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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】薬剤放散器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
A01M1/20 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021005081
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109659
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正木 奈穂
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-018034(JP,A)
【文献】特公昭55-001017(JP,B2)
【文献】特開2003-274835(JP,A)
【文献】特開2013-132216(JP,A)
【文献】特開2020-103145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0119963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温揮散性を有する薬剤を保持した薬剤保持体と、該薬剤保持体を収容するとともに空気流通孔が形成された容器とを備えた薬剤放散器において、
前記容器は、前記空気流通孔を内部に形成する枠部を備えており、
前記容器には、前記枠部の内部における前記薬剤保持体よりも空気流れ方向上流側に配置されて当該枠部の左右方向及び前記空気流通孔の内方へ向けて延びるとともに、空気流れ方向下流側へ行くほど前記空気流通孔の縁部に近づくように、かつ、空気流れ方向上流側へ行くほど前記薬剤保持体から離れるように傾斜し、空気流れ方向上流側の端部が前記薬剤保持体から最も離れた跳ね返り抑制板部と、前記枠部の内部における前記薬剤保持体よりも空気流れ方向下流側に配置されて当該枠部の左右方向に延びる風向制御板部とが設けられ
前記跳ね返り抑制板部の左端部及び右端部は、それぞれ前記枠部の左側辺部の上部及び右側辺部の上部に接続され、
前記跳ね返り抑制板部は、前記左側辺部の上部と前記右側辺部の上部とを連結し、
前記風向制御板部は、前記跳ね返り抑制板部と同方向に傾斜していることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項2】
請求項に記載の薬剤放散器において、
前記跳ね返り抑制板部は、前記空気流通孔の縁部に沿って延びていることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薬剤放散器において、
前記容器には、複数の前記風向制御板部が互いに間隔をあけて設けられ、
前記跳ね返り抑制板部は、前記風向制御板部と間隔をあけて配置されていることを特徴とする薬剤放散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種薬剤を空気中に放散する薬剤放散器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の薬剤放散器としては、常温揮散性を有する薬剤を保持した薬剤保持体と、薬剤保持体を収容する容器とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の容器は、板状をなしており、正面側と背面側とにそれぞれ前側カバー部と後側カバー部とを有している。前側カバー部及び後側カバー部は、多数の花形のモチーフを縦横に連結して構成されたものであり、薬剤放散用の開口部を多数有している。また、薬剤保持体は、容器の形状に対応する形状に成形された不織布等で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6362547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されているような薬剤放散器は、一般的に屋外で使用されるものであるが、送風機を用いたような強制的な送風が行われる環境で使用されることは想定されていない。一方、薬剤は空気中に揮散しなければ効果を生じないし、その揮散範囲が広くなければ薬剤による効果が不十分なものになってしまう。この点、特許文献1のような薬剤放散器は、その使用時において自然の風が吹くことにより、薬剤が周囲に拡散して効果を発揮するものと考えらえる。しかしながら、このような自然の風による拡散効果について従来十分に検討されてきたとは言えず、更なる改良の余地がある。
【0006】
例えば、特許文献1の薬剤放散器では、例えば前側から空気を吹き付けてみると、空気の多くが薬剤放散器に当たった時に上下方向や左右方向に流れてしまい、そのように流れた空気が薬剤放散器から跳ね返りながら大きな渦を形成し、その結果、薬剤保持体を通過する空気量が減少してしまうおそれが考えられる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、強制的な送風が行われない場合であっても薬剤保持体を通過する空気量を増やして薬剤の効果を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、容器の外部から吹き付けられた空気が跳ね返されてしまう量を減少させるようにした。
【0009】
第1の発明は、常温揮散性を有する薬剤を保持した薬剤保持体と、該薬剤保持体を収容するとともに空気流通孔が形成された容器とを備えた薬剤放散器において、前記容器には、前記空気流通孔の内方へ向けて延びるとともに、空気流れ方向下流側へ行くほど前記空気流通孔の縁部に近づくように形成された跳ね返り抑制板部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、容器の外部から吹き付けられた空気は、空気流通孔から容器内に流れ込み、薬剤保持体に供給される。容器の外部から吹き付けられた空気の一部は、薬剤保持体の表面に達したとき、当該薬剤保持体の表面から跳ね返るように流れることが想定される。薬剤保持体の表面から跳ね返る空気は、空気流通孔の縁部に向けて流れた後、空気が流入してくる方向へ向けて当該空気の流れに逆らうように流れて大きな渦を形成する場合がある。本発明では、空気流通孔の縁部近傍に跳ね返り抑制板部が設けられていて、この跳ね返り抑制板部が空気流通孔の内方へ向けて延びていて、空気流れ方向下流側へ行くほど空気流通孔の縁部に近づくように形成されているので、空気流通孔の縁部に向けて流れた空気が跳ね返り抑制板部に当たることで空気が流入してくる方向へ向けて流れにくくなる。これにより、容器の外部から空気流通孔へ向かう空気の流れに逆らうような気流ができにくくなるので、薬剤保持体を通過する空気量が増える。
