(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】清拭シート及び清拭シート製品
(51)【国際特許分類】
A47K 7/00 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
A47K7/00 G
A47K7/00 E
(21)【出願番号】P 2020025966
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2023-01-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511058903
【氏名又は名称】株式会社ピーズガード
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】沖原 正宜
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130429(JP,A)
【文献】登録実用新案第3053304(JP,U)
【文献】特開2018-090547(JP,A)
【文献】特開2017-210438(JP,A)
【文献】特表2014-515737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH値が9.0~11.5であるpH安定型のアルカリ性次亜塩素酸水を含浸した不織布からなる清拭シートが1枚で又は複数枚積層された状態で包装袋に収容さ
れ、前記清拭シートが入院患者及び要介護者の身体の清拭に使用される、清拭シート製品。
【請求項2】
不織布がロール状に巻かれているとともにミシン目加工が施された不織布ロールに、pH値が9.0~11.5であるpH安定型のアルカリ性次亜塩素酸水が含浸されたウェット不織布ロールと、
前記ウェット不織布ロールを収容するとともに取出口が設けられた収容容器と、
を含み、
前記ウェット不織布ロールからミシン目で切り離された所定長さのウェット不織布が前記pH安定型のアルカリ性次亜塩素酸水を含浸した不織布からなる清拭シートとして前記収容容器の前記取出口から順次取り出されるように構成されており、
前記清拭シートが入院患者及び要介護者の身体の清拭に使用される、
清拭シート製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の身体などを清拭するために使用される清拭シート及び清拭シート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
寝たきり患者などの要介護者(要介護者に準ずる者を含む)の褥瘡(床ずれ)が社会問題化して久しい。褥瘡の発症を予防するためには、皮膚の同じ部分が長時間圧迫されないように要介護者の体位変換を行うこと及び皮膚に付着した汗や排泄物(尿、便)などの汚れを除去して要介護者の皮膚を清潔に保つことなどが必要であるとされている。要介護者の皮膚を清潔に保つには要介護者を入浴又はシャワー浴させるのが好ましいが、要介護者の入浴やシャワー浴が困難な場合には介護者等が要介護者の身体を清拭することが多い。
【0003】
従来から人の身体などを清拭するため用品として衛生的で便利な使い捨てタイプの清拭シートが知られている。このような清拭シートの一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された清拭シートは、不織布などの繊維シートに清浄薬剤を含浸させて形成されており、前記清浄薬剤が、水を90重量%以上、98.5重量%以下の割合で含有し、殺菌防腐剤を0.03重量%以上、1重量%以下の割合で含有し、アルコール系保湿剤を0.5重量%以上、5重量%以下の割合で含有し、水溶性保湿剤を0.05重量%以上、5重量%以下の割合で含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
要介護者の皮膚は、弱っていて皮膚トラブルなどが起きやすい状態にあることが多い。特許文献1に記載された清拭シートは、少量ではあるが、アルコールやパラオキシ安息香酸エステルなどの皮膚への接触によりアレルギー反応を誘発し及び/又は皮膚に刺激を与えるおそれのある物質を含んでいる。このため、特許文献1に記載された清拭シートを使用して要介護者の身体を清拭するのは好ましくない。また、上述のように、褥瘡の発症を予防するためには、要介護者の皮膚に付着した汗や排泄物などの汚れを除去する必要があるため、特に要介護者の身体の清拭に使用される清拭シートには、除菌機能はもちろん、消臭機能をも有することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、従来に比べて高い除菌機能及び消臭機能を有するとともに要介護者の身体の清拭にも使用することができる清拭シートを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、従来に比べて高い除菌機能及び消臭機能を有するとともに要介護者の身体の清拭にも使用することができる清拭シートを使用直前に容易に取り出すことができる清拭シート製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、清拭シートが提供される。この清拭シートは、pH値が9.0~11.5であるpH安定型のアルカリ性次亜塩素酸水を含浸した不織布からなり、入院患者及び要介護者の身体の清拭に使用される。
