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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】コーティング組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/07 20060101AFI20241018BHJP
   C09D 183/05 20060101ALI20241018BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241018BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20241018BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20241018BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20241018BHJP
【FI】
C09D183/07
C09D183/05
C09D7/61
C09D7/65
C09D7/20
C09D7/48
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023538929
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 CN2021141886
(87)【国際公開番号】W WO2022143604
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/141214
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユー
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、リユン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、カン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユシェン
(72)【発明者】
【氏名】グオ、イー
(72)【発明者】
【氏名】シー、チン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ジホア
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-509654(JP,A)
【文献】特表2004-536920(JP,A)
【文献】特開昭52-119659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 183/07
C09D 183/05
C09D 7/61
C09D 7/65
C09D 7/20
C09D 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物を含む皮革コーティング組成物であって、
成分(i)25℃で1000~500,000mPa.sの粘度を有する1つ以上のオルガノポリシロキサンポリマーであって、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求めたときに前記ポリマーの少なくとも5重量%がアルケニル基、アルキニル基、又はそれらの混合物から選択される不飽和基である、オルガノポリシロキサンポリマーと、
成分(ii)任意選択で疎水処理されていてもよい補強性シリカ充填剤であって、7.5~30重量%の量で前記皮革コーティング組成物中に存在する、補強性シリカ充填剤と、
成分(iii)シリコーン結合水素を含む末端(M)基を有するシリコーン樹脂架橋剤であって、成分(iii)中のSi-H基の、前記組成物中の不飽和基に対するモル比が0.5:1~20:1である、シリコーン樹脂架橋剤と、
成分(iv)ヒドロシリル化触媒と、
成分(v)電界放射型走査電子顕微鏡を使用して求められる0.5~500μmの数平均粒径を有するケイ素不含有機微粒子であって、本明細書に開示される試験方法を用いて少なくとも180℃の温度まで熱的に安定であり、5~35重量%の量で前記皮革コーティング組成物中に存在する、ケイ素不含有機微粒子であって、
ポリウレタン微粒子、アクリル微粒子、メタクリル微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子、ポリエステル微粒子、ポリオレフィン微粒子、又はそれらの混合物から選択される、前記ケイ素不含有機微粒子と、
を含有する組成物。
【請求項2】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の成分(iii)が、以下:
Si-Hを含有するM基、(CHSiO1/2基、及びSiO4/2基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、
Si-Hを含有するM基及びSiO4/2基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、
Si-Hを含有するM基、(CHSiO2/2基、及びSiO4/2基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、
Si-Hを含有するM基、SiO4/2基、及び(CSiO1/2基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、並びにメチルが、フェニル基又は他のアルキル基又はこれらの混合物で置き換えられた代替物、
のうちの1つ以上を含み、上の各々が、1つ以上のT基を含み得る、請求項1に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項3】
以下の添加剤:硬化阻害剤、硬化シリコーンエラストマー粉末、可使時間延長剤、潤滑剤、希釈剤、難燃剤、顔料、着色剤、熱安定剤、圧縮永久歪改善添加剤、きしみ防止剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を更に含む、請求項1に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項4】
存在する場合、前記潤滑剤が反応性潤滑剤である、請求項3に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項5】
前記ケイ素不含有機微粒子が、電界放射型走査電子顕微鏡を使用して求められる0.5~100μmの数平均粒径を有する、請求項1又は2に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項6】
シリコーン系合成皮革複合材料用のトップコート組成物である、請求項1又は2に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項7】
硬化時に得られる、請求項1又は2に記載の組成物の反応生成物であるトップコートを含む、シリコーン系合成皮革複合材料。
【請求項8】
ポリエステル繊維、ビスコースレーヨン繊維、ポリアミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、セルロース繊維、及び弾性テキスタイル材料のうちの1つ以上から選択されるテキスタイル支持層を含む、請求項7に記載のシリコーン系合成皮革複合材料。
【請求項9】
請求項1に記載の皮革コーティング組成物の硬化物であるトップコートを有するシリコーン系合成皮革複合材料を調製する方法であって、以下の工程:
(i)前記皮革コーティング組成物を剥離ライナ上に適用する工程と、
(ii)前記剥離ライナ上の前記皮革コーティング組成物を硬化させて、硬化トップコートを形成する工程と、
(iii)前記硬化トップコート上にシリコーンスキン層を適用する工程と、
(iv)前記硬化トップコート層が前記剥離ライナと硬化スキン層との間に挟まれるように、前記シリコーンスキン層を硬化させて前記硬化スキン層を形成する工程と、
(v)前記硬化スキン層上にシリコーン接着剤組成物を適用する工程と、
(iv)前記接着層が前記スキン層とテキスタイル支持層との間に挟まれるように、前記接着層上に前記テキスタイル支持層を配置する工程と、
(vii)前記接着層を硬化させる工程と、
(viii)必要に応じて、前記剥離ライナを取り除く工程と、
による方法。
【請求項10】
請求項9に記載の皮革コーティング組成物を含むか又はそれからなるトップコートを有するシリコーン系合成皮革複合材料を適用する方法であって、前記皮革コーティング組成物が、10~100μmの湿潤フィルム厚で適用され、乾燥して2~50μmの対応する乾燥コーティング厚になる、方法。
【請求項11】
噴霧、ロール処理、ブラッシング、スピンコーティング、ディップコーティング、溶媒キャスティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、又はグラビアコーティングから選択される手段のうちの1つ以上によって、請求項9又は10に記載のトップコートをシリコーン系合成皮革複合材料に適用する方法。
【請求項12】
家具、装飾、ハンドバッグ、バインダー、旅行かばん、衣類、電話カバー、電子商品用カバー、ブックカバー、履物、自動車の内装、自動車のシート、ウェアラブルデバイス、及び/若しくは医療用ベッド/シートにおける又はこれらのための、請求項7又は8に記載のシリコーン系合成皮革複合材料の使用。
【請求項13】
硬化してから、擦過後の光沢の変化を最小限に抑えるための、合成皮革用のトップコートとしての、請求項1又は2に記載の皮革コーティング組成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合成皮革材料、特にシリコーン系合成皮革複合材料用のトップコートとしての、又はトップコート用のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物、当該組成物の硬化物である合成皮革材料用のトップコートとしてのシリコーンコーティング、それを利用して当該トップコート及び合成皮革材料を作製する方法、並びに当該合成皮革材料製品の使用に関する。トップコートは、擦過後の光沢の変化を最小限に抑えるか又は少なくとも減少させるために、ケイ素不含有機微粒子を含有する高度に架橋されたシリコーンマトリックスを提供するように設計される。
【0002】
天然皮革に代わる、ポリウレタン(PU)又はポリ塩化ビニル(PVC)系材料が主に使用されている多様な合成代替物が開発されている。それらは、家具、装飾、ハンドバッグ、旅行かばん、衣服、履物、自動車の内装、自動車のシートなどを含む多種多様な用途で使用されている。しかしながら、合成皮革として利用するには、一層厳しくなる安全規制を満たすために、例えば、難燃性、煙濃度に関する厳しい物性要件を満たし、使用時にコーティング層が剥がれ落ちないようにするための好適な接着強度が必要とされ、耐熱性、耐汚染性、耐溶媒性、耐加水分解性などを保持することが必要とされる。PU及び/又はPVC系材料は、上述の物性要件を満たすことができない場合が多い。
【0003】
天然皮革の他の代替物としては、シリコーン系合成皮革複合材料が挙げられる。そのようなシリコーン系合成皮革複合材料は、PU及び/又はPVC系の材料代替物に比べていくつかの利点を有し得る。例えば、それらは、概して、可塑剤も毒性重金属も使用せず、また有機合成皮革の製造が、製造後の合成皮革製品中に少なくとも部分的に残留することが多いジメチルホルムアミド(DMF)などの環境的に問題のある溶媒の使用に依存することに鑑みて、より環境に優しい製造方法を使用して調製することができる。
【0004】
シリコーン系合成皮革複合材料は、いくつかの経路を介して作製することができるが、概して、テキスタイル支持層と、ヒドロシリル化硬化性液体シリコーンゴム組成物の2つ以上の層と、剥離ライナとを使用して製造される。例えば、第1の液体シリコーンゴム(LSR)組成物を剥離ライナ上にコーティングしてよく、次いで、硬化させて第1の層又はスキン層を形成する。通常は第1の層とは異なる物性を有する第2のLSR組成物が、硬化された第1の層上に適用されて接着層を形成し、次いでテキスタイル支持層が、第2のLSR層上に配置されその後硬化され、その後、第2のLSR組成物が硬化されて、スキン層とテキスタイル支持層との間に位置する接着層を形成する。必要に応じて及び必要なとき、その後、剥離ライナを取り除く。シリコーン系皮革複合材料を形成するために適切であるとみなされる場合、更に、剥離ライナとテキスタイル層との間にヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の層を適用してもよい。例えば、スキン層の上に保護トップコートとして第3の層が提供される場合がある。
