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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20241018BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20241018BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241018BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241018BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G06F3/041 412
G06F3/041 495
G06F3/044 124
G06F3/041 400
H01L29/78 618B
G09F9/30 338
G09F9/00 366A
G09F9/30 349Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023217570
(22)【出願日】2023-12-25
(62)【分割の表示】P 2022063490の分割
【原出願日】2016-04-08
(65)【公開番号】P2024036326
(43)【公開日】2024-03-15
【審査請求日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2015081455
(32)【優先日】2015-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】木村 肇
(72)【発明者】
【氏名】神長 正美
(72)【発明者】
【氏名】保坂 泰靖
(72)【発明者】
【氏名】後藤 尚人
(72)【発明者】
【氏名】井口 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
【審査官】酒井 保
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-517051(JP,A)
【文献】特開2014-222764(JP,A)
【文献】特開2014-199907(JP,A)
【文献】特開2014-206984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0147724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
H01L 29/786
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間の液晶と、前記第1の基板の前記第2の基板に対向する面側に設けられたスペーサと、を有し、
前記第1の基板上に、
トランジスタと、前記トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方に電気的に接続された画素電極と、を有する画素回路を複数と、
タッチセンサの複数の第1の電極と、
前記タッチセンサの複数の第2の電極と、
前記第1の電極と電気的に接続される配線と、を有し、
前記トランジスタは、ゲート電極と、チャネル形成領域を有する半導体膜と、前記半導体膜に電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極と、を有しており、
前記半導体膜上、前記ソース電極上、及び前記ドレイン電極上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に接するように設けられた、第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜と、
前記第1の金属酸化物膜上、前記第2の金属酸化物膜上に設けられた第2の絶縁膜と、を有し、
前記画素電極は、前記第2の絶縁膜上に接するように設けられ、
前記スペーサは、前記第2の絶縁膜上に接するように設けられ、
前記第1の金属酸化物膜は、前記第1の電極として機能し、
前記第2の金属酸化物膜は、前記第2の電極として機能し、
前記配線は、アルミニウム膜を有し、
平面視において、前記配線は、第1の方向に延びて配置され、
平面視において、前記第2の電極は、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びて配置され、
平面視において、前記配線は、複数の前記第1の電極うち前記第2の方向に隣接する第1の電極の間の領域と重なるように配置される、半導体装置。
【請求項2】
第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間の液晶と、前記第1の基板の前記第2の基板に対向する面側に設けられたスペーサと、を有し、
前記第1の基板上に、
トランジスタと、前記トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方に電気的に接続された画素電極と、を有する画素回路を複数と、
タッチセンサの複数の第1の電極と、
前記タッチセンサの複数の第2の電極と、
前記第1の電極と電気的に接続される配線と、を有し、
前記トランジスタは、ゲート電極と、チャネル形成領域を有する半導体膜と、前記半導体膜に電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極と、を有しており、
前記半導体膜上、前記ソース電極上、及び前記ドレイン電極上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に接するように設けられた、第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜と、
前記第1の金属酸化物膜上、前記第2の金属酸化物膜上に設けられた第2の絶縁膜と、を有し、
前記画素電極は、前記第2の絶縁膜上に接するように設けられ、
前記スペーサは、前記第2の絶縁膜上に接するように設けられ、
前記第1の金属酸化物膜は、前記第1の電極として機能し、
前記第2の金属酸化物膜は、前記第2の電極として機能し、
前記配線は、アルミニウム膜を有し、
平面視において、前記配線は、第1の方向に延びて配置され、
平面視において、前記第2の電極は、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びて配置され、
平面視において、前記配線は、複数の前記第1の電極うち前記第2の方向に隣接する第1の電極の間の領域と重なり、且つ、前記第2の基板に配置された遮光膜と重なりを有するように配置される、半導体装置。
【請求項3】
第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間の液晶と、前記第1の基板の前記第2の基板に対向する面側に設けられたスペーサと、を有し、
前記第1の基板上に、
トランジスタと、前記トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方に電気的に接続された画素電極と、を有する画素回路を複数と、
タッチセンサの複数の第1の電極と、
前記タッチセンサの複数の第2の電極と、
前記第1の電極と電気的に接続される配線と、を有し、
前記トランジスタは、ゲート電極と、チャネル形成領域を有する半導体膜と、前記半導体膜に電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極と、を有しており、
前記半導体膜上、前記ソース電極上、及び前記ドレイン電極上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に接するように設けられた、第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜と、
前記第1の金属酸化物膜上、前記第2の金属酸化物膜上に設けられた第2の絶縁膜と、を有し、
前記画素電極は、前記第2の絶縁膜上に接するように設けられ、
前記スペーサは、前記第2の絶縁膜上に接するように設けられ、
前記第1の金属酸化物膜は、前記第1の電極として機能し、
前記第2の金属酸化物膜は、前記第2の電極として機能し、
前記配線は、アルミニウム膜を有し、
平面視において、前記配線は、第1の方向に延びて配置され、
平面視において、前記第2の電極は、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びて配置され、
平面視において、前記配線は、複数の前記第1の電極うち前記第2の方向に隣接する第1の電極の間の領域と重なり、且つ、複数の前記画素回路のうち隣接する画素回路の前記画素電極の間の領域と重なり、且つ、前記第2の基板に配置された遮光膜と重なりを有するように配置される、半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記スペーサは、前記ソース電極または前記ドレイン電極の他方と重なる領域を有する、半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記半導体膜は、酸化物半導体を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置に関する。または、本発明の一態様は、タッチパネルに
関する。または、本発明の一態様は、表示装置に関する。または、本発明の一態様は、入
出力装置に関する。または、本発明の一態様は、入力装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明
の一態様は、物、方法、又は、製造方法に関する。本発明の一態様は、プロセス、マシン
、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。そのた
め、より具体的に本明細書等で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置
、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置、入出力装
置、それらの駆動方法、又は、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる
装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶
装置は、半導体装置の一態様である。撮像装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、入
力装置、入出力装置、電気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含
む)、及び電子機器は、半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
液晶表示装置や発光表示装置に代表されるフラットパネルディスプレイの多くに用いら
れているトランジスタは、ガラス基板上に形成されたアモルファスシリコン、単結晶シリ
コン又は多結晶シリコンなどのシリコン半導体によって構成されている。また、該シリコ
ン半導体を用いたトランジスタは、集積回路(IC)などにも利用されている。
【0005】
近年、シリコン半導体に代わって、半導体特性を示す金属酸化物をトランジスタに用い
る技術が注目されている。なお、本明細書中では、半導体特性を示す金属酸化物を酸化物
半導体とよぶことにする。例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛、またはIn-Ga-
Zn系酸化物を用いたトランジスタを作製し、該トランジスタを表示装置の画素のスイッ
チング素子などに用いる技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。また
、様々なタッチセンサが開発されている(特許文献3乃至特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-123861号公報
【文献】特開2007-96055号公報
【文献】特開2011-197685号公報
【文献】特開2014-44537号公報
【文献】特開2014-178847号公報
【文献】米国特許第7920129号明細書
【文献】特開2009-244958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、導電性を有する酸化物半導体膜を備えたタッチパネルを提供するこ
とを課題の一とする。または、構成が簡素化したタッチパネルを提供することを課題の一
とする。または、新規な入力装置を提供することを課題の一とする。または、新規な入出
力装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、トランジスタと、第2の絶縁膜と、タッチセンサと、を有する半導
体装置であって、トランジスタは、ゲート電極と、ゲート電極に接して設けられたゲート
絶縁膜と、ゲート絶縁膜に接して設けられ、ゲート電極と重畳する位置に設けられた第1
の酸化物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜に電気的に接続されたソース電極及びドレイ
ン電極と、第1の酸化物半導体膜、ソース電極、及びドレイン電極上に設けられた第1の
絶縁膜と、第1の絶縁膜上に、第1の酸化物半導体膜と重畳する位置に設けられた第2の
酸化物半導体膜と、を有し、第2の絶縁膜は、第2の酸化物半導体膜が第1の絶縁膜と第
2の絶縁膜とによって挟持されるように、第2の酸化物半導体膜上に設けられ、タッチセ
ンサは、第1の電極と、第2の電極と、を有し、第1の電極及び第2の電極のいずれか一
方が、第3の酸化物半導体膜を含み、第2の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜
は同時に形成される、半導体装置である。
【0009】
上記において、第2の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜の厚さが、30nm
以上70nm以下であることが好ましい。
【0010】
また、第1の酸化物半導体膜、第2の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜は、
In-M-Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、Snまた
はHfを表す)である上記の半導体装置も、本発明の一態様である。
【0011】
また、第1の絶縁膜は、酸素を含み、第2の絶縁膜は、水素を含む上記の半導体装置も
、本発明の一態様である。
【0012】
また、一対の電極間に第2の絶縁膜を含む容量素子を有し、容量素子は、可視光におい
て透光性を有し、容量素子の一対の電極の一方が、第3の酸化物半導体膜を含む上記の半
導体装置も本発明の一態様である。
【0013】
また、第1の電極及び第2の電極が、第3の酸化物半導体膜を含む上記の半導体装置も
、本発明の一態様である。
【0014】
また、上記に記載の半導体装置と、導電膜と、液晶素子と、を有するタッチパネルであ
って、導電膜は画素電極としての機能を有し、第3の酸化物半導体膜はコモン電極として
の機能を有し、容量素子の一対の電極の他方が導電膜を含むタッチパネルも本発明の一態
様である。
【0015】
また、上記に記載の半導体装置と、発光素子と、を有するタッチパネルであって、発光
素子は、下部電極と、上部電極と、下部電極および上部電極に挟持されたEL層と、を備
えるタッチパネルも本発明の一態様である。
【0016】
また、第1の電極及び第2の電極が、第3の酸化物半導体膜を含む上記のタッチパネル
も、本発明の一態様である。
【0017】
また、第1の電極及び第2の電極のいずれか他方が、上部電極を含む上記のタッチパネ
ルも、本発明の一態様である。
【0018】
また、上記に記載の半導体装置と、スイッチ、スピーカ、表示部または筐体と、を有す
る電子機器も本発明の一態様である。
【0019】
また、上記に記載のタッチパネルと、スイッチ、スピーカ、表示部または筐体と、を有
する電子機器も本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、導電性を有する酸化物半導体膜を備えたタッチパネルを提供
することができる。または、構成が簡素化したタッチパネルを提供することができる。ま
たは、新規な入力装置を提供することができる。または、新規な入出力装置を提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態に係る、タッチセンサのブロック図及びタイミングチャート図。
図2】実施の形態に係る、タッチセンサを備える画素を説明する図。
図3】実施の形態に係る、タッチセンサを備える画素を説明する図。
図4】実施の形態に係る、タッチセンサを備える画素を説明する図。
図5】実施の形態に係る、タッチセンサ及び画素の動作を説明する図。
図6】実施の形態に係る、タッチパネルの方式を示す断面概略図。
図7】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す斜視図。
図8】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す断面図。
図9】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す断面図。
図10】実施の形態に係る、タッチセンサ電極の構成を示す上面図。
図11】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す断面図。
図12】実施の形態に係る、タッチセンサ電極の構成を示す上面図。
図13】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す断面図。
図14】実施の形態に係る、タッチセンサ電極の構成を示す上面図。
図15】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す断面図。
図16】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す断面図。
図17】実施の形態に係る、タッチセンサ電極の構成を示す上面図。
図18】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す断面図。
図19】実施の形態に係る、タッチセンサ電極の構成を示す上面図。
図20】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す断面図。
図21】実施の形態に係る、タッチセンサ電極の構成を示す上面図。
図22】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す断面図。
図23】実施の形態に係る、タッチパネルの一例を示す断面図。
図24】実施の形態に係る、タッチセンサ電極の構成を示す上面図。
図25】実施の形態に係る、トランジスタ等の作製方法を示す断面図。
図26】実施の形態に係る、トランジスタ等の作製方法を示す断面図。
図27】実施の形態に係る、トランジスタ等の作製方法を示す断面図。
図28】実施の形態に係る、トランジスタ等の作製方法を示す断面図。
図29】実施の形態に係る、トランジスタ等の構成を示す断面図。
図30】CAAC-OSの断面におけるCs補正高分解能TEM像、およびCAAC-OSの断面模式図。
図31】CAAC-OSの平面におけるCs補正高分解能TEM像。
図32】CAAC-OSおよび単結晶酸化物半導体のXRDによる構造解析を説明する図。
図33】CAAC-OSの電子回折パターンを示す図。
図34】In-Ga-Zn酸化物の電子照射による結晶部の変化を示す図。
図35】CAAC-OSの成膜方法を説明する図。
図36】InMZnOの結晶を説明する図。
図37】CAAC-OSの成膜方法を説明する図。
図38】トランジスタの一例を示す上面図及び断面図。
図39】トランジスタの一例を示す断面図。
図40】バンド構造を説明する図。
図41】トランジスタの一例を示す断面図。
図42】発光素子の構成例を説明する図。
図43】実施の形態に係る表示モジュールを説明する図。
図44】実施の形態に係る電子機器を説明する図。
図45】実施の形態に係る電子機器を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定
されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更
し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態
の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には
同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様
の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0024】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、
明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されな
い。
【0025】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避ける
ために付すものであり、数的に限定するものではない。
【0026】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、互いに入れ替えることが可能であ
る場合がある。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更すること
や、「絶縁層」という用語を、「絶縁膜」という用語に変更することが可能な場合がある
【0027】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が
十分に低い場合は、「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「
絶縁体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書
等に記載の「半導体」は、「絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本
明細書等に記載の「絶縁体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。
【0028】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が
十分に高い場合は、「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「
導電体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書
等に記載の「半導体」は、「導電体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本
明細書等に記載の「導電体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。
【0029】
なお、トランジスタの「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタ
を採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わること
がある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替え
て用いることができるものとする。
【0030】
なお、本明細書等においてパターニングとは、フォトリソグラフィ工程を用いるものと
する。ただし、パターニングは、フォトリソグラフィ工程に限定されず、フォトリソグラ
フィ工程以外の工程を用いることもできる。また、フォトリソグラフィ工程で形成したマ
スクはエッチング処理後除去するものとする。
【0031】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様のタッチセンサまたはタッチパネルの駆動方法、モ
ード、構成例、及び本発明の一態様の半導体装置の構成例について図面を参照して説明す
る。
【0032】
[センサの検出方法の例]
図1(A)は、相互容量方式のタッチセンサの構成を示すブロック図である。図1(A
)では、パルス電圧出力回路601、電流検出回路602を示している。なお図1(A)
では、一例として、パルス電圧が与えられる電極621をX1-X6の6本の配線、電流
の変化を検出する電極622をY1-Y6の6本の配線として示している。なお、電極の
数は、これに限定されない。また図1(A)は、電極621および電極622が重畳する
こと、または、電極621および電極622が近接して配置されることで形成される容量
603を図示している。なお、電極621と電極622とはその機能を互いに置き換えて
もよい。
【0033】
パルス電圧出力回路601は、一例としては、X1-X6の配線に順にパルス電圧を印
加するための回路である。X1-X6の配線にパルス電圧が印加されることで、容量60
3を形成する電極621および電極622の間に電界が生じる。そしてパルス電圧によっ
て容量603に電流が流れる。この電極間に生じる電界が、指やペンなどのタッチによる
遮蔽等により変化する。つまり、指やペンなどのタッチなどにより、容量603の容量値
が変化する。このように、指やペンなどのタッチなどにより、容量値に変化を生じさせる
ことを利用して、被検知体の近接、または接触を検出することができる。
【0034】
電流検出回路602は、容量603での容量値の変化による、Y1-Y6の配線での電
流の変化を検出するための回路である。Y1-Y6の配線では、被検知体の近接、または
接触がないと検出される電流値に変化はないが、検出する被検知体の近接、または接触に
より容量値が減少する場合には電流値が減少する変化を検出する。なお電流の検出は、電
流量の総和を検出してもよい。その場合には、積分回路等を用いて検出を行えばよい。ま
たは、電流のピーク値を検出してもよい。その場合には、電流を電圧に変換して、電圧値
のピーク値を検出してもよい。
【0035】
次いで図1(B)には、図1(A)で示す相互容量方式のタッチセンサにおける入出力
波形のタイミングチャートを示す。図1(B)では、1フレーム期間で各行列での被検知
体の検出を行うものとする。また図1(B)では、被検知体を検出しない場合(非タッチ
)と被検知体を検出する場合(タッチ)との2つの場合について示している。なおY1-
Y6の配線については、検出される電流値に対応する電圧値とした波形を示している。な
お、表示パネルにおいても、表示動作が行われている。この表示パネルの表示動作のタイ
ミングと、タッチセンサの検出動作のタイミングとは、同期させて動作することが望まし
い。なお、図1(B)では、表示動作とは同期させていない場合の例を示す。
【0036】
X1-X6の配線には、順にパルス電圧が与えられ、該パルス電圧にしたがってY1-
Y6の配線での波形が変化する。被検知体の近接または接触がない場合には、X1-X6
の配線の電圧の変化に応じてY1-Y6の波形が一様に変化する。一方、被検知体が近接
または接触する箇所では、電流値が減少するため、これに対応する電圧値の波形も変化す
る。
【0037】
このように、容量値の変化を検出することにより、被検知体の近接または接触を検出す
ることができる。なお、指やペンなどの被検知体は、タッチセンサやタッチパネルに接触
せず、近接した場合でも、信号が検出される場合がある。
【0038】
またパルス電圧出力回路601及び電流検出回路602は、一例としては、1つのIC
の中に形成されていることが好ましい。該ICは、例えばタッチパネルに実装されること
、若しくは電子機器の筐体内の基板に実装されることが好ましい。また可撓性を有するタ
ッチパネルとする場合には、曲げた部分では寄生容量が増大し、ノイズの影響が大きくな
ってしまう恐れがあるため、ノイズの影響を受けにくい駆動方法が適用されたICを用い
ることが好ましい。例えばシグナル-ノイズ比(S/N比)を高める駆動方法が適用され
たICを用いることが好ましい。
【0039】
また、図1(A)ではタッチセンサとして配線の交差部に容量603のみを設けるパッ
シブマトリクス型のタッチセンサの構成を示したが、トランジスタと容量とを備えたアク
ティブマトリクス型のタッチセンサとしてもよい。
【0040】
[インセル型のタッチパネルの構成例]