【0009】
本発明の他の側面によると、清拭シート製品が提供される。この清拭シート製品は、前記清拭シートが1枚で又は複数枚積層された状態で包装袋に収容されている。
【0010】
本発明のさらに他の側面によると、別の清拭シート製品が提供される。この別の清拭シート製品は、不織布がロール状に巻かれているとともにミシン目加工が施された不織布ロールに、pH値が9.0~11.5であるpH安定型のアルカリ性次亜塩素酸水が含浸されたウェット不織布ロールと、前記ウェット不織布ロールを収容するとともに取出口が設けられた収容容器と、を含み、前記ウェット不織布ロールからミシン目で切り離された所定長さのウェット不織布が前記pH安定型のアルカリ性次亜塩素酸水を含浸した不織布からなる清拭シートとして前記収容容器の前記取出口から順次取り出されるように構成されており、前記清拭シートが入院患者及び要介護者の身体の清拭に使用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来に比べて高い除菌機能及び消臭機能を有するとともに要介護者の身体の清拭にも使用することができる清拭シートを提供することができる。
【0012】
また、本発明によれば、従来に比べて高い除菌機能及び消臭機能を有するとともに要介護者の身体の清拭にも使用することができる清拭シートを使用直前に容易に取り出すことのできる清拭シート製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る清拭シートを取り出し可能な清拭シート製品の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る清拭シートを取り出し可能な清拭シート製品の他の例を示す概略断面図である。
【
図4】
図2に示される清拭シート製品を構成するウェット不織布ロールの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る清拭シートについて説明する。
実施形態に係る清拭シートは、塩素系除菌液を含浸した不織布からなる。すなわち、実施形態に係る清拭シートは、不織布に塩素系除菌液を含浸させることによって形成され得る。実施形態に係る清拭シートは、主に人の身体を清拭するために使用される。但し、これに限られるものではなく、実施形態に係る清拭シートは、人以外の動物の清拭にも使用可能である。
【0015】
実施形態に係る清拭シートにおいて、前記塩素系除菌液は、弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液である。弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液とは、次亜塩素酸ナトリウム及び純水(RO-イオン交換水)を主成分とし、pH値が9.0~11.5であり、且つ、pH値が実質的に経時変化しない液体のことをいう。
【0016】
ここで、「pH値が実質的に経時変化しない」とは、次亜塩素酸水(酸性)や次亜塩素酸ナトリウム希釈液(アルカリ性)などの従来の塩素系除菌液と比較してpH値の経時変化が著しく少ないことを意味し、例えば、通常の保管条件(遮光及び室温環境)の下で、少なくとも半年以上の間、pH値がほぼ一定に(すなわち、pH値が9.0~11.5である状態)に維持されることをいう。
【0017】
また、実施形態に係る清拭シートにおいて、前記塩素系除菌液の有効塩素濃度(残留塩素濃度)、すなわち、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液の有効塩素濃度(残留塩素濃度)は、好ましくは50~200ppmである。
【0018】
前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液は、通常の保管条件の下で有効塩素濃度が長期間(2年以上)にわたってほぼ一定に維持されることが確認されている。また、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液は、高い除菌機能及び消臭機能を有すること、除菌速度が次亜塩素酸水(すなわち、次亜塩素酸(HOCL))とほぼ同等であること、塩素臭や刺激臭がほとんどないこと、及び、口や目や鼻に入ったり皮膚に直接触れたりしても安全であること、なども確認されている。
【0019】
