(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/622 20240101AFI20241021BHJP
G05D 1/225 20240101ALI20241021BHJP
G05D 1/46 20240101ALI20241021BHJP
G05D 1/229 20240101ALI20241021BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20241021BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241021BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20241021BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20241021BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20241021BHJP
【FI】
G05D1/622
G05D1/225
G05D1/46
G05D1/229
G08G5/00 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
B64U10/13
(21)【出願番号】P 2024060282
(22)【出願日】2024-04-03
【審査請求日】2024-05-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518156358
【氏名又は名称】株式会社センシンロボティクス
(73)【特許権者】
【識別番号】520320446
【氏名又は名称】中部電力パワーグリッド株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】深見 兼太郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 史彦
(72)【発明者】
【氏名】丸目 裕樹
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-79228(JP,A)
【文献】特開2023-60736(JP,A)
【文献】特開2022-10965(JP,A)
【文献】国際公開第2021/065543(WO,A1)
【文献】特開2018-156491(JP,A)
【文献】特開2020-147141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/87
G08G 5/00
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/10
B64U 10/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象物を含む現実の運行予定領域を測位することで取得されたデータに基づく、前記運行予定領域の周辺の3次元データを記憶する3次元データ記憶部と、
前記点検対象物の位置情報を含む、前記点検対象物に関する情報を記憶する対象物関連情報記憶部と、
前記位置情報が示す前記点検対象物の3次元座標に基づいて設定された、前記運行予定領域における移動体の移動経路を記憶する経路情報記憶部と、
3次元の仮想空間に前記3次元データ及び前記移動経路を配置し、前記3次元データと前記移動経路との接触の有無を判定する衝突判定部と、
前記3次元データと前記移動経路との接触有りと判定された場合に、前記移動経路を修正する処理を実行する経路補正部と、を
備え、
前記経路補正部は、障害物の3次元データ及び前記点検対象物の3次元データに基づき、障害物から離れる方向であって、かつ、前記点検対象物の撮影が可能な方向を補正方向として設定し、前記移動経路を修正する、情報処理システム。
【請求項2】
前記移動経路は、ウェイポイント情報を含み、
前記衝突判定部は、前記移動経路中のウェイポイント及びウェイポイント間を結ぶ直線の周囲に衝突判定範囲を設定し、当該衝突判定範囲を有する前記移動経路と前記3次元データとの接触の有無を判定する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記衝突判定部は、前記3次元データと前記移動経路との接触を検知した場合に、当該接触を検知した区間を特定する衝突危険区間情報を生成し、
前記経路補正部は、前記衝突危険区間情報により特定される前記区間に含まれる少なくとも1つのウェイポイントの位置を修正し、修正経路情報を生成する、請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
点検対象物を含む現実の運行予定領域を測位することで取得されたデータに基づく、前記運行予定領域の周辺の3次元データを記憶することと、
前記点検対象物の位置情報を含む、前記点検対象物に関する情報を記憶することと、
前記位置情報が示す前記点検対象物の3次元座標に基づいて設定された、前記運行予定領域における移動体の移動経路を記憶することと、
前記運行予定領域の周辺の
前記3次元データと、前記運行予定領域における移動体の移動経路と、を読み出す
ことと、
3次元の仮想空間に前記3次元データ及び前記移動経路を配置し、前記3次元データと前記移動経路との接触の有無を判定する
ことと、
前記3次元データと前記移動経路との接触有りと判定された場合に、障害物の3次元データ及び前記点検対象物の3次元データに基づき、障害物から離れる方向であって、かつ、前記点検対象物の撮影が可能な方向を補正方向として設定し、前記移動経路を修正することと、をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項5】
点検対象物を含む現実の運行予定領域を測位することで取得されたデータに基づく、前記運行予定領域の周辺の3次元データを記憶することと、
前記点検対象物の位置情報を含む、前記点検対象物に関する情報を記憶することと、
前記位置情報が示す前記点検対象物の3次元座標に基づいて設定された、前記運行予定領域における移動体の移動経路を記憶することと、
前記運行予定領域の周辺の
前記3次元データと、前記運行予定領域における移動体の移動経路と、を読み出す
ことと、
3次元の仮想空間に前記3次元データ及び前記移動経路を配置し、前記3次元データと前記移動経路との接触の有無を判定する
ことと、
