IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本圧着端子製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コネクタ 図1
  • 特許-コネクタ 図2
  • 特許-コネクタ 図3
  • 特許-コネクタ 図4
  • 特許-コネクタ 図5
  • 特許-コネクタ 図6
  • 特許-コネクタ 図7
  • 特許-コネクタ 図8
  • 特許-コネクタ 図9
  • 特許-コネクタ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
H01R13/42 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020218410
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103653
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大比叡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 祐二
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-045726(JP,A)
【文献】特開2018-147788(JP,A)
【文献】特開2010-050018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0006781(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0261946(US,A1)
【文献】特開2017-168287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向、第2方向及び第3方向を直交3方向として、前記第1方向に開口する嵌合孔が形成され、前記嵌合孔の内周壁において前記第2方向に対向する一対の内壁面のそれぞれに係止部が設けられるハウジングと、
前記嵌合孔に前記第1方向から挿入されて嵌合されるリテーナと、を備え、
前記リテーナは、前記第1方向に対向する一対の第1外面と、前記第2方向に対向する一対の第2外面と、前記第3方向に対向する一対の第3外面と、各前記第2外面に近接し前記一対の第3外面を前記第3方向に貫通する貫通孔であって且つ前記第1方向に長手に延びる長孔と、前記長孔と対応する前記第2外面との間に形成され、前記第1方向に長手に延び、一対の長手方向端部で両持ち支持される梁部と、前記梁部の前記長手方向の中間部から外向きに突出し対応する前記係止部に係止する係止突起と、前記梁部の前記長手方向の中間部に作用する応力を緩和する応力緩和部と、を含み、
前記応力緩和部は、前記長孔の少なくとも一方の長手方向端部のみを短手方向のみに拡張する孔拡張部を含む、コネクタ。
【請求項2】
前記応力緩和部は、前記長孔の前記長手方向端部に対して前記第1方向に所定距離離隔し、前記一対の第3外面を前記第3方向に貫通する肉抜き部と、前記肉抜き部と前記長孔の前記長手方向端部との間に形成され、前記梁部の長手方向端部から短手方向に延びて前記梁部を支持し、前記所定距離によって前記第1方向の厚みが調整される脚部と、含む、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記肉抜き部は、端子挿通用の案内孔を含む、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記肉抜き部は、前記第2外面に形成された凹溝を含む、請求項2又は3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記孔拡張部によって拡張された前記長孔の前記長手方向端部が、前記第1外面及び前記第2外面により形成されるコーナ部に近接して配置され、
前記応力緩和部は、前記第1外面と前記長孔の前記長手方向端部との間に形成され、前記梁部の対応する前記長手方向端部から短手方向に延びて前記梁部を支持する脚部を含む、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第2外面に、前記梁部の第3方向側に隣接し、前記長孔に連通し、且つ前記梁部の前記第3方向の幅を調整する切欠き凹部が形成されている、請求項1~5の何れか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるコネクタでは、ケースのリテーナ配置部にリテーナが挿入される。リテーナの挿入時にケースの左右の側壁部における開口部の係止部に対して、リテーナの本係止爪が乗り越え係止されて、リテーナが配置位置に配置される。
