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特許7573816ポリエステル容器及びポリエステルプリフォーム
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  • 特許-ポリエステル容器及びポリエステルプリフォーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ポリエステル容器及びポリエステルプリフォーム
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20241021BHJP
   B29C 49/02 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B65D1/02 100
B65D1/02 ZAB
B29C49/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021061615
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157415
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】江口 誠
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198422(JP,A)
【文献】特開2001-261858(JP,A)
【文献】特開2002-187965(JP,A)
【文献】特開2018-043773(JP,A)
【文献】特開2020-152455(JP,A)
【文献】特開2017-202853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B29C 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカニカルリサイクルポリエステルと、ブルーイング剤とを含むポリエステル容器であって、
前記メカニカルリサイクルポリエステルの含有量に対する前記ブルーイング剤の含有量が、0.0001質量%以上0.00125質量%以下であり、
前記ブルーイング剤が、15mbarにおいて、230℃以下の気化温度を有する染料ある、ポリエステル容器。
【請求項2】
前記ブルーイング剤が、アントラキノン系ブルーイング剤である、請求項1に記載のポリエステル容器。
【請求項3】
前記ポリエステル容器を構成するポリエステル全体に対する前記メカニカルリサイクルポリエステルの含有量が、95質量%以上である、請求項1又は2に記載のポリエステル容器。
【請求項4】
口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを備え、
前記胴部の厚さが、0.05mm以上0.54mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエステル容器。
【請求項5】
内容物が無色透明の液体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエステル容器。
【請求項6】
前記メカニカルリサイクルポリエステルの、L表色系におけるb値が、+3.0以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエステル容器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエステル容器の製造に使用される、ポリエステルプリフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル容器及びポリエステルプリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減のためプラスチック製品のリサイクルが試みられており、例えば、使用済みのPETボトル等のポリエステル容器がリサイクルされている。ポリエステル容器をリサイクルして得られたリサイクルポリエステルは、種々の製品に利用されている。このようなリサイクルポリエステルとしては、ケミカルリサイクルポリエステル及びメカニカルリサイクルポリエステルが知られている。
【0003】
ケミカルリサイクルポリエステルとは、使用済みのポリエステル容器を化学的に分解してモノマー単位まで戻し、これを精製して再重合させることにより得られたポリエステルである。そのため、ケミカルリサイクルポリエステルは、バージンポリエステルと遜色ない物性及び特性を有する。しかしながら、ケミカルリサイクルポリエステルは、リサイクルコストが高いという問題がある。ここで、バージンポリエステルとは、石油等を原料とするジカルボン酸及びジオールから従来の方法により製造したポリエステルである。
【0004】
