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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】医療用分離器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/88 20060101AFI20241018BHJP
   A61B 17/70 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61B17/88
A61B17/70
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022524275
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020080073
(87)【国際公開番号】W WO2021083845
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】102019129037.6
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ゾーイング タン
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ グノー
(72)【発明者】
【氏名】デニス リッチ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0371756(US,A1)
【文献】特開2004-121643(JP,A)
【文献】特表2016-518214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/68 - A61B 17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎弓根スクリューから医療用挿入器具(6)を分離するための医療用分離器具(4)であって、
シャフト(24)と、
前記シャフト(24)の第1の部分(34)の周りに配置されているスリーブ(26)であって、前記医療用挿入器具(6)との画定された結合のために構成される前記スリーブ(26)と、
を備え、
前記シャフト(24)は、前記スリーブ(26)に対して回転可能であり、
前記医療用分離器具(4)は、前記シャフト(24)および前記スリーブ(26)を自動式でおよび自動的に画定された初期位置へ動かすように構成され、
前記シャフト(24)上に設けられた支持面(46)と、前記スリーブ(26)と、の間に配置されるばね(28)であって、前記シャフト(24)および前記スリーブ(26)をそのばね力を介して前記画定された初期位置へ動かすために配置されている前記ばね(28)をさらに備える、
医療用分離器具(4)。
【請求項2】
前記シャフト(24)は、前記スリーブ(26)が周りに配置されている前記第1の部分(34)にペグ形状の突起(36)を有し、
前記スリーブ(26)は、運動リンク(44)を有し、
前記シャフト(24)の前記ペグ形状の突起(36)は、前記運動リンク(44)が、前記スリーブ(26)に対する前記シャフト(24)の回転範囲を画定するように、前記スリーブ(26)の前記運動リンク(44)内に受容されている、請求項に記載の医療用分離器具(4)。
【請求項3】
前記運動リンク(44)の第1の端部(50)が、前記運動リンク(44)の第2の端部(52)よりも前記スリーブ(26)の遠位端部側に配置されるように、前記運動リンク(44)は斜めに延在する、すなわち、周方向および前記スリーブ(26)の軸方向の両方に延在する、請求項に記載の医療用分離器具(4)。
【請求項4】
前記画定された初期位置において、前記シャフト(24)の前記ペグ形状の突起(36)は、前記ばね(28)により、前記運動リンク(44)の前記第1の端部(50)に押し付けられている、請求項に記載の医療用分離器具(4)。
【請求項5】
前記運動リンク(44)は、前記シャフト(24)の前記ペグ形状の突起(36)が前記ばね(28)を介してくぼみ(54)に押され得るように、前記運動リンク(44)の第2の端部(52)にくぼみ(54)を有する、請求項または4に記載の医療用分離器具(4)。
【請求項6】
前記運動リンク(44)は、前記周方向において、前記シャフト(24)の前記スリーブ(26)に対する90度の回転を可能にする、請求項またはに記載の医療用分離器具(4)。
