(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】自動ドア装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/60 20150101AFI20241021BHJP
E05F 1/16 20060101ALI20241021BHJP
E05F 15/73 20150101ALN20241021BHJP
【FI】
E05F15/60
E05F1/16 B
E05F15/73
(21)【出願番号】P 2021034105
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】592131560
【氏名又は名称】日本自動ドア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】村田 良文
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118811(JP,A)
【文献】特開2000-257329(JP,A)
【文献】特開2017-115856(JP,A)
【文献】米国特許第05235723(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのドア本体と、
長尺に形成され、一端が前記ドア本体に連結され、他端が前記ドア本体の外部に固定され、通電によって前記ドア本体の開方向に収縮する開閉用伸縮部材と、
前記開閉用伸縮部材に電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部から前記開閉用伸縮部材に供給される電力を制御する制御部と、を備え、
前記開閉用伸縮部材は、長手方向に沿って複数の通電区間に区分されていることを特徴とする、自動ドア装置。
【請求項2】
前記ドア本体に連結されている通電区間の通電断面積は、他の通電区間の通電断面積よりも大きいことを特徴とする、請求項1記載の自動ドア装置。
【請求項3】
前記開閉用伸縮部材よりも短く形成され、一端が前記ドア本体に連結され、他端が前記ドア本体の外部に固定され、通電によって前記ドア本体の開方向に収縮するとともに前記一端が前記ドア本体から離脱する加速用伸縮部材をさらに備え、
前記電力供給部は、前記ドア本体を起動させる際に前記加速用伸縮部材に電力を供給することを特徴とする、請求項1または2に記載の自動ドア装置。
【請求項4】
前記加速用伸縮部材の通電断面積は、前記開閉用伸縮部材の通電断面積よりも大きいことを特徴とする、請求項3に記載の自動ドア装置。
【請求項5】
少なくとも1つのドア本体と、
長尺に形成され、一端が前記ドア本体に連結され、他端が前記ドア本体の外部に固定され、通電によって前記ドア本体の開方向に収縮する開閉用伸縮部材と、
前記開閉用伸縮部材よりも短く形成され、一端が前記ドア本体に連結され、他端が前記ドア本体の外部に固定され、通電によって前記ドア本体の開方向に収縮するとともに前記一端が前記ドア本体から離脱する加速用伸縮部材と、
前記開閉用伸縮部材及び前記加速用伸縮部材に電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部から前記開閉用伸縮部材及び前記加速用伸縮部材に供給される電力を制御する制御部と、を備え、
前記電力供給部は、前記ドア本体を起動させる際に前記加速用伸縮部材に電力を供給することを特徴とする、自動ドア装置。
【請求項6】
前記加速用伸縮部材の通電断面積は、前記開閉用伸縮部材の通電断面積よりも大きいことを特徴とする、請求項5に記載の自動ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、例えば、建物等の壁部に形成された開口部にドア本体を設けて、この開口部近傍に設けられたセンサにより利用者を検知した場合に、ドア本体を自動的にスライドさせて開閉させることにより、利用者が効率的に通行するのを可能にする自動ドア装置が広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような特許文献1に記載された自動ドア装置は、一般的に、駆動部にモータを配置して、このモータによってドア本体を移動させることにより、開口部を開閉するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-197750号公報