一方、メカニカルリサイクルポリエステルとは、使用済みのポリエステル容器を粉砕及び洗浄して汚染物質及び異物を除去し、フレークを得て、フレークを更に高温及び減圧下で一定時間処理して樹脂内部の汚染物質を除去することにより得られたポリエステルであるか、或いは、洗浄後のフレークをペレット化した後に、ペレットを更に高温及び減圧下で一定時間処理して樹脂内部の汚染物質を除去することにより得られたポリエステルである。メカニカルリサイクルは、化学的な分解を経ることなくリサイクルポリエステルを得ることができるため、ケミカルリサイクルよりもリサイクルコストが安価である。従って、コストの観点からは、リサイクルポリエステルとしてはメカニカルリサイクルポリエステルを使用することが望ましい。
【0005】
メカニカルリサイクルポリエステルからなるフレーク及びペレットをポリエステル容器の製造に使用すると、フレーク及びペレット中に残存した僅かな微量不純物に起因して、成形後のポリエステル容器が黄変することがある。
上記のような、黄変による樹脂の黄色味を低減して透明化するために、特許文献1では、リサイクルポリエステルを含む樹脂組成物から得られる成形品に、光増白剤及び青色顔料等の顔料を使用することが提案されている。このような、樹脂の黄色味を低減して透明化する蛍光増白剤及び青色顔料等の添加剤は、一般的にブルーイング剤と称されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-359914号公報
【文献】特開2001-166101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、メカニカルリサイクルポリエステルからなるフレーク及びペレットは、種々の容器に使用されるため、このフレーク及びペレットには、メカニカルリサイクル前のポリエステル容器に使用した添加剤は残存していないことが望ましい。このような観点から、ブルーイング剤を含むポリエステル容器をメカニカルリサイクルした場合には、得られるメカニカルリサイクルポリエステルからなるフレーク及びペレットからは、ブルーイング剤が除去されていることが望ましい。
【0008】
今般、本発明者らは、ブルーイング剤として顔料を含むポリエステル容器をメカニカルリサイクルした場合に、ブルーイング剤を除去できていないことに気が付いた。
【0009】
従って、本発明の目的は、黄色味が低減されたポリエステル容器であると共に、メカニカルリサイクルしたときにブルーイング剤を容易に除去できるポリエステル容器を提供することである。
本発明の別の目的は、このポリエステル容器の製造に使用される、ポリエステルプリフォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ブルーイング剤として、特定の染料を使用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
従って、本発明は、メカニカルリサイクルポリエステルと、ブルーイング剤とを含むポリエステル容器であって、
前記メカニカルリサイクルポリエステルの含有量に対する前記ブルーイング剤の含有量が、0.0001質量%以上0.00125質量%以下であり、
前記ブルーイング剤が、15mbarにおいて、230℃以下の気化温度を有する染料ある、ポリエステル容器である。
【0012】
本発明によるポリエステル容器において、前記ブルーイング剤は、アントラキノン系ブルーイング剤でもよい。
【0013】
本発明によるポリエステル容器において、前記ポリエステル容器を構成するポリエステル全体に対する前記メカニカルリサイクルポリエステルの含有量は、95質量%以上でもよい。
【0014】
本発明によるポリエステル容器は、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを備え、
前記胴部の厚さが、0.05mm以上0.54mm以下でもよい。
【0015】
本発明によるポリエステル容器において、内容物は無色透明の液体でもよい。
【0016】
本発明によるポリエステル容器において、前記メカニカルリサイクルポリエステルのL表色系におけるb値は、+3.0以上でもよい。
【0017】
本発明は、前記ポリエステル容器の製造に使用される、ポリエステルプリフォームである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、黄色味が低減されたポリエステル容器であると共に、メカニカルリサイクルの際にブルーイング剤を容易に除去できるポリエステル容器を提供できる。
本発明によれば、このポリエステル容器の製造に使用される、ポリエステルプリフォームを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明によるポリエステル容器の一実施形態を示す概略半断面図である。
図2】本発明によるポリエステルプリフォームの一実施形態を示す概略半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[ポリエステル容器]
