(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】イオン注入後の非線形光学晶体内に複合BIC光導波路を構築する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/134 20060101AFI20241021BHJP
G02B 6/138 20060101ALI20241021BHJP
G02F 1/365 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G02B6/134 321
G02B6/138
G02F1/365
(21)【出願番号】P 2023191882
(22)【出願日】2023-11-09
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】202211397516.5
(32)【優先日】2022-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523426013
【氏名又は名称】山東師範大学
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG NORMAL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1, University Road, University Science and Technology Park, Changqing District, Jinan City, Shandong Province 250358 China
(74)【代理人】
【識別番号】100232862
【氏名又は名称】王 雪
(72)【発明者】
【氏名】陳▲チェン▼
(72)【発明者】
【氏名】韓張華
(72)【発明者】
【氏名】姚聖坤
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101943768(CN,A)
【文献】特表2002-501630(JP,A)
【文献】米国特許第04789462(US,A)
【文献】Yang, L. et al.,“Observation of the thermal nonlinear optical effect in a microring resonator based on a small SU-8 polymer ridge optical waveguide”,2009 Asia Communications and Photonics conference and Exhibition (ACP),IEEE,2009年11月02日,SPIE-OSA-IEEE Vol. 7631,p.76310B-1~76310B-9
【文献】XIE, Pengcheng ,“High coupling efficiency and ultra-wide bandwidth fiber-to-chip interface for lithium niobate photonic integrated circuits”,AOPC 2022: Optoelectronics and Nanophotonics,2023年01月23日,Proceedings of SPIE Vol. 12556,p. 1255608-1~1255608-7,DOI: 10.1117/12.2642850
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
IEEE Xplore
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続体の束縛状態に基づく非線形光導波路の製造方法であって、
非線形結晶を前処理して非線形ウェハを取得し、前記非線形ウェハに対してイオン注入を行うステップと、
イオン注入後の非線形ウェハにフォトレジストをスピンコートし、電子線露光及びその後の熱処理を行うステップと、を含み、
前記非線形ウェハに対してイオン注入を行うステップには、
イオン加速装置を用いて前記非線形ウェハに対してイオン注入を行い、前記イオン加速装置の加速エネルギを設定し、前記イオンで前記非線形ウェハに衝突させ、分離層と導波路層を取得することが含まれ、
前記イオン注入後の非線形ウェハにフォトレジストをスピンコートし、電子線露光及びその後の熱処理を行うステップには、
熱処理後の前記非線形ウェハに対して現像操作を行うことにより、高分子ポリマーと非線形結晶のハイブリッド光導波路を取得することが含まれ、
前記熱処理後の前記非線形ウェハに対する現像操作には、
前記電子線露光後の非線形ウェハに対して熱処理を行うことにより、電子線露光後のフォトレジストを重合反応させることで、現像液に不溶なポリマーを形成することと、過熱完成後に冷却し、ポリマーでコーティングされた非線形ウェハに対して現像操作を行うことと、が含まれ、
前記非線形光導波路の製造方法のプロセスは、以下の第1ステップから第6ステップを含み、
第1ステップ:ウェハ処理
切断して成形されたシート状非線形結晶の表面を研磨、洗浄した後、貯蔵装置に入れて貯蔵し、
