(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】水分散性ブロックイソシアネート、繊維処理剤、撥水剤、塗料組成物および接着剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/80 20060101AFI20241018BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20241018BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20241018BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20241018BHJP
D06M 13/395 20060101ALI20241018BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08G18/80 070
C08G18/80 096
C09D5/00 Z
C09D175/04
C09J175/04
D06M13/395
C09K3/18 101
(21)【出願番号】P 2022550626
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034284
(87)【国際公開番号】W WO2022059774
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2020157120
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 辰也
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/025776(WO,A1)
【文献】特開2010-059089(JP,A)
【文献】特表2002-521541(JP,A)
【文献】特開2019-137757(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、
前記ブロック剤は、下記一般式(1)で示される第1ブロック剤を含み、
前記第1ブロック剤
が有するアミノ基の少なくとも一部は、酸により中和されている、水分散性ブロックイソシアネート。
【化1】
(式中、R
1~R
5は、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示す。また、R
1およびR
3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。また、R
4およびR
1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R
5およびR
3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、R
1~R
5は、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示す、請求項1に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項3】
前記ブロック剤は、前記第1ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が小さい第2ブロック剤を、さらに含む、請求項1に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項4】
前記ブロック剤における前記第1ブロック剤の含有割合は、2モル%を超過し80モル%未満である、請求項3に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項5】
前記酸は、有機酸を含む、請求項1のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項6】
前記酸は、酢酸、プロピオン酸および乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、請求項5に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート化合物は、芳香族ポリイソシアネート誘導体および/または芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体を含む、請求項1に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項8】
請求項1に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む、繊維処理剤。
【請求項9】
請求項1に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む、撥水剤。
【請求項10】
請求項1に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む、塗料組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む、接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散性ブロックイソシアネート、繊維処理剤、撥水剤、塗料組成物および接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イソシアネート基がブロック剤によりブロックされるブロックイソシアネートが知られている。ブロックイソシアネートは、例えば、樹脂の製造において、活性水素基含有化合物と混合された後、加熱される。すると、ブロック剤がイソシアネート基から解離して、イソシアネート基が再生する。これによって、イソシアネート基と活性水素基含有化合物とが反応する。
【0003】
また、有機溶媒の使用を低減するために、有機溶媒に溶解して使用するブロックイソシアネートに代替して、水に分散して使用する水分散性ブロックイソシアネートが検討されている。
【0004】
例えば、ピラゾール化合物でブロックされたイソシアネート基と、ジメチルエタノールアミンにより導入されるカチオン性基との両方を同一分子内に有するブロックポリイソシアネートが提案されている(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、低エネルギー化および低コストの観点から、ブロック剤がイソシアネート基から解離する温度の低減、すなわち、ブロックイソシアネートの低温硬化性が望まれている。
【0007】
しかし、特許文献1に記載のブロックポリイソシアネートでは、低温硬化性を十分に確保できない。また、水分散性ブロックイソシアネートは、水に分散した状態で、安定して貯蔵できることが要求される。
【0008】
本発明は、低温硬化性および貯蔵安定性に優れる水分散性ブロックイソシアネート、繊維処理剤、撥水剤、塗料組成物および接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、前記ブロック剤は、下記一般式(1)で示される第1ブロック剤を含み、前記第1ブロック剤の少なくとも一部は、酸により中和されている、水分散性ブロックイソシアネートを含む。
【0010】
【0011】
(式中、R1~R5は、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示す。また、R1およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。また、R4およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R5およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)
本発明[2]は、前記一般式(1)において、R1~R5は、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示す、上記[1]に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む。
【0012】
本発明[3]は、前記ブロック剤は、前記第1ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が小さい第2ブロック剤を、さらに含む、上記[1]または[2]に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む。
【0013】
本発明[4]は、前記ブロック剤における前記第1ブロック剤の含有割合は、2モル%を超過し80モル%未満である、上記[3]に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む。
【0014】
本発明[5]は、前記酸は、有機酸を含む、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む。
【0015】
本発明[6]は、前記酸は、酢酸、プロピオン酸および乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、上記[5]に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む。
【0016】
本発明[7]は、前記ポリイソシアネート化合物は、芳香族ポリイソシアネート誘導体および/または芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体を含む、上記[1]から[6]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む。
【0017】
本発明[8]は、上記[1]から[7]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む、繊維処理剤を含む。
【0018】
本発明[9]は、上記[1]から[7]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む、撥水剤を含む。
【0019】
本発明[10]は、上記[1]から[7]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む、塗料組成物を含む。
【0020】
本発明[11]は、上記[1]から[7]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含む、接着剤を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水分散性ブロックイソシアネートでは、上記一般式(1)で示される第1ブロック剤の少なくとも一部が、酸により中和されている。そのため、水分散性ブロックイソシアネートは、水に円滑に分散でき、かつ、長期にわたって水に分散した状態を維持できる。また、水分散性ブロックイソシアネートでは、第1ブロック剤の少なくとも一部が、比較的低温でイソシアネート基から解離する。
【0022】
そのため、水分散性ブロックイソシアネートは、低温硬化性および貯蔵安定性に優れる。
【0023】
本発明の繊維処理剤、撥水剤、塗料組成物および接着剤は、上記した水分散性ブロックイソシアネートを含む。そのため、繊維処理剤、撥水剤、塗料組成物および接着剤は、低温硬化性および貯蔵安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
水分散性ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートである。水分散性ブロックイソシアネートにおいて、イソシアネート基をブロックしているブロック剤の少なくとも一部が、酸により中和されている。水分散性ブロックイソシアネートは、例えば、水に分散させて使用される。
【0025】
以下では、ブロック剤が酸により中和されていない場合は、単に「ブロックイソシアネート」として、「水分散性ブロックイソシアネート」と区別する。
【0026】
ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネート化合物とブロック剤との反応生成物である。
【0027】
(1)ポリイソシアネート化合物
【0028】
ポリイソシアネート化合物として、例えば、ポリイソシアネート単量体、および、ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0029】
ポリイソシアネート単量体として、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、および、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0030】
脂肪族ポリイソシアネートとして、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートが挙げられる。
【0031】
また、脂肪族ポリイソシアネート単量体として、脂環族ポリイソシアネート単量体も挙げられる。
【0032】
脂環族ポリイソシアネート単量体として、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、および、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0033】
芳香族ポリイソシアネートとして、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、および、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとして、例えば、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンが挙げられる。
【0035】
ポリイソシアネート誘導体は、上記したポリイソシアネート単量体から誘導される。ポリイソシアネート誘導体として、例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体、トリオール付加体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体および、ウレトンイミン変性体が挙げられる。
【0036】
ポリイソシアネート化合物は、好ましくは、ポリイソシアネート誘導体を含み、より好ましくは、ポリイソシアネート誘導体からなる。
【0037】
ポリイソシアネート誘導体として、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートから誘導される脂肪族ポリイソシアネート誘導体、芳香族ポリイソシアネートから誘導される芳香族ポリイソシアネート誘導体、および、芳香脂肪族ポリイソシアネートから誘導される芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられ、より好ましくは、芳香族ポリイソシアネート誘導体および、芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられ、さらに好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0038】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体として、さらに好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体が挙げられ、とりわけ好ましくは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体が挙げられる。
