(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】携帯機器の保持装置
(51)【国際特許分類】
H04M 1/11 20060101AFI20241021BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20241021BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241021BHJP
B62J 99/00 20200101ALI20241021BHJP
【FI】
H04M1/11 Z
B60R7/04 Z
B60R11/02 T
B62J99/00
(21)【出願番号】P 2018216768
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】倉持 竜太
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】衣鳩 文彦
【審判官】丸山 高政
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0187829(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0263931(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1717019(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/04
H04M 1/05
H04M 1/11
B60R 7/04
B60R11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機器を保持する保持装置であって、それ自身を他所へ着脱可能に取り付ける取付手段を有し、前記保持装置は、平面矩形状を呈した装着基盤とこの装着基盤の上に被せられるカバープレートから成り前後方向に摺動口を有する筐体と、この筐体の内部中央部に回転自在に軸着されたピニオンとラチェットを重ね合わせて設けた回転制御円盤と、この回転制御円盤の前記ピニオンの両側にそれぞれ噛み合う
ラック部を有し前記摺動口から互いに向き合う方向へ挿入された前記携帯機器の第1係合部と第2係合部を有する第1保持部材及び第2保持部材と、これらの第1保持部材と第2保持部材を
解放位置に向けてスライド付勢させる弾性部材と、前記筐体の一側部に前記回転制御円盤側へスライド付勢して設けられたところの前記ラチェットと噛み合う噛合爪を有する係止爪部材とを有することを特徴とする、携帯機器の保持装置。
【請求項2】
前記取付手段は、自転車や自動二輪車のハンドルへ着脱可能に取り付けられる構成であることを特徴とする、請求項1に記載の携帯機器の保持装置。
【請求項3】
前記取付手段は、人間の腕に着脱可能に取り付けることのできる構成であることを特徴とする、請求項1に記載の携帯機器の保持装置。
【請求項4】
前記取付手段は、自動車のダッシュボードへ着脱可能に取り付けることのできる構成であることを特徴とする、請求項1に記載の携帯機器の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置に関し、とくに、携帯電話等の携帯機器を着脱可能に保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車内で使用者が把持することなく自由に使用できるようにした携帯電話用の保持装置が各種提案されており、例えば、下記の特許文献1や特許文献2に記載されたものが公知である。この特許文献1に記載の保持装置は、携帯電話を保持する保持機構が、携帯電話の大きさに合わせて予め手動で調節されるものであり、特許文献2に記載の保持装置は、携帯電話が挿入可能な挿入穴の内壁面に設けられたエアバックへの空気の供給により携帯電話を固定するように調節されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-203525号公報
