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特許7573634生コン出荷型急硬コンクリート材料、生コン出荷型急硬コンクリート組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】生コン出荷型急硬コンクリート材料、生コン出荷型急硬コンクリート組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20241018BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20241018BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20241018BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20241018BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/08 Z
C04B22/14 B
C04B22/10
C04B24/06 A
C04B22/14 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022550469
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2021032416
(87)【国際公開番号】W WO2022059519
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2020157180
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】相澤 一裕
(72)【発明者】
【氏名】原 啓史
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-148446(JP,A)
【文献】国際公開第2020/039908(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/154890(WO,A1)
【文献】特開2017-110354(JP,A)
【文献】特開2001-253753(JP,A)
【文献】特開昭52-110724(JP,A)
【文献】特開2007-119317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、急硬材、及び眠剤を含むA材と、硫酸アルミニウムを含む硫酸アルミニウム系硬化促進剤を含むB材とを含み、下記式(1)で表される前記眠剤と前記硫酸アルミニウムとの量論比が0.5~5であり、
前記急硬材がカルシウムアルミネート系化合物とセッコウ類とからなり、
前記眠剤がオキシカルボン酸、又は、その塩、或いはこれらとアルカリ金属炭酸塩の併用、糖類、ホウ酸であり、
下記式(1)中の遅延剤がオキシカルボン酸又はその塩、糖類、ホウ酸のいずれかである2材型の生コン出荷型急硬コンクリート材料。
式(1):量論比=硫酸アルミニウムの物質量(mol)×アルミニウムの数×アルミニウムイオンの価数/(眠剤中の遅延剤の物質量(mol)×眠剤中の遅延剤イオンの価数)
【請求項2】
さらに、前記硫酸アルミニウム系硬化促進剤がマグネシウム及びカルシウムを含み、これらの含有量が前記硫酸アルミニウム100質量部に対して、酸化物換算で0.007~4質量部である請求項1に記載の2材型の生コン出荷型急硬コンクリート材料。
【請求項3】
セメント、急硬材、及び眠剤を含むA材と、硫酸アルミニウムを含む硫酸アルミニウム系硬化促進剤を含むB材とが混合されてなる生コン出荷型急硬コンクリート組成物であって、下記式(1)で表される前記眠剤と前記硫酸アルミニウムとの量論比が0.5~5であり、
前記急硬材がカルシウムアルミネート系化合物とセッコウ類とからなり、
前記眠剤がオキシカルボン酸、又は、その塩、或いはこれらとアルカリ金属炭酸塩の併用、糖類、ホウ酸であり、
下記式(1)中の遅延剤がオキシカルボン酸又はその塩、糖類、ホウ酸のいずれかである生コン出荷型急硬コンクリート組成物。
式(1):量論比=硫酸アルミニウムの物質量(mol)×アルミニウムの数×アルミニウムイオンの価数/(眠剤中の遅延剤の物質量(mol)×眠剤中の遅延剤イオンの価数)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コン出荷型急硬コンクリート材料、生コン出荷型急硬コンクリート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に見るとセメントの生産量は増加しており、急速にインフラ整備が進められている。特に、中国や東南アジアでの建設ラッシュは現在も続いている。インフラ整備の中でも、道路整備は重要な位置付けにある。道路は新設の際にも、また、補修の際にも、早期解放が望まれるため、使用する材料としても早期供用を可能とする材料が求められている。その一例として、急硬コンクリートが挙げられる。
