(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】混合樹脂の管理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20241018BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20241018BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/28 F
(21)【出願番号】P 2024015737
(22)【出願日】2024-02-05
【審査請求日】2024-02-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 健吾
(72)【発明者】
【氏名】松井 恭則
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-102718(JP,A)
【文献】特開2007-083132(JP,A)
【文献】特開2016-117523(JP,A)
【文献】特開平08-053162(JP,A)
【文献】特開平09-070546(JP,A)
【文献】特開平02-099146(JP,A)
【文献】特開2015-188829(JP,A)
【文献】特開2011-110515(JP,A)
【文献】特開2016-047496(JP,A)
【文献】特開平08-084986(JP,A)
【文献】特開2018-058010(JP,A)
【文献】特開2005-246126(JP,A)
【文献】特開2004-066153(JP,A)
【文献】国際公開第2019/221187(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/42
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素吸着性樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂及び酸性陽イオン交換樹脂の少なくとも一方とを混合し、
前記混合した後の混合樹脂を湿潤状態で密閉容器に封入し、
純水を製造する純水製造装置が配置された現場に前記混合樹脂を封入した前記密閉容器を搬送し、前記純水製造装置に設けられたホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置の使用時に、前記密閉容器の内部の前記混合樹脂を前記ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置に充填する、混合樹脂の管理方法。
【請求項2】
前記密閉容器は、ガスバリア性樹脂又は金属を含むガスバリア層を備えている請求項1に記載の混合樹脂の管理方法。
【請求項3】
前記密閉容器の内部を不活性ガスで置換した状態で、前記混合樹脂を前記密閉容器に封入する請求項1に記載の混合樹脂の管理方法。
【請求項4】
前記ホウ素吸着性樹脂と、前記塩基性陰イオン交換樹脂及び前記酸性陽イオン交換樹脂の少なくとも一方とを、純水に入れた状態で混合し、
混合された前記混合樹脂を前記密閉容器に封入し、前記ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置の使用時まで前記混合樹脂を湿潤状態で保管する請求項1に記載の混合樹脂の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混合樹脂の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、純水を製造する純水製造装置が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、ホウ素吸着性樹脂と、他の樹脂であるイオン交換樹脂とを混合した混床樹脂塔を用いた純水製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、イオン交換樹脂は納入から使用開始されるまでの間に汚染されることを防ぐため、密封されて販売されている。イオン交換樹脂の一種であるホウ素吸着性樹脂の場合は単体で密封された状態で販売されている。したがって、ホウ素吸着性樹脂と他の樹脂とを混合して充填された混床樹脂塔を使用する場合は、ホウ素吸着性樹脂と他の樹脂をそれぞれ単体で入手し、ホウ素吸着性樹脂と他の樹脂を混合して使用する。
【0006】
一般的にイオン交換樹脂塔は稼働する前に立ち上げ操作が必要となる。ここで立ち上げは、イオン交換樹脂塔に動力を供給して稼働できる状態、すなわち、イオン交換樹脂塔の処理水が十分な水質となり、組み込まれた純水製造システム、もしくは、超純水製造システムで、純水、もしくは、超純水を製造可能とすることをいう。例えば、イオン交換樹脂塔の立ち上げでは、イオン交換樹脂塔に純水を長時間通水することで、充填されているイオン交換樹脂を洗浄する。イオン交換樹脂塔の出口水は、初めは全有機炭素(TOC:Total Organic Carbon)が高いが、時間とともにTOCが減少し、やがてTOCが一定となる。この状態でイオン交換樹脂塔の立ち上げが完了し、イオン交換樹脂塔を稼働することが可能となる。このイオン交換樹脂塔の立ち上げに、数十日を要する場合がある。ここで、全有機炭素(TOC)とは、水中に存在する有機物を構成する炭素の総量であり、「水の汚れ」を示す水質指標のひとつである。
【0007】
特許文献1には、ホウ素吸着性樹脂と他の樹脂の混床樹脂塔が開示されている。しかし、このホウ素吸着性樹脂と他の樹脂の混床樹脂塔はホウ素吸着性樹脂と他の樹脂を混床樹脂塔に充填した後の混床樹脂塔の立ち上げに特に時間がかかるという問題があった。これは、ホウ素吸着性樹脂は不純物を多く含むことが原因と考えられていた。
【0008】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、混合樹脂を充填した装置の立ち上げを早くすることができる混合樹脂の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、第1態様に記載の混合樹脂の管理方法は、ホウ素吸着性樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂及び酸性陽イオン交換樹脂の少なくとも一方とを混合し、前記混合した後の混合樹脂を湿潤状態で密閉容器に封入し、純水を製造する純水製造装置が配置された現場に前記混合樹脂を封入した前記密閉容器を搬送し、前記純水製造装置に設けられたホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置の使用時に、前記密閉容器の内部の前記混合樹脂を前記ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置に充填する。
【0010】
上記混合樹脂の管理方法において、前記密閉容器は、ガスバリア性樹脂又は金属を含むガスバリア層を備えていることが好ましい。
【0011】
上記混合樹脂の管理方法において、前記密閉容器の内部を不活性ガスで置換した状態で、前記混合樹脂を前記密閉容器に封入することが好ましい。
【0012】
上記混合樹脂の管理方法において、前記ホウ素吸着性樹脂と、前記塩基性陰イオン交換樹脂及び前記酸性陽イオン交換樹脂の少なくとも一方とを、純水に入れた状態で混合し、混合された前記混合樹脂を前記密閉容器に封入し、前記ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置の使用時まで前記混合樹脂を湿潤状態で保管することが好ましい。なお、本開示において、湿潤状態とは、イオン交換樹脂が純水と混合している状態を示す。純水の量すなわち含水量は特に限定されないが、イオン交換樹脂すなわち、ホウ素吸着性樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂及び酸性陽イオン交換樹脂の少なくとも一方で構成される混合樹脂の10重量%~200重量%の含水量がより好ましく、30重量%~100重量%含水量がさらに好ましい。
【0013】
第2態様に記載の混合樹脂の包装構造は、ホウ素吸着性樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂及び酸性陽イオン交換樹脂の少なくとも一方と、を混合した混合樹脂が密閉容器に封入されている。
【0014】
上記混合樹脂の包装構造において、前記密閉容器は、ガスバリア性樹脂又は金属を含むガスバリア層を備えていることが好ましい。
【0015】
