(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】インデックスアセンブリシステムを設けられた時計調節部材
(51)【国際特許分類】
G04B 18/02 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G04B18/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023088502
(22)【出願日】2023-05-30
【審査請求日】2023-05-30
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-リュック・エルフェ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・メルテナ
(72)【発明者】
【氏名】イバン・ビジャール
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ルショー
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】スイス国特許出願公開第704687(CH,A3)
【文献】特開2016-138766(JP,A)
【文献】スイス国特許発明第1967(CH,A)
【文献】特開2019-45482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンプ(23)である慣性質量と、ヒゲゼンマイ(25)と、前記ヒゲゼンマイ(25)の歩度を調整するためのインデックスアセンブリシステム(20,60)とを備えた時計ムーブメント用の調節部材(1,40)であって、前記ヒゲゼンマイ(25)は、コイル状ストリップ(2)と、前記コイル状ストリップ(2)と直列に配置された弾性要素(5)を設けられた前記ヒゲゼンマイの剛性を調整するための手段とを備えており、前記インデックスアセンブリシステム(20,60)は、前記弾性要素(5)に機械的に結合されたスタッドホルダ(31)を備えており、前記スタッドホルダ(31)は、第1のスタッド(34)および第2のスタッド(35)を含んでおり、前記弾性要素(5)は、前記第1のスタッド(34)と前記第2のスタッド(35)との間に配置されており、前記第1のスタッド(34)は、前記第2のスタッド(35)に対して移動可能であり、前記第1のスタッド(34)の移動が、前記ヒゲゼンマイ(25)の剛性を変化させることを特徴とする、調節部材(1,40)。
【請求項2】
前記スタッドホルダは、前記第1のスタッド(34)を設けられた第1の部分(32,52)と、前記第2のスタッド(35)を設けられた第2の部分(33,53)とを備えており、前記第1の部分(32,52)は、前記第1のスタッド(34)を移動させるために、前記第2の部分(33,53)に対して移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の調節部材。
【請求項3】
第1の部分(32,52)と第2の部分(33,53)とは重ね合わされていることを特徴とする、請求項1に記載の調節部材。
【請求項4】
前記インデックスアセンブリシステム(20)は、第1の部分(32)と協働して、前記第1の部分が締められる/緩められると、前記第1の部分を移動させる、偏心ねじ(36)
である調節手段を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の調節部材。
【請求項5】
前記インデックスアセンブリシステム(60)は、第1の部分(52)に配置されたアーム(63)と、前記アーム(63)と協働するカム(55)とを備えており、前記カム(55)の作動が、前記第1の部分(52)を第2の部分(53)に対して移動させることを特徴とする、請求項1に記載の調節部材。
【請求項6】
前記インデックスアセンブリシステム(60)は、前記カム(55)に対して前記第1の部分(52)の前記アーム(63)を保持するために、前記第1の部分(52)と前記第2の部分(53)との間に力を加える、ばね
である戻り手段を備えていることを特徴とする、請求項5に記載の調節部材。
【請求項7】
第2の部分(33,53)は、プレート(21)に対して不動であることを特徴とする、請求項1に記載の調節部材。
【請求項8】
第1の部分(32,52)は、第2の部分(33,53)に対して回転移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の調節部材。
【請求項9】
