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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】防護柵および支柱
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
E01F7/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020059981
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156125
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500407651
【氏名又は名称】株式会社ビーセーフ
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】堀 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 秀士
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-047217(JP,A)
【文献】特開2002-302911(JP,A)
【文献】財団法人 砂防・地すべり技術センター,インパクトバリア工法 建設技術審査証明(砂防技術)報告書,日本,財団法人 砂防・地すべり技術センター,2011年09月,p14-p20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、前記支柱間に張設される防護ネットと、前記支柱に掛け留めるロープ材とを有する防護柵であって、
前記支柱の上部に設けるロープ材の少なくとも一端側の端末部が予めリング状に形成されており、前記支柱の上部に設けたロープ位置決め部材に掛け留められること、
前記ロープ位置決め部材は、前記支柱の上部外周部に突設されるアーム部と前記アーム部から立ち上がる立ち上がり部とを有し、前記支柱と前記ロープ位置決め部材とが形成する溝部は、前記支柱に沿って形成され、かつ上方が開口された凹溝を呈すること、
前記溝部内に、上方から前記支柱の頭部を通過させて前記支柱に沿って落とし込み掛け留めたロープ材端末部のリング部が位置決めされること、
前記ロープ位置決め部材は、前記アーム部を前記防護ネットの張設方向と略直交する方向に向けて前記支柱の軸線を対称軸とする線対称の位置に2つ設けられ、前記立ち上がり部はプレート部材であり、前記プレート部材の平面部が前記防護ネットの張設方向と平行する方向に設けられていること、
前記防護ネットの張設方向と略直交する方向に取り付けられる前記ロープ材は、前記ロープ材端末部のリング部が前記支柱の頭部と前記支柱の頭部よりも前記ロープ材の他端側に近い方の前記プレート部材とを収容するように掛け留められていることを特徴とする、防護柵。
【請求項2】
前記支柱と前記ロープ位置決め部材の立ち上がり部との間に、位置決めされた前記リング部の抜け止め部材が脱着可能に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載した防護柵。
【請求項3】
前記アーム部は、前記支柱を貫通する棒鋼であることを特徴とする、請求項1又は2に記載した防護柵。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載の防護柵に用いる支柱であって、
前記支柱の上部外周部に突設されるアーム部と前記アーム部から立ち上がる立ち上がり部とを有するロープ位置決め部材を備えていることを特徴とする、支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落石、土砂等の落下物を捕捉するため、或いは雪崩を未然に防ぐために山の斜面等に設置される防護柵や雪崩予防柵(以下適宜、防護柵と総称する。)の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、落石や土砂等の落下物を捕捉するために山の斜面に設置される防護柵は種々開示され実施に供されている(例えば、特許文献1~3参照)。
防護柵を山の斜面に設置する場合、山の斜面は縦断方向・横断方向ともに起伏が存在し一様の斜面ではなく、さらに起伏が激しく起伏の予測がつかない場合が多い。そのため、支柱と支柱、または支柱とアンカー(地盤)を繋ぐワイヤロープ等のロープ材は現場で長さを調整しなければならず、所謂現場合わせの作業を行う必要があった。
【0003】
