IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 内山工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-管状体 図1
  • 特許-管状体 図2
  • 特許-管状体 図3
  • 特許-管状体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】管状体
(51)【国際特許分類】
   F16L 9/22 20060101AFI20241021BHJP
   F16L 43/00 20060101ALI20241021BHJP
   B29C 65/40 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
F16L9/22
F16L43/00
B29C65/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020202387
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090173
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】枝廣 和憲
(72)【発明者】
【氏名】陶山 勇一
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-205299(JP,A)
【文献】特開2013-174156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/22
F16L 43/00
B29C 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される管状体であって、
直管部と、当該直管部と連接して設けられた屈曲部の屈曲方向内側の半管状部とを有する第1分割部と、
前記屈曲部の屈曲方向外側の半管状部を有する第2分割部と、
前記第1分割部と前記第2分割部との接合部のうち、前記第1分割部の前記直管部の軸方向において当該直管部の中空部分と重なる前記屈曲部に配置された前記接合部の部分と、
前記接合部において前記第1分割部と前記第2分割部とを接合する二次樹脂と、
を備え、
前記接合部の前記部分に対応する第1分割部の流路内壁及び第2分割部の流路内壁が、前記接合部に軸方向で隣接する第1分割部の流路内壁と、前記接合部に軸方向で隣接する第2分割部の流路内壁とを結ぶ面よりも流路側に突出する凸部を構成する管状体。
【請求項2】
前記二次樹脂の少なくとも一部が、前記接合部に軸方向で隣接する第1分割部の流路内壁と、前記接合部に軸方向で隣接する第2分割部の流路内壁とを結ぶ面よりも流路側に配置される請求項1記載の管状体。
【請求項3】
前記屈曲部の屈曲方向内側における、直管部と屈曲部との切り替え位置が、前記凸部よりも直管部側方向に配置される請求項1又は請求項2記載の管状体。
【請求項4】
前記凸部が曲面により構成される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管状体。
【請求項5】
前記第1分割部と前記第2分割部との前記接合部にそれぞれ設けられた溝部に前記二次樹脂が充填されるとともに、前記溝部の流路側の壁面を構成する第1分割部の内側溝壁の厚さが当該接合部に隣接する第1分割部の管壁の厚さと同等であり、前記溝部の流路側の壁面を構成する第2分割部の内側溝壁の厚さが当該接合部に隣接する第2分割部の管壁の厚さと同等である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の管状体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径方向に分割された2つの半管状部を接合することで構成される管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路に屈曲部等を有する複雑な形状の樹脂製の管状体として、径方向に分割された半管状部が接合された構造が知られている。このような管状体では、取付対象への管状体の固定に使用されるフランジ部が軸方向の一端部に形成される場合がある。フランジ部を備える管状体において、フランジ部も含めて径方向に分割された半管状部が接合される構成では、取付対象と当接するフランジ部の面に段差等が生じる可能性がある。そのため、半管状部の一方に、一端にフランジ部を備える管状部分を一体的に設ける構成が提案されている(特許文献1-4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-132219号公報
【文献】特開2013-174156号公報
【文献】特開平7-246654号公報
