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特許7573818冷却器フレームの一体化が向上した電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】冷却器フレームの一体化が向上した電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20241021BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241021BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241021BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021551583
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020054828
(87)【国際公開番号】W WO2020173899
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】19160101.2
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トラウブ,フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】シュダーラー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】モーン,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】グラディンガー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チュンレイ
(72)【発明者】
【氏名】トッレジン,ダニエレ
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-101277(JP,A)
【文献】特開2012-4218(JP,A)
【文献】特開2013-39615(JP,A)
【文献】特開2014-183058(JP,A)
【文献】国際公開第2014/174854(WO,A1)
【文献】特開2015-50465(JP,A)
【文献】特開2016-39224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0235293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/473
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置であって、
第1のパワー半導体モジュール(100)と、
閉じた冷却器のためのフレーム(20)とを備え、
前記第1のパワー半導体モジュール(100)は、
第1のベースプレート(30)を含み、前記第1のベースプレート(30)は、第1の主面(32)と、前記第1の主面(32)の反対側の第2の主面(33)と、前記第1のベースプレート(30)の周縁に沿って延びて前記第1の主面(32)と前記第2の主面(33)とを接続する側面(34)とを有し、前記第1のパワー半導体モジュール(100)はさらに、
前記第1のベースプレート(30)の前記第1の主面(32)上に位置する少なくとも1つの第1のダイ(40)を含み、
前記フレーム(20)は、前記第1のベースプレート(30)の前記第2の主面(33)に装着され、前記第1のベースプレート(30)は、前記第1のベースプレート(30)の前記周縁に沿って前記第2の主面(33)上に第1の段差(35A)を有することにより、前記第1のベースプレート(30)の前記周縁に沿って第1の凹部(35)を形成し、この第1の凹部(35)に前記フレーム(20)の第1の部分(21)が収容され、
前記第1のベースプレート(30)は、アルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)、または銅(Cu)とアルミニウム(Al)の組合せからなり、前記フレーム(20)の前記第1の部分(21)は溶接接続によって前記第1のベースプレート(30)に固定され、前記溶接接続はレーザ溶接によって生成される突合せ溶接であることを特徴とする、電力変換装置。
【請求項2】
前記フレーム(20)の前記第1の部分(21)はフランジ部であり、前記フランジ部は、前記フランジ部の底面(21A)が前記第1の段差(35A)に隣接する前記第1のベースプレート(30)の前記第2の主面(33)と同一平面上にあるように前記第1の凹部(35)に収容される、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1のベースプレート(30)は、前記第1のベースプレート(30)の中央領域における前記第1のベースプレート(30)の第2の厚さ(d2)と比較して、その周縁に沿って減少した第1の厚さ(d1)を有し、この中央領域は前記第1の段差(35A)によって横方向から囲まれている、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1のベースプレート(30)の中央領域における前記第1のベースプレート(30)の前記第2の主面(33)から突き出る複数の冷却延長部(37)を備え、この中央領域は前記第1の段差(35A)によって横方向から囲まれている、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記フレーム(20)は、開口部(23)を備えるプレート部(22)を有し、前記開口部(23)に直接隣接して前記開口部(23)を囲む前記プレート部(22)の縁部は、前記フレーム(20)の前記第1の部分(21)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記プレート部(22)は、前記第1のベースプレート(30)の前記第1の凹部(35)の深さと同じ第3の厚さ(d3)を有する、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