上記混合樹脂の包装構造において、前記密閉容器の内部を不活性ガスで置換した状態で、前記混合樹脂が前記密閉容器に封入されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、混合樹脂を充填した装置の立ち上げを早くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の純水製造装置の一例を示す構成図である。
【
図2】純水製造装置に用いられる混合樹脂の管理方法の一例を示すフロー図である。
【
図3A】ホウ素吸着性樹脂と他のイオン交換樹脂とを混合する工程の一例を示す図である。
【
図3B】ホウ素吸着性樹脂と他のイオン交換樹脂とを混合する工程の一例を示す図である。
【
図4】ホウ素吸着性樹脂と他のイオン交換樹脂とを混合した混合樹脂を容器に封入した状態を示す図である。
【
図5】第2実施形態の純水製造システムの一例を示す構成図である。
【
図6】第3実施形態の純水製造システムの一例を示す構成図である。
【
図7】第4実施形態の純水製造システムの一例を示す構成図である。
【
図8】実施例における、各ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置の出口水のTOCと通水時間との関係を示すグラフである。
【
図9】実施例における、各ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置の低効率と通水時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態を、図面を用いて説明する。各図において、共通する機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面おいて、本開示と関連性の低いものは図示を省略している。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の純水製造装置10の一例を示す構成図である。
図1に示されるように、純水製造装置10は、前処理装置11と、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12とを備えている。一例として、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12は、ホウ素吸着性樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂及び強塩基性陰イオン交換樹脂を混合してなるホウ素吸着/陽イオン交換/陰イオン交換混合樹脂を備えて構成される。強酸性陽イオン交換樹脂は、酸性陽イオン交換樹脂の一例であり、強塩基性陰イオン交換樹脂は、塩基性陰イオン交換樹脂の一例である。ホウ素吸着/陽イオン交換/陰イオン交換混合樹脂は、混合樹脂の一例である。
【0020】
ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に充填される混合樹脂は、後述する混合樹脂の管理方法の一例及び混合樹脂の包装構造の一例が適用されている。
【0021】
また、本開示において純水とは、例えばイオン交換樹脂や逆浸透膜等、あるいはこれらを組み合わせた装置で処理した純水であり、超純水とは、当該純水を二次純水システム(サブシステム)でさらに高純度化した超純水を意味する。
【0022】
(純水製造装置の構成)
第1実施形態の純水製造装置10において、前処理装置11は、原水の懸濁物質を除去して、原水をホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に供給するに適した水質に処理する。
【0023】
原水としては、市水、井水、工業用水等を使用することができる。原水中には、ホウ素が5~100μgB/L程度含まれている。このうち、前処理装置11で除去されないホウ素が被処理水中に残留することになる。
【0024】
前処理装置11は例えば、砂ろ過装置、精密ろ過装置等を適宜選択して構成され、さらに必要に応じて被処理水の温度調節を行う熱交換器等を備えて構成される。なお、原水の水質等によっては、前処理装置11は備えなくてもよい。
【0025】
第1実施形態の純水製造装置10において、前処理装置11で処理した前処理水は、必要に応じて後述する脱塩処理、酸化分解処理が施された後、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に供給される。ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の被処理水中には、ホウ素とともに全有機炭素(TOC)成分が含まれる。TOC成分のうち、二酸化炭素及び/又はカルボン酸化合物は、ホウ素吸着性樹脂に吸着されることで、ホウ素吸着性樹脂のホウ素の吸着能を低下させる場合があるが、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12を用いることで、ホウ素吸着性樹脂のホウ素の吸着能の低下を抑制することが可能である。
【0026】
カルボン酸化合物は、例えば、分子内に1又は2以上のカルボキシル基を有する、炭素数が0又は1以上の脂肪族カルボン酸であり、炭素数が0~5の脂肪族カルボン酸であることが好ましい。カルボン酸化合物が2以上のカルボキシル基を有する場合であって、その炭素数が1以上であるときには、カルボン酸化合物の有するカルボキシル基は同一の炭素原子に結合していることが好ましい。また、カルボン酸化合物が2以上のカルボキシル基を有する場合であって、その炭素数が2以上であるときには、カルボキシル基はより近い炭素原子に結合していることが好ましく、同一の炭素原子又は隣り合う炭素原子に結合していることがより好ましい。
【0027】
このようなカルボン酸化合物として具体的には、ギ酸、酢酸、シュウ酸等が挙げられる。なかでも、シュウ酸は、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12のホウ素除去能を低下させるため、被処理水がシュウ酸を含む場合はホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12による後述する効果が顕著に得られる。
【0028】
被処理水中の二酸化炭素及び/又はカルボン酸化合物の濃度は、TOC換算で1μg/L(as C)以上50μg/L(as C)以下であることが好ましい。カルボン酸化合物の濃度が50μg/L(as C)を超えると、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12への負荷が大きくなり、処理水質が悪化するおそれがある。1μg/L(as C)未満であると、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12におけるホウ素吸着能向上効果が得られにくいことがある。
【0029】
第1実施形態の純水製造装置10において、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12は、上記のように、ホウ素吸着性樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂及び強塩基性陰イオン交換樹脂を混合してなる混合樹脂の一例としてのホウ素吸着/陽イオン交換/陰イオン交換混合樹脂を備えて構成される。
【0030】
なお、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12は、混合樹脂の他の例として、ホウ素吸着性樹脂及び強塩基性陰イオン交換樹脂を混合してなるホウ素吸着/陰イオン交換混合樹脂、又は、ホウ素吸着性樹脂及び強酸性陽イオン交換樹脂を混合してなるホウ素吸着/陽イオン交換混合樹脂を備える構成でもよい。
【0031】
ホウ素は、被処理水中に通常、ホウ酸イオン、ホウ酸水素イオン等として存在するが、これらは、弱イオンであるため、例えば、強塩基性陰イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂、又は強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂を混合した混床式イオン交換樹脂を用いてもほとんど除去されない。そこで、ホウ素の除去が求められる場合には、ホウ素吸着性樹脂が用いられている。しかし、このホウ素吸着性樹脂は、ホウ素の選択性が高いものの、被処理中に全有機炭素成分が含まれている場合に、全有機炭素成分のうち、二酸化炭素、カルボン酸化合物をも吸着してしまうことで、ホウ素の吸着が阻害される場合がある。
【0032】
ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12では、ホウ素吸着性樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂及び強塩基性陰イオン交換樹脂を混合してなるホウ素吸着/陽イオン交換/陰イオン交換混合樹脂を用いて、二酸化炭素及び/又はカルボン酸化合物とホウ素を含む被処理水を処理する。ホウ素吸着/陽イオン交換/陰イオン交換混合樹脂により、ホウ素吸着性樹脂によるホウ素の吸着と、強酸性陽イオン交換樹脂又は強塩基性陰イオン交換樹脂による、二酸化炭素、カルボン酸化合物及びホウ素吸着性樹脂からの溶出物(有機物)の吸着を並行して行うことが可能である。このため、第1実施形態のホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12では、長期間、優れたホウ素の除去能を発揮し得る。
【0033】
第1実施形態では、後述する混合樹脂の管理方法の一例により、ホウ素吸着性樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とが予め混合されることによって、混合樹脂とされている(
図2参照)。ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12には、上記混合樹脂が充填されている(
図2参照)。
【0034】
ホウ素吸着/陽イオン交換/陰イオン交換混合樹脂における、ホウ素吸着性樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂及び強塩基性陰イオン交換樹脂の混合割合は、上記したホウ素吸着性樹脂の交換容量をCB、強酸性陽イオン交換樹脂の交換容量をCC、強塩基性陰イオン交換樹脂の交換容量をCAで示した場合の交換容量比で、CC/(CA+CB)が0.3以上1.3以下が好ましく、0.4以上1.0以下がより好ましい。CC/(CA+CB)が1.3を超えると、ホウ素吸着/陽イオン交換/陰イオン交換混合樹脂内が酸性雰囲気となり、ホウ素吸着能が低下するおそれがあり、0.3未満であると、混合される強酸性陽イオン交換樹脂及び強塩基性陰イオン交換樹脂による混合樹脂としての効果が低下するため、処理水の抵抗率等が下がることがある。
【0035】
ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12において用いられるホウ素吸着性樹脂としては、ホウ素を選択的に吸着できるものであれば限定されず、耐熱性、耐水性、耐薬品性に優れたポリスチレン樹脂や、フェノール樹脂に官能基として多価アルコール基を付与させたイオン交換樹脂を用いることができる。ホウ素吸着性樹脂としては、高いイオン交換能を有するN-メチルグルカミン基を含むイオン交換樹脂が特に好ましい。また、ホウ素除去能の点から、ホウ素吸着性樹脂の交換容量は、0.155meq/mL以上1.5meq/mL以下が好ましい。
ホウ素吸着性樹脂の比重は、1.05~1.15g/cm3であることが好ましい。
【0036】
ホウ素吸着性樹脂の市販品としては、例えばアンバーライト(登録商標:ローム・アンド・ハース社製)IRA-743T、ダイヤイオンCRB02(三菱化学(株)社製)などを挙げることができる。
【0037】
強酸性陽イオン交換樹脂としては、イオン交換樹脂の加水分解が少なく有機陽イオン成分の超純水への溶出が少ないため、官能基としてスルホン酸基を有するスチレン系樹脂などが好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂は、交換容量が好ましくは1.5meq/mL以上2.5meq/mL以下、より好ましくは2meq/mL以上2.5meq/mL以下のものが好適である。
【0038】
強酸性陽イオン交換樹脂としては、イオン選択性の低い陽イオン成分を除去できることからH型が好ましい。H型転換率としては、99.95%以上のものが好適に用いられる。
強酸性陽イオン交換樹脂の比重は、1.2g/cm3以上1.3g/cm3以下であることが好ましい。
強酸性陽イオン交換樹脂の市販品として、Duolite CGP(ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオンSKT20L(三菱化学(株)社製)等が挙げられる。
【0039】
強塩基性陰イオン交換樹脂としては、イオン交換樹脂の加水分解が少なく有機系陰イオン成分の超純水への溶出が少ないため、官能基として第4級アンモニウム基を有するスチレン系樹脂などが好ましく用いられる。強塩基性陰イオン交換樹脂としては交換容量が好ましくは0.7meq/mL以上1.5meq/mL以下、より好ましくは1meq/mL以上1.5meq/mL以下のものが好適である。
【0040】
また、強塩基性陰イオン交換樹脂は、イオン選択性の低い陰イオン成分を除去できることからOH型が好ましい。OH型転換率としては、99.95%以上のものが好適に用いられる。
強塩基性陰イオン交換樹脂の比重は、1.0~1.1g/cm3であることが好ましい。
強塩基性陰イオン交換樹脂の市販品として、Duolite AGP(ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオンSAT20L(三菱化学(株)社製)等が挙げられる。
【0041】
第1実施形態の純水製造装置10は、前処理装置11とホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の間に、酸化分解装置を備えることが好ましく、前処理装置11と酸化分解装置の間に脱塩装置を備えることがより好ましい。この場合、酸化分解装置の処理水がホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置に供給される。
【0042】
脱塩装置としては、逆浸透膜装置及び電気脱イオン装置がイオン成分の除去能に優れるため好適に用いられ、これらを単独で、あるいは複数を組み合わせて用いることができる。
【0043】
逆浸透膜装置は、前処理水中の塩類及びイオン性、コロイド性の有機物等を除去して濃縮水及び透過水を生成する。逆浸透膜装置としては、三酢酸セルロース系非対称膜や、ポリアミド系複合膜を用い、シート平膜、スパイラル膜、管状膜、中空糸膜とした膜モジュールを用いることができる。中でも、不純物の除去率を高める点から、ポリアミド系の複合膜であることが好ましく、膜形状はスパイラル膜であることが好ましい。
【0044】
逆浸透膜装置は2台以上の逆浸透膜装置を直列に接続して複数段として構成してもよい。この場合、逆浸透膜装置での脱塩率を高め、その結果、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12において、ホウ素吸着/陽イオン交換/陰イオン交換混合樹脂の負荷を小さくすることができるので、ホウ素除去能を高めることができる。なお、逆浸透膜装置を複数段として構成する場合には、2段逆浸透膜装置であることが好ましい。
【0045】
電気脱イオン装置は、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜で形成された空隙にイオン交換体を充填して、脱塩室、濃縮室を形成し、直流電流を印加して被処理水中のイオンを除去するよう構成されている。電気脱イオン装置としては、MK-3シリーズ(E-Cell社製)、VNXシリーズ(IONPURE社製)等の市販品を用いることができる。なお、電気脱イオン装置の水回収率は、80~98%であることが好ましい。電気脱イオン装置は、1台を単段で用いてもよく、2台以上を直列に接続して複数段として用いてもよい。
【0046】
また、脱塩装置を、2床3塔式(2B3T)装置と逆浸透膜装置を接続して構成してもよい。2床3塔式装置は、陽イオン交換塔、脱炭酸塔及び陰イオン交換塔をこの順に備えて構成され、不純物であるイオン成分、特には、逆浸透膜装置においてスケールを生成するイオン成分を除去する。これら不純物の除去された水は、逆浸透膜装置に供給され、ここで、イオン成分、非イオン性の有機物、微粒子等が除去される。次いで、逆浸透膜装置の透過水が酸化分解装置に供給される。
【0047】
酸化分解装置は、被処理水中の有機物を酸化分解する。酸化分解装置は、被処理水中の有機物を、例えば、二酸化炭素と低分子量の有機酸にまで酸化分解する。これにより、二酸化炭素及びカルボン酸化合物が生成し得る。
【0048】
酸化分解装置として例えば、紫外線酸化装置、次亜臭素酸酸化装置、オゾン酸化装置等を用いることができる。次亜臭素酸酸化装置は、例えば被処理水に次亜臭素酸を添加、混合することで、被処理水中の難分解性物質である尿素等を酸化分解する。オゾン酸化装置は、オゾン発生装置によってオゾンを発生させて、発生したオゾンを被処理水中に供給して、被処理水中の有機物等を分解する。
【0049】
