(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】3次元自動細胞培養装置
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20241021BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 C
(21)【出願番号】P 2023065071
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2021516342の分割
【原出願日】2019-05-13
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】10-2018-0057885
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520457236
【氏名又は名称】ダナグリーン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DANAGREEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Rm.201, 116-1, Dogu-ro, Seocho-gu, Seoul 06570 Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジュ スンヨン
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-154579(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養足場を入れ、細胞を培養する細胞培養空間と、第1隔壁により前記細胞培養空間と区画形成されかつ前記細胞培養空間を取り囲むように設けられ、培養液を注入、貯留する培養液貯留空間と、前記第1隔壁に形成され、前記培養液貯留空間と前記細胞培養空間を連通させる排出口とを有する第1本体であって、前記培養液貯留空間の下端部は、排出口を中心にV字谷状をなすように形成され、前記排出口は、前記細胞培養空間の底部と接触しながら前記第1隔壁の下部に形成された第1本体と、
前記第1隔壁に設置され、サイフォン作用により細胞培養空間の培養液を外部に排出する連通管であって、前記連通管の一端は曲げ形成し、前記連通管の曲げ形成した端の最下部は、前記第1隔壁における前記排出口より高い位置に形成され
、前記連通管の他端は、前記曲げ形成した端より低い位置に配置された連通管と、
前記連通管を介して排出される培養液を回収し、外部に排出する培養液回収空間と、第2隔壁により前記培養液回収空間と区画形成され、外部から細胞を観察することができる細胞観察空間とを有する、前記第1本体の下部に配置された第2本体と、を備える三次元自動細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元自動細胞培養装置に関する。より詳細には、皮膚、肝臓、心臓などの人工臓器として培養可能な細胞に培養液を自動的に供給して培養するための3次元自動細胞培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞を培養するための一つの方法は、細胞培養皿(Cell Culture Dish)に細胞(Seeding Cells)を播種し、適量の培養液(Media/Medium)を注入して培養することである。
【0003】
しかし、細胞の長期培養と継続的な観察を行うためには、培養液を数回交換しなければならない煩わしさがある。さらに、培養液を交換している間に、培養中の細胞(Culture Cell)が外に出て汚染される可能性も高くなり、その改善が求められている。
【0004】
一方、一般に公開されているか、あるいは、すでに広く使用されている自動細胞培養装置は、例えば、機器装置の問題の一つである内部の湿気による故障が多く、メンテナンスコストが高くなる可能性がある。
【0005】
したがって、これまで知られている限りでは、機器装置を用いた自動細胞培養は、未だに困難である。つまり、細胞を用いて皮膚、肝臓、心臓などの人工臓器を作製するには、細胞を長期培養する必要があるため、安定かつ効率的に細胞を培養することができる装置が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術では解決できなかったいくつかの問題を同時に改善することにより、細胞に培養液を自動的に供給し、長期間継続的に培養し、観察することができるようにするためのものである。
【0007】
本発明の目的は、皮膚、肝臓、心臓などの人工臓器として培養可能な細胞に培養液を自動的に供給することにより、長期間、容易に培養することができ、かつ、継続的な観察ができるようにした3次元自動細胞培養装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養は、細胞培養足場(Scaffold)を入れ、細胞を培養する細胞培養空間と、第1隔壁により前記細胞培養空間と区画形成されかつ前記細胞培養空間を取り囲むように設けられ、培養液(Media/Medium)を注入、貯留する培養液貯留空間と、前記第1隔壁に形成され、前記培養液貯留空間と前記細胞培養空間を連通させる排出口とを有する、透明素材の第1本体と、
前記第1隔壁に設置され、サイフォン作用により細胞培養空間の培養液を外部に排出する連通管と、
前記連通管を介して排出される培養液を回収し、外部に排出する培養液回収空間と、第2隔壁により前記培養液回収空間と区画形成され、外部から細胞(Culture Cell)を観察することができる細胞観察空間とを有する、前記第1本体の下部に配置された透明素材の第2本体と、を備えることができる。
【0009】