第2ステップ:イオン注入
非線形ウェハに数マイクロメートルの厚さの層状導波路を形成することにより、導波路内を伝送される光が垂直方向に制限され、
具体的には、イオン加速装置の加速エネルギを5-15MeVに設定し、イオンを加速させて注入室における非線形ウェハの表面に衝突させることで、イオンが最終的にウェハ内部におけるウェハ表面から数マイクロメートル以下の位置に留まり、屈折率が低下した分離層が形成され、
第3ステップ:フォトレジストのスピンコート
前記第1ステップと第2ステップにおいて処理した非線形ウェハのサンプルを加熱炉に入れ、130℃以上の温度で20分以上加熱し、前記サンプルに吸着した水分を除去し、室温まで自然冷却し、
スポイトを用いて適切な量のSU-8フォトレジストを吸収して前記サンプルの表面に滴下し、前記サンプルをスピンコータ上に置き、3-8μmであるフォトレジスト層の厚みに応じて回転速度を1040~3000回転/分(rpm)に設定し、40秒回転させ、フォトレジストの飛散によるスピンコータの部品の汚染を防ぐために、回転加速度と回転減速度を100rpm/s以内に制御し、
第4ステップ:電子線露光
前記第1~3ステップにおいて処理したサンプルを加熱プレートに置き、120℃で2分間以上加熱し、室温まで自然冷却してフォトレジストに残った溶媒を蒸発させ、スピンコートされたフォトレジストを硬化させ、
露光が必要な部分の二次元パターンを描画して電子線露光装置に導入し、電子線描画装置が前記パターンに従ってフォトレジストの特定の部分を照射し、露光量は1400mJ/cm以上であり、電子線の照射によりフォトレジスト内で化学反応を発生させることで内部成分が架橋、重合し、
第5ステップ:後処理
前記サンプルを再度加熱プレートに置き、95℃で5~10分間加熱し、室温まで冷却し、加熱によりフォトレジストの照射部分の重合反応、すなわち内部成分の架橋過程が促進され、最終的に現像液に不溶なポリマーが形成され、反応速度を制御し、ポリマーの均一性を
向上させるために、加熱速度と冷却速度を4℃/分に制御し、
第6ステップ:現像操作
前記第1~5ステップにおいて処理したサンプルをDRGM現像液に入れ、15~30秒間浸し、未重合のフォトレジストが溶解し、露光部分が残り、ポリマーの側壁が平らで滑らかになるまで前記サンプルを1.5~3秒間浸漬し続け、前記サンプルをイソプロピルアルコールですすぐことにより残った未重合のフォトレジストと現像液を除去し、最後に空気流または窒素流で前記サンプルを乾燥させ、最終的にポリマーと非線形結晶のハイブリッド光導波路が得られることを特徴とする連続体の束縛状態に基づく非線形光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術領域】
【0001】
本発明は、イオンビーム材料の改質、マイクロナノ加工、集積光学および非線形光学の技術分野に関し、特に連続体の束縛状態機構に基づく非線形光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、集積光学の基本ユニットであり、ビームをコア領域に制限するとともにビームが特定の方向へ伝送されるようにガイドすることができる。光導波路による光に対する制限と制約は通常、全反射の原理に基づくものであり、導波路のコア領域の屈折率が周囲領域の屈折率より大きいことが必要とされている。
【0003】
非線形結晶は、特殊なタイプの光学結晶であり、光がこのような結晶を通過する場合、非線形偏光応答により光の周波数が変化する。和周波数、差周波数、周波数倍増、パラメトリック発振、パラメトリックダウンコンバージョンなどの非線形効果のうちの1つ以上を利用することにより、光の周波数を人為的に制御することができ、新しい理想的な周波数の光信号やもつれ状態のペア光子を生成させることができる。
【0004】
非線形光導波路は、光導波路と非線形結晶の利点を相互に補完して利用することができる。また、ビームの制限と抑制、ビーム伝送のガイド、ビーム周波数の変更などの効果を同時に実現できる。これは集積光学および非線形光学の発展にとって非常に重要である。
【0005】
しかしながら、非線形結晶を光導波路に加工するのが困難であり、特にエッチングすることが困難である。これは、非線形結晶のエッチング速度が非常に低く、シリコンベース材料のエッチング速度の1%未満であること、及びエッチング後の非線形結晶導波路の品質が良くなく、表面粗さがシリコンベース材料より数桁大きいことによるものである。これらの欠点により、膨大な時間と材料を消耗するとともに、非線形導波路の伝送と非線形周波数変換の性能に深刻な影響を及ぼすことになる。
【0006】
精密な機械切断と研削によって上記の問題は部分的に解決でき、機械加工された非線形導波路の側壁が比較的滑らかになるものの、機械加工は通常、直線のストリップ導波路の製造にのみ適用することができ、湾曲、リング状、アレイ、複雑な二次元断面を有する集積導波路光路を機械加工によって実現することが困難である。
【0007】