紫外線酸化装置は例えば、185nm付近の波長を有する紫外線を照射可能な紫外線ランプを有し、この紫外線ランプによって紫外線を被処理水に照射することで、被処理水中のTOCを酸化分解する。紫外線酸化装置に用いられる紫外線ランプは、185nmの紫外線のみを発生するランプである必要はなく、例えば、185nmの紫外線とともに254nm付近の紫外線を放射する低圧水銀ランプを使用することができる。
【0050】
紫外線酸化装置は、波長185nm付近の紫外線により、水を分解してOHラジカルを生成し、このOHラジカルが、被処理水に含有される有機物を酸化分解する。なお、紫外線照射量は、被処理水の水質によって適宜変更する。
【0051】
なお、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の各部の構成の図示は省略するが、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12は、再生処理が可能な構成とされている。
【0052】
次に、
図1に示す純水製造装置を用いた純水の製造方法について説明する。
先ず、原水を、前処理装置11に通水して、前処理水を得る。この前処理水を、必要に応じて脱塩処理、酸化分解処理を行った後、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12へ通水する。このとき、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12への通水速度は特に限定されず、被処理水中のホウ素濃度、混合される各イオン交換樹脂の交換容量等の態様に応じて適宜決定することができる。より長期間ホウ素を高度に除去する観点からは、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12での通水速度は、空間速度SVが、10[1/h]以上100[1/h]以下であることが好ましく、20[1/h]以上50[1/h]以下であることが特に好ましい。通水速度が上記した上限値より速すぎる場合にはホウ素を十分に除去できないおそれがある。一方、上記した下限値より遅い場合には、混合樹脂から有機物等の溶出が起こり、処理水の水質が低下するおそれがある。
【0053】
ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12における被処理水の水温は特に制限はないが、5℃以上40℃以下が好ましい。また、処理水質を安定させるためには被処理水の温度を一定にすることが好ましい。そのため、逆浸透膜装置の前段には、プレート型熱交換器などを備えることが好ましい。
【0054】
こうして、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の処理水として、例えば、ホウ素濃度が1.0ng/L(as B)以下、TOC濃度が5.0μg/L(as C)以下の純水を得ることができる。
【0055】
(混合樹脂の管理方法の一例及び混合樹脂の包装構造の一例)
次に、純水製造装置10のホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に充填される混合樹脂の管理方法の一例、及び混合樹脂の包装構造の一例について説明する。
【0056】
図2は、混合樹脂の管理方法の一例を示すフロー図である。
図2に示されるように、まず、ホウ素吸着性樹脂と他のイオン交換樹脂とを混合する(混合工程S101)。第1実施形態では、他のイオン交換樹脂は、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂である。すなわち、第1実施形態では、ホウ素吸着性樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合する。ここで、混合とは、ホウ素吸着性樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とがほぼ均一となるように満遍なく混ざり合った状態となっていることをいう。すなわち、混合は、ホウ素吸着性樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを積層した状態とは異なる。
【0057】
ホウ素吸着性樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを予め混合することができれば、混合方法は特に限定されない。例えば、3種類の樹脂(すなわち、ホウ素吸着性樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂、及び強塩基性陰イオン交換樹脂)の単体をそれぞれ袋に入った状態で入手し、工場でそれぞれの袋を開封して3種類の樹脂を混合してもよい。
【0058】
なお、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを所定の割合で混合したミックスベッド(MB)が入手可能な場合は、ミックスベッド(MB)と、単体で入手したホウ素吸着性樹脂とを混合してもよい。
【0059】
一例として、
図3A及び
図Bに示す混合装置200を用いて、ホウ素吸着性樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合してもよい。
図3Aは、混合装置200において各樹脂の混合前の状態を示す構成図であり、
図3Bは、混合装置200において各樹脂の混合途中の状態を示す構成図である。なお、
図3A及び
図3Bは、混合装置200の構成を分かりやすくするため、模式的に示しており、実際の混合装置200の寸法や各樹脂の粒子の直径とは異なる。混合装置200は、例えば、工場に設置されている。
【0060】
図3Aに示されるように、混合装置200は、上部が解放された筒状の筐体202を備えている。図示を省略するが、筐体202の下部には、筐体202の内部に純水を導入する第1導入配管と、筐体202の内部に不活性ガスを導入する第2導入配管がそれぞれ接続されている。不活性ガス(inert gas)とは、化学反応を起こしにくい気体であり、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガス元素や窒素ガスなどが挙げられる。第1実施形態では、不活性ガスとして、窒素ガスが使用されている。
【0061】
図3Aに示されるように、筐体202の内部に、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214とを所定の割合で入れる。ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214は、直径が例えば1mm以上5mm以下の粒子である。ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214のそれぞれの直径は、異なってもよい。さらに、筐体202の内部には、第1導入配管(図示省略)から純水PWが導入される。
図3Aでは、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214とは、筐体202に入れた順に層状に配置されている。
【0062】
図3Bに示されるように、筐体202の下部の第1導入配管(図示省略)から純水PWを導入すると共に、筐体202の下部の第2導入配管(図示省略)から不活性ガスGとを導入する。例えば、筐体202の内部の容積が30%程度増加するように、純水PWと不活性ガスGとを導入する。純水PWと不活性ガスGとを導入することで、筐体202の内部の純水PW中に、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214が浮き上がった状態となり、かき混ぜられる。これにより、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214とが混合される。第1実施形態では、純水と不活性ガスを併用して混合しているが、純水もしくは不活性ガスを単独で用いて混合してもよい。
【0063】
次に、
図2に示されるように、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214とを混合した後の混合樹脂220を容器300(
図4参照)へ封入する(封入工程S102)。容器300は、密閉容器の一例である。
【0064】
図4に示されるように、一例として、容器300は、袋状であり、フィルム部材で構成されている。さらに、袋状の容器300は、例えば、この容器300よりも大きな外側容器(図示省略)に収容されている。外側容器は、例えば、ポリプロピレン(PP)やPEポリエチレン(PE)などで形成された硬い容器である。外側容器は、例えば、樽のような形状であり、上部に開口を有する容器本体と、開口を開閉する蓋と、を備えている。外側容器の容量は、例えば、25L程度である。