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置において、前記第1、2本体は、一体に構成されるか、または分解・組立可能に構成され、かつ、第1本体と一体に構成された第2本体の下部に培養液を排出するための排出ポート(Drain Port)を形成してもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置において、前記培養液貯留空間の下端部は、横断面を斜め方向に形成してもよく、排出口を中心にV字谷状をなすように形成してもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置において、前記第1、2本体は、横断面が多角形または円形であり、さらに、第1、2本体の中心部側に横断面が多角形または円形である第1、2隔壁を配置してもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置において、前記排出口と連通管は、対向配置してもよく、互いに交差する方向に配置してもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置において、前記細胞培養空間を開閉する第1蓋と、培養液貯留空間を開閉する第2蓋とを備えてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置において、前記第1、2蓋は、細胞培養空間と培養液貯留空間とが密封できるように、内側に密封パッドを備えてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置において、前記培養液貯留空間に培養液を供給するプロセス、および、細胞培養空間に足場と細胞を入れるプロセスは、クリーンベンチ(Clean bench)で行うことができる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置において、前記細胞培養空間の培養液は、前記細胞培養空間の培養液が前記連通管の最大水位まで満たされると、サイフォン作用により前記連通管を介して排出できる。
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置において、前記第1本体と前記第2本体は、透明材料であってもよい。
本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置において、前記連通管の一端の最下部は、前記第1隔壁における前記排出口より高い位置に形成してもよい。
これらの解決手段は、添付の図面に基づく以下の発明を実施するための具体的な内容から、より明らかになるであろう。
【0017】
本明細書および請求の範囲で用いられる用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最良の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味と概念に解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、第1隔壁により区画され、細胞培養空間と分離形成された培養液貯留空間、連通管および培養液回収空間を介して無動力の一方向流(One-way flow)で培養液を繰り返して自動供給することができ、細胞の長期培養が可能である。
【0019】
また、第2の隔壁により区画され、培養液回収空間と分離形成された細胞観察空間を介して細胞を継続的に観察することができ、細胞の特定部位の生長や移動形態などを撮影する外部装置との互換が容易である。したがって、細胞を用いて、例えば、皮膚、肝臓、心臓などの人工臓器を容易に培養することができる点で有効である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置の内部を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置の断面を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置を用いた細胞培養プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の特定の観点や技術的特徴は、添付の図面に関連する以下の具体的な内容と実施形態から、より明らかになるであろう。各図面の構成要素に参照符号を付すにあたり、同一の構成要素には、他の図面上に表示されても、できるだけ同一の符号を有するようにしていることに留意すべきである本発明の実施形態の説明において、関連する公知の構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨を不明確にする恐れがあると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0022】
また、本発明の構成要素の説明において、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を用いることができる。これらの用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により当該構成要素の本質や順番・順序などは限定されない。ある構成要素が他の構成要素に「結合」または「接続」されると記載されている場合、その構成要素は、他の構成要素に直接に「結合」または「接続」されてもよいが、各構成要素の間に別の構成要素が「結合」または「接続」されてもよいと理解されるべきである。
【0023】
以下、本発明の一実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明すると、次の通りである。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1の内部の断面図であり、第1隔壁12により区画され互いに分離形成された細胞培養空間11と培養液貯留空間13とが第1本体10の内部に設けられ、かつ、第2隔壁32により区画され互いに分離形成された培養液回収空間31と細胞観察空間33とが第2本体30の内部に設けられ、かつ、前記第1隔壁12に連通管20が設置された結合関係を示す。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1の斜視図であり、第1、2本体10、30が一体に構成され、かつ、前記第1本体10の内部に培養液貯留空間13の下端部13aが排出口14を中心にV字谷状をなすように形成され、かつ、前記第2本体30に排出ポート30aが形成された結合関係を示す。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1の断面の斜視図であり、第1隔壁12により区画され互いに分離形成された細胞培養空間11と培養液貯留空間13とが第1本体10の内部に設けられ、かつ、記第1本体10の上部に細胞培養空間11と培養液貯留空間13とを開閉するための第1、2蓋40、41が設置され、かつ、第2隔壁32により互いに区画形成された培養液回収空間31と細胞観察空間33とが第2本体30の内部に設けられ、かつ、前記第1隔壁12に連通管20が設置された結合関係を示す。
