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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】取外し器具および手術器具システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61B17/70
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022578276
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001698
(87)【国際公開番号】W WO2022163448
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2021014530
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘一
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110279461(CN,A)
【文献】特開2015-213791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0158257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56-17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を備え、
椎弓根スクリューに組み付けられた管状のエクステンダーを前記椎弓根スクリューから取外し可能とする所定位置まで前記エクステンダーに挿入可能であり、
前記所定位置まで前記軸部を挿入したとき、前記エクステンダーの管壁を貫通して設けられた孔部に嵌合する突起部を前記軸部の側面に備え
前記側面に、前記エクステンダーの挿入される側の端部に設けられた凹部に嵌合可能な凸部を備え、
前記凸部が前記凹部と嵌合する位置において、前記突起部と前記孔部とが嵌合する、取外し器具。
【請求項2】
前記凸部は、前記取外し器具を前記エクステンダーに挿入する方向に向かって小さくなっている、請求項に記載の取外し器具。
【請求項3】
軸部を備え、
椎弓根スクリューに組み付けられた管状のエクステンダーを前記椎弓根スクリューから取外し可能とする所定位置まで前記エクステンダーに挿入可能であり、
前記所定位置まで前記軸部を挿入したとき、前記エクステンダーの管壁を貫通して設けられた孔部に嵌合する突起部を前記軸部の側面に備え、
前記突起部は、板バネに備えられている、取外し器具。
【請求項4】
前記取外し器具の前記側面は複数のスリットを備えており、
前記複数のスリットに挟まれた領域が前記板バネとなっている、請求項に記載の取外し器具。
【請求項5】
前記突起部は、突起方向の先端と前記取外し器具の軸の中心との距離が、前記取外し器具を前記エクステンダーに挿入する方向に向かって短くなる部分を有している、請求項1~のいずれか1項に記載の取外し器具。
【請求項6】
前記突起部は、周方向の端部が面取りされた部分を有している、請求項1~のいずれか1項に記載の取外し器具。
【請求項7】
前記突起部は、突起方向の先端と前記取外し器具の軸の中心との距離が、前記取外し器具を前記エクステンダーに挿入する方向とは反対方向に向かって短くなる部分を有している、請求項1~のいずれか1項に記載の取外し器具。
【請求項8】
前記軸部は管状であり、
該管状の内部に挿入可能な別体の棒状器具を更に備え
前記椎弓根スクリューに前記エクステンダーが組み付けられ、前記取外し器具が前記所定位置まで前記エクステンダーに挿入された状態で、前記棒状器具を前記軸部の管状の内部の所定位置に挿入した時、前記棒状器具が前記軸部の一部を半径方向外側に押して、前記椎弓根スクリューから前記エクステンダーが取り外し可能となる、請求項1~7の何れか1項に記載の取外し器具。
【請求項9】
請求項に記載の前記取外し器具と前記椎弓根スクリューと前記エクステンダーとを含む、手術器具システム。
【請求項10】
前記椎弓根スクリューは、第2凹部を有し、前記エクステンダーは第3凸部を有し、前記第2凹部と前記第3凸部が係合することにより、前記椎弓根スクリューは前記エクステンダーに組み付け可能である、請求項に記載の手術器具システム。
【請求項11】
前記エクステンダーは複数のスリットを有し、該スリットに挟まれた領域が板バネとなっている第2板バネを有しており、前記第3凸部は前記第2板バネに取付けられている、請求項10に記載の手術器具システム。
【請求項12】
