しかしまたろう接、溶接、特にレーザろう接、レーザ溶接、アークろう接、アーク溶接、真空ろう接、真空レーザ溶接または電子ビーム溶接の熱的な接合法により、電極ホルダ7.1に結合されていてよい。特に有利なのは、溶接またはろう接が後端部7.1.9から行われ、シーム(溶接シーム、ろう接シーム)7.4が、後端部に向かって延びる中空室7.1.7内に位置する場合である。接合法として、拡散溶接も有利である。この場合は、圧力と熱とが用いられる。
【0070】
保持部材7.2は、本明細書では例示的に銀、銅およびジルコニウムの合金から成る。質量の割合は、例えば次のように、すなわち、銀97%、ジルコニウム2%、銅1%に配分されている。この場合、本明細書では例示的に保持部材7.2全体に合金が用いられている。
【0071】
保持部材7.2は、例えば10mmの直径D3を有しており、放出インサートは、例えば1.8mmの直径D7を有している。これにより、保持部材7.2の4.1mmの壁厚さひいては半径方向外側に向かって4.1mm延在する前方円環面7.2.5が生じることになる。
【0072】
保持部材7.2の一部または1つの領域にのみ合金が存在する可能性もある。この場合、このことは、好適には少なくとも、保持部材7.2の内面7.2.3に当てはまる。この場合、この領域は、内面から半径方向外側に向かって好適には少なくとも0.5mm延在している。この領域が、半径方向外側に向かって少なくとも1mm延在していると、なお良い。このことは例えば、ジルコニウムの割合および/または銀の割合が半径方向外側に向かって減少しかつ銅の割合が増大することにより、実現され得る。
【0073】
電極ホルダ7.1は、少なくとも導電性の良好な材料から成り、本例ではその質量の最大90%が銅から成る。
【0074】
放出インサートの質量は、本例では好適には少なくとも最大97%がハフニウムから成る。
【0075】
図6には、例示的に、
図1に示したプラズマトーチ1に挿入された、本発明の1つの特別な実施形態によるノズル4が示されている。このノズル4は全体的に、銀とジルコニウムとの合金、銀とハフニウムとの合金または銀とジルコニウムとハフニウムとの合金から成っていてよい。ただし重要なのは、プラズマジェットまたはアークと接触する可能性のあるノズルの領域が、前記材料から成っている、という点である。これは、ノズル4の内面4.2である。このことは、例えば前記材料から成るノズルインサート4.4をノズルホルダ4.3内に取り付けることにより行われてよい。このことは、
図6.1に例示されている。
【0076】
本例において、
図6ではノズル4が、
図6.1ではノズルキャップインサート4.4が、銀と銅とジルコニウムとの合金から成っている。質量の割合は、例えば次のように、すなわち、銀97%、ジルコニウム2%、銅1%に配分されている。この場合、本明細書では例示的にノズル4全体に合金が用いられている。
【0077】
この場合、ノズルインサート4.4は、例えば摩擦結合、形状結合により、しかしまたろう接、溶接、特にレーザろう接、レーザ溶接、アークろう接、アーク溶接、真空ろう接、真空レーザ溶接または電子ビーム溶接の熱的な接合法により、ノズルホルダ4.3に結合されていてよい。接合法として、拡散溶接も有利である。この場合は、圧力と熱とが用いられる。
【0078】
図7には、
図1に示したノズル保護キャップ9が示されている。このノズル保護キャップ9は全体的に、例えば銀とジルコニウムとの合金、銀とハフニウムとの合金または銀とジルコニウムとハフニウムとの合金から成っていてよい。ただし重要なのは、プラズマジェットまたはアークと接触する可能性のあるノズルの領域が、前記材料から成っている、という点である。これは、ノズル保護キャップ9の内面9.2である。このことは、例えば前記材料から成るノズル保護キャップインサート9.4をノズル保護キャップホルダ9.3内に取り付けることにより行われてよい。このことは、
図7.1に例示されている。
【0079】
本例において、
図7ではノズル保護キャップ9が、
図7.1ではノズル保護キャップインサート9.4が、銀と銅とジルコニウムとの合金から成っている。質量の割合は、例えば次のように、すなわち、銀97%、ジルコニウム2%、銅1%に配分されている。この場合、本明細書では例示的にノズル保護キャップ9全体に合金が用いられている。
【0080】