すなわち、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液は、遊離塩素の作用により、各種の細菌やウィルスを不活性化させるとともに、悪臭の元になる物質を分解して悪臭を消臭することができる。例えば、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液は、大腸菌、MRSA及びノロウィルスなどに接触してこれらを速やかに不活性化させることが確認されている。また、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液は、皮脂、汗、尿及び便の臭いなどを含む各種の臭いを速やかに消臭できることも確認されている。さらに、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液は、上述のように安全であることに加えて、アルコールのような揮発性がないため、皮膚に付着しても、皮膚に冷感を与えたり、皮膚がカサついたりすることがなく、皮膚荒れ(肌荒れ)なども起こしにくい。
【0020】
なお、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液は、次亜塩素酸水(酸性)と共通する特徴を有していることから、「安定型アルカリ次亜水(次亜塩素酸水)」と称されることもある。
【0021】
実施形態に係る清拭シートにおいて、前記不織布は、柔軟で肌触りが良く、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を含浸して保持することができ、且つ、身体清拭に十分な強度を有するものであればよく、特に制限されない。但し、前記不織布は、再生繊維及び/又は合成繊維で形成されている(換言すれば、天然繊維を含まない)ことが好ましく、また、前記不織布(及びその構成繊維)には、表面改質剤の添加や塗布などの処理がなされていないことが好ましい。主に前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液による前記不織布の劣化(変質)及び/又は前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液の有効塩素濃度の大幅な低下を抑制するためである。
【0022】
特に制限されないが、実施形態に係る清拭シートを構成する前記不織布としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ビスコース繊維、アクリル繊維及びポリアミド繊維からなる不織布が採用され得る。この場合、不織布中の各繊維の含有割合は、ポリエステル繊維>ポリプロピレン繊維>ビスコース繊維>アクリル繊維≧ポリアミド繊維である。例えば、不織布中の各繊維の含有割合は、ポリエステル繊維が60~70%であり、ポリプロピレン繊維が約20%であり、ビスコース繊維、アクリル繊維及びポリアミド繊維のそれぞれが10%以下であり得る。
【0023】
上記の各繊維(ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ビスコース繊維、アクリル繊維及びポリアミド繊維)からなる不織布は、吸液性、保液性、柔軟性、感触及び強度などの面でバランスがよいことが確認されている。例えば、上記の各繊維からなる不織布は、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を十分に含浸させることができ、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を含浸させてもほとんど劣化(変質)しない。また、上記の各繊維からなる不織布は、身体清拭に十分な強度を有しており、柔軟で肌触りもよい。
【0024】
また、上記の各繊維からなる不織布に前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を含浸させた場合、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液の有効塩素濃度は、一時的に低下するものの、その後は通常の保管条件の下で一定に維持されることが確認されている。
【0025】
具体的には、発明者らは、上記の各繊維からなり且つ身体清拭に十分な大きさを超える大きさの不織布に有効塩素濃度が異なる弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を含浸させて複数の評価サンプルを形成し、各評価サンプルにおける前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液の有効塩素濃度の経時変化を確認した。
【0026】