前記椎弓根スクリューに前記エクステンダーが組み付けられ、前記取外し器具が前記所定位置まで前記エクステンダーに挿入された状態で、前記棒状器具を前記軸部の管状の内部の所定位置に挿入した時、前記棒状器具が前記第2板バネを外方に押して、前記第3凸部と前記第2凹部の係合を解除可能である、請求項11に記載の手術器具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、取外し器具および手術器具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の脊椎を相互に固定するための脊椎固定用装置が知られている。例えば、脊椎を固定するシステムであって、スクリューエクステンダデバイスと、外科用スクリューインプラントと、係止機構と、リムーバツールとを備えるシステムが知られている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様に係る取外し器具は、第1器具に組み付けられた第2器具を、該第1器具から取り外すための取外し器具である。前記取外し器具は、軸部を備え、管状の前記第2器具を前記第1器具から取外し可能とする所定位置まで前記第2器具に挿入可能であり、前記取外し器具を前記第2器具の前記所定位置まで挿入したとき、前記第2器具の管壁面を貫通して設けられた孔部に嵌合する突起部を前記軸部の側面に備えている。
【0004】
本開示の一態様に係る手術器具システムは、前記取外し器具と前記第1器具と前記第2器具とを含む、手術器具システムである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の実施形態に係る手術器具システムの全体を示す外観図である。
図2】上記実施形態に係るチューブエキストラクタを示す外観図である。
図3】上記実施形態に係るガイドチューブを示す外観図である。
図4】椎弓根スクリューからガイドチューブを取り外す方法を説明するための図であり、ガイドチューブにチューブエキストラクタを挿入する前の状態を示す図である。
図5】椎弓根スクリューからガイドチューブを取り外す方法を説明するための図であり、ガイドチューブにチューブエキストラクタが挿入された状態を示す図である。
図6】椎弓根スクリューからガイドチューブを取り外す方法を説明するための図であり、スタイレットをチューブエキストラクタに挿入する前の状態を示す図である。
図7】椎弓根スクリューからガイドチューブが取り外れる仕組みを説明するための図である。
図8】椎弓根スクリューからガイドチューブを取り外す仕組みを説明するための図である。
図9】チューブエキストラクタがガイドチューブと所定位置で嵌合する理由を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
脊椎用インプラントに組み付けられたエクステンダーを、脊椎用インプラントから取り外すための取外し器具は、エクステンダーと結合させた状態で、当該エクステンダーを脊椎用インプラントから取外す。よって、意図せずに取外し器具がエクステンダーから外れるおそれを低減する必要がある。
【0007】
また、取外し対象となるエクステンダーは複数あることが多く、取外し器具は繰り返し使用されることになる。よって、取外し器具は、エクステンダーを脊椎用インプラントから取外した後、速やかに当該エクステンダーから取り外し、他のエクステンダーの取外しに用いることができることが求められる。
【0008】
以下に説明する本開示の一態様に係る手術器具システム1によれば、意図せずに第2器具から外れにくい取外し器具を実現できる。また、第2器具から容易に取り外すことができる取外し器具を実現できる。
【0009】
〔全体概要〕
まず、本実施形態に係る手術器具システム1の全体概要について説明する。本実施形態では、手術器具システム1として、脊椎固定手術に用いられる器具システムを例に挙げて説明するが、本開示はこれに限られるものではない。或る器具に組み付けられた器具を取り外すための器具を含む器具システムであればよく、脊椎固定手術に用いられる器具システムに限定されない。
【0010】
また、本実施形態では、エクステンダーの一種として、ガイドチューブ20を椎弓根スクリュー30から取り外すチューブエキストラクタ10を例に挙げて説明する。チューブエキストラクタ10が取り外す対象はガイドチューブ20に限定されない。また、ガイドチューブはリカバリーチューブとも、スタンダードガイドとも呼ばれる。本実施形態のチューブエキストラクタ10は、ガイドチューブ20に代えて、公知のスクリューエクステンダデバイス(エクステンダー)を椎弓根スクリュー30から取り外すものであってもよい。例えば、エクステンダーが本実施形態のチューブエキストラクタ10と関連する部分においてガイドチューブ20と同じ構成であれば、本開示に係るチューブエキストラクタ10を用いて、椎弓根スクリュー30から当該エクステンダーを取り外すことができる。
【0011】
図1に、本実施形態に係る手術器具システム1の全体概要を示す。図1に示すように、手術器具システム1は、チューブエキストラクタ10およびガイドチューブ20を含む。また、ガイドチューブ20は椎弓根スクリュー30に組み付けられるものである。本実施形態では、チューブエキストラクタ10を取外し器具、ガイドチューブ20を第2器具、椎弓根スクリュー30を第1器具ということができる。個々の手術器具の材質は、例えば金属であり、ステンレス鋼等が用いられるが、この限りではない。例えば樹脂等であってもよく、また金属および樹脂を含む材料であってもよい。