ここでは、表示素子やトランジスタ等が設けられる基板(以下、素子基板とも記す)上
に、タッチセンサを構成する電極の少なくとも一方を配置する例について説明する。
【0041】
以下では、複数の画素を有する表示部にタッチセンサを組み込んだタッチパネル(いわ
ゆるインセル型)の構成例について説明する。ここでは、画素に設けられる表示素子とし
て、液晶素子を適用した例を示す。ただし、本発明の一態様は、これに限定されず、様々
な表示素子を適用することができる。
【0042】
図2(A)は、本構成例で例示するタッチパネルの表示部に設けられる画素回路の一部
における等価回路図である。
【0043】
一つの画素は少なくともトランジスタ63と液晶素子64を有する。なお、画素はこれ
に加えて保持容量を有する場合もある。またトランジスタ63のゲートに配線61が、ソ
ースまたはドレインの一方には配線62が、それぞれ電気的に接続されている。
【0044】
画素回路は、X方向に延在する複数の配線(例えば、配線72_1、配線72_2)と
、Y方向に延在する複数の配線(例えば、配線71_1、配線71_2)を有し、これら
は互いに交差して設けられている。そして、配線の間に容量が形成される。配線71_1
および配線71_2は、液晶素子64の一方の電極と同一の導電膜を加工して同時に形成
することができる。配線72は素子基板と対向する基板(以下、対向基板とも記す)上に
設けることができる。また、配線72を素子基板上に設けてもよい。
【0045】
また、一例としては、画素回路に設けられる画素のうち、一部の隣接する複数の画素は
、それぞれに設けられる液晶素子64の一方の電極が電気的に接続され、一つのブロック
を形成する。ここでは、Y方向に延在するライン状の複数のブロック(例えば、ブロック
65_1、ブロック65_2)が形成される。なお、図2(A)では、画素回路の一部の
みを示しているが、実際にはこれらのブロックがX方向に繰り返し配置される。
【0046】
このような構成とすることで、タッチセンサを構成する電極と、画素回路が有する液晶
素子の一方の電極とを兼ねることができる。図2(A)では、配線71_1、配線71_
2は、液晶素子の一方の電極と、タッチセンサを構成する電極とを兼ねている。一方、配
線72_1、配線72_2は、タッチセンサを構成する電極として機能している。そのた
めタッチパネルの構成を簡略化できる。なお、図2(A)では、Y方向に延在する複数の
配線(例えば、配線71_1、配線71_2)が、液晶素子の一方の電極と、タッチセン
サを構成する電極とを兼ねていたが、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、
X方向に延在する複数の配線(例えば、配線72_1、配線72_2)が、液晶素子の一
方の電極と、タッチセンサを構成する電極とを兼ねていてもよい。その場合の回路図の例
を、図2(B)に示す。
【0047】
また、図3に示すように、液晶素子64の一方の電極と電気的に接続する複数の配線(
例えば、配線66_1乃至配線66_4)を有する構成としてもよい。図3においては、
Y方向に延在するライン状の複数のブロック(例えば、ブロック65_1、ブロック65
_2)が形成される。これらのブロック65がX方向に繰り返し配置される。また、Y方
向に延在するライン状の複数のブロックをまたいでX方向に延在するライン状の複数のブ
ロック(例えば、ブロック67_1乃至ブロック67_4)が形成される。これらのブロ
ック67がY方向に繰り返し配置される。配線66_1乃至配線66_4を、配線61と
同一の導電膜を加工して同時に形成することでタッチパネルの作製工程を簡略化できる。
【0048】
なお、図2(A)、(B)および図3では、表示素子として、液晶素子を適用した例を示
したが、本発明の一態様は、これに限定されない。表示素子として、発光素子を適用した
場合の例を、図4(A)、(B)に示す。
【0049】
図5(A)は、X方向に延在する複数の配線72と、Y方向に延在する複数の配線71
の接続構成を示した等価回路図である。なお、タッチセンサが、投影型であり、相互容量
方式である場合を示している。Y方向に延在する配線71の各々には、入力電圧(または
、選択電圧)または共通電位(または、接地電位、もしくは、基準となる電位)を入力す
ることができる。また、X方向に延在する配線72の各々には接地電位(または、基準と
なる電位)を入力する、または配線72と検出回路と電気的に接続することができる。な
お、配線71と配線72とは入れ替えることが可能である。つまり、配線71と検出回路
とを接続してもよい。
【0050】
以下、図5(B)、(C)を用いて、上述したタッチパネルの動作について説明する。
【0051】
ここでは一例として、1フレーム期間を、書き込み期間と検出期間とに分ける。書き込
み期間は画素への画像データの書き込みを行う期間であり、配線72(ゲート線、または
走査線ともいう)が順次選択される。一方、検出期間は、タッチセンサによるセンシング
を行う期間であり、Y方向に延在する配線71が順次選択され、入力電圧が入力される。
【0052】
図5(B)は、書き込み期間における等価回路図である。書き込み期間では、X方向に
延在する配線72と、Y方向に延在する配線71の両方に、共通電位が入力される。
【0053】
図5(C)は、検出期間のある時点における等価回路図である。検出期間では、Y方向
に延在する配線71の各々には入力電圧が入力される。また、X方向に延在する配線72
のうち、選択されたものは検出回路と導通し、それ以外のものには共通電位が入力される
【0054】
なお、ここで例示した駆動方法は、インセル方式だけでなくその他のタッチパネルにも
適用することができる。
【0055】
このように、画像の書き込み期間とタッチセンサによるセンシングを行う期間とを、独
立して設けることが好ましい。例えば、表示の帰線期間にセンシングを行うことが好まし
い。これにより、画素の書き込み時のノイズに起因するタッチセンサの感度の低下を抑制
することができる。
【0056】
[タッチパネルの方式について]
以下では、本発明の一態様のタッチパネルに適用可能ないくつかの方式について説明す
る。
【0057】
なお、本明細書等において、タッチパネルは表示面に画像等を表示(出力)する機能と
、表示面に指やスタイラスなどの被検知体が触れる、または近接することを検出するタッ
チセンサとしての機能と、を有する。したがってタッチパネルは入出力装置の一態様であ
る。
【0058】
また、本明細書等では、タッチパネルの基板に、例えばFPC(Flexible P
rinted Circuit)もしくはTCP(Tape Carrier Pack
age)などのコネクターが取り付けられたもの、または基板にCOG(Chip On
Glass)方式によりIC(集積回路)が実装されたものを、タッチパネルモジュー
ル、表示モジュール、または単にタッチパネルと呼ぶ場合がある。
【0059】
本発明の一態様に適用できる静電容量方式のタッチセンサは、一対の導電膜を備える。
一対の導電膜間には容量が形成されている。一対の導電膜に被検知体が触れる、または近
接することにより一対の導電膜間の容量の大きさが変化することを利用して、検出を行う
ことができる。
【0060】
静電容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。投影型静
電容量方式としては、主に駆動方式の違いから、自己容量方式、相互容量方式などがある
。相互容量方式を用いると、同時多点検出が可能となるため好ましい。
【0061】
また、本発明の一態様のタッチパネルが有する表示素子としては、液晶素子(縦電界方
式、または、横電界方式)、MEMS(Micro Electro Mechanic
al Systems)を利用した光学素子、有機EL(Electro Lumine
scence)素子や発光ダイオード(LED:Light Emitting Dio
de)等の発光素子、電気泳動素子など、様々な表示素子を用いることができる。
【0062】
ここで、タッチパネルには表示素子として横電界方式が適用された液晶素子を用いた透
過型の液晶表示装置を適用することが好ましい。
【0063】
本発明の一態様のタッチパネルは、一対の基板のいずれか一方または両方にタッチセン
サを構成する一対の電極(導電膜または配線ともいう)を有することにより、表示パネル
とタッチセンサとが一体となった構成を有する。そのため、タッチパネルの厚さが低減さ
れ、軽量なタッチパネルを実現できる。
【0064】
図6(A)は、本発明の一態様のタッチパネル10のモードを説明する断面概略図であ
る。
【0065】
タッチパネル10は、基板11、基板12、FPC13、導電膜14、液晶素子20、
着色膜31、導電膜41等を有する。
【0066】
液晶素子20は、導電膜21、導電膜22及び液晶23により構成される。ここでは液
晶素子20としてFFS(Fringe Field Switching)モードが適
用された液晶素子を用いた場合の例を示している。導電膜21上には絶縁膜24を介して
導電膜22が配置されている。導電膜22は一例として櫛歯状の上面形状、またはスリッ
トが設けられた上面形状(平面形状ともいう)を有する。導電膜21および導電膜22は
、一方がコモン電極として機能し、他方が画素電極として機能する。なお、表示素子とし
て、発光素子などを用いる場合には、一例としては、導電膜22は、櫛歯状の上面形状、
または、スリットが設けられた上面形状を、有していない。
【0067】
タッチセンサは、基板12側に設けられた導電膜41と、液晶素子20の一対の電極の
一方として機能する導電膜21との間に形成される容量を利用して検出することができる
。このような構成とすることで、液晶素子20の一方の電極を、タッチセンサの一対の電
極の一方と兼ねることができる。よって、工程を簡略化することができるため歩留りが向
上でき、また製造コストを低減することができる。なお、導電膜41は基板12の表示面
側(基板11と反対側)の面に設けられる。また、導電膜41は、基板12側に設けられ
たFPC43と電気的に接続される。導電膜21は、導電膜14を介して基板11側に取
り付けられたFPC13と電気的に接続する。
【0068】
図6(B)に示すタッチパネル10は、導電膜41およびFPC43を設けない構成で
ある。液晶素子20のコモン電極として機能する導電膜21a及び導電膜21bが、タッ
チセンサの一対の電極としても機能する。このような構成とすることで、図6(A)に示
す構成よりもさらに工程を簡略化することができる。なお、導電膜21aは、導電膜14
を介してFPC13と電気的に接続し、導電膜21bは、図示しない導電膜を介してFP
C13と電気的に接続する。
【0069】
なお、図6(A)、(B)は液晶素子20を構成する一対の電極のうち、下層に位置す
る電極(導電膜21、21a、21b)がコモン電極である例を示しているが、これに限
られない。図6(A)、(B)のそれぞれについて、液晶素子20を構成する一対の電極
のうち、上層に位置する電極(導電膜22)がコモン電極である例を図6(C)、(D)
に示す。
【0070】
以上がタッチパネルの方式についての説明である。
【0071】
[構成例1]
以下では、タッチパネルのより具体的な構成例について説明する。
【0072】
図7(A)は、本発明の一態様のタッチパネル310の斜視概略図である。また図7
B)、(C)は、図7(A)を展開した斜視概略図である。図7(B)は対向基板側の斜
視概略図であり、図7(C)は素子基板側の斜視概略図である。なお明瞭化のため、代表
的な構成要素のみを示している。
【0073】
タッチパネル310は、対向して設けられた基板102と基板372とを有する。
【0074】
基板102上には、表示部381、駆動回路382、配線386、駆動回路384等が
設けられている(図7(C)参照)。また表示部381には、酸化物半導体膜111が形
成されている。基板102には、配線386と電気的に接続されるFPC373が設けら
れている。また図7(A)、(C)では、FPC373上にIC374が設けられている
例を示している。
【0075】
また基板372の基板102と対向する面と反対側には、複数の導電膜334、複数の
導電膜335、複数の導電膜341等が形成されている(図7(B)参照)。導電膜34
1は複数の導電膜334のいずれかと電気的に接続する。基板372には、複数の導電膜
341と電気的に接続されるFPC375が設けられている。
【0076】
導電膜335は、2つの導電膜334の間に配置される。導電膜335を設けることで
導電膜334が設けられている領域と設けられていない領域の間で透過率に差が生じるこ
とを抑制する機能を有する。また導電膜335は電気的にフローティングであることが好
ましい。これにより、導電膜335を介して、導電膜334及び酸化物半導体膜111の
一方の電位の変化を他方に効率よく伝達することができ、検出感度を高めることができる
。なお導電膜335は不要である場合には設けなくてもよい。
【0077】
表示部381は、少なくとも複数の画素を有する(図7(C)参照)。画素は、少なく
とも一つの表示素子を有する。また、画素は、トランジスタ及び表示素子を備えることが
好ましい。表示素子としては、代表的には有機EL素子などの発光素子や液晶素子などを
用いることができる。本構成例では、表示素子として液晶素子を用いた例を示す。
【0078】
駆動回路382は、例えば走査線駆動回路、信号線駆動回路等として機能する回路を用
いることができる。
【0079】
配線386は、表示部381や駆動回路382に信号や電力を供給する機能を有する。
当該信号や電力は、FPC373を介して外部、またはIC374から配線386に入力
される。
【0080】
駆動回路384は、酸化物半導体膜111を順次選択する機能を有する。または、酸化
物半導体膜111ではなく導電膜334を順次選択することによりタッチセンサを駆動す
る場合には、駆動回路384は、固定電位とセンシングに用いる信号とを切り替えて酸化
物半導体膜111に供給する機能を有する。なお、IC374や外部によりタッチセンサ
を駆動する信号が供給される場合には、駆動回路384を設けなくてもよい。
【0081】
また、図7(A)乃至(C)では、FPC373上にCOF(Chip On Fil
m)方式により実装されたIC374が設けられている例を示している。IC374とし
て、例えば走査線駆動回路、または信号線駆動回路などとしての機能を有するICを適用
できる。なおタッチパネル310が走査線駆動回路及び信号線駆動回路として機能する回
路を備える場合や、走査線駆動回路や信号線駆動回路として機能する回路を外部に設け、
FPC373を介して表示部381を駆動するための信号を入力する場合などでは、IC
374を設けない構成としてもよい。また、IC374を、COG(Chip On G
lass)方式等により、基板102に直接実装してもよい。
【0082】
またこのとき、IC374はタッチセンサを駆動する機能を有していてもよいし、タッ
チセンサを駆動するICをさらに設けてもよい。または、タッチセンサを駆動するICを
基板102上に実装してもよい。
【0083】
タッチセンサは、基板372に設けられた導電膜334と、基板102に設けられた酸
化物半導体膜111と、により構成される。導電膜334と酸化物半導体膜111の間に
形成される容量を利用して、被検知体の近接または接触を検出することができる。
【0084】
〔断面構成例1〕
以下では、本発明の一態様のタッチパネルの断面構成の例について、図面を参照して説
明する。
【0085】
図8はタッチパネル310の断面概略図である。図8では、図7(A)におけるFPC
373、375を含む領域、駆動回路382を含む領域、表示部381を含む領域のそれ
ぞれの断面を示している。
【0086】
基板102と、基板372とは、シール材151によって貼り合わされている。また基
板102、基板372、及びシール材151に囲まれた領域に、液晶353が封止されて
いる。
【0087】
図8に示すタッチパネル310は、表示部381において、酸化物半導体膜110を含
むトランジスタ150と、一対の電極間に絶縁膜を含む容量素子160と、を有する。な
お、容量素子160において、一対の電極の一方が酸化物半導体膜111であり、一対の
電極の他方が導電膜120である。
【0088】
トランジスタ150は、基板102上のゲート電極104と、ゲート電極104上のゲ
ート絶縁膜として機能する絶縁膜108と、絶縁膜108上のゲート電極104と重畳す
る位置の酸化物半導体膜110と、酸化物半導体膜110上のソース電極112a及びド
レイン電極112bとを有する。別言すると、トランジスタ150は、酸化物半導体膜1
10と、酸化物半導体膜110に接して設けられたゲート絶縁膜として機能する絶縁膜1
08と、絶縁膜108に接して設けられ、酸化物半導体膜110と重畳する位置に設けら
れたゲート電極104と、酸化物半導体膜110と電気的に接続されたソース電極112
a及びドレイン電極112bとを有する。
【0089】
また、トランジスタ150上、より詳しくは、酸化物半導体膜110、ソース電極11
2a及びドレイン電極112b上に絶縁膜114、116、118、119が形成されて
いる。絶縁膜114、116、118は、トランジスタ150の保護絶縁膜としての機能
を有する。絶縁膜119は平坦化膜としての機能を有する。また、絶縁膜114、116
、118,119には、ドレイン電極112bに達する開口が形成されており、開口を覆
うように絶縁膜119上に導電膜120が形成されている。導電膜120は、画素電極と
しての機能を有する。なお、絶縁膜119を設けない構成としてもよい。
【0090】
容量素子160は、絶縁膜116上に設けられる。容量素子160は、一対の電極の一
方の電極としての機能を有する酸化物半導体膜111と、酸化物半導体膜111上の誘電
体膜として機能する絶縁膜118、119と、絶縁膜118、119を介して酸化物半導
体膜111と重畳する位置にある一対の電極の他方の電極としての機能を有する導電膜1
20と、を有する。すなわち、導電膜120は画素電極としての機能と容量素子の電極と
しての機能を有する。なお、酸化物半導体膜111の膜厚は、膜の厚さ方向において抵抗
率に偏りが生じない程度の厚さであることが好ましい。具体的には、30nm以上70n
m以下であることが好ましく、50nm以上70nm以下であることがさらに好ましい。
【0091】
また、図8に示すタッチパネル310は、表示部381においてタッチセンサを有する
。該タッチセンサは一対の電極として、酸化物半導体膜111と、基板372上に設けら
れた導電膜334と、を有する。トランジスタ150、容量素子160及び該タッチセン
サをまとめて半導体装置と呼ぶことができる。また、トランジスタ150及び該タッチセ
ンサをまとめて半導体装置と呼ぶこともできる。なお、補助電極として、酸化物半導体膜
111に接して導電膜を設けてもよい。例えば、ゲート電極104またはソース電極11
2a、ドレイン電極112bと同様の材料を用いて、遮光膜332と重畳する位置に導電
膜を設けてもよい。該補助電極を遮光膜332と重ねて設けることで、画素の開口率を維
持しつつタッチセンサの検出に伴う信号伝達の遅延を抑制することができる。
【0092】
なお、酸化物半導体膜110は、トランジスタ150のチャネル領域として機能する。
また、酸化物半導体膜111は、容量素子160の一対の電極の一方の電極として機能す
る。よって、酸化物半導体膜110よりも酸化物半導体膜111の抵抗率が低い。また、
酸化物半導体膜110と酸化物半導体膜111は、同一の金属元素を有すると好ましい。
酸化物半導体膜110と酸化物半導体膜111を同一の金属元素を有する構成とすること
で、製造装置(例えば、成膜装置、加工装置等)を共通に用いることが可能となるため、
製造コストを抑制することができる。
【0093】
また、容量素子160は、透光性を有する。すなわち、容量素子160が有する、酸化
物半導体膜111、導電膜120、及び絶縁膜118、119は、それぞれ透光性を有す
る材料により構成される。このように、容量素子160が透光性を有することで、画素内
のトランジスタが形成される箇所以外の領域に大きく(大面積に)形成することができる
ため、開口率を高めつつ容量値を増大させたタッチパネルとすることができる。この結果
、表示品位の優れたタッチパネルを得ることができる。
【0094】
なお、トランジスタ150上に設けられかつ容量素子160に用いられる絶縁膜118
としては、少なくとも水素を含む絶縁膜を用いる。また、トランジスタ150に用いる絶
縁膜107、並びにトランジスタ150上に設けられる絶縁膜114、116としては、
少なくとも酸素を含む絶縁膜を用いる。このように、トランジスタ150及び容量素子1
60に用いる絶縁膜、並びにトランジスタ150及び容量素子160上に用いる絶縁膜を
、上述の構成の絶縁膜とすることによって、トランジスタ150が有する酸化物半導体膜
110及び容量素子160が有する酸化物半導体膜111の抵抗率を制御することができ
る。
【0095】
また、容量素子160に用いる絶縁膜、並びにトランジスタ150及び容量素子160
上に用いる絶縁膜を、以下の構成とすることによって、導電膜120の平坦性を高めるこ
とができる。具体的には、絶縁膜114、116は酸化物半導体膜110上に設けられ、
絶縁膜118は、酸化物半導体膜111が絶縁膜116と絶縁膜118とによって挟持さ
れるように酸化物半導体膜111上に設けられることで、酸化物半導体膜111と重なる
位置の絶縁膜114、116に開口を設けずに酸化物半導体膜111の抵抗率を制御する
ことができる。このような構成とすることで、導電膜120上に形成される液晶の配向性
を良好なものとすることができる。
【0096】
なお、図8において、酸化物半導体膜111と同時に成膜し、同時にエッチングして、
同時に形成した酸化物半導体膜111aを酸化物半導体膜110と重なる領域を有するよ
うに設けられている。酸化物半導体膜111aは、トランジスタ150の第2のゲート電
極としての機能を有している。このとき、第2のゲート電極に対するゲート絶縁膜は絶縁
膜114、116となる。別言すると、トランジスタ150は酸化物半導体膜110、ソ
ース電極112aおよびドレイン電極112b上に設けられた絶縁膜114、116と、
絶縁膜114、116上に、酸化物半導体膜110と重畳する位置に設けられた酸化物半
導体膜111aと、を有する。
【0097】
酸化物半導体膜111aは、酸化物半導体膜111と同時に成膜し、同時にエッチング
して、同時に形成することで、プロセス工程の増加を抑制することができる。ただし、本
発明の実施形態の一態様は、これに限定されない。酸化物半導体膜111aは、酸化物半
導体膜111とは異なる工程で形成してもよい。また、酸化物半導体膜111aは、ゲー
ト電極104と接続されていてもよい。または、酸化物半導体膜111aは、ゲート電極
104と接続されずに、ゲート電極104とは異なる信号や異なる電位が供給されていて
もよい。
【0098】
なお、トランジスタ150において、酸化物半導体膜110は、チャネル領域として用
いるため、酸化物半導体膜111と比較して抵抗率が高い。一方で、酸化物半導体膜11
1は電極としての機能を有するため、酸化物半導体膜110と比較して抵抗率が低い。酸
化物半導体膜110及び酸化物半導体膜111の抵抗率の制御方法については後述する。
【0099】
タッチパネル310は、基板102上に、トランジスタ301、トランジスタ150、
接続部306、導電膜317、液晶素子308を構成する導電膜120及び酸化物半導体
膜111等を有する。
【0100】
図8では、表示部381の例として、2つの画素の断面を示している。例えば、画素は
赤色を呈する画素、緑色を呈する画素、青色を呈する画素のいずれかとすることで、フル
カラーの表示を行うことができる。例えば図8に示す表示部381において、画素388
Rは、トランジスタ150と、容量素子160と、液晶素子308と、着色膜331Rと
、を有する。また画素388Gは、図示しないトランジスタと、容量素子160と、液晶
素子308と、着色膜331Gと、を有する。
【0101】
また図8では、駆動回路382の例としてトランジスタ301が設けられている例を示
している。
【0102】
図8では、トランジスタ301及びトランジスタ150の例として、チャネルが形成さ
れる半導体層を2つのゲート電極で挟持する構成を適用した例を示している。このような
トランジスタは他のトランジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、
オン電流を増大させることができる。その結果、高速動作が可能な回路を作製することが
できる。さらには回路部の占有面積を縮小することが可能となる。オン電流の大きなトラ
ンジスタを適用することで、表示パネルまたはタッチパネルを大型化、または高精細化し
たときに配線数が増大したとしても、各配線における信号遅延を低減することが可能であ
り、表示ムラを抑制することが可能である。
【0103】
なお、駆動回路382が有するトランジスタ301と、表示部381が有するトランジ
スタ150は、同じ構造であってもよい。また駆動回路382が有する複数のトランジス
タは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いて
もよい。また、表示部381が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよ
いし、異なる構造のトランジスタを組み合せて用いてもよい。
【0104】
図8には、液晶素子308にFFS(Fringe Field Switching
)モードが適用された液晶素子を用いた場合の例を示している。液晶素子308は、導電
膜120、液晶353、及び酸化物半導体膜111を有する。導電膜120と酸化物半導
体膜111との間に生じる電界により、液晶353の配向を制御することができる。
【0105】
導電膜120は、櫛歯状の上面形状、またはスリットが設けられた上面形状(平面形状
ともいう)を有する。また、酸化物半導体膜111は導電膜120と重ねて配置されてい
る。また着色膜331R等と重なる領域において、酸化物半導体膜111上に導電膜12
0が配置されていない部分を有する。
【0106】
図8では、導電膜120が画素電極として機能し、酸化物半導体膜111がコモン電極
として機能する。なお、上層に設けられ、櫛歯状またはスリット状の上面形状を有する導
電膜120をコモン電極とし、下層に設けられる酸化物半導体膜111を画素電極として
用いてもよい(図9参照)。図9に示すタッチパネル310は、酸化物半導体膜111が
トランジスタ150のドレイン電極112bと電気的に接続されている。このとき、タッ
チパネル310が備えるタッチセンサは、導電膜334及び導電膜120を一対の電極と
して構成される。
【0107】
基板102の端部に近い領域には、接続部306が設けられている。接続部306にお
いては、導電膜317が接続層319を介してFPC373と電気的に接続されている。
図8では、導電膜317の一部と、導電膜120と同一の導電膜を加工して形成した導電
膜とを積層することで接続部306を構成している例を示している。
【0108】
基板372の基板102側の面には、着色膜331R、331G、遮光膜332、絶縁
膜355等が設けられている。また基板372の基板102と反対側の面には、導電膜3
34、導電膜335、導電膜341等が設けられている。
【0109】
導電膜334と導電膜341とは、電気的に接続されている。また、導電膜335は導
電膜334及び導電膜341とは絶縁されている。導電膜334、導電膜341及び導電
膜335は同一の導電膜を加工して同時に形成されていることが好ましい。また、導電膜
334と導電膜341とが一体であってもよい。このとき、少なくとも表示部381と重
なる部分が、タッチセンサの一方の電極として機能する導電膜334に相当し、それ以外
の部分を導電膜341と呼ぶこともできる。
【0110】
ここで、タッチセンサを構成する電極の配置について説明する。図10図8に示すタ
ッチパネル310が有する、一対のタッチセンサ電極の上面模式図である。図10に示す
一点鎖線Z1-Z2は、図8に示す表示部381と対応する。
【0111】
タッチセンサの一方の電極である導電膜334はY方向に延在して設けられている。ま
たタッチセンサの他方の電極である酸化物半導体膜111はX方向に延在し、導電膜33
4と交差する領域を有する。また、導電膜335は導電膜334と同一の導電膜により形
成されることが好ましいが、機能上の違いから導電膜334とは異なるハッチングで示し
ている。導電膜335を電気的にフローティングとすることで導電膜335を介して、導
電膜334及び酸化物半導体膜111の一方の電位の変化を他方に効率よく伝達すること
ができ、タッチセンサの検出感度を高めることができる。
【0112】