【0011】
第2の発明は、前記容器は、前記空気流通孔を内部に形成する枠部を備えており、前記跳ね返り抑制板部は、前記枠部の互いに対向する部分を連結するように延びていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、跳ね返り抑制板部が、空気流通孔を横切る方向に長い形状になるので、空気の跳ね返り抑制効果が高まる。
【0013】
第3の発明は、前記跳ね返り抑制板部は、前記空気流通孔の縁部に沿って延びていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、空気流通孔の縁部に向けて流れた空気を大部分が跳ね返り抑制板部に当たり、跳ね返りが抑制されるので、跳ね返り抑制板部による空気の跳ね返り抑制効果がより一層高まる。
【0015】
第4の発明は、前記跳ね返り抑制板部は、前記枠部の内部に配置されていることを特徴とする。
【0016】
すなわち、空気が枠部の内部である空気流通孔に一旦流入して薬剤保持体の表面に当たった後、当該表面に沿って枠部の縁部に向けて流れることが考えられる。本発明では、枠部の内部に跳ね返り抑制板部が配置されているので、枠部の縁部に向けて流れた空気を枠部の内部において跳ね返り抑制板部に当てて当該空気の跳ね返りを抑制することができる。よって、容器の外部から空気流通孔へ向かう空気の流れに逆らうような気流の形成を効果的に抑制できる。
【0017】
第5の発明は、前記容器には、複数の風向制御板部が互いに間隔をあけて設けられ、前記跳ね返り抑制板部は、前記風向制御板部と間隔をあけて配置されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、容器の外部から吹き付けられた空気は、複数の風向制御板部の間を通過するとともに、風向制御板部と跳ね返り抑制板部との間を通過して容器内に流れ込み、薬剤保持体に供給される。このとき、空気の流れの方向が風向制御板部によってコントロールされるので、薬剤の飛散方向を任意の方向にすることが可能になる。
【0019】
第6の発明は、前記空気流通孔の互いに対向する一縁部及び他縁部にそれぞれ前記跳ね返り抑制板部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
すなわち、容器の外部から吹き付けられた空気は、薬剤保持体の表面に達した後、当該表面に沿って空気流通孔の一縁部及び他縁部に向けて流れることが考えられる。この場合に、本発明では空気流通孔の一縁部及び他縁部にそれぞれ跳ね返り抑制板部が設けられているので、いずれの縁部においても空気の跳ね返りを抑制することができる。
【0021】
第7の発明は、前記跳ね返り抑制板部と前記風向制御板部とは同じ方向に向いていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、跳ね返り抑制板部が風向制御板部と共に風向をコントロールすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、容器の空気流通孔の縁部に空気の跳ね返りを抑制する跳ね返り抑制板部を設けたので、薬剤保持体を通過する空気量を増やすことができる。これにより、薬剤保持体に保持された薬剤の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1に係る薬剤放散器を空気流れ方向上流側から見た斜視図である。
図2】実施形態1に係る薬剤放散器を空気流れ方向上流側から見た正面図である。
図3】実施形態1に係る薬剤放散器を空気流れ方向下流側から見た背面図である。
図4】実施形態1に係る薬剤放散器の側面図である。
図5図2におけるV-V線断面図である。
図6】本発明の実施形態2に係る薬剤放散器を空気流れ方向上流側から見た斜視図である。
図7】実施形態2に係る薬剤放散器を空気流れ方向下流側から見た斜視図である。
図8】実施形態2に係る薬剤放散器を空気流れ方向上流側から見た正面図である。
図9】実施形態2に係る薬剤放散器の側面図である。
図10図8におけるX-X線断面図である。
図11図8におけるXI-XI線断面図である。
図12図8におけるXII-XII線断面図である。
図13】本発明の実施形態3に係る薬剤放散器を空気流れ方向上流側から見た斜視図である。
図14】実施形態3に係る薬剤放散器を空気流れ方向下流側から見た斜視図である。
図15図13におけるXV-XV線断面図である。
図16図14におけるXVI-XVI線断面図である。
図17】実施形態3に係る薬剤放散器の使用状態を示す図である。
図18】本発明の実施形態4に係る薬剤放散器を空気流れ方向上流側から見た斜視図である。
図19】実施形態4に係る薬剤放散器を空気流れ方向下流側から見た斜視図である。
図20】本発明の実施形態5に係る薬剤放散器を空気流れ方向上流側から見た斜視図である。
図21】実施形態5に係る薬剤放散器を空気流れ方向下流側から見た斜視図である。
図22図20におけるXXII-XXXII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る薬剤放散器1を示すものである。薬剤放散器1は、薬剤保持体Aと、薬剤保持体Aを収容する容器10と、容器10を吊り下げるための吊り下げ部材100とを備えている。尚、吊り下げ部材100は省略してもよく、吊り下げ部材100を省略した場合は容器10を図示しない台や机の上等に置いて使用することができる。
【0027】
この実施形態の説明では、使用状態の薬剤放散器1の正面側を前側とし、背面側を後側とし、使用状態の薬剤放散器1を正面から見たときの左側を薬剤放散器1の左側とし、右側を薬剤放散器1の右側とする。従って、薬剤放散器1の幅方向は左右方向となる。この方向の定義は説明の便宜を図るためだけであり、実際の使用時にどちら側が右であってもよい。
【0028】