【0039】
また、芳香族ポリイソシアネート誘導体として、さらに好ましくは、芳香族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体が挙げられ、とりわけ好ましくは、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体が挙げられる。
【0040】
また、芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体として、さらに好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体が挙げられ、とりわけ好ましくは、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体が挙げられる。
【0041】
また、ポリイソシアネート化合物は、活性水素基を含有する親水性化合物により変性されていてもよく、カチオン性親水性基とノニオン性親水性基とを併用することもできる。
【0042】
親水性化合物は、活性水素基と親水性基とを有する。親水性化合物として、例えば、ノニオン性親水性化合物が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレン化合物が挙げられる。ポリオキシエチレン化合物は、少なくとも3つ連続したオキシエチレン基を有する。
【0043】
ポリオキシエチレン化合物として、例えば、ポリオキシエチレン基含有ポリオール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、および、片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンが挙げられる。
【0044】
ポリオキシエチレン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0045】
ポリオキシエチレン化合物は、好ましくは、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールを含み、より好ましくは、モノアルコキシポリオキシエチレングリコールを含む。
【0046】
モノアルコキシポリオキシエチレングリコールの一方の末端は、例えば、炭素数1~20のアルキル基で封止されている。モノアルコキシポリオキシエチレングリコールの他方の末端には、水酸基が位置する。
【0047】
モノアルコキシポリオキシエチレングリコールとして、例えば、メトキシポリオキシエチレングリコール、および、エトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられ、好ましくは、メトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられる。
【0048】
ポリオキシエチレン化合物の数平均分子量は、例えば、200以上、好ましくは、400以上、また、例えば、2000以下、好ましくは、1500以下である。なお、ポリオキシエチレン化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定できる。
【0049】
ポリイソシアネート化合物が親水性化合物よって変性されている場合、例えば、上記したポリイソシアネート単量体および/またはポリイソシアネート誘導体と、上記した親水性化合物とを、遊離のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
【0050】
変性前のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基100モルに対して、親水性化合物の活性水素基の割合は、例えば、0.5モル以上、好ましくは、1モル以上、また、例えば、10モル以下、好ましくは、5モル以下である。
【0051】
このようなポリイソシアネート化合物は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0052】
ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基の平均官能基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.5以上、また、例えば、4以下、好ましくは、3.5以下である。
【0053】
ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基の含有量(NCO%)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0054】
(2)ブロック剤
【0055】
ブロック剤は、第1ブロック剤を少なくとも含む。そのため、ブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基を少なくとも含有する。
【0056】
(2-1)第1ブロック剤
【0057】
第1ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、イソシアネート基をブロックした状態および脱ブロックされた状態において、イソシアネート基を活性化させる触媒作用を有する。触媒作用については後述する。
【0058】
第1ブロック剤は、下記一般式(1)で示される。第1ブロック剤は、グアニジン骨格を有するグアニジン化合物である。
【0059】
【0060】
(式中、R1~R5は、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示す。また、R1およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。また、R4およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R5およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)
上記一般式(1)において、R1~R5は、互いに同一または相異なってよい。R1~R5は、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示す。R1~R5の少なくともいずれか1つは、好ましくは、水素原子を示す。
【0061】
R1~R5で示される炭素数1~12の炭化水素基として、例えば、炭素数1~12のアルキル基、および、炭素数6~12のアリール基が挙げられる。
【0062】
炭素数1~12のアルキル基として、例えば、炭素数1~12の鎖状アルキル基、および、炭素数3~12の環状アルキル基が挙げられる。
【0063】
炭素数1~12の鎖状アルキル基として、直鎖または分岐の炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、および、ドデシルが挙げられる。
【0064】
炭素数3~12の環状アルキル基として、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、および、シクロドデシルが挙げられる。
【0065】
炭素数6~12のアリール基として、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アズレニル、および、ビフェニルが挙げられる。
【0066】
炭素数1~12の炭化水素基は、R1~R5において、互いに同一または相異なっていてもよい。
【0067】
また、R1およびR3は、互いに結合してヘテロ環を形成することができる。
【0068】
R1およびR3が互いに結合して形成されるヘテロ環は、-N=C-N-構造を有する含窒素ヘテロ環であって、例えば、3~20員環のヘテロ環、好ましくは、3~10員環、より好ましくは、3~8員環、さらに好ましくは、5~7員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、例えば、単環状であってもよく、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。
【0069】
また、R4およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R5およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成することができる。
【0070】
また、R1、R3、R4およびR5から形成されるヘテロ環は、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。その場合に形成されるヘテロ環は、-N=C-N-構造を有する含窒素ヘテロ環であって、例えば、6~20員環のヘテロ環、好ましくは、6~15員環、より好ましくは、6~12員環、さらに好ましくは、10~12員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、R1、R3、R4およびR5がヘテロ環を形成する場合、R2は、好ましくは、水素原子を示す。このようなヘテロ環構造として、具体的には、トリアザビシクロ環構造が挙げられる。
【0071】
上記一般式(1)において、R1~R5は、好ましくは、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、より好ましくは、炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示し、さらに好ましくは、炭素数1~12の鎖状アルキル基または水素原子を示す。とりわけ好ましくは、上記一般式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、炭素数1~12の鎖状アルキル基を示し、R3は、水素原子を示す。
【0072】
このような上記一般式(1)に示される第1ブロック剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0073】
上記一般式(1)に示される第1ブロック剤として、具体的には、3,3-ジアルキルグアニジン、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、および、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンなどが挙げられる。
【0074】
上記一般式(1)に示される第1ブロック剤は、好ましくは、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジンを含み、より好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを含み、さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンからなる。
【0075】
第1ブロック剤が1,1,3,3-テトラアルキルグアニジンを含むと、水分散性ブロックイソシアネートの低温硬化性を確実に確保することができる。
【0076】
また、第1ブロック剤の解離温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
【0077】
なお、ブロック剤の解離温度は、以下の方法により測定できる(以下同様)。
【0078】
ブロックイソシアネートをシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってイソシアネート基が再生する温度を観察する。なお、ブロック剤の触媒能が高く、再生したイソシアネート基を観察できない場合には、ポリオールと混合し、その混合物をシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってポリオール化合物の水酸基が反応する温度を観察することにより、ブロック剤の解離温度を測定できる。ブロック剤の触媒能については後で説明する。
【0079】
ブロック剤における第1ブロック剤の含有割合は、例えば、1モル%以上、好ましくは、2モル%を超過し、より好ましくは、4モル%以上、さらに好ましくは、6モル%以上、また、例えば、100モル%以下、好ましくは、90モル%以下、より好ましくは、80モル%未満、さらに好ましくは、70モル%以下、とりわけ好ましくは、25モル%以下である。
【0080】
第1ブロック剤の含有割合が上記範囲であれば、水分散性ブロックイソシアネートの水分散性を安定して確保することができながら、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の貯蔵安定性の向上を図ることができる。
【0081】
(2-2)第2ブロック剤
【0082】
ブロック剤は、好ましくは、上記した第1ブロック剤に加えて、第2ブロック剤を含む。ブロック剤は、より好ましくは、第1ブロック剤および第2ブロック剤からなる。そのため、ブロックイソシアネートは、好ましくは、第1潜在イソシアネート基に加えて、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基を含有する。
【0083】
ブロック剤が第2ブロック剤を含むと、水分散性ブロックイソシアネートの低温硬化性をより確実に確保することができる。
【0084】
第2ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロックされた状態ではイソシアネート基を再生するブロック剤であって、また、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用を有しないか、または、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用を有したとしても、その触媒作用が上記の第1ブロック剤よりも小さいブロック剤である。
【0085】
なお、第1ブロック剤の触媒作用と第2ブロック剤の触媒作用は、特開2017-82208号公報の[0242]段落~[0247]段落に記載の方法により比較できる。
【0086】
第2ブロック剤として、例えば、イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、および、ピリミジン系化合物が挙げられる。
【0087】
イミダゾール系化合物として、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、および、2-アミン-イミダゾールが挙げられる。
【0088】
アルコール系化合物として、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、1-オクタノール、2-オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2-(ヒドロキシメチル)フラン、2-メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2-エトキシエタノール、n-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエトキシエタノール、2-エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2-ブトキシエチルエタノール、2-ブトキシエトキシエタノール、N,N-ジブチル-2-ヒドロキシアセトアミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-モルホリンエタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、3-オキサゾリジンエタノール、2-ヒドロキシメチルピリジン、フルフリルアルコール、12-ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、および、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0089】