成形封止体(50)を備え、前記封止体(50)は、前記封止体(50)の底面が前記第2の主面(33)上の前記ベースプレート(30)の前記周縁において前記第1のベースプレート(30)と同一平面上にあるように、前記第1のベースプレート(30)の前記第1の主面(32)および前記側面(34)を封止する、請求項1~6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
冷却器カバー(60)を備え、前記冷却器カバー(60)は、前記第1のベースプレート(30)の反対側で前記フレーム(20)に装着されることにより、前記閉じた冷却器内の流路(65)の底壁部を形成する、請求項1~7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
少なくとも1つの第2のパワー半導体モジュール(200)を備え、
前記第2のパワー半導体モジュール(200)は、
第3の主面(32′)と、前記第3の主面(32′)の反対側の第4の主面(33′)とを有する第2のベースプレート(30′)と、
前記第2のベースプレート(30′)の前記第3の主面(32′)上に位置する少なくとも1つの第2のダイとを含み、
前記フレーム(20)は、前記第2のベースプレート(30′)の前記第4の主面(33′)に装着され、
前記第2のベースプレート(30′)は、前記第2のベースプレート(30′)の周縁に沿って前記第4の主面(33′)上に第2の段差を有することにより、前記第2のベースプレート(30′)の前記周縁に沿って第2の凹部を形成し、この第2の凹部に前記フレーム(20)の第2の部分(21′)が収容される、請求項1~8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の電力変換装置を製造する方法であって、前記方法は、
閉じた冷却器のためのフレーム(20)を設けるステップと、
第1のパワー半導体モジュール(100)を設けるステップとを備え、前記第1のパワー半導体モジュール(100)は、アルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)、または銅(Cu)とアルミニウム(Al)の組合せからなる第1のベースプレート(30)を含み、前記第1のベースプレート(30)は、第1の主面(32)と、前記第1の主面(32)の反対側の第2の主面(33)と、前記第1のベースプレート(30)の周縁に沿って延びて前記第1の主面(32)と前記第2の主面(33)とを接続する側面(34)とを有し、前記第1のパワー半導体モジュール(100)はさらに、前記第1のベースプレート(30)の前記第1の主面(32)上に位置する少なくとも1つの第1のダイ(40)を含み、前記第1のベースプレート(30)は、前記第1のベースプレート(30)の前記周縁に沿って前記第2の主面(33)上に第1の段差(35A)を有することにより、前記第1のベースプレート(30)の前記周縁に沿って第1の凹部を形成し、前記方法はさらに、
前記フレーム(20)の第1の部分(21)が前記第1の凹部(35)に収容されて前記第1のベースプレート(30)に固定されるように、前記第1のパワー半導体モジュール(100)を前記フレーム(20)に装着するステップを備え、前記フレーム(20)は、開口部(23)を備えるプレート部(22)を有し、前記開口部(23)に直接隣接して前記開口部(23)を囲む前記プレート部(22)の縁部は、前記フレーム(20)の前記第1の部分(21)であり、前記第1のパワー半導体モジュール(100)を前記フレーム(20)に装着するステップにおいて、前記第1の部分(21)はレーザ溶接によって前記第1のベースプレート(30)に固定される、方法。
【請求項11】
前記第1のパワー半導体モジュール(100)を設けるステップは封止体(50)を成形するステップを備え、前記封止体(50)は、前記封止体(50)の底面が前記第1のベースプレート(30)の前記周縁において前記第1のベースプレート(30)と同一平面上にあるように、前記第1のベースプレート(30)の前記第1の主面(32)および周囲の前記側面(34)を封止し、下型(70)および上型(80)が使用され、前記下型(70)は、前記成形するステップ中に封着面として作用する前記第1の凹部(35)の第2の平坦面と接触する第1の平坦面(70A)を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2のパワー半導体モジュール(200)を設けるステップを備え、前記第2のパワー半導体モジュール(200)は第2のベースプレート(30′)を含み、前記第2のベースプレート(30′)は、第3の主面(32′)と、前記第3の主面(32′)の反対側の第4の主面(33′)と、前記第2のベースプレート(30′)の周縁に沿って延びて前記第3の主面(32′)と前記第4の主面(33′)とを接続する側面(34)とを有し、前記第2のパワー半導体モジュール(200)はさらに、前記第2のベースプレート(30′)の前記第3の主面(32′)上に位置する少なくとも1つの第2のダイを含み、前記第2のベースプレート(30′)は、前記第2のベースプレート(30′)の前記周縁に沿って前記第4の主面(33′)上に第2の段差を有することにより、前記第2のベースプレート(30′)の前記周縁に沿って第2の凹部(35′)を形成し、さらに、
前記フレーム(20)の第2の部分(21′)が前記第2の凹部(35′)に収容されて前記第2のベースプレート(30′)に固定されるように、前記第2のパワー半導体モジュール(200)を前記フレーム(20)に装着するステップを備える、請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
