(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】高低トルクを有するレンチ
(51)【国際特許分類】
B25B 23/143 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
B25B23/143
(21)【出願番号】P 2021156226
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】521115498
【氏名又は名称】瞬豐實業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Matatakitoyo Tool Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 28,Ln.67,Hecuo St.,Xitun Dist.,Taichung City 407,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼逸民
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-164948(JP,A)
【文献】実用新案登録第2551725(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/143
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のハンドルと、
前記ハンドルの一端に枢着された高トルク操作部材と、
前記ハンドルの他端に枢着された低トルク操作部材と、
前記ハンドルの内部に配設され、前記高トルク操作部材及び前記低トルク操作部材の間に挟まれることによって
前記高トルク操作部材及び前記低トルク操作部材に弾性力を付与する弾性部材と、を備え、
前記高トルク操作部材又は前記低トルク操作部材によりワークを締め付け又は緩めることが可能な高低トルクを有するレンチであって、
前記弾性力は押圧力であり、前記高トルク操作部材又は前記低トルク操作部材により前記ワークを締め付け又は緩めたときに、前記ワークに働く反作用力が前記高トルク操作部材又は前記低トルク操作部材に伝達され、この伝達された力に対して、前記弾性部材が前記高トルク操作部材又は前記低トルク操作部材に押圧力を付与することができ、前記反作用力が前記弾性部材の前記押圧力よりも大きい場合、前記高トルク操作部材又は前記低トルク操作部材が前記弾性部材を圧縮変形させ、前記ワークを締め付け又は緩めることを止めると前記弾性部材の前記圧縮変形が開放され、
前記高トルク操作部材側の軸部材から前記弾性部材の前記高トルク操作部材側の端部までの距離であるモーメントアームは、前記弾性部材の前記低トルク操作部材側の端部から前記低トルク操作部材側の軸部材までの距離であるモーメントアームより大きいことを特徴とする、高低トルクを有するレンチ。
【請求項2】
前記高トルク操作部材は、前記ハンドルに枢着されたアームと、前記ハンドル内部で往復運動する音発生台と、を有し、
前記アームは、一端が前記ハンドルから延び、他端が前記ハンドルに深く挿入され、
前記音発生台は、一端が前記弾性部材の力を受け、他端が並列状に配列された2枚のプレートを介し、前記ハンドルに深く挿入された前記アームの部位に接続されることを特徴とする請求項1に記載の高低トルクを有するレンチ。
【請求項3】
前記アームの前記ハンドルに深く挿入された箇所には、扁平部が設けられ、
前記扁平部と、前記音発生台の1つの扁平部とには、並列状に配列された2枚の前記プレートが枢着されることを特徴とする請求項2に記載の高低トルクを有するレンチ。
【請求項4】
前記扁平部の横には、前記アームに挿通されて調節可能な1本の柱が設けられることを特徴とする請求項3に記載の高低トルクを有するレンチ。
【請求項5】
前記柱は、前記ハンドルのホールに対向し、
前記ホールは、1つの栓により閉塞されることを特徴とする請求項4に記載の高低トルクを有するレンチ。
【請求項6】
前記音発生台は、パッドで離間され、前記弾性部材の一端に間接的に接触されることを特徴とする請求項2に記載の高低トルクを有するレンチ。
【請求項7】
前記低トルク操作部材は、前記ハンドルに枢着されたアームと、前記ハンドルの内部で往復運動するローラ台と、を有し、
前記アームは、一端が前記ハンドルから延び、他端が前記ハンドルに深く挿入されるとともに1本の円棒を含み、
前記ローラ台は、一端が前記弾性部材の力を受け、前記円棒に転がり接触される音発生ローラが他端に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の高低トルクを有するレンチ。
【請求項8】
前記ローラ台には、2つの球体が配設され、
