(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】冷却装置およびそれを備えた熱処理装置
(51)【国際特許分類】
F27B 9/12 20060101AFI20241018BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20241018BHJP
F27B 9/28 20060101ALI20241018BHJP
F27B 9/14 20060101ALI20241018BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20241018BHJP
B65H 27/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F27B9/12
F27D9/00
F27B9/28
F27B9/14
B65H20/02 Z
B65H27/00 Z
(21)【出願番号】P 2024033594
(22)【出願日】2024-03-06
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 英紀
(72)【発明者】
【氏名】大威 英晃
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雅己
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特許第7285360(JP,B1)
【文献】中国実用新案第207231196(CN,U)
【文献】特開平10-045292(JP,A)
【文献】中国実用新案第214934579(CN,U)
【文献】特開2017-101915(JP,A)
【文献】実開昭63-168795(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0113042(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00 - 9/40
F27D 9/00
B65H 5/02、5/06、5/22、
29/12 - 29/24、29/32
B65H 20/02
B65H 23/00 - 23/16、
23/24 - 23/34、27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の被処理物を搬入する搬入部と、
前記被処理物を搬出する搬出部と、
複数の冷却ローラと、
前記複数の冷却ローラを支持する一対の支持板と
を備え、
前記複数の冷却ローラは、それぞれ軸方向を揃えて高さ方向に沿って順に位置をずらして千鳥配置され、
前記一対の支持板は、千鳥配置された前記複数の冷却ローラが配置された空間を挟むように対向し、かつ、前記複数の冷却ローラのローラ軸をそれぞれ支持する軸受を備えており、
前記搬入部から搬入され、前記複数の冷却ローラのうち、第1側にずらされた冷却ローラに前記被処理物の第1面が接し、第2側にずらされた冷却ローラに前記被処理物の第2面が接するように、高さ方向に沿って順に掛け廻された後で、前記搬出部から搬出されるように、前記被処理物の搬送経路が設定されて
おり、
前記一対の支持板のうち少なくとも一方の支持板には、貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記一対の支持板が対向する方向において、前記被処理物の搬送経路と重なる位置に形成されている、
冷却装置。
【請求項2】
帯状の被処理物を搬入する搬入部と、
前記被処理物を搬出する搬出部と、
複数の冷却ローラと、
前記複数の冷却ローラを支持する一対の支持板と
を備え、
前記複数の冷却ローラは、それぞれ軸方向を揃えて高さ方向に沿って順に位置をずらして千鳥配置され、
前記一対の支持板は、千鳥配置された前記複数の冷却ローラが配置された空間を挟むように対向し、かつ、前記複数の冷却ローラのローラ軸をそれぞれ支持する軸受を備えており、
前記搬入部から搬入され、前記複数の冷却ローラのうち、第1側にずらされた冷却ローラに前記被処理物の第1面が接し、第2側にずらされた冷却ローラに前記被処理物の第2面が接するように、高さ方向に沿って順に掛け廻された後で、前記搬出部から搬出されるように、前記被処理物の搬送経路が設定されて
おり、
前記一対の支持板は、前記第1側の側面および前記第2側の側面に、前記複数の冷却ローラを支持する支持部を備え、
前記支持板には、前記支持部が設けられている位置に近接して第2貫通孔が形成されており、
前記支持部は、前記第2貫通孔の内周面から、前記第1側の側面および前記第2側の側面のうち近い側面に向かって貫通する取付部材によって前記支持板に取り付けられている、
冷却装置。
【請求項3】
帯状の被処理物を搬入する搬入部と、
前記被処理物を搬出する搬出部と、
複数の冷却ローラと、
前記複数の冷却ローラを支持する一対の支持板と
を備え、
前記複数の冷却ローラは、それぞれ軸方向を揃えて高さ方向に沿って順に位置をずらして千鳥配置され、
前記一対の支持板は、千鳥配置された前記複数の冷却ローラが配置された空間を挟むように対向し、かつ、前記複数の冷却ローラのローラ軸をそれぞれ支持する軸受を備えており、
前記搬入部から搬入され、前記複数の冷却ローラのうち、第1側にずらされた冷却ローラに前記被処理物の第1面が接し、第2側にずらされた冷却ローラに前記被処理物の第2面が接するように、高さ方向に沿って順に掛け廻された後で、前記搬出部から搬出されるように、前記被処理物の搬送経路が設定されて
おり、
前記一対の支持板のうち少なくとも一方の支持板には、貫通孔が形成されており、
前記一対の支持板は、前記第1側の側面および前記第2側の側面に、前記複数の冷却ローラを支持する支持部を備える、
冷却装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記一対の支持板が対向する方向において、前記被処理物の搬送経路と重なる位置に形成されている、請求項
1または3に記載された冷却装置。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記支持板の
幅方向の中央部に設けられている、請求項
1または3に記載された冷却装置。
【請求項6】
前記一対の支持板のうち、一方の支持板には、前記貫通孔が形成されており、
他方の支持板には、前記冷却ローラに冷媒を供給する冷媒配管が設けられている、請求項
1または3に記載された冷却装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記一対の支持板の前記第1側の側面および前記第2側の側面からそれぞれ突出している、請求項
2または3に記載された冷却装置。
【請求項8】
前記支持板には、前記支持部が設けられている位置に近接して第2貫通孔が形成されており、