フェノール系化合物として、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、s-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-s-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2-ヒドロキシピリジン、2-ヒドロキシキノリン、8-ヒドロキシキノリン、2-クロロ-3-ピリジノール、および、ピリジン-2-チオールが挙げられる。
【0090】
活性メチレン系化合物として、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル、アセト酢酸アルキル、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、および、シアノ酢酸エチルが挙げられる。マロン酸ジアルキルとして、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ-t-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルs-ブチル、マロン酸エチルs-ブチル、マロン酸メチルt-ブチル、マロン酸エチルt-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t-ブチルフェニル、および、イソプロピリデンマロネートが挙げられる。アセト酢酸アルキルとして、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸t-ブチル、アセト酢酸ベンジル、および、アセト酢酸フェニルが挙げられる。
【0091】
アミン系化合物として、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンアミン、2,2,5-トリメチルヘキサメチレンアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5-トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルメチルアミン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルプロピルアミン、t-ブチルブチルアミン、t-ブチルベンジルアミン、t-ブチルフェニルアミン、2,2,6-トリメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、(ジメチルアミノ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン、6-メチル-2-ピペリジン、および、6-アミノカプロン酸が挙げられる。
【0092】
イミン系化合物として、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、および、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンが挙げられる。
【0093】
オキシム系化合物として、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、および、2-ヘプタノンオキシムが挙げられる。
【0094】
カルバミン酸系化合物として、例えば、N-フェニルカルバミン酸フェニルが挙げられる。
【0095】
尿素系化合物として、例えば、尿素、チオ尿素、および、エチレン尿素が挙げられる。
【0096】
酸アミド系化合物は、言い換えれば、ラクタム系化合物である。酸アミド系化合物として、例えば、アセトアニリド、N-メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、ピロリドン、2,5-ピペラジンジオン、および、ラウロラクタムなどが挙げられる。
【0097】
酸イミド系化合物として、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、および、フタルイミドが挙げられる。
【0098】
トリアゾール系化合物として、例えば、1,2,4-トリアゾール、および、ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0099】
ピラゾール系化合物として、例えば、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、および、3,5-ジアルキルピラゾールが挙げられる。3,5-ジアルキルピラゾールは、ピラゾール環の4位に置換基を有していない。3,5-ジアルキルピラゾールとして、例えば、3,5-ジメチルピラゾール、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾールが挙げられる。
【0100】
メルカプタン系化合物として、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、および、ヘキシルメルカプタンが挙げられる。
【0101】
重亜硫酸塩として、例えば、重亜硫酸ソーダが挙げられる。
【0102】
イミダゾリン系化合物として、例えば、2-メチルイミダゾリン、および、2-フェニルイミダゾリンが挙げられる。
【0103】
ピリミジン系化合物として、例えば、2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンが挙げられる。
【0104】
また、第2ブロック剤は、上記に限定されない。第2ブロック剤として、例えば、ベンゾオキサゾロン、無水イサト酸、および、テトラブチルホスホニウム・アセタートも挙げられる。
【0105】
このような第2ブロック剤は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0106】
第2ブロック剤は、好ましくは、ピラゾール系化合物を含み、より好ましくは、ピラゾール系化合物からなる。ピラゾール系化合物として、好ましくは、3,5-ジフェニルピラゾール、および、3,5-ジアルキルピラゾールが挙げられ、より好ましくは、3,5-ジアルキルピラゾールが挙げられ、さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾールが挙げられる。
【0107】
第2ブロック剤の解離温度は、例えば、150℃以下、好ましくは、140℃以下、さらに好ましくは、130℃以下、例えば、60℃以上である。
【0108】
ブロック剤における第2ブロック剤の含有割合は、例えば、0モル%以上、好ましくは、10モル%以上、より好ましくは、20モル%を超過し、さらに好ましくは、30モル%以上、とりわけ好ましくは、75モル%以上、また、例えば、99モル%以下、好ましくは、98モル%未満、より好ましくは、96モル%以下、さらに好ましくは、94モル%以下である。
【0109】
(3)ブロックイソシアネートの調製
【0110】
次に、ブロックイソシアネートの調製について説明する。
【0111】
ブロックイソシアネートを調製するには、ブロック剤とポリイソシアネート化合物とを反応させる。
【0112】
ブロック剤が第1ブロック剤のみを含有する場合、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤と反応させる。
【0113】
ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤におけるイソシアネート基と反応可能な活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、1.0以上、また、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下である。
【0114】
また、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤との反応は、例えば、不活性ガス雰囲気において実施される。不活性ガスとして、例えば、窒素ガス、および、アルゴンガスが挙げられる。
【0115】
反応温度は、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上、また、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。反応圧力は、例えば、大気圧である。反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上、また、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0116】
これにより、イソシアネート基が第1ブロック剤と反応して、第1潜在イソシアネート基を生成する。
【0117】
また、ブロック剤が第1ブロック剤および第2ブロック剤を含有する場合、上記したポリイソシアネート化合物と、上記した第1ブロック剤および上記した第2ブロック剤とを反応させる。
【0118】
ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤および第2ブロック剤との反応順序は、特に制限されず、例えば、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、遊離のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
【0119】
ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第2ブロック剤におけるイソシアネート基と反応可能な活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2を超過し、より好ましくは、0.3以上、さらに好ましくは、0.75以上、また、例えば、0.99未満、好ましくは、0.98以下、より好ましくは、0.94以下である。
【0120】
これにより、第2ブロック剤がポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部をブロックして、第2潜在イソシアネート基を生成するとともに、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の残部が遊離状態で残存する。
【0121】
次いで、遊離状態のイソシアネート基が残存するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
【0122】
ブロックイソシアネートの遊離のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤におけるイソシアネート基と反応可能な活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.3以下、好ましくは、1.2以下、さらに好ましくは、1.1以下である。
【0123】
なお、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤および第2ブロック剤との反応条件は、上記したポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤との反応条件と同様である。
【0124】
また、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって判断できる。
【0125】
これにより、ブロックイソシアネートにおいて、遊離状態で残存するイソシアネート基が第1ブロック剤と反応して、第1潜在イソシアネート基を生成する。
【0126】
また、上記の各反応は、いずれも、無溶媒下であってもよく、例えば、有機溶媒の存在下であってもよい。
【0127】
有機溶媒として、例えば、ケトン類、ニトリル類、ニトリル類、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテルエステル類、エーテル類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、および、極性非プロトン類が挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0128】
以上によって、ブロックイソシアネートが調製される。
【0129】
ブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基を少なくとも有する。ブロックイソシアネートは、好ましくは、第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有している。
【0130】
ブロックイソシアネートにおける第1潜在イソシアネート基の含有割合の範囲は、上記したブロック剤における第1ブロック剤の含有割合の範囲と同じである。
【0131】
また、ブロックイソシアネートにおける第2潜在イソシアネート基の含有割合の範囲は、上記したブロック剤における第2ブロック剤の含有割合の範囲と同じである。
【0132】
なお、ブロックイソシアネートの調製方法は、上記の方法に限定されない。
【0133】
例えば、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤とを、遊離のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させてもよい。また、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤および第2ブロック剤とを同時に反応させてもよい。
【0134】
また、第1ブロック剤のみによってブロックされたポリイソシアネート化合物と、第2ブロック剤のみによってブロックされたポリイソシアネート化合物とを別々に調製して、混合することもできる。この場合、ブロックイソシアネートは、第1潜在イソシアネート基を有する分子と、第2潜在性イソシアネート基を有する分子とを別々に含有する。
【0135】
(3)酸
【0136】
水分散性ブロックイソシアネートにおいて、イソシアネート基をブロックしている第1ブロック剤の少なくとも一部が、酸により中和されている。これにより、第1ブロック剤が有するアミノ基が、カチオン性基としてのアンモニウム塩を形成する。なお、ブロック剤が第2ブロック剤を含む場合、酸は、第2ブロック剤の一部を中和してもよい。
【0137】
酸として、例えば、有機酸および無機酸が挙げられる。
【0138】
酸は、好ましくは、有機酸を含み、より好ましくは、有機酸からなる。
【0139】
酸が有機酸を含むと、水分散性ブロックイソシアネートの低温硬化性および貯蔵安定性をより一層安定して確保することができる。
【0140】
有機酸として、例えば、炭素数2または3のカルボン酸、および、炭素数4以上のカルボン酸が挙げられ、好ましくは、炭素数2または3のカルボン酸が挙げられる。
【0141】
炭素数2または3のカルボン酸として、例えば、酢酸、プロピオン酸および乳酸が挙げられる。言い換えれば、酸は、さらに好ましくは、酢酸、プロピオン酸および乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸からなる。
【0142】
酸は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0143】
