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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】飛行体の制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/46 20240101AFI20241021BHJP
   G05D 1/00 20240101ALI20241021BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20241021BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20241021BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20241021BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G05D1/46
G05D1/00
B64C13/20 Z
B64C39/02
B64D47/08
G08G5/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021526902
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024100
(87)【国際公開番号】W WO2020262222
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2019116133
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515253083
【氏名又は名称】株式会社CLUE
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】榊原 知也
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174002(JP,A)
【文献】特開2019-012527(JP,A)
【文献】特開平06-131593(JP,A)
【文献】特開2017-134690(JP,A)
【文献】特開2010-061372(JP,A)
【文献】特表2019-511044(JP,A)
【文献】特開2017-138162(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0135202(US,A1)
【文献】特開2019-114036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/87
B64U 10/00-80/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの操作によって飛行する飛行体の飛行を制御する飛行体の制御システムにおいて、
前記飛行体に搭載されて該飛行体から対象物の映像を取得する映像取得部と、
該映像取得部で取得した前記映像が表示される表示面を有する表示部と、
該表示部の前記表示面に表示された前記映像に重ね合わせられて前記表示面に表示されるカーソルを、前記飛行体の実位置に対応する初期位置に生成するカーソル生成モジュールと、
該カーソル生成モジュールで生成された前記カーソルを、前記ユーザによる前記表示面への接触点の移動に追従させて移動させるカーソル移動モジュールと、を備え、
前記カーソル生成モジュールは、前記ユーザによる前記表示面への接触がなされた際に、前記初期位置とは異なる、前記接触位置から所定の離間距離をおいた位置に前記カーソルを表示させ、
前記カーソル移動モジュールによって前記カーソルが移動されて該カーソルが位置決めされた目標位置に対応する実位置に前記飛行体を移動させることを特徴とする飛行体の制御システム。
【請求項2】
前記カーソルが前記目標位置に位置決めされた際に前記目標位置が前記表示面の中央部分に位置決めされることを特徴とする請求項1に記載の飛行体の制御システム。
【請求項3】
前記表示部は、
前記ユーザが前記表示面に接触することによって前記飛行体に対する操作の入力を受け付けるタッチパネル装置で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の飛行体の制御システム。
【請求項4】
前記カーソル移動モジュールは、
前記ユーザが前記表示面への接触を解除した際に前記カーソルが位置する前記映像上の任意の位置に前記カーソルを位置決めする、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の飛行体の制御システム。
【請求項5】
前記カーソル移動モジュールは、前記初期位置と、前記目標位置との映像上の距離を算出し、
前記映像上の距離と前記映像取得部のズームの状態に係る情報と前記飛行体の高度に係る高度情報とに基づいて、前記映像上の距離に対応する実空間での距離を推定する映像処理モジュールをさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の飛行体の制御システム。
【請求項6】
前記飛行体は、