【請求項7】
前記スリーブ(26)は、前記医療用挿入器具(6)との画定された結合のためのペグ形状の突起(45)を有する、請求項1に記載の医療用分離器具(4)。
【請求項8】
前記シャフト(24)は、非円形断面の筒状の形状である遠位係合部(43)を有する、請求項1に記載の医療用分離器具(4)。
【請求項9】
前記シャフト(24)の第2の部分(38)は、半径方向に外向きに押動力を加えるように構成された押動片または係合機構(40)を有する、請求項1に記載の医療用分離器具(4)。
【請求項10】
請求項1に記載の前記医療用分離器具(4)と、医療用挿入器具(6)と、を少なくとも備える、医療用アセンブリ(2)。
【請求項11】
前記医療用挿入器具(6)は、V字型またはU字型の凹部(12)を備え、
前記医療用分離器具(4)の前記スリーブ(26)は、ペグ形状の突起(45)を備え、
前記ペグ形状の突起(45)は、前記V字型または前記U字型の凹部(12)にねじれを防止して受容および保持されるように設けられる、請求項10に記載の医療用アセンブリ(2)。
【請求項12】
前記医療用挿入器具(6)は、軸方向に平行に延在する結合アーム(16)であって、それらの遠位端に掛止構造(18)を有する前記結合アーム(16)を備え、
前記医療用分離器具(4)の前記シャフト(24)は、前記シャフト(24)の回転に伴って、前記医療用挿入器具(6)の前記結合アーム(16)を広げる遠位係合部(43)を備える、請求項10または11に記載の医療用アセンブリ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎弓根スクリューから医療用挿入器具を分離するための医療用分離器具に関する。
【背景技術】
【0002】
椎弓根スクリューは、基本的に、経椎弓根スクリューの接続を用いて、骨折、腫瘍、炎症、変形、および変性不安定性の症例における脊椎の背部安定化に役立つ。椎弓根スクリューは、隣接する椎骨の椎弓根に設置され、そこで軸方向に互いに上下に配置された椎弓根スクリューと軸方向に延在する長手方向部材/ロッドとの間に、安定した角度の接続が生じる。椎弓根スクリューおよび長手方向部材は、椎骨安定化システムを形成する。
【0003】
この目的のために、椎弓根スクリューは通常、軸方向にシャフト状の雄ねじ部を有しており、その雄ねじ部の後に、チューリップまたは受入れスリーブと呼ばれるものがスクリューヘッド側に続く。これは、構造的に、雌ねじを有するU字型のスロット/穴のある受入れスリーブを形成し、そこで2つの半径方向に対向する長手方向のそれぞれのスロットが、所定の間隔幅であるスロット間隔を画定する。長手方向部材/ロッドは、互いに平行に走る長手方向のスロットへ横方向に挿入され、例えば、グラブスクリュー、ねじ付きナット、または止めねじの形状をしたロック要素で固定され、そのロック要素は雌ねじに螺合される。
【0004】
椎弓根スクリューには、2つの基本的な種類、すなわち単軸および多軸椎弓根スクリューがある。単軸椎弓根スクリューの場合、雄ねじ部/シャフトと、チューリップ/受入れスリーブと、は互いに一体形成されている。その一方、多軸椎弓根スクリューは、大部分が球状の、または(半-)球状のスクリューヘッドを有する別個の構成要素として製造される雄ねじシャフトを有し、そのスクリューヘッドは、相対的に旋回可能となるように受入れスリーブ/チューリップで抱持され、同時にヘッドとシャフトとの間の遷移領域で係合される。このようにして、受入れスリーブ/チューリップは、雄ねじシャフトが椎骨の椎弓根内(pedicle passage)に座ぐられた(countersunk)後、シャフトの向きに実質的に関係なく、所望の位置および向きを得るために、それに対して旋回および/または回転させ得る。アンダーカットは、受入れスリーブ/チューリップがシャフトヘッドから抜けることを防止する。
【0005】
椎弓根スクリューは、外科医により椎骨の椎弓根内へ挿入され、またはねじ込みによってそれぞれ固定される。この目的のため、外科医は、とりわけ挿入器具として知られているものを用い、この挿入器具は「ダウンチューブ(downtube)」とも呼ばれる。挿入器具は、その遠位端部に、例えば、2つの結合アームを有してよく、その半径方向の内側に掛止構造、例えば、戻り止めなどが形成され、この掛止構造は、椎弓根スクリューの受入れスリーブ/チューリップに形成された対応する対の掛止構造に係合され得る。