本発明によるポリエステル容器は、メカニカルリサイクルポリエステルと、ブルーイング剤を含む。
本明細書において、「ポリエステル容器」とは、ポリエステルを主成分として含む容器である。本明細書において、「主成分」とは、全体の50質量%を超える成分を意味する。ポリエステル容器におけるポリエステルの含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは99質量%以上である。
【0021】
本明細書において、「容器」とは、物品を収容する成形体を意味する。容器としては、例えば、圧縮成形体、射出成形体、ブロー成形体及び熱成形体等の成形体が挙げられる。具体的な容器としては、例えば、ボトル、バイアル瓶、カップ、トレー及びパック等が挙げられる。
【0022】
本明細書において、「ポリエステル」とは、エステル結合によって高分子化されたポリマーを意味する。このようなポリエステルは、通常、ジカルボン酸化合物とジオール化合物とを重縮合することに得られる。
ジカルボン酸化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸及びエチルマロン酸、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸及びこれらのエステル誘導体等が挙げられる。
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオール、パラキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、スチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)等が挙げられる。
本発明によるポリエステル容器において、ポリエステルは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、又はポリエチレンテレフタレートの原料モノマーと、共重合モノマーとが重合された改質ポリエチレンテレフタレートであり、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートである。
【0023】
本発明の特性を損なわない範囲において、ポリエステルは、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物以外のモノマーを含んでいてもよいが、その含有量は、全構成単位に対して、好ましくは10モル%以下であり、より好ましくは5モル%以下であり、更に好ましくは3モル%以下である。
【0024】
以下、本発明によるポリエステル容器に含まれるメカニカルリサイクルポリエステル及びブルーング剤について説明する。
【0025】
<メカニカルリサイクルポリエステル>
本明細書において、「メカニカルリサイクルポリエステル」とは、使用済みのポリエステル容器を粉砕及び洗浄して汚染物質及び異物を除去し、フレークを得て、フレークを更に高温及び減圧下で一定時間処理して樹脂内部の汚染物質を除去し、ペレット化することにより得られたポリエステルであるか、或いは、洗浄後のフレークをペレット化した後に、ペレットを更に高温及び減圧下で一定時間処理して樹脂内部の汚染物質を除去することにより得られたポリエステルである。
本発明によるポリエステル容器に含まれるメカニカルリサイクルポリエステルは、好ましくはメカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレートである。
【0026】
上記メカニカルリサイクルポリエステルからなるフレーク及びペレットには、僅かな微量不純物が残存している。このような微量不純物は、高温及び減圧下で一定時間処理しても完全に除去することができない不可避不純物である。ポリエステル容器の製造では、フレーク及びペレットを溶融するが、フレーク及びペレットに微量不純物が存在すると、溶融時の熱によってポリエステルが黄変する。そのため、本発明によるポリエステル容器に含まれるメカニカルリサイクルポリエステルは、黄色味を有する。
本発明によるポリエステル容器は、後述するブルーイング剤を特定の範囲で含有することにより、ポリエステル容器の黄色味を低減できる。このような黄色味が低減されたポリエステル容器は、内容物が無色透明の液体である場合に特に適している。無色透明の液体としては、特に限定されず、例えば、飲料水等が挙げられる。
【0027】
本発明によるポリエステル容器において、メカニカルリサイクルポリエステルのL表色系におけるb値は、+3.0以上でもよく、+4.0以上でもよく、+4.5以上でもよい。一方で、メカニカルリサイクルポリエステルのL表色系におけるb値は、+20.0以下でもよく、+10.0以下でもよく、+7.0以下でもよい。
本明細書において、メカニカルリサイクルポリエステルのL表色系におけるb値は、JIS Z8722:2009に準拠して測定される。