前記対象物の上方において該対象物の水平方向に移動されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の飛行体の制御システム。
【請求項7】
前記対象物が建造物の屋根であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の飛行体の制御システム。
【請求項8】
ユーザの操作によって飛行する飛行体の飛行を制御する飛行体の制御システムにおいて、
前記飛行体に搭載されて該飛行体から対象物の映像を取得する映像取得部と、
該映像取得部で取得した前記映像が表示される表示面を有する表示部と、
前記映像上の、前記飛行体の実位置に対応する初期位置にカーソルを生成するカーソル生成モジュールであって、前記ユーザの操作が前記映像上にて行われた際に、当該操作にて指定された位置を基準とした所定の離間距離の位置に前記カーソルを生成するカーソル生成モジュールと、
前記所定の離間距離の位置から前記映像上の目標位置に前記カーソルを移動させるカーソル移動モジュールと、
少なくとも前記飛行体の高度及び前記映像に係るズーム情報に基づいて、前記初期位置に対応する実位置から前記目標位置に対応する実位置までの水平距離を推定する映像モジュールと、
前記初期位置に対応する実位置から前記目標位置に対応する実位置に向けて前記水平距離だけ水平移動させる制御信号を生成する制御信号生成モジュールと、
を備えることを特徴とする飛行体の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行体の制御システム、特に、ユーザの操作によって飛行する飛行体の飛行を制御する飛行体の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を高所から観察したり、上空から地上を空撮したり、あるいは立ち入りが困難な領域を観察したりする場合には、近年、複数のプロペラの回転によって飛行するいわゆるドローンあるいはマルチコプタといった飛行体が用いられることがある。
【0003】
特許文献1には、飛行体に搭載したカメラで対象物を撮像した画像から三次元の画像を生成することが開示され、特許文献2には、飛行体に搭載したカメラで下水管路を点検することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-10630公報
【文献】特開2016-218813公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような飛行体を操作するには、高度な操作技術が必要であることから、その習得は比較的困難であるところ、例えば、操作技術の未熟な者等が操作すれば、誤操作によって飛行体が想定しない挙動を起こすことも想定される。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な操作によって飛行体の飛行を制御することができる飛行体の制御システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するための、本開示に係る飛行体の制御システムは、ユーザの操作によって飛行する飛行体の飛行を制御する飛行体の制御システムにおいて、飛行体に搭載されて飛行体から対象物の映像を取得する映像取得部と、映像取得部で取得した映像が表示される表示面を有する表示部と、表示部の表示面に表示された映像に重ね合わせられて表示面に表示されるカーソルを生成するカーソル生成モジュールと、カーソル生成モジュールで生成されたカーソルを映像上の任意の位置に移動させるカーソル移動モジュールと、を備え、カーソル移動モジュールによってカーソルが移動されてカーソルが位置決めされた映像上の任意の位置に対応する実位置に飛行体を移動させることを特徴としている。
【0008】
この飛行体の制御システムによれば、表示部の表示面に表示された映像に重ね合わせられてカーソルが表示され、このカーソルを移動させることによって、飛行体を移動させることができることから、簡易な操作によって飛行体の飛行を制御することができる。したがって、誤操作による飛行体の想定しない挙動の発生を抑制することができる。
【0009】
この飛行体の制御システムは、カーソルが映像上の任意の位置に位置決めされた際に映像上の任意の位置が表示面の中央部分に位置決めされることを特徴としている。
【0010】
さらに、飛行体の制御システムの表示部は、ユーザが表示面に接触することによって飛行体に対する操作の入力を受け付けるタッチパネル装置で構成されることを特徴としている。
【0011】
しかも、飛行体の制御システムのカーソル生成モジュールは、表示面を介してユーザが接触する映像上の位置から離間した映像上の位置にカーソルを生成することを特徴としている。
【0012】
したがって、カーソルを映像上の位置に移動させて位置決めするに際して、表示面を介してユーザが映像上の位置に接触することによって位置決めをしようとする映像上の任意の位置が隠蔽されることがなく、カーソルを的確に映像上の任意の位置に位置決めすることができる。
【0013】
しかも、飛行体の制御システムのカーソル移動モジュールは、表示面を介してユーザが接触する映像上の位置を接触点とした場合にユーザが表示面に接触しながら接触点を変位させる際に接触点の変位に追従させてカーソルを映像上で移動させ、ユーザが表示面への接触を解除した際にカーソルが位置する映像上の任意の位置にカーソルを位置決めする、ことを特徴としている。