【文献】特許第2656723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、3、4が開示するように、量産性向上の観点では、二次樹脂による上述の半管状部の接合に、ダイスライドインジェクション法(DSI法)を適用することが好ましい。DSI法を適用する場合、二次樹脂を導入するためのDSI接合部は、管状体の内部側に二次樹脂が漏れ出ることを回避するために、一般的に、管状体の外壁から外側に突出する状態で設けられる。また、このような構成とすることで、管状体の内部側に突出部が形成されず、管状体内の流体の流れを阻害しないという利点もある。
【0005】
しかしながら、取付対象へのフランジ部の固定にボルト締結をする場合、フランジ部に連接される管状体の周方向に、DSI接合部のような凸部が存在すると取付作業性が低下してしまう。また、管状体の配置スペースに制限がある場合、DSI接合部のような凸部が存在すると、取付対象の周辺部材との間の所望のクリアランスを確保できない可能性もある。加えて、上述のように管状体の外壁の外側にDSI接合部を配置すると、管状体の流路とDSI接合部との間の距離が大きくなるため、DSI接合部に応力が集中しやすく、目的とする接合強度を確保できない可能性もある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される管状体において、取付対象に取り付ける際の、周辺部材とのクリアランスの確保を容易とするとともに、二次樹脂による接合強度を向上させることができる、管状体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。本発明に係る管状体は、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される。そして、本発明に係る管状体は、第1分割部、第2分割部、第1分割部と第2分割部との接合部を備える。第1分割部は、直管部と、当該直管部と連接して設けられた屈曲部の屈曲方向内側の半管状部とを有する。第2分割部は、屈曲部の屈曲方向外側の半管状部を有する。本発明に係る管状体は、第1分割部と第2分割部との接合部のうち、第1分割部の直管部の軸方向において当該直管部の中空部分と重なる屈曲部に配置された接合部の部分を備える。当該接合部において、第1分割部と第2分割部とは二次樹脂により接合される。本発明に係る管状体は、以上の構成において、接合部の前記部分に対応する第1分割部の流路内壁及び第2分割部の流路内壁が、接合部に軸方向で隣接する第1分割部の流路内壁と、接合部に軸方向で隣接する第2分割部の流路内壁とを結ぶ面よりも流路側に突出する凸部を構成する。
【0008】
以上の構成によれば、管状体を取付対象に取り付ける際の、周辺部材とのクリアランスを容易に確保できるとともに、二次樹脂による接合部の接合強度を向上させることができる。また、直管部にフランジ部を設けた場合でも、直管部の外壁に大きな凸部が形成されないため、取付対象へのフランジ部の固定にボルト締結をする場合でも取付作業性が低下することもない。
【0009】
以上の管状体において、二次樹脂の少なくとも一部が、接合部に軸方向で隣接する第1分割部の流路内壁と、接合部に軸方向で隣接する第2分割部の流路内壁とを結ぶ面よりも流路側に配置される構成を採用することができる。この構成では、上述の効果をより高めることができる。
【0010】
以上の管状体において、屈曲部の屈曲方向内側における、直管部と屈曲部との切り替え位置が、凸部よりも直管部側方向に配置される構成を採用することができる。この構成では、接合部に対応する第1分割部の流路内壁及び第2分割部の流路内壁が流路側に突出する凸部が存在する場合でも、流路断面積を確保することができる。
【0011】
以上の管状体において、凸部が曲面により構成される構成を採用することができる。この構成では、接合部に対応する第1分割部の流路内壁及び第2分割部の流路内壁が流路側に突出する凸部に起因する流路中の流体の流れの乱れを抑制することができる。
【0012】
以上の管状体において、第1分割部と第2分割部との接合部にそれぞれ設けられた溝部に二次樹脂が充填されるとともに、溝部の流路側の壁面を構成する第1分割部の内側溝壁の厚さが接合部に隣接する第1分割部の管壁の厚さと同等であり、溝部の流路側の壁面を構成する第2分割部の内側溝壁の厚さが当該接合部に隣接する第2分割部の管壁の厚さと同等である構成を採用することができる。この構成では、二次樹脂による接合強度の向上と、二次樹脂による接合工程における流路側への二次樹脂の漏れ防止とをバランスよく実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される管状体において、取付対象に取り付ける際の、周辺部材とのクリアランスの確保を容易とするとともに、二次樹脂による接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る管状体の外観の一例を示す斜視図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体を構成する第1分割部及び第2分割部の一例を示す斜視図である。