具体的には、任意の形状を有するメカニカルリサイクルポリエステルを、凍結粉砕して粉末を準備し、この粉末を、分光色彩計を使用して反射光により測定される。測定条件は、SCE(正反射光除去)、10°視野、D65光源とする。分光色彩計としては、例えば、(株)村上色彩技術研究所製のCMS-35SPを使用できる。
【0028】
本発明によるポリエステル容器において、ポリエステル容器を構成するポリエステル全体に対するメカニカルリサイクルポリエステルの含有量は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは97質量%以上であり、更に好ましくは99質量%以上であり、特に好ましくは99.9質量%以上である。これにより、環境負荷がより低減されたポリエステル容器とすることができる。
なお、本発明によるポリエステル容器は、メカニカルリサイクルポリエステルの他に、バージンポリエステル及びケミカルリサイクルポリエステル等のポリエステルを含んでもよい。
【0029】
<ブルーイング剤>
本明細書において、「ブルーイング剤」とは、可視光領域のうち、例えば、橙色から黄色等の波長領域の光を吸収し、色相を調整する添加剤である。
本明細書において、「可視光領域」とは、380nm以上780nm以下の領域を意味する。
【0030】
本発明によるポリエステル容器に含まれるブルーイング剤は、15mbarにおいて、230℃以下の気化温度を有する染料である。このような染料をブルーイング剤として使用することにより、ポリエステル容器をメカニカルリサイクルしたときにブルーイング剤を容易に除去できる。なぜなら、メカニカルリサイクルにおいて、フレーク又はペレットを高温及び減圧下で一定時間処理する際に、樹脂内部の汚染物質と共にブルーイング剤を容易に除去できるためである。
フレーク又はペレットからブルーイング剤をより容易に除去できるという観点から、ブルーイング剤として使用される染料の気化温度は、15mbarにおいて、好ましくは225℃以下であり、より好ましくは220℃以下である。
一方、ブルーイング剤として使用される染料の気化温度は、1013.25mbar(大気圧)において、好ましくは300℃以上であり、より好ましくは350℃以上である。このような気化温度以上の染料を使用することにより、ポリエステル容器の製造時に、大気中へ放出される染料の量を低減でき、成形後のポリエステル容器におけるブルーイング剤の含有量を容易に調整できる。
【0031】
本発明によるポリエステル容器において、メカニカルリサイクルポリエステルに対するブルーイング剤の含有量は、0.0001質量%以上0.00125質量%以下である。ブルーイング剤の含有量がこのような範囲であれば、ポリエステル容器の黄色味を低減して、ポリエステル容器を透明化できる。また、ブルーイング剤の含有量をこのような範囲にすることで、本発明によるポリエステル容器をメカニカルリサイクルしたときに、容易にブルーイング剤を除去できる。
ブルーイング剤の含有量は、好ましくは0.00025質量%以上であり、より好ましくは0.0004質量%以上である。一方、ブルーイング剤の含有量は、好ましくは0.001質量%以下であり、より好ましくは0.0008質量%以下である。
【0032】
本発明によるポリエステル容器に含まれるブルーイング剤は、好ましくは、可視光領域のうち、500nm以上650nm以下の波長領域に最大吸収ピークを有する。このような波長領域に最大吸収ピークを有するブルーイング剤を使用することにより、ポリエステル容器の黄色味を効率良く低減できる。ブルーイング剤は、より好ましくは、可視光領域のうち、550nm以上600nm以下の波長領域に最大吸収ピークを有する。
本明細書において、該最大吸収ピークは、例えば、(株)島津製作所製のSPD-M20A(フォトダイオードアレイ検出器)により測定できる。ブルーイング剤を溶解する溶剤としては、例えば、アセトニトリルを使用できる。
【0033】
上記したようなブルーイング剤としては、例えば、アントラキノン系ブルーイング剤及びインジゴ系ブルーイング剤等の染料が挙げられる。
【0034】
アントラキノン系ブルーイング剤は、式(1):
【化1】
で表されるアントラキノン環を含有するブルーイング剤である。アントラキノン系ブルー
イング剤として、好ましくは、式(2):
【化2】
[式(2)中、XはOH、NHR又はNRを表し、XはNHR又はNRを表し、R、R、R及びRは、互いに独立して、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分枝状アルキル基、又は、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分枝状アルキル基で置換されたフェニル基を表す。]
で表される一般式を有する化合物が挙げられる。式(2)中のX及びXは、互いに同