前記球体は、前記音発生ローラ及び前記ハンドル内部に転がり接触されることを特徴とする請求項7に記載の高低トルクを有するレンチ。
【請求項9】
前記円棒の横には、前記アームに挿通されて調節可能な1本の柱が設けられることを特徴とする請求項7に記載の高低トルクを有するレンチ。
【請求項10】
前記柱は、前記ハンドルのホールに対向し、前記ホールは1つの栓により閉塞されることを特徴とする請求項9に記載の高低トルクを有するレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドツールの分野に関し、特に、高低トルクを有するレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレンチには、例えば開口スパナ、ラチェットレンチ、メガネレンチ、モンキーレンチ、トルクレンチなど、様々な種類があった。上述したレンチは、ヘッド部材を有する。ヘッド部材は、必要に応じて固定された2つの顎、環体内側に設けられた連続した歯、固定顎に可動顎を組み合わせるか、内側が多角槽の円筒などであり、例えば、ナット、ねじ、ボルトなどのワークを締め付けるか緩めることができる。上述したレンチには、アラーム構造が設けられ、使用者にトルクを知らせるとともに、ワークのねじ山が潰れることを防いでいた。
【0003】
従来のアラーム構造には、指針式、音発生式、メーター式、デジタル式など様々な種類のものがあった。そのうち指針式のアラーム構造は、固定された一方の針に、旋回可能な他方の針を組み合わせ、旋回する針によりレンチのトルク値を指し示す。音発生式アラーム構造は、1つのローラ台を有する。ローラ台は、一端が圧縮ばねに接触され、他端が1つの音発生ローラに枢着される。この音発生ローラは、1本の円棒に転がり接触される。ヘッド部材は、円棒を含み、これは衝撃音によりワークの反作用力に直接反応し、レンチのトルクが所定値に達することを警告する。この具体的に内容については、特許文献1を参照する。メーター式アラーム構造は、レンチにメーターが設けられている。メーターの1本の指針が目盛の1つを指し示し、レンチのトルク値を読み取ることができる。デジタル式アラーム構造は、近年現れた技術であり、1つのモニターにデジタル式でアラビア数字が表示され、トルク値を直接読み取ることができる。
【0004】
しかし、これら従来のレンチは、トルクが単一のばね又は弾性部材から提供されていたため、高低が異なるトルクが必要な場合、2本以上のばね又は弾性部材に頼る必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題目的は、前記の如き従来技術の問題点を改善することが可能な、単一の弾性部材を利用し、異なるモーメントアームを組み合わせた高低トルクを有するレンチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、中空のハンドルと、前記ハンドルの一端に枢着された高トルク操作部材と、前記ハンドルの他端に枢着された低トルク操作部材と、前記ハンドルの内部に配設され、前記高トルク操作部材及び前記低トルク操作部材に作用力を付与する弾性部材と、を備え、前記高トルク操作部材から前記弾性部材までのモーメントアームは、前記弾性部材から前記低トルク操作部材までのモーメントアームより大きいことを特徴とする、高低トルクを有するレンチが提供される。
【0008】
前記高トルク操作部材は、前記ハンドルに枢着されたアームと、前記ハンドル内部で往復運動する音発生台と、を有し、前記アームは、一端が前記ハンドルから延び、他端が前記ハンドルに深く挿入され、前記音発生台は、一端が前記弾性部材の力を受け、他端が並列状に配列された2枚のプレートを介し、前記ハンドルに深く挿入された前記アームの部位に接続されることが好ましい。
【0009】
前記アームの前記ハンドルに深く挿入された箇所には、扁平部が設けられ、前記扁平部と、前記音発生台の1つの扁平部とには、並列状に配列された2枚の前記プレートが枢着されることが好ましい。
【0010】
前記扁平部の横には、前記アームに挿通されて調節可能な1本の柱が設けられることが好ましい。
【0011】
前記柱は、前記ハンドルのホールに対向し、前記ホールは、1つの栓により閉塞されることが好ましい。
【0012】
前記音発生台は、パッドで離間され、前記弾性部材の一端に間接的に接触されることが好ましい。
【0013】
前記低トルク操作部材は、前記ハンドルに枢着されたアームと、前記ハンドルの内部で往復運動するローラ台と、を有し、前記アームは、一端が前記ハンドルから延び、他端が前記ハンドルに深く挿入されるとともに1本の円棒を含み、前記ローラ台は、一端が前記弾性部材の力を受け、前記円棒に転がり接触される音発生ローラが他端に取り付けられることが好ましい。
【0014】
前記ローラ台には、2つの球体が配設され、前記球体は、前記音発生ローラ及び前記ハンドル内部に転がり接触されることが好ましい。
