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特許7573670レーザ溶接継ぎ目を有する超伝導共振キャビティ、および、その形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】レーザ溶接継ぎ目を有する超伝導共振キャビティ、および、その形成方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 7/20 20060101AFI20241018BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20241018BHJP
【FI】
H05H7/20
B23K26/21 N
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023041136
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2019094519の分割
【原出願日】2019-05-20
(65)【公開番号】P2023085331
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】15/983,340
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/018,729
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519180286
【氏名又は名称】トゥー-シックス デラウェア,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッジズ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ブラニガン,カイル
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06348757(US,B1)
【文献】特開2000-260599(JP,A)
【文献】国際公開第92/013434(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 3/00-15/00
B23K 26/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の軸に沿って互いに離間した第1および第2の絞りと、前記第1の絞りと前記第2の絞りとの間に前記本体における緯度座標が0°であるセル赤道と、を有する中空状の本体、によって画定される超伝導無線周波数(SRF)セル、の製造方法であって、
(a)第1のセル溶接縁部と、その反対側に前記第1の絞りとを含む、第1の部分セルを準備するステップと、
(b)第2のセル溶接縁部と、その反対側に前記第2の絞りとを含む、第2の部分セルを準備するステップと、
(c)前記第1および第2の部分セルを、前記第1および第2のセル溶接縁部が互いに向き合うように、かつ、前記第1の絞りと第2の絞りとの間に絞りが介在せずに前記第1および第2の絞りが互いに近接するように配置すると共に、前記第1および第2の部分セルの間に、前記第1および第2のセル溶接縁部にそれぞれ面する第1および第2のパイプ溶接縁部を含むパイプセクションを配置するステップと、
(d)前記第1および第2の部分セルを互いに溶接するステップであって、前記第1のパイプ溶接縁部を前記第1のセル溶接縁部に溶接し、それにより前記セル赤道上に配置される第1の溶接継ぎ目を形成し、前記第1の溶接継ぎ目を電解研磨および/または溶接後機械加工し、該電解研磨および/または溶接後機械加工の後に、前記第2のパイプ溶接縁部を前記第2のセル溶接縁部に溶接し、それにより前記セル赤道以外の緯度に配置される第2の溶接継ぎ目を形成し、該溶接するステップが、少なくとも一方の前記セル溶接縁部の第1の側面およびその反対側の第2の側面のそれぞれに、第1の溶接および第2の溶接を形成することを含む、ステップと、を含む、
超伝導無線周波数(SRF)セルの製造方法。
【請求項2】
前記第1の溶接は、伝導溶接であり、
前記第2の溶接は、伝導溶接、キーホール溶接、または遷移溶接のいずれかである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の溶接継ぎ目は、前記第1のパイプ溶接縁部と前記第1のセル溶接縁部とを互いに当接させて溶接することによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の溶接継ぎ目は、少なくとも一方の前記パイプ溶接縁部の第1の側面およびその反対側の第2の側面のそれぞれに、第1の溶接および第2の溶接を形成することによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の溶接のそれぞれが伝導溶接であり、前記第2の溶接のそれぞれが伝導溶接、キーホール溶接、または遷移溶接である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の側面は、少なくとも1つの部分セルの内表面であり、かつ、
前記第2の側面は、少なくとも1つの部分セルの外表面である、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶接するステップは、レーザ溶接することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1および第2の対向する端部を有する中空の空洞を画定する本体であって、
前記本体の前記第1の端部に位置する、第1の絞りと、
前記本体の前記第2の端部に位置する、第2の絞りと、
前記第1の絞りと前記第2の絞りとの間に延びる軸
前記第1の絞りと前記第2の絞りとの間にあって前記軸周りにあるセル赤道と、を有する本体、によって画定される超伝導無線周波数(SRF)セルであって
前記第1の絞りおよび前記第2の絞りは、前記第1の絞りと前記第2の絞りとの間に介在する絞りが配置されることなく互いに近接しており、
前記本体は、
前記第1の絞りを含む第1の部分セルとパイプセクションとが溶接された、前記セル赤道上における前記本体上の位置において前記軸周りにある第1の溶接継ぎ目であって、電解研磨および/または溶接後機械加工された表面を有する第1の溶接継ぎ目を少なくとも含むと共に、
前記第2の絞りを含む第2の部分セルと前記パイプセクションとが溶接された、前記セル赤道から離間した前記本体上の位置において前記軸周りにある第の溶接継ぎ目を含み、
各溶接継ぎ目は前記本体を貫通しつつ、前記本体の内側および外側の近傍で終端する両側を有し、かつ、前記第1の溶接継ぎ目はその両端に第1の溶接および第2の溶接を含む、超伝導無線周波数(SRF)セル。
【請求項9】
前記第1の溶接は、伝導溶接であり、
前記第2の溶接は、伝導溶接、キーホール溶接、または遷移溶接のいずれかである、
請求項に記載のSRFセル。
【請求項10】
前記第1の溶接は前記本体の内側にあり、かつ、
前記第2の溶接は前記本体の外側にある、
請求項に記載のSRFセル。
【請求項11】
前記第1の部分セルおよび前記第2の部分セルは、互いに異なる形状を有する、請求項に記載のSRFセル。
【請求項12】
前記第2の溶接継ぎ目は、前記軸に対して垂直であり、そして、
前記第2の溶接継ぎ目は、前記セル赤道から前記軸に沿って前記第1の絞りまたは前記第2の絞りの方向へ5mm以上離れて配置されている、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導無線周波数(SRF)セル、SRFセルを製造する方法、SRFセル
