(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】管状体及び管状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/40 20060101AFI20241021BHJP
F16L 9/12 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B29C65/40
F16L9/12
(21)【出願番号】P 2020202386
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】枝廣 和憲
(72)【発明者】
【氏名】陶山 勇一
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-305454(JP,A)
【文献】特開2009-270493(JP,A)
【文献】特開2001-347536(JP,A)
【文献】特開2013-174156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/40
F16L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される管状体であって、
直管部と、当該直管部と連接して設けられた
前記屈曲部の屈曲方向内側の半管状部とを有する第1分割部と、
前記屈曲部の屈曲方向外側の半管状部を有する第2分割部と
、
前記第1分割部と前記第2分割部とを接合させた接合部と、
前記接合部において前記第1分割部と前記第2分割部とを接合する二次樹脂と、
を備え、
前記接合部は、前記直管部の軸方向から見て当該直管部の中空部分と重なる部分を備え、
前記第1分割部は、前記屈曲部の内壁を構成する面の一部に、前記直管部の軸方向に沿う面を備えており、
前記直管部の軸方向に沿う面が、前記屈曲部の屈曲方向内側に配置された中空部分に相対する段差面とされる管状体。
【請求項2】
前記直管部の軸方向に沿う面を2つ備える、請求項1記載の管状体。
【請求項3】
前記直管部の軸方向に沿う面が、前記直管部の軸方向に沿って傾斜する面である、請求項1又は請求項2記載の管状体。
【請求項4】
前記直管部の軸方向に沿う面が、前記屈曲部の軸と直管部の軸
とを含む面に対して垂直な面であって、前記直管部の軸を含む面に対して、前記屈曲方向外側に傾斜する
面である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管状体。
【請求項5】
前記直管部は、前記管状体内を通過する流体の流路の上流側を構成する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の管状体。
【請求項6】
屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される管状体の製造方法であって、
直管部と、当該直管部と連接して設けられた
前記屈曲部の屈曲方向内側の半管状部とを有する第1分割部を成形するステップと、
前記屈曲部の屈曲方向外側の半管状部を有する第2分割部を成形するステップと、
前記第1分割部と前記第2分割部とを二次樹脂により接合するステップと、
を有し、
前記第1分割部を成形するステップにおいて、当該第1分割部の内壁が、前記直管部の軸方向
に沿って相対し、かつ摺合って動作するように配置される、前記直管部の内
壁、及び、前記直管部の軸方向から見て当該直管部の中空部分と重なる前記屈曲部の内壁に対応する第1金型と、前記屈曲部の屈曲方向内側の半管状部の内壁に対応する第2金型とを、前記直管部の軸方
向から見て当該直管部の中空部分と重なる位置
で、前記屈曲部の屈曲方向内側に配置された中空部分に相対する段差面とされる前記直管部の軸方向に沿う面で摺合わせた状態で成形される、管状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径方向に分割された2つの半管状部を接合することで構成される管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路に屈曲部等を有する複雑な形状の樹脂製の管状体として、径方向に分割された半管状部が接合された構造が知られている。このような管状体では、取付対象への管状体の固定に使用されるフランジ部が軸方向の一端部に形成される場合がある。フランジ部を備える管状体において、フランジ部も含めて径方向に分割された半管状部が接合される構成では、取付対象と当接するフランジ部の面に段差等が生じる可能性がある。そのため、半管状部の一方に、一端にフランジ部を備える管状部分を一体的に設ける構成が提案されている(特許文献1-3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-174156号公報
【文献】特開平7-246654号公報
