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特許7573747炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置
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  • 特許-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置 図1
  • 特許-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置 図2
  • 特許-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241018BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241018BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241018BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20241018BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 652T
H01L29/78 652E
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 658A
H01L29/78 658F
H01L29/48 D
H01L29/48 M
H01L29/78 652J
H01L29/78 657D
H01L29/86 301D
H01L29/86 301M
H01L29/78 652M
H01L29/78 652C
H01L29/78 652D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023529170
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2021022527
(87)【国際公開番号】W WO2022264212
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】日野 史郎
(72)【発明者】
【氏名】川原 洸太朗
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124384(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/044624(WO,A1)
【文献】特開2012-099630(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110285(WO,A1)
【文献】特開2021-077774(JP,A)
【文献】特開2019-125760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/28-21/445
H01L 29/00-29/38
H01L 29/40-29/64
H01L 29/86ー29/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板の第1の主面上に形成された、炭化珪素半導体の第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層表層において断面横方向に離間して形成され、間に第1導電型の第1離間領域を備えた第2導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域と前記ウェル領域との間に形成され、前記第1離間領域が形成されていない領域に形成される、第1導電型の第2離間領域と、
前記ウェル領域内の半導体表層の断面横方向の内部に形成された、第1導電型のソース領域と、
前記ウェル領域内の半導体表層の断面横方向の内部の前記ソース領域より前記第1離間領域側に形成された、第2導電型のコンタクト領域と、
前記コンタクト領域と前記第1離間領域との間の前記ウェル領域の表層部に形成された第1導電型の電流拡散領域と、
前記第2離間領域および前記第2離間領域に隣接する前記ウェル領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記コンタクト領域上に形成されたオーミック電極と、
前記第1離間領域上に形成され、前記第1離間領域とショットキ接続するショットキ電極と、
前記オーミック電極と前記ショットキ電極との上に形成されたソース電極と、
前記半導体基板の前記第1の主面の反対の第2の主面に形成されたドレイン電極と
を備えた
炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
さらに、前記ソース領域と前記第2離間領域との間の前記ウェル領域の表層部に、第1導電型のチャネル電流拡散領域を備えた
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記電流拡散領域の第1導電型不純物濃度は、前記第1離間領域の第1導電型不純物濃度より高い
請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記電流拡散領域の第1導電型不純物濃度は、前記ソース領域の第1導電型不純物濃度より低い
請求項1から3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記電流拡散領域の第1導電型不純物濃度は、前記ウェル領域の第2導電型不純物濃度より低い
請求項1から4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記電流拡散領域は、前記コンタクト領域と接する
請求項1から5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記電流拡散領域の第1導電型不純物濃度は、1×1016cm-3以上、1×1019cm-3 以下である
請求項1から6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記電流拡散領域の厚さは、10nm以上、200nm以下である