リテーナの側壁を前後方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔は、上下に長い長孔とされている。リテーナの側壁には、長孔(貫通孔)の長手方向(上下方向)に沿って梁部が形成されている。梁部は、上下方向の両端で両持ち支持されており、梁部の外側には、本係止爪が突出形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-115409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リテーナにおいて、梁部が両持ち支持されるため、梁部の長手方向の中央部付近に応力が集中し、梁部が破損するおそれがある。
そこで、本発明の目的は、リテーナが破損し難いコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示のコネクタ(1)は、第1方向(X)、第2方向(Y)及び第3方向(Z)を直交3方向として、前記第1方向に開口する嵌合孔(4)が形成され、前記嵌合孔の内周壁において前記第2方向に対向する一対の内壁面(43,44)のそれぞれに係止部(45)が設けられるハウジング(2)と、前記嵌合孔に前記第1方向から挿入されて嵌合されるリテーナ(3)と、を備える。前記リテーナは、前記第1方向に対向する一対の第1外面(31,32)と、前記第2方向に対向する一対の第2外面(33,34)と、前記第3方向に対向する一対の第3外面(35,36)と、各前記第2外面に近接し前記一対の第3外面を前記第3方向に貫通する貫通孔であって且つ前記第1方向に長手に延びる長孔(5,6;10A;10B)と、前記長孔と対応する前記第2外面との間に形成され、前記第1方向に長手に延び、一対の長手方向端部(71,72;81,82)で両持ち支持される梁部(7,8)と、前記梁部の前記長手方向の中間部から外向きに突出し対応する前記係止部に係止する係止突起(73,83)と、前記梁部の前記長手方向の前記中間部に作用する応力を緩和する応力緩和部(M7,M8)と、を含む。前記応力緩和部は、前記長孔の少なくとも一方の長手方向端部(51;61,62;101)のみを短手方向(S)のみに拡張する孔拡張部(53,54;63,64;103;104)を含む。
【0006】
本構成によれば、孔拡張部(応力緩和部)によって拡張された長孔の長手方向端部の周辺部において、梁部の長手方向端部及びこれを支持する部分が変形し易くなる。これにより、梁部の長手方向の中間部における応力集中が緩和されるため、リテーナが破損し難いコネクタを実現することができる。
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
(2)前記応力緩和部は、前記長孔の前記長手方向端部に対して前記第1方向に所定距離離隔し、前記一対の第3外面を前記第3方向に貫通する肉抜き部(37,38)と、前記肉抜き部と前記長孔の前記長手方向端部との間に形成され、前記梁部の長手方向端部から短手方向に延びて前記梁部を支持し、前記所定距離によって前記第1方向の厚み(t2,t3,t4)が調整される脚部(12,13,14)と、を含んでいてもよい。
【0007】
この構成では、長孔の長手方向端部と肉抜き部とが離隔する第1方向の距離である前記所定距離の設定によって、梁部の長手方向端部から短手方向に延びる脚部の第1方向の厚みが調整される。これにより、脚部を変形し易くして応力を分散させ、梁部の長手方向の中間部における応力集中を緩和することができる。
(3)前記肉抜き部は、端子挿通用の案内孔(37)を含んでいてもよい。この構成では、肉抜き部として、リテーナにもともと存在する案内孔を用いるため、構造を簡素化することができる。
(4)前記肉抜き部は、前記第2外面に形成された凹溝(38)を含んでいてもよい。この構成では、肉抜き部として凹溝を用いる簡単な構造で梁部の応力集中を緩和することができる。
(5)前記孔拡張部によって拡張された前記長孔の前記長手方向端部が、前記第1外面及び前記第2外面により形成されるコーナ部(C)に近接して配置され、前記応力緩和部は、前記第1外面(31)と前記長孔の前記長手方向端部(51)との間に形成され、前記梁部の対応する前記長手方向端部から短手方向に延びて前記梁部(7)を支持する脚部(11)を含んでいてもよい。
【0008】
この構成では、孔拡張部によって拡張された長孔の長手方向端部をコーナ部に近接して配置する簡単な構造で、梁部の長手方向端部から短手方向に延びる脚部を変形し易くし、応力を分散させて梁部の応力集中を緩和することができる。