【0027】
図4は、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1の分解斜視図であり、第1、2本体10、30が分解・組立可能に構成され、かつ、前記第1本体10の上部に第1、2蓋40、41が設置された結合関係を示す。
【0028】
図1~4に示すように、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1は、細胞培養足場2を入れ、細胞を培養する細胞培養空間11が内部に独立して設けられ、かつ、培地、メディア(Media)またはメディウム(Medium)に解釈可能な培養液を注入、貯留する培養液貯留空間13が独立して設けられた第1本体10を備える。
【0029】
すなわち、前記第1本体10は、内部に互いに分離された細胞培養空間11と、これを取り巻く培養液貯留空間13とが設けられるが、これは、第1隔壁12により前記細胞培養空間11と培養液貯留空間13とを区画形成することで、容易に実施することができる。
【0030】
ここで、細胞培養空間11は、例えば、アガロース(Agarose)組成物や高分子物質を用いてゲル状に作製した足場2を外部から入れることができるように、上部に開口部10aを形成する。前記開口部10aを介して入れられた足場2は、細胞培養空間11の底部11aに置かれる。
【0031】
また、培養液貯留空間13は、外部から培養液を注入することができるように、注入部10bを上部に形成するが、前記注入部10bは、前記培養液貯留空間13の上部に形成することに限定されず、培養液の容易な注入が可能であれば、側面に形成してもよい。
【0032】
培養液貯留空間13の下端部13aは、前記培養液貯留空間13に注入された培養液がすべて細胞培養空間11に排出されるように、横断面を斜め方向に形成してもよく、排出口14を中心にV字谷状をなすように形成してもよい。
【0033】
前記第1隔壁12は、細胞培養空間11と培養液貯留空間13とを区画し、互いに分離させるための一種の仕切りであって、足場2が置かれる底部11aから上部方向に形成し、かつ、側面に前記細胞培養空間11と培養液貯留空間13を連通させ、培養液が足場2に播種された細胞に供給されるように排出口14を形成する。
【0034】
前記第1隔壁12により互いに分離された細胞培養空間11と培養液貯留空間13とが内部に設けられる第1本体10は、横断面が多角形または円形であってもよく、さらに、中心部側に横断面が多角形または円形である第1隔壁12を配置してもよい。
【0035】
本発明の一実施形態においては、横断面が長方形である第1本体10の中心部側に横断面が長方形である第1隔壁12が配置され、かつ、底部11aに当接するように、第1隔壁12の下部に排出口14が形成されていることを示す。
【0036】
ここで、第1本体10は、例えば、透明プラスチックや強化ガラスなどの透明素材であってもよく、これを介して、細胞培養プロセスを外部から容易に観察することができる。また、第1本体10の細胞培養プロセスを観察するための一部分だけを透明素材としてもよい。
【0037】
一方、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1は、第1隔壁12に設置され、サイフォン作用により細胞培養空間11の培養液を外部に排出する連通管20と、前記連通管20を介して排出される培養液を回収し、外部に排出する培養液回収空間31と、外部から細胞を観察することができる細胞観察空間33とが内部に独立して設けられ、第1本体10の下部に配置された第2本体30を備える。
【0038】
すなわち、前記第2本体30は、第1本体10と同様に、内部に互いに分離された培養液回収空間31と、細胞観察空間33とが設けられるが、これは、第2隔壁32により、前記細胞観察空間33と、これを取り巻く培養液回収空間31とを区画形成することにより、容易に実施することができる。
【0039】
前記第2隔壁32は、細胞培養空間11の底部11aから下部方向に延びるように形成され、これにより、細胞観察空間33を介する細胞の観察が容易である。つまり、前記第2隔壁32により細胞観察空間33が外部に開放されており、細胞の特定部位の生長や移動形態などを撮影する外部装置との互換が容易であるため、細胞を継続的に観察することができる。
【0040】
前記第2隔壁32により細胞観察空間33と、これを取り巻く培養液回収空間31が内部に独立して設けられた第2本体30は、横断面が多角形または円形であり、さらに、第1、2本体10、30の中心部側に横断面が多角形または円形である第2隔壁32を配置してもよい。
本発明の一実施形態においては、横断面が長方形である第2本体30の中心部側に横断面が長方形である第2隔壁32が配置されていることを示す。
【0041】
ここで、第2本体30は、第1本体10と同様に、例えば、透明プラスチックや強化ガラスなどの透明素材であってもよく、これを介して、細胞培養プロセスを外部から容易に観察することができる。また、第2本体30の細胞培養プロセスを観察するための一部分だけを透明素材としてもよく、さらに前記第2本体30は、前記第1本体10と一体に構成してもよく、分解・組立可能に構成してもよい。
【0042】
また、第1、2本体10、30が一体に構成された3次元自動細胞培養装置1は、第2本体30の下部に、培養液を外部に排出するための排出ポート30aを形成して提供される。
【0043】
前記連通管20は、サイフォン作用により細胞培養空間11の培養液を培養液回収空間31に排出することができるように、第1隔壁12に設置する。ここで、連通管20は、排出口14と対向配置してもよく、互いに交差する方向に配置してもよい。または、第1隔壁12と一体的に形成してもよい。
【0044】
すなわち、連通管20の一端は、曲げ形成し細胞培養空間11の底部11aの上部に配置し、連通管20の他端は、それより低い位置にある培養液回収空間31の上部に配置されるように図面上の排出口14の反対側の第1隔壁12に設置することで、高い方の液面に働く大気圧のため液体が管内に押し上げられることによって起こるサイフォン作用により前記細胞培養空間11の培養液が培養液回収空間31に排出される。
【0045】