一でも、異なってもよい。式(2)で表される化合物は、好ましくは、式中のX及びXのうち少なくとも1つが、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分枝状アルキル基で置換されたフェニル基を有し、より好ましくは、式中のX又はXが炭素数1以上6以下の直鎖状又は分枝状アルキル基で置換されたフェニル基を有する。
【0035】
アントラキノン系ブルーイング剤として、より好ましくは、式(3)~式(5)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
【0036】
インジゴ系ブルーイング剤は、インドキシル又はチオインドキシルを含有するブルーイング剤である。
【0037】
本発明によるポリエステル容器に含まれるブルーイング剤は、耐熱性及び溶解性(分散性)の観点から、好ましくはアントラキノン系ブルーイング剤であり、より好ましくは、式(1)で表される構造を有する少なくとも1種のブルーイング剤であり、更に好ましくは、式(2)で表される構造を有する少なくとも1種のブルーイング剤であり、更により好ましくは、式(3)~式(5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のブルーイング剤であり、特に好ましくは、式(3)で表されるブルーイング剤である。
【0038】
ブルーイング剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、本発明によるポリエステル容器の製造時において、ブルーイング剤は、ポリエステル容器中で良好に分散させるために、油成分と共に使用してもよい。油成分としては、例えば、グリセロールジアセチルモノオレエート等のエステル化合物が挙げられる。
一実施形態において、ブルーイング剤は、ブルーイング剤と、ポリエステルとを含むマスターバッチを使用することにより、ポリエステル容器に加えることができる。マスターバッチは、上記油成分を含んでもよい。
一実施形態において、ブルーイング剤は、メカニカルリサイクルにおいて、フレークをペレット化する工程中にブルーイング剤を加えてもよい。
【0039】
以下、図1を例示して、本発明によるポリエステル容器の構造の一実施形態を説明する。
【0040】
図1は、本発明によるポリエステル容器10の一実施形態を示す模式半断面図である。ポリエステル容器10は、図1に示すように、口部11と、首部12と、肩部13と、胴部14と、底部15とを備える。
【0041】
一実施形態において、口部11は、図1に示すように、キャップが螺着されるネジ部16と、ネジ部16下にカブラ17と、カブラ17下にサポートリング18を備える。
【0042】
一実施形態において、首部12は、図1に示すように、サポートリング18と肩部13との間に位置しており、略均一な径をもつ略円筒形状を有している。また、一実施形態において、肩部13は、首部12側から胴部14側に向けて径が徐々に拡大する円筒形状を有する。
【0043】
一実施形態において、胴部14は、図1に示すように、肩部13と底部15との間に位置している。また、一実施形態において、胴部14は、図1に示すように、胴部14が内側に窪んだパネル部21を備える。このような構成とすることにより、ポリエステル容器内に加熱された内容物を充填する場合や内容物の充填後に加熱するポリエステル容器の場合に、内圧の増減によるポリエステル容器の変形を防止できる。
【0044】
一実施形態において、底部15は、図1に示すように、中央に位置する陥没部19と、陥没部19の周囲に設けられた接地部20とを備え、この接地部20において胴部14と連接している。このような構成とすることにより、ポリエステル容器内に加熱された内容物を充填する場合や内容物の充填後に加熱するポリエステル場合に、内圧の増減によるポリエステル容器の変形を防止できる。
なお、一実施形態において、「底部」とは、ポリエステル容器を自立させた場合の接地部から内側の部分を意味する。
【0045】
本発明によるポリエステル容器は、黄色味が低減されているため、ポリエステル容器の厚さを厚くできる。なぜなら、ポリエステル容器の厚さを厚くしても、ポリエステル容器の外側から内容物を目視した場合に、内容物の色味が変化しにくいためである。従って、本発明によるポリエステル容器は、内容物への色味の影響を抑えつつ、ポリエステル容器の強度を向上できる。ポリエステル容器の胴部における断面の厚さは、好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.1mm以上である。
一方、ポリエステル容器の使用量低減の観点からは、ポリエステル容器の胴部における断面の厚さは、好ましくは0.54mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下である。
なお、ポリエステル容器の胴部における断面の厚さは、厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
【0046】