【文献】特開2016-199900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなモータをドア装置では、ドア本体を開閉させる際に、モータが回転駆動されるのにともなって駆動音が発生するので、自動ドア装置を静粛に運転するのには限界があった。
また、ドア本体が大型化するにつれて、モータの出力を大きくする必要があるため、自動ドア装置の駆動部を小型化することが困難であった。
【0006】
これらの問題を解決するために、本発明者らは、通電によって収縮する伸縮部材(人口筋肉と称される場合もある)を用いた自動ドア装置を発明した(特許文献2)。この伸縮部材は、通電時に発熱して収縮し、通電を停止すると収縮力が消失するという特性を有する。
【0007】
しかしながら、この技術では、通電される伸縮部材が非常に長尺であったため、伸縮部材を収縮させるために多大な電力を要するという問題があった。このため、大きな電源装置が必要になる。さらには、伸縮部材は発熱により収縮するという特性を有するため、伸縮部材が非常に長尺であると発熱に時間を要するという問題もあった。つまり、収縮応答に時間が掛かり、また収縮応答の制御も難しくなるという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、自動ドア装置をより効率よく駆動させることが可能な、新規かつ改良された自動ドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、少なくとも1つのドア本体と、長尺に形成され、一端がドア本体に連結され、他端がドア本体の外部に固定され、通電によってドア本体の開方向に収縮する開閉用伸縮部材と、開閉用伸縮部材に電力を供給する電力供給部と、電力供給部から開閉用伸縮部材に供給される電力を制御する制御部と、を備え、開閉用伸縮部材は、長手方向に沿って複数の通電区間に区分されていることを特徴とする、自動ドア装置が提供される。
【0010】
ここで、ドア本体に連結されている通電区間の通電断面積は、他の通電区間の通電断面積よりも大きくてもよい。
【0011】
また、開閉用伸縮部材よりも短く形成され、一端がドア本体に連結され、他端がドア本体の外部に固定され、通電によってドア本体の開方向に収縮するとともに一端がドア本体から離脱する加速用伸縮部材をさらに備え、電力供給部は、ドア本体を起動させる際に加速用伸縮部材に電力を供給してもよい。
【0012】
また、加速用伸縮部材の通電断面積は、開閉用伸縮部材の通電断面積よりも大きくてもよい。
【0013】
本発明の他の観点によれば、少なくとも1つのドア本体と、長尺に形成され、一端がドア本体に連結され、他端がドア本体の外部に固定され、通電によってドア本体の開方向に収縮する開閉用伸縮部材と、開閉用伸縮部材よりも短く形成され、一端がドア本体に連結され、他端がドア本体の外部に固定され、通電によってドア本体の開方向に収縮するとともに一端がドア本体から離脱する加速用伸縮部材と、開閉用伸縮部材及び加速用伸縮部材に電力を供給する電力供給部と、電力供給部から開閉用伸縮部材及び加速用伸縮部材に供給される電力を制御する制御部と、を備え、電力供給部は、ドア本体を起動させる際に加速用伸縮部材に電力を供給することを特徴とする、自動ドア装置が提供される。
【0014】
ここで、加速用伸縮部材の通電断面積は、開閉用伸縮部材の通電断面積よりも大きくてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記観点によれば、自動ドア装置をより効率よく駆動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る自動ドア装置の構成を示す正面図である。
【
図2】全開状態となった自動ドア装置の状態を示す正面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る自動ドア装置の構成を示す正面図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る伸縮部材の動きを示す平面図である。
【
図5】第2の実施の形態に係る伸縮部材の動きを示す平面図である。
【
図6】第3の実施の形態に係る伸縮部材の動きを示す平面図である。