前記支持部は、前記第2貫通孔の内周面から、前記第1側の側面および前記第2側の側面のうち近い側面に向かって貫通する取付部材によって前記支持板に取り付けられている、請求項
3に記載された冷却装置。
【請求項9】
前記被処理物が加熱処理される加熱処理部と、
加熱処理された前記被処理物を冷却する、請求項1~3のいずれか一項に記載された冷却装置と
を備えた、熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却装置およびそれを備えた熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第7285360号公報には、巻出部と、加熱処理部と、冷却部と、巻取部とを備えた熱処理装置が開示されている。冷却部には、複数の冷却ローラが設けられている。冷却部では、帯状の被処理物は、冷却ローラに掛けられた状態で搬送されつつ冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、複数の冷却ローラに帯状の被処理物を掛ける際の作業性を向上させたいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される冷却装置は、搬入部と、搬出部と、複数の冷却ローラと、一対の支持板とを備えている。搬入部は、帯状の被処理物を搬入する。搬出部は、被処理物を搬出する。一対の支持板は、複数の冷却ローラを支持する。複数の冷却ローラは、それぞれ軸方向を揃えて高さ方向に沿って順に位置をずらして千鳥配置されている。一対の支持板は、千鳥配置された複数の冷却ローラが配置された空間を挟むように対向している。一対の支持板は、複数の冷却ローラのローラ軸をそれぞれ支持する軸受を備えている。被処理物の搬送経路は、搬入部から搬入され、複数の冷却ローラに高さ方向に沿って順に掛け廻された後で、搬出部から搬出されるように設定されている。被処理物の搬送経路は、複数の冷却ローラのうち、第1側にずらされた冷却ローラに被処理物の第1面が接し、第2側にずらされた冷却ローラに被処理物の第2面が接するように設定されている。かかる冷却装置では、複数の冷却ローラに帯状の被処理物を掛ける際の作業性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、熱処理装置10および冷却装置50を示す模式図である。
【
図2】
図2は、冷却ローラ52の支持構造を示す模式図である。
【
図3】
図3は、冷却ローラ52の支持構造を示す模式図である。
【
図4】
図4は、第1支持部56aを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示における実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。
【0008】
〈熱処理装置10〉
図1は、熱処理装置10および冷却装置50を示す模式図である。熱処理装置10は、帯状(シート状)の被処理物Aを加熱処理するための設備である。この実施形態では、熱処理装置10は、いわゆるロールtoロール方式で帯状の被処理物を搬送しつつ連続的に乾燥させるための装置である。被処理物Aは、例えば、シート基材の両面にそれぞれ電極材料が塗工された二次電池の電極シート、フレキシブル銅張積層板FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate)、ポリイミドシートなど帯状のものであれば特に限定されない。熱処理装置10は、帯状(シート状)の種々の被処理物の処理に用いられうる。
【0009】
図1に示されているように、熱処理装置10は、巻出部30と、加熱処理部40と、冷却部50と、巻取部60とを備えている。また、熱処理装置10は、搬送装置20,22を備えている。ここで開示される冷却装置50は、熱処理装置10において、冷却部50として用いられている。帯状の被処理物Aは、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50、巻取部60の順で搬送されつつ処理される。被処理物Aは、巻出部30に設けられた巻出ロールA1から巻出され、加熱処理部40で加熱処理され、冷却部50で冷却された後、巻取部60に設けられた巻取ロールA2に巻取られる。
【0010】
〈搬送装置20,22〉
搬送装置20,22は、被処理物Aを搬送する装置である。被処理物Aは、予め定められた搬送経路に沿って搬送される。搬送装置20,22は、それぞれ巻出部30の巻出ロールA1が取り付けられている巻出軸32、および、巻取部60の巻取ロールA2が取り付けられている巻取軸62をそれぞれ回転駆動する装置である。この実施形態では、搬送装置20,22としてモータが用いられている。搬送装置20,22は、被処理物Aの搬送を制御する装置から構成されうる。搬送装置20,22としては、例えば、モータとインバータが用いられていてもよく、サーボモータ等が用いられていてもよい。また、搬送装置20,22は、被処理物Aにかかる張力を制御する装置を含んでいてもよい。張力を制御する装置としては、例えば、パウダクラッチが用いられうる。搬送装置20,22は、搬送速度を制御する装置および張力を制御する装置が協働する一式の装置によって実現されていてもよい。
【0011】
巻出軸32は、搬送装置20に接続されている。搬送装置20によって巻出軸32が回転駆動され、巻出ロールA1から被処理物Aが巻出される。巻取軸62は、搬送装置22に接続されている。搬送装置22によって巻取軸62が回転駆動され、巻取ロールA2に被処理物Aが巻取られる。搬送装置20,22は、それぞれ外壁31,61に囲まれた空間内に設けられた大気ボックスに設置されていてもよい。搬送装置20,22は、それぞれ外壁31,61の外に設けられていてもよい。
【0012】
熱処理装置10は、被処理物Aの処理効率を向上させるために、被処理物Aを速い速度で搬送可能に構成されうる。特に限定されないが、被処理物Aの搬送速度は、1m/分~200m/分程度に設定されうる。この実施形態では、被処理物Aの搬送速度は、100m/分程度に設定されている。熱処理装置10では、被処理物Aの搬送速度は、図示しない制御装置によって制御されている。
【0013】