前記第1のスタッド(34)は、回転移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の調節部材。
【請求項10】
調整手段は、可変の力またはトルクを可撓性要素(5)に加えるためのプレストレス手段(6)を備えており、前記プレストレス手段(6)は、前記第1のスタッド(34)と前記第2のスタッド(35)との間に配置されており、前記第2のスタッド(35)に対する前記第1のスタッド(34)の移動が、前記プレストレス手段を作動させることを特徴とする、請求項1に記載の調節部材。
【請求項11】
前記プレストレス手段(6)は、前記可撓性要素(5)に接続されたレバー(14)を含んでおり、前記第1のスタッドは、前記レバー(14)の自由端(15)と一体化されていることを特徴とする、請求項10に記載の調節部材。
【請求項12】
前記可撓性要素(5)は、固定支持体(17)に接合されており、前記第2のスタッド(35)は、前記固定支持体(17)と一体化されていることを特徴とする、請求項10に記載の調節部材。
【請求項13】
前記プレストレス手段(6)は、前記可撓性要素(5)と平行に配置された半剛性構造を含んでおり、レバー(14)は、前記半剛性構造に接続されていることを特徴とする、請求項10に記載の調節部材。
【請求項14】
請求項1に記載の調節部材(1,40)を備えていることを特徴とする、時計ムーブメント。
【請求項15】
請求項14に記載の時計ムーブメントを備えていることを特徴とする、
腕時計である計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の分野に関し、より詳細には、駆動エネルギが調節部材によって調節される機械式時計の分野に関する。本発明は、より具体的には、インデックスアセンブリシステムを設けられた調節部材、そのような調節部材を備えた時計ムーブメント、およびそのような時計ムーブメントを備えた計時器に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの機械式腕時計では、針(たとえば、分針および時針)を回転させるために必要なエネルギが、バレルに蓄えられ、その後、ヒゲゼンマイと呼ばれるらせん状に巻かれたコイル状ストリップの形態をしたばねに関連付けられた、テンプと呼ばれるはずみ車を備えたばね付きテンプシステムによって伝達される。
【0003】
ヒゲゼンマイは、内端において、ヒゲゼンマイの回転と一体化されたスタッフに固定されており、外端において、スタッドホルダに取り付けられたスタッドに固定されており、スタッドホルダは、それ自体が固定コック(cock)(またはブリッジ)と一体化されている。
【0004】
テンプの回転は、ガンギ車の歯に対して作用する2つのツメ石を設けられた低振幅の振動運動によって動かされるアンクルレバーを備えた脱進機機構によって維持されており、その振動が計数される。このように衝突すると、ガンギ車に、段階的な回転運動が与えられ、その周波数は、アンクルレバーの振動周波数によって決定され、アンクルレバー自体の振動周波数は、ばね付きテンプの振動周波数に設定される。
【0005】
従来の脱進機機構では、振動周波数は、約4Hz、または毎時約28,800振動(vph)である。優れた腕時計メーカの1つの目標は、テンプの振動の等時性および規則性(すなわち、歩度の一定性)を保証することである。
【0006】
テンプの歩度は、ヒゲゼンマイの外端付近に位置し、通常、インデックスアセンブリシステムに取り付けられたキーによって動かされる一対のバンクによって定義される、内端とカウントポイントとの間の曲線の長さとして定義される、ヒゲゼンマイの有効長を調整することによって、知られている方式で調節される。
【0007】
動作中、このインデックスアセンブリシステムは、ヒゲゼンマイの軸に対して回転するように固定されている。しかしながら、角度位置は、たとえば、ドライバを使用して、インデックスアセンブリシステムのカムのように機能する偏心輪を回転させることによって、手動で微調整できる。
【0008】
コック、インデックスアセンブリシステム、キー、スタッドホルダ、スタッフ、ばね、およびテンプを含むアセンブリは、一般に「調節部材」と呼ばれる。調節部材の例は、国際特許出願第2016/192957号および欧州特許第2876504号によって提案されており、どちらも腕時計メーカETAによって出願されている。
【0009】
ヒゲゼンマイの一端が固定されており、ヒゲゼンマイが2つのバンク間で移動できるように、インデックスアセンブリシステムのキーが遊びを残すスタッドホルダを含むインデックスアセンブリシステムが存在する。しかしながら、クロノメータ特性、特に振幅依存の非等時性は、インデックスキーの遊びに非常に敏感であり、この遊びを正確に制御することは困難である。