電力変換器に含まれるパワー半導体モジュールの直接的な水-グリコール冷却は、厳しい動作条件で使用されるのが一般的である。これは、直接冷却性能が優れているためである。直接冷却とは、パワー半導体モジュールのベースプレートが、冷却液と直接接触しており、典型的にピンの形態の表面延長部を含むことを意味する。
【0003】
公知の電気変換器では、1つ以上のパワー半導体装置の基板が共通のベースプレートに載置され、上部サイドフレームがベースプレートの上面側にねじ留めされて接着される。次いで、この1つ以上のパワー半導体装置を1つのパワー半導体モジュール内に封止するために、フレーム内に樹脂がポッティングされる。冷却水の漏れ問題を防止するために、かつ、ねじの大量使用を避けるために、開いたピンフィン型ベースプレート(ねじ留めされたOリング接続によってベースプレートの底面側で封着しなければならない)アプローチを避けて、パワー半導体モジュールと一体化されている閉じた金属冷却器を選ぶ傾向もある。
【0004】
トランスファー成形および焼結されたパワーモジュールのパッケージは、上述のようなポッティングによってパワー半導体装置を封止する従来のアプローチに代わる興味深い代替案となりつつある。焼結および成形材料封止は、パワーモジュールのサイクル信頼性を大きく高めることができる。加えて、1つのステップでのモジュール焼結、およびトランスファー成形アプローチは、モジュールの製造コストおよび材料費を大きく削減することができる。
【0005】
電力半導体モジュールでは、ベースプレートおよびピンから冷却液への熱の伝達が、直接冷却性能にとって最も重要である。また、直接冷却を用いる電力変換器の公知の設計では、広いスペースが必要である。
【0006】
電力変換器の中には、複数のパワー半導体装置を必要とするものもある。たとえば、電気自動車用の2レベル3相のトラクションインバータでは、6個の機能半導体スイッチが必要である。ここで、6個の機能半導体スイッチには、少なくとも6個の半導体装置(チップ)が必要であるが、機能半導体スイッチごとに数個(典型的に3~10個)の装置が並列接続されるので、さらに多くの半導体装置が必要な場合もある。
【0007】
単一の共通のベースプレート上の1つの成形焼結モジュールの中に複数のパワー半導体装置を一体化するには大きな難点がある。大面積にわたる成形は困難である。なぜなら、成形材料の移動時のエポキシ材料の硬化によって成形流路の可能な長さが制限され、市販の設備における成形材料の充填体積が制限され、大面積の成形材料と冷却器またはベースプレートとの間の熱膨張係数(CTE)の不一致によって反りおよび応力が生じる場合があり、これが機械的完全性に影響を及ぼして成形材料の剥離を引き起こし得るからである。さらに、複数のパワー半導体装置を備えるパワー半導体モジュールを1つのステップで焼結することは、組立て前に当該複数のパワー半導体装置を試験することができないので、大きな経済的リスクを伴う。基板は、その後の基板はんだ付けのために送り出される際にワイヤボンドで完全に組立てることができるが、焼結用の基板は焼結前にワイヤボンディングして試験することができない。なぜなら、焼結アプローチでは、基板に対する強い圧力(典型的にゴムスタンプで機械的に加えられる)が必要であり、これがワイヤボンディングを破壊することになるからである。
【0008】
したがって、複数のパワー半導体装置を備える公知の電力変換器では、コンパクトな構成の複数の成形または焼結されたパワーモジュール内の当該複数のパワー半導体装置を、単一の閉じた冷却器と一体化することが好ましい場合がある。しかしながら、複数の成形または焼結されたパワーモジュールをコンパクトな構成にして閉じた冷却器と一体化するには、各パワーモジュールのベースプレートのピンの周りに流路(または密閉体)を作成すること、および当該流路を流体接続することが必要である。この接続は頑強かつ緊密でなければならないので、これは難題である。また、上述のように、設計は省スペースかつ安価であるべきである。
【0009】
DE 10 2009 045 063 A1から、パワー半導体モジュールと追加ヒートシンク素子とを備えるパワー半導体モジュールシステムが知られている。このパワー半導体モジュールは、基板と、基板の表面上の半導体ダイと、基板の裏面に成形される樹脂製のヒートシンクとを含む。追加ヒートシンク素子は、冷却液の流路が形成されるようにパワー半導体モジュールに装着され、流路内の冷却液はヒートシンクと直接接触する。ねじ継手によってまたはボンディングによって追加ヒートシンク素子をパワー半導体モジュールに装着することが記載されている。封着するために、ヒートシンクまたは追加ヒートシンク素子の溝に設けられたOリングを用いることが記載されている。この先行技術のパワー半導体モジュールシステムでは、冷却液の圧力降下が比較的大きい。
【0010】
JP 5659935 B2から、1つの冷却器に複数のパワーモジュールをはんだ接合する電力変換器が知られている。この設計では広いスペースが必要であり、冷却効率は比較的低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の概要
先行技術の上記短所に鑑みて、本発明の目的は、先行技術の上記短所を克服する電力変換装置を提供することである。特に、本発明の目的は、冷却器のためのフレーム(すなわち冷却器フレーム)を、省スペースで、かつ冷却効率を向上させることができるように一体化する電力変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載の電力変換装置によって達成される。本発明のさらなる展開は従属請求項に規定されている。
【0013】