【0005】
そのようなシリコーン系合成皮革複合材料は、例えば、広い温度範囲にわたるより良好な柔軟性、並びに優れた耐UV性及び耐熱性を提供する能力により、物性の観点から従来のPU及びPVC合成皮革よりも優れた性能を発揮することが可能である。トップコートは、耐摩耗性及び防汚性などの有利な特性を提供するのに役立つので、特に重要である。それらはまた、ヒトの皮膚に優しく、ユーザに優れた手触りを提供すると考えられる。しかしながら、残念なことに、そのようなシリコーン系材料から作製されたトップコートは、擦過後に同じ所望の光沢の外観を維持することができない。擦過後に、光沢が減少又は増大する場合がある。光沢の減少は、擦過剤の固体の凹凸とシリコーン系合成皮革複合材料の表面との間の接着接触による摩耗パターンの出現によって引き起こされる。これは、ポリマーエラストマーの典型的な摩耗現象である。あるいは、光沢の増大が観察される場合もあり、その根本的な原因は、より硬い材料との摩擦相互作用が繰り返されることによって、小さなグレインを有する粗面が平滑になること、すなわち、表面粗さの減少によって引き起こされる光沢の増大である。
【0006】
したがって、硬化時に、擦過後の光沢変化のレベルの変化を視覚的に最小限に抑えることができるシリコーン系合成皮革複合材料トップコート用のトップコートを形成するのに好適な、改善されたシリコーンコーティング組成物が依然として必要とされている。
【0007】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物を含む皮革コーティング組成物であって、
成分(i)25℃で1000~500,000mPa.sの粘度を有する1つ以上のオルガノポリシロキサンポリマーであって、1分子当たり当該ポリマーの少なくとも5重量%(wt.%)がアルケニル基、アルキニル基、又はそれらの混合物から選択される不飽和基である、オルガノポリシロキサンポリマーと、
成分(ii)(充填剤を疎水性にするために)任意選択で1つ以上の充填剤処理剤で処理された無機補強性シリカ充填剤と、
成分(iii)シリコーン結合水素を含む末端(M)基を有するシリコーン樹脂架橋剤であって、成分(iii)中のSi-H基の、当該組成物中の不飽和基に対するモル比が0.5:1~20:1である、シリコーン樹脂架橋剤と、
成分(iv)ヒドロシリル化触媒と、
成分(v)電界放射型走査電子顕微鏡を使用して求められる0.5~500μmの数平均粒径を有するケイ素不含有機微粒子であって、少なくとも180℃の温度まで熱的に安定であり、当該組成物の5~35重量%の量で当該ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物中に存在する、ケイ素不含有機微粒子と、
を含有する組成物が提供される。
【0008】
トップコートは、擦過後の光沢の変化を減少させるために、ケイ素不含微粒子を含有する高度に架橋されたシリコーンマトリックスを提供するように設計される。
【0009】
本明細書に記載の皮革コーティング組成物の硬化層の形態のトップコート、特にシリコーン系合成皮革複合材料用のトップコートを有する合成皮革も提供される。
【0010】
本明細書に記載される皮革コーティング組成物の硬化の反応生成物として形成されるシリコーンコーティング、それを利用してトップコート及びシリコーン系合成皮革複合材料を作製する方法、並びにシリコーン系合成皮革複合材料から作製される製品の使用も提供される。
【0011】
(i)オルガノポリシロキサンポリマー
皮革コーティング組成物のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の成分(i)は、25℃で1000~500000mPa.sの粘度を有する1つ以上のオルガノポリシロキサンポリマーであって、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求めたときに1分子当たりポリマーの少なくとも5重量%がアルケニル基、アルキニル基、又はそれらの混合物から選択される不飽和基である、オルガノポリシロキサンポリマーであり、例えば、オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、式(I)の複数の基:
SiO(4-a)/2 (I)
[式中、各Rは独立して、脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族ヒドロカルビル基、又はオルガニル基(すなわち、官能基の種類とは無関係に、炭素原子において1つの自由原子価を有する、任意の有機置換基)から選択される]の複数の単位を有する]を有する。飽和脂肪族ヒドロカルビルとしては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルなどのアルキル基、並びにシクロヘキシルなどのシクロアルキル基が例示されるが、それらに限定されない。不飽和脂肪族ヒドロカルビルとしては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、シクロヘキセニル、及びヘキセニルなどのアルケニル基、並びにアルキニル基が例示されるが、それらに限定されない。芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリル、及び2-フェニルエチルが例示されるが、それらに限定されない。オルガニル基としては、クロロメチル、及び3-クロロプロピルなどのハロゲン化アルキル基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基などの窒素含有基、ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基などの酸素含有基が例示されるが、それらに限定されない。更なるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基、及び/又はホウ素含有基が挙げられ得る。下付き文字「a」は、0、1、2又は3であってもよいが、典型的には主に2又は3である。
【0012】
シロキシ基は、Rが、有機基、典型的にはメチル基であるとき、略記(略称)命名法、すなわち-「M」、「D」、「T」、及び「Q」によって記載され得る(シリコーン命名法に関する更なる教示は、Walter Noll,Chemistry and Technology of Silicones,dated 1962,Chapter I,pages 1-9に見出すことができる)。M単位は、式中a=3であるシロキシ基、すなわち、RSiO1/2に相当し、D単位は、式中a=2であるシロキシ基、すなわち、RSiO2/2に相当し、T単位は、式中a=1であるシロキシ基、すなわち、RSiO3/2に相当し、Q単位は、式中a=0であるシロキシ基、すなわち、SiO4/2に相当する。
【0013】
オルガノポリシロキサンポリマー(i)の典型的な基の例としては、主にアルケニル、アルキル、及び/又はアリール基が挙げられる。基は、ペンダント位置(D又はTシロキシ基上)にあっても、末端(Mシロキシ基上)にあってもよい。したがって、オルガノポリシロキサンポリマー(i)における好適なアルケニル基は、典型的には、2~10個の炭素原子、例えばビニル、イソプロペニル、アリル、及び5-ヘキセニル、典型的にはビニル基を含有し、既に示した通り、1分子当たりポリマーの少なくとも5重量%、あるいは1分子当たりポリマーの5~15重量%、あるいは1分子当たりポリマーの6~15重量%、あるいは1分子当たりポリマーの7~15重量%の量でポリマー上に存在し、これは、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求めることができる。
【0014】
典型的には、アルケニル基及び/又はアルキニル基から選択される不飽和基以外のオルガノポリシロキサンポリマー(i)に結合しているケイ素結合有機基は、典型的には1~10個の炭素原子を含有する一価飽和炭化水素基、及び非置換であるか又はハロゲン原子などのこの組成物の硬化に干渉しない基で置換された典型的には6~12個の炭素原子を含有する一価芳香族炭化水素基から選択される。ケイ素結合有機基の好ましい種は、例えば、メチル、エチル、及びプロピルなどのアルキル基、並びにフェニルなどのアリール基である。
【0015】
オルガノポリシロキサンポリマー(i)の分子構造は、典型的には直鎖状であるが、分子内の(前述の)T基の存在から、いくつかの分岐が存在する場合もある。
【0016】
前述のようにヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物を硬化させることによって調製されたエラストマーにおいて有用なレベルの物性を達成するためには、オルガノポリシロキサンポリマー(i)の粘度は、25℃で少なくとも1000mPa.sである必要がある。オルガノポリシロキサンポリマー(i)の粘度の上限は、25℃で最大500,000mPa.sの粘度に制限される。
【0017】
概ね、各オルガノポリシロキサンは、1分子当たりポリマーの少なくとも5重量%の、アルケニル基、アルキニル基、又はこれらの混合物から選択される不飽和基を含有する。存在する不飽和基の量(重量%)は、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求められる。成分(i)は、別段の指示がない限り、粘度範囲に適切なスピンドルを使用し、ASTM D1084-16 MethodBのカップ/スピンドル法に依存して25℃で測定して、25℃で1000mPa.s~500,000mPa.s、あるいは25℃で1000mPa.s~150,000mPa.s、あるいは25℃で2000mPa.s~125,000mPa.s、あるいは25℃で2000mPa.s~100,000mPa.s、あるいは5000mPa.s~80,000mPa.sの粘度を有する。
【0018】
オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、例えばアルケニル基及び/又はアルキニル基を含有するポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、又はそれらのコポリマーから選択してよく、任意の他の好適な末端基を有していてよく、例えば、それらはトリアルキル末端、アルケニルジアルキル末端であってもよく、又は各オルガノポリシロキサンポリマー(i)が前述の通り1分子当たりポリマーの少なくとも5重量%を含有するという条件で、任意の他の好適な末端基の組み合わせが末端であってもよい。
【0019】
したがって、オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、例としては、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン、又はジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーであってよいが、高レベルのアルケニル及び/又はアルキニル基が存在することに鑑みて、あるいは、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン又はジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーであってもよい。
【0020】
例えば、2つの末端にアルケニル基及び/又はアルキニル基から選択される不飽和基を含有するオルガノポリシロキサンポリマー(i)は、一般式(II)によって表すことができる。
R’R”R”’SiO-(R”R”’SiO)-SiOR’’’R”R’ (II)
