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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】高信頼性物理的複製困難関数技術
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/10 20060101AFI20241021BHJP
   G11C 13/00 20060101ALI20241021BHJP
   H10B 43/30 20230101ALI20241021BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241021BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20241021BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H04L9/10 Z
G11C13/00 215
H10B43/30
H01L29/78 371
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023065793
(22)【出願日】2023-04-13
(65)【公開番号】P2023181084
(43)【公開日】2023-12-21
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070009
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517154199
【氏名又は名称】インハ ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】INHA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】パク・ジンウ
【審査官】金沢 史明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/212689(WO,A1)
【文献】米国特許第10803942(US,B1)
【文献】KIM, Dayoung et al.,Selected Bit-Line Current PUF: Implementation of Hardware Security Primitive Based on a Memristor Crossbar Array,IEEE Access [online],2021年,Volume 9,pp. 120901-120910,[2024年5月22日検索], インターネット<URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/9524627>,<DOI: 10.1109/ACCESS.2021.3108534>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/10, 9/32
G11C 13/00
G06F 21/75
H10B 43/30
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネリング基盤のメモリ素子であって、
下部電極(Bottom electrode)上にAl である伝導層が積層され、
前記伝導層上にTiOxである酸化物層が積層され、
前記酸化物層上に上部電極(Top electrode)が積層され、
メモリスタクロスバーアレイの構造を備え、
前記メモリスタクロスバーアレイは、ALD(Atomic Layer Deposition)によるAl 蒸着時のサイクル回数とTiOx蒸着時のスパッタリングO 流量が、i)10cyclesおよび0.8sccm、またはii)14cyclesおよび0.8sccmである条件下で製造されたものであり、
前記メモリスタクロスバーアレイは、ハードウェアの予測することができない物理的複製困難関数(Physically Unclonable Function:PUF)をメモリ半導体アレイで構成するとき、前記伝導層と前記酸化物層とのトンネリングメカニズムによる外部環境変数である温度に独立的な電流-電圧特性を有し、
前記トンネリング基盤のメモリ素子は、
前記トンネリング基盤のメモリ素子の物理的複製防止のために、
トンネリング基盤の前記メモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子を利用して物理的複製困難関数を構成するためにチャレンジを印加し、
前記印加されたチャレンジを利用して電圧-電流特性によるレスポンスを抽出し、
予め登録されたレスポンスと前記抽出されたレスポンスとの確認による認証を実行し、
チャレンジ-レスポンスペアを形成するために、前記メモリスタクロスバーアレイの各ワードライン(wordline)にチャレンジのデジタル信号に該当する電圧を印加することでメモリスタ素子の伝導度とベクトル、行列乗算によって各ビットライン(bitline)に電流が流れるようにし、全体ビットラインから選択された半分のビットラインに流れる電流を加え、選択されなかった半分のビットラインに流れる電流を加えてそれぞれ互いに異なるレジスタに記録するように構成される、
