(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電磁式燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20241018BHJP
F02M 61/16 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F02M55/02 360C
F02M61/16 C
F02M61/16 J
F02M61/16 K
F02M61/16 P
(21)【出願番号】P 2023569114
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2022039775
(87)【国際公開番号】W WO2023119852
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2021211575
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大内 法嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 保彦
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 康平
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-285283(JP,A)
【文献】特開2014-169668(JP,A)
【文献】特開2004-239245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジング(5)の燃料入口筒部(7)の外周に,燃料レール管(2)から分岐した燃料分キャップ(4)がシール部材(13)を介して嵌装され,また前記燃料入口筒部(7)の内周面に,その入口側から,互いに軸方向で隣接する燃料フィルタ(20)及びオリフィス部材(21)が順次圧入され,前記燃料入口筒部(7)の外周面には,前記シール部材(13)を装着する環状のシール溝(12)が設けられ,前記オリフィス部材(21)は,その内外を連通するオリフィス(26)を有する,電磁式燃料噴射弁において,
前記燃料入口筒部(7)の内周面には,前記燃料フィルタ(20)が圧入される第1圧入円筒面(23)と,該第1圧入円筒面(23)の外端に段部(25)を介して連なると共に該第1圧入円筒面(23)よりも大径であって,前記オリフィス部材(21)が圧入される第2圧入円筒面(24)とが形成され、
前記オリフィス部材(21)は,前記オリフィス(26)の長さ(S1)よりも大なる肉厚を有して前記第2圧入円筒面(24)に圧入される円板状のオリフィス本体部(21a)と,該オリフィス本体部(21a)の一端面外周部から円筒状に突出し,外径(D2)が前記オリフィス本体部(21a)の外径(D1)よりも小であり,前記オリフィス本体部(21a)に先行して前記第2圧入円筒面(24)に嵌合される圧入誘導筒部(21b)とで構成され,前記シール溝(12)のフランジ状の外側端壁(12a)が,前記オリフィス本体部(21a)を囲繞するように前記燃料入口筒部(7)に一体に形成されることを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁式燃料噴射弁において,
前記外側端壁(12a)が,前記オリフィス本体部(21a)の肉厚(S2)よりも大なる肉厚(S3)を有することを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁式燃料噴射弁において,
前記オリフィス本体部(21a)の内側面と,前記圧入誘導筒部(21b)の内周面とが凹曲面(30)を介して接続されることを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。
【請求項5】
請求項1に記載の電磁式燃料噴射弁において,