【文献】特開2001-103140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の保持装置においては、保持する携帯電話の大きさに合わせて予め保持装置を手動で調節する必要があるので、大きさが異なるその他の携帯電話を保持させるときに手間がかかり、特許文献2に記載の保持装置においては、様々な大きさの携帯電話を保持できるが、エアバックに空気の供給を行う空気供給手段を自動車に設ける必要があり、設置するのに手間がかかる。
【0005】
そのため、大きさが異なる様々な携帯電話を簡単に保持することができ、その保持の操作が空気供給手段等を設けずに手動で行うことができる保持装置が要望されていた。とくに、スマートフォンのように、通話機能だけでなく、ナビケーション機能や、音楽再生機能を有する多機能な携帯電話や、その他の様々な大きさの持ち運び可能な携帯機器の普及に伴い、自動車だけでなく、使用者の身体や自転車や自動二輪車に用いることができ、大きさが異なる様々な携帯機器を簡単に保持することができるものが要望されている。
【0006】
以上より、本発明が解決しようとする課題は、大きさが異なる様々な携帯電話等の携帯機器を簡単に保持することができ、その保持操作や取り外しの操作を簡単に行うことができた上で、とくに振動や揺れの激しい箇所に取り付けても携帯機器が脱落してしまうことのない保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願請求項1発明は、携帯機器を保持する保持装置であって、それ自身を他所へ着脱可能に取り付ける取付手段を有し、前記保持装置は、平面矩形状を呈した装着基盤とこの装着基盤の上に被せられるカバープレートから成り前後方向に摺動口を有する筐体と、この筐体の内部中央部に回転自在に軸着されたピニオンとラチェットを重ね合わせて設けた回転制御円盤と、この回転制御円盤の前記ピニオンの両側にそれぞれ噛み合うラック部を有し前記摺動口から互いに向き合う方向へ挿入された前記携帯機器の第1係合部と第2係合部を有する第1保持部材及び第2保持部材と、これらの第1保持部材と第2保持部材を解放位置に向けてスライド付勢させる弾性部材と、前記筐体の一側部に前記回転制御円盤側へスライド付勢して設けられたところの前記ラチェットと噛み合う噛合爪を有する係止爪部材とを有することを特徴とする。
【0013】
さらに、本願請求項2発明は、前記取付手段が、自転車や自動2輪車のハンドルへ着脱可能に取り付けられる構成であることを特徴とする。
【0014】
さらに、本願請求項3発明は、前記取付手段が、人間の腕に着脱可能に取り付けることのできる構成であることを特徴とする。
【0015】
さらに、本願請求4発明は、前記取付手段が、自動車のダッシュボードへ着脱可能に取り付けることのできる構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように構成したので、請求項1発明によれば、取付手段で様々なところに取り付けた筐体上に携帯機器を保持機構によって着脱可能に保持でき、この保持機構によって保持された携帯機器をロック・解除機構でワンタッチでロックしたり解除したりすることができるものである。
【0022】
請求項2から4発明によれば、自転車や自動2輪車、人間の腕、或は自動車のダッシュボードなど携帯機器を取り付けて携帯機器の持つ各種機能を利用することができ、利便性が向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態の保持装置を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す保持装置の動作を説明する平面図であり、(a)は携帯機器を保持している状態を示し、(b)は(a)の状態からラチェット機構を操作して第1保持部材と第2保持部材が外側へ開かれた状態を示している。
【
図4】
図1に示す保持装置の装着基盤を示し、(a)はその斜視図、(b)はそのA-A線断面図である。
【
図5】
図1に示す保持装置のカバープレートを示し、(a)はその斜視図、(b)はそのB-B線断面図である。
【
図6】
図1に示す保持装置の係止爪部材を示し、(a)はその平面図、(b)はそのC-C線断面図である。
【
図7】