【
図7】第4の実施の形態に係る伸縮部材の動きを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、「~」を用いて表される数値限定範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。「超」または「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。
【0018】
<1.第1の実施形態>
(1-1.自動ドア装置の全体構成)
まず、
図1及び
図2に基づいて、本発明の第1の実施形態に係る自動ドア装置1の全体構成について説明する。
図1は全閉状態の自動ドア装置1を示し、
図2は全開状態の自動ドア装置1を示す。自動ドア装置1は、ドア本体10と、レール20と、開閉用伸縮部材30と、電力供給用ケーブル40と、電極41~45と、アクチュエータユニット50と、ストッパー60とを備える。
【0019】
ドア本体10は、ドアパネル11と、プレート12、13と、ローラ14、15とを備える。ドアパネル11は、開方向(矢印100方向)または閉方向(矢印100と逆方向)に移動することで開口部300(
図2参照)を開閉するパネルである。ドアパネル11の開閉動作は、後述する開閉用伸縮部材30が伸縮することによってなされる。
【0020】
プレート12、13はドアパネル11の上端部に取り付けられている。ローラ14、15はプレート12、13に回転可能に取り付けられている。ローラ14、15は、レール20上を移動する。これにより、ドアパネル11が開閉動作する。
【0021】
開閉用伸縮部材30は、通電された際に発熱し、当該発熱によってドア本体10の開方向(矢印100方向)に収縮する部材である。開閉用伸縮部材30は、通電を停止すると収縮力(トルク)が消失する。ここで、本明細書における「伸縮部材」とは、電力を供給することによって形状(分子レベルのねじり等を含む)等の形態が可逆的に変化して、収縮又は伸長する性質を有する物をいい、例えば、コイル状になるまでねじられたモノフィラメント(例えば、ナイロン6)、導電性ポリマー、形状記憶合金、カーボンナノチューブ、所定の形態を有する繊維等が含まれる。
【0022】
開閉用伸縮部材30の一端はドア本体10、より具体的にはプレート12に連結されている。開閉用伸縮部材30の他端は固定端200に固定された電極45に連結されている。ここで、固定端200は、全開状態となったドア本体10の開方向側端部の上側に位置する固定部材である。さらに、開閉用伸縮部材30は、電極41~45によって4つの通電区間31~34に区分されている。通電区間31~34には、独立して通電させることが可能となっている。もちろん、通電区間の数はこの例(4つ)に限定されず、4つより多くても少なくてもよい。通電区間31はドア本体10、より具体的にはプレート12に連結されており、通電区間34は固定端200に固定されている。通電区間31~34は、通電された際にドア本体10の開方向(矢印100方向)に収縮する。
【0023】
電力供給用ケーブル40は、各電極41~45に連結されており、後述する電力供給部から供給される電力を各電極41~45を介して開閉用伸縮部材30に供給する。ここで、上述したように、通電区間31~34に独立して通電させることが可能である。電極41はプレート12に設けられており、電極45は固定端200に設けられており、電極42~44は電極41と45との間に等間隔で設けられている。もちろん、電極の位置はこの例に限られず、上述したように、通電区間の数も4つに限られない。
【0024】
アクチュエータユニット50は、電力供給部、制御部、及びゼンマイバネを内蔵している。電力供給部は、電力供給用ケーブル40及び各電極41~45を介して各通電区間31~34に電力を供給する(通電する)。制御部は、電力供給部の動作を制御する。なお、制御部は、CPU、ROM、RAM等のハードウェア構成で構成される。ゼンマイバネからはバネケーブル51が伸びており、このバネケーブル51がドア本体10のプレート12に連結されている。ゼンマイバネは、プレート12、すなわちドア本体10を閉方向に付勢しており、開閉用伸縮部材30が収縮力を消失した際にドア本体10を閉方向に移動させる。
【0025】
ストッパー60は、ドア本体10が全閉状態(
