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特許7573612電動車両用の駆動系システム、および駆動系システムを冷却する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電動車両用の駆動系システム、および駆動系システムを冷却する方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/00 20060101AFI20241018BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20241018BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20241018BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60L15/00 H
H02K9/19 A
B60L15/00 Z
B60K11/04 Z
B60K1/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022533144
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 CN2020133069
(87)【国際公開番号】W WO2021109980
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】201911213242.8
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522218725
【氏名又は名称】ヴァレオ、パワートレイン、(ナンジン)、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VALEO POWERTRAIN (NANJING) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】チン、イェーチン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、カイ
(72)【発明者】
【氏名】スン、クオチアン
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-253167(JP,A)
【文献】特開2018-019551(JP,A)
【文献】特開2007-124764(JP,A)
【文献】特開2012-147564(JP,A)
【文献】特開2004-304936(JP,A)
【文献】特開2005-020881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0291570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-6/12
7/00-16/00
B60L 1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
H02K 9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両用の駆動系システムであって、
ロータおよびステータを備える電気モータと、
前記ステータに電気エネルギーを供給するように構成された電力インバータと、
前記ロータにより提供されるトルクを受けるように構成された、伝動シャフトを備える減速機と、を備え、
前記電気モータ、前記電力インバータおよび前記減速機は、駆動系アセンブリとして一体化され、
前記駆動系システムは、冷却剤が流れ、前記冷却剤を前記駆動系アセンブリ全体に分散させるように構成された冷却回路であって、前記電力インバータ内部に配置された冷却チャネルを備え、前記冷却チャネルは、前記冷却回路からの前記冷却剤を保持するための冷却剤保持セクションと、前記冷却剤を受けるための入口と、前記冷却剤を排出するための出口と、を備える、冷却回路をさらに備え、
前記冷却チャネルは、前記電力インバータの内周縁に沿って形成されたループとして構成され、
前記入口および前記出口は、重力配向において前記冷却チャネルの上端部に配置される、駆動系システム。
【請求項2】
前記冷却回路に接続する機械式ポンプ部品であって、前記伝動シャフトにより駆動されて前記冷却剤を前記冷却チャネルに移送する機械式ポンプ部品をさらに備える、請求項1に記載の駆動系システム。
【請求項3】
補助伝熱要素が前記冷却チャネル内に設けられ、
前記補助伝熱要素は、少なくとも1つのスパイク、押出壁、またはこれらの組み合わせを備える、請求項1または2に記載の駆動系システム。