前記3次元データと前記移動経路との接触有りと判定された場合に、障害物の3次元データ及び前記点検対象物の3次元データに基づき、障害物から離れる方向であって、かつ、前記点検対象物の撮影が可能な方向を補正方向として設定し、前記移動経路を修正することと、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体の経路設計に関連する情報処理システム、情報処理方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人が搭乗する有人の移動体だけでなく、ドローン(Drone)、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)、無人地上車両(UGV:Unmanned Ground Vehicle)などの様々な移動体(以下、有人機及び無人機を含めて「移動体」と総称する)が産業に利用され始めている。こうした中で、特許文献1には、飛行体により電力線を撮影して検査するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の開示技術では、予め飛行体の経路を設定しておく必要がある。飛行体の経路は、地図及び/又は検査対象物の座標を参照して設計されることが一般的であるが、飛行体を運行させる現場では、設計時の参照データには表れていない構造物、樹木等の障害物が存在する場合がある。そのため、飛行体の経路を決定する際には、作業者(操縦者又は設計担当者等)が実際の現場を訪れ、飛行経路と障害物との間隔を目測で確認する等の対策が取られている。ただし、このような対策では目測誤差による影響を受けるため、障害物との衝突を回避するためのより正確な経路設計が求められている。
【0005】
本開示の例示的な実施形態の目的は、移動体の経路設計を支援するための情報処理システム、情報処理方法、及び、プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一様態に関わる情報処理システムは、
運行予定領域の周辺の3次元データを記憶する3次元データ記憶部と、
前記運行予定領域における移動体の移動経路を記憶する経路情報記憶部と、
3次元の仮想空間に前記3次元データ及び前記移動経路を配置し、前記3次元データと前記移動経路との接触の有無を判定する衝突判定部と、を備える。
【0007】
情報処理システムが上記の特徴を有することで、障害物との衝突リスクの低い安全な経路の設計を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示における一実施形態に係わる情報処理システムの構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す管理サーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すユーザ端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す飛行体のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、管理サーバの機能を例示するブロック図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す情報処理システムの運用例を示す概念図である。
【
図7】
図7は、経路設計方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7で示す経路設計方法を説明するための概念図である。
【
図9】
図9は、3次元データの一例を模式的に示す概念図である。
【
図10】
図10は、衝突判定に関わる処理を説明するための概念図である。
【
図11】
図11は、衝突判定範囲について説明するための概念図である。
【
図12】
図12は、経路補正に関わる処理の一例を説明するための概念図である。
【
図13】
図13は、経路補正に関わる処理の他の例を説明するための概念図である。
【
図14】
図14は、衝突判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の情報処理方法、情報処理システム及びプログラムは、例えば、以下のような構成を備える。
[項目1]
運行予定領域の周辺の3次元データを記憶する3次元データ記憶部と、
前記運行予定領域における移動体の移動経路を記憶する経路情報記憶部と、
3次元の仮想空間に前記3次元データ及び前記移動経路を配置し、前記3次元データと前記移動経路との接触の有無を判定する衝突判定部と、を備える情報処理システム。
[項目2]
前記移動経路は、ウェイポイント情報を含み、
前記衝突判定部は、前記移動経路中のウェイポイント及びウェイポイント間を結ぶ直線の周囲に衝突判定範囲を設定し、当該衝突判定範囲を有する前記移動経路と前記3次元データとの接触の有無を判定する、項目1に記載の情報処理システム。
[項目3]
前記移動経路を修正する経路補正部を、さらに備え、
前記衝突判定部は、前記3次元データと前記移動経路との接触を検知した場合に、当該接触を検知した区間を特定する衝突危険区間情報を生成し、
前記経路補正部は、前記衝突危険区間情報により特定される前記区間に含まれる少なくとも1つのウェイポイントの位置を修正し、修正経路情報を生成する、項目1又は2に記載の情報処理システム。
[項目4]
運行予定領域の周辺の3次元データと、前記運行予定領域における移動体の移動経路と、を読み出すステップと、
3次元の仮想空間に前記3次元データ及び前記移動経路を配置し、前記3次元データと前記移動経路との接触の有無を判定するステップと、をコンピュータが実行する情報処理方法。
[項目5]
運行予定領域の周辺の3次元データと、前記運行予定領域における移動体の移動経路と、を読み出す処理と、
3次元の仮想空間に前記3次元データ及び前記移動経路を配置し、前記3次元データと前記移動経路との接触の有無を判定する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0010】
<実施の形態の詳細>
本開示の一実施形態に係わる情報処理システムを、図面を参照しつつ説明する。添付の各図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号及び名称が付され、実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。なお、各図面に示す内容は、あくまでも、本実施形態を説明するための例示であり、本実施形態を説明し易いように概略的に示す例示にすぎない。各図面の内容は、技術的に問題が生じない範囲内で改変したり、変更したりしてもよい。
【0011】
<システム概要>