【0006】
外科医が、椎弓根スクリューを螺合/固定した後に、挿入器具を椎弓根スクリューとの結合から分離したい場合、分離器具が必要であり、その分離器具は「リムーバルキー(removal key)」とも呼ばれる。分離器具は、基本的に挿入器具へ挿入され、挿入器具を、詳細には挿入器具の結合アームを広げ(画定された弾性変形)、これにより分離は実現され得る。
【0007】
従来技術としては(図1から図4を参照)、例えば、挿入器具へ挿入され得る分離器具が知られている。例えば、図4は、中に分離器具が挿入されている挿入器具の上部を示す。
【0008】
従来技術から既知である分離器具(詳細は図1から図3を参照)は、基本的に近位ハンドル部を有する中空筒状/スリーブ状の構成要素を有する。筒状ロッドは、中空筒状/スリーブ状の構成要素内に収容され、この筒状ロッドは、その遠位端部に係合要素を有し、この係合要素は、椎弓根スクリューと形状嵌合的に係合することが意図される(詳細には図2の下部を参照)。係合ピンは、筒状ロッドの近位端部に接続/取り付けられ、この係合ピンは、中空筒状/スリーブ状の構成要素に設けられた運動リンク(細長い穴)内に受容される。筒状ロッドが椎弓根スクリューに形状嵌合的に係合される場合、係合ピンは、中空筒状/スリーブ状の構成要素が約90°にわたり回転することを可能にする。運動リンクまたは細長い穴は、中空筒状/スリーブ状の構成要素の周方向に延在する。楕円形の係合部は、中空筒状/スリーブ状の構成要素の遠位端部に設けられている(詳細には図2の上部を参照)。中空筒状/スリーブ状の構成要素が、その開始位置/ゼロ位置から約90°回転させられる場合、分離器具の楕円形の係合部は挿入器具を分離でき、詳細には、それは挿入器具の結合アームを広げることができる。基本的に、この分離器具は、椎弓根スクリューの結合と分離の両方に使用できる。
【0009】
この従来技術は図1から図4で見ることができ、基本的に、分離器具が挿入器具へ挿入される前に、中空筒状/スリーブ状の構成要素と筒状ロッドを、互いに手動で方向付ける必要があるという欠点を有する。さらには、椎弓根スクリューと分離器具との間にある遠位端部の形状嵌合は、分離をさらに難しくすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この背景に対して、本発明の目的は、従来技術の欠点を回避する、または少なくとも低減することである。詳細には、椎弓根スクリューから医療用挿入器具を分離するための医療用分離器具を提供することであり、その分離器具は、医療用挿入器具に簡単に結合可能であり、確実な分離を提供する(詳細には、画定されたように弾性的に医療用挿入器具を変形する)。
【0011】
この目的は、請求項1に記載の医療用分離器具および請求項10に記載の医療用アセンブリにより解決される。有利な実施形態およびさらなる発展は、従属請求項で請求され、および/または以下に説明される。以下において、用語「近位の(proximal)」および用語「遠位の(distal)」は、「近位の(proximal)」はユーザー/外科医により近いことを意味し、「遠位の(distal)」はユーザー/外科医からより遠いことを意味するように使用される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、まず、椎弓根スクリューから医療用挿入器具を分離する、詳細には医療用挿入器具を開け広げるための医療用分離器具であって、シャフト/ロッドと、シャフト/ロッドの部分(詳細には筒状)の周りに配置されているスリーブであって、医療用挿入器具との画定された、詳細にはねじれを防止する、結合のために設計されるスリーブと、を備え、(医療用挿入器具を椎弓根スクリューから分離するための)シャフト/ロッドは、スリーブに対して回転可能であり、医療用分離器具は、シャフト/ロッドおよびスリーブを自動式でおよび自動的に画定された開始位置/初期位置/ゼロ位置へ動かすように構成される、医療用分離器具に関する。
【0013】
それにより、本発明による医療用分離器具は、画定されたゼロ位置/開始位置を規定し、好ましくは、シャフトおよびスリーブの手動での向き付けを必要としない。言い換えれば、本発明による医療用分離器具のシャフトおよびスリーブは、医療用挿入器具へ挿入するために互いに自動的に向き付けられる。
【0014】
