(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】押圧具
(51)【国際特許分類】
E04D 5/14 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
E04D5/14 F
E04D5/14 J
(21)【出願番号】P 2021122468
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕之
(72)【発明者】
【氏名】庄司 博之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅史
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-037814(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0076139(US,A1)
【文献】特開2010-229669(JP,A)
【文献】特開2006-274681(JP,A)
【文献】特開2016-110824(JP,A)
【文献】特開2019-218737(JP,A)
【文献】特開2020-024900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/14
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具の加熱の後に前記防水シートの押圧に用いる押圧具であって、
前記防水シートと接触する接触部と、
前記接触部と伝熱可能な状態で接続されると共に前記接触部からの熱を放熱する放熱部と、を備え
、
前記接触部は、上面と、前記防水シートとの接触面である下面と、を有する金属製の部材であり、
前記放熱部は、前記接触部の前記上面から上へ突出する複数の部位である押圧具。
【請求項2】
前記放熱部は、前記接触部の前記上面から上へ突出する複数の
平板状の部位である請求項1に記載の押圧具。
【請求項3】
前記放熱部における前記接触部の前記上面からの突出長さは、前記接触部における前記上面と前記下面との距離よりも大きい請求項
1に記載の押圧具。
【請求項4】
前記放熱部における前記接触部の前記上面からの突出長さは、前記接触部における前記上面と前記下面との距離の2倍よりも大きい請求項
1に記載の押圧具。
【請求項5】
作業者によって把持され
上下方向に延びる把持部を備え、
前記放熱部は、平面視で前記把持部の周囲に配置され、
前記放熱部の上端が前記把持部の下端よりも下に位置する請求項1から4のいずれか1項に記載の押圧具。
【請求項6】
前記接触部と前記放熱部とが一繋がりの単一の部材として構成されている請求項1から5のいずれか1項に記載の押圧具。
【請求項7】
前記接触部は、磁石を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の押圧具。
【請求項8】
前記放熱部が、前記磁石の周囲に配置されている請求項7に記載の押圧具。
【請求項9】
前記接触部が平面視で円形であり、前記磁石が平面視で多角形である請求項8に記載の押圧具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、防水シート押さえパットが開示されている。この防水シート押さえパットは、防水シートを固定板に接着する防水シート接着方法の実施の際に用いられる。詳しくは、防水シート押さえパットは、固定板の加熱後に接着箇所の防水シートを弾性的に押さえて、固定板に対する防水シートの密着性を向上させるのに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防水シート押さえパットによる防水シートの押さえ作業は、固定板の加熱後に行われるので、防水シート押さえパッドの温度が上昇しやすい。防水シート押さえパッドの温度が高くなると、押圧された防水シートの表面のテカり(光沢の増加)や皺、防水シートと固定板との接着不良等が発生するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、押圧具の温度上昇を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する手段として、本発明の押圧具は、防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具の加熱の後に前記防水シートの押圧に用いる押圧具であって、前記防水シートと接触する接触部と、前記接触部と伝熱可能な状態で接続されると共に前記接触部からの熱を放熱する放熱部と、を備え、前記接触部は、上面と、前記防水シートとの接触面である下面と、を有する金属製の部材であり、前記放熱部は、前記接触部の前記上面から上へ突出する複数の部位であることを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、放熱部により接触部からの熱が放熱されるので、接触部の温度上昇を抑制することができる。