式(II)中、各R’は、典型的には2~10個の炭素原子を含有するアルケニル基又はアルキニル基であってよい。アルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、アルケニル化シクロヘキシル基、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、又は同様の直鎖状及び分岐状アルケニル基、並びにアルケニル化芳香族環構造が挙げられるが、これらに限定されない。アルキニル基は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、アルキニル化シクロヘキシル基、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、又は同様の線状及び分岐アルケニル基、並びにアルケニル化芳香族環構造から選択され得るが、これらに限定されない。
【0021】
R’’は、エチレン性不飽和を含有せず、各R’’は、同一であっても、異なっていてもよく、典型的には1~10個の炭素原子を含有する一価飽和炭化水素基、及び典型的には6~12個の炭素原子を含有する一価芳香族炭化水素基から個別に選択される。R’’は、非置換であってもよく、又はハロゲン原子などの本明細書に記載のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の硬化に干渉しない1つ以上の基によって置換されてもよい。R’’’は、R’又はR’’である。
【0022】
オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、典型的には、組成物の3重量%あるいは10重量%から組成物の50重量%あるいは45重量%までの量で存在し、例えば、オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、組成物の10~50重量%、あるいは10~45重量%の範囲で存在し得る。
【0023】
(ii)補強性シリカ充填剤
ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物を含む皮革コーティング組成物の成分(ii)は、補強性シリカ充填剤である。好ましくは、ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物を含む皮革コーティング組成物の成分(ii)は、好ましくは微粉化された形態で提供される補強性シリカ充填剤である。ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の処理中の「クレーピング」又は「クレープ硬化」と称される現象を防止するために、補強性シリカ充填剤(ii)は、多くの場合、1つ以上の既知の充填剤処理剤で処理される。
【0024】
沈降シリカ及び/又はヒュームドシリカ、あるいはヒュームドシリカは、典型的には少なくとも50m/g(ISO9277:2010に従ったBET方法)である比較的大きい表面積から、特に好ましい。50~450m/g(ISO9277:2010に従ったBET方法)、あるいは50~300m/g(ISO9277:2010に従ったBET方法)の表面積を有する充填剤が、典型的には使用される。いずれの種類のシリカも、市販されている。好ましくは、それらは微粉化された形態で提供される。
【0025】
本明細書におけるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物中の補強性シリカ充填剤(ii)、例えば、微粉シリカの量は、5~40重量%、あるいは5~30重量%である。場合によっては、補強性シリカ充填剤の量は、組成物の重量に基づいて7.5~30重量%、あるいは10~30重量%、あるいは組成物の重量に基づいて15~30重量%であってよい。
【0026】
補強性シリカ充填剤(ii)がもともと親水性である場合(例えば、未処理シリカ充填剤)、典型的には、疎水性にするために処理剤で処理される。表面処理によって充填剤がオルガノポリシロキサンポリマー(i)に易濡れ性になるので、これらの表面改質された補強性シリカ充填剤(ii)は、凝集せず、オルガノポリシロキサンポリマー(i)に均質に組み込まれ得る。その結果、ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物及びそれを硬化されて得られる硬化材料の改善された室温機械的特性が得られる。
【0027】
表面処理は、組成物への導入前に行ってもよく、又はその場(in situ)で(すなわち、充填剤が完全に処理されるまでこれらの成分を室温以上で一緒にブレンドすることにより、本明細書における組成物の他の成分のうちの少なくとも一部の存在下で)行ってもよい。典型的には、未処理の補強性シリカ充填剤(ii)は、オルガノポリシロキサンポリマー(i)の存在下においてその場で処理剤で処理され、混合された後、シリコーンゴムベース材料が得られ、それに他の成分を添加してよい。
【0028】
典型的には、補強性シリカ充填剤(ii)は、処理中のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物のクレーピングを防止するために、適用可能な当技術分野で開示されている任意の低分子量有機ケイ素化合物で表面処理され得る。例えば、充填剤を疎水性にして、それによって取り扱いをより容易にし、他の成分との均質な混合物を得るようにするための、オルガノシラン、オルガノポリシロキサン、又はヘキサアルキルジシラザンなどのオルガノシラザン、短鎖シロキサンジオール、又は脂肪酸、又はステアリン酸エステルなどの脂肪酸エステルである。具体的な例としては、シラノール末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン、シラノール末端ViMeシロキサン、テトラメチルジ(トリフルオロプロピル)ジシラザン、テトラメチルジビニルジシラザン、シラノール末端MePhシロキサン、各分子に平均2~20個のジオルガノシロキサンの繰り返し基を含有する液体ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザンが挙げられるが、これらに限定されない。加工助剤としてのシリカ処理剤と共に、少量の水を添加してもよい。
【0029】
充填剤は、当該充填剤及びオルガノポリシロキサンポリマーを含むマスターバッチ又は基剤の形態で、ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物に導入され得る。マスターバッチ又は基剤に使用されるオルガノポリシロキサンポリマーは、成分(i)と類似の構造のものであってもよいが、あるいは、成分(i)と同じ範囲の粘度を有し、但しポリマーの<5重量%(ASTM E168)のアルケニル及び/又はアルキニル含有量を有するオルガノポリシロキサンポリマーであってもよい。必要な場合、マスターバッチの調製中に混合物に好適な疎水化剤を導入することによって、ヒュームドシリカをその場で疎水性に処理してもよい。
【0030】
本明細書に記載のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物は、1分子当たり3個以上のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(成分iii)と、ヒドロシリル化触媒(成分iv)と、を含む、ヒドロシリル化硬化パッケージを使用して硬化される。
【0031】
(iii)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物を含む皮革コーティング組成物の成分(iii)は、下記の成分(iv)の触媒活性下における成分(iii)のケイ素結合水素原子と成分(i)のアルケニル基及び/又はアルキニル基との付加反応によって、ポリマー(i)のための架橋剤として作用する、シリコーン結合水素を含む末端基を有するシリコーン樹脂架橋剤である。成分(iii)は、この成分のケイ素結合水素原子が、成分(i)のアルケニル基及び/又はアルキニル基、典型的にはアルケニル基、特にビニル基と十分に反応して、これらと共に網状構造を形成し、それによって組成物を硬化させることができるように、少なくとも5,000百万分率(ppm)のケイ素結合水素(Si-H)、あるいは少なくとも7000ppm、あるいは7000~12,000ppmのケイ素結合水素、あるいは8000ppm~11,000ppmのケイ素結合水素を含有する。存在するケイ素結合水素の量も、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求められる。
【0032】
成分(iii)の分子構造は、樹脂性であり、Q、T、D、及びM基の混合物を含み、成分(i)との良好な混和性を得るために、Brookfield DV 3Tレオメーターを使用して25℃で10~5000mPa.s、あるいは25℃で10~1000mPa.s、あるいは25℃で10~500mPa.sの粘度を有する。
【0033】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物を含む皮革コーティング組成物の成分(iii)の例としては、
(CHHSiO1/2基などのSi-Hを含有するM基、(CHSiO1/2基などのトリアルキルM基及びSiO4/2基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、
(CHHSiO1/2基及びSiO4/2基などのSi-Hを含有するM基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、
(CHHSiO1/2基などのSi-Hを含有するM基、(CHSiO2/2基、及びSiO4/2基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、
(CHHSiO1/2基などのSi-Hを含有するM基、SiO4/2基、及び(CSiO1/2基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、並びにメチルがフェニル基又は他のアルキル基又はこれらの混合物で置き換えられている代替物が挙げられるが、これらに限定されない。シリコーン樹脂はまた、T基及び/又はD基、あるいはT基を含み得る。
【0034】
任意選択で、他の架橋剤を更に利用してもよい。これらとしては、以下が挙げられ得る。
1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、
1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、
トリス(水素ジメチルシロキシ)メチルシラン、
トリス(水素ジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチル水素シクロポリシロキサン、
トリメチルシロキシ末端ブロックメチル水素ポリシロキサン、
トリメチルシロキシ末端ブロックジメチルシロキサン/メチル水素シロキサンコポリマー、
ジメチル水素シロキシ末端ブロックジメチルポリシロキサン、
ジメチル水素シロキシ末端ブロックジメチルシロキサン/メチル水素シロキサンコポリマー、
トリメチルシロキシ末端ブロックメチル水素シロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、
トリメチルシロキシ末端ブロックメチル水素シロキサン/ジフェニルシロキサン/-ジメチルシロキサンコポリマー、
トリメチルシロキシ末端ブロックメチル水素シロキサン/メチルフェニルシロキサン/-ジメチルシロキサンコポリマー、
ジメチル水素シロキシ末端ブロック/ジメチルシロキサン/-ジフェニルシロキサンコポリマー、及び/又は
ジメチル水素シロキシ末端ブロックメチル水素シロキサン/ジメチルシロキサン/-メチルフェニルシロキサンコポリマー。しかしながら、成分(iii)が、上記の1つ以上のシリコーン樹脂であることが好ましい。
【0035】
成分(iii)は、典型的には、組成物の5~30重量%、5~20重量%、あるいは10~20重量%の量で全組成物中に存在するが、存在する量は、典型的には、成分(iii)中のケイ素結合水素原子の、全ての不飽和基、例えばアルケニル及びアルキニル基、多くの場合ビニル基の総数に対するモル比によって求められる。本組成物では、成分(iii)中のケイ素結合水素原子の、全ての不飽和基の総数に対するモル比は、0.5:1~20:1、あるいは0.5:1~10:1、あるいは0.5:1~5:1、あるいは1:1~5:1であり、好ましくはSi-Hが過剰である。