有利な手法では、医療用分離器具は、シャフト上に設けられた支持面と、スリーブと、の間に配置されるばね、詳細にはつる巻ばね/圧縮ばね、であって、シャフトおよびスリーブをそのばね力を介して画定された開始位置/ゼロ位置へ動かすために設計されているばねも備える。詳細には、スリーブはばねのための接触面をその遠位端部に有する。
【0015】
シャフトは、スリーブが周りに配置されている部分にピン形状/ペグ形状の突起を有し、スリーブは、運動リンク/スロットリンク/細長い穴を有し、シャフトのペグ形状の突起は、運動リンクがスリーブに対するシャフトの回転範囲/回転可能性(角度範囲)を画定するように、スリーブの運動リンク内に受容/配置されている場合に有利である。
【0016】
運動リンクの第1の端部(50)が、運動リンクの第2の端部よりもスリーブの遠位端部側に配置されるように、運動リンクは斜めに延在する、すなわち、周方向およびスリーブ(26)の軸方向の両方に延在することが好ましい。
【0017】
画定された開始位置において、シャフトのペグ形状の突起は、ばね(28)により、運動リンクの第1の端部(50)に押し付けられていると、特に有利である。言い換えれば、ばねは、好ましくは、シャフトのペグ形状の突起/ピン/ペグが運動リンクの第1の端部における当初の位置/開始位置/ゼロ位置に位置するように、スリーブに圧縮力を加える。
【0018】
有利には、スリーブの運動リンクは、シャフトを約/およそ90°回転することを可能にする。言い換えれば、細長い穴/運動リンクは、周方向に約/およそ90°、第1の端部から第2の端部へ延在する。
【0019】
好ましい構成例は、運動リンク(44)は、ロッドのペグ形状の突起がばねを介してくぼみに押され得るように、運動リンクの第2の端部に(スリーブの遠位端に向かって軸方向に)くぼみ/切り込み/トラフを有することを特徴とする。これは、医療用挿入器具が、椎弓根スクリューから分離されるとき、触覚フィードバックがユーザー/操作者に提供されることを可能にする。
【0020】
医療用挿入器具との画定された結合のためのスリーブが、詳細には直径方向に反対側かつ半径方向に外向きに延在する、ピン形状/ペグ形状の突起を有すると実用的である。
【0021】
好ましくは、ペグ形状の突起は、スリーブが周方向にねじれを防止して医療用挿入器具内に保持されている/される状態で、それらペグ形状の突起が医療用挿入器具と係合され得るように設計されている。
【0022】
さらに、シャフトが、非円形断面を有する筒状、または楕円筒状の形状で、詳細には、トルク伝達のために医療用挿入器具に係合される/医療用挿入器具を開け広げるように設計されている遠位係合部を有する場合に有利である。
【0023】
シャフトの部分は、半径方向に外向きに圧縮力を生成する/加える、詳細には医療用挿入器具を押し付けるように設計された押動片を有することが好ましい。詳細には、押動片は、それが半径方向に外向きに医療用挿入器具に押動力を加えることができ、結果、医療用分離器具の意図しない滑りが防止されるように形成または設計されている。
【0024】
有利には、シャフトは、実質的には丸い/円形のまたは非円形の断面の筒形状である近位ハンドル部を有する。好ましくは、近位ハンドル部は、縦溝が付けられている、または複数の軸方向に延在している細長い凹部/くぼみを有しており、その凹部/くぼみは、ユーザー/外科医によるシャフトの把持(および回転)を向上させるため、詳細には周方向に均等に配置/分配される。
【0025】
好ましくは、シャフトの近位端部に設けられている近位ハンドル部の後に、第1の円筒状の部分が軸方向に続く。シャフトの第1の円筒状の部分は、詳細には中空筒状のスリーブが周りに配置されたシャフトの部分であり、したがって半径方向に外向きに延在しているペグ形状/筒状の突起を有するシャフトの部分である。シャフトの第1の円筒状の部分は、好ましくは丸い/円形の断面を有する。第1の円筒状の部分上に配置されるシャフトのペグ形状の突起は、好ましくは、スリーブの運動リンク内に受容される。
【0026】
シャフトの第1の円筒状の部分の後に、シャフトの第2の円筒状の部分が軸方向に続くと有利である。詳細には、第2の円筒状の部分は、丸い/円形の断面を有する。好ましくは、第2の円筒状の部分の直径は、第1の円筒状の部分の直径よりも大きい。有利には、ばね用の支持面は、第2の円筒状の部分の近位端部に設けられる/形成される。押動片は、好ましくは、シャフトの第2の円筒状の部分に設けられる。
【0027】