この場合、ノズル保護キャップインサート9.4は、例えば摩擦結合、形状結合により、しかしまたろう接、溶接、特にレーザろう接、レーザ溶接、アークろう接、アーク溶接、真空ろう接、真空レーザ溶接または電子ビーム溶接の熱的な接合法により、ノズル保護キャップホルダ9.3に結合されていてよい。接合法として、拡散溶接も有利である。この場合は、圧力と熱とが用いられる。
【0081】
上記説明、図面および請求項に開示した本発明の特徴は、個別でも、任意の組合せにおいても、それらの様々な実施形態において本発明を実現するために重要であり得る。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
アークトーチ(1)、プラズマトーチまたはプラズマ切断トーチ用の消耗部材(4,7,9)において、
前記消耗部材または前記消耗部材の少なくとも1つの部分または領域は、銀とジルコニウムとの合金、銀とハフニウムとの合金または銀とジルコニウムとハフニウムとの合金から成ることを特徴とする、消耗部材(4,7,9)。
実施形態2
前記銀の割合は、前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の少なくとも60%、有利には少なくとも80%、より良好には少なくとも92%、最も良好には97%である、実施形態1に記載の消耗部材(4,7,9)。
実施形態3
前記ジルコニウムおよび/または前記ハフニウムの割合は、前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の最低0.05%、より良好には最低0.5%、最も良好には最低1%である、実施形態1または2に記載の消耗部材(4,7,9)。
実施形態4
前記ジルコニウムおよび/または前記ハフニウムの割合は、前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の最高5%、より良好には最高2%である、実施形態1から3までのいずれか1つに記載の消耗部材(4,7,9)。
実施形態5
前記消耗部材または前記部分または前記領域の体積または質量の、最高100%残されている割合のうち、少なくとも最高60%は、銅から形成される、実施形態1から4までのいずれか1つに記載の消耗部材(4,7,9)。
実施形態6
前記消耗部材は、アークトーチ(1)用の電極(7)である、実施形態1から5までのいずれか1つに記載の消耗部材。
実施形態7
前記電極(7)は、前端部(7.1.8)と後端部(7.1.9)とを有しており、長手方向軸線Mに沿って延在しており、前記前端部(7.1.8)に設けられた少なくとも1つの放出インサート(7.3)と、電極ホルダ(7.1)と、場合により前記放出インサート(7.3)用の保持部材(7.2)とを有している、実施形態6に記載の消耗部材。
実施形態8
前記放出インサート(7.3)に接触することで触接している前記電極ホルダ(7.1)の内面(7.1.3)または前記保持部材(7.2)の内面(7.2.3)の少なくとも1つの部分区分は、前記合金から成る、実施形態7に記載の消耗部材。
実施形態9
前記合金は、少なくとも前記電極ホルダ(7.1)の前記内面(7.1.3)または前記保持部材(7.2)の前記内面(7.2.3)の前記部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも0.5mm、より良好には少なくとも1mm延在している、実施形態8に記載の消耗部材。
実施形態10
前記放出インサート(7.3)の前面(7.3.1)のすぐ隣に続く前面(7.1.1)の少なくとも1つの部分区分は、前記合金を含んでいる、実施形態7から9までのいずれか1つに記載の消耗部材。
実施形態11
前記前面(7.1.1)の前記部分区分は、半径方向外側に向かって少なくとも0.5mm、より良好には少なくとも1mm延在している、実施形態10に記載の消耗部材。
実施形態12
前記放出インサート(7.3)の体積または質量の少なくとも最高90%は、ハフニウムまたはジルコニウムまたはタングステンから成る、実施形態7から11までのいずれか1つに記載の消耗部材。
実施形態13
前記消耗部材は、少なくとも1つのノズル開口(4.1)を備えたノズル(4)である、実施形態1から5までのいずれか1つに記載の消耗部材。
実施形態14
前記ノズル開口(4.1)の内面(4.2)の少なくとも1つの部分区分は、前記合金を含んでいる、実施形態13に記載の消耗部材。
実施形態15
