(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】パワー半導体装置およびその製造方法ならびに電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20241018BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20241018BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241018BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L23/40 Z
H01L23/36 C
H01L23/36 Z
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2023530337
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2022023763
(87)【国際公開番号】W WO2022265003
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2021101541
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 晴菜
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正喜
(72)【発明者】
【氏名】六分一 穂隆
(72)【発明者】
【氏名】寺田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】三田 泰之
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-165122(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097027(WO,A1)
【文献】特開2007-019203(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079396(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/40
H01L 23/36
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凹凸部が形成されたモジュールベースを有し、前記モジュールベースに電力用半導体素子が搭載されて封止材によって封止されたパワーモジュール部と、
第2凹凸部が形成され、前記第2凹凸部と前記第1凹凸部とを互いに嵌合させる態様で前記モジュールベースに接合されたヒートシンクベース部と、
前記ヒートシンクベース部に装着された複数の放熱フィンと
を備え、
前記モジュールベースおよび前記ヒートシンクベース部では、
前記第1凹凸部および前記第2凹凸部は、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とが互いに嵌合して第1方向に延在する部分を有し、
前記モジュールベースと前記ヒートシンクベース部とが接合された状態で、前記第1凹凸
部は、空間として残されるバッファ凹部を有し、
前記第1凹凸部は、前記モジュールベースにおける、前記電力用半導体素子が搭載されている一方の表面とは反対側の他方の表面に形成され、
前記バッファ凹部は、前記他方の表面における平坦部において、前記一方の表面に向かって形成され、かつ、前記第1方向と交差する第2方向に延在するように形成された、パワー半導体装置。
【請求項2】
第1凹凸部が形成されたモジュールベースを有し、前記モジュールベースに電力用半導体素子が搭載されて封止材によって封止されたパワーモジュール部と、
第2凹凸部が形成され、前記第2凹凸部と前記第1凹凸部とを互いに嵌合させる態様で前記モジュールベースに接合されたヒートシンクベース部と、
前記ヒートシンクベース部に装着された複数の放熱フィンと
を備え、
前記モジュールベースおよび前記ヒートシンクベース部では、
前記第1凹凸部および前記第2凹凸部は、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とが互いに嵌合して第1方向に延在する部分を有し、
前記モジュールベースと前記ヒートシンクベース部とが接合された状態で
、前記第2凹凸
部は、空間として残されるバッファ凹部を有し、
前記バッファ凹部は、前記ヒートシンクベース部における平坦部において、前記モジュールベースが接合されている側とは反対側に向かって形成され、かつ、前記第1方向と交差する第2方向に延在するように形成された、パワー半導体装置。
【請求項3】
前記ヒートシンクベース部は、
複数の前記放熱フィンが装着された放熱拡散部を含み、
前記第2凹凸部は、前記放熱拡散部に形成された、請求項1
または2に記載のパワー半導体装置。
【請求項4】
前記ヒートシンクベース部は、
複数の前記放熱フィンが装着された放熱拡散部と、
前記放熱拡散部から前記パワーモジュール部が位置する側に向かって嵩上げされた嵩上げ部と
を含み、
前記第2凹凸部は、前記嵩上げ部に形成された、請求項1
または2に記載のパワー半導体装置。
【請求項5】
前記第1凹凸部および前記第2凹凸部
のいずれかには、不連続な部分が設けられた、請求項1
または2に記載のパワー半導体装置。
【請求項6】
複数の前記放熱フィンは、前記ヒートシンクベース部における外周部に位置する領域以外の領域に装着された、請求項1
または2に記載のパワー半導体装置。
【請求項7】
第1凹凸部が形成されたモジュールベースを用意する工程と、
前記モジュールベースに電力用半導体素子を搭載し、前記第1凹凸部を露出させる態様で前記電力用半導体素子を封止材によって封止することによって、パワーモジュール部を形成する工程と、
前記第1凹凸部と嵌合する第2凹凸部が形成されたヒートシンクベース部を用意する工程と、
前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とを互いに対向させて、前記パワーモジュール部における前記モジュールベースおよび前記ヒートシンクベース部の一方を他方に押圧し、前記モジュールベースと前記ヒートシンクベース部とを一体化する工程と
を備え、
前記モジュールベースを用意する工程および前記ヒートシンクベース部を用意する工程では、前記第1凹凸部および前記第2凹凸部は、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とが互いに嵌合して第1方向に延在する部分を有するように形成され、
前記モジュールベースを用意する工程では、
前記第1凹凸部は、前記モジュールベースにおける、前記電力用半導体素子が搭載される一方の表面とは反対側の他方の表面に形成され、
前記第1凹凸部は、前記モジュールベースと前記ヒートシンクベース部とが接合された状態で、空間として残されるバッファ凹部を有するように形成され、
前記バッファ凹部は、前記他方の表面における平坦部において、前記一方の表面に向かって形成され、かつ、前記第1方向と交差する第2方向に延在するように形成される、パワー半導体装置の製造方法。
【請求項8】
第1凹凸部が形成されたモジュールベースを用意する工程と、
前記モジュールベースに電力用半導体素子を搭載し、前記第1凹凸部を露出させる態様で前記電力用半導体素子を封止材によって封止することによって、パワーモジュール部を形成する工程と、
前記第1凹凸部と嵌合する第2凹凸部が形成されたヒートシンクベース部を用意する工程と、
前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とを互いに対向させて、前記パワーモジュール部における前記モジュールベースおよび前記ヒートシンクベース部の一方を他方に押圧し、前記モジュールベースと前記ヒートシンクベース部とを一体化する工程と
を備え、
前記モジュールベースを用意する工程および前記ヒートシンクベース部を用意する工程では、前記第1凹凸部および前記第2凹凸部は、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とが互いに嵌合して第1方向に延在する部分を有するように形成され、
前記ヒートシンクベース部を用意する工程では、
前記第2凹凸部は、前記モジュールベースと前記ヒートシンクベース部とが接合された状態で、空間として残されるバッファ凹部を有するように形成され、