【0012】
椎弓根スクリュー30は、脊椎固定手術時に椎弓根に挿入され、椎弓根スクリュー30間にロッド(図示せず)が渡されることにより、脊椎を固定するものである。椎弓根スクリューの材質は、生体適合性を持つ金属であり、例えばチタン合金やコバルトクロムモリブデン合金であるが、この限りではない。
【0013】
ガイドチューブ20は、エクステンダーの一種であり、一般的なエクステンダー(図示せず)の代わりとして、椎弓根スクリュー30に組み付けられるものである。椎弓根スクリュー30に一般的なエクステンダーが組み付けられた状態で、意図せずに椎弓根スクリュー30のタブ(図示せず。一般的なエクステンダーが結合する部位である。)が折れ、椎弓根スクリュー30からエクステンダーが外れた場合等に、当該エクステンダーの代わりとしてガイドチューブ20が椎弓根スクリュー30に組み付けられる。
【0014】
チューブエキストラクタ10は、椎弓根スクリュー30に組み付けられたガイドチューブ20を椎弓根スクリュー30から取り外すために用いるものである。ガイドチューブ20が椎弓根スクリュー30に組み付けられた状態で、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20の所定位置まで挿入する。さらに、この状態で、後述するスタイレット40をチューブエキストラクタ10に挿入する。これにより、椎弓根スクリュー30からガイドチューブ20を取り外すことができる。
【0015】
本実施形態では、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20に挿入する方向をz方向、z方向に垂直で後述する第1突起部12の突起方向をx方向、x方向およびz方向に垂直な方向をy方向とする。
【0016】
〔チューブエキストラクタ10〕
次に、図1および図2を参照してチューブエキストラクタ10について説明する。図2は、チューブエキストラクタ10の外観を示す斜視図である。図2において、202は、201の状態から、z軸を中心に90度回転させた状態を示す。
【0017】
図1および図2に示すように、チューブエキストラクタ10は、円筒形状の軸部11を有している。軸部11の中心を通りz方向に平行な軸を器具の中心軸ともいう。また、軸部11のガイドチューブ20に挿入する側と反対側の側面には、第1突起部12が2つ設けられている。第1突起部12は2つである必要はなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。第1突起部12は、軸部11の側面にz軸方向に沿って設けられた2本の第1スリット13に挟まれて設けられている。そして、2本の第1スリット13により、第1板バネ14が形成され、第1突起部12は、軸中心方向に押下可能であるとともに、軸中心方向に押下されると、第1板バネ14により、半径方向外側に付勢される。換言すれば、z軸に垂直な方向に付勢される。また、第1スリット13を形成して第1板バネ14とすることにより、安定した付勢力を維持することができる。また、第1突起部12は、チューブエキストラクタ10を軸に垂直な断面で切ったときに、当該断面上で互いに対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0018】
また、第1突起部12は、突起部分に面取りが施されている。より詳細には、図2に示すようにz方向に面取り122、および面取り123が施されているとともに、周方向に面取り121が施されている。
【0019】
換言すれば、第1突起部12は、突起方向の先端とチューブエキストラクタ10の軸の中心との距離が、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20に挿入する方向に向かって短くなる形状を有している。これにより、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20へ挿入することが容易となる。
【0020】
また、第1突起部12は、周方向の端部が面取りされているので、ガイドチューブ20からチューブエキストラクタ10を取り外すときに、第1突起部12を押下しながら回転させて、第1突起部12を孔部22から外れやすくすることができる。面取り121は、周方向の一方のみに設けられていてもよいし、両方に設けられていてもよい。
【0021】
また、第1突起部12は、突起方向の先端とチューブエキストラクタ10の軸の中心との距離が、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20に挿入する方向とは反対方向に向かって短くなる形状を有していると言える。これにより、ガイドチューブ20に結合したチューブエキストラクタ10を、第1突起部12を押下しながら引き抜くことが容易となる。
【0022】