前記合金は、少なくとも前記ノズル開口(4.1)の前記内面(4.2)の前記部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも0.5mm、より良好には少なくとも1mm延在している、実施形態14に記載の消耗部材。
実施形態16
前記消耗部材は、少なくとも1つのノズル保護キャップ開口(9.1)を備えたノズル保護キャップ(9)である、実施形態1から5までのいずれか1つに記載の消耗部材。
実施形態17
前記ノズル保護キャップ開口(9.1)の内面(9.2)の少なくとも1つの部分区分は、前記合金を含んでいる、実施形態16に記載の消耗部材。
実施形態18
前記合金は、少なくとも前記ノズル保護キャップ開口(9.1)の前記内面(9.2)の前記部分区分から半径方向外側に向かって少なくとも0.5mm、より良好には少なくとも1mm延在している、実施形態17に記載の消耗部材。
実施形態19
実施形態6から12までのいずれか1つに記載の電極、実施形態13から15までのいずれか1つに記載のノズルおよび実施形態16から18までのいずれか1つに記載のノズル保護キャップのうちの少なくとも1つを備えたアークトーチ。
実施形態20
実施形態6から12までのいずれか1つに記載の電極、実施形態13から15までのいずれか1つに記載のノズルおよび実施形態16から18までのいずれか1つに記載のノズル保護キャップのうちの少なくとも1つを備えたプラズマトーチまたはプラズマ切断トーチ。
実施形態21
実施形態20に記載のプラズマ切断トーチを用いてプラズマ切断する方法であって、プラズマガスとして、酸素を含むガスまたはガス混合物を用いてプラズマ切断トーチを作動させる、方法。
実施形態22
電極(7)および/またはノズル(4)および/またはノズル保護キャップ(9)を液状媒体により冷却する、実施形態21に記載の方法。
実施形態23
電極ホルダ(7.1)と放出インサート(7.3)とを備えた電極(7)と、ノズル(4)と、該ノズル(4)用のノズル支持部(5)と、前記電極(7)用の電極支持部(6)とを有するプラズマ切断トーチ(1)を用いて、特に工作物をプラズマ切断する方法であって、前記プラズマ切断トーチ(1)の作動中、前記放出インサート(7.3)の燃尽き量(L2)の予め規定可能な限界値以降、パイロットアークの発生を中止し、これにより、切断中の前記電極(7)の破壊を阻止するかまたは遅らせる、方法。
実施形態24
前記燃尽き量(L2)の前記限界値は、少なくとも2.0mm、より良好には少なくとも2.3mmである、実施形態23に記載の方法。
実施形態25
アークトーチ、プラズマトーチ(1)またはプラズマ切断トーチ用の電極(7)であって、該電極(7)は、前端部(7.1.8)と後端部(7.1.9)とを有しており、長手方向軸線Mに沿って延在しており、前記前端部(7.1.8)に設けられた少なくとも1つの放出インサート(7.3)と、電極ホルダ(7.1)と、前記放出インサート用の保持部材(7.2)と、前記後端部(7.1.9)に向かって延び、該後端部(7.1.9)に向かって開いた中空室(7.1.7)とを有する、電極(7)を製造する方法であって、
前記保持部材(7.2)と前記電極ホルダ(7.1)とを、前記中空室(7.1.7)の方向から、熱的な接合、特にろう接または溶接により結合するステップを含む、方法。
【符号の説明】
【0082】
1 アークトーチ、プラズマトーチ、プラズマ切断トーチ
2 ノズルキャップ
3 プラズマガス案内部材
4 ノズル
4.1 ノズル開口
4.2 ノズル開口の内面
4.3 ノズルホルダ
4.4 ノズルインサート
5 ノズル支持部
6 電極支持部
7 電極
7.1 電極ホルダ
7.1.1 前面
7.1.2 外面
7.1.3 内面
7.1.5 孔
7.1.7 中空室
7.1.8 前端部
7.1.9 後端部
7.2 保持部材
7.2.1 孔
7.2.2 外周面
7.2.3 内面
7.2.5 前方円環面
7.3 放出インサート
7.3.1 前面
7.3.2 外周面
7.4 シーム
8 ノズル保護キャップ支持部
9 ノズル保護キャップ
9.1 ノズル保護キャップ開口
9.2 ノズル保護キャップ開口の内面
9.3 ノズル保護キャップホルダ
9.4 ノズル保護キャップインサート
10 二次ガス案内部材
D1 内径
D3 外径
D5 内径
D7 直径
L1 長さ
L2 燃尽き量
M 中心長手方向軸線
PG プラズマガス
SG 二次ガス
WR1 冷却媒体戻り流
WR2 冷却媒体戻り流
WV1 冷却媒体供給流
WV2 冷却媒体供給流