前記バッファ凹部は、前記ヒートシンクベース部における平坦部において、前記モジュールベースが接合される側とは反対側に向かって形成され、かつ、前記第1方向と交差する第2方向に延在するように形成される、パワー半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ヒートシンクベース部を用意する工程は、前記パワーモジュール部が接合される側とは反対側に、複数の放熱フィンが挿入される放熱フィン挿入溝と、前記放熱フィン挿入溝に挿入された前記放熱フィンをかしめるかしめ部とが形成された前記ヒートシンクベース部を用意する工程を含み、
前記モジュールベースと前記ヒートシンクベース部とを接合する工程は、
前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とを互いに対向させるとともに、複数の前記放熱フィンを対応する前記放熱フィン挿入溝に配置する工程と、
かしめ治具を前記かしめ部に接触させ、前記ヒートシンクベース部を前記モジュールベースに向けて押圧することにより、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とを互いに嵌合させるとともに、前記かしめ部をかしめて複数の前記放熱フィンを前記ヒートシンクベース部に装着させて、前記モジュールベース、前記ヒートシンクベース部および複数の前記放熱フィンを一体化する工程と
を含む、請求項
7または8に記載のパワー半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ヒートシンクベース部を用意する工程は、前記パワーモジュール部が接合される側とは反対側に、複数の放熱フィンが一体的に配置された前記ヒートシンクベース部を用意する工程を含み、
前記モジュールベースと前記ヒートシンクベース部とを接合する工程は、
前記ヒートシンクベース部をヒートシンクセット治具に配置する工程と、
前記ヒートシンクセット治具に配置された前記ヒートシンクベース部の前記第2凹凸部に前記第1凹凸部が対向するように、前記パワーモジュール部を配置する工程と、
前記パワーモジュール部を前記ヒートシンクベース部に向かって押圧することにより、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とを互いに嵌合する工程と
を含む、請求項
7または8に記載のパワー半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1
または2に記載のパワー半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と
を備えた、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワー半導体装置およびその製造方法ならびに電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体素子を備えたパワー半導体装置の一形態として、電力用半導体素子を搭載したパワーモジュール部とヒートシンクとを一体化したヒートシンク一体型のパワー半導体モジュールが提案されている(特許文献1~特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5236127号公報
【文献】特許第5373688号公報
【文献】特許第5418601号公報
【文献】特許第5432085号公報
【文献】特許第6009209号公報
【文献】特許第6091633号公報
【文献】特開平06-5750号公報
【文献】特開2011-155118号公報
【文献】国際公開WO2018-079396号
【文献】国際公開WO2018-097027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワー半導体装置としてのヒートシンク一体型のパワー半導体モジュールでは、パワーモジュール部とヒートシンクとを一体化させることについて、生産性のさらなる向上が求められている。
【0005】
本開示は、このような開発の一環としてなされたものであり、一つの目的は生産性のさらなる向上を図ることができるパワー半導体装置を提供することであり、他の目的は、そのようなパワー半導体装置の製造方法を提供することであり、さらに他の目的は、そのようなパワー半導体装置を適用した電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る一のパワー半導体装置は、パワーモジュール部とヒートシンクベース部と複数の放熱フィンとを備えている。パワーモジュール部は、第1凹凸部が形成されたモジュールベースを有し、モジュールベースに電力用半導体素子が搭載されて封止材によって封止されている。ヒートシンクベース部には、第2凹凸部が形成され、ヒートシンク部は、第2凹凸部と第1凹凸部とを互いに嵌合させる態様でモジュールベースに接合されている。複数の放熱フィンは、ヒートシンクベース部に装着されている。モジュールベースおよびヒートシンクベース部では、第1凹凸部および第2凹凸部は、第1凹凸部と第2凹凸部とが互いに嵌合して第1方向に延在する部分を有している。モジュールベースとヒートシンクベース部とが接合された状態で、第1凹凸部は、空間として残されるバッファ凹部を有している。第1凹凸部は、モジュールベースにおける、電力用半導体素子が搭載されている一方の表面とは反対側の他方の表面に形成されている。バッファ凹部は、他方の表面における平坦部において、一方の表面に向かって形成され、かつ、第1方向と交差する第2方向に延在するように形成されている。
本開示に係る他のパワー半導体装置は、パワーモジュール部とヒートシンクベース部と複数の放熱フィンとを備えている。パワーモジュール部は、第1凹凸部が形成されたモジュールベースを有し、モジュールベースに電力用半導体素子が搭載されて封止材によって封止されている。ヒートシンクベース部には、第2凹凸部が形成され、ヒートシンク部は、第2凹凸部と第1凹凸部とを互いに嵌合させる態様でモジュールベースに接合されている。複数の放熱フィンは、ヒートシンクベース部に装着されている。モジュールベースおよびヒートシンクベース部では、第1凹凸部および第2凹凸部は、第1凹凸部と第2凹凸部とが互いに嵌合して第1方向に延在する部分を有している。モジュールベースとヒートシンクベース部とが接合された状態で、第2凹凸部は、空間として残されるバッファ凹部を有している。バッファ凹部は、ヒートシンクベース部における平坦部において、モジュールベースが接合されている側とは反対側に向かって形成され、かつ、第1方向と交差する第2方向に延在するように形成されている。
【0007】
本開示に係る一のパワー半導体装置の製造方法は、以下の工程を備えている。第1凹凸部が形成されたモジュールベースを用意する。モジュールベースに電力用半導体素子を搭載し、第1凹凸部を露出させる態様で電力用半導体素子を封止材によって封止することによって、パワーモジュール部を形成する。第1凹凸部と嵌合する第2凹凸部が形成されたヒートシンクベース部を用意する。第1凹凸部と第2凹凸部とを互いに対向させて、パワーモジュール部におけるモジュールベースおよびヒートシンクベース部の一方を他方に押圧し、モジュールベースとヒートシンクベース部とを一体化する。モジュールベースを用意する工程およびヒートシンクベース部を用意する工程では、第1凹凸部および第2凹凸部は、第1凹凸部と第2凹凸部とが互いに嵌合して第1方向に延在する部分を有するように形成される。モジュールベースを用意する工程では、第1凹凸部は、モジュールベースにおける、電力用半導体素子が搭載される一方の表面とは反対側の他方の表面に形成される。第1凹凸部は、モジュールベースとヒートシンクベース部とが接合された状態で、空間として残されるバッファ凹部を有するように形成される。バッファ凹部は、他方の表面における平坦部において、一方の表面に向かって形成され、かつ、第1方向と交差する第2方向に延在するように形成される。
本開示に係る他のパワー半導体装置の製造方法は、以下の工程を備えている。第1凹凸部が形成されたモジュールベースを用意する。モジュールベースに電力用半導体素子を搭載し、第1凹凸部を露出させる態様で電力用半導体素子を封止材によって封止することによって、パワーモジュール部を形成する。第1凹凸部と嵌合する第2凹凸部が形成されたヒートシンクベース部を用意する。第1凹凸部と第2凹凸部とを互いに対向させて、パワーモジュール部におけるモジュールベースおよびヒートシンクベース部の一方を他方に押圧し、モジュールベースとヒートシンクベース部とを一体化する。モジュールベースを用意する工程およびヒートシンクベース部を用意する工程では、第1凹凸部および第2凹凸部は、第1凹凸部と第2凹凸部とが互いに嵌合して第1方向に延在する部分を有するように形成される。ヒートシンクベース部を用意する工程では、第2凹凸部は、モジュールベースとヒートシンクベース部とが接合された状態で、空間として残されるバッファ凹部を有するように形成される。バッファ凹部は、ヒートシンクベース部における平坦部において、モジュールベースが接合される側とは反対側に向かって形成され、かつ、第1方向と交差する第2方向に延在するように形成される。