トンネリング基盤のメモリ素子。
【請求項2】
前記伝導層の厚さを調節してトンネリング基盤の伝導メカニズムとして動作するステック構造を備える、
請求項1に記載のトンネリング基盤のメモリ素子。
【請求項3】
前記トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子は、温度に独立的な電流-電圧特性を有することにより、物理的複製困難関数のための保安認証過程でエラーが発生しないようにするBER(Bit-Error Rate)を減少させる、
請求項1に記載のトンネリング基盤のメモリ素子。
【請求項4】
トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子を利用して物理的複製防止関数を構成するためにチャレンジを印加する段階、
前記印加されたチャレンジを利用して電圧-電流特性によるレスポンスを抽出する段階、および
予め登録されたレスポンスと前記抽出されたレスポンスとの確認によって認証を行う段階
含み、
前記メモリスタクロスバーアレイは、
下部電極(Bottom electrode)上にAl である伝導層が積層され、前記伝導層上にTiOxである酸化物層が積層され、前記酸化物層上に上部電極(Top electrode)が積層され、ALD(Atomic Layer Deposition)によるAl 蒸着時のサイクル回数とTiOx蒸着時のスパッタリングO 流量が、i)10cyclesおよび0.8sccm、またはii)14cyclesおよび0.8sccmである条件下で製造されたものであり、
前記トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子を利用して物理的複製防止関数を構成するためにチャレンジを印加する段階は、
チャレンジ-レスポンスペアを形成するために、前記メモリスタクロスバーアレイの各ワードライン(wordline)にチャレンジのデジタル信号に該当する電圧を印加することでメモリスタ素子の伝導度とベクトル、行列乗算によって各ビットライン(bitline)に電流が流れるようにし、全体ビットラインから選択された半分のビットラインに流れる電流を加え、選択されなかった半分のビットラインに流れる電流を加えてそれぞれ互いに異なるレジスタに記録する、
物理的複製防止方法。
【請求項5】
前記トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子は、メモリスタクロスバーアレイの構造を備え、ハードウェアの予測することができない物理的複製困難関数(Physically Unclonable Function:PUF)をメモリ半導体アレイで構成するとき、トンネリングメカニズムによる外部環境変数である温度に独立的な電流-電圧特性を有することにより、物理的複製困難関数のための保安認証過程でエラーが発生しないようにするBER(Bit-Error Rate)を減少させる、
請求項4に記載の物理的複製防止方法。
【請求項6】
前記印加されたチャレンジを利用して電圧-電流特性によるレスポンスを抽出する段階は、
前記選択されなかったワードラインとビットラインはフローティング(floating)またはグラウンド(ground)に連結され、選択されなかった半分のビットラインに流れる電流を加える場合、選択された残りのビットラインはビットラインまたはグラウンドに連結され、
互いに異なるレジスタに記録された電流は電圧に換算され、比較器によって大小の比較を判断した後、0または1の1-bitレスポンスを生成する、
請求項4に記載の物理的複製防止方法。
【請求項7】
前記予め登録されたレスポンスと前記抽出されたレスポンスとの確認によって認証を行う段階は、
メモリ半導体素子の駆動原理によって電圧-電流特性が決定され、製造上の工程偏差および素子間偏差により、同じ電圧が印加されたとしても同じ量の電流が流れる特徴を固有のレスポンスに活用して保安機能を実現する、
請求項4に記載の物理的複製防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高信頼性物理的複製防止方法およびメモリアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンの大衆化に伴うユビキタス化によって情報が相互連結するようになりながら、敏感な情報や作業を処理する保安および認証などの分野ではソフトウェア保安方式によって暗号化を実現してきた。しかし、IoT環境の拡散によってハッキングの危険性が高まりを見せ、個人情報の漏洩のように多くの保安事故が起こるようになりながら、安全な保安に対する要求が高まるようになった。
【0003】
ディープラーニングやマシンラーニングなどの人工知能によってサーバに記録されたデータを予測できないようにするために、ハードウェア的に予測することができない製造工程偏差や本質的特性などを活用する物理的複製困難関数(Physically Unclonable Function:PUF)の研究が活発に行われている。特に、メモリ半導体アレイを活用したPUFの場合は、高い集積度と保安鍵の書き直しの可能性のために、近年は活発に研究がなされている。
【0004】