図2】(a)は、本発明の一実施形態に係る管状体を構成する第1分割部、第2分割部、二次樹脂の一例を示す縦断面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体を構成する第1分割部及び二次樹脂の一例を示す拡大平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る管状体の屈曲部の一例を示す拡大縦断面図である。
図4】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体を構成する第1分割部の一例の内壁を形成する金型を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る管状体は、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される。上述のとおり、管状体の端部には、フランジ部等を設けることができるが、本発明の管状体の特徴的な構成は屈曲部分における半管状部の接合構造に現れるため、以下では端部にフランジ部を備えていない事例により本発明を具体化している。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る管状体10の外観の一例を示す斜視図である。図1(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体10を構成する第1分割部11及び第2分割部12の一例を示す斜視図である。図2(a)は、本発明の一実施形態に係る管状体10を構成する第1分割部11、第2分割部12、二次樹脂14の一例を示す縦断面図である。図2(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体10を構成する第1分割部11及び二次樹脂14の一例を示す拡大平面図である。なお、図1(b)は、第1分割部11と第2分割部12とを接合する二次樹脂14が付加されていない状態を示している。また、説明のため、図2(a)は、第1分割部11、第2分割部12、二次樹脂14のそれぞれを分離させた状態を示し、図2(b)は、第1分割部11及び二次樹脂14のみを図示し、第2分割部12の記載を省略している。
【0017】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る管状体10は、直管部1と屈曲部2とが連接して設けられた構造を有する。直管部1は一体成形された円筒状部材により構成されている。屈曲部2は、管状体10の断面円形の流路を、直管部1の軸方向と異なる方向に変化させる部位である。特に限定されないが、本実施形態では、直管部1の軸が鉛直方向に沿って配置された場合に、屈曲部2は鉛直方向から概ね45度傾いた方向に管状体10の流路を変化させる構成になっている。なお、本明細書では、管状体10において、直管部1以外の部分を屈曲部2と定義している。
【0018】
屈曲部2は径方向に分割された半管状部2a、2bを接合することにより構成されている。本実施形態では、半管状部2a、2bを接合することにより、直管部1と同一径を有する断面円形の屈曲部2の流路が構成される。図1(b)に示すように、半管状部2a、2bの接合面は、屈曲部2の開放端4において端面に露出する環状の管壁を、屈曲部2の屈曲方向内側の円弧部分と屈曲方向外側の円弧部分とに2分割する位置に配置されている。当該接合面は、開放端4の端面から屈曲部2の軸方向に沿って屈曲部2の周面に配置されるとともに、直管部1の中空部分(流路)と重なる位置において、屈曲部2の屈曲方向外側の管壁を周方向に分割する状態に配置されている。
【0019】
図1(b)に示すように、直管部1と屈曲部2の屈曲方向内側の半管状部2aは一体成形されており、第1分割部11を構成している。また、屈曲部2の屈曲方向外側の半管状部2bが、第2分割部12を構成している。例えば、直管部1の開放端3にはフランジ部を一体成形で設けることができ、屈曲部2の開放端4には他の直管部等を一体成形で設けることができる。
【0020】
管状体10は、図2(a)に示すように、第1分割部11と第2分割部12とが接合部13において二次樹脂14により接合されることで構成される。本実施形態の管状体10では、図2(b)に示すように、接合部13の屈曲部2の屈曲方向外側に位置する部分(管状体10の周方向に配置される部分)13aが、第1分割部11の直管部1の軸方向において、直管部1の中空部分5と重なる屈曲部2に配置されている。図2(a)に示すように、接合部13は、第1分割部11において、第2分割部12に対応する周縁部に設けられた溝部15と、第2分割部12において第1分割部11に対応する周縁部に設けられた溝部16とにより構成される。