【0036】
iv)ヒドロシリル化触媒
前述のように、皮革コーティング組成物は、白金族、すなわち白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、及びパラジウムから選択される金属、又はそのような金属の化合物であるヒドロシリル化(付加硬化)触媒(iv)によって触媒される、ヒドロシリル化(付加)反応を介して硬化される。ヒドロシリル化反応でのこれらの触媒の高い活性レベルから、白金及びロジウム化合物が好ましい。
【0037】
触媒(iv)
触媒(iv)は、白金族金属、活性炭、酸化アルミニウム若しくは二酸化ケイ素などの金属酸化物、シリカゲル若しくは粉末状木炭などの担体上に担持された白金族金属、又は白金族金属の化合物若しくは錯体であり得る。
【0038】
好ましいヒドロシリル化触媒(iv)の例は、白金系触媒、例えば、白金黒、酸化白金(アダムス触媒)、様々な固体担体上の白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、及び塩化白金酸と、オレフィンなどのエチレン性不飽和化合物及びエチレン性不飽和ケイ素結合炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体である。使用可能な可溶性白金化合物としては、例えば、式(PtCl(オレフィン)及びH(PtCl.オレフィン)の白金-オレフィン錯体が挙げられ、この状況を鑑みると、エチレン、プロピレン、ブテン及びオクテンの異性体などの2~8個の炭素原子を有するアルケン、又はシクロペンテン、シクロヘキセン、及びシクロヘプテンなどの5~7個の炭素原子を有するシクロアルカンの使用が優先される。他の可溶性白金触媒は、例えば、式(PtClの白金-シクロプロパン錯体であり、アルコール、エーテル、及びアルデヒド若しくはそれらの混合物とのヘキサクロロ白金酸の反応生成物、又はエタノール溶液中の重炭酸ナトリウムの存在下でのメチルビニルシクロテトラシロキサンとのヘキサクロロ白金酸の反応生成物である。リン、硫黄、及びアミン配位子を有する白金触媒、例えば、(PhP)PtCl、及びsym-ジビニルテトラメチルジシロキサンなど、ビニルシロキサンとの白金の錯体も、使用することができる。
【0039】
したがって、好適な白金系触媒の具体的な例としては、
(i)米国特許第3,419,593号に記載されている、塩化白金酸のエチレン性不飽和炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体;
(ii)六水和物形態又は無水形態のいずれかの塩化白金酸;
(iii)塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む、方法によって得られる白金含有触媒;
(iv)(COD)Pt(SiMeCl(式中、「COD」は1,5-シクロオクタジエンである)などの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体;及び/又は
(v)典型的には溶媒中に、例えばトルエンを使用してもよい、約1重量%の白金を含有する白金とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体であるKarstedt触媒が挙げられる。これらは、米国特許第3,715,334号及び米国特許第3,814,730号に記載されている。
【0040】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物のヒドロシリル化触媒(iv)は、全組成物中に触媒量、すなわち、付加/ヒドロシリル化反応を触媒し、所望の条件下で組成物をエラストマー材料に硬化させるために十分な量又は含量で存在する。ヒドロシリル化触媒(iv)のレベルを変動させて使用して、反応速度及び硬化速度を調整することができる。ヒドロシリル化触媒(iv)の触媒量は、概ね、組成物の重量に基づいて百万部あたりの白金族金属の重量部(ppm)で、0.01ppm~10,000ppm、あるいは0.01~5000ppm、あるいは0.01~3,000ppm、あるいは0.01~1,000ppmである。特定の実施形態において、触媒の触媒量は、組成物の重量に基づいて、0.01~1,000ppm、あるいは0.01~750ppm、あるいは0.01~500ppm、あるいは0.01~100ppmの範囲の金属であってもよい。範囲は、指定されたように、触媒内の金属含有量のみ、又は触媒全体(その配位子を含む)に関連し得るが、典型的には、これらの範囲は、触媒内の金属含有量のみに関連する。触媒は、単一種として、又は2種以上の異なる種の混合物として添加してよい。典型的には、触媒パッケージが提供される形態/濃度に依存して、存在する触媒の量は組成物の0.001~3.0重量%、あるいは組成物の0.01~3.0重量%、あるいは組成物の0.1~3.0重量%、あるいは組成物の0.1~2.0重量%%、あるいは組成物の0.1~1.5重量%の範囲内である。
【0041】
(v)ケイ素不含有機微粒子
本明細書におけるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の成分(v)は、0.5~500μm、あるいは0.5~250μm、あるいは0.5~100μm、あるいは0.5~75μm、あるいは1.0~50μmの数平均粒径を有するケイ素不含有機微粒子である。数平均粒径は、Thermo Fisher Scientific製のFEI Nova NanoSEM(商標)630走査電子顕微鏡などの電界放射型走査電子顕微鏡を使用して測定することができる。例えば、粒子の電界放射型走査電子顕微鏡写真を撮影し、次いで、写真から無作為に10個の粒子を選択し、画像中の各粒子の直径を測定することによって、これを達成することができる。次いで、選択された粒子について平均直径を計算する。
【0042】
成分(v)のケイ素不含有機微粒子は、少なくとも180℃の温度まで熱的に安定であり、組成物の5~35重量%の量、あるいは5~30重量%の量、あるいは5~25重量%の量で組成物中に存在する。それらは、典型的には80℃~180℃の温度で保持される硬化プロセス全体を通して熱的に安定であることが必要とされる。「熱的に安定である」とは、ケイ素不含有機微粒子が180℃以下の温度で熱的に分解しないことを意味する。これは、ケイ素不含有機微粒子のサンプルを好適な容器に入れ、次いで、容器を、180℃の温度及び大気圧で予熱したオーブンに30分間入れることによって判定される。オーブンに30分間入れた後、サンプルを視覚的に評価して、微粒子がその元の形態であるように見えるかどうか、この場合、180℃の温度まで熱的に安定であるとみなされる(合格))かどうか、又は視覚的に明らかである何らかの方法で、例えば、凝集、液化、炭化、及び/若しくは分解によって視覚的に分解されているかどうかを判定する。
【0043】
成分(v)ケイ素不含有機微粒子は、概して又は好ましくは、球状及び/又は準球状の形状である。成分(v)ケイ素不含有機微粒子は、熱硬化性材料であってもよい。更に、誤解を避けるために、成分(v)ケイ素不含有機微粒子は、ケイ素不含であり、微量の夾雑しか許容しない、すなわち、ケイ素不含有機微粒子は、ケイ素原子もケイ素含有化合物も実質的に含有しない。上記で使用される用語、実質的にとは、典型的には不純物の形態の、微量のケイ素しか存在しないことを意味することが意図される。
【0044】
成分(v)ケイ素不含有機微粒子は、所定の要件を満たす限り、任意の好適な有機材料から作製してよく、当該微粒子は、ポリウレタン微粒子、アクリル微粒子、メタクリル微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子、ポリエステル微粒子、ポリアミド微粒子、及び/若しくはポリオレフィン微粒子、並びにそれらの誘導体及び又は混合物から選択してよい。例えば、当該微粒子としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、及び他のビニルポリマー、並びにそれらのコポリマー;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;並びにポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、及びこれらのブレンドのうちの1つ以上を含み得るが、それらに限定されない。成分(v)のケイ素不含有機微粒子は、擦過後の光沢の視覚的変化を最小限に抑える手段として功を奏することが判明し、その理由は、皮革表面上の小さなグレインは擦過中にすり減るが、トップコート表面に微粒子が出現して表面粗さの喪失を補うのに役立ち、この場合、光沢の増大が回避されるためである。加えて、トップコート表面におけるロバストなケイ素不含有機微粒子の存在は、マトリックスの更なる摩耗を回避するのに役立つ。
【0045】
任意選択の添加剤
皮革コーティング組成物は、1つ以上の添加剤を含み得る。これらの任意選択の添加剤の例としては、硬化阻害剤、硬化シリコーンエラストマー粉末、
無機非補強性充填剤、導電性添加剤、可使時間延長剤、潤滑剤、難燃剤、顔料、着色剤、鎖延長剤、熱安定剤、希釈剤(硬化中に蒸発するように設計される)、圧縮永久歪改善添加剤、きしみ防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防汚剤及び光安定剤、凍結防止剤及び/又は殺生物剤、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
阻害剤
任意選択で、ヒドロシリル化硬化系が利用されているので、皮革コーティング組成物中で使用される、又は皮革コーティング組成物として使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物のより長い作用時間又は可使時間を得るために、好適な抑制剤を組成物に組み込んで、触媒の活性を遅延又は抑制してもよい。
【0047】
白金金属系触媒、全般的には白金族金属系触媒の抑制剤は、当技術分野で周知である。ヒドロシリル化又は付加反応抑制剤としては、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレンアルコール、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シランなどのシリル化アセチレンアルコール、マレエート、フマレート、エチレン性又は芳香族不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィンシロキサン、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル、共役エン-イン、ハイドロパーオキシド、ニトリル、並びにジアジリジンが挙げられる。米国特許第3,989,667号に記載されているようなアルケニル置換シロキサンを使用してもよく、そのうち、環状メチルビニルシロキサンが好ましい。
【0048】
白金触媒の阻害剤として知られている別の分類としては、米国特許第3,445,420号に開示されているアセチレン化合物が挙げられる。2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレンアルコールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する好ましい分類の抑制剤である。これらの阻害剤を含有するヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物は、典型的には、実用的な速度で硬化させるために70℃以上の温度に加熱する必要がある。
【0049】
アセチレンアルコール及びその誘導体の例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、1-フェニル-2-プロピノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0050】