図1に示す保持装置の回転制御円盤を示し、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその底面図である。
【
図8】
図1に示す保持装置のロック・解除機構のロック解除状態を示し、(a)はその側面図、(b)はその一部断面平面図である。
【
図9】本発明に係る保持装置の使用方法を示す説明図であり、(a)は保持装置でスマートフォンを保持する前の状態を示し、(b)はスマートフォンを保持した状態を示し、(c)はスマートフォンを保持状態から取り外す前の状態を示し、(d)はスマートフォンを保持装置から取り外した状態を示している。
【
図10】本発明に係る保持装置の取付手段の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図11】本発明に係る保持装置の取付手段のさらに他の実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る保持装置1の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、携帯機器としてスマートフォンを例に挙げて説明するが、本発明に係る保持装置はこれに限定されず、タブレットPC(Personal Computer)、ノートPC、その他の様々な携帯機器を保持するのに用いることができる。したがって、この理由により、以下の説明では携帯機器をスマートフォン100として説明するが、請求項では携帯機器と記載する。
【0025】
本実施形態に係る保持装置1は、
図1~9に示すように、筐体2と、この筐体2に装備され、当該筐体2上に載置されたところのスマートフォン100の端部を保持する保持機構Hと、同じく筐体2に装備され、保持機構Hによる前記スマートフォン100の保持状態をロック或は解除するロック・解除機構Rとで構成されている。
保持機構Hは、筐体2の前後方向或は左右方向において互いに対向する方向にスライド付勢されて設けられたところの一対の第1保持部材6及び第2保持部材7と同期スライド機構Sとで構成されており、第1保持部材6と第2保持部材7には、それぞれスマートフォン100の端部を挿入係止させる第1係合部6cと第2係合部7cが設けられている。
【0026】
さらに、同期スライド機構Sは、筐体2内部に回転自在に設けられたピニオン5bと、第1保持部材6と前記第2保持部材7にそれぞれ設けられ、前記ピニオン5bに互いに対向する側において噛み合うラック部6f、7fとで構成されており、同期スライド機構Sは、ラチェット機構Lで構成されている。さらに、同期スライド機構Sのピニオン5bが、前記ロック・解除機構Rのラチェット5aと、互いに重ね合わされて回転制御円盤5を構成している。
【0027】
さらに、取付手段9、9A及び9Bは、自転車や自動2輪車のハンドルは人間の腕や、自動車のダッシュボードへ着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0028】
筐体2は、装着基盤3と、装着基盤3よりも保持されるスマートフォン100側に位置しスマートフォン100と当接する当接面4eを有するカバープレート4と、を有する。装着基盤3は、スマートフォン100と当接する矩形状の本体部3aと、本体部3aの一方の長辺から、カバープレート4が配置する側に隆起して形成された第1側壁3jと、第1側壁3jに対向するように、もう一方の長辺から形成された第2側壁3pと、を有し、カバープレート4は、本体部3aと対向する矩形状の本体部4aと、本体部4aの周縁から装着基盤3が配置する側に隆起して形成された周壁4jと、を有する。
【0029】
装着基盤3の第1側壁3j、第2側壁3pは、先端に平坦な当接面3k,3rが形成されており、カバープレート4の周壁4jは、先端に当接面3k、3rと当接する当接面4kが形成されている。当接面3k、3rには、ボス孔3m、3sが形成されており、当接面4kには、ボス孔3m、3sに嵌合するように形成され、ボス孔3m、3sの内部に形成されたネジ孔3n、3tとそれぞれ繋がるネジ穴4nを有する位置決めボス4mが形成されている。
【0030】