軸部11のガイドチューブ20を挿入する側の側面には、第2突起部16が2つ設けられている。第2突起部16は2つである必要はなく1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。第2突起部16は、軸部11の側面に軸方向に沿って設けられた2本の第2スリット17に挟まれて設けられている。そして、2本の第2スリット17により、第2板バネ18が形成され、第2突起部16は、軸中心方向に押下可能であるとともに、軸中心方向に押下されると、第2板バネ18により、半径方向外側に付勢される。また、第2突起部16は、チューブエキストラクタ10を軸に垂直な断面で切ったときに、当該断面上で互いに対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0023】
本実施形態では、第1突起部12および第2突起部16は、軸に垂直な断面で切ったときの突起方向が90度ずれる位置に配置されているが、これに限定されるものではない。第1突起部12および第2突起部16は、後述するガイドチューブ20の孔部22および第3板バネ25の位置に合わせて、適宜、配置できる。
【0024】
また、軸部11のガイドチューブ20に挿入する側と反対側の端部の側面に凸部15が設けられている。凸部15は、チューブエキストラクタ10を軸に垂直な断面で切ったときに、当該断面上で互いに対向する位置にそれぞれ設けられており、ガイドチューブ20に挿入する側に向かって小さくなっている。この形状により、チューブエキストラクタ10を回転させながら、ガイドチューブ20に挿入したときに、チューブエキストラクタ10を所定の結合位置へ案内することができる。
【0025】
凸部15は、チューブエキストラクタ10の側面に設けられ、後述するガイドチューブ20のチューブエキストラクタ10が挿入される側の端部に設けられた凹部である切欠き部23に嵌合可能である。また、凸部15が凹部(切欠き部23)と嵌合する位置において、第1突起部12は、後述するガイドチューブ20の孔部22と嵌合する。このように凸部15を設けることにより、第1突起部12と孔部22とが嵌合する位置に、チューブエキストラクタ10を位置決めすることができる。
【0026】
また本実施形態では、軸部11のガイドチューブ20に挿入する側と反対側の端部に、ノブ101を備えている。ノブ101は略円盤状であり、その中心は器具の中心軸の延長上に有り、外径は軸部11の直径よりも大きい。本実施形態では、使用者の操作を容易にするための滑り止めの凹凸を備えている。また、ノブ101はその中心部に後述する空洞部19の開口部を備えている。
【0027】
〔ガイドチューブ20〕
次に、図1および図3を参照してガイドチューブ20について説明する。図3は、ガイドチューブ20の外観を示す斜視図である。図3において、302は、301の状態から、z軸を中心に90度回転させた状態を示す。
【0028】
図1および図3に示すように、ガイドチューブ20は、管状であり、チューブエキストラクタ10が挿入される側の管壁21に、管壁21を貫通する孔部22が設けられている。すなわち、孔部22は、管壁21の外壁面および内壁面を貫通するように設けられている。また、孔部22は、ガイドチューブ20を軸に垂直な断面で切ったときに、当該断面上で互いに対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0029】
また、チューブエキストラクタ10が挿入される側の端部に切欠き部23が設けられている。切欠き部23は、管に垂直な断面で対向する位置にそれぞれ設けられており、チューブエキストラクタ10が挿入される側とは反対側に向かって小さくなる形状である。
【0030】
さらに、ガイドチューブ20の椎弓根スクリュー30が組み付けられる側の管壁21の内壁面に第3突起部26が2つ設けられている。第3突起部26は2つある必要はなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。第3突起部26は、管壁21の軸方向に沿って設けられた2本の第3スリット24に挟まれて設けられている。そして、2本の第3スリット24により、第3板バネ25が形成され、第3突起部26は、半径方向外側に押下可能であるとともに、半径方向外側に押下されると、第3板バネ25により、軸の中心に向かって付勢される。また、第3突起部26は、ガイドチューブ20を軸に垂直な断面で切ったときに、当該断面上で互いに対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0031】
また、ガイドチューブ20の管壁21の外壁面には第1凹部27が設けられている。第1凹部27は、ガイドチューブ20の位置等を調整するときに、調整器具により把持される部分である。
【0032】
〔ガイドチューブ20と椎弓根スクリュー30との組み付け〕
図1に示すように、椎弓根スクリュー30は、ネジ部31およびヘッド部32を含む。ヘッド部32には、ロッドをわたすためのU字溝34が設けられているとともに、外側面に第2凹部33が、内側面にネジ溝35が設けられている。