第1ブロック剤の少なくとも一部を酸により中和するには、例えば、上記したブロックイソシアネートと、上記した酸とを反応させる。
【0144】
イソシアネート基をブロックしている第1ブロック剤に対する、酸の当量比(酸/第1ブロック剤)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、0.8以上、また、例えば、5.0以下、好ましくは、3.0以下、より好ましくは、2.0以下である。
【0145】
また、ブロックイソシアネートと酸との反応は、特に制限されないが、例えば、大気下または不活性ガス雰囲気において実施される。不活性ガスとして、例えば、窒素ガス、および、アルゴンガスが挙げられる。
【0146】
反応温度は、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上、また、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。反応圧力の条件として、特に制限されないが、例えば、加圧条件および大気圧条件が挙げられ、好ましくは、大気圧条件が挙げられる。反応時間は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上、また、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0147】
また、上記の反応は、好ましくは、上記した有機溶媒の存在において実施される。
【0148】
これによって、イソシアネート基をブロックしている第1ブロック剤が有するアミノ基が、酸によって中和されて、カチオン性基としてのアンモニウム塩を形成する。
【0149】
以上によって、水分散性ブロックイソシアネートが製造される。
【0150】
ブロックイソシアネートと酸との反応において有機溶媒が使用される場合、水分散性ブロックイソシアネートは、有機溶媒を含む反応液に溶解されている。
【0151】
この場合、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液に、水を添加して、反応液と水とを攪拌機を用いて乳化させる。そして、乳化液を、例えば、減圧下で加熱することにより、有機溶媒を揮発除去する。
【0152】
これにより、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液が製造される。
【0153】
水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0154】
水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の粘度は、例えば、1mPa・s以上、好ましくは、3mPa・s以上、また、例えば、800mPa・s以下、好ましくは、500mPa・s以下である。なお、水分散液の粘度は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる(以下同様)。
【0155】
水分散性ブロックイソシアネートの水分散液のpHは、例えば、3.0以上、好ましくは、4.0以上、また、例えば、9.0以下、好ましくは、8.0以下である。なお、水分散液のpHは、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる(以下同様)。
【0156】
水分散性ブロックイソシアネートの水分散液における粒子径は、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上、また、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下である。なお、水分散液の粒子径は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる(以下同様)。
【0157】
<作用効果>
上記した水分散性ブロックイソシアネートでは、上記一般式(1)で示される第1ブロック剤の少なくとも一部が、酸により中和されている。そのため、水分散性ブロックイソシアネートは、水に円滑に分散でき、かつ、長期にわたって水に分散した状態を維持できる。また、水分散性ブロックイソシアネートでは、第1ブロック剤の少なくとも一部が、比較的低温、具体的には、120℃以下で、イソシアネート基から解離する。
【0158】
そのため、水分散性ブロックイソシアネートは、低温硬化性および貯蔵安定性に優れる。
【0159】
さらに、上記一般式(1)で示される第1ブロック剤の少なくとも一部が、酸により中和されていれば、上記した水分散性ブロックイソシアネートは、上記中和により生成される3級アンモニウムのカチオン塩を含有する。そのため、水分散性ブロックイソシアネートは、3級アンモニウムのカチオン塩に由来する優れた抗菌性を、発現できる。
【0160】
<樹脂原料>
樹脂原料は、上記した水分散性ブロックイソシアネートを含有し、必要に応じて、ポリオール化合物を含有する。樹脂原料として、例えば、二液型ポリウレタン樹脂原料、一液型ポリウレタン樹脂原料、および、ブロックイソシアネート・バインダー樹脂組成物が挙げられる。
【0161】
二液型ポリウレタン樹脂原料は、上記した水分散性ブロックイソシアネートを含む硬化剤と、ポリオール化合物を含む主剤とを別々に調整し、それらを使用直前に配合するものである。
【0162】
一液型ポリウレタン樹脂原料は、上記した水分散性ブロックイソシアネートを含む硬化剤と、ポリオール化合物を含む主剤とを予め混合したものである。
【0163】
ブロックイソシアネート・バインダー樹脂組成物は、上記した水分散性ブロックイソシアネートと、バインダー樹脂を含むバインダー樹脂液とを予め混合したものである。なお、バインダー樹脂液は、ポリオール化合物を含まない。
【0164】
ポリオール化合物として、例えば、低分子量ポリオール、および、高分子量ポリオールが挙げられる。
【0165】
低分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、300未満、好ましくは、400未満である。低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する。
【0166】
低分子量ポリオールとして、例えば、2価アルコール、3価アルコール、4価アルコール、5価アルコール、6価アルコール、7価アルコールおよび8価アルコールが挙げられる。
【0167】
2価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7~20)ジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。
【0168】
3価アルコールとして、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。
【0169】
4価アルコールとして、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、および、ジグリセリンが挙げられる。
【0170】
5価アルコールとして、例えば、キシリトールが挙げられる。
【0171】
6価アルコールとして、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、および、ジペンタエリスリトールが挙げられる。
【0172】
7価アルコールとして、例えば、ペルセイトールが挙げられる。
【0173】
8価アルコールとして、例えば、ショ糖が挙げられる。
【0174】
このような低分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0175】
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、300以上、好ましくは、400以上、より好ましくは、500以上である。高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する。
【0176】
高分子量ポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオール、および、フッ素含有ポリオールが挙げられる。
【0177】
ポリエーテルポリオールとして、例えば、ポリオキシアルキレン(C2~3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0178】
ポリエステルポリオールとして、例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、および、ラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0179】
ポリカーボネートポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物、および、上記した2価アルコールと開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0180】
ポリウレタンポリオールとして、例えば、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオール、および、ポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオールが挙げられる。
【0181】
エポキシポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールと、多官能ハロヒドリンとの反応により得られるエポキシポリオールが挙げられる。
【0182】
植物油ポリオールとして、例えば、ひまし油、やし油、および、エステル変性ひまし油ポリオールが挙げられる。
【0183】
ポリオレフィンポリオールとして、例えば、ポリブタジエンポリオール、および、部分ケン価エチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0184】
アクリルポリオールとして、例えば、ヒドロキシル基含有アクリレートと、ヒドロキシル基含有アクリレートと共重合可能な共重合性ビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0185】
ビニルモノマー変性ポリオールは、上記した高分子量ポリオールと、ビニルモノマーとの反応により得られる。
【0186】
フッ素含有ポリオールとして、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合性ビニルモノマーとして、フッ素化合物が配合されたアクリルポリオールが挙げられる。
【0187】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0188】
このようなポリオール化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0189】
ポリオール化合物のなかでは、好ましくは、高分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリウレタンポリオールおよびアクリルポリオールが挙げられる。
【0190】
バインダー樹脂として、上記ポリオール化合物以外に、例えば、水酸基を有さない高分子化合物が挙げられ、好ましくは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。
【0191】
また、必要に応じて、水分散性ブロックイソシアネート、ポリオール化合物およびバインダー樹脂のいずれかまたはそのすべてに、添加剤を適宜配合することができる。添加剤として、例えば、反応溶媒、触媒、エポキシ樹脂、塗工性改良剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、沈降防止剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機微粒子、無機微粒子、および、防カビ剤が挙げられる。添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
【0192】
水分散性ブロックイソシアネートとポリオール化合物との配合において、ポリオール化合物の水酸基に対する、水分散性ブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基の当量比(潜在イソシアネート基/水酸基)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上、また、例えば、5以下、好ましくは、3以下である。
【0193】
そして、水分散性ブロックイソシアネート、ポリオール化合物およびバインダー樹脂のいずれか、または、それら混合物を含む処理剤は、公知の塗工方法により、対象物に塗工され、乾燥されることにより塗膜を形成する。その後、塗膜は、加熱され、必要に応じて熟成される。
【0194】
加熱温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、また、例えば、180℃以下、好ましくは、150℃以下、より好ましくは、130℃以下、さらに好ましくは、120℃以下、とりわけ好ましくは、110℃以下である。
【0195】
加熱温度が高い場合には、本発明の低温硬化性の硬化として、硬化時間を短縮することができる。
【0196】
このような樹脂原料の用途として、例えば、繊維処理剤、撥水剤、塗料組成物、接着剤、帯電防止剤、製紙用処理剤、湿潤紙力増強剤、記録媒体の受理層、電着塗装組成物、抗菌・抗ウイルス組成物、カプセル化された組成物、光学部材およびラテックス組成物が挙げられる。
【0197】
このような樹脂原料の用途のなかでは、好ましくは、繊維処理剤、撥水剤、塗料組成物および接着剤が挙げられ、より好ましくは、繊維処理剤および撥水剤が挙げられる。
【0198】
<繊維処理剤>
繊維処理剤は、布状繊維製品にインクを印捺して画像を形成する捺染に用いられる。捺染としては、例えば、アナログ方式の捺染、および、デジタル方式の捺染が挙げられる。アナログ方式の捺染としては、例えば、スクリーン印刷による捺染が挙げられる。デジタル方式の捺染としては、例えば、インクジェット印刷による捺染が挙げられる。
【0199】
繊維処理剤を用いることなく、布状繊維製品にインクを印捺すると、捺染物の摩擦堅牢性を十分に確保できない場合がある。
【0200】
布状繊維製品は、繊維によって構成される。布状繊維製品の形態として、例えば、織物、編み物、不織布、および、起毛布が挙げられる。布状繊維製品は、繊維以外の部分を有してもよい。
【0201】
布状繊維製品の繊維として、例えば、天然繊維、再生繊維、合成繊維、半合成繊維、および、無機繊維が挙げられる。
【0202】
天然繊維として、例えば、綿、カポック、亜麻、苧麻、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、カシミヤ、モヘア、アルパカ、ラクダ毛、絹、羊毛、および、羽毛が挙げられる。
【0203】
再生繊維として、例えば、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、および、テンセルが挙げられる。
【0204】
合成繊維として、例えば、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ベンゾエード繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリイミド繊維、および、乳酸繊維が挙げられる。
【0205】
半合成繊維として、例えば、アセテートおよびプロミックスが挙げられる。
【0206】