したがって、本発明の一実施形態によれば、細胞培養空間11に供給された培養液は、連通管20の最大水位まで満たされると、サイフォン作用により前記連通管20を介して培養液回収空間31に排出される。そして、前記培養液回収空間31に回収された培養液は、第1本体10から第2本体30を分離するか、または、排出ポート30aを介して最終的に3次元自動細胞培養装置1の外部に排出される。
【0046】
以下、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置を用いた細胞培養プロセスを具体的に説明すると、次の通りである。
【0047】
図5は、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1を用いた細胞培養プロセスの断面図であり、第1隔壁12により培養液貯留空間13と区画形成され互いに分離された細胞培養空間11に足場2と細胞が入れられ、前記培養液貯留空間13に注入された培養液が排出口14を介して細胞培養空間11に供給された後、サイフォン作用により連通管20を介して培養液回収空間31に回収されるプロセスを示す。
【0048】
すなわち、
図5に示すように、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1を用いた細胞培養プロセスは、まず、注入部10bを介して培養液貯留空間13に培養液を注入して満たした後、前記注入部10bに第2蓋41を結合して培養液貯留空間13を密閉する。そして、開口部10aを介して細胞培養空間11に足場2と細胞を入れ、適量の培養液を注入した後、前記開口部10aに第1蓋40を結合して前記細胞培養空間11を密閉する。
【0049】
したがって、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1は、細胞培養空間11を開閉する第1蓋40と培養液貯留空間13を開閉する第2蓋41をさらに備える。また、第1、2蓋40、41は、細胞培養空間11と培養液貯留空間13とが密封できるように内側に密封パッド42を備えてよい。
【0050】
ここで、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1を用いた細胞培養プロセス、すなわち、培養液貯留空間13に培養液を注入するプロセス、および、細胞培養空間11に足場2と細胞を入れるプロセスは、クリーンベンチ(Clean bench)で行うことができる。
【0051】
一方、培養液貯留空間13に培養液を注入した後、3~4日後には、第2蓋41を介して注入部10bを一部開放し、培養液が排出口14に流れ出るようにする。ここで、培養液が連通管20の最大水位まで満たされると、第2蓋41を完全にロックして培養液貯留空間13を密閉する。
【0052】
培養液が連通管20の最大水位まで満たされると、サイフォン作用により細胞培養空間11の培養液が培養液回収空間31に排出される。具体的には、培養液が連通管20の最大水位まで満たされると、培養液が連通管20の最大水位(高さ)に到達することで、培養液の圧力が重力の方向と同じになり、これにより、培養液が培養液回収空間31に排出される。
連通管20を介して培養液が排出され、連通管20の一端の最下部より細胞培養空間11における培養液の水位が低くなると、培養液の排出が停止する。
【0053】
以後、第2蓋41を介して注入部10bを再び一部開放し、細胞培養空間11に培養液が満たされると、前記第2蓋41をロックして培養液貯留空間13を再び密閉し、培養液が連通管20の最大水位まで再び満たされると、サイフォン作用により細胞培養空間11の培養液を培養液回収空間31に再び排出できるようになる。
【0054】
ここで、連通管20の一端の最下部は、底部11aの上部に配置し、かつ、第1隔壁12における排出口14より高い位置に形成することが好ましい。上述したように、細胞培養空間11における培養液の水位が連通管20の一端の最下部より低くなると、サイフォン作用が停止する。
【0055】
このとき、排出口14が連通管20の一端の最下部より高い位置に形成されると、細胞培養空間11における培養液の水位が連通管20の一端の最下部より低くなることなく、継続して培養液が排出できる。したがって、培養液の排出、停止、再排出の一連のプロセスを繰り返すためには、連通管20の一端の最下部を第1隔壁12における排出口14より高い位置に形成することが好ましい。
【0056】
このような一連のプロセスから見た、本発明の一実施形態に係る3次元自動細胞培養装置1は、無動力の一方向流(One-way flow)で循環させ、長期間、細胞に培養液を供給することができ、細胞の長期培養が可能である。
【0057】
また、培養液回収空間31に回収され培養液が満たされると、これを外部に排出した後、培養液貯留空間13に培養液を再び満たして細胞に供給することができ、かつ、これを繰り返して行うことができるため、例えば、30~60日間、細胞の培養が可能である。
【0058】
したがって、本発明の一実施形態によれば、細胞の長期培養を要する、例えば、皮膚、肝臓、心臓などの人工臓器を容易に培養することができる点で有効である。
【0059】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは、本発明を具体的に説明するためのものに過ぎず、本発明に係る3次元自動細胞培養装置を限定するものではない。なお、上記の「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、特に反対の記載がない限り、当該構成要素が存在し得ることを意味するだけであり、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるものと解釈されるべきである。さらに、技術的または科学的な用語を含むすべての用語は、他に定義されない限り、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されているものと同じ意味を持つ。
【0060】
また、以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で、様々な修正や変形が可能である。したがって、本発明に開示された一実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような一実施形態により本発明の技術思想の範囲は限定されない。本発明の保護範囲は、以下の請求範囲により解釈されるべきであり、その同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。