請求項1から7のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記炭化珪素半導体装置のゲート電極の電圧をソース電極の電圧と同じにすることによってオフ動作させ、前記炭化珪素半導体装置を駆動する駆動信号を前記炭化珪素半導体装置に出力する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する制御信号を前記駆動回路に出力する制御回路と、
を備えた電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)等のユニポーラ型のスイッチング素子と、ショットキバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)等のユニポーラ型の還流ダイオードとを内蔵する電力用の半導体装置が知られている(例えば特許文献1)。そのような半導体装置は、同一のチップにMOSFETセルとSBDセルとを並列に配置することで実現でき、一般的には、チップ内の特定の領域にショットキ電極を設け、その領域をSBDとして動作させることで実現できる。
【0003】
スイッチング素子のチップに還流ダイオードを内蔵させることで、スイッチング素子に還流ダイオードを外付けする場合に比べてコストを低減できる。特に、炭化珪素(SiC)を母材として用いたMOSFETでは、SBDを内蔵させることにより寄生pnダイオードによるバイポーラ動作を抑制できることも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-234925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような、SBD内蔵MOSFETでは、ショットキ電極とある導電型(例えばn型)の半導体層から構成されるショットキダイオードがあり、そのある導電型(例えばn型)の半導体層は、その導電型と反対の導電型(例えばp型)のウェル領域に挟まれて形成され、ショットキ界面にかかる電界は、両側の反対の導電型(例えばp型)のウェル領域からの距離が大きくなる程大きくなる。
一方、ショットキダイオードに流れる電流は、両側の反対の導電型(例えばp型)のウェル領域によって電流経路が空間的に制限され、ショットキダイオードに流れる電流の最大値を十分に大きくできない場合があった。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ショットキ界面に印加される電界を高くすること無くショットキダイオードに流れる電流を増大させることにより、信頼性の高い炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の炭化珪素半導体装置は、第1導電型の半導体基板の第1の主面上に形成された、炭化珪素半導体の第1導電型のドリフト層と、ドリフト層表層において断面横方向に離間して形成され、間に第1導電型の第1離間領域を備えた第2導電型のウェル領域と、ウェル領域とウェル領域との間に形成され、第1離間領域が形成されていない領域に形成される、第1導電型の第2離間領域と、ウェル領域内の半導体表層の断面横方向の内部に形成された、第1導電型のソース領域と、ウェル領域内の半導体表層の断面横方向の内部のソース領域より第1離間領域側に形成された、第2導電型のコンタクト領域と、コンタクト領域と第1離間領域との間のウェル領域の表層部に形成された第1導電型の電流拡散領域と、第2離間領域および第2離間領域に隣接するウェル領域上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、コンタクト領域上に形成されたオーミック電極と、第1離間領域上に形成され、第1離間領域とショットキ接続するショットキ電極と、オーミック電極とショットキ電極との上に形成されたソース電極と、前記半導体基板の第1の主面の反対の第2の主面に形成されたドレイン電極とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる炭化珪素半導体装置によれば、信頼性の高い炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の断面図である。
図2】実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の平面図である。
図3】実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の平面図である。
図4】実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の変形例の断面図である。
図5】実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置の断面図である。
図6】実施の形態3に係る電力変換装置図の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は模式的に示されるものであり、異なる図面にそれぞれ示されている画像のサイズ及び位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得る。また、以下の説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称及び機能も同様のものとする。よって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
以下の実施の形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、導電型は反対であってもよい。
【0011】
実施の形態1.
まず、本開示の実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置であるショットキバリアダイオード内蔵炭化珪素MOSFET(SBD内蔵SiC-MOSFET)の活性領域の一部分の断面図である。また、図2は、図1に示すSBD内蔵SiCトレンチMOSFETの活性領域の一部分の平面図である。
【0012】
図1に示すように、n型で低抵抗の炭化珪素で構成される半導体基板10の表面上に、n型の炭化珪素で構成されるドリフト層20が形成されている。ドリフト層20の上層部には、断面視で離間した、p型の炭化珪素で構成される一対のウェル領域30が設けられている。一対のウェル領域30の間は、ドリフト層20の一部である、第1離間領域21となっている。