【0065】
袋状の容器300は、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層を備えていることが好ましい。例えば、容器300は、多層構造とされており、ガスバリア層は、外部からの擦れ等により傷が付きにくい中間層に設けられている。ここで、ガスバリア層とは、一般的な樹脂(例えば、エチレン単体)で構成された層と比較して、水蒸気や酸素などのガスを通しにくい(ガス透過性が低い)、高いバリア性を持つ層をいう。
【0066】
ガスバリア層は、少なくとも1種のガスバリア性樹脂を含む。ガスバリア性樹脂として、例えば、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVOH)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリグルコール(PGA)、ポリ塩化ビニリデン共重合体(PVDC)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はスチレン-イソブチレン-スチレン共重合体等が挙げられる。ポリアミドとしては、メタキシレンアジパミド(MXD-6)等の芳香族ポリアミド、並びにナイロン6、ナイロン6,6及びナイロン6/ナイロン6,6共重合体等の脂肪族ポリアミドが挙げられる。これらの中でも、ポリアミドが好ましく、芳香族ポリアミドがより好ましく、メタキシレンアジパミドが更に好ましい。また、ガスバリア層は、アルミ箔(アルミニウム箔)などの金属製であってもよい。
【0067】
容器300のフィルム部材の酸素透過度は、0.1cc/day以上2000cc/day以下が好ましく、0.2cc/day以上100cc/day以下がより好ましい。酸素透過度は、JIS K 7126-2:2006に準拠して、酸素透過度測定装置(例えば、MOCON社製、商品名:OX-TRAN 2/20)を使用して、23℃、湿度40%RHの条件により測定される値である。
【0068】
一例として、容器300は、最内側にヒートシール性を有するヒートシール層を備えている。ヒートシール性とは、フィルム同士を熱で融着することができる性質をいう。温度融解性のある樹脂材料でフィルム表面にヒートシール層を形成しておき、その後、加熱温度、圧力及び時間を調整してヒートシール層を溶かしてフィルム同士を接着することができる。これにより、混合樹脂220を容器300内に入れた状態で、容器300の周縁部302をヒートシール層により密閉封止することができる。
【0069】
ヒートシール層は、例えば、ポリエチレンなどが用いられている。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンを使用することができる。これらの中でも、ヒートシール性という観点からは、低密度ポリエチレンおよび/ または直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0070】
図4に示されるように、容器300の内部を不活性ガスGで置換した状態で、混合樹脂220を容器300に封入する(すなわち、容器300を密閉封止する)。例えば、混合樹脂220を容器300内に収容した状態で、容器300内を不活性ガスGでパージし、容器300をヒートシール層の熱融着により密閉する。不活性ガスGは、例えば、窒素ガスである。容器300内を不活性ガスGでパージすることで、混合樹脂220が酸素と触れないようにしている。混合樹脂220は、純水PWが付着した状態で、容器300に封入されている。これにより、混合樹脂220を容器300に封入(すなわち、密閉封止)した包装構造310が完成する。包装構造310は、第1実施形態の混合樹脂の包装構造の一例である。
【0071】
容器300がガスバリア性樹脂を含むガスバリア層を備えていることで、容器300の内部への酸素透過が抑制される。このため、容器300の内部の混合樹脂220の酸化などを抑制することができる。また、混合樹脂220に純水PWが付着していることで、混合樹脂220を乾燥状態で保管する場合に比べて、混合樹脂220の劣化などを抑制することができる。
【0072】
次に、
図2に示されるように、混合樹脂220を封入した容器300を保管する(保管工程S103)。例えば、純水製造装置10のホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に混合樹脂220を使用する需要があるまで、混合樹脂220を封入した容器300を倉庫に保管してもよい。混合樹脂220を封入した容器300を保管する保管方法は、特に限定されない。混合樹脂220を封入した容器300が破損しないように、混合樹脂220を封入した容器300を保管できればよい。また、保管時に、混合樹脂220が劣化しにくい温度、例えば、直射日光を避け、常温もしくは冷暗条件にて管理されていることが好ましい。
【0073】
なお、
図2では、保管工程S103を備えているが、純水製造装置10のホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に混合樹脂220をすぐに使用する需要がある場合は、保管工程S103は不要である。すなわち、混合樹脂の管理方法の一例では、保管工程S103を省略することができる。
【0074】
次に、
図2に示されるように、混合樹脂220を封入した容器300を純水製造装置10が設置された現場に搬送する(搬送工程S104)。例えば、純水製造装置10のホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に混合樹脂220を使用する需要ある場合に、混合樹脂220を封入した容器300を、純水製造装置10が設置された現場に搬送する。
【0075】
次に、
図2に示されるように、容器300を開封して、混合樹脂220を現場の純水製造装置10のホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に充填する(充填工程S105)。例えば、純水製造装置10のホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の使用時に、容器300を開封して、混合樹脂220をホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に充填する。これにより、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214とが予め混合された状態で充填される。
【0076】
その後、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に純水等を導入し、混合樹脂220を洗浄することにより、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の立ち上げを行う。
【0077】
(作用及び効果)
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0078】
第1実施形態の混合樹脂の管理方法では、ホウ素吸着性樹脂210と、強酸性陽イオン交換樹脂212と、強塩基性陰イオン交換樹脂214とを混合する(混合工程S101)。さらに、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214とを混合した後の混合樹脂220を容器300に封入する(封入工程S102)。さらに、純水製造装置10が配置された現場に容器300を搬送する(搬送工程S104)。そして、純水製造装置10のホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の使用時に、容器300の内部の混合樹脂220をホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に充填する(充填工程S105)。
【0079】
これにより、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214とが予め混合された混合樹脂220がホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に充填される。
【0080】
このため、第1実施形態の混合樹脂の管理方法では、ホウ素吸着性樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂をそれぞれ単体で入手し、これらの3種類の樹脂をそれぞれ混床樹脂塔に入れてから混合する場合と比較して、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の立ち上げを早くすることができる。