場合によっては、存在するとき、触媒(iv)の金属1モル当たり抑制剤1モル程度の低い抑制剤濃度は、満足な保管安定性及び硬化速度をもたらす。他の場合では、触媒(iv)の金属1モル当たり最大500モルの阻害剤の阻害剤濃度が必要とされる。所与の組成物における、所与の抑制剤に対する最適な濃度は、通常の実験で容易に決定される。組成物中に存在するとき、選択された抑制剤が提供される/市販されている濃度及び形態に応じて、抑制剤は、典型的には、組成物の0.0125~10重量%の量で存在する。上記の混合物もまた使用され得る。
【0051】
硬化シリコーンエラストマー粉末
ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物中に含まれ得る別の任意選択の添加剤は、好適な硬化シリコーンエラストマー粉末である。硬化シリコーンエラストマー粉末は、要求に応じて公に利用可能であるDow Silicone Corporation Corporate Test Method CTM 1138を使用して測定したときに任意の好適な平均粒径、例えば、0.01~100μm、あるいは0.01~50μm、あるいは0.01~25μmを有し得る。それらは、化学的官能基、例えば、エポキシ基(メタ)アクリロキシ基を含有していてもよく、又は例えばシリカ処理されたコーティングでコーティングされてもよい。
【0052】
硬化シリコーンエラストマー粉末は、好適な硬化性シリコーン組成物から作製される。硬化性シリコーン組成物としては、例えば、付加(ヒドロシリル化)反応硬化するシリコーン組成物、縮合反応硬化するシリコーン組成物、有機パーオキサイド硬化するシリコーン組成物、及び紫外線硬化するシリコーン組成物が挙げられ得る。付加反応硬化する及び縮合反応硬化するシリコーン組成物は、それらの取り扱いの容易さのために好ましい。
【0053】
成分(v)として利用することができる商業的な例としては、例として、Dow Silicones Corporation製のDowsil(商標)23N Additive、Dowsil(商標)603T additive、及びDowsil(商標)9701 Cosmetic Powderが挙げられる。
【0054】
存在する場合、硬化シリコーンゴム粉末は、ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物中に、当該組成物の2.5~20重量%、あるいは当該組成物の2.5~15重量%、あるいは当該組成物の2.5~10重量%の量で存在する。
【0055】
無機非補強性充填剤
ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物中の無機非補強性シリカ充填剤は、存在する場合、破砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン及びカーボンブラック、ウォラストナイト、並びにグラファイト、グラフェン、タルク、雲母、粘土、層状ケイ酸塩、カオリン、モンモリロナイトなどのプレートレットタイプの充填剤、並びにそれらの混合物を含み得る。単独で又は上記の充填剤に加えて使用することができる他の無機非補強性充填剤としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(水滑石)、グラファイト、炭酸銅、例えばマラカイト、炭酸ニッケル、例えばザラカイト、炭酸バリウム、例えば毒重石、及び/又は炭酸ストロンチウム、例えばストロンチアナイトが挙げられる。
【0056】
無機非補強性充填剤は、存在する場合、代替的又は追加的に、酸化アルミニウム、以下からなる群からのケイ酸塩(シリケート):かんらん石族、ざくろ石族;アルミノシリケート;環状シリケート;鎖状シリケート;及び層状シリケートからなる群からなる群からのシリケートから選択され得る。かんらん石族は、ケイ酸塩鉱物、例えばフォルステライト及びMgSiOを含むが、これらに限定されない。ざくろ石族は、赤色ざくろ石;MgAlSi12;緑ざくろ石;及びCaAlSi12などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。アルミノケイ酸塩は、ケイ線石;AlSiO;ムライト;3Al 2SiO;藍晶石、及びAlSiOなどであるが、これらに限定されない粉砕ケイ酸塩鉱物を含む。環状ケイ酸塩族は、菫青石及びAl(Mg、Fe)[SiAlO18]などであるがこれらに限定されないケイ酸塩鉱物を含む。鎖状ケイ酸塩族は、粉砕ケイ酸塩鉱物、例えば、珪灰石及びCa[SiO]を含むが、これらに限定されない。
【0057】
好適な層状ケイ酸塩、例えば、利用することができるケイ酸塩鉱物としては、:雲母、KAl14[SiAl20](OH);葉蝋石;Al[Si20](OH);タルク;Mg[Si20](OH);蛇絞石、例えばアスベスト;カオリナイト;Al[Si10](OH);及びバーミキュライトが挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、非補強性充填剤は、累計で組成物の1~50重量%まで存在する。
【0058】
必要であるとみなされるいかなる場合でも、非補強性シリカ充填剤も、補強性シリカ充填剤(ii)に関して上に記載した通り処理して疎水性にし、それによって取り扱いを容易にし、他の成分との均質な混合物を得ることができる。補強性シリカ充填剤(ii)の場合のように、非補強性シリカ充填剤を表面処理することにより、オルガノポリシロキサンポリマー(i)及び存在する場合はケイ素不含有機微粒子(v)を易濡れ性にし、その結果、より良好な加工性(例えば、粘度がより低い、離型能がより良好である、及び/又は2本ロールミルなどの加工装置への接着性がより低い)、耐熱性、及び機械的特性などのヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の改善された特性を得ることができる。
【0059】
任意の好適な酸化防止剤、帯電防止剤、防汚剤、及び/又は光安定剤を、組成物中で利用してもよい。
【0060】
好ましくは、本明細書において使用することができる導電性添加剤は、無機である。組成物中に存在し得る導電性充填剤の例としては、金属粒子、金属酸化物粒子、金属コーティングされた金属粒子(銀メッキニッケルなど)、金属コーティングされた非金属コア粒子(銀コーティングされたタルク又は雲母又は石英など)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。金属粒子は、粉末、フレーク又はフィラメント、及びそれらの混合物又は誘導体の形態であってもよい。
【0061】
トリアゾールなどの可使時間延長剤を使用してもよいが、本発明の範囲内で必須であるとはみなされない。したがって、ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物は、可使時間延長剤を含んでいなくてもよい。
【0062】
潤滑剤の場合、潤滑剤は、組成物の他の成分と反応性であってもよく、非反応性であってもよい。これらは、成分(i)と類似の基本構造を有するが、1分子当たり1つの不飽和基、例えば、1つのアルケニル基しか有しないオルガノポリシロキサンを含み得る。あるいは、潤滑剤は、有機ワックスなどであってもよい。反応性である場合、ワックスは、例えば、1分子当たり少なくとも1つのアルケニル化基、例えばビニル基と共に、1分子当たり15~30個の炭素を有する、あるいは1分子当たり15~30個の炭素を有するアルケニル化ワックスであってもよい。
【0063】
所望の場合、非反応性潤滑剤が組成物中に存在していてもよく、これらとしては、窒化ホウ素、グラファイト、硫化モリブデンなど、又はそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0064】
難燃剤の例としては、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、ウォラストナイト、雲母及び塩素化パラフィン、ヘキサブロモシクロドデカン、リン酸トリフェニル、メチルホスホン酸ジメチル、リン酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)(臭素化トリス)、並びにこれらの混合物又は誘導体が挙げられる。
【0065】
顔料の例としては、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化チタン、酸化クロム、酸化ビスマスバナジウム、及びそれらの混合物又は誘導体が挙げられる。
【0066】
着色剤の例としては、バット染料、反応性染料、酸性染料、媒染染料、分散染料、カチオン性染料、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
2つ以上の理由から例えば非補強性シリカ充填剤及び難燃剤として任意選択の添加剤を使用してもよい場合、存在するとき、それらは両方の役割で機能することができる。存在するとき又は存在する場合、前述の追加成分は、累積で、組成物の0.1~30重量%、あるいは0.1~20重量%の量で存在する。
【0068】
保管中の早期硬化を防ぐために、組成物は、使用前にパートA及びパートBの2つのパートで保管される。典型的には、パートAは、オルガノポリシロキサンポリマー(i)及び補強性シリカ充填剤(ii)の一部、並びにヒドロシリル化触媒(iv)を含有し、パートBは、成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)と一緒に残りのオルガノポリシロキサンポリマー(i)及び補強性シリカ充填剤(ii)、並びに通常、存在する場合、阻害剤を含有するが、これは、使用される阻害剤の選択に応じて変動し得る。2パート組成物は、パートBのオルガノポリシロキサンポリマー(i)及び補強性シリカ充填剤(ii)の量に応じて任意の好適な比で一緒に混合されるように設計してよく、したがって、15:1~1:2のパートA:パートBの重量比で混合してよいが、好ましくは2:1~1:2、あるいは1.5:1~1:1.5、あるいは1:1のパートA:パートBの重量比で混合される。
【0069】
任意選択の添加剤は、必要に応じて、それぞれのパートの他の成分のうちのいずれにも悪影響を引き起こさない限り、パートA又はパートBのいずれかのシリコーンエラストマー組成物に導入され得る。
【0070】
皮革コーティング組成物に使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の個々のパートは、任意の好適な方法で調製することができる。この目的のために、先行技術に記載されている任意の混合技術及びデバイスを用いることができる。使用する具体的なデバイスは、成分及び最終の硬化性コーティング組成物の粘度によって決定される。好適なミキサーとしては、パドルタイプのミキサー、例えば遊星ミキサー、又はニーダータイプのミキサーが挙げられるが、これらに限定されない。混合中に成分を冷却して、組成物の早期硬化を避けることが望ましい場合もある。
【0071】
既に論じたように、成分(ii)補強性シリカ充填剤は、組成物のパートA又はパートBの両方にヒュームドシリカを導入するために使用されるヒュームドシリカマスターバッチの形態で組成物に導入されてもよく、これは、25~45重量%のヒュームドシリカと、55~75重量%の1分子当たり少なくとも2つのアルケニル及び/又はアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、を含み得る。オルガノポリシロキサンは、上記成分(i)、並びに/又は成分(i)と同じ粘度範囲であるが、ポリマーの<5重量%のアルケニル及び/若しくはアルキニル含有量を有するオルガノポリシロキサンであってよい。一実施形態では、ヒュームドシリカマスターバッチにおける1分子当たり少なくとも2つのアルケニル及び/又はアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサンは、25℃で30,000~80,000mPa.sの粘度、及びASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求められたポリマーの0.05~0.2重量%のビニル含有量、あるいはポリマーの0.05~0.15重量%のビニル含有量を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンである。そのようなマスターバッチは、ヒュームドシリカ及びポリマーだけを含んでいてもよいが、任意選択で、10~100mPa.sの粘度及び(ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求められた)当該ポリマーの5~20重量%、あるいは7.5~15重量%のビニル含有量を有するヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジメチルヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンポリマーなどの少量の他の成分、並びに/又は水を含有していてもよい。