【請求項4】
熱質量体に、前記電気モータ、前記減速機、または両方が設けられ、
前記電力インバータは、前記電気モータ、または前記減速機、または両方に機械的に装着されることにより、前記熱質量体から恩恵を受けて、前記冷却チャネル、並びに前記冷却剤保持セクションおよび前記熱質量体への熱伝達をさらに増加させるその内部の前記補助伝熱要素に保持された前記冷却剤を介して、熱をその内部に放散させる、請求項3に記載の駆動系システム。
【請求項5】
冷却フィンが、前記電気モータ、前記減速機、または前記電気モータおよび前記減速機の両方の外面に設けられ、
前記電力インバータは、前記電気モータ、または前記減速機、または両方に機械的に装着されることにより、前記冷却フィンから恩恵を受けて、前記冷却チャネル、並びに前記冷却剤保持セクションおよび前記冷却フィンへの熱伝達をさらに増加させるその内部の前記補助伝熱要素に保持された前記冷却剤を介して、熱をその内部に放散させる、請求項3に記載の駆動系システム。
【請求項6】
電気モータと電力インバータと減速機とにより一体化された駆動系アセンブリを備える電動車両用の駆動系システムを冷却する方法であって、
冷却剤が流れ、前記冷却剤を前記駆動系アセンブリ全体に分散させるように構成された冷却回路を設けるステップと、
前記冷却回路に前記電力インバータ内部に配置された冷却チャネルを設けるとともに、前記冷却チャネルに冷却剤を保持する冷却剤保持セクションをさらに設けるステップと、を備え、
前記冷却チャネルを、前記電力インバータの内周縁に沿うループとして形成するステップと、
前記冷却チャネルの入口および出口を、重力配向において前記冷却チャネルの上端部に配置するステップと、をさらに備える、方法。
【請求項7】
前記冷却回路に接続する機械式ポンプ部品であって、前記駆動系アセンブリの1つの伝動シャフトにより駆動されて前記冷却剤を前記冷却チャネルに移送する機械式ポンプ部品を設けるステップをさらに備える、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記電力インバータからの熱処理を促進するように補助伝熱要素を前記冷却チャネル内に設けるステップをさらに備え、
前記補助伝熱要素は、少なくとも1つのスパイク、押出壁、またはこれらの組み合わせを備える、請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
熱質量体に前記電気モータ、前記減速機、または両方を設けるステップをさらに備え、
前記電力インバータは、前記電気モータ、または前記減速機、または両方に機械的に装着されることにより、前記熱質量体から恩恵を受けて、前記電力インバータの前記冷却チャネル、並びに前記冷却剤保持セクションおよび前記熱質量体への熱伝達をさらに増加させるその内部の前記補助伝熱要素に保持された前記冷却剤を介して、熱をその内部に放散させる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
冷却フィンを、前記電気モータ、前記減速機、または前記電気モータおよび前記減速機の両方の外面に設けるステップをさらに備え、
前記電力インバータは、前記電気モータ、または前記減速機、または両方に機械的に装着されることにより、前記冷却フィンから恩恵を受けて、前記電力インバータの前記冷却チャネル、並びに前記冷却剤保持セクションおよび前記冷却フィンへの熱伝達をさらに増加させるその内部の前記補助伝熱要素に保持された前記冷却剤を介して、熱をその内部に放散させる、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、電動車両用の駆動系システム、および駆動系システムを冷却する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費が良く排出ガスの少ない車両を設計および製造することが顕著な趨勢となっている。この傾向は、環境問題並びに高騰する燃料費を背景としている。この傾向の最先端は、BEV(バッテリー電気自動車)、HEV(ハイブリッド電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)、レンジエクステンダー搭載EV、FCEC(燃料電池電気自動車)等の、比較的効率の良い内燃機関と電気駆動モータとを組み合わせた電動車両の開発である。電動車両は、熱を発生する部品、特に駆動系システムを含み得る。過度の発熱は、部品の性能低下または破損の原因となり得る。
【0003】