制御装置は、予め定められた搬送条件に応じて被処理物Aが搬送されるように、被処理物Aの搬送速度、被処理物Aにかかる張力等を制御する。制御装置は、被処理物Aを巻出す時の巻出し張力と、処理されている被処理物Aにかかる炉内張力と、処理された被処理物Aを巻取る時の巻取り張力とをそれぞれ制御する。制御装置は、搬送装置20,22に接続されている。また、制御装置は、張力検出ローラ35b、フィードローラ35c、ダンサーローラ35d、張力検出ローラ65c等と接続されていてもよい。制御装置は、張力検出ローラ35bが検出する巻出し張力を搬送装置20にフィードバックし、巻出軸32のトルクを制御する。これによって、巻出し張力が調整される。また、制御装置は、処理されている被処理物Aが掛けられた張力検出ローラ35bが検出する炉内張力をダンサーローラ35dにフィードバックする。検出された炉内張力に応じてダンサーローラ35dが移動する。これによって、炉内張力が調整される。なお、炉内張力が一定の状態でダンサーローラ35dの位置が基準の位置に戻るように、フィードローラ35cの回転速度が制御される。また、制御装置は、張力検出ローラ65cが検出する巻取り張力を搬送装置22にフィードバックし、巻取軸62のトルクを制御する。これによって、巻取り張力が調整される。
【0014】
〈巻出部30〉
巻出部30は、被処理物Aを巻出す設備である。巻出部30は、加熱処理前の被処理物Aが巻付けられた状態の巻出ロールA1を収容している。巻出部30は、内部の設備および巻出ロールA1を囲う外壁31を有している。巻出部30には、巻出軸32と、複数のローラ35とが内部に設けられている。巻出軸32は、加熱処理前の被処理物Aが巻かれた巻出ロールA1が取り付けられる軸である。この実施形態では、巻出軸32が回転駆動されることによって、巻出軸32に取り付けられた巻出ロールA1から被処理物Aが巻出される。
【0015】
巻出部30の外壁31で囲まれた空間内には、被処理物Aの搬送経路を設定する複数のローラ35が設けられている。巻出ロールA1から巻出された被処理物Aは、複数のローラ35に予め定められた順番で掛け廻され、加熱処理部40に向けて搬送される。複数のローラ35は、ガイドローラ35aと、張力検出ローラ35bと、フィードローラ35cと、ダンサーローラ35dとを含んでいる。張力検出ローラ35bは、被処理物Aにかかる張力を検出するためのローラである。張力検出ローラ35bには、図示しない張力検出器が取り付けられている。ダンサーローラ35dは、予め定められた範囲を移動可能に構成されている。ダンサーローラ35dが移動することによって、被処理物Aの張力が調整される。フィードローラ35cは、図示しない駆動装置によって回転駆動される。フィードローラ35cの回転が制御されることによって、ダンサーローラ35dの位置が調整される。
【0016】
〈加熱処理部40〉
加熱処理部40は、帯状の被処理物Aが搬送されつつ加熱処理される設備である。加熱処理部40は、連結部70を介して巻出部30と接続されている。連結部70には、巻出部30の出口と、加熱処理部40の入口とが設けられている。連結部70には、被処理物Aが通る通り道が形成されている。被処理物Aは、連結部70を通って巻出部30から加熱処理部40に搬送される。連結部70に形成された、被処理物Aの通り道は、被処理物Aの幅と厚みよりもわずかに大きい寸法に設定されている。これによって、加熱処理部40の雰囲気と巻出部30の雰囲気は、互いに干渉しにくくなっている。
【0017】
詳細な図示は省略するが、加熱処理部40は、外壁41と、ヒータと、ガイドローラとを備えていてもよい。加熱処理部40は、巻出された被処理物Aが搬送されつつ加熱処理される処理空間を内部に有している。外壁41は、ヒータと、ガイドローラとが配置された処理空間を囲っている。
【0018】
被処理物Aが搬送される搬送経路は、ガイドローラによって設定される。ガイドローラは、被処理物Aの搬送に伴い、従動的に回転するように構成されている。
【0019】
ヒータは、被処理物Aを加熱するための設備である。被処理物Aは、ガイドローラによって設定された搬送経路を搬送されつつ、ヒータによって加熱処理される。なお、ガイドローラ、ヒータ等の加熱処理部40の構成は、特に限定されない。加熱処理された被処理物Aは、冷却部50に向けて搬出される。
【0020】
〈冷却部50〉
冷却部50は、加熱処理部40で加熱処理された被処理物Aが搬送されつつ冷却される設備である。冷却部50は、連結部72を介して加熱処理部40と接続されている。冷却部50は、搬入部50bと、搬出部50cと、複数の冷却ローラ52と、一対の支持板53,54(
図2および
図3参照)とを備えている。冷却部50は、複数のガイドローラ55と、外壁51とを備えている。
【0021】
搬入部50bからは、帯状の被処理物Aが搬入される。搬入部50bは、連結部72に設けられている。搬出部50cからは、被処理物Aが搬出される。搬出部50cは、連結部74に設けられている。搬入部50bと搬出部50cは、互いに対向する位置に設けられている。なお、搬入部50bと搬出部50cの位置関係は、特に限定されない。連結部72には、連結部70と同様、被処理物Aが通る通り道が形成されている。連結部72の構成は、連結部70の構成と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0022】
〈冷却ローラ52〉
冷却ローラ52は、内部に冷媒が流通するように構成されたローラである。被処理物Aは、冷却ローラ52の表面に接することによって冷却される。冷却ローラ52は、第1冷却ローラ52aと、第2冷却ローラ52bとを備えている。第1冷却ローラ52aは、被処理物Aの第1面A3が接するように掛け廻される冷却ローラ52である。第2冷却ローラ52bは、被処理物Aの第2面A4が接するように掛け廻される冷却ローラ52である。この実施形態では、冷却ローラ52には、図示しない駆動装置が接続されている。冷却ローラ52は、搬送方向に沿って、設定された搬送速度に合わせて回転する。この実施形態では、被処理物Aは、冷却部50において、室温程度まで冷却される。冷却される被処理物Aの温度は、特に限定されない。
【0023】
第1冷却ローラ52aおよび第2冷却ローラ52bは、それぞれ複数(この実施形態では、4つずつ)設けられている。冷却ローラ52の数は特に限定されない。第1冷却ローラ52aおよび第2冷却ローラ52bは、例えば、それぞれ1つずつ設けられていてもよい。
【0024】
複数の第1冷却ローラ52aは、冷却部50の前方(出口側)に高さ方向に沿って予め定められたピッチで一列に並べられている。複数の第2冷却ローラ52bは、冷却部50の後方(搬入部50b側)において、高さ方向に沿って予め定められたピッチで一列に並べられている。隣り合う第1冷却ローラ52aの間隔および隣り合う第2冷却ローラ52bの間隔はそれぞれ、冷却ローラ52の外径よりも狭くなるように設定されている。なお、第1冷却ローラ52aおよび第2冷却ローラ52bの配置は、特に限定されない。
【0025】
ここでは、第1冷却ローラ52aと第2冷却ローラ52bは、同じピッチで並べられている。第2冷却ローラ52bの高さは、下から順に、第1冷却ローラ52aよりも半ピッチ高い位置に配置されている。これにより、複数の第1冷却ローラ52aと複数の第2冷却ローラ52bとは、冷却部50の前後で順に高さがずれるように配置されている。換言すると、複数の第1冷却ローラ52aと複数の第2冷却ローラ52bとは、千鳥に配置されている。これによって、冷却部50を高さ方向に長い構造とすることができる。他方で、冷却部50の専有面積を小さくすることができ、設備の省スペース化が図られる。