本発明の電力変換装置は、第1のパワー半導体モジュールと、閉じた冷却器のためのフレームとを備える。第1のパワー半導体モジュールは、第1のベースプレートと、少なくとも1つの第1のダイとを含む。第1のベースプレートは、第1の主面と、第1の主面の反対側の第2の主面と、第1のベースプレートの周縁に沿って延びて第1および第2の主面を接続する側面とを有する。少なくとも1つの第1のダイは、第1のベースプレートの第1の主面上に位置する。フレームは、第1のベースプレートの第2の主面に装着される。第1のベースプレートは、第1のベースプレートの周縁に沿って第2の主面上に第1の段差を有することにより、第1のベースプレートの周縁に沿って第1の凹部を形成し、この第1の凹部にフレームの第1の部分が収容される。
【0014】
第1のベースプレートの周縁に沿って第1の凹部があり、この第1の凹部にフレームの第1の部分が収容されるため、フレームの第1の部分は電力変換装置の全体の厚さに加算されないので、閉じた冷却器のためのフレームをベースプレートに省スペースで装着することができる。さらに、フレームの第1の部分が収容される凹部を設けることによって、電力変換器の動作時に冷却液が沿って流れる、フレームの第1の部分の下側と、第1のベースプレートの第2の主面のその部分とを、第1のベースプレートの第2の主面に垂直な方向において互いに近づけることができるので、冷却液は、フレームの第1の部分の下側に沿って、およびベースプレートの第2の主面に沿って、よりスムーズに流れることができる。この結果、冷却液の圧力降下が小さくなり、それによって冷却効率が向上する。
【0015】
例示的な実施形態では、フレームの第1の部分はフランジ部であり、フランジ部は、フランジ部の底面が第1の段差に隣接する第1のベースプレートの第2の主面と同一平面上にあるように第1の凹部に収容される。この例示的な実施形態では、フランジ部の底面と第1の段差に隣接する第2の主面とを含む表面は、段差を有さず、段差のない滑らかな表面を提供するので、この表面に沿って流れる冷却液の流れに対する抵抗を最小限にすることができる。この結果、冷却液の圧力降下が小さくなり、それによって冷却効率が向上する。
【0016】
例示的な実施形態では、フレームの第1の部分は、溶接接続によって第1のベースプレートに固定される。
【0017】
例示的な実施形態では、第1のベースプレートは、第1のベースプレートの中央領域における第1のベースプレートの第2の厚さと比較して、その周縁に沿って減少した第1の厚さを有し、この中央領域は第1の段差によって横方向から囲まれている。第2の主面上の第1の段差によって周縁に沿ってより小さい第1の厚さを有するベースプレートの利点は、ベースプレートの鍛造時に第1の段差が直接形作られる場合はベースプレートに使用する材料を減らすことができる(この結果として重量およびコストが低減する)ことである。ベースプレートは、少なくとも1つのダイの下の領域においてのみ厚くてもよい。この領域では、熱拡散のために比較的大きい第2の厚さが必要である。さらに周辺の領域では、ダイが存在しない場合があり、したがって損失がはるかに小さいので、熱拡散の重要性ははるかに低い。第1のベースプレートの第1の厚さは、第1の段差によって当該周辺領域において減少する。
【0018】
例示的な実施形態では、電力変換装置は、第1のベースプレートの中央領域における第1のベースプレートの第2の主面から突き出る複数の冷却延長部を備え、この中央領域は第1の段差によって横方向から囲まれている。この例示的な実施形態では、冷却効率を向上させることができる。第1の凹部によって、フレームに近い冷却延長部は、凹部を有さないベースプレートに第1の部分が装着される場合と比較して、より効率的に冷却される。冷却延長部は、鍛造によって1つの製造ステップで第1の凹部と共に製造することができる。
【0019】
例示的な実施形態では、フレームは、開口部を備えるプレート部を有し、開口部に直接隣接して開口部を囲むプレート部の縁端は、フレームの第1の部分である。この例示的な実施形態では、プレート部は、閉じた冷却器内の流路の平坦な壁部を形成する。
【0020】
例示的な実施形態では、プレート部は、第1のベースプレートの第1の凹部の深さと同じ第3の厚さを有する。そのような例示的な実施形態では、プレート部の下側は、第1のベースプレートの第2の主面と同一平面上にある。
【0021】
例示的な実施形態では、電力変換装置は成形封止体を備え、封止体は、封止体の底面が第2の主面上の第1のベースプレートの周縁において第1のベースプレートと同一平面上にあるように、第1のベースプレートの第1の主面および側面を封止する。この例示的な実施形態では、封止体の方および第1の凹部の方を向くフレームの表面を平坦面とすることができるので、フレームの一体化が容易になる。さらに、第1の凹部内の第2の主面を、成形によって封止体を形成するための金型の当接面または封着面として用いることができるので、封止体の形成が容易になる。
【0022】
例示的な実施形態では、第1のベースプレートは、銅(Cu)、またはアルミニウム(Al)、またはアルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)、または銅(Cu)とアルミニウム(Al)の組合せからなる。そのような材料は、高熱伝導性と、装置の動作中の厳しい条件および冷却液との直接接触に耐える高耐久性とを有する。
【0023】
例示的な実施形態では、電力変換装置は冷却器カバーを備え、冷却器カバーは、第1のベースプレートの反対側でフレームに装着されることにより、閉じた冷却器内の流路の底壁部を形成する。
【0024】