着色膜331R、331G及び遮光膜332は、基板372上の基板102側に設けら
れている(図8参照)。また着色膜331R等や遮光膜332を覆って絶縁膜355が設
けられている。
【0113】
絶縁膜355は、着色膜331R等や遮光膜332等に含まれる不純物が液晶353に
拡散することを防ぐオーバーコートとしての機能を有する。
【0114】
スペーサ316は、絶縁膜119上に設けられ、基板102と基板372との距離を調
節する機能を有する。図8ではスペーサ316と基板372側の構造物(例えば絶縁膜3
55等)とが接触している例を示すが、これらが接していなくてもよい。またここではス
ペーサ316が基板102側に設けられている例を示したが、基板372側に設けてもよ
い。例えば、隣接する2つの画素の間に配置すればよい。または、スペーサ316として
粒状のスペーサを用いてもよい。粒状のスペーサとしては、シリカなどの材料を用いるこ
ともできるが、有機樹脂やゴムなどの弾性を有する材料を用いることが好ましい。このと
き、粒状のスペーサは上下方向に潰れた形状となる場合がある。
【0115】
なお、導電膜120、絶縁膜119、絶縁膜355等において、液晶353と接する面
には液晶353の配向を制御するための配向膜が設けられていてもよい。
【0116】
導電膜334および導電膜335の、少なくとも着色膜331R等と重なる部分には透
光性を有する材料を用いることが好ましい。
【0117】
また、タッチパネル310が透過型の液晶表示装置を含む場合、例えば図示しない偏光
板を、表示部381を上下に挟むように2つ配置する。偏光板よりも外側に配置されたバ
ックライトからの光は偏光板を介して入射される。このとき、導電膜120と酸化物半導
体膜111の間に与える電圧によって液晶353の配向を制御する。すなわち、偏光板を
介して射出される光の強度を制御することができる。またバックライトから入射される光
は着色膜によって特定の波長領域以外の光が吸収され、射出される光は例えば赤色、青色
、または緑色を呈する光となる。
【0118】
また偏光板に加えて、例えば円偏光板を用いることができる。円偏光板としては、例え
ば直線偏光板と1/4波長位相差板を積層したものを用いることができる。円偏光板によ
り、視野角依存を低減することができる。
【0119】
なお、ここでは液晶素子308としてFFSモードが適用された素子を用いたが、これ
に限られず様々なモードが適用された液晶素子を用いることができる。例えばVA(Ve
rtical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)
モード、IPS(In Plane Switching)モード、ASM(Axial
ly Symmetric aligned Micro-cell)モード、OCB(
Optically Compensated Birefringence)モード、
FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFL
C(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード等が
適用された液晶素子を用いることができる。
【0120】
また、タッチパネル310にノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(
VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置を適用してもよい。垂直配向モードとして
は、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)モー
ド、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、A
SV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。
【0121】
なお、液晶素子は、液晶の光学変調作用によって光の透過または非透過を制御する素子
である。なお、液晶の光学変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦方向の電界
又は斜め方向の電界を含む)によって制御される。なお、液晶素子に用いる液晶としては
、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Po
lymer Dispersed Liquid Crystal)、強誘電性液晶、反
強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリッ
ク相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0122】
また、液晶材料としては、ポジ型の液晶、またはネガ型の液晶のいずれを用いてもよく
、適用するモードや設計に応じて最適な液晶材料を用いればよい。
【0123】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよ
い。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリ
ック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発
現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組
成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速
度が短く、光学的等方性である。また、ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組
成物は、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよい
のでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防
止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。
【0124】
本構成例においてタッチパネル310は、導電膜334と、酸化物半導体膜111の間
に形成される容量を利用して、タッチ動作等を検出することができる。すなわち酸化物半
導体膜111は、液晶素子308の一対の電極の一方と、タッチセンサの一対の電極の一
方と、の両方を兼ねる。
【0125】
ここで、導電膜120または/および導電膜334として、可視光を透過する導電性材
料を用いることが好ましい。例えば金属酸化物を含む導電性材料を含んで構成される。例
えば、後述する透光性を有する導電性材料のうち、金属酸化物を用いることができる。
【0126】
または、導電膜120または/および導電膜334は、他の導電膜や半導体層と同一の
金属元素を含む金属酸化物を用いることが好ましい。特に、タッチパネル310が有する
トランジスタの半導体層に酸化物半導体を用いた場合、これに含まれる金属元素を含む導
電性酸化物を適用することが好ましい。
【0127】
また、導電膜334に固定電位が与えられていることで、外部から電磁的なノイズを遮
蔽することができる。例えばセンシングを行っていないとき、導電膜334には液晶35
3のスイッチングに影響しない定電位を供給すればよい。例えば接地電位、共通電位、ま
たは任意の定電位を用いることができる。また例えば、導電膜334と酸化物半導体膜1
11とを同電位としてもよい。
【0128】
また、導電膜334に適切な電位を与えることにより、導電膜120と酸化物半導体膜
111との間に生じる電界の向き(電気力線の向き)のうち、厚さ方向の成分を低減し、
より効果的に厚さに対して概略垂直な方向(横方向)に電界が向くようにすることができ
る。これにより、液晶353の配向欠陥を抑制し、光漏れなどの不具合が生じることを防
ぐことができる。
【0129】
なお、導電膜334、導電膜335および基板372上に、指またはスタイラスなどの
検知体が直接触れるための基板を設けてもよい。またこのとき、基板372と基板102
との間に偏光板または円偏光板を設けることが好ましい。その場合、当該基板上に保護層
(セラミックコート等)を設けることが好ましい。保護層は、例えば酸化シリコン、酸化
アルミニウム、酸化イットリウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などの無機絶
縁材料を用いることができる。また、当該基板に強化ガラスを用いてもよい。強化ガラス
は、イオン交換法や風冷強化法等により物理的、または化学的な処理が施され、その表面
に圧縮応力を加えたものを用いることができる。
【0130】
〔各構成要素について〕
以下では、上記に示す各構成要素について説明する。
【0131】
{基板}
タッチパネルが有する基板には、平坦面を有する材料を用いることができる。表示素子
からの光を取り出す側の基板には、該光を透過する材料を用いる。例えば、ガラス、石英
、セラミック、サファイヤ、有機樹脂などの材料を用いることができる。また、シリコン
や炭化シリコンからなる単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等
の化合物半導体基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導
体素子が設けられたものを、基板として用いてもよい。
【0132】
なお、基板として、ガラス基板を用いる場合、第6世代(1500mm×1850mm
)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm
)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2950mm×3400m
m)等の大面積基板を用いることで、大型の表示装置を作製することができる。また、基
板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタや容量素子等を形成し
てもよい。
【0133】
厚さの薄い基板を用いることで、タッチパネルの軽量化、薄型化を図ることができる。
さらに、可撓性を有する程度の厚さの基板を用いることで、可撓性を有するタッチパネル
を実現できる。
【0134】
ガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホ
ウケイ酸ガラス等を用いることができる。
【0135】
可撓性及び可視光に対する透過性を有する材料としては、例えば、可撓性を有する程度
の厚さのガラスや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート
(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメ
チルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PE
S)樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミ
ド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂等が挙げら
れる。特に、熱膨張係数の低い材料を用いることが好ましく、例えば、ポリアミドイミド
樹脂、ポリイミド樹脂、PET等を好適に用いることができる。また、ガラス繊維に有機
樹脂を含浸した基板や、無機フィラーを有機樹脂に混ぜて熱膨張係数を下げた基板を使用
することもできる。このような材料を用いた基板は、重量が軽いため、該基板を用いたタ
ッチパネルも軽量にすることができる。
【0136】
また、発光を取り出さない側の基板は、透光性を有していなくてもよいため、上記に挙
げた基板の他に、金属材料や合金材料を用いた金属基板、セラミック基板、または半導体
基板等を用いることもできる。金属材料や合金材料は熱伝導性が高く、封止基板全体に熱
を容易に伝導できるため、タッチパネルの局所的な温度上昇を抑制することができ、好ま
しい。可撓性や曲げ性を得るためには、金属基板の厚さは、10μm以上200μm以下
が好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0137】
金属基板を構成する材料としては、特に限定はないが、例えば、アルミニウム、銅、ニ
ッケル、又はアルミニウム合金もしくはステンレス等の合金などを好適に用いることがで
きる。
【0138】
また、導電性の基板の表面を酸化する、又は表面に絶縁膜を形成するなどにより、絶縁
処理が施された基板を用いてもよい。例えば、スピンコート法やディップ法などの塗布法
、電着法、蒸着法、又はスパッタリング法などを用いて絶縁膜を形成してもよいし、酸素
雰囲気で放置する又は加熱するほか、陽極酸化法などによって、基板の表面に酸化膜を形
成してもよい。
【0139】
可撓性を有する基板としては、上記材料を用いた層が、タッチパネルの表面を傷などか
ら保護するハードコート層(例えば、窒化シリコン層など)や、押圧を分散可能な材質の
層(例えば、アラミド樹脂層など)等と積層されて構成されていてもよい。また、水分等
による表示素子の寿命の低下等を抑制するために、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜
等の窒素と珪素を含む膜や、窒化アルミニウム膜等の窒素とアルミニウムを含む膜等の透
水性の低い絶縁膜を有していてもよい。
【0140】
基板は、複数の層を積層して用いることもできる。特に、ガラス層を有する構成とする
と、水や酸素に対するバリア性を向上させ、信頼性の高いタッチパネルとすることができ
る。
【0141】
例えば、表示素子に近い側からガラス層、接着層、及び有機樹脂層を積層した基板を用
いることができる。当該ガラス層の厚さとしては20μm以上200μm以下、好ましく
は25μm以上100μm以下とする。このような厚さのガラス層は、水や酸素に対する
高いバリア性と可撓性を同時に実現できる。また、有機樹脂層の厚さとしては、10μm
以上200μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下とする。このような有機樹脂
層を設けることにより、ガラス層の割れやクラックを抑制し、機械的強度を向上させるこ
とができる。このようなガラス材料と有機樹脂の複合材料を基板に適用することにより、
極めて信頼性が高いフレキシブルなタッチパネルとすることができる。
【0142】
{トランジスタ}
トランジスタは、ゲート電極として機能する導電膜と、半導体層と、ソース電極として
機能する導電膜と、ドレイン電極として機能する導電膜と、ゲート絶縁膜として機能する
絶縁膜と、を有する。上記では、ボトムゲート型のトランジスタを適用した場合を示して
いる。
【0143】
なお、本発明の一態様のタッチパネルが有するトランジスタの構造は特に限定されない
。例えば、スタガ型のトランジスタとしてもよいし、逆スタガ型のトランジスタとしても
よい。また、トップゲート型又はボトムゲート型のいずれのトランジスタ構造としてもよ
い。
【0144】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性については特に限定されず、非晶質半導体、
結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領
域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トラン
ジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0145】
また、トランジスタに用いる半導体材料としては、例えば、第14族の元素、化合物半
導体又は酸化物半導体を半導体層に用いることができる。代表的には、シリコンを含む半
導体、ガリウムヒ素を含む半導体又はインジウムを含む酸化物半導体などを適用できる。
【0146】
特に、トランジスタのチャネルが形成される半導体に、酸化物半導体を適用することが
好ましい。特にシリコンよりもバンドギャップの大きな酸化物半導体を適用することが好
ましい。シリコンよりもバンドギャップが広く、且つキャリア密度の小さい半導体材料を
用いると、トランジスタのオフ状態における電流を低減できるため好ましい。
【0147】
例えば、上記酸化物半導体として、少なくともインジウム(In)もしくは亜鉛(Zn
)を含むことが好ましい。より好ましくは、In-M-Zn酸化物(MはAl、Ti、G
a、Y、Zr、La、Ce、Sn、またはHf等の金属)で表記される酸化物を含む。
【0148】
特に、半導体層として、複数の結晶部を有し、当該結晶部はc軸が半導体層の被形成面
、または半導体層の上面に対し概略垂直に配向し、且つ隣接する結晶部間には粒界を有さ
ない酸化物半導体膜を用いることが好ましい。
【0149】
このような酸化物半導体は、結晶粒界を有さないために表示パネルを湾曲させたときの
応力によって酸化物半導体膜にクラックが生じてしまうことが抑制される。したがって、
可撓性を有し、湾曲させて用いるタッチパネルなどに、このような酸化物半導体を好適に
用いることができる。
【0150】
また半導体層としてこのような酸化物半導体を用いることで、電気特性の変動が抑制さ
れ、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0151】
また、その低いオフ電流により、トランジスタを介して容量に蓄積した電荷を長期間に
亘って保持することが可能である。このようなトランジスタを画素に適用することで、各
表示領域に表示した画像の階調を維持しつつ、駆動回路を停止することも可能となる。そ
の結果、極めて消費電力の低減された表示装置を実現できる。
【0152】
〈酸化物半導体膜〉
酸化物半導体膜110及び酸化物半導体膜111は、少なくともインジウム(In)、
亜鉛(Zn)及びM(Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Sn、またはHf等の
金属)を含むIn-M-Zn酸化物で表記される膜を含むことが好ましい。また、該酸化
物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、それらと共に、スタ
ビライザーを含むことが好ましい。
【0153】
スタビライザーとしては、上記Mで記載の金属を含め、例えば、ガリウム(Ga)、ス
ズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、またはジルコニウム(Zr)
等がある。また、他のスタビライザーとしては、ランタノイドである、ランタン(La)
、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、
ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(
Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム
(Yb)、ルテチウム(Lu)等がある。
【0154】
酸化物半導体膜110及び酸化物半導体膜111を構成する酸化物半導体として、例え
ば、In-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Zn系酸化物、In-Sn-Zn系酸化物
、In-Hf-Zn系酸化物、In-La-Zn系酸化物、In-Ce-Zn系酸化物、
In-Pr-Zn系酸化物、In-Nd-Zn系酸化物、In-Sm-Zn系酸化物、I
n-Eu-Zn系酸化物、In-Gd-Zn系酸化物、In-Tb-Zn系酸化物、In
-Dy-Zn系酸化物、In-Ho-Zn系酸化物、In-Er-Zn系酸化物、In-
Tm-Zn系酸化物、In-Yb-Zn系酸化物、In-Lu-Zn系酸化物、In-S
n-Ga-Zn系酸化物、In-Hf-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Ga-Zn系
酸化物、In-Sn-Al-Zn系酸化物、In-Sn-Hf-Zn系酸化物、In-H
f-Al-Zn系酸化物を用いることができる。
【0155】
なお、ここで、In-Ga-Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有す
る酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZ
n以外の金属元素が入っていてもよい。
【0156】
また、酸化物半導体膜110と、酸化物半導体膜111は、上記酸化物のうち、同一の
金属元素を有していてもよい。酸化物半導体膜110と、酸化物半導体膜111を同一の
金属元素とすることで、製造コストを低減させることができる。例えば、同一の金属組成
の金属酸化物ターゲットを用いることで製造コストを低減させることができる。また同一
の金属組成の金属酸化物ターゲットを用いることによって、酸化物半導体膜110と、酸
化物半導体膜111を加工する際のエッチングガスまたはエッチング液を共通して用いる
ことができる。ただし、酸化物半導体膜110と、酸化物半導体膜111は、同一の金属
元素を有していても、組成が異なる場合がある。例えば、トランジスタ及び容量素子の作
製工程中に、膜中の金属元素が脱離し、異なる金属組成となる場合がある。
【0157】
なお、酸化物半導体膜110がIn-M-Zn酸化物であるとき、InとMの原子数比
率は、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが25at
omic%より高く、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34ato
mic%より高く、Mが66atomic%未満とする。
【0158】
酸化物半導体膜110は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以
上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半
導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0159】
酸化物半導体膜110の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上1
00nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
【0160】
酸化物半導体膜110がIn-M-Zn酸化物(MはAl、Ga、Y、Zr、La、C
e、またはNd)の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリング
ターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。この
ようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1
:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn
=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6等が挙げられる。なお、成膜される酸化物半
導体膜110の原子数比はそれぞれ、誤差として上記のスパッタリングターゲットに含ま
れる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0161】
酸化物半導体膜110としては、キャリア密度の低い酸化物半導体膜を用いる。例えば
、酸化物半導体膜110は、キャリア密度が1×1017個/cm以下、好ましくは1
×1015個/cm以下、さらに好ましくは1×1013個/cm以下、より好まし
くは1×1011個/cm以下の酸化物半導体膜を用いる。
【0162】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効
果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とす
るトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜110のキャリア密度や不純
物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとする
ことが好ましい。
【0163】
酸化物半導体膜110において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれる
と、酸化物半導体膜110において酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、酸
化物半導体膜110におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:
Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃
度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/c
以下とする。
【0164】
また、酸化物半導体膜110において、SIMSにより得られるアルカリ金属またはア
ルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×10
atoms/cm以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体
と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまう
ことがある。このため、酸化物半導体膜110のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の
濃度を低減することが好ましい。
【0165】
また、酸化物半導体膜110に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キ
ャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用
いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体膜にお
いて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、SIMSにより得られ
る窒素濃度は、5×1018atoms/cm以下にすることが好ましい。
【0166】
また、酸化物半導体膜110は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例え
ば、後述するCAAC-OS(C Axis Aligned-Crystalline
Oxide Semiconductor)、多結晶構造、後述する微結晶構造、また
は非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、C
AAC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0167】
酸化物半導体膜110は、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の酸化物半導体膜は
、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物
膜は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
【0168】
なお、酸化物半導体膜110が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の
領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域の二種以上を有する混合膜であってもよ
い。また、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域
、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域の積層構造を有す
る場合がある。
【0169】
なお、トランジスタのチャネルが形成される半導体に、シリコンを用いてもよい。シリ
コンとしてアモルファスシリコンを用いてもよいが、特に結晶性を有するシリコンを用い
ることが好ましい。例えば、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンなどを用
いることが好ましい。特に、多結晶シリコンは、単結晶シリコンに比べて低温で形成でき
、且つアモルファスシリコンに比べて高い電界効果移動度と高い信頼性を備える。このよ
うな多結晶半導体を画素に適用することで画素の開口率を向上させることができる。また