【0026】
外壁51は、複数の冷却ローラ52と、複数のガイドローラ55とが配置された処理空間50aを囲っている。この実施形態では、冷却部50には、複数の冷却ローラ52が設けられている。複数の冷却ローラ52と複数のガイドローラ55は、冷却部50において被処理物Aが搬送される搬送経路を設定している。
【0027】
〈ガイドローラ55〉
ガイドローラ55(55a~55g)は、被処理物Aを案内するローラである。この実施形態では、ガイドローラ55は、略円筒状のローラである。冷却部50には、複数のガイドローラ55によって、搬入部50b(連結部72)から複数の冷却ローラ52を通り、出口(連結部74)に向かうように、被処理物Aの搬送経路が設定されている。複数のガイドローラ55のうちガイドローラ55bは、被処理物Aにかかる張力を検出する張力検出ローラである。
【0028】
ガイドローラ55aは、その上端が冷却部50の搬入部50bと同じ高さになるように配置されている。ガイドローラ55b,55cは、冷却部50の下部に配置されている。ガイドローラ55bは、ガイドローラ55aの下方に配置されている。ガイドローラ55cは、ガイドローラ55bの前方(紙面右方)に配置されている。ガイドローラ55d,55eは、冷却部50の上部に配置されている。ガイドローラ55dは、ガイドローラ55cの上方に配置されている。ガイドローラ55eは、ガイドローラ55dの前方に配置されている。ガイドローラ55f,55gは、冷却部50の搬出部50c付近に配置されている。ガイドローラ55gは、その下端が冷却部50の搬出部50cと同じ高さになるように配置されている。ガイドローラ55gの下端と、ガイドローラ55aとの上端とは、略同じ高さである。ガイドローラ55fは、ガイドローラ55ひとつ分高い位置に配置されている。ガイドローラ55fは、ガイドローラ55gと、冷却部50の搬出部50cとの間に配置されている。
【0029】
被処理物Aは、冷却部50の搬入部50bから、ガイドローラ55aを通って冷却部50に導入される。被処理物Aは、略水平に冷却部50に搬送される。被処理物Aは、ガイドローラ55aに上方から掛けられ、下方に搬送される。被処理物Aは、ガイドローラ55bに左側から掛けられ、前方に搬送される。被処理物Aは、ガイドローラ55cに上方から掛けられ、最下端に配置された第1冷却ローラ52aに搬送される。被処理物Aは、第1冷却ローラ52aと第2冷却ローラ52bに下側から順に交互に掛け廻され、最上端の第2冷却ローラ52bからガイドローラ55dに向けて搬送される。被処理物Aは、ガイドローラ55dに下方から掛けられ、前方に搬送される。被処理物Aは、ガイドローラ55eに上方から掛けられ、下方に搬送される。被処理物Aは、ガイドローラ55fに右側から掛けられ、後方に搬送される。被処理物Aは、ガイドローラ55gに上方から掛けられ、前方に向かって折り返される。被処理物Aは、冷却部50の搬出部50cに向かって略水平に搬送される。
【0030】
冷却部50は、連結部74を介して巻取部60と接続されている。連結部74は、冷却部50の搬出部50cと、巻取部60の入口とを備えている。冷却された被処理物Aは、連結部74を通って巻取部60に搬送される。
【0031】
〈巻取部60〉
巻取部60は、被処理物Aを巻き取る設備である。巻取部60は、冷却ローラ52を通じて冷却された被処理物Aを巻取るための巻取ロールA2を収容している。巻取部60は、内部の設備および巻取ロールA2を囲う外壁61を有している。巻取部60には、巻取軸62と、複数のローラ65とが設けられている。巻取軸62には、加熱処理部40で加熱処理され、冷却部50で冷却された被処理物Aが巻き取られた巻取ロールA2が取り付けられている。巻取軸62が回転駆動されることによって、巻取ロールA2に被処理物Aが巻取られる。
【0032】
巻取部60の外壁61で囲まれた空間内には、被処理物Aの搬送経路を設定する複数のローラ65が設けられている。複数のローラ65は、巻取部60において被処理物Aが搬送される搬送経路を設定する。冷却部50から搬送された被処理物Aは、巻取部60の入口(連結部74)付近のローラ65に掛けられた後に、複数のローラ65に予め定められた順番に掛け廻され、巻取ロールA2に巻取られる。複数のローラ65は、ガイドローラ65aと、ダンサーローラ65bと、張力検出ローラ65cと、フィードローラ65dとを含んでいる。ダンサーローラ65bは、予め定められた範囲を移動可能に構成されている。ダンサーローラ65bは、例えば、巻取ロールA2が交換される際に、被処理物Aの必要な余長を確保するために移動されうる。張力検出ローラ65cには、図示しない張力検出器が取り付けられている。フィードローラ65dは、巻取ロールA2を交換するときに交換後の巻取ロールA2に被処理物Aを貼り付ける際、貼り付けに必要な余長を送り出す。
【0033】
〈真空ポンプ80〉
熱処理装置10は、真空ポンプ80を備えている。上述した巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の内部の空間は、それぞれ外壁31,41,51,61によって囲まれている。巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の各部は、外壁31,41,51,61によってそれぞれ外部空間と隔離された空間を有している。外壁31,41,51,61の内部の空間は、被処理物Aの処理時には、連通している。各部の外壁31,41,51,61にはそれぞれ真空ポンプ80が接続されている。真空ポンプ80は、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の内部の空間(冷却部50においては処理空間50a)を減圧する。この実施形態では、被処理物Aは、大気圧よりも低い予め定められた真空雰囲気下で処理される。
【0034】
なお、真空ポンプ80の接続形態は、特に限定されない。真空ポンプ80が複数設けられており、複数の真空ポンプ80は、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の各部にそれぞれ接続されていてもよい。ひとつの真空ポンプ80から配管が分岐しており、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60のうち複数の部の内部が減圧されてもよい。
【0035】