本開示に関わる情報処理システムは、移動体の移動経路の設計に関わる処理を実行するシステムである。当該情報処理システムで設計された移動経路に基づいて運行させる移動体は、ドローン、無人航空機、及び、無人地上車両などの無人移動体であってもよく、人間が搭乗する有人の移動体であってもよく、好ましくは無人移動体、より好ましくは無人飛行体である。本実施形態では、
図6に示すように飛行体4で電力線及びその支持物(鉄塔)等を点検する際の移動経路(飛行経路)を設計する場合を例示して、情報処理システムについて詳述する。
【0012】
<システム構成>
図1に示されるように、本実施形態の情報処理システムは、管理サーバ1と、一以上のユーザ端末2と、一以上の飛行体4とを有していてもよい。管理サーバ1と、ユーザ端末2と、飛行体4とは、ネットワークNWを介して互いに通信可能に接続されている。なお、図示された構成は一例であり、これに限らない。
【0013】
<管理サーバ1>
図2は、管理サーバ1のハードウェア構成を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。
【0014】
管理サーバ1は、一以上のユーザ端末2と、飛行体4と接続され本システムの一部を構成する。管理サーバ1は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0015】
管理サーバ1は、少なくとも、プロセッサ10、メモリ11、ストレージ12、送受信部13、入出力部14等を備え、これらはバス15を通じて相互に電気的に接続される。
【0016】
プロセッサ10は、管理サーバ1全体の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御、及びアプリケーションの実行及び認証処理に必要な各種情報処理等を行う演算装置である。例えばプロセッサ10はCPU(Central Processing Unit)及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)であり、ストレージ12に格納されメモリ11に展開された本システムのためのプログラム等を実行して各情報処理を実施する。
【0017】
メモリ11は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶と、を含む。メモリ11は、プロセッサ10のワークエリア等として使用され、また、管理サーバ1の起動時に実行されるBIOS(Basic Input / Output System)、及び各種設定情報等を格納する。
【0018】
ストレージ12は、アプリケーション・プログラム等の各種プログラムを格納する。各処理に用いられるデータを格納したデータベースがストレージ12に構築されていてもよい。
【0019】
送受信部13は、管理サーバ1をネットワークNWに接続し、ネットワークNWを介してユーザ端末及び飛行体4等と通信を行うための通信インターフェースである。なお、送受信部13は、Bluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)等の近距離通信インターフェース及び/又はUSB(Universal Serial Bus)端子等をさらに備えていてもよい。
【0020】
入出力部14は、キーボード・マウス類等の情報入力機器、及びディスプレイ等の出力機器である。
【0021】
バス15は、上記各要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号及び各種制御信号を伝達する。
【0022】
<ユーザ端末2>
図3に示されるユーザ端末2もまた、プロセッサ20、メモリ21、ストレージ22、送受信部23、入出力部24等を備え、これらはバス25を通じて相互に電気的に接続される。各要素の機能は、上述した管理サーバ1と同様に構成することが可能であり、各要素の詳細な説明は省略する。
【0023】
<飛行体4>
図4は、飛行体4のハードウェア構成を示すブロック図である。フライトコントローラ41は、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央演算処理装置(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有していてもよい。
【0024】
また、フライトコントローラ41は、メモリ411を有していてもよく、当該メモリにアクセス可能である。メモリ411は、1つ以上のステップを行うためにフライトコントローラが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。また、フライトコントローラ41は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)等のセンサ類412を含んでいてもよい。
【0025】
メモリ411は、例えば、SDカード及びランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラ/センサ類42から取得したデータは、メモリ411に直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録されてもよいが、これに限らず、カメラ/センサ42または内蔵メモリからネットワークNWを介して、少なくとも管理サーバ1やユーザ端末2のいずれかに1つに記録されてもよい。カメラ42は飛行体4にジンバル43を介して設置される。
【0026】
フライトコントローラ41は、飛行体4の状態を制御するように構成された図示しない制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する飛行体の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために、ESC44(Electric Speed Controller)を経由して飛行体の推進機構(モータ45等)を制御する。バッテリー48から給電されるモータ45によりプロペラ46が回転することで飛行体の揚力を生じさせる。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0027】
フライトコントローラ41は、1つ以上の外部のデバイス(例えば、送受信機(プロポ)49、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部47と通信可能である。送受信機49は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用してもよい。