(6)前記第2外面(33,34)に、前記梁部の第3方向側に隣接し、前記長孔に連通し、且つ前記梁部の前記第3方向の幅(W7,W8)を調整する切欠き凹部(91,92)が形成されていてもよい。この構成では、切欠き凹部を設ける簡単な構造で、梁部の撓み易さを容易に調整して、嵌合孔に対してリテーナを挿入するのに要する力(挿入力)を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、リテーナが破損し難いコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図2図2A及び図2Bは、互いに別角度からのハウジングの斜視図である。
図3図3Aは、ハウジングの正面図であり、図3Bは、ハウジングの背面図である。
図4図4Aは、ハウジングの平面図であり、図4Bは、ハウジングの右側面図である。
図5図5A及び図5Bは、互いに別角度からのリテーナの斜視図である。
図6図6Aは、リテーナの正面図であり、図6Bは、リテーナの背面図である。
図7図7Aは、リテーナの左正面図であり、図7Bは、リテーナの右側面図である。
図8図8A及び図8Bは、本係止状態の左側の梁部及び右側の梁部の周辺部分の拡大断面図である。
図9図9A及び図9Bは、リテーナが装着されたハウジングの断面図である。図9Aは、リテーナの仮係止状態を示し、図9Bは、リテーナの本係止状態を示している。
図10図10A及び図10Bは、変形例のリテーナの長孔周辺の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。図1に示すように、コネクタ1は、ハウジング2と、リテーナ3とを備える。
以下では、上下方向X(第1方向)、左右方向Y(第2方向)及び前後方向Z(第3方向)を直交3方向として説明する。ただし、本コネクタ1を対象となる装置に取り付けるときには、直交3方向である第1方向、第2方向及び第3方向は、所望の方向に設定可能である。
【0012】
次いで、ハウジング2を説明する。
図2A及び図2Bは、互いに別角度からのハウジング2の斜視図である。図3Aは、ハウジング2の正面図であり、図3Bは、ハウジング2の背面図である。図4Aは、ハウジング2の平面図であり、図4Bは、ハウジング2の右側面図である。
図2A図2B図3A図3B図4A及び図4Bを参照して、ハウジング2は、絶縁性の合成樹脂材料の一体成形により形成された略直方体形状のブロック体である。ハウジング2は、上面21、下面22と、左側面23と、右側面24と、前面25、後面26と、前側端子挿入孔27と、後側端子挿入孔28と、嵌合孔4とを含む。前面25は、上面21、下面22、左側面23及び右側面24に対して四方に張り出す板状部の前面で形成されている。
【0013】
嵌合孔4は、上面21に開口部4aで開口し、深さ方向が上下方向Xになる略矩形断面の孔である。嵌合孔4は、上面21の開口部4aを介して上下方向Xの一方である上側X1に開放する。リテーナ3は、上側X1から下側X2に向けて開口部4aを通して嵌合孔4に挿入されて嵌合される(図1を参照)。
図4Aに示すように、嵌合孔4の内周壁は、前後方向Zに対向する前内壁面41及び後内壁面42と、左右方向Yに対向する左内側壁面43及び右内側壁面44とを含む。左内側壁面43及び右内側壁面44には、リテーナ3を係止する係止部45L及び係止部45Rがそれぞれ突出形成されている。
【0014】
左内側壁面43に設けられる係止部45L(図2A図8A及び図9Aを参照)は、開口部4aに近接して配置されている。右内側壁面44に設けられる係止部45R(図8Aを参照)は、嵌合孔4の深さ方向(上下方向X)の中央部付近に配置されている。各係止部45L,45Rは、前後に延びる断面山形形状の突起である。以下では、係止部45L,45Rを総称して言うときは、単に、係止部45と言う。
【0015】
図2A図2B図3A及び図3Bに示すように、前側端子挿入孔27は、ハウジング2において嵌合孔4よりも前側の部分2Fに形成されている。前側端子挿入孔27は、前面25及び嵌合孔4の前内壁面41に開口するように、前側部分2Fを前後方向Zに貫通している。前側端子挿入孔27は、複数が左右方向Yに並んで列をなし、この列が例えば上下に4列に配列されている。
【0016】
後側端子挿入孔28は、ハウジング2において嵌合孔4よりも後側の部分2Bに形成されている。後側端子挿入孔28は、後面26及び嵌合孔4の後内壁面42に開口するように、後側部分2Bを前後方向Zに貫通している。後側端子挿入孔28は、複数が左右方向Yに並んで列をなし、この列が例えば上下に4列で配列されている。各後側端子挿入孔28は、前後方向Zに見たときに、上下方向X及び左右方向Yの位置に関して、対応する前側端子挿入孔27と同じ位置に配置されている。
【0017】
次いで、リテーナ3を説明する。