図1の状態)となっている際に電極42の左端に当接する部材である。ストッパー60は、電極42が全閉状態の位置からさらに左側(閉方向)に移動するのを防止する部材である。詳細は後述するが、例えば全閉状態からドア本体10を開方向に移動させる場合、まず通電区間31に通電する。これによって、通電区間31が収縮するが、この際、通電区間32~34が通電区間31によって引っ張られることになる。そして、通電区間32~34が延伸してしまうと、通電区間31の収縮力が減少してしまう。このような収縮力の減少を防止するためにストッパー60が設けられる。つまり、ストッパー60を設けることで、通電区間31の通電中に通電区間32~34が延伸することが防止される。ストッパー60は、電極43、44に対しても設けてもよい。なお、ストッパー60は、電極41やプレート12等が開方向に移動することを妨げるものではない。
【0026】
(1-2.自動ドア装置の動作)
つぎに、
図1、
図2、
図4及び
図8に基づいて、自動ドア装置1の動作について説明する。ここで、
図4(a)は自動ドア装置1が全閉状態となっている際の開閉用伸縮部材30の状態を示し、
図4(b)は自動ドア装置1が全開状態となっている際の開閉用伸縮部材30の状態を示す。
図8の符号A~Dは通電区間31~34を示し、数字1~6は時間区間を示す。グラフL1~L4の縦軸は通電量を示す。つまり、グラフL1~L4の縦軸の値が大きいほど通電量が大きい。
【0027】
まず、自動ドア装置1が全閉状態(
図1、
図4(a))から全開状態(
図2、
図4(b))になる時の動作について説明する。制御部は、例えば図示しないセンサが利用者を検出した場合に、まず通電区間31に通電する(
図8の時間区間1)。これにより、通電区間31がドア本体10の開方向に収縮し、通電区間31の収縮分だけドア本体10が開方向に移動する。すなわち、自動ドア装置1が起動する。
【0028】
なお、具体的な通電量は、開閉用伸縮部材30の特性、ドア本体10の重量等に応じて適宜調整すればよい。ここで、通電区間31の収縮に要する通電量は、開閉用伸縮部材30全体を収縮させるのに要する通電量よりも小さくなる。さらに、通電区間31の発熱に要する時間も短くなるので、収縮応答が速くなり、収縮応答の制御も容易となる。さらに、ストッパー60によって電極42の閉方向への動きが抑制されるので、通電区間31の収縮によって通電区間32~34が延伸することがない。これにより、通電区間31の収縮力が減少することが防止される。なお、
図8に示すように、他の通電区間32~34には、現状態を維持できる程度の通電を行ってもよい。この場合、電極43、44に対するストッパー60が不要になる。また、時間区間1では、静止している自動ドア装置1を起動することになるので、他の時間区間よりも大きな収縮力が必要になる。また、なるべく早く自動ドア装置1を起動させることが好ましい。そこで、この時間区間1では、通電区間31に他の時間区間で他の通電区間に掛ける通電量よりも大きな電流を通電させてもよい。この場合、通電区間31の収縮力が大きくなるので、自動ドア装置1を早期に起動させることができる。また、ストッパー60の効果がより大きくなる。
【0029】
ついで、制御部は、通電区間32に通電する(
図8の時間区間2)。これにより、通電区間32がドア本体10の開方向に収縮する。ここで、通電区間32の収縮に要する通電量は、開閉用伸縮部材30全体を収縮させるのに要する通電量よりも小さくなる。制御部は、通電区間31には、現状態を維持できる程度に通電する。他の通電区間33~34には、現状態を維持できる程度の通電を行ってもよい。これにより、通電区間32の収縮分だけドア本体10がさらに開方向に移動する。
【0030】
ついで、制御部は、通電区間33に通電する(
図8の時間区間3)。これにより、通電区間33がドア本体10の開方向に収縮する。ここで、通電区間33の収縮に要する通電量は、開閉用伸縮部材30全体を収縮させるのに要する通電量よりも小さくなる。制御部は、通電区間31、32には、現状態を維持できる程度に通電する。他の通電区間34には、現状態を維持できる程度の通電を行ってもよい。これにより、通電区間33の収縮分だけドア本体10がさらに開方向に移動する。
【0031】
ついで、制御部は、通電区間34に通電する(