または他の物体と共に使用することができる溶接継ぎ目、および溶接継ぎ目を形成する方
法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFキャビティは、一群の荷電粒子をターゲットに向かって加速するために使用される
。多くの用途において、超伝導内表面を有するキャビティを使用する利点は、キャビティ
を極低温に冷却することに関連して増加されたコストを上回る。キャビティは、品質係数
と加速度勾配によって判断される。品質係数(Q)は、システムの各サイクルで失われ
るエネルギー量の逆数を表す。高い品質係数は、極低温冷却を少なくすることで運転コス
トを削減する。キャビティの加速勾配は、粒子を加速する能力を表す。超伝導RF(SR
F)キャビティに対する加速勾配は、通常、数百万ボルト/メートルで与えられる。勾配
が高くなれば、同じ加速場でシステムを運転するために必要とするキャビティが少なくな
り、初期費用および運転費用が減少する。しかしながら、より高い勾配はより高い内部磁
場を必要とし、超電導内表面の性能限界を押し上げる。
【0003】
SRFキャビティは、超伝導場において絶縁破壊を引き起こす任意の要因によって制限
される。一般的に、この超伝導状態からの遷移は「クエンチ」と呼ばれる。キャビティの
内部に沿った高電圧により表面から電子が放出され、X線を発生させ、そしてキャビティ
を加熱し得る。これは、一般に電界放出として知られている。キャビティの赤道周辺の高
強度磁場は、キャビティまたはキャビティ内部のコーティング、を形成するために使用さ
れるニオブの臨界磁場を超えるレベルに達し得る。ニオブの臨界磁場の超過は、超伝導状
態を崩壊させ、クエンチを発生させる。さらに、表面の変動は、キャビティの表面が晒さ
れる磁界の量を増加させ、それにより早期クエンチをもたらす可能性がある。表面の変動
によりキャビティが経験する磁束の増加は、場の増強として知られている。
【0004】
所与のキャビティ内で最大の品質係数および加速度勾配を得るためには、キャビティの
内表面は、滑らかで、清潔で、中断されていないことが望ましい。表面の微小な汚染物質
であっても、非超伝導相を高RF電界に晒すことにより、超伝導状態を破壊する。不純物
は、それらが電界を集中させることにより、電界放出の点として作用する可能性がある。
高磁場の領域における表面粗さは、ニオブの臨界値を超えるレベルに局所磁場の増強を引
き起こす可能性があり、それは超伝導状態の破壊をもたらす可能性がある。高電界の領域
における表面粗さは、電界放出を引き起こし、表面を加熱し、そして超伝導状態の破壊を
もたらす可能性がある。
【0005】
SRFキャビティ製造の分野における発展は、汚染および電界放出によるキャビティの
不具合を大部分排除した。Qおよび加速勾配の制限は、主にキャビティの赤道における
臨界磁場を超えることによるものである。臨界磁場は、キャビティがその超伝導状態から
遷移し始める磁場である。
【0006】
現在のキャビティの設計は、キャビティの「赤道」に沿って最大の磁場を配置し、キャ
ビティを形成する第1および第2のハーフセルが、時には「赤道溶接継ぎ目」とも呼ばれ
る溶接継ぎ目により共々に接合される。キャビティの形状についても、異なる性能を最適
化するために調整されてもよい。
【0007】
SRFキャビティのためのニオブの溶接は、現在、赤道に沿った溶接が、セル赤道の外
側の周囲で振動する電子ビームを用いて真空中で行われる「ブラインド」プロセスである
。該プロセスは、よく研究され制御されているものの、それでも一貫性の無い結果をもた
らす。表面の後処理は、溶接の化学的エッチングの前の「スティック上研削」および「ス
ティック上カメラ」検査に限られる。
【0008】
図15を参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、単一の超伝導無
線周波数(SRF)キャビティ2は、直列に接続された複数の超伝導セル4を含んでもよ
い。図15に示される例示的なSRFキャビティ2は、入力端6と出力端8との間に直列
に接続された9つのセル4を含む。一例では、入力端6はRFエネルギー源に結合するよ
うに構成され、RFエネルギー源は定常波をSRFキャビティ2内に生成し、定常波は粒
子を加速させることにより入力端6からキャビティ2を通り、さらに他のSRFキャビテ
ィ(図示せず)に接続され得る出力端8から導出するために用いられる。一例ではRFエ
ネルギーは、入力端6でSRFキャビティ2に結合されたRF入力ポート7を介してSR
Fキャビティ2に入力される。
【0009】
図16、および、引き続き図15を参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態また
は例では、より具体的には、RF入力ポート7で受け取られるRF電気エネルギーは、S
RFセル4の軸20に沿って粒子(たとえば粒子ビーム)を加速するために使用すること
ができる電界および磁界を、各セル4内に生成する。図16に示されるセル4の例は、赤
道10、および、セル4の両側に絞り12-1並びに12-2を画定する。当業者には理
解されるように、使用中、SRFキャビティ2は通常、適切な容器13の内部で超伝導温
度に冷却される(図15)。
【0010】
図17、および引き続き図15並びに図16を参照して、1つの好ましい非限定的な実
施形態または例では、従来技術のセル4は、第1のハーフセル14および第2のハーフセ
ル16(第1のハーフセル14と同一であり得る)から形成され、第1および第2のハー
フセル14,16の外側または外装を溶接することにより接合し、セル4を形成する。第
1のハーフセル14と第2のハーフセル16とが溶接される溶接継ぎ目(または溶接円)
は、セル4の赤道18を画定する。最後に、ハーフセル14および16はそれぞれ絞り1
2-1および12-2を含み、ハーフセル14および16が共々に接合されるとき、セル
4の絞り12-1および12-2間の半分の距離に、セル4の赤道18を画定する。一例
では、絞り12-1および12-2は距離Xだけ離間しており、赤道18は絞り12-1
および12-2から、それぞれ距離Y1およびY2に配置されている。距離Y1とY2と
は、同じ距離であってもよい。
【0011】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、球または惑星(地球など)の赤道と
同様に、赤道18は緯度線または緯度円であり、絞り12-1と12-2との中間に位置
すし、絞りは球体または惑星と同様に、該球体または惑星の南北極に対応する。表面を北
半球と南半球に分割する球体または惑星の赤道と同様に、セル4の赤道18は、第1のハ
ーフセル14と第2のハーフセル16との間の分割線である。一例では、セル4の赤道1
8は、セル4の緯度0°にある。最後に、セル4は、一例では、絞り12-1および12
-2間の中心を通るセル4の対称軸、たとえば回転対称軸である軸20を画定する。
【0012】
使用時に、赤道付近で最高強度の磁場を経験する、既存のSRFキャビティ設計が改善
された性能を有するSRFキャビティおよび該SRFキャビティを製造する方法を提供す
ることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一般に、溶接継ぎ目が超伝導(内部)表面の性能に対してそれほど重要でない領域に再