【0010】
いくつかのデバイスでは、特にヒゲゼンマイの動作中に、バンクを調整してヒゲゼンマイを圧迫し、したがって遊びをなくすことができる。そのような場合、まずインデックスキーを移動させて歩度を調節し、その後ヒゲゼンマイはキーに押し付けられる。しかしながら、ヒゲゼンマイがインデックスキーに押し付けられると、特に回転の偏心により、ヒゲゼンマイに負担がかかり、クロノメータの不具合が生じる可能性がある。さらに、遊びをなくすと歩度も変化し、ヒゲゼンマイを一度押し付けられると、インデックスキーがヒゲゼンマイに沿って移動できなくなり、歩度の微調節ができなくなる。
【0011】
他のヒゲゼンマイは、一体化された調節デバイスを含んでいる。これらヒゲゼンマイでは、歩度は、ヒゲゼンマイの有効長を変化させることによって調節されるのではなく、ヒゲゼンマイと直列に配置された弾性要素に力またはトルクを加えることによって調節される。したがって、弾性要素の剛性、ひいてはヒゲゼンマイ全体の剛性を変化させることができる。ヒゲゼンマイの剛性を調整することにより、調節部材の歩度を調節できる。そのような弾性要素を備えたヒゲゼンマイは、たとえば、欧州特許出願第21202213.1号に記載されている。
【0012】
しかしながら、そのような場合、典型的なインデックスアセンブリシステムは、ヒゲゼンマイ調節デバイスとの互換性がないので、使用できない。さらに、歩度は非常に細かく調節されるため、ヒゲゼンマイと、インデックスアセンブリとの相互作用領域との間に、遊びがないことが不可欠である。これは、逆に、衝突後にヒゲゼンマイが正確に同じ位置に戻らないと、衝突の際に歩度が変わる危険性があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際特許出願第2016/192957号
【文献】欧州特許第2876504号
【文献】欧州特許出願第21202213.1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、このタイプの調節デバイスと互換性のあるインデックスアセンブリシステムを提供することによって、前述した欠点の一部またはすべてを克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は、たとえば環状テンプである慣性質量と、ヒゲゼンマイと、ヒゲゼンマイの歩度を調整するためのインデックスアセンブリシステムとを備えた時計ムーブメント用の調節部材に関し、ヒゲゼンマイは、コイル状ストリップと、コイル状ストリップと直列に配置された弾性要素を設けられた、ヒゲゼンマイの剛性を調整するための手段とを備えている。
【0016】
本発明は、インデックスアセンブリシステムが、弾性要素に機械的に結合されたスタッドホルダを備えていることに注目すべきであり、スタッドホルダは、第1のスタッドおよび第2のスタッドを含んでおり、弾性要素は、第1のスタッドと第2のスタッドとの間に配置されており、第1のスタッドは、第2のスタッドに対して移動可能であり、第1のスタッドが移動すると、ヒゲゼンマイの剛性を変化させる。
【0017】
本発明は、ヒゲゼンマイの弾性要素に力またはトルクを加えるヒゲゼンマイ調節デバイスと互換性のあるインデックスアセンブリシステムを提供する。
【0018】
より具体的には、可変の力またはトルクが2つのスタッドによって弾性要素に加えられるので、第2のスタッドに対して第1のスタッドを移動させると、2つのスタッド間の弾性要素の剛性が変化する。
【0019】
さらに、そのようなインデックスアセンブリシステムは、使いやすく、時計ムーブメントに取り付けるために大きな変更は必要ない。なぜなら、そのアセンブリは、従来のヒゲゼンマイに通常使用されるインデックスアセンブリシステムのアセンブリとそれほど変わらないためである。
【0020】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、スタッドホルダは、第1のスタッドを設けられた第1の部分と、第2のスタッドを設けられた第2の部分とを備えており、第1の部分は、第1のスタッドを移動させるために、第2の部分に対して順に移動可能である。
【0021】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、第1の部分と第2の部分とが重ね合わされる。
【0022】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、インデックスアセンブリシステムは、第1の部分と協働して、第1の部分が回転すると第1の部分を移動させる、偏心ねじなどの調節手段を備えている。