本発明によるポリエステル容器において、質量に対する容量の比(容量/質量)は、ポリエステル容器の成形性の観点からは、好ましくは5mL/g以上であり、より好ましくは8mL/g以上である。
一方、容量/質量は、ポリエステル容器の強度の観点からは、好ましくは50mL/g以下であり、より好ましくは45mL/g以下である。
【0047】
本発明によるポリエステル容器は、単層構造を有しても、2層以上の多層構造を有してもよい。また、ポリエステル容器が多層構造を有する場合には、各層は、同一の組成でも、異なる組成でもよい。
【0048】
一実施形態において、ポリエステル容器は、その表面に蒸着膜を備えてもよい。これにより、ポリエステル容器のガスバリア性を向上できる。なお、蒸着膜は、ポリエステル容器の内側表面に位置しても、外側表面に位置してもよいが、好ましくは内側表面に位置する。
【0049】
蒸着膜としては、例えば、アルミニウム等の金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の無機酸化物、ヘキサメチルジシロキサン等の有機珪素化合物、DLC(Diamond Like Carbon)膜等の硬質炭素膜から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
なお、DLC膜からなる硬質炭素膜とは、iカーボン膜又は水素化アモルファスカーボン膜(a-C:H)とも呼ばれる硬質炭素膜のことで、SP結合を主体にしたアモルファスな炭素膜のことである。
【0050】
また、蒸着膜の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上150nm以下とすることができる。
【0051】
蒸着膜の形成は、従来公知の方法を用いて行うことができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
なお、蒸着層の厚さは、例えば、ポリエステル容器の胴部において測定することができ、厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
【0052】
[ポリエステルプリフォーム]
本明細書において、「ポリエステルプリフォーム」とは、ポリエステル容器をブロー成形する前の予備成形体である。
本発明によるポリエステルプリフォームは、本発明によるポリエステル容器の製造に使用されるものである。従って、本発明によるポリエステルプリフォームは、メカニカルリサイクルポリエステルと、ブルーイング剤を含む。該ポリエステルプリフォームをこのような構成とすることにより、本発明によるポリエステル容器を製造できる。
なお、本発明によるポリエステルプリフォームに含まれるメカニカルリサイクルポリエステル及びブルーイング剤は、本発明によるポリエステル容器と同様のものを使用できる。
【0053】
以下、図2を参照して、本発明によるポリエステルプリフォームの構造の一実施形態を説明する。
【0054】
図2は、本発明によるポリエステルプリフォーム30の一実施形態を示す模式半断面図である。ポリエステルプリフォーム30は、図2に示すように、口部31と、口部31に連結された胴部32と、胴部32に連結された底部33とを備える。このうち口部31は、ポリエステル容器10の口部11に対応するものであり、口部11と略同一の形状を有している。また、胴部32は、ポリエステル容器10の首部12、肩部13及び胴部14に対応するものであり、略円筒形状を有している。底部33は、ポリエステル容器10の底部15に対応するものであり、略半球形状を有している。
【0055】
口部31は、図示しないキャップが螺着されるポリエステル容器10のネジ部16に対応するネジ部34と、ネジ部34の下方に設けられ、ポリエステル容器10のカブラ17に対応するカブラ35と、カブラ35の下方に設けられ、ポリエステル容器10のサポートリング18に対応するサポートリング36を備える。口部31の形状は、従来公知の形状でもよい。
【0056】
本発明によるポリエステルプリフォームの胴部における断面の厚さは、好ましくは1.3mm以上であり、より好ましくは1.7mm以上である。一方、ポリエステルプリフォームの胴部における断面の厚さは、好ましくは4.7mm以下であり、より好ましくは4.0mm以下である。
ポリエステルプリフォームの胴部における断面の厚さを上記範囲とすることにより、本発明によるポリエステル容器を製造できる。
なお、ポリエステルプリフォームの胴部における断面の厚さは、厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
【実施例
【0057】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
メカニカルリサイクルポリエステルからなるペレットA、及び式(3)の構造を有するアントラキノン系ブルーイング剤を含むポリエチレンテレフタレートマスターバッチからなるペレットBを準備した。なお、該ブルーイング剤の気化温度は、15mbarにおいて、215℃である。