配置される、ニオブ超伝導無線周波数(SRF)セルを形成する方法が提供される。この
ような再配置により、セルの赤道の内表面をより適切に処理することが可能となる。
【0014】
改善された溶接継ぎ目、改善された溶接継ぎ目を有するSRFセル、および改善された
溶接継ぎ目を形成する方法もまた提供される。
【0015】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面を参照する以下の説明からより明らかに
なるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の原理による1つの好ましい非限定的な実施形態または例示的なSRFセルの断面図である。
【0017】
図2図2は、本発明の原理による1つの好ましい非限定的な実施形態または例示的なSRFセルの断面図である。
【0018】
図3図3は、本発明の原理による1つの好ましい非限定的な実施形態または例示的なSRFセルの断面図である。
【0019】
図4図4は、本発明の原理による1つの好ましい非限定的な実施形態または例示的なSRFセルの断面図である。
【0020】
図5図5は、本発明の原理による1つの好ましい非限定的な実施形態または例示的なSRFセルの断面図である。
【0021】
図6図6は、本発明の原理による1つの好ましい非限定的な実施形態または例示的なSRFセルの断面図である。
【0022】
図7図7は、本発明の原理によるSRFセルを形成する1つの好ましい非限定的な実施形態または例示的な方法の図である。
【0023】
図8A図8Aは、互いに突き合わされた一対の物体によって形成された継ぎ目の片側に施されたレーザ伝導溶接の非限定的な一実施形態または例の正面図である。
図8B図8Bは、図8Aの線8B-8Bに沿って見た、互いに突き合わされた一対の物体によって形成された継ぎ目の片側に施されたレーザ伝導溶接の非限定的な一実施形態または例の断面図である。
【0024】
図9A図9Aは、図8Aの伝導溶接と部分的に重なっている、継ぎ目の反対側におけるレーザキーホール溶接の非限定的な一実施形態または例の正面図である。
図9B図9Bは、図9Aの線9B-9B線に沿って見た、図8Bの伝導溶接と部分的に重なっている、継ぎ目の反対側におけるレーザキーホール溶接の非限定的な一実施形態または例の断面図である。
【0025】
図10A図10Aは、図8Aの伝導溶接と実質的に重なっている、継ぎ目の反対側におけるレーザキーホール溶接の非限定的な一実施形態または例の正面図である。
図10B図10Bは、図10Aの線10B-10B線に沿って見た、図8Bの伝導溶接と実質的に重なっている、継ぎ目の反対側におけるレーザキーホール溶接の非限定的な一実施形態または例の断面図である。
【0026】
図11A図11Aは、図8Aの伝導溶接と重複していない(離間している)、継ぎ目の反対側におけるレーザキーホール溶接の非限定的な一実施形態または例の正面図である。
図11B図11Bは、図11Aの線11B-11B線に沿って見た、図8Bの伝導溶接と重複していない(離間している)、継ぎ目の反対側におけるレーザキーホール溶接の非限定的な一実施形態または例の断面図である。
【0027】
図12A図12Aは、図8Aの伝導溶接の継ぎ目の反対側における、レーザ伝導溶接の非限定的な一実施形態または例の正面図である。
図12B図12Bは、図12Aの線12B-12B線に沿って見た、図8Bの伝導溶接の継ぎ目の反対側における、レーザ伝導溶接の非限定的な一実施形態または例の断面図である。
【0028】
図13A図13Aは、図8Aの伝導溶接の継ぎ目の反対側における、レーザ遷移溶接の非限定的な一実施形態または例の正面図である。
図13B図13Bは、図13Aの線13B-13B線に沿って見た、図8Bの伝導溶接の継ぎ目の反対側における、レーザ遷移溶接の非限定的な一実施形態または例の断面図である。
【0029】
図14図14は、本発明の原理による、第1および第2物体をレーザ溶接する1つの好ましい非限定的な実施形態または例示的な方法の図である。
【0030】
図15図15は、複数の従来技術のSRFセルを含む、従来技術の超伝導無線周波数(SRF)キャビティの部分図である。
【0031】
図16図16は、図15に示されるSRFキャビティに使用することができる従来技術のSRFセルの断面の一般化された概略図である。
【0032】
図17図17は、図15に示されている単一の従来技術のSRFセルの例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付の図面を参照して、様々な限定されない実施例を説明する。同様の符号は、同様又
は機能的に等しい要素に対応する。
【0034】
以下の説明の目的のために、用語「端部」、「上部」、「下部」、「右」、「左」、「
垂直」、「水平」、「トップ」、「ボトム」、「横方向」、「長手方向」、およびそれら
の派生語は、図面に示される例に関連するものである。しかし、その例は特に明示的な記
載がない限り、様々な代替の変形形態およびステップシーケンスを想定し得ることが理解
されるべきである。添付の図面に示され、以下の明細書に記載される特定の例は、単に本
発明の例示的な例または態様であることも理解されるべきである。したがって、本明細書
に開示されている特定の例または態様は、限定として解釈されるべきではない。
【0035】
このように、背景技術は、従来技術のセル4と、1つまたは複数のセル4が使用される
SRFキャビティ2とを説明しており、以下の説明では、本発明の原理に基づいて、いく
つかの好ましい非限定的な実施形態または実施例によるセルの例を説明する。
【0036】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、様々な図に示されているセルの断面
は、テスラ(TESLA)形状である。しかしながら、他の形状のセルとの関連で本発明
を使用することが想定されるので、これは限定的な意味で解釈されるべきではない。他の
形状のセルの例には、低損失形状およびリエントラント形状が含まれる。
【0037】
図1を参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態または例において、セル4の代わ
りに使用することができるセル22は、第1の部分セル24および第2の部分セル26を
含み、これらはセル22の赤道30以外の緯度で溶接継ぎ目28において互いに接合され
ている。セル22は、それぞれ第1の部分セル24および第2の部分セル26によって画
定された、絞り32-1および32-2を含む。セル22は軸34を含むことができ、そ
れは対称軸、例えば回転対称軸であり、距離X離れている絞り32-1と32-2の間に
伸びることができる。一例では、軸34は絞り32-1および32-2の中心を通って伸
びている。
【0038】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、第1の部分セル24および第2の部
分セル26は、異なる形状/サイズを有することができる。たとえば、第2の部分セル2
6の絞り32-2から溶接継ぎ目28までの距離は、第1の部分セル24の絞り32-1
から溶接継ぎ目28までの距離よりも大きくてもよい。1つの好ましい非限定的な実施形
態または例では、各セル24、26はニオブから製造することができる。
【0039】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、本明細書に記載の各絞りは円形であ
り得る。しかしながら、これは限定的な意味で解釈されるべきではない。さらに、本明細