図8の時間区間4)。これにより、通電区間34がドア本体10の開方向に収縮する。ここで、通電区間34の収縮に要する通電量は、開閉用伸縮部材30全体を収縮させるのに要する通電量よりも小さくなる。制御部は、通電区間31~33には、現状態を維持できる程度に通電する。これにより、通電区間34の収縮分だけドア本体10がさらに開方向に移動する。以上の工程により、
図2、
図4(b)に示すように、自動ドア装置1が全開状態となる。制御部は、時間区間5では、全通電区間31~34が現状態(つまり全開状態)を維持できる程度に通電する。制御部は、利用者がいなくなった(自動ドア装置1を通過した)場合には、通電区間31~34への通電を停止する(時間区間6)。これにより、通電区間31~34の収縮力が消失するので、ゼンマイバネにより自動ドア装置1が全閉状態に戻る。なお、自動ドア装置1が全閉状態に戻る際に再度利用者が検出された場合、上述した時間区分1からの動作が再度行われればよい。
【0032】
なお、自動ドア装置1の開動作をより滑らかに行うために、
図9のグラフL1’~L4’にしめすように、通電の切り替えを徐々に行うようにしてもよい。
【0033】
以上説明した通り、第1の実施形態によれば、開閉用伸縮部材30が複数の通電区間31~34に区分されているので、各通電区間31~34を収縮させるのに要する通電量を低くすることができる。さらには、通電区間31~34の発熱に要する時間が短縮されるので、収縮応答が速くなり、収縮応答の制御も容易となる。したがって、自動ドア装置1をより効率よく駆動させることが可能となる。
【0034】
<2.第2の実施形態>
(2-1.自動ドア装置の全体構成)
つぎに、
図3及び
図5に基づいて本発明の第2の実施形態に係る自動ドア装置1の全体構成について説明する。第1の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0035】
上述したように、自動ドア装置1の起動時には大きな収縮力が必要であり、かつなるべく早く起動する必要がある。そこで、第2の実施形態では、ドア本体10に連結されている通電区間31の通電断面積を、他の通電区間32の通電断面積よりも大きくする。
【0036】
より具体的に説明すると、開閉用伸縮部材30は、電極41~43により通電区間31~32に区分されている。電極41はプレート12に設けられており、電極43は固定端200に設けられており、電極42は電極41と43との間に設けられている。
【0037】
通電区間31はドア本体10、より具体的にはプレート12に連結されており、通電区間32よりも短くなっている。さらに、通電区間31の通電断面積(より具体的には、長さ方向に垂直な断面積)が通電区間32の通電断面積よりも大きくなっている。具体的には、
図5に示すように、通電区間31は、複数本の短伸縮部材31aで構成されている。これにより、通電区間31の通電断面積を大きくしている。なお、通電区間31を構成する開閉用伸縮部材30を太くすることで通電断面積を大きくしてもよい。
【0038】
このように、第2の実施形態では、ドア本体10に連結されている通電区間31の通電断面積を、他の通電区間32の通電断面積よりも大きくしているので、自動ドア装置1の起動時に大きな電流を通電区間31に流すことができる。さらに、通電区間31は通電区間32よりも短くなっている。したがって、大きな収縮力を通電区間31に早期に発生させることができるので、自動ドア装置1を早期に起動させることができる。なお、通電区間31と通電区間32との長さの比は自動ドア装置1に求められる特性等に応じて適宜調整されればよいが、例えば通電区間31は通電区間32の1/10~1/20程度であってもよい。
【0039】
なお、第1の実施形態と同様にストッパー60が設けられている。ストッパー60は、ドア本体10が全閉状態(
図1の状態)となっている際に電極42の左端に当接する部材である。ストッパー60は、通電区間31が収縮している際に通電区間32が延伸することを防止するものである。特に、第2の実施形態では、通電区間31に大きな収縮力が発生するので、ストッパー60の効果は大きい。
【0040】
(2-2.自動ドア装置の動作)
つぎに、
図3及び
図5に基づいて、自動ドア装置1の動作について説明する。ここで、
図5(a)は自動ドア装置1が全閉状態となっている際の開閉用伸縮部材30の状態を示し、