無機繊維として、例えば、石綿、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ボロン繊維、チラノ繊維、無機ウィスカー、ロツクファイバー、および、スラグフアイバーガラス繊維が挙げられる。
【0207】
繊維は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0208】
布状繊維製品として、具体的には、衣類、身の回り品、および、その他の製品が挙げられる。衣類として、例えば、シャツ、トレーナー、ジャージ、パンツ、ワンピース、ブラウス、帽子、および、靴下が挙げられる。身の回り品として、例えば、ハンカチ、ネクタイ、および、布製ベルトが挙げられる。その他の製品として、例えば、靴、寝具、シーツ、カーテン、カーシート、バッグ、および、旗が挙げられる。
【0209】
また、布状繊維製品の色は、特に制限されない。布状繊維製品は、白色であってもよく、白色以外の有色であってもよい。
【0210】
このような布状繊維製品の表面は、アニオン性を有する。
【0211】
インクは、例えば、アニオン性樹脂と、顔料と、水とを含む。
【0212】
アニオン性樹脂として、例えば、アニオン性基を有する樹脂、および、アニオン性分散剤によって表面処理された樹脂が挙げられる。
【0213】
樹脂として、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ビニル樹脂、および、セルロース樹脂が挙げられる。なお、(メタ)アクリルとして、メタクリルおよびアクリルが挙げられる(以下同様)。
【0214】
アニオン性基として、例えば、カルボキシ基、および、スルホ基が挙げられる。アニオン性基は、樹脂の主鎖または側鎖に位置する。
【0215】
アニオン性分散剤として、例えば、アニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0216】
アニオン性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0217】
顔料として、例えば、公知の有機顔料、および、公知の無機顔料が挙げられる。
【0218】
また、インクは、必要に応じて、上記した低分子量ポリオールを含んでもよい。
【0219】
繊維処理剤は、捺染において布状繊維製品に対するインクの印捺の前処理および/または後処理として、布状繊維製品に付与される。繊維処理剤は、捺染物に優れた摩擦堅牢性を付与できる。
【0220】
繊維処理剤は、上記した水分散性ブロックイソシアネートを少なくとも含む。そのため、繊維処理剤は、低温硬化性および貯蔵安定性に優れる。また、繊維処理剤は、好ましくは、上記した高分子量ポリオールをさらに含む。
【0221】
繊維処理剤は、さらに、ノニオン性樹脂および/またはカチオン性樹脂を含有してもよい。
【0222】
ノニオン性樹脂として、例えば、ノニオン性基を有する樹脂、および、ノニオン性分散剤によって表面処理された樹脂が挙げられる。
【0223】
ノニオン性樹脂の樹脂として、例えば、上記した樹脂が挙げられる。
【0224】
ノニオン性基として、例えば、少なくとも3つ連続したオキシエチレン基(ポリオキシエチレン基)が挙げられる。ノニオン性基は、樹脂の主鎖または側鎖に位置する。
【0225】
ノニオン性分散剤として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。ノニオン性分散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0226】
カチオン性樹脂として、例えば、カチオン性基を有する樹脂、および、カチオン性分散剤によって表面処理された樹脂が挙げられる。
【0227】
カチオン性樹脂の樹脂として、例えば、上記した樹脂が挙げられる。
【0228】
カチオン性基として、例えば、アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピラゾール基、および、ベンゾピラゾール基が挙げられる。カチオン性基は、樹脂の主鎖または側鎖に位置する。
【0229】
カチオン性分散剤として、例えば、アミノ基含有アクリルポリマー、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリビニルアルコール樹脂、および、カチオン性水溶性多分岐ポリエステルアミド樹脂が挙げられる。カチオン性分散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0230】
カチオン性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0231】
このような繊維処理剤は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂であり、好ましくは、ポリウレタン樹脂原料である。
【0232】
繊維処理剤がポリウレタン樹脂原料である場合、繊維処理剤は、例えば、硬化剤としての水分散性ブロックイソシアネートの水分散液と、主剤としての高分子量ポリオールの水分散液とが上記した割合で予め混合された混合分散液である。
【0233】
より具体的には、繊維処理剤を印捺の前処理に使用する場合、まず、水分散性ブロックイソシアネートと高分子量ポリオールとを、水酸基に対する潜在イソシアネート基の当量比が上記の範囲となるように混合して、繊維処理剤の一例としての前処理液を調製する。
【0234】
また、必要に応じて、前処理液に水および/またはアルコールを添加して、前処理液の固形分濃度を調整する。前処理液の固形分濃度は、例えば、1質量%以上、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0235】
次いで、前処理液を上記した布状繊維製品に付与する。前処理液の付与方法として、例えば、パッド法、浸漬法、スプレー法、コーディング法およびプリント法が挙げられ、好ましくは、浸漬法が挙げられる。具体的には、布状繊維製品を前処理液に浸漬させた後、布状繊維製品を前処理液から引き上げて、必要により乾燥させる。
【0236】
これによって、前処理液の塗膜が、布状繊維製品の表面に形成される。その後、前処理液の塗膜を上記した加熱温度に加熱する。
【0237】
このとき、上記した第1ブロック剤が上記したポリイソシアネート化合物から解離する。そのため、ポリイソシアネート化合物と高分子量ポリオールとが反応して、ポリウレタン樹脂を形成する。これによって、前処理液の塗膜は、硬化する。
【0238】
前処理液の硬化塗膜は、脱ブロック状態の第1ブロック剤であって、少なくとも一部が酸により中和されてアンモニウム塩を形成している第1ブロック剤を含む。そのため、前処理液の硬化塗膜は、カチオン性を有する。カチオン性を有する前処理液の硬化塗膜は、アニオン性を有する布状繊維製品の表面とイオン結合を形成する。その結果、前処理液の硬化塗膜を、布状繊維製品の表面に安定して定着させることができる。
【0239】
次いで、上記したインクを前処理液の硬化塗膜上に印捺して、インク層を形成する。また、インク層を必要に応じて乾燥させる。インク層は、アニオン性樹脂を含む。そのため、インク層は、アニオン性を有する。アニオン性を有するインク層は、カチオン性を有する前処理液の硬化塗膜とイオン結合を形成する。そのため、インク層を、前処理液の硬化塗膜上に安定して定着させることができる。
【0240】
また、繊維処理剤を印捺の後処理に使用する場合、前処理液と同様にして、繊維処理剤の一例としての後処理液を調製する。そして、インク層を覆うように、後処理液を塗布する。その後、後処理液の塗膜を上記した加熱温度に加熱して硬化させる。後処理液の硬化塗膜は、前処理液の硬化塗膜と同様に、カチオン性を有する。カチオン性を有する後処理液の硬化塗膜は、アニオン性を有するインク層とイオン結合を形成する。そのため、後処理液の硬化塗膜をインク層上に安定して定着させることができる。
【0241】
以上によって、布状繊維製品に画像が形成された捺染物が調製される。
【0242】
捺染物は、アニオン性を有する布状繊維製品と、カチオン性を有する前処理液の硬化塗膜と、アニオン性を有するインク層と、必要に応じてカチオン性を有する後処理液の硬化塗膜とを、布状繊維製品の厚み方向に順に備えている。
【0243】
このような捺染物において、布状繊維製品と前処理液の硬化塗膜とがイオン結合を形成するとともに、前処理液の硬化塗膜とインク層とがイオン結合を形成し、必要に応じて、インク層と後処理液の硬化塗膜とがイオン結合を形成している。そのため、捺染物に、優れた摩擦堅牢性を付与することができる。
【0244】
<撥水剤>
撥水剤は、例えば、上記した布状繊維製品に、水の付着を抑制する撥水性を付与する。
【0245】
布状繊維製品は、通常、洗濯されて繰り返し使用される。そのため、撥水剤で処理された布状繊維製品を複数回洗濯しても、優れた撥水性を維持できる洗濯耐久性が望まれる。
【0246】
撥水剤は、上記した水分散性ブロックイソシアネートを少なくとも含む。そのため、撥水剤は、低温硬化性および貯蔵安定性に優れる。また、撥水剤は、好ましくは、フッ素樹脂をさらに含む。
【0247】
フッ素樹脂は、フッ素を含む(メタ)アクリレートモノマーの重合体である。フッ素を含む(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、パーフルオロアルキル基を含む炭素数3~6の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0248】
フッ素樹脂は、フッ素を含む(メタ)アクリレートモノマーと、その他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0249】
その他のモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイン酸アルキルエステル類、オレフィン類、カルボン酸ビニル類、スチレン類、および、ビニルエーテル類が挙げられる。
【0250】
(メタ)アクリル酸エステル類として、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレー卜、アジリジエル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、および、アルキレンジオールアクリレートが挙げられる。
【0251】
(メタ)アクリルアミド類として、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチルロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、および、メチロール化ジアセトンアクリルアミドが挙げられる。
【0252】
マレイン酸アルキルエステル類として、例えば、マレイン酸ジブチルが挙げられる。
【0253】
オレフィン類として、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、および、クロロプレンが挙げられる。
【0254】
カルボン酸ビニル類として、例えば、酢酸ビニルが挙げられる。
【0255】
スチレン類として、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、および、β-メチルスチレンが挙げられる。
【0256】
ビニルエーテル類としては、例えば、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、および、ハロゲン化アルキルビニルエーテルが挙げられる。
【0257】
その他のモノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0258】
フッ素を含む(メタ)アクリレートモノマーの重合割合は、共重合に用いる全モノマーに対して、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0259】
このようなフッ素樹脂の含有割合は、フッ素樹脂および水分散性ブロックイソシアネートの総和100質量%に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、80質量%以上、また、例えば、95質量%以下である。
【0260】
また、撥水剤は、さらに、ノニオン性化合物および/またはカチオン性化合物を含有してもよい。
【0261】
ノニオン性化合物として、例えば、エーテル型ノニオン性化合物、エステル型ノニオン性化合物、および、アルカノールアミド型ノニオン性化合物が挙げられる。
【0262】
エーテル型ノニオン性化合物として、例えば、炭素数10~18のアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、アルキルフェノールにエチレンオキサイドを付加した化合物、ポリプロピレンアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、および、多価アルコールの脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加した化合物が挙げられる。
【0263】
エステル型ノニオン性化合物として、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、および、ソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0264】
アルカノールアミド型ノニオン性化合物として、例えば、脂肪酸とジエタノールアミンとの反応物が挙げられる。
【0265】
ノニオン性化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0266】
カチオン性化合物として、例えば、第四級アンモニウム塩、および、アルキルアミン塩が挙げられる。
【0267】
カチオン性化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0268】
このような撥水剤は、例えば、ブロックイソシアネート・バインダー樹脂組成物である。
【0269】
撥水剤がブロックイソシアネート・バインダー樹脂組成物である場合、撥水剤は、例えば、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液と、バインダー樹脂としてのフッ素樹脂とが上記した割合で混合された混合液である。
【0270】
撥水剤の固形分濃度は、撥水剤に水を添加することにより調整される。撥水剤の固形分濃度は、例えば、0.5質量%以上、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0271】
このような撥水剤によって布状繊維製品を処理する場合、撥水剤を上記した布状繊維製品に付与する。撥水剤の付与方法として、例えば、前処理剤の付与方法と同様の方法が挙げられ、好ましくは、浸漬法が挙げられる。具体的には、布状繊維製品を撥水剤に浸漬させた後、布状繊維製品を撥水剤から引き上げて、必要により乾燥させる。
【0272】
これによって、撥水剤の塗膜が、布状繊維製品の表面に形成される。その後、撥水剤の塗膜を上記した加熱温度に加熱する。このとき、上記した第1ブロック剤が上記したポリイソシアネート化合物から解離する。
【0273】
そのため、撥水剤の塗膜は、脱ブロック状態の第1ブロック剤であって、少なくとも一部が酸により中和されてアンモニウム塩を形成している第1ブロック剤を含む。これにより、撥水剤の塗膜は、カチオン性を有する。カチオン性を有する撥水剤の塗膜は、アニオン性を有する布状繊維製品の表面とイオン結合を形成する。
【0274】