【0008】
本発明において、前記放熱部は、前記接触部の前記上面から上へ突出する複数の平板状の部位であると好適である。
【0009】
本構成によれば、放熱部が接触部の上面から上へ突出する複数の部位であることにより、放熱部による放熱量が大きくなり、接触部の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明において、前記放熱部における前記接触部の前記上面からの突出長さは、前記接触部における前記上面と前記下面との距離よりも大きいと好適である。
【0011】
本構成によれば、放熱部による放熱量が更に大きくなり、接触部の温度上昇を更に効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記放熱部における前記接触部の前記上面からの突出長さは、前記接触部における前記上面と前記下面との距離の2倍よりも大きいと好適である。
【0013】
本構成によれば、放熱部による放熱量が更に大きくなり、接触部の温度上昇を更に効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明において、作業者によって把持され上下方向に延びる把持部を備え、前記放熱部は、平面視で前記把持部の周囲に配置され、前記放熱部の上端が前記把持部の下端よりも下に位置すると好適である。
【0015】
本構成によれば、把持部を把持する作業者の手が放熱部に接触することが抑制されるので、放熱効率の低下が抑制されると共に、押圧具による防水シート押圧の作業性を高めることができる。
【0016】
本発明において、前記接触部と前記放熱部とが一繋がりの単一の部材として構成されていると好適である。
【0017】
本構成によれば、接触部から放熱部へ熱が速やかに移動できるので、接触部の温度上昇を更に効果的に抑制することができる。
【0018】
本発明において、前記接触部は、磁石を備えると好適である。
【0019】
本構成によれば、防水シート固定具が磁性体である場合に、押圧具が防水シート固定具に引き寄せられる。これにより、防水シート固定具への押圧具の位置合わせが容易になり、押圧具による防水シート押圧の作業性を高めることができる。また、磁力が押圧具を防水シートへ引きつけるので、押圧具による防水シートの押圧が確実に行われる。加えて、作業者が押圧具から手を離した場合でも磁石が防水シート固定具を引きつけるので、押圧具による防水シートの押圧が継続し、押圧具の位置ずれが抑制される。これにより、押圧作業の効率を高めることができる。また、風が吹いて防水シートの未接着の部分がめくれ上がったとしても、磁力により押圧具の位置ずれが抑制され、押圧具による防水シートの押圧が確実に行われる。
【0020】
本発明において、前記放熱部が、前記磁石の周囲に配置されていると好適である。
【0021】
本構成によれば、放熱部が磁石の周囲に配置されているので、磁石を含めた接触部の冷却が効率的に行なわれ好ましい。
【0022】
本発明において、前記接触部が平面視で円形であり、前記磁石が平面視で多角形であると好適である。
【0023】
本構成によれば、多角形である磁石の各辺と円形である接触部の外縁との間の領域に、放熱部を配置することが可能になり、接触部の冷却が効率的に行なわれ好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図8】
図6におけるVIII-VIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る押圧具1の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0026】
以下の説明では、各図面に示されるように、押圧具1において接触部12が位置する側、及び円盤状の防水シート固定具6に対して防水下地4が位置する側を下側と定義し、図中の矢印DWで示す。押圧具1において把持部22が位置する側、及び円盤状の防水シート固定具6に対して防水シート8が位置する側を上側と定義し、図中の矢印UPで示す。
図1及び
図5で示される側を正面として前後左右を定義し、各図面において、前を矢印FR、後を矢印BK、左を矢印LH、右を矢印RHで示す。
【0027】
〔第1実施形態〕
図1-4に、本実施形態の押圧具1が示されている。押圧具1は、防水シート接着工法において、防水シート8の押圧に用いられる。詳しくは、押圧具1は、防水下地4に固定した防水シート固定具6の固定面6bに防水シート8を配置した後に防水シート固定具6を加熱して防水シート8を防水シート固定具6に接着する防水シート接着工法において、防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8の押圧に用いられる。