【0028】
例えば、送受信部47は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用してもよい。
【0029】
送受信部47は、センサ類42で取得したデータ、フライトコントローラ41が生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0030】
本実施の形態によるセンサ類42は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含んでいてもよい。
【0031】
<管理サーバ1の機能>
図5は、管理サーバ1に実装される機能を例示したブロック図である。本実施形態においては、管理サーバ1は、経路設定部110、衝突判定部120、経路補正部130、及び、フライト実行部140を備えていてもよい。また、管理サーバ1の記憶部160は、3次元データ記憶部162、経路情報記憶部164、対象物関連情報記憶部166などの各種データベースを含んでいてもよい。
【0032】
3次元データ記憶部162は、飛行体4の飛行予定領域(移動体の運行予定領域)の周辺の3次元データを記憶するデータベースである。ここで、飛行予定領域とは、飛行経路(移動経路)が設定される周辺環境を意味し、例えば、
図6に示す電力線等の点検では、各支持物及びその周辺環境、支持物間の周辺環境、電力線及びその周辺環境などが飛行予定領域に該当し、これら周辺環境に存在する樹木等の自然物、建物等の構造物などのあらゆる物体が飛行予定領域に含まれる。また、飛行予定領域の周辺の3次元データは、飛行予定領域に存在する物体の配置を特定するデータである。3次元データの形式は特に限定されず、例えば、3次元データは、BIM(Building Information Modeling)データ、CIM(Construction Information Modeling)データ、CADデータ、もしくは、City―GML等のGMLデータなどの3次元モデルであってもよく、3次元点群データであってもよい(好ましくは後者の3次元点群データであるが必ずしも限定されない)。3次元点群データは、3次元座標系(経度、緯度、高度(x座標、y座標、z座標の直交座標系であってもよい))により表現される点の集合データであって、3次元空間上に存在する物体を、その表面上における検出点座標の集合という形式で表現したデータである。3次元モデルについても、飛行予定領域に存在する各物体の配置を特定する3次元座標データ(任意で各物体に設定される複数の特徴点の現実世界における3次元座標等)が含まれていてもよい。
【0033】
飛行予定領域に関する3次元データの取得方法は、特に限定されず、現実の飛行予定領域を測位することで取得されたデータを用いて3次元データが生成されてもよい。例えば、飛行予定領域周辺の3次元データが3次元モデルの場合、当該3次元モデルは、SfM(Structure from Motion)及び/又はMVS(Multi-View Stereo)などの写真計測技術を利用して生成されたデータであってもよい。飛行予定領域周辺の3次元データが3次元点群データの場合、当該3次元点群データは、レーザ計測システムを利用した飛行予定領域に対するセンシングにより取得してもよい。この場合、レーザ光を有人又は無人の飛行体から飛行予定領域周辺に対して照射し、その反射を計測することで3次元点群データを生成できる。3次元データ記憶部162は、飛行予定領域を包括する一の3次元データを飛行計画ごとに記憶していてもよいし、飛行予定領域を所定の区間に分けたうえで所定区間ごとに3次元データを記憶していてもよい。
【0034】
経路情報記憶部164は、飛行予定領域(運行予定領域)における飛行体の飛行経路(移動体の移動経路)を記憶するデータベースである。経路情報記憶部164に記憶されている飛行経路は、例えば、飛行予定領域内に設定されたウェイポイントの位置座標を示すウェイポイント情報を含んでいてもよい。ウェイポイントの位置座標は、緯度情報、経度情報、及び、高度情報の3次元座標系(X座標、Y座標、Z座標の直交座標系であってもよい)で表されたデータであることが好ましい。各ウェイポイント間を結ぶ直線上が、電力線等の点検時に飛行体4が通る飛行経路となる。飛行経路の生成方法は特に限定されず、地図情報に基づいて生成されてもよいし、テスト飛行等で過去に飛行体4が飛行したルートに基づいて生成されてもよいし、飛行体4を利用した撮影又は点検の対象となる対象物の座標に基づいて生成されてもよい。
図6に示すような電力線等の点検の場合には、例えば、後述の経路設定部110の機能によって衝突判定用の飛行経路が生成されてもよい。
【0035】
対象物関連情報記憶部166は、飛行体4を運行させる目的の撮影対象物又は点検対象物に関連する情報を記憶するデータベースである。例えば、
図6に示すような電力線等の点検を飛行体4の運行目的とする場合には、対象物関連情報記憶部166は、点検対象物に関連する各種位置情報を含んでいてもよい。この各種位置情報としては、例えば、支持物の頂点座標、腕金の先端座標、腕金の電力線取付位置に対応する座標、支持物の脚部の座標などの支持物に関連する3次元座標データが挙げられる。支持物に関連する各種3次元座標は、予めユーザがユーザ端末2上に表示される地図情報から選択操作により各部位の位置を選択することにより記憶される水平面上二次元座標(XY座標)情報と、予め記憶された支持物に関連する高さ情報(例えば、支持物の高さ情報、腕金の先端の高さ情報、上記電力線を支持する懸垂碍子の電力線引留点の高さ情報など)に基づき直接または間接的に設定されてもよい。もしくは、支持物に関連する各種3次元座標は、3次元点群データのように予め飛行体を飛行させて実施したセンシングにより取得された情報に基づいて直接または間接的に算出されて当該記憶部に格納されていてもよい。また、これら以外の方法で、支持物に関連する各種3次元座標が取得されていてもよい。対象物関連情報記憶部166は、上記の情報の他にも、電力線に関連する情報、及び、後述の経路設定部110で利用及び/又は算出される各種情報を記憶していてもよい。
【0036】
経路設定部110は、後述の衝突判定部に適用する飛行経路(移動経路)を生成する処理を実行する。飛行経路の生成方法は、前述のとおり、特に限定されない。例えば、経路設定部110は、
図7に示すフローで飛行経路を規定するためのウェイポイント座標を設定してもよい。以下、
図7及び
図8を参照して、当該フローで飛行経路を設定する処理について詳述する。
【0037】
経路設定部110は、まず、各支持物の腕金の電力線取付位置に関する高さ座標を含む第1及び第2の支持物座標を対象物関連情報記憶部166からそれぞれ取得する(