【0072】
したがって、パートA及びパートBを一緒に混合した場合、ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物は、以下を含んでいてよい。
【0073】
成分(i)1つ以上のオルガノポリシロキサンポリマーであって、組成物の3重量%、あるいは10重量%から組成物の50重量%、あるいは45重量%までの量の、1分子当たりポリマーの少なくとも5重量%、あるいは1分子当たりポリマーの5~15重量%、あるいは1分子当たりポリマーの6~15重量%、あるいは1分子当たりポリマーの7~15重量%がアルケニル基、アルキニル基、又はそれらの混合物から選択される不飽和基である、25℃で1000~500,000mPa.s、あるいは25℃で1000mPa.s~150,000mPa.s、あるいは25℃で2000mPa.s~125,000mPa.s、あるいは25℃で2000mPa.s~100,000mPa.s、あるいは25℃で測定された5000mPa.s~80,000mPa.sの粘度を有する、オルガノポリシロキサンポリマー。例えば、オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、組成物の10~50重量%、あるいは10~45重量%の範囲で存在し得る。
【0074】
成分(ii)補強性シリカ充填剤であって、好ましくは疎水処理されており、組成物に直接導入されてもよく、マスターバッチの形態で導入されてもよく、BET表面積が、概ね少なくとも50m/g(ISO 9277:2010に従うBET法)である、補強性シリカ充填剤、すなわち、ヒュームドシリカ。充填剤は、50~450m/g(ISO 9277:2010に従うBET法)、あるいは50~300m/gの表面積を有し、本明細書におけるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物中の補強性シリカ充填剤(ii)、例えば、微粉シリカの量は、5~40重量%、あるいは5~30wt%である。場合によっては、補強性シリカ充填剤の量は、組成物の7.5~30重量%、あるいは組成物の10~30重量%、あるいは組成物の15~30重量%であってよく、マスターバッチの形態である場合、マスターバッチは、25~45重量%のヒュームドシリカ、55~75重量%の成分(i)、並びに/又は25℃で50,000~80,000mPaの粘度及びポリマーの0.05~0.2重量%のビニル含有量、あるいはポリマーの0.05~0.15重量%のビニル含有量を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、あるいは55~75重量%の上記のようなジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、を含み得る。マスターバッチ組成物はまた、最初に、充填剤を疎水性にし、それによってポリマーとの混合をより容易にするために、充填剤をその場で処理するための処理剤を含んでいてもよい。
【0075】
成分(iii)シリコーン樹脂架橋剤であって、パートB組成物の10~30重量%、あるいは10~20重量%、あるいはパートB組成物の12~20重量%の量で全組成物中に存在するが、存在する量は、典型的には、成分(iii)のケイ素結合水素原子の、全不飽和基の総数に対するモル比によって求められる、0.5:1~20:1、あるいは0.5:1~10:1、あるいは0.5:1~5:1、あるいは1:1~5:1であり、好ましくはSi-Hが過剰であり、少なくとも5,000百万分率(ppm)のケイ素結合水素(Si-H)、あるいは少なくとも7000ppm、あるいは7000~12,000ppmのケイ素結合水素、あるいは8000ppm~11,000ppmのケイ素結合水素を含有する、シリコーン結合水素を含む末端基を有する、シリコーン樹脂架橋剤。成分(iii)の粘度は、25℃で15~50mPa.s、あるいは25℃で15~40mPa.s、あるいは25℃で20~35mPa.sである。
【0076】
成分(iv)ヒドロシリル化触媒組成物により提供される存在する触媒の量は、組成物の0.01~3.0重量%、あるいは組成物の0.1~3.0重量%、あるいは組成物の0.1~2.0%、あるいは組成物の0.1~1.5%の範囲内であり、成分(i)及び(ii)並びに存在する場合(v)の合計重量に基づいて、百万部あたりの白金族金属の重量部(ppm)で0.01ppm~10,000ppm、あるいは0.01~7,500ppm、0.01~3,000ppm、あるいは100~6,000ppmを含有する。また、
成分(v)は、ケイ素不含有機微粒子であり、0.5~500μm、あるいは0.5~250μm、あるいは0.5~100μm、あるいは0.5~75μm、あるいは1.0~50μmの数平均粒径(必要に応じて、上述の方法によって求められる)を有し、少なくとも180℃の温度まで熱的に安定である(上述の方法を使用して判定される)。成分(v)は、組成物の5~35重量%の量、あるいは組成物の5~30重量%の量、あるいは組成物5~25重量%の量で組成物中に存在する。
【0077】
成分(i)~(v)及び任意の添加剤を含む組成物の総重量%は、100重量%であるが、上記の任意の好適な組み合わせであってもよい。
【0078】
皮革コーティング組成物のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物中の成分を混合する順序は、重要ではない。好適なパートA及びパートBを調製し、次いで、使用直前に、15:1~1:2の所定の比、例えば、例としては1:1の比で、パートA及びパートBを一緒に混合する。
【0079】
皮革コーティング組成物のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の硬化は、ヒドロシリル化硬化に好適な温度で実行することができる。例えば、約80℃~180℃、あるいは80℃~150℃、あるいは80℃~130℃の硬化温度である。
【0080】
上記の皮革コーティング組成物は、硬化してから優れた摩耗及び傷付き耐性保護を提供するので、合成皮革材料、特にシリコーン系合成皮革複合材料用のトップコートとして利用される。皮革コーティング組成物はまた、様々な他のタイプの皮革、例えば、従来の皮革、ヌバック、又はスエードにも適用することができる。前述の通り、皮革コーティング組成物は、仕上げた皮革に又は皮革の仕上げにおける最終湿潤段階中に適用してよいが、好ましくは、合成皮革、特にシリコーン系合成皮革複合材料用のトップコートとして使用される。上記の皮革コーティング組成物の硬化からの反応生成物の形態のトップコートを有する皮革は、大幅に向上した耐摩耗性を有する。この耐摩耗性の向上は、最終コーティングの適合性及び柔軟性を損なうことなく達成され、耐摩耗性を向上させるために使用されることの多い他の添加剤は、コーティングされた皮革の手触りを粗くし、コーティングの構造に亀裂を生じさせる曲げに対する耐性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
前述の皮革コーティング組成物の適用及び使用は、製造中又は製造後のシリコーン系合成皮革複合材料の構造における層を示す断面図である添付図面図1図4と併せて以下の更なる説明からより明らかになるであろう。
【0082】
前述の図と併せた、前述のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物を使用してシリコーン系合成皮革複合材料を作製する方法の詳細な説明。
【0083】
前述の皮革コーティング組成物(5)の硬化からの反応生成物であるコーティングを含むシリコーン系合成皮革複合材料は、各々が異なる機能を有する硬化液体シリコーンゴムのいくつかの層(3、4)、並びにテキスタイル支持層(2)を含み得る。本明細書に記載の皮革コーティング組成物から作製されたトップコートを除いて、シリコーン系合成皮革複合材料は、少なくともテキスタイル支持層(2)、第1の液体シリコーンゴム材料から作製された接着層(3)、及び第2の液体シリコーンゴム材料から作製された第2の又はスキン層(4)を含む。接着層(3)は、効果的な接着剤として、テキスタイル支持層(2)と第2の(スキン)層(4)との間に設けられる。使用中、接着層又は第1の層(3)は、テキスタイル支持層(2)に接着され、スキン層(4)に接着又は積層される。前述の皮革コーティング組成物は、保護トップコート(5)として機能し、これは、スキン層(4)の上にありそれに結合している第3の層である、すなわち、第2の層(4)は、接着層(3)とトップコート層(5)との間に位置する。
【0084】
典型的には、剥離ライナ(1)は、必要になるまでシリコーン系合成皮革複合材料の外面を保護するために提供される。シリコーン系合成皮革複合材料を作製するための依拠されるプロセスに応じる。剥離ライナ(1)は、好ましいプロセスに応じて、スキン層(4)又はトップコート(5)に接着された初期の層の組み合わせに含まれ得る。前者の場合、剥離ライナ(1)はトップコートを適用する前に除去されてもよい。後者の場合、トップコートは、トップコート上に剥離ライナを適用する前にスキン上に適用されるか、又はトップコートは、追加の層を適用する前に最初に剥離ライナ上に適用される。
【0085】
テキスタイル支持層(2)は、任意の好適なテキスタイル材料、例えば、合成樹脂繊維、天然繊維、及び/又はマイクロファイバーから作製された織布、編まれたテキスタイル、又は不織布から作製され得る。これらとしては、ポリエステル繊維、ビスコースレーヨン繊維、ポリアミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、綿などのセルロース繊維、及びスパンデックスなどの弾性テキスタイル材料を挙げることができるが、これらに限定されず、上記のうちの任意の2つ以上の混合物として使用してもよい。テキスタイル支持層は、シリコーン皮革の機械的強度を向上するように設計されている。
【0086】
上記皮革コーティング組成物(すなわち、トップコート層(5))は、典型的には、約2~50μm、あるいは2~30μm、あるいは5~25μmの乾燥コーティング厚に対応する、10~100μm、あるいは10~60μmの湿潤フィルム厚で適用される。それは、任意の好適な温度、例えば、約80℃~180℃、あるいは80℃~160℃、あるいは80℃~130℃で好適な期間、例えば、30秒間~20分間、あるいは30秒間~10分間、あるいは30秒間~5分間、あるいは30秒間~2.5分間の期間硬化され得る。
【0087】
任意の好適な液体シリコーンゴム組成物を、接着層又は第1の層(3)として利用してもよい。これは、テキスタイル支持層(2)に接着することが可能であるものとなり、典型的には、硬化してから、例えば20~40の低いデュロメータショアA硬度及び触れたときに柔らかい手触りを有する。接着層(3)として機能するように設計された好適なヒドロシリル化硬化性液体シリコーンゴム組成物の商業的な例は、Dow Silicones Corporation製のDowsil(商標)LCF 8400 Binderである。Dowsil(商標)LCF 8400 Binderは、早期硬化を回避するためのヒドロシリル化硬化性組成物の標準であるままで、2パート形態で消費者に提供され、結果として、Dowsil(商標)LCF 8400 Binderの2つのパートは、使用直前に一緒に混合される。
【0088】
接着層(3)は、任意の所望の乾燥厚さ、例えば、50μm~1mmの厚さ、あるいは50~750μm、あるいは50~500μm、あるいは100~500μm、あるいは100~300μmの厚さのものであってよい。それは、任意の好適な温度、例えば、125~180℃、あるいは130~170℃、あるいは135~160℃で、20分間以下、あるいは1~10分間、あるいは1.5分間~5分間、あるいは1.5分間~4分間の好適な期間硬化され得る。