図5A及び図5Bは、互いに別角度からのリテーナ3の斜視図である。図6Aは、リテーナ3の正面図であり、図6Bは、リテーナ3の背面図である。図7Aは、リテーナ3の左正面図であり、図7Bは、リテーナ3の右側面図である。
図5A図5B図6A図6B図7A及び図7Bを参照して、リテーナ3は、絶縁性の合成樹脂材料の一体成形により形成された略直方体形状のブロック体である。リテーナ3は、上面31及び下面32(上下方向Xに対向する一対の第1外面に相当)と、左側面33及び右側面34(左右方向Yに対向する一対の第2外面に相当)と、前面35及び後面36と(前後方向Zに対向する一対の第3外面に相当)と、複数列の案内孔37とを含む。
【0018】
案内孔37は、ハウジング2の前側端子挿入孔27及び後側端子挿入孔28と同じ配列で配置されている。リテーナ3が、嵌合孔4に挿入嵌合された状態で、ハウジング2の前側端子挿入孔27と後側端子挿入孔28とが、リテーナ3の案内孔37を介して連通される。
案内孔37の内面には、案内孔37に挿通される端子(図示せず)を係止する係止部(図示せず)が突出形成されている。リテーナ3の本係止状態(図9Bを参照)で、前記係止部が前記端子を係止し、リテーナ3の仮係止状態(図9Aを参照)で、前記係止部が前記端子に対する係止を解除する。
【0019】
また、リテーナ3は、一対の貫通孔である一対の長孔5,6と、一対の梁部7,8と、各梁部7,8に作用する応力を緩和する応力緩和部M7,M8とを含む。
まず、左側の梁部7の周辺の構造を説明する。
図8Aは、本係止状態の左側の梁部7の周辺部分の拡大断面図である。図8Aに示すように、左側の長孔5は、左側面33(第2外面)に近接し、前面35及び後面36(一対の第3外面)を前後方向Zに貫通する貫通孔であって、上下方向Xを長手方向Lとして長手に延びる長孔である。
【0020】
長孔5は、長手方向Lに対向する一対の長手方向端部51,52を有している。また、長孔5は、一方の長手方向端部51を短手方向Sの一方側S1(長孔5が近接する左側面33側の反対側)に拡張する孔拡張部53と、短手方向Sの他方側S2(長孔5が近接する左側面33側)に拡張する孔拡張部54とを有している。すなわち、長孔5は、T字形形状に形成されている。
【0021】
左側の梁部7は、左側の長孔5に沿うように、長孔5と左側面33との間に形成されている。梁部7は、上下方向Xを長手方向Lとして長手に延びる。梁部7は、長手方向Lに対向する一対の長手方向端部71,72を有しており、一対の長手方向端部71,72で両持ち支持されている。梁部7の長手方向Lの中間部から外向きに突出する一対の係止突起73が形成されている。
【0022】
左側の梁部7に作用する応力を緩和する応力緩和部M7は、前述した孔拡張部53,54と、厚み調整された脚部11,12とを含む。
具体的には、孔拡張部53,54によって拡張された長孔5の一方の長手方向端部51が、上面31(第1外面)及び左側面33(第2外面)により形成されるコーナ部Cに近接して配置されている。上面31と長孔5の一方の長手方向端部51との間に、梁部7の一方の長手方向端部71から短手方向Sの両側S1,S2に延びて梁部7を支持する脚部11が形成されている。
【0023】
脚部11の厚みt1は、上面31と長孔5の一方の長手方向端部51との離隔する上下方向Xの距離によって調整されている。脚部11の厚みt1が薄くなるように調整することによって、脚部11が変形し易くなる。これにより、梁部7の応力が分散されて、梁部7の長手方向の中間部における応力集中が緩和される。
長孔5の他方の長手方向端部52の下側X2に、案内孔37が近接して配置されている。当該案内孔37と長孔5の他方の長手方向端部52との間に、梁部7の他方の長手方向端部72から短手方向Sに延び、他方の長手方向端部72を介して梁部7を支持する脚部12が形成されている。
【0024】
脚部12の厚みt2は、長孔5の他方の長手方向端部52とこれに近接する案内孔37とが離隔する上下方向Xの距離によって調整されている。厚みt2が薄くなるように調整することによって、脚部12が変形し易くなる。これにより、梁部7の応力が分散されて、梁部7の長手方向の中間部における応力集中が緩和される。
各脚部11,12の厚みt1,t2は、梁部7の基本厚み(係止突起73のない部分の左右方向Yの厚み)に対して、80%~150%の範囲内の所定の厚みに設定される場合や、80~120%の範囲内の所定の厚みに設定される場合や、90~110%の範囲内の所定の厚みに設定される場合や、95~105%の範囲内の所定の厚みに設定される場合や、同等の厚みに設定される場合がある。
【0025】
梁部7の一対の係止突起73は、前後方向Zに延びる断面山形形状の突起であり、上下方向Xに隣接して配置されている。下側の係止突起73が、図9Aに示すように、係止部45Lに乗り越え係止することにより、リテーナ3が仮係止状態となる。また、上側の係止突起73が、図8A及び図9Bに示すように、係止部45Lに乗り越え係止することにより、リテーナ3が本係止状態となる。前記乗り越え時に、梁部7が撓まされる。