図7のSQ101)。例えば、
図8に例示される支持物P,Qの腕金の電力線取付位置A,Bの3次元座標(より具体的には、腕金の先端から下がる懸垂碍子の電力線引留点A、Bの3次元座標(XYZ座標))をそれぞれ取得する。
【0038】
支持物座標を取得後、経路設定部110は、各支持物座標から所定方向に所定距離ずれた2つの基準座標の中間座標(少なくとも水平面上2次元座標XY座標)を算出する(
図7のSQ102)。所定方向は、例えば、電力線の外側方向であり、特に、水平方向において各支持物座標から上記電力線の延伸方向に対して直交する方向であり得る。所定距離は、ユーザが設定可能な値であり、飛行体4が電力線及び支持物等と接触しない、これら対象物からの安全な離間距離であり得る。例えば、
図8に例示される支持物P、Qの腕金の電力線取付位置A、Bの三次元座標(XYZ座標)のうち高さ座標を所定値(例えば、高さ座標を0)とした位置A’、B’に対して、所定方向に所定距離L(例えば、離隔距離10mなど)ずれた位置A”、B”の三次元座標の中間点Cの中間座標(XYZ座標)を算出する。
【0039】
また、経路設定部110は、中間点Cから上記所定方向とは逆方向に上記所定距離ずれた水平位置に対応する電力線の位置の第1の電力線高さ座標(少なくともZ座標)を取得する(
図7のSQ103)。例えば、
図8に例示される中間点Cから上記所定方向とは逆方向に所定距離Lずれた点D’の直上にある電力線の位置Dの高さ座標を取得する。
【0040】
第1の電力線高さ座標の取得後、経路設定部110は、第1の電力線高さ座標並びに第1及び第2の支持物座標(特に高さ座標)に基づき、電力線の斜弛度を算出する(
図7のSQ104)。電力線の斜弛度とは、
図8に例示される電力線の位置Dから支持物P、Qの位置A、B間を結んだ仮想線までの垂直線の距離dであって、例えば、支持物P、Qの位置A、Bの中間点D”の高さ座標から位置Dの高さ座標を引いた値の絶対値を距離dの値(すなわち斜弛度)として算出もよい。
【0041】
斜弛度の算出後、経路設定部110は、各支持物の位置A、B間の第1の距離、および、当該第1の距離の中心から所定距離離れた第1及び第2の任意ポイントまでの第2及び第3の距離、並びに、上記斜弛度に基づき、上記第1及び第2の任意ポイントにおける第1及び第2の任意点弛度を算出する(
図7のSQ105)。例えば、
図8に例示される各支持物の位置A、B間の径間長、および、当該径間長の中心から所定距離M離れた第1及び第2の任意ポイントまでの第2及び第3の距離(いずれも所定距離M)、並びに、上記斜弛度dに基づき、第1及び第2の任意ポイントD
x1、D
x2における第1及び第2の任意点弛度d
x1、d
x2を算出する。なお、任意ポイントはさらに追加して複数ポイント設けてもよい。なお、任意ポイントは、
図8に例示されるような2つのポイント(D
x1、D
x2)にさらに追加して、複数ポイント設けてもよい。
【0042】
任意点弛度の算出後、経路設定部110は、上記第1及び第2の任意点弛度、および、上記第1及び第2の支持物座標(特に高さ座標)、並びに、上記2つの支持物位置の一方から第1及び第2の任意ポイントまでの第4及び第5の距離に基づき、第1及び第2の任意ポイントの第2及び第3の電力線高さ座標を算出する(
図7のSQ106)。例えば、
図8に例示される第1及び第2の任意点弛度d
x1、d
x2、および、支持物の位置A、Bの上記第1及び第2の支持物座標(特に高さ座標)、並びに、2つの支持物の位置A、Bの一方(A)から第1及び第2の任意ポイントまでの第4及び第5の距離に基づき、第1及び第2の任意ポイントD
x1、D
x2の第2及び第3の電力線高さ座標を算出する。
【0043】
電力線の各ポイント(D,D
x1、D
x2)における高さ座標を算出した後、経路設定部110は、第1及び第2の支持物座標(特に高さ座標)、並びに、第1・第2・第3の電力線高さ座標に基づき、飛行体4の各ウェイポイントの高さ座標として設定する(SQ107)。例えば、
図8に例示される支持物の位置A、Bの高さ座標、並びに、第1・第2・第3の電力線高さ座標(任意ポイントD、D
x1、D
x2の高さ座標)にそれぞれ任意の離隔高さ座標H(Hは0でもよい)を加えた高さ座標を、飛行体4の各ウェイポイントW(W
1~W
5)の高さ座標として設定する。なお、各ウェイポイントWの水平座標情報(XY座標)は、例えば、上記の経路設定過程で算出された位置A”、B”及び中間点Cの座標情報に基づいて算出してもよいし、予めユーザがユーザ端末2上に表示される地図情報から選択操作により各ウェイポイント位置を選択することにより設定されてもよい。
【0044】
経路設定部110は、上記のようなフローで決定した各ウェイポイントW(W1~W5)の3次元座標(XYZ座標)を飛行体4の飛行経路として、経路情報記憶部164に記憶させる。なお、各ウェイポイントWの3次元座標を決定する際に算出又は利用された中間座標Cの中間座標、電力線高さ座標(位置D、DX1、DX2等の高さ座標)、斜弛度(距離d)、任意点弛度(距離dX1、dx2)、所定距離L、所定距離M、支持物間の距離(径間長)、支持物の位置から任意ポイントまでの距離などの情報は、対象物関連情報記憶部166に記憶させてもよい。なお、上述した経路設定手法はあくまでも例示であり、飛行経路は上記以外の方法で生成されてもよい。
【0045】
衝突判定部120は、3次元の仮想空間に飛行予定領域(運行予定領域)の3次元データ及び移動経路を配置し、配置した3次元データと移動経路との接触の有無を判定する処理(以下、「衝突判定処理」と称する)を実行する。以下、飛行予定領域の3次元データとして3次元点群データを利用する場合を例示して、衝突判定処理について詳述する。BIMデータ等の3次元モデルを使用する場合も、以下で例示する3次元点群データを使用する場合と同様にして衝突判定処理を実行すればよい。
【0046】
例えば、衝突判定部120は、飛行体4を飛行させる予定の領域、すなわち飛行予定領域周辺の3次元点群データを、3次元データ記憶部162から読み出し、コンピュータ上で展開される3次元の仮想空間に配置する。この際、3次元点群データが経度、緯度、及び高度の現実世界に対応する3次元座標で表されている場合には、衝突判定部120は、当該3次元座標を仮想空間における直交座標(XYZ座標)に変換する処理を実行してもよい。
図9は、仮想空間に配置された3次元点群データを模擬的に例示した概念図である。
図9に例示される3次元点群データには、各支持物(支持物R及び支持物S)の点群データ、各電力線の点群データ、及び、支持物及び電力線の周辺環境に存在する構造物、樹木等の障害物の点群データが含まれる。