【0014】
さらに、飛行体は、対象物の上方において対象物の水平方向に移動されるものであってもよく、対象物が建造物の屋根であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、簡易な操作によって飛行体の飛行を制御することができることから、誤操作による飛行体の想定しない挙動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施の形態に係る飛行体の制御システムの概略を説明する図である。
図2】同じく、本実施の形態に係る飛行体のハードウェア構成を説明するブロック図である。
図3】同じく、本実施の形態に係る飛行体を操作する携帯型情報端末の構成の概略を説明するブロック図である。
図4】同じく、本実施の形態に係る飛行体を操作する携帯型情報端末の表示部の表示面の画面インターフェースの構成の概略を説明する図である。
図5】同じく、本実施の形態に係る飛行体を操作する携帯型情報端末の制御部のストレージに格納される制御プログラムの構成の概略を説明するブロック図である。
図6】同じく、本実施の形態に係る飛行体を操作する携帯型情報端末の制御部のストレージに格納される制御プログラムのカーソル生成モジュールの処理の概略を説明する図である。
図7】同じく、本実施の形態に係る飛行体を操作する携帯型情報端末の制御部のストレージに格納される制御プログラムのカーソル移動モジュールの処理の概略を説明する図である。
図8】同じく、本実施の形態に係る飛行体を操作する携帯型情報端末の制御部のストレージに格納される制御プログラムの映像処理モジュールの処理の概略を説明する図である。
図9】同じく、本実施の形態に係る飛行体を操作する携帯型情報端末の制御部のストレージに格納される制御プログラムの制御信号生成モジュールで生成された制御信号によって飛行体の飛行が制御される場合の概略を説明する図である。
図10】他の実施の形態に係る飛行体を操作する携帯型情報端末の制御部のストレージに格納される制御プログラムの処理の概略を説明する図である。
図11】他の実施の形態に係る飛行体の制御システムの概略を説明する図である。
図12】他の実施の形態に係る飛行体の制御システムの概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図1図12に基づいて、本開示の実施の形態に係る飛行体の制御システムについて説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る飛行体の制御システムの概略を説明する図である。図示のように、飛行体の制御システム1は、飛行体10、ユーザUの操作によって飛行体10の飛行を制御する携帯型情報端末20及び飛行体10とネットワークを介して相互に通信可能に接続されるサーバ40を備える。
【0019】
この飛行体の制御システム1は、本実施の形態では、対象物である建造物100の屋根101を撮像する飛行体10の飛行を制御するものであり、飛行体10が撮像した屋根101の画像は、例えば、屋根101の補修箇所の検出に用いられる。
【0020】
飛行体10は、本実施の形態では、機体11、機体11から放射状に形成される複数のアームの先端にそれぞれ配備されるモータ16及びモータ16に連結されるプロペラ17を備える、いわゆるドローンあるいはマルチコプタである。
【0021】
図2は、本実施の形態に係る飛行体10のハードウェア構成を説明するブロック図である。図示のように、飛行体10は、送受信部12、送受信部12と接続されるフライトコントローラ13、フライトコントローラ13を介して電力を供給するバッテリ14、フライトコントローラ13と接続されてプロペラ17を駆動するモータ16を制御する速度制御部(Electronic Speed Controller:ESC)15を備える。
【0022】
送受信部12は、例えば、情報端末、表示装置あるいは他の遠隔の制御器といった複数の外部機器からのデータを送受信するように構成された通信インターフェースであり、本実施の形態では、携帯型情報端末20からの制御信号を受信するとともに、サーバ40と各種のデータの送受信を行う。
【0023】
この送受信部12は、例えば、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)、ワイドエリアネットワーク(Wide Area Network:WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信等といった複数の通信網を利用することができる。
【0024】
さらに、送受信部12は、取得した各種のデータ、フライトコントローラ13が生成した処理結果、各種の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンド等の複数のデータの送受信を実行する。
【0025】
フライトコントローラ13は、プロセッサ13A、メモリ13B、及びセンサ類13Cを主要構成として備える。
【0026】
プロセッサ13Aは、本実施の形態では例えばCPU(Central Processing Unit)で構成され、フライトコントローラ13の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御や、プログラムの実行に必要な処理等を行う。