そこで、本発明者は、連続体の束縛状態に基づく非線形光導波路の製造方法を提案した。この方法により、非線形結晶のエッチングや機械的加工を必要とせず、フォトレジストがスピンコートされた結晶表面に対して露光、現像などの従来の操作のみが必要とされている。連続体の束縛状態の特殊な物理的メカニズムにより、ビームが非線形結晶導波路層の特定領域に制限され、低損失伝送と高変換効率の非線形プロセスが実現される。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、非線形結晶光導波路の製造過程におけるエッチング加工の困難性及び機械加工により製造された構造の単一性の問題を克服することを目的としている。本発明者は、連続体の束縛状態に基づく非線形光導波路の製造方法を提案した。
【0009】
上記目的を実現するために、本発明は以下の解決手段を提供する。
連続体の束縛状態に基づく非線形光導波路の製造方法は、
非線形結晶を前処理して非線形ウェハを取得し、前記非線形ウェハに対してイオン注入を行うステップと、
イオン注入後の非線形ウェハにフォトレジストをスピンコートし、電子線露光及びその後の加熱処理を行うステップと、
加熱処理後の前記非線形ウェハに対して現像操作を行うことにより、高分子ポリマーと非線形結晶のハイブリッド光導波路を取得することと、を含む。
【0010】
前記非線形結晶に対して前処理を行うことには、前記非線形結晶を切断して前記非線形ウェハを取得し、前記非線形ウェハに対して表面処理を行い、前処理済の非線形ウェハを貯蔵装置に入れて貯蔵するステップがさらに含まれる。
【0011】
前記非線形ウェハに対してイオン注入を行うステップには、イオン加速装置を用いて前記非線形ウェハに対してイオン注入を行い、前記イオン加速装置の加速エネルギを設定することにより、前記イオンを前記非線形ウェハに衝突させ、分離層と導波路層を取得するステップが含まれる。
【0012】
前記イオン注入後の非線形ウェハにフォトレジストをスピンコートすることには、イオン注入後の前記非線形ウェハを加熱炉に入れ、前記非線形ウェハに対して水分を除去し、室温まで自然冷却した後、スピンコートすることによりフォトレジストでコーティングされた非線形ウェハが得られるステップが含まれる。
【0013】
室温まで冷却した前記非線形ウェハにフォトレジストをスピンコートすることには、フォトレジストを吸収して室温まで冷却した前記非線形ウェハ表面に滴下し、前記フォトレジストが滴下された非線形ウェハをスピンコータ上に置き、前記スピンコータの動作パラメータを設定することによりフォトレジストでコーティングされた非線形ウェハが得られるステップが含まれる。
【0014】
電子線露光を行うことには、フォトレジストでコーティングされた前記非線形ウェハに対して加熱処理をし、フォトレジストを硬化させ、加熱後の前記非線形ウェハに対して電子線露光を行うことにより電子線露光後の非線形ウェハステップが得られるステップが含まれる。
【0015】
加熱後の前記非線形ウェハに対して電子線露光を行うことには、露光が必要な部分の二次元パターンを描画して前記二次元パターンを電子線露光装置に導入し、前記二次元パターンに基づいて前記フォトレジストに照射してフォトレジスト内で化学反応を発生させることにより、電子線露光後の非線形ウェハが得られるステップが含まれる。
【0016】
加加熱処理済の前記非線形ウェハに対して現像操作を行うことには、前記電子線露光後の非線形ウェハに対して加熱処理を行うことにより、電子線露光後のフォトレジストを重合反応させることで、現像液に不溶なポリマーを形成することと、及び過熱完成後に冷却し、ポリマーでコーティングされた非線形ウェハに対して現像操作を行うことにより、ポリマーと非線形結晶のハイブリッド光導波路を取得することが含まれる。
【0017】
ポリマーでコーティングされた前記非線形ウェハに対して現像操作を行うことには、未重合のフォトレジストを溶解するためにポリマーでコーティングされた前記非線形ウェハを現像液に浸し、イソプロピルアルコールですすぐことにより残った未重合のフォトレジストと現像液を除去することにより、ポリマーと非線形結晶のハイブリッド光導波路が得られるステップが含まれる。
【有益な効果】
【0018】
本発明に係る製造方法は、非線形結晶導波路層の幾何学的形態を直接変更する必要がなく、それによって、非線形結晶をエッチングする困難および課題、および単一導波路構造を製造するために非線形結晶を機械加工する欠点を回避する。
【0019】
SU-8フォトレジストに対する露光及び現像操作により、理論的には任意の二次元延伸パターンの構築を実現できる。よって、本発明は、直線導波路、曲線導波路、リング導波路、導波路アレイ、又はこれらの組み合わせ等の様々な導波路構造を製造することができるため、集積導波路型光回路が実現され、応用範囲が広い。
【0020】
また、結晶導波路層とフォトレジストの厚さが一定の範囲内で自由に調整できるため、本発明に係る方法は、柔軟性が高く、拡張性が高く、プロセスが簡単で操作が便利で、時間と材料を大幅に節約できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の実施形態又は従来技術をより明確に説明するために、実施形態において使用される図面を以下に簡単に説明する。当業者であれば、創造的な努力をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することもできる。