第2の円筒状の部分の後に第3の円筒状の部分が軸方向に続くと実用的であり、詳細には、この第3の円筒状の部分は丸い/円形の断面を有し、その直径は第2の円筒状の部分の直径よりも小さいことが好ましい。この部分は、第2の円筒状の部分の直径よりも大きい部分がない限り、必ずしも直径/最大幅が丸い必要はない。
【0028】
有利な手法では、第3の円筒状の部分の後に遠位係合部が軸方向に続き、その遠位係合部は、シャフトの遠位端部に設けられる/配置される。
【0029】
さらに、本発明は、少なくとも上述した医療用分離器具を備える医療用アセンブリ、および医療用挿入器具に関する。
【0030】
医療用分離器具は、好ましくは椎弓根スクリューから医療用挿入器具を分離するように設計されている。
【0031】
有利な手法では、分離は、医療用分離器具が医療用挿入器具を、詳細には、椎弓根スクリューから軸方向に平行に延在している挿入器具の直径方向に反対側の2つの結合アームを分離するように設計されていることで実現される。
【0032】
好ましくは、挿入器具の結合アームはそれぞれ、多軸または単軸椎弓根スクリューの受入れスリーブ/チューリップ上に形成された対の戻り止め/掛止構造と係合可能である戻り止め/掛止構造を、それらの遠位端部に有する。
【0033】
医療用分離器具の非円形の遠位係合部は、シャフトを回転することによって医療用挿入器具の結合アームに係合されるように、詳細には椎弓根スクリューから結合アームを解除するように設計されていると実用的である。
【0034】
さらに、スリーブのペグ形状の突起は、ねじれを防止して医療用挿入器具内に受容されると有利である。この目的のために、医療用挿入器具は、好ましくはその近位端部に、軸方向に延在している2つの直径方向に反対側のV字型またはU字型の凹部を有し、その凹部は、スリーブのペグ形状の突起を受容し、ねじれを防止してこれらを保持する。
【0035】
言い換えれば、本発明は、シャフト、スリーブおよび(圧縮)ばね機構を備える(医療用)分離器具(「リムーバルキー(removal key)」)に関する。
【0036】
シャフトはピン/ペグを有し、スリーブは運動リンク/細長い穴を有し、シャフトのピン/ペグは、スリーブとシャフトが相対的に回転され得るようにスリーブの運動リンク/細長い穴に受容される。
【0037】
シャフトは、遠位端部において、遠位端部を介して(医療用)挿入器具(「ダウンチューブ(downtube)」)を椎弓根スクリューから分離するために挿入器具が広げられ得る、非円形の形状を有する。
【0038】
さらに、シャフトは押動片または係合機構を含み、この押動片または係合機構のそれぞれは、挿入器具内に分離器具を保持する。
【0039】
ばね機構は、スリーブが常に/自然に/自動式で/自動的に、ゼロ位置/画定された開始位置にあることが確実となるように、シャフトとスリーブの間に配置され、その結果、挿入器具への分離器具の挿入は、事前の手動での回転/向き付けなしで行うことができる。
【0040】
スリーブの運動リンクは、所定の角度で、好ましくは時計回りに約90度シャフトが回転されること可能にし、運動リンクの1つの端部に設けられた小さなくぼみを介して挿入器具を結合解除する/広げるための触覚フィードバックを提供できる。しかし、このくぼみは、運動リンクの機能に絶対に必要なものではない。
【0041】
挿入器具からの分離器具の意図しない滑りは、押動片または係合機構、運動リンクにあるくぼみ、および遠位端部における分離器具と挿入器具との間の接触により防止される。
【0042】
2つの器具(分離器具および挿入器具)を分離するために、分離器具(そのシャフト)は、元に、好ましくは反時計回りに90度戻され得る(ばね力によって支持される)。その結果、スリーブは、次の適用のためにゼロ位置/画定された開始位置に戻る。
【0043】
このように分離器具は提供され、この分離器具は、画定されたゼロ位置および自動的な向き付けを提供し、それ自体とインプラント/椎弓根スクリューとの間のフォームクロージャ―を必要とせず、さらに好ましくは分離のための触覚フィードバックを提供する。挿入器具の画定された広がりは、運動リンクと、(圧縮)ばねで生じる器具の向き(シャフトとスリーブの向き)と、により確保されている。
【0044】
以下、本発明を、図を用いてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】従来技術から既知である分離器具の断面図を示す。
図2図1の分離器具の下側領域の等角詳細図を示す。
図3図1の分離器具の上側領域の等角詳細図を示す。