薬剤放散器1は、風が吹くところで使用するのが好ましいが、ほぼ無風下で使用することもできる。風が吹くところで使用する場合、薬剤放散器1の前側から風が当たるように当該薬剤放散器1を配置するのが好ましく、この実施形態では、薬剤放散器1の前側を空気流れ方向上流側とし、薬剤放散器1の後側を空気流れ方向下流側とする。自然条件下では風向きが常に一定ではないので、薬剤放散器1の前側から風が当たることもあれば、後側や左右から当たることもある。
【0029】
(薬剤保持体Aの構成)
薬剤保持体Aは、例えば不織布等の布材や網状の部材、スポンジ状の部材等で構成されており、厚み方向(表裏方向)に通気性を有している。薬剤保持体Aは、例えば平坦な形状であってもよいし、プリーツ状をなすように折曲げ成形された形状であってもよい。また、薬剤保持体Aの外形状は、矩形状や三角形状等の多角形状であってもよいし、円形状や楕円形状であってもよい。1つの容器10に複数の薬剤保持体Aを収容することもできる。この場合、複数の薬剤保持体Aを厚み方向に重ねて収容してもよいし、並べて収容してもよい。
【0030】
薬剤保持体Aは、常温揮散性を有する薬剤を保持している。常温揮散性とは、常温(例えば25℃)において空気中に揮散する性質のことであり、例えば、25℃における蒸気圧が0.001Pa以上0.1Pa以下の薬剤を挙げることができる。この薬剤の種類は特に限定されないが、例えば虫忌避剤、殺虫剤、消臭剤、除菌剤、芳香剤等を挙げることができ、これらのうち1種のみであってもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。具体的には、ピレスロイド系化合物からなる殺虫剤としては、例えばトランスフルトリン、メトフルトリン等を挙げることができ、これらピレスロイド系化合物については、各種の光学異性体または幾何異性体が存在するが、いずれの異性体類も使用することができ、また、単独で使用するだけなく、2種以上を併用することもできる。また、上記薬剤は、エステル化合物等であってもよい。また、上記薬剤は、例えば、ディート(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)、イカリジン(2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボン酸 1-メチルプロピル)等であってもよい。上記薬剤の複数種混合して使用することもできる。
【0031】
薬剤には、殺虫成分や虫忌避成分を溶解する溶剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、共力剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、ヒノキチオール、テトラヒドロリナロール、オイゲノール、シトロネラール、アリルイソチオシアネート等の抗菌剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール等の防カビ剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、シトロネラ油、オレンジ油、レモン油、ライム油、ユズ油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、ジャスミン油、ヒバ油、ヒノキ油、竹エキス、ヨモギエキス、キリ油、緑茶精油、リモネン等の芳香剤や消臭剤が含有されていてもよい。
【0032】
薬剤は、薬剤保持体Aに含浸させることができる。薬剤の揮散量は、気温が25℃、薬剤保持体Aに吹き付けられる空気の流速が0.1~1.5m/秒の時に、1時間あたり0.01~0.6mg程度に設定することができるが、これは一例であり、この範囲外であってもよい。薬剤の揮散量は、溶剤の種類や、薬剤保持体Aの構造、薬剤保持体Aを構成する素材、目付量等で変更することができる。
【0033】
また、薬剤は、薬剤保持体Aに塗布したり、噴霧することによって付着させることができ、これによっても薬剤を薬剤保持体Aに保持させることができる。薬剤保持体Aを構成する材料に薬剤を練り込むことによっても、薬剤を薬剤保持体Aに保持させることができる。薬剤を薬剤保持体Aに保持させる方法はどのような方法であってもよい。
【0034】
(容器10の構成)
容器10は、本体部11と、前側枠部12と、後側枠部22とを有している。本体部11、前側枠部12及び後側枠部22は、例えば樹脂材等により成形されており、これらを一体成形してもよいし、複数の部材を組み合わせて構成してもよい。この実施形態では、容器10が前側部分と後側部分とに分割可能に構成されているが、例えば上下方向や左右方向に分割可能に構成されていてもよい。
【0035】
本体部11は、上下方向に長い矩形枠型をなしている。薬剤保持体Aは、本体部11内において上下方向に延びる姿勢で収容されている。薬剤保持体Aの外形状と、本体部11の内側の形状とは、略一致しているか、もしくは略相似である。本体部11の内側の大部分に薬剤保持体Aが存在している。本体部11の厚み(前後方向の寸法)は、薬剤保持体Aの厚みと略等しいか、もしくは本体部11の方が厚くなっている。薬剤保持体Aがプリーツ状である場合には、薬剤保持体Aの厚みが厚くなるので、そのことに対応するように本体部11の厚みも厚くすることができる。また、薬剤保持体Aは、本体部11に保持することができる。
【0036】
図2にも示すように、前側枠部12は、本体部11の前側部分に一体化されており、前側上辺部12aと、前側下辺部12bと、前側左側辺部12cと、前側右側辺部12dとを有している。前側上辺部12aは、本体部11の上部に沿って左右方向に延びている。前側下辺部12bは、本体部11の下部に沿って左右方向に延びており、前側上辺部12aと前側下辺部12bとは互いに対向している。前側左側辺部12cは、本体部11の左部分に沿って上下方向に延びており、前側左側辺部12cの上端部が前側上辺部12aの左端部に接続され、前側左側辺部12cの下端部が前側下辺部12bの左端部に接続されている。前側右側辺部12dは、本体部11の右部分に沿って上下方向に延びており、前側右側辺部12dの上端部が前側上辺部12aの右端部に接続され、前側右側辺部12dの下端部が前側下辺部12bの右端部に接続されている。これにより、前側枠部12は、本体部11と同様に上下方向に長い矩形状となり、その内部に空気の流通が可能な前側空気流通孔13が水平方向に向けて開口するように形成される。前側空気流通孔13は、容器10内に空気を流入させる流入側空気流通孔であり、本体部11の内部に連通している。
【0037】