【0015】
前記円棒の横には、前記アームに挿通されて調節可能な1本の柱が設けられることが好ましい。
【0016】
前記柱は、前記ハンドルのホールに対向し、前記ホールは1つの栓により閉塞されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の高低トルクを有するレンチは、単一の弾性部材を利用し、異なるモーメントアームを組み合わせることにより、従来技術の問題点を改善することができる上、速やかに組立てることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る高低トルクを有するレンチを示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る高低トルクを有するレンチを示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る高低トルクを有するレンチを示す組立断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る高低トルクを有するレンチの別の角度からの組立断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る高低トルクを有するレンチのトルクが所定値に達する動作の説明図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る高低トルクを有するレンチを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の技術手段及びそれにより達成可能な効果を、より完全かつ明白に開示するために、開示した添付の図面及び符号と併せて本発明を以下に詳説する。
【0020】
(第1実施形態)
図1及び
図3を参照する。
図1及び
図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る高低トルクを有するレンチ10は、ハンドル11を備える。ハンドル11は、一端が高トルク操作部材20に枢着され、他端が低トルク操作部材40に枢着される。
【0021】
第1実施形態のハンドル11は、管14を覆う把持部12を有し、成形技術により把持部12が管14の外側の凹部(又は凸部)の構造に結合されているため、互いに回転することがない。管14は、把持部12より長く、その両端が把持部12から突出され、各端が外方に延びて2つの突片15が成形される。ハンドル11は、2つの栓13を有する。各栓13は、把持部12を半径方向で管14に出入り可能なホールを閉塞する(
図4を参照する)。
【0022】
ここで述べる枢着構造とは、2つの軸部材16を指す。これらの軸部材16は、1本のピン161と1つの閉止ヘッド162とが結合されて構成される。2つの軸部材16のうちの一方は、突片15及び高トルク操作部材20と接続され、他方の軸部材16は、突片15及び低トルク操作部材40と接続される。閉止ヘッド162を取り外してピン161を突片15から抜き抜くと、高トルク操作部材20(又は低トルク操作部材40)をハンドル11から取り外すことができる。
【0023】
図2及び
図4を参照する。
図2及び
図4に示すように、高トルク操作部材20をハンドル11から取り外すと、管14内から1本の柱35、2本のピン33、2つのリング34、2枚のプレート32、1つの音発生台30及び1つのパッド36を取り出すことができる。
【0024】
上述した高トルク操作部材20は、1つのアーム21を有する。アーム21は、一端に1つの環体22が設けられ、他端に扁平部26が設けられる。環体22の内側には、噛合面23が設けられる。噛合面23は、複数の歯が接続されて構成される。扁平部26の横には、アーム21を貫通する孔部25が形成されている。上述した高トルク操作部材20は、例えば、メガネレンチのヘッド部材である。
【0025】
(第2実施形態)
図6を参照する。
図6に示すように、本発明の第2実施形態に係る高低トルクを有するレンチ10は、アーム21の露出端に1つのラチェットヘッド部材27が接続され、高トルク操作部材20にラチェットレンチの機能を付与する。他の実施形態では、高トルク操作部材20は、開口スパナ、モンキーレンチ又はトルクレンチでもよい。アーム21の露出端は、対応したヘッド部材の輪郭に接続される。
【0026】
また、高トルク操作部材20の側面の空白部分には、トルク値24が刻印されている。上述したトルク値24が表す30ニュートン(N)とは、高トルク操作部材20が出力するトルクの最大値のことであるが、他の実施形態では、1つの記号によりトルク値を代替して環体22に利用してもよく、その記号とは、例えば上向きの矢印、又は「High」などの外国語が表記されてもよい。
【0027】
図2~
図4を参照する。