【0081】
この効果は、次のような現象が起きているものと考えている。
・ホウ素吸着性樹脂210は、他のイオン交換樹脂と比べると、著しく熱分解等が進みやすい。したがって、保管条件によっては熱分解等が大きく進み、純水装置の立ち上げに大きな影響をもたらす。
・ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212を混合すると、ホウ素吸着性樹脂210が保管時等に徐々に熱分解され、官能基が樹脂から脱離する恐れがあるが、この脱離した官能基を強酸性陽イオン交換樹脂212が吸着し、混合樹脂220の中の不純物の増加を抑制する。
・また、強酸性陽イオン交換樹脂212および、もしくは、強塩基性陰イオン交換樹脂214を混合すると、混合樹脂220の全体の含水量が増加する。ホウ素吸着性樹脂210には、例えば、合成時に使用した触媒由来の金属や不純物等が残留しているので、これがホウ素吸着性樹脂210から脱離して、さらに、ホウ素吸着性樹脂210の官能基等を分解を促進している恐れがあるが、含水量が増加すると、合成時に使用した触媒由来の金属や不純物等が水中に拡散され、この効果が抑制される。
・さらに、触媒由来の金属や不純物等のうち陽イオンは、強酸性陽イオン交換樹脂212に吸着される。
【0082】
これらの現象が複合的に起きているので、混合するイオン交換樹脂ごとに立ち上げを早める効果は異なる。立ち上げを早めるという観点からは、弱塩基性陰イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂のいずれも好ましく、強酸性陽イオン交換樹脂と弱酸性陽イオン交換樹脂がより好ましい。なお、不活性樹脂も立ち上げを早める効果はあるが、通水時には純水の水質向上には役立たないので好ましくない。
【0083】
早期立ち上げを可能とするという観点から、ホウ素吸着性樹脂とイオン交換樹脂量の混合比は、0.05以上4以下が好ましい。また、純水製造における水質向上の観点から、ホウ素吸着性樹脂に混合するイオン交換樹脂の混合比としては、0.2以上3.5以下が好ましい。
【0084】
また、第1実施形態の混合樹脂の管理方法では、容器300は、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層を備えている。これにより、容器300の外部から容器300内へ酸素などの気体が透過することが抑制される。このため、第1実施形態の混合樹脂の管理方法では、容器300内の混合樹脂220の酸化などによる劣化を抑制することができる。
【0085】
また、容器300の内部を不活性ガスGで置換した状態で、混合樹脂220を容器300に封入する。このため、第1実施形態の混合樹脂の管理方法では、容器内に酸素などの気体が残留している場合と比較して、容器300内の混合樹脂220の酸化による劣化を抑制することができる。
【0086】
また、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214は、純水PWに入れた状態で混合し、混合された混合樹脂220を容器300に封入し、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の使用時まで混合樹脂220を湿潤状態で保管する。このため、第1実施形態の混合樹脂の管理方法では、ホウ素吸着性樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂にガスのみを導入して混合する場合と比較して、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214をスムーズに混合することができる。そして、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214とを予め混合した場合でも、容器300に封入した状態で混合樹脂220を保管することができる。
【0087】
また、第1実施形態の混合樹脂220の包装構造310では、ホウ素吸着性樹脂210と強酸性陽イオン交換樹脂212と強塩基性陰イオン交換樹脂214とを混合した混合樹脂220が容器300に封入されている。これにより、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に混合樹脂220を充填することができる。このため、第1実施形態の混合樹脂220の包装構造310では、ホウ素吸着性樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂をそれぞれ単体で入手し、これらの3種類の樹脂をそれぞれ混床樹脂塔に入れてから混合する場合と比較して、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の立ち上げを早くすることができる。
【0088】
また、容器300は、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層を備えている。このため、第1実施形態の混合樹脂220の包装構造310では、容器300内の混合樹脂220の酸化などによる劣化を抑制することができる。
【0089】
また、第1実施形態の混合樹脂220の包装構造310では、容器300の内部を不活性ガスGで置換した状態で、混合樹脂220が容器300に封入されている。このため、第1実施形態の混合樹脂220の包装構造310では、容器内に酸素などの気体が残留している場合と比較して、容器300内の混合樹脂220の酸化による劣化を抑制することができる。
【0090】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る超純水製造システムについて説明する。
図5は、第2実施形態に係る超純水製造システム20を示す構成図である。
【0091】
図5に示されるように、超純水製造システム20は、純水製造装置10を用いた超純水製造システムであり、純水製造装置10の下流側に、二次純水システム26を備えている。
【0092】
超純水製造システム20は、前処理装置11、2床3塔式装置22、逆浸透膜装置23、紫外線酸化装置24を順に備え、紫外線酸化装置24の処理水がホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に供給される。ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12には、第1実施形態と同様の混合樹脂220が充填されている。混合樹脂220には、第1実施形態と同様の混合樹脂の管理方法、及び混合樹脂の包装構造310が適用されている。前処理装置11は、砂ろ過装置、活性炭処理装置等が設置されていてもよい。
【0093】
超純水製造システム20において、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の下流側には、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の処理水を貯留するタンク25を介して、二次純水システム26が接続されている。二次純水システム26は、例えば、紫外線酸化装置、非再生式ポリッシャー、膜脱気装置及び限外ろ過装置を備えており、一次純水中の有機炭素(TOC)濃度を1μgC/L程度まで低減して超純水を製造する。ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の下流側には、混床式イオン交換装置(MB)、電気式脱イオン装置(EDI)等が設置されていてもよい。
本システムを用いることで、ホウ素を極限まで低減した超純水の製造が可能である。超純水のホウ素濃度は、例えば、1ng/L以下が達成できる。
【0094】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る超純水製造システムについて説明する。
図6は、第3実施形態に係る超純水製造システム30を示す構成図である。
【0095】
図6に示されるように、超純水製造システム30は、2床3塔式装置22及び逆浸透膜装置23に代えて2段逆浸透膜装置31、32を備える点で第2実施形態の超純水製造システム20と異なる他は、第2実施形態の超純水製造システム20と同様の構成である。
【0096】
超純水製造システム30は、前処理装置11、逆浸透膜装置31、逆浸透膜装置32、紫外線酸化装置24、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12、タンク25、二次純水システム26を順に備えて構成される。