図3に示すように、後側枠部22は、本体部11の後側部分に一体化されており、後側上辺部22aと、後側下辺部22bと、後側左側辺部22cと、後側右側辺部22dとを有している。後側上辺部22aは、本体部11の上部に沿って左右方向に延びている。後側下辺部22bは、本体部11の下部に沿って左右方向に延びており、後側上辺部22aと後側下辺部22bとは互いに対向している。後側左側辺部22cは、本体部11の左部分に沿って上下方向に延びており、後側左側辺部22cの上端部が後側上辺部22aの左端部に接続され、後側左側辺部22cの下端部が後側下辺部22bの左端部に接続されている。後側右側辺部22dは、本体部11の右部分に沿って上下方向に延びており、後側右側辺部22dの上端部が後側上辺部22aの右端部に接続され、後側右側辺部22dの下端部が後側下辺部22bの右端部に接続されている。これにより、後側枠部12は、本体部11と同様に上下方向に長い矩形状となり、その内部に空気の流通が可能な後側空気流通孔23が水平方向に向けて開口するように形成される。後側空気流通孔23は、本体部11の内部に連通しており、この本体部11の内部を介して前側空気流通孔13と接続されている。後側空気流通孔23は、容器10内の空気を当該容器10の外部に流出させる流出側空気流通孔である。尚、風向きによっては、流出側空気流通孔が流入側空気流通孔になり、流入側空気流通孔が流出側空気流通孔になることもある。
【0038】
(跳ね返り抑制板部の構成)
図1に示すように、容器10の前側枠部12の上部には、上側跳ね返り抑制板部14が設けられている。上側跳ね返り抑制板部14は、前側空気流通孔13の内方へ向けて延びるとともに、空気流れ方向下流側へ行くほど前側空気流通孔13の上縁部に近づくように形成されている。すなわち、上側跳ね返り抑制板部14は、前側空気流通孔13の上縁部に沿って左右方向に延びており、上側跳ね返り抑制板部14の左端部は、前側左側辺部12cの上部に接続され、また上側跳ね返り抑制板部14の右端部は、前側右側辺部12dの上部に接続されている。これにより、上側跳ね返り抑制板部14は、前側枠部12の互いに対向する部分である前側左側辺部12cの上部と前側右側辺部12dの上部とを連結する。
【0039】
また、図5に示すように、上側跳ね返り抑制板部14は、前側枠部12の内部に配置されている。各図において上側跳ね返り抑制板部14の空気流れ方向上流側は、前側枠部12の空気流れ方向上流側から外部へ突出しないように配置されているが、上側跳ね返り抑制板部14の空気流れ方向上流側を前側枠部12の空気流れ方向上流側から外部へ突出させてもよい。また、上側跳ね返り抑制板部14の空気流れ方向下流側を本体部11の内部へ突出させてもよいし、突出させなくてもよい。
【0040】
図1に示すように、容器10の前側枠部12の下部には、下側跳ね返り抑制板部15が設けられている。下側跳ね返り抑制板部15は、前側空気流通孔13の内方へ向けて延びるとともに、空気流れ方向下流側へ行くほど前側空気流通孔13の下縁部に近づくように形成されている。すなわち、下側跳ね返り抑制板部15は、前側空気流通孔13の下縁部に沿って左右方向に延びており、下側跳ね返り抑制板部15の左端部は、前側左側辺部12cの下部に接続され、また下側跳ね返り抑制板部15の右端部は、前側右側辺部12dの下部に接続されている。これにより、下側跳ね返り抑制板部15は、前側枠部12の互いに対向する部分である前側左側辺部12cの下部と前側右側辺部12dの下部とを連結する。この実施形態では、前側空気流通孔13の互いに対向する上縁部(一縁部)及び下縁部(他縁部)にそれぞれ上側跳ね返り抑制板部14及び下側跳ね返り抑制板部15が設けられていることになるが、いずれか一方のみ設けるようにしてもよい。また、下側跳ね返り抑制板部15は、上側跳ね返り抑制板部14と上下対称形状にすることができる。上側跳ね返り抑制板部14及び下側跳ね返り抑制板部15の傾斜角度は任意に設定することができるが、鉛直面に対して例えば30゜~70゜の範囲で設定することができる。
【0041】
(風向制御板部の構成)
容器10の前側枠部12の上側には、複数の前部上側風向制御板部(第1風向制御板部)16が設けられている。複数の前部上側風向制御板部16は、前側空気流通孔13の内部に設けられている。前部上側風向制御板部16は、容器10の外部から吹き付けられた空気の流れ(図5に矢印Bで示す)と交差する方向である左右方向に延びている。前部上側風向制御板部16は、前側枠部12の上下方向中央部よりも上でかつ上側跳ね返り抑制板部14よりも下の領域に配置されている。前部上側風向制御板部16の左端部は、前側枠部12の前側左側辺部12cと一体化され、また前部上側風向制御板部16の右端部は、前側右側辺部12dと一体化されている。これにより、前部上側風向制御板部16は、前側枠部12の左端から右端に亘って連続して設けられるとともに、容器10に対して動かないように固定された状態になる。
【0042】
複数の前部上側風向制御板部16は、同方向に延びており、互いに上下方向に間隔をあけて設けられている。これにより、複数の前部上側風向制御板部16の間を空気が流通可能になる。また、複数の前部上側風向制御板部16は、空気流れ方向下流側へ行くほど上に位置するように傾斜しており、これにより、容器10の外部から吹き付けられた空気の流れに対して傾斜することになる。
【0043】
複数の前部上側風向制御板部16は、上側跳ね返り抑制板部14と同じ方向に向いている。最も上に位置する前部上側風向制御板部16と上側跳ね返り抑制板部14とは、上下方向に間隔をあけて配置されている。これにより、最も上に位置する前部上側風向制御板部16と上側跳ね返り抑制板部14との間を空気が流通可能になる。
【0044】
容器10の前側枠部12の下側には、複数の前部下側風向制御板部(第2風向制御板部)17が設けられている。複数の前部下側風向制御板部17は、前部上側風向制御板部16と同様に、前側空気流通孔13の内部に設けられていて、左右方向に延びている。前部下側風向制御板部17は、前側枠部12の上下方向中央部よりも下でかつ下側跳ね返り抑制板部15よりも上の領域に配置されている。前部下側風向制御板部17の左端部は、前側枠部12の前側左側辺部12cと一体化され、また前部下側風向制御板部17の右端部は、前側右側辺部12dと一体化されている。これにより、前部下側風向制御板部17は、前側枠部12の左端から右端に亘って連続して設けられるとともに、容器10に対して動かないように固定された状態になる。
【0045】