【0027】
メモリ13Bは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶装置、及びフラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶装置を備える。
【0028】
このメモリ13Bは、プロセッサ13Aの作業領域として使用される一方、フライトコントローラ13が実行可能であるロジック、コード、あるいはプログラム命令といった各種の設定情報等が格納される。
【0029】
さらに、このメモリ13Bに、センサ類13C等から取得したデータが直接的に伝達されて記憶されるように構成してもよい。
【0030】
センサ類13Cは、本実施の形態では、GPS衛星から電波を受信するGPSセンサ、大気圧を測定する気圧センサ、温度を測定する温度センサや加速度センサといった各種のセンサによって構成される。
【0031】
さらに、飛行体10は、機体11に固定されて飛行体10から建造物100の屋根101の映像を取得する映像取得部であるカメラ18を備える。このカメラ18は、屋根101を撮像して画像として取得する。
【0032】
図3は、本実施の形態に係る飛行体10を操作する携帯型情報端末20の構成の概略を説明するブロック図である。この携帯型情報端末20は、本実施の形態ではいわゆるタブレット状の小型のコンピュータによって実装され、図示のように、制御部21及び表示部であるタッチパネル部22を備える。なお、携帯型情報端末20は、上述したタブレット状の小型のコンピュータに限定されず、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、携帯ゲーム機等により実装されてもよい。また、他の実施形態においては、サーバ40が携帯型情報端末20の機能を有し、他のコンピュータやタブレット端末等のインターフェースを介してユーザUが情報を取得し、該インターフェースを介して操作する構成であってもよい。また、携帯型情報端末20は、飛行体10の飛行を制御するためのプロポが付随し、該プロポを制御するためのタブレットまたはコンピュータ等の端末装置であってもよい。
【0033】
制御部21は、プロセッサ21a、メモリ21b、ストレージ21c、送受信部21d、及び入出力部21eを主要構成として備え、これらが互いにバス21fを介して電気的に接続される。
【0034】
プロセッサ21aは、制御部21の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御や、プログラムの実行に必要な処理等を行う演算装置である。
【0035】
このプロセッサ21aは、本実施の形態では例えばCPU(Central Processing Unit)であり、後述するストレージ21cに格納されてメモリ21bに展開されたプログラムを実行して各処理を行う。
【0036】
メモリ21bは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶装置、及びフラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶装置を備える。
【0037】
このメモリ21bは、プロセッサ21aの作業領域として使用される一方、制御部21の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種の設定情報等が格納される。
【0038】
ストレージ21cは、プログラムや各種の処理に用いられる情報等が格納されている。本実施の形態では、飛行体10の飛行を制御する制御プログラムや、カメラ18で取得した屋根101の画像が格納される。
【0039】
制御プログラムの構成の詳細については、後述する。
【0040】
送受信部21dは、制御部21をインターネット網等のネットワークに接続するものであって、Bluetooth(登録商標)やBLE(Bluetooth Low Energy)といった近距離通信インターフェースを具備するものであってもよい。
【0041】
本実施の形態では、飛行体10の飛行を制御する制御信号が、この送受信部21dを介して飛行体10に送信される。
【0042】
入出力部21eは、入出力機器が接続されるインターフェースであって、本実施の形態では、タッチパネル部22が接続される。
【0043】
バス21fは、接続したプロセッサ21a、メモリ21b、ストレージ21c、送受信部21d及び入出力部21eの間において、例えばアドレス信号、データ信号及び各種の制御信号を伝達する。
【0044】
タッチパネル部22は、カメラ18で取得した映像や画像が表示される表示面22aを備える。この表示面22aは、本実施の形態では、表示面22aへの接触によって情報の入力を受け付けるものであって、抵抗膜方式や静電容量方式といった各種の技術によって実装される。
【0045】
図4は、表示面22aの画面インターフェースの構成の概略を説明する図である。図示のように、画面インターフェースIFは、ウインドウW、ツールバーT、及びコマンドC1~Cnによって構成される。
【0046】