したがって、電動車両用の駆動系システムに対する冷却設計の改善が、少なくともシンプルな構成で高効率かつ低コストで提供できれば望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の態様および利点は、以下の説明において部分的に記載され得る、または説明から明らかであり得る、または本発明の実施を通じて知ることができる。
【0005】
本明細書において開示される一態様によれば、電動車両用の駆動系システムが提供される。駆動系システムは、ロータおよびステータを備える電気モータと、ステータに電気エネルギーを供給するように構成された電力インバータと、ロータにより提供されるトルクを受けるように構成された、伝動シャフトを備える減速機と、を備え、電気モータ、電力インバータおよび減速機は、駆動系アセンブリとして一体化される。駆動系システムは、駆動系アセンブリと接続し、冷却剤が流れ、冷却剤を駆動系アセンブリ全体に分散させるように構成された冷却回路をさらに備え、冷却回路は、電力インバータ内部に配置された冷却チャネルであって、冷却回路からの冷却剤を保持するための冷却剤保持セクションと、冷却剤を受けるための入口と、冷却剤を排出するための出口と、を備える冷却チャネルを備える。
【0006】
一実施形態において、駆動系システムは、冷却回路に接続する機械式ポンプ部品であって、伝動シャフトにより駆動されて冷却剤を冷却チャネルに移送する機械式ポンプ部品をさらに備える。
【0007】
一実施形態において、機械式ポンプ部品は、電気モータと同じ側、または電気モータとは別の減速機の側に配置される。
【0008】
一実施形態において、補助伝熱要素が冷却チャネル内に設けられる。補助伝熱要素は、少なくとも1つのスパイク、押出壁、またはこれらの組み合わせを備える。
【0009】
一実施形態において、熱質量体に、電気モータ、減速機、または両方が設けられ、電力インバータは、電気モータ、または減速機、または両方に機械的に装着されることにより、熱質量体から恩恵を受けて(benefit)、冷却チャネル、並びに冷却剤保持セクションおよび熱質量体への熱伝達をさらに増加させるその内部の補助伝熱要素に保持された冷却剤を介して、熱をその内部に放散させる。
【0010】
一実施形態において、冷却フィンが、電気モータ、減速機、または電気モータおよび減速機の両方の外面に設けられ、電力インバータは、電気モータ、または減速機、または両方に機械的に装着されることにより、冷却フィンから恩恵を受けて、冷却チャネル、並びに冷却剤保持セクションおよび冷却フィンへの熱伝達をさらに増加させるその内部の補助伝熱要素に保持された冷却剤を介して、熱をその内部に放散させる。
【0011】
一実施形態において、冷却チャネルは、電力インバータの内周縁に沿って形成されたループとして構成され、入口および出口は、重力配向において冷却チャネルの上端部に配置される。
【0012】
代替実施形態において、冷却チャネルは、電力インバータの収容スペース内における蛇行形状のチャネルとして構成される。
【0013】
代替実施形態において、冷却チャネルは、電力インバータの収容スペース内における螺旋形状のチャネルとして構成される。
【0014】
代替実施形態において、冷却チャネルは、電力インバータの収容スペース内におけるZ形状のチャネルとして構成される。
【0015】
本明細書において開示される別の態様によれば、電気モータと電力インバータと減速機とにより一体化された駆動系アセンブリを備える電動車両用の駆動系システムを冷却する方法が提供される。本方法は、冷却剤が流れ、冷却剤を駆動系アセンブリ全体に分散させるように構成された冷却回路を設けるステップと、冷却回路に電力インバータ内部に配置された冷却チャネルを設けるとともに、冷却チャネルに冷却剤を保持する冷却剤保持セクションをさらに設けるステップと、を備える。
【0016】
一実施形態において、本方法は、冷却回路に接続する機械式ポンプ部品であって、駆動系アセンブリの1つの伝動シャフトにより駆動されて冷却剤を冷却チャネルに移送する機械式ポンプ部品を設けるステップをさらに備える。
【0017】
一実施形態において、本方法は、電力インバータからの熱処理を促進するように補助伝熱要素を冷却チャネル内に設けるステップをさらに備える。補助伝熱要素は、少なくとも1つのスパイク、押出壁、またはこれらの組み合わせを備える。
【0018】
一実施形態において、本方法は、熱質量体に、電気モータ、減速機、または両方を設けるステップをさらに備え、電力インバータは、電気モータ、または減速機、または両方に機械的に装着されることにより、熱質量体から恩恵を受けて、インバータの冷却チャネル、並びに冷却剤保持セクションおよび熱質量体への熱伝達をさらに増加させるその内部の補助伝熱要素に保持された冷却剤を介して、熱をその内部に放散させる。
【0019】