【0089】
前に示したように、第1の層又は接着層(3)は、テキスタイル支持層(2)と第2の層又はスキンコーティング層(4)との間に挟まれ、それらに接着するように設計されている。
【0090】
前述の第2の組成物又はスキンコーティング組成物(4)は、通常、接着層(3)に結合される保護合成皮革として設計される。これは、単独で、又は本明細書に記載されるものなどの好適なトップコート(5)と共に使用され得る。任意の好適な液体シリコーンゴム組成物を利用して、第2の又はスキン層(4)を形成することができ、これは、典型的には、硬化してから、第1の又は接着層(3)よりも高い、例えば(≧)50以上、あるいは(≧)60以上のデュロメータショアA硬度を有する。第2の又はスキン層(4)として機能するように硬化可能な好適な液体シリコーンゴム組成物の商業的な例は、いずれもDow Silicones Corporation製のDowsil(商標)LCF 8300 Skin及びDowsil(商標)LCF 8500 Skinであり、これらはいずれもヒドロシリル化硬化性液体シリコーンゴム組成物であることに鑑みて、使用前の保管中に早期硬化するのを回避するために、同様に使用直前に一緒に混合される2パートでユーザに提供される。Dowsil(商標)LCF 8300 Skinは、約65の高いショアAデュロメータ値を有し、耐摩耗性を提供し、Dowsil(商標)LCF 8500 Skinと比べて相対的に低い粘度を有する。後者は、高い機械的強度を有する前者のヒュームドシリカ強化版であるので、はるかに高い粘度である。多くの場合、両方の組成物の利点から恩恵を得るために、Dowsil(商標)LCF 8300 Skin及びDowsil(商標)LCF 8500 Skinの混合物を第2の又はスキン層(4)として使用する。
【0091】
スキン層(4)は、任意の好適な乾燥厚さのものであってよく、例えば、接着層は、任意の所望の厚さ、例えば、50μm~1mmの厚さ、50~750μm、あるいは50~500μm、あるいは50~350μm、あるいは50~250μmの厚さのものであってよい。スキン層が剥離紙上に直接適用され、スキン層の平均厚さが求められた場合、これは、剥離紙のサンプルの長さ及び幅を測定し、この場合はスキン層組成物で剥離紙をコーティングし、それを硬化させ、得られたコーティングされた剥離紙を秤量し、以下の式に基づいて平均厚さを計算することによって求められた。
【0092】
スキン層の平均乾燥厚さ=スキン層の重量/(密度×幅×長さ)
示した場合、他の各層の平均乾燥コート厚さは、それぞれの層の重量を求め、上記の式を使用することによって同樣に求められた。いずれの場合も、密度はASTM D792に従って求めた。スキン層は、任意の好適な温度、例えば、約100℃~150℃、あるいは110℃~135℃、あるいは110℃~125℃で、30秒間~5分間、あるいは30秒間~2.5分間の期間硬化され得る。
【0093】
所望の場合、最終シリコーン皮革製品は、約75℃~180℃の温度で、概ね、但し必ずしもそうではないが、所望の場合、範囲の下限に向かって、例えば、75~120℃で2~48時間、あるいは6~36時間、あるいは10~24時間、後硬化させてもよい。
【0094】
前述の皮革コーティング組成物は、任意の好適なコーティング方法、例えば、噴霧、ロール処理、ブラッシング、スピンコーティング、ディップコーティング、溶液キャスティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、又はグラビアコーティングによって、図2に示す通り、予め形成されたシリコーン系合成皮革複合材料、例えば(2、3、4)上にトップコートとして適用してよい。接着層(3)及びスキン層(4)は、同じ手段を介して適用してよい。
【0095】
布層は、任意の好適な方法、例えば、積層で接着層に接着させてよい。
【0096】
そのような状況では、予め形成されたシリコーン系合成皮革複合材料は、典型的には、いくつかの代替プロセスによって調製された。
(i)液体シリコーンゴムスキンタイプの組成物(4)を剥離ライナ(1)上に適用することと、
(ii)剥離ライナ(1)上の(i)のスキン層組成物を硬化させて、硬化スキン層(4)を形成することと、
(iii)硬化スキン層(4)上にシリコーン接着剤組成物を適用することと、
(iv)接着層(3)がスキン層(4)とテキスタイル支持層(2)との間に挟まれるように、接着層(3)の硬化前又は硬化中に接着層(3)上にテキスタイル支持層(2)を配置することと、
(v)接着層(3)を硬化させることと、
(vi)必要に応じて剥離ライナ(1)を取り除くことと。
上記は、図1及び図2に示され、これらは剥離ライナを有する(図1)及び剥離ライナを有しない(図2)シリコーン系合成皮革複合材料を示す。図2の場合、シリコーン系合成皮革複合材料は調製されており、この時点で、上記の任意の好適な適用手段(例えば、噴霧、ロール処理、ブラッシング、スピンコーティング、ディップコーティング、溶媒キャスティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、又はグラビアコーティング)によって、スキン層(4)の上に前述の通りトップコートを適用するための準備が整っている。
【0097】
次いで、剥離ライナ(1)を除去したスキン層(4)の表面上に前述の皮革コーティング組成物を適用し、硬化させて、シリコーン系合成皮革複合材料上に保護トップコートを形成する。
【0098】
代替的な実施形態では、シリコーン系合成皮革複合材料は、連続プロセスで前述の皮革コーティング組成物を使用して、トップコートを用いた連続プロセスで調製してもよい。この場合、続くプロセスは、以下であり得る:
(i)前述の皮革コーティング組成物を剥離ライナ(1)上に適用することと、
(ii)剥離ライナ(1)上の前述の皮革コーティング組成物を硬化させて、硬化トップコート(5)を形成することと、
(iii)硬化トップコート(5)の上にシリコーンスキン層を適用することと、
(iv)硬化トップコート層(5)が剥離ライナ(1)と硬化スキン層(4)との間に挟まれるように、シリコーンスキン層を硬化させて硬化スキン層(4)を形成することと、
(v)硬化スキン層(4)上にシリコーン接着剤組成物を適用することと、
(vi)未硬化又は硬化している接着層(3)の上にテキスタイル支持層(2)を配置又は積層することと、好ましくは、当該テキスタイル支持層を当該接着層に有効に積層させ、
(vii)硬化後の接着層(3)がスキン層(4)とテキスタイル支持層(2)との間に挟まれるように、接着層(3)を硬化させることと、
(viii)必要に応じて剥離ライナ(1)を除去することと。
【0099】
そのようなプロセスの異なる層を図3及び図4に示し、図3は、存在する剥離ライナ(1)を示し、図4は、剥離ライナを除去した最終シリコーン系合成皮革複合材料を示す。
【0100】
任意の好適な剥離ライナ、例えば、アサヒ製の超艶消し剥離紙ARX175DM、Japan大日本印刷製の剥離紙DE-7、DE-90、DE-43C、DE-73J、又は同じく大日本印刷製の半艶消し剥離紙DE-73Mを使用してよい。各硬化工程は、好適なオーブン内で、例えば、熱風オーブン内で硬化及び乾燥させることによって行ってもよく、又は連続プロセスの場合にはコンベヤーオーブン内で行ってもよい。
【0101】
上記プロセスは、シリコーン系合成皮革複合材料の調製を示している。望む場合、追加の層が材料に導入され得る必要が生じることとなることを、閲覧者は理解し得る。
【0102】
合成皮革、特にシリコーン系合成皮革複合材料は、異なる層の内容物を考慮して多種多様な特性を有するように設計することができ、例えば、皮革の最終使用の要求に応じて優れた難燃性、煙密度、耐熱性、耐汚染性、耐溶媒性、耐加水分解性などを有し得る。想定される最終用途としては、家具、装飾、ハンドバッグ、バインダー、旅行かばん、衣類、電話カバー、電子商品用カバー、ブックカバー、履物、自動車の内装、自動車のシート、ウェアラブルデバイス、及び/又は医療用ベッド/シートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例
【0103】
以下の実施例では、擦過後の光沢の維持に関する本明細書に記載のコーティングの利点を示すために、皮革コーティング組成物を形成するヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物及びいくつかの比較例を試験した。全ての粘度は、特に指定しない限り、スピンドルLV-4を備えたBrookfield(登録商標)回転粘度計(1,000~2,000,000mPa.sの範囲の粘度用に設計されたもの)又は1000mPa.s未満の粘度の場合はスピンドルLV-1を備えたBrookfield(登録商標)回転粘度計(15~20,000mPa.sの範囲の粘度用に設計されたもの)を用い、10rpmの回転速度で、ASTM D1084-16 MethodBのカップ/スピンドル法に依存して、25℃で測定される。
【0104】
アルキル及び/又はアルキニル含有量並びにSi-H含有量は、ASTM E168に従った定量的赤外線分析を使用して求めた。
【0105】
以下の表/実施例において与えられる名称と共に使用される、皮革コーティング組成物において使用される成分を以下に定義する:
ビニル末端シロキサンポリマーは、25℃で65,000mPa.sの粘度を有する、約0.08重量%のビニル含有量を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンであり、
高ビニルシロキサンポリマーは、25℃で15,000mPa.sの粘度及び約8.0重量%のビニル含有量を有するジメチルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーであり、
ビニル末端シロキサンコポリマー2は、25℃で300mPa.sの粘度及び約1.15重量%のビニル含有量を有するジメチルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーであり、
ヒュームドシリカは、300m/gのBET表面積を有するHDK(登録商標)T30P焼成シリカ(Wacker Chimie)であり、
HMDZは、ヘキサメチルジシラザンであり、
MVD(メチルビニルジオール)は、25℃で約30mPa.sの粘度及び約12.0重量%のビニル含有量を有するジメチルヒドロキシ末端ポリジメチルメチルビニルシロキサンであり、
白金触媒は、組成物の残りに対して約5000ppmの白金金属を有するポリジメチルシロキサンの溶液中の白金触媒であり、
阻害剤は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シランであり、
シリコーンエラストマー粉末は、Dowsil(登録商標)23N Additive(Dow Silicones Corporation)であり、
樹脂性SiH架橋剤は、25℃で25mPa.sの粘度及び約9,000ppmのケイ素結合水素含有量を有するSi-Hジメチル末端樹脂性Si-Hポリシロキサンであり、
ポリウレタン微粒子は、平均粒径1~10μm(供給元情報)の大日精化工業製のRHU-5070Dポリウレタン微粒子であり、
アクリル微粒子1は、平均粒径1~10μm(供給元情報)の綜研化学によるChemisnow(登録商標)MZ-5HNであり、
アクリル微粒子2は、平均粒径約0.4μm(供給元情報)の綜研化学によるChemisnow(登録商標)MX-40Tであり、
潤滑剤は、Nanjing Chemical Material Corp.製のC24-28オレフィンである。
【0106】
表1には、下記の組成のシリカマスターバッチに使用した出発材料の詳細を提供する。シリカの疎水化処理剤として作用する低分子の存在下で、ヒュームドシリカをビニル末端シロキサンポリマーと混合して、シリカ及びポリマーが混合されている間にシリカをその場で処理した。前に示したように、使用したポリマーは、成分(i)、又は望む場合成分(i)と別のポリマーとの混合物であり得るが、この場合、成分(i)はマスターバッチ中に存在しない。
【0107】
【表1】
【0108】
いくつかのLSR組成物を2パート組成物で実施例(実施例1~4)及び比較例(比較例1~5)として調製した。パートA及びパートBを混合した後の各組成物の全組成を、表2a(実施例)及び表3a(比較例)に示す。
