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特許7573683パルスインバータ、パワートレイン、及び冷却剤を加熱するための方法
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  • 特許-パルスインバータ、パワートレイン、及び冷却剤を加熱するための方法 図1
  • 特許-パルスインバータ、パワートレイン、及び冷却剤を加熱するための方法 図2
  • 特許-パルスインバータ、パワートレイン、及び冷却剤を加熱するための方法 図3
  • 特許-パルスインバータ、パワートレイン、及び冷却剤を加熱するための方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】パルスインバータ、パワートレイン、及び冷却剤を加熱するための方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241018BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076643
(22)【出願日】2023-05-08
(65)【公開番号】P2023166343
(43)【公開日】2023-11-21
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】10 2022 111 447.3
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティミヤン ヴィーリク
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン バルコー
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ホイスラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ガッツェマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤニク マイヤー
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-189249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電力電子機器(8)が提供されている、パルスインバータハウジング(20、21)を有する、パルスインバータであって、少なくとも前記パルスインバータハウジング(20、21)が、ハウジング手段(24、26)を通して流れる冷却剤によって冷却され、前記電力電子機器が、少なくとも1つのコントローラと、ゲートドライバと、半導体素子(50)を有する電力電子機器(8)と、を備え、半導体素子(50)を切り替えるために、前記ゲートドライバ(10)が、ターンオン電圧UGS及びターンオフ電圧Uを提供し、この目的のために、前記コントローラによって作動可能であり、前記コントローラ(12)が、制御手段を備え、これを介して、耐電圧U<UGSが調整可能であり、これにより、電力消散Pが生成され得、前記電力電子機器(8)及び/又は前記冷却剤を加熱させ
前記パルスインバータハウジング(20、21)が、前記ハウジング手段として、少なくとも1つの冷却剤入口開口部(24)及び少なくとも1つの冷却剤出口開口部(26)を備え、前記冷却剤が、前記電力電子機器(8)と直接接触している前記パルスインバータハウジング(20、21)を通って流れることを特徴とする、パルスインバータ。
【請求項2】
前記電力電子機器(8)が、電圧UDS又は電流IDSを検出するための少なくとも1つの電力センサを備えることを特徴とする、請求項1に記載のパルスインバータ。
【請求項3】
記冷却剤が、誘電体材料であることを特徴とする、請求項1に記載のパルスインバータ。
【請求項4】
請求項1に記載のパルスインバータ(6)を有するパワートレインであって、電気機械(4)に、エネルギーリザーバ(13)を有する冷却回路が提供されており、前記電気機械(4)が、前記パルスインバータ(6)に接続しており、電気機械ハウジング(22)が、前記冷却剤によって灌流可能であるように同様に構成されていることを特徴とする、パワートレイン。
【請求項5】
前記パルスインバータ、前記電気機械(4)、及び前記エネルギーリザーバ(13)が、車両冷却回路全体に統合されていることを特徴とする、請求項4に記載のパワートレイン。
【請求項6】
別個の冷却回路(14)に、冷却ポンプ(16)及び熱交換器(17)が提供されていることを特徴とする、請求項4に記載のパワートレイン。
【請求項7】
前記冷却剤の灌流方向を変更するための切り替え手段(18)が提供されていることを特徴とする、請求項4に記載のパワートレイン。
【請求項8】
請求項4に記載のパワートレインにおいて冷却剤を加熱するための方法であって、第1のステップにおいて、温度Tが、温度センサによって判定され、第2のステップにおいて、前記温度Tと、保存された温度閾値Tとの比較が行われ、第3のステップにおいて、耐電圧U<UGSが設定されることを特徴とする、方法。
【請求項9】