図4】挿入器具へ挿入される図1の分離器具の等角図を示す。
図5】本発明による分離器具および挿入器具を備える本発明による医療用アセンブリの等角図を示す。
図6】本発明による分離器具の等角図を示す。
図7図5の分離器具の第1の等角詳細図を示す。
図8図5の分離器具の第2の等角詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図は、本質的には概略的なものにすぎず、本発明の理解を助ける役割をするだけである。同一の要素は、同じ参照記号で記される。
【0047】
図5は医療用アセンブリ2を示し、そのアセンブリは、(とりわけ)医療用分離器具4と医療用挿入器具6とを備える。
【0048】
挿入器具6は、メインボディ8を有する。これは、とりわけ分離器具4のための上側受け部10を形成する。挿入器具6は、上側受け部10の領域において、軸方向に延在している2つのV字型またはU字型の凹部12を有し、その凹部12は、分離器具4に設けられた対応する係合構造を受容するように設計されている。さらに、挿入器具6は、上側受け部10の領域において雌(内)ねじ部14を有し、その雌(内)ねじ部14は、医療用アセンブリ2の異なる器具(不図示)を受容するように、詳細にはねじ込むために、設計されている。例えば、雌ねじ部14は、挿入プッシャーまたは挿入プレッサーとして知られているものを収容でき、その雌ねじ部14は、多軸椎弓根スクリューについては(「挿入されたもの(insert)」を押すことにより)多軸性を固定する働きをする。
【0049】
軸方向に平行に延在している直径方向に反対側の2つの結合アームは、メインボディ8の上側受け部10に続く。それらの遠位端部において、結合アーム16は、掛止構造、詳細には戻り止め18を有し、基本的にこの戻り止め18は、多軸または単軸椎弓根スクリューの受入れスリーブ/チューリップに形成された対の掛止構造(不図示)に係合され得る。挿入器具6は、さらにロックスリーブ20を備え、このロックスリーブ20は、メインボディ8の周りの上側受け部10と結合アーム16との間の遷移領域22に配置されている。
【0050】
挿入器具6は、基本的に、その戻り止め18において、椎弓根スクリュー、詳細には椎弓根スクリューの受入れスリーブ/チューリップを受容するように設計されている。結合アーム16は、ロックスリーブ20の第1の解放位置において、それらの戻り止め18を介して、椎弓根スクリュー、詳細には椎弓根スクリューの対の掛止構造を受容する適当な弾性/柔軟性を有する。メインボディ8は、第1の解放位置から第2のロック位置へロックスリーブ20を回転させることにより、ロックスリーブ20に対して軸方向に上向きに引き抜かれる。これにより、結合アーム16をロックスリーブ20によって固定し、その結果、椎弓根スクリューは、挿入器具6によって堅固に、およびしっかりと保持される。
【0051】
外科医/ユーザーは、椎弓根スクリューが螺合/固定された後に、椎弓根スクリューから挿入器具6を分離したい場合、彼/彼女は、ロックスリーブ20を(ロックスリーブ20を回転することによって)第2のロック位置から第1の解放位置へもう一度動かす必要がある。外科医/ユーザーは再び、分離器具4を挿入器具6へ挿入する。分離器具を用いて、挿入器具6の結合アーム16は、半径方向に外向きに広げられ/押圧され得、それにより挿入器具6から椎弓根スクリューを分離する。
【0052】
本発明による医療用分離器具4を、図6図7および図8により詳細に示す。
【0053】
分離器具4は、基本的に、シャフト/ロッド24と、スリーブ26と、ばね28と、を有する。
【0054】
シャフト24は、その近位端部に近位ハンドル部30を有する。示された好ましい実施例において、近位ハンドル部30は、楕円筒形状(楕円形の断面を有する筒状)であり、軸方向に延在し、周方向に均等に配置/分配された複数の細長い凹部32を有し、この凹部32は、ユーザー/外科医によるシャフト24の把持を向上する働きをする。
【0055】
丸い/円形の断面を有する第1の筒状の部分34は、シャフト24の軸方向に近位ハンドル部30に続く。第1の筒状の部分34は、半径方向に外向きに延在しているペグ形状の突起36を有する。
【0056】
第1の筒状の部分34の後に、丸い/円形の断面の第2の筒状の部分38がシャフト24の軸方向に続く。第2の筒状の部分38は、第1の筒状の部分34よりも大きい直径を有する。押動片または係合機構40は、第2の筒状の部分38上に設けられる/配置される。押動片40は、半径方向に外向きに圧縮力を生成することにより挿入器具6を押し付けることができ、その結果、分離器具4の意図しない滑りが防止される。分離器具4の意図しない滑りは、異なる係合機構によっても防止され得る。