【0023】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、インデックスアセンブリシステムは、第1の部分に配置されたアームと、アームと協働するカムとを備えており、カムの作動が、第1の部分を第2の部分に対して移動させる。
【0024】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、インデックスアセンブリシステムは、カムに対して第1の部分のアームを保持するために、第1の部分と第2の部分との間に力を加える、ばねなどの戻り手段を備えている。
【0025】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、第2の部分は、プレートに対して不動である。
【0026】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、第1の部分は、第2の部分に対して回転移動可能である。
【0027】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、第1のスタッドは、回転移動可能である。
【0028】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、ヒゲゼンマイは、コイル状ストリップと、ヒゲゼンマイの剛性を調整するための手段とを備えており、調整手段は、弾性要素を備えており、弾性要素は、第1のスタッドと第2のスタッドとの間に配置されており、第1のスタッドの移動が、弾性要素の剛性を変化させる。
【0029】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、調整手段は、可変の力またはトルクを可撓性要素に加えるためのプレストレス手段を備えており、プレストレス手段は、第1のスタッドと第2のスタッドとの間に配置されており、第2のスタッドに対する第1のスタッドの移動が、プレストレス手段を作動させる。
【0030】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、プレストレス手段は、可撓性要素に接続されたレバーを含んでおり、第1のスタッドは、レバーの自由端と一体化される。
【0031】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、可撓性要素は、固定支持体に接合されており、第2のスタッドは、固定支持体と一体化される。
【0032】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、プレストレス手段は、可撓性要素と平行に配置された半剛性構造を含んでおり、レバーは、半剛性構造に接続されている。
【0033】
本発明はさらに、そのような調節部材を備えた時計ムーブメントに関する。
【0034】
本発明はさらに、そのような時計ムーブメントを備えた、たとえば腕時計である計時器に関する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の目的、利点、および特徴は、添付の図面を参照して与えられる、例示のみを目的として提供されており、本発明の範囲を限定することを意図しないいくつかの実施形態を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による、時計ムーブメントの内部に配置されている調節部材の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、テンプコックおよびインデックスアセンブリシステムを除く、
図1における調節部材の第1の実施形態の一部の概略斜視図である。
【
図3】
図3は、調節部材のヒゲゼンマイの概略上面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態による、時計ムーブメントの内部に配置されている調節部材の一部の概略斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の調節部材の第2の実施形態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1および
図2は、時計ムーブメント10の内部に配置された調節部材1の第1の実施形態の概略図を示している。時計ムーブメント10は、プレート21と、慣性質量と、慣性質量を振動させるように構成された慣性質量用の弾性戻り要素と、テンプコック22とを備えている。