図5(b)は自動ドア装置1が全開状態となっている際の開閉用伸縮部材30の状態を示す。
【0041】
まず、自動ドア装置1が全閉状態(
図3、
図5(a))から全開状態(
図5(b))になる時の動作について説明する。制御部は、例えば図示しないセンサが利用者を検出した場合に、まず通電区間31に通電する。これにより、通電区間31がドア本体10の開方向に収縮し、通電区間31の収縮分だけドア本体10が開方向に移動する。すなわち、自動ドア装置1が起動する。
【0042】
ここで、制御部は、第1の実施形態において通電区間31に掛ける通電量よりも大きな電流を通電区間31に通電することができる。また、通電区間31は通電区間32よりも短くなっている。このため、大きな収縮力を早期に通電区間31に発生させることができ、自動ドア装置1を早期に起動させることができる。なお、具体的な通電量は、開閉用伸縮部材30の特性、ドア本体10の重量等に応じて適宜調整すればよい。
【0043】
ここで、ストッパー60によって電極42の閉方向への動きが抑制されるので、通電区間31の収縮によって通電区間32が延伸することがない。これにより、通電区間31の収縮力が減少することが防止される。なお、通電区間32には、現状態を維持できる程度の通電を行ってもよい。
【0044】
ついで、制御部は、通電区間32に通電する。これにより、通電区間32がドア本体10の開方向に収縮する。制御部は、通電区間31には、現状態を維持できる程度に通電する。これにより、通電区間32の収縮分だけドア本体10がさらに開方向に移動する。以上の工程により、
図5(b)に示すように、自動ドア装置1が全開状態となる。制御部は、全開状態が維持できる程度に全通電区間31~32に通電する。なお、通電区間31の通電を停止してもよい。この場合、ゼンマイバネによる付勢により通電区間31が伸びるので、反転動作が早期に行われるようになる。具体的に説明すると、制御部は、利用者がいなくなった(自動ドア装置1を通過した)場合には、通電区間32への通電を停止する。これにより、通電区間32の収縮力が消失するので、ゼンマイバネにより自動ドア装置1が全閉状態に戻る。ここで、自動ドア装置1が全閉状態に戻る際に再度利用者が検出された場合、通電区間31に再度通電される。この時、通電区間31が伸びた状態となっているので、早期に反転動作(再度の開動作)が行われる。
【0045】
以上説明した通り、第2の実施形態によれば、自動ドア装置1の起動時により大きな収縮力を発生させることができるので、自動ドア装置1を早期に起動させることができるとともに、自動ドア装置1の開動作全体に必要な収縮力も低減することができる。したがって、自動ドア装置1をより効率よく駆動させることが可能となる。
【0046】
<3.第3の実施形態>
(3-1.自動ドア装置の全体構成)
つぎに、
図1及び
図6に基づいて本発明の第3の実施形態に係る自動ドア装置1の全体構成について説明する。第3の実施形態に係る自動ドア装置1は、第1の実施形態に係る自動ドア装置1の開閉用伸縮部材30を
図6に示す開閉用伸縮部材30及び加速用伸縮部材80に置き換えたものである。第1の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0047】
上述したように、自動ドア装置1の起動時には大きな収縮力が必要であり、かつなるべく早く起動する必要がある。そこで、第3の実施形態では、所謂カタパルト方式の起動を行う。
【0048】
より具体的に説明すると、プレート12に電極41が設けられ、固定端200に電極42が設けられる。開閉用伸縮部材30は、電極41、42間を連結する。このような開閉用伸縮部材30とは別に、電極91、92、及び加速用伸縮部材80が設けられる。電極91は自動ドア装置1が全閉状態となっている際にプレート12(の閉方向側の端部)に接触している。電極92はドア本体10の上部のいずれかの位置に固定されている。加速用伸縮部材80は、電極91、92間を連結している。加速用伸縮部材80の長さは開閉用伸縮部材30よりも短い。また、電極91がプレート12に接触しているので、加速用伸縮部材80の一端はドア本体10に接触(連結)していることになる。ここで、加速用伸縮部材80の通電断面積は開閉用伸縮部材30の通電断面積よりも大きいことが好ましい。この場合、より大きな収縮力を加速用伸縮部材80に発生させることができる。