一実施形態において、本方法は、冷却フィンを、電気モータ、減速機、または電気モータおよび減速機の両方の外面に設けるステップをさらに備え、電力インバータは、電気モータ、または減速機、または両方に機械的に装着されることにより、冷却フィンから恩恵を受けて、冷却チャネル、および冷却剤保持セクションおよび冷却フィンへの熱伝達をさらに増加させるその内部の補助伝熱要素に保持された冷却剤を介して、熱をその内部に放散させる。
【0020】
一実施形態において、本方法は、冷却チャネルを、電力インバータの内周縁に沿うループとして形成するステップと、冷却チャネルの入口および出口を、重力配向において冷却チャネルの上端部に配置するステップと、をさらに備える。
【0021】
代替実施形態において、本方法は、冷却チャネルを、電力インバータの収容スペース内における蛇行形状のチャネルとして形成するステップをさらに備える。
【0022】
代替実施形態において、本方法は、冷却チャネルを、電力インバータの収容スペース内における螺旋形状のチャネルとして形成するステップをさらに備える。
【0023】
代替実施形態において、本方法は、冷却チャネルを、電力インバータの収容スペース内におけるZ形状のチャネルとして形成するステップをさらに備える。
【0024】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明を参照することにより良好に理解されるであろう。本明細書に組み込まれてその一部を形成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、説明と併せて本発明の原理を説明することに資する。
【0025】
当業者を対象とする本発明のその最良の態様を含む完全かつ有効な開示が、添付図面を参照する明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本開示の例示的な態様による駆動系システムの概略図である。
図2図2は、本開示の別の例示的な態様による駆動系システムの概略図である。
図3図3は、本開示の例示的な態様による駆動系システムの電力インバータの概略図である。
図4図4は、図3に示す電力インバータの1つの例示的な冷却チャネルの概略図である。
図5図5は、図3に示す電力インバータの別の例示的な冷却チャネルの概略図である。
図6図6は、本開示の電力インバータの別の例示的な冷却チャネルの概略図である。
図7図7は、本開示の電力インバータの別の例示的な冷却チャネルの概略図である。
図8図8は、本開示の電力インバータの別の例示的な冷却チャネルの概略図である。
図9図9は、熱質量体、および図8の冷却チャネルを有する1つの例示的な電力インバータを示す。
図10図10は、冷却フィン、および図8の冷却チャネルを備える1つの例示的な電力インバータを示す。
図11図11は、熱質量体、およびスパイクを有する図8の冷却チャネルを備えた別の例示的な電力インバータを示す。
図12図12は、本開示の例示的な態様による駆動系システムを冷却する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を詳細に記述する。本発明の単数または複数の例が添付図面に示される。詳細な説明において、図面中の特徴部を参照するために数字および文字による表示指定が使用される。図面および説明における類似または同様の表示指定は、本発明の類似または同様の部品を指すために使用される。本明細書で使用される場合、用語「a」、「an」及び「the」は、文脈で明確に指示しない限り、1つ以上の要素が存在することを意味することが意図されている。「備える」、「含む」および「有する」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外に追加の要素が存在し得ることを意味している。「第1」および「第2」という用語は、ある部品を別の部品から区別するために互換的に使用され得るとともに、個々の部品の位置または重要性を示すことを意図していない。
【0028】
図面を参照すると、同一の数字は図面を通じて同一の要素を指している。図1および図2は、本開示の実施形態による駆動系システム101、102を示している。より具体的には、図1の実施形態について、駆動系システム101は、駆動系アセンブリ1を備えている。駆動系アセンブリ1は、(図3に示す)電力インバータ3と、電気モータ2と、減速機4と全体として一体化されている。したがって、図示の駆動系アセンブリ1は、単一のユニットである。
【0029】