【0038】
調節部材1は、インデックスアセンブリシステム20、慣性質量として作用する環状テンプ23、テンプスタッフ24、および弾性戻り要素として作用するヒゲゼンマイ25をさらに備えている。
【0039】
プレート21には、調節部材1を受け入れるための凹部26を設けられており、その内部には、テンプ23、ヒゲゼンマイ25、テンプコック22、およびインデックスアセンブリシステム20が下から上に重ねられる。テンプスタッフ24は、凹部26内部の中心に配置されており、テンプ23、ヒゲゼンマイ25、およびテンプコック22の中心を通過する。テンプスタッフ24は、テンプスタッフ24の両端に配置された2つの耐衝撃軸受28によって保持される。第1の軸受は、凹部26の底部に配置されており、第2の軸受28は、凹部26の上方に配置されており、凹部26の中心軸を通って凹部26の上部を通過するテンプコック22によって保持される。テンプコック22は貫通孔を有しており、その貫通孔内に第2の軸受28が保持される。インデックスアセンブリシステム20は、テンプコック22に取り付けられ、凹部26の中心軸に沿って配置される。
【0040】
図2および
図3に示されるように、ヒゲゼンマイ25は、好ましくは、実質的に1つの面内に延びている。ヒゲゼンマイ25は、それ自体に数回巻き付けられた可撓性ストリップ2を備えており、ストリップ2は、所定の剛性を有している。ストリップ2の内端9は、支持体3と一体的に形成されるか、支持体3と組み立てられる。支持体3は、形状が実質的に三角形であり、テンプスタッフ24の周りにねじ込まれる。
【0041】
ヒゲゼンマイ25は、その剛性を調整するための手段をさらに含んでいる。たとえば、調整手段は、特に、調節部材が時計ムーブメントのプレートに取り付けられているときに、ユーザによって作動される。
【0042】
調整手段は、ストリップ2と直列に配置された可撓性要素5を含んでおり、可撓性要素5は、前記ストリップ2の一端4,9を、固定支持体17に接続しており、ストリップ2の端部4,9のうちの一方と一体化されている。可撓性要素5は、ストリップ2の外端4と一体化されている。弾性要素5は、ストリップ2とは異なる要素である。固定支持体17は、プレート21に対して固定されている。
【0043】
可撓性要素5は、ストリップ2の剛性に付加的な剛性を加える。可撓性要素5は、好ましくは、ストリップ2よりも高い剛性を有している。この場合、可撓性要素5は、ストリップ2の連続体に配置される。好ましくは、調整手段およびストリップ2は一体的に作られるか、または、たとえばシリコンなどの同じ材料でも作られる。
【0044】
ヒゲゼンマイ25の可撓性要素5は、交差していない屈曲ピボットを備えている。ピボットは、2つの可撓性で、交差していないブレード11,12および剛性部分18を備えている。可撓性ブレード11,12は、一方では固定支持体17に横方向に接合されており、他方では、互いに向かって移動することによって剛性部分18に接合されている。したがって、好ましくは、可撓性ブレード11,12は、剛性部分18から固定支持体17に向かって延びると、互いに離れるように移動する。ストリップ2の外端4は、剛性部分18に接合されている。固定支持体17は、プレート21に対して移動することができない。固定支持体17はL字形状であり、L字形状の第1のアーム46は、可撓性ブレード11,12への接続として機能し、L字形状の第2のアーム47は、交差していないピボットから離れて面しており、これによって、時計ムーブメント10と組み立てることができる。
【0045】
ヒゲゼンマイ25を調整するための手段は、可撓性要素5に可変の力またはトルクを加えるためのプレストレス手段6をさらに含んでいる。このようにしてヒゲゼンマイの剛性を調整できる。トルクまたは力は、プレストレス手段6によって連続的に調整できる。言い換えれば、トルクまたは力は、ポイント値に制限されない。これにより、可撓性要素5の剛性を、高い精度で調整できる。
【0046】
プレストレス手段6は、交差していないピボットの連続体に、剛性部分18の反対側に配置された二次可撓性ブレード19を含んでいる。二次可撓性ブレード19は、外端4でストリップ2に対して接線方向に配置されている。
【0047】
二次可撓性ブレード19は、他端において、ストリップ2の周りに延びている湾曲レバー14に接続されている。レバー14は、二次可撓性ブレード19に接続されるだけでなく、固定支持体17に接合された半剛性構造27に接続されている。レバー14が力またはトルクによって作動されると、半剛性構造27は部分的に変形する。