【0026】
図5B及び図7Aに示すように、左側面33に、梁部7の前後方向Zの後側Z2に隣接して切欠き凹部91が形成されている。切欠き凹部91は、長孔5に連通し、梁部7の前後方向Zの幅W7を調整する機能を果たす。
次いで、右側の梁部8の周辺の構造を説明する。
図8Bは、本係止状態の右側の梁部8の周辺部分の拡大断面図である。図8Bに示すように、右側の長孔6は、右側面34(第2外面)に近接し、前面35及び後面36(一対の第3外面)を前後方向Zに貫通する貫通孔であって、上下方向Xを長手方向Lとして長手に延びる長孔である。
【0027】
長孔6は、長手方向Lに対向する一対の長手方向端部61,62を有している。また、長孔6は、一対の長手方向端部61,62をそれぞれ短手方向Sの一方側S1(長孔6が近接する右側面34側の反対側)に拡張する一対の孔拡張部63,64を有している。すなわち、長孔6は、溝形形状に形成されている。
右側の梁部8は、右側の長孔5に沿うように、長孔5と右側面34との間に形成されている。梁部8は、上下方向Xを長手方向Lとして長手に延びる。梁部8は、長手方向Lに対向する一対の長手方向端部81,82を有しており、一対の長手方向端部81,82で両持ち支持されている。梁部8の長手方向Lの中間部から外向きに突出する一対の係止突起83が形成されている。
【0028】
右側の梁部8に作用する応力を緩和する応力緩和部M8は、前述した孔拡張部63,64と、肉抜き部としての案内孔37及び凹溝38と、厚み調整された脚部13,14とを含む。
具体的には、孔拡張部63によって拡張された長孔6の一方の長手方向端部61の上側X1に近接して、案内孔37(肉抜き部)と、右側面34に形成された凹溝38(肉抜き部)とが配置されている。
【0029】
長孔6の一方の長手方向端部61と、肉抜き部(案内孔37、凹溝38)との間に、梁部8の一方の長手方向端部81から短手方向Sの一方側S1に延び、長手方向端部81を介して梁部8を支持する脚部13が形成されている。
脚部13の厚みt3は、長孔6の一方の長手方向端部51とこれの上側X1に近接する肉抜き部(案内孔37及び凹溝38)とが離隔する上下方向Xの距離によって調整されている。脚部13の厚みt3が薄くなるように調整することによって、脚部13が変形し易くなる。これにより、梁部8の応力が分散されて、梁部8の長手方向の中間部における応力集中が緩和される。
【0030】
長孔6の他方の長手方向端部62の下側X2に、案内孔37(肉抜き部)が近接して配置されている。当該案内孔37と長孔6の他方の長手方向端部62との間に、梁部8の他方の長手方向端部82から短手方向Sの一方側S1に延び、長手方向端部82を介して梁部8を支持する脚部14が形成されている。
脚部14の厚みt4は、長孔6の他方の長手方向端部62とこれに近接する案内孔37とが離隔する上下方向Xの距離によって調整されている。厚みt4が薄くなるように調整することによって、脚部14が変形し易くなる。これにより、梁部8の応力が分散されて、梁部8の長手方向の中間部における応力集中が緩和される。
【0031】
各脚部13,14の厚みt3,t4は、梁部8の基本厚み(係止突起83のない部分の左右方向Yの厚み)に対して、梁部8の基本厚み(係止突起83のない部分の左右方向Yの厚み)に対して、80%~150%の範囲内の所定の厚みに設定される場合や、80~120%の範囲内の所定の厚みに設定される場合や、90~110%の範囲内の所定の厚みに設定される場合や、95~105%の範囲内の所定の厚みに設定される場合や、同等の厚みに設定される場合がある。
【0032】
梁部8の一対の係止突起83は、前後方向Zに延びる断面山形形状の突起であり、上下方向Xに隣接して配置されている。下側の係止突起83が、係止部45Rに乗り越え係止することにより、図9Aに示すように、リテーナ3が仮係止状態となる。また、上側の係止突起83が、係止部45Rに乗り越え係止することにより、図8B及び図9Bに示すように、リテーナ3が本係止状態となる。
【0033】
図5A及び図7Bに示すように、右側面34に、梁部8の前後方向Zの後側Z2に隣接して切欠き凹部92が形成されている。切欠き凹部92は、長孔6に連通し、梁部8の前後方向Zの幅W8を調整する機能を果たす。
本実施形態では、下記の作用効果を奏する。
すなわち、図8A及び図8Bに示すように、孔拡張部53,54;63,64(応力緩和部M7,M8)によって拡張された長孔5,6の長手方向端部51;61,62の周辺部において、梁部7,8の長手方向端部71;81,82及びこれを支持する部分が変形し易くなる。これにより、梁部7,8の長手方向中間部における応力集中が緩和されるため、リテーナ3が破損し難いコネクタ1を実現することができる。