【0057】
第2の筒状の部分38の後に、好ましくは丸い/円形の断面の第3の筒状の部分42が、シャフト24の軸方向に続く。第3の筒状の部分42は、第2の筒状の部分38と同じか、それより小さい直径を有する。
【0058】
第3の筒状の部分42の後に、遠位係合部43がシャフト24の軸方向に続き、この遠位係合部43はシャフト24の遠位端部を形成する。遠位係合部43は、非円形断面を有する筒状である。
【0059】
分離器具4のスリーブ26は、基本的に中空筒形状で、シャフト24の第1の円筒状の部分34の周りに配置される。スリーブ26は、シャフト24に設けられたペグ形状の突起36が受容される、または導かれる運動リンク/細長い穴44を有する。運動リンク44は、スリーブ26に対するシャフト24の回転範囲を画定する。詳細には、スリーブ26の運動リンク44は、シャフト24の約90度の回転を可能にする。スリーブ26は、直径方向に互いに反対にあり、半径方向に外向きに延在する2つのペグ形状の突起45を有する。スリーブ26のペグ形状の突起45は、挿入器具6のV字型またはU字型の凹部12に受容されるように設けられ、その結果、スリーブ26は、挿入器具6にねじれを防止して保持されている/されることになる。
【0060】
ばね28は、コイルばねまたは圧縮ばねであり、(ばね28のための)支持面46と、(ばね28のための)接触面48と、の間に配置されている。この支持面46は、シャフト24の第2の円筒状の部分38の近位端部に形成され、この接触面48は、スリーブ26の遠位端部に形成される。
【0061】
スリーブ26の運動リンク44は、斜めに延在する、すなわち、スリーブ26の周方向および軸方向の両方に延在する。これは、運動リンク44の第1の端部50は、運動リンク44の第2の端部52よりもスリーブ26の遠位端部側に配置されていることを意味する。運動リンク44の形状は、特に図7または図8から明らかであり、鏡映し的に存在/形成してもよい(左利きのユーザーのための実施形態)。
【0062】
ばね28は、スリーブ26に圧縮力を加え、スリーブ26を軸方向に上向きに押動する。その結果、シャフト24のペグ形状の突起36は、自動的にまたは自動式で、運動リンク44の第1の端部50に押し付けられる。シャフト24のペグ形状の突起36が運動リンク/細長い穴44の第1の端部50にある場合、ここが画定された開始位置/ゼロ位置/当初の位置を意味する。スリーブ26とシャフト24とは、この画定された開始位置において互いに対して配置される。その結果、スリーブ26のペグのような突起45が挿入器具6のV字型の凹部12に受容され、ねじれを防止して保持される場合に、結合アーム16が広がらないように、シャフト24の非円形の遠位係合部43は、挿入器具6の結合アーム16に対して配置される。言い換えれば、シャフト/ロッド24および分離器具4のスリーブ26は、挿入器具6への挿入/ポジショニングのために互いに対して自動的に向き付けられる。
【0063】
分離器具4が挿入器具6へ挿入されると、スリーブ26(スリーブ26のペグ形状の突起45)は、挿入器具6のV字型またはU字型の凹部12にねじれを防止して保持される。ユーザー/外科医は、近位ハンドル部30を、運動リンク/細長い穴44の第2の端部52に位置するシャフト24のペグ形状の突起36まで時計回りに約90度回転することで、スリーブ26に対して直ちにシャフト24を回転できる。この位置において、楕円形状のシャフト24の遠位係合部43は、挿入器具6の結合アーム16を開け広げ、それによって椎弓根スクリューから挿入器具6を分離する。
【0064】
図8で詳細に示されるように、運動リンク/細長い穴44は、その第2の端部52にくぼみ/切り込み/トラフ54を有してもよい。しかし、くぼみ54が設けられないことも考えられる。シャフト24のペグ形状の突起36が、運動リンク44の第2の端部52のくぼみ54内に滑り込むまたは嵌る、もしくは受容される、すなわち、詳細には、ばね28によってくぼみ54へ押されると、触覚フィードバックは、ユーザー/外科医に提供され、挿入器具6が椎弓根スクリューから分離されることをユーザー/外科医へ示す。
【0065】