【0003】
急硬コンクリートの要求性能としては、可使時間も重要な性能となる。生コンプラントで生コンを製造し、施工現場まで搬送し、施工にかかる時間や生コン運搬車であるアジテータ車の洗浄時間も考慮すると、最低でも120分以上、できれば180分以上の可使時間の確保が望ましい。しかしながら、可使時間を長く確保することは、硬化時間を遅らせることになるため、短期材齢での要求強度を満たすことができなくなる。このため、従来の技術では、充分な可使時間を確保しつつ、初期材齢で必要な強度発現性を満たすことは困難であった。
【0004】
現在、急硬コンクリートは、施工現場で調製されているのが実情である。少量の打設量の工事では、0.1~0.2m程度のミキサで急硬コンクリートを練り混ぜ、人海戦術で急硬コンクリートの調製と打設を行っている。この方法では、人手が多く必要となり工数が嵩みコスト高である上に、供給できる急硬コンクリートのボリュームに限界があった。また、打設量の多い工事では、コンクリートモービル車を用いて急硬コンクリートを連続して供給している。しかしながら、この方法では、コンクリートモービル車を手配しなければならないにことに加えて、予め、水分を一定に管理した細骨材や粗骨材をフレコンパックに詰めて現場に搬送したり、急硬セメントをフレコンパックに詰めて現場に搬送して準備しておいたり等の工数が嵩むこともあり、急硬コンクリートのコストが著しく高くなるという課題があった。また、コンクリートモービル車の手配にも限界があった。
【0005】
今日では、生コンプラントから出荷できる急硬コンクリートの開発が強く望まれている。生コンプラントから急硬コンクリートを出荷できれば、既存の練り混ぜ設備や搬送システムをそのまま活用して大量の急硬コンクリートを施工現場に供給できる。
【0006】
例えば特許文献1では、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、カルシウムアルミネート系化合物、カルシウムシリケート系化合物、コロイダルシリカ、ポルトランドセメント、カルシウムサルフォアルミネートセメント、及び高炉スラグからなる群から選択される少なくとも1種を含む生コン出荷型急硬コンクリート用起硬剤を用いた生コン出荷型急硬コンクリート材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2018/154890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の生コン出荷型急硬コンクリート材料によれば、充分な可使時間を確保しつつ、初期の強度発現性に優れた生コン出荷型急硬コンクリート組成物を製造することができる。
【0009】
ところで、特許文献1には急結剤として硫酸アルミニウムを用いると瞬結してしまい可使時間を確保できないことが示されている。硫酸アルミニウムは、アルミン酸ソーダやアルカリ金属水酸化物等と同様に優れた急結剤であるが、これらと違って取り扱い性にも優れており、実用性が高い材料といえる。また、硫酸アルミニウムは、液状及び固形状のいずれの形態でも使用できるため、施工場所や状況に応じてその形態を選択できる点でも実用性が高い。
【0010】
以上から、本発明は、充分な可使時間を確保しつつ、初期の強度発現性に優れる実用性の高い生コン出荷型急硬コンクリート組成物を提供することを目的とする。また、当該生コン出荷型急硬コンクリート組成物を製造するために好適な生コン出荷型急硬コンクリート材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく、種々努力を重ねた結果、セメント、急硬材、及び眠剤を含むA材を混合したコンクリートを生コンプラントで調製し、現場まで搬送後、硫酸アルミニウムを含む硫酸アルミニウム系硬化促進剤を含むB材を添加混合することにより、充分な可使時間を確保しつつ、初期の強度発現性に優れる実用的な急硬コンクリート組成物を調製できることを知見し、本発明を完成するに至った。すわち、本発明は下記のとおりである。
【0012】
[1] セメント、急硬材、及び眠剤を含むA材と、硫酸アルミニウムを含む硫酸アルミニウム系硬化促進剤を含むB材とを含み、下記式(1)で表される前記眠剤と前記硫酸アルミニウムとの量論比が0.5~5である2材型の生コン出荷型急硬コンクリート材料。
式(1):量論比=硫酸アルミニウムの物質量(mol)×アルミニウムの数×アルミニウムイオンの価数/(眠剤中の遅延剤の物質量(mol)×眠剤中の遅延剤イオンの価数)
[2] さらに、前記硫酸アルミニウム系硬化促進剤がマグネシウム及びカルシウムを含み、これらの含有量が前記硫酸アルミニウム100質量部に対して、酸化物換算で0.007~4質量部である[1]に記載の2材型の生コン出荷型急硬コンクリート材料。