ボス孔3m、3sに位置決めボス4mを勘合して位置決めすると、装着基盤3の本体部3aの一対の溝3eの間に形成された回転制御円盤5の軸部5dの一端部5e側を支持する丸穴3bと、カバープレート4の本体部4aに形成された回転制御円盤5の軸部5dの他端部5f側を支持する丸穴4bが、回転制御円盤5を回転可能に支持できるように配置され、さらに、本体部3aからカバープレート4側に向かって形成され、本体部3aを貫通しさらにその先端まで貫通するネジ孔3dを有する固定ボス3cと、本体部4aから装着基盤3側に向かって形成され、その先端から基端まで形成され、ネジ孔3dと繋がるネジ孔4dを有する固定ボス4cが当接する。その状態で、ネジ孔4dから取付けネジ2cが挿入され螺合させることにより、筐体2を形成させることができ、その内部に、保持機構Hを構成する回転制御円盤5や、第1保持部材6と第2保持部材7の一部や、係止爪部材8の一部を収容する収容空間を形成され、装着基盤3の側壁のない一対の短辺と、その短辺に対向するカバープレート4の周壁4jにより、その収容空間と外部とを繋げて、第1保持部材6と第2保持部材7の摺動部6a、7aが収容空間で摺動可能に挿入するための摺動口2g、2gが形成される。
【0031】
さらに、ロック・解除機構Rの構成は以下のようである。筐体2の装着基盤3は、第1側壁3jから丸穴3bに向かって、配置された回転制御円盤5と当接しないように伸び、第1側壁3jの当接面3kと面一になるように、摺動面3hが形成され、この摺動面3hを、回転制御円盤5のラチェット5cと噛合可能に形成された噛合爪8bを有する第1摺動部8aが摺動する。カバープレート4には、噛合爪8bがラチェット5cと噛合しているときに、第1摺動部8aが回転制御円盤5の回転により噛合位置からずれないように規制するために、周壁4jから第1摺動部8a摺動方向に沿って伸びる一対の規制部4hが形成され、これらの規制部4hが対向する間の周壁4jに、使用者が係止爪部材8を保持するときに用いられる保持部8hを有する第2摺動部8gが本体部4aを摺動できるように切欠き4pが形成され、切欠き4pの中において、係止爪部材8の第1摺動部8aと第2摺動部8gを繋ぐ棒状の2つの連結部8cの間に形成された窓部8dに、係止爪部材8を非噛合位置から噛合位置の方向に付勢する第2付勢手段による付勢方向と直交する方向に沿って形成されて第3弾性部材2iの一端と当接する壁部4tとその左右の縁から回転制御円盤5に向かって設けられた第3弾性部材2iの位置を維持するための一対の側壁4uとを有し窓部8dに挿入される支持部4sと、支持部4sと各々の規制部4hとの間に、係止爪部材8の連結部8cが長軸方向に摺動するために形成された摺動溝4r、4rと、を有する。筐体2が形成されると、各々の摺動溝4rの解放面が摺動面3hにより蓋がされて、第2摺動孔2hが形成される。これにより、係止爪部材8が非噛合位置と噛合位置を相互に移動可能な状態で、筐体2から抜け落ちるのを防止できる。
【0032】
係止爪部材8の窓部8dには、挿入された支持部4sと対向する位置に、第2付勢手段を構成する第3弾性部材2iに挿入されて第3弾性部材2iの位置を維持するための維持ピン8eが形成されており、第3弾性部材2iの一端が窓部8dに支持され、他端が支持部4sに支持されている。これにより、係止爪部材8は、非噛合位置から噛合位置に向けて付勢されており、使用者が非噛合位置に移動させるまで、噛合位置に位置した状態を維持できる。
【0033】
さらに、同期スライド機構Sについて説明する。装着基盤3には、本体部3aの第1側壁3jの近傍に第1付勢手段を構成する第1係止ピン3fが形成され、本体部3aの第2側壁3pの近傍で、丸穴3bを中心に第1係止ピン3fと点対称の位置に、第1係止ピン3fと同様に、第2付勢手段を構成する第2係止ピン3gが形成されている。第1係止ピン3fと第2係止ピン3gは、その先端がカバープレート4の2つのピン穴4fにそれぞれ挿入されており、それぞれに第1付勢手段を構成する第1弾性部材2dと第2付勢手段を構成する第2弾性部材2eの各一端が係止され、それぞれの他端が第1保持部材6と第2保持部材7の係止部6g、7gに係止されている。つまり、第1弾性部材2dと第2弾性部材2eは、第1側壁3j側と第2側壁3p側にそれぞれ設置されている。この2つの第1付勢手段と第2付勢手段は、設けられている位置が異なるがその構造が同じである。