【0008】
本開示に係る電力変換装置は、上記パワー半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、主変換回路を制御する制御信号を主変換回路に出力する制御回路とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るパワー半導体装置によれば、モジュールベースおよびヒートシンクベース部は、モジュールベースとヒートシンクベース部とが接合された状態で、第1凹凸部および第2凹凸部のいずれかが、空間として残されるバッファ凹部を備える態様で形成され、バッファ凹部は、第1凹凸部と第2凹凸部とが互いに嵌合して第1方向に延在する部分に対して、第1方向と交差する第2方向に延在するように形成されている。これにより、モジュールベースとヒートシンクベース部とを一体化する際の荷重を低減することができる。その結果、生産性を向上することができるパワー半導体装置が得られる。
【0010】
本開示に係るパワー半導体装置の製造方法によれば、モジュールベースを用意する工程およびヒートシンクベース部を用意する工程では、第1凹凸部および第2凹凸部は、第1凹凸部と第2凹凸部とが互いに嵌合して第1方向に延在する部分を有するように形成される。第1凹凸部および第2凹凸部のいずれかには、モジュールベースとヒートシンクベース部とが接合された状態で、空間として残されるバッファ凹部が、第1方向と交差する第2方向に延在するように形成される。これにより、モジュールベースとヒートシンクベース部とを一体化する際の荷重を低減することができる。その結果、パワー半導体装置の生産性を向上することができる。
【0011】
本開示に係る電力変換装置によれば、上記パワー半導体装置を有していることで、生産性を向上することができる電力変換装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係るパワー半導体装置を示す、一部断面を含む第1分解側面図である。
【
図2】同実施の形態において、パワー半導体装置を示す、一部断面を含む第2分解側面図である。
【
図3】同実施の形態において、パワーモジュール部とヒートシンクとを一体化した状態を示す、一部断面を含む第1側面図である。
【
図4】同実施の形態において、パワーモジュール部とヒートシンクとを一体化した状態を示す、一部断面を含む第2側面図である。
【
図5】同実施の形態において、パワー半導体装置の製造方法の一工程を示す、一部断面を含む側面図である。
【
図6】同実施の形態において、
図5に示す工程の後に行われる工程を示す、一部断面を含む側面図である。
【
図7】同実施の形態において、
図6に示す工程の後に行われる工程を示す、一部断面を含む側面図である。
【
図8】同実施の形態において、パワー半導体装置の作用効果を説明するための第1の図である。
【
図9】同実施の形態において、パワー半導体装置の作用効果を説明するための第2の図である。
【
図10】同実施の形態において、パワー半導体装置の作用効果を説明するための第3の図である。
【
図11】同実施の形態において、パワー半導体装置の作用効果を説明するための第4の図である。
【
図12】同実施の形態において、凹凸部の構造の第1変形例を示す、一部断面を含む第1分解側面図である。
【
図13】同実施の形態において、凹凸部の構造の第1変形例を示す、一部断面を含む第2分解側面図である。
【
図14】同実施の形態において、パワー半導体装置の作用効果を説明するための第5の図である。
【
図15】同実施の形態において、パワー半導体装置の作用効果を説明するための第6の図である。
【
図16】同実施の形態において、パワー半導体装置の作用効果を説明するための第7の図である。
【
図17】同実施の形態において、パワー半導体装置の作用効果を説明するための第8の図である。
【
図18】同実施の形態において、モジュールベースに形成される凹凸部の配置構造と、ヒートシンクベース部に形成される凹凸部の配置構造とを説明するための第1の図である。
【
図19】同実施の形態において、モジュールベースに形成される凹凸部の配置構造と、ヒートシンクベース部に形成される凹凸部の配置構造とを説明するための第2の図である。
【
図20】同実施の形態において、凹凸部の構造の第2変形例を示す、一部断面を含む第1分解側面図である。
【
図21】同実施の形態において、凹凸部の構造の第2変形例を示す、一部断面を含む第2分解側面図である。
【
図22】同実施の形態において、凹凸部の構造の第3変形例を示す、一部断面を含む第1分解側面図である。
【
図23】同実施の形態において、凹凸部の構造の第3変形例を示す、一部断面を含む第2分解側面図である。
【
図24】同実施の形態において、凹凸部の構造の第4変形例を示す、一部断面を含む第1分解側面図である。
【
図25】同実施の形態において、凹凸部の構造の第4変形例を示す、一部断面を含む第2分解側面図である。
【
図26】同実施の形態において、凹凸部の構造の第5変形例を示す、一部断面を含む第1分解側面図である。
【
図27】同実施の形態において、凹凸部の構造の第5変形例を示す、一部断面を含む第2分解側面図である。
【
図28】同実施の形態において、パワーモジュール部におけるモジュールベースに形成された凹凸部のパターンの変形例を示す下面図である。
【
図29】同実施の形態において、ヒートシンクにおける放熱フィンの配置構造の第1例を示す下面図である。
【
図30】同実施の形態において、ヒートシンクにおける放熱フィンの配置構造の第2例を示す下面図である。
【
図31】同実施の形態において、
図29に示すヒートシンクの作用効果を説明するための下面図である。
【
図32】同実施の形態において、
図29に示すヒートシンクの作用効果を説明するための、パワー半導体装置の製造方法の一工程を示す、一部断面を含む側面図である。
【
図33】同実施の形態において、
図29に示すヒートシンクの作用効果を説明するための、
図32に示す工程の後に行われる工程を示す、一部断面を含む側面図である。
【
図34】同実施の形態において、
図30に示すヒートシンクの作用効果を説明するための下面図である。
【
図35】同実施の形態において、ヒートシンクの構造の第1変形例を示す、一部断面を含む第1分解側面図である。
【
図36】同実施の形態において、ヒートシンクの構造の第1変形例を示す、一部断面を含む第2分解側面図である。
【
図37】同実施の形態において、ヒートシンクの構造の第2変形例を示す、一部断面を含む第1分解側面図である。
【
図38】同実施の形態において、ヒートシンクの構造の第2変形例を示す、一部断面を含む第2分解側面図である。
【
図39】同実施の形態において、
図35および
図36に示すヒートシンクの作用効果を説明するための、パワー半導体装置の製造方法の一工程を示す、一部断面を含む側面図である。
【
図40】同実施の形態において、
図35および
図36に示すヒートシンクの作用効果を説明するための、
図39に示す工程の後に行われる工程を示す、一部断面を含む側面図である。
【
図41】実施の形態2に係るパワー半導体装置を示す、一部断面を含む分解側面図である。
【
図42】同実施の形態において、パワーモジュール部とヒートシンクとを一体化した状態の一例を示す、一部断面を含む側面図である。
【
図43】同実施の形態において、パワーモジュール部とヒートシンクとを一体化した状態の他の例を示す、一部断面を含む側面図である。
【
図44】実施の形態3に係る、パワー半導体装置を適用した電力変換装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
各実施の形態に係るパワー半導体装置は、ヒートシンク一体型のパワー半導体モジュールである。ヒートシンク一体型のパワー半導体モジュールでは、パワーモジュール部とヒートシンクとがかしめ加工によって一体化されている。パワー半導体装置の構造の説明のために、必要に応じてX軸、Y軸およびZ軸を使用して説明する。
【0014】
実施の形態1.