[3] セメント、急硬材、及び眠剤を含むA材と、硫酸アルミニウムを含む硫酸アルミニウム系硬化促進剤を含むB材とが混合されてなる生コン出荷型急硬コンクリート組成物であって、下記式(1)で表される前記眠剤と前記硫酸アルミニウムとの量論比が0.5~5である生コン出荷型急硬コンクリート組成物。
式(1):量論比=硫酸アルミニウムの物質量(mol)×アルミニウムの数×アルミニウムイオンの価数/(眠剤中の遅延剤の物質量(mol)×眠剤中の遅延剤イオンの価数)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、充分な可使時間を確保しつつ、初期の強度発現性に優れる実用性の高い生コン出荷型急硬コンクリート組成物を提供することができる。また、当該生コン出荷型急硬コンクリート組成物を製造するために好適な生コン出荷型急硬コンクリート材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本明細書における「部」や「%」は特に規定しない限り質量基準とする。また、本明細書における組成物とは、セメント組成物、モルタル組成物、コンクリート組成物を総称するものである。
【0015】
[1]生コン出荷型急硬コンクリート材料
本実施形態の2材型の生コン出荷型急硬コンクリート材料は、セメント、急硬材、及び眠剤を含むA材と、硫酸アルミニウムを含む硫酸アルミニウム系硬化促進剤を含むB材とを含む、少なくとも2材で構成されている。
【0016】
本実施形態でいう「生コン出荷型急硬コンクリート」とは、生コン工場や生コンプラント等で生コン(レディミクストコンクリート)を混練した後、アジテータ車等によって搬送されて、土木工事現場や建設現場等の施工現場に出荷され、打ち込み作業後に比較的早く硬化するコンクリートをいう。生コン出荷型急硬コンクリートの場合、搬送時間の関係から、出荷から作業完了まで、最低でも可使時間は120分以上必要であり、搬送距離が長い場合には180分以上の可使時間を確保することが望まれる。本実施形態は、このような用途に特化して用いられるものである。
なお、上記の「アジテータ車」とは、生コンを撹拌しながら輸送することができる、荷台部分にミキシング・ドラム(練り混ぜ用容器)を備えた貨物自動車であり、その機能に大きな差はないが、最大積載量2~26t級のものがあり、用途に応じて使い分けられている。
【0017】
本実施形態では、A材中の眠剤により、生コン出荷型急硬コンクリートが眠らされたような状態、すなわち、水和硬化がほぼ停止した状態となる。これにより可使時間の確保が可能となる。また、B材中の硫酸アルミニウム系硬化促進剤の添加により、眠剤を多量に添加し眠らされた急硬コンクリートの水和硬化が施工現場で再び呼び覚まされる。そして、急硬材などのその他の成分により優れた初期強度発現性が得られる。
B材を添加することで凝結・硬化が進行するようになるが、B材を添加した後も、作業時間を確保する必要があり、少なくとも15分以上の可使時間の確保が必要である。しかし、硫酸アルミニウムは通常の添加量では瞬結性を示し、十分な可使時間の確保ができなくなる。これに対して本実施形態では、眠剤と硫酸アルミニウムとの量論比を検討し、その範囲を0.5~5の範囲とすることで、十分な可使時間を確保し、優れた初期強度発現性を実現した。
また、硫酸アルミニウムは既述のとおり、取り扱い性にも優れており、液状及び固形状(好ましくは粉末)のいずれの形態でも使用できるため、施工場所や状況に応じてその形態を選択できる等、実用性が高い。
以下、B材、A材について詳細に説明する。
【0018】
[B材]
B材における硫酸アルミニウム系硬化促進剤とは、硬化促進剤成分として硫酸アルミニウムを主成分(70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい)としているものをいう。
なお、B材中には、硬化促進剤以外の物質(その他の成分)の存在も、当該硫酸アルミニウム系硬化促進剤の分散性を高めたり、硫酸アルミニウム系硬化促進剤の効果を助長したりできるもので、本発明の効果を阻害しないものあれば、30%以下の範囲で含有させることができる。
【0019】
本実施形態に係る硫酸アルミニウムは、一般式Al(SO・nHO(n=0~18)で表され、式中のnは0~18の範囲にある。硫酸アルミニウムとしては、無水硫酸アルミニウム、及び様々な数の結晶水の硫酸アルミニウムが存在するが、本発明ではいずれのものも使用可能である。
【0020】
硫酸アルミニウムは、粉末状のもの、又は、水に溶解して液状としたものがあり、いずれも使用可能である。硫酸アルミニウムが液状である場合は、B材も液状となり、粉末状である場合B材も粉末状となる。
【0021】
これらのうち、セメントコンクリートとの良好な混合性や粉塵発生防止が特に必要な場合は、水溶液等の液状として使用することが好ましい。このときの硫酸アルミニウムの濃度は、固形分換算(無水物)で10~40%が好ましく、20~30より好ましい。10~40%とすることで貯蔵安定性が良好となり、セメントコンクリートの凝結・硬化が促進され過ぎるのを防ぐことができる。