【0022】
【
図1】本発明の実施例1に係る連続体の束縛状態に基づく非線形光導波路の製造プロセスの概略図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るウェハ電子線露光の二次元パターンの概略図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るウェハイオン注入の概略図である。
【
図4】本発明の実施例1に係るフォトレジストをスピンコートする前のウェハの概略側面図である。
【
図5】本発明の実施例1に係るフォトレジストをスピンコートした後のウェハの概略側面図である。
【
図6】本発明の実施例1に係る電子線露光時のウェハの概略側面図である。
【
図7】本発明の実施例1に係る電子線露光後のウエハの加熱促進重合反応を示す概略側面図である。
【
図8】本発明の実施例1に係る現像後のウエハの概略側面図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る1.5μm波帯における導波路の非線形周波数倍増の模式図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る導波路における基本周波数光と2倍周波数光の伝送モード図であり、ここで、(a)は、1.5μm波帯の基本周波数光の伝送モード図であり、(b)は、0.75μm波帯の2倍周波数光の伝送モード図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施例について説明したが、本発明は下記の具体的な実施形態に限定されるものではない。下記の実施例は、実施形態のすべてではなく、一部にすぎない。当業者は、本発明の実施例に基づいて創造的な努力をすることなく得られる他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲内に含まれるものとする。
【0024】
本発明の上記目的、特徴及び利点を明確かつ理解しやすくするために、添付の図面を参照しながら実施例にて詳しく説明する。
【0025】
実施例1
図1に示すように、連続体の束縛状態に基づく非線形光導波路の製造方法は、非線形結晶を前処理して非線形ウェハを取得し、前記非線形ウェハに対してイオン注入を行うステップと、イオン注入後の非線形ウェハにフォトレジストをスピンコートし、電子線露光及びその後の加熱処理を行うステップと、加熱処理後の前記非線形ウェハに対して現像操作を行うことにより、高分子ポリマーと非線形結晶のハイブリッド光導波路を取得することと、を含む。
第1ステップ:ウェハ処理
切断して成形されたシート状非線形結晶(ニオブ酸リチウム、KTP、LBO、BBOなどの結晶がよく用いられ、代表的なサイズは10×10×2 mm3 である)の表面を研磨、洗浄した後、貯蔵装置に入れて貯蔵しする。
【0026】
第2ステップ:イオン注入
図3に示すように、非線形ウェハに数マイクロメートルの厚さの層状導波路を形成することにより、導波路内を伝送される光が垂直方向に制限される。
【0027】
具体的には、イオン加速装置の加速エネルギを適切に(5-15MeV)設定し、イオン(カーボン、酸素等のプラズマ)を加速させて注入室における非線形ウェハの表面に衝突させることで、イオンが最終的にウェハ内部におけるウェハ表面から数マイクロメートル以下の位置に留まり、屈折率が低下した分離層が形成される。
【0028】
イオンの入射距離が分離層の深さと層状導波路の厚さを決めるものであるが、入射距離は、加速エネルギによって制御され、結晶の種類によって違いがある。
【0029】
第3ステップ:フォトレジストのスピンコート
図4、5に示すように、第1ステップと第2ステップにおいて処理した非線形ウェハのサンプルを加熱炉に入れ、130℃以上の温度で20分以上加熱し、前記サンプルに吸着した水分を除去し、室温まで自然冷却する。
【0030】
スポイトを用いて適切な量のSU-8フォトレジストを吸収して前記サンプルの表面に滴下し、前記サンプルをスピンコータ上に置き、3-8μmであるフォトレジスト層の厚みに応じて回転速度を1040~3000回転/分(rpm)に設定し、40秒回転させる。
【0031】
フォトレジストの飛散によるスピンコータの部品の汚染を防ぐために、回転加速度と回転減速度を100rpm/s以内に制御する。
【0032】
第4ステップ:電子線露光
第1~3ステップにおいて処理したサンプルを加熱プレートに置き、120℃で2分間以上加熱し、室温まで自然冷却してフォトレジストに残った溶媒を蒸発させ、スピンコートされたフォトレジストを硬化させる。
【0033】
図2、6に示すように、露光が必要な部分の二次元パターンを描画して電子線露光装置に導入し、電子線描画装置が前記パターンに従ってフォトレジストの特定の部分を照射し、露光量は1400mJ/cm以上である必要があり、電子線の照射によりフォトレジスト内で化学反応を発生させることで内部成分が架橋、重合する。