【0028】
図1-4に示されるように、押圧具1は、押圧部材10と、ハンドル部材20と、磁石30と、板状部材40と、を備える。
【0029】
押圧部材10に凹部11が形成されており、磁石30が凹部11に収容されている。磁石30の上に板状部材40が配置される。
【0030】
押圧部材10、磁石30、及び板状部材40の中心には貫通穴が形成されており、押圧部材10の下からボルト50が貫通穴に挿入されている。ボルト50がハンドル部材20のネジ穴に螺合している。ボルト50により、押圧部材10、ハンドル部材20、磁石30、及び板状部材40が結合されている。
【0031】
押圧部材10は、アルミ材料から削り出しで形成された一体の部材である。押圧部材10は、凹部11、接触部12、及び放熱部13を備える。
【0032】
凹部11は、上面視で四角形の凹みであって、磁石30を収容可能な形状である。凹部11は、接触部12の上部に形成されている。
【0033】
接触部12は、押圧部材10の下部を構成する円柱状の部位である。作業者が押圧具1を用いて防水シート8を押圧する際に、接触部12の下面12aが防水シート8と接触する。すなわち、下面12aは防水シート8との接触面である。下面12aは平面状である。
【0034】
放熱部13は、接触部12の上面12bから上へ突出する部位である。放熱部13は、上下方向及び前後方向に延びる平板状の部位である。換言すれば、放熱部13は、法線が左右方向に延びる姿勢にて配置されている。
【0035】
本実施形態では、複数の放熱部13が、左右方向に等しい間隔dを隔てて配置されている。換言すれば、放熱部13の間に間隙Sが存在する。間隔d(間隙Sの幅)は、放熱部13の厚さtよりも大きい。詳しくは、間隔dは放熱部13の厚さtの2倍よりも大きい。
【0036】
放熱部13における、接触部12の上面12bからの突出長さL1は、接触部12における上面12bと下面12aとの距離L2よりも大きい。詳しくは、突出長さL1は、距離L2の2倍よりも大きい。
【0037】
ハンドル部材20は、作業者が押圧具1を用いて作業するときに持ち手となる部材である。ハンドル部材20は、棒状部材21と、把持部22と、を備える。
【0038】
棒状部材21は、上下方向に沿って延びる姿勢で、ボルト50によって押圧部材10、磁石30、及び板状部材40と結合されている。
【0039】
把持部22は、ハンドル部材20において作業者によって把持される部位である。把持部22は、例えば、棒状部材21を覆うゴム製または樹脂製の部材である。把持部22は、棒状部材21に沿って上下方向に延びている。
【0040】
図1、
図3、
図4に示されるように、放熱部13の上端が、把持部22の下端よりも下に位置している。これにより、作業者の手が放熱部13に接触することが抑制される。
【0041】
磁石30は、平面視で四角形の板状に形成されている。本実施形態では、2つの磁石30が上下に重ねられた状態で、押圧部材10の凹部11に配置されている。本実施形態では、磁石30は永久磁石である。磁石30が電磁石であってもよい。
【0042】
図2に示されるように、本実施形態では、放熱部13が磁石30の周囲に配置されている。詳しくは、放熱部13が平面視で磁石30の周囲に配置されている。
【0043】
また、本実施形態では接触部12が平面視で円形であり、磁石30が平面視で四角形である。磁石30の各辺と接触部12の外縁との間に、放熱部13が配置されている。
【0044】
板状部材40は、金属製であり、磁石30の上に配置されている。
【0045】
〔防水シート接着工法〕
以下、防水シート接着工法を説明する。防水シート接着工法は、建築工事又は土木工事の防水作業、例えば陸屋根等の防水工事において、コンクリートや金属等の躯体上(以下、防水下地4と称する。)に防水シート8を張り、防水シート8を防水下地4に固定する工法である。
【0046】
〔固定工程、配置工程〕
まず、防水下地4に防水シート固定具6を固定する工程(固定工程)、及び、防水シート固定具6の固定面6bに防水シート8を配置する工程(配置工程)が行なわれる。詳しくは、防水下地4の上に断熱パネル5を配置し、断熱パネル5の上に防水シート固定具6を配置し、固定部材7により防水下地4に防水シート固定具6を固定する。断熱パネル5は、例えば、イソシアネートのフォーム材で形成してあり、無数の独立気泡が内在している。また、適度な強度と断熱性とを備えている。
【0047】