電気モータ2は、同期モータまたは非同期モータであり得る。同期モータである場合、巻線ロータまたは永久磁石モータが含まれ得る。電気モータにより供給される公称電力は、48V~350Vの公称供給電圧に対して、10KW~60KW、例えば15KW程度、またはより高出力の場合には800Vまでとすることができる。高電圧供給に適する電気モータの場合、この電気モータにより供給される公称電力は、60KWであり得る。図示の実施形態において、電気モータ2は永久磁石を有する同期モータであり、10KW~60KWの公称電力を提供する。電気モータ2は、三相巻線、または2つの三相巻線もしくは五相巻線の組み合わせを有するステータを含み得る。
【0030】
減速機4は、電気モータ2に連結されている。減速機4は、電気モータの高速・低トルクを、低速・高トルクに変換することができる。減速機4は、2つ以上のギアを備え得る。ギアのうちの1つは、減速を介したトルク増大を目的として、例えば電気モータ2により駆動される。減速機4は、伝動シャフト41、すなわち中間シャフトをさらに備え得る。伝動シャフト41は、電気モータの1つの伝動シャフト(図示せず)により駆動される駆動ギアと、従動機械的負荷(図示せず、例えば車両のホイールシャフト)に連結された大径の別のギアとを結合している。
【0031】
図示の実施形態において、電気モータ2および減速機4は、高い熱容量を有するように設計されている。(図3に示す)電力インバータ3は、電線により電気モータ2に、かつ機械的に電気モータ2の壁部または減速機4の壁部に、または電気モータ2および減速機4の両壁部に取り付けられている。電力インバータ3は、公称電圧の電気エネルギーを有する電気エネルギー貯蔵ユニット(図示せず)により供給される直流(「DC」)を、電気モータ2に使用される交流(「AC」)に変換する。電力インバータ3は、電界効果トランジスタ(「FET」)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(「MOSFET」)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(「IGBT」)であり得るが、これらに限定されない。公称供給電力が48Vの場合、電力インバータ3は、MOSFETトランジスタであり得る。高電圧に相当する供給電圧の場合、電力インバータ3は、IGBTであり得る。
【0032】
図1および図2を参照すると、電気モータ2は第1ハウジング11に収容され、減速機4は第2ハウジング12に収容されている。第1ハウジング11および第2ハウジング12は、一体型であってもよいし、ハウジングのサブ部品を一体に組み付けることにより形成されても良い。第1ハウジング11および第2ハウジング12は、例えばネジにより互いに堅固に固定され得る。ここで、封止壁が、第1ハウジング11と第2ハウジング12との間に設けられている。
【0033】
冷却フィン91、92が、熱を駆動系アセンブリ1の外部に向けて放散させるために設けられている。冷却フィン91、92は、第1ハウジング11および第2ハウジング12の外面により支持されている。これらの冷却フィン91、92は、例えば、第1ハウジング11および第2ハウジング12と一体的に作製されている。これらの冷却フィン91、92により、第1ハウジング11および第2ハウジング12の外面を増大させることができるため、熱が第1ハウジング11および第2ハウジング12を介して駆動系アセンブリ1の外部に放散されることを促進する。第1ハウジング11の外面全体および第2ハウジング12の外面全体に、冷却フィン91、92を支持しても良い。冷却フィン91、92は、列状に配置され得る。2つの隣接する列の間に、一定または一定でないピッチが存在し得る。これらの列は、すべてが同一の配向を有してもよいし、有さなくてもよい。必要に応じて、同一のフィンが最初に第1ハウジング11に向かって、次に第2ハウジング12に向かって延び得る。
【0034】
図示の実施形態について、冷却剤が流れる冷却回路5が、冷却剤を駆動系アセンブリ1全体に分散させるように設けられている。冷却回路5を流れる冷却剤は、例えば、油、水、または水性冷却剤であり得る。
【0035】
さらに図示の実施形態において、機械式ポンプ部品6が、冷却回路5内に設けられている。機械式ポンプ部品6は、冷却回路5内を流れる冷却剤を促進し得るジェロータポンプであり得る。さらに、機械式ポンプ部品6は、駆動系アセンブリ1と接続しているとともに、冷却剤を駆動系アセンブリに、特に電力インバータ3に、冷却回路5により提供される1つのセクション51を介して移送し、かつ冷却剤を駆動系アセンブリから、特に減速機4から、冷却回路5により提供される別のセクション52を介して回収するように構成されている。セクション51、52は、駆動系アセンブリ1の外部に配置されている。特にジェロータポンプによる機械式ポンプ部品6を使用することにより、移送されてセクション51内を駆動系アセンブリに向けて流れる冷却剤は、多量の一定送達量および高い圧力をもたらす。図1に示すように、機械式ポンプ部品6は、伝動シャフト41の一端部に機械的に接続されていることにより、機械式ポンプ部品6は、回転シャフトからの機械動力により駆動され得る。回転シャフトにより生成される機械動力は十分に利用され得るとともに、冷却剤を移送するように冷却回路に配置されたポンプを駆動するための追加の動力源(例えば、電気ポンプを駆動するための電力の使用)が必要ないということが理解され得る。このため、専用のモータをなくすことでエネルギーが節約され、コストが下げられ、スペースが縮小され得る。