【0097】
超純水製造システム30では第1段目の逆浸透膜装置31は前処理水のイオン成分や非イオン性の有機物や微粒子を除去する。第1段目の逆浸透膜装置31では、溶存している炭酸を除去するために、その入口で水酸化ナトリウム等のアルカリを添加して被処理水のpHを例えば7.5以上11.0以下のアルカリ性に調製してもよい。
【0098】
第2段目の逆浸透膜装置32は、第1段目の逆浸透膜装置31の透過水中に残留するイオン成分を除去する。第1段目及び第2段目の逆浸透膜装置31、32の濃縮水の一部は、第1段目の逆浸透膜装置31の入水口に供給されてもよい。このように、2段の逆浸透膜装置を用いることで、水回収率を高めつつ、ホウ素濃度が著しく低減された、純度の高い超純水を得ることができる。ホウ素濃度は、例えば、1ng/L以下の超純水を製造することが可能である。
【0099】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る超純水製造システムについて説明する。
図7は、第3実施形態に係る超純水製造システム40を示す構成図である。
【0100】
図7に示されるように、超純水製造システム40は、2床3塔式装置22及び逆浸透膜装置23に代えて、逆浸透膜装置41と電気脱イオン装置42を備える点で、第2実施形態の超純水製造システム20と異なる他は、第2実施形態の超純水製造システム20と同様の構成である。
【0101】
超純水製造システム40は、前処理装置11、逆浸透膜装置41、電気脱イオン装置42、紫外線酸化装置24、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12、タンク25、二次純水システム26を順に備えて構成される。
【0102】
超純水製造システム40では、逆浸透膜装置41が電気脱イオン装置42のスケール生成の原因となるイオン成分を除去することができる。さらに、電気脱イオン装置42においても、ホウ素が若干除去されるため、ホウ素濃度を著しく低減した超純水を得ることができ、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12をより長寿命化することができる。さらに、イオン成分の除去を逆浸透膜装置41と電気脱イオン装置42で行うため、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12を非再生式に構成すれば、薬品再生を必要としない超純水製造システム40を構成することができる。
【0103】
第2~第4実施形態の超純水製造システムにおいて、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に充填される混合樹脂220には、第1実施形態と同様の混合樹脂の管理方法、及び混合樹脂の包装構造310が適用されている。このため、第1実施形態と同様の構成及び管理方法により同様の作用及び効果を得ることができる。
【0104】
なお、第1~第4実施形態では、ホウ素吸着性樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂を混合した混合樹脂を用いているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、ホウ素吸着性樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合した混合樹脂を用いてもよいし、ホウ素吸着性樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂とを混合した混合樹脂を用いてもよい。
【0105】
また、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0106】
次に、実施例について説明する。実施例1、2では、
図1に示すホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12を用いた。
【0107】
(実施例1)
ホウ素吸着性樹脂(ダイヤイオンCRB03、三菱化学(株)社製、交換容量:0.8meq/mL)、強酸性陽イオン交換樹脂(Duolite CGP、ローム・アンド・ハース社製、交換容量:2.0meq/mL)、強塩基性陰イオン交換樹脂(Duolite AGP、ローム・アンド・ハース社製、交換容量:1.1meq/mL)の3種類の樹脂の単体をそれぞれ袋に入った状態で入手した。そして、3種類の樹脂のそれぞれの袋を開封した直後に、ホウ素吸着性樹脂750mL、強酸性陽イオン交換樹脂530mL、強塩基性陰イオン交換樹脂1920mLを混合した。3種類の樹脂の混合は、第1実施形態と同様の混合方法により行った。これにより、ホウ素吸着性樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂とを混合した混合樹脂を製造した。
【0108】
この製造直後の混合樹脂をホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に充填した。そして、比抵抗値18.0MΩ・cm以上、ホウ素(B)濃度10ng/L(as B)以下の超純水に、TOC成分として、濃度15μg/Lとなる量のイソプロピルアルコール(IPA)、ホウ素(B)濃度が0.41μg/Lとなる量のホウ酸(H
3BO
3)を添加し、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に流量1700mL/min(空間速度SV=32/h、線速度LV=52m/L)で通水した。ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の出口水を定期的に採取し、TOCを測定した。また、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の出口水を所定時間毎に採取し、抵抗率を測定した。TOCの測定結果を、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12への通水時間を横軸、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の処理水のTOCを縦軸として、
図8のグラフに示す。また、抵抗率の測定結果を、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12への通水時間を横軸、抵抗率を縦軸として、
図9のグラフに示す。この製造直後の混合樹脂による測定結果を初期データとした。
【0109】
実施例1では、ホウ素吸着性樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂とを混合した上記混合樹脂を、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVOH)製のガスバリア層を有する容器300(袋)(シュペレン 35Eタイプ、UBE株式会社製)に、窒素ガスで置換し、湿潤状態で封入し、容器300を密閉状態とした。なお、密閉状態におけるイオン交換樹脂の含水量は70重量%であった。この状態で、混合樹脂が封入された容器300を保管した。この保管方法を第1保管方法とする。混合樹脂が封入された容器300の保管は、30日行った。保管日数の経過後、容器300を開封して混合樹脂をホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に充填した。
【0110】
実施例1では、上記の製造直後の混合樹脂と同様の条件で、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に通水し、TOCと抵抗率を測定した。TOCの測定結果を、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12への通水時間を横軸、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の処理水のTOCを縦軸として、
図8のグラフに示す。また、抵抗率の測定結果を、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12への通水時間を横軸、抵抗率を縦軸として、
図9のグラフに示す。
【0111】
(実施例2)