【0033】
ガイドチューブ20は、チューブエキストラクタ10が挿入される側と反対側で、椎弓根スクリュー30に組み付けられる。具体的には、椎弓根スクリュー30のヘッド部32が、ガイドチューブ20の管内に挿入され、第3突起部26が第2凹部33に嵌合することにより、ガイドチューブ20と椎弓根スクリュー30とが組み付けられる。上述したように、第3突起部26は、半径方向外側に押下可能であるとともに、第3板バネ25により、軸の中心に向かって付勢される。これにより、ヘッド部32がガイドチューブ20の管内に挿入されたときに、ヘッド部32により半径方向外側に押下されるとともに、軸の中心に向かって付勢される。そして、ヘッド部32がさらに挿入され、第3突起部26の位置に第2凹部33が来ると、付勢力により、第3突起部26が第2凹部33に嵌合する。
【0034】
〔ガイドチューブ20の取外し方法〕
次に、図4~10を参照して、椎弓根スクリュー30に組み付けられたガイドチューブ20を取り外す方法について説明する。
【0035】
椎弓根スクリュー30からガイドチューブ20を取り外す場合、まず、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20に挿入する。チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20に挿入する前の状態を図4に示す。図4に示す状態からチューブエキストラクタ10の一端をガイドチューブ20に挿入し、チューブエキストラクタ10が所定位置に到達すると、チューブエキストラクタ10の第1突起部12がガイドチューブ20の孔部22に嵌合し、チューブエキストラクタ10の凸部15がガイドチューブ20の切欠き部23に嵌合する。
【0036】
チューブエキストラクタ10がガイドチューブ20の所定位置まで挿入された状態を図5に示す。図5に示すように、チューブエキストラクタ10がガイドチューブ20の所定位置まで挿入されると、チューブエキストラクタ10の第1突起部12がガイドチューブ20の孔部22に嵌合し、チューブエキストラクタ10の凸部15がガイドチューブ20の切欠き部23に嵌合する。これにより、チューブエキストラクタ10とガイドチューブ20とが結合し、この状態で、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20から離れる方向に引っ張ったとしても、チューブエキストラクタ10がガイドチューブ20から外れることはない。
【0037】
また、チューブエキストラクタ10がガイドチューブ20の所定位置まで挿入されると、チューブエキストラクタ10の第2突起部16は、ガイドチューブ20の第3板バネ25の内壁面に当たる。本実施形態では、第2板バネ18の付勢力よりも第3板バネ25の付勢力の方が強いので、チューブエキストラクタ10がガイドチューブ20の所定位置まで挿入されたとき、第2突起部16は、軸中心方向に押し込まれた状態となる。
【0038】
チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20の所定位置まで挿入後、図6に示すスタイレット40をチューブエキストラクタ10の空洞部19の開口部から挿入する。スタイレット40は棒状の器具であり、軸部41および取手部42を含む。
【0039】
図7に、スタイレット40をチューブエキストラクタ10に挿入する途中の外観および一部断面図を示す。
【0040】
スタイレット40の軸部41の外径は、チューブエキストラクタ10の空洞部19の内径と略同じである。よって、スタイレット40の軸部41をチューブエキストラクタ10の空洞部19の所定位置まで挿入すると、軸中心方向に押し込まれた状態となっている第2突起部16を半径方向外側に押し出すことになる。第2突起部16は、第3板バネ25に当たっているので、第2突起部16が半径方向外側に押し出されると、第3板バネ25も半径方向外側に押し出される。この結果、第3板バネ25に設けられた第3突起部26が椎弓根スクリュー30の第2凹部33から外れ、ガイドチューブ20を椎弓根スクリュー30から取り外すことができるようになる。
【0041】
図7および図8を参照して、ガイドチューブ20と椎弓根スクリュー30とが結合している仕組み、および椎弓根スクリュー30からガイドチューブ20が取り外される仕組みについて説明する。
【0042】