複数の前部下側風向制御板部17は、同方向に延びており、互いに上下方向に間隔をあけて設けられている。これにより、複数の前部下側風向制御板部17の間を空気が流通可能になる。また、複数の前部下側風向制御板部17は、空気流れ方向下流側へ行くほど下に位置するように傾斜しており、これにより、前部上側風向制御板部16と前部下側風向制御板部17とは反対方向に傾斜することになる。
【0046】
複数の前部下側風向制御板部17は、下側跳ね返り抑制板部15と同じ方向に向いている。最も下に位置する前部下側風向制御板部17と下側跳ね返り抑制板部15とは、上下方向に間隔をあけて配置されている。これにより、最も下に位置する前部下側風向制御板部17と下側跳ね返り抑制板部15との間を空気が流通可能になる。
【0047】
尚、前部上側風向制御板部16の数と、前部下側風向制御板部17の数とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、複数の前部上側風向制御板部16の間隔と、複数の前部下側風向制御板部17の間隔とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
図3に示すように、容器10の後側枠部22の上部には、上端風向制御板部24が設けられている。上端風向制御板部24は、左右方向に延びるとともに、図5に示すように空気流れ方向下流側へ行くほど上に位置するように傾斜している。図3に示すように、上端風向制御板部24の左端部は、後側枠部22の後側左側辺部22cと一体化され、また上端風向制御板部24の右端部は、後側右側辺部22dと一体化されている。上端風向制御板部24と上側跳ね返り抑制板部14とは同方向に延びている。上端風向制御板部24の空気流れ方向下流端部は、後側上辺部22aに接続されており、上端風向制御板部24と後側上辺部22aとの間は空気が流通不能になっている。
【0049】
容器10の後側枠部22の下部には、下端風向制御板部25が設けられている。下端風向制御板部25は、左右方向に延びるとともに、図5に示すように空気流れ方向下流側へ行くほど下に位置するように傾斜している。図3に示すように、下端風向制御板部25の左端部は、後側枠部22の後側左側辺部22cと一体化され、また下端風向制御板部25の右端部は、後側右側辺部22dと一体化されている。下端風向制御板部25と下側跳ね返り抑制板部15とは同方向に延びている。下端風向制御板部25の空気流れ方向下流端部は、後側下辺部22bに接続されており、下端風向制御板部25と後側下辺部22bとの間は空気が流通不能になっている。
【0050】
容器10の後側枠部22の上側には、複数の後部上側風向制御板部26が設けられている。複数の後部上側風向制御板部26は、後側空気流通孔23の内部に設けられている。後部上側風向制御板部26は、容器10の外部から吹き付けられた空気の流れ(図5に矢印Bで示す)と交差する方向である左右方向に延びている。後部上側風向制御板部26は、後側枠部22の上下方向中央部よりも上でかつ上端風向制御板部24よりも下の領域に配置されている。後部上側風向制御板部26の左端部は、後側枠部22の後側左側辺部22cと一体化され、また後部上側風向制御板部26の右端部は、後側右側辺部22dと一体化されている。これにより、後部上側風向制御板部26は、後側枠部22の左端から右端に亘って連続して設けられるとともに、容器10に対して動かないように固定された状態になる。
【0051】
複数の後部上側風向制御板部26は、同方向に延びており、互いに上下方向に間隔をあけて設けられている。これにより、複数の後部上側風向制御板部26の間を空気が流通可能になる。また、複数の後部上側風向制御板部26は、空気流れ方向下流側へ行くほど上に位置するように傾斜しており、これにより、容器10の外部から吹き付けられた空気の流れに対して傾斜することになる。
【0052】
複数の後部上側風向制御板部26は、上端風向制御板部24と同じ方向に向いている。最も上に位置する後部上側風向制御板部26と上端風向制御板部24とは、上下方向に間隔をあけて配置されている。これにより、最も上に位置する後部上側風向制御板部26と上端風向制御板部24との間を空気が流通可能になる。
【0053】
容器10の後側枠部12の下側には、複数の後部下側風向制御板部27が設けられている。複数の後部下側風向制御板部27は、後部上側風向制御板部26と同様に、後側空気流通孔23の内部に設けられていて、左右方向に延びている。後部下側風向制御板部27は、後側枠部22の上下方向中央部よりも下でかつ下端風向制御板部25よりも上の領域に配置されている。後部下側風向制御板部27の左端部は、後側枠部22の後側左側辺部22cと一体化され、また後部下側風向制御板部27の右端部は、後側右側辺部22dと一体化されている。これにより、後部下側風向制御板部27は、後側枠部22の左端から右端に亘って連続して設けられるとともに、容器10に対して動かないように固定された状態になる。
【0054】
複数の後部下側風向制御板部27は、同方向に延びており、互いに上下方向に間隔をあけて設けられている。これにより、複数の後部下側風向制御板部27の間を空気が流通可能になる。また、複数の後部下側風向制御板部27は、空気流れ方向下流側へ行くほど下に位置するように傾斜しており、これにより、後部上側風向制御板部26と後部下側風向制御板部27とは反対方向に傾斜することになる。
【0055】
複数の後部下側風向制御板部27は、下端風向制御板部25と同じ方向に向いている。最も下に位置する後部下側風向制御板部27と下端風向制御板部25とは、上下方向に間隔をあけて配置されている。これにより、最も下に位置する後部下側風向制御板部27と下端風向制御板部25との間を空気が流通可能になる。
【0056】
尚、後部上側風向制御板部26の数と、後部下側風向制御板部27の数とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、複数の後部上側風向制御板部26の間隔と、複数の後部下側風向制御板部27の間隔とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
(吊り下げ部材100の構成)
吊り下げ部材100は、例えば柔軟性を有する樹脂材からなる長尺状部材や、紐状部材等で構成されている。吊り下げ部材100により、容器10をドアの取っ手や手すり等に吊り下げることができる。吊り下げ部材100の長さは任意に設定することができ、長さを調整可能にすることもできる。吊り下げ部材100は、糸やワイヤーのような部材であってもよい。図1等に示すように容器10の長手方向が上下方向となるように吊り下げてもよいし、図示しないが、吊り下げ部材100を付け替えて、容器10の長手方向が水平方向となるように吊り下げてもよい。