図2~
図4に示すように、アーム21は2つの突片15間に位置する。ピン161が突片15及びアーム21に挿通されて閉止ヘッド162と結合されると軸部材16が成形され、環体22を支えて管14から露出され、扁平部26が管14中に深く挿入される。柱35は、扁平部26の横の孔部25に螺入されるスタッドでもよい。2つのリング34は、対応したピン33に係合され、そのうち一方のピン33はプレート32及び扁平部26に挿通され、他方のピン33がプレート32及び音発生台30の1つの扁平部31に挿通され、これらのプレート32が互いに対向した扁平部26,31の両側に並列状に配列される。また、音発生台30は、パッド36で離間され、管14内の1つの弾性部材17に間接的に接触される。
【0028】
低トルク操作部材40をハンドル11から取り外すと、上述した弾性部材17以外に、管14内から他方の1本の柱56、1本の円棒57、1つの音発生ローラ53、1本の軸52、1つのローラ台50及び2つの球体55を取り出すことが可能である。
【0029】
上述した低トルク操作部材40は、アーム41を有する。アーム41は、一端にもう一つの環体42を有し、他端に1つの切欠き46が形成される。環体42の内側には、噛合面43が設けられる。切欠き46の横には、アーム41を貫通するもう一つの孔部45が形成される。孔部45の軸心方向は、切欠き46の延伸方向と交差する。低トルク操作部材40は、例えば、メガネレンチのヘッド部材である。
【0030】
図6を参照する。
図6に示すように、本発明の第2実施形態に係る高低トルクを有するレンチ10は、アーム41の露出端に接続されたもう1つのラチェットヘッド部材47は、低トルク操作部材40にラチェットレンチの機能を付与する。他の実施形態では、高トルク操作部材20は、開口スパナ、モンキーレンチ又はトルクレンチでもよい。アーム41の露出端は、対応したヘッド部材の輪郭に接続される。
【0031】
また、低トルク操作部材40の側面の空白部分には、トルク値44が刻印されている。上述したトルク値44が表す15ニュートン(N)とは、低トルク操作部材40が出力するトルクの最大値のことであるが、他の実施形態では、他の記号によりトルク値を代替して環体22に利用してもよく、その記号とは、例えば下向きの矢印、又は「Low」などの外国語が表記されてもよい。
【0032】
弾性部材17は圧縮ばねである。圧縮ばねは、一端がローラ台50に押し付けられ、他端がパッド36に当接される。ローラ台50の他端には、1つの組立室51が形成され、ローラ台50を取り囲む組立室51の壁に2つの孔部54が貫通されて形成される。軸52は、音発生ローラ53に挿通され、ローラ台50は組立室51の壁により取り囲まれ、音発生ローラ53の円周面が2つの球体55及び円棒57に転がり接触される。各球体55は、孔部54を介して管14の内側に転がり接触される。アーム41を2つの突片15間に位置させ、もう一つの軸部材16を突片15及びアーム41に挿通し、切欠き46は、ともに管14に深く挿入される円棒57を含むとともに、環体42を支えて管14から露出される。もう一本の柱56は、アーム41の孔部45に螺入されるスタッドでもよい。
【0033】
レンチ10は、1つのワークの締め付け(又は緩め)を2つの操作部材のうちの一つにより行う。上述したワークは、1つのナット、ねじ又はボルトである。ナットは、外部に多辺形の輪郭を有し、雌ねじを有する。ねじ又はボルトは、雄ねじ及びヘッド部を有する。ヘッド部は、複数の辺又は角を有する。内外2つのねじ部の案内により、時計回りに回すと締付けられ、逆時計回りに回すと緩めることができる。
【0034】
仮に、レンチ10でワーク(図示せず)を締め付ける際、低トルク操作部材40を選択すると、噛合面43により対辺距離が合致したナット又はヘッド部を受けるとき、環体42はワークの外部に位置する。弾性部材17がローラ台50を押し動かし、音発生ローラ53は、円棒57を介してアーム41が管14に対して旋回することを防ぐことができる。ハンドル11が作用力を受けると、アーム41が管14に伴って同じ方向に旋回するため、管14が環体42によりナット(又はヘッド部)に対応した角を駆動させ、ワークにトルクを加えると、ワークの反作用力が環体42を介してアーム41に伝達される。アーム41は、円棒57を支え、音発生ローラ53から弾性部材17に伝達される作用力に対抗する。
【0035】
図5を参照する。
図5に示すように、反作用力が弾性部材17の力より大きい場合、アーム41が軸部材16の周りで揺動すると管14に衝突して衝撃音が発生し、締め付けるワークのトルクが低トルク操作部材40の所定値に達したことを知らせて警告する。このときアーム41は、ローラ台50に対して水平方向の押圧力を発生させ、円棒57が音発生ローラ53の外表面の曲面で移動するが、デッドポイント(Dead Point)は超えない。音発生ローラ53が円棒57の力を球体55まで伝達させると、球体55が管14の内側で転動し、ローラ台50が管14内で変位するととともに、弾性部材17を押し潰して変形させる。そのため、弾性部材17は、15ニュートン(N)の力に等しく、レンチ10によりワークを締め付けるトルクとして利用することができる。