【0034】
第5ステップ:後処理
サンプルを再度加熱プレートに置き、95℃で5~10分間加熱し、室温まで冷却し、加熱によりフォトレジストの照射部分の重合反応、すなわち内部成分の架橋過程が促進され、最終的に現像液に不溶なポリマーが形成され、反応速度を制御し、ポリマーの均一性を向上させるためには、加熱速度と冷却速度を4℃/分に制御する必要がある。
【0035】
第6ステップ:現像操作
図8に示すように、第1~5ステップにおいて処理したサンプルをDRGM現像液に入れ、15~30秒間浸し、未重合のフォトレジストが溶解し、露光部分が残り、ポリマーの側壁が平らで滑らかになるまで前記サンプルを1.5~3秒間浸漬し続け、前記サンプルをイソプロピルアルコールですすぐことにより残った未重合のフォトレジストと現像液を除去し、最後に空気流または窒素流で前記サンプルを乾燥させ、最終的にポリマーと非線形結晶のハイブリッド光導波路が得られる。
【0036】
なお、エッチングや機械加工によって形成されるリッジ状の断面を有する非線形光導波路とは異なり、本発明は非線形結晶の幾何学的形状を直接変化させず、2つの側壁を形成させ、結晶と空気の界面での全反射によって、ビームを導波管の内部に閉じ込める。
【0037】
また、本発明は、結晶導波路層の周囲の誘電環境を局所的に変化させる。その効果は、ポリマー直下の結晶導波路層が、ポリマーで覆われていない結晶導波路層よりも大きな伝送定数(Propagation Constant or β)及び実効屈折率(実効屈折率又はneff)を示すことである。この結論は、導波路と周囲の媒体のヘルムホルツ方程式(Helmholtz equation)を解くことによって検証できる。
【0038】
ビームが導波路を通過するとき、伝送定数と実効屈折率がより大きい領域を優先的に通過する。よって、ポリマー構造は、ビームに横方向の制約を課すことにより、ビームをポリマー構造の直下の結晶層に閉じ込めるものである。
【0039】
波動光学のヘルムホルツ方程式と量子力学のシュレーディンガー方程式(Schrodinger equation)の整合性によれば、ポリマー構造の直下にポテンシャル型井戸(Potential Well)が存在することがわかる。ビームが導波路内を伝送するとき、エネルギのほとんどが光ポテンシャル型井戸に閉じ込められ、束縛状態を形成させる。
【0040】
実施例2
図9に示すように、本実施例は、直線導波路と曲線導波路のハイブリッド構造を示すものであり、1.5μm波帯の信号光を0.75μm波帯の信号光へ変換する非線形プロセスを示すものである。このハイブリッド構造導波路は実施例1において提供された方法によって構築される。当該方法は、柔軟性と実用性を有するだけでなく、これに基づいて簡単な変更を行うだけで、導波路ビームスプリッタ(ビームを2つ以上に分割できる)や方向性結合器(ビームをある導波路から他の導波路に結合できる)等の機能的な集積光デバイスを導き出すことができ、拡張性を備える。
【0041】
図10に示すように、1.5μm通信帯域の信号光が導波路の一方側のポートから入力、伝送、周波数変換され、最終的に他方側のポートから出力される過程をシミュレーションし、1.5μmの基本周波数光と0.75μmの2倍周波数光が導波管内に伝送される伝送モードを取得した。
図面から分かるように、両方の周波数のビームのエネルギのほとんどは、導波路のコア領域内に閉じ込められる。結晶導波路層は、水平方向において「ハード境界」がないが、導波路コア領域の上方のポリマー構造の存在と、連続体の束縛状態(Bound State In Continuum 又は BIC)を形成するメカニズムにより、導波路が水平方向においてビームを制限することができる。これは、本発明の基礎となるアイデアの実現可能性を示している。
【0042】
また、
図10の矢印で示されるように、ビームの電場は、主に垂直方向において振動し、基本周波数光と2倍周波数光の偏光方向が基本的に同じである。非線形周波数変換処理における位相不整合(2倍周波数光の相殺的干渉)を回避するために、実施例1の第1ステップにおいてウェハに予め周期分極を施す必要がある。周期分極技術が商業化されているため、周期分極された非線形ウェハが直接購入できるため、ここで説明を省略する。
【0043】
さらに、基本周波数光と2倍周波数光の伝送モードが似ている。これは、基本周波数光のエネルギを複素モードへ変換することなく2倍周波数光伝送モードに結合できることを示しており、より高い非線形周波数変換効率が実現される。また、光集積回路の観点から見ると、入力端の基本周波数光と出力端の2倍周波数光のモードサイズが基本的に同じであるため、同じ仕様の光回路部品を使用することができる。入力端と出力端の両端の接続については、良好な統合性を示している。
【0044】
上述した実施形態は、本発明の好ましい態様を説明したものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の技術思想から逸脱することなく、当業者であれば種々の変更を加えることができる。すべての変形および改良は、本発明の特許請求の範囲によって定められる保護範囲内に含まれるものとする。