【文献】特許第2656723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2、3が開示するように、量産性向上の観点では、二次樹脂による上述の半管状部の接合に、ダイスライドインジェクション法(DSI法)を適用することが好ましい。DSI法を適用する場合、一次成形において一端にフランジ部を備える管状部分を一体的に形成するために、直管部の内壁は、直管部の断面形状に応じて金型(例えば移動金型)に配置された凸部により形成される。
【0005】
また、取付対象へのフランジ部の固定にボルト締結をする場合、直管部の周方向に、二次樹脂を導入するためのDSI接合部のような凸部が存在すると取付作業性が低下してしまう。そのため、凸部の突出量をわずかでも低減する観点では、DSI接合部は直管部の周囲ではなく屈曲部に形成することも求められる。
【0006】
直管部の軸方向において当該直管部の中空部分と重なる屈曲部にDSI接合部を配置しようとすると、上述の凸部の先端を、対向する金型(固定金型)に当接させ、当該凸部の先端の周囲にDSI接合部を形成することになる。この構成では、直管部の端部が当該先端により規定されることになるため、直管部と屈曲部との切り替え位置も、当該凸部の先端の周囲に配置されることになる。すなわち、このような製造方法では、DSI溶着部と直管部と屈曲部との切り替え位置とが直管部の軸方向に垂直な同一平面上になるという制限があることになる(例えば、特許文献2
図3(c)、
図4(c)参照)。
【0007】
このような制限は、例えば、管状体が設置される対象物の周囲に他の部材が存在し、直管部の軸方向のスペースに制限がある場合等に、屈曲部における所望の流量断面積を確保できない状況を招いてしまう。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される管状体において、設計自由度を格段に向上させることができる、管状体及び管状体の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。本発明に係る管状体は、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される。そして、本発明に係る管状体は、直管部と、当該直管部と連接して設けられた屈曲部の屈曲方向内側の半管状部とを有する第1分割部と、屈曲部の屈曲方向外側の半管状部を有する第2分割部と、第1分割部と第2分割部とを接合させた接合部と、接合部において第1分割部と第2分割部とを接合する二次樹脂と、を備えている。接合部は、直管部の軸方向から見て当該直管部の中空部分と重なる部分を備え、第1分割部は、屈曲部の内壁を構成する面の一部に、直管部の軸方向に沿う面を備えており、直管部の軸方向に沿う面が、屈曲部の屈曲方向内側に配置された中空部分に相対する段差面とされる。
【0010】
以上の構成において、管状体の第1分割部の内壁が備える直管部の軸方向に沿う面は、直管部の内壁及び当該直管部の中空部分と重なる屈曲部の内壁に対応する第1金型と、屈曲部の屈曲方向内側の半管状部の内壁に対応する第2金型とを対向させ、直管部の軸方向において当該直管部の中空部分と重なる位置で直管部の軸方向に沿う面で両金型を摺合わせた状態で成形された結果として形成される。このような構成では、屈曲部の屈曲方向内側における、直管部と屈曲部との切り替え位置を、従来構成とは異なり、屈曲部の屈曲方向外側の接合部の位置よりも直管部側方向に配置することが可能になる。その結果、管状体全体の断面積を増大させることなく、屈曲部における流路断面積を容易に確保することができ、屈曲部を備える管状体の設計自由度を従来に比べて格段に向上させることができる。なお、この管状体では、例えば、上述の直管部の軸方向に沿う面を2つ備える構成を採用することができる。
【0011】
以上の管状体において、直管部の軸方向に沿う面が、前記直管部の軸方向に沿って傾斜する面である構成を採用することができる。この構成では、直管部の内壁を構成する第1金型と第2金型との摺合わせ面が直管部の軸に対して傾斜しているため、第1分割部をより安定して成形することができる。
【0012】
以上の管状体において、直管部の軸方向に沿う面が、屈曲部の軸と直管部の軸とを含む面に対して垂直な面であって、前記直管部の軸を含む面に対して、前記屈曲方向外側に傾斜する面である構成を採用することができる。この構成では、直管部の内壁を構成する第1金型と第2金型との摺合わせ面が屈曲部の軸と直管部の軸とを含む面に対して垂直な面であって、前記直管部の軸を含む面に対して、前記屈曲方向外側に傾斜しているため、第1分割部をより安定して成形することができる。
【0013】
以上の管状体において、直管部が管状体内を通過する流体の流路の上流側を構成する態様を採用することもできる。この構成では、直管部の軸方向に沿う面が、流路の下流側を向いて配置されるため、流路中の流体の流れを阻害することがない。
【0014】