メモリ素子の電圧-電流特性が素子間の散布および工程散布によってすべて異なる値を有し、隣接するメモリ素子の電流大小関係の予測は不可能であるということが、メモリアレイ基盤のPUFの核心的な動作原理である。しかし、メモリ素子の電流-電圧関係が温度に大きく影響を受けるようになれば電流大小関係は逆転するようになり、これによって保安認証過程でエラーが発生することがある。通常はこのようなエラーをBER(Bit-Error Rate)と言うが、高信頼性のPUF動作のためには、理想的にはこのBERが0でなければならない。本発明では、0に近いBER動作を行うPUFを実現するために、温度に独立的な電流-電圧特性を有するトンネリング基盤のメモリ素子、アレイで実現されるPUF技術を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0075722号公報(2021年8月20日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が達成しようとする技術的課題は、変化する外部環境要素である温度に対して脆弱なダイオードやトランジスタのような能動素子だけでなく、自由キャリアの伝導メカニズムが温度に影響を受ける素子のビットエラー率に対する誤差を大きく減らし、メモリアレイの並列演算とともに極めて信頼性のある動作実行を保障することができる、トンネリング基盤のメモリ半導体アレイ基盤の高信頼性物理的複製防止技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面において、本発明で提案するトンネリング基盤のメモリ素子は、下部電極(Bottom electrode)上に伝導層(例えば、Al)が積層され、前記伝導層上に酸化物層(例えば、TiOx)が積層され、前記酸化物層上に上部電極(Top electrode)が積層され、メモリスタクロスバーアレイの構造を備え、ハードウェアの予測することができない物理的複製困難関数(Physically Unclonable Function:PUF)をメモリ半導体アレイで構成するとき、トンネリングメカニズムによる外部環境変数である温度に独立的な電流-電圧特性を有する。
【0008】
前記伝導層の厚さを調節してトンネリング基盤の伝導メカニズムとして動作するステック構造を備える。
【0009】
前記トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子は、温度に独立的な電流-電圧特性を有することにより、物理的複製困難関数のための保安認証過程でエラーが発生しないようにするBER(Bit-Error Rate)を減少させる。
【0010】
また他の側面において、本発明で提案するトンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子の物理的複製防止方法は、トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子を利用して物理的複製防止関数を構成するためのチャレンジを印加する段階、前記印加されたチャレンジを利用して電圧-電流特性によるレスポンスを抽出する段階、および予め登録されたレスポンスと前記抽出されたレスポンスとの確認によって認証を行う段階を含む。
【0011】
前記トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子は、メモリスタクロスバーアレイの構造を備え、ハードウェアの予測することができない物理的複製困難関数(Physically Unclonable Function:PUF)をメモリ半導体アレイで構成するとき、トンネリングメカニズムによる外部環境変数である温度に独立的な電流-電圧特性を有することにより、物理的複製困難関数のための保安認証過程でエラーが発生しないようにするBER(Bit-Error Rate)を減少させる。
【0012】
前記トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子を利用して物理的複製防止関数を構成するためにチャレンジを印加する段階は、チャレンジ-レスポンスペアを形成するために前記メモリスタクロスバーアレイの各ワードライン(wordline)にチャレンジのデジタル信号に該当する電圧を印加し、メモリスタ素子の伝導度とベクトル、および行列乗算によって各ビットライン(bitline)に電流が流れるようにし、全体ビットラインから選択された半分のビットラインに流れる電流を加え、選択されなかった半分のビットラインに流れる電流を加えてそれぞれ互いに異なるレジスタに記録する。
【0013】
前記印加されたチャレンジを利用して電圧-電流特性によるレスポンスを抽出する段階は、前記選択されなかったワードラインとビットラインはフローティング(floating)またはグラウンド(ground)に連結され、選択されなかった半分のビットラインに流れる電流を加える場合、選択された残りのビットラインはビットラインまたはグラウンドに連結され、互いに異なるレジスタに記録された電流は電圧に換算され、比較器によって大小比較を判断した後、0または1の1-bitレスポンスを生成する。
【0014】