【0047】
また、衝突判定範囲120は、対象の飛行予定領域に設定された飛行経路に関連する情報を経路情報記憶部164から読み出し、読み出した飛行経路を、3次元点群データが配置されている3次元の仮想空間に配置する。この際、飛行経路を示す座標情報(ウェイポイントの座標情報等)が経度、緯度、及び高度の現実世界に対応する3次元座標で表されている場合には、衝突判定部120は、当該3次元座標を仮想空間における直交座標(XYZ座標)に変換する処理を実行してもよい。3次元仮想空間に配置される飛行経路は、
図10で例示するように、各ウェイポイントW(W2a,W2b,W2c)を示す点(
図10に示す黒丸)、及び、各ウェイポイント間を結ぶ仮想直線VL(
図10に示す黒色の太線)で表されてもよい。もしくは、3次元仮想空間に配置される飛行経路は、衝突判定範囲を有する3次元の仮想図形(
図10で破線で囲った領域)で表されてもよい。後者の場合、衝突判定部120は、各ウェイポイントW及び各ウェイポイント間を結ぶ仮想直線VLの周囲に衝突判定範囲を設定し、当該衝突判定範囲を有する飛行経路を3次元の仮想空間に配置する。
【0048】
衝突判定範囲の寸法及び形状は特に限定されず、衝突判定範囲を設定する方法も特に限定されない。例えば、
図11に示すように、各ウェイポイントWにおいて、ウェイポイント間を結ぶ仮想直線VLと直交し、かつ、ウェイポイントを中心とする平面図形を設定する。そして、各ウェイポイントに設定した平面図形の外縁を仮想直線VLに沿って繋ぐことで区画される領域を、衝突判定範囲を有する飛行経路として定めてもよい。
図11の例示では、ウェイポイントを中心とする所定の大きさを有する四角形状の衝突判定範囲を設定している。衝突判定範囲の設定時には、設定する衝突判定範囲の大きさに基づいて、当該四角形の各頂点(角A~角D)の座標を算出し、隣接するウェイポイント間で対応する頂点同士を繋ぐことで区画される3次元図形を飛行経路として設定する。衝突判定範囲の大きさは、特に限定されず、ユーザが設定してもよい。もしくは、衝突判定部120が、ユーザ端末2から飛行体4の種別もしくは飛行体4のサイズ仕様に関する情報を受け付けて、当該情報に基づいて、自動的に衝突判定範囲の大きさを決定してもよい。例えば、飛行体4に対する最小外接図形を特定したうえで、当該最小外接図形の寸法を所定の比率で拡大することで、衝突判定範囲の大きさを決定してもよい。なお、
図11では、仮想直線VLに対する直交面が四角形である衝突判定範囲を例示しているが、当該直交面の形状は特に限定されない。円形もしくは楕円形の直交面を有する衝突判定範囲を設定してもよいし、飛行体のサイズに対応する四角形を当該飛行体の上下及び左右の方向に拡張した十字型形状(+形状)の直交面を有する衝突判定範囲を設定してもよい。その他多角形の直交面を有する衝突判定範囲を設定してもよい。また、衝突判定範囲の上下方向又は左右方向の中心は、ウェイポイント又はウェイポイント間を結ぶ直線からずれていてもよく、例えば、ウェイポイントの上方側よりも下方側の範囲が広くなるように衝突判定範囲を設定してもよい。
【0049】
衝突判定部120は、
図10に示すように3次元点群データ及び飛行経路を3次元仮想空間に配置したうえで、配置した3次元点群データと飛行経路との接触の有無を判定する。「接触の有無」は3次元データと飛行経路との重複があるか否かで判定でき、当該衝突判定処理では、3次元点群データと飛行経路との重複点を検出してもよい。例えば、3次元点群データに含まれる各点の3次元座標と、飛行経路とを対比する。この「対比」とは、例えば、ウェイポイントの3次元座標、及び、仮想直線VL上の3次元座標を含む飛行経路と、3次元点群データに含まれる各点の3次元座標との対比であってもよく、衝突判定範囲を設定した場合には、衝突判定範囲が示す領域(例えば3次元の仮想図形の各頂点の座標等で区画される領域の座標空間)と、3次元点群データに含まれる各点の3次元座標との対比であってもよい。衝突判定範囲を設定した場合の対比においても、ウェイポイントの3次元座標、及び、仮想直線VL上の3次元座標等が参照されてもよい。上記のような対比により、3次元点群データに含まれる各点のうち(飛行予定領域の3次元データに含まれる3次元座標のうち)飛行経路と重複する少なくとも1点が検出された場合は、3次元点群データと飛行経路との「接触有り」と判定し、重複点が1つも検出されなかった場合は、3次元点群データと飛行経路との「接触無し」と判定する。なお、「重複する」とは、3軸上の座標がすべて一致(つまり、X座標、Y座標、Z座標がいずれも一致)することを意味する。
【0050】
上記のような衝突判定処理は、一連の飛行経路(経路情報記憶部164に記憶されている登録単位)に対して一度の処理で実行されてもよいし、飛行経路を所定間隔に区分けしたうえで区間ごとに衝突判定処理を実行してもよい。例えば、支持物で区分けされる区間(複数のウェイポイントを含む区間)ごとに衝突判定処理を実行してもよいし、ウェイポイントで区分けされる区間ごとに衝突判定処理を実行してもよい。なお、飛行予定領域の3次元データがBIMデータ等の3次元モデルで表されている場合には、飛行予定領域に存在する物体ごとに飛行経路との衝突判定処理が実行されてもよい。
【0051】
衝突判定部120は、3次元データと飛行経路との「接触有り」と判定した場合(すなわち、3次元データと飛行経路との重複点が検出された場合)、検出された重複点の3次元座標に基づいて、3次元データと飛行経路との接触位置を特定する接触位置情報を生成してもよい。一の接触位置は、単独の重複点で構成されていてもよいし(つまり、重複点ごとに接触位置情報を生成してもよいし)、複数の重複点で構成されていてもよい。後者の場合、衝突判定部120は、重複点同士の隣接間隔が所定値未満の重複点をまとめて一の接触位置と特定し、これら複数の重複点の3次元座標を含む接触位置情報を生成してもよい。
【0052】
また、衝突判定部120は、3次元データと飛行経路との「接触有り」と判定した場合、飛行経路をウェイポイントで区分けしたうえで、3次元データと飛行経路との接触を検知した区間(重複点もしくは上記接触位置を含む区間)を特定する衝突危険区間情報を生成してもよい。
図10の例では、ウェイポイントW2bとウェイポイントW2cとの間の区間(2つのウェイポイント(W2b,W2c)のいずれか一方又は両方が含まれてもよい)において3次元データとの接触が検知されており、当該接触位置を含むウェイポイントW2b-W2c間が衝突危険区間と特定される。この場合、衝突判定部120は、衝突危険区間を特定するためのウェイポイントW2b及びウェイポイントW2cの3次元座標と、接触位置に関する3次元座標(単一又は複数の重複点の3次元座標)と、を含む衝突危険区間情報を生成してもよい。