前記燃料フィルタ(20)及び前記オリフィス部材(21)は,それらの対向端面を当接した状態で前記第1圧入円筒面(23)及び前記第2圧入円筒面(24)にそれぞれ圧入されることを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,エンジンの燃料供給系に使用される電磁式燃料噴射弁に関し,特に,弁ハウジングの燃料入口筒部の外周に,燃料レール管から分岐した燃料分配キャップがシール部材を介して嵌装され,また前記燃料入口筒部の内周面に,その入口側から,互いに軸方向で隣接する燃料フィルタ及びオリフィス部材が順次圧入され,前記燃料入口筒部の外周面には,前記シール部材を装着する環状のシール溝が設けられ,前記オリフィス部材は,その内外を連通するオリフィスを有する,電磁式燃料噴射弁の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる電磁式燃料噴射弁は,下記特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記オリフィス部材のオリフィスは,エンジンの作動中,燃料ポンプの間歇作動や,複数の燃料噴射弁における燃料の間歇噴射等に起因して燃料レール管内で発生する燃料圧力の脈動を減衰して,その脈動による燃料噴射弁の燃料噴射量の変化を抑えるものであり,また前記燃料フィルタは,燃料噴射弁の導入燃料を濾過するものである。
【0005】
ところで,上記特許文献1に記載のものでは,燃料フィルタ及びオリフィス部材を隣接して圧入する燃料入口筒の内周面が同一直径に設定されている。こうしたものでは,燃料フィルタ及びオリフィス部材の圧入締代が互いに干渉するので,それぞれの適正な圧入締代を維持することが困難である。例えば,燃料入口筒の内周面に燃料フィルタを圧入した後,それよりも大なる圧入締代を以てオリフィス部材を圧入すると,オリフィス部材の圧入に伴う燃料入口筒の内周面の歪みが燃料フィルタの圧入箇所に影響して,その圧入締代が減少してしまい,燃料フィルタの圧入箇所に隙間が発生して,燃料フィルタの機能が低下することがある。
【0006】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,燃料フィルタ及びオリフィス部材を燃料入口筒の内周面に圧入したとき,それぞれの圧入締代の干渉を防いで,それぞれの圧入固着を確実にし得る,電磁式燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために,本発明は,弁ハウジングの燃料入口筒部の外周に,燃料レール管から分岐した燃料分配キャップがシール部材を介して嵌装され,また前記燃料入口筒部の内周面に,その入口側から,互いに軸方向で隣接する燃料フィルタ及びオリフィス部材が順次圧入され,前記燃料入口筒部の外周面には,前記シール部材を装着する環状のシール溝が設けられ,前記オリフィス部材は,その内外を連通するオリフィスを有する,電磁式燃料噴射弁において,前記燃料入口筒部の内周面に,前記燃料フィルタが圧入される第1圧入円筒面と,該第1圧入円筒面の外端に段部を介して連なると共に該第1圧入円筒面よりも大径であって,前記オリフィス部材が圧入される第2圧入円筒面とが形成されることを第1の特徴とする。
【0008】
尚,前記シール部材は,後述する実施形態中のOリング13に対応する。
【0009】
また,本発明は,第1の特徴に加えて,前記オリフィス部材は,前記オリフィスの長さよりも大なる肉厚を有して前記第2圧入円筒面に圧入される円板状のオリフィス本体部と,該オリフィス本体部の一端面外周部から円筒状に突出し,外径が前記オリフィス本体部の外径よりも小であり,前記オリフィス本体部に先行して前記第2圧入円筒面に嵌合(軽圧入を含む)される圧入誘導筒部とで構成され,前記シール溝のフランジ状の外側端壁が,前記オリフィス本体部を囲繞するように前記燃料入口筒部に一体に形成されることを第2の特徴とする。
【0010】
さらに,本発明は,第2の特徴に加えて,前記外側端壁が,前記オリフィス本体部の肉厚よりも大なる肉厚を有することを第3の特徴とする。
【0011】
さらにまた,本発明は,第3の特徴に加えて,前記オリフィス本体部の内側面と,前記圧入誘導筒部の内周面とが曲面を介して接続されることを第4の特徴とする。
【0012】