書における他の要素からの溶接継ぎ目までの距離、または位置についての各言及は、他の
要素から溶接継ぎ目の中心まで、として理解されるべきである。これは、実際には、各溶
接継ぎ目は溶接作業中に形成される幅(軸34の方向に測定される)を有することができ
、前記幅は溶接に応じて単一の溶接継ぎ目内または異なる溶接継ぎ目間で、各溶接継ぎ目
またはその一部が形成されるときの条件により変化し得るためである。
【0040】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、図1に示されるセル22の溶接継ぎ
目28は、軸34に沿って赤道30から絞り32-1に少なくとも5mm向かう方向に配
置されており、本例では、赤道30が溶接継ぎ目ではない。溶接継ぎ目28は、第1の部
分セル24の第1のセル溶接縁部36を第2の部分セル26の第2のセル溶接縁部38と
溶接することにより形成される。換言すれば、溶接継ぎ目28は第1のセル溶接縁部36
と第2のセル溶接縁部38とを共々に溶接することにより形成される。
【0041】
図2を参照しつつ、引き続き図1を参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態また
は例では、別の例示的セル22は、第1のセル溶接縁部36を含む第1の部分セル24と
第2のセル溶接縁部38を含む第2の部分セル26とを含み得る。第1の部分セル24と
第2の部分セル26との間に配置されているのはパイプセクション40であり、パイプセ
クション40は第1のパイプ溶接縁部42および第2のパイプ溶接縁部44を含み、これ
らはそれぞれ第1のセル溶接縁部36および第2のセル溶接縁部38に面している。
【0042】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、図2に示すセル22の形成を完成す
るために、第1のセル溶接縁部36が第1のパイプ溶接縁部42に溶接されて第1の溶接
継ぎ目46を形成し、第2のセル溶接縁部38が第2のパイプ溶接縁部44に溶接されて
第2の溶接継ぎ目48を形成する。第1の溶接継ぎ目46および第2の接継ぎ目48を形
成する順序は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0043】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、第2の溶接継ぎ目48は、絞り32
-1と32-2との間であって、セル22の本体の緯度座標0°に位置する赤道30上に
配置することができる。第1の溶接継ぎ目46は、赤道30以外の緯度に形成することが
できる。一例として、第1の溶接継ぎ目46は、軸34に沿って赤道30から絞り32-
1に少なくとも5mm向かう方向に配置することができる。
【0044】
図3を参照して、他の例示的なセル22の1つの好ましい非限定的な実施形態または例
では、パイプセクション50は、第1のセル溶接縁部36に溶接されて第1の溶接継ぎ目
56を形成する第1のパイプ溶接縁部52と、第2のセル溶接縁部38に溶接されて第2
の溶接継ぎ目58を形成する第2のパイプ溶接縁部54と、を含む。この例では、赤道3
0は、第1の溶接継ぎ目56と第2の溶接継ぎ目58との間に配置されている。1つの好
ましい非限定的な実施形態または例では、赤道30は、第1の絞り32-1と第2の絞り
32-2との間の、本体を形成するセル22の緯度座標0°に配置されることができる。
一例では、赤道30は、第1の溶接継ぎ目56と第2の溶接継ぎ目58との中間または途
中に配置することができる。一例では、赤道30は、絞り32-1と絞り32-2との間
の中間または途中に配置することができる。
【0045】
一つの好ましい非限定的な実施形態または例である、図3に示される例示的セル22(
および本明細書に記載される全ての例示的セル22)において、パイプセクション50の
内表面60の仮想線延長部と、第1の部分セル24と第2の部分セル26の内表面62お
よび内表面64とは、それぞれ同一の線上にある。この目的のために、一例では、パイプ
セクション50の内表面60は直線または曲率を有することができ、第1の溶接継ぎ目5
6および第2の溶接継ぎ目58に近接する内表面62および内表面64と合致する直線ま
たは曲率を有することができ、そのような第1の溶接継ぎ目56および第2の溶接継ぎ目
58に近接する内表面60、62および64は、第1の溶接継ぎ目56および第2の溶接
継ぎ目58に近接するセル22の連続的または実質的に連続的な滑らかで途切れのない内
表面を形成することができる。一例では、セル22の内表面は、第1の溶接継ぎ目56お
よび第2の溶接継ぎ目58を形成するために使用される溶接作業によって引き起こされる
粗さおよび汚染の存在および/または粗さおよび汚染を低減するために使用されるたとえ
ば緩衝化学研磨または電解研磨等のプロセスにより、セル22の内表面の周囲全ての点で
必ずしも滑らかではないかもしれない。連続的または実質的に連続的で滑らかで途切れの
ない内表面に関する同様の説明は、図1に示される溶接継ぎ目28に近接する第1の部分
セル24および第2の部分セル26の内表面に適用され、図2に示される第1の溶接継ぎ
目46および第2の溶接継ぎ目48に近接するパイプ40、第1の部分セル24および第
2の部分セル26の内表面にも適用される。
【0046】
図4を参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、パイプセクション
70を第1の部分セル24と第2の部分セル26との間に配置することができる。この例
では、パイプセクション70は、第1のパイプセクション72と第2のパイプセクション
74とを溶接によって共々に接合し、実線76で示す第3の溶接継ぎ目を形成することに
よって形成されている。
【0047】
この例では、第1の溶接継ぎ目56および第2の溶接継ぎ目58は、図3に示す第1の
溶接継ぎ目56および第2の溶接継ぎ目58に関連して上述した方法で形成することがで
きる。図4に示す例においては、第1の溶接継ぎ目56、第2の溶接継ぎ目58、および
第3の溶接継ぎ目76は任意の順序で形成することができる。たとえば、第1のパイプセ
クション72および第2のパイプセクション74が最初に任意の順序で第1の部分セル2
4および第2の部分セル26に溶接され、第1の溶接継ぎ目56および第2の溶接継ぎ目
58を形成してもよい。その後、第3の溶接継ぎ目76を、第1のパイプセクション72
と第2のパイプセクション74とを接合するようにして形成することができる。別の例で
は、最初に第1のパイプセクション72と第2のパイプセクション74とを接合し、第3
の溶接継ぎ目76を形成することもできる。その後、第1のパイプセクション72と第2
のパイプセクション74とを互いに溶接することによって形成されたパイプセクション7
0を、第1の部分セル24および第2の部分セル26に任意の順序で溶接して溶接継ぎ目
56および溶接継ぎ目58を形成することができる。一例では、パイプセクション70お
よびパイプセクション72は、ハーフパイプセクションであり得る。
【0048】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、第3の溶接継ぎ目76はセル22の
赤道30からずれていてもよい。あるいは、第3の溶接継ぎ目76は赤道30上にあって
もよい。第1のパイプセクション72の幅78、および第2のパイプセクション74の幅