【0013】
第1離間領域21を挟んでウェル領域30の外側は、ドリフト層20の一部である、第2離間領域22となっている。第2離間領域22側から第1離間領域21に向けてウェル領域30の第2離間領域22側の端から所定の間隔だけ内部に入った断面横方向の内部の位置に、n型の炭化珪素で構成されるソース領域40が形成されている。また、ソース領域40のさらに内側、すなわち、ソース領域40より第1離間領域21側のウェル領域30の表層部の断面横方向の内部には、低抵抗p型の炭化珪素で構成されるコンタクト領域35が形成されている。ここで、イオン注入の有無によらず、炭化珪素で構成される領域、すなわち、ドリフト層20として形成された領域を炭化珪素層と呼ぶ。
ここで、ソース領域40とコンタクト領域35とは接して形成される。
【0014】
また、第1離間領域21とコンタクト領域35との間のウェル領域30の表層部には、第1離間領域21よりn型不純物濃度が高いn型の電流拡散領域41が形成されている。
ソース領域40およびコンタクト領域35の表面上には、オーミック電極70が形成されている。第1離間領域21上および電流拡散領域41上にはショットキ電極71が形成されており、ショットキ電極71と第1離間領域21とはショットキ接続されている。第1離間領域21とショットキ電極71とによりSBDを構成し、第1離間領域21とショットキ電極71との界面がショットキ界面になる。
【0015】
ウェル領域30内のソース領域40の表面上と、第2離間領域22上、および、ソース領域40と第2離間領域22との間のウェル領域30上には、酸化珪素からなるゲート絶縁膜50が形成されている。ソース領域40から第2離間領域22にかけての領域のゲート絶縁膜50の上には、低抵抗多結晶シリコンからなるゲート電極60が形成されている。ゲート電極60が形成されている箇所の下部で、ゲート絶縁膜50を介してゲート電極60と対向するウェル領域30の表層部がチャネル領域となる。
【0016】
ゲート電極60とゲート絶縁膜50との上には、酸化珪素からなる層間絶縁膜55が形成されている。ショットキ電極71上およびオーミック電極70上は、ゲート絶縁膜50と層間絶縁膜55とが除去されたコンタクトホールになっており、ショットキ電極71とオーミック電極70との上のコンタクトホール内および層間絶縁膜55上には、ソース電極80が形成されている。
また、半導体基板10のドリフト層20と反対側の面には、裏面オーミック電極72とその外側にドレイン電極81とが形成されている。
【0017】
図2は、本開示の実施の形態1にかかるSBD内蔵SiC-MOSFETの活性領域の炭化珪素層表面近傍の平面図である。図2において、第1離間領域21を取り囲むように、内側から順に、電流拡散領域41、コンタクト領域35、ソース領域40、ウェル領域30、第2離間領域22が形成されている。平面視においても、ショットキ電極71は、第1離間領域21上から電流拡散領域41上にかけての領域上に形成されている。オーミック電極70は、コンタクト領域35上に形成されている。ゲート電極60は、オーミック電極70より外側に形成されている。電流拡散領域41の断面下側にはウェル領域30が形成されている。
【0018】
なお、本開示の実施の形態1のSBD内蔵SiC-MOSFETの活性領域の単位セルは、図3にその平面図を示すように、ストライプ状であってもよい。ストライプ状の単位セルであっても、第1離間領域21を中心にして内側から順に、電流拡散領域41、コンタクト領域35、ソース領域40、ウェル領域30、第2離間領域22が形成されている。
【0019】
ここから、本開示の実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETの製造方法について、説明する。
【0020】
まず、第1主面の面方位がオフ角を有する(0001)面であり、4Hのポリタイプを有する、n型で低抵抗の炭化珪素からなる半導体基板10の上に、化学気相堆積法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)により、1×1015cm-3以上、1×1017cm-3以下の不純物濃度でn型、5μm以上、80μm以下の厚さの炭化珪素からなるドリフト層20をエピタキシャル成長させる。ドリフト層20の厚さは、炭化珪素半導体装置の耐圧によっては、80μm以上であってもよい。
【0021】
つづいて、ドリフト層20の表面の所定の領域にフォトレジスト等により注入マスクを形成し、p型の不純物であるAl(アルミニウム)をイオン注入する。このとき、Alのイオン注入の深さはドリフト層20の厚さを超えない0.5μm以上、3μm以下程度とする。また、イオン注入されたAlの不純物濃度は、1×1017cm-3以上、1×1019cm-3以下の範囲でありドリフト層20の不純物濃度より高くする。その後、注入マスクを除去する。本工程によりAlイオン注入された領域がウェル領域30となる。
【0022】
次に、ドリフト層20の表面のウェル領域30の内側の所定の箇所が開口するようにフォトレジスト等により注入マスクを形成し、n型の不純物であるN(窒素)をイオン注入する。Nのイオン注入深さはウェル領域30の厚さより浅いものとする。また、イオン注入したNの不純物濃度は、1×1018cm-3以上、1×1021cm-3以下の範囲であり、ウェル領域30のp型の不純物濃度を超えるものとする。本工程でNが注入された領域のうちn型を示す領域がソース領域40となる。その後、注入マスクを除去する。
【0023】
また、同様の方法により、ウェル領域30の内側の所定の領域にウェル領域30の不純物濃度より高い不純物濃度でAlをイオン注入することにより、コンタクト領域35を形成する。コンタクト領域35のAlの不純物濃度は、1×1018cm-3以上、1×1020cm-3以下の範囲であればよい。
【0024】
さらに、同様の方法により、コンタクト領域35と第1離間領域21との間のウェル領域30の表層部に、Nをイオン注入して電流拡散領域41を形成する。Nのイオン注入深さはウェル領域30の厚さより浅い、例えば10nm以上、200nm以下とする。また、電流拡散領域41のNの不純物濃度は、1×1016cm-3以上、1×1019cm-3以下の範囲であればよい。
【0025】
次に、熱処理装置によって、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス雰囲気中で、1300から1900℃の温度で、30秒から1時間のアニールを行なう。このアニールにより、イオン注入されたN及びAlを電気的に活性化させる。