極めて密に画素を有する場合であっても、ゲート駆動回路とソース駆動回路を画素と同一
基板上に形成することが可能となり、電子機器を構成する部品数を低減することができる
【0170】
{導電膜}
トランジスタのゲート、ソースおよびドレインのほか、タッチパネルを構成する各種配
線および電極などの導電膜に用いることのできる材料としては、アルミニウム、チタン、
クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、また
はタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造と
して用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアルミニ
ウム膜を積層する二層構造、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅
-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を
積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チ
タン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層
し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜また
は窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウ
ム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成す
る三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料
を用いてもよい。また、マンガンを含む銅を用いると、エッチングによる形状の制御性が
高まるため好ましい。
【0171】
また、透光性を有する導電性材料としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物(I
TO:Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウ
ムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物またはグラフェンを用いることができる。また
は、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、
コバルト、銅、パラジウム、またはチタンなどの金属材料や、該金属材料を含む合金材料
を用いることができる。または、該金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)などを用い
てもよい。なお、金属材料、合金材料(またはそれらの窒化物)を用いる場合には、透光
性を有する程度に薄くすればよい。また、上記材料の積層膜を導電膜として用いることが
できる。例えば、銀とマグネシウムの合金とインジウムスズ酸化物の積層膜などを用いる
と、導電性を高めることができるため好ましい。
【0172】
または、導電膜として、半導体層と同様の酸化物半導体を用いることが好ましい。この
とき導電膜が、半導体層のチャネルが形成される領域よりも低い電気抵抗を呈するように
、形成されていることが好ましい。
【0173】
例えばこのような導電膜を、酸化物半導体膜111、111aに適用することができる
。または、透光性を有する他の導電膜にも適用することができる。
【0174】
{酸化物半導体の抵抗率の制御方法}
酸化物半導体膜110及び酸化物半導体膜111、111aに用いることのできる酸化
物半導体膜は、膜中の酸素欠損及び/又は膜中の水素、水等の不純物濃度によって、抵抗
率を制御することができる半導体材料である。そのため、酸化物半導体膜110及び酸化
物半導体膜111、111aへ酸素欠損及び/又は不純物濃度が増加する処理、または酸
素欠損及び/又は不純物濃度が低減する処理を選択することによって、それぞれの酸化物
半導体膜の抵抗率を制御することができる。
【0175】
具体的には、容量素子160の電極として機能する酸化物半導体膜111、111aに
用いる酸化物半導体膜にプラズマ処理を行い、該酸化物半導体の膜中の酸素欠損を増加さ
せる、および/または酸化物半導体の膜中の水素、水等の不純物を増加させることによっ
て、キャリア密度が高く、抵抗率が低い酸化物半導体膜とすることができる。また、酸化
物半導体膜に水素を含む絶縁膜を接して形成し、該水素を含む絶縁膜、例えば絶縁膜11
8から酸化物半導体膜に水素を拡散させることによって、キャリア密度が高く、抵抗率が
低い酸化物半導体膜とすることができる。酸化物半導体膜111、111aは、上記によ
うに膜中の酸素欠損を増加させる、または水素を拡散させる工程の前においては半導体と
しての機能を有し、該工程の後においては、導電体としての機能を有する。
【0176】
なお、プラズマ処理を行い酸化物半導体膜中の酸素欠損を増加させる際に、膜厚が大き
いと、膜中における酸素欠損の増加に偏りが生じる場合がある。また、絶縁膜から酸化物
半導体膜へ水素を拡散させる際に、膜厚が大きいと、膜中における水素や水等の不純物の
増加に偏りが生じる場合がある。その結果、酸化物半導体膜の底面付近の抵抗率が、膜の
上面付近の抵抗率よりも高くなってしまう場合がある。よって、このような偏りが生じる
と、酸化物半導体膜の抵抗率が十分に低い場合でも、該酸化物半導体膜が底面側から配線
等の導電膜と電気的に接続される場合に該酸化物半導体膜と該導電膜の接触抵抗が増大し
てしまう場合がある。一方で、酸化物半導体膜は導電膜として機能する程度に膜厚が大き
い必要がある。以上のことから、酸化物半導体膜111、111aの膜厚は、膜の厚さ方
向において抵抗率に偏りが生じない程度の厚さであることが好ましい。具体的には、30
nm以上70nm以下であることが好ましく、50nm以上70nm以下であることがさ
らに好ましい。
【0177】
一方、トランジスタ150のチャネル領域として機能する酸化物半導体膜110は、絶
縁膜107、114、116を設けることによって、水素を含む絶縁膜106、118と
接しない構成とする。絶縁膜107、114、116の少なくとも一つに酸素を含む絶縁
膜、別言すると、酸素を放出することが可能な絶縁膜を適用することで、酸化物半導体膜
110に酸素を供給することができる。酸素が供給された酸化物半導体膜110は、膜中
または界面の酸素欠損が補填され抵抗率が高い酸化物半導体膜となる。なお、酸素を放出
することが可能な絶縁膜としては、例えば、酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜
を用いることができる。
【0178】
また、抵抗率が低い酸化物半導体膜を得るために、イオン注入法、イオンドーピング法
、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いて、水素、ボロン、リ
ン、または窒素を酸化物半導体膜に注入してもよい。
【0179】
また、抵抗率が低い酸化物半導体膜を得るために、該酸化物半導体膜にプラズマ処理を
行ってもよい。例えば、該プラズマ処理としては、代表的には、希ガス(He、Ne、A
r、Kr、Xe)、水素、及び窒素の中から選ばれた一種以上を含むガスを用いたプラズ
マ処理が挙げられる。より具体的には、Ar雰囲気下でのプラズマ処理、Arと水素の混
合ガス雰囲気下でのプラズマ処理、アンモニア雰囲気下でのプラズマ処理、Arとアンモ
ニアの混合ガス雰囲気下でのプラズマ処理、または窒素雰囲気下でのプラズマ処理などが
挙げられる。
【0180】
上記プラズマ処理によって、酸化物半導体膜は、酸素が脱離した格子(または酸素が脱
離した部分)に酸素欠損を形成する。該酸素欠損は、キャリアを発生する要因になる場合
がある。また、酸化物半導体膜の近傍、より具体的には、酸化物半導体膜の下側または上
側に接する絶縁膜から水素が供給されると、上記酸素欠損と水素が結合することで、キャ
リアである電子を生成する場合がある。
【0181】
一方、酸素欠損が補填され、水素濃度が低減された酸化物半導体膜は、高純度真性化、
又は実質的に高純度真性化された酸化物半導体膜といえる。ここで、実質的に真性とは、
酸化物半導体膜のキャリア密度が、8×1011個/cm未満、好ましくは1×10
/cm未満、さらに好ましくは1×1010個/cm未満であることを指す。高純
度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため
、キャリア密度を低くすることができる。また、高純度真性または実質的に高純度真性で
ある酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度を低減することがで
きる。
【0182】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著し
く小さく、チャネル幅が1×10μmでチャネル長が10μmの素子であっても、ソー
ス電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ
電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下と
いう特性を得ることができる。したがって、上述した高純度真性または実質的に高純度真
性である酸化物半導体膜を用いる酸化物半導体膜110をチャネル領域に用いるトランジ
スタ150は、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。
【0183】
絶縁膜118として、例えば、水素を含む絶縁膜、別言すると水素を放出することが可
能な絶縁膜、代表的には窒化シリコン膜を用いることで、酸化物半導体膜111に水素を
供給することができる。水素を放出することが可能な絶縁膜としては、膜中の含有水素濃
度が1×1022atoms/cm以上であると好ましい。このような絶縁膜を酸化物
半導体膜111、111aに接して形成することで、酸化物半導体膜111,111aに
効果的に水素を含有させることができる。このように、酸化物半導体膜110及び酸化物
半導体膜111、111aに接する絶縁膜の構成を変えることによって、酸化物半導体膜
の抵抗率を制御することができる。なお、絶縁膜106として、絶縁膜118と同様の材
料を用いてもよい。絶縁膜106として窒化シリコンを用いることで、絶縁膜107から
放出される酸素がゲート電極104に供給され、酸化されることを抑制できる。
【0184】
酸化物半導体膜に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に
、酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。該酸素欠損
に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が
金属原子と結合する酸素と結合することで、キャリアである電子を生成する場合がある。
したがって、水素が含まれている絶縁膜と接して設けられた酸化物半導体膜111は、酸
化物半導体膜110よりもキャリア密度の高い酸化物半導体膜となる。
【0185】
トランジスタ150のチャネル領域が形成される酸化物半導体膜110は、水素ができ
る限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体膜110において、S
IMSにより得られる水素濃度を、2×1020atoms/cm以下、好ましくは5
×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm
下、5×1018atoms/cm未満、好ましくは1×1018atoms/cm
以下、より好ましくは5×1017atoms/cm以下、さらに好ましくは1×10
16atoms/cm以下とする。
【0186】
一方、容量素子160の電極として機能する酸化物半導体膜111、及びトランジスタ
150の第2のゲート電極として機能する酸化物半導体膜111aは、酸化物半導体膜1
10よりも水素濃度及び/又は酸素欠損量が多く、抵抗率が低い酸化物半導体膜である。
酸化物半導体膜111、111aに含まれる水素濃度は、8×1019atoms/cm
以上、好ましくは1×1020atoms/cm以上、より好ましくは5×1020
atoms/cm以上である。また、酸化物半導体膜110と比較して、酸化物半導体
膜111、111aに含まれる水素濃度は2倍以上、好ましくは10倍以上である。また
、酸化物半導体膜111、111aの抵抗率が、酸化物半導体膜110の抵抗率の1×1
-8倍以上1×10-1倍未満であることが好ましく、代表的には1×10-3Ωcm
以上1×10Ωcm未満、さらに好ましくは、抵抗率が1×10-3Ωcm以上1×1
-1Ωcm未満であるとよい。
【0187】
〈絶縁膜〉
トランジスタ150のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107としては、プ
ラズマCVD(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、ス
パッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、
窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジ
ルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜
、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁膜を、それぞれ用いることが
できる。なお、絶縁膜106、107の積層構造とせずに、上述の材料から選択された単
層の絶縁膜を用いてもよい。
【0188】
絶縁膜106は、酸素の透過を抑制するブロッキング膜としての機能を有する。例えば
、絶縁膜107、114、116及び/または酸化物半導体膜110中に過剰の酸素を供
給する場合において、絶縁膜106は酸素の透過を抑制することができる。
【0189】
なお、トランジスタ150のチャネル領域として機能する酸化物半導体膜110と接す
る絶縁膜107は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸
素を含有する領域(酸素過剰領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜1
07は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。なお、絶縁膜107に酸素過剰領域
を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜107を形成すればよい。または、成膜
後の絶縁膜107に酸素を導入して、酸素過剰領域を形成してもよい。酸素の導入方法と
しては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラ
ズマ処理等を用いることができる。
【0190】
また、絶縁膜106、107として、酸化ハフニウムを用いる場合、以下の効果を奏す
る。酸化ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。した
がって、酸化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜106、107の膜厚を大きくでき
るため、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、オフ電流
の小さいトランジスタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウ
ムは、非晶質構造を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、
オフ電流の小さいトランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用い
ることが好ましい。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただ
し、本発明の一態様は、これらに限定されない。
【0191】
なお、本実施の形態では、絶縁膜106として窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜107
として酸化シリコン膜を形成する。窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電
率が高く、酸化シリコン膜と同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、トラン
ジスタ150のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜108として、窒化シリコン膜を含む
ことで絶縁膜を物理的に厚膜化することができる。よって、トランジスタ150の絶縁耐
圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、トランジスタ150の静電破壊を抑制
することができる。
【0192】
〈保護絶縁膜〉
トランジスタ150の保護絶縁膜として機能する絶縁膜114、116、118として
は、プラズマCVD法、スパッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン
膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸
化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネ
シウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁膜
を、それぞれ用いることができる。
【0193】
また、トランジスタ150のチャネル領域として機能する酸化物半導体膜110と接す
る絶縁膜114は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、酸素を放出することが可能な絶
縁膜を用いる。酸素を放出することが可能な絶縁膜を別言すると、化学量論的組成よりも
過剰に酸素を含有する領域(酸素過剰領域)を有する絶縁膜である。なお、絶縁膜114
に酸素過剰領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜114を形成すればよい
。または、成膜後の絶縁膜114に酸素を導入して、酸素過剰領域を形成してもよい。酸
素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオ
ン注入法、プラズマ処理等を用いることができる。
【0194】
絶縁膜114として、酸素を放出することが可能な絶縁膜を用いることで、トランジス
タ150のチャネル領域として機能する酸化物半導体膜110に酸素を移動させ、酸化物
半導体膜110の酸素欠損量を低減することが可能となる。例えば、昇温脱離ガス分析(
以下、TDS分析とする。)によって測定される,膜の表面温度が100℃以上700℃
以下、または100℃以上500℃以下の範囲における酸素分子の放出量が、1.0×1
18分子/cm以上ある絶縁膜を用いることで、酸化物半導体膜110に含まれる酸
素欠損量を低減することができる。
【0195】
また、絶縁膜114は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定によ
り、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度
が3×1017spins/cm以下であることが好ましい。これは、絶縁膜114に
含まれる欠陥密度が多いと、当該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁膜114における酸
素の透過量が減少してしまうためである。また、絶縁膜114と酸化物半導体膜110と
の界面における欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、酸化物
半導体膜110の欠陥に由来するg値が1.89以上1.96以下に現れる信号のスピン
密度が1×1017spins/cm以下、さらには検出下限以下であることが好まし
い。
【0196】
なお、絶縁膜114においては、外部から絶縁膜114に入った酸素が全て絶縁膜11
4の外部に移動する場合がある。または、外部から絶縁膜114に入った酸素の一部が、
絶縁膜114にとどまる場合もある。また、外部から絶縁膜114に酸素が入ると共に、
絶縁膜114に含まれる酸素が絶縁膜114の外部へ移動することで、絶縁膜114にお
いて酸素の移動が生じる場合もある。絶縁膜114として酸素を透過することができる酸
化物絶縁膜を形成すると、絶縁膜114上に設けられる、絶縁膜116から脱離する酸素
を、絶縁膜114を介して酸化物半導体膜110に移動させることができる。
【0197】
また、絶縁膜114は、窒素酸化物に起因する準位密度が低い酸化物絶縁膜を用いて形
成することができる。なお、当該窒素酸化物に起因する準位密度は、酸化物半導体膜の価
電子帯の上端のエネルギー(EV_OS)と、酸化物半導体膜の伝導帯下端のエネルギー
(EC_OS)との間に形成され得る場合がある。上記酸化物絶縁膜として、窒素酸化物
の放出量が少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アル
ミニウム膜等を用いることができる。
【0198】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、TDS分析において、窒素
酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニア分子の放
出量が1×1018分子/cm以上5×1019分子/cm以下である。なお、アン
モニアの放出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上55
0℃以下の加熱処理による放出量とする。
【0199】
窒素酸化物(NO、xは0より大きく2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的に
はNOまたはNOは、絶縁膜114などに準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体
膜110のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁膜114及
び酸化物半導体膜110の界面に拡散すると、当該準位が絶縁膜114側において電子を
トラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁膜114及び酸化物半
導体膜110界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフト
させてしまう。
【0200】
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁膜114
に含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁膜116に含まれるアンモニアと反応
するため、絶縁膜114に含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁膜114及
び酸化物半導体膜110の界面において、電子がトラップされにくい。
【0201】
絶縁膜114として、上記酸化物絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧
のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することが
できる。
【0202】
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には400℃未満または375℃未
満(好ましくは、340℃以上360℃以下)の加熱処理により、絶縁膜114は、10
0K以下のESRで測定して得られたスペクトルにおいてg値が2.037以上2.03
9以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及び
g値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルが観測される。なお、第1のシグ
ナル及び第2のシグナルのスプリット幅、並びに第2のシグナル及び第3のシグナルのス
プリット幅は、XバンドのESR測定において約5mTである。また、g値が2.037
以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシ
グナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルのスピンの密度の合
計が1×1018spins/cm未満であり、代表的には1×1017spins/
cm以上1×1018spins/cm未満である。
【0203】
なお、100K以下のESRスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下
の第1シグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1
.964以上1.966以下の第3のシグナルは、窒素酸化物(NO、xは0より大き
く2以下、好ましくは1以上2以下)起因のシグナルに相当する。窒素酸化物の代表例と
しては、一酸化窒素、二酸化窒素等がある。即ち、g値が2.037以上2.039以下
の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が
1.964以上1.966以下の第3のシグナルのスピンの密度の合計が少ないほど、酸
化物絶縁膜に含まれる窒素酸化物の含有量が少ないといえる。
【0204】
また、上記酸化物絶縁膜は、SIMSで測定される窒素濃度が6×1020atoms
/cm以下である。
【0205】
基板温度が220℃以上350℃以下であり、シラン及び一酸化二窒素を用いたPEC
VD法を用いて、上記酸化物絶縁膜を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を
形成することができる。
【0206】
絶縁膜114に接するように形成される絶縁膜116は、化学量論的組成を満たす酸素
よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いて形成する。化学量論的組成を満たす酸素よ
りも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部が脱離する。化学量論的組
成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、TDS分析にて、酸素原子に換
算しての酸素の放出量が1.0×1019atoms/cm以上、好ましくは3.0×
1020atoms/cm以上である酸化物絶縁膜である。なお、上記TDSにおける
膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範
囲が好ましい。
【0207】
また、絶縁膜116は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定によ
り、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度
が1.5×1018spins/cm未満、更には1×1018spins/cm
下であることが好ましい。なお、絶縁膜116は、絶縁膜114と比較して酸化物半導体
膜110から離れているため、絶縁膜114より、欠陥密度が多くともよい。
【0208】
絶縁膜114の厚さは、5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50nm以
下、好ましくは10nm以上30nm以下とすることができる。絶縁膜116の厚さは、
30nm以上500nm以下、好ましくは150nm以上400nm以下とすることがで
きる。
【0209】
また、絶縁膜114、116は、同種の材料の絶縁膜を用いることができるため、絶縁
膜114と絶縁膜116の界面が明確に確認できない場合がある。したがって、本実施の
形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の界面は、破線で図示している。なお、本