80は、第3の溶接継ぎ目76がセル22の赤道30上にあるか事になるかどうか、ある
いは軸34に沿って赤道30から絞り32-1または絞り32-2に向かう方向に離間す
るかに応じて、適切および/または望ましいと考えられる選択をすることができる。一例
では、溶接継ぎ目56、58、および76に近接する第1の部分セル24、第2の部分セ
ル26、第1のパイプセクション72、および第2のパイプセクション74の内表面は、
セル22の連続的または実質的に連続的な、滑らかで、途切れない内表面を形成すること
ができる。
【0049】
図5を参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、セル22は、軸3
4に沿って測定した際に、絞り32-1と絞り32-2との間の距離Xの50%より大き
い幅Zを有するパイプセクション84を含み得る。一例では、第1の部分セル24および
第2の部分セル26の第1のセル溶接縁部36および第2のセル溶接縁部38を、溶接に
よって絞り32-1および絞り32-2の近傍の第1のパイプ溶接縁部88および第2の
パイプ溶接縁部90にそれぞれ接合し、第1の溶接継ぎ目92および第2の溶接継ぎ目9
4をそれぞれ形成することができる。一例では、第1の溶接継ぎ目92と第2の溶接継ぎ
目94との間の距離Zは、絞り32-1と絞り32-2との間の距離Xの50%以上であ
ってもよいし、60%以上であってもよいし、または70%以上であってもよい。図示の
例では、距離Zは距離Xの約73%である。一例では、溶接継ぎ目92の外側から絞り3
2-1までの距離Y1は、たとえば5mm未満であってもよく、約2.5mmであっても
よく、距離Y1の最小距離は、溶接継ぎ目94の幅によって決定される。同様に、溶接継
ぎ目94の外側から絞り32-2までの距離Y2は、たとえば、5mm未満であってもよ
く、約2.5mmであってもよく、距離Y2の最小距離は、溶接継ぎ目92の幅によって
決定される。しかしながら、これらの百分率および寸法は限定的な意味で解釈されるべき
ではない。
【0050】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、セル22の赤道30は、第1の溶接
継ぎ目92と第2の溶接継ぎ目94との間に配置される。たとえば、セル22の赤道30
は、第1の溶接継ぎ目92と第2の溶接継ぎ目94との中間に配置することができる。一
例では、セル22の赤道30は、絞り32-1と絞り32-2との中間に配置することが
できる。一例では、溶接継ぎ目92および溶接継ぎ目94に近接するパイプセクション8
4、第1の部分セル22および第2の部分セル24の内表面は、セル22の連続的または
実質的に連続的な、滑らかで、途切れない内表面を形成することができる。
【0051】
図6を参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、図6のセル22は
、以下の例外を除いてほぼ図5に示されるセル22と同様である。図6において、パイプ
セクション84は、第1の部分パイプセクション96と第2の部分パイプセクション98
とを共に溶接し、第3の溶接継ぎ目100を形成することによって形成され、第3の溶接
継ぎ目100は赤道30の近傍またはその上にある。溶接継ぎ目92、94、および10
0は任意の順序で形成することができる。一例では、隣接する溶接継ぎ目92、94、お
よび100において、第1の部分パイプセクション96および第2の部分パイプセクショ
ン98、第1の部分セル24および第2の部分セル26の内表面は、セル22の連続的ま
たは実質的に連続的な、滑らかで、途切れない内表面を形成することができる。
【0052】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、パイプセクション84を第1の部分
セル24および第2の部分セル26に接合する前に、第3の溶接継ぎ目100を形成する
ことが望ましい場合がある。たとえば、第1および第2の溶接継ぎ目92および94の形
成に続いて第3の溶接継ぎ目100が形成される場合と比較して、パイプセクション84
を第1の部分セル24および第2の部分セル26に接合する前に第3の溶接継ぎ目100
を形成することにより、第3の溶接継ぎ目100の形成によって生じる粗さおよび汚染の
低減を目的とする、第3の溶接継ぎ目100へのアクセスがより容易に達成される。パイ
プセクション70を、第1の部分セル24および第2の部分セル26を溶接継ぎ目56お
よび58によって接合する前の図4における第3の溶接継ぎ目76の形成についても、同
様の説明が適用できる。
【0053】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例の中で、パイプが第1の部分セル24と第
2の部分セル26との間に含まれる先の例では、溶接継ぎ目を介して第1の部分セル24
または26にパイプを接続し、その後該パイプを他の部分セルに接合する前に、溶接継ぎ
目を処理することにより粗さおよび汚染を低減することが望ましい。このようにして、最
初に形成された溶接継ぎ目へのアクセスを向上させることができる。
【0054】
図7を参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態または実施例では、SRFセルを
形成する方法は、開始ステップ200からステップ202へ進むことを含むことができ、
第1のセル溶接縁部および第1の絞りを含む第1の部分セルが提供される。該方法は次に
ステップ204に進み、第2のセル溶接縁部と第2の絞りとを含む第2の部分セルが提供
される。ステップ206において、第1および第2の部分セルが、第1および第2のセル
溶接縁部と互いに向き合うように配置される。ステップ208において、第1および第2
の部分セルを溶接により接合し、セルの赤道以外の位置に溶接継ぎ目を有するSRFセル
を形成する。方法は次に終了ステップ210へ進むことができる。1つの好ましい非限定
的な実施形態または例では、SRFセルの内部または外部からの電子ビーム溶接によって
溶接継ぎ目を形成することは、溶接全体を作り出すためにかなりの入熱を必要とし、SR
Fセルの性能に悪影響を及ぼす可能性がある望ましくない粗い表面を、SRFセルの内表
面に残すことが観察された。したがって、そして、1つの好ましい非限定的な実施形態ま
たは例では、電子ビーム溶接によって溶接継ぎ目を形成する代わりに、溶接継ぎ目はレー
ザ光のビームを用いたレーザ溶接によって形成され得る。1つの好ましい非限定的な実施
形態または例では、溶接継ぎ目は、第1および第2の物体を互いに当接させることにより
画定される継ぎ目の両側からレーザ溶接によって形成され、たとえば、一対の溶接縁部を
互いに当接させることに限定されず、一対のセル溶接縁部を互いに当接させること、セル
溶接縁部とパイプ溶接縁部とを互いに当接させること、一対のパイプ溶接縁部を互いに当
接させること、であり得る。
【0055】
図8A図8Bを参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、第1の
物体300および第2の物体302を当接することにより、共通の境界または継ぎ目30
4を形成することができ、それは継ぎ目304の第1および第2の側面308、310の
間に延びており、より具体的には、物体300および302の第1の側面308と第2の
側面310との間に延びている。一例として、一例であり限定するものではないが、第1
の物体300はパイプセクション、またはSRFキャビティのハーフもしくは部分セルで