【0034】
また、梁部8に対する応力緩和部M8に関して、長孔6の一方の長手方向端部61とこれに近接する肉抜き部(案内孔37及び凹溝38)とが離隔する上下方向Xの距離の設定によって、梁部8の一方の長手方向端部81から短手方向Sに延びる脚部13の厚みt3が調整される。また、長孔6の他方の長手方向端部62とこれに近接する肉抜き部(案内孔37)とが離隔する上下方向Xの距離の設定によって、梁部8の他方の長手方向端部82から短手方向Sに延びる脚部14の厚みt4が調整される。これにより、脚部13,14を変形し易くし、梁部8の応力を分散させて応力集中を緩和することができる。
【0035】
同じく、梁部7に対する応力緩和部M7に関して、長孔5の他方の長手方向端部52とこれに近接する肉抜き部(案内孔37)とが離隔する上下方向Xの距離の設定によって、梁部7の他方の長手方向端部72から短手方向Sに延びる脚部12の厚みt2が調整される。これにより、脚部12を変形し易くして、梁部7の応力を分散させて応力集中を緩和することができる。
【0036】
また、前記肉抜き部として、リテーナ3にもともとある案内孔37を用いることにより、構造を簡素化することができる。また、肉抜き部として、右側面34に形成された凹溝38を用いる簡単な構造で、梁部8の応力集中の緩和に寄与することができる。
また、梁部7に対する応力緩和部M7に関して、孔拡張部53,54によって拡張された長孔5の一方の長手方向端部51をコーナ部Cに近接して配置する簡単な構造で、梁部7の一方の長手方向端部71から短手方向Sに延びる脚部11を変形し易くして、梁部7の応力を分散させて応力集中を緩和することができる。
【0037】
図5A及び図5B、並びに図7A及び図7Bに示すように、左側面33及び右側面34に、対応する梁部7,8の後側Z2に隣接し、対応する長孔5,6に連通する切欠き凹部91,92が形成される。各切欠き凹部91,92によって、対応する梁部7,8の前後方向Zの幅W7,W8(図7A及び図7Bを参照)が調整可能である。このため、切欠き凹部91,92を設ける簡単な構造で、梁部7,8の撓み易さを容易に調整して、嵌合孔4に対してリテーナ3を挿入嵌合するのに要する力(挿入力)を容易に調整することができる。
【0038】
なお、長孔として、T字状の例(図8Aの長孔5を参照)と、溝形状の例(図8Bの長孔6を参照)を示したが、これに限らず、例えば梁部7又は8に隣接する長孔として、概略図である図10Aに示すように、一対の長手方向端部101,102を有し、一方の長手方向端部101(他方の長手方向端部102であってもよい)を孔拡張部103によって短手方向Sの一方側S1のみに拡張するアングル状の長孔10Aや、概略図である図10Bに示すように、一方の長手方向端部101(他方の長手方向端部102であってもよい)を孔拡張部104によって短手方向Sの他方側S2のみに拡張するアングル状の長孔10Bを用いてもよい。
【0039】
要は、長孔は、少なくとも一方の長手方向端部が短手方向の少なくとも一方に拡張されていればよく、前記のT字状、溝形状、アングル状の他、I字状を呈するもの(図示せず)であってもよい。また、左右の長孔は、異なる形状のものが用いられてもよいし、左右対称な形状のものが用いられてもよい。また、左右の長孔は、上下方向に関して、異なる位置に配置されてもよいし、同じ位置に配置されてもよい。
【0040】
その他、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0041】
1 コネクタ
2 ハウジング
3 リテーナ
4 嵌合孔
5 長孔
6 長孔
7 梁部
8 梁部
10A 長孔
10B 長孔
11,12,13,14 脚部
31 上面(第1外面)
32 下面(第1外面)
33 左側面(第2外面)
34 右側面(第2外面)
35 前面(第3外面)
36 後面(第3外面)
43 左内側壁面
44 右内側壁面
45L(45) 係止部
45R(45) 係止部
51 長手方向端部
52 長手方向端部
53 孔拡張部
54 孔拡張部
61 長手方向端部
62 長手方向端部
63 孔拡張部
64 孔拡張部
71 長手方向端部
72 長手方向端部
73 係止突起
81 長手方向端部
82 長手方向端部
83 係止突起
101 長手方向端部
102 長手方向端部
103 孔拡張部
104 孔拡張部
C コーナ部
L 長手方向
M7 応力緩和部
M8 応力緩和部
S 短手方向
S1 一方側
S2 他方側
X 上下方向(第1方向)
Y 左右方向(第2方向)
Z 前後方向(第3方向)
t1,t2,t3,t4 厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10