真空ポンプ80の配管には、各部の真空度を調整するための真空バルブ81~84が設けられている。真空バルブ81~84は、各部と真空ポンプ80の接続および各部と真空ポンプ80の切断を切り替え可能に構成されている。各部の真空度を調整しない場合には、真空バルブ81~84の替わりに開閉バルブが用いられていてもよい。
【0036】
加熱処理部40の入口(この実施形態では、連結部70)には、扉70aが設けられている。扉70aは、巻出ロールA1を取り替える時等に閉じられる。巻出ロールA1を取り替える時等に扉70aが閉じられることによって、加熱処理部40の雰囲気(この実施形態では、減圧状態)を保つことができる。扉70aは、巻出ロールA1を取り替える時等、被処理物Aが連結部70を通っている時に閉じられてもよい。巻出ロールA1に巻かれた被処理物Aの残りが少なくなってきたとき、巻出ロールA1は、新しいものに交換される。交換後の巻出ロールA1の被処理物Aの端部と、交換前の被処理物Aの端部とは、繋ぎ合わせられる。被処理物Aを処理空間に残した状態で、加熱処理部40の雰囲気を保ったまま巻出ロールA1を交換することができ、巻出ロールA1交換後の装置の復旧が早くなる。
【0037】
また、冷却部50の搬出部50c(この実施形態では、連結部74)には、扉74aが設けられている。扉74aは、扉70aと同様、巻取ロールA2を取り替える時等に扉74aが閉じられることによって、冷却部50の雰囲気(この実施形態では、減圧状態)を保つことができる。扉74aは、巻取ロールA2を取り替える時等、被処理物Aが連結部74を通っている時に閉じられてもよい。巻取ロールA2に巻かれた被処理物Aが多くなってきたとき、巻取ロールA2は、新しいものに交換される。交換後の巻取ロールA2の端部と、被処理物Aの端部とは、繋ぎ合わされる。被処理物Aを処理空間50aに残した状態で、冷却部50の雰囲気を保ったまま巻取ロールA2を交換することができ、巻取ロールA2交換後の装置の復旧が早くなる。
【0038】
ところで、冷却装置では、帯状の被処理物は、設定された搬送経路に沿って搬送されつつ冷却される。搬送経路は、複数の冷却ローラに沿うように設定されている。搬入部から搬入され、複数の冷却ローラに掛け廻され、搬出部から搬出される。冷却装置では、帯状の被処理物は、冷却ローラに接することによって冷却される。かかる冷却装置を用いて被処理物を処理する際、冷却装置を停止させた状態で、予め、被処理物を搬入部から通し、複数の冷却ローラの間を通し、搬出部を通す。その後に冷却装置を稼働させ、被処理物を冷却しつつ搬送する。本発明者は、被処理物を複数の冷却ローラに通す際の作業性を向上させたいと考えている。
【0039】
図2および
図3は、冷却ローラ52の支持構造を示す模式図である。
図2では、右側から見た冷却ローラ52の支持構造が示されている。
図3では、左側から見た冷却ローラ52の支持構造が示されている。
【0040】
〈複数の冷却ローラ52〉
複数の冷却ローラ52(第1冷却ローラ52a,第2冷却ローラ52b)は、
図2および
図3に示されているように、それぞれローラ軸52a1,52b1と、ローラ本体52a2,52b2とを備えている。ローラ軸52a1,52b1は、略円柱軸状の部材である。ローラ軸52a1,52b1は、冷却ローラ52の回転軸となる部材である。冷却ローラ52のローラ軸52a1,52b1は、一対の支持板53,54が対向する方向(左右方向)に延びている。このため、複数の冷却ローラ52は、それぞれ軸方向が揃えられている。ローラ軸52a1,52b1は、軸受52cを介して一対の支持板53,54に支持されている。
【0041】
ローラ本体52a2,52b2は、ローラ軸52a1,52b1に取り付けられている。ローラ本体52a2,52b2は、ローラ軸52a1,52b1よりも径が大きい略円筒状の部材である。ローラ本体52a2,52b2は、被処理物Aが接する部位である。ローラ本体52a2,52b2の内部には、冷媒が通る経路が設けられている。冷媒が通る経路は、ローラ軸52a1,52b1からローラ本体52a2,52b2に繋がっている。ローラ本体52a2,52b2に冷媒が供給されることによって、ローラ本体52a2,52b2は、冷却される。被処理物Aは、搬送時に冷却されたローラ本体52a2,52b2に接することによって冷却される。
【0042】
複数の冷却ローラ52は、高さ方向に沿って順に位置をずらして千鳥配置されている。ここでは、複数の冷却ローラ52のうち、第1冷却ローラ52aは、支持板53,54の第1側(前方)に配置されている。複数の冷却ローラ52のうち、第2冷却ローラ52bは、支持板53,54の第2側(後方)に配置されている。第1冷却ローラ52aと第2冷却ローラ52bは、高さ方向に沿って交互に並べられている。
【0043】
被処理物Aの搬送経路は、搬入部50b(
図1参照)から搬入され、複数の冷却ローラ52に順に掛け廻された後で、搬出部50c(
図1参照)から搬出されるように設定されている。被処理物Aの搬送経路は、複数の冷却ローラ52のうち、第1側にずらされた冷却ローラ(第1冷却ローラ52a)に第1面A3が接し、第2側にずらされた冷却ローラ(第2冷却ローラ52b)に第2面A4が接するように掛け廻されている。被処理物Aは、第1冷却ローラ52aおよび第2冷却ローラ52bに交互に掛け廻されている。これによって、被処理物Aと冷却ローラ52が接する長さが長くなり、被処理物Aが効率的に冷却されうる。複数の冷却ローラ52は、一対の支持板53,54に支持されている。
【0044】
〈一対の支持板53,54〉
一対の支持板53,54は、互いに対向している。一対の支持板53,54は、外壁51(
図1参照)の外部から隔離された処理空間50a内に設けられている。一対の支持板53,54は、冷却ローラ52の軸方向(左右方向)において対向している。処理空間50aにおいて、支持板53は右側に設けられており、支持板54は左側に設けられている。一対の支持板53,54は、千鳥配置された複数の冷却ローラ52が配置された空間を挟んでいる。この実施形態では、一対の支持板53,54は、ローラ本体52a2,52b2が配置された空間を挟んでいる。一対の支持板53,54は、複数の冷却ローラ52のローラ軸52a1,52b1をそれぞれ支持する軸受52cを備えている。
【0045】
一対の支持板53,54は、高さ方向に沿って延びている。一対の支持板53,54は、高さ方向において、複数の冷却ローラ52のうち最も高い所に配置されている冷却ローラ52のローラ軸52b1よりも高い位置まで延びている。一対の支持板53,54の幅(前後方向における寸法)は、軸方向に沿って見たときに、複数のローラ本体52a2,b2の側面が一対の支持板53,54から露出するように設定されている。この実施形態では、一対の支持板53,54の幅は、第1冷却ローラ52aのローラ軸52a1が高さ方向に並ぶ位置と、第2冷却ローラ52bのローラ軸52b1が高さ方向に並ぶ位置との間隔よりも狭い。
【0046】