ウインドウWには、本実施の形態では、カメラ18で取得した建造物100の屋根101の映像Mが表示される。このウインドウWにユーザUが例えば指で接触することによって、飛行体10に対する各種の操作が入力される。
【0047】
このウインドウWには、後述するカーソル生成モジュールによって生成されたカーソルPが、例えば飛行体10の実位置に対応する映像M上の任意の位置(例えば屋根101の頂部101a)に、映像Mと重ね合わせられて表示される。
【0048】
ツールバーTは、本実施の形態では、ウインドウWに表示される映像Mに各種の処理を実行するものであって、例えば「ホーム」、「ファイル」あるいは「編集」といった各種の機能によって構成される。
【0049】
コマンドC1~Cnは、本実施の形態では、飛行体10や飛行体10に搭載されたカメラ18の操作に関する各種の指令を入力するものであって、例えば飛行体10の「上昇」、「高度変更」、「着陸」あるいはカメラ18による「撮像」といった各種の指令を実行する複数の入力部によって構成される。
【0050】
図5は、携帯型情報端末20の制御部21のストレージ21cに格納される制御プログラム30の構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、制御プログラム30は、入力モジュール31、カーソル生成モジュール32、カーソル移動モジュール33、映像処理モジュール34及び制御信号生成モジュール35を備える。
【0051】
入力モジュール31は、本実施の形態では、ウインドウWにユーザUが接触して飛行体10に対する各種の操作が入力されたり、コマンドC1~Cnを介して各種の指令が入力されたりした際に、これらの入力に基づいてデータ処理を実行するモジュールである。
【0052】
図6は、カーソル生成モジュール32の処理の概略を説明する図である。図示のように、カーソル生成モジュール32は、ウインドウWに表示される映像Mに重ね合わせられてウインドウWに表示されるカーソルPを生成するモジュールである。
【0053】
生成されたカーソルPは、本実施の形態では、飛行体10の実位置に対応する映像M上の任意の位置(例えば屋根101の頂部101a)に、映像Mと重ね合わせられて表示される。
【0054】
このとき、ユーザUが指FでウインドウWを介して映像Mに接触すると、カーソル生成モジュール32は、ユーザUが映像Mに接触した接触点Sから任意の離間距離αをおいた映像M上の位置にカーソルPを生成する。
【0055】
この場合、ユーザUがウインドウWを介して映像Mに接触する位置によっては、飛行体10の実位置とカーソルPの映像M上の位置とが異なる場合があり、カーソルPが映像M上の任意の位置に位置決めされていない状態、すなわちカーソルPを映像M上の任意の位置に移動させることが可能な状態となる。
【0056】
図7は、カーソル移動モジュール33の処理の概略を説明する図である。図示のように、カーソル移動モジュール33は、カーソル生成モジュール32で生成されたカーソルPを映像M上の任意の位置に移動させるモジュールである。
【0057】
本実施の形態では、ユーザUが表示面22aに接触しながら接触点Sを変位させると、接触点Sから任意の離間距離αをおいた映像M上の位置である屋根101の頂部101aに生成されたカーソルPが、接触点Sの変位に追従して移動する。
【0058】
例えば、ユーザUがウインドウWに接触しながら矢線Aに沿って接触点Sを変位させると、屋根101の頂部101aに生成されたカーソルPが接触点Sの変位に追従して移動し、カーソルPが屋根101の角部101bに位置したときにユーザUがウインドウWへの接触を解除、すなわちウインドウWから指Fを離すと、カーソルPが屋根101の角部101bに位置決めされる。
【0059】
このように、カーソルPは接触点Sから離間距離αを介して移動されることから、例えばカーソルPを位置決めする目標点を屋根101の角部101bとする場合において、ユーザUの指Fによって目標点である屋根101の角部101bが隠蔽されることがなく、カーソルPを的確に目標点に位置決めすることができる。
【0060】
なお、図6および図7に示した例では、カーソル移動モジュール33は、カーソルPを、映像M上の初期位置から接触点Sの動きに離間距離αを介して追随して連続的に移動させるが、本実施形態はかかる例に限定されない。例えば、カーソル移動モジュール33は、カーソルPの初期位置とは異なる位置からカーソルPを移動させてもよい。具体的には、カーソル移動モジュール33は、表示面22aを介してユーザUが接触する映像上の任意の位置を接触点Sとし、接触点Sから離間距離α離れた位置にカーソルPを表示させてから、接触点Sの動きに追随してカーソルPを移動させてもよい。その際、映像上の任意の点にユーザUが接触するまでは、カーソルPを初期位置に表示してもよい。カーソルPと接触点Sとの離間距離αが所定の距離であれば、ユーザUにとって接触点Sの動きに伴うカーソルPの移動が容易となる。
【0061】
図8は、映像処理モジュール34の処理の概略を説明する図である。図示のように、映像処理モジュール34は、カーソルPが映像M上の任意の位置を目標点として位置決めされると、位置決めされた映像M上の任意の位置が表示面22aのウインドウWの中央部分に位置決めされる。
【0062】
本実施の形態では、屋根101の頂部101aに生成されたカーソルPが目標点である屋根101の角部101bに位置決めされると、この屋根101の角部101bが表示面22aの中央部分に位置決めされるように、表示面22aにおける映像Mの表示がスクロールされる。