その結果、撥水剤の塗膜を布状繊維製品の表面に安定して定着させることができ、撥水剤により処理された状繊維製品に、優れた洗濯耐久性を付与することができる。
【0275】
<塗料組成物>
塗料組成物は、上記した水分散性ブロックイソシアネートを少なくとも含む。そのため、塗料組成物は、低温硬化性および貯蔵安定性に優れる。また、塗料組成物は、好ましくは、上記した高分子量ポリオールをさらに含む。
【0276】
このような塗料組成物は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂であり、好ましくは、ポリウレタン樹脂原料である。
【0277】
塗料組成物がポリウレタン樹脂原料である場合、塗料組成物は、例えば、硬化剤としての水分散性ブロックイソシアネートの水分散液と、主剤としての高分子量ポリオールの水分散液とが上記した割合で予め混合された混合分散液である。
【0278】
また、必要に応じて、塗料組成物に水を添加して、塗料組成物の固形分濃度を調整する。塗料組成物の固形分濃度は、例えば、1質量%以上、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0279】
そして、塗料組成物を被塗物に対して、公知の塗工方法により塗装する。
【0280】
塗工方法として、例えば、スプレー塗工、ディップコート塗工、スピンコート塗工、回転霧化塗工、および、カーテンコート塗工が挙げられる。
【0281】
被塗物として、例えば、無機物および有機物が挙げられる。無機物として、例えば、コンクリート、自然石、ガラス、および、金属が挙げられる。有機物として、プラスチック、ゴム、接着剤、および、木材が挙げられる。
【0282】
その後、塗料組成物の塗膜を上記した加熱温度に加熱する。
【0283】
このとき、上記した第1ブロック剤が上記したポリイソシアネート化合物から解離する。そして、ポリイソシアネート化合物と高分子量ポリオールとが反応して、ポリウレタン樹脂を形成する。これによって、塗料組成物の塗膜は、硬化する。
【0284】
このような塗料組成物の硬化塗膜は、被塗物に対して優れた密着性を有する。
【0285】
<接着剤>
接着剤は、上記した水分散性ブロックイソシアネートを少なくとも含む。そのため、接着剤は、低温硬化性および貯蔵安定性に優れる。また、接着剤は、好ましくは、上記した高分子量ポリオールをさらに含む。
【0286】
このような接着剤は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂であり、好ましくは、ポリウレタン樹脂原料である。
【0287】
接着剤がポリウレタン樹脂原料である場合、接着剤は、例えば、硬化剤としての水分散性ブロックイソシアネートの水分散液と、主剤としての高分子量ポリオールの水分散液とが上記した割合で予め混合された混合分散液である。
【0288】
また、必要に応じて、接着剤に水を添加して、接着剤の固形分濃度を調整する接着剤の固形分濃度の範囲は、例えば、塗料組成物の固形分濃度の範囲と同じである。
【0289】
そして、接着剤を、被着物を接着する所定位置に上記の塗工方法により塗工する。
【0290】
被着物として、例えば、包装材料、および、土木材料が挙げられる。包装材料として、例えば、プラスチックフィルム、金属箔、および、金属蒸着フィルムが挙げられる。土木材料として、例えば、FRP、および、鋼材が挙げられる。
【0291】
その後、被着物を接着剤に接触させながら、接着剤を上記した加熱温度に加熱する。これによって、接着剤は、硬化する。このような接着剤の硬化物は、被着物に対して優れた接着性を有する。
【0292】
<その他の用途>
上記した水分散性ブロックイソシアネートは、繊維処理剤、撥水剤、塗料組成物および接着剤の他、種々の産業分野において、好適に使用できる。とりわけ、上記した水分散性ブロックイソシアネートは、3級アンモニウムのカチオン塩に由来する優れた抗菌性を発現できるため、抗菌剤として、好適に使用できる。
【実施例】
【0293】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0294】
<水分散性ブロックイソシアネートの調製>
実施例1~11
室温(25℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート誘導体(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-170N、固形分100質量%、イソシアネート基含有量20.7%、三井化学社製)200質量部と、酢酸エチル(溶媒)とを仕込んだ。
【0295】
次いで、反応器に、3,5-ジメチルピラゾール(DMP、第2ブロック剤)を加えた。DMPの添加割合は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表1に示すモル数であった。そして、HDIのイソシアヌレート誘導体とDMPとを反応させた。
【0296】
次いで、反応器に、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG、第1ブロック剤)を加えた。TMGの添加割合は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表1に示すモル数であった。そして、HDIのイソシアヌレート誘導体とTMGとを反応させた。
【0297】
その後、FT-IRスペクトルを測定することで、イソシアネート基がブロック化されていることを確認した。これによって、ブロックイソシアネートを含む反応液を得た。
【0298】
次いで、反応液に酢酸を加えて攪拌した。酢酸の添加割合は、使用した第1ブロック剤(TMG)1モルに対して、表1に示すモル数であった。このとき、反応液の温度は、28℃であった。攪拌時間は、0.5時間であった。
【0299】
これによって、第1ブロック剤が有するアミノ基が、酢酸によって中和されて、カチオン性基としての酢酸アンモニウム塩が形成した。これによって、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液を得た。
【0300】
その後、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液120質量部に、水220質量部を添加した。その後、反応液と水とをホモミキサーで攪拌して乳化させた。
【0301】
次いで、減圧条件下において、乳化液から、酢酸エチル(溶媒)を留去するともに、水の一部を留去した。
【0302】
以上によって、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の固形分濃度は、30質量%であった。
【0303】
実施例12
実施例1と同様に、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。
【0304】
なお、実施例12では、表2に示すように、第2ブロック剤を使用しなかった。ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート誘導体に対して、ブロック剤として、TMGのみを添加した。TMGの添加割合は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、100モルであった。
【0305】
実施例13
実施例5と同様に、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。
【0306】
なお、実施例13では、表2に示すように、酢酸に代えてプロピオン酸を使用した。
【0307】
実施例14
実施例5と同様に、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。
【0308】
なお、実施例14では、表2に示すように、酢酸に代えて乳酸を使用した。
【0309】
実施例15~17
室温(25℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート誘導体(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-170N、固形分100質量%、イソシアネート基含有量20.7%、三井化学社製)600質量部と、酢酸エチル(溶媒)とを仕込んだ。
【0310】
次いで、反応器に、ポリ(オキシエチレン)メチルエーテル(メトキシポリエチレングリコール、メトキシPEG1000、親水性化合物)を加えた。ポリ(オキシエチレン)メチルエーテルの添加割合は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表2に示すモル数であった。そして、HDIのイソシアヌレート誘導体とポリ(オキシエチレン)メチルエーテルとを反応させた。
【0311】
これによって、オキシエチレン基含有ブロックイソシアネートを含む反応液を得た。
【0312】
次いで、オキシエチレン基含有ブロックイソシアネートを含む反応液に、DMP(第2ブロック剤)を加えた。DMPの添加割合は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表2に示すモル数であった。そして、HDIのイソシアヌレート誘導体とDMPとを反応させた。
【0313】
次いで、反応液に、TMG(第1ブロック剤)を加えた。TMGの添加割合は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表2に示すモル数であった。そして、HDIのイソシアヌレート誘導体とTMGとを反応させた。
【0314】
その後、FT-IRスペクトルを測定することで、イソシアネート基がブロック化されていることを確認した。これによって、ブロックイソシアネートを含む反応液を得た。
【0315】
次いで、反応液に酢酸を加えて攪拌した。酢酸の添加割合は、使用した第1ブロック剤(TMG)1モルに対して、2モルであった。このとき、反応液の温度は、34℃であった。攪拌時間は、0.5時間であった。
【0316】
これによって、第1ブロック剤が有するアミノ基が、酢酸によって中和されて、酢酸アンモニウム塩が形成した。これによって、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液を得た。
【0317】
その後、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液120質量部に、水220質量部を添加した。その後、反応液と水とをホモミキサーで攪拌して乳化させた。
【0318】
次いで、減圧条件下において、乳化液から、酢酸エチル(溶媒)を留去するともに、水の一部を留去した。
【0319】
以上によって、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液(ポリイソシアネート成分)を調製した。この水分散液の固形分濃度は、30質量%であった。
【0320】
実施例18
実施例5と同様に、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。
【0321】
なお、実施例18では、表2に示すように、第1ブロック剤として、TMGに代えて、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ―5-エン(TABD)を使用した。
【0322】
実施例19~30
実施例2と同様に、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。
【0323】
なお、表4~表5に示すように、ポリイソシアネート化合物として、以下のポリイソシアネート誘導体を用いた。商品名、イソシアネート種および変性形態を、表中に示す。
【0324】
HDIのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト(トリオール付加体)(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-160N、固形分75質量%、イソシアネート基含有量12.6%、三井化学社製)
【0325】
HDIのビウレット(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-165N、固形分100質量%、イソシアネート基含有量23.3%、三井化学社製)
【0326】
HDIのアロファネート(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-178NL、固形分100質量%、イソシアネート基含有量19.2%、三井化学社製)
【0327】
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-H6XDI)のTMPアダクト(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-120N、固形分75質量%、イソシアネート基含有量11.0%、三井化学社製)
【0328】
1,3-H6XDIのイソシアヌレート(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-127N、固形分75質量%、イソシアネート基含有量13.5%、三井化学社製)
【0329】
キシリレンジイソシアネート(XDI)のTMPアダクト(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-110N、固形分75質量%、イソシアネート基含有量11.5%、三井化学社製)
【0330】
XDIのイソシアヌレート(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-131N、固形分75質量%、イソシアネート基含有量13.7%、三井化学社製)
【0331】
トリレンジイソシアネート(TDI)のTMPアダクト(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-103H、固形分75質量%、イソシアネート基含有量13.0%、三井化学社製)
【0332】
TDIのイソシアヌレート(ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-204、固形分50質量%、イソシアネート基含有量7.5%、三井化学社製)
【0333】
PDIのイソシアヌレート(ポリイソシアネート化合物、商品名:スタビオ(登録商標)D-370N、固形分100質量%、イソシアネート基含有量25%、三井化学社製)
【0334】
比較例1
実施例5と同様に、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。
【0335】
なお、比較例1では、表3に示すように、第1ブロック剤として、TMGに代えて、ジメチルアミノエタノール(DMAE)を使用した。
【0336】
比較例2
【0337】
実施例5と同様に、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。
【0338】
なお、比較例2では、表3に示すように、第1ブロック剤として、TMGに代えて、N-メチルピペラジン(MPZ)を使用した。
【0339】
比較例3
実施例5と同様に、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。
【0340】
なお、比較例3では、表3に示すように、第1ブロック剤として、TMGに代えて、N-メチルホモピペラジン(MHPZ)を使用した。
【0341】
比較例4
実施例5と同様に、水分散性ブロックイソシアネートを調製した。水分散性ブロックイソシアネートは、水に分散しなかった。
【0342】