【0036】
図4を再び参照する。ハンドル11に加える力を緩めると、レンチ10はワークを締め続けることを止める。アーム41の均衡が失われると、弾性部材17の力が開放され、ローラ台50を押動して元の位置に戻し、音発生ローラ53が円棒57を押し戻してアーム41を元の位置に戻し、柱56を管14に衝突させて衝撃音を発生させ、低トルク操作部材40が初期状態に戻ったことを知らせる。
【0037】
もし高トルク操作部材20を選択してワーク(図示せず)を締め付ける場合、対辺距離が合致したナット又はヘッド部を噛合面23で受けるとき、環体22は、ワークの外部に位置する。弾性部材17がパッド36を介して音発生台30を押し動かし、プレート32によりアーム21が管14に対して旋回することを防ぐ。ハンドル11が力を受けると、管14が同期で旋回し、上述したアーム21が環体22によりワークを対応した角にトルクを作用させることができる。
【0038】
図5を見ると分かるように、ワークの反作用力は、環体22を介してアーム21に伝達される。反作用力が弾性部材17の力より大きいとき、アーム21は、軸部材16の周りで揺動し、管14に衝突して衝撃音が発生し、ワークを締め付けるトルクが高トルク操作部材20の所定値に達したことを知らせるとともに、アーム21がプレート32を介して音発生台30に対して水平方向の押圧力を付与する。音発生台30が管14の軸心方向で変位すると、パッド36を介して弾性部材17を間接的に圧縮し、変形させる。そのため、弾性部材17は30ニュートン(N)の力に等しく、レンチ10がワークを締め付けるトルクとして利用する。
【0039】
図4を再び参照する。ハンドル11に加える力を緩めると、レンチ10はワークを締め続けることを止める。アーム21の均衡が失われると、弾性部材17の力が開放され、パッド36及び音発生台30を押動して元の位置に戻し、プレート32がアーム21を元の位置に押し戻し、柱35を管14に衝突させて再び衝撃音が発生し、高トルク操作部材20が初期状態に戻ったことを知らせる。
【0040】
梃子の原理から、モーメント=モーメントアーム×作用力である。軸部材16を支点とし、噛合面23,43から支点までの距離を(抗力の)モーメントアームとして用い、ワークの反作用力を乗算すると(抵抗)モーメントが得られる。支点から弾性部材17までの距離を(加えられた力の)モーメントアームと見なし、弾性部材17の力を乗算するともう一つの(加えられた力の)モーメントが得られる。もし(加えられた力の)モーメントが(抵抗)モーメントに等しい場合、(抗力の)モーメントアームは(加えられた力の)モーメントアームより短く、弾性部材17の力はワークの反作用力より小さい。
【0041】
高トルク操作部材20及び低トルク操作部材40の(抗力の)モーメントアームは略等しい。プレート32及び/又はパッド36は、アーム21から弾性部材17までの距離を増大させるため、高トルク操作部材20の(加えられた力の)モーメントアームが低トルク操作部材40の(加えられた力の)モーメントアームより長く、高トルク操作部材20のトルクは低トルク操作部材40のトルクより大きい。
【0042】
弾性疲労に関しては、栓13を取り外し、ハンドツール(例えば、ドライバ)を管14に入り込ませて柱35,56を旋回させてアーム21,41の管14に対する回転角度を調節すると、弾性部材17が出力する力の強弱を変更し、高トルク操作部材20又は低トルク操作部材40を元の所定値に回復させることができる。
【0043】
当該分野の技術を熟知する者が理解できるように、本発明の好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を逸脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0044】
10 レンチ
11 ハンドル
12 把持部
13 栓
14 管
15 突片
16 軸部材
17 弾性部材
20 高トルク操作部材
21 アーム
22 環体
23 噛合面
24 トルク値
25 孔部
26 扁平部
27 ラチェットヘッド部材
30 音発生台
31 扁平部
32 プレート
33 ピン
34 リング
35 柱
36 パッド
40 低トルク操作部材
41 アーム
42 環体
43 噛合面
44 トルク値
45 孔部
46 切欠き
47 ラチェットヘッド部材
50 ローラ台
51 組立室
52 軸
53 音発生ローラ
54 孔部
55 球体
56 柱
57 円棒
161 ピン
162 閉止ヘッド