実施例1と同様の条件で、ホウ素吸着性樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂とを混合した混合樹脂を製造する。そして、製造した混合樹脂を、ガスバリア層を有しない通常の容器(袋)(低密度ポリエチレン(LDPD)製、厚さ0.03mm)に封入し、容器を密閉状態とした。このとき、容器内の空気の窒素ガスによる置換は行わない。この状態で、混合樹脂が湿潤状態で封入された容器を保管した。この保管方法を第2保管方法とする。混合樹脂が封入された容器の保管は、実施例1と同様の日数とした。保管日数の経過後、容器を開封して混合樹脂をホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に充填した。
【0112】
実施例2では、実施例1と同様の条件で、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12に通水し、TOCと抵抗率を測定した。TOCの測定結果を
図8のグラフに示す。また、抵抗率の測定結果を
図9のグラフに示す。
【0113】
(比較例1)
実施例1と同様に、ホウ素吸着性樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂の3種類の樹脂の単体をそれぞれ袋に入った状態で入手した。そして、ホウ素吸着性樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂をそれぞれ別々に実施例2と同様のガスバリア層を有しない通常の容器に入れ替え、それぞれの容器を密閉した。このとき、容器内の空気の窒素ガスによる置換は行わない。この状態で、混合樹脂が湿潤状態で封入された容器を保管した(第2保管方法)。混合樹脂が封入された容器の保管は、実施例1と同様の日数とした。
【0114】
保管日数の経過後、3種類の樹脂のそれぞれの容器を開封し、実施例1と同様の量の3種類の樹脂を実機である混床塔に充填した。そして、混床塔で3種類の樹脂を混合した。混床塔では、混床塔の下から純水を導入して3種類の樹脂を混合した。
【0115】
3種類の樹脂の混合後、実施例1と同様の条件で、混床塔に通水し、TOCと抵抗率を測定した。TOCの測定結果を、
図8のグラフに示す。また、抵抗率の測定結果を
図9のグラフに示す。
【0116】
(比較例2)
ホウ素吸着性樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂の2種類の樹脂の単体をそれぞれ袋に入った状態で入手した。そして、ホウ素吸着性樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂をそれぞれ別々に比較例2と同様のガスバリア層を有しない通常の容器に入れ替え、それぞれの容器を密閉した。このとき、容器内の空気の窒素ガスによる置換は行わない。この状態で、混合樹脂が湿潤状態で封入された容器を保管した(第2保管方法)。混合樹脂が封入された容器の保管は、実施例1と同様の日数とした。
【0117】
保管日数の経過後、2種類の樹脂のそれぞれの容器を開封し、実施例1と同様の量の2種類の樹脂を比較例1と同様に実機である混床塔に充填した。そして、混床塔で2種類の樹脂を混合した。
【0118】
2種類の樹脂の混合後、実施例1と同様の条件で、混床塔に通水し、TOCを測定した。TOCの測定結果を
図8のグラフに示す。
【0119】
なお、初期データ、実施例1、実施例2、比較例1、及び比較例2において、TOC濃度は、TOC濃度計(Anatel社製、Anatel A1000 XP)、抵抗率は抵抗率計(HORIBA社製、HE-960RW)によって測定した。
【0120】
図8より、実施例1では、ホウ素吸着性樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂とを混合した混合樹脂を、窒素ガスで置換した状態で容器300に封入して保管することで、TOCが短時間で少なくなることが分かる。また、実施例2でも、ホウ素吸着性樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂とを混合した混合樹脂を、通常の容器に封入して保管することで、TOCが短時間で少なくなることが分かる。実施例1、2のTOCの測定値は、初期データに近い値である。例えば、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12は、TOCが1.0ppb程度となることで立ち上がりが完了する。
【0121】
また、
図9より、実施例1、2では、初期データと同様に、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12への通水の初期から抵抗率がほぼ一定である。抵抗率は、電気の通りにくさを示す値であり、抵抗率の値が高い方が、汚れが少ないことを示している。これにより、実施例1、2では、ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の出口水がほぼ純水になっている(イオンなどが少ない)ことが分かる。
【0122】
このため、実施例1、2では、混合樹脂を充填したホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置12の立ち上げが早くなることが分かる。
【0123】
[本開示の好ましい態様]
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0124】
[付記項1]
ホウ素吸着性樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂及び酸性陽イオン交換樹脂の少なくとも一方とを混合し、
前記混合した後の混合樹脂を湿潤状態で密閉容器に封入し、
純水を製造する純水製造装置が配置された現場に前記混合樹脂を封入した前記密閉容器を搬送し、前記純水製造装置に設けられたホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置の使用時に、前記密閉容器の内部の前記混合樹脂を前記ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置に充填する、混合樹脂の管理方法。
【0125】
[付記項2]
前記密閉容器は、ガスバリア性樹脂又は金属を含むガスバリア層を備えている付記項1に記載の混合樹脂の管理方法。
【0126】
[付記項3]
前記密閉容器の内部を不活性ガスで置換した状態で、前記混合樹脂を前記密閉容器に封入する付記項1又は付記項2に記載の混合樹脂の管理方法。
【0127】
[付記項4]
前記ホウ素吸着性樹脂と、前記塩基性陰イオン交換樹脂及び前記酸性陽イオン交換樹脂の少なくとも一方とを、純水に入れた状態で混合し、
混合された前記混合樹脂を前記密閉容器に封入し、前記ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置の使用時まで前記混合樹脂を湿潤状態で保管する付記項1から付記項3までのいずれか1つに記載の混合樹脂の管理方法。
【0128】
[付記項5]
ホウ素吸着性樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂及び酸性陽イオン交換樹脂の少なくとも一方と、を混合した混合樹脂が密閉容器に封入されている混合樹脂の包装構造。
【0129】
[付記項6]
前記密閉容器は、ガスバリア性樹脂又は金属を含むガスバリア層を備えている付記項5に記載の混合樹脂の包装構造。
【0130】
[付記項7]
前記密閉容器の内部を不活性ガスで置換した状態で、前記混合樹脂が前記密閉容器に封入されている付記項5又は付記項6に記載の混合樹脂の包装構造。
【符号の説明】
【0131】
10 純水製造装置
12 ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置
20 超純水製造システム
30 超純水製造システム
40 超純水製造システム
210 ホウ素吸着性樹脂
212 強酸性陽イオン交換樹脂
214 強塩基性陰イオン交換樹脂
220 混合樹脂
300 容器
310 包装構造
G 不活性ガス
PW 純水
【要約】
【課題】混合樹脂を充填した装置の立ち上げを早くする。
【解決手段】混合樹脂の管理方法は、ホウ素吸着性樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂及び酸性陽イオン交換樹脂の少なくとも一方とを混合し、前記混合した後の混合樹脂を湿潤状態で密閉容器に封入し、純水を製造する純水製造装置が配置された現場に前記混合樹脂を封入した前記密閉容器を搬送し、前記純水製造装置に設けられたホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置の使用時に、前記密閉容器の内部の前記混合樹脂を前記ホウ素吸着性樹脂混合イオン交換装置に充填する。
【選択図】
図2