一方、他の観点では、本発明は、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される管状体の製造方法を提供することもできる。すなわち、本発明に係る管状体の製造方法は、直管部と、当該直管部と連接して設けられた屈曲部の屈曲方向内側の半管状部とを有する第1分割部を成形するステップと、屈曲部の屈曲方向外側の半管状部を有する第2分割部を成形するステップと、第1分割部と第2分割部とを二次樹脂により接合するステップと、を有している。第1分割部を成形するステップにおいて、当該第1分割部の内壁が、直管部の軸方向に沿って相対し、かつ摺合って動作するように配置される、直管部の内壁、及び、直管部の軸方向から見て当該直管部の中空部分と重なる屈曲部の内壁に対応する第1金型と、屈曲部の屈曲方向内側の半管状部の内壁に対応する第2金型とを、直管部の軸方向から見て当該直管部の中空部分と重なる位置で、屈曲部の屈曲方向内側に配置された中空部分に相対する段差面とされる直管部の軸方向に沿う面で摺合わせた状態で成形される。
【0015】
この製造方法では、屈曲部の屈曲方向内側における、直管部と屈曲部との切り替え位置を、従来構成とは異なり、屈曲部の屈曲方向外側の接合部の位置よりも直管部側方向に配置することが可能になる。その結果、管状体全体の断面積を増大させることなく、屈曲部における流路断面積の確保が容易となるため、屈曲部を備える管状体の設計自由度を従来に比べて格段に向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される管状体において、設計自由度を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る管状体の一例を示す斜視図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体を構成する第1分割部及び第2分割部の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る管状体の屈曲部の一例を示す拡大縦断面図である。
【
図3】(a)は、本発明の一実施形態に係る管状体を構成する第1分割部の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体を構成する第1分割部の一例を示す底面図であり、(c)は、本発明の一実施形態に係る管状体を構成する第1分割部の一例を示す縦断面図である。
【
図4】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体を構成する第1分割部の一例の内壁を形成する金型を模式的に示す縦断面図である。
【
図5】(a)から(d)は、本発明の一実施形態に係る管状体を構成する第1分割部の一例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る管状体は、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される。上述のとおり、管状体の端部には、フランジ部等を設けることができるが、本発明の管状体の特徴的な構成は屈曲部分における半管状部の接合構造に現れるため、以下では端部にフランジ部を備えていない事例により本発明を具体化している。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0019】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る管状体10の外観の一例を示す斜視図である。
図1(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体10を構成する第1分割部11及び第2分割部12の一例を示す斜視図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る管状体10の屈曲部2の一例を示す拡大縦断面図である。
図3(a)は、本発明の一実施形態に係る管状体10を構成する第1分割部11及び二次樹脂14の一例を示す拡大平面図である。
図3(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体10を構成する第1分割部11の一例を示す底面図である。
図3(c)は、本発明の一実施形態に係る管状体10を構成する第1分割部11の一例を示す縦断面図である。なお、
図1(b)は、第1分割部11と第2分割部12とを接合する二次樹脂14が付加されていない状態を示している。また、
図2は、直管部1の軸及び屈曲部2の軸を含む面における断面を示している。また、説明のため、
図3(a)は、第1分割部11及び二次樹脂14を図示している。
図3(c)は、
図3(a)に示すE-E線に沿う断面図である。
【0020】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る管状体10は、直管部1と屈曲部2とが連接して設けられた構造を有する。直管部1は一体成形された円筒状部材により構成されている。屈曲部2は、管状体10の断面円形の流路を、直管部1の軸方向と異なる方向に変化させる部位である。特に限定されないが、本実施形態では、直管部1の軸が鉛直方向に沿って配置された場合に、屈曲部2は鉛直方向から概ね45度傾いた方向に管状体10の流路を変化させる構成になっている。なお、本明細書では、管状体10において、直管部1以外の部分を屈曲部2と定義している。
【0021】