例示的な実施形態では、電力変換装置は少なくとも1つの第2のパワー半導体モジュールを備え、第2のパワー半導体モジュールは、第3の主面と、第3の主面の反対側の第4の主面とを有する第2のベースプレートと、第2のベースプレートの第3の主面上に位置する少なくとも1つの第2のダイとを含み、フレームは、第2のベースプレートの第4の主面に装着され、第2のベースプレートは、第2のベースプレートの周縁に沿って第4の主面上に第2の段差を有することにより、第2のベースプレートの周縁に沿って第2の凹部を形成し、この第2の凹部にフレームの第2の部分が収容される。この例示的な実施形態では、第1および第2のパワー半導体モジュールを1つの閉じた冷却器と一体化することが容易になる。流路(または密閉体)が第1および第2のベースプレートに形成され、流路は頑強かつ緊密に流体接続される。また、この設計では、複数のパワー半導体モジュールを省スペースでかつ比較的安価に一体化することができる。第2の半導体パワーモジュールは、第1のパワー半導体モジュールについて上述したのと同じ特徴を有してもよく、同じようにフレームと一体化されてもよく、すなわち、複数の半導体パワーモジュールは、第1のパワー半導体モジュールについて上述したのと同じ特徴を有してもよく、同じようにフレームに装着されてもよい。
【0025】
例示的な実施形態において、本発明の電力変換装置は以下のステップを備える方法によって製造されてもよく、上記ステップは、閉じた冷却器のためのフレームを設けるステップと、第1のパワー半導体モジュールを設けるステップとを含み、第1のパワー半導体モジュールは第1のベースプレートを含み、第1のベースプレートは、第1の主面と、第1の主面の反対側の第2の主面と、第1のベースプレートの周縁に沿って延びて第1および第2の主面を接続する側面とを有し、第1のパワー半導体モジュールはさらに、第1のベースプレートの第1の主面上に位置する少なくとも1つの第1のダイを含み、第1のベースプレートは、第1のベースプレートの周縁に沿って第2の主面上に第1の段差を有することにより、第1のベースプレートの周縁に沿って第1の凹部を形成し、上記ステップはさらに、フレームの第1の部分が第1の凹部に収容されて第1のベースプレートに固定されるように、第1のパワー半導体モジュールをフレームに装着するステップ含む。
【0026】
第1のベースプレートの周縁に沿って第1の凹部があり、この第1の凹部にフレームの第1の部分が収容されるため、上述のように、閉じた冷却器のためのフレームをベースプレートに省スペースで装着することができ、冷却液の圧力降下が小さくなり、冷却効率を向上させることができる。
【0027】
第1のパワー半導体モジュールを設けるステップは封止体を成形するステップを備えてもよく、封止体は、封止体の底面が第1のベースプレートの周縁において第1のベースプレートと同一平面上にあるように、第1のベースプレートの第1の主面および周囲側面を封止し、下型および上型が使用され、下型は、成形するステップ中に封着面として作用する第1の凹部の第2の平坦面と接触する第1の平坦面を有する。第1の凹部の第2の平坦面を封着面として用いる結果、金型が確実に封着されて、封着面において成形材料がはみ出したり流れ出たりすることなく封止体が確実に形成される。
【0028】
例示的な実施形態では、フレームは、開口部を備えるプレート部を有し、開口部に直接隣接して開口部を囲むプレート部の縁部は、フレームの第1の部分であり、第1のパワー半導体モジュールをフレームに装着するステップにおいて、第1の部分は溶接またはボンディングによって第1のベースプレートに固定される。フレームの第1の部分が第1の凹部に収容されるように、第1の半導体モジュールが挿入される開口部を有するプレート部をフレームに設けることにより、第1の半導体モジュールとフレームとの一体化が容易になる。
【0029】
例示的な実施形態は、第2のパワー半導体モジュールを設ける追加ステップを備え、第2のパワー半導体モジュールは第2のベースプレートを含み、第2のベースプレートは、第3の主面と、第3の主面の反対側の第4の主面と、第2のベースプレートの周縁に沿って延びて第3および第4の主面を接続する側面とを有し、第2のパワー半導体モジュールはさらに、第2のベースプレートの第3の主面上に位置する少なくとも1つの第2のダイを含み、第2のベースプレートは、第2のベースプレートの周縁に沿って第4の主面上に第2の段差を有することにより、第2のベースプレートの周縁に沿って第2の凹部を形成し、上記例示的な実施形態はさらに、フレームの第2の部分が第2の凹部に収容されて第2のベースプレートに固定されるように、第2のパワー半導体モジュールをフレームに装着する追加ステップを備える。この例示的な実施形態では、複数のパワー半導体モジュールを単一のフレームに効率よく確実に一体化することができる。第1および第2のパワー半導体モジュールを別々の部品として設けることによって、これらのパワー半導体モジュールを、単一のフレームと一体化する前に試験することができる。この結果、電力変換器の製造歩留まりが向上する。
【0030】
添付の図面を参照して本発明の詳細な実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A図1Dの線A-A′に沿った一実施形態に係る電力変換装置の断面図である。
図1B図1Dの線C-C′に沿った図1Aの電力変換装置の断面図である。
図1C図1Dの線B-B′に沿った図1Aの電力変換装置の断面図である。
図1D図1Aの電力変換装置の上面図である。
図2図1Aに示される断面の拡大部分図である。
図3図1Aの電力変換装置の製造方法におけるパワー半導体モジュールを設けるステップを示す、パワー半導体モジュールの断面拡大部分図である。
図4図1Aの電力変換装置の製造方法における封止体を形成するステップを示す、パワー半導体モジュールの断面拡大部分図である。
図5A図1Aの電力変換装置の製造方法におけるフレームをパワー半導体モジュールに装着するステップを示す、電力変換装置の断面拡大部分図である。
図5B】変更された実施形態に係る図1Aの電力変換装置の製造方法におけるフレームをパワー半導体モジュールに装着するステップを示す、電力変換装置の断面拡大部分図である。
