(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ローラーヘミング装置
(51)【国際特許分類】
B21D 39/02 20060101AFI20241018BHJP
B21D 19/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B21D39/02 F
B21D19/04 B
(21)【出願番号】P 2023028350
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】202210331134.6
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】馬場 圭太
(72)【発明者】
【氏名】小林 卓生
(72)【発明者】
【氏名】堤 正昭
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 暢也
(72)【発明者】
【氏名】樽井 宏典
(72)【発明者】
【氏名】小島 正寿
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和征
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-240708(JP,A)
【文献】特開2019-214058(JP,A)
【文献】特開2018-030221(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0021943(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1075806(KR,B1)
【文献】特開2014-057998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/02
B21D 19/04-19/08
B21D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材である第1のワークを保持する金型と、前記金型に保持された前記第1のワーク上に載置される板材である第2のワークの縁部に前記第1のワークの縁部を折り曲げて重ねるローラーとを有するローラーヘミング装置において、
前記金型は、前記第1のワーク周縁のヘムフランジが当たるワーク当接面に
直接開口
する吸引孔を有し
、前記吸引孔から吸引を行うことによって、前記第1のワークを吸着する吸着機構を有するローラーヘミング装置。
【請求項2】
前記吸着機構は、前記第1のワークを吸着するに先立ってエアパージを行う請求項1に記載のローラーヘミング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラーヘミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体におけるボンネット、トランク及びドア等の縁部の加工には、ローラーによって、下側の板材のワークであるスキンを上側の板材のワークであるフレームに被さるように折り曲げるローラーヘミング装置が適用される場合がある。車種別に仕様が異なるパーツに対応する複数の運搬レールに上に、往復移動可能に複数のヘミングダイを設けたローラーヘミング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のローラーヘミング装置によれば、仕様が異なるパーツを高速でヘミング加工することができるとされている。なお、曲げ加工中、或いは曲げ加工後にワークを支持するために適用する追従装置を、ワークを支持する支持台の傾斜角度と昇降位置とを独立に変化可能に構成し、追従動作の自由度を向上させる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-86181号公報
【文献】特開2021-115615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ローラによって、下側の板材のワークを上側の板材のワークに被さるように折り曲げ加工する過程では、下側および上側の板材のワークを両者の相対位置を定めて重ねた状態で、下側の板材のワークの面方向の位置がずれないように固定する必要がある。しかしながら、折り曲げ加工に際して、下側の板材の位置ずれが発生しがちである。この位置ずれを抑制するために、下側および上側の板材のワークが重なった部位で、位置固定用のパッドなどでこれら上下の板材を金型に押し付けたりすると、板材のワーク外面に傷が生じるなどの問題が発生する。また、下側の板材を通常のバキュームカップ等で保持する方法もあるが、バキュームカップ等は吸着位置のバラつきを補正するため、ゴムやウレタンなどの粘弾性体を用いられるが、その反面、弾性を有するため、ワークを折り曲げ加工で力が加わった際に位置ズレを起こすという問題が発生する。上記のいずれの特許文献においても、折り曲げ加工の過程で生じる下側の板材のワークおける位置ずれへの対処法は示されない。
【0005】
本発明は、上述のような状況に鑑みてなされたものであり、折り曲げ加工の過程で生じる下側の板材のワークにおける位置ずれが抑制されるローラーヘミング装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 板材である第1のワーク(例えば、後述する第1のワーク7)を保持する金型(例えば、後述する金型2)と、前記金型に保持された前記第1のワーク上に載置される板材である第2のワーク(例えば、後述する第2のワーク8)の縁部(例えば、後述する縁部10)に前記第1のワークの縁部(例えば、後述する縁部9)を折り曲げて重ねるローラー(例えば、後述するローラー3)とを有するローラーヘミング装置(例えば、後述するローラーヘミング装置1)において、前記金型は、前記第1のワーク周縁のヘムフランジ(例えば、後述するヘムフランジ11)が当たるワーク当接面(例えば、後述するワーク当接面13)に開口し前記第1のワークを吸着する吸着機構(例えば、後述する吸着機構12)を有するローラーヘミング装置。
【0007】
(2) 前記吸着機構は、前記第1のワークを吸着するに先立ってエアパージを行う(1)のローラーヘミング装置。
【発明の効果】
【0008】
(1)のローラーヘミング装置では、金型における第1のワーク周縁のヘムフランジが当たるワーク当接面に開口した吸着機構により第1のワークを吸着する。このため、第1のワーク周縁を第2のワークの縁部に被さるように折り曲げ加工する過程で、第1のワークの位置ずれが抑制される。
【0009】