この位置において、分離器具4の意図しない滑りは、挿入器具6を内側から押し付ける押動片40と、運動リンク44上のくぼみ54と、その遠位端部での分離器具4および挿入器具6の間の接触と、により防止される。
【0066】
2つの器具(分離器具4と挿入器具6)を分離するために、分離器具4は、反時計回りに90度元に戻され得る(ばね力によって支持される)。その結果、スリーブ26は、次の適用のためにゼロ位置/開始位置に戻る。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
椎弓根スクリューから医療用挿入器具(6)を分離するための医療用分離器具(4)であって、
シャフト(24)と、
前記シャフト(24)の部分(34)の周りに配置されているスリーブ(26)であって、前記医療用挿入器具(6)との画定された結合のために構成される前記スリーブ(26)と、
を備え、
前記シャフト(24)は、前記スリーブ(26)に対して回転可能であり、
前記医療用分離器具(4)は、前記シャフト(24)および前記スリーブ(26)を自動式でおよび自動的に画定された初期位置へ動かすように構成される、
医療用分離器具(4)。
(項目2)
前記シャフト(24)上に設けられた支持面(46)と、前記スリーブ(26)と、の間に配置されるばね(28)であって、前記シャフト(24)および前記スリーブ(26)をそのばね力を介して前記画定された初期位置へ動かすために配置されている前記ばね(28)をさらに備える、項目1に記載の医療用分離器具(4)。
(項目3)
前記シャフト(24)は、前記スリーブ(26)が周りに配置されている前記部分(34)にペグ形状の突起(36)を有し、
前記スリーブ(26)は、運動リンク(44)を有し、
前記シャフト(24)の前記ペグ形状の突起(36)は、前記運動リンク(44)が、前記スリーブ(26)に対する前記シャフト(24)の回転範囲を画定するように、前記スリーブ(26)の前記運動リンク(44)内に受容されている、項目2に記載の医療用分離器具(4)。
(項目4)
前記運動リンク(44)の第1の端部(50)が、前記運動リンク(44)の第2の端部(52)よりも前記スリーブ(26)の遠位端部側に配置されるように、前記運動リンク(44)は斜めに延在する、すなわち、周方向および前記スリーブ(26)の軸方向の両方に延在する、項目3に記載の医療用分離器具(4)。
(項目5)
前記画定された初期位置において、前記シャフト(24)の前記ペグ形状の突起(36)は、前記ばね(28)により、前記運動リンク(44)の前記第1の端部(50)に押し付けられている、項目4に記載の医療用分離器具(4)。
(項目6)
前記運動リンク(44)は、前記シャフト(24)の前記ペグ形状の突起(36)が前記ばね(28)を介してくぼみ(54)に押され得るように、前記運動リンク(44)の第2の端部(52)にくぼみ(54)を有する、項目4にまたは5記載の医療用分離器具(4)。
(項目7)
前記スリーブ(26)は、前記医療用挿入器具(6)との画定された結合のためのペグ形状の突起(45)を有する、項目1から6のいずれか1項に記載の医療用分離器具(4)。
(項目8)
前記シャフト(24)は、非円形断面の筒状の形状である遠位係合部(43)を有する、項目1から7のいずれか1項に記載の医療用分離器具(4)。
(項目9)
前記シャフト(24)の部分(38)は、半径方向に外向きに押動力を加えるように構成された押動片または係合機構(40)を有する、項目1から8のいずれか1項に記載の医療用分離器具(4)。
(項目10)
項目1から9のいずれか1項に記載の前記医療用分離器具(4)と、医療用挿入器具(6)と、を少なくとも備える、医療用アセンブリ(2)。
【符号の説明】
【0067】
2:医療用アセンブリ
4:分離器具
6:挿入器具
8:メインボディ
10:上側受け部
12:V字型凹部
14:雌ねじ部
16:結合アーム
18:戻り止め
20:ロックスリーブ
22:遷移領域
24:シャフト/ロッド
26:スリーブ
28:ばね
30:近位ハンドル部
32:細長い凹部
34:第1の筒状の部分
36:(シャフト/ロッドの)ペグ形状の突起
38:第2の筒状の部分
40:押動片
42:第3の筒状の部分
43:遠位係合部
44:運動リンク/細長い穴
45:(スリーブの)ペグ形状の突起
46:支持面
48:接触面
50:第1の端部
52:第2の端部
54:くぼみ/切り込み/トラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8