第4のステップにおいて、電圧UDS又は電流IDSが、少なくとも1つの電力センサによって、前記電力電子機器(8)において検出され、制御変数として、前記コントローラ(12)にフィードバックされることを特徴とする、請求項8に記載の冷却剤を加熱するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの電力電子機器が提供されるパルスインバータハウジングを有するパルスインバータに関し、少なくともパルスインバータハウジングは、ハウジング手段を通して流れる冷却剤によって冷却される。更に、本発明は、かかるパルスインバータを有するパワートレイン、並びにかかるパワートレインにおいて冷却剤を加熱するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気パワートレインでは、電気機械の動作に対して、パルスインバータが必要とされる。パルスインバータは、バッテリのDC電圧を多相AC電圧に変換し、かつこの目的のために、ゲートドライバ及びコントローラと協働する少なくとも1つの電力電子機器を有する。全ての電子部品を1つのハウジングに収容することは絶対的に必要というわけではなく、特に、電力電子機器は強く加熱され得るので、パワートレインにおける電気機械のように冷却されなければならない。パルスインバータ及び電気機械が流れる冷却剤、この事例では水によって冷却される、冷却されたパワートレインは、独国特許出願公開第10 2016 211 763号明細書から公知である。この場合において、電力電子機器、すなわち、電子部品、及び/又は電気機械、特にステータの増加した電力消散分は、本開示では、低温でのエネルギーリザーバにおける、電気部品を加熱するために使用される。この手順は、過負荷を急速に導き、これにより電力電子機器、又は更には電気機械を損傷させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第10 2016 211 763号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明によって対処される課題は、前述の不利益を単純かつ安価な様態において回避することである。
【0005】
この問題は、電力電子機器が少なくとも1つのコントローラと、ゲートドライバと、半導体素子を有する電力電子機器と、を備え、半導体素子を切り替えるために、ゲートドライバが、ターンオン電圧UGS及びターンオフ電圧Uを提供し、この目的のために、コントローラによって作動可能であり、コントローラが、制御手段を備え、これを介して、耐電圧U<UGSが調整可能であり、これにより、電力消散Pが生成され得、電力電子機器及び/又は冷却剤を加熱させる。
【0006】
特に有利な実施形態では、電力電子機器は、電圧UDS又は電流IDSを検出するための少なくとも1つの電力センサを備える。これにより、冷却回路内の正確な温度制御が可能となる。
【0007】
特に有利な様態において、パルスインバータハウジングが、ハウジング手段として、少なくとも1つの冷却剤入口開口部及び少なくとも1つの冷却剤出口開口部を備え、そのため、冷却剤が、電力電子機器と直接接触しているパルスインバータハウジングを通って流れ、冷却剤が、誘電体材料である。誘電体材料がパルスインバータハウジング内の電力電子機器の周りを完全又は部分的に流れることを可能にすることによって、電力電子機器と誘電体材料との間にボリュームエンベロープ接触エリアが生成される。電力電子機器と誘電体材料との間の接触エリアは、それによって先行技術と比較して著しく増加する。加えて、本明細書に記載の熱交換の様態において、電力電子機器で生成される熱は、直接吸収され、流動冷却剤から除去される。熱遷移の数が同時に最小化された接触エリアの拡大は、冷却及び加熱効率の大幅な増加をもたらす。
【0008】
課題は、このようなパルスインバータを有するパワートレインによって同様に解決され、電気機械に、エネルギーリザーバを有する冷却回路が提供されており、電気機械が、パルスインバータに接続しており、電気機械ハウジングが、冷却剤によって灌流可能であるように同様に構成されている。
【0009】
パルスインバータ、電気機械、及びエネルギーリザーバは、車両冷却回路全体に統合され得る。有利に、冷却剤ポンプ及び熱交換器を備えた別個の冷却回路が、特に単純な様態において冷却剤及び熱流を制御することができるように提供されている。誘電体材料の灌流方向を変更するための切り替え手段は、特別な動作状況に単純に反応することができるように提供され得る。切り替え手段は、冷却剤ポンプの回転方向を変更することができる、又は灌流方向を変更することができるように提供されるバルブを提供するという点で構成することができる。
【0010】
課題は、かかるパワートレイン内の冷却剤を加熱するための方法によって同様に解決され、第1のステップにおいて、温度Tが、温度センサによって判定され、第2のステップにおいて、温度Tと、保存された温度閾値との比較が行われ、第3のステップにおいて、耐電圧U<UGSが設定される。
【0011】
有利に、第4のステップにおいて、電圧UDS又は電流IDSが、少なくとも1つの電力センサによって、電力電子機器において検出され、制御変数として、コントローラにフィードバックされる。
【0012】