その結果、有効塩素濃度が所定値以上である前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を上記の各繊維からなる不織布に含浸させることにより、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液が十分な有効塩素濃度を有した状態で当該不織布内に存在し得ることが確認された。具体的には、有効塩素濃度が200~400ppmである前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を上記の各繊維からなる不織布に含浸させることにより、当該不織布内で前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液の有効塩素濃度が50~200ppmで維持されることが確認された。
【0027】
上述のように、実施形態に係る清拭シートを構成する前記不織布は、柔軟で肌触りが良く、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を含浸して保持することができ、且つ、身体清拭に十分な強度を有している。また、実施形態に係る清拭シートを構成する前記不織布に含浸されている前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液は、高い除菌機能及び消臭機能を有し、安全であり、皮膚にも優しい。
【0028】
このため、実施形態に係る清拭シートは、介護者等が要介護者の身体の清拭するために好適に使用され得る。さらに言えば、実施形態に係る清拭シートは、褥瘡の発症を予防するための要介護者の身体の清拭に好適に使用され得る。また、前記清拭シートは、褥瘡の発症後においては、主に褥瘡の創部周囲の皮膚の汚れ(汗、皮脂、創部からの滲出液、細菌など)を除去するためにも(すなわち、褥瘡の創部周囲の皮膚の清拭にも)好適に使用され得る。
【0029】
もちろん、実施形態に係る清拭シートは、健常者等が入浴やシャワー浴に代えて自身の身体を清拭するためにも使用され得るし、看護師や家族等が入浴やシャワー浴が制限された入院患者等の身体を清拭するためにも使用され得る。
【0030】
さらに、実施形態に係る清拭シートは、動物に対する安全性も確認されているので、汚れた動物の清拭にも使用され得る。例えば、実施形態に係る清拭シートは、尿や便などで汚れた動物の体を清拭して汚れや臭いを除去するためにも使用可能である。
【0031】
ここで、実施形態に係る清拭シートは、清拭の直前に形成されてもよいし、あらかじめ形成されていてもよい。前者の場合、清拭を行う者が清拭を行う直前に前記不織布に前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を含浸させて清拭シートを形成することができる。例えば、介護者等は、前記不織布と前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液とを別々に入手しておき、前記不織布に前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を含浸させて清拭シートを形成し、形成した清拭シートを用いて要介護者の身体を清拭することができる。一方、後者の場合、清拭を行う者は、以下に説明するような清拭シート製品を利用することができる。すなわち、清拭を行う者は、清拭を行う直前に清拭シート製品から清拭シートを取り出すことができる。
【0032】
図1は、清拭を行う者が利用可能な清拭シート製品の一例を示している。
図1に示された清拭シート製品1は、清拭シート2が複数枚積層された状態で包装袋3に収容された構造を有している。清拭シート2は、上述の実施形態に係る清拭シートであり、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を含浸した不織布からなる。包装袋3は、耐液性及び液不透過性を有する材料、すなわち、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液によって変質等せず且つ前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を透過させない材料を用いて、密封された袋状に形成されている。包装袋3の上面には、内部の清拭シート2を取り出すための取出口3aが設けられている。取出口3aは、シート状の蓋部材4によって開閉される。蓋部材4は、一端側が包装袋3の上面に固定されているとともに取出口3aを覆うことが可能に形成されており、包装袋3の上面における取出口3aの周囲の部位に繰り返し粘着可能な粘着部を有する。
【0033】
図1に示された清拭シート製品1を利用する場合、清拭を行う者、例えば介護者は、破線で示されるように、蓋部材4を取出口3aの周囲の部位から引き剥がして取出口3aを開放し、取出口3aから内部の清拭シート2を取り出し、取り出した清拭シート2を使用して要介護者の身体の清拭を行う。また、清拭を行う者は、清拭シート2を取り出した後に、蓋部材4を再び取出口3aの周囲の部位に粘着させることで取出口3aを閉塞する。