前記予め登録されたレスポンスと前記抽出されたレスポンスとの確認によって認証を行う段階は、メモリ半導体素子の駆動原理によって電圧-電流特性が決定され、製造上の工程偏差および素子間偏差により、同じ電圧が印加されたとしても異なる量の電流が流れる特徴を固有のレスポンスに活用して保安機能を実現する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態に係るトンネリング基盤のメモリ半導体アレイによって物理的複製防止機能を実行するようになれば、変化する外部環境要素である温度に対して脆弱なダイオードやトランジスタのような能動素子だけでなく、自由キャリアの伝導メカニズムが温度に影響を受ける素子に比べてビットエラー率に対する誤差を大きく減らすことができ、メモリアレイの並列演算とともに極めて信頼性のある動作実行を保障することができる。
【0016】
本発明は、従来の保安方式として広く使用されているソフトウェア基盤の方式とは異なり、予測することのできないハードウェア物理的複製防止機能をメモリ半導体アレイで構成するとき、トンネリングメカニズムによって外部環境変数である温度に対して堅固な特性を有することができる信頼性を高め、物理的複製防止機能の活用先である暗号化鍵の生成または認証などにおいて安定的な動作に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態における、高信頼性物理的複製防止のためのトンネリング基盤のメモリ構造を示した図である。
図1b】本発明の一実施形態における、高信頼性物理的複製防止のためのトンネリング基盤のメモリ構造を示した図である。
図2】本発明の一実施形態における、高信頼性物理的複製防止方法を説明するためのフローチャートである。
図3a】本発明の一実施形態における、メモリスタクロスバーアレイ素子の温度特性を説明するための図である。
図3b】本発明の一実施形態における、メモリスタクロスバーアレイ素子の温度特性を説明するための図である。
図3c】本発明の一実施形態における、メモリスタクロスバーアレイ素子の温度特性を説明するための図である。
図3d】本発明の一実施形態における、メモリスタクロスバーアレイ素子の温度特性を説明するための図である。
図4a】本発明の一実施形態における、トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイ素子の特性を説明するための図である。
図4b】本発明の一実施形態における、トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイ素子の特性を説明するための図である。
図4c】本発明の一実施形態における、トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイ素子の特性を説明するための図である。
図4d】本発明の一実施形態における、トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイ素子の特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、トンネリングを支配的な伝導メカニズムとして活用することで、極めて安定的なチャレンジ(言い換えれば、入力)-レスポンス(言い換えれば、出力)ペアを抽出することができる、高信頼性ハードウェア基盤の保安技術である物理的複製困難関数(Physically Unclonable Function:PUF)技術を提案する。一般的にハードウェアで制作されるPUFは、温度などの外部環境によって入力/出力特性が入れ替わる動作をする。特に、メモリ半導体アレイを活用する場合、メモリ素子の温度特性によって入力/出力特性が入れ替わるようになるが、これは、外部環境とは関係なく常に一定のチャレンジ-レスポンスを出さなければならないPUF動作にとって致命的である。温度による動作特性が鈍感なトンネリング現象を活用する場合、これを防ぐことができる。トンネリングは、トンネリング距離に依存して電流-電圧特性が決まるようになり、温度が関与する度合いが極めて低いため、メモリ素子がこれを基盤に駆動する場合、これによって構成されたPUFのチャレンジ-レスポンス特性は外部環境の影響を極小に受けるようになり、安定的な保安入力/出力特性を得ることが可能となる。以下、本発明の実施例について、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態における、高信頼性物理的複製防止のためのトンネリング基盤のメモリ構造を示した図である。
【0020】
図1(a)は、本発明の一実施形態における、高信頼性物理的複製防止のためのトンネリング基盤のメモリ構造を示した図であり、図1(b)は、本発明の一実施形態における、高信頼性物理的複製防止のためのトンネリング基盤のメモリアレイ基盤のPUFを示した図である。
【0021】
メモリ素子の電圧-電流特性が、素子間散布および工程散布によってすべて異なる値を有し、隣接するメモリ素子の電流大小関係は予測ができないという点が、メモリアレイ基盤のPUFの核心動作原理である。しかしながら、メモリ素子の電流-電圧関係が温度に大きく影響を受ければ電流大小関係が逆転することがあり、これにより保安認証過程でエラーが発生するようになる。通常このようなエラーをBER(Bit-Error Rate)と言うが、高信頼性のPUF動作のためには理想的にこのBERが0でなければならない。