実施の形態1に係るパワー半導体装置の一例について説明する。
図1に、パワーモジュール部11とヒートシンク51とをかしめ加工によって一体化する前の、パワー半導体装置1の一部断面を含む第1分解側面図を示す。
図2に、パワーモジュール部11とヒートシンク51とをかしめ加工によって一体化する前の、パワー半導体装置1の一部断面を含む第2分解側面図を示す。
【0015】
図3に、パワーモジュール部11とヒートシンク51とをかしめ加工によって一体化した後の、パワー半導体装置1の一部断面を含む第1側面図を示す。
図4に、パワーモジュール部11とヒートシンク51とをかしめ加工によって一体化した後の、パワー半導体装置1の一部断面を含む第2側面図を示す。
【0016】
図1、
図2、
図3および
図4に示すように、パワー半導体装置1は、パワーモジュール部11およびヒートシンク51を備えている。パワーモジュール部11には、第1凹凸部としての凹凸部15が形成されている。ヒートシンク51には、第2凹凸部としての凹凸部55が形成されている。
【0017】
パワーモジュール部11は、モジュールベース13を備えている。モジュールベース13の一方の表面には、絶縁シート21を介在させてリードフレーム23が配置されている。リードフレーム23には、はんだ25によってチップ27が接合されている。チップ27には、電力半導体素子が形成されている。チップ27等は、封止材としてのモールド樹脂29によって封止されている。モールド樹脂29の側面から、リードフレーム23の一部が外部端子として突出している。
【0018】
モジュールベース13の他方の表面には、凹凸部15が形成されている。凹凸部15は、平坦部15fに凹部15a等が形成された態様の凹凸形状とされる。凹凸部15は、凹部15aとバッファ凹部15cとを含む。このパワー半導体装置1では、モジュールベース13は、凹凸部15がバッファ凹部15cを備える態様で形成されている。凹部15aは、第1方向としてのY軸方向に延在する。バッファ凹部15cは、第2方向としてのX軸方向に延在する。なお、バッファ凹部15cは、凹部15aが延在する方向と略直交する方向に形成されている他に、バッファ凹部15cが、凹部15aが延在する方向と交差する方向に形成されていればよい。
【0019】
ヒートシンク51は、放熱拡散部53aを含むヒートシンクベース部53と、放熱フィン63とを備えている。ここでは、ヒートシンクベース部53として、かしめ加工によって、放熱フィン63とヒートシンクベース部53とを一体化したかしめ構造のヒートシンク51aが採用されている。ヒートシンクベース部53(放熱拡散部53a)には、凹凸部55が形成されている。凹凸部55は、平坦部55fに凸部55aが形成された態様の凹凸形状とされる。
【0020】
放熱フィン63は、ヒートシンクベース部53において、凹凸部55が形成されている側とは反対の側に配置されている。放熱フィン63は、Y-Z平面に略平行に配置されている。放熱フィン63は、X軸方向に互いに間隔を隔てて配置されている。
【0021】
図3および
図4に示すように、パワー半導体装置1では、パワーモジュール部11に形成された凹凸部15と、ヒートシンク51に形成された凹凸部55とを、かしめ加工によって互いに嵌合させることで、パワーモジュール部11とヒートシンク51とが接合されて、一体化されている。
【0022】
具体的に、パワーモジュール部11とヒートシンクベース部53とは、凹凸部15と凹凸部55とが互いに嵌合する部分を含むとともに、凹凸部15と凹凸部55とが互いに嵌合しない部分を含む態様で、一体化されている。凹凸部15と凹凸部55とが互いに嵌合しない部分として、このパワー半導体装置1では、
図4に示すように、パワーモジュール部11の凹凸部15は、バッファ凹部15cを含む。バッファ凹部15cには、凸部55aは嵌合していない。バッファ凹部15cは、パワーモジュール部11とヒートシンクベース部53とが接合された状態で、空間として残されている。
【0023】
モジュールベース13は、たとえば、切削加工、ダイキャスト加工、鍛造加工または押出加工等によって作製される。モジュールベース13は、たとえば、アルミニウムまたはアルミニウム合金等によって形成される。ヒートシンクベース部53は、切削加工、ダイキャスト加工、鍛造加工または押出加工等によって形成される。ヒートシンクベース部53は、たとえば、アルミニウムまたはアルミニウム合金等によって形成される。実施の形態1に係るパワー半導体装置1は、上記のように構成される。
【0024】
次に、上述したパワー半導体装置1の製造方法の一例について説明する。まず、凹部15aおよびバッファ凹部15cを含む凹凸部15が形成されたモジュールベース13を用意する(
図5参照)。電力半導体素子が形成されたチップ27をモジュールベース13に搭載し、モールド樹脂29により封止することによって、パワーモジュール部11を形成する(
図5参照)。また、凹凸部55およびかしめ部61が形成されたヒートシンク51a(51)を用意する(
図5参照)。さらに、板状の複数の放熱フィン63を用意する(
図5参照)。
【0025】
次に、
図5に示すように、パワーモジュール部11のモジュールベース13に形成された凹凸部15と、ヒートシンクベース部53に形成された凹凸部55とが対向するように、パワーモジュール部11とヒートシンクベース部53とを配置する。また、複数の放熱フィン63を、ヒートシンクベース部53に形成されたかしめ部61と対向する位置に配置する。
【0026】
次に、
図6に示すように、複数の放熱フィン63のそれぞれを、対応する、隣り合うかしめ部61とかしめ部61との間に位置する溝(フィン挿入溝)に挿入し、かしめ部61に向けて、かしめ治具(加工ツール)としてのプレス刃71を挿入する。
【0027】
次に、
図7に示すように、プレス刃71をかしめ部61に接触させる。その状態で、パワーモジュール部11を上方から押圧することで、モジュールベース13(パワーモジュール部11)の凹凸部15とヒートシンクベース部53の凹凸部55とが互いに嵌合し、パワーモジュール部11がヒートシンクベース部53に接合される。
【0028】
また、プレス刃71によってかしめ部61がかしめられることによって、複数の放熱フィン63がヒートシンクベース部53に接合される。その後、プレス刃71を取り外すことによって、
図3および
図4に示す、パワーモジュール部11とヒートシンク51とを一体させたパワー半導体装置1が完成する。
【0029】
上述したパワー半導体装置1では、モジュールベース13には、ヒートシンクベース部53に形成された凹凸部55における凸部55aが嵌合しないバッファ凹部15cが形成されている。バッファ凹部15cは、パワーモジュール部11とヒートシンクベース部53とが接合された状態で、空間として残されている。これにより、モジュールベース13をヒートシンクベース部53に接合する際の荷重を低減することができる。このことについて、模式的な図を用いて説明する。
【0030】
まず、
図8および
図9に、比較の対象として、バッファ凹部が形成されていないモジュールベース13の場合における、モジュールベース13とヒートシンクベース部53とを嵌合させる前(ヒートシンクかしめ前)の状態と、嵌合させた後(ヒートシンクかしめ後)の状態とを模式的に示す。
【0031】
一方、
図10および
図11に、実施の形態1に係る、バッファ凹部15cが形成されたモジュールベース13の場合における、モジュールベース13とヒートシンクベース部53とを嵌合させる前(ヒートシンクかしめ前)の状態と、嵌合させた後(ヒートシンクかしめ後)の状態とを模式的に示す。なお、いずれの場合も、モジュールベース13とヒートシンクベース部53とを嵌合させる際には、プレス荷重として、基準となる荷重を付与した。この基準となる荷重を、「1AkN」と記す。
【0032】
図8および
図9に示すように、バッファ凹部が形成されていないモジュールベース13の場合には、基準の1AkNの荷重を加えても、モジュールベース13における平坦部15fとヒートシンクベース部53における平坦部55fとの間には距離があり、ヒートシンクかしめは完了していない。ここで、ヒートシンクかしめが完了したとは、プレス荷重を増加させても、モジュールベース13とヒートシンクベース部53との間の隙間が変化しない状態をいう。
【0033】
一方、
図10および