なお、「液状」にはスラリー状のものや懸濁液の状態のものも含まれる。
【0022】
また、極初期強度発現性が特に必要な場合は、硫酸アルミニウムは粉末であることが好ましい。
硫酸アルミニウムは、14水塩以上では粉砕できない場合があり、12水塩以下が好ましい。また、無水塩は凝結性状が低下する場合があるため、4水塩以上が好ましい。より好ましくは4~12水塩、すなわち、硫酸アルミニウムが水和物であり、その水和水の数が4~12であることがより好ましい。
水和水の数の調整は、例えば、18水塩の硫酸アルミニウムを加熱等して所望の水和水の数になるように脱水すればよい。
【0023】
硫酸アルミニウムが粉末である場合の粒径は限定されるものではないが、塊状だと解け難く、通常は1.2mmの篩を通過するものが好ましく、0.6mの篩を通過するものがより好ましい。
【0024】
硫酸アルミニウム系硬化促進剤はマグネシウム及びカルシウムを含み、これらの含有量が硫酸アルミニウム100質量部に対して、酸化物換算で0.007~4質量部であることが好ましく、0.01~2部であることがより好ましい。0.007~4部であることで、常温から低温環境下でも十分な付着性を付与できると共に、高温環境下での長期強度の顕著な低下を防止することも可能になる。また初期強度発現性を良好に維持できる。
なお、上記の「低温環境下」における「低温」とは、5℃以下を指し、「高温環境下」における「高温」とは、25℃以上を指す。
【0025】
ここで、B材が液状である場合、硫酸アルミニウム系硬化促進剤にマグネシウム及びカルシウムを含む態様としては、液状のB材にマグネシウム及びカルシウムをそれぞれ含む化合物を溶解して、マグネシウム及びカルシウムの含有量が硫酸アルミニウム100部に対して、酸化物換算で0.007~4部となっている態様が挙げられる。
【0026】
マグネシウム及びカルシウムの含有量を上記範囲にするには、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物を所定量溶解させればよい。
【0027】
また、B材が粉末状である場合、硫酸アルミニウム系硬化促進剤にマグネシウム及びカルシウムを含む態様としては、硫酸アルミニウムにマグネシウム及びカルシウムを含み、これらの含有量が硫酸アルミニウム100部に対して、酸化物換算で0.007~4部となっている態様が挙げられる。
【0028】
硫酸アルミニウムにマグネシウム及びカルシウムを含む状態にするには、硫酸アルミニウムを作製するために、水酸化アルミニウムと硫酸とを混合する際に硫酸に含まれるCaO及び/又はMgOといった化合物を所望の範囲となるようしておくか、CaO及びMgOといった化合物を水酸化アルミニウム及び硫酸に意図的に所望の範囲となるように混合し、加熱して反応させればよい。
この場合の硫酸アルミニウムは、蛍光X線分析では硫酸アルミニウムとともにCaO、MgOが確認されるが、X線回折(XRD)の分析では、硫酸アルミニウムのブロードなピークが確認できるだけで、CaO及びMgOを同定できるピークが確認されない。すなわち、当該硫酸アルミニウムは、カルシウム及びマグネシウムを含むが、実質的には、硫酸アルミニウムと同視し得るものとなる。
【0029】
B材が液状及び粉末状のいずれであっても、マグネシウム及びカルシウムは、酸化物(MgO、CaO)として含まれていることが好ましく、CaO含有量は、B材中に0.005~2%であることが好ましく、MgO含有量は0.002~2%であることが好ましい。CaO含有量は、0.01~1.5%がより好ましく、MgO含有量は、0.008~1.5%がより好ましい。
【0030】
CaO含有量が0.005%以上であると、高温状況で長期強度がより得られやすくなり、2%以下であると、凝結性状の低下が抑えられやすくなる。また、MgO含有量が0.002%以上であると、高温状況で長期強度がより得られやすくなり、2%以下であると、高温状況で異常膨張が抑制されやすくなる。
【0031】
本実施形態では、既述のとおり、硫酸アルミニウムと後述の眠剤との量論比を検討し、その範囲を0.5~5の範囲とすることで、十分な可使時間を確保し、優れた初期強度発現性を実現した。当該量論比は下記式(1)で表される。
式(1)は、急硬材と眠剤が含まれるコンクリートにおいて、眠剤に対する硬化促進剤である硫酸アルミニウムの比率を意味するもので、この比が0.5~5の範囲にあるということは、この比が低すぎると眠剤が過多で急硬性が得られず、この比が高すぎると硬化促進剤が過多で瞬結してしまうことになる。
【0032】
式(1):量論比=硫酸アルミニウムの物質量(mol)×アルミニウムの数×アルミニウムイオンの価数/(眠剤中の遅延剤の物質量(mol)×眠剤中の遅延剤イオンの価数)
【0033】
以下では、B材の硫酸アルミニウムとA材の眠剤として炭酸カリウムとクエン酸(炭酸カリウム:クエン酸=75:25(質量比))を用いた場合を例に量論比の説明をする。
【0034】