【0063】
図5で示すように、制御信号生成モジュール35は、入力モジュール31を介して入力されたユーザUの操作や指令に基づいて、飛行体10等の操作に関する各種の制御信号を生成するモジュールである。
【0064】
例えば、コマンドC1~Cnを介して「カメラの角度調整」の指令が入力されると、カメラ18の角度を調整する制御信号が生成されて飛行体10に送信されて、カメラ18の角度が調整され、「撮像」の指令が入力されると、カメラ18で建造物100の屋根101を画像として撮像する制御信号が生成されて飛行体10に送信されて、カメラ18によって屋根101が撮像される。
【0065】
図9は、制御信号生成モジュール35で生成された制御信号によって飛行体10の飛行が制御される場合の概略を説明する図である。例えば、コマンドC1~Cnを介して「上昇」の指令が入力されると、図示のように、飛行体10を上昇させる制御信号が生成されて飛行体10に送信されて、飛行体10が建造物100の上方に上昇する。
【0066】
一方、ユーザUが指FでウインドウWを介して映像Mに接触してカーソルPを移動させてカーソルPを映像M上の任意の位置に位置決めすると、映像M上において位置決めされた任意の位置に対応する実位置に飛行体10を移動させる制御信号が生成されて飛行体10に送信されて、飛行体10が建造物100の上方において建造物100の水平方向Hに移動する。
【0067】
図1で示すように、サーバ40は、例えばデスクトップ型のコンピュータによって実装され、本実施の形態では、飛行体10のカメラ18が撮像する建造物100の屋根101の画像がそのストレージに格納される。
【0068】
次に、本実施の形態の飛行体の制御システム1によって飛行体10の飛行を制御する方法について説明する。
【0069】
まず、ユーザUが、携帯型情報端末20のタッチパネル部22の表示面22aの画面インターフェースIFのコマンドC1~Cnを介して「上昇」の指令を入力すると、図9で示すように、飛行体10が建造物100の上空に上昇する。
【0070】
飛行体10が建造物100の上空に上昇する際には、図4で示すように、飛行体10のカメラ18によって取得される映像Mが画面インターフェースIFのウインドウWに表示される。
【0071】
飛行体10が任意の高度(例えば30m)まで上昇してその高度でホバリング状態に移行すると、飛行体10の実位置に対応する映像M上の位置である屋根101の頂部101aに、カーソルPが生成される。
【0072】
続いて、図7で示すように、ユーザUがウインドウWを介して映像Mに接触してカーソルPを移動させて、目標点である屋根101の角部101bに位置決めする。
【0073】
このとき、カーソルPは接触点Sから離間距離αを介して移動することから、ユーザUの指Fによって屋根101の角部101bが隠蔽されることがなく、カーソルPを的確に目標点に位置決めすることができる。
【0074】
カーソルPを屋根101の角部101bに位置決めすると、図9で示すように、飛行体10が、屋根101の頂部101aから、映像M上の屋根101の角部101bに対応する実位置に向かって、建造物100の水平方向Hに移動する。
【0075】
一方、ユーザUがウインドウWを介して映像Mに接触してカーソルPを移動させて、屋根101の角部101bにカーソルPを位置決めすると、図8で示すように、屋根101の角部101bが表示面22aの中央部分に位置決めされるように、表示面22aにおける映像Mの表示がスクロールされる。
【0076】
続いて、ユーザUが、携帯型情報端末20のタッチパネル部22の表示面22aの画面インターフェースIFのコマンドC1~Cnを介して「撮像」の指令を入力すると、飛行体10のカメラ18が屋根101の角部101bを画像として撮像する。
【0077】
撮像した画像は、携帯型情報端末20のストレージ21cに格納されるとともに、サーバ40のストレージに格納され、爾後、屋根101の補修箇所の検出に用いられる。
【0078】
その後、ユーザUがウインドウWを介して映像Mに接触してカーソルPを移動させて、飛行体10が着陸可能な映像M上の任意の位置(例えば障害物のない地表面)にカーソルPを位置決めすると、飛行体10が、映像M上の地表面に対応する実位置に向かって、建造物100の水平方向Hに移動する。
【0079】
飛行体10が映像M上の地表面に対応する実位置に移動した後、ユーザUが、携帯型情報端末20のタッチパネル部22の表示面22aの画面インターフェースIFのコマンドC1~Cnを介して「着陸」の指令を入力すると、飛行体10が下降して地表面に着陸する。
【0080】
このように、本実施の形態の飛行体の制御システム1によれば、携帯型情報端末20のタッチパネル部22の表示面22aの画面インターフェースIFのウインドウWに表示された映像Mに重ね合わせられてカーソルPが表示され、このカーソルPを移動させることによって、飛行体10を移動させることができる。
【0081】
したがって、簡易な操作によって飛行体10の飛行を制御することができることから、誤操作による飛行体10の想定しない挙動の発生を抑制することができる。
【0082】