【0026】
つづいて、ドリフト層20、ウェル領域30、ソース領域40、電流拡散領域41,およびコンタクト領域35の炭化珪素層の表面を熱酸化して10nm以上、300nm以下の厚さのゲート絶縁膜50である酸化珪素膜を形成する。次に、ゲート絶縁膜50の上に、導電性を有する多結晶シリコン膜を減圧CVD法により形成し、これをパターニングすることによりゲート電極60を形成する。つづいて、酸化珪素からなる層間絶縁膜55を減圧CVD法により形成する。
また、半導体基板10上のドリフト層20が形成されていない面に裏面オーミック電極72を形成する。
【0027】
次に、層間絶縁膜55とゲート絶縁膜50とを貫通し、活性領域内のコンタクト領域35とソース領域40とに到達するコンタクトホール(コンタクトホールの第1部分)をドライエッチング法により形成する。ドライエッチング法によりコンタクトホールを形成することにより、炭化珪素層の表面に垂直なコンタクトホールを形成でき、単位セルの繰り返し周期(セルピッチ)の縮小が可能となり、単位面積当たりのオン電流密度を増加させることができる。
【0028】
つづいて、スパッタ法等により、ニッケル(Ni)を主成分とする金属膜を形成後、600から1100℃の温度の熱処理を行ない、Niを主成分とする金属膜と、コンタクトホール(第1部分)内の炭化珪素層とを反応させて、炭化珪素層と金属膜との間にシリサイドを形成する。金属膜がNiの場合、シリサイドはニッケルシリサイドになる。つづいて、反応してできたシリサイド以外の残留した金属膜をウェットエッチングにより除去する。ここで形成されたシリサイドがオーミック電極70になる。
【0029】
次に、オーミック電極70および層間絶縁膜55の表面上に、レジストマスクをフォトリソグラフィー法により形成する。
つづいて、レジストマスク90が形成された状態で、フッ酸を含むエッチング液を用いて第1離間領域21の表面および電流拡散領域41の表面を含む領域の上方のゲート絶縁膜50と層間絶縁膜55とをウェットエッチングする。ここでウェットエッチングされた領域もコンタクトホールの一部(コンタクトホールの第2部分)となる。その後レジストマスクを除去する。
【0030】
次に、第1離間領域21の表面上および電流拡散領域41の表面上に、第1離間領域21とショットキ接続する、Ti、Moなどのショットキ電極71を形成する。また、ショットキ電極71上、オーミック電極70上にAlを主成分とするソース電極80を形成する。
【0031】
つづいて、裏面側の裏面オーミック電極72と、裏面オーミック電極72に接して底側にドレイン電極81を形成することによって、図1に断面図を示す、本実施の形態の炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETを製造することができる。
【0032】
ここで、電流拡散領域41のn型不純物濃度は、ドリフト層20、なかでも、第1離間領域21のn型不純物濃度より高く形成される。また、電流拡散領域41のn型不純物濃度は、ソース領域40のn型不純物濃度より低いものとする。
【0033】
さらに、電流拡散領域41のn型不純物濃度は、ウェル領域30のp型不純物濃度より低く形成される。この構成にすることによって、オフ状態において電流拡散領域41とウェル領域30との間のpn接合面から電流拡散領域41側に延びる空乏層を電流拡散領域41上に形成されたショットキ電極71にまで達するようにでき、ショットキ電極71にかかる電界を低減できる。
【0034】
なお、本実施の形態のSBD内蔵SiC-MOSFETのドリフト層20は、全域で同じ不純物濃度である必要は無く、図4にその断面図を示すように、炭化珪素層の表面からウェル領域30の底の位置近傍までのn型不純物濃度を、ウェル領域30より半導体基板10側のドリフト層20より高くしてもよい。このようにすると、第1離間領域21および第2離間領域22のn型不純物濃度がウェル領域30より下部のドリフト層20よりを高くでき、よりオン状態の抵抗を低下させることができる。
【0035】
また、ソース領域40とコンタクト領域35とは離間して形成されてもよい。ソース領域40とコンタクト領域35と接して形成した方がユニットセルのサイズを小さくでき、より単位面積当たりに流れるオン電流を増加させることができ、より低抵抗化できる。
【0036】
さらに、ショットキ電極71とソース電極80とは同じ材料で形成されていてもよいし、ソース電極80が複数の材料が積層されたものであってもよい。
【0037】
本実施の形態の炭化珪素半導体装置によれば、第1離間領域21とショットキ電極71の間に形成されるSBDに隣接して、n型の電流拡散領域41とショットキ電極71が隣接する領域が設けられるので、還流動作状態時にショットキ界面を流れるユニポーラ電流が流れる領域である第1離間領域21において、実質的にユニポーラ電流が流れる領域を断面横方向に拡げることができ、第1離間領域21の幅を拡げてMOSFETがオフ状態のときのショットキ界面に印加される電界強度を増加させることなく、還流状態で流れるユニポーラ電流密度を増加させることができる。
そのため、電流拡散領域41が形成されていない炭化珪素半導体装置と比較して、ウェル領域30とドリフト層20との間に形成されるボディダイオードの動作を抑制するために必要となるチップサイズを縮小し、コストを低減することができる。
【0038】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2の炭化珪素半導体装置における活性領域の一部分の断面図である。本実施の形態の炭化珪素半導体装置は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置と異なり、第2離間領域22とコンタクト領域35との間のウェル領域30の表層部にも電流拡散領域41と同様のn型のチャネル電流拡散領域42が形成されている。その他の点については、実施の形態1と同じであるので、詳しい説明を省略する。
【0039】
図5は、本実施の形態の炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETの活性領域の一部分の断面図である。