屈曲部2は径方向に分割された半管状部2a、2bを接合することにより構成されている。本実施形態では、半管状部2a、2bを接合することにより、直管部1と同一径を有する断面円形の屈曲部2の流路が構成される。
図1(b)に示すように、半管状部2a、2bの接合面は、屈曲部2の開放端4において端面に露出する環状の管壁を、屈曲部2の屈曲方向内側の円弧部分と屈曲方向外側の円弧部分とに2分割する位置に配置されている。当該接合面は、開放端4の端面から屈曲部2の軸方向に沿って屈曲部2の周面に配置されるとともに、直管部1の中空部分(流路)と重なる位置において、屈曲部2の屈曲方向外側の管壁を周方向に分割する状態に配置されている。
【0022】
図1(b)に示すように、直管部1と屈曲部2の屈曲方向内側の半管状部2aは一体成形されており、第1分割部11を構成している。また、屈曲部2の屈曲方向外側の半管状部2bが、第2分割部12を構成している。例えば、直管部1の開放端3にはフランジ部を一体成形で設けることができ、屈曲部2の開放端4には他の直管部等を一体成形で設けることができる。
【0023】
管状体10は、
図2に示すように、第1分割部11と第2分割部12とが接合部13において二次樹脂14により接合されることで構成される。本実施形態の管状体10では、
図3(a)に示すように、接合部13の屈曲部2の屈曲方向外側に位置する部分(管状体10の周方向に配置される部分)13aが、第1分割部11の直管部1の軸方向において、直管部1の中空部分5と重なる屈曲部2に配置されている。
図1(a)、
図1(b)及び
図2に示すように、接合部13は、第1分割部11において、第2分割部12に対応する周縁部に設けられた溝部15と、第2分割部12において第1分割部11に対応する周縁部に設けられた溝部16とにより構成される。
【0024】
図2に示すように、溝部15は、第2分割部12に対応する第1分割部11の周縁部に設けられた肉厚部21に形成されている。肉厚部21は上述の第1分割部11の周縁部の全体にわたって、管状体10の流路側に突出する凸部21aを有する状態で設けられている。本実施形態では、凸部21aの厚さ(溝部15の流路側の壁面を構成する内側溝壁22の径方向の厚さ)が、接合部13に隣接する第1分割部11の流路内壁11aの厚さと同等となる状態に設計されている。溝部15は、第2分割部12の配置方向に向かう開口を有するU字状の凹部により構成され、上述の第1分割部11の周縁部の全体にわたって設けられている。
【0025】
同様に、溝部16は、第1分割部11に対応する第2分割部12の周縁部に設けられた肉厚部31に形成されている。肉厚部31は上述の第2分割部12の周縁部の全体にわたって、管状体10の流路側に突出する凸部31aを有する状態で設けられている。また、凸部31aの厚さ(溝部16の流路側の壁面を構成する内側溝壁32の径方向の厚さ)が接合部13に隣接する第2分割部12の流路内壁12aの厚さと同等となる状態に設計されている。溝部16は、第1分割部11の配置方向に向かう開口を有するU字状の凹部により構成され、上述の第2分割部12の周縁部の全体にわたって設けられている。
【0026】
また、第1分割部11の内側溝壁22の第2分割部12との当接面には、第2分割部12の配置方向に向って突出する突条23が内側溝壁22の全体にわたって溝部15に沿って設けられている。一方、第2分割部12の内側溝壁32の第1分割部11との当接面には、第1分割部11の突条23が嵌合する嵌合溝33が設けられている。
【0027】
図2に示すように、溝部15の開口幅と溝部16の開口幅は同一に設計されており、突条23と嵌合溝33とが嵌合する状態で第1分割部11と第2分割部12とを配置することで、溝部15の開口と溝部16の開口とが段差を生じることなく整合して配置される状態となる。その結果、断面矩形状の二次樹脂充填空間17が構成される。
【0028】
また、第1分割部11の内側溝壁22の径方向の厚さと第2分割部12の内側溝壁32の径方向の厚さも同一に設計されており、突条23と嵌合溝33とが嵌合する状態で第1分割部11と第2分割部12とを配置することで、内側溝壁22の流路側の面である凸部21aの表面と、内側溝壁32の流路側の面である凸部31aの表面とが整合して配置される状態となる。その結果、段差のないなめらかな表面を有する流路が構成される。特に限定されないが、本実施形態では、凸部21a及び凸部31aは、凸部21aと凸部31aとの当接位置が最も流路側に突出しており、凸部21aの表面と凸部31aの表面は、凸部21aと凸部31aとの当接位置を頂部とするなめらかな曲面を構成している。なお、突条23及び嵌合溝33は、以上のような位置合わせ機能とともに、二次樹脂充填空間17に導入された二次樹脂14が管状体10の流路に漏れ出すことを抑制する機能も有している。
【0029】
また、
図2に示すように、本実施形態の管状体10では、屈曲部2の屈曲方向内側における、直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pが、屈曲部2の屈曲方向外側における、接合部13の位置よりも直管部1側方向に配置される。後述のように、当該構造に起因して、第1分割部11において、接合部13により分割される、屈曲部2の内壁を構成する面の一部に、直管部1の軸方向に沿う2つの面19が形成されている。ここで、「軸方向に沿う」とは、軸方向と平行な状態だけでなく、軸方向に対してわずかに(数度程度)傾斜した状態も含む。