図6の例では、加速用伸縮部材80が複数本の短伸縮部材80aで構成されている。これにより、加速用伸縮部材80の通電断面積を大きくしている。
【0049】
(3-2.自動ドア装置の動作)
つぎに、
図6に基づいて、自動ドア装置1の動作について説明する。ここで、
図6(a)は自動ドア装置1が全閉状態となっている際の開閉用伸縮部材30等の状態を示し、
図6(b)は自動ドア装置1が全開状態となっている際の開閉用伸縮部材30等の状態を示す。
【0050】
まず、自動ドア装置1が全閉状態(
図6(a))から全開状態(
図6(b))になる時の動作について説明する。制御部は、例えば図示しないセンサが利用者を検出した場合に、まず加速用伸縮部材80に通電する。これにより、加速用伸縮部材80がドア本体10の開方向に収縮する。これにより、電極91がドア本体10、より具体的にはプレート12を開方向に押し出す。加速用伸縮部材80が完全に収縮した後、電極91(すなわち加速用伸縮部材80)はプレート12から離脱する。
【0051】
ここで、加速用伸縮部材80の通電断面積が開閉用伸縮部材30の通電断面積よりも大きい場合、制御部は、第1の実施形態において通電区間31に掛ける通電量よりも大きな電流を加速用伸縮部材80に通電することができる。また、加速用伸縮部材80は開閉用伸縮部材30よりも短くなっている。このため、大きな収縮力を早期に加速用伸縮部材80に発生させることができ、自動ドア装置1を早期に起動させることができる。なお、具体的な通電量は、加速用伸縮部材80の特性、ドア本体10の重量等に応じて適宜調整すればよい。
【0052】
ついで、制御部は、開閉用伸縮部材30に通電する。これにより、開閉用伸縮部材30がドア本体10の開方向に収縮する。ここで、ドア本体10は開方向に付勢されているので、開閉用伸縮部材30の通電量を低減することができる。以上の工程により、
図6(b)に示すように、自動ドア装置1が全開状態となる。制御部は、全開状態が維持できる程度に開閉用伸縮部材30に通電する。制御部は、利用者がいなくなった(自動ドア装置1を通過した)場合には、開閉用伸縮部材30への通電を停止する。これにより、開閉用伸縮部材30の収縮力が消失するので、ゼンマイバネにより自動ドア装置1が全閉状態に戻る。なお、自動ドア装置1が全閉状態に戻る際に再度利用者が検出された場合、開閉用伸縮部材30に再度通電すればよい。
【0053】
以上説明した通り、第3の実施形態によれば、自動ドア装置1の起動時により大きな収縮力を発生させることができるので、自動ドア装置1を早期に起動させることができるとともに、自動ドア装置1の開動作全体に必要な収縮力も低減することができる。また、ドア本体10と共に開閉動作する伸縮部材(及びそれらに接続される配線)の構造を単純化することができる。したがって、自動ドア装置1をより効率よく駆動させることが可能となる。
【0054】
<4.第4の実施形態>
(4-1.自動ドア装置の全体構成)
つぎに、
図1及び
図7に基づいて本発明の第4の実施形態に係る自動ドア装置1の全体構成について説明する。第4の実施形態に係る自動ドア装置1は、第1の実施形態に係る自動ドア装置1の開閉用伸縮部材30を
図7に示す開閉用伸縮部材30及び加速用伸縮部材80に置き換えたものである。第1の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0055】
図7に示される通り、第4の実施形態は、上述した第1~第3の実施形態を組み合わせたものである。より具体的には、開閉用伸縮部材30の一端はドア本体10、より具体的にはプレート12に連結されている。開閉用伸縮部材30の他端は固定端200に固定された電極46に連結されている。さらに、開閉用伸縮部材30は、電極41~46によって5つの通電区間31~35に区分されている。通電区間31~35には、独立して通電させることが可能となっている。もちろん、通電区間の数はこの例(5つ)に限定されず、5つより多くても少なくてもよい。通電区間31はドア本体10、より具体的にはプレート12に連結されており、通電区間35は固定端200に固定されている。通電区間31~35は、通電された際にドア本体10の開方向(矢印100方向)に収縮する。
【0056】
通電区間31の通電断面積は、他の通電区間32~35の通電断面積よりも大きくなっている。具体的には、