まず、硫酸アルミニウム、クエン酸のモル質量は下記のとおりである。
・硫酸アルミニウム(Al(SO)M.W.=342.2
・クエン酸(C)M.W.=192.1
【0035】
コンクリート中の結合材500kgに対して、硫酸アルミニウムを1%、眠剤を1.5%含有させるとすると、そのコンクリートあたり、それぞれの成分は下記のとおりとなる。硬化促進剤は眠剤の遅延剤であるクエン酸に作用する。
・硫酸アルミニウム:結合材500000g×0.01(=1%)÷342.2=14.6mol
・クエン酸:結合材500,000g×0.015(=1.5%)×0.25(=25%)÷192.1=9.7mol
【0036】
アルミニウムイオンは3価の酸として働くこと、及び、硫酸アルミニウムにはAlが2つあること、クエン酸イオンは3価の塩基(遅延剤イオンの価数=3)であることから、既述の式(1)は下記のとおり計算される。
式(1):量論比=(14.6×2×3)/(9.7×3)=3.0
【0037】
[A材]
A材は、セメント、急硬材、及び眠剤を含む。
(眠剤)
本実施形態で使用する眠剤は、生コンから出荷した急硬コンクリートを眠らせる(水和硬化をほぼ停止させる)働きを持つものであり、生コンプラントでの急硬トラブルや、アジテータ車で搬送する際の急硬トラブルを回避するものである。眠剤としては、例えば、オキシカルボン酸、又は、その塩、或いはこれらとアルカリ金属炭酸塩の併用、糖類、ホウ酸等が挙げられる。これらのうち、遅延剤はオキシカルボン酸又はその塩、糖類、ホウ酸が該当する。
上記のうち、オキシカルボン酸とアルカリ金属炭酸塩を併用することが、急硬コンクリートを眠らせる効果が大きい面や、B材を添加した後の強度発現性が良好な面から好ましい。ただし、アルカリ金属炭酸塩はリチウム以外のアルカリ金属炭酸塩を選定することが好ましい。ベースコンクリートの十分な可使時間を確保し、かつ、B材を添加した後も一定の可使時間を確保し、さらに、強度発現性を良好にする必要があり、この観点から炭酸リチウムの適用は好ましくない。また、オキシカルボン酸と併用しないアルカリ金属炭酸塩のみの場合は眠剤とはならない。
なお、本明細書において、ベースコンクリートとは、少なくとも、セメント、急硬材、眠剤、骨材、及び混練水を混練してなるコンクリートをいう。
【0038】
眠剤としては、オキシカルボン酸、リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩及びオキシカルボン酸の混合物を含むことが好ましく、リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩及びオキシカルボン酸の混合物を含むことがより好ましい。リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩とオキシカルボン酸との混合比は、アルカリ金属炭酸塩/オキシカルボン酸で、10/90~90/10であることが好ましく、20/80~80/20であることがより好ましい。
【0039】
オキシカルボン酸としては、オキシカルボン酸又はその塩を含み、オキシカルボン酸としては、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられ、その塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
眠剤の含有量は、セメントと急硬材の合計100部に対して、0.3~5部が好ましく、0.3~4.5部がより好ましい。0.3~5部であることで、現場までの搬送時間に加え、十分な作業時間の確保がしやすくなる。また、B材を添加した際に水和硬化を再び呼び起こしやすくなる。
【0041】
(急硬材)
本実施形態の急硬材は、カルシウムアルミネート系化合物とセッコウ類とからなることが好ましい。ここで、カルシウムアルミネート系化合物とは、CaOとAlを主体とする化合物を総称するものであり、特に限定されるものではない。その具体例としては、CaO・Al、12CaO・7Al、11CaO・7Al・CaF、3CaO・Al、3CaO・3Al・CaSO、更に、CaOとAlを主体とする非晶質物質(例えば、CaO-Al-SiO系化合物)等が挙げられる。中でも、非晶質物質を選定することが強度発現性の観点から好ましい。
【0042】
ここで、本実施形態における非晶質度とは、以下のように定義する。対象物質を1000℃で2時間焼きなました後、5℃/分の冷却速度で徐冷して結晶化させる。そして、結晶化させたものを粉末X線回折法により測定し、結晶鉱物のメインピークの面積Sを求める。次いで、焼きなまし前の物質の結晶のメインピーク面積Sから、以下の式により非晶質度Xを求める。
X(%)=100×(1-S/S
【0043】
なお、一般の工業原料にはSiO、MgO、Fe、TiO、KO、NaO等の不純物が含まれているが、これらの不純物は、カルシウムアルミネート系化合物の非晶質化を助長する面もあり、これらの総量が20%以下の範囲で存在しても差し支えない。中でも、SiOの存在は好ましく、非晶質カルシウムアルミネートを得る目的で、1~18%の範囲で含有させることもできる。