あり得、一例であり限定するものではないが、第2の物体302は異なるパイプセクショ
ン、または異なるSRFキャビティのハーフもしくは部分セルであり得る。第1の側面3
08は、当接された物体300、302の一方の側面であり得、第2の側面310は、当
接された物体300、302の他方の側面であり得る。一例では、第1の側面308はS
RFセルの内表面の少なくとも一部であり得、第2の側面310はSRFセルの外表面の
少なくとも一部であり得る。しかしながら、1つの好ましい非限定的な実施形態または実
施例では、第1および第2の物体300、302は、任意の適切な、および/または、望
ましい材料により形成された、任意の適切な、および/または、所望の物体であるため、
これは限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0056】
さらに、1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、第1および第2の物体30
0、302の第1および第2の側面308、310が互いに平面であるという図解は、限
定的な意味で解釈されるべきではない。たとえば、第1の物体300の第1の面308お
よび第2の物体302の第1の面308は、ずれがあってもよく(非平面)、たとえばそ
れらの間に段差を伴う、および/または、お互いが湾曲するか、一つが湾曲し一つが平面
であるか、等のあらゆる適切な、および/または、所望の形状を有することができる。同
様に、第1の物体300の第2の側面310および第2の物体302の第2の側面310
は、ずれがあってもよく(非平面)、たとえばそれらの間に段差を伴う、および/または
、お互いが湾曲するか、一つが湾曲し一つが平面であるか、等のあらゆる適切な、および
/または、所望の形状を有することができる。
【0057】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、第1および第2の物体300、30
2を共に当接することによって物体300および302の第1および第2の側面308、
310間に延びる継ぎ目304を画定し、継ぎ目304がいったん形成されれば、第1の
伝導溶接312は継ぎ目304の第1の面308をレーザ溶接することによって、そして
より具体的には、継ぎ目304に隣接する第1および第2の物体300、302の第1の
面308をレーザ伝導溶接することによって形成され得る。第1の伝導溶接312は、継
ぎ目304の側面308の上に盛り上がる比較的滑らかな露出された表面314と、表面
314と第2の側面310との間に延びる本体316とを有することができる。一例では
、本体316は、第1の側面308から第2の側面310までの距離の25%未満まで延
びることができる。図に示される第1の伝導溶接312の形状は、例示目的のみであり、
限定的に解釈されるべきではない。
【0058】
図9A図9Bを参照しつつ引き続き図8A図8Bを参照して、1つの好ましい非限
定的な実施形態または実施例では、いったん第1の伝導溶接312が形成され、次に継ぎ
目304の第2の側面310をレーザ溶接することにより第2のキーホール溶接318が
形成され、そしてより具体的には、継ぎ目304に近接する第1および第2の物体300
、302の第2の側面310をレーザキーホール溶接する。第2のキーホール溶接318
は、比較的多孔質の露出された表面316と、表面316と伝導溶接312の表面314
との間に延びる比較的多孔質の本体322とを有することができる。一例では、本体32
2は、第2の側面310から第1の側面308までの距離の75%を超えて延びることが
できる。図に示されている第2のキーホール溶接318の形状は、例示目的のためだけの
ものであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0059】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、最初に伝導溶接312が、次にキー
ホール溶接318がそれぞれ対向する側面に形成されると、継ぎ目304は更に、または
代替的に、溶接継ぎ目304とも呼ばれることができる。
【0060】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、当技術分野で知られているように、
レーザ伝導モード溶接では、出力密度は、第1および第2の物体300、302の材料、
たとえばニオブの溶融を引き起こすほどに十分大きい。溶接溶け込みは、側面308から
材料内に伝導するレーザの熱によって達成される。一例では、レーザ伝導溶接は、ミリ秒
のパルス持続時間範囲のパルスレーザ溶接により達成される。溶接溶け込み深さは、部分
的に、パルスの持続時間によって制御される。パルスが長ければ長いほど、第1および第
2の物体300、302を形成している材料に熱が「伝導」する時間も長くなる。レーザ
伝導溶接では、伝導溶接312は、例えば図8Aに示すように、典型的には深さより幅が
広い。
【0061】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、当技術分野で知られているように、
レーザキーホール溶接では、伝導溶接とは異なる方法で加熱による溶接溶け込みを達成す
る。具体的には、レーザキーホール溶接の間、出力密度は金属をその融点を超えるもので
あり、金属を気化させるほどに十分大きい。気化した金属は膨張ガスを生成し、該ガスが
外側に押し出すことにより、側面310から溶接の深さへとキーホールまたはトンネルを
形成する。レーザ光のビームが継ぎ目304の側面310に沿って移動すると、たとえば
、レーザビームは図9Aのページに対して垂直に移動し、図9Bにおいて水平に右から左
、またはその逆へも移動すると、キーホールは追従し深くて狭い溶接を形成する。レーザ
出力が十分に大きく、継ぎ目304の側面310上のレーザの移動速度が過度ではない限
り、キーホールはレーザビームに近接して開いたままであろう。キーホール溶接は、強力
で深い溶接を形成するが、その代償として、気孔率、スパッタリング、深さの変化が伝導
溶接と比較して大きくなる。深さ変動の非限定的な例は、図9B図10B、および図1
1Bの波線324によって示される。
【0062】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、第1および第2の物体300、30
2のそれぞれは、SRFセルの一部であり、たとえばパイプセクション、部分セル、ハー
フセルであり、側面308は、レーザ溶接されて伝導溶接312を形成し、一例では、完
成したSRFセルの内表面(この内表面は、望ましくは、連続的または実質的に連続的な
、滑らかで、途切れがない)であり得、側面310は、キーホール溶接318を形成する
ためにレーザキーホール溶接され、一例では、完成したSRFセルの外表面であり得る。
しかしながら、これは限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0063】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、キーホール溶接318の深さは、必
要に応じて調整または選択することができる。たとえば、図9A図9Bに示されるよう
に、キーホール溶接318は、第1の側面308と第2の側面310との間で伝導溶接3
12の本体部分316と交差することができる。図10A図10Bに示される他の例を