本発明は、以下に示される、図面を参照することによって更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】別個の冷却回路を有する単純な電気パワートレインの概略図である。
図2】パルスインバータの第1の実施形態の詳細図である。
図3】接続された半導体素子を有するゲートドライバの概略図である。
図4】電流電圧プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、電気車両(更には図示せず)の非常に単純なパワートレイン2を示す。パワートレイン2は、電気機械4及びそれに接続されたパルスインバータ6からなる。パルスインバータ6は、バッテリのDC電圧(更には図示せず)を、電気機械4の動作のために多相AC電圧に変換し、したがって電気機械4の制御を引き継ぐ。例えば、パルスインバータ6は、駆動制御ユニット(更には図示せず)からのトルク要求を受信し、対応する電圧を設定することによってそれを実施する。この目的のために、パルスインバータ4は、図2及び3に更に詳細に説明するように、3つの機能的構成要素8、10、12から構築することができる。電力電子機器8は、半導体素子スイッチ及びDCリンクキャパシタからなる、いわゆる転流セルを含む。更に、本例示的な実施形態では、電圧及び電流を検出するためのセンサは、電力電子機器8に組み込まれている。ゲートドライバ10は、半導体素子スイッチを作動させ、コントローラ12のスイッチング信号を実施するために必要である。
【0015】
コントローラ12は、実質的に、電気機械4の制御を引き継いで、設定されるAC電圧を計算する。
【0016】
特に、電力電子機器8は、電気機械4に加えて、高温の発熱を経験することができる。電力を電気機械4に供給するためのエネルギーリザーバ13もまた、示されている。電気機械4及びパルスインバータ6の両方の効果的な冷却を確保するために、冷却剤ポンプ16及び熱交換器17を備える冷却デバイス15を有する冷却回路14が提供されている。冷却剤ポンプ16は、冷却剤回路14内に位置する冷却剤の灌流方向の変化を提供するために、切り替え手段18として回転方向反転部を有する。
【0017】
冷却剤回路14は、パルスインバータハウジング20及び電気機械ハウジング22の両方が、冷却剤によって灌流されるように構成されている。この目的のために、パルスインバータハウジング20は、冷却剤入口開口部24及び冷却剤出口開口部26を有し、また、電気機械ハウジング22は、冷却剤入口開口部28及び冷却剤出口開口部30を有し、ここで、用語は、先ず、パルスインバータハウジング20及びその後に電気機械ハウジング22が冷却剤によって灌流されるように選択される。方向反転については、「入口開口部」及び「出口開口部」という用語は、適宜切り替わる。ここでは、誘電体材料が冷却剤として提供されている。例えば、外側温度が低温の場合、エネルギーリザーバ13は、速やかに動作温度に引き上げられなければならない。冷却回路14は、以下に説明するように、この目的のために使用され得る。更には図示されていない温度センサは、エネルギーリザーバ13上に提供され、エネルギーリザーバ13上に存在する温度Tを感知する。
【0018】
図2は、ここで、パルスインバータハウジング20を有する、本発明によるパルスインバータ6の概略図を示す。パルスインバータ6が電気機械4の前方で流れの方向に配置される本例示的な実施形態では、パルスインバータハウジング20は、冷却剤入口開口部24及び冷却剤出口開口部26を有し、これは、パルスインバータハウジング20の湿式チャンバ32に直接流体接続される。パルスインバータハウジング20はまた、封止部材36によって湿式チャンバ32から流体的に分離された乾式チャンバ34を有する。本例示的な実施形態では、電力電子機器8、ゲートドライバ10、及びDCリンクキャパシタ38は、湿式チャンバ32内に提供され、ここで、これらの構成要素8、10、38は、誘電体の流れによって直接囲まれる。電力電子機器8及びDCリンクキャパシタ38の電気コネクタ46はまた、冷却剤の流れによって囲まれ、それによって最適に冷却される。コントローラ12のみが、乾式チャンバ34内に提供されている。ゲートドライバ10及びコントローラ12は、電気接続部48を介して電力電子機器8に電気的に接続される。
【0019】
図3は、接続された半導体素子50を有するゲートドライバ10の概略図を示す。ここで、保存された温度閾値Tを下回る、エネルギーリザーバ13の温度Tが判定される場合、いわゆる耐電圧U<UGS(ゲート電圧)が、ゲートドライバ10上に設定され、これは、半導体素子50の無消散切り替えに必要とされる。電流IDS及び電圧UDSを有する耐RDSは、それによって最も単純な様態において実現され、これにより、電力消散P、したがってパルスインバータ6の加熱及びしたがって冷却剤につながる。次いで、エネルギーリザーバ13は、冷却剤を介して、必要な動作温度まで加熱され得る。この場合、電力電子機器8では、電圧UDS又は電流IDSが少なくとも1つの電力センサによって検出され、制御変数としてコントローラ12にフィードバックされる場合に有利である。
【0020】
図4は、ここで、電圧UGSに対する耐RDSを示すプロットを示す。電圧U<UGS、及び結果として電力消散P、及びそれゆえ熱が生成される範囲は、参照番号52で示される。
図1
図2
図3
図4