図11に示すように、バッファ凹部15cが形成されているモジュールベース13の場合には、基準の1AkNの荷重を加えた際に、点線丸枠16内に示すように、バッファ凹部15cの周囲に位置するモジュールベース13の部分が塑性変形をする。このため、モジュールベース13における平坦部15fとヒートシンクベース部53における平坦部55fとが接触し、プレス荷重を増加させても、モジュールベース13とヒートシンクベース部53との間の隙間は変化せず、ヒートシンクかしめが完了する。
【0034】
なお、バッファ凹部が形成されていないモジュールベース13の場合と、バッファ凹部が形成されているモジュールベース13の場合との双方において、モジュールベース13の外周部では、凸部55aが凹部15aに嵌合することによって、凹部15aの周囲に位置するモジュールベース13の部分が塑性変形をする(点線丸枠16参照)。
【0035】
このように、実施の形態1に係るパワー半導体装置1では、モジュールベース13にバッファ凹部15cを設けることで、ヒートシンクかしめを完了させるために加えるプレス荷重を低減することができる。
【0036】
また、バッファ凹部15cの周囲に位置するモジュールベース13の部分が塑性変形をすることで、バッファ凹部15cが設けられていない場合と比べて、モジュールベース13とヒートシンクベース部53(ヒートシンク51)との相対的な位置ずれに対する許容範囲が広がることになる。
【0037】
このため、ヒートシンクかしめの際の、モジュールベース13とヒートシンクベース部53(ヒートシンク51)との位置決め精度を緩くすることができ、位置決め治具として、より簡便な位置決め治具を用いることができる。これにより、特許文献9、10のそれぞれに開示された、モジュールベースに形成された凹凸部とヒートシンクに形成された凹凸部とを嵌合することによって一体化させたパワー半導体装置と比較すると、生産性の良好なヒートシンクかしめを実現することができる。
【0038】
また、バッファ凹部15cは、凸部55aが延在する方向と交差する方向に延在することで、X軸方向とY軸方向との双方にアンカー効果を発現することができる。これにより、各方向からパワーモジュール部11等に作用する外力(せん断応力)に対して、保持強度を高めることができる。
【0039】
さらに、位置決め精度の観点(緩和)から、
図12および
図13に示すように、凹凸部15として、凹部15aの深さよりも深い凹部15bを設け、凹凸部55として、凸部55aの高さよりも高い凸部55bを設けてもよい。なお、この場合には、モジュールベース13には、より高い凸部55bに対応したより深いバッファ凹部15dが形成される。
【0040】
このような、より深い凹部15bとより高い凸部55bとを設けることで、モジュールベース13とヒートシンクベース部53(ヒートシンク51)に対するモジュールベース13のおおよその位置合わせを行うことができる。特に、より高い凸部55bをX軸方向における端(正側と負側)に配置することで、位置合わせをより容易に行うことができ、生産性の向上に寄与することができる。
【0041】
その状態で荷重を加えることで、より高い凸部55bが、より深い凹部15bの傾斜部分をスライドし、ヒートシンクかしめが開始される。この場合には、X軸方向の位置決め精度をさらに緩やかにすることができ、位置決め治具としてさらに簡便な位置決め治具を用いることができる。これにより、生産性のさらに良好なヒートシンクかしめを実現することができる。
【0042】
発明者らは、バッファ凹部15cの効果について、塑性加工解析(シミュレーション)によって、凸部55aが凹部15aにどの程度侵入するかを評価した。次に、この評価について説明する。
【0043】
まず、解析に用いたモジュールベース13およびヒートシンクベース部53のそれぞれのモデルについて説明する。
図14に、X-Z平面に平行な、モジュールベース13およびヒートシンクベース部53のモデルを示す。このモデルは、モジュールベース13にバッファ凹部が形成されていない比較例に係るモデルと、モジュールベース13にバッファ凹部が形成された実施の形態に係るモデルとに共通である。
【0044】
図15に、Y-Z平面に平行な、モジュールベース13およびヒートシンクベース部53のモデルを示す。このモデルは、モジュールベース13にバッファ凹部が形成されていない比較例に係るモデルである。
図16に、Y-Z平面に平行な、モジュールベース13およびヒートシンクベース部53のモデルを示す。このモデルは、モジュールベース13にバッファ凹部が形成された実施の形態に係るモデルである。
【0045】
モジュールベース13における凹部15a、15bの深さおよび幅等の寸法(寸法線参照)を、数mm程度に設定した。モジュールベース13の厚さ(寸法線参照)を、十数mm程度に設定した。また、バッファ凹部15c、15dの深さおよび幅等の寸法(寸法線参照)を、数mm程度に設定した。
【0046】
ヒートシンクベース部53における凸部55aの高さおよび幅等(寸法線参照)を数mm程度に設定した。ヒートシンクベース部53の厚さ(寸法線参照)を、十mm程度に設定した。凹凸部55(凸部55a、凸部55b)のX軸方向の中心線の位置(点線参照)と、凹凸部15(凹部15a、15b)のX軸方向中心線の位置(点線参照)とを一致させた。
【0047】
また、モジュールベース13の材質として、純アルミニウムのA1050系を設定した。ヒートシンクベース部53の材質として、アルミニウム-マグネシウム-シリコン系のA6063系を設定した。このモデルを用いて、バッファ凹部の有無によって、ヒートシンクベース部53の凸部55aが、モジュールベース13の凹部15aにどの程度侵入するかを評価した。
【0048】
その結果を、
図17に示す。
図17では、プレス荷重と、モジュールベース13とヒートシンクベース部53との隙間RDとの関係を示す。隙間RDは、ヒートシンクかしめ侵入深さの残り長さに相当する。
図17では、基準の荷重(1AkN)を加えた場合と、基準の荷重の2.0倍の荷重(2AkN)を加えた場合と、基準の荷重の3.0倍の荷重(3AkN)を加えた場合と、基準の荷重の4.0倍の荷重(4AkN)を加えた場合とをそれぞれ示す。
【0049】
ここで、隙間RDが0.05mm以下になった場合に、ヒートシンクかしめが完了したとする。そうすると、ヒートシンクかしめを完了させるには、比較例では、4AkNの荷重を加える必要があるのに対して、実施の形態1では、2AkNの荷重を加えることでヒートシンクかしめを完了できることが判明した。
【0050】
したがって、実施の形態1に係るパワー半導体装置1では、モジュールベース13にバッファ凹部15cを形成することで、ヒートシンクかしめを完了させるために必要なプレス荷重を約50%低減できることがわかった。
【0051】
なお、上述した評価結果は一例であり、モジュールベース13およびヒートシンクベース部53において、バッファ凹部15cを含む構造を工夫することによって、プレス荷重をさらに低減することが可能である。また、モジュールベース13の材料と、ヒートシンクベース部53の材料とが異なる材料である場合について評価したが、モジュールベース13の材料と、ヒートシンクベース部53の材料とが同じ材料である場合についても、材料が異なる場合と同様の効果が得られると考えられる。
【0052】
なお、パワーモジュール部11とヒートシンクベース部53とが接合された状態で、空間として残されるバッファ凹部15cを設ける領域(面積)を増減することによって、ヒートシンクかしめ後のモジュールベース13とヒートシンクベース部53との保持強度を調整することができる。保持強度とは、この場合、垂直引張強度であり、モジュールベース13とヒートシンクベース部53との引張強度をした際に、モジュールベース13とヒートシンクベース部53とが引き離される直前の最大強度をいう。モジュールベース13とヒートシンクベース部53との保持強度が要求される場合には、プレス荷重の低減効果が得られる程度に、バッファ凹部15cの領域(面積)を調整すればよい。
【0053】
また、パワー半導体装置1の平面形状が矩形(長方形)である場合には、バッファ凹部は、その機能を果たすように配置されていればよい。また、凹凸部15等の寸法を調整することによって、バッファ凹部15cの配置構造としては、バッファ凹部15cが長辺に沿って形成されている配置構造と、バッファ凹部15cが短辺に沿って形成されている配置構造とのいずれの配置構造でもよい。
【0054】
図18に、バッファ凹部15cが長辺に沿って形成されている配置構造の一例を示す。