なお、支持板53,54の材質は、特に限定されない。支持板53,54としては、例えば、ステンレス製の板が用いられうる。支持板53,54の厚みおよび材質は、複数の冷却ローラ52の重量、搬送時に被処理物Aにかかるテンション等に応じて設定されているとよい。
【0047】
〈支持板53〉
支持板53は、冷却ローラ52の右側の端部を支持している。
図2に示されているように、支持板53には、貫通孔53cが形成されている。貫通孔53cの形状は、略円形状である。貫通孔53cの形状は特に限定されず、多角形状であってもよく、楕円形状であってもよい。支持板53の強度の観点から、貫通孔53cは、略円形状であることが好ましい。貫通孔53cは、被処理物Aの処理前後、被処理物Aを冷却ローラ52に掛ける作業(フィード作業)の際、作業者が手や工具を通して作業するための作業用の貫通孔である。貫通孔53cの寸法は、支持板53の強度との兼ね合いで設定されてもよい。貫通孔53cは、搬送時に被処理物Aによってかかるテンションに支持板53が耐えられるよう、大きすぎない寸法に設定されうる。特に限定されないが、貫通孔53cの寸法は、10cm以上30cm以下程度でありうる。
【0048】
貫通孔53cは、第1冷却ローラ52aの数および第2冷却ローラ52bの数と同数形成されている。貫通孔53cは、それぞれ支持板53の幅方向(前後方向)において、支持板53の略中央部に形成されている。貫通孔53cは、わずかに第1側の側面53a寄りに形成されている。貫通孔53cは、一対の支持板53,54(
図2および
図3参照)が対向する方向において、被処理物Aの搬送経路と重なる位置に形成されている。ここでは、貫通孔53cは、第1冷却ローラ52aから第2冷却ローラ52bに掛けられる被処理物Aと重なる位置に設けられている。第1冷却ローラ52aから第2冷却ローラ52bに掛けられる被処理物Aは、貫通孔53cの下部と重なっている。
【0049】
支持板53は、
図2に示されているように、支持部56a,56b(第1支持部56aおよび第2支持部56b)を備えている。支持部56a,56bは、冷却ローラ52を支持する部材である。支持部56a,56bには、軸受52cが設けられている。第1支持部56aは、第1側の側面53aに設けられている。第1支持部56aは、第1冷却ローラ52aを支持している。第2支持部56bは、第2側の側面53bに設けられている。第2支持部56bは、第2冷却ローラ52bを支持している。第1側の側面53aは、前方を向けられている。第2側の側面53bは、後方を向けられている。第1側の側面53aおよび第2側の側面53bは、平坦面であり、厚み方向(対向方向)よりも高さ方向が長い略矩形状である。
【0050】
第1支持部56aおよび第2支持部56bは、支持板53のそれぞれ第1側の側面53aおよび第2側の側面53bから突出している。このため、軸受52cは、支持板53よりも前方および後方において冷却ローラ52を支持している。第1支持部56aは、第1側の側面53aよりも前方に向かって突出している。第2支持部56bは、第2側の側面53bよりも後方に向かって突出している。
【0051】
第1支持部56aおよび第2支持部56bは、支持板53と一体的に構成されていてもよい。第1支持部56aおよび第2支持部56bは、支持板53とは異なる部材であり、支持板53に取り付けられていてもよい。この実施形態では、第1支持部56aおよび第2支持部56bは、支持板53とは別体であり、支持板53に取り付けられている。第1支持部56aは、支持板53の第1側の側面53aに取り付けられている。第2支持部56bは、支持板53の第2側の側面53bに取り付けられている。以下、支持板53に対する第1支持部56aの取り付け構造について説明する。支持板53に対する第2支持部56bの取り付け構造は、第1支持部56aの取り付け構造と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0052】
図4は、第1支持部56aを示す模式図である。
図4では、支持板53と、第1冷却ローラ52aを支持する支持部56aとの取り付け構造が示されている。第1支持部56aは、支持板53と略同一の厚みの板状の部材である。
【0053】
図4に示されているように、支持板53には、第2貫通孔53dが形成されている。第2貫通孔53dは、支持板53の厚み方向を貫通している。第2貫通孔53dは、貫通孔53cよりも径が小さい。第2貫通孔53dは、第1支持部56aが設けられている位置に近接して設けられている。第2貫通孔53dは、第1側の側面53aに近接して設けられている。第2貫通孔53dは、1つの第1支持部56aに対して上下に2つ設けられている。上方の第2貫通孔53dは、第1支持部56aの上部と対応する高さに設けられている。下方の第2貫通孔53dは、第1支持部56aの下部と対応する高さに設けられている。
【0054】
第2貫通孔53dは、角部が面取りされた略矩形状である。第2貫通孔53dの内周面のうち第1支持部56aに近い面53d1から、支持板53の第1側の側面53aに向かって、第3貫通孔53d2が形成されている。支持部56aには、取付孔56a1が形成されている。2つの取付孔56a1は、上方および下方の第3貫通孔53d2と対応する位置に形成されている。
【0055】
第1支持部56aは、取付部材53d3によって支持板53に取り付けられている。取付部材53d3は、例えば、ボルト等が用いられうる。取付部材53d3は、第3貫通孔53d2に挿通されている。取付部材53d3は、第2貫通孔53dの内周面から、第1側の側面53aに向かって貫通し、取付孔56a1に取り付けられている。取付孔56a1は、例えば、取付部材53d3が嵌まるボルト穴でありうる。第1支持部56aは、支持板53に対して上部と下部の2箇所において取り付けられている。これによって、第1支持部56aが支持板53に安定的に取り付けられうる。
【0056】
第1支持部56aと支持板53は、補強板53eによって補強されていてもよい。補強板53eは、第1支持部56aと支持板53に跨って取り付けられた略矩形状のステンレス製の板である。補強板53eの材質、形状等は特に限定されない。補強板53eは、第1支持部56aと支持板53の外側の表面に取り付けられている。補強板53eは、第1支持部56aの上部および下部と、支持板53を繋いでいる。補強板53eが設けられていることによって、第1支持部56aが支持板53に安定的に取り付けられうる。また、補強板53eが設けられていることによって、被処理物Aの処理時等に冷却ローラ52の軸方向にかかりうる荷重に耐えやすくなる。
【0057】
上述した実施形態では、冷却装置50は、搬入部50b(
図1参照)と、搬出部50c(
図1参照)と、複数の冷却ローラ52と、一対の支持板53,54とを備えている。搬入部50bは、被処理物Aを搬入する。搬出部50cは、被処理物Aを搬出する。
図2および