【0022】
本発明では、0に近いBER動作を行うPUFの実現のために、温度に独立的な電流-電圧特性を有するトンネリング基盤のメモリ素子、アレイで実現されるPUF技術を提案する。
【0023】
図1(a)を参照すると、本発明の実施形態に係るトンネリング基盤のメモリ素子は、下部電極(Bottom electrode)110上に伝導層(例えば、Al)120および酸化物層(例えば、TiOx)130を積層し、上部電極(Top electrode)140として構成されるメモリスタクロスバーアレイで実現し、伝導層120の厚さを調節することで、トンネリングが支配的な伝導メカニズムで動作するステックを実現した。本発明の実施形態では、AlおよびTiOxがそれぞれ伝導層および酸化物層であるとして説明しているが、これに限定されてはならず、この他のトンネリングメカニズムを活用してPUF動作を可能する多様な物質が使用されてよい。
【0024】
本発明の実施形態に係るトンネリング基盤のメモリ素子は、ハードウェアの予測することができない物理的複製困難関数(Physically Unclonable Function:PUF)をメモリ半導体アレイで構成するとき、前記伝導層と前記酸化物層とのトンネリングメカニズムによる外部環境変数である温度に独立的な電流-電圧特性を有するようにする。
【0025】
本発明の実施形態に係るトンネリング基盤のメモリ素子は、メモリスタ素子に限定されてはならず、トンネリングを主要メカニズムとする他の半導体素子およびアレイにも適用可能である。
【0026】
図1(b)を参照しながら、高信頼性物理的複製防止のためのトンネリング基盤のメモリ素子151を利用したメモリアレイ基盤のPUF150について説明する。
【0027】
図1(b)を参照すると、メモリ半導体アレイ基盤のPUFは、チャレンジ152印加、レスポンス153抽出、登録されたレスポンス155との確認による認証154によって保安機能を実現する。PUFにチャレンジを印加してレスポンスを抽出する方法は多様であってよく、主に、ランダムな位置に電圧を印加した後、流れる電流を比較する形態である。メモリ半導体素子の駆動原理によって電圧-電流特性が決定され、製造上の工程偏差および素子間偏差などにより、同じ電圧を印加したとしても異なる量の電流が流れるようにしかならず、これを固有のレスポンスに活用して保安機能を実現する。
【0028】
レスポンスは、外部環境によって変化しないことで信頼性のある保安認証を実現できるようになるが、メモリ半導体素子の一般的な伝導メカニズムであるディフュージョン、ドリフト、プール・フレンケル(pool-frenke)伝導、ショッキー(schotkky)伝導などは、温度が増加するほど電流が変化するため(主に増加する方向)固有の出力を維持するのが難しく、BERの主な要因となる。
【0029】
本発明は、他の伝導メカニズムに比べて温度に対する敏感性が極めて低いトンネリングを活用したメモリ素子を活用することにより、PUFを構成する場合、温度が変化してもPUFの出力特性に変化がほぼなく、信頼性の高いチャレンジ-レスポンスペアを構成することが可能な技術を提案する。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態における、高信頼性物理的複製防止方法を説明するためのフローチャートである。
【0031】
提案するトンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子に対する高信頼性物理的複製防止方法は、トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子を利用して物理的複製防止関数を構成するためにチャレンジを印加する段階210、前記印加されたチャレンジを利用して電圧-電流特性によるレスポンスを抽出する段階220、および予め登録されたレスポンスと前記抽出されたレスポンスとの確認によって認証を行う段階230を含む。
【0032】
図1を参照しながら説明したように、前記トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を有するメモリ素子は、メモリスタクロスバーアレイの構造を備え、ハードウェアの予測することができない物理的複製困難関数(Physically Unclonable Function:PUF)をメモリ半導体アレイで構成するとき、トンネリングメカニズムによる外部環境変数である温度に独立的な電流-電圧特性を有することにより、物理的複製困難関数のための保安認証過程でエラーが発生しないようにするBER(Bit-Error Rate)を減少させることができる。
【0033】
段階210で、前記トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイの構造を備えるメモリ素子を利用して物理的複製防止関数を構成するためにチャレンジを印加する。
【0034】
本発明の実施形態によると、チャレンジ-レスポンスペアを形成するために、前記メモリスタクロスバーアレイの各ワードライン(wordline)にチャレンジのデジタル信号に該当する電圧を印加してメモリスタ素子の伝導度とベクトル、および行列乗算によって各ビットライン(bitline)に電流が流れるようにし、全体ビットラインから選択された半分のビットラインに流れる電流を加え、選択されなかった半分のビットラインに流れる電流を加えてそれぞれ互いに異なるレジスタに記録する。