【0036】
ただし、本明細書に記載の例示的なシステム101は、例示的に過ぎないことをさらに理解されたい。一部の例示的な実施形態において、駆動系アセンブリ1内部のシャフトの回転力を良好に使用するように、アセンブリの別の状態および必要に応じて、機械式ポンプ部品6は、伝動シャフト41の別の端部に機械的に接続され得る(例えば、図2に示す例示的なシステム102)。
【0037】
図3を参照すると、図3は、本開示の一実施形態による駆動系システムの電力インバータ3を示している。図3に示すように、電力インバータ3の軸に対応する長手配向Lと、横配向Tと、重力配向に対応する鉛直配向Vとが規定されている。図示の実施形態において、冷却チャネル33が冷却回路5により提供されている。さらに、冷却チャネル33は、機械式ポンプ部品6からの冷却剤を受けるための入口31と、冷却剤を排出するための出口32と、を備えている。また、冷却チャネル33は、冷却剤保持セクション35を備えることにより、機械式ポンプ部品6が作動していても作動していなくても、冷却剤が冷却チャネル内に存在するようになっている。したがって、冷却チャネル33は、重力の作用により冷却チャネル33を流れる、または残留する冷却剤によって常に冷却状態が維持され得る。
【0038】
特に、図3図5に示すように、電力インバータ3の径方向表面内に配置されるとともに電力インバータの内周縁に沿って形成された冷却チャネル33は、基本的に環状ループである。入口31および出口32は、重力配向において冷却チャネル33、331の上端部に配置されている。入口31および出口32は、さらに、水平平面において配置され得る、または、若干の高低差が存在し得る。さらに、冷却剤保持セクション35、351は、重力配向に沿って冷却チャネル33、331の下部に形成されている。減速機および/または電気モータの高い熱重量、および熱伝達を確保する冷却剤の残留により、機械式ポンプシステムが停止中または非常に低い流量でしか動作していなくても、インバータは継続的に冷却され得る。
【0039】
ジェロータポンプ等の機械式ポンプ部品6の作動中、一定量の冷却剤が、ジェロータポンプから電力コンバータ3内の冷却チャネル33、331に移送され得る。特に、冷却剤は、入口31を介して冷却チャネルに進入し、冷却チャネルを通過して流れ、出口32を介して冷却チャネルから退出する。したがって、電力インバータ3からの熱が、冷却剤が流れることにより放散される。ジェロータポンプ6が機械的に接続されている回転シャフト、すなわち伝動シャフト41が停止状態になると、冷却剤が冷却チャネル33、331の冷却剤保持セクション35、351に残留することになる。これにより、残留している冷却剤がそれ自体で吸熱し、熱を熱質量体に伝達することにより、電力コンバータ3は、冷却状態に維持され得る。
【0040】
図4および図5を参照すると、これらの図は異なる例示的な冷却チャネル33、331を示している。補助伝熱要素が、冷却チャネル33、331内に設けられている。これにより、例えばジェロータポンプが低速で動作している、または休止状態にある場合にも、高熱容量部品、すなわち減速機および電気モータに対するさらなる放熱が提供される。実施形態に図示されるように、補助伝熱要素は、図5に示すような複数の金属スパイク34、または図6に示すような押出壁341、またはスパイク34と押出壁341との組み合わせであり得る。補助伝熱要素は、アルミニウム等の熱材料で作製される。
【0041】
図6を参照すると、別の例示的な冷却チャネル332が示されている。冷却チャネル332は、螺旋の形状として設計されている。入口312がその形状の中央に設けられ、出口322がその形状の外縁部に設けられている。冷却剤保持セクション352が、入口312と出口322との間に形成されている。
【0042】
図7を参照すると、別の例示的な冷却チャネル333が示されている。冷却チャネル333は、蛇行する形状として設計されている。入口313がその形状の底部に設けられ、出口323がその形状の上部に設けられている。冷却剤保持セクション353が、入口313と出口323との間に形成されている。
【0043】