図7に示すように、通電区間31は、複数本の短伸縮部材31aで構成されている。これにより、通電区間31の通電断面積を大きくしている。なお、通電区間31を構成する開閉用伸縮部材30を太くすることで通電断面積を大きくしてもよい。
【0057】
このような開閉用伸縮部材30とは別に、電極91、92、及び加速用伸縮部材80が設けられる。電極91は自動ドア装置1が全閉状態となっている際にプレート12(の閉方向側の端部)に接触している。電極92はドア本体10の上部のいずれかの位置に固定されている。加速用伸縮部材80は、電極91、92間を連結している。加速用伸縮部材80の長さは開閉用伸縮部材30よりも短い。また、電極91がプレート12に接触しているので、加速用伸縮部材80の一端はドア本体10に接触(連結)していることになる。ここで、加速用伸縮部材80の通電断面積は開閉用伸縮部材30の通電断面積よりも大きいことが好ましい。この場合、より大きな収縮力を加速用伸縮部材80に発生させることができる。
図7の例では、加速用伸縮部材80が複数本の短伸縮部材80aで構成されている。これにより、加速用伸縮部材80の通電断面積を大きくしている。
【0058】
(4-2.自動ドア装置の動作)
つぎに、
図7に基づいて、自動ドア装置1の動作について説明する。ここで、
図7(a)は自動ドア装置1が全閉状態となっている際の開閉用伸縮部材30等の状態を示し、
図7(b)は自動ドア装置1が全開状態となっている際の開閉用伸縮部材30等の状態を示す。
【0059】
まず、自動ドア装置1が全閉状態(
図7(a))から全開状態(
図7(b))になる時の動作について説明する。制御部は、例えば図示しないセンサが利用者を検出した場合に、まず加速用伸縮部材80に通電する。これにより、加速用伸縮部材80がドア本体10の開方向に収縮する。これにより、電極91がドア本体10、より具体的にはプレート12を開方向に押し出す。加速用伸縮部材80が完全に収縮した後、電極91(すなわち加速用伸縮部材80)はプレート12から離脱する。
【0060】
ここで、加速用伸縮部材80の通電断面積が開閉用伸縮部材30の通電断面積よりも大きい場合、制御部は、第1の実施形態において通電区間31に掛ける通電量よりも大きな電流を加速用伸縮部材80に通電することができる。また、加速用伸縮部材80は開閉用伸縮部材30よりも短くなっている。このため、大きな収縮力を早期に加速用伸縮部材80に発生させることができ、自動ドア装置1を早期に起動させることができる。なお、具体的な通電量は、加速用伸縮部材80の特性、ドア本体10の重量等に応じて適宜調整すればよい。
【0061】
これと並行して、制御部は、通電区間31に通電する。これにより、通電区間31がドア本体10の開方向に収縮し、通電区間31の収縮分だけドア本体10が開方向に移動する。
【0062】
ここで、制御部は、第1の実施形態において通電区間31に掛ける通電量よりも大きな電流を通電区間31に通電することができる。また、通電区間31は第2の実施形態における通電区間32よりも短くなっている。このため、大きな収縮力を早期に通電区間31に発生させることができ、加速用伸縮部材80の動作と相まって、自動ドア装置1を早期に起動させることができる。なお、具体的な通電量は、開閉用伸縮部材30の特性、ドア本体10の重量等に応じて適宜調整すればよい。
【0063】
その後の動作は第1の実施形態で説明した通りである。なお、ドア本体10は開方向に付勢されているので、各通電区間32~35の通電量を低減することができる。
【0064】
以上説明した通り、第4の実施形態によれば、上述した第1~第3の実施形態の相乗効果により、自動ドア装置1をより効率よく駆動させることが可能となる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば、ゼンマイバネのかわりに伸縮部材を用いてもよい。また、レール20に閉方向に傾斜をつけてもよい。この場合、ドアパネル11は閉方向に付勢されることになるので、ゼンマイバネは必ずしも設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 自動ドア装置
10 ドア本体
11 ドアパネル
12、13 プレート
14、15 ローラ
20 レール
30 開閉用伸縮部材
31~35 通電区間
41~46、91、92 電極
80 加速用伸縮部材