【0035】
段階220で、前記前記印加されたチャレンジを利用して電圧-電流特性によるレスポンスを抽出する。
【0036】
本発明の実施形態によると、前記選択されなかったワードラインとビットラインは、フローティング(floating)またはグラウンド(ground)に連結され、選択されなかった半分のビットラインに流れる電流を加える場合、選択された残りのビットラインがビットラインまたはグラウンドに連結される。互いに異なるレジスタに記録された電流は電圧に換算され、比較器によって大小比較を判断した後、0または1の1-bitレスポンスを生成する。
【0037】
段階230で、前記予め登録されたレスポンスと前記抽出されたレスポンスとの確認によって認証を実行する。
【0038】
本発明の実施形態によると、メモリ半導体素子の駆動原理によって電圧-電流特性が決定され、製造上の工程偏差および素子間偏差により、同じ電圧が印加されたとしても異なる量の電流が流れる特徴を固有のレスポンスに活用することにより、保安機能を実現することができる。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態における、トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイ素子の温度特性を説明するための図である。
【0040】
本発明の実施形態に係るメモリスタクロスバーアレイの素子は、ALD(Atomic Layer Deposition)により、Al蒸着時にはサイクル回数、TiOxの蒸着時にはスパッタリングO流量によって合計4つの条件を確認した。分割されたステックのうち、最も金属の伝導的な特性を有するスイッチングレイヤと酸素貯蔵所で構成されたIL1(Insulator Layer 1)素子(図3a)、最も絶縁体の非伝導的な特性を有するスイッチングレイヤと酸素貯蔵所で構成されたIL4素子(図3d)、そしてその間のトンネリングメカニズムが支配的なIL2素子(図3b)とIL3素子(図3c)の温度変化による電流変化の傾向を読み取る方式によって分析して本発明の効果を検証した。図3aを参照すると、IL1素子は10cycles 0.6sccm、図3bを参照すると、IL2素子は10cycles 0.8sccm、図3cを参照すると、IL3素子は14cycles 0.8sccm、図3aを参照すると、IL4素子は17cycles 1.2sccmが測定された。
【0041】
温度が増加するとき、図3aのような伝導的な特性の素子は、ビットライン(bitline)に流れる電流が減少し、図3dのような非伝導的な特性の素子は、ビットラインに流れる電流が増加する。温度によって電流が変化する特性は、出力特性のエラーに繋がる恐れがあり、安定的な保安動作の特性を妨害する。この反面、トンネリングメカニズムが支配的な2つの素子は、図3bと図3cで確認できるように、FF(Floating-Floating)読み取り方式の場合、GG(Ground-Ground)読み取り方式よりもクロスバーアレイで発生する漏洩電流(sneak current)の量が多いため多少の変化傾向が現れることもあるが、温度変化に対しては電流の変化がほぼない。これにより、トンネリング基盤のメモリスタ素子は、温度変化に関係なくほぼ一定の電流を流すため安定的なチャレンジ-レスポンス動作が可能であり、これは物理的複製防止機能の低いBERに繋がる。
【0042】
図4は、本発明の一実施形態における、トンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイ素子特性を説明するための図である。
【0043】
本発明の実施形態に係るトンネリング基盤のメモリスタクロスバーアレイを活用して図4aのようなシステムを構成した後にチャレンジ-レスポンスを確認した。図4に示した方式は一例に過ぎず、本発明がこの方式に限定されてはならない。
【0044】
本発明の実施形態に係るチャレンジ-レスポンスペアを形成するために、各ワードライン(wordline)にチャレンジのデジタル信号に該当する電圧を印加することでメモリスタ素子の伝導度とベクトル、行列乗算によって各ビットライン(bitline)に電流が流れるようになり、全体ビットラインから選択された半分のビットラインに流れる電流を加え、選択されなかった半分のビットラインに流れる電流を加えてそれぞれ互いに異なるレジスタに記録する。
【0045】
このとき、選択されなかったワードラインとビットラインは、フローティング(floating)またはグラウンド(ground)に連結され、選択されなかった半分のビットラインに流れる電流を加える場合、選択された残りのビットラインがビットラインまたはグラウンドに連結される。2つのレジスタに記録された電流は電圧に換算され、比較器によって大小比較を判断した後、0または1の1-bitレスポンスを生成する。チャレンジ-レスポンスが形成されるまで各ステップで印加されるスイッチ信号に対するタイミングダイヤグラムは、図4bのとおりとなる。
【0046】