具体的には、適当な長さの多数本のロープ材を現場に持ち込み、現場で必要長さに切断し、ロープ材の端部を折り返し、ワイヤグリップで締結してループを形成し、このループを取り付け対象の支柱に掛け留め、さらには支柱と支柱(又は支柱とアンカー)に掛け渡し、架け渡した後に前記ワイヤグリップを操作してロープ材に緊張を加える作業を1本ずつ行っていた(例えば、特許文献1の段落[0017]、図2のずれ止めピン11、及び特許文献3の段落[0019]を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-12249号公報
【文献】特開2016-148139号公報
【文献】特許第6654268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な防護柵は、1スパン(支柱間隔)当たりワイヤグリップを50個ほど使用する必要がある。そうすると、1スパン長さを5mとして延長50mの防護柵を設置するには、単純計算で500個ほどのワイヤグリップを使用しなければならない。また、斜面での現場作業という厳しい作業環境のもとでのワイヤグリップの締結固定作業は煩雑で非常に労力を要する。
【0006】
仮に、ワイヤグリップの使用個数を大幅に低減することができれば、ワイヤグリップ自体のコストを大幅に低減できる上に、ワイヤグリップの煩雑な締結固定作業も大幅に低減できるので、施工性、経済性ともに優れた防護柵を実現できる等、非常に有益であることは明らかである。
【0007】
本発明は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ワイヤグリップの使用個数を大幅に低減する構造を実現することにより、施工性、経済性に優れた防護柵および支柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る防護柵は、支柱と、前記支柱間に張設される防護ネットと、前記支柱に掛け留めるロープ材とを有する防護柵であって、
前記支柱の上部に設けるロープ材の少なくとも一端側の端末部が予めリング状に形成されており、前記支柱の上部に設けたロープ位置決め部材に掛け留められること、
前記ロープ位置決め部材は、前記支柱の上部外周部に突設されるアーム部と前記アーム部から立ち上がる立ち上がり部とを有し、前記支柱と前記ロープ位置決め部材とが形成する溝部は、前記支柱に沿って形成され、かつ上方が開口された凹溝を呈すること、
前記溝部内に、上方から前記支柱の頭部を通過させて前記支柱に沿って落とし込み掛け留めたロープ材端末部のリング部が位置決めされること、
前記ロープ位置決め部材は、前記アーム部を前記防護ネットの張設方向と略直交する方向に向けて前記支柱の軸線を対称軸とする線対称の位置に2つ設けられ、前記立ち上がり部はプレート部材であり、前記プレート部材の平面部が前記防護ネットの張設方向と平行する方向に設けられていること、
前記防護ネットの張設方向と略直交する方向に取り付けられる前記ロープ材は、前記ロープ材端末部のリング部が前記支柱の頭部と前記支柱の頭部よりも前記ロープ材の他端側に近い方の前記プレート部材とを収容するように掛け留められていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した防護柵において、前記支柱と前記ロープ位置決め部材の立ち上がり部との間に、位置決めされた前記リング部の抜け止め部材が脱着可能に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載した発明は、請求項1又は2に記載した防護柵において、前記アーム部は、前記支柱を貫通する棒鋼であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載した発明に係る支柱は、請求項1~のいずれかに記載の防護柵に用いる支柱であって、前記支柱の上部外周部に突設されるアーム部と前記アーム部から立ち上がる立ち上がり部とを有するロープ位置決め部材を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る防護柵および支柱によれば、以下の効果を奏する。
(1)支柱の上部構造にロープ位置決め部材を設ける等の工夫を施したことにより、前記支柱の上部に設けるロープ材を、一端部がロック加工(工場加工)されたロープ材等、予め端末部がリング状に形成されたもので実施することができるようになった。よって、ワイヤグリップの使用個数を大幅に低減(上部に設けるロープ材においては半減)できるので、ワイヤグリップ自体のコストを大幅に低減できる上に、ワイヤグリップの煩雑な締結固定作業も大幅に低減できる。したがって、施工性、経済性に優れた防護柵を実現することができる。
また、上部ロープ材(ワイヤロープ)の一端部をロック加工にすると加工効率が10~15%向上することから、上部ロープ材の耐力増加または細径化、軽量化に寄与することができる。
さらに、上部ロープ材をワイヤグリップにて締結固定した場合、時間の経過とともにワイヤグリップのナットが緩む傾向があることから、ワイヤグリップの締め直しなど定期的にメンテナンス必要があるが、本発明であれば、ロック加工している端部においては、工場にて機械的に加工固定していることからメンテナンスフリーになる利点もある。