図5C】別の変更された実施形態に係る図1Aの電力変換装置の製造方法におけるフレームをパワー半導体モジュールに装着するステップを示す、電力変換装置の断面拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
例示的な形態の詳細な説明
図面で使用される参照符号およびそれらの意味は、参照符号のリストにまとめている。一般に、明細書全体を通して同様の要素は同じ参照符号を有する。記載された実施形態は、例として意図されており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0033】
以下、図1A図1B図1C図1Dおよび図2を参照して、本発明の一実施形態に係る電力変換装置1について説明する。図1Dは、電力変換装置1の上面図を示す。図1Aは、図1Dの線A-A′に沿った電力変換装置1の断面図を示し、図1Bは、図1Dの線C-C′に沿った電力変換装置1の断面図を示し、図1Cは、図1Dの線B-B′に沿った電力変換装置1の断面図を示す。図2は、図1Aに示される部分Sの断面拡大部分図を示す。
【0034】
図1Cから最もよく理解できるように、本実施形態に係る電力変換装置1は、第1のパワー半導体モジュール100と、第2のパワー半導体モジュール200と、閉じた冷却器のためのフレーム20と、冷却器カバー60とを備える。図1Aに示される断面および図2における部分Sの拡大部分図により詳細に示されている第1のパワー半導体モジュール100は、第1のベースプレート30と、少なくとも1つの第1のダイ40とを含む。ベースプレート30は、第1の主面32と、第1の主面32の反対側の第2の主面33と、第1のベースプレート30の周縁に沿って延びて第1の主面32と第2の主面33とを接続する側面34とを有する。少なくとも1つのダイ40は、第1のベースプレート30の第1の主面32上に位置する。
【0035】
第1のベースプレート30は、第1のベースプレート30の周縁に沿って第2の主面33上に第1の段差35Aを有することにより、第1のベースプレート30の周縁に沿って第1の凹部35を形成する。本実施形態では、第1のベースプレート30は、第1のベースプレート30の中央領域における第1のベースプレート30の第2の厚さd2と比較して、その周縁に沿って減少した第1の厚さd1を有し、この中央領域は第1の段差35Aによって横方向から囲まれている。したがって、本実施形態では、第1の段差35Aの高さは、第2の厚さd2と第1の厚さd1との差d2-d1によって与えられる。
【0036】
フレーム20は、プレート部22と、プレート部22の周縁から第1の主面32に直交する鉛直方向に延びる側壁部24とを有する。図1Dに示されるように、プレート部22は第1の開口部23および第2の開口部23′を備える。第1の開口部23に直接隣接して第1の開口部23を囲むプレート部22の縁部は、フレーム20の第1の部分21であり、第1の部分21は、以下により詳細に説明するように、第1のパワー半導体モジュール100の第1のベースプレート30に装着される。同様に、第2の開口部23′に直接隣接して第2の開口部23′を囲むプレート部22の縁部は、フレーム20の第2の部分21′であり、第2の部分21′は、以下により詳細に説明するように、第2のパワー半導体モジュール200の第2のベースプレート30に装着される。
【0037】
第1の主面32に垂直な方向におけるプレート部22の第1の部分21の厚さd3は、第1の段差35Aの高さd2-d1によって画定される第1の凹部35の深さと実質的に同じである。フランジ部であるフレーム20の第1の部分21は、第1の部分21の底面21Aが第1の段差35Aに隣接する第1のベースプレート30の第2の主面33と実質的に同一平面上にあるように、第1の凹部35に収容される。例示的な実施形態では、プレート部22全体が一定の厚さd3を有してもよい。
【0038】
フレーム20は、フレーム20の第1の部分21が、たとえば溶接接続によって、ボンディング接続によって、またはその他の好適な接続によって、第1のベースプレート30に固定されることにより、第1のベースプレート30の第2の主面33に装着される。
【0039】
第1のベースプレート30の中央領域における第1のベースプレート30の第2の主面33から複数の冷却延長部37が突き出ており、この中央領域は第1の段差35Aによって横方向から囲まれている。ここで、横方向とは、第1の主面32に平行な任意の方向である。
【0040】
第1のベースプレート30および冷却延長部37は、高熱伝導率を有する任意の好適な材料からなる。例として、第1のベースプレート30は、銅(Cu)、またはアルミニウム(Al)、またはアルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)、または銅とアルミニウムの組合せからなってもよい。たとえば、第1のベースプレート30は、Cuからなる上層とAlからなる下層とを有する2層のベースプレートであってもよい。下層から延びる冷却延長部も、Alからなってもよい。
【0041】
図2に示される拡大部分図に示されるように、第1のパワー半導体モジュール100は、少なくとも1つのダイ40と共に基板42上に位置するリードフレーム43を含む。リードフレーム43と少なくとも1つのダイ40との間の電気的接続は、たとえば、少なくとも1つのボンディングワイヤ44によって提供されてもよい。基板は、直接結合銅(direct bonded copper)(DBC)基板であってもよい。
【0042】
成形封止体50が、第1のベースプレート30の第1の主面32および側面34を封止する。その結果、少なくとも1つの第1のダイ40、基板42、および少なくとも1つのボンディングワイヤ44が封止体50によって封止される。パワー半導体モジュール100の端子となるリードフレーム43の一部が、封止体50の側面から突き出ている。封止体50の底面は、第2の主面33上のベースプレート30の周縁において第1のベースプレート30と実質的に同一平面上にある。