さらにまた,本発明は,第1~第4の特徴の何れかに加えて,前記燃料フィルタ及び前記オリフィス部材は,それらの対向端面を当接した状態で前記第1圧入円筒面及び前記第2圧入円筒面にそれぞれ圧入されることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の特徴によれば,第1圧入円筒面への燃料フィルタの圧入,並びに第2圧入円筒面へのオリフィス部材の圧入により,第1及び第2圧入円筒面に歪みが生じても,それらの歪みは,第1及び第2圧入円筒面間の段部により遮断され,相互に干渉することはない。したがって,燃料フィルタ及びオリフィス部材をそれぞれ適正な圧入締代を以て燃料入口筒の内周面に的確に圧入することが可能となる。
【0014】
本発明の第2の特徴によれば,オリフィス部材を第2圧入円筒面に圧入する際,小径の圧入誘導筒部を先頭にして第2圧入円筒面に嵌合し,続いて大径のオリフィス本体部を第2圧入円筒面に圧入するので,オリフィス本体部の第2圧入円筒面への圧入姿勢を傾きのない適正姿勢に保持することができる。しかも,オリフィス本体部の肉厚はオリフィスの長さよりも大きく設定されるので,オリフィス本体部の剛性を確保して,上記圧入に伴うオリフィスの歪みを回避することができる。またシール溝のフランジ状の外側端壁が,第2圧入円筒面に圧入した状態のオリフィス本体部を囲繞するように前記燃料入口筒部に一体に形成されるので,外側端壁により第2圧入円筒面の剛性を高めて,オリフィス本体部及び第2圧入円筒面の圧入固着力を充分に高めることができる。
【0015】
本発明の第3の特徴によれば,シール溝の外側端壁がオリフィス本体部の肉厚よりも大なる肉厚を有すること,並びに上記外側端壁が第2圧入円筒面に圧入した状態のオリフィス本体部を囲繞することが相俟って,オリフィス本体部の圧入による第2圧入円筒面の歪みが前記シール溝の溝底に影響することを回避して,シール部材及びシール溝間の良好なシール状態を確保することができる。
【0016】
本発明の第4の特徴によれば,オリフィス本体部の内側面と,圧入誘導筒部の内周面とが凹曲面を介して接続されることで,オリフィス本体部の根元の疲労強度を高め,長期にわたり脈動減衰機能を維持することができる。
【0017】
本発明の第5の特徴によれば,オリフィス部材の第2圧入円筒面への圧入に伴い第2圧入円筒面内でバリ等の異物が発生しても,その異物を燃料フィルタ及びオリフィス部材の当接部でブロックして,その異物の燃料フィルタへの侵入を防ぎ,燃料フィルタの目詰まりを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る内燃機関用電磁式燃料噴射弁をエンジンへの装着状態で示す縦断面図
【
図3】
図2中の燃料入口筒及びオリフィス部材の分解縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について添付の
図1~
図3を参照しながら説明する。
【0020】
先ず,
図1において,多気筒エンジンEのシリンダヘッドEhには,複数のシリンダの燃焼室Ecに燃料を噴射し得る複数の燃料噴射弁I(図には,その1個のみを示す。)と,これら燃料噴射弁Iの上方に配置される燃料レール管2とが取り付けられる。燃料レール管2の一端には,これに燃料を圧送する燃料ポンプ3が接続される。また燃料レール管2には,複数の燃料分配キャップ4(図には,その1個のみを示す。)が分岐して形成されている。
【0021】
各燃料噴射弁Iは,その軸線に沿って延びる円筒状の弁ハウジング5を有する。この弁ハウジング5の前端部が燃料ノズル筒部6,後端部が燃料入口筒部7,中間部が電磁コイル部8となっており,燃料入口筒部7の外周には,Oリング13を介して燃料分配キャップ4が嵌装され,燃料レール管2内の高圧燃料がこの燃料分配キャップ4を通して燃料入口筒部7に供給される。
【0022】
電磁コイル部8は,その一側方に突出する給電カプラ9を備えている。この給電カプラ9を通して電磁コイル部8に通電すると,燃料ノズル筒部6内の弁が開いて,燃料分配キャップ4から燃料入口筒部7に導入した高圧燃料を燃焼室Ecに噴射するようになっている。
【0023】
燃料ノズル筒部6の外周には,電磁コイル部8の前端面に密接する環状のシール兼クッション部材10が装着される。また,燃料入口筒部7の,その入口に近い外周面には環状のシール溝12が形成されており,このシール溝12に,前記Oリング13及び,その前端面を支承するバックアップリング14が装着される。
【0024】