まず、第1側壁3j側の第1付勢手段を例に挙げて説明する。第1弾性部材2dは、一端が第1係止ピン3fに係止され、他端が第1保持部材6の筐体2の内部に摺動可能に挿入されている摺動部6aの先端に形成された係止部6gに係止されている。これにより、第1保持部材6は、保持位置に配置したときに、第1弾性部材2dにより外方向に向けて付勢されている。そのため、第1保持部材6は、係止爪部材8を非噛合位置に移動させると、保持位置から解放位置に向けて移動することができる。
第2弾性部材2eは、一端が第2係止ピン3gに係止され、他端が第2保持部材7の筐体2の内部に摺動可能に挿入されている摺動部7aの先端に形成された係止部7gに係止されている。これにより、第2保持部材7は、保持位置に配置したときに、第2弾性部材2eにより外方向に向けて付勢されている。そのため、第2保持部材7は、係止爪部材8を非噛合位置に移動させると、保持位置から解放位置に向けて移動することができる。
【0034】
回転制御円盤5は、その下面側にピニオン5bが形成され、上面側にラチェット5cが形成されている。ピニオン5bは、第1保持部材6の第1ラック部6fと噛合し、その半径方向の反対側で第2保持部材7の第2ラック部7fと噛合しており、これにより、第1保持部材6と第2保持部材7がそれぞれ反対方向へ同じ距離だけ摺動する。このため、第1保持部材6と第2保持部材7の何れか一方を摺動させると、他方も同じ距離移動させることができる。そして、ラチェット5cは、第1保持部材6と第2保持部材7が解放位置から保持位置に移動するときに、係止爪部材8の噛合爪8bが噛合していても空転する空転方向に回転し、保持位置から解放位置に移動するときに回転が規制される回転規制方向に回転するように形成されている。これにより、係止爪部材8を非噛合位置に配置するまで、第1保持部材6と第2保持部材7の解放位置への移動を規制して、スマートフォン100が保持された状態を維持できる。また、スマートフォン100を保持装置1から取り外すときは、係止爪部材8を非噛合位置に移動させることによりラチェット5cが回転規制方向に回転可能になり、第1保持部材6と第2保持部材7のそれぞれが保持位置に配置したときに解放位置に向けて付勢する第1付勢手段と第2付勢手段により、第1保持部材6と第2保持部材7が保持位置から解放位置に摺動されて、スマートフォン100を解放できる。また、スマートフォン100を保持装置1に保持させるときには、使用者が第1保持部材6と第2保持部材7の何れか一方を解放位置から保持位置に押し込むと、ラチェット5cが噛合爪8bと噛合していても空転する空転方向に回転して、他方も同じ距離だけ移動して、保持位置に配置させて、スマートフォン100を保持できる。
【0035】
同期スライド機構Sの第1保持部材6は、それが筐体2から抜け落ちるのを防止するために溝3eに挿入される係止突起6hを有する連結部6bと、この連結部6bに設けられたところの筐体2の内部に挿入される摺動部6aと、連結部6bを介して繋がる第1係合部6cとを有する。第1係合部6cは、スマートフォン100の側面と当接して横方向への移動を規制する側壁6dと、側壁6dと繋がり、スマートフォン100の横方向と直交する上下方向への移動を規制する上板6eと、を有する。第2保持部材7は、第1保持部材6と筐体2に挿入される向きが異なる他は、その構造が同じである。つまり、第2保持部材7は、それが筐体2から抜け落ちるのを防止するために溝3eに挿入される係止突起7hを有する連結部7bと、この連結部7bに設けられたところの筐体2の内部に挿入される摺動部7aと、連結部7bを介して繋がる第2係合部7cとを有する。第2係合部7cは、スマートフォン100の側面と当接して横方向への移動を規制する側壁7dと、側壁7dと繋がり、スマートフォン100の横方向と直交する上下方向への移動を規制する上板7eと、を有する。第1保持部材6と第2保持部材7は、摺動部6a、7aの一部が、装着基盤3の本体部3aと回転制御円盤5の板部5aに挟まれているので、ガタつくことなく摺動することができ、第1ラック部6fと第2ラック部7fがピニオン5bと噛合した状態を維持することができる。そして、スマートフォン100の上下端部と係合する一対の第1係合部6c、第2係合部7cにより、スマートフォン100が横方向と上下方向に移動するのを規制して確りと保持装置1に保持させることができる。