【0021】
また、図2(a)に示すように、本実施形態の管状体10では、屈曲部2の屈曲方向内側における、直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pが、屈曲部2の屈曲方向外側における、接合部13の位置よりも直管部1側方向に配置された構成を採用している。なお、このような構造を有する第1分割部11の成形方法については後述する。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態に係る管状体10の屈曲部2の一例を示す拡大縦断面図である。なお、図3は、直管部1の軸及び屈曲部2の軸を含む面における断面を示している。図3に示すように、溝部15は、第2分割部12に対応する第1分割部11の周縁部に設けられた肉厚部21に形成されている。肉厚部21は上述の第1分割部11の周縁部の全体にわたって、管状体10の流路側に突出する凸部21aを有する状態で設けられている。本実施形態では、凸部21aの厚さ(流路壁である溝部15の流路側の壁面を構成する内側溝壁22の径方向の厚さ)が、接合部13に隣接する第1分割部11の管壁の厚さと同等となる状態に設計されている。溝部15は、第2分割部12の配置方向に向かう開口を有するU字状の凹部により構成され、上述の第1分割部11の周縁部の全体にわたって設けられている。
【0023】
同様に、溝部16は、第1分割部11に対応する第2分割部12の周縁部に設けられた肉厚部31に形成されている。肉厚部31は上述の第2分割部12の周縁部の全体にわたって、管状体10の流路側に突出する凸部31aを有する状態で設けられている。また、凸部31aの厚さ(流路壁である溝部16の流路側の壁面を構成する内側溝壁32の径方向の厚さ)が接合部13に隣接する第2分割部12の管壁の厚さと同等となる状態に設計されている。溝部16は、第1分割部11の配置方向に向かう開口を有するU字状の凹部により構成され、上述の第2分割部12の周縁部の全体にわたって設けられている。
【0024】
また、第1分割部11の内側溝壁22の第2分割部12との当接面には、第2分割部12の配置方向に向って突出する突条23が内側溝壁22の全体にわたって溝部15に沿って設けられている。一方、第2分割部12の内側溝壁32の第1分割部11との当接面には、第1分割部11の突条23が嵌合する嵌合溝33が設けられている。
【0025】
図3に示すように、溝部15の開口幅と溝部16の開口幅は同一に設計されており、突条23と嵌合溝33とが嵌合する状態で第1分割部11と第2分割部12とを配置することで、溝部15の開口と溝部16の開口とが段差を生じることなく整合して配置される状態となる。その結果、断面矩形状の二次樹脂充填空間17が構成される。なお、特に限定されないが、本実施形態の管状体10では、図3に示すように、二次樹脂充填空間17の一部は、接合部13に軸方向で隣接する第1分割部11の流路内壁11aと、接合部13に軸方向で隣接する第2分割部12の流路内壁12aとを結ぶ面(図3に破線で示す。)よりも流路側に配置されている。
【0026】
また、第1分割部11の内側溝壁22の径方向の厚さと第2分割部12の内側溝壁32の径方向の厚さも同一に設計されており、突条23と嵌合溝33とが嵌合する状態で第1分割部11と第2分割部12とを配置することで、内側溝壁22の流路側の面である凸部21aの表面と、内側溝壁32の流路側の面である凸部31aの表面とが整合して配置される状態となる。その結果、段差のないなめらかな表面を有する流路が構成される。特に限定されないが、本実施形態では、凸部21a及び凸部31aは、凸部21aと凸部31aとの当接位置が最も流路側に突出しており、凸部21aの表面と凸部31aの表面は、凸部21aと凸部31aとの当接位置を頂部とするなめらかな曲面を構成している。なお、突条23及び嵌合溝33は、以上のような位置合わせ機能とともに、二次樹脂充填空間17に導入された二次樹脂14が管状体10の流路に漏れ出すことを抑制する機能も有している。
【0027】
管状体10を組み立てる場合、以上のように、突条23と嵌合溝33とが嵌合する状態で第1分割部11と第2分割部12とを配置した状態で二次樹脂充填空間17に二次樹脂14が導入される。これにより、第1分割部11と第2分割部12とが接合部13において二次樹脂14により溶着された管状体10が構成される。なお、本実施形態では、説明のため、図1(a)に示すように、二次樹脂充填空間17が開放端4で開口する状態となっているが、二次樹脂充填空間17に二次樹脂14を導入する際には当該開口が閉鎖され、閉空間となった二次樹脂充填空間17に、当該二次樹脂充填空間17に連通する状態で設けられたゲートを通じて二次樹脂14が導入される。このような管状体10の組み立ては、第1分割部11と第2分割部12とが一次成形品としてそれぞれ成形された後に、一方を他方にスライドさせ、上述の二次樹脂充填空間17に二次樹脂14を導入して成形するDSI法により実施することが好ましい。