【0109】
混合前に、パートA組成物に以下を組み込んだ:
高ビニルシロキサンコポリマー、
マスターバッチの一部、
白金触媒、
潤滑剤(存在する場合)と、微粒子及び希釈剤(存在する場合)の一部と。希釈剤は、硬化プロセス中に蒸発するように設計される。
【0110】
パートB組成物に以下を組み込んだ:
マスターバッチの残部、
樹脂性SiH架橋剤、
阻害剤(存在する場合)、並びに微粒子の残部及び存在する任意の希釈剤。
【0111】
希釈剤。希釈剤は、硬化プロセス中に蒸発するように設計される。
【0112】
使用の直前に、パートA組成物及びそのそれぞれのパートB組成物を1:1の重量比で一緒に混合して、試験下で最終ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物を作製した。
【0113】
【表2】
【0114】
調製してから、トップコート組成物を、以下のプロセスを介してシリコーン系合成皮革複合材料の調製に利用した。使用したスキン層(4)は、Dowsil(商標)LCF 8300 Skin及びDowsil(商標)LCF 8500 Skinの混合物であり、接着層(3)は、Dowsil(商標)LCF 8400 Binderの形態であり、硬化前にこれをマイクロファイバーベースのテキスタイル層(2)への積層結合プロセスに付し、次いで、この組み合わせを150℃の温度で3分間硬化させた。
1)トップコートの混合物を剥離ライナ上に適用し、120℃の温度で1.4分間(min)硬化させた。乾燥フィルム厚は、約~10μmであると求められた。
2)次いで、スキン層をトップコート上に適用し、同じ条件下で硬化させた。接着層の厚さは、100~150μmであった。
3)接着層をスキン層の上に適用し、積層結合プロセスを用いて布を取り付けた。次いで、この組み合わせを150℃で3分間硬化させ、接着層の厚さは150~250μmになる。
4)次いで、剥離ライナを除去して、トップコーティングされたシリコーン皮革サンプルを得、5)最後に、シリコーン皮革材料を80℃の温度で16~20時間、後硬化させた。
【0115】
次いで、得られたシリコーン皮革を、TABER(登録商標)Abraser(Abrader)モデル5131を試験に使用したテーバー擦過試験を使用して分析した。テーバー擦過試験を使用して、皮革サンプルの耐摩耗性能を評価する。各実施例又は比較例の3つのサンプルを、CS-10ホイール及び1kgの重りを使用して500サイクルの擦過に供した。擦過工程の後、評価する前に、擦過された表面を脱イオン水で洗浄し、空気乾燥させた。次に、各サンプルを視覚的に評価し、光沢、色、又は質感のあらゆる好ましくない変化を記録した。試験に合格するためには、コーティングのすり減りも、光沢、色、若しくはグレインのあらゆる好ましくない変化も実質的にないことが必要である。
【0116】
本明細書の開示によるトップコートを有する実施例の結果を表2bに提供する。
【0117】
【表3】
【0118】
(SC)はわずかな変化を表す。
【0119】
ポリマー及び架橋剤の性質から架橋密度が高いと、鎖可動性が制限され、ひいては接着剤の接触が最小限に抑えられると考えられる。この結果、摩耗パターンが回避され、擦過後に光沢が減少しなくなった。他方、トップコートにおける微粒子が、擦過後の表面に現れる。その結果、小さなグレインはすり減るが、現れた微粒子が表面粗さの喪失を補うのに役立ち、その結果光沢の増大が回避される。
【0120】
次いで、上記と同じプロセス及び試験方法を使用して、比較組成物でトップコーティングされたシリコーン皮革に対して同様の試験を行った。トップコート用の組成物を表3aに示し、結果を表3bに示す。
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
SDGは、光沢の顕著な減少を表し、Δグレー値は、グレー値の変化を表す。
【0124】
実施例1、2、及び3は、光沢度の明らかな変化がなく、テーバー試験に合格した。比較例1、3、4、5は、光沢が顕著に減少したため不合格であり、一方、比較例2は、光沢が顕著に増大したため不合格であった。比較例5から、微粒子の粒径は少なくとも5μmである必要があることが分かる。比較例1では、実施例で使用した高ビニルシロキサンコポリマーの代わりに、ビニル末端シロキサンコポリマー2を使用する。比較例1を硬化させるによって得られたエラストマーは、より低い架橋密度を有し、したがって、表3bの結果に鑑みて、高ビニルシロキサンコポリマーが必須であることを認めることができる。
なお、本発明には、以下の実施形態が包含される。
[1] ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物を含む皮革コーティング組成物であって、
成分(i)25℃で1000~500,000mPa.sの粘度を有する1つ以上のオルガノポリシロキサンポリマーであって、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求めたときに前記ポリマーの少なくとも5重量%がアルケニル基、アルキニル基、又はそれらの混合物から選択される不飽和基である、オルガノポリシロキサンポリマーと、
成分(ii)任意選択で疎水処理されていてもよい補強性シリカ充填剤と、
成分(iii)シリコーン結合水素を含む末端(M)基を有するシリコーン樹脂架橋剤であって、成分(iii)中のSi-H基の、前記組成物中の不飽和基に対するモル比が0.5:1~20:1である、シリコーン樹脂架橋剤と、
成分(iv)ヒドロシリル化触媒と、
成分(v)電界放射型走査電子顕微鏡を使用して求められる0.5~500μmの数平均粒径を有するケイ素不含有機微粒子であって、本明細書に開示される試験方法を用いて少なくとも180℃の温度まで熱的に安定であり、5~35重量%の量で前記皮革コーティング組成物中に存在する、ケイ素不含有機微粒子と、
を含有する組成物。
[2] 前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の成分(iii)が、以下:
Si-Hを含有するM基、(CH SiO 1/2 基、及びSiO 4/2 基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、
Si-Hを含有するM基及びSiO 4/2 基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、
Si-Hを含有するM基、(CH SiO 2/2 基、及びSiO 4/2 基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、
Si-Hを含有するM基、SiO 4/2 基、及び(C SiO 1/2 基を含むか又はそれらからなるシリコーン樹脂、並びにメチルが、フェニル基又は他のアルキル基又はこれらの混合物で置き換えられた代替物、
のうちの1つ以上を含み、上の各々が、1つ以上のT基を含み得る、前記[1]に記載の皮革コーティング組成物。
[3] 前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の成分(v)の前記ケイ素不含有機微粒子が、ポリウレタン微粒子、アクリル微粒子、メタクリル微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子、ポリエステル微粒子、ポリアミド微粒子、ポリオレフィン微粒子、並びにそれらの誘導体及び/又は混合物から選択される、前記[1]又は[2]に記載の皮革コーティング組成物。
[4] 前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の成分(v)の前記ケイ素不含有機微粒子が、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、並びに他のビニルポリマー及びそれらのコポリマー;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;並びにポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、及び並びにこれらのブレンドのうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない、前記[1]又は[2]に記載の皮革コーティング組成物。
[5] 以下の添加剤:硬化阻害剤、硬化シリコーンエラストマー粉末、可使時間延長剤、潤滑剤、希釈剤、難燃剤、顔料、着色剤、熱安定剤、圧縮永久歪改善添加剤、きしみ防止剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を更に含む、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の皮革コーティング組成物。
[6] 存在する場合、前記潤滑剤が反応性潤滑剤である、前記[5]に記載の皮革コーティング組成物。
[7] 前記ケイ素不含有機微粒子が、電界放射型走査電子顕微鏡を使用して求められる0.5~100μmの数平均粒径を有する、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の皮革コーティング組成物。
[8] シリコーン系合成皮革複合材料用のトップコート組成物である、前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の皮革コーティング組成物。
[9] 硬化時に得られる、前記[1]~[8]のいずれか一項に記載の組成物の反応生成物であるトップコートを含む、シリコーン系合成皮革複合材料。
[10] ポリエステル繊維、ビスコースレーヨン繊維、ポリアミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、セルロース繊維、及び弾性テキスタイル材料のうちの1つ以上から選択されるテキスタイル支持層を含む、前記[9]に記載のシリコーン系合成皮革複合材料。
[11] 前記[1]~[8]のいずれか一項に記載の皮革コーティング組成物の硬化物であるトップコートを有するシリコーン系合成皮革複合材料を調製する方法であって、以下の工程:
(i)前記皮革コーティング組成物を剥離ライナ上に適用する工程と、
(ii)前記剥離ライナ上の前記皮革コーティング組成物を硬化させて、硬化トップコートを形成する工程と、
(iii)前記硬化トップコート上にシリコーンスキン層を適用する工程と、
(iv)前記硬化トップコート層が前記剥離ライナと硬化スキン層との間に挟まれるように、前記シリコーンスキン層を硬化させて前記硬化スキン層を形成する工程と、
(v)前記硬化スキン層上にシリコーン接着剤組成物を適用する工程と、
(iv)前記接着層が前記スキン層とテキスタイル支持層との間に挟まれるように、前記接着層上に前記テキスタイル支持層を配置する工程であって、好ましくは、前記テキスタイル支持層が、前記接着層に有効に積層される、工程と、
(vii)前記接着層を硬化させる工程と、
(viii)必要に応じて、前記剥離ライナを取り除く工程と、
による方法。
[12] 前記[11]に記載の皮革コーティング組成物を含むか又はそれからなるトップコートを有するシリコーン系合成皮革複合材料を適用する方法であって、前記皮革コーティング組成物が、10~100μmの湿潤フィルム厚で適用され、乾燥して約2~50μmの対応する乾燥コーティング厚になる、方法。
[13] 噴霧、ロール処理、ブラッシング、スピンコーティング、ディップコーティング、溶媒キャスティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、又はグラビアコーティングから選択される手段のうちの1つ以上によって、前記[11]又は[12]に記載のトップコートをシリコーン系合成皮革複合材料に適用する方法。
[14] 家具、装飾、ハンドバッグ、バインダー、旅行かばん、衣類、電話カバー、電子商品用カバー、ブックカバー、履物、自動車の内装、自動車のシート、ウェアラブルデバイス、及び/若しくは医療用ベッド/シートにおける又はこれらのための、前記[9]又は[10]に記載のシリコーン系合成皮革複合材料の使用。
[15] 硬化してから、擦過後の光沢の変化を最小限に抑えるための、合成皮革用トップコートとしての、前記[1]~[8]のいずれか一項に記載の皮革コーティング組成物の使用。
図1
図2
図3
図4