【0036】
なお、保持機構Hの第1保持部材6と第2保持部材7は筐体2の上下方向にスライドしてスマートフォン100の上下端部を係合保持する構成であるが、この第1保持部材6と第2保持部材7を筐体2の左右方向にスライド可能に構成して、スマートフォン100の左右の端部を係合保持するように構成しても良い。
【0037】
取付手段9は、自転車のハンドル等に固定される固定部9aと、固定部9aを筐体2の装着基盤3に連結する連結部9bと、を有する。連結部9bには、装着基盤3に設けられたネジ穴3uと繋がるネジ孔9cが形成されており、そのネジ孔9cに螺合させたときに、先端が筐体2の内部に突き出ない長さに形成された連結ネジ2fが螺合されて連結される。
【0038】
次に、本発明に係る保持装置1の組立手順について説明する。この説明は、まず、第1付勢手段と第2付勢手段を形成させた状態で第1保持部材6と第2保持部材7を装着基盤3に取り付け、次いで、第3付勢手段を形成させた状態で係止爪部材8を取り付ける順に説明する。
【0039】
まず、第1付勢手段と第2付勢手段を形成させた状態で第1保持部材6と第2保持部材7を装着基盤3に取り付ける工程であるが、まず、第1保持部材6の摺動部6aの先端に形成された係止部6gに第1弾性部材2dの一端を係止して、他端を装着基盤3の第1係止ピン3fに係止する。同様に、第2保持部材7の摺動部7aの先端に形成された係止部7gに第1弾性部材2dの一端を係止して、他端を装着基盤3の第2係止ピン3gに係止する。これにより、第1付勢手段と第2付勢手段が形成される。そして、回転制御円盤5のピニオン5bの軸部5dを丸穴3bに挿入する。
【0040】
次に、第3付勢手段を形成させた状態で係止爪部材8を取り付ける工程であるが、まず、摺動溝4rに連結部8cを摺動可能に嵌めて、窓部8dに支持部4sを挿入する。その状態で、第3弾性部材2iの一端に維持ピン8eを挿入して、他端を支持部4sの壁部4tに当接させる。これにより、第3付勢手段が形成される。
【0041】
上記のように、第1保持部材6と第2保持部材7を装着基盤3に第1付勢手段と第2付勢手段を形成させた状態で取り付け、次いで係止爪部材8を第3付勢手段を形成させた状態で取り付けた後に、装着基盤3とカバープレート4を組み合わせて、ネジ孔3n、3tとそれぞれ繋がるネジ穴4nから挿入された取付けネジ2cを螺合させることにより、内部に第1付勢手段、第2付勢手段及び第3付勢手段が形成された状態で筐体2を形成させることができる。そして、この筐体2に取付手段9を取り付けることにより、保持装置1が形成される。
【0042】
次に、本発明に係る保持装置1の動作について説明する。保持装置1は、
図9(a)に示したように、保持装置1にスマートフォン100を保持させるまでは、保持機構Hの第1保持部材6と第2保持部材7を解放位置に配置させることができ、このときロック・解除機構Rを構成するラチェット機構Lの噛合爪8bがラチェット5cと噛合する噛合位置に係止爪部材8が配置されているので、第1保持部材6と第2保持部材7の配置を維持することができる。そして、
図9(a)に示した状態から、第1係合部6cと第2係合部7cの間に位置するカバープレート4の当接面4eにスマートフォン100を載置させて、使用者が第1保持部材6と第2保持部材7の何れか一方を解放位置から保持位置に押し込むと、ラチェット5cが噛合爪8bと噛合していても空転する空転方向に回転することができるので、他方も同じ距離だけ移動する。これにより、
図9(b)に示したように、スマートフォン100が保持装置1の第1保持部材6と第2保持部材7の第1係合部6cと第2係合部7cにその上下左右方向並びに両端部を挿入させた状態で係合保持させることができる。したがって、スマートフォン100は、そのさまざまな取付手段により大きく揺れたり激しく振動したりする箇所に取付けられても、保持機構Hから、外れてしまう虞がない。そして、
図9(b)に示した状態から、
図9(c)に示したように、使用者が係止爪部材8を保持して噛合位置から非噛合位置に移動させると、噛合爪8bが離れたラチェット5cが回転規制方向に回転可能になり、第1付勢手段と第2付勢手段により、