【0034】
なお、
図1に示された例では、清拭シート2が複数枚積層された状態で包装袋3に収容されている。しかし、これに限られるものではなく、清拭シート製品1は、1枚の清拭シート2が包装袋3に収容された構造を有してもよい。この場合、包装袋3に取出口3aを設ける必要はなく、清拭シート製品1は、清拭を行う者が包装袋3を破いて清拭シート2を取り出すように構成され得る。
【0035】
図2は、清拭を行う者が利用可能な清拭シート製品の他の例を示している。
図2に示された清拭シート製品5は、合成樹脂製の収容容器10と、収容容器10に収容されたウェット不織布ロール20と、を含む。
【0036】
収容容器10は、有底円筒状に形成された上部開口の容器本体11と、容器本体11の上部開口を密閉状態に閉塞する蓋体12と、を有する。容器本体11及び蓋体12は、遮光性を有しており、合成樹脂、例えば、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂で形成されている。
【0037】
容器本体11は、ウェット不織布ロール20を縦置き状態で収容可能に形成され、蓋体12は、容器本体11の上部に着脱可能に形成されている。容器本体11の上端近傍の外周面には、外側に凸となる凸部111が全周にわたって延在している。蓋体12は、外周縁から下方に突出した円筒状の周縁部121を有し、周縁部121の内面には、内側に僅かに突出するとともにほぼ全周にわたって延在する係止突起122が形成されている。そして、蓋体12は、容器本体11の上端に配置されて下方に押圧され、係止突起122が凸部111を乗り越えて凸部111の下側に係止されることにより、容器本体11に取り付けられる。また、蓋体12は、周縁部121が外側に向けて変形させられて(広げられて)係止突起122と凸部111との係止が解除されることにより、容器本体11から取り外され得る。なお、図示は省略するが、主に周縁部121の変形、ひいては、係止突起122と凸部111との係止及びその解除を容易にするため、周縁部121に少なくとも一つの切欠部が形成されてもよい。
【0038】
図3は、
図2のA視拡大図(要部図)である。
図2、
図3に示されるように、蓋体12の略中央部には、収容容器10内に収容されたウェット不織布ロール20からその一部(すなわち、ウェット不織布)を収容容器10外に取り出すための取出口123が設けられている。取出口123は、円形の貫通孔123aと、貫通孔123aから放射状に延びる複数(ここでは5つ)のスリット123bによって区画された弾性変形可能な複数(5つの)弾性片部123cと、を含む。複数の弾性片部123cは、貫通孔123aに近くなるほど薄肉に形成されている。蓋体12の上面には、取出口123を囲むように形成された円筒状の環状壁124が設けられている。
【0039】
蓋体12には、取出口123をカバーするためのキャップ部材30が取り付けられている。キャップ部材30は、例えばポリエチレン樹脂で形成されており、有底円筒状のキャップ本体31と、一端がキャップ本体31に連結されると共に他端が蓋体12に固定されたヒンジ部32と、を含む。キャップ本体31は、開口端側が環状壁124の外周に着脱可能に嵌合するように形成されている。キャップ部材30は、キャップ本体31が環状壁124の外周に嵌め込まれることによって取出口123をカバーし、キャップ本体31が環状壁124の外周から取り外されることによって取出口123を露出させるように構成されている。
【0040】
ウェット不織布ロール20は、長尺の不織布がロール状に巻かれているとともに切り離し用のミシン目加工が施された不織布ロール(ドライ不織布ロール)に、塩素系除菌液を含浸させることによって形成されたものである。
図4に示されるように、ウェット不織布ロール20は、中空のロール体として形成され、前記ミシン目加工によって長さ方向に一定間隔で形成された複数のミシン目21(図では1つだけ示されている)を有している。ウェット不織布ロール20は、耐液性及び液不透過性を有する上部開口の袋体40に収容された状態で容器本体11に縦置きで収容されている(
図2参照)。
【0041】
ここで、前記不織布ロール(ドライ不織布ロール)に含浸された前記塩素系除菌液は、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液であり、前記不織布ロール(ドライ不織布ロール)を形成する長尺の不織布は、柔軟で肌触りが良く、前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液を含浸して保持することができ、且つ、身体清拭に十分な強度を有するものである。
【0042】
収容容器10内において、ウェット不織布ロール20は、内側端部22が取出口123から外側に僅かに突出するようにセットされる(