【0028】
ここで、管状体10の成形方法について説明する。なお、第2分割部12は、特記すべき複雑な構造を有しておらず、型締め時に第2分割部12の形状に対応するキャビティを構成する成形金型を使用した射出成形等の一般的な成形方法により成形可能であるため、ここでの説明は省略する。図4(a)及び図4(b)は、本発明の一実施形態に係る管状体10を構成する第1分割部11の内壁を形成する成形金型を模式的に示す縦断面図である。
【0029】
図4(a)及び図4(b)に示すように、第1分割部11の内壁は、直管部1の軸方向に対向して配置される第1金型41と第2金型51を使用して成形することができる。図4(b)に示すように、第1金型41は、成形面42、摺合わせ面43、44、45を備える。成形面42は、直管部1の内壁及び直管部1の中空部分5と重なる屈曲部2の内壁に対応する面により構成される。摺合わせ面43は、直管部1の軸方向において直管部1の中空部分5と重なる位置で直管部1の軸方向に沿う平面(軸方向に平行な平面又は軸方向に対してわずかに傾斜した平面)により構成される。摺合わせ面44は、上述の直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pに対応する位置に配置される、直管部1の軸方向と垂直な平面により構成される。摺合わせ面45は、図2(b)に示す、直管部1の中空部分5と重なる接合部13aの凹部13bに対応する、直管部1の軸方向と垂直な平面により構成される。なお、第1金型41は、直管部1及び半管状部2aの外壁や直管部1の開放端3に対応する成形面及び外壁の成形面の周縁に設けられる摺合わせ面も備えるが、ここでの図示及び説明は省略する。
【0030】
一方、第2金型51は、成形面52、摺合わせ面53、54を備える。成形面52は、屈曲部2の屈曲方向内側の半管状部2aの内壁に対応する面により構成される。摺合わせ面53は、第1金型41の摺合わせ面43と当接する面であり、直管部1の軸方向において直管部1の中空部分5と重なる位置で直管部1の軸方向に沿う平面により構成される。摺合わせ面54は、第1金型41の摺合わせ面44と当接する面であり、直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pに対応する位置に配置される、直管部1の軸方向と垂直な平面により構成される。なお、第2金型51は、第1分割部11の溝部15や突条23、屈曲部2の屈曲方向外側の外壁、屈曲部2の開放端4に対応する成形面及びこれらの成形面の周縁に設けられる摺合わせ面、第1金型41の摺合わせ面45と当接する摺合わせ面も備えるが、ここでの図示及び説明は省略する。
【0031】
以上のような、第1金型41及び第2金型51を型締めし、図示しないゲートから第1金型41及び第2金型51に構成されるキャビティ―内に溶融樹脂が射出されることで、第1分割部11が成形される。なお、第2金型51の成形面52は、摺合わせ面54近傍において直管部1の中空部分5の内壁面を構成することになる。そのため、本実施形態では、第2金型51の基部側(図4の図中上方側)における第2金型51の成形面52のサイズを直管部1の中空部分5に整合するサイズとすることでアンダーカットの発生を回避している。一方、屈曲部2の流路を構成する中空部分では、直管部1の軸方向に沿って直管部1から離れるにしたがって、開口面積が小さくなる。そのため、第1分割部11の内壁には、第2金型51の摺合わせ面54に対応する段差19が直管部1の軸方向に沿って形成されることになる。
【0032】
以上で説明した第1分割部11及び第2分割部12を使用して組み立てられた管状体10は、図3に示すように、二次樹脂14の少なくとも一部が、第1分割部11の流路内壁11aと、第2分割部12の流路内壁12aとを結ぶ面よりも流路側に配置される。また、接合部13に対応する第1分割部11の流路内壁である凸部21aの表面及び接合部13に対応する第2分割部12の流路内壁である凸部31aの表面により流路側に突出する凸部18が構成される。
【0033】
本実施形態に係る管状体10は、このような構成を採用したことで、管状体10の外壁における接合部13の突出量を従来の構成に比べて小さくすることができる。その結果、管状体10を取付対象に取り付ける際の、周辺部材とのクリアランスを従来構成に比べて容易に確保することができる。また、二次樹脂14が管状体10の外壁よりも内側(流路側)に配置されているため、従来構成よりも接合部13に付与される応力の集中を緩和することができ、従来構成に比べて接合強度を向上させることができる。さらに、直管部1にフランジ部を設けた場合でも、直管部1の外壁に大きな凸部が存在しないため、取付対象へのフランジ部の固定にボルト締結をする場合でも取付作業性が低下することもない。