しかも、カーソルPは、表示面22aの画面インターフェースIFのウインドウWを介してユーザUが指Fで接触する映像M上の任意の位置から離間距離αを介した映像M上の位置に生成されることから、カーソルPを目標点である映像M上の任意の位置に移動させて位置決めするに際して、ユーザUの指Fによって映像M上の任意の位置が隠蔽されることがなく、カーソルPを的確に目標点に位置決めすることができる。
【0083】
<他の実施形態>
次に、本開示の他の実施形態について説明する。本実施形態では、カーソル生成モジュール32により生成されたカーソルPの初期位置とカーソル処理モジュール33により決定されたカーソルPの位置との映像上の距離が算出され、飛行体10の高度やカメラ18のズームの状態に係る情報とに基づいて、上記の映像上の距離に対応する実空間での距離が推定される。これにより、飛行体10は、映像M上の地表面に対応する実位置に向かって建造物100の水平方向へ、より正確に移動することが可能である。以下、本実施形態の一例について説明する。
【0084】
図10は、本開示の他の実施形態に係る処理の概略を説明する図である。図示する映像Mには、飛行体10の高度を示す高度情報ボックスHが重畳されて表示されている。また、映像Mには、カメラ18のズーム倍率を示すズーム情報オブジェクトZが表示されている。なお、係るズーム情報オブジェクトZは、カメラ18のズーム倍率を調整するためのコマンドであってもよい。
【0085】
例えば、カーソルPが屋根101の角部101bに位置決めされると、カーソル移動モジュール33は、カーソル生成モジュール32で生成されたカーソルPの初期位置(図10では映像Mに表示されている屋根101の頂部101aに相当する位置)と、位置決めされたカーソルPの位置(図10では映像Mに表示されている屋根101の角部101bに相当する位置)との映像M上の距離を算出する。映像M上の距離の算出方法については特に限定されない。
【0086】
映像処理モジュール34は、上記の映像M上の距離と、飛行体10の高度およびカメラ18のズーム情報の少なくともいずれかに基づいて、上記の映像M上の距離に対応する実空間の距離が推定される。ここでいう実空間の距離とは、飛行体10の移動すべき水平距離である。
【0087】
そして制御信号生成モジュール35は、推定された実空間の距離に係る制御信号を生成し、飛行体10に送信する。飛行体10は、かかる制御信号を受けて、映像M上において位置決めされた任意の位置に対応する実位置に向かって、建造物100の水平方向Hに移動する。
【0088】
飛行体10の移動距離は、推定された実空間の距離である。実空間の距離は、飛行体10の高度やカメラ18のズーム情報に基づいて推定される。映像Mに表示される屋根101の大きさは、飛行体10の高度やカメラ18のズーム調整によって変化する。そうすると、映像M上におけるカーソルPの初期位置と目標位置との距離と、実空間の距離との対応関係も変化する。
【0089】
そこで、実空間の距離を飛行体10の高度やカメラ18のズーム情報に基づいて推定することにより、飛行体10の高度やカメラ18のズームの状態にかかわらず、飛行体10をより正確に移動させることができる。
【0090】
なお、本開示は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。上記実施の形態では、飛行体の制御システム1がサーバ40を備える場合を説明したが、サーバ40を配備しないで飛行体の制御システム1を構築することもできる。他にも、飛行体10と携帯型情報端末20とが直接通信することによって飛行体の制御システム1が構築されてもよい。この場合、例えばサーバ40の機能は、携帯型情報端末20により実現されてもよい。また、図11および図12は、他の実施の形態に係る飛行体の制御システムの概略を説明する図である。例えば、図11に示すように、他の実施形態に係る飛行体の制御システム1では、飛行体10と携帯型情報端末20とが直接通信し、携帯型情報端末20とサーバ40とが直接通信を行うような構成であってもよい。この場合、サーバ40は、携帯型情報端末20を介して飛行体10と通信する。また、図12に示すように、他の実施形態に係る飛行体の制御システム1では、携帯型情報端末20とサーバ40とが直接通信し、サーバ40と飛行体10とが直接通信する構成であってもよい。この場合、携帯型情報端末20は、サーバ40を介して飛行体10と通信する。
【0091】
上記実施の形態では、対象物が建造物100の屋根101である場合を説明したが、樹木や任意の地表面であってもよく、更には、一時的に停止している自動車や動物といった物体であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 飛行体の制御システム
10 飛行体
13 フライトコントローラ
18 カメラ(映像取得部)
20 携帯型情報端末
21 制御部
22 タッチパネル部(表示部)
22a 表示面
30 制御プログラム
32 カーソル生成モジュール
33 カーソル移動モジュール
34 映像処理モジュール
35 制御信号生成モジュール
100 建造物
101 屋根(対象物)
101a 頂部
101b 角部
C1~Cn コマンド
F 指
M 映像
P カーソル
S 接触点
U ユーザ
W ウインドウ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12