(2)防護ネット(金網)に衝撃等の外力が作用した場合に、支柱は衝撃が作用した方向に回転しようとするが、請求項7に係る発明により、前記支柱の回転をシンプルな構成で確実に防止できることにより、ロープ材により前記支柱の回転が拘束されるので、衝撃荷重等の外力を受けた場合においても支柱の安定した姿勢制御が可能となり、防護柵としての構造設計通りの性能を発揮することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る防護柵の全体構成を例示した正面図である。
図2】本発明に係る防護柵の全体構成を例示した平面図である。図中の符号Uが山側であり、符号Dが谷側である。なお、部分拡大図において、抜け止め部材(7)は図示の便宜上省略した。
図3】本発明に係る防護柵の全体構成を例示した側面図である。図中の符号Uが山側であり、符号Dが谷側である。
図4】Aは、本発明に係る支柱の全体構成を例示した正面図であり、Bは、同側面図である。
図5】Aは、図4に係る支柱の上部構造における抜け止め部材及びその周辺を示した平面図であり、Bは、同支柱の上部構造におけるロープ位置決め部材を示した平面図である。
図6図4のX-X線矢視断面図である。
図7】A~Cは、本発明に係る防護柵の支柱上部へのロープ材の取り付け手順を段階的に例示した立面図である。
図8】A、Bは、請求項7に係る防護柵の支柱上部へのロープ材の取り付け状況の要部を段階的に例示した平面図である。
図9】本発明に係る防護柵の支柱上部に防護ネットの形態保持のために設けるロープ材の取り付け状況の要部を例示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る防護柵および支柱の実施例を図面に基づいて説明する。
【0019】
本発明に係る防護柵は、図1図3に示したように、設置面(地面)20に間隔をあけて立設された支柱1と、前記支柱1間に張設される防護ネット2と、前記支柱1に掛け留めて形態保持に供されるロープ材3、4とを有する防護柵10である。
前記支柱1の上部に設けるロープ材3は予め端末部がリング状に形成されており、前記支柱1の上部に設けたロープ位置決め部材5に掛け留められる。
前記ロープ位置決め部材5は、前記支柱の上部外周部に突設されるアーム部51と前記アーム部51から立ち上がる立ち上がり部52とを有し、前記支柱1と前記ロープ位置決め部材5とが形成する溝部6内に、前記支柱1の頭部へ掛け留めたロープ材3端末部のリング部3aが位置決めされる。
ちなみに図中の符号Uは山側、符号Dは谷側を示している。
【0020】
要するに、本発明は、防護柵10の主たる構成部材である支柱1と防護ネット2とロープ材(ワイヤロープ)3、4のうち、支柱1と、支柱1の上部に設けるロープ材3に工夫を施した発明である。
なお、本実施例では、落石、土砂等の落下物を捕捉するために山の斜面20に設置される防護柵(落石防護柵)10について説明するが、本発明の適用対象物は落石防護柵に限らず、雪崩を未然に防ぐために山の斜面等に設置される雪崩予防柵も含まれる。
以下適宜、支柱の上部に設けるロープ材3を上部ロープ材3、支柱の下部に設けるロープ材4を下部ロープ材4という。
【0021】
図1図3に示した防護柵10は具体的に、設置面20に対し所定(図示例では5m程度)の間隔をあけて立設された複数(図示例では4本)の支柱1間に防護ネット2が張設された上に形態保持用の上部ロープ材3、下部ロープ材4を緊張させて固定した構造で実施されている。
図示例に係る防護柵10は、あくまでも一例であり、落石を捕捉することを目的として設置された落石防護柵10であれば形態は問わない。また、図示例に係る防護柵10の柵幅は本実施例では15m程度で実施しているが勿論これに限定されず、設置する山の性状等に応じて適宜増減される。これに応じて支柱1の本数も適宜増減される。さらに、柵高、すなわち支柱1の高さは、通常、設置面20から2~4m程度の高さに設定される場合が多いが、想定される落石のサイズ等に応じて適宜設計変更可能である。
【0022】
ちなみに図2図3で示す上部ロープ材3、下部ロープ材4について更に詳しく説明すると、符号31は谷側控え上部ロープ材、符号41は谷側控え下部ロープ材、符号15は支柱アンカー(ロックボルト)を示している。
また、符号32は谷側サイド控え上部ロープ材、符号33は山側サイド控え上部ロープ材、符号16は控えロープ固定金具を示している。
さらに、符号34は山側控え上部ロープ材、符号42は山側控え下部ロープ材、符号25は支柱アンカー(ワイヤアンカー)を示している。