図3に示されているように、一対の支持板53,54は、複数の冷却ローラ52を支持している。複数の冷却ローラ52は、それぞれ軸方向を揃えて高さ方向に沿って順に位置をずらして千鳥配置されている。一対の支持板53,54は、千鳥配置された複数の冷却ローラ52が配置された空間を挟むように対向している。一対の支持板53,54は、複数の冷却ローラ52のローラ軸52a1,52b1をそれぞれ支持する軸受52cを備えている。被処理物Aの搬送経路は、搬入部50bから搬入され、複数の冷却ローラ52に高さ方向に沿って順に掛け廻された後で、搬出部50cから搬出されるように設定されている。被処理物Aの搬送経路は、複数の冷却ローラ52のうち、第1側にずらされた冷却ローラ52aに被処理物Aの第1面A3が接し、第2側にずらされた冷却ローラ52bに被処理物Aの第2面A4が接するように設定されている。
【0058】
冷却装置50では、被処理物Aの搬送経路は、高さ方向に沿って千鳥配置された冷却ローラ52に掛け廻される経路に設定されている。被処理物Aは、千鳥配置された複数の冷却ローラ52に対して、高さ方向に沿って順に掛け廻されている。被処理物Aの処理前には、被処理物Aを複数の冷却ローラ52に順に掛ける必要がある。冷却ローラ52は、一対の支持板53,54に挟まれた空間に配置されている。このため、被処理物Aを冷却ローラ52に順に掛ける際、一対の支持板53,54の外側(前方および後方)から交互に前方および後方に被処理物Aを渡しながら、被処理物Aを複数の冷却ローラ52に掛けることができる。
【0059】
上述した実施形態では、
図2に示されているように、一対の支持板53,54のうち支持板53には、貫通孔53cが形成されている。これによって、作業者は、貫通孔53cに手や工具を通して被処理物Aを複数の冷却ローラ52に掛ける作業することができる。被処理物Aを冷却ローラ52間で渡しやすくなり、被処理物Aを冷却ローラ52に掛ける作業の作業性が向上する。また、支持板53が軽量化され、装置全体の重量が軽量化されうる。
【0060】
貫通孔53cは、一対の支持板53,54が対向する方向において、被処理物Aの搬送経路と重なる位置に形成されている。これによって、貫通孔53cから被処理物Aに対してアクセスしやすくなる。これによって、被処理物Aを複数の冷却ローラ52に掛ける作業の作業性が向上しうる。
【0061】
上述した実施形態では、貫通孔53cは、支持板53の略中央部に設けられている。これによって、被処理物Aを前方の冷却ローラ52(この実施形態では、第1冷却ローラ52a)から後方の冷却ローラ52(この実施形態では、第2冷却ローラ52)に渡す場合、および、後方の冷却ローラ52から前方の冷却ローラ52に渡す場合のいずれにおいても、被処理物Aを渡す作業の作業性が向上しうる。
【0062】
なお、貫通孔53cは、一対の支持板53,54のうち、一方の支持板(この実施形態では、右側の支持板53)に形成されているが、かかる形態に限定されない。他方の支持板54にも貫通孔が形成されていてもよい。
【0063】
上述した実施形態では、一対の支持板53,54は、第1側の側面53a,54aおよび第2側の側面53b,54bに、複数の冷却ローラ52を支持する支持部56a,56bを備えている。側面53a,53bに支持部56a,56bが設けられていることによって、冷却ローラ52は、支持板53の側面53a,53bから出やすくなる。これによって、被処理物Aを複数の冷却ローラ52に掛ける作業の作業性が向上しうる。
【0064】
上述した実施形態では、支持部56a,56bは、一対の支持板53,54の第1側の側面53a,54aおよび第2側の側面53b,54bからそれぞれ突出している。これによって、冷却ローラ52の軸方向において、冷却ローラ52は、支持板53と重なる領域が小さくなる。その結果、被処理物Aを複数の冷却ローラ52に掛ける作業の作業性が向上しうる。
【0065】
上述した実施形態では、支持板53には、支持部56a,56bが設けられている位置に近接して第2貫通孔53dが形成されている。支持部56a,56bは、第2貫通孔53dの内周面から、第1側の側面53aおよび第2側の側面53bのうち近い側面に向かって貫通する取付部材53d3によって支持板53に取り付けられている。このため、支持部56a,56bおよび冷却ローラ52の着脱の際、支持板53の外側(ここでは、右側)から作業しやすい。その結果、冷却ローラ52の交換、点検等のメンテナンス性が向上しうる。
【0066】
この実施形態では、一対の支持板53,54のうち、支持板53には、貫通孔53cが形成されている。支持板54には、
図3に示されているように、冷却ローラ52に冷媒を供給する冷媒配管91が設けられている。
【0067】
〈支持板54〉
支持板54は、冷却ローラ52の左側の端部を支持している。支持板54は、支持板53と同様、第1側の側面54aおよび第2側の側面54bに冷却ローラ52を支持する支持部56a,56b(第1支持部56aおよび第2支持部56b)を備えている。支持部56a,56bの構成は、上述した支持板53と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
詳細な図示は省略するが、冷媒配管91は、ローラ軸52a1,52b1の端部に繋がっている。冷媒配管91は、冷媒供給装置90に接続されている。冷媒供給装置90からは、冷媒配管91に向かって冷媒が供給される。冷媒は、ローラ軸52a1,52b1からローラ本体52a2,52b2に供給される。冷却ローラ52には、それぞれ冷媒配管91が接続されている。
【0069】
この実施形態では、冷却ローラ52は、いわゆる二重管構造を有している。二重管構造は、ローラ軸52a1,52b1の端部に形成されている。冷却ローラ52では、ローラ軸52a1,52b1の左側の端部から冷媒が流入および流出する。ローラ軸52a1,52b1は、内管および外管を有している。冷媒は、ローラ軸52a1,52b1の左側の端部に接続された冷媒配管91から流入し、ローラ軸52a1,52b1の外管と内管の間を通り、ローラ本体52a2,52b2を通り、ローラ軸52a1,52b1の内管を通り、冷媒配管91から流出する。冷媒配管91は、冷却ローラ52に冷媒を流入させる流入配管と、冷却ローラ52に冷媒を流入させる流出配管とを備えていてもよい。なお、冷却ローラ52の構成は、上述した形態に限定されない。例えば、冷媒の流路は、複数の冷却ローラ52のうち、複数の冷却ローラ52の間で冷媒が循環するように設定されていてもよい。
【0070】
一対の支持板53,54のうち、一方の支持板53には、貫通孔53cが形成されている(
図3参照)。他方の支持板54には、冷却ローラ52に冷媒を供給する冷媒配管91が設けられている。貫通孔53cが、冷媒配管91とは反対側の支持板53に設けられていることによって、被処理物Aを冷却ローラ52に掛ける作業の際、冷媒配管91によって作業が妨げられない。これによって、被処理物Aを冷却ローラ52に掛ける作業の作業性が向上しうる。