防水シート固定具6は、電磁誘導による加熱が可能な部材であり、例えば金属製の部材である。防水シート固定具6は、平板状の部材であり、本実施形態では円盤状の部材である。防水シート固定具6は、上に突出する突出部位6aを有する。突出部位6aの上面が、防水シート8が固定される面(固定面6b)である。本実施形態では、突出部位6aは円環形状であり、固定面6bは外縁6cと内縁6dとを有する円環形状である。本実施形態では、固定面6bにホットメルト接着層が設けられており、防水シート8の防水シート固定具6への接着はホットメルト接着層の熱溶着により行なわれる。ホットメルト接着層の成分は、防水シート8の材質に合わせて選択される。例えば、防水シート8(全体、又は接着面)が塩化ビニル樹脂製である場合、ホットメルト接着層が塩化ビニル樹脂系の接着層であると好ましい。なお、防水シート8の防水シート固定具6への接着が、防水シート8の融着(溶融及び固化)により行なわれてもよい。
【0048】
固定部材7は、チューブワッシャ7aとビス7bとを備える。本実施形態では、チューブワッシャ7aを防水シート固定具6の中央の穴に通した状態でチューブワッシャ7aを断熱パネル5に上から貫入させ、チューブワッシャ7aにビス7bを挿入し、ビス7bを防水下地4に螺合させることにより、固定部材7が防水シート固定具6を防水下地4に固定する。
【0049】
防水シート8は、可撓性及び防水性を有するシートである。防水シート8は、例えば塩化ビニル樹脂製のシートである。
【0050】
〔接着工程〕
配置工程の後に、防水シート固定具6を加熱して防水シート8を防水シート固定具6に接着する工程(接着工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で加熱装置を持ち、防水シート8の上から防水シート固定具6の上に加熱装置を当てて、加熱装置を作動させ、防水シート固定具6を加熱する。加熱装置は、例えば、電磁誘導により防水シート固定具6を加熱する電磁誘導加熱装置である。防水シート固定具6が加熱されると、固定面6bに設けられたホットメルト接着層の温度が上昇して軟化又は溶融する。これにより、防水シート固定具6と防水シート8とが接着される。
【0051】
〔押圧工程〕
接着工程の後に、
図1に示されるように、押圧具1で防水シート8を押圧して防水シート8を防水シート固定具6に密着させる工程(押圧工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で押圧具1を持ち、防水シート8の上から防水シート固定具6の上に押圧具1を当てて、防水シート8を押圧する。押圧具1に押されて、防水シート8が防水シート固定具6に密着する。
【0052】
押圧具1で防水シート8を押圧する際は、
図1、
図3、
図4に示されるように、押圧具1の中心と防水シート固定具6の中心とが平面視で一致するように押圧具1を配置すると好ましい。
【0053】
接着工程において、防水シート固定具6が加熱されるので、防水シート8の温度が上昇する。押圧工程において、押圧具1が防水シート8の上から防水シート固定具6の上に押し当てられると、防水シート8から押圧具1の接触部12へ熱が移動し、接触部12の温度が上昇する。このとき、押圧具1への熱の移動により、防水シート8、防水シート固定具6、及び固定面6bに設けられたホットメルト接着層が冷却される。
【0054】
本実施形態では、接触部12と放熱部13とが、一繋がりの単一の部材として構成されている。つまり、放熱部13は、接触部12と伝熱可能な状態で接続されている。従って、接触部12の温度が上昇すると、接触部12から放熱部13へ熱が移動する。放熱部13では、接触部12からの熱が放熱される。詳しくは、接触部12からの熱が放熱部13にて空中へ放出される。すなわち、放熱部13は、空冷方式で冷却される。
【0055】
〔第2実施形態〕
図5-8に、本実施形態の押圧具1が示されている。押圧具1は、上述の実施形態と同様に、防水シート接着工法において防水シート8の押圧に用いられる。
【0056】
本実施形態の押圧具1は、下部材60と、上部材70と、ハンドル部材80と、磁石30と、を備える。
【0057】
下部材60は、下側が閉じられた有底円筒状の金属製の部材である。下部材60の内部に磁石30が収容されている。
【0058】
作業者が押圧具1を用いて防水シート8を押圧する際に、下部材60の下面60aが防水シート8と接触する。すなわち、下部材60が、特許請求の範囲に記載された「接触部」である。下面60aが防水シート8との接触面である。下面60aは平面状である。
【0059】
下部材60の上部に、上部材70がボルトで固定されている。下部材60の上部の開口が、上部材70により閉じられている。
【0060】
上部材70は、アルミ材料から削り出しで形成された一体の部材であって、全体として円盤状の部材である。上部材70は、上側の部位である放熱部70aと、下側の部位である基部70bと、を備える。
【0061】
放熱部70aは、基部70bの上面70cから上へ突出する部位である。ここで基部70bは、
図5、
図7、
図8に示されるように、下部材60の内部に全体が入り込む状態で、下部材60と一体化している。従って、放熱部70aは接触部の上面から上へ突出する部位であるといえる。
【0062】