【0058】
(作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、図5に矢印Bで示すように、容器10の外部から吹き付けられた空気は、前側空気流通孔13から容器10内に流れ込み、薬剤保持体Aに供給される。容器10の外部から吹き付けられた空気の一部は、薬剤保持体Aの表面に達したとき、当該薬剤保持体Aの表面から跳ね返るように流れることが想定される。薬剤保持体Aの表面から跳ね返る空気は、前側空気流通孔13の上縁部や下縁部に向けて流れた後、空気が流入してくる方向へ向けて当該空気の流れに逆らうように流れて大きな渦を形成する場合がある。
【0059】
これに対し、本実施形態では、前側空気流通孔13の縁部近傍に上側跳ね返り抑制板部14が設けられていて、この上側跳ね返り抑制板部14が前側空気流通孔13の内方へ向けて延びていて、空気流れ方向下流側へ行くほど前側空気流通孔13の縁部に近づくように形成されているので、前側空気流通孔13の上縁部に向けて流れた空気が上側跳ね返り抑制板部14に当たることで空気が流入してくる方向へ向けて流れにくくなる。同様に、下側跳ね返り抑制板部15により、前側空気流通孔13の下縁部に向けて流れた空気の跳ね返りを抑制することができる。これにより、容器10の外部から前側空気流通孔13へ向かう空気の流れに逆らうような気流ができにくくなるので、薬剤保持体Aを通過する空気量を増やすことができ、薬剤保持体Aに保持された薬剤の効果を高めることができる。
【0060】
また、容器10の外部から吹き付けられた空気が前部上側風向制御板部16に当たると、前部上側風向制御板部16が下流側へ行くほど上に位置するように延びているので、空気は前部上側風向制御板部16によって矢印Cで示すように斜め上に向けて流れるようになる。この空気の流れは、後部上側風向制御板部26が下流側へ行くほど上に位置するように延びていることによっても斜め上に向くことになる。
【0061】
一方、容器10の外部から吹き付けられた空気が前部下側風向制御板部17に当たると、前部下側風向制御板部17が下流側へ行くほど下に位置するように延びているので、空気は前部下側風向制御板部17によって矢印Dで示すように斜め下に向けて流れるようになる。この空気の流れは、後部下側風向制御板部27が下流側へ行くほど下に位置するように延びていることによっても斜め下に向くことになる。風向制御板部16、17、26、27を設けたことにより、薬剤を含んだ空気が所望の領域に向けて流れるように、流れの方向をコントールすることができるとともに、薬剤の揮散範囲を広範囲にすることができる。
【0062】
ここで、本実施形態の容器10をドアの取っ手に吊り下げた場合について、特に説明する。この場合、薬剤放散器1の背面側がドアに対向するようにして、容器10を取っ手に吊り下げる。このようにすることで、容器10に対しては背面側から風が当たることが無い。すなわち、容器10に対して略正面側から風を当てることができる。そして、正面側から吹き付けられた風は、風向制御板部16,17,26,27によってコントロールされ、容器10の背面側から斜め上または斜め下に向けて流出する。これにより、薬剤を含んだ空気を、容器10が吊り下げられたドアの表面に沿って上下方向に広がるように流すことができる。このように、本実施形態によれば、特にドアの取っ手に吊り下げた場合に、ドアの表面に沿って薬剤を広範囲に拡散させることができる。
【0063】
尚、この実施形態では、風向制御板部16、17、26、27を設けているが、これらのうち、1つのみ設けてもよい。例えば、風向制御板部16を設けることで、空気の流れを斜め上に向けることができる。風向制御板部16、17、26、27の全てが同じ方向に傾斜していてもよい。例えば、風向制御板部16、17、26、27の全てが下流側へ行くほど下に位置するように傾斜している場合には、空気を斜め下方へ向けて流すことができ、また、風向制御板部16、17、26、27の全てが下流側へ行くほど上に位置するように傾斜している場合には、空気を斜め上方へ向けて流すことができる。
【0064】
(実施形態2)
図6図12は、本発明の実施形態2に係る薬剤放散器1を示すものである。実施形態2は、容器10の構造及び風向制御板部の形状が実施形態1のものと異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0065】
実施形態2では、実施形態1の前側枠部及び後側枠部が省略された容器10とされているが、前側枠部及び後側枠部を備えた容器10であってもよい。容器10の前側には、上側跳ね返り抑制板部14が設けられている。さらに、容器10の前側には、上側跳ね返り抑制板部14よりも下側に、複数の前部風向制御板部30が設けられている。
【0066】
前部風向制御板部30は、容器10の外部から吹き付けられた空気の流れと交差する方向である左右方向に延びている。前部風向制御板部30の左端部は、本体部11の左側部分と一体化され、また前部風向制御板部30の右端部は、本体部11の右側部分と一体化されている。これにより、前部風向制御板部30は、本体部11の左端から右端に亘って連続して設けられるとともに、容器10に対して動かないように固定された状態になる。
【0067】
各前部風向制御板部30の左側部分30aは、空気流れ方向下流側へ行くほど上に位置するように傾斜する一方、各前部風向制御板部30の右側部分30bは、空気流れ方向下流側へ行くほど下に位置するように傾斜している。したがって、前部風向制御板部30の左側部分30aと右側部分30bと間は、捻れた形状になっている。
【0068】
図7に示すように、容器10の後側には、上端風向制御板部24が設けられている。さらに、容器10の後側には、上端風向制御板部24よりも下側に複数の後部風向制御板部31が設けられている。
【0069】
後部風向制御板部31は、容器10の外部から吹き付けられた空気の流れと交差する方向である左右方向に延びている。後部風向制御板部31の左端部は、本体部11の左側部分と一体化され、また後部風向制御板部31の右端部は、本体部11の右側部分と一体化されている。これにより、後部風向制御板部31は、本体部11の左端から右端に亘って連続して設けられるとともに、容器10に対して動かないように固定された状態になる。