図5に示すように、本実施の形態のSBD内蔵SiC-MOSFETにおいては、第2離間領域22とソース領域40との間のウェル領域30の表層部に、電流拡散領域41と同様の、n型不純物濃度が高いn型のチャネル電流拡散領域42が形成されている。電流拡散領域41とチャネル電流拡散領域42とは同じ厚さで同じ不純物濃度で形成されている。
【0040】
本実施の形態のSBD内蔵SiC-MOSFETは、実施の形態のSBD内蔵SiC-MOSFETと同様の製造方法で製造できるが、電流拡散領域41およびチャネル電流拡散領域42をp型のウェル領域30を形成するときに使用したレジストマスクを使用してNをイオン注入して形成すればよい。
このとき、ソース領域40とコンタクト領域35の表面部分にもNをイオン注入するが、注入するイオンの密度がソース領域40およびコンタクト領域35の不純物濃度より1桁以上程度低いために、ソース領域40とコンタクト領域35とにほとんど影響は与えない。
【0041】
電流拡散領域41とチャネル電流拡散領域42とを、ウェル領域30を形成するときに使用したレジストマスクを用いて形成することにより、電流拡散領域41形成のための別のレジストマスクを形成する必要が無く、製造コストの上昇を抑えたまま、本開示の炭化珪素半導体装置を製造できる。
【0042】
また、本実施の形態のSBD内蔵SiC-MOSFETによれば、チャネル領域の表層にn型のチャネル電流拡散領域42を形成しているので、チャネル抵抗をより低抵抗化できる。
【0043】
なお、上記実施形態においては、p型不純物としてアルミニウム(Al)を用いたが、p型不純物がホウ素(B)またはガリウム(Ga)であってもよい。n型不純物は、窒素(N)で無く燐(P)であってもよい。実施の形態1~2で説明したMOSFETにおいては、ゲート絶縁膜は、必ずしもSiOなどの酸化膜である必要はなく、酸化膜以外の絶縁膜、または、酸化膜以外の絶縁膜と酸化膜とを組み合わせたものであってもよい。また、上記実施形態では、結晶構造、主面の面方位、オフ角および各注入条件等、具体的な例を用いて説明したが、これらの数値範囲に適用範囲が限られるものではない。
【0044】
また、上記実施形態ではいわゆる縦型MOSFETの炭化珪素半導体装置にSBDを内蔵させたものについて説明したが、スーパージャンクション構造を有するMOSFETにSBDを内蔵させたものにも適用することができる。
【0045】
実施の形態3.
本実施の形態は、上述した実施の形態1~2にかかる炭化珪素半導体装置を電力変換装置に適用したものである。本開示は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態3として、三相のインバータに本開示を適用した場合について説明する。
【0046】
図6は、本実施の形態にかかる電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0047】
図6に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0048】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、図6に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201の各スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路202と、駆動回路202を制御する制御信号を駆動回路202に出力する制御回路203とを備えている。
駆動回路202は、ノーマリオフ型の各スイッチング素子を、ゲート電極の電圧とソース電極の電圧とを同電位にすることによってオフ制御している。
【0049】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0050】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えており(図示せず)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態にかかる主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子には、上述した実施の形態1~3のいずれかにかかる炭化珪素半導体装置の製造方法で製造された炭化珪素半導体装置を適用する。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0051】
駆動回路202は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0052】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、駆動回路202に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路202は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
本実施の形態に係る電力変換装置では、主変換回路201のスイッチング素子として実施の形態1~2にかかる炭化珪素半導体装置を適用するため、低損失、かつ、高速スイッチングの信頼性を高めた電力変換装置を実現することができる。
【0053】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例を説明したが、本開示は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに本開示を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに本開示を適用することも可能である。
【0054】
また、本開示を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触器給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 半導体基板、20 ドリフト層、30 ウェル領域、21 第1離間領域、22 第2離間領域、35 コンタクト領域、40 ソース領域、41 電流拡散領域、42 チャネル電流拡散領域、50 ゲート絶縁膜、55 層間絶縁膜、60 ゲート電極、70 オーミック電極、71 ショットキ電極、80 ソース電極、81 ドレイン電極、100 電源、200、電力変換装置、201 主変換回路、202 駆動回路、203 制御回路、300 負荷。
図1
図2
図3
図4
図5
図6