なお、平面方向からみると、図3に示す谷側控え下部ロープ材41は、前記谷側控え上部ロープ材31と重合状態にあるため図2には表れない。同様に、図3に示す山側控え下部ロープ材42は、前記山側控え上部ロープ材34と重合状態にあるため図2には表れない。また、図1に示す防護柵10の左右に延びる下部控えロープ材4は、谷側サイド控え下部ロープ材又は山側サイド控え下部ロープ材を指すが、前記谷側、山側のサイド控え上部ロープ材32、33とそれぞれ重合状態にあるため図2には表れない。
【0023】
本発明の特徴をなす前記支柱1は、鋼管が用いられ、図4図5に示したように、その上部に、前記支柱1の上部外周部に突設されるアーム部51と、前記アーム部51から立ち上がる立ち上がり部52と、を有するロープ位置決め部材5が設けられている。
本実施例では、前記アーム部51に棒鋼を用い、前記棒鋼51を前記支柱1に略水平に貫通させて略均等に突き出させた状態で溶接等の接合手段により前記支柱と一体化させている。そして、前記立ち上がり部52には金属製のプレート部材を用い、前記プレート部材52を前記棒鋼51の突き出し部のやや外寄り位置から略鉛直に立ち上がる姿勢で、溶接等の接合手段により前記棒鋼51と一体化させている。
前記支柱(鋼管)1のサイズは、一例として、径(φ)114.3mm、高さ3300mmで実施されている。前記アーム部(棒鋼)51のサイズは、一例として、径(φ)43mm、長さ360mmで実施され、支柱1の3050mm程度の高さ位置に、左右に122mm突き出させた状態で溶接接合されている。前記立ち上がり部(プレート部材)52のサイズは、一例として、縦250mm、横100mm、板厚19mmの平鋼で実施され、前記溝部6を形成するように、前記支柱1から60mmの間隔をあけて前記アーム部(棒鋼)51に溶接接合されている。これらのサイズ、前記アーム部51の取り付け高さ等は構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
ちなみに、図中の符号1aは蓋材、符号11はベースプレート、符号12はロープ拘束部材、符号13は脱着可能なロープ抜け止め部材、符号14はアンカー部材を示している(図6も参照)。
【0024】
なお、前記アーム部51と前記立ち上がり部52とからなる前記ロープ位置決め部材5の構成は、もちろん図示例に限定されず、前記支柱1の頭部から落とし込まれる前記上部ロープ材3(径(φ)20~22mm程度)のリング部3aを確実に受け止めて収容することが可能な形態と強度を備えた溝部6を形成できることを条件に、自在に設計変更可能である。
【0025】
ちなみに、本実施例では、前記支柱1と前記立ち上がり部52との間に、前記溝部6内に落とし込まれた上部ロープ材3のリング部3aを、衝撃等で溝部6外へ脱落させないための抜け止め部材7が脱着可能に設けられている。本実施例に係る抜け止め部材7は、ボルト71とナット72を用い、前記支柱1を略水平に貫通させたボルト71を、立ち上がり部52を介してナット72で締結する手段で実施しているが、これに限定されない。前記リング部3aを、溝部6外へ脱落させない構成を実現できるのであれば適宜設計変更可能である。
【0026】
前記ロープ位置決め部材5は、前記支柱1の軸線を対称軸とする線対称の位置に2つ設けて実施しているが、これに限定されない。前記上部ロープ材3(のリング部3a)を支柱1の頭部へ掛け止めた状態を安定状態で保持できることを目的とする場合は、前記ロープ位置決め部材5は1つでも実施可能である。
【0027】
もっとも、本実施例に係るロープ位置決め部材5は、前記上部ロープ材3(のリング部3a)を安定状態で保持できることに加え、防護ネット2に衝撃等の外力が作用した場合に前記支柱1の回転を防止できることを目的とした構成で実施している。そのため、本実施例に係る前記ロープ位置決め部材5は、前記支柱1の軸線を対称軸とする線対称の位置に2つ設け、かつ、そのアーム部(棒鋼)51を前記防護ネット2の張設方向と略直交する方向に向けて設けており、さらに、前記ロープ位置決め部材5の立ち上がり部(プレート部材)52の平面部が、前記防護ネット2の張設方向と平行する方向に設けられて実施している(図3図7図8等参照)。そして、上記構成の支柱1に対し、前記防護ネット2の張設方向と略直交する方向に取り付けられる前記上部ロープ材3(山側控え上部ロープ材34)を、図8Aに示したように、そのリング部3aが前記支柱1の頭部と前記頭部よりも手前側のプレート部材52とを収容するように掛け留めて、さらには図8Bに示したように、緊張を加えて架け渡して実施している。
【0028】
前記上部ロープ材3は、支柱1の上部に掛け留める側の一方の端末部に予めリング状に形成するべくロック加工を施したワイヤロープ(φ20~22mm程度)が好適に用いられる。他方の端部は、前記上部ロープ材3の端部を折り返しつつ緊張を加え、適宜ワイヤグリップを取り付ける手法を採用する。
このように、従来は例えば特許文献1の図2に示したように、上下二段にずれ止めピン11を設けた構成ではロック加工を施したワイヤロープ3は適用不能であったところ、今般、ずれ止めピン11に代えて上記構成のロープ位置決め部材5を設けたことにより、ロック加工を施したワイヤロープ3が適用可能となった。