図18では、ヒートシンクかしめ前のヒートシンクベース部53と、モジュールベース13とが示されている。また、ヒートシンクかしめ後のヒートシンク一体型パワーモジュール(パワー半導体装置1)が示されている。
図18における右上図に示すように、モジュールベース13には、凹部15aがY軸方向(短辺)に沿って形成されているとともに、バッファ凹部15cがX軸方向(長辺)に沿って形成されている。
【0055】
一方、
図19に、バッファ凹部15cが短辺に沿って形成されている配置構造の一例を示す。
図19では、ヒートシンクかしめ前のヒートシンクベース部53と、モジュールベース13とを示す。また、ヒートシンクかしめ後のヒートシンク一体型パワーモジュール(パワー半導体装置1)を示す。
図19における右上図に示すように、モジュールベース13には、凹部15aがX軸方向(長辺)に沿って形成されているとともに、バッファ凹部15cがY軸方向(短辺)に沿って形成されている。
【0056】
(バッファ凹部のバリエーション)
上述したパワー半導体装置1におけるモジュールベース13に形成されたバッファ凹部15cとして、X軸方向にそれぞれ延在する4つのバッファ凹部15cが形成されている場合を例に挙げて説明した(
図2参照)。
【0057】
バッファ凹部15cとしては、これに限られるものではなく、
図20および
図21に示すように、モジュールベース13に、X軸方向に延在する1つのバッファ凹部15cが形成されたパワー半導体装置1であってもよい。また、
図22および
図23に示すように、モジュールベース13に、X軸方向にそれぞれ延在する2つのバッファ凹部15cが形成されたパワー半導体装置1であってもよい。このようなバッファ凹部15cが、少なくとも1つ形成されていれば、上述したパワー半導体装置1と同様に、プレス荷重を低減することができ、生産性の向上に寄与することができる。
【0058】
また、上述したパワー半導体装置1では、モジュールベース13にバッファ凹部15cを形成した構造を例に挙げて説明したが、バッファ凹部をヒートシンクベース部53に形成してもよい。
図24および
図25に示すように、パワー半導体装置1では、モジュールベース13に凹凸部17が形成されている。凹凸部17は、平坦部17fに凸部17aが形成された態様の凹凸形状とされる。
【0059】
ヒートシンクベース部53(放熱拡散部53a)に凹凸部57が形成されている。凹凸部57は、凹部57aとバッファ凹部57cとを含む。凹部57aは、Y軸方向に延在するように形成されている。バッファ凹部57cは、X軸方向に延在するように形成されている。凹凸部57は、平坦部57fに凹部57aとバッファ凹部57cとが形成された態様の凹凸形状とされる。
【0060】
ヒートシンクベース部53に形成される凹凸部57が、パワーモジュール部11とヒートシンクベース部53とが接合された状態で、空間として残されるバッファ凹部15cを含むことで、上述したパワー半導体装置1と同様に、プレス荷重を低減することができ、生産性の向上に寄与することができる。
【0061】
さらに、
図26および
図27に示すように、凹凸部17と凹凸部57とが形成されたパワー半導体装置1の場合、モジュールベース13に、凸部17aが延在する方向と交差する方向にバッファ凹部17cを形成するようにしてもよい。このようなパワー半導体装置1においても、上述したパワー半導体装置1と同様に、プレス荷重を低減することができ、生産性の向上に寄与することができる。
【0062】
また、モジュールベース13に形成される凹凸部15、17およびヒートシンクベース部53に形成される凹凸部55、57では、凹部15a等または凸部55a等は、連続的に形成されていてもよいし、不連続となるように部分的に形成されていてもよい。
図28に、一例として、モジュールベース13に形成される凹凸部15の凹部15aが不連続に形成された場合を示す。このような態様で、たとえば、バッファ凹部15cが不連続に形成されていてもよい。この場合、モジュールベース13とヒートシンクベース部53との保持強度が確保されることを前提(条件)として、プレス荷重の低減効果が得られる程度に、凹部15aまたはバッファ凹部15cの領域(面積)を調整すればよい。
【0063】
さらに、上述したパワー半導体装置1では、パワーモジュール部11に搭載されたチップ27等を、モールド樹脂29によって封止する際に、モールド成形金型を用いる場合には、そのモールド成形金型にモジュールベース13を載置することで、パワーモジュール部11の反りを低減することができる。
【0064】
たとえば、モジュールベース13の凹凸部15のうち、ヒートシンクベース部53の凹凸部55、57と嵌合しないバッファ凹部15a等に対応する支持部をモールド成形金型に設けることで、モジュールベース13がモールド成形金型によって下方から確実に支持されることになる。これにより、モールド樹脂29によって封止した後のパワーモジュール部11の反り量を低減することができる。その結果、チップ27またはモール樹脂29等に割れが生じるのを抑制することができ、生産性を向上させることができる。
【0065】
(放熱フィン)
ヒートシンク51の放熱フィン63は、たとえば、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から形成された板材(圧延材)とされる。このような板材とすることで、加工性と放熱性との双方を両立させることができる。
【0066】
さらに、放熱フィン63にエンボス加工を施すことによって、放熱フィン63の表面に微小な凹みを形成してもよい。放熱フィン63の表面に凹みを形成することで、放熱フィン63の放熱表面積が増加し、放熱性能を向上させることができる。また、エンボス加工は、放熱フィン63をプレス加工によって製造する際に使用する金型によって施すことができる。これにより、生産コストを増やすことなく、放熱フィン63の表面にエンボス加工を施すことができる。
【0067】
さらに、エンボス加工が施された放熱フィン63を積層させた場合には、隣り合う放熱フィン63と放熱フィン63との間で接触する接触面積が減少し、放熱フィン63間同士の表面摩擦を低減することができる。これにより、ヒートシンクベース部53と放熱フィン63とを一体化するかしめ加工に使用する生産設備の簡略化を図ることができる。また、生産タクトの短縮が図られて、生産性を向上させることができる。
【0068】
また、エンボス加工を施した放熱フィン63では、放熱フィン63をヒートシンクベース部53にかしめ加工する際に、エンボス加工が施された凹みに、かしめ部61が食い込むことで、アンカー効果を発揮させることができる。これにより、放熱フィン63がかしめ部から引き抜く方向の摩擦力が大きくなり、放熱フィン63のヒートシンクベース部53に対する垂直引張強度を向上させることができる。
【0069】
ここで、放熱フィン63の硬度がヒートシンクベース部53の硬度よりも高い(硬い)場合には、ヒートシンクベース部53のかしめ部61は、放熱フィン63に食い込むというよりは、エンボス加工が施された放熱フィン63の表面に倣うように塑性変形をすることになる。これにより、エンボス加工が施された放熱フィンのヒートシンクベース部53に対する垂直引張強度を向上させることができる。
【0070】
一方、ヒートシンクベース部53(かしめ部61)の硬度が放熱フィン63の硬度よりも高い(硬い)場合には、かしめ部61が、放熱フィン63の表面に喰い込むことで、放熱フィン63が塑性変形することになる。この場合には、エンボス加工による効果というよりは、放熱フィンが63が塑性変形することによって、ヒートシンクベース部53に対する垂直引張強度を向上させることができる。
【0071】
これらの知見から、放熱フィン63のヒートシンクベース部53に対する垂直引張強度を向上させるには、放熱フィン63の表面にエンボス加工を施す手法、および、ヒートシンクベース部53(かしめ部61)の硬度を放熱フィン63の硬度よりも高い(硬い)する手法のうち、少なくともいずれかの手法を採ることが望ましい。
【0072】
発明者らは、ヒートシンクベース部53をアルミニウム-マグネシウム-シリコン合金のアルミニウム6000系の材料から形成し、放熱フィン63を純アルミニウムのアルミニウム1000系の材料から形成した試料(試料A)を作製し、垂直引張強度を評価した。また、比較例として、ヒートシンクベース部53と放熱フィン63との双方を、純アルミニウムのアルミニウム1000系の材料から形成した試料(試料B)を作製し、垂直引張強度を評価した。その結果、試料Aの垂直引張強度は、試料Bの垂直引張強度よりも約2.5~3.6倍強いことがわかった。