参照すると、キーホール溶接318の一部または全部は、伝導溶接312の表面314と
第1の側面308との間で伝導溶接312の本体部分316と交差することができる。図
10Bの線324によって示されるように、1つの好ましい非限定的な実施形態または例
において、キーホール溶接318の一部または全部は、伝導溶接312の表面314まで
延びることができる。さらなる別の例として図11A図11Bを参照すると、キーホー
ル溶接318の全ては、第1および第2の物体300、302の少なくとも一方を形成す
る材料である間隙326により、伝導溶接312から離間することができる。1つの好ま
しい非限定的な実施形態または例では、単一の連続キーホール溶接318は、図9B、図
10B、および図11Bの324にて示されるいくつか、あるいは全てのバリエーション
のキーホール溶接318の深さを有することができる。
【0064】
図12A図12Bを参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、第
1の伝導溶接312が形成される前または後に、継ぎ目304の第2の側面310をレー
ザ溶接することにより導電溶接328が形成され得、より詳細には、継ぎ目304に近接
する第1および第2の物体300、302の第2の側面310がレーザ伝導溶接される。
第1の導電溶接312および第2の導電溶接328を形成する順序は、限定的な意味で解
釈されるべきではない。
【0065】
第1の導電溶接312と同様に、第2の導電溶接328は、継ぎ目304の面310の
上方に立ち上がる比較的滑らかな露出された面330と、面330と第1の面308との
間に延びる本体332とを有することができる。第1の伝導溶接312および第2の伝導
溶接328は、第1および第2の物体300、302のうちの少なくとも一方を形成する
材料で形成される間隙334によって離間することができる。図に示されている第2の伝
導溶接318の形状は例示目的のためだけのものであり、限定的な意味で解釈されるべき
ではない。
【0066】
図13A図13Bを参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態または例において
、第1の伝導溶接312が形成される前後に、第2の遷移溶接338が継ぎ目304の第
2の側面310をレーザ溶接することにより、より具体的には、継ぎ目304に近接した
第1および第2の物体300、302の第2の側面310をレーザ遷移溶接することによ
り形成され得る。第1の伝導溶接312および第2の遷移溶接338を形成する順序は、
限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0067】
当該技術分野において知られているように、遷移溶接338のような遷移溶接は、伝導
溶接を形成するレーザビームの電力密度とキーホール溶接を形成するレーザビームの電力
密度との間、たとえば中間のレーザビームの出力密度で形成される。遷移溶接を形成する
レーザビームは、伝導溶接を形成するレーザビームよりも多く浸透し、浅い浸透を有する
キーホールを形成する。一例では、典型的な遷移溶接は約1のアスペクト比(深さ/幅)
を有する。しかしながら、これは限定的な意味で解釈されるべきではない。伝導溶接、キ
ーホール溶接、および遷移溶接は、それぞれ当技術分野において公知である。
【0068】
遷移溶接338は、継ぎ目304の面310の上方に立ち上がる露出された面330と
、面330と第1面308との間に延びる本体342とを有することができる。遷移溶接
338の表面は、遷移溶接338を形成するのに使用される出力密度に応じて、比較的滑
らかであるか、または多孔質であり得る。伝導溶接312および遷移溶接338は、第1
および第2の物体300、302のうちの少なくとも一方を形成する材料で形成される間
隙344によって離間することができる。図に示されている遷移溶接338の形状は、例
示目的のためだけであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0069】
図14を参照して、1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、第1および第2
の物体300、302を共々にレーザ溶接する方法は、開始ステップ330からステップ
332に進むことを含み、第1および第2の物体300、302は、継ぎ目304を画定
するために互いに当接される。方法は次にステップ334へと進み、継ぎ目304の第1
の側面308がレーザ伝導溶接され、伝導溶接312を形成する。方法は次にステップ3
36に進み、そこで継ぎ目304の第2の側面310がレーザ溶接されて伝導溶接328
、キーホール溶接318、または遷移溶接338が形成される。方法は次に停止ステップ
338へ進むことができる。
【0070】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例において、溶接継ぎ目304は第1の側面
308上に第1の伝導溶接312を含み、更に第2の側面310上に第2の溶接318、
328、または338のいずれかを含み、上記図1~7および図13~15のいずれの溶
接継ぎ目としても用い得る。
【0071】
以上のように、ここで開示されるのは、本体の軸34に沿って互いに離間した第1およ
び第2の絞り32-1および32-2を有する中空状の本体と、第1の絞り32-1と第
2の絞り32-2との間の本体の緯度座標が0°であるセル赤道30と、によって画定さ
れる超伝導無線周波数(SRF)セル22、を製造する方法である。この方法は、第1の
セル溶接縁部36と、その反対側に第1の絞り32-1とを備える、第1の部分セル24
を設けること、および、第2のセル溶接縁部38と、その反対側に第2の絞り32-2と
を備える、第2の部分セル26を設けること、を含む。第1および第2の部分セル24、
26は、第1および第2のセル溶接縁部36、38が互いに向き合うように配置される。
第1および第2の部分セル24、26は共々に溶接され、それにより赤道30以外の緯度
で溶接継ぎ目28、304を形成する。溶接のステップは、セル溶接縁部36、38の少
なくとも一方において、第1および対向する第2の側面308、310の各々に、第1の
溶接312を形成すること、および第2の溶接318、328、または338を形成する
こと、を含むことができる。
【0072】
第1の溶接312は、伝導溶接であり得る。第2の溶接318、328、または338
は、伝導溶接、キーホール溶接、または遷移溶接であり得る。
【0073】
溶接継ぎ目28、304は、赤道30から軸34に沿って第1の絞り32-1または第
2の絞り32-2の方向に5mm以上離れて配置することができる。
【0074】
溶接継ぎ目28、304は、第1および第2のセル溶接縁部36、38を共々に溶接す
ることによって形成することができる。
【0075】
この方法はさらに、第1および第2の部分セル24、26の間に、第1および第2のセ
ル溶接縁部36、38にそれぞれ面した第1および第2のパイプ溶接縁部42、44を含
む、パイプセクション40を配置することを含み得る。第1および第2のパイプ溶接縁部
42、44は、それぞれの第1および第2のセル溶接縁部36、38と溶接することがで
きる。溶接継ぎ目28、46、304は、第1のパイプ溶接縁部42および第1のセル溶
接縁部36を溶接することにより形成することができる。第2溶接継ぎ目48、304は
、第2のパイプ溶接縁部44および第2のセル溶接縁部38を溶接することによって形成