【0044】
したがって、急硬材としては、CaO-Al-SiO系化合物とセッコウ類とを含み、このCaO-Al-SiO系化合物の非晶質度が70%以上で、かつ、SiOが1~18質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、CaO-Al-SiO系化合物の非晶質度が80%以上で、かつ、SiOが2~13質量%の範囲である。
【0045】
カルシウムアルミネート系化合物は、粉砕処理により、ブレーン比表面積で3000~9000cm/gに調整することが好ましく、4000~8000cm/gに調整することがより好ましい。カルシウムアルミネート系化合物の粉末度(ブレーン比表面積)が、4000~9000cm/gであることで十分な急硬性が得られやすくなり、低温での強度発現性も得られやすくなる。
【0046】
また、本実施形態の急硬材は、粉砕処理により、ブレーン比表面積で3000~9000cm/gに調整することが好ましく、4000~8000cm/gに調整することがより好ましい。急硬材の粉末度が、3000~9000cm/gであることで十分な超速硬性が得られやすくなり、低温での強度発現性も得られやすくなる。
【0047】
急硬材の含有量は、セメントと急硬材との合計100部中、10~35部が好ましく、15~30部がより好ましく、20~25部がさらに好ましい。10~35部であることで、良好な初期強度発現性が得られやすくなり、長期強度の低下も起こりにくくなる。
【0048】
なお、急硬材とセメントは、超速硬セメントを使用することも可能である。超速硬セメントとしては、カルシウムフロロアルミネート(C11・CaF)や、カルシウムサルフォアルミネート(3CaO・3Al・CaSO)等の化合物を主成分として含有するものが知られている。
【0049】
本実施形態で使用するセッコウ類は、無水セッコウ、半水セッコウ、二水セッコウのいずれのセッコウも使用できる。さらに天然セッコウや、リン酸副生セッコウ、排脱セッコウ、及びフッ酸副生セッコウなどの化学セッコウ、または、これらを熱処理して得られるセッコウなども使用できる。これらの中では、強度発現性の点で、無水セッコウ及び/又は半水セッコウが好ましいが、コストの観点から無水セッコウを選定することが望ましく、II型無水セッコウ及び/又は天然無水セッコウが好ましい。セッコウの粒度はブレーン値で3000cm/g以上が好ましく、4000~7000cm/gがより好ましい。3000cm/g以上であることで初期強度発現性を良好に発揮させることができる。
【0050】
セッコウ類の使用量は、カルシウムアルミネート系化合物100部に対して10~200部が好ましく、15~150部がより好ましく、20~130部がさらに好ましい。これらの範囲であることで強度発現性を良好に発揮させることができる。
【0051】
(セメント)
本実施形態でいう「セメント」とは、特に限定されるものではないが、例えば、日本工業規格(JIS)で定められる普通、早強、中庸熱、低熱の各種ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカを混合した各種の混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)などのあらゆるセメントが挙げられる。また、海外のEN197-2000で定められたセメントや中国GB規格で定められるあらゆるセメントを挙げることができ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
【0052】
ポルトランドセメントの構成化合物は、エーライト(3CaO・SiO)、ビーライト(2CaO・SiO)、アルミネート(3CaO・Al)、フェライト(4CaO・Al・Fe)と、さらに、二水セッコウが混合されている(この一部が半水セッコウに変化することもある)。本実施形態では、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ、石灰石微粉末などの混合材を含まないセメントを選定することが強度発現性の観点から望ましく、中でも、エーライト含有量が高く、粉末度の高い(粒度が細かい)セメントを選定することが好ましい。これに該当するセメントとしては、例えば、日本のセメントで例示すると、早強セメントや普通セメントを挙げることができる。また、中国のセメントで例示すると、P・II52.5やP・II42.5を挙げることができる。
【0053】
本実施形態では、既述の急硬材、眠剤、硫酸アルミニウム系硬化促進剤の他に、膨張材、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高炉徐冷スラグ微粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などのスラグ、石灰石微粉末やフライアッシュ、シリカフューム等の混和材料、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、ポリマー、ベントナイトなどの粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲でA材及び/又はB材に使用することが可能である。