【0071】
図2および
図3に示されているように、冷却部50において、被処理物Aの搬送経路を設定するガイドローラ55a~55gは、上述した一対の支持板53,54、一対の支持板57a,57bおよび一対の支持板58a,58bに支持されている。一対の支持板57a,57bは、冷却部50の搬入部50b側に設けられている。一対の支持板57a,57bは、搬入部50bおよび搬出部50cと略同一の高さである。一対の支持板58a,58bは、冷却部50の搬出部50c側に対設けられている。一対の支持板58a,58bは、一対の支持板53,54と略同一の高さである。支持板57a,58aは、それぞれ支持板53と略同一平面上に設けられている。支持板57b,58bは、それぞれ支持板53と略同一平面上に設けられている。
【0072】
ガイドローラ55aは、一対の支持板57a,57bに支持されている。ガイドローラ55bは、支持板53および支持板57aを繋ぐ接続板57a1と、支持板54および支持板57bを繋ぐ接続板57b1とに支持されている。ガイドローラ55c,55dは、一対の支持板53,54に支持されている。ガイドローラ55e~55gは、一対の支持板58a,58bに支持されている。右側の支持板53,57a,58aには、ガイドローラ55の水平性を調整するための調整部材53f,57c,58cが設けられている。なお、ガイドローラ55の支持形態は、かかる形態に限定されない。
【0073】
隣り合う支持板(ここでは、支持板53と支持板57a、支持板53と支持板58a、支持板54と支持板57b、支持板54と支持板58b)は、着脱可能なフレーム59によって繋がれていてもよい。隣り合う支持板がフレーム59によって繋がれていることによって、支持板の強度が向上しうる。冷却ローラ52を交換する場合等、フレーム59は、取り外されうる。支持板54と支持板57aは、着脱可能なフレーム59が接続されていてもよい。
【0074】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。このように、請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0075】
なお、本明細書は以下の項1~9を含んでいる。以下の項1~9は、上記した実施形態には限定されない。
【0076】
項1:
帯状の被処理物を搬入する搬入部と、
前記被処理物を搬出する搬出部と、
複数の冷却ローラと、
前記複数の冷却ローラを支持する一対の支持板と
を備え、
前記複数の冷却ローラは、それぞれ軸方向を揃えて高さ方向に沿って順に位置をずらして千鳥配置され、
前記一対の支持板は、千鳥配置された前記複数の冷却ローラが配置された空間を挟むように対向し、かつ、前記複数の冷却ローラのローラ軸をそれぞれ支持する軸受を備えており、
前記搬入部から搬入され、前記複数の冷却ローラのうち、第1側にずらされた冷却ローラに前記被処理物の第1面が接し、第2側にずらされた冷却ローラに前記被処理物の第2面が接するように、高さ方向に沿って順に掛け廻された後で、前記搬出部から搬出されるように、前記被処理物の搬送経路が設定されている、
冷却装置。
【0077】
項2:
前記一対の支持板のうち少なくとも一方の支持板には、貫通孔が形成されている、項1に記載された冷却装置。
【0078】
項3:
前記貫通孔は、前記一対の支持板が対向する方向において、前記被処理物の搬送経路と重なる位置に形成されている、項2に記載された冷却装置。
【0079】
項4:
前記貫通孔は、前記支持板の中央部に設けられている、項2または3に記載された冷却装置。
【0080】
項5:
前記一対の支持板のうち、一方の支持板には、前記貫通孔が形成されており、
他方の支持板には、前記冷却ローラに冷媒を供給する冷媒配管が設けられている、項2~4のいずれか一項に記載された冷却装置。
【0081】
項6:
前記一対の支持板は、前記第1側の側面および前記第2側の側面に、前記複数の冷却ローラを支持する支持部を備える、項1~5のいずれか一項に記載された冷却装置。
【0082】
項7:
前記支持部は、前記一対の支持板の前記第1側の側面および前記第2側の側面からそれぞれ突出している、項6に記載された冷却装置。
【0083】
項8:
前記支持板には、前記支持部が設けられている位置に近接して第2貫通孔が形成されており、
前記支持部は、前記第2貫通孔の内周面から、前記第1側の側面および前記第2側の側面のうち近い側面に向かって貫通する取付部材によって前記支持板に取り付けられている、項6または7に記載された冷却装置。
【0084】
項9:
前記被処理物が加熱処理される加熱処理部と、
加熱処理された前記被処理物を冷却する、項1~8のいずれか一項に記載された冷却装置と
を備えた、熱処理装置。
【符号の説明】
【0085】
10 熱処理装置
20,22 搬送装置
30 巻出部
31,41,51,61 外壁
32 巻出軸
35 ローラ
40 加熱処理部
50 冷却装置(冷却部)
50a 処理空間
50b 搬入部
50c 搬出部
51 外壁
52 冷却ローラ
52a 第1冷却ローラ
52b 第2冷却ローラ
52a1,52b1 ローラ軸
52a2,52b2 ローラ本体
52c 軸受
53,54 支持板
53a,53b,54a,54b 側面
53c 貫通孔
53d 第2貫通孔
53d1 面
53d2 第3貫通孔
53d3 取付部材
53e 補強板
53f,57c,58c 調整部材
55 ガイドローラ
56a 第1支持部(支持部)
56a1 取付孔
56b 第2支持部(支持部)
57a,57b,58a,58b 支持板
57a1,57b1 接続板
59 フレーム
60 巻取部
62 巻取軸
65 ローラ
70,72,74 連結部
70a,74a 扉
80 真空ポンプ
81~84 真空バルブ
90 冷媒供給装置
91 冷媒配管
A 被処理物
A1 巻出ロール
A2 巻取ロール
A3 第1面
A4 第2面
【要約】
【課題】帯状の被処理物を掛ける際の作業性の向上。
【解決手段】冷却装置50は、搬入部50bと、搬出部50cと、複数の冷却ローラ52と、一対の支持板53,54とを備えている。一対の支持板53,54は、複数の冷却ローラ52を支持している。一対の支持板53,54は、千鳥配置された複数の冷却ローラ52が配置された空間を挟むように対向している。一対の支持板53,54は、複数の冷却ローラ52のローラ軸52a1,52b1をそれぞれ支持する軸受52cを備えている。被処理物Aの搬送経路は、複数の冷却ローラ52のうち、第1側にずらされた冷却ローラ52aに被処理物Aの第1面A3が接し、第2側にずらされた冷却ローラ52bに被処理物Aの第2面A4が接するように設定されている。
【選択図】
図2