実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の2層構造について説明したが、こ
れに限定されず、例えば、絶縁膜114の単層構造、絶縁膜116の単層構造、または3
層以上の積層構造としてもよい。
【0210】
容量素子160の誘電体膜として機能する絶縁膜118としては、窒化物絶縁膜である
ことが好ましい。特に窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電率が高く、酸
化シリコン膜と同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、容量素子160の誘
電体膜として機能する絶縁膜118として、窒化シリコン膜を含むことで絶縁膜を物理的
に厚膜化することができる。よって、容量素子160の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには
絶縁耐圧を向上させて、容量素子160の静電破壊を抑制することができる。なお、絶縁
膜118は、容量素子160の電極として機能する酸化物半導体膜111の抵抗率を低下
させる機能も有する。
【0211】
また、絶縁膜118は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等をブロッ
キングできる機能を有する。絶縁膜118を設けることで、酸化物半導体膜110からの
酸素の外部への拡散と、絶縁膜114、116に含まれる酸素の外部への拡散と、外部か
ら酸化物半導体膜110への水素、水等の入り込みを防ぐことができる。なお、酸素、水
素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜の
代わりに、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。
酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜としては、酸化アルミニウム
、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒
化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
【0212】
平坦膜、オーバーコート、スペーサ等に用いることのできる絶縁材料としては、例えば
、アクリル、エポキシなどの樹脂、シロキサン結合を有する樹脂の他、酸化シリコン、酸
化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材
料を用いることができる。
【0213】
{接着層}
接着層としては、熱硬化樹脂や光硬化樹脂、2液混合型の硬化性樹脂などの硬化性樹脂
を用いることができる。例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、またはシ
ロキサン結合を有する樹脂などを用いることができる。
【0214】
{接続層}
接続層としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Condu
ctive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic C
onductive Paste)などを用いることができる。
【0215】
{着色膜}
着色膜に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料または染料が含
まれた樹脂材料などが挙げられる。
【0216】
以上が各構成要素についての説明である。
【0217】
〔断面構成例2〕
図11には、上記構成例とは一部の構成の異なるタッチパネルの断面構成例について示
している。なお、上記と重複する部分については説明を省略し、相違点について説明する
【0218】
図11は、基板372の表示面側に導電膜334、335、341及びFPC375を
設けない構成である。液晶素子308のコモン電極として機能する酸化物半導体膜111
が、タッチセンサの一対の電極としても機能する。具体的には、一方向に延在する酸化物
半導体膜111bと、酸化物半導体膜111bと直交する方向に延在する導電膜104a
と電気的に接続される酸化物半導体膜111cとが、タッチセンサの一対の電極として機
能する。このような構成とすることで、図8に示す構成よりもさらに工程を簡略化するこ
とができる。なお、酸化物半導体膜111cは、絶縁膜108、114、116に設けら
れた開口333を介して導電膜104aと電気的に接続される。また導電膜104aは、
ゲート電極104と同様の材料を用いて同時に形成される。
【0219】
ここで、タッチセンサを構成する電極の配置について説明する。図12(A)は図11
に示すタッチパネル310が有する、一対のタッチセンサ電極の上面模式図である。図1
2(A)に示す一点鎖線Z3-Z4は、図11に示す表示部381と対応する。
【0220】
タッチセンサの一方の電極である酸化物半導体膜111bはY方向に延在して設けられ
ている。またタッチセンサの他方の電極である酸化物半導体膜111cは、開口333を
介して導電膜104aと電気的に接続される。導電膜104aはX方向に延在し、酸化物
半導体膜111bと交差する領域を有する。
【0221】
また、一方向に延在する導電膜として、導電膜104aの代わりにソース電極112a
およびドレイン電極112bと同様の材料を用いて同時に形成される導電膜112を適用
してもよい(図12(B)参照)。なお、図12(B)において、酸化物半導体膜111
bがX方向に延在し、導電膜112がY方向に延在する例を示している。酸化物半導体膜
111cは、絶縁膜118(図示しない)に設けられる開口336を介して導電膜112
と電気的に接続される。
【0222】
〔他の構成例〕
なお本発明の一態様は上記で例示した構成に限られず、様々な構成をとることができる
【0223】
〈周辺回路〉
周辺回路は、一体形成しない構成とすることができる。すなわち、タッチセンサを駆動
する回路と、画素を駆動する回路とを、それぞれ別に形成することができる。なお、これ
らの機能を一つの回路で実現してもよい。
【0224】
また、タッチセンサのX方向の導電膜またはY方向の導電膜(電極)のうち、一方の導
電膜の選択を行うドライバ回路をTFTで一体形成することもできる。
【0225】
またタッチセンサを駆動する回路は、画素を駆動するゲートドライバ側、またはソース
ドライバ側のいずれに配置してもよい。
【0226】
また、タッチセンサのX方向の導電膜またはY方向の導電膜(電極)と電気的に接続す
る2つの回路のうち、検出する機能を有する回路としてはICを用いることが好ましい。
このとき、当該導電膜はFPCを介して当該ICで制御することが好ましい。
【0227】
〈タッチセンサの導電膜(電極)の材質〉
タッチセンサを構成する一対の導電膜は、液晶素子を構成するコモン電極や画素電極な
どと同じ材料を用いることが好ましい。
【0228】
または、メッシュ状に加工された金属膜(メタルメッシュともいう)で構成してもよい
【0229】
また、タッチセンサのX方向の導電膜またはY方向の導電膜(電極)の少なくとも一つ
は、その直下または直上に金属膜を設けることで、抵抗を下げることができる。このとき
、金属酸化物を含む導電膜と、金属を含む導電膜の積層構造とする場合には、ハーフトー
ンマスクを用いたパターニング技術により形成すると、工程を簡略化できるため好ましい
【0230】
〈タッチセンサの導電膜(電極)を接続する配線〉
タッチセンサのX方向の導電膜とY方向の導電膜が交差する部分において、他の導電膜
を用いてブリッジ構造を実現する場合、例えば、当該導電膜をトランジスタのゲート電極
と同一面上の導電膜とし、X方向の導電膜をゲート線と平行に横方向に画素全体で引き回
す。または、当該導電膜をトランジスタのソース電極及びドレイン電極と同一面上の導電
膜とし、Y方向の導電膜をソース線と平行に、縦方向に画素全体で引き回す。このとき、
画素内にコンタクト部を形成する。または、当該導電膜をコモン電極として機能する導電
膜と同一の導電膜、または画素電極として機能する導電膜と同一面上の導電膜を用いても
よい。
【0231】
〈タッチセンサの導電膜(電極)や液晶素子の導電膜(電極)〉
上部に配置されるスリットを有する導電膜(電極)を画素電極として用い、下部に配置
され、複数の画素にわたって設けられる導電膜(電極)をコモン電極(共通電極ともいう
)として用いることができる。
【0232】
または、上部に配置され、複数の画素にわたって設けられるスリットを有する導電膜(
電極)をコモン電極として用い、下部に配置される導電膜(電極)を画素電極として用い
ることができる。
【0233】
タッチセンサのX方向の導電膜を、画素電極として機能する導電膜、またはコモン電極
として機能する導電膜と兼ねる構成とすることができる。
【0234】
または、タッチセンサのY方向の導電膜を、画素電極として機能する導電膜、またはコ
モン電極として機能する導電膜と兼ねる構成とすることができる。
【0235】
また、タッチセンサのX方向の導電膜をパルス電圧が与えられる導電膜または電流の検
出を行う導電膜のいずれとしてもよい。またこのとき、タッチセンサのY方向の導電膜は
他方にすればよい。
【0236】
また、コモン電極として機能する導電膜は、複数の画素にわたって設けられる構成とし
てもよいし、例えばトランジスタのゲート電極と同一面上の導電膜により形成された共通
配線と電気的に接続されていてもよい。このとき、1つのコモン電極として機能する導電
膜は島状の形状を有していてもよい。
【0237】
〈対向基板〉
トランジスタ等が設けられる基板と対向して設けられる基板(対向基板ともいう)にタ
ッチセンサのX方向の導電膜またはY方向の導電膜を設ける場合、当該導電膜よりも視認
側に遮光膜を配置することが好ましい。
【0238】
また、対向基板にTNモード、MVAモード等の液晶素子の一方の電極を形成する場合
、対向基板に設けられるタッチセンサの導電膜と重なる部分には、当該電極にスリットを
設けることが好ましい。
【0239】
また、FFSモードやIPSモード等のように、一対の電極をトランジスタ等が設けら
れる基板上に形成する場合であっても、対向基板に液晶の配向を制御する導電膜を設けて
もよい。このときも同様に、当該導電膜には、タッチセンサの導電膜と重なる部分にスリ
ットを設けることが好ましい。
【0240】
〈駆動方法〉
タッチセンサの駆動方法としては、例えば画素の駆動における1水平期間(1ゲート選
択期間)の隙間で、対応する行のセンシング(走査)をする方法を用いることができる。
または、1フレーム期間を2つに分け、前半で全画素の書き込みを行い、後半でセンシン
グしてもよい。
【0241】
〔トランジスタ及び容量素子等の作製方法〕
次に、図8に示すタッチパネル310が有するトランジスタ150、容量素子160及
び液晶素子308を構成する一対の電極(酸化物半導体膜111及び導電膜120)の作
製方法の一例について、図25乃至図28を用いて説明する。
【0242】
まず、基板102上にゲート電極104を形成する。その後、基板102、及びゲート
電極104上に絶縁膜106、107を含む絶縁膜108を形成する(図25(A)参照
)。
【0243】
なお、基板102、ゲート電極104、及び絶縁膜106、107としては、上述の列
挙した材料の中から選択することで形成できる。なお、本実施の形態においては、基板1
02としてはガラス基板を用い、ゲート電極104としては、導電膜としてタングステン
膜を用い、絶縁膜106としては、水素を放出することが可能な窒化シリコン膜を用い、
絶縁膜107としては、酸素を放出することが可能な酸化窒化シリコン膜を用いる。
【0244】
ゲート電極104は、基板102上に導電膜を成膜後、該導電膜の所望の領域が残るよ
うにパターニングし、その後不要な領域をエッチングすることで形成できる。
【0245】
次に、絶縁膜108上のゲート電極104と重畳する位置に酸化物半導体膜110を形
成する(図25(B)参照)。
【0246】
酸化物半導体膜110としては、上述の列挙した材料の中から選択することで形成でき
る。なお、本実施の形態においては、酸化物半導体膜110としては、In-Ga-Zn
酸化物膜(In:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比]の金属酸化物ターゲットを使
用。)を用いる。
【0247】
また、酸化物半導体膜110は、絶縁膜108上に酸化物半導体膜を成膜後、該酸化物
半導体膜の所望の領域が残るようにパターニングし、その後不要な領域をエッチングする
ことで形成できる。
【0248】
酸化物半導体膜110を形成後、熱処理を行うと好ましい。該熱処理は、250℃以上
650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下、より好ましくは350℃以上45
0℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気、酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気、または
減圧雰囲気で行えばよい。また、熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で熱処理を行った
後に、酸化物半導体膜110から脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上
含む雰囲気で行ってもよい。ここでの熱処理によって、絶縁膜106、107、及び酸化
物半導体膜110の少なくとも1つから水素や水などの不純物を除去することができる。
なお、該熱処理は、酸化物半導体膜110を島状に加工する前に行ってもよい。
【0249】
なお、酸化物半導体膜110をチャネル領域とするトランジスタ150に安定した電気
特性を付与するためには、酸化物半導体膜110中の不純物を低減し、酸化物半導体膜1
10を真性または実質的に真性にすることが有効である。
【0250】
次に、絶縁膜108、及び酸化物半導体膜110上に導電膜を成膜し、該導電膜の所望
の領域が残るようにパターニングし、その後不要な領域をエッチングすることで、絶縁膜
108及び酸化物半導体膜110上にソース電極112a、及びドレイン電極112bを
形成する(図25(C)参照)。
【0251】
ソース電極112a、及びドレイン電極112bとしては、上述の列挙した材料の中か
ら選択することで形成できる。なお、本実施の形態においては、ソース電極112a、及
びドレイン電極112bとしては、タングステン膜と、アルミニウム膜と、チタン膜との
3層の積層構造を用いる。
【0252】
また、ソース電極112a、及びドレイン電極112bの形成後に、酸化物半導体膜1
10の表面を洗浄してもよい。当該洗浄方法としては、例えば、リン酸等の薬液を用いた
洗浄が挙げられる。リン酸等の薬液を用いて洗浄を行うことで、酸化物半導体膜110の
表面に付着した不純物(例えば、ソース電極112a、及びドレイン電極112bに含ま
れる元素等)を除去することができる。なお、当該洗浄を必ずしも行う必要はなく、場合
によっては、洗浄を行わなくてもよい。
【0253】
また、ソース電極112a、及びドレイン電極112bを形成する工程、及び上記洗浄
工程のいずれか一方または双方において、酸化物半導体膜110のソース電極112a、
及びドレイン電極112bから露出した領域が、薄くなる場合がある。
【0254】
次に、絶縁膜108、酸化物半導体膜110、ソース電極112a、及びドレイン電極
112b上に絶縁膜114、116を形成する。そして、絶縁膜114、116の所望の
領域が残るようにパターニングし、その後不要な領域をエッチングすることで開口141
を形成する(図25(D)参照)。
【0255】
なお、絶縁膜114を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に絶縁膜116を形成
することが好ましい。絶縁膜114を形成後、大気開放せず、原料ガスの流量、圧力、高
周波電力及び基板温度の一以上を調整して、絶縁膜116を連続的に形成することで、絶
縁膜114と絶縁膜116との界面において大気成分由来の不純物濃度を低減することが
できるとともに、絶縁膜114、116に含まれる酸素を酸化物半導体膜110に移動さ
せることが可能となり、酸化物半導体膜110の酸素欠損量を低減することが可能となる
【0256】
また、絶縁膜116の形成工程において、絶縁膜114が酸化物半導体膜110の保護
膜となる。したがって、酸化物半導体膜110へのダメージを低減しつつ、パワー密度の
高い高周波電力を用いて絶縁膜116を形成することができる。
【0257】
絶縁膜114、116としては、上述の列挙した材料の中から選択することで形成でき
る。なお、本実施の形態においては、絶縁膜114、116としては、酸素を放出するこ
とが可能な酸化窒化シリコン膜を用いる。
【0258】
また、絶縁膜114、116を成膜した後に、加熱処理(以下、第1の加熱処理とする
)を行うと好適である。第1の加熱処理により、絶縁膜114、116に含まれる窒素酸
化物を低減することができる。または、第1の加熱処理により、絶縁膜114、116に
含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜110に移動させ、酸化物半導体膜110に含まれ
る酸素欠損量を低減することができる。
【0259】
第1の加熱処理の温度は、代表的には、400℃未満、好ましくは375℃未満、さら
に好ましくは、150℃以上350℃以下とする。第1の加熱処理は、窒素、酸素、超乾
燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは10
ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。
なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ま
しい。該加熱処理には、電気炉、RTA(Rapid Thermal Anneal)
装置等を用いることができる。
【0260】
開口141としては、ドレイン電極112bが露出するように形成する。開口141の
形成方法としては、例えば、ドライエッチング法を用いることができる。ただし、開口1
41の形成方法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、またはドライエッ
チング法とウエットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。なお、開口14
1を形成するためのエッチング工程によって、ドレイン電極112bの膜厚が減少する場
合がある。
【0261】
次に、開口141を覆うように、絶縁膜116上に酸化物半導体膜111、111aと
なる酸化物半導体膜を形成する(図26(A)、(B)参照)。
【0262】
なお、図26(A)は、絶縁膜116上に酸化物半導体膜を形成する際の、成膜装置内
部の断面模式図である。図26(A)では、成膜装置としてスパッタリング装置を用い、
当該スパッタリング装置内部に設置されたターゲット193と、ターゲット193の下方
に形成されたプラズマ194とが、模式的に表されている。
【0263】
まず、酸化物半導体膜を形成する際に、酸素ガスを含む雰囲気にてプラズマを放電させ
る。その際に、酸化物半導体膜の被形成面となる絶縁膜116中に、酸素が添加される。
また、酸化物半導体膜を形成する際に、酸素ガスの他に、不活性ガス(例えば、ヘリウム
ガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)を混合させてもよい。例えば、アルゴンガスと
、酸素ガスと、を用い、アルゴンガスの流量よりも酸素ガスの流量を多くするのが好まし
い。酸素ガスの流量を多くすることで、好適に絶縁膜116に酸素を添加することができ
る。一例としては、酸化物半導体膜の形成条件としては、成膜ガス全体に占める酸素ガス
の割合を、50%以上100%以下、好ましくは、80%以上100%以下とすればよい
【0264】
なお、図26(A)において、絶縁膜116に添加される酸素または過剰酸素を模式的
に破線の矢印で表している。
【0265】
また、酸化物半導体膜を成膜する際の基板温度としては、室温以上340℃未満、好ま
しくは室温以上300℃以下、より好ましくは100℃以上250℃以下、さらに好まし
くは100℃以上200℃以下である。酸化物半導体膜を加熱して成膜することで、酸化
物半導体膜の結晶性を高めることができる。一方で、基板102として、大型のガラス基
板(例えば、第6世代乃至第10世代)を用いる場合、酸化物半導体膜を成膜する際の基
板温度を150℃以上340℃未満とした場合、基板102が変形する(歪むまたは反る
)場合がある。よって、大型のガラス基板を用いる場合においては、酸化物半導体膜の成
膜する際の基板温度を100℃以上150℃未満とすることで、ガラス基板の変形を抑制
することができる。
【0266】
該酸化物半導体膜としては、上述の列挙した材料の中から選択することで形成できる。
本実施の形態では、In-Ga-Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3
:6[原子数比])を用いて、スパッタリング法により酸化物半導体膜を形成する。
【0267】
次に、該酸化物半導体を所望の形状に加工することで、島状の酸化物半導体膜111、
111aを形成する(図26(C)参照)。
【0268】
酸化物半導体膜111、111aは、絶縁膜116上に酸化物半導体膜を成膜後、該酸
化物半導体膜の所望の領域が残るようにパターニングし、その後不要な領域をエッチング
することで形成できる。
【0269】
次に、絶縁膜116、及び酸化物半導体膜111、111a上に絶縁膜118を形成す
る(図27(A)参照)。
【0270】
絶縁膜118は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。絶縁膜118とし
ては、例えば、窒化シリコン膜を用いると好適である。また、絶縁膜118としては、例
えば、スパッタリング法またはPECVD法を用いて形成することができる。例えば、絶
縁膜118をPECVD法で成膜する場合、基板温度は400℃未満、好ましくは375
℃未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下である。絶縁膜118を成膜する場
合の基板温度を、上述の範囲にすることで、緻密な膜を形成できるため好ましい。また、
絶縁膜118を成膜する場合の基板温度を、上述の範囲にすることで、絶縁膜114、1
16中の酸素または過剰酸素を、酸化物半導体膜110に移動させることが可能となる。
【0271】
また、絶縁膜118の形成後に、先に記載の第1の加熱処理と同等の加熱処理(以下、
第2の加熱処理とする)を行ってもよい。このように、酸化物半導体膜111、111a
となる酸化物半導体膜の成膜の際に絶縁膜116に酸素を添加した後に、400℃未満、
好ましくは375℃未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下の温度で、加熱処
理を行うことで、絶縁膜116中の酸素または過剰酸素を酸化物半導体膜110中に移動
させ、酸化物半導体膜110中の酸素欠損を補填することができる。
【0272】
ここで、酸化物半導体膜110中に移動する酸素について、図28を用いて説明を行う
図28は、絶縁膜118成膜時の基板温度(代表的には375℃未満)、または絶縁膜
118の形成後の第2の加熱処理(代表的には375℃未満)によって、酸化物半導体膜
110中に移動する酸素を表すモデル図である。図28中において、酸化物半導体膜11
0中に移動する酸素(酸素ラジカル、酸素原子、または酸素分子)を破線の矢印で表して
いる。なお、図28は絶縁膜118成膜後の、トランジスタ150近傍の断面図である。
【0273】
図28に示す酸化物半導体膜110は、酸化物半導体膜110に接する膜(ここでは、
絶縁膜107、及び絶縁膜114)から酸素が移動することで、酸素欠損が補填される。
特に、本発明の一態様のタッチパネルにおいて、酸化物半導体膜110となる酸化物半導
体膜のスパッタリング成膜時に、酸素ガスを用い、絶縁膜107中に酸素を添加する場合
、絶縁膜107は過剰酸素領域を有する。また、酸化物半導体膜111となる酸化物半導
体膜のスパッタリング成膜時に、酸素ガスを用い、絶縁膜116中に酸素を添加するため
、絶縁膜116は過剰酸素領域を有する。よって、該過剰酸素領域を有する絶縁膜に挟ま
れた酸化物半導体膜110は、酸素欠損が好適に補填される。
【0274】
また、絶縁膜107の下方には、絶縁膜106が設けられており、絶縁膜114、11
6の上方には、絶縁膜118が設けられている。絶縁膜106、118を酸素透過性が低
い材料、例えば、窒化シリコン等により形成することで、絶縁膜107、114、116
中に含まれる酸素を酸化物半導体膜110側に閉じ込めることができるため、好適に酸化
物半導体膜110に酸素を移動させることが可能となる。なお、絶縁膜118は、外部か
らの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が、トランジスタ150に
含まれる酸化物半導体膜110へ拡散するのを防ぐ効果も奏する。
【0275】
また、絶縁膜118は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。そのため、
絶縁膜118を形成することで、絶縁膜118に接する酸化物半導体膜111、111a
は、水素及び窒素のいずれか一方または双方が添加されることで、キャリア密度が高くな
り、酸化物導電膜として機能することができる。
【0276】
なお、酸化物半導体膜111、111aの抵抗率の低下に伴い、図26(C)と図27
(A)に示す酸化物半導体膜111、111aのハッチングを変えて図示している。また
、この時点でトランジスタ150が作製される。
【0277】
酸化物半導体膜111、111aの抵抗率は、少なくとも酸化物半導体膜110よりも
低く、好ましくは、1×10-3Ωcm以上1×10Ωcm未満、さらに好ましくは、
1×10-3Ωcm以上1×10-1Ωcm未満であるとよい。
【0278】
次に、絶縁膜118上に絶縁膜119を形成し、絶縁膜118、119の所望の領域が
残るようにパターニングし、その後不要な領域をエッチングすることで開口142を形成
する(図27(B)参照)。
【0279】
絶縁膜119としては、上述した材料の中から選択することで形成できる。なお、本実
施の形態においては、絶縁膜119としてアクリル樹脂を用いる。
【0280】
開口142としては、ドレイン電極112bが露出するように形成する。開口142の
形成方法としては、例えば、ドライエッチング法を用いることができる。ただし、開口1
42の形成方法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、またはドライエッ
チング法とウエットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。なお、開口14
2を形成するためのエッチング工程によって、ドレイン電極112bの膜厚が減少する場
合がある。
【0281】
なお、前述の開口141を形成する工程を行わずに、開口142の形成する工程におい
て絶縁膜114、116、118,119に開口を連続して形成してもよい。このような
工程とすることで、本発明の一態様のタッチパネルの作製工程を減らすことが可能となる
ため、製造コストを抑制することができる。
【0282】
次に、開口142を覆うように、絶縁膜119上に導電膜を成膜し、該導電膜の所望の
領域が残るようにパターニングし、その後不要な領域をエッチングすることで、導電膜1
20を形成する(図27(C)参照)。
【0283】
導電膜120としては、上述の列挙した材料の中から選択することで形成できる。なお
、本実施の形態においては、導電膜120としてインジウム錫酸化物を用いる。
【0284】
また、導電膜120の形成に伴い、容量素子160が作製される。容量素子160は、
一対の電極間に誘電体層が挟持された構造であり、一対の電極の一方が酸化物半導体膜1
11であり、一対の電極の他方が導電膜120である。また、絶縁膜118、119が容
量素子160の誘電体層として機能する。
【0285】
以上の工程によって、図8に示すタッチパネル310が有するトランジスタ150、容
量素子160及び液晶素子308を構成する一対の電極を作製することができる。
【0286】
なお、図27(C)には絶縁膜119を設ける構成を示したが、絶縁膜119を設けな
い構成としてもよい(図29(A)参照)。このとき、絶縁膜118が容量素子160の