【0073】
なお、パワー半導体装置1では、モジュールベース13、ヒートシンクベース部53および放熱フィン63の材料としては、アルミニウム系の材料に限られるものではなく、パワー半導体装置1の仕様に応じて、適宜、最適な材料が使用される。たとえば、放熱能力の観点からでは、放熱フィン36としては、アルミニウム系の材料よりも熱伝導率が大きい銅系の板材を適用することで、放熱性能をさらに向上させることができる。
【0074】
また、上述したパワー半導体装置1では、放熱フィン63の配置構造としては、第1配置構造と第2配置構造とが想定される。
図29に示すように、第1配置構造は、放熱フィン63がヒートシンクベース部53の長辺と略直交する方向に沿って配置される場合、すなわち、放熱フィン63がヒートシンクベース部53の短辺に沿って配置される構造である。一方、
図30に示すように、第2配置構造は、放熱フィン63がヒートシンクベース部53の短辺と略直交する方向に沿って配置される場合、すなわち、放熱フィン63がヒートシンクベース部53の長辺に沿って配置される構造である。
【0075】
第1配置構造は、放熱フィン63を短辺に沿って配置することで、より高い冷却性能が得られる場合に採用される。また、第1配置構造は、放熱フィン63を短辺に沿って配置させないと、パワー半導体素子が動作する最大温度(ジャンクション温度)が、要求される仕様温度以下まで下がらないような場合に採用される。
【0076】
一方、第2配置構造は、放熱フィン63を長辺に沿って配置することで、より高い冷却性能が得られる場合に採用される。また、第2配置構造は、放熱フィン63を長辺に沿って配置させないと、パワー半導体素子が動作する最大温度(ジャンクション温度)が、要求される仕様温度以下まで下がらないような場合に採用される。
【0077】
また、パワー半導体装置1においては、パワーモジュール部11と、たとえば、制御基板、または、主回路端子に接続されるバスバー等の他の組付け部品と電気的な接続を行う際に、主端子または制御端子等が、ヒートシンクベース部53の長辺側に配置されている場合の方が組付けやすい場合がある。
【0078】
一方、パワーモジュール部11と他の組付け部品と電気的な接続を行う際に、主端子等が、ヒートシンクベース部53の短辺側に配置されている場合の方が組付けやすい場合がある。上述したパワー半導体装置1では、このような周囲の構造に応じて、第1配置構造または第2配置構造を採用すればよい。
【0079】
このように、パワー半導体装置1では、パワーモジュール部11とヒートシンク51とをかしめることによって一体化する構造が採用されている。このため、一つのパワーモジュール部11に対して、たとえば、発熱量等に応じた放熱フィン63が配置されたヒートシンク51を一体化させることができる。これにより、パワーモジュール部11の共通化を図り、生産性の向上に寄与することができる。
【0080】
また、パワーモジュール部11に対して、パワー半導体装置1の周囲の組付け部品の配置関係に対応した構造を有するヒートシンク51を一体化させることができる。このため、たとえば、組付け部品の変更が生じた場合等においては、変更が生じた組付け部品に対応したヒートシンク51を、パワーモジュール部11に一体化させればよい。これにより、パワー半導体装置1とその周辺の設計の自由度を高めることができる。
【0081】
さらに、放熱フィン63の第1配置態様では、ヒートシンクベース部53の外周に沿って位置する外周領域以外の領域に、放熱フィン63を配置させることで、
図31に示すように、ヒートシンクベース部53における外周領域を、かしめ加工を行う際の荷重受け部65として機能させることができる。
【0082】
この場合には、放熱フィン63をヒートシンクベース部53にかしめ加工によりかしめた後、
図32に示すように、ヒートシンクセット治具73に、ヒートシンクベース部53を載置する。次に、パワーモジュール部11を上方から、ヒートシンクベース部53に向けて押圧することにより、モジュールベース13に形成された凹凸部15と、ヒートシンクベース部53に形成された凹凸部55とが互いに嵌合し、パワーモジュール部11がヒートシンクベース部53に接合される。
【0083】
その後、ヒートシンクセット治具73を取り外すことで、
図33に示すように、パワーモジュール部11とヒートシンク51(ヒートシンクベース部53)とが一体化されたパワー半導体装置1が製造される。
【0084】
このように、ヒートシンクセット治具73を用いてパワーモジュール部11とヒートシンク51とを一体化することで、ヒートシンクセット治具73を用いない場合と比較して、一体化をより簡易的にかつ効率よく行うことができる。
【0085】
放熱フィン63の第2配置態様についても、ヒートシンクベース部53の外周に沿って位置する外周領域以外の領域に、放熱フィン63を配置させることで、
図34に示すように、ヒートシンクベース部53における外周領域を、かしめ加工を行う際の荷重受け部65として機能させることができる。その結果、第1配置態様と同様に、パワーモジュール部11とヒートシンク51との一体化を、より簡易的にかつ効率よく行うことができる。
【0086】
また、パワー半導体装置1のヒートシンク51として、放熱フィン63をヒートシンクベース部53にかしめたかしめ構造のヒートシンク51aの他に、放熱フィン63とヒートシンクベース部53とが一体的に形成されたヒートシンク51を適用してもよい。
【0087】
図35および
図36に示すように、ヒートシンク51として、押出加工、切削加工または鍛造加工によって、ヒートシンクベース部53と放熱フィン63とを一体的に形成したヒートシンク51bでもよい。また、
図37および
図38に示すように、ダイキャスト加工によって、ヒートシンクベース部53と放熱フィン63とを一体的に形成したヒートシンク51cでもよい。
【0088】
パワー半導体装置1において、パワーモジュール部11のモジュールベース13のサイズは、1つのパワー半導体装置1の製造に使用される金型によって決まっている。このため、チップ27からの発熱量が増大し発熱密度が高くなるような場合には、その発熱密度に応じて、ヒートシンクベース部53の厚み以外のサイズ(幅、奥行き)、放熱フィンの枚数、放熱フィンのサイズを変更することで、発熱密度に応じた放熱能力を確保することができる。
【0089】
すなわち、1つのパワーモジュール部11に対して、仕様に応じて発生する様々な発熱量に対応しうるヒートシンク51をパワーモジュール部11に接合させることができる。これにより、特許文献1~8のそれぞれに開示された、モールド樹脂から構成されるモールド部とモジュールベース部とにサイズに制約があるパワー半導体装置と比べると、パワーモジュール部11の共通化を図ることができる。その結果、パワー半導体装置1(パワーモジュール部11)の生産性向上に寄与することができる。
【0090】
また、このような、放熱フィン63とヒートシンクベース部53とが一体的に形成されたヒートシンク51の場合(
図35および
図36と
図37および
図38とを参照)においても、ヒートシンクセット治具73(
図32参照)を用いて、パワーモジュール部11とヒートシンク51とを一体化することができる。
【0091】
図39に示すように、放熱フィン63とヒートシンクベース部53とが一体的に形成されたヒートシンク51b(
図35および
図36)を、ヒートシンクセット治具73に載置する。次に、パワーモジュール部11を上方から、ヒートシンクベース部53に向けて押圧することにより、モジュールベース13に形成された凹凸部15と、ヒートシンクベース部53に形成された凹凸部55とが互いに嵌合し、パワーモジュール部11とヒートシンクベース部53とが一体化される。
【0092】
その後、ヒートシンクセット治具73を取り外すことで、
図40に示すように、パワーモジュール部11とヒートシンク51とが一体化されたパワー半導体装置1が製造される。放熱フィン63とヒートシンクベース部53とが一体化されたヒートシンク51の場合には、ヒートシンクセット治具73を用いることで、パワーモジュール部11とヒートシンク51とを容易に一体化することができる。なお、
図37および
図38に示すヒートシンク51cについても、同様に、ヒートシンクセット治具73を用いて、パワーモジュール部11とヒートシンクベース部53とを一体化することができる。
【0093】
実施の形態2.