【0029】
その他、前記防護ネット2は、金網、アラミド繊維等の網状体が好適に用いられ、支柱1に架け渡したロープ材3、4やらせん状のコイル等を介して張設される。
【0030】
かくして、上記構成の防護柵10は、先ず、所定の位置に所要の本数の前記支柱1を立設し、前記各支柱1の上部に前記構成の上部ロープ材3を緊張を加えて取り付け、具体的には図7A~Cに段階的に示したように、前記溝部6内に上部ロープ材3のリング部3aを落とし込んだ後に抜け止め部材7を取り付けて、次に、前記支柱1の下部に下部ロープ材4を緊張を加えて取り付けると共に、防護ネット2を張設して構築する。ちなみに、図9は、防護ネット2の形態保持のために取り付ける上部ロープ材3の取り付け状況を例示したものである。
【0031】
したがって、上記構成の防護柵10によれば、下記する作用効果を奏する。
(1)前記ロープ位置決め部材5を上部に設けた支柱1で実施することにより、前記支柱1の上部に設けるロープ材3を、一端部がロック加工(工場加工)されたロープ材3等、予め端末部がリング状に形成されたもので実施することができるようになった。よって、
ワイヤグリップの使用個数を大幅に低減(上部に設けるロープ材3においては半減)できるので、ワイヤグリップ自体のコストを大幅に低減できる上に、ワイヤグリップの煩雑な締結固定作業も大幅に低減できる。したがって、施工性、経済性に優れた防護柵10を実現することができる。
また、上部ロープ材(ワイヤロープ)3の一端部をロック加工にすると加工効率が10~15%向上することから、上部ロープ材3の耐力増加または細径化、軽量化に寄与することができる。
さらに、上部ロープ材3をワイヤグリップにて締結固定した場合、時間の経過とともにワイヤグリップのナットが緩む傾向があることから、ワイヤグリップの締め直しなど定期的にメンテナンス必要があるが、本発明であれば、ロック加工している端部においては、工場にて機械的に加工固定していることからメンテナンスフリーになる利点もある。
【0032】
(2)また、本発明は、前記段落[0027]で説明したように、前記上部ロープ材3(山側控え上部ロープ材34)を、図8Aに示したように、そのリング部3aが前記支柱1の頭部と前記頭部よりも手前側のプレート部材52とをまとめて収容するように掛け留め、さらには図8Bに示したように、緊張を加えて前記プレート部材52の両端部を前記リング部3aの内周部でしっかり拘束することにより、前記プレート部材52、ひいては支柱1の回転を確実に防止することができる。
すなわち、従来は、支柱に設置したロープ材(ワイヤロープ)が衝撃等の外力を受けた際、ロープ材の前後方向の移動は従前のロープ材の緊張効果により抑制されるものの、防護ネット(金網)に衝撃等の外力が作用した場合、衝撃が作用した方向への支柱の回転はほとんど抑制することができなかった。これでは、支柱の回転とともにロープ材が変形する(撓む)おそれがあり、その結果、ロープ材の引張耐力が十分に発揮されなくなってしまい、防護柵に期待された性能を発揮することができなくなる課題があったが、今般、前記したように、前記支柱1の回転をシンプルな構成で確実に防止できることにより、ロープ材3の回転が防止(挙動が拘束)されるため、衝撃荷重等の外力を受けた場合においても支柱1の安定した姿勢制御が可能となり、防護柵10としての構造設計通りの性能を発揮することができるようになった。
【0033】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、前記ロープ位置決め部材5を構成する立ち上がり部(プレート部材)52の形態は、構造設計に応じて自在に設計変更可能であるが、前記[0032]に記載した支柱1の回転防止効果を目的として実施する場合は、前記支柱1の径と比し、あまりにかけ離れた幅寸で実施しないこと、更にいえば、ある程度に近い幅寸で実施した方がよい。
【符号の説明】
【0034】
1 支柱
1a 蓋材
2 防護ネット
3 ロープ材(上部ロープ材)
3a リング部
31 谷側控え上部ロープ材
32 谷側サイド控え上部ロープ材
33 山側サイド控え上部ロープ材
34 山側控え上部ロープ材
4 ロープ材(下部ロープ材)
41 谷側控え下部ロープ材
42 山側控え下部ロープ材
5 ロープ位置決め部材
51 アーム部(棒鋼)
52 立ち上がり部(プレート部材)
6 溝部
7 抜け止め部材
71 ボルト
72 ナット
10 防護柵
11 ベースプレート
12 ロープ拘束部材
13 脱着可能なロープ抜け止め部材
14 アンカー部材
15 支柱アンカー(ロックボルト)
16 控えロープ固定金具
20 設置面(地面)
25 支柱アンカー(ワイヤアンカー)
U 山側
D 谷側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9