誘電体膜として機能する。また、トランジスタ150においてゲート電極104がなく、
酸化物半導体膜111aが第1のゲート電極として機能する構成であってもよい(図29
(B)参照)。図29(B)は図27(C)と比較して、ゲート電極104及び絶縁膜1
06を設けない点が異なる。図29(B)に示すトランジスタ150は、いわゆるトップ
ゲート型のトランジスタである。
【0287】
以上、本実施の形態で示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0288】
[構成例2]
本構成例では、タッチパネルが有する表示素子として有機EL素子を用いた例を示す。
【0289】
〔断面構成例1〕
以下では、本発明の一態様のタッチパネルの断面構成の例について、図面を参照して説
明する。なお、上記と重複する部分については説明を省略し、相違点について説明する。
【0290】
図13に示すタッチパネル320は、表示部381に発光素子280を備える。発光素
子280は導電膜120、EL層281、導電膜282を有する。導電膜120は反射膜
としての機能を有し、絶縁膜114、116、118、119に設けられた開口を介して
トランジスタ150のドレイン電極112bと電気的に接続される。導電膜282は下部
電極とも呼べる。導電膜282としては可視光を透過する材料を用いる。また導電膜28
2が半反射膜としての機能を有していてもよい。導電膜282は上部電極とも呼べる。導
電膜120と導電膜282の間に電圧を印加することで、EL層281に含まれる発光層
が呈する光を基板372に設けられた着色膜(例えば着色膜331R)を介して取り出す
ことができる。図13に示すタッチパネル320は、いわゆるトップエミッション型の表
示装置を備える。なお、発光素子280の具体的な構成については、実施の形態4にて後
述する。
【0291】
絶縁膜119上に、隔壁として機能する絶縁膜391が設けられる。絶縁膜391は、
隣接する2つの画素の導電膜120の端部と重ねて設けられる。EL層281は導電膜1
20及び絶縁膜391上に設けられる。また導電膜282は少なくとも導電膜120と重
畳するように、EL層281上に設けられる。例えば、図13に示すタッチパネル320
において導電膜282は、一の方向に隣接する2つの画素が有する2つの導電膜120の
隙間と重畳する位置に開口385を有する。また、導電膜282は一の方向に隣接する複
数の画素(例えば30画素、60画素等)を含むブロックごとに、一の方向に隣接する2
つの画素が有する2つの導電膜120の隙間と重なる位置に開口385を有していてもよ
い。
【0292】
また、絶縁膜116上の開口385と重なる位置に酸化物半導体膜111が設けられて
いる。酸化物半導体膜111は、トランジスタ150の第2のゲート電極として機能する
酸化物半導体膜111aと同様の材料を用いて同時に形成することができるため、工程を
簡略化することができる。
【0293】
タッチパネル320が有するタッチセンサは、基板372に設けられた導電膜334と
、基板102に設けられた酸化物半導体膜111と、によって構成される。導電膜334
と酸化物半導体膜111の間に形成される容量を利用して、被検知体の近接または接触を
検出することができる。
【0294】
ここで、タッチセンサを構成する電極の配置について説明する。図14図13に示す
タッチパネル320が有する、一対のタッチセンサ電極の上面模式図である。図14に示
す一点鎖線Z5-Z6は、図13に示す表示部381と対応する。
【0295】
タッチセンサの一方の電極である導電膜334はY方向に延在して設けられている。ま
たタッチセンサの他方の電極である酸化物半導体膜111はX方向に延在し、導電膜33
4と交差する領域を有する。なお、導電膜334はX方向に延在し、酸化物半導体膜11
1はY方向に延在していてもよい。
【0296】
なお、タッチパネル320は基板102と基板372とがシール材151によって貼り
合わされている。基板102、基板372及びシール材151に囲まれた領域は中空であ
るが、該領域が封止材で満たされていてもよい。また着色膜331R、331G及び遮光
膜332上に絶縁膜を有しない構成としているが、前述したオーバーコートとして機能す
る絶縁膜355を設けてもよい。
【0297】
また、図13ではEL層281が複数の画素において共通である発光素子280の構成
を示しているが、EL層281が画素ごとに設けられていてもよい(図15参照)。この
場合、各画素に要求される発光色に合わせた色の光を呈する発光層を有するEL層281
を画素ごとに設ければよい。また、着色膜(例えば着色膜331R、331G等)を設け
ない構成としてもよい。
【0298】
〔断面構成例2〕
図16には、図13とは一部の構成の異なるタッチパネルの断面構成例について示して
いる。なお、上記と重複する部分については説明を省略し、相違点について説明する。
【0299】
図16では、基板372の表示面側に導電膜334、341及びFPC375を設けな
い構成である。トランジスタ150の第2のゲート電極と同様の材料を用いて同時に形成
される酸化物半導体膜111が、タッチセンサの一対の電極として機能する。具体的には
、一方向に延在する酸化物半導体膜111b(図示しない)と、酸化物半導体膜111b
と直交する方向に延在する導電膜104aと電気的に接続される酸化物半導体膜111c
とが、タッチセンサの一対の電極として機能する。このような構成とすることで、図13
に示す構成よりもさらに工程を簡略化することができる。なお、酸化物半導体膜111c
は、絶縁膜108、114、116に設けられた開口333を介して導電膜104aと電
気的に接続される。また導電膜104aは、ゲート電極104と同様の材料を用いて同時
に形成される。
【0300】
ここで、タッチセンサを構成する電極の配置について説明する。図17図16に示す
タッチパネル320が有する、一対のタッチセンサ電極の上面模式図である。図17に示
す一点鎖線Z7-Z8は、図16に示す表示部381と対応する。
【0301】
タッチセンサの一方の電極である酸化物半導体膜111bはY方向に延在して設けられ
ている。またタッチセンサの他方の電極である酸化物半導体膜111cは、開口333を
介して導電膜104aと電気的に接続される。導電膜104aはX方向に延在し、酸化物
半導体膜111bと交差する領域を有する。
【0302】
なお、発光素子280を構成する一方の電極として機能する導電膜282を、タッチセ
ンサの他方の電極として用いてもよい。図18に示すタッチパネル320は、タッチセン
サの一方の電極である酸化物半導体膜111がX方向に延在して設けられる。また導電膜
282はY方向に延在して設けられ、酸化物半導体膜111と交差する領域を有する。図
19は図18に示すタッチパネル320が有する、一対のタッチセンサ電極の上面模式図
であり、図19に示す一点鎖線Z9-Z10は、図18に示す表示部381と対応する。
導電膜282が有する開口385は、酸化物半導体膜111が延在する方向と直交する方
向に延在し、開口385の一部は酸化物半導体膜111と重畳する。
【0303】
〔断面構成例3〕
図20には、上記構成例とは一部の構成の異なるタッチパネルの断面構成例について示
している。なお、上記と重複する部分については説明を省略し、相違点について説明する
【0304】
図20に示すタッチパネル320は、表示部381に発光素子280を備える。発光素
子280は導電膜285、EL層281、導電膜286を有する。導電膜285は、絶縁
膜114、116、118、119に設けられた開口を介してトランジスタ150のドレ
イン電極112bと電気的に接続される。導電膜285としては可視光を透過する材料を
用いる。また導電膜285が半反射膜としての機能を有していてもよい。導電膜286は
反射膜としての機能を有する。導電膜285と導電膜286の間に電圧を印加することで
、EL層281に含まれる発光層が呈する光を基板102に設けられた着色膜(例えば着
色膜331R)を介して取り出すことができる。図20に示すタッチパネル320は、い
わゆるボトムエミッション型の表示装置を備える。
【0305】
遮光膜332、着色膜331R、331Gは絶縁膜118上に設けられる。遮光膜33
2は、絶縁膜391と重畳する位置に設けられる。また着色膜331R、331Gは、導
電膜285と重畳する位置に設けられる。またEL層281、導電膜286は導電膜28
5上にこの順で設けられる。
【0306】
導電膜334、341及びFPC375が基板102の表示面側(基板372と反対側
)に設けられている。導電膜334及び酸化物半導体膜111を一対の電極として、タッ
チパネル320が有するタッチセンサが構成される。導電膜334を基板102の表示面
側に設けることで、一対の電極間に他の導電膜(例えば、導電膜285、導電膜286等
)を挟まない構成とすることができる。また、酸化物半導体膜111は可視光を透過する
ため、発光素子280が呈する光の経路となる導電膜285と重畳する位置にも設けるこ
とができる。よって、酸化物半導体膜111を大面積にわたって形成することができ、タ
ッチセンサの容量値を大きくすることができる。
【0307】
ここで、タッチセンサを構成する電極の配置について説明する。図21図20に示す
タッチパネル320が有する、一対のタッチセンサ電極の上面模式図である。図21に示
す一点鎖線Z11-Z12は、図20に示す表示部381と対応する。
【0308】
タッチセンサの一方の電極である導電膜334はY方向に延在して設けられている。ま
たタッチセンサの他方の電極である酸化物半導体膜111はX方向に延在し、導電膜33
4と交差する領域を有する。なお、導電膜334はX方向に延在し、酸化物半導体膜11
1はY方向に延在していてもよい。
【0309】
なお、図20ではEL層281が複数の画素において共通である発光素子280の構成
を示しているが、EL層281が画素ごとに設けられていてもよい(図22参照)。この
場合、各画素に要求される発光色に合わせた色の光を呈する発光層を有するEL層281
を画素ごとに設ければよい。また、着色膜(例えば着色膜331R、331G等)を設け
ない構成としてもよい。
【0310】
〔断面構成例4〕
図23には、図20とは一部の構成の異なるタッチパネルの断面構成例について示して
いる。なお、上記と重複する部分については説明を省略し、相違点について説明する。
【0311】
図23では、基板102の表示面側に導電膜334、341及びFPC375を設けな
い構成である。トランジスタ150の第2のゲート電極と同様の材料を用いて同時に形成
される酸化物半導体膜111が、タッチセンサの一対の電極として機能する。具体的には
、一方向に延在する酸化物半導体膜111bと、酸化物半導体膜111bと直交する方向
に延在する導電膜104aと電気的に接続される酸化物半導体膜111cとが、タッチセ
ンサの一対の電極として機能する。このような構成とすることで、図20に示す構成より
もさらに工程を簡略化することができる。なお、酸化物半導体膜111cは、絶縁膜10
8、114、116に設けられた開口333を介して導電膜104aと電気的に接続され
る。また導電膜104aは、ゲート電極104と同様の材料を用いて同時に形成される。
導電膜104aは遮光膜332と重畳する位置に設けることで、画素の開口率を維持しつ
つタッチセンサの一対の電極を構成することができるため好ましい。
【0312】
ここで、タッチセンサを構成する電極の配置について説明する。図24図23に示す
タッチパネル320が有する、一対のタッチセンサ電極の上面模式図である。図24に示
す一点鎖線Z13-Z14は、図23に示す表示部381と対応する。
【0313】
タッチセンサの一方の電極である酸化物半導体膜111bはY方向に延在して設けられ
ている。またタッチセンサの他方の電極である酸化物半導体膜111cは、開口333を
介して導電膜104aと電気的に接続される。導電膜104aはX方向に延在し、酸化物
半導体膜111bと交差する領域を有する。
【0314】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0315】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の液晶表示装置のトランジスタ及び容量素子に適用
可能な酸化物半導体の一例について説明する。以下では、酸化物半導体の構造について説
明する。
【0316】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置
されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略
平行」とは、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。
また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態
をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、
二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0317】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表
す。
【0318】
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体とに分けら
れる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC-OS(C Axis Aligned
Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物
半導体、nc-OS(nanocrystalline Oxide Semicond
uctor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous l
ike Oxide Semiconductor)、非晶質酸化物半導体などがある。
【0319】
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物
半導体とに分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC-
OS、多結晶酸化物半導体、nc-OSなどがある。
【0320】
非晶質構造の定義としては、一般に、準安定状態で固定化していないこと、等方的であ
って不均質構造を持たないことなどが知られている。また、結合角度が柔軟であり、短距
離秩序性は有するが、長距離秩序性を有さない構造と言い換えることもできる。
【0321】
逆の見方をすると、本質的に安定な酸化物半導体の場合、完全な非晶質(comple
tely amorphous)酸化物半導体と呼ぶことはできない。また、等方的でな
い(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化
物半導体と呼ぶことはできない。ただし、a-like OSは、微小な領域において周
期構造を有するものの、鬆(ボイドともいう。)を有し、不安定な構造である。そのため
、物性的には非晶質酸化物半導体に近いといえる。
【0322】
<CAAC-OS>
まずは、CAAC-OSについて説明する。
【0323】
CAAC-OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物
半導体の一つである。
【0324】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Micr
oscope)によって、CAAC-OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高
分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一
方、高分解能TEM像ではペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーと
もいう。)を明確に確認することができない。そのため、CAAC-OSは、結晶粒界に
起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0325】
以下では、TEMによって観察したCAAC-OSについて説明する。図30(A)に
、試料面と略平行な方向から観察したCAAC-OSの断面の高分解能TEM像を示す。
高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberratio
n Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を
、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像の取得は、例えば、
日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fなどによって行う
ことができる。
【0326】
図30(A)の領域(1)を拡大したCs補正高分解能TEM像を図30(B)に示す
図30(B)より、ペレットにおいて、金属原子が層状に配列していることを確認でき
る。金属原子の各層の配列は、CAAC-OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)
または上面の凹凸を反映しており、CAAC-OSの被形成面または上面と平行となる。
【0327】
図30(B)に示すように、CAAC-OSは特徴的な原子配列を有する。図30(C
)は、特徴的な原子配列を、補助線で示したものである。図30(B)および図30(C
)より、ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあり、ペレッ
トとペレットとの傾きにより生じる隙間の大きさは0.8nm程度であることがわかる。
したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともでき
る。また、CAAC-OSを、CANC(C-Axis Aligned nanocr
ystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0328】
ここで、Cs補正高分解能TEM像をもとに、基板5120上のCAAC-OSのペレ
ット5100の配置を模式的に示すと、レンガまたはブロックが積み重なったような構造
となる(図30(D)参照。)。図30(C)で観察されたペレットとペレットとの間で
傾きが生じている箇所は、図30(D)に示す領域5161に相当する。
【0329】
また、図31(A)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC-OSの平面のC
s補正高分解能TEM像を示す。図31(A)の領域(1)、領域(2)および領域(3
)を拡大したCs補正高分解能TEM像を、それぞれ図31(B)、図31(C)および
図31(D)に示す。図31(B)、図31(C)および図31(D)より、ペレットは
、金属原子が三角形状、四角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しか
しながら、異なるペレット間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0330】
次に、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)によって解析したC
AAC-OSについて説明する。例えば、InGaZnOの結晶を有するCAAC-O
Sに対し、out-of-plane法による構造解析を行うと、図32(A)に示すよ
うに回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGa
ZnOの結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC-OSの結晶がc軸配向
性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0331】
なお、CAAC-OSのout-of-plane法による構造解析では、2θが31
°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°
近傍のピークは、CAAC-OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれること
を示している。より好ましいCAAC-OSは、out-of-plane法による構造
解析では、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さない。
【0332】
一方、CAAC-OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin-pla
ne法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、I
nGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。CAAC-OSの場合は、2θを5
6°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析
(φスキャン)を行っても、図32(B)に示すように明瞭なピークは現れない。これに
対し、InGaZnOの単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°近傍に固定してφ
スキャンした場合、図32(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属される
ピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC-OSは
、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
【0333】
次に、電子回折によって解析したCAAC-OSについて説明する。例えば、InGa
ZnOの結晶を有するCAAC-OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nm
の電子線を入射させると、図33(A)に示すような回折パターン(制限視野透過電子回
折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO
の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても
、CAAC-OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に
略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプロー
ブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図33(B)に示す。図3
3(B)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても
、CAAC-OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる
。なお、図33(B)における第1リングは、InGaZnOの結晶の(010)面お
よび(100)面などに起因すると考えられる。また、図33(B)における第2リング
は(110)面などに起因すると考えられる。
【0334】
上述したように、CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の
結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、逆の見方をす
るとCAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
【0335】
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金
属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸
素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、
二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
【0336】
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合が
ある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャ
リア発生源となる場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップと
なる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
【0337】
不純物および酸素欠損の少ないCAAC-OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体で
ある。具体的には、8×1011個/cm未満、好ましくは1×1011/cm未満
、さらに好ましくは1×1010個/cm未満であり、1×10-9個/cm以上の
キャリア密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真
性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC-OSは、不純物濃度が低
く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
【0338】
<nc-OS>
次に、nc-OSについて説明する。
【0339】
nc-OSは、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明
確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc-OSに含まれる結晶部は
、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。な
お、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸
化物半導体と呼ぶことがある。nc-OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界
を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC-OSにおけるペレット
と起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc-OSの結晶部をペレットと
呼ぶ場合がある。
【0340】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上
3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるペ
レット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。し
たがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導
体と区別が付かない場合がある。例えば、nc-OSに対し、ペレットよりも大きい径の
X線を用いた場合、out-of-plane法による解析では、結晶面を示すピークは
検出されない。また、nc-OSに対し、ペレットよりも大きいプローブ径(例えば50
nm以上)の電子線を用いる電子回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが
観測される。一方、nc-OSに対し、ペレットの大きさと近いかペレットより小さいプ
ローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、
nc-OSに対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高
い領域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域内に複数のスポットが観測され
る場合がある。
【0341】
このように、ペレット(ナノ結晶)間では結晶方位が規則性を有さないことから、nc
-OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有