なお、比較例4では、表3に示すように、第1ブロック剤として、TMGに代えて、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)を使用した。
【0343】
比較例5
実施例5と同様に、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。
【0344】
なお、比較例5では、表3に示すように、第1ブロック剤として、TMGに代えて、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン(TMEDA)を使用した。
【0345】
比較例6
実施例5と同様に、水分散性ブロックイソシアネートを調製した。水分散性ブロックイソシアネートは、水に分散しなかった。
【0346】
なお、比較例6では、表3に示すように、第1ブロック剤を使用しなかった。ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート誘導体に対して、ブロック剤として、DMPのみを添加した。DMPの添加割合は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、100モルであった。
【0347】
比較例7
実施例15と同様に、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。
【0348】
なお、比較例7では、表3に示すように、第1ブロック剤および酸を使用しなかった。
【0349】
HDIのイソシアヌレート誘導体に対して、ブロック剤として、DMPのみを添加した。
【0350】
DMPの添加割合は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して98モルであった。
【0351】
<ポリウレタン樹脂の合成>
合成例1
室温(25℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量3Lの反応器に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTG-2000SN、保土谷化学社製)703.3質量部と、トリエチレングリコール(東京化成工業社製)52.8質量部と、N-メチルジエタノールアミン(東京化成工業社製)144.6質量部と、アセトニトリル293.3質量部とを仕込んで、それらを液温40℃以下で30分間攪拌した。
【0352】
次いで、反応器に、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(商品名:タケネート(登録商標)600、三井化学社製)346.1質量部を加えた。そして、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、トリエチレングリコールと、N-メチルジエタノールアミンとを30分間反応させた。
【0353】
その後、反応器にオクチル酸第一錫(商品名:スタノクト、三菱ケミカル社製)0.4質量部を加えて、液温が75℃になるまで反応器を加温した。そして、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、トリエチレングリコールと、N-メチルジエタノールアミンとを液温75℃にて3時間反応させた。その後、FT-IRスペクトルを測定することで、イソシアネート基が反応したことを確認した。これによって、ポリウレタン樹脂1を生成した。
【0354】
その後、ポリウレタン樹脂1を含む反応液を室温(25℃)まで冷却させ、反応液に、酢酸72.9質量部と、アセトニトリル586.7質量部とを添加して、1時間攪拌した。以上によって、ポリウレタン樹脂1のアセトニトリル溶液を得た。
【0355】
次いで、20LのSUS製容器に、15℃~25℃に冷却した水4431.8質量部を仕込み、ホモミキサーで攪拌しながら、水に、ポリウレタン樹脂1のアセトニトリル溶液2083.3質量部加えて乳化させた。
【0356】
次いで、減圧条件下において、乳化液から、アセトニトリル(溶媒)を留去するともに、水の一部を留去した。
【0357】
以上によって、ポリウレタン樹脂1の水分散液を調製した。ポリウレタン樹脂1の水分散液の固形分濃度は、26.2質量%であった。
【0358】
合成例2
室温(25℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1Lの反応器に、ポリカーボネートジオール(商品名:デュラノールT-6002、旭化成社製)291.1質量部と、N-メチルジエタノールアミン(東京化成工業社製)15.5質量部と、アセトニトリル54.5質量部とを仕込んで、それらを液温60℃にて1時間攪拌した。
【0359】
次いで、反応器に、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(商品名:タケネート(登録商標)600、三井化学社製)74.8質量部を加えて、液温が80℃になるまで反応器を加温した。これによって、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、ポリカーボネートジオールと、N-メチルジエタノールアミンとを反応させ、ポリウレタン樹脂2を生成した。そして、1時間毎にアミン当量を測定してイソシアネート基の反応率を測定した。
【0360】
その後、反応率が99.5%以上に到達したところで、反応液を室温(25℃)まで冷却した。次いで、反応液に、酢酸27.3質量部と、アセトニトリル217.9質量部とを添加して1時間攪拌した。以上によって、ポリウレタン樹脂2のアセトニトリル溶液を得た。
【0361】
その後、反応器に、15℃~25℃に冷却した水970重量部を添加して攪拌して乳化させた。
【0362】
次いで、減圧条件下において、乳化液から、アセトニトリル(溶媒)を留去するともに、水の一部を留去した。
【0363】
以上によって、ポリウレタン樹脂2の水分散液を調製した。ポリウレタン樹脂2の水分散液の固形分濃度は、32.5質量%であった。
【0364】
<評価>
1.水分散性ブロックイソシアネートの水分散性
上記した各実施例および各比較例に記載の通り、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液に水を添加して、反応液と水とをホモミキサーで攪拌して乳化させた。このときの水に対する反応液の分散性を、水分散性ブロックイソシアネートの水分散性として下記の基準に基づいて評価した。その結果を、表1~表5に示す。
【0365】
〇:水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液が水に速やかに分散する。
△:長時間(0.5時間以上)の撹拌で水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液が水に分散する。
×:水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液が水に分散しない。沈殿発生。
【0366】
2.水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の粘度
各実施例および各比較例において調製された水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を、恒温水槽で25℃にした後、回転粘度計RB-85(東機産業社製)によって水分散液の粘度を測定した。その結果を、表1~表5に示す。
【0367】
3.水分散性ブロックイソシアネートの水分散液のpH
各実施例および各比較例において調製された水分散性ブロックイソシアネートの水分散液のpHを、pH測定器(堀場製作所社製)によって測定した。その結果を、表1~表5に示す。
【0368】
4.水分散性ブロックイソシアネートの水分散液における粒子径
各実施例および各比較例において調製された水分散性ブロックイソシアネートの水分散液における粒子径を、濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子社製)によって測定した。その結果を、表1~表5に示す。
【0369】
5.水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の貯蔵安定性
各実施例および各比較例において調製された水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を、容器に収容した。そして、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を、40℃で7日間静置した。その後、目視により、水分散液の貯蔵安定性を、下記の基準で五段階評価した。その結果を、表1~表5に示す。
【0370】
また、実施例2~3および実施例19~29では、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を、上記の方法で、40℃で30日間静置した。その後、目視により、水分散液の貯蔵安定性を、下記の基準で五段階評価した。その結果を、表4~表5に示す。なお、以下の各評価において、1から5の順で優れている。
【0371】
5:水分散液に沈殿なく、かつ、容器壁面に付着物なし。
4:水分散液に沈殿ないが、容器壁面にわずかな付着物あり。
3:水分散液に沈殿ないが、容器壁面に付着物あり。
2:水分散液にわずかな沈殿があり、容器壁面に付着物あり。
1:水分散液に沈殿があり、容器壁面に付着物あり。
【0372】
6.水分散性ブロックイソシアネートの硬化性
各実施例および各比較例において調製された水分散性ブロックイソシアネートの水分散液(ポリイソシアネート成分)と、合成例1で合成したポリウレタン樹脂1の水分散液(ポリオール成分)とを混合した。ポリウレタン樹脂1の水分散液の固形分質量に対する水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の固形分質量の割合は、1/6であった。
【0373】
その後、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液とポリウレタン樹脂1の水分散液との混合分散液に水を加えて、最終的な固形分濃度を20質量%に調整した。
【0374】
さらに、レベリング剤(商品名:BYK-348、ビックケミー・ジャパン社製)を混合分散液に加えて、30分間攪拌した。レベリング剤の添加割合は、混合分散液100質量部に対して、0.5質量部であった。
【0375】
これによって、硬化性評価液を調製した。
【0376】
次いで、硬化性評価液をポリプロピレン基材に塗布した。その後、硬化性評価液の塗膜を、110℃または120で30分間硬化させた。硬化後の塗膜の質量を測定した後、質量比1:1のアセトン:メタノール混合溶媒に24時間浸漬させた。
【0377】
その後、ゲル分をろ過によって取り出した後、110℃で3時間乾燥して、浸漬後の塗膜の質量を測定した。そして、以下の計算式からゲル分率を算出した。なお、硬化後の塗膜であって混合溶媒浸漬前の塗膜の質量を質量Aとし、混合溶媒浸漬後の塗膜の質量を質量Bとした。
【0378】
ゲル分率(%)=100×質量B/質量A
【0379】
そして、塗膜の硬化温度が110℃である場合の水分散性ブロックイソシアネートの硬化性と、塗膜の硬化温度が120℃である場合の水分散性ブロックイソシアネートの硬化性とを、下記の基準で五段階評価した。その結果を、表1~表5に示す。
【0380】
5:ゲル分率60%以上。
4:ゲル分率45%以上60%未満。
3:ゲル分率30%以上45%未満。
2:ゲル分率15%以上30%未満。
1:ゲル分率0%以上15%未満。
【0381】
7.塗膜の摩擦堅牢性
【0382】
(1)前処理
各実施例および各比較例において調製された水分散性ブロックイソシアネートの水分散液と、合成例2で調製されたポリウレタン樹脂2の水分散液と、イソプロピルアルコールとを混合した。水分散性ブロックイソシアネートの水分散液が含有する固形分は、0.835質量部であった。ポリウレタン樹脂2の水分散液が含有する固形分は、4.165質量部であった。イソプロピルアルコールの添加量は、5質量部であった。
【0383】
その後、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液と、ポリウレタン樹脂2の水分散液と、イソプロピルアルコールとの混合分散液に水を加えて、最終的な固形分濃度を5質量%に調整した。その後、混合分散液を30分間攪拌して前処理液とした。
【0384】
次いで、前処理液に、縦25cm、横3cmに裁断した綿布(JIS L0803準拠、カナキン3号)を浸漬した。その後、綿布を前処理液から引き上げて十分に絞った後、常温(25℃)、暗所で24時間乾燥した。
【0385】
乾燥後の綿布を110℃の加熱炉で1分間乾燥したものを前処理綿布1とした。乾燥後の綿布を150℃の加熱炉で5分間乾燥したものを前処理綿布2とした。
【0386】
また、水系ポリウレタン樹脂の水分散液(商品名:タケラックW-6110、三井化学社製)と、水性インク(XカラーブルーMX、松井色素化学工業所社製)と、エチレングリコールとを混合した。水系ポリウレタン樹脂の水分散液が含有する固形分は、12質量部であった。水性インクが含有する固形分は、2質量部であった。エチレングリコールの混合量は、20質量部であった。
【0387】
その後、水系ポリウレタン樹脂の水分散液と、水性インクと、エチレングリコールとの混合液に水を加えて、最終的な固形分濃度を14質量%に調整した。この混合液を30分間攪拌してインク液とした。
【0388】
次いで、インク液に、前処理綿布1を浸漬した。次いで、前処理綿布1をインク液から引き上げて十分に絞った後、常温(25℃)、暗所で24時間乾燥した。この綿布を、さらに110℃の加熱炉で1分間乾燥して、評価用綿布1とした。
【0389】
また、インク液に、前処理綿布2を浸漬した。次いで、前処理綿布2をインク液から引き上げて十分に絞った後、常温(25℃)、暗所で24時間乾燥した。この綿布を、さらに150℃の加熱炉で5分間乾燥して、評価用綿布2とした。
【0390】
評価用綿布1または評価用綿布2を摩擦堅牢度試験機に設置し、湿潤させた摩擦用綿布(JIS L0803準拠、カナキン3号)を摩擦堅牢度試験機に取り付け、湿潤条件の摩擦堅牢度試験を、JIS L0849に準拠して実施した。
【0391】
摩擦用綿布を取り出して、常温(25℃)、暗所で24時間乾燥した。このとき、評価用綿布1を摩擦した摩擦用綿布を汚染綿布1とし、評価用綿布2を摩擦した摩擦用綿布を汚染綿布2とした。
【0392】
汚染綿布の着色程度は、分光式色差計(型式:SE-2000、日本電色工業社製)を用いてL*値を測定して数値化した。塗膜の摩擦堅牢性1を、汚染綿布1のL*値を用いて下記の基準で五段階評価した。なお、摩擦堅牢性1の評価は、1から5の順で高くなる。その結果を、表1~表5に示す。
【0393】
5:86以上。
4:84以上86未満。
3:82以上84未満。
2:80以上82未満。
1:80未満。
【0394】
また、塗膜の摩擦堅牢性2を、汚染綿布2のL*値を用いて下記の基準で五段階評価した。なお、摩擦堅牢性2の評価は、1から5の順で高くなる。その結果を、表1~表5に示す。
【0395】
5:92以上。
4:91以上92未満。
3:90以上91未満。
2:89以上90未満。
1:89未満。
【0396】
(2)後処理
上記のインク液に、前処理していない綿布(カナキン3号)を浸漬した。次いで、綿布をインク液から引き上げて十分に絞った後、常温(25℃)、暗所で24時間乾燥した。
【0397】
次いで、実施例1または比較例7の水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を、綿布に対してスプレーによって塗布した。塗布量は、0.2g/m2とした。