(2)のローラーヘミング装置では、吸着機構が、第1のワークを吸着するに先立ってエアパージを行う。このため、吸着機構の吸引孔に入った異物や、金型と第1のワークとの間に挟まるおそれがある異物が事前に除去される。従って、吸着機構における第1のワークを吸着する機能が異物により阻害されなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態であるローラーヘミング装置を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態であるローラーヘミング装置の金型とローラーを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態であるローラーヘミング装置における金型のワークへの対向面を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態であるローラーヘミング装置における吸着機構の一部の断面を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の実施形態であるローラーヘミング装置における吸着機構の他部の断面を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の実施形態であるローラーヘミング装置における吸着機構の他部の断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態であるローラーヘミング装置1を模式的に示している。
図2は、ローラーヘミング装置1の金型2とローラー3を示している。
図3は、金型2のワークへの対向面を模式的に示している。
図4は、ローラーヘミング装置1における吸着機構の一部の断面を模式的に示している。ローラーヘミング装置1は、金型2と、ローラー3を有する。ローラー3はロボット4によって3次元の位置および姿勢が制御される。ロボット4は、全体を支える基部5と、ローラー3を移動可能に支持するアーム6を有し、所定のティーチングに基づいてローラー3の3次元の位置および姿勢を時系列で変更する。
【0013】
ローラーヘミング加工に際して、金型2に、板材である第1のワーク7が保持され、第1のワーク7上に、板材である第2のワーク8が所定の相対位置で載置される。ティーチングされたロボット4によってローラー3の位置および姿勢が制御され、
図4に模式的に示すように、ローラー3が、第1のワーク7の縁部9を第2のワーク8の縁部10に折り曲げて重ねる。
【0014】
金型2は、第1のワーク7周縁のヘムフランジ11が当たるワーク当接面13に開口し、第1のワーク7を吸着する吸着機構12を有する。ここに、内側とは、金型2の外側面から見た外側に対する内側の意である。より、具体的に説明すると、第1のワーク7の縁部9を第2のワーク8の縁部10に折り曲げて重ねた状態よりも、内側の位置に吸着機構12を有する。したがって、曲げ加工される際に吸着機構12により板材のワーク外面に傷が生じる問題を抑制できる。吸着機構12は金型2のワーク当接面13に開口する吸引孔14と、吸引孔14の背後に接続される吸引ホース15と、吸引ホース15の他端が接続される図示しないポンプ等を含んで構成される。本明細書において、吸引孔14は、比較的小径の開口である細孔16aを複数有する第1形態の吸引孔16と、長孔状の開口を有する第2形態の吸引孔17との総称である。第1のワーク7の縁部9を第2のワーク8の縁部10に折り曲げて重ねる過程で、金型2の吸着機構12によって、第1のワーク7と第2のワーク8との相対位置が正規の関係に維持される。
【0015】
図5に、第1形態の吸引孔16を吸引ホース15に接続する機構の一例を示す。ワーク当接面13から所定深度で開けられた穴30の開口31に設置された蓋部材32を貫通する第1形態の吸引孔16の各細孔16aの背後をカバーするように、集合コーン18が各細孔16aと吸引ホース15との間に介在して設けられる。各細孔16aの背後側と集合コーン18との間には一定の容積のチャンバー18aが形成されて、吸引ホース15による吸引力が各細孔16aに均一に作用する。
【0016】
図6に、第2形態の吸引孔17を吸引ホース15に接続する機構の一例を示す。
図1から
図3に示すワーク当接面13における長孔状に開口した第2形態の吸引孔17は、開口の背後に開口の短手寸法よりも深い深溝19を有する。深溝19の溝底部と開口との間の溝壁に吸引ホース15の先端側が接続される。
【0017】
以上、
図1から
図6を参照して説明したローラーヘミング装置1においては、金型2のワーク当接面13に第1のワーク7を載置するに際し、吸引ホース15から空気を吹出して、ワーク当接面13、第1のワーク7の金型2への対向面側および吸引孔14にエアパージをかける。エアパージ用の空気は、図示しないボンベや与圧チャンバーなどの圧力容器に準備され、エアパージのタイミングで容器出口側の弁機構が開通状態に切り替えられて、吸引ホース15に放出される。これにより、吸引ホース15を通してエアパージ用の空気が吸引孔14から噴出する。即ち、吸着機構12は、第1のワーク7を吸着するに先立ってエアパージを行う構成を有する。
【0018】
本実施形態のローラーヘミング装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0019】
(1)のローラーヘミング装置1では、金型2における第1のワーク7周縁のヘムフランジ11が当たる位置の内側に設けられた吸着機構12により第1のワーク7を吸着する。このため、第1のワーク7周縁である縁部9を第2のワーク8の縁部10に被さるように折り曲げ加工する過程で、第1のワーク7の位置ずれが抑制される。
【0020】
(2)のローラーヘミング装置1では、吸着機構12が、第1のワーク7を吸着するに先立ってエアパージを行う。このため、吸着機構12の吸引孔14に入った異物や、金型2と第1のワーク7との間に挟まるおそれがある異物が事前に除去される。従って、吸着機構12における第1のワーク7を吸着する機能が異物により阻害されなくなる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。例えば、
図3におけるように、第1のワーク7を吸着するための吸着機構12と共に、通常のバキュームカップ20を併用して第1のワーク7を吸着するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0022】
1…ローラーヘミング装置
2…金型
3…ローラー
4…ロボット
5…基部
6…アーム
7…第1のワーク
8…第2のワーク
9…縁部
10…縁部
11…ヘムフランジ
12…吸着機構
13…ワーク当接面
14…吸引孔
15…吸引ホース
16…第1形態の吸引孔
16a…細孔
17…第2形態の吸引孔
18…集合コーン
18a…チャンバー
19…深溝
20…バキュームカップ
30…穴
□31…開口
□32…蓋部材