する酸化物半導体、またはNANC(Non-Aligned nanocrystal
s)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0342】
nc-OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため
、nc-OSは、a-like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くな
る。ただし、nc-OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのた
め、nc-OSは、CAAC-OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0343】
<a-like OS>
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物
半導体である。
【0344】
a-like OSは、高分解能TEM像において鬆が観察される場合がある。また、
高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認
することのできない領域と、を有する。
【0345】
鬆を有するため、a-like OSは、不安定な構造である。以下では、a-lik
e OSが、CAAC-OSおよびnc-OSと比べて不安定な構造であることを示すた
め、電子照射による構造の変化を示す。
【0346】
電子照射を行う試料として、a-like OS(試料Aと表記する。)、nc-OS
(試料Bと表記する。)およびCAAC-OS(試料Cと表記する。)を準備する。いず
れの試料もIn-Ga-Zn酸化物である。
【0347】
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試
料は、いずれも結晶部を有することがわかる。
【0348】
なお、どの部分を一つの結晶部と見なすかの判定は、以下のように行えばよい。例えば
、InGaZnOの結晶の単位格子は、In-O層を3層有し、またGa-Zn-O層
を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。こ
れらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度
であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、格子縞
の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnOの結晶部と
見なすことができる。なお、格子縞は、InGaZnOの結晶のa-b面に対応する。
【0349】
図34は、各試料の結晶部(22箇所から45箇所)の平均の大きさを調査した例であ
る。ただし、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図34より、a-li
ke OSは、電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。具体
的には、図34中に(1)で示すように、TEMによる観察初期においては1.2nm程
度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、累積照射量が4.2×10/n
においては2.6nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc-O
SおよびCAAC-OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×10
/nmまでの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。具体的には、
図34中の(2)および(3)で示すように、電子の累積照射量によらず、nc-OSお
よびCAAC-OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.4nm程度および2.1nm程度
であることがわかる。
【0350】
このように、a-like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合が
ある。一方、nc-OSおよびCAAC-OSは、電子照射による結晶部の成長がほとん
ど見られないことがわかる。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-
OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
【0351】
また、鬆を有するため、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比
べて密度の低い構造である。具体的には、a-like OSの密度は、同じ組成の単結
晶の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc-OSの密度およびCAA
C-OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結
晶の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
【0352】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、
菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnOの密度は6.357g/cmとなる。よ
って、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体におい
て、a-like OSの密度は5.0g/cm以上5.9g/cm未満となる。ま
た、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において
、nc-OSの密度およびCAAC-OSの密度は5.9g/cm以上6.3g/cm
未満となる。
【0353】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異な
る単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積も
ることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わ
せる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少な
い種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
【0354】
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。
なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a-like OS、nc-OS
、CAAC-OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0355】
<CAAC-OSの成膜方法>
以下では、CAAC-OSの成膜方法の一例について説明する。
図35は、成膜室内の模式図である。CAAC-OSは、スパッタリング法により成膜
することができる。
【0356】
図35に示すように、基板5220とターゲット5230とは向かい合うように配置し
ている。基板5220とターゲット5230との間にはプラズマ5240がある。また、
基板5220の下部には加熱機構5260が設けられている。図示しないが、ターゲット
5230は、バッキングプレートに接着されている。バッキングプレートを介してターゲ
ット5230と向かい合う位置には、複数のマグネットが配置される。マグネットの磁場
を利用して成膜速度を高めるスパッタリング法は、マグネトロンスパッタリング法と呼ば
れる。
【0357】
基板5220とターゲット5230との距離d(ターゲット-基板間距離(T-S間距
離)ともいう。)は0.01m以上1m以下、好ましくは0.02m以上0.5m以下と
する。成膜室内は、ほとんどが成膜ガス(例えば、酸素、アルゴン、または酸素を5体積
%以上の割合で含む混合ガス)で満たされ、0.01Pa以上100Pa以下、好ましく
は0.1Pa以上10Pa以下に制御される。ここで、ターゲット5230に一定以上の
電圧を印加することで、放電が始まり、プラズマ5240が確認される。なお、ターゲッ
ト5230の近傍には磁場によって、高密度プラズマ領域が形成される。高密度プラズマ
領域では、成膜ガスがイオン化することで、イオン5201が生じる。イオン5201は
、例えば、酸素の陽イオン(O)やアルゴンの陽イオン(Ar)などである。
【0358】
ターゲット5230は、複数の結晶粒を有する多結晶構造を有し、いずれかの結晶粒に
は劈開面が含まれる。一例として、図36に、ターゲット5230に含まれるInMZn
(元素Mは、例えばAl、Ga、YまたはSn)の結晶構造を示す。なお、図36
A)は、b軸に平行な方向から観察した場合のInMZnOの結晶構造である。InM
ZnOの結晶では、酸素原子が負の電荷を有することにより、近接する二つのM-Zn
-O層の間に斥力が生じている。そのため、InMZnOの結晶は、近接する二つのM
-Zn-O層の間に劈開面を有する。
【0359】
高密度プラズマ領域で生じたイオン5201は、電界によってターゲット5230側に
加速され、やがてターゲット5230と衝突する。このとき、劈開面から平板状またはペ
レット状のスパッタ粒子であるペレット5200が剥離する(図35参照)。ペレット5
200は、図36(A)に示す二つの劈開面に挟まれた部分である。よって、ペレット5
200のみ抜き出すと、その断面は図36(B)のようになり、上面は図36(C)のよ
うになることがわかる。なお、ペレット5200は、イオン5201の衝突の衝撃によっ
て、構造に歪みが生じる場合がある。
【0360】
ペレット5200は、三角形、例えば正三角形の平面を有する平板状またはペレット状
のスパッタ粒子である。または、ペレット5200は、六角形、例えば正六角形の平面を
有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子である。ただし、ペレット5200の形状
は、三角形、六角形に限定されない、例えば、三角形が複数個合わさった形状となる場合
がある。例えば、三角形(例えば、正三角形)が2個合わさった四角形(例えば、ひし形
)となる場合もある。
【0361】
ペレット5200は、成膜ガスの種類などに応じて厚さが決定する。例えば、ペレット
5200は、厚さを0.4nm以上1nm以下、好ましくは0.6nm以上0.8nm以
下とする。また、例えば、ペレット5200は、幅を1nm以上100nm以下、好まし
くは2nm以上50nm以下、さらに好ましくは3nm以上30nm以下とする。例えば
、In-M-Zn酸化物を有するターゲット5230にイオン5201を衝突させる。そ
うすると、M-Zn-O層、In-O層およびM-Zn-O層の3層を有するペレット5
200が剥離する。なお、ペレット5200の剥離に伴い、ターゲット5230から粒子
5203も弾き出される。粒子5203は、原子1個または原子数個の集合体を有する。
そのため、粒子5203を原子状粒子(atomic particles)と呼ぶこと
もできる。
【0362】
ペレット5200は、プラズマ5240を通過する際に、表面が負または正に帯電する
場合がある。例えば、ペレット5200がプラズマ5240中にあるO2-から負の電荷
を受け取る場合がある。その結果、ペレット5200の表面の酸素原子が負に帯電する場
合がある。また、ペレット5200は、プラズマ5240を通過する際に、プラズマ52
40中のインジウム、元素M、亜鉛または酸素などと結合することで成長する場合がある
【0363】
プラズマ5240を通過したペレット5200および粒子5203は、基板5220の
表面に達する。なお、粒子5203の一部は、質量が小さいため真空ポンプなどによって
外部に排出される場合がある。
【0364】
次に、基板5220の表面におけるペレット5200および粒子5203の堆積につい
図37を用いて説明する。
【0365】
まず、一つ目のペレット5200が基板5220に堆積する。ペレット5200は平板
状であるため、平面側を基板5220の表面に向けて堆積する。このとき、ペレット52
00の基板5220側の表面の電荷が、基板5220を介して抜ける。
【0366】
次に、二つ目のペレット5200が、基板5220に達する。このとき、既に堆積して
いるペレット5200の表面、および二つ目のペレット5200の表面が電荷を帯びてい
るため、互いに反発し合う力が生じる。その結果、二つ目のペレット5200は、既に堆
積しているペレット5200上を避け、基板5220の表面の少し離れた場所に平面側を
向けて堆積する。これを繰り返すことで、基板5220の表面には、無数のペレット52
00が一層分の厚みだけ堆積する。また、ペレット5200間には、ペレット5200の
堆積していない領域が生じる(図37(A)参照)。
【0367】
次に、プラズマからエネルギーを受け取った粒子5203が基板5220の表面に達す
る。粒子5203は、ペレット5200の表面などの活性な領域には堆積することができ
ない。そのため、粒子5203は、ペレット5200の堆積していない領域へ動き、ペレ
ット5200の側面に付着する。粒子5203は、プラズマから受け取ったエネルギーに
より結合手が活性状態となることで、ペレット5200と化学的に連結して横成長部52
02を形成する(図37(B)参照)。
【0368】
さらに、横成長部5202が横方向に成長(ラテラル成長ともいう。)することで、ペ
レット5200間を連結させる(図37(C)参照)。このように、ペレット5200の
堆積していない領域を埋めるまで横成長部5202が形成される。このメカニズムは、原
子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法の堆積メカニ
ズムに類似する。
【0369】
したがって、ペレット5200がそれぞれ異なる方向を向けて堆積する場合でも、ペレ
ット5200間を粒子5203がラテラル成長しながら埋めるため、明確な結晶粒界が形
成されることがない。また、ペレット5200間を、粒子5203が滑らかに結びつける
ため、単結晶とも多結晶とも異なる結晶構造が形成される。言い換えると、微小な結晶領
域(ペレット5200)間に歪みを有する結晶構造が形成される。このように、結晶領域
間を埋める領域は、歪んだ結晶領域であるため、該領域を指して非晶質構造と呼ぶのは適
切ではないと考えられる。
【0370】
次に、新たなペレット5200が、平面側を表面に向けて堆積する(図37(D)参照
)。そして、粒子5203が、ペレット5200の堆積していない領域を埋めるように堆
積することで横成長部5202を形成する(図37(E)参照)。こうして、粒子520
3がペレット5200の側面に付着し、横成長部5202がラテラル成長することで、二
層目のペレット5200間を連結させる(図37(F)参照)。m層目(mは二以上の整
数。)が形成されるまで成膜は続き、積層体を有する薄膜構造となる。
【0371】
なお、ペレット5200の堆積の仕方は、基板5220の表面温度などによっても変化
する。例えば、基板5220の表面温度が高いと、ペレット5200が基板5220の表
面でマイグレーションを起こす。その結果、ペレット5200間が、粒子5203を介さ
ずに連結する割合が増加するため、より配向性の高いCAAC-OSとなる。CAAC-
OSを成膜する際の基板5220の表面温度は、室温以上340℃未満、好ましくは室温
以上300℃以下、より好ましくは100℃以上250℃以下、さらに好ましくは100
℃以上200℃以下である。したがって、基板5220として第8世代以上の大面積基板
を用いた場合でも、CAAC-OSの成膜に起因した反りなどはほとんど生じないことが
わかる。
【0372】
一方、基板5220の表面温度が低いと、ペレット5200が基板5220の表面でマ
イグレーションを起こしにくくなる。その結果、ペレット5200同士が積み重なること
で配向性の低いnc-OSなどとなる。nc-OSでは、ペレット5200が負に帯電し
ていることにより、ペレット5200は一定間隔を空けて堆積する可能性がある。したが
って、配向性は低いものの、僅かに規則性を有することにより、非晶質酸化物半導体と比
べて緻密な構造となる。
【0373】
また、CAAC-OSにおいて、ペレット同士の隙間が極めて小さくなることで、一つ
の大きなペレットが形成される場合がある。一つの大きなペレットの内部は単結晶構造を
有する。例えば、ペレットの大きさが、上面から見て10nm以上200nm以下、15
nm以上100nm以下、または20nm以上50nm以下となる場合がある。
【0374】
以上のような成膜モデルにより、ペレットが基板の表面に堆積していくと考えられる。
被形成面が結晶構造を有さない場合においても、CAAC-OSの成膜が可能であること
から、エピタキシャル成長とは異なる成長機構である上述した成膜モデルの妥当性が高い
ことがわかる。また、上述した成膜モデルであるため、CAAC-OSおよびnc-OS
は、大面積のガラス基板などであっても均一な成膜が可能であることがわかる。例えば、
基板の表面(被形成面)の構造が非晶質構造(例えば非晶質酸化シリコン)であっても、
CAAC-OSを成膜することは可能である。
【0375】
また、被形成面である基板の表面に凹凸がある場合でも、その形状に沿ってペレットが
配列することがわかる。
【0376】
また、上述した成膜モデルより、結晶性の高いCAAC-OSを成膜するためには以下
のようにすればよいことがわかる。まず、平均自由行程を長くするために、より高真空状
態で成膜する。次に、基板近傍における損傷を低減するために、プラズマのエネルギーを
弱くする。次に、被形成面に熱エネルギーを加え、プラズマによる損傷を成膜するたびに
治癒する。
【0377】
また、上述した成膜モデルは、ターゲットが複数の結晶粒を有するIn-M-Zn酸化
物のような複合酸化物の多結晶構造を有し、いずれかの結晶粒には劈開面が含まれる場合
に限定されない。例えば、酸化インジウム、元素Mの酸化物および酸化亜鉛を有する混合
物のターゲットを用いた場合にも適用することができる。
【0378】
混合物のターゲットは劈開面を有さないため、スパッタされるとターゲットからは原子
状粒子が剥離する。成膜時には、ターゲット近傍にプラズマの強電界領域が形成されてい
る。そのため、ターゲットから剥離した原子状粒子は、プラズマの強電界領域の作用で連
結して横成長する。例えば、まず原子状粒子であるインジウムが連結して横成長してIn
-O層からなるナノ結晶となる。次に、それを補完するように上下にM-Zn-O層が結
合する。このように、混合物のターゲットを用いた場合でも、ペレットが形成される可能
性がある。そのため、混合物のターゲットを用いた場合でも、上述した成膜モデルを適用
することができる。
【0379】
ただし、ターゲット近傍にプラズマの強電界領域が形成されていない場合、ターゲット
から剥離した原子状粒子のみが基板表面に堆積することになる。その場合も、基板表面に
おいて原子状粒子が横成長する場合がある。ただし、原子状粒子の向きが一様でないため
、得られる薄膜における結晶の配向性も一様にはならない。即ち、nc-OSなどとなる
【0380】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1に示すトランジスタとは異なる構成のトランジスタの
構成について、図38乃至図41を参照して説明する。
【0381】
<トランジスタの構成例1>
図38(A)は、トランジスタ270の上面図であり、図38(B)は、図38(A)
に示す一点鎖線A1-A2間における切断面の断面図に相当し、図38(C)は、図38
(A)に示す一点鎖線B1-B2間における切断面の断面図に相当する。なお、一点鎖線
A1-A2方向をチャネル長方向、一点鎖線B1-B2方向をチャネル幅方向と呼称する
場合がある。
【0382】
トランジスタ270は、基板202上の第1のゲート電極として機能する導電膜204
と、基板202及び導電膜204上の絶縁膜206と、絶縁膜206上の絶縁膜207と
、絶縁膜207上の酸化物半導体膜208と、酸化物半導体膜208に電気的に接続され
るソース電極として機能する導電膜212aと、酸化物半導体膜208に電気的に接続さ
れるドレイン電極として機能する導電膜212bと、酸化物半導体膜208、導電膜21
2a及び導電膜212b上の絶縁膜214、216と、絶縁膜216上の酸化物半導体膜
211bと、を有する。また、酸化物半導体膜211b上に絶縁膜218が設けられる。
【0383】
また、トランジスタ270において、絶縁膜214及び絶縁膜216は、トランジスタ
270の第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。また、酸化物半導体膜211aは、
絶縁膜214及び絶縁膜216に設けられる開口部252cを介して、導電膜212bと
接続される。酸化物半導体膜211aは、例えば、表示装置に用いる画素電極としての機
能を有する。また、トランジスタ270において、酸化物半導体膜211bは、第2のゲ
ート電極(バックゲート電極ともいう)として機能する。
【0384】
また、図38(C)に示すように酸化物半導体膜211bは、絶縁膜206、207、
絶縁膜214及び絶縁膜216に設けられる開口部252a、252bにおいて、第1の
ゲート電極として機能する導電膜204に接続される。よって、導電膜220bと酸化物
半導体膜211bとは、同じ電位が与えられる。
【0385】
なお、本実施の形態においては、開口部252a、252bを設け、酸化物半導体膜2
11bと導電膜204を接続する構成について例示したが、これに限定されない。例えば
、開口部252aまたは開口部252bのいずれか一方の開口部のみを形成し、酸化物半
導体膜211bと導電膜204を接続する構成、または開口部252a及び開口部252
bを設けずに、酸化物半導体膜211bと導電膜204を接続しない構成としてもよい。
なお、酸化物半導体膜211bと導電膜204を接続しない構成の場合、酸化物半導体膜
211bと導電膜204には、それぞれ異なる電位を与えることができる。
【0386】
また、図38(B)に示すように、酸化物半導体膜208は、第1のゲート電極として
機能する導電膜204と、第2のゲート電極として機能する酸化物半導体膜211bのそ
れぞれと対向するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている
。第2のゲート電極として機能する酸化物半導体膜211bのチャネル長方向の長さ及び
チャネル幅方向の長さは、酸化物半導体膜208のチャネル長方向の長さ及びチャネル幅
方向の長さよりもそれぞれ長く、酸化物半導体膜208の全体は、絶縁膜214及び絶縁
膜216を介して酸化物半導体膜211bに覆われている。また、第2のゲート電極とし
て機能する酸化物半導体膜211bと第1のゲート電極として機能する導電膜204とは
、絶縁膜206、207、絶縁膜214及び絶縁膜216に設けられる開口部252a、
252bにおいて接続されるため、酸化物半導体膜208のチャネル幅方向の側面は、絶
縁膜214及び絶縁膜216を介して第2のゲート電極として機能する酸化物半導体膜2
11bと対向している。
【0387】
別言すると、トランジスタ270のチャネル幅方向において、第1のゲート電極として
機能する導電膜204及び第2のゲート電極として機能する酸化物半導体膜211bは、
第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜206、207及び第2のゲート絶縁膜として
機能する絶縁膜214及び絶縁膜216に設けられる開口部において接続すると共に、第
1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜206、207並びに第2のゲート絶縁膜として
機能する絶縁膜214及び絶縁膜216を介して酸化物半導体膜208を囲む構成である
【0388】
このような構成を有することで、トランジスタ270に含まれる酸化物半導体膜208
を、第1のゲート電極として機能する導電膜204及び第2のゲート電極として機能する
酸化物半導体膜211bの電界によって電気的に囲むことができる。トランジスタ270
のように、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル領域が形成
される酸化物半導体膜を電気的に囲むトランジスタのデバイス構造をsurrounde
d channel(s-channel)構造と呼ぶことができる。
【0389】
トランジスタ270は、s-channel構造を有するため、第1のゲート電極とし
て機能する導電膜204によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に酸化物半導
体膜208に印加することができるため、トランジスタ270の電流駆動能力が向上し、
高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能である
ため、トランジスタ270を微細化することが可能となる。また、トランジスタ270は
、第1のゲート電極として機能する導電膜204及び第2のゲート電極として機能する酸
化物半導体膜211bによって囲まれた構造を有するため、トランジスタ270の機械的
強度を高めることができる。
【0390】
<トランジスタの構成例2>
次に、図38(A)(B)(C)に示すトランジスタ270と異なる構成例について、
図39(A)(B)(C)(D)を用いて説明する。図39(A)(B)は、図38(B
)(C)に示すトランジスタ270の変形例の断面図である。また、図39(C)(D)
は、図38(B)(C)に示すトランジスタ270の変形例の断面図である。
【0391】
図39(A)(B)に示すトランジスタ270Aは、図38(B)(C)に示すトラン
ジスタ270が有する酸化物半導体膜208を3層の積層構造としている。より具体的に
は、トランジスタ270Aが有する酸化物半導体膜208は、酸化物半導体膜208aと
、酸化物半導体膜208bと、酸化物半導体膜208cと、を有する。
【0392】
図39(C)(D)に示すトランジスタ270Bは、図38(B)(C)に示すトラン
ジスタ270が有する酸化物半導体膜208を2層の積層構造としている。より具体的に
は、トランジスタ270Bが有する酸化物半導体膜208は、酸化物半導体膜208bと
、酸化物半導体膜208cと、を有する。
【0393】
本実施の形態に示すトランジスタ270、270A及び270Bの構成は、実施の形態
1で説明したトランジスタ150の構成を参照できる。すなわち、基板202の材料及び
作製方法は、基板102を参照できる。導電膜204の材料及び作製方法は、ゲート電極
104を参照できる。絶縁膜206及び絶縁膜207の材料及び作製方法は、それぞれ絶
縁膜106及び絶縁膜107を参照できる。酸化物半導体膜208の材料及び作製方法は
、酸化物半導体膜110を参照できる。酸化物半導体膜211a及び酸化物半導体膜21
1bの材料及び作製方法は、酸化物半導体膜111を参照できる。導電膜212a及び導
電膜212bの材料及び作製方法は、ソース電極112a及びドレイン電極112bを参
照できる。絶縁膜214、絶縁膜216及び絶縁膜218の材料及び作製方法は、それぞ
れ絶縁膜114、絶縁膜116及び絶縁膜118を参照できる。
【0394】
ここで、酸化物半導体膜208、及び酸化物半導体膜208に接する絶縁膜のバンド構
造について、図40を用いて説明する。
【0395】
図40(A)は、絶縁膜207、酸化物半導体膜208a、208b、208c、及び
絶縁膜214を有する積層構造の膜厚方向のバンド構造の一例である。また、図40(B
)は、絶縁膜207、酸化物半導体膜208b、208c、及び絶縁膜214を有する積
層構造の膜厚方向のバンド構造の一例である。なお、バンド構造は、理解を容易にするた
め絶縁膜207、酸化物半導体膜208a、208b、208c、及び絶縁膜214の伝
導帯下端のエネルギー準位(Ec)を示す。
【0396】
また、図40(A)は、絶縁膜207、214として酸化シリコン膜を用い、酸化物半
導体膜208aとして金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1.2の金属酸
化物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜208bとし