放熱部70aは、上下方向及び前後方向に延びる平板状(リブ状)の部位である。換言すれば、放熱部13は、法線が左右方向に延びる姿勢にて配置されている。
【0063】
本実施形態では、複数の放熱部70aが、左右方向に等しい間隔dを隔てて配置されている。換言すれば、放熱部70aの間に間隙Sが存在する。間隔d(間隙Sの幅)は、放熱部70aの厚さtよりも大きい。詳しくは、間隔dは放熱部70aの厚さtの2倍よりも大きい。
【0064】
上部材70の上部に、ハンドル部材80がボルトで固定されている。ハンドル部材80は、作業者が押圧具1を用いて作業するときに持ち手となる部材である。ハンドル部材80は、支持部材81と、把持部82と、を備える。
【0065】
支持部材81は、正面視で逆U字状の部材であって、左右の端部が上部材70の放熱部70aにボルトで固定されている。
【0066】
把持部82は、ハンドル部材80おいて作業者によって把持される部位である。把持部82は、上下方向に延びる姿勢にて支持部材81の上面にボルトで取り付けられている。
【0067】
本実施形態では、接触部である下部材60と放熱部70aを備える上部材70とが、下部材60の内面における上部と上部材70の基部70bの外面との接触及びボルト接続により、伝熱可能な状態で接続されている。従って、防水シート固定具6の加熱後の防水シート8との接触により、下部材60の温度が上昇すると、下部材60から放熱部70aへ熱が移動する。放熱部70aでは、下部材60からの熱が放熱される。詳しくは、下部材60からの熱が放熱部70aにて空中へ放出される。すなわち、放熱部70aは、空冷方式で冷却される。
【0068】
〔他の実施形態〕
【0069】
(1)上述の実施形態では、接触部と放熱部とが「伝熱可能な状態で接続」される。第1実施形態では、接触部12と放熱部13とが一繋がりの単一の部材として構成される。第2実施形態では、接触部である下部材60と放熱部70aとは別部材であるが、金属製部材同士の接触及びボルト接続により、接続される。すなわち、「伝熱可能な状態で接続」とは、一繋がりの単一の部材として構成されることだけでなく、伝熱可能な形態での別部材の接触を含む。後者は、単純接触及びボルト結合だけでなく、溶接、カシメ、伝熱グリスやヒートパイプ等を介した接続などを含む。
【0070】
(2)放熱部の材質、形状、数、及び配置の態様は、上述の例に限られない。例えば、放熱部が丸棒状、角棒状、円盤状などであってもよい。
【0071】
なお、防水シート固定具6の形状も、円盤状に限られず、四角形などの多角形や楕円形であってもよい。放熱部の形状が、防水シート固定具6の形状に対応する形状であると好ましい。
【0072】
(3)押圧具1が磁石30を備えなくてもよい。
【0073】
(4)接触部の材質や形状は、上述の例に限られない。例えば、接触部の形状が多角形であってもよい。
【0074】
(5)磁石30の形状や数は、上述の例に限られない。例えば、磁石30が平面視で三角形、五角形等の多角形であってもよいし、円形であってもよい。2つ以上の磁石が接触部に設けられてもよい。
【0075】
(6)防水シート接着工法では、複数の防水シート固定具6に対して接着工程と押圧工程とが順に行なわれる。接着工程と押圧工程とが次のようにして行なわれてもよい。加熱装置により加熱された第1の防水シート固定具6の上に押圧具1を置く。その状態で、隣接する第2の防水シート固定具6を加熱装置で加熱する。加熱が終了したら、押圧具1を、第1の防水シート固定具6の上から第2の防水シート固定具6の上に移動させる。このように、一つの防水シート固定具6に対して押圧工程を行なう間に他の防水シート固定具6に対して接着工程を平行して行なうことができる。
【0076】
本実施形態では、押圧具1が磁石30を備えるので、防水シート固定具6の上に押圧具1を置いた後、作業者が押圧具1から手を離しても、押圧具1の位置ずれが抑制される上に、磁石30が防水シート固定具6を引きつけることにより押圧具1が防水シート8に押しつけられる。すなわち、磁石30により、作業者が押圧具1から手を離しても押圧工程が適切に実行される。
【0077】
(7)断熱パネル5、防水シート固定具6、固定部材7、及び防水シート8の形態も、上述の例に限られない。例えば、固定部材7が単なるビスやボルト等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、防水シート接着工法に用いることができる。詳しくは、押圧具を、防水シート固定具の加熱の後に防水シートの押圧に用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 :押圧具
4 :防水下地
6 :防水シート固定具
6b :固定面
8 :防水シート
12 :接触部
12a :下面
12b :上面
13 :放熱部
22 :把持部
30 :磁石
60 :下部材(接触部)
60a :下面
70a :放熱部
70c :上面
82 :把持部
L1 :突出長さ
L2 :距離