【0030】
図2及び
図3(a)から
図3(c)に示すように、面19は、第1分割部11において、屈曲部2の軸と直管部1の軸とからなる面(
図2の断面)を挟んで対称な位置に、第2分割部12側の端部から上述の直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pと対応する位置にわたって配置される。また、面19は、屈曲部2の軸と直管部1の軸とからなる面(
図2の断面)と垂直、かつ直管部の軸を含む面に対して、屈曲部2の屈曲方向外側に向かうにしたがって、屈曲方向外側に傾斜した面として構成される。
図3(c)に示すように、面19は、第2分割部12側の端部に、肉厚部21の断面に対応して屈曲部2の軸と直管部1の軸とからなる面の方向に延出された面を有し、他の部分は屈曲部2の屈曲方向外側の管壁の断面に対応する面を有している。
【0031】
管状体10を組み立てる場合、以上のように、突条23と嵌合溝33とが嵌合する状態で第1分割部11と第2分割部12とを配置した状態で二次樹脂充填空間17に二次樹脂14が導入される。これにより、第1分割部11と第2分割部12とが接合部13において二次樹脂14により溶着された管状体10が構成される。なお、本実施形態では、説明のため、
図1(a)に示すように、二次樹脂充填空間17が開放端4で開口する状態となっているが、二次樹脂充填空間17に二次樹脂14を導入する際には当該開口が閉鎖され、閉空間となった二次樹脂充填空間17に、当該二次樹脂充填空間17に連通する状態で設けられたゲートを通じて二次樹脂14が導入される。このような管状体10の組み立ては、第1分割部11と第2分割部12とが一次成形品としてそれぞれ成形された後に、一方を他方にスライドさせ、上述の二次樹脂充填空間17に二次樹脂14を導入して成形するDSI法により実施することが好ましい。
【0032】
ここで、管状体10の成形方法について説明する。なお、第2分割部12は、特記すべき複雑な構造を有しておらず、型締め時に第2分割部12の形状に対応するキャビティを構成する成形金型を使用した射出成形等の一般的な成形方法により成形可能であるため、ここでの説明は省略する。
図4(a)及び
図4(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体10を構成する第1分割部11の内壁を形成する成形金型を模式的に示す縦断面図である。
【0033】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第1分割部11の内壁は、直管部1の軸方向に対向して配置される第1金型41と第2金型51を使用して成形することができる。
図4(b)に示すように、第1金型41は、成形面42、摺合わせ面43、44、45を備える。成形面42は、直管部1の内壁及び直管部1の中空部分5と重なる屈曲部2の内壁2c(
図3(b)参照)に対応する面により構成される。摺合わせ面43は、直管部1の軸方向において直管部1の中空部分5と重なる位置で直管部1の軸方向に沿う平面により構成される。摺合わせ面44は、上述の直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pに対応する位置に配置される、直管部1の軸方向と垂直な平面により構成される。摺合わせ面45は、
図2(b)に示す、直管部1の中空部分5と重なる接合部13aの凹部13bに対応する、直管部1の軸方向と垂直な平面により構成される。なお、第1金型41は、直管部1及び半管状部2aの外壁や直管部1の開放端3に対応する成形面及び外壁の成形面の周縁に設けられる摺合わせ面も備えるが、ここでの図示及び説明は省略する。
【0034】
一方、第2金型51は、成形面52、摺合わせ面53、54を備える。成形面52は、屈曲部2の屈曲方向内側の半管状部2aの内壁に対応する面により構成される。摺合わせ面53は、第1金型41の摺合わせ面43と当接する面であり、直管部1の軸方向において直管部1の中空部分5と重なる位置で直管部1の軸方向に沿う平面により構成される。摺合わせ面54は、第1金型41の摺合わせ面44と当接する面であり、直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pに対応する位置に配置される、直管部1の軸方向と垂直な平面により構成される。なお、第2金型51は、第1分割部11の溝部15や突条23、屈曲部2の屈曲方向外側の外壁、屈曲部2の開放端4に対応する成形面及びこれらの成形面の周縁に設けられる摺合わせ面、第1金型41の摺合わせ面45と当接する摺合わせ面も備えるが、ここでの図示及び説明は省略する。
【0035】