一方,シリンダヘッドEhには,各燃焼室Ecの天井面に内端を開口する噴射弁装着孔15と,その外方開口端を囲繞する環状の凹部16とが設けられ,噴射弁装着孔15に燃料噴射弁Iの燃料ノズル筒部6が嵌装され,凹部16にシール兼クッション部材10が収められる。
【0025】
燃料入口筒部7の外周面には,燃料分配キャップ4の前端面が臨む環状溝17が電磁コイル部8に隣接して設けられ,この環状溝17に,燃料分配キャップ4の前端面を弾発的に押圧する弾性支持部材18が取り付けられ,これにより,燃料噴射弁Iは,シリンダヘッドEh及び燃料分配キャップ4間に弾発的に挟持される。
【0026】
図2において,燃料入口筒部7の内周面には,その入口から燃料フィルタ20及びオリフィス部材21が,燃料フィルタ20を先頭にして順次圧入により固着される。こうして燃料フィルタ20及びオリフィス部材21は,互いに軸方向で隣接して配置される。
【0027】
次に,
図2及び
図3を参照して,上記燃料フィルタ20及びオリフィス部材21の燃料入口筒部7内周面への圧入構造について説明する。
【0028】
燃料入口筒部7の内周面には,第1圧入円筒面23と,この第1圧入円筒面23の外端に段部25を介して同軸状に連なる,第1圧入円筒面23よりも大径の第2圧入円筒面24とが形成され,この第2圧入円筒面24が面取り28を介して,燃料入口筒部7の後端面,即ち入口端面に開口する。
【0029】
一方,燃料フィルタ20は,細長い濾網籠20aと,この濾網籠20aの開放端に結合される金属製の取り付けリング20bとで構成され,濾網籠20aにより,燃料入口筒部7の導入燃料を濾過することができる。
【0030】
オリフィス部材21は,中心部にその内外を連通するオリフィス26を穿設した円板状のオリフィス本体部21aと,オリフィス本体部21aの一端面外周部から円筒状に突出した圧入誘導筒部21bとで構成される。その際,圧入誘導筒部21bの外径D2は,オリフィス本体部21aの外径D1よりも僅かに(例えば0.1mm)小さく設定される共に,それらの外周面はテーパ状段部22を介して接続される。また,圧入誘導筒部21bの先端部の外周縁には面取り29が施される。さらに,オリフィス本体部21aの内側面と,圧入誘導筒部21bの内周面とは,凹曲面30を介して連続的に接続される。
【0031】
オリフィス本体部21aは,その肉厚S2がオリフィス26の軸方向長さS1よりも大となるように構成されるもので,そうするために,オリフィス26の両端には,オリフィス本体部21aの両端面にそれぞれ大径部を開口した一対のテーパ孔27が接続される。
【0032】
さて,燃料フィルタ20及びオリフィス部材21の燃料入口筒部7への組み付けに当たっては,先ず,燃料フィルタ20の濾網籠20aを燃料入口筒部7に挿入して,その取り付けリング20bを第1圧入円筒面23の入口にセットする。次いで,第2圧入円筒面24にオリフィス部材21を圧入しながら,オリフィス部材21及び燃料フィルタ20の対向端面を当接した状態で上記取り付けリング20bを第1圧入円筒面23に所定の圧入締代を以て押し込む。
【0033】
ところで,オリフィス部材21の第2圧入円筒面24への圧入時には,最初に,圧入誘導筒部21bを第2圧入円筒面24に嵌合もしくは軽圧入して,第2圧入円筒面24とオリフィス部材21との同軸性を確保する。続いて,オリフィス本体部21aを第2圧入円筒面24に,取り付けリング20bの圧入締代よりも大なる所定の圧入締代を以て圧入する。
【0034】
こうすることで,オリフィス本体部21aを,傾かせることなく第2圧入円筒面24に所定の圧入締代を以て適正に圧入することができる。その際,オリフィス部材21の圧入荷重が第1及び第2圧入円筒面23,24間の段部25に加わることがないよう,圧入誘導筒部21bを段部25には当接させない。
【0035】
而して,第1圧入円筒面23と,それよりも大径の第2圧入円筒面24との間には前記段部25が存在することにより,取り付けリング20b及びオリフィス部材21の圧入により第1及び第2圧入円筒面23,24に生じる歪みは段部25で遮断され,相互に干渉することはない。したがって,取り付けリング20bの第1圧入円筒面23に対する所定の圧入締代と,オリフィス本体部21aの第2圧入円筒面24に対する所定の圧入締代とは,互いに干渉することなく,適正に維持することができる。特に,大なる圧入締代を以てオリフィス本体部21aを第2圧入円筒面24に圧入したことに伴い第2圧入円筒面24に大なる歪みが生じても,それより先行して第1圧入円筒面23に圧入した取り付けリング20bの圧入締代に影響することはなく,燃料フィルタ20を燃料入口筒部7の内周面に確実に固着し続けることができる。