【0053】
衝突判定部120が生成した接触位置情報及び/又は衝突危険区間情報は、判定された対象の飛行経路に紐づけられて経路情報記憶部164に登録(記憶)されてもよい。接触位置情報及び/又は衝突危険区間情報は、後述の経路補正部130が実行する処理で利用される。
【0054】
経路補正部130は、上記の衝突判定処理で3次元データに対する接触有りと判定された飛行経路を修正する処理を実行する。飛行経路を修正する方法は、必ずしも限定されない。例えば、接触位置情報及び/又は衝突危険区間情報を利用して、
図12又は
図13に示す方法で飛行経路を修正してもよい。以下、修正経路を生成する処理について例示する。
【0055】
経路補正部130は、衝突危険区間情報により特定される区間に含まれる少なくとも1つのウェイポイントの位置を修正し、当該ウェイポイント位置の修正を反映させた飛行経路を示す修正経路情報を生成してもよい。例えば、
図10の例で衝突危険区間と特定されたウェイポイントW2b-W2cの区間の場合、当該区間の端点に位置するウェイポイントの少なくともいずれか一方の位置を、所定方向に向かって所定距離だけ移動させる(ウェイポイントW2b及びW2cの両方の位置を修正してもよい)。
図12では、当該区間のウェイポイントW2b(
図12における白丸)を高さ方向に向かって所定距離だけずらして、ウェイポイントW2b′で示す位置に修正する場合を例示している。
【0056】
ウェイポイントの位置を修正する際の方向(補正方向)は、高さ方向(Z軸方向)であってもよいし、水平方向(X軸方向及び/又はY軸方向)であってもよいし、高さ方向及び水平方向に対して斜めの方向であってもよく、特に限定されない。例えば、衝突危険区間近傍の障害物に関する3次元データを参照して、障害物から離れる方向を補正方向として設定してもよい。また、障害物に関する3次元データと共に、衝突危険区間近傍の対象物(電力線及び/又は支持物等)に関する3次元データも参照して、障害物から離れる方向であって、かつ、対象物の撮影が可能な方向を補正方向として設定してもよい。ウェイポイントの位置のずらし量(補正距離)も特に限定されず、一定の値だけ座標(X座標、Y座標、又はZ座標)をずらしたうえで、再度、衝突判定部120による衝突判定処理を実施し、3次元データとの接触が無くなるまで一定間隔で座標を修正してもよい。もしくは、接触位置における重複点の分散状態(例えば、接触位置の補正方向における重複点の分散幅)に基づいて、ウェイポイントの補正距離を決定してもよい。この場合も、決定した補正距離でウェイポイントの位置を修正したうえで、再度、衝突判定部120による衝突判定処理を実施し、その衝突判定処理の結果に基づいて補正距離を調整してもよい。
【0057】
図12で例示した上記以外の経路修正方法として、経路補正部130は、接触位置情報に基づいて、飛行経路中に接触回避地点を登録することで、飛行経路を修正してもよい。例えば、経路補正部130は、接触位置に存在する少なくとも1つの重複点を基準点として選択し、当該基準点から所定方向に向かって所定距離だけずれた位置を接触回避地点として登録してもよい。
図13では、バツ印(×)で示す重複点からZ軸上方に向かって所定距離ずれた位置(ウェイポイントW3)を接触回避地点として設定する場合を例示している。経路補正部130は、決定した接触回避地点の3次元座標を飛行経路における新たなウェイポイントとして登録し、当該修正が反映された飛行経路を示す修正経路情報を生成してもよい。
【0058】
図13では一つの接触回避地点を設定する場合を例示しているが、接触位置から2以上の重複点を基準点として選択し、複数の接触回避地点を設定してもよい。基準点として選択する重複点は、ウェイポイント上の重複点であってもよいし、ウェイポイント間を結ぶ仮想直線VL上の重複点であってもよいし、衝突判定範囲の外縁部分に存在する重複点であってもよい。もしくは、接触位置の略中心に位置する重複点を基準点として選択してもよい。
【0059】
選択した基準点から接触回避地点を決定する際の補正方向は、高さ方向(Z軸方向)であってもよいし、水平方向(X軸方向及び/又はY軸方向)であってもよいし、高さ方向及び水平方向に対して斜めの方向であってもよく、特に限定されない。例えば、接触位置近傍の障害物に関する3次元データを参照して、障害物から離れる方向を補正方向として設定してもよい。また、障害物に関する3次元データと共に、接触位置近傍の対象物(電力線及び/又は支持物等)に関する3次元データも参照して、障害物から離れる方向であって、かつ、対象物の撮影が可能な方向を補正方向として設定してもよい。基準点からのずらし量(補正距離)も特に限定されない。例えば、基準点の座標(X座標、Y座標、又はZ座標)を一定の値だけずらした位置を接触回避地点に仮設定したうえで、再度、衝突判定部120による衝突判定処理を実施し、3次元データとの接触が無くなるまで接触回避地点を基準点から所定距離ずつ離していくことで接触回避地点の3次元座標を決定してもよい。もしくは、接触位置における重複点の分散状態(例えば、接触位置の補正方向における重複点の分散幅)に基づいて、基準点からの補正距離を決定してもよい。この場合も、決定した補正距離で接触回避地点を仮設定したうえで、再度、衝突判定部120による衝突判定処理を実施し、その衝突判定処理の結果に基づいて接触回避地点を調整してもよい。
【0060】
なお、衝突判定処理によって複数の重複点が検出されている場合には、当該複数の重複点のうちから、ウェイポイントの飛行区域又はウェイポイント間を結ぶルートに対して所定の方向(例えば高さ方向)で最も近い距離に位置する一の重複点を抽出し、抽出した重複点を、接触回避地点を選定するための基準点に設定してもよい。また、接触位置において複数の接触回避地点を設定してもよい。この場合、設定した複数の接触回避地点のうちから安全な飛行経路を生成できる地点を自動選定してもよい。自動選定の条件は、上記と同様、基準点とする重複点から所定の方向(例えば、高さ方向又は水平方向)に所定の距離以上はなれた位置としてもよい。「所定方向」及び/又は「所定距離」は、予めユーザに設定させておいてもよい(つまりユーザからの入力を受け付けて、「所定距離」及び/又は「所定距離」が設定されてもよい)。
【0061】