【0054】
[2]生コン出荷型急硬コンクリート組成物
本実施形態に係る生コン出荷型急硬コンクリート組成物は、セメント、急硬材、及び眠剤を含むA材と、硫酸アルミニウムを含む硫酸アルミニウム系硬化促進剤を含むB材とが混合されてなる。そして、既述の式(1)で表される眠剤と硫酸アルミニウムとの量論比は0.5~5となっている。なお、好ましい範囲等は、「材型の生コン出荷型急硬コンクリート材料」で言及したものと同様である。
【0055】
生コンプラントでは、A材を混合した各種のベースコンクリートを用意する必要があり、B材は現場まで搬送後に各種のベースコンクリートに対して添加混合する必要がある。B材を施工現場でなく生コンプラントで予め各種のベースコンクリートに対して混合すると、可使時間が確保できない。また、生コン工場で急硬材とB材の双方を添加すると、可使時間が極端に短くなり、搬送途中でコンクリートの破棄を余儀なくされる。
B材を生コン工場で添加し、施工現場で急硬材を添加する場合には、急硬材を添加した後の可使時間が10分以下と極端に短くなり、施工ができない。急硬材とB材を施工現場で添加する場合には、可使時間が短縮され、圧縮強度も低い値となることに加え、アジテータのドラム容積の30%程度しか搬送できない。このように、A材とB材の添加タイミングは極めて重要である。
【0056】
そこで、本実施形態では、A材と、B材とからなる2材型とすることで、具体的には、生コンプラントでA材を混合したベースコンクリートを施工現場まで搬送し、施工現場でB材を混合することで、本実施形態の生コン出荷型急硬コンクリート組成物とすることができる。
【0057】
[生コン出荷型急硬コンクリートの調製方法]
本発明の生コン出荷型急硬コンクリートの調製方法の実施形態は、少なくともA材を混練水とともに練り混ぜ用容器内で練り混ぜてベースコンクリートとする工程(練り混ぜ工程)と、さらに、B材を例えば施工現場で混合する工程と、を順次含む。
なお、上記混練水は例えば、生コン工場や生コンプラント等から供給される。また、練り混ぜ工程では、練り混ぜとともに運搬も行われる場合が多い。
【0058】
練り混ぜ工程においては、少なくとも、A材及び混練水を含むベースコンクリートの容量を、練り混ぜ(・運搬)用容器の内容積の40%(容量%)以上とすることが好ましく、50容量%以上とすることがより好ましい。
ここで、練り混ぜ(・運搬)用容器とは、例えば、アジテータ車のドラム等のような生コン運搬車に備え付けられ、生コンを撹拌しながら保持できる容器をいう。
【0059】
そして、B材を混合した後の可使時間が10分以上、好ましくは15分以上確保できるようにB材の種類、既述の量論比を適切な範囲に定めることが好ましい。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る2材型の生コン出荷型急硬コンクリート材料は、生コン(レディミクストコンクリート)を混練した後、この混練物が搬送されて施工現場に出荷され、打ち込み作業後に添加される材料としての使用に好適である。そして、可使時間を例えば、120分以上、好ましくは180分以上とすることができる。
【実施例
【0061】
以下、実験例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
(実験例1)
セメント375kg/m、急硬材A125kg/m、水/結合材比32%、s/a=42%、空気量2.0±1.5容量%の急硬コンクリートを調製した。この際、セメントと急硬材からなる結合材100部に対して、眠剤1を1.5部添加し、24時間以上、水和硬化しないようにした(A材)。現場までの搬送時間と施工現場に到着後に待機時間が発生したことを想定して、120分後に硬化促進剤を含むB材を下記表1に示す量論比で添加した。B材を添加してからの可使時間を測定するとともに、B材添加後から6時間後(練り上がりから8時間後)の圧縮強度を測定した。なお、s/aは、細骨材率で、コンクリート中の全骨材量に対する細骨材量の絶対容積比を百分率で表した値である。また、環境温度は20℃とした。また、量論比は既述の式(1)から計算した。
【0063】
<使用材料>
(1)硬化促進剤イ、ロ
硬化促進剤イ:液状硫酸アルミニウムで硫酸アルミニウム含有量は27%(実験No.1-2~1-6で使用)、溶媒は水
硬化促進剤ロ:粉末硫酸アルミニウム(14水塩)で、0.6mmの篩を通過したものを使用した(実験No.1-7で使用)
【0064】
(2)急硬材
急硬材A:CaO-Al-SiO系非晶質物質と無水セッコウの等量混合物。CaO-Al-SiO系非晶質物質のCaOが43%、Alが44%、SiOが10%、その他3%。密度2.85g/cm、ブレーン比表面積5000cm/g、非晶質度90%