【0043】
冷却器カバー60は、第1のベースプレート30の反対側でフレーム20に装着されることにより、閉じた冷却器内の流路65の底壁部を形成する。電力変換装置1の動作中、流路65を通る冷却液Fの流れは、図1Cの矢印によって示されるように起こる。
【0044】
図1Dの線C-C′に沿った第2のパワー半導体モジュール200の第1の断面を図1Bに示し、図1Dの線B-B′に沿った第2のパワー半導体モジュール200の第2の断面を図1Cに示す。本実施形態では、第2のパワー半導体モジュール200は、基本的に第1のパワー半導体モジュール100と同一である。したがって、詳細については、第1のパワー半導体モジュール100の上記記述が参照される。第1のパワー半導体モジュール100と同様に、第2のパワー半導体モジュール200は第2のベースプレート30′を含み、第2のベースプレート30′は、第3の主面32′と、第3の主面32′の反対側の第4の主面33′と、第2のベースプレート(30′)の第3の主面(32′)上に位置する少なくとも1つの第2のダイ(図示せず)とを有する。
【0045】
フレーム20が第1のベースプレート30の第2の主面33に装着されるのと基本的に同様に、フレーム20が第2のベースプレート30′の第4の主面33′に装着される。特に、第2のベースプレート30′は、第2のベースプレート30′の周縁に沿って第4の主面33′上に第2の段差を有することにより、第2のベースプレート30′の周縁に沿って第2の凹部35′を形成し、たとえば図1Bに示されるように、この第2の凹部35′にフレーム20の第2の部分21′が収容される。第2の凹部35′は、第1のパワー半導体モジュール100の第1のベースプレート30における第1の凹部35の深さd2-d1と同じ深さを有してもよい。
【0046】
例示的な実施形態では、上記パワー半導体モジュール100,200はハーフブリッジモジュールであってもよい。電力変換装置は、たとえば電気自動車用のトラクションインバータであってもよい。
【0047】
次に、図1A図2に示した上記実施形態に係る電力変換装置の製造方法について説明する。この方法は概して、
(a) 閉じた冷却器のためのフレーム20を設けるステップと、
(b) 第1のパワー半導体モジュール100を設けるステップと、
(c) 第2のパワー半導体モジュール200を設けるステップと、
(d) 第1のパワー半導体モジュール100をフレーム20に装着するステップと、
(e) 第2のパワー半導体モジュール200をフレーム20に装着するステップと、
(f) 冷却器カバー60をフレーム20に装着するステップとを備える。
【0048】
閉じた冷却器のためのフレーム20を設けるステップ(a)では、図1Dおよび図2を参照して上に説明したフレーム20が設けられる。したがって、その説明は繰返さず、フレーム20の上記説明が参照される。
【0049】
第1のパワー半導体モジュール100を設けるステップ(b)は、図3に示されるように、事前の第1のパワー半導体モジュール100′を設けることを備える。事前の第1のパワー半導体モジュール100′は、図2を参照して上に説明したような第1のパワー半導体モジュール100のすべての特徴を含む。特に、それは、第1のベースプレート30と、第1のベースプレート30の第2の主面33から突き出る冷却延長部37と、ベースプレート30の第1の主面上に位置する基板42と、基板42上に位置する少なくとも1つの第1のダイ40およびリードフレーム43と、少なくとも1つのダイ40をリードフレーム43に接続する少なくとも1つのボンディングワイヤ44とを含む。第1のベースプレート30は、第1のベースプレート30の周縁に沿って第2の主面33上に第1の段差35Aを有することにより、第1のベースプレート30の周縁に沿って第1の凹部35を形成する。
【0050】
上記ステップ(b)において、第1の段差35Aおよび第1の凹部35は、鍛造によって冷却突出部37と共に同じ製造ステップで形成されてもよい。この場合、第1のベースプレート30に第1の段差35Aおよび凹部35を形成するための追加の製造ステップは不要である。
【0051】
さらに、第1のパワー半導体モジュール100を設けるステップ(b)は、封止体50を成形するステップを備え、封止体50は、封止体50の底面が第1のベースプレート30の周縁において第1のベースプレート30と同一平面上にあるように、第1のベースプレート30の第1の主面32および周囲側面34を封止する。成形中、下型70および上型80が使用され、下型80は、成形ステップ中に封着面として作用する第1の凹部35の第2の平坦面と接触する第1の平坦面70Aを有する。第2の主面33における凹部35内に平坦な封着面を設けることによって、成形材料が冷却突出部37上に形成されないことが保証されるが、図5A図5Cに示されるように第1のベースプレート30の周りに成形材料の縁が生じる。リードフレーム43の端子は、図4に示されるように、上型80と下型70との間の分割面内に設けられる。例として、トランスファー成形または当業者に公知のその他の好適な成形もしくは鋳造技術が、封止体50を成形または鋳造するための成形または鋳造技術として用いられてもよい。
【0052】
第2の半導体モジュール200を設けるステップ(c)は、上記ステップ(b)と同様の方法ステップおよび特徴を備える。したがって、その説明は繰返さず、ステップ(b)の上記説明が参照される。
【0053】