経路補正部130によって修正された飛行経路を示す修正経路情報、及び/又は、衝突判定部120によって飛行予定領域の3次元データとの「接触無」と判定された飛行経路を示す適合経路情報は、当該飛行経路の衝突判定結果と紐づけて経路情報記憶部164に記憶されてもよい。また、上記の修正経路情報、及び/又は、適合経路情報は、フライト(例えば支持物、電力線などの点検等を目的とするフライト)において用いられるフライト情報と対応付けて、フライト情報記憶部に登録されてもよい。フライト情報には、修正経路情報、及び/又は、適合経路情報の他に、飛行速度、最低飛行高度、撮像条件情報(撮像画角、撮像角度、撮像画像のオーバーラップ率など)、フライト時取得情報(例えば、画像情報や映像情報等)などが含まれていてもよい。なお、経路補正部130は、修正経路情報を生成する際に、仮想空間上の3次元直交座標(XYZ座標)を現実世界における3次元座標(緯度、経度、高度)に変換する処理を実行してもよい。
【0062】
フライト実行部140は、修正経路情報、及び/又は、適合経路情報と、フライト情報記憶部に記憶された各種フライト情報とに基づき、点検等を目的とする飛行体4のフライトを実行する。飛行体4のフライトにおいて、フライト実行部140は、ウェイポイントの3次元座標などの経路情報(修正経路情報及び/又は適合経路情報)、及び、その他各種フライト情報を、送受信部13を介して飛行体4に伝達し、飛行体4の飛行を制御する。
【0063】
<衝突判定を含む情報処理方法の一例>
図14を参照して、本実施形態に係わる情報処理システムによる情報処理方法について説明する。
図14は、移動経路(飛行経路)の判定及び修正に関わる方法を例示するフローチャートである。
【0064】
まず、ステップSQ201において、衝突判定部120は、運行予定領域(飛行予定領域)の周辺の3次元データ(3次元モデル、3次元点群データ等)を、3次元データ記憶部162から読み出す。また、衝突判定部120は、上記運行予定領域に対応する移動経路を、経路情報記憶部164から読み出す。
【0065】
次に、ステップSQ202において、衝突判定部120は、移動経路に含まれる各ウェイポイント、及び、ウェイポイント間を結ぶ直線の周囲に衝突判定範囲を設定し、衝突判定範囲を有する移動経路を生成する。当該ステップSQ202は、必ずしも実施されなくともよいが、ステップSQ202を実施することで、移動経路の安全性をより高めることができる。
【0066】
次に、ステップSQ203において、衝突判定部120は、上記運行予定領域周辺の3次元データ及び上記移動経路を、コンピュータ上で展開される3次元の仮想空間に配置する。そして、衝突判定部120は、仮想空間上で、3次元データと移動経路との接触の有無を判定する衝突判定処理を実行する(ステップSQ204)。当該ステップSQ204において、3次元データと移動経路との重複点が1つも検知されず、「接触無し」と判定された場合には、当該移動経路は障害物との接触可能性が低い安全な経路であると判断し、処理を終了する。
【0067】
一方で、ステップSQ204において、3次元データと移動経路との重複点が少なくとも1つ検知され、「接触有り」と判定された場合には、衝突判定部120は、3次元データと移動経路との接触位置を特定する接触位置情報、及び/又は、3次元データと移動経路との接触を検知した区間(重複点もしくは上記接触位置を含む区間)を特定する衝突危険区間情報を生成する。「接触有り」と判定された場合は、その後、ステップSQ205へ移行し、当該ステップSQ205において、経路補正部130が、移動経路を修正する処理を実行する。
【0068】
ステップSQ205における経路修正方法は必ずしも限定されない。例えば、経路補正部130は、衝突危険区間情報により特定される区間に含まれる少なくとも1つのウェイポイントの位置を修正し、当該ウェイポイント位置の修正を反映させた移動経路を示す修正経路情報を生成してもよい。もしくは、経路補正部130は、接触位置情報に基づいて移動経路中に接触回避地点を登録することで、移動経路を修正し、修正した移動経路を示す修正経路情報を生成してもよい。経路補正部130により修正経路情報が生成された後には、再度、ステップSQ203に移行し、修正後の移動経路を3次元仮想空間に配置して衝突判定処理を実行する。ステップSQ203~ステップSQ205までのフローは、衝突判定部120により「接触無し」の判定結果が得られるまで繰り返してもよい。
【0069】
本実施形態に係わる情報処理システムが、衝突判定部120による機能を有することで、障害物との衝突リスクを現地に赴かずとも評価することができる。また、作業者の目測で衝突リスクを判断する従来の方法よりも正確に、障害物との衝突リスクを評価することができる。衝突判定部120により3次元データとの接触有りと判定された場合には、上述の経路補正部130による機能に基づいて移動経路を修正することで、障害物との衝突リスクの低い安全な移動経路を設計できる。
【0070】
上述した実施形態は、本開示の理解を容易にするための例示に過ぎず、本開示を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本開示にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【0071】
例えば、上記実施形態では主として飛行体の飛行経路の設計について述べたが、本開示で対象とする移動体は、飛行体に限らず、UGVなどの地上走行型の移動体であってもよいし、海上などの水上を航行する移動体であってもよい。飛行体以外の移動体を対象とする場合には、実施形態中の「飛行予定領域」「飛行経路」等の記載を「運行予定領域」「移動経路」等と読み替えて解釈すればよい。
【0072】
また、上記実施形態では、移動体を主として電力線及び支持物等の点検目的で運行する場合の移動経路について述べたが、点検対象物は特に限定されず、工場内の配管、所定の構造物内及び/又は構造物外などを点検対象とした運行であってもよい。また、移動体の運行目的は、点検目的に限られず、警備、インフラ等の監視、測量、災害対応等を目的とした運行時に、本開示の情報処理システム等を利用した経路設計を適用してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 管理サーバ
2 ユーザ端末
4 飛行体
【要約】
【課題】移動体の経路設計を支援するための情報処理システム、情報処理方法、及び、プログラムを提供すること。
【解決手段】運行予定領域の周辺の3次元データを記憶する3次元データ記憶部と、運行予定領域における移動体の移動経路を記憶する経路情報記憶部と、3次元の仮想空間に運行予定領域周辺の3次元データ及び移動経路を配置し、3次元データと移動経路との接触の有無を判定する衝突判定部と、を備える情報処理システム。
【選択図】
図14