図7は、椎弓根スクリュー30にガイドチューブ20が組み付けられ、チューブエキストラクタ10が所定位置に挿入され、スタイレット40の軸部41の先端が第2突起部16の位置まで挿入されていない状態を示す。断面図は、丸で囲んだ領域VIIIの部分を、z軸に沿って、器具の中心軸と第3板バネ25を通る位置で切断した断面を示す。この状態では、ガイドチューブ20の第3板バネ25に設けられた第3突起部26が、椎弓根スクリュー30の第2凹部33に嵌合しており、ガイドチューブ20と椎弓根スクリュー30とは結合している。このまま、スタイレット40の軸部41をガイドチューブ20に挿入していくと、図8に示すように、軸部41により第2突起部16が半径方向外側に押し出される。その結果、図8に示すように、第2突起部16が第3板バネ25を半径方向外側に押し出すことになり、第3板バネ25に設けられた第3突起部26が、椎弓根スクリュー30の第2凹部33から外れる。この状態で、ガイドチューブ20を椎弓根スクリュー30から離れる方向に引くことで、ガイドチューブ20を椎弓根スクリュー30から取り外すことができる。図8の断面図は、丸で囲んだ領域IXの部分を、z軸に沿って、器具の中心軸と第3板バネ25を通る位置で切断した断面を示す。
【0043】
〔チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20の所定位置に容易に嵌合できる理由〕
次に、図9を参照して、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20の所定位置に容易に嵌合できる理由を説明する。図9は、チューブエキストラクタ10がガイドチューブ20と所定位置で嵌合する理由を説明するための図である。
【0044】
上述したように、チューブエキストラクタ10には、凸部15が設けられ、ガイドチューブ20には切欠き部23が設けられている。チューブエキストラクタ10の凸部15は、ガイドチューブ20に挿入する側に向かって小さくなる形状であり、ガイドチューブ20の切欠き部23は、チューブエキストラクタ10が挿入される側とは反対側に向かって小さくなる形状である。
【0045】
よって、図9の1001に示すように、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20に挿入していった場合、仮に、凸部15の位置と切欠き部23の位置とがずれていたとしても、1002に示すように、凸部15の先端が切欠き部23の辺の一部に当たる。このまま、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20に挿入させると、1003に示すように、チューブエキストラクタ10が軸を中心に回転し、1004に示すように、凸部15が切欠き部23に嵌合する。このとき、チューブエキストラクタ10の第1突起部12は、ガイドチューブ20の孔部22に嵌合する。
【0046】
このように、凸部15が、ガイドチューブ20に挿入する側に向かって小さくなる形状を有する。また、切欠き部23が、チューブエキストラクタ10が挿入される側とは反対側に向かって小さくなる形状を有する。これらにより、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20の所定位置まで容易に挿入することができる。
【0047】
〔チューブエキストラクタ10の取外し方法〕
ガイドチューブ20と結合したチューブエキストラクタ10は、チューブエキストラクタ10の第1突起部12を軸中心方向に押下しながら、チューブエキストラクタ10を円周方向に回転させるか、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20から離れる方向に引くことにより、取り外すことができる。
【0048】
上述したように、第1突起部12は、第1板バネ14に形成されているので、第1突起部12を軸中心方向に押下することができる。また、第1突起部12は、円周方向に面取り121が施されているので、第1突起部12の突起部分全体がガイドチューブ20の管壁21の内面よりも軸中心方向に押し込まれていなくても、チューブエキストラクタ10を回転させることができる。
【0049】
また、第1突起部12は、挿入方向とは反対方向にも面取り123が施されている。これにより、第1突起部12の突起部分全体がガイドチューブ20の管壁21の内面よりも軸中心方向に押し込まれていなくても、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20から引き抜き易くすることができる。
【0050】
また本実施形態において、ガイドチューブ20と結合したチューブエキストラクタ10は、図9の1004のように、凸部15と切欠き部23が嵌合している。ガイドチューブ20を固定してチューブエキストラクタ10に中心軸周りの回転力を与えると、凸部15と切欠き部23が干渉し、チューブエキストラクタ10に対してガイドチューブ20から分離する方向への力が作用する。この作用により、ガイドチューブ20に対してチューブエキストラクタ10を直線的に引き抜くよりも小さな力で、チューブエキストラクタ10を引き抜くことができる。
【0051】
また本実施形態では、軸部11のガイドチューブ20に挿入する側と反対側の端部に、ノブ101を備えている。ノブ101は略円盤状であり、その中心は器具の中心軸の延長上に有り、外径は軸部11の直径よりも大きい。また使用者の操作を容易にするための滑り止めの凹凸を備えている。使用者はノブ101を手指にて把持して中心軸周りの回転力を加えることで、容易にガイドチューブ20に対してチューブエキストラクタ10を回転させることができる。従って、チューブエキストラクタ10を更に容易に引き抜くことができる。