することができる。少なくともパイプ溶接縁部42、44のいずれかの第1の側面308
および第2の側面310において、第1の溶接312、および第2の溶接318、328
、または338により、各溶接継ぎ目28、46、48はそれぞれ形成され得る。
【0076】
第2の溶接継ぎ目48、304は、赤道30上に配置することができる。
【0077】
溶接継ぎ目56、304、および第2の溶接継ぎ目58、304は、赤道30の両側に
対向するように配置することができる。
【0078】
この方法は、第1および第2のパイプセクション72、74を互いに溶接して第3の溶
接継ぎ目76、304を含むパイプセクション70を形成し、続くステップ(d)におい
て、赤道30上またはその近傍にパイプセクション70を配置することを含むことができ
る。
【0079】
各第1の溶接継ぎ目46、56、304は伝導溶接で形成され得、各第2の溶接継ぎ目
48、58、304は伝導溶接、キーホール溶接、または遷移溶接で形成され得る。
【0080】
第1の側面308は、少なくとも1つの部分セルの内表面であり得る。第2の側面31
0は、少なくとも1つの部分セルの外表面であり得る。溶接ステップは、レーザ溶接を含
むことができる。
【0081】
同様に開示されているのは、第1および第2の対向する端部を有する中空キャビティを
画定する本体を備える、超伝導無線周波数(SRF)セル22である。第1の絞り32-
1は本体の第1の端部にあり、第2の絞り32-2は本体の第2の端部にある。本体は、
第1の絞り32-1と第2の絞り32-2との間に延びる軸34と、第1の絞りと第2の
絞りとの間の軸34の周囲の赤道30とを画定する。本体は、赤道30から離間した本体
上の位置で、軸34の周りに少なくとも第1の溶接継ぎ目28、46、56、304を含
む。各溶接継ぎ目は本体を貫通して延在することができ、加えて本体の内側と外側の近傍
で終端する、対向する両側を有することもできる。各溶接継ぎ目は、第1の溶接と第2の
溶接とを、対向するように溶接継ぎ目に備えることができる。
【0082】
第1の溶接は伝導溶接であり得る。第2の溶接は、伝導溶接、キーホール溶接、または
遷移溶接であり得る。
【0083】
本体は、軸34の周りに第2の溶接継ぎ目58を含むことができる。第1および第2の
溶接継ぎ目56および58は、赤道を介して両側に対向するように配置することができる
【0084】
第1の溶接は、本体の内側にあり得る。第2の溶接は本体の外側にあり得る。
【0085】
本体は、異なる形状を有する第1および第2の部分セル24、26を含むことができる
【0086】
本体は、第1の部分セルと第2の部分セルとの間に、パイプセクション40を含むこと
ができる。
【0087】
本体は、パイプセクションを第1および第2の部分セルに接合する、第2および第3の
溶接継ぎ目56、58を含むことができる。
【0088】
第1および第3の溶接継ぎ目92、94は、第1および第2の絞り32-1および32
-2に近接していてもよい。第1の溶接継ぎ目92は、第1の絞り32-1から5mm以
上の位置に配置され得る。第3の溶接継ぎ目94は、第2の絞り32-2から5mm以上
の位置に配置され得る。
【0089】
同様に開示されているのは、第1および第2の物体を互いに当接させることにより、第
1の側面およびその反対側に第2の側面を有する物体において、継ぎ目を画定すること、
継ぎ目の第1の側から継ぎ目に沿って、第1および第2の物体に対してレーザ溶接および
伝導溶接を施すこと、継ぎ目の第2の側から継ぎ目に沿って、第1および第2の両方に対
して伝導溶接、キーホール溶接、または遷移溶接により、レーザ溶接を施すこと、を含む
方法である。
【0090】
各物体は、超伝導無線周波数セルの本体の一部であり得る。継ぎ目の第1の側面は、本
体の内側に形成することができる。継ぎ目の第2の側面は、本体の外側に形成することが
できる。
【0091】
以上の通り、本発明は、変動に対して最大の感度を有するセル(溶接継ぎ目)の領域上
において、最大の変動を有する電界または磁界を有するという問題を少なくとも部分的に
克服する。セルの異なる領域に1つ以上の溶接継ぎ目を移動させることはコストおよび製
造の複雑さを増大させるものの、1つ以上の溶接継ぎ目によるセルの性能に対する悪影響
を減少させる。一例では、セルの性能に対する溶接継ぎ目の影響は、溶接継ぎ目を電界お
よび磁界の合計最小値に配置することによって最小化することができ、溶接継ぎ目がセル
性能の限界に与える影響を加味する。
【0092】
セル性能の上限を上げることに加えて、セルの赤道から1つ以上の溶接継ぎ目を移動さ
せることは、赤道上またはその近傍のセルの中心へのアクセシビリティを利用するための
、いくつかの処理オプションを広げる。たとえば、図1図6に示される各例示的セル2
2の溶接継ぎ目のいずれか、または全てを完成/形成する前に、第1および第2の部分セ
ル24、26の1つまたは複数の内表面、任意の管、任意のパイプセクション、および/
またはそれらの任意の組み合わせを、電解研磨、および/または溶接後加工、および/ま
たはたとえばこれに限定されないが、ニオブの物理的蒸着することができ、部分セル24
、26、任意の管、任意のパイプセクション、および/またはそれらの任意の組み合わせ
は、ニオブ以外の材料で形成される。
【0093】
さらに、セルの内表面(または第1の側面)上の第1の伝導溶接は、滑らかな溶接面を
有し、空隙はほとんど無いか、あるいは存在しない。セルの外表面(第2の面)上の第2
の溶接、たとえば伝導溶接、キーホール溶接、または遷移溶接は、強力で深い溶接、およ
び全体的に強力な溶接継ぎ目を形成することができ、これによりセルはSRFキャビティ
での過酷な使用に耐え得る。第2の溶接がキーホール溶接である場合、最初に内表面上に
伝導溶接を形成することによって、溶接継ぎ目をキーホール溶接のスパッタに対してシー
ルすることができる。次いで、キーホール溶接を外表面上に作製することができ、その後
、キーホール溶接の深さは、一例では、セルの内面(または第1の側面)と交差すること
なく、伝導溶接の後部または内部深さに近づくことができる。一例では、キーホール溶接
は、伝導溶接と完全に重なるか、伝導溶接と部分的に重なるか、または伝導溶接から離間
することができる。
【0094】
第2の溶接が伝導溶接または遷移溶接である場合、第1および第2の溶接は任意の望ま
しい順序で形成することができる。
【0095】
1つの好ましい非限定的な実施形態または例では、2つの物体を当接させることにより
形成された継ぎ目の一方の側面部に伝導溶接を、他方の側面部に伝導溶接、キーホール溶
接、または遷移溶接を形成する組み合わせは、本明細書に記載の部分セル、パイプ、また
はパイプセクション以外の任意のあらゆる適切なおよび/または望ましい物体に対して使
用することができる。
【0096】
最も実用的で好ましい実施形態であると現在考えられているものに基づき、本発明を詳
細に説明したが、それらはあくまでその目的のためであり、本発明は本実施形態に限定さ
れるものではなく、むしろその逆であり、特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある修正
および等価な構成を網羅することを意図している。たとえば、本発明は、可能な範囲で、
任意の実施形態の1つまたは複数の特徴を、任意の他の実施形態の1つまたは複数の特徴
と組み合わせることができることを企図することを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17