以上のような、第1金型41及び第2金型51を型締めし、図示しないゲートから第1金型41及び第2金型51に構成されるキャビティ―内に溶融樹脂が射出されることで、第1分割部11が成形される。なお、第2金型51の成形面52は、摺合わせ面54近傍において直管部1の中空部分5の内壁面を構成することになる。そのため、本実施形態では、第2金型51の基部側(
図4の図中上方側)における第2金型51の成形面52のサイズを直管部1の中空部分5に整合するサイズとすることでアンダーカットの発生を回避している。一方、屈曲部2の流路を構成する中空部分では、直管部1の軸方向に沿って直管部1から離れるにしたがって、開口面積が小さくなる。そのため、第1分割部11の内壁には、第2金型51の摺合わせ面54に対応する上述の面19が直管部1の軸方向に沿って形成されることになる。
【0036】
図5(a)から
図5(d)は、本発明の一実施形態に係る管状体10を構成する第1分割部11一例を示す横断面図である。なお、
図5(a)から
図5(d)は、それぞれ
図2に示す、A-A線、B-B線、C-C線、D-D線に沿う断面を示している。
図5(a)から
図5(d)に示すように、第1分割部11において、屈曲部2の軸と直管部1の軸とからなる面を挟んで対称な位置に、第2分割部12側の端部から上述の直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pと対応する位置にわたって面19が配置されていることが理解できる。
【0037】
本実施形態に係る管状体10は、上述のような構成を採用したことで、屈曲部2の屈曲方向内側における、直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pを、従来構成とは異なり、屈曲部2の屈曲方向外側の接合部13の位置よりも直管部1側方向に配置することが可能になる。その結果、管状体10全体の断面積を増大させることなく、屈曲部2における流路断面積を容易に確保することができ、屈曲部2を備える管状体10の設計自由度を従来に比べて格段に向上させることができる。なお、管状体10は、直管部1が管状体10内を通過する流体の流路の上流側を構成する態様で使用することが特に好ましい。このような配置を採用することで、直管部1の軸方向に沿う面19が、流路の下流側を向いて配置される。そのため、面19が流路中の流体の流れを阻害することがない。
【0038】
また、本実施形態の管状体10では、直管部1の軸方向に沿う面19が、屈曲部2の軸と直管部1の軸とからなる面と垂直、かつ直管部の軸を含む面に対して屈曲方向外側に傾斜する構成を採用している。この構成では、直管部1の内壁を構成する第1金型41と第2金型51との摺合わせ面43、53が屈曲部2の軸と直管部1の軸とからなる面と垂直、かつ直管部の軸を含む面に対して屈曲方向外側に傾斜していることになる。そのため、第1分割部11をより安定して成形することができる。
【0039】
なお、第1分割部11、第2分割部12、二次樹脂14を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ABS、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することができる。また、合成樹脂は、種々の添加剤が添加されたものでもよく、また、例えば、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂でもよい。さらに、管状体10は、接合部13が合成樹脂製であればよく、インサート成形等によって一部に金属製の部材を含んだ構成であってもよい
【0040】
また、管状体10は、気体や液体等の種々の流体を流通させる管路として使用することができる。例えば、管状体10は、エンジン冷却水管やインテークマニホールド等として自動車等の車両に使用することができる。また、管状体10は、車両用に限らず、ガス等の設備機器や水回り設備機器の配管等として使用することもできる。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される管状体において、設計自由度を格段に向上させることができる。
【0042】
なお、上述の実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上述の実施形態では、特に好ましい形態として、面19が屈曲部2の軸と直管部1の軸とからなる面と垂直、かつ直管部1の軸を含む面に対して屈曲方向外側に傾斜する構成としたが、面19が屈曲部2の軸と直管部1の軸とからなる面と垂直、かつ直管部1の軸を含む面に対して傾斜しない面(平行な面)であってもよい。また、接合部13の物理的な構造等も、本発明の効果を奏する範囲において任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 直管部
2 屈曲部
2a、2b 半管状部
5 直管部の中空部分
10 管状体
11 第1分割部
11a 接合部に隣接する第1分割部の流路内壁
12 第2分割部
12a 接合部に隣接する第2分割部の流路内壁
13 接合部
13a 直管部の中空部分と重なる接合部
14 二次樹脂
17 二次樹脂充填空間
19 直管部の軸方向に沿う面
P 直管部と屈曲部との切り替え位置