【0036】
また,前記シール溝12のフランジ状の外側端壁12aは,燃料入口筒部7の後端面に臨むように燃料入口筒部7に一体に形成されると共に,第2圧入円筒面24に圧入した状態のオリフィス本体部21aと同心位置を占めるように,即ち上記オリフィス本体部21aを囲繞するように配置され,且つこの外側端壁12aの肉厚S3は,オリフィス本体部21aの肉厚S2よりも厚く設定される。これにより,第2圧入円筒面24においてオリフィス本体部21aが圧入される部分の剛性を上記外側端壁12aにより効果的に強化することができる。したがって,第2圧入円筒面24にオリフィス本体部21aを所定の圧入締代を以て的確に圧入することができる。
【0037】
また,前記外側端壁12aが,第2圧入円筒面24に圧入した状態のオリフィス本体部21aを囲繞するように配置され,且つその外側端壁12aの肉厚S3が,オリフィス本体部21aの肉厚S2よりも厚く設定されることは,前記オリフィス本体部21aとシール溝12の溝底とは軸方向にずれていることを意味する。したがって,オリフィス本体部21aの圧入による第2圧入円筒面24の歪みがシール溝12まで波及することはないので,シール溝12及びOリング13間のシール状態を良好に維持することができる。
【0038】
また,燃料フィルタ20及びオリフィス部材21は,それらの対向端面を当接した状態で第1圧入円筒面23及び第2圧入円筒面24にそれぞれ圧入されることで,オリフィス部材21の第2圧入円筒面24への圧入に伴い第2圧入円筒面24内でバリ等の異物が発生しても,その異物を燃料フィルタ20及びオリフィス部材21の当接部でブロックして,その異物の燃料フィルタ20への侵入を防ぎ,濾網籠20aの目詰まりを回避することができる。
【0039】
エンジンEの運転中,燃料レール管2に発生する燃料圧力の脈動が燃料入口筒部7へと伝播してくると,オリフィス部材21のオリフィス26の絞り作用により,その脈動を減衰して,燃料ノズル筒部6から燃焼室Ecへの燃料噴射量の,上記脈動による変化を防ぐことができる。
【0040】
ところで,上記オリフィス26を中心部に持つオリフィス本体部21aは,オリフィス26の軸方向の長さS1よりも大なる肉厚S2を有していて,剛性が高いので,このオリフィス本体部21aの第2圧入円筒面24への圧入によるも,オリフィス26に歪みを生じることがなく,その脈動減衰機能を安定させることができる。
【0041】
また,オリフィス本体部21aには,オリフィス26の脈動減衰作用時,脈動の高圧波と低圧波が交互に作用することにより,押し荷重と引き荷重とを交互に繰り返し受けることで,燃料入口筒部7に固着した状態のオリフィス本体部21aと圧入誘導筒部21bとの接続部には集中応力が生じる傾向があるが,オリフィス本体部21aの内側面と,圧入誘導筒部21bの内周面とは凹曲面30を介して連続的に接続されているので,その凹曲面30の部分で集中応力を分散させることになり,オリフィス部材21の耐久性を高めることができる。
【0042】
以上,本発明の実施の形態について説明したが,本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0043】
I・・・・電磁式燃料噴射弁
D1・・・オリフィス本体部の外径
D2・・・圧入誘導筒部の外径
S1・・・オリフィスの長さ
S2・・・オリフィス本体部の肉厚
S3・・・シール溝の外側端壁の肉厚
2・・・・燃料レール管
3・・・・燃料ポンプ
4・・・・燃料分配キャップ
5・・・・弁ハウジング
6・・・・燃料ノズル筒部
7・・・・燃料入口筒部
12・・・シール溝
13・・・シール部材(Oリング)
20・・・燃料フィルタ
21・・・オリフィス部材
21a・・オリフィス本体部
21b・・圧入誘導筒部
23・・・第1圧入円筒面
24・・・第2圧入円筒面
25・・・段部
26・・・オリフィス
30・・・凹曲面