【0048】
力またはトルクは、レバー14の自由端15に加えられる。したがって、プレストレス手段6のレバー14は、ヒゲゼンマイ25の剛性を変えるように、二次可撓性ブレード19および半剛性構造27を介して力またはトルクを可撓性要素5に伝達する。
【0049】
可変の力またはトルクをヒゲゼンマイ25に加えることができるように、調節部材は、本発明による特定のインデックスアセンブリシステム20を備えている。
【0050】
図1および
図2に示される第1の実施形態では、インデックスアセンブリシステム20は、第1の部分32および第2の部分33の2つの部分のスタッドホルダ31を設けられている。スタッドホルダ31の第1の部分32は、第1のスタッド34を吊るし、スタッドホルダ31の第2の部分33は、第2のスタッド35を設けられている。スタッドホルダ31は、弾性要素5に機械的に接合されるが、ストリップ2をブロックしない。
【0051】
スタッドホルダ31の第1の部分32は、テンプコック22と接触しているスタッドホルダ31の第2の部分33の上に部分的に配置される。インデックスアセンブリシステム20は、2つのねじ36,37を備えている。第1のねじ36は偏心しており、スタッドホルダ31の2つの部分の間で角度を調整できる。第1のねじ36は、第1の部分32および第2の部分33を通過する。第2のねじ37は、インデックスアセンブリシステム20をテンプコック22に固定するために使用される。
【0052】
2つの部分32,33は、第2の軸受28を取り囲んでいる。この目的のために、各部分32,33は、第2の軸受28の周りに配置された中央リング38,39を備えており、2つの中央リング38,39は重ね合わされている。
【0053】
第1の部分32は、中央リング38から半径方向に延びる2つの突起41,42を備えており、第1の突起41は、第1のスタッド34を凹部26内に、下方に保持しており、第2の突起42は、第1のねじ36と協働する円弧形状を有している。
【0054】
第2の部分33は、中央リング39から延びる3つの突起43,44,45を備えている。第1の突起43は、第2のスタッド35を凹部26内に、下方に保持しており、第2の突起44は、第1のねじ36の周りに延びており、第3の突起45は、第2のねじ37と協働する円弧形状を有している。
【0055】
基準配置では、第1のスタッド34および第2のスタッド35は、たとえば、テンプのスタッフ24に対して実質的に対称に配置されている。
【0056】
第1のスタッド34は、レバー14の自由端15と協働し、第2のスタッド35は、固定支持体17の第2のアーム47と協働する。このようにして、プレストレス手段6および弾性要素5は、それらが吊り下げられているインデックスアセンブリシステム20によって支持される。
【0057】
2つのスタッド34,35は、プレストレス手段6および弾性要素5のいずれかの側に配置されている。さらに、2つのスタッド34,35は、レバー14および固定支持体17にしっかりと接合されている。言い換えれば、第1のスタッド34および第2のスタッド35は、レバー14および固定支持体17とそれぞれ一体化されている。スタッドおよびヒゲゼンマイ25は、たとえば、接着、ろう付け、溶接によって、金属ガラスの変形によって、または機械的締結によって組み立てられる。
【0058】
第1のスタッド34は、第2のスタッド35に対して移動可能である。この目的のために、第1の部分32は、第2の部分33に対して移動可能である。第1の部分32は、第2の軸受28の周りを回転移動可能である。したがって、第1のスタッド34は、第1の部分32とともに移動し、第1のスタッド34は、第2の軸受28の周りを回転移動可能である。たとえば、第1のスタッド34は、20°または10°の角度範囲にわたって移動できる。
【0059】
第2のスタッド35に対する第1のスタッド34の移動は、その移動がプレストレス手段6のレバー14に及ぼす力またはトルクの増減に応じて、弾性要素5の剛性を変化させることで、弾性要素5の剛性が変動し、ひいては、ヒゲゼンマイ25全体の剛性が変動する。したがって、インデックスアセンブリシステム20を使用して、調節部材1の歩度を調節できる。
【0060】
この目的のために、調節部材1は、第2のスタッド35に対する第1のスタッド34の位置を変化させるための調整手段30を含んでいる。第1のスタッド34および第2のスタッド35は、調整手段30に接続されている。
【0061】