【0065】
(3)眠剤
眠剤1:試薬1級の炭酸カリウム75部と試薬1級のクエン酸25部の混合物
【0066】
(4)その他
セメント:市販の普通ポルトランドセメント(デンカ社製 密度3.15g/cm
無水石膏:II型無水石膏、pH3.0、ブレーン比表面積5000cm/g
水:水道水
細骨材:天然川砂
粗骨材:砕石
【0067】
<測定方法>
・可使時間:JIS A 1147に準じて凝結の始発時間を測定し、可使時間とした。
・圧縮強度:JIS A 1108に準じて測定した。
【0068】
【表1】
【0069】
(実験例2)
硬化促進剤イにCaO及びMgO(いずれも試薬)を硫酸アルミニウム100部に対して下記表2のような含有量となるように溶解し、硬化促進剤イ-1~イ-4を作製し、硬化促進剤イの代わりにこれらを用いた以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
(実験例3)
実験No.1-4で使用したB材を使用し、眠剤の種類及び量論比を表3に示すように変化したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。なお、非眠剤2を用いた場合は、非眠剤2は硫酸アルミニウム100部に対して、112部になるようにした。
【0072】
<使用材料>
眠剤1:試薬1級の炭酸カリウム75部と試薬1級のクエン酸25部の混合物
非眠剤2:試薬1級の炭酸カリウム
眠剤3:試薬1級のクエン酸
眠剤4:試薬1級の酒石酸(C、M.W.=150.09、2価の塩基)
【0073】
【表3】
【0074】
表3より、眠剤として、オキシカルボン酸、もしくは、オキシカルボン酸とリチウム以外のアルカリ金属炭酸塩の混合物を用いた場合に、本発明の効果が特に良好に発揮されることがわかる。
【0075】
(実験例4)
実験No.1-4で使用したA材において、下記表4に示すように、セメントの種類と眠剤1の使用量を変化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を下記表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
表4より、いかなるセメントにおいても、眠剤の使用量を適切に制御することによって、一定の可使時間を得た上で、良好な6時間強度や1日強度が得られることがわかる。
【0078】
(実験例5)
実験No.1-4で使用したA材において、下記表5に示すように急硬材の種類と使用量を変化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を下記表5に示す。なお、急硬材B~Dは下記のとおりである。
【0079】
<使用材料>
・急硬材B:CaO-Al-SiO系非晶質物質と無水セッコウとの等量混合物。CaO-Al-SiO系非晶質物質のCaOが47%、Alが47%、SiOが3%、その他3%。密度2.85g/cm、ブレーン比表面積5000cm/g、非晶質度90%
・急硬材C:CaO・Alを主成分とするアルミナセメント1号と無水セッコウの等量混合物。密度3.00g/cm、ブレーン比表面積5000cm/g
・急硬材D:3CaO・3Al・CaSO系化合物を主成分(40%)として含有する超速硬セメント。密度2.80g/cm、ブレーン比表面積5000cm/g
【0080】
【表5】
【0081】
表5より、急硬材を添加しない場合には、24時間以上硬化せず、6時間強度や1日強度を発現しないが、急硬材を添加した場合には、一定の可使時間を得た上で、良好な6時間強度や1日強度を発現していることがわかる。加えて、耐摩耗性にも優れることがわかる。そして、急硬材の種類が変わっても、本発明の効果が発揮されていることがわかる。
【0082】
(実験例6)
実験No.1-4のA材及びB材の添加時期(場所)を下記表6に示すように変化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を下記表6に示す。
【0083】
【表6】
【0084】
表6より、A材を生コンプラントで添加し、B材を施工現場で添加しないと本発明の効果が得られないことがわかる。生コン工場でA材とB材の双方を添加した場合には、可使時間が60分と極端に短くなり、搬送途中で破棄を余儀なくされた。また、B材を生コン工場で添加し、施工現場でA材を添加した場合には、これを添加した後の可使時間が10分と極端に短くなり、施工ができなかった。A材とB材を施工現場で添加する場合には、可使時間が短縮され、圧縮強度も低い値となることに加え、練り混ぜ・運搬容器となるアジテータのドラム容積の30%程度しか搬送できないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の生コン出荷型急硬コンクリート組成物は、充分な可使時間を確保しつつ、初期の強度発現性に優れるため、特に、土木建築分野で好適に用いられる。