第1のパワー半導体モジュール100をフレーム20に装着するステップ(d)では、図5A図5Cのいずれか1つに示されるようにプレート部22の第1の部分21が第1の凹部35に収容されるように、ステップ(b)で設けられた第1のパワー半導体モジュール100がその冷却延長部37および第1のベースプレート30の一部とともに第1の開口部23に挿入される。次いで、第1の部分21が、溶接、または接着もしくははんだ付けなどの別のボンディング技術によって、第1のベースプレート30に固定される。第1のベースプレート30がAlSiCからなる場合は、溶接接続が形成される第1のベースプレート30にアルミニウム富化部分(例として5mmの厚さを有する)が組込まれてもよい。図5Aに示される実施形態では、第1の部分21はレーザ溶接によって第1のベースプレート30に固定される。レーザ溶接に用いられるレーザビーム90が図5Aに矢印として示されている。特に、レーザビーム90は、段差35Aと第1の部分21の横方向の縁部との間の隙間における領域に方向付けられることにより、第1の部分21と第1のベースプレート30との間の突合せ溶接接続を形成する。突合せ溶接接続によって第1の部分21を第1のベースプレートに固定することは、段差35Aと第1の部分21の横方向の縁端との間の隙間を埋めて冷却流路65の壁のための滑らかな表面を提供するという利点がある。なお、第1のベースプレート30の周りに成形材料の縁部があるため、突合せ溶接は凹部35がなければ不可能であり、第1の部分21が第1の凹部35に収容されるからこそ可能となる。これに代えて、第1の部分21は、段差35Aと第1の部分21の横方向の縁端との間の隙間以外の領域における溶接によって、第1のプレート30に固定されてもよい。たとえば、そのような溶接は、第1の部分21を介したレーザ溶接によって、または摩擦撹拌溶接装置92を示す図5Bに示される摩擦撹拌溶接技術によっても行うことができる。これに代えて、第1の部分は、ボンディング層94を示す図5Cに示されるようなボンディング技術によって第1のプレート部に固定されてもよい。ボンディング層94は、たとえば、はんだまたは接着剤からなってもよい。
【0054】
ステップ(e)における第2のパワー半導体モジュール200のフレーム20への装着は、ステップ(d)における第1のパワー半導体モジュール100のフレーム20への装着と同様に行われる。したがって、その説明は繰返さず、図5A図5Bを参照したステップ(d)の上記説明が参照される。
【0055】
冷却器カバー60をフレーム20に装着することによって、流路65の底壁は、図1Cに示されるように流路65を閉じるように形成される。
【0056】
添付の請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく上記実施形態の変更が可能であることが当業者には明白であろう。
【0057】
上記実施形態では、電力変換装置1は2つのパワー半導体モジュール100および200を有するものとして説明した。しかしながら、電力変換装置は、これに代えてパワー半導体モジュールのみを1つだけ含んでもよいし、またはこれに代えてパワー半導体モジュールを3つ以上含んでもよい。たとえば、本発明は、6つのパワー半導体モジュールとして実現される6つの機能パワー半導体スイッチを備える電気自動車用の2レベルのトラクションインバータに適用できる。そのような2レベルのトラクションインバータは、例として、各々が2つの機能スイッチを含む3つのパワー半導体モジュールを含んでもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、第1および第2のパワー半導体モジュールは実質的に同一であるとして説明した。しかしながら、電力変換器が複数のパワー半導体モジュールを含む場合は、これらのパワー半導体モジュールは必ずしも同一である必要はなく、互いに異なってもよい。特に、これらの複数のパワー半導体モジュールは異なる寸法を有してもよい。
【0059】
上記実施形態では、側壁部24はフレーム20の一部として説明した。しかしながら、側壁部24は冷却器カバー60の一部であってもよい。
【0060】
電力変換装置1の上記実施形態では、第1の部分21の底面21Aは、第1の段差35Aに隣接する第1のベースプレート30の第2の主面33と同一平面上にある。しかしながら、第1の部分21の底面21Aは、第1の段差35Aに隣接する第1のベースプレート30の第2の主面33と必ずしも同一平面上にあるとは限らない。同様に、第1の段差35Aの深さは、フレーム20の第1の部分21の厚さと必ずしも同じであるとは限らない。
【0061】
本発明の電力変換装置を製造するための上記実施形態では、第1および第2のパワー半導体モジュール100,200をフレーム20に装着する前に、封止体50の成形または鋳造をパワー半導体モジュールごとに個別に行った。これは、パワー半導体モジュールを、フレーム20と一体化する前に試験することができるという利点がある。しかしながら、パワー半導体モジュール(複数可)をフレーム20に装着した後でのみ封止体を形成することも可能であろう。
【0062】
なお、「備える(comprising)」という語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除するものではない。また、異なる実施形態に関連して説明した要素を組合せてもよい。
【符号の説明】
【0063】
参照符号のリスト
1 電力変換装置
100 第1のパワー半導体モジュール
100′ 事前の第1のパワー半導体モジュール
20,20′ フレーム
200 第2のパワー半導体モジュール
21A 底面
21 第1の部分
21′ 第2の部分
22 プレート部
23 第1の開口部
23′ 第2の開口部
24 側壁部
30 第1のベースプレート
30′ 第2のベースプレート
32 第1の主面
32′ 第3の主面
33 第2の主面
33′ 第4の主面
34,34′ 側面
35 第1の凹部
35′ 第2の凹部
35A 第1の段差
37 冷却延長部
40 第1のダイ
42 基板
44 ボンディングワイヤ
50 封止体
60 冷却器カバー
65 流路
70 下型
70A 第1の平坦面
80 上型
d1 第1の厚さ
d2 第2の厚さ
d3 第3の厚さ
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C