【0070】
各後部風向制御板部31の右側部分31aは、空気流れ方向下流側へ行くほど下に位置するように傾斜する一方、各後部風向制御板部31の左側部分31bは、空気流れ方向下流側へ行くほど上に位置するように傾斜している。したがって、後部風向制御板部31の右側部分30aと左側部分30bと間は、捻れた形状になっている。
【0071】
この実施形態2によれば、前側空気流通孔13の縁部近傍に上側跳ね返り抑制板部14が設けられているので、実施形態1と同様に空気の跳ね返りを抑制することができる。これにより、容器10の外部から前側空気流通孔13へ向かう空気の流れに逆らうような気流ができにくくなるので、薬剤保持体Aを通過する空気量を増やすことができ、薬剤保持体Aに保持された薬剤の効果を高めることができる。
【0072】
また、図10に示すように、容器10の外部から吹き付けられた空気が前部風向制御板部30の左側部分30aに当たると、左側部分30aが下流側へ行くほど上に位置するように延びているので、空気は左側部分30aによって斜め上(矢印Cで示す)に向けて流れるようになる。この空気の流れは、後部風向制御板部31の左側部分31bが下流側へ行くほど上に位置するように延びていることによっても斜め上に向くことになる。
【0073】
一方、図11に示すように、容器10の外部から吹き付けられた空気が前部風向制御板部30の右側部分30bに当たると、右側部分30bが下流側へ行くほど下に位置するように延びているので、空気は右側部分30bによって斜め下(矢印Dで示す)に向けて流れるようになる。この空気の流れは、後部風向制御板部31の右側部分31aが下流側へ行くほど下に位置するように延びていることによっても斜め下に向くことになる。風向制御板部30、31を設けたことにより、薬剤を含んだ空気が所望の領域に向けて流れるように、流れの方向をコントールすることができるとともに、薬剤の揮散範囲を広範囲にすることができる。
【0074】
(実施形態3)
図13図17は、本発明の実施形態3に係る薬剤放散器1を示すものである。実施形態3は、容器10の構造及び風向制御板部の形状が実施形態1のものと異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0075】
実施形態3では、実施形態1の前側枠部及び後側枠部が省略された容器10とされているが、前側枠部及び後側枠部を備えた容器10であってもよい。容器10の前側には、上側跳ね返り抑制板部14及び下側跳ね返り抑制板部15が設けられている。さらに、容器10の前側には、上側跳ね返り抑制板部14と下側跳ね返り抑制板部15との間に、複数の前部上側風向制御板部16と前部下側風向制御板部17とが設けられている。前部上側風向制御板部16と前部下側風向制御板部17の両方または一方を省略してもよい。前部上側風向制御板部16と前部下側風向制御板部17は同じ方向に傾斜していてもよい。
【0076】
図14及び図16に示すように、容器10の後側には、複数の右側風向制御板部32と、複数の左側風向制御板部33とが設けられている。右側風向制御板部(第2風向制御板部)32は、容器10の外部から吹き付けられた空気の流れと交差する方向である上下方向に延びている。右側風向制御板部32の上端部は、本体部11の上側部分と一体化され、また右側風向制御板部32の下端部は、本体部11の下側部分と一体化されている。これにより、右側風向制御板部32は、本体部11の上端から下端に亘って連続して設けられるとともに、容器10に対して動かないように固定された状態になる。右側風向制御板部32は、空気流れ方向下流側へ行くほど右に位置するように傾斜している。複数の右側風向制御板部32は互いに左右方向に間隔をあけて設けられている。
【0077】
左側風向制御板部(第1風向制御板部)33は、容器10の外部から吹き付けられた空気の流れと交差する方向である上下方向に延びている。左側風向制御板部33の上端部は、本体部11の上側部分と一体化され、また左側風向制御板部33の下端部は、本体部11の下側部分と一体化されている。これにより、左側風向制御板部33は、本体部11の上端から下端に亘って連続して設けられるとともに、容器10に対して動かないように固定された状態になる。左側風向制御板部33は、空気流れ方向下流側へ行くほど左に位置するように傾斜している。複数の左側風向制御板部33は互いに左右方向に間隔をあけて設けられている。この例では、左側風向制御板部33の数を右側風向制御板部32の数よりも多くしているが、同じであってもよいし、右側風向制御板部32の数を多くしてもよい。また、右側風向制御板部32と左側風向制御板部33とのうち、一方を省略してもよい。
【0078】
最も左に位置する右側風向制御板部32Aと、最も右に位置する左側風向制御板部33Aとは、空気流れ方向上流端部において互いに接続されており、右側風向制御板部32Aと左側風向制御板部33Aとの間を空気が流通不能になっている。
【0079】
図17は、実施形態3に係る薬剤放散器1の使用状態を示すものである。この例では、薬剤放散器1をドア200が有するドアノブ(取っ手)202に吊して設置した場合を示している。ドアノブ202は、ドア200に向かって右側(または左側)に設けられているので、薬剤放散器1はドア200の左右方向一方側に偏位した状態で設置されることになる。一方、ドア200によって開閉される枠201の開口部201aは、ドア200の形状に対応して左右方向に幅を持っているので、薬剤放散器1が例えば右側に偏位していると、開口部201aの左側へ薬剤が届きにくくなることがある。本実施形態では、左側風向制御板部33Aが左に傾斜しているので、薬剤放散器1が例えば右側に偏位していても、開口部201aの左側へも薬剤が届くようになる(薬剤が流れる方向を矢印Eで示す)。これにより、開口部201a全体をカバーするように薬剤の効力範囲を拡大させることができる。
【0080】
(実施形態4)
図18及び図19は、本発明の実施形態4に係る薬剤放散器1を示すものである。実施形態4は、容器10の構造及び風向制御板部の形状が実施形態1のものと異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0081】
実施形態4では、実施形態1の前側枠部及び後側枠部が省略された容器10とされているが、前側枠部及び後側枠部を備えた容器10であってもよい。図18に示すように、容器10の前側には、左右方向中央部において上下方向に延びる縦板部40と、上下方向中央部において左右方向に延びる横板部41とが設けられている。縦板部40及び横板部41により前側空気流通孔13内が4つの領域に区画されている。