図2参照)。ウェット不織布ロール20は、内側端部22が引き上げられると、内側端部22に続く部位(すなわち、ウェット不織布)が複数の弾性片部123cを変形させながら取出口123から引き出され、複数の弾性片部123cとの間の摩擦抵抗及び複数の弾性片部123cの復元力によってミシン目21で分離される。これにより、ミシン目21で切り離された所定長さのウェット不織布が、前記塩素系除菌液(前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液)を含浸した不織布からなる清拭シートとして取出口123から取り出される。このとき、所定長さのウェット不織布(清拭シート)とともに取出口123から連れ出されたウェット不織布ロール20の端部(連出端部)が、複数の弾性片部123cの復元力によって取出口123から収容容器10外に僅かに突出した状態で保持される。
【0043】
したがって、その後は、内側端部22に代えて前記連出端部が引き上げられることによって、所定長さのウェット不織布シートが塩素系除菌液(前記弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液)を含浸した不織布からなる清拭シートとして取出口123から取り出され得る。清拭シート製品5では、このようにして、所定長さのウェット不織布、すなわち、清拭シートが取出口123から順次取り出され得る。
【0044】
清拭シート製品5を利用する場合、清拭を行う者、例えば介護者は、キャップ本体31を環状壁124の外周から取り外すことによって取出口123を露出させ、取出口123から突出しているウェット不織布ロール20の端部(内側端部22又は前記連出端部)を摘まんで引き上げることによってミシン目で切り離された所定長さのウェット不織布を清拭シートとして取り出し、取り出した清拭シートを使用して要介護者の身体を清拭する。清拭シート製品5の場合、複数枚のウェット不織布(清拭シート)を連続して取り出すことが容易である。このため、例えば介護者は、要介護者の身体の汚れ状況などに応じて、複数枚のウェット不織布(清拭シート)を使用して要介護者の身体を清拭することができる。また、清拭を行う者は、必要な枚数のウェット不織布(清拭シート)を取り出した後に、キャップ本体31を環状壁124の外周に嵌合することでキャップ本体31によって取出口123をカバーする。
【0045】
ここで、清拭シート製品5において、収容容器10は、容器本体11と容器本体11に着脱可能な蓋体12とで構成されている。このため、収容容器10内のウェット不織布ロール20が使い切られたとき、清拭シート製品5の管理者(清拭を行う者を含む)は、収容容器10に新たなウェット不織布ロール20を補充することが可能である。
【0046】
管理者は、例えば、袋体40に密封状態で収容された新たなウェット不織布ロール20を製造元又は販売元から入手して収容容器10に補充することができる。この場合、管理者は、袋体40の上部を開封するとともに蓋体12を容器本体11から取り外し、上部が開封された袋体40、すなわち、上部開口の袋体40に収容された新たなウェット不織布ロール20を縦置き状態で容器本体11内に配置させる。そして、管理者は、新たなウェット不織布ロール20の内側端部22を取出口123から蓋体12の上面側に僅かに突出させながら蓋体12を容器本体11に取り付ける。
【0047】
また、管理者は、袋体40に収容された前記不織布ロール(ドライ不織布ロール)と前記塩素系除菌液とを製造元又は販売元から別々に入手し、収容容器10内で前記不織布ロールに前記塩素系除菌液を含浸させることによって、収容容器10に新たなウェット不織布ロール20を補充することができる。この場合、管理者は、袋体40の上部を開封するとともに蓋体12を容器本体11から取り外し、上部が開封された袋体40に収容された前記不織布ロール(ドライ不織布ロール)を縦置き状態で容器本体11内に配置させ、袋体40内に前記塩素系除菌液を注入して前記不織布ロールに前記塩素系除菌液を含浸させることによって、容器本体11内でウェット不織布ロール20を形成する(つまり、上部開口の袋体40に収容された新たなウェット不織布ロール20を縦置き状態で容器本体11内に配置させる)。その後の処理は、製造元又は販売元から新たなウェット不織布ロール20を入手した場合と同様である。
【0048】
なお、
図2に示された例では、ウェット不織布ロール20が上部開口の袋体40に収容された状態で収容容器10(容器本体11)に縦置きで収容されている。しかし、これに限られるものではなく、袋体40に収容されていない状態のウェット不織布ロール20が収容容器10(容器本体11)に縦置きで収容されてもよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1,5…清拭シート製品、2…清拭シート、3…包装袋、3a…取出口、4…蓋部材、10…収容容器、11…容器本体、12…蓋体、20…ウェット不織布ロール、21…ミシン目、40…袋体、123…取出口