図8を参照すると、別の例示的な冷却チャネル334が示されている。冷却チャネル334は、径方向平面においてZ形状として設計されている。入口314および出口324の両方が、その形状の上部に設けられている。冷却剤保持セクション354が、その形状の底部に形成されている。
【0044】
ただし、本明細書に記載の例示的な冷却チャネル33、331、332、333、334は、例示に過ぎないことを理解されたい。図示のこれらの形状の他に、冷却剤ポンプが非常に低い流量しか有していない場合でも、冷却剤を維持して内部に最小限の空気しか有さないようにすることができる冷却チャネルの他の形状が含まれるべきである。
【0045】
図9および図10を参照すると、冷却チャネル、例えば図8に示す例示的な冷却チャネル334を収容する電力インバータ3は、大型の熱質量体、例えば、電気モータ2、または減速機4、または電気モータl2および減速機4の両方に接触し得る。代替的に、例示的な冷却チャネル334は、電気モータ2、または減速機4、または電気モータ2および減速機4の両方の外面に配置された冷却フィン91、92に接触し得る。この構成により、冷却チャネル334に残留する冷却剤は、電力インバータ3からの熱伝動を確保することができる。さらには、電力インバータ3からの熱が、大型の熱質量体または冷却フィンによりさらに放散され得る。
【0046】
図11を参照すると、(図示のような)大型の熱質量体または冷却フィンに対するさらなる放熱のために、スパイク34等の複数の補助冷却要素が、例示的なZ形状の冷却チャネル334のような冷却チャネルに設けられている。スパイクと熱質量体または冷却フィンに面する冷却チャネルの表面との間の距離dは、最小にすべきである。これにより、放熱面積が増大し、より高い熱伝動効果が得られるであろう。
【0047】
図12を参照すると、本開示の例示的な態様による駆動系システムを冷却する例示的な方法200のフロー図が示されている。例えば、例示的な方法200は、図1および図2を参照して上述した例示的な駆動系システム101、102を冷却するために使用され得る。
【0048】
例示的な方法200は、駆動系アセンブリに接続した冷却回路であって、冷却剤が流れることで冷却剤を駆動系アセンブリ全体に分散するように構成された冷却回路を設けるステップ201を含んでいる。駆動系アセンブリは、電気モータ、電力インバータおよび減速機と一体化されている。
【0049】
例示的な方法200は、冷却回路に電力インバータ内部に配置された冷却チャネルを設けるとともに、冷却チャネルに冷却剤保持セクションをさらに設けて、モータおよび/または減速機のような熱質量体、またはモータおよび/または減速機の外面により提供される冷却フィンへの放熱を維持して電力インバータからの熱を除去することを可能にするステップ202をさらに含む。
【0050】
続いて、例示的な方法200は、少なくとも1つのスパイク、押出壁、またはこれらの組み合わせを冷却チャネル内に設けて電力インバータからの放熱を促進するステップ203を含む。
【0051】
さらに、例示的な方法200は、冷却チャネルを電力インバータの内周縁に沿うループとして形成し、冷却チャネルの入口および出口を重力配向において冷却チャネルの上端部に配置する、または冷却チャネルを電力インバータの収容スペース内における蛇行形状のチャネル、螺旋形状のチャネル、またはZ形状のチャネルとして形成するステップ204を含む。冷却チャネルの形状および冷却チャネルの入口と出口の位置により、冷却チャネル内に冷却剤保持セクションの形成が支援される。
【0052】
さらにまた、例示的な方法200は、冷却回路に接続した機械式ポンプ部品であって、駆動系アセンブリの1つの伝動シャフトにより駆動される機械式ポンプ部品を設けるステップ205を含む。伝動シャフトは、電気モータまたは減速機を駆動する回転シャフトであり得る。
【0053】
記載の説明は、最良の態様を含む本開示の実施形態を開示するため、および当業者が任意のデバイスまたはシステムの製造および使用並びに任意の組み込まれた方法の実行を含む本開示の実施形態を実施することを可能にするために、例を用いている。本明細書に記載された実施形態の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含むことができる。このような他の例は、それらが請求項の文字通りの言語と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが請求項の文字通りの言語と実質的に異ならない同等の構造要素を含む場合には、請求項の範囲内にあることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12