【0052】
〔小括〕
脊椎固定手術では、椎弓根スクリュー30は複数の椎骨それぞれに挿入され、ガイドチューブ20も椎弓根スクリュー30それぞれに組み付けられている。よって、椎弓根スクリュー30からガイドチューブ20を取り外す場合、チューブエキストラクタ10を取外し対象のガイドチューブ20と結合させて、椎弓根スクリュー30から取外す。その後、ガイドチューブ20からチューブエキストラクタ10を取り外して、別のガイドチューブ20に結合させて、当該ガイドチューブ20を椎弓根スクリュー30から取り外す。以上のことを繰り返す必要がある。
【0053】
よって、チューブエキストラクタ10は、ガイドチューブ20から容易に取り外せることが望ましいが、ガイドチューブ20を椎弓根スクリュー30から取り外すときにチューブエキストラクタ10自体がガイドチューブ20から外れてしまうことは望ましくない。
【0054】
上述したように、本実施形態に係るチューブエキストラクタ10は、椎弓根スクリュー30に組み付けられたガイドチューブ20を、椎弓根スクリュー30から取り外すためのチューブエキストラクタ10である。チューブエキストラクタ10は、軸部11を備える。チューブエキストラクタ10は、管状のガイドチューブ20を椎弓根スクリュー30から取外し可能とする所定位置までガイドチューブ20に挿入可能である。さらに、チューブエキストラクタ10は、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20の前記所定位置まで挿入したとき、ガイドチューブ20の管壁21を貫通して設けられた孔部22に嵌合する第1突起部12を軸部11の側面に備える。第1突起部12は前記管壁21を貫く方向に付勢されている。
【0055】
これにより、ガイドチューブ20にチューブエキストラクタ10が挿入されると、椎弓根スクリュー30からガイドチューブ20を取り外すことが可能となる所定位置で、チューブエキストラクタ10の第1突起部12が、ガイドチューブ20の孔部22に嵌合する。よって、ガイドチューブ20とチューブエキストラクタ10とを結合させ、ガイドチューブ20とチューブエキストラクタ10とが一体となった状態で、ガイドチューブ20を椎弓根スクリュー30から取り外すことができる。したがって、椎弓根スクリュー30からガイドチューブ20を取外すときにガイドチューブ20からチューブエキストラクタ10が外れてしまうことを防止できる。
【0056】
また、第1突起部12は、ガイドチューブ20の管壁21を貫く方向に付勢されており、かつ、孔部22に嵌合した状態では、第1突起部12の表面が孔部22から露出しているので、チューブエキストラクタ10の軸に向けて押下可能である。そして、第1突起部12を押下しながらチューブエキストラクタ10を移動させると、第1突起部12を孔部22から容易に外すことができ、容易な作業で、チューブエキストラクタ10とガイドチューブ20との結合を解除できる。
【0057】
〔変形例〕
上述した実施形態では、チューブエキストラクタ10とスタイレット40とが別体となった構成を例に挙げて説明した。本開示はこれに限られるものではなく、チューブエキストラクタ10とスタイレット40とが一体となった構成、すなわち、スタイレット40を必要としない構成であってもよい。
【0058】
この場合、チューブエキストラクタ10の第2板バネ18は不要となる。第2突起部16は、第2板バネ18に形成されるのではなく、軸部11の外壁面に形成されていればよい。第2突起部16が軸部11の外壁面に形成されていれば、チューブエキストラクタ10をガイドチューブ20に挿入したときに、第2突起部16が、ガイドチューブ20の第3板バネ25を半径方向外側に押し出すことができる。これにより、第3突起部26が椎弓根スクリュー30の第2凹部33から外れる。よって、上述した実施形態と同様の仕組みにより、ガイドチューブ20を椎弓根スクリュー30から外すことができる。
【0059】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 手術器具システム
10 チューブエキストラクタ(取外し器具)
11 軸部
12 第1突起部
13 第1スリット
14 第1板バネ
15 凸部
16 第2突起部
17 第2スリット
18 第2板バネ
19 空洞部
101 ノブ
20 ガイドチューブ(第2器具)
21 管壁
22 孔部
23 切欠き部
24 第3スリット
25 第3板バネ
26 第3突起部
27 第1凹部
30 椎弓根スクリュー(第1器具)
31 ネジ部
32 ヘッド部
33 第2凹部
34 U字溝
35 ネジ溝
40 スタイレット
41 軸部
42 取手部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9