【0398】
その後、綿布を熱処理し、評価用綿布3~5を得た。
【0399】
より具体的には、熱処理温度を90℃とし、熱処理時間を5分としたものを、評価用綿布3とした。
【0400】
熱処理温度を110℃とし、熱処理時間を5分としたものを、評価用綿布4とした。
【0401】
熱処理温度を150℃とし、熱処理時間を5分としたものを、評価用綿布5とした。
【0402】
そして、評価用綿布3~5を、摩擦堅牢度試験機に設置し、湿潤させた摩擦用綿布(JIS L0803準拠、カナキン3号)を摩擦堅牢度試験機に取り付け、湿潤条件の摩擦堅牢度試験を、JIS L0849に準拠して実施した。
【0403】
摩擦用綿布を取り出して、常温(25℃)、暗所で24時間乾燥した。このとき、評価用綿布3を摩擦した摩擦用綿布を汚染綿布3とし、評価用綿布4を摩擦した摩擦用綿布を汚染綿布4とし、評価用綿布5を摩擦した摩擦用綿布を汚染綿布5とした。
【0404】
汚染綿布の着色程度は、分光式色差計(型式:SE-2000、日本電色工業社製)を用いてL*値を測定して数値化した。塗膜の摩擦堅牢性3を、汚染綿布3のL*値を用いて下記の基準で五段階評価した。なお、摩擦堅牢性3の評価は、1から5の順で高くなる。その結果を、表6に示す。
5:86以上。
4:84以上86未満。
3:82以上84未満。
2:80以上82未満。
1:80未満。
【0405】
また、塗膜の摩擦堅牢性4を、汚染綿布4のL*値を用いて下記の基準で五段階評価した。なお、摩擦堅牢性4の評価は、1から5の順で高くなる。その結果を、表6に示す。
5:86以上。
4:84以上86未満。
3:82以上84未満。
2:80以上82未満。
1:80未満。
【0406】
また、塗膜の摩擦堅牢性5を、汚染綿布5のL*値を用いて下記の基準で五段階評価した。なお、摩擦堅牢性5の評価は、1から5の順で高くなる。その結果を、表6に示す。
5:92以上。
4:91以上92未満。
3:90以上91未満。
2:89以上90未満。
1:89未満。
【0407】
8.撥水性
【0408】
フッ素系撥水・撥油加工剤(フッ素樹脂、商品名:アサヒガードAG-E061、AGC社製)と、各実施例および各比較例において調製された水分散性ブロックイソシアネートの水分散液(ポリイソシアネート成分)とを混合した。フッ素系撥水・撥油加工剤に対する水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の固形分の質量比は、1/9であった。
【0409】
その後、フッ素系撥水・撥油加工剤と水分散性ブロックイソシアネートの水分散液との混合液に水を加えて攪拌し、最終的な固形分濃度を1質量%となるように調整した。これによって、撥水性評価液を調製した。
【0410】
撥水性評価液に、綿布(JIS L0803準拠、カナキン3号)を浸漬した。次いで、綿布を撥水性評価液から引き上げて十分に絞った後、常温(25℃)、暗所で24時間乾燥した。そして、乾燥後の綿布を110℃の加熱炉で1分間乾燥して、JIS L0217に準拠して全自動洗濯機で10回洗濯した。このとき、洗濯水37Lに対して、粉末洗剤(商品名:アタック高活性バイオEX、花王社製)を30g加えた。洗濯後の綿布を常温(25℃)、暗所で24時間乾燥して試験布とした。
【0411】
その後、水とイソプロピルアルコールとの混合液20μLを試験布に滴下し、3分後の液滴の状態を観察した。混合液におけるイソプロピルアルコールに対する水の質量比は、9/1であった。
【0412】
そして、撥水性を、目視により下記の基準で五段階評価した。その結果を、表1~表5に示す。
【0413】
5:液滴が球状を形成し、染み込み跡が残らない。
4:液滴が球状を形成し、染み込み跡が少し残る。
3:液滴が球状を形成し、染み込み跡がはっきり残る。
2:液滴が球状を形成し、染み込み跡が液滴の直径より大きくはっきり残る。
1:液滴が完全に試験布に染み込む。
【0414】
9.接着性
実施例5で調製された水分散性ブロックイソシアネートの水分散液と、合成例1で調製されたポリウレタン樹脂1の水分散液とを混合した。ポリウレタン樹脂1の水分散液が含有する固形分に対する、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液が含有する固形分の質量比は、1/6であった。
【0415】
その後、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液とポリウレタン樹脂1の水分散液との混合分散液に水を加えて30分間攪拌し、最終的な固形分濃度を20質量%に調整した。これによって、ポリウレタン接着剤組成物を調製した。
【0416】
次いで、ポリウレタン接着剤組成物を、アクリロニトリル-ブタジエン―スチレン共重合体から形成されるABS基材に塗布した。その後、ポリウレタン接着剤組成物の塗膜を、130℃で30分間硬化させた。
【0417】
次いで、JIS K5600-5-6に基づいて、塗膜の硬化物の密着性を、碁盤目試験により評価した。上記した塗膜の硬化物は、テープ剥離において、25マスのすべてがABS基材から剥離せず密着していた(密着部位の個数/全部位の個数=25/25)。
【0418】
そのため、実施例5の水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を、硬化剤として使用した場合、優れた接着性を奏することが確認された。
【0419】
10.抗菌性
実施例2、11~12および比較例7の水分散性ブロックイソシアネートの抗菌性を、以下の方法で評価した。その結果を、表7に示す。
【0420】
<A:最小発育阻止濃度(MIC試験)>
(1) 前培養
(供試菌種)
I.Escherichia coli(E.coli、NBRC-3972、分譲機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、大腸菌)
II.Staphylococcus aureus(S.aureus、NBRC-12732、分譲機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、黄色ブドウ球菌)
【0421】
上記IおよびIIの菌は、121℃20分でオートクレーブ滅菌した液体培地(LB培地、BD Difco(商品名) LB ブロスミラー、ベクトンディッキンソン社)を用いて、35±1℃にて20±4時間培養された供試菌種である。
【0422】
(2) 菌液調製
上記(1)で培養した供試菌種を、121℃20分でオートクレーブ滅菌したLB培地に懸濁した後、菌液のO.D.(Optical Density)を測定し、2.0未満となるように調整した。
【0423】
(3) サンプル調製
水分散性ブロックイソシアネートを3%含有するジメチルスルホキシド溶液(サンプル)を調製し、121℃20分でオートクレーブ滅菌したLB培地にサンプルを加え、混合液を得た。なお、水分散性ブロックイソシアネートの最大濃度を1000ppmとし、8段階の2倍希釈系列を作製した。
【0424】
(4)MIC測定試験
(3)の各希釈系列に、(2)で調製した菌液を接種し、35℃で、24±2時間培養した。その後、目視にて菌の発育を確認し、発育のない最大希釈濃度をMIC値とした。
【0425】
<B:フィルム試験>
(供試菌種)
Escherichia Coli(E.coli、NBRC-3972、分譲機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、大腸菌)
【0426】
JIS Z 2801:2010で制定の「抗菌加工製品―抗菌性試験方法・抗菌効果」を参考にして、以下の通り、黄色ブドウ球菌に対する抗菌性を評価した。
【0427】
(1)
水分散性ブロックイソシアネート1.8質量部(固形分基準)と、タケラック W-6355(商品名、水系ポリウレタン樹脂、三井化学社製)88.2質量部(固形分基準)と、イソプロピルアルコール10.0質量部とを混合し、混合液を得た。さらに、混合液に水を添加し、混合液の固形分濃度を10質量%に調整した。
【0428】
次いで、上記の混合液を、バーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名ルミラーS10、東レ社製)上に塗工し、表7に記載の硬化条件(温度/時間)で加熱して、硬化させた。これにより、膜厚0.1~2.0μmのフィルムを得た。
【0429】
(2)
フィルムを50±2mm角の正方形に切り出し、試験片とした。試験片を滅菌済のプラスチックシャーレに置き、試験菌液(菌数2.5×105~10×105個/mL)を0.4mL接種した。なお、試験菌液は、以下の方法で調製した。
【0430】
すなわち、培養器中で温度35±1℃で20±4時間LB培地(BD Difco(商品名) LB ブロスミラー、ベクトンディッキンソン社)にて、培養菌を前培養した(第1液)。
【0431】
次いで、第1液を、さらに斜面培地(普通寒天培地、Nutrient agar、メルク社)に接種して、培養器中で温度35±1℃で20±4時間前培養した(第2液)。
【0432】
その後、第2液を、別途調製した1/500普通ブイヨン培地(Nutrient broth、メルク社)によって、適宜濃度調整した(第3液)。
【0433】
(3)
一方、対照試料として、50±2mm角のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名ルミラーS10、東レ社製)を用意し、試験片と同様に、試験菌液を接種した。
【0434】
(4)
次いで、接種した試験菌液の上から、40±2mm角の二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを被せ、これにより、フィルム全体に、試験菌液を均等に接種させた。その後、温度35±1℃、相対湿度85±5%で20±4時間、培養した。
【0435】
(5)
試験菌液の接種直後、または、上記(4)の培養後に、SCDLP培地(SCDLP培地ダイゴ(商品名)、日本製薬社製)10mLを加え、試験片上の試験菌液を、4回以上洗浄し、菌液を完全に回収した。また、回収された液(洗い出し液)を、速やかに次の工程に供し、生菌数を測定した。
【0436】
(6)
上記(5)で回収された液(洗い出し液)と、リン酸緩衝生理食塩水とを使用して、10倍希釈系列を調製した。
【0437】
その後、各希釈系列と、標準寒天培地(標準寒天培地ダイゴ(商品名)、日本製薬社製品)とを混合して、培地を作製した。そして、培地を温度35±1℃で20±4時間培養した後、集落数を測定した。なお、30~300個の集落が現れた希釈系列のシャーレを、カウント対象とした。
【0438】
(7)
測定結果に基づいて、以下の計算式を用いて生菌数を求めた。
N=C×D×V/A
N:生菌数(試験片1cm2あたり)
C:集落数
D:希釈倍率(採用したシャーレにおける各希釈液の希釈倍数)
V:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(mL)
A:被覆フィルムの表面積(cm2)
【0439】
(8)
以下の計算式を用いて抗菌活性値を算出し、Rが2.0以上のとき抗菌活性あり(○)とした。また、Rが2.0未満のとき抗菌活性なし(×)とした。
R=(Ut-U0)-(At-U0)=Ut-At
R :抗菌活性値
U0:無加工試験片の接種直後の生菌数の対数値の平均値
Ut:無加工試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値
At:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値
【0440】
【0441】
【0442】
【0443】
【0444】
【0445】
【0446】
【0447】
なお、各表中の略号の詳細を下記する。
タケネートD-170N:HDIイソシアヌレート:ヘキサメチンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、商品名タケネート(登録商標)D-170N、イソシアネート基含有量20.7%、三井化学社製、
タケネートD-160N:HDIのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト誘導体、ポリイソシアネート化合物、商品名タケネート(登録商標)D-160N、固形分75質量%、イソシアネート基含有量12.6%、三井化学社製、
タケネートD-165N:HDIのビウレット誘導体、ポリイソシアネート化合物、商品名タケネート(登録商標)D-165N、固形分100質量%、イソシアネート基含有量23.3%、三井化学社製、
タケネートD-178NL:HDIのアロファネート誘導体、ポリイソシアネート化合物、商品名タケネート(登録商標)D-178NL、固形分100質量%、イソシアネート基含有量19.2%、三井化学社製、
タケネートD-120N:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-H6XDI)のTMPアダクト誘導体、ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-120N、固形分75質量%、イソシアネート基含有量11.0%、三井化学社製、
タケネートD-127N:1,3-H6XDIのイソシアヌレート誘導体、ポリイソシアネート化合物、商品名タケネート(登録商標)D-127N、固形分75質量%、イソシアネート基含有量13.5%、三井化学社製、
タケネートD-110N:キシリレンジイソシアネート(XDI)のTMPアダクト誘導体、ポリイソシアネート化合物、商品名タケネート(登録商標)D-110N、固形分75質量%、イソシアネート基含有量11.5%、三井化学社製、
タケネートD-131N:XDIのイソシアヌレート誘導体、ポリイソシアネート化合物、商品名タケネート(登録商標)D-131N、固形分75質量%、イソシアネート基含有量13.7%、三井化学社製、
タケネートD-103H:トリレンジイソシアネート(TDI)のTMPアダクト誘導体、ポリイソシアネート化合物、商品名タケネート(登録商標)D-103H、固形分75質量%、イソシアネート基含有量13.0%、三井化学社製、
タケネートD-204:TDIのイソシアヌレート誘導体、ポリイソシアネート化合物、商品名:タケネート(登録商標)D-204、固形分50質量%、イソシアネート基含有量7.5%、三井化学社製、
【0448】
スタビオD-370N:PDIのイソシアヌレート、ポリイソシアネート化合物、商品名スタビオ(登録商標)D-370N、固形分100質量%、イソシアネート基含有量25%、三井化学社製、
TMG:1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、
TABD:1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ―5-エン、
DMAE:ジメチルアミノエタノール、
MPZ:N-メチルピペラジン、
MHPZ:N-メチルホモピペラジン、
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、
TMEDA:N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、
メトキシPEG1000:メトキシPEG#1000、数平均分子量1000、東邦化学工業社製。
【0449】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0450】
本発明の水分散性ブロックイソシアネートは、繊維処理剤、撥水剤、塗料組成物、接着剤および抗菌剤の分野において、好適に使用できる。