まず、97質量部のペレットAと、3質量部のペレットBとをドライブレンドして混合物を得た。得られた混合物におけるメカニカルリサイクルポリエステルに対するブルーイング剤の含有量は、0.0005質量%である。
次いで、得られた混合物を溶融し、溶融物を射出成形機を用いて射出し、図2に示すポリエステルプリフォームを作製した。ポリエステルプリフォームの胴部の厚さは3.5mmであり、目付量は22gであった。
【0059】
次いで、上記ポリエステルプリフォームを110℃に加熱し、ブロー成形金型内において、二軸延伸ブロー成形を行い、図1に示す内容量が500mLのポリエステル容器を作製した。ポリエステル容器の胴部における断面の厚さは0.32mmであった。
【0060】
[実施例2]
メカニカルリサイクルポリエステルに対するブルーイング剤の含有量が0.00035質量%となるように、ペレットAとペレットBをドライブレンドしたこと以外は、実施例1と同様にして図2に示すポリエステルプリフォームを作製した。ポリエステルプリフォームの胴部の厚さは3.5mmであり、目付量は22gであった。
【0061】
次いで、実施例1と同様にして、上記ポリエステルプリフォームからポリエステル容器を作製した。ポリエステル容器の胴部における断面の厚さは0.32mmであった。
【0062】
[実施例3]
メカニカルリサイクルポリエステルに対するブルーイング剤の含有量が0.0002質量%となるように、ペレットAとペレットBをドライブレンドしたこと以外は、実施例1と同様にして図2に示すポリエステルプリフォームを作製した。ポリエステルプリフォームの胴部の厚さは3.5mmであり、目付量は22gであった。
【0063】
次いで、実施例1と同様にして、上記ポリエステルプリフォームからポリエステル容器を作製した。ポリエステル容器の胴部における断面の厚さは0.32mmであった。
【0064】
[比較例1]
ペレットAのみを使用したこと以外は、実施例1と同様にして図2に示すポリエステルプリフォームを作製した。ポリエステルプリフォームの胴部の厚さは3.5mmであり、目付量は22gであった。
【0065】
次いで、実施例1と同様にして、上記ポリエステルプリフォームからポリエステル容器を作製した。ポリエステル容器の胴部における断面の厚さは0.32mmであった。
【0066】
[比較例2]
ブルーイング剤としてコバルト系顔料(コバルトブルー)を含むポリエチレンテレフタレートマスターバッチからなるペレットCを準備した。
メカニカルリサイクルポリエステルに対するブルーイング剤の含有量が0.0005質量%となるように、ペレットAとペレットCをドライブレンドしたこと以外は、実施例1と同様にして図2に示すポリエステルプリフォームを作製した。ポリエステルプリフォームの胴部の厚さは3.5mmであり、目付量は22gであった。
【0067】
次いで、実施例1と同様にして、上記ポリエステルプリフォームからポリエステル容器を作製した。ポリエステル容器の胴部における断面の厚さは0.32mmであった。
【0068】
<<色彩の測定>>
実施例及び比較例において作製したポリエステル容器の口部のみを細かく切断した試料を、凍結粉砕機(SPEX社製、6870型 Freezer/Mill)を用いて液体窒素下で10分間予備冷却後、液体窒素下で10分間凍結粉砕して粉末を得た。次いで、この粉末を、分光色彩計((株)村上色彩技術研究所製、CMS-35SP)を使用して、反射光でL表色系におけるL値、a値及びb値を測定した。測定条件は、SCE(正反射光除去)、10°視野、D65光源とした。なお、測定は、JIS Z8722:2009に準拠して行った。測定結果を表1に示す。
【0069】
<<ブルーイング剤の含有量測定>>
実施例及び比較例において作製したポリエステル容器を粉砕してフレークを得た。次いで、このフレークを、230℃及び15mbar下において2時間処理した。処理後のフレークに含まれるブルーイング剤の含有量は、実施例はLC-MS(ブルカージャパン(株)製、maxis impact)により測定し、比較例2はICP-AES((株)島津製作所製、ICPE-9820)により測定した。測定結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
本発明によるポリエステル容器は、黄色味が低減されていることがわかる。また、本発明によるポリエステル容器は、メカニカルリサイクルにおいて実施される高温及び減圧下での処理により、ブルーイング剤を容易に除去できたことがわかる。
【符号の説明】
【0072】
10:ポリエステル容器
11:口部
12:首部
13:肩部
14:胴部
15:底部
16:ネジ部
17:カブラ
18:サポートリング
19:陥没部
20:接地部
21:パネル部
30:ポリエステルプリフォーム
31:口部
32:胴部
33:底部
34:ネジ部
35:カブラ
36:サポートリング
図1
図2