図9(d)に示したように、第1保持部材6と第2保持部材7がそれぞれ保持位置から解放位置に摺動して、第1係合部6c、第2係合部7cの間に位置するカバープレート4の当接面4eに配置されたスマートフォン100を取り出すことができる。そして、係止部8から手を離すと、第3付勢手段により、噛合爪8bがラチェット5cと噛合する噛合位置に係止爪部材8が配置して、
図9(a)に示した状態のように、再びスマートフォン100を保持装置1に保持されるまで、第1保持部材6と第2保持部材7を解放位置に配置した状態で維持することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る保持装置1は、回転制御円盤5の下面側にピニオン5bが形成され、上面側にラチェット5cが形成されており、ピニオン5bは、それぞれ反対位置で第1保持部材6の第1ラック部6fと第2保持部材7の第2ラック部7fとが噛み合っているので、第1保持部材6か第2保持部材7のいずれか一方がスライドすると、他方はその反対方向へ同じ距離スライドする構成である。ラチェット5cは第1保持部材6と第2保持部材7が筐体2の外方向へスライドする場合には、係止爪部材8の係止爪部8bによって係止され、筐体2の内方向へ移動する場合には、係止爪部材8の係止爪部8bによって係止されず空転するように構成されている。第1保持部材6と第2保持部材7は、第1付勢手段と第2付勢手段によって、筐体2の内側へスライドする方向にスライド付勢されている。さらに、第1保持部材6と第2保持部材7のそれぞれが保持位置に配置したときに解放位置に向けて付勢する第1付勢手段及び第2付勢手段と、係止爪部材8を非噛合位置から噛合位置の方向に付勢する第3付勢手段が形成されていることにより、スマートフォン100を保持装置1に保持させる操作も、取り外す操作も、片手で行うことができるので、もう一方の手でスマートフォン100を持つことができる。そのため、スマートフォン100を保持装置1に保持させる操作と取り外す操作の両方の利便性を向上させることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、取付手段9が自転車のハンドルに取付けられるものであったが、本発明はこれに限定されない。
図10に示した取付手段9Aのように、使用者の腕や足に取付けられるものであってもよい。この取付手段9Aとしては、例えば、使用者の腕や足に当接する当接部9dと当接部9dを取り付けるための取付バンド9eと取付バンド9eを通して止めるために当接部9dに設けられ孔9fを有するものが挙げられる。
【0045】
さらに、保持装置1は、
図11に示したように、取付手段9Bによって自動車のダッシュボードに取り付けるようにしても良い。この場合は、取付手段9Bが、吸盤10と、その吸盤10をダッシュボード等の床面に押し当てて確りと取付ける取付機構11とで構成され、吸盤10に対し保持装置1の筐体2を揺動可能に取り付けるように構成することができる。或はこの吸盤に変えて磁石を用いることも考えられる。
【0046】
そして、付勢手段として、コイルバネを用いた例を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、ゴムバンドや圧縮コイルスプリング等の、その他の付勢手段を適宜用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、以上のように構成したので、大きさの異なる様々な携帯機器を保持して、様々な個所に取り付けて、その本来ではない保持状態で、その機能を発揮させることができる保持装置として公的に用いることができるものである。
【符号の説明】
【0048】
H 保持機構
R ロック・解除機構
S 同期スライド機構
L ラチェット機構
100 スマートフォン(携帯機器)
1 保持装置
2 筐体
2d 第1弾性部材
2e 第2弾性部材
2i 第3弾性部材
3 装着基盤
3j 第1側壁
3p 第2側壁
4 カバープレート
5 回転制御円盤
5b ピニオン
5c ラチェット
6 第1保持部材
6c 第1係合部
6f 第1ラック部
7 第2保持部材
7c 第2係合部
7f 第2ラック部
8 係止爪部材