【0082】
容器10の前側の左上の角部には、左上側跳ね返り抑制板部46が設けられている。左上側跳ね返り抑制板部46は空気流れ方向下流側へ行くほど左上に位置するように傾斜している。容器10の前側の右上の角部には、右上側跳ね返り抑制板部47が設けられている。右上側跳ね返り抑制板部47は空気流れ方向下流側へ行くほど右上に位置するように傾斜している。容器10の前側の左下の角部には、左下側跳ね返り抑制板部48が設けられている。左下側跳ね返り抑制板部48は空気流れ方向下流側へ行くほど左下に位置するように傾斜している。容器10の前側の右下の角部には、右下側跳ね返り抑制板部49が設けられている。右下側跳ね返り抑制板部49は空気流れ方向下流側へ行くほど右下に位置するように傾斜している。
【0083】
容器10の前側の左上領域には、複数の左上側風向制御板部42が互いに間隔をあけて設けられている。左上側風向制御板部42は空気流れ方向下流側へ行くほど左上に位置するように傾斜している。容器10の前側の右上領域には、複数の右上側風向制御板部43が互いに間隔をあけて設けられている。右上側風向制御板部43は空気流れ方向下流側へ行くほど右上に位置するように傾斜している。容器10の前側の左下領域には、複数の左下側風向制御板部44が互いに間隔をあけて設けられている。左下側風向制御板部44は空気流れ方向下流側へ行くほど左下に位置するように傾斜している。容器10の前側の右下領域には、複数の右下側風向制御板部45が互いに間隔をあけて設けられている。右下側風向制御板部45は空気流れ方向下流側へ行くほど右下に位置するように傾斜している。
【0084】
また、図19に示すように、容器10の後側には、左右方向中央部において上下方向に延びる縦板部50と、上下方向中央部において左右方向に延びる横板部51とが設けられている。縦板部50及び横板部51により後側空気流通孔23内が4つの領域に区画されている。
【0085】
容器10の後側の左上領域には、複数の左上側風向制御板部52が互いに間隔をあけて設けられている。左上側風向制御板部52は空気流れ方向下流側へ行くほど左上に位置するように傾斜している。容器10の後側の右上領域には、複数の右上側風向制御板部53が互いに間隔をあけて設けられている。右上側風向制御板部53は空気流れ方向下流側へ行くほど右上に位置するように傾斜している。容器10の後側の左下領域には、複数の左下側風向制御板部54が互いに間隔をあけて設けられている。左下側風向制御板部54は空気流れ方向下流側へ行くほど左下に位置するように傾斜している。容器10の後側の右下領域には、複数の右下側風向制御板部55が互いに間隔をあけて設けられている。右下側風向制御板部55は空気流れ方向下流側へ行くほど右下に位置するように傾斜している。
【0086】
実施形態4によれば、跳ね返り抑制板部46~49により、実施形態1と同様に空気の跳ね返りを抑制することができる。これにより、容器10の外部から前側空気流通孔13へ向かう空気の流れに逆らうような気流ができにくくなるので、薬剤保持体Aを通過する空気量を増やすことができ、薬剤保持体Aに保持された薬剤の効果を高めることができる。
【0087】
また、風向制御板部42~45、52~55により、薬剤を含んだ空気を左上、右上、左下、右下へ流すことができるので、薬剤の効力範囲を拡大させることができる。
【0088】
(実施形態5)
図20図22は、本発明の実施形態5に係る薬剤放散器1を示すものである。実施形態5は、容器10の構造が実施形態1のものと異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0089】
実施形態3では、実施形態1の前側枠部及び後側枠部が省略された容器10とされているが、前側枠部及び後側枠部を備えた容器10であってもよい。容器10の前側には、上側跳ね返り抑制板部14及び下側跳ね返り抑制板部15が設けられている。さらに、容器10の前側には、上側跳ね返り抑制板部14と下側跳ね返り抑制板部15との間に、複数の前部上側風向制御板部16と前部下側風向制御板部17とが設けられている。前部上側風向制御板部16と前部下側風向制御板部17は同じ方向に傾斜していてもよい。
【0090】
容器10の後側には閉塞板部70が設けられている。この閉塞板部70が設けられていることにより、容器10の後側には空気が流出しないようになっているが、閉塞板部70に小さな貫通孔を形成してもよい。一方、図20に示すように、容器10の上壁部には通気孔(空気流通孔)60が設けられ、容器10の右壁部には通気孔(空気流通孔)61が設けられている。また、図22に示すように、容器10の左壁部にも通気孔(空気流通孔)61が設けられ、容器10の下壁部にも通気孔(空気流通孔)62が設けられている。
【0091】
したがって、実施形態5の場合、容器10の前側から当該容器10の内部に流入した空気は、通気孔60、61、62から上方、側方、下方へそれぞれ流出する。これにより、薬剤を含んだ空気を広範囲に流すことができるので、薬剤の効力範囲を拡大させることができる。
【0092】
実施形態5において、前部上側風向制御板部16と前部下側風向制御板部17との一方のみ設けてもよいし、上下方向に延びる風向制御板部を左右方向一方に傾斜させて設けてもよい。また、通気孔60、61、62のうち、任意の1つまたは複数を省略してもよい。通気孔60、61、62の形状は、スリット状であってもよいし、円形や矩形であってもよい。通気孔60、61、62の内部に風向制御板部を設けてもよい。
【0093】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明に係る薬剤放散器は、各種薬剤を空気中に放散する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 薬剤放散器
10 容器
12 前側枠部
13 前側空気流通孔(流入側空気流通孔)
14 上側跳ね返り抑制板部
15 下側跳ね返り抑制板部
16 前部上側風向制御板部(第1風向制御板部)
17 前部下側風向制御板部(第2風向制御板部)
23 後側空気流通孔(流出側空気流通孔)
60~52 通気孔(空気流通孔)
100 吊り下げ部材
200 ドア
202 ドアノブ(取っ手)
A 薬剤保持体
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