て金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=4:2:4.1の金属酸化物ターゲットを用
いて形成される酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜208cとして金属元素の原子数
比をIn:Ga:Zn=1:1:1.2の金属酸化物ターゲットを用いて形成される酸化
物半導体膜を用いる構成のバンド図である。
【0397】
また、図40(B)は、絶縁膜207、214として酸化シリコン膜を用い、酸化物半
導体膜208bとして金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=4:2:4.1の金属酸
化物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜208cとし
て金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1.2の金属酸化物ターゲットを用
いて形成される酸化物半導体膜を用いる構成のバンド図である。
【0398】
図40(A)(B)に示すように、酸化物半導体膜208a、208b、208cにお
いて、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化ま
たは連続接合するともいうことができる。このようなバンド構造を有するためには、酸化
物半導体膜208aと酸化物半導体膜208bとの界面、または酸化物半導体膜208b
と酸化物半導体膜208cとの界面において、トラップ中心や再結合中心のような欠陥準
位を形成するような不純物が存在しないとする。
【0399】
酸化物半導体膜208a、208b、208cに連続接合を形成するためには、ロード
ロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(スパッタリング装置)を用いて各膜
を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。
【0400】
図40(A)(B)に示す構成とすることで酸化物半導体膜208bがウェル(井戸)
となり、上記積層構造を用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が酸化物半導体膜2
08bに形成されることがわかる。
【0401】
なお、酸化物半導体膜208a、208cを設けることにより、酸化物半導体膜208
bに形成されうるトラップ準位を酸化物半導体膜208bより遠ざけることができる。
【0402】
また、トラップ準位がチャネル領域として機能する酸化物半導体膜208bの伝導帯下
端のエネルギー準位(Ec)より真空準位から遠くなり、トラップ準位に電子が蓄積しや
すくなってしまうことがある。トラップ準位に電子が蓄積されることで、マイナスの固定
電荷となり、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。したがって
、トラップ準位が酸化物半導体膜208bの伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)より真
空準位に近くなるような構成にすると好ましい。このようにすることで、トラップ準位に
電子が蓄積しにくくなり、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると共に
、電界効果移動度を高めることができる。
【0403】
また、酸化物半導体膜208a、208cは、酸化物半導体膜208bよりも伝導帯下
端のエネルギー準位が真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体膜208bの伝導帯下
端のエネルギー準位と、酸化物半導体膜208a、208cの伝導帯下端のエネルギー準
位との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV
以下である。すなわち、酸化物半導体膜208a、208cの電子親和力と、酸化物半導
体膜208bの電子親和力との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2
eV以下、または1eV以下である。
【0404】
このような構成を有することで、酸化物半導体膜208bが主な電流経路となる。すな
わち、酸化物半導体膜208bは、チャネル領域としての機能を有し、酸化物半導体膜2
08a、208cは、酸化物絶縁膜としての機能を有する。また、酸化物半導体膜208
a、208cは、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜208bを構成する金属元素
の一種以上から構成される酸化物半導体膜であるため、酸化物半導体膜208aと酸化物
半導体膜208bとの界面、または酸化物半導体膜208bと酸化物半導体膜208cと
の界面において、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが
阻害されないため、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。
【0405】
また、酸化物半導体膜208a、208cは、チャネル領域の一部として機能すること
を防止するため、導電率が十分に低い材料を用いるものとする。そのため、酸化物半導体
膜208a、208cを、その物性及び/または機能から、それぞれ酸化物絶縁膜とも呼
ぶことができる。また、酸化物半導体膜208a、208cには、電子親和力(真空準位
と伝導帯下端のエネルギー準位との差)が酸化物半導体膜208bよりも小さく、伝導帯
下端のエネルギー準位が酸化物半導体膜208bの伝導帯下端のエネルギー準位と差分(
バンドオフセット)を有する材料を用いるものとする。また、ドレイン電圧の大きさに依
存したしきい値電圧の差が生じることを抑制するためには、酸化物半導体膜208a、2
08cの伝導帯下端のエネルギー準位が、酸化物半導体膜208bの伝導帯下端のエネル
ギー準位よりも真空準位に近い材料を用いると好適である。例えば、酸化物半導体膜20
8bの伝導帯下端のエネルギー準位と、酸化物半導体膜208a、208cの伝導帯下端
のエネルギー準位との差が、0.2eV以上、好ましくは0.5eV以上とすることが好
ましい。
【0406】
また、酸化物半導体膜208a、208cは、膜中にスピネル型の結晶構造が含まれな
いことが好ましい。酸化物半導体膜208a、208cの膜中にスピネル型の結晶構造を
含む場合、該スピネル型の結晶構造と他の領域との界面において、導電膜212a、21
2bの構成元素が酸化物半導体膜208bへ拡散してしまう場合がある。なお、酸化物半
導体膜208a、208cがCAAC-OSである場合、導電膜212a、212bの構
成元素、例えば、銅元素のブロッキング性が高くなり好ましい。
【0407】
酸化物半導体膜208a、208cの膜厚は、導電膜212a、212bの構成元素が
酸化物半導体膜208bに拡散することを抑制することのできる膜厚以上であって、絶縁
膜214から酸化物半導体膜208bへの酸素の供給を抑制する膜厚未満とする。例えば
、酸化物半導体膜208a、208cの膜厚が10nm以上であると、導電膜212a、
212bの構成元素が酸化物半導体膜208bへ拡散するのを抑制することができる。ま
た、酸化物半導体膜208a、208cの膜厚を100nm以下とすると、絶縁膜214
から酸化物半導体膜208bへ効果的に酸素を供給することができる。
【0408】
また、本実施の形態においては、酸化物半導体膜208a、208cとして、金属元素
の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1.2の金属酸化物ターゲットを用いて形成さ
れる酸化物半導体膜を用いる構成について例示したが、これに限定されない。例えば、酸
化物半導体膜208a、208cとして、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]、
In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比
]、またはIn:Ga:Zn=1:3:6[原子数比]の金属酸化物ターゲットを用いて
形成される酸化物半導体膜を用いてもよい。
【0409】
なお、酸化物半導体膜208a、208cとして、In:Ga:Zn=1:1:1[原
子数比]の金属酸化物ターゲットを用いる場合、酸化物半導体膜208a、208cは、
In:Ga:Zn=1:β1(0<β1≦2):β2(0<β2≦3)となる場合がある
。また、酸化物半導体膜208a、208cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原
子数比]の金属酸化物ターゲットを用いる場合、酸化物半導体膜208a、208cは、
In:Ga:Zn=1:β3(1≦β3≦5):β4(2≦β4≦6)となる場合がある
。また、酸化物半導体膜208a、208cとして、In:Ga:Zn=1:3:6[原
子数比]の金属酸化物ターゲットを用いる場合、酸化物半導体膜208a、208cは、
In:Ga:Zn=1:β5(1≦β5≦5):β6(4≦β6≦8)となる場合がある
【0410】
また、トランジスタ270が有する酸化物半導体膜208と、トランジスタ270A、
270Bが有する酸化物半導体膜208cと、は図面において、導電膜212a、212
bと重畳しない領域の酸化物半導体膜が薄くなる、別言すると酸化物半導体膜の一部が凹
部を有する形状について例示している。ただし、本発明の一態様はこれに限定されず、導
電膜212a、212bと重畳しない領域の酸化物半導体膜が凹部を有さなくてもよい。
この場合の一例を図41(A)(B)に示す。図41(A)(B)は、トランジスタの一
例を示す断面図である。なお、図41(A)(B)は、先に示すトランジスタ270Bの
酸化物半導体膜208が凹部を有さない構造である。
【0411】
また、図41(C)(D)に示すように、酸化物半導体膜208cの膜厚を、予め酸化
物半導体膜208bよりも薄く形成し、さらに酸化物半導体膜208c及び絶縁膜207
上に絶縁膜219を形成してもよい。この場合、絶縁膜219には酸化物半導体膜208
cと導電膜212a及び導電膜212bとが接するための開口を形成する。絶縁膜219
は、絶縁膜214と同様の材料及び形成方法によって形成できる。
【0412】
また、本実施の形態に係るトランジスタは、上記の構造のそれぞれを自由に組み合わせ
ることが可能である。
【0413】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み
合わせて用いることができる。
【0414】
(実施の形態4)
本実施の形態では、発光素子280に用いることができる発光素子の構成例について説
明する。なお、本実施の形態に示すEL層1320が、他の実施の形態に示したEL層2
81に相当する。
【0415】
<発光素子の構成>
図42(A)に示す発光素子1330は、一対の電極(電極1318、電極1322)
間にEL層1320が挟まれた構造を有する。なお、以下の本実施の形態の説明において
は、例として、電極1318を陽極として用い、電極1322を陰極として用いるものと
する。
【0416】
また、EL層1320は、少なくとも発光層を含んで形成されていればよく、発光層以
外の機能層を含む積層構造であっても良い。発光層以外の機能層としては、正孔注入性の
高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、バイ
ポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層を用いることができる。
具体的には、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等の機能層を適宜組み合
わせて用いることができる。
【0417】
図42(A)に示す発光素子1330は、電極1318と電極1322との間に与えら
れた電位差により電流が流れ、EL層1320において正孔と電子とが再結合し、発光す
るものである。つまりEL層1320に発光領域が形成されるような構成となっている。
【0418】
本発明において、発光素子1330からの発光は、電極1318、または電極1322
側から外部に取り出される。従って、電極1318、または電極1322のいずれか一方
は透光性を有する物質で成る。
【0419】
なお、EL層1320は図42(B)に示す発光素子1331のように、電極1318
と電極1322との間に複数積層されていても良い。n層(nは2以上の自然数)の積層
構造を有する場合には、m番目(mは、1以上かつnより小さい自然数)のEL層132
0と、(m+1)番目のEL層1320との間には、それぞれ電荷発生層1320aを設
けることが好ましい。電極1318と電極1322を除く構成が上記実施の形態のEL層
281に相当する。
【0420】
電荷発生層1320aは、有機化合物と金属酸化物の複合材料を用いて形成することが
できる。金属酸化物としては、例えば、酸化バナジウムや酸化モリブデンや酸化タングス
テン等が挙げられる。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、
芳香族炭化水素、または、それらを基本骨格とするオリゴマー、デンドリマー、ポリマー
等など、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔輸送性有
機化合物として正孔移動度が10-6cm/Vs以上であるものを適用することが好ま
しい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いても
よい。なお、電荷発生層1320aに用いるこれらの材料は、キャリア注入性、キャリア
輸送性に優れているため、発光素子1331の低電流駆動、および低電圧駆動を実現する
ことができる。上記複合材料以外にも、上記複合材料にアルカリ金属、アルカリ土類金属
、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などを加えた材料を電荷発生層1320
aに用いてもよい。
【0421】
なお、電荷発生層1320aは、有機化合物と金属酸化物の複合材料と他の材料とを組
み合わせて形成してもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、電
子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み
合わせて形成してもよい。また、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、透明導
電膜とを組み合わせて形成してもよい。
【0422】
このような構成を有する発光素子1331は、隣接するEL層1320同士でのエネル
ギーの移動が起こり難く、高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容
易である。また、一方の発光層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。
【0423】
なお、電荷発生層1320aとは、電極1318と電極1322に電圧を印加したとき
に、電荷発生層1320aに接して形成される一方のEL層1320に対して正孔を注入
する機能を有し、他方のEL層1320に電子を注入する機能を有する。
【0424】
図42(B)に示す発光素子1331は、EL層1320に用いる発光物質の種類を変
えることにより様々な発光色を得ることができる。また、発光物質として発光色の異なる
複数の発光物質を用いることにより、ブロードなスペクトルの発光や白色発光を得ること
もできる。
【0425】
図42(B)に示す発光素子1331を用いて、白色発光を得る場合、複数のEL層の
組み合わせとしては、赤、青及び緑色の光を含んで白色に発光する構成であればよく、例
えば、青色の蛍光材料を発光物質として含むEL層と、緑色と赤色の燐光材料を発光物質
として含むEL層を有する構成が挙げられる。また、赤色の発光を示すEL層と、緑色の
発光を示すEL層と、青色の発光を示すEL層とを有する構成とすることもできる。また
は、補色の関係にある光を発するEL層を有する構成であっても白色発光が得られる。E
L層が2層積層された積層型素子において、これらのEL層からの発光色を補色の関係に
する場合、補色の関係としては、青色と黄色、あるいは青緑色と赤色の組合せなどが挙げ
られる。
【0426】
なお、上述した積層型素子の構成において、積層される発光層の間に電荷発生層を配置
することにより、電流密度を低く保ったまま高輝度発光が得られ、また、長寿命素子を実
現することができる。
【0427】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可
能である。
【0428】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様のタッチパネルを有する表示モジュール及び電子機
器について、図43乃至図45を用いて説明を行う。
【0429】
本発明の一態様のタッチパネルは、例えば、タッチパネル8004に用いることができ
る。
【0430】
図43に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002と
の間に、FPC8003に接続されたタッチパネル8004、FPC8005に接続され
た表示パネル8006、バックライト8007、フレーム8009、プリント基板801
0、バッテリ8011を有する。
【0431】
本発明の一態様の表示装置は、例えば、表示パネル8006に用いることができる。
【0432】
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチパネル8004及び表示パネル
8006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0433】
タッチパネル8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル
8006に重畳して用いることができる。また、表示パネル8006の対向基板(封止基
板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル8
006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
【0434】
バックライト8007は、光源8008を有する。
【0435】
なお、図43において、バックライト8007上に光源8008を配置する構成につい
て例示したが、これに限定さない。例えば、バックライト8007の端部に光源8008
を配置し、さらに光拡散板を用いる構成としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型
の発光素子を用いる場合、または反射型パネル等の場合においては、バックライト800
7を設けない構成としてもよい。
【0436】
フレーム8009は、表示パネル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動
作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレ
ーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0437】
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
も良いし、別途設けたバッテリ8011による電源であってもよい。バッテリ8011は
、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0438】
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追
加して設けてもよい。
【0439】
図44(A)乃至(H)及び図45は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は
、筐体5000、表示部5001、スピーカ5003、LEDランプ5004、操作キー
5005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子5006、センサ500
7(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学
物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、
におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン5008、等を有するこ
とができる。
【0440】
図44(A)はモバイルコンピュータであり、上述したものの他に、スイッチ5009
、赤外線ポート5010、等を有することができる。図44(B)は記録媒体を備えた携
帯型の画像再生装置(たとえば、DVD再生装置)であり、上述したものの他に、第2表
示部5002、記録媒体読込部5011、等を有することができる。図44(C)はテレ
ビジョン装置であり、上述したものの他に、スタンド5012等を有することができる。
また、テレビジョン装置の操作は、筐体5000が備える操作スイッチや、別体のリモコ
ン操作機5013により行うことができる。リモコン操作機5013が備える操作キーに
より、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部5001に表示される映像を操
作することができる。また、リモコン操作機5013に、当該リモコン操作機5013か
ら出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。図44(D)は携帯型遊技
機であり、上述したものの他に、記録媒体読込部5011、等を有することができる。図
44(E)はテレビ受像機能付きデジタルカメラであり、上述したものの他に、アンテナ
5014、シャッターボタン5015、受像部5016、等を有することができる。図4
4(F)は携帯型遊技機であり、上述したものの他に、第2表示部5002、記録媒体読
込部5011、等を有することができる。図44(G)は持ち運び型テレビ受像器であり
、上述したものの他に、信号の送受信が可能な充電器5017、等を有することができる
図44(H)は腕時計型情報端末であり、上述したもののほかに、バンド5018、留
め金5019、等を有することができる。ベゼル部分を兼ねる筐体5000に搭載された
表示部5001は、非矩形状の表示領域を有している。表示部5001は、時刻を表すア
イコン5020、その他のアイコン5021等を表示することができる。図45(A)は
デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)である。図45(B
)は円柱状の柱に取り付けられたデジタルサイネージである。
【0441】
図44(A)乃至(H)及び図45に示す電子機器は、様々な機能を有することができ
る。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、
タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア
(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々
なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信
又は受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示
部に表示する機能、等を有することができる。さらに、複数の表示部を有する電子機器に
おいては、一つの表示部を主として画像情報を表示し、別の一つの表示部を主として文字
情報を表示する機能、又は、複数の表示部に視差を考慮した画像を表示することで立体的
な画像を表示する機能、等を有することができる。さらに、受像部を有する電子機器にお
いては、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を自動又は手動で補
正する機能、撮影した画像を記録媒体(外部又はカメラに内蔵)に保存する機能、撮影し
た画像を表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図44(A)乃至(H
)及び図45に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機
能を有することができる。
【0442】
本実施の形態の電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有することを特徴
とする。該表示部に、本発明の一態様のタッチパネルを適用することができる。
【0443】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0444】
10 タッチパネル
11 基板
12 基板
13 FPC
14 導電膜
20 液晶素子
21 導電膜
21a 導電膜
21b 導電膜
22 導電膜
23 液晶
24 絶縁膜
31 着色膜
41 導電膜
43 FPC
61 配線
62 配線
63 トランジスタ
64 液晶素子
65 ブロック
65_1 ブロック
65_2 ブロック
66_1 配線
66_4 配線
67_1 ブロック
67_4 ブロック
71 配線
71_1 配線
71_2 配線
72 配線
72_1 配線
72_2 配線
102 基板
104 ゲート電極
104a 導電膜
106 絶縁膜
107 絶縁膜
108 絶縁膜
110 酸化物半導体膜
111 酸化物半導体膜
111a 酸化物半導体膜
111b 酸化物半導体膜
111c 酸化物半導体膜
112 導電膜
112a ソース電極
112b ドレイン電極
114 絶縁膜
116 絶縁膜
118 絶縁膜
119 絶縁膜
120 導電膜
141 開口
142 開口
150 トランジスタ
151 シール材
160 容量素子
193 ターゲット
194 プラズマ
202 基板
204 導電膜
206 絶縁膜
207 絶縁膜
208 酸化物半導体膜
208a 酸化物半導体膜
208b 酸化物半導体膜
208c 酸化物半導体膜
211a 酸化物半導体膜
211b 酸化物半導体膜
212a 導電膜
212b 導電膜
214 絶縁膜
216 絶縁膜
218 絶縁膜
219 絶縁膜
220b 導電膜
252a 開口部
252b 開口部
252c 開口部
270 トランジスタ
270A トランジスタ
270B トランジスタ
280 発光素子
281 EL層
282 導電膜
285 導電膜
286 導電膜
301 トランジスタ
306 接続部
308 液晶素子
310 タッチパネル
316 スペーサ
317 導電膜
319 接続層
320 タッチパネル
331G 着色膜
331R 着色膜
332 遮光膜
333 開口
334 導電膜
335 導電膜
336 開口
341 導電膜
353 液晶
355 絶縁膜
372 基板
373 FPC
374 IC
375 FPC
381 表示部
382 駆動回路
384 駆動回路
385 開口
386 配線
388G 画素
388R 画素
391 絶縁膜
601 パルス電圧出力回路
602 電流検出回路
603 容量
621 電極
622 電極
1318 電極
1320 EL層
1320a 電荷発生層
1322 電極
1330 発光素子
1331 発光素子
5000 筐体
5001 表示部
5002 表示部
5003 スピーカ
5004 LEDランプ
5005 操作キー
5006 接続端子
5007 センサ
5008 マイクロフォン
5009 スイッチ
5010 赤外線ポート
5011 記録媒体読込部
5012 スタンド
5013 リモコン操作機
5014 アンテナ
5015 シャッターボタン
5016 受像部
5017 充電器
5018 バンド
5019 留め金
5020 アイコン
5021 アイコン
5100 ペレット
5120 基板
5161 領域
5200 ペレット
5201 イオン
5202 横成長部
5203 粒子
5220 基板
5230 ターゲット
5240 プラズマ
5260 加熱機構
8000 表示モジュール
8001 上部カバー
8002 下部カバー
8003 FPC
8004 タッチパネル
8005 FPC
8006 表示パネル
8007 バックライト
8008 光源
8009 フレーム
8010 プリント基板
8011 バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45