調整手段30は、第1の部分32の第2の弧状突起42と、第1の偏心ねじ36とを備えている。円弧は、第1のねじ36の頭部と実質的に同じ直径を有し、第1のねじ36の移動によって、第2の突起42、したがって第1の部分32が、第2の部分33に対して、第2の軸受28の周りを円を描くように移動するようになる一方、第2の部分33は、第1の部分32が作動されるとき、所定の位置に留まる。したがって、第1のねじ36を回転させることによって、第2の弧状突起42は、第2の軸受28の周りを円運動する。第1の部分32は、第2の部分33に対して移動し、その結果、第1のスタッド34が、第2のスタッド35に対して移動し、ヒゲゼンマイ25のプレストレス手段6に加えられる力またはトルクを変化させる。
【0062】
第2の弧状突起42には、第1の偏心ねじ36の周囲に調節マーク29が配置される。したがって、インデックスアセンブリシステム20を調節するために、第1のねじ36は、優先マークに従って配向される。
【0063】
図4および
図5の調節部材40の第2の実施形態では、調節部材40の特徴は、インデックスアセンブリシステム60の調整手段50を除いて、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0064】
インデックスアセンブリシステム60の第1の部分52は、単一平面内で第1の部分52から半径方向外向きに延びるアーム63を備えている。第2の部分53は、2つの突起のみを備えており、第2のねじ37と協働する弧状突起を備えていない。
【0065】
調整手段50は、第1のねじの代わりに回転移動可能であるカム55を含んでいる。カム55は、第1の部分52のアーム63と協働して、第1の部分52を第2の軸受28の周りで回転させる。アーム63の端部56は、カム55の角度位置に応じて、カム55の回転がアーム63の移動をもたらすように、常にカム55と接触している。したがって、インデックスアセンブリシステム60の第1の部分52は、第1の実施形態と同様の方式で移動する。カム55を設けられたそのような調整手段50により、ヒゲゼンマイ25の剛性を直線的に変動させることができる。
【0066】
第1の部分52のアーム63をカム55と接触させた状態に維持するために、調整手段50は、第1の部分52に戻り力を加えるばね57を含んでいる。ばね57は、第2のねじ37を取り囲む実質的にU字形状であり、U字形状の第1の端部58は、インデックスアセンブリシステム20の第2の部分53と組み立てられており、U字形状の第2の端部59は、第1の部分52に配置された保持フック61によって保持されている。ばね57は、第2の軸受28に対してカム55と対称に、テンプコック22に配置される。ばね57は、テンプコック22上に組み立てられたカバー62によって覆われ、テンプコック22を所定の位置に保持する。
【0067】
したがって、ばね57は、インデックスアセンブリシステム60の2つの部分52,53に戻り力を及ぼし、戻り力は、カム55と接触した第1の部分52のアーム63を常に保持するように設計されている。カム55が作動すると、第1の部分52が回転して、第1のスタッド34を第2のスタッド35に対して移動させる一方で、ばね57によって及ぼされる戻り力を受けて、特に、カム55の周壁64がアーム63から離れて移動するとき、第1の部分52のアーム63が、カム55と接触することを可能にする。
【0068】
言うまでもなく、本発明は、図面を参照して説明した調節部材の実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく代替案を考慮できる。
【符号の説明】
【0069】
1 調節部材
2 ストリップ
3 支持体
4 外端
5 弾性要素、可撓性要素
6 プレストレス手段
9 内端
10 時計ムーブメント
11 可撓性ブレード
12 可撓性ブレード
14 レバー
15 自由端
17 固定支持体
18 剛性部分
19 二次可撓性ブレード
20 インデックスアセンブリシステム
21 プレート
22 テンプコック
23 テンプ
24 テンプスタッフ
25 ヒゲゼンマイ
26 凹部
27 半剛性構造
28 軸受
29 調節マーク
30 調整手段
31 スタッドホルダ
32 第1の部分
33 第2の部分
34 第1のスタッド
35 第2のスタッド
36 第1のねじ、偏心ねじ
37 第2のねじ
38 中央リング
39 中央リング
40 調節部材
41 第1の突起
42 第2の突起
43 第1の突起
44 第2の突起
45 第3の突起
46 第1のアーム
47 第2のアーム
50 調整手段
52 第1の部分
53 第2の部分
55 カム
56 端部
57 ばね
58 第1の端部
59 第2の端部
60 インデックスアセンブリシステム
61 保持フック
62 カバー
63 アーム
64 周壁