実施の形態2に係るパワー半導体装置の一例について説明する。
図41に、パワーモジュール部11とヒートシンク51とをかしめ加工によって一体化する前の、パワー半導体装置1の一部断面を含む分解側面図を示す。
図42に、パワーモジュール部11とヒートシンク51とをかしめ加工によって一体化した後の、パワー半導体装置1の一部断面を含む側面図を示す。
【0094】
図41および
図42に示すように、パワー半導体装置1におけるヒートシンクベース部53は、放熱拡散部53aと嵩上げ部53bとから構成される。嵩上げ部53bは、放熱拡散部53aからパワーモジュール部11側に向かって突出するように形成されている。なお、これ以外の構成については、
図1等に示すパワー半導体装置1の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0095】
上述したパワー半導体装置1では、前述したバッファ凹部15cが形成されていることによる生産性向上の効果に加えて、次のような効果が得られる。パワー半導体装置1では、放熱拡散部53aからパワーモジュール部11側に向かって突出するように嵩上げ部53bが形成されている。これにより、
図42に示すように、パワーモジュール部11におけるモールド樹脂29から突出するリードフレーム23と、ヒートシンクベース部53の放熱拡散部53aとの絶縁距離Lを確保することができる。
【0096】
ヒートシンクベース部53は、切削加工、鍛造加工、押出加工またはダイキャスト加工によって製造されており、嵩上げ部53bは、そのヒートシンクベース部53を製造する際に同時に形成される。このため、嵩上げ部53bの厚み(高さ)を自由に設定することができ、生産性を阻害することなく、仕様に応じた必要な絶縁距離Lを容易に確保することができる。
【0097】
なお、
図43に示すように、リードフレーム23と放熱拡散部53aとの絶縁距離Lを確保する手法としては、モジュールベース13の厚さを厚くする構造も考えられる。この場合には、モジュールベース13が厚くなることに伴ってモジュールベース13の熱容量が増加することになるため、モールド樹脂29を成型する際の生産性を考慮すると、放熱拡散部53aに嵩上げ部53bを形成することによって、絶縁距離Lを確保することが望ましい。
【0098】
実施の形態3.
ここでは、上述した実施の形態1または実施の形態2において説明したパワー半導体装置1を適用した電力変換装置について説明する。本開示は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態3として、三相のインバータに本開示を適用した場合について説明する。
【0099】
図44は、本実施の形態に係る電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
図44に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のものにより構成することが可能であり、たとえば、直流系統、太陽電池、蓄電池により構成することができる。また、交流系統に接続された整流回路またはAC/DCコンバータにより構成してもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成してもよい。
【0100】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、
図44に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201を制御する制御信号を主変換回路201に出力する制御回路203とを備えている。
【0101】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動する三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、たとえば、ハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道車両、エレベーター、または、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0102】
以下、電力変換装置200の詳細について説明する。主変換回路201は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えている(いずれも図示せず)。スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力が交流電力に変換されて、負荷300に供給される。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態に係る主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。
【0103】
主変換回路201の各スイッチング素子および各還流ダイオードの少なくともいずれかに、上述した実施の形態1または実施の形態2に係るパワー半導体装置1を、半導体モジュール202として構成する。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0104】
また、主変換回路201は、各スイッチング素子を駆動する駆動回路(図示せず)を備えているが、駆動回路は半導体モジュール202に内蔵されていてもよいし、半導体モジュール202とは別に駆動回路を備える構成であってもよい。駆動回路は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0105】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるように、主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。たとえば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるように、主変換回路201が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号
またはオフ信号を駆動信号として出力する。
【0106】
本実施の形態に係る電力変換装置では、主変換回路201の各スイッチング素子および各還流ダイオードの少なくともいずれかに、実施の形態1または実施の形態2において説明したパワー半導体装置1を、半導体モジュール202として適用する。これにより、電力変換装置の生産性の向上に寄与することができる。
【0107】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例について説明したが、本開示は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが、3レベルまたはマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には、単相のインバータに本開示を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合には、DC/DCコンバータまたはAC/DCコンバータに本開示を適用することも可能である。
【0108】
また、本開示を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、たとえば、放電加工機、レーザー加工機、誘導加熱調理器または非接触器給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには、太陽光発電システムまたは蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0109】
なお、各実施の形態において説明したパワー半導体装置については、必要に応じて種々組み合わせることが可能である。
【0110】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本開示は上記で説明した範囲ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示は、パワーモジュールとヒートシンクとを一体化したヒートシンク一体型のパワー半導体装置に有効に利用される。
【符号の説明】
【0112】
1 パワー半導体装置、11 パワーモジュール部、13 モジュールベース、15 凹凸部、15a、15b 凹部、15c、15d バッファ凹部、15f 平坦部分、16 点線丸枠、17 凹凸部、17a、17b 凸部、17c バッファ凹部、17f 平坦部分、21 絶縁シート、23 リードフレーム、25 はんだ、27 チップ、29 モールド樹脂、51、51a、51b、51c ヒートシンク、53 ヒートシンクベース部、53a 放熱拡散部、53b 嵩上げ部、55 凹凸部、55a、55b 凸部、55f 平坦部、57 凹凸部、57a、57b 凹部、57c バッファ凹部、57f 平坦部、61 フィンかしめ部、63 放熱フィン、65 荷重受け部、71 プレス刃、73 ヒートシンクセット治具。