本発明の実施形態によって設計されたメモリスタクロスバーアレイ基盤の物理的複製防止機能に上述したような温度-電流特性を適用してビットエラー率を確認するためにハミング距離(Hamming distance)を比較した結果、図4cおよび図4dのように、トンネリング基盤の2つのステックであるIL2とIL3は相対的に低いBERを示すことが確認できたし、特に、最もビットエラー率が低い素子の場合は、すべての温度に対して1%未満のBERを達成することが確認できた。一般的なメモリスタ素子の特性を備える絶縁膜基盤の素子IL4は、温度の上昇によって5%を超えるBERを示し、安定的なPUFの動作が困難であることが分かった。
【0047】
上述した装置は、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素、および/またはハードウェア構成要素とソフトウェア構成要素との組み合わせによって実現されてよい。例えば、実施形態で説明された装置および構成要素は、例えば、プロセッサ、コントローラ、ALU(arithmetic logic unit)、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、FPGA(field programmable gate array)、PLU(programmable logic unit)、マイクロプロセッサ、または命令を実行して応答することができる様々な装置のように、1つ以上の汎用コンピュータまたは特殊目的コンピュータを利用して実現されてよい。処理装置は、オペレーティングシステム(OS)およびOS上で実行される1つ以上のソフトウェアアプリケーションを実行してよい。また、処理装置は、ソフトウェアの実行に応答し、データにアクセスし、データを記録、操作、処理、および生成してもよい。理解の便宜のために、1つの処理装置が使用されるとして説明される場合もあるが、当業者であれば、処理装置が複数個の処理要素および/または複数種類の処理要素を含んでもよいことが理解できるであろう。例えば、処理装置は、複数個のプロセッサまたは1つのプロセッサおよび1つのコントローラを含んでよい。また、並列プロセッサのような、他の処理構成も可能である。
【0048】
ソフトウェアは、コンピュータプログラム、コード、命令、またはこれらのうちの1つ以上の組み合わせを含んでもよく、思うままに動作するように処理装置を構成したり、独立的または集合的に処理装置に命令したりしてよい。ソフトウェアおよび/またはデータは、処理装置に基づいて解釈されたり、処理装置に命令またはデータを提供したりするために、いかなる種類の機械、コンポーネント、物理装置、仮想装置(Virtual equipmet)、コンピュータ記録媒体または装置に具現化されてよい。ソフトウェアは、ネットワークによって接続されたコンピュータシステム上に分散され、分散された状態で記録されても実行されてもよい。ソフトウェアおよびデータは、1つ以上のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてよい。
【0049】
実施形態に係る方法は、多様なコンピュータ手段によって実行可能なプログラム命令の形態で実現されてコンピュータ読み取り可能な媒体に記録されてよい。前記コンピュータ読み取り可能な媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独でまたは組み合わせて含んでよい。前記媒体に記録されるプログラム命令は、実施形態のために特別に設計されて構成されるものであってもよいし、コンピュータソフトウェアの当業者に公知されて使用可能なものであってもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、および磁気テープのような磁気媒体、CD-ROMおよびDVDのような光媒体、フロプティカルディスク(floptical disk)のような光磁気媒体、およびROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を記録して実行するように特別に構成されたハードウェア装置が含まれる。プログラム命令の例としては、コンパイラによって生成されるもののような機械語コードだけではなく、インタプリタなどを使用してコンピュータによって実行される高級言語コードを含む。
【0050】
以上のように、実施形態を、限定された実施形態および図面に基づいて説明したが、当業者であれば、上述した記載から多様な修正および変形が可能であろう。例えば、説明された技術が、説明された方法とは異なる順序で実行されたり、かつ/あるいは、説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が、説明された方法とは異なる形態で結合されたりまたは組み合わされたり、他の構成要素または均等物によって対置されたり置換されたとしても、適切な結果を達成することができる。
【0051】
したがって、異なる実施形態であっても、特許請求の範囲と均等なものであれば、添付される特許請求の範囲に属する。
【符号の説明】
【0052】
110:下部電極
120:Al
130:Tio
140:上部電極
図1
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d