【0034】
また、本実施形態の管状体10では、屈曲部2の屈曲方向内側における、直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pが、凸部18よりも直管部1側方向に配置された構成を採用している。そのため、凸部18が存在する場合でも、流路断面積を確保することができる。
【0035】
さらに、本実施形態に係る管状体10では、上述のとおり、管状体10の凸部18を曲面とした構成を採用している。そのため、凸部18に起因する流路中の流体の流れの乱れを抑制することができる。
【0036】
加えて、本実施形態に係る管状体10では、接合部13に対応する第1分割部11の流路壁である内側溝壁22の厚さが、接合部13に隣接する第1分割部11の管壁の厚さと同等であり、接合部13に対応する第2分割部12の流路壁である内側溝壁32の厚さが接合部13に隣接する第2分割部12の管壁の厚さと同等とした構成を採用している。そのため、二次樹脂14による接合強度の向上と、二次樹脂14による接合工程における流路側への二次樹脂14の漏れ防止とをバランスよく実現することができる。
【0037】
なお、第1分割部11、第2分割部12、二次樹脂14を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ABS、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することができる。また、合成樹脂は、種々の添加剤が添加されたものでもよく、また、例えば、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂でもよい。さらに、管状体10は、接合部13が合成樹脂製であればよく、インサート成形等によって一部に金属製の部材を含んだ構成であってもよい
【0038】
また、管状体10は、気体や液体等の種々の流体を流通させる管路として使用することができる。例えば、管状体10は、エンジン冷却水管やインテークマニホールド等として自動車等の車両に使用することができる。また、管状体10は、車両用に限らず、ガス等の設備機器や水回り設備機器の配管等として使用することもできる。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、屈曲部を備えるとともに、径方向に分割された2つの半管状部を二次樹脂により接合することで構成される管状体において、取付対象に取り付ける際の、周辺部材とのクリアランスの確保を容易とするとともに、二次樹脂による接合強度を向上させることができる。
【0040】
なお、上述の実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上述の実施形態では、特に好ましい形態として、二次樹脂14の少なくとも一部が、第1分割部11の流路内壁11aと、第2分割部12の流路内壁12aとを結ぶ面よりも流路側に配置されるとともに、接合部13に対応する第1分割部11の流路内壁である凸部21aの表面及び接合部13に対応する第2分割部12の流路内壁である凸部31aの表面により、流路側に突出する凸部18が構成される態様とした。しかしながら、少なくとも、凸部18が、第1分割部11の流路内壁11aと、第2分割部12の流路内壁12aとを結ぶ面よりも流路側に突出する構成であれば、上述の効果を得ることは可能である。また、上述の実施形態では、特に好ましい形態として、直管部1と屈曲部2との切り替え位置Pが、凸部18よりも直管部1側方向に配置される構成としたが、直管部1と屈曲部2との切り替え位置が凸部18と直管部1の軸方向において同等の位置に配置する構成とすることも排除されない。また、凸部18が曲面により構成されることは必須ではなく、他の任意の構造を採用することができる。さらに、内側溝壁22の厚さが第1分割部11の管壁の厚さと同等であること、及び内側溝壁32の厚さが第2分割部12の管壁の厚さと同等とも必須ではなく、管状体としての強度を確保することが可能であれば他の任意の構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 直管部
2 屈曲部
2a、2b 半管状部
5 直管部の中空部分
10 管状体
11 第1分割部
11a 接合部に隣接する第1分割部の流路内壁
12 第2分割部
12a 接合部に隣接する第2分割部の流路内壁
13 接合部
13a 直管部の中空部分と重なる接合部
14 二次樹脂
17 二次樹脂充填空間
18 凸部
21、31 肉厚部
21a、31a 凸部(接合部に対応する流路内壁)
22、32 内側溝